【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 被告人Aの当審における未決勾留日数中一七〇日を本刑に算入する。 当審における訴訟費用は、国選弁護人佐々木・に支給した報酬を二分し、 そ
主文本件上告を棄却する。 被告人Aの当審における未決勾留日数中一七〇日を本刑に算入する。 当審における訴訟費用は、国選弁護人佐々木・に支給した報酬を二分し、その一を被告人Aの負担とする。 理由被告人A本人の上告趣意は、事実誤認、量刑不当の主張であり、同被告人の弁護人佐々木・の上告趣意は、単なる法令違反、量刑不当の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。 被告人Bの弁護人荒井金雄、同神山美智子の上告趣意は、量刑不当の主張であつて、同条の上告理由にあたらない。 被告人Cの弁護人繩稚登の上告趣意は、判例違反を主張する点もあるが、引用の各判例は本件と事案を異にして適切でないから、所論は前提を欠き、その余は、事実誤認、量刑不当の主張であつて、いずれも適法な上告理由にあたらない。 被告人Dの弁護人秋知和憲の上告趣意は、憲法三七条一項違反をいう点もあるが、実質は、すべて、単なる法令違反、量刑不当、事実誤認の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。 被告人Eの弁護人吉江知養、同井上義男の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、同条の上告理由にあたらない(記録を調べても、所論供述調書に任意性を疑うべき点はないとした原判断は相当である)。 被告人Fの弁護人阿部一男の上告趣意は、量刑不当の主張であつて、同条の上告理由にあたらない。 しかし、職権によつて調査するに、原判決が是認した第一審判決は、被告人A、同B、同C、同D、同Fの関係において、G所有の東京都目黒区ab丁目c番地の- 1 -宅地につき、その登記簿に関する公正証書原本不実記載およびその行使の罪の成立を認めたほかに、右被告人らが右宅地を騙取したものとして、これを詐欺罪に問擬しているのである。 ab丁目c番地の- 1 -宅地につき、その登記簿に関する公正証書原本不実記載およびその行使の罪の成立を認めたほかに、右被告人らが右宅地を騙取したものとして、これを詐欺罪に問擬しているのである。しかしながら、第一審判決の判示するところによれば、被告人らは、共謀のうえ、前記Gの氏名を冒用し、簡易裁判所に内容虚偽の起訴前の和解の申立をして、和解調書を作成させ、これによつて右宅地の所有権移転登記をしようと企て、被告人Dが右Gの身替りとなつて、弁護士近岡孝吉の面前で、被告人Aと右宅地に関する仮装の取引上の口論をし、同弁護士をして、被告人DがGであると信ぜしめたうえ、同弁護士を訴訟代理人とする旨のG名義の訴訟委任状等を偽造し、同弁護士をGの代理人として日下部簡易裁判所に出頭させて、起訴前の和解の申立をさせ、同裁判所の裁判官の前で被告人Aとの間で、右宅地の所有権移転登記手続をする旨の和解が成立した如く装い、同裁判官をしてその旨誤信させて、右和解条項を記載した和解調書を作成させ、次いで、右和解調書の正本を、登記官吏に登記原因を証する書面として提出し、Gから被告人Aへの右宅地の所有権移転登記手続をなさしめたというのである。ところで、詐欺罪が成立するためには、被欺罔者が錯誤によつてなんらかの財産的処分行為をすることを要すると解すべきところ、本件で被欺罔者とされている日下部簡易裁判所の裁判官は、起訴前の和解手続において出頭した当事者間に和解の合意が成立したものと認め、これを調書に記載せしめたに止まり、宅地の所有者に代つてこれを処分する旨の意思表示をしたものではない(この点裁判所を欺罔して勝訴判決をえ、これに基いて相手方から財物を取得するいわゆる訴訟詐欺とは異なるものと解すべきである)。また、本件宅地の所有権移転登記も、所有者の意思に基かず、内容虚偽の前 ない(この点裁判所を欺罔して勝訴判決をえ、これに基いて相手方から財物を取得するいわゆる訴訟詐欺とは異なるものと解すべきである)。また、本件宅地の所有権移転登記も、所有者の意思に基かず、内容虚偽の前記和解調書によつて登記官吏を欺いた結果なされたものにすぎず、登記官吏には、不動産を処分する権限も地位もないのであるから、これらの被告人の行為によつて、被告人らが宅地を騙取したものということはできない。 - 2 -そうすると、右宅地に関する詐欺罪の成立を認めた第一審判決は、法令の解釈適用をあやまり、罪とならない事実について、同被告人らを有罪とした違法があり、これを看過した原判決もまた違法といわざるを得ない。しかしながら、右被告人らは、右詐欺とされた行為のほかにも、第一審判決判示のとおり私文書偽造、同行使、公正証書原本不実記載、同行使ならびに株式会社Hからの金員騙取の詐欺(被告人BについてはIからの金員騙取もある)の各犯行を犯しているのであり、処断刑に変更はなく、またその犯行の動機態様等からみて、右被告人らに対する量刑は、右宅地騙取の点を除いても、不当とは認められないから、原判決に前記の違法があつても、いまだこれを破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。 よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号、被告人Aにつき、同法一八一条一項本文、刑法二一条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。 昭和四二年一二月二一日最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官松田二郎裁判官入江俊郎裁判官長部謹吾裁判官岩田誠 裁判官入江俊郎裁判官長部謹吾裁判官岩田誠裁判官大隅健一郎- 3 -
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