1 令和4 年12 月22 日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官令和3 年(ワ)第33526 号 商標権侵害行為差止等請求事件口頭弁論終結日 令和4 年11 月10 日判決原告 ノーブル株式会社5同訴訟代理人弁護士 眞 鍋 淳 也同 中 村 春 樹同 奥 雄 平同 増 田 圭 悟被 告 株式会社D e a r L a u r a10同訴訟代理人弁護士 鶴 由 貴同 安 部 拓 也被告補助参加人 株式会社アイディーエイ同訴訟代理人弁護士 今 村 憲同 小 林 明 日 香15主文1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は原告の負担とする。 事実及び理由第1 請求201 被告は、瞼形成用ストレッチテープ及び二重瞼形成用化粧品に別紙被告標章目録記載1 及び2 の標章を付し、又は同標章を付した瞼形成用ストレッチテープ及び二重瞼形成用化粧品を販売し、若しくは販売のために展示してはならない。 2 被告は、別紙被告標章目録記載1 及び2 の標章を付した瞼形成用ストレッチテープ及び二重瞼形成用化粧品を廃棄せよ。 253 被告は、原告に対し、988 万0530 円及びこれに対する令和4 年1月27 日から 2 支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 4 被告は、原告に対し、別紙謝罪 253 被告は、原告に対し、988 万0530 円及びこれに対する令和4 年1月27 日から 2 支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 4 被告は、原告に対し、別紙謝罪広告目録記載第1 の文章を、同第2 の条件で、本判決確定の日の1 週間後から1 年間にわたり掲載せよ。 第2 事案の概要1 本件は、別紙商標目録記載1 及び2 の各登録商標(以下、記載順に「本件商標51」などといい、これらを併せて「本件商標」という。)に係る商標権(以下、それぞれ「本件商標権1」などといい、これらを併せて「本件商標権」という。)を有する原告が、被告が別紙被告標章目録記載1 及び2 の各標章(以下、記載順に「被告標章1」などといい、これらを併せて「被告標章」という。)を包装に付した別紙被告商品目録記載1 及び2 の各商品(以下、記載順に「被告商品1」などといい、こ10れらを併せて「被告商品」という。)を製造、販売等する行為が本件商標権を侵害すると主張して、被告に対し、以下の請求をする事案である。 (1) 差止及び廃棄請求商標法36 条に基づき、被告商品の販売等の差止(同条1 項)及び被告商品の廃棄(同条2 項)15(2) 損害賠償請求不法行為(民法709 条、損害額につき商標法38 条2 項)に基づき、988 万0530円の損害賠償及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和4 年1 月27 日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払(3) 信用回復措置請求20商標法39 条の準用する特許法106 条に基づき、原告の業務上の信用を回復するのに必要な措置として、別紙謝罪広告目録記載第1 の文章の同第2 の条件による掲載2 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記した証拠及び弁 る特許法106 条に基づき、原告の業務上の信用を回復するのに必要な措置として、別紙謝罪広告目録記載第1 の文章の同第2 の条件による掲載2 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)25(1) 当事者 3 ア 原告は、化粧品及び美容雑貨の製造・販売業等を目的とする株式会社である。 イ 被告は、化粧品の製造・販売業等を目的とする株式会社である。 ウ 被告補助参加人は、商品パッケージのブランディングやデザイン制作業を目的とする株式会社であり、被告との間の業務委託契約に基づき、被告商品のパッケージ案を被告に提供した者である。 5(2) 本件商標権原告は、別紙商標目録記載1 及び2 の各商標権(本件商標権)を有する。 (3) 被告の行為被告は、令和2 年9 月29 日から被告商品をそれぞれ製造・販売し、又は販売のために展示した(なお、後記のとおり、被告による被告商品の製造等の終了の有無に10ついては当事者間に争いがある。)。 (4) 本件商標の指定商品と被告商品の同一性被告商品1 は二重瞼形成用化粧品であり、本件商標の指定商品「二重瞼形成用化粧品」と同一である。他方、被告商品2 は二重瞼整形用メッシュテープであり、本件商標の指定商品「瞼整形用ストレッチテープ」と同一である。 153 争点(1) 本件商標と被告標章の類否(争点1)(2) 被告標章と本件商標権の効力(争点2)ア 商標法26 条1 項2 号該当性(争点2-1)イ 被告標章の商標法26 条1 項4 号該当性(争点2-2)20ウ 被告商標の商標法26 条1 項6 号該当性(争点2-3)(3) 原告の損害(争点3)(4) 信用回復措置の必要性(争点4)4 当 標法26 条1 項4 号該当性(争点2-2)20ウ 被告商標の商標法26 条1 項6 号該当性(争点2-3)(3) 原告の損害(争点3)(4) 信用回復措置の必要性(争点4)4 当事者の主張(1) 争点1(本件商標と被告標章の類否)25〔原告の主張〕 4 ア 称呼、観念及び外観について本件商標と被告標章の称呼は、いずれも「バレナイフタエ」であり、同一である。 このため、両者の観念も、需要者である一般消費者の受け止めにおいては全く同一である。 外観についても、本件商標と被告標章とは文字数やひらがな・カタカナ・漢字の5組合せ方につき相違があるものの、これらの相違点は、原告商品や被告商品を購入する需要者である一般消費者が受ける印象においては些細なものであり、両者の類似性を否定するには足りない。被告標章の「二重」の「二」の部分に係るデザインの点は、被告の独自の印象を述べるものに過ぎず、本件商標と被告標章との類似性を否定するに足りるものではない。 10以上より、本件商標と被告標章とは、称呼、観念及び外観において同一又は類似する。 イ 取引の実情について被告商品は二重瞼形成用化粧品等であるところ、原告も、本件商標を包装上に大きく表示させて被告商品と同種の商品(以下「原告商品」という。)を販売している。 15このような具体的な取引状況に鑑みると、需要者である一般消費者が、被告標章を使用した被告商品を原告商品と誤認混同する可能性は極めて高い。 原告商品及び被告商品の需要者は一般消費者であって、若い世代の女性という客層に限定されるものではない。また、被告商品は極めて多数の実店舗においても販売されており、原告商品や被告商品をインターネット等の投稿を参考にして購入す20るケースは一部に過ぎない の女性という客層に限定されるものではない。また、被告商品は極めて多数の実店舗においても販売されており、原告商品や被告商品をインターネット等の投稿を参考にして購入す20るケースは一部に過ぎない。さらに、仮に原告商品や被告商品が相当に商品選択性の強い部類に属するものであるとしても、原告商品を選択して購入しようとした需要者が称呼・外観・観念において原告商品と同一ないし類似する被告商品を原告商品と誤認して購入する可能性が極めて高いことを否定する根拠にはならない。 ウ 小括25以上より、被告標章はいずれも本件商標に類似する。 5 〔被告及び被告補助参加人の主張〕ア 外観について本件商標1 は標準文字の「バレないふたえ」、本件商標2 は「バレない」と「ふたえ」を上下二段かつ横書きして表記したものであるところ、いずれも、「バレ」がカタカナ、「ないふたえ」がひらがなで表示され、カタカナとひらがなが合わさ5って成るものである。また、文字数の合計は7 文字である。他方、被告標章は、いずれも「バレナイ二重」というものであるところ 「バレナイ」がカタカナ、「二重」が漢字で表示され、カタカナと漢字が合わさって成るものである。また、文字数の合計は6 文字である。 このように、本件商標と被告標章とは、文字数が異なる上、漢字・ひらがな・カ10タカナの組合せ方が異なる。しかも、漢字使用とひらがな使用の相違点は、需要者の注意を引くであろう「二重」の部分である。 さらに、被告標章が「バレナイ」とカタカナで表記している点で、二重にしていることが容易に分からないという凄さ(現在よく使われる「ヤバイ」の語が持つニュアンス)を意識しているのに対し、本件商標は「バレない」とすることで柔らか15なイメージにしており、外観が需要者に与える ことが容易に分からないという凄さ(現在よく使われる「ヤバイ」の語が持つニュアンス)を意識しているのに対し、本件商標は「バレない」とすることで柔らか なイメージにしており、外観が需要者に与える印象も大きく異なる。 加えて、被告標章は、ハート型の枠でその周りを囲った上、上部に「長時間キープ」と表示し、下線を引いて強調したものであり、かつ、「二重」の「二」の下部を瞼に見立ててまつ毛を生やすような独自のデザインを施しているのに対し、本件商標は、このような装飾やデザインを施していない。 以上より、本件商標と被告標章とは、その外観において、一見して異なる。 イ称呼について称呼は、本件商標も被告標章も「バレナイフタエ」であるが、そうであるからといって、直ちに、需要者が両者を誤認混同する可能性があるとはいえない。 ウ取引の実情について 本件商標の指定商品や被告商品は、食料品や日用雑貨品のようにあらゆる需要者 が日常的に頻繁かつ大量に購入するものではなく、若い世代の女性という限定された客層が、自己の求める容貌に可能な限り近づけるために購入するものである。また、身体の要部という意味でも第三者からの印象という意味でも非常に重要な「目」の部分に使用するものである以上、需要者は、衛生面や安全面を重視する上、効果の持続時間といった機能面も重視する。すなわち、これらの商品は、相当に商品選 択性の強い部類に属し、インターネットと実店舗のいずれで購入するにせよ、需要者は、衛生面・安全面及び機能面に関する表示を十分に確認した上で慎重に選択し、商品購入の判断をするものである。特に、需要者である若い世代の女性は、インターネットやSNS を頻繁に活用しており、観念や称呼が類似又は同一であったとしても、インターネットやSNS で慎重に選択し、商品購入の判断をするものである。特に、需要者である若い世代の女性は、インターネットやSNS を頻繁に活用しており、観念や称呼が類似又は同一であったとしても、インターネットやSNS 上の投稿を参考にして、自分に合う商品を自分で判断し10ている。 加えて、被告標章は、被告商品の包装の上部の3 分の1 程度に表示されているに過ぎないが、本件商標は、原告商品の包装のほぼ中央に大々的に表示されているという違いもある。 このような取引の実情に鑑みれば、取引者が被告商品と原告商品とを誤認混同す15る可能性が皆無又は極めて小さいことは、より明らかである。 エ 小括以上のとおり、本件商標と被告標章とは外観において明らかに異なる上、取引の実情を考慮すれば、需要者が原告商品と被告商品とを誤認混同する可能性は皆無といえるのであって、被告標章は本件商標と類似しない。 20(2) 争点2-1(商標法26 条1 項2 号該当性)〔被告の主張〕一般論として、一重瞼にコンプレックスを抱いている者は二重瞼になりたいという願望を有しているところ、一重瞼から二重瞼にするためには、美容整形外科手術を受けるほか、原告商品や被告商品のような化粧品を使用する必要がある。しかし、25美容整形外科手術については、これを受けた者に対し偏見や否定的な見解を抱く者 7 もいる。化粧品を使用するにしても、第三者から見て一時的・意図的に二重瞼にしていることが容易に判明してしまうようでは、コンプレックスの解消には繋がらない。そのため、仮に美容整形外科手術を行うにしても、化粧品を使用するにしても、第三者から見られたときにいかに自然な二重瞼に見えるか、言い換えれば、本来的には一重瞼の人が二重瞼にしていることが分からないことが極めて重要となる。 外科手術を行うにしても、化粧品を使用するにしても、第三者から見られたときにいかに自然な二重瞼に見えるか、言い換えれば、本来的には一重瞼の人が二重瞼にしていることが分からないことが極めて重要となる。こ5の意味で、「ばれないふたえ」とは、第三者から見たときに、本来的には一重瞼の者が二重瞼にしていることが容易に判明しない状態を示す普通名称に過ぎない。 したがって、被告標章は、普通名称を普通に用いられる方法で表示するものであり、本件商標権の効力は被告標章に及ばない。 〔被告補助参加人の主張〕10二重瞼形成用化粧品等は、もともと一重や奥二重である瞼を最初から二重瞼であるかのように自然に化粧で形成することを目的とした商品である。このため、商品の販売に当たっては、「最初から二重瞼であるかのように形成することが出来る」という商品の品質・効能・用途を需要者に訴求的に説明・宣伝するために、「ばれない」や「詐欺」、「自然」、「ナチュラル」、「リアル」、「すっぴん」、「整形級」、「天然」等15の表現によらざるを得ない。 また、被告商品の包装においては、被告標章の上部に被告標章と同じ書体及び文字色で「長時間キープ」との記載があり、また、下部には目立つように緑色の長方形の図形内に黒文字で「リキッドタイプ」との記載と、その横に緑色の縁取りのされた黒色の円形の中に緑色の文字で「細筆」との記載及び同色での筆先のイラスト20があり、これらの各記載が縁取りされた黒色のハートマークの中にまとまって表示されている。これらの記載が商品の効能・用途等を指していることは容易に理解される。また、上記ハートマークの左横すぐ下には、黒色の文字で「Eye Catching Beauty」、「FUTAE LIQUID」といった被告商品名を示す記載がされている。さらに、被 は容易に理解される。また、上記ハートマークの左横すぐ下には、黒色の文字で「EyeCatchingBeauty」、「FUTAELIQUID」といった被告商品名を示す記載がされている。さらに、被告商品1 の本体の表面には被告商品1 の商品名を示す記載のみがされており、その裏面 にも商品名の記載がある。 このように、被告標章の記載された位置関係や被告商品の名称を示す記載が包装において目立つように記載されていることを考慮すると、上記ハートマーク内の説明文は、被告商品の効能等を効果的に需要者に宣伝しようとする目的の記載であることが理解されるのであって、被告標章は、他の商品と区別する標章としては機能しない。 したがって、被告標章は、商品の効能、用途等を普通に用いられる方法で表示する標章であり、本件商標権の効力は及ばない。 〔原告の主張〕被告標章は、被告商品の包装表面において最も消費者一般の目に付く大きさの文字やデザイン、位置に表示されており、単なる商品説明の文言とは異質のものであ る。このため、店頭やインターネット上で被告商品を見る一般消費者は、他商品と区別する標章である被告商品の商品名として被告標章を認識する。 そもそも、被告商品に被告標章を付すことが普通名称の表示に該当するか否かは、被告商品のような二重瞼形成用化粧品等において「バレないふたえ(二重)」という標章が一般的となっているかという観点から判断されるべきであるが、これを裏付 ける証拠はない。むしろ、大手オンライン通販サイトで「二重まぶたグッズ」という単語で商品検索をしても、検索上位の商品の中には、原告商品以外に「バレないふたえ(二重)」という標章ないし言葉が用いられた商品は存在しないことに鑑みると、「バレないふたえ(二重)」という ズ」という単語で商品検索をしても、検索上位の商品の中には、原告商品以外に「バレないふたえ(二重)」という標章ないし言葉が用いられた商品は存在しないことに鑑みると、「バレないふたえ(二重)」という標章は独特の個性あるものといえるのであって、二重瞼形成用化粧品等の名称や商品説明として一般的なものではないことがう20かがわれる。 また、被告標章は、被告商品の包装の前面中央部に大きな文字で表示され、他の記載と異なり黒色のハート形の枠で囲まれ、周囲の黒色と強いコントラストをなす薄いピンク色を用いることにより、被告標章が最も需要者の目に付くように表示されている。 25さらに、被告商品の包装にその商品名が表示されているとしても、その包装に 9 おいて被告標章が最も一般消費者の目に付くことから、店頭等で被告商品を見る一般消費者が他の商品と区別する標章及び被告商品の商品名として被告標章を認識することが否定されるものではない。 以上より、被告標章は、商品の普通名称ないし商品の効能、用途等を普通に用いられる方法で表示する標章に該当しない。 5(3) 争点2-2(商標法26 条1 項4 号該当性)〔被告の主張〕「バレナイ二重」とは、第三者から見たときに、本来的には一重瞼の人が二重瞼にしていることが容易に判明しない状態を示しているに過ぎない。また、美容整形外科医院、化粧品製造業者及び若い世代の女性にとって、「バレナイ二重」は、二重10瞼形成用化粧品等に関して慣用的に用いられている語である。 したがって、被告標章は、本件商標の指定商品又はこれに類似する商品である二重瞼形成用化粧品等について慣用されている標章であり、本件商標権の効力は被告標章には及ばない。 〔原告の主張〕15「バレナイ二重」という標章は、被告商品の 商品又はこれに類似する商品である二重瞼形成用化粧品等について慣用されている標章であり、本件商標権の効力は被告標章には及ばない。 〔原告の主張〕15「バレナイ二重」という標章は、被告商品のような二重瞼形成用化粧品等において一般的な名称となってはいない以上、被告標章は二重瞼形成用化粧品等における慣用商標ではない。 (4) 争点2-3(商標法26 条1 項6 号該当性)〔被告及び被告補助参加人の主張〕20被告商品の名称は、「アイキャッチングビューティふたえリキッド」(被告商品1)及び「アイキャッチングビューティふたえメッシュテープ」(被告商品2)であり、「バレナイ二重」は、被告商品の名称ではなく、その一部でもない。 また、「バレナイ二重」とは、第三者において、本来的には一重瞼の人が二重瞼にしていることが容易に判明しない状態を示しているに過ぎない。この状態が取引者25及び需要者にとって極めて重要であることから、被告商品の内容・特性を示す表示 10 として、かつ、被告商品の宣伝のためのキャッチフレーズや宣伝文句として、この記載を用いているのである。第三者から見ても、被告標章は、黒色のハートマークの中にその他の効能等をうたった文言と併記されることで、化粧・形成していることがわからない又は気づかれにくいという商品の効能を効果的に宣伝しようとする目的の記載であることが理解される。 5そうすると、被告標章は、需要者にとって、自他商品の識別標識としての機能を果たす態様で使用されているものではない。 したがって、被告標章は、需要者が被告の業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用されていない標章であり、本件商標権の効力は被告標章には及ばない。 10〔原告の主張〕被告標章は、被告商品の 章は、需要者が被告の業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用されていない標章であり、本件商標権の効力は被告標章には及ばない。 10〔原告の主張〕被告標章は、被告商品の包装の表面において最も需要者の目につく大きさの文字やデザイン、位置で表示されており、単なる商品説明の文言とは明らかに異質であり、識別機能のない単なる商品説明ではない。 したがって、被告標章は、店頭等で被告商品を見る需要者である一般消費者が他15の商品と区別する標識として被告標章を認識するものであり、需要者が被告の業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用されていない商標に該当しない。 (5) 争点3(原告の損害)〔原告の主張〕20ア 損害の発生原告は、平成25 年8 月以降現在に至るまで、本件商標を付した原告商品を製造、販売している。このため、本件商標と類似する被告標章を付した被告商品を被告が販売することで、原告には営業上の損害が生じた。 イ 原告の損害額25(ア) 商標法38 条2 項に基づく損害 11 被告は、遅くとも令和2 年9 月以降、被告商品を少なくとも2 万9941 個製造、販売している。 他方、被告商品の1 個当たり小売価格は924 円ないし1100 円(税込)程度である。原告における原告商品の利益率は小売価格の30%程度であるところ、同業他社の同種商品における利益率はこれと大きく異ならない。そうすると、被告商品にお5ける被告の利益額は、被告商品の小売価格を1000 円とすると、1 個当たり少なくとも300 円を下らない。 したがって、被告が被告商品の販売により得た利益の額は898 万2300 円(=29,941個×¥300/個)を下らないことから、同額が原告に生 ると、1 個当たり少なくとも300 円を下らない。 したがって、被告が被告商品の販売により得た利益の額は898 万2300 円(=29,941個×¥300/個)を下らないことから、同額が原告に生じた損害の額と推定される(商標法38 条2 項)。 10(イ) 弁護士費用原告は、本件訴訟を原告訴訟代理人に委任した。被告による不法行為と相当因果関係にある弁護士費用は、上記(ア)の損害額の10%に当たる89 万8230 円である。 ウ 小括以上から、被告は、原告に対し、988 万0530 円の損害賠償義務を負う。 15〔被告の主張〕争う。 なお、被告は、被告商品1 については令和2 年9 月29 日から令和3 年4 月27 日まで、被告商品2 については令和2 年9 月29 日から令和3 年6 月30 日まで、それぞれ製造、販売及び販売のための展示をしていたが、現在は被告商品を製造等して20いない。 (6) 争点4(信用回復措置の必要性)〔原告の主張〕原告は、本件商標を付した原告商品を660 円(税抜。原告商品1)及び933 円(税込。原告商品2)で販売している。他方、被告は、本件商標と類似する被告標25章を付した被告商品を小売販売額で924 円ないし1100 円(税込)と、少なくとも 12 原告商品1 よりも高い価格で販売している。 被告商品は原告商品と機能及び表示において極めて類似している。また、「バレないふたえ」でインターネット検索した場合、検索結果として、原告商品と共に被告商品も表示される。このため、需要者である一般消費者が、原告商品1 より高額な被告商品を、原告が製造・販売した商品と誤認する可能性は極めて高い。その場5合、需要者は、過去に販売し続けてきた原告商品と同一の商品 る。このため、需要者である一般消費者が、原告商品1 より高額な被告商品を、原告が製造・販売した商品と誤認する可能性は極めて高い。その場5合、需要者は、過去に販売し続けてきた原告商品と同一の商品を原告が高額で販売し始めたと誤信すると考えられる。このため、被告が被告標章をその包装に付した被告商品を販売等することによって、原告の業務上の信用が害されるといえる。 被告は、遅くとも令和2 年9 月から被告商品の販売を始め、現在もその販売を続けていることから、相当多数の一般消費者が被告商品を原告の製造・販売した10商品と誤認していることは明らかである。 さらに、被告が被告商品の販売を停止したとしても、既に小売店舗等に卸された被告商品は引き続き販売が続けられることになる。 以上より、原告が被告商品を製造・販売しているという一般消費者に既に生じた誤認を解消し、将来において同様の誤認が一般消費者間に生じないようにする15ためには、被告自身が、少なくとも自己のウェブページ上において、被告商品が本件商標権を侵害して製造・販売されたものであり、かつ、その権利侵害の責任が被告にあり、是正措置を取ったことを一般消費者向けに掲示する必要がある。 〔被告の主張〕争う。被告は、現在、被告商品を製造も販売もしていないから、信用回復措置20は不要である。 第3 当裁判所の判断1 争点2-3(商標法26 条1 項6 号該当性)について事案に鑑み、まず、争点2-3(商標法26 条1 項6 号該当性)について検討する。 (1) 証拠(掲記したもの)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 25ア 「ばれない」、「バレない」、「バレナイ」の用例等 13 (ア) 「ばれない」との語は、「ばれる」という動詞に「ない」とい 弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 25ア 「ばれない」、「バレない」、「バレナイ」の用例等 13 (ア) 「ばれない」との語は、「ばれる」という動詞に「ない」という打消しの助動詞が付されて成る語である。「ばれる」の語意は、秘密・嘘・悪事が露顕することであるから、「ばれない」とは、秘密等が露顕しないという意味となる。また、「ばれない」、「バレない」及び「バレナイ」は、平仮名のみ、平仮名とカタカナの組合せ又はカタカナのみである点で表記としては異なるものの、そのいずれであるかによ5り意味合いが異なるものではない。 (イ) インターネット検索の結果によれば、二重瞼を形成する美容施術や二重瞼形成用化粧品等の宣伝広告として、「作った二重だなんてバレない」、「バレにくい二重」、「バレない自然な二重まぶたに!?」、「絶対バレない!自然な二重まぶたの作り方」、「バレないコツ」、「本気でバレない二重の作り方」、「バレないふたえまぶた」10「バレない・腫れない二重整形」といった表現が使用されていることが認められる(甲16、乙2~5)。また、「【専門家監修】アイプチのおすすめ人気ランキング15 選【学生向けやバレないものも!】」と題して二重瞼形成用化粧品等をランキング形式で紹介するウェブページ(丙3)においても、「アイプチでは周りの人にバレてしまうのが心配な方も多いはずです。」、「使っていることがバレないようにしたいで15すよね!バレにくさを重視するなら、ファイバーや皮膜式のアイプチがおすすめです。」といった記載がされている。さらに、原告商品及び被告商品以外の二重瞼整形用化粧品等において、商品の説明として、「バレない整形級ふたえ」(丙1-1)、「バレない!テカらない!」(丙1-2・3)、「目をつぶってもバレ されている。さらに、原告商品及び被告商品以外の二重瞼整形用化粧品等において、商品の説明として、「バレない整形級ふたえ」(丙1-1)、「バレない!テカらない!」(丙1-2・3)、「目をつぶってもバレない!」(丙1-4)、「閉じてもバレにくい!」(丙1-5)、「極細繊維ファイバーでバレないふたえ成形」(丙1-6)、20「バレない!!整形メイク」(丙1-7)といった表現が見受けられる。加えて、二重瞼形成用化粧品等以外にも、鼻筋整形用の化粧品の説明として「バレない!カンタン!自然な仕上がり!」との表現が(丙2-1)、つけ爪(ネイルチップ)の説明として「バレないつけ爪」との表現が(丙2-2・3)、頬の美容整形施術の説明として「バレないリフト」との表現(丙2-4)が、それぞれ使用されていることが認められる。 25イ 被告商品における被告標章の使用態様等 14 証拠(甲5)によれば、被告商品1 の包装には、その表面の上部半分程度を占める大きさの黒色ハート形の図形が配置され、その図形内の最上段には下線付きの「長時間キープ」の文字が、中段には被告標章1 が、いずれも包装のベース色であるピンク色で表示されている。また、その最下段には緑色の帯状の図形上に黒色で「リキッドタイプ」の文字が記載されると共に、当該帯状の図形の左端に接着した黒色5丸形の図形内に緑色で「細筆」の文字及び筆先の形状のイラストが記載されている。 さらに、同包装の下部左上側には、上下二段からなる「Eye Catching」、「Beauty」(なお、「Beauty」の「t」は、2 画の交点の左側及び下側が右側及び上側に比して長い十文字状にデザインされている。)との記載が、下部左中央には同じく上下二段からなる「FUTAE」、「LIQUID」との記載が、下部右側には「♯目 、2 画の交点の左側及び下側が右側及び上側に比して長い十文字状にデザインされている。)との記載が、下部左中央には同じく上下二段からなる「FUTAE」、「LIQUID」との記載が、下部右側には「♯目元サギメイク」との記載10が、それぞれ置かれている。加えて、下部のこれらの記載の間に存在する透明な窓部からは被告商品1 の本体を視認し得るところ、これには、下部左上側と同様の構成からなる「Eye Catching」、「Beauty」との表示が存在する(ただし、全ての被告商品1 において上記窓部から上記表示が看取し得ることを認めるに足りる証拠はない。)。他方、裏面には、表面と同様の構成からなる「Eye Catching」、「Beauty」の記15載と、一連一体に並べられた「FUTAE LIQUID」の記載のほか、「アイキャッチングビューティ ふたえリキッド(二重まぶた化粧品)」の記載等があるが、被告標章1の記載はない。 次に、証拠(甲6)によれば、被告商品2 の包装には、その表面の上部半分程度を占める大きさの黒色ハート形の図形が配置され、その図形内の最上段には下線付20きの「長時間キープ」の文字が、中段には被告標章2 が、いずれも包装のベース色である黄色で表示されている。また、その最下段には青紫色の帯状の図形上に黒色で「テープタイプ」の文字が記載されると共に、当該帯状の図形の左端に接着した黒色丸形の図形内の上部に水滴状のイラストが記載され、その中に黒色の「水」の文字が置かれると共に、当該水滴状のイラストの下に青紫色の「で貼る」の文字が25置かれている。さらに、同包装の下部左上側には、被告商品1 と同様の構成の「Eye 15 Catching」、「Beauty」との記載が、下部左中央には被告商品1 と同様の構成の「 置かれている。さらに、同包装の下部左上側には、被告商品1 と同様の構成の「Eye 15 Catching」、「Beauty」との記載が、下部左中央には被告商品1 と同様の構成の「FUTAE」、「MESH TAPE」との記載が、下部右側には「♯目元サギメイク」との記載が、それぞれ置かれている(なお、下部のこれらの記載の間に存在する透明な窓部から視認可能な被告商品2 の本体に、文字の記載は見受けられない。)。他方、裏面には、表面と同様の構成の「Eye Catching」、「Beauty」の記載と、一連一体に並べられた「FUTAE5MESH TAPE」の記載のほか、「アイキャッチングビューティ ふたえメッシュテープ(二重形成片面テープ)」の記載等があるが、被告標章2 の記載はない。 (2) 被告標章の使用態様等についてア 被告商品の需要者については、商品そのものの機能及びその販売チャネル(これが店頭及びオンライン通販であることは、当事者間に争いがない。)等に鑑みると、10若い世代の女性に限定されず、一般消費者と見るのが相当である。この点に関する被告の主張は採用できない。 イ 上記(1)イ認定に係る被告商品の包装の表面及び裏面の各記載等を総合的に考慮すると、一般消費者からみて、被告商品の名称は、「Eye Catching Beauty FUTAELIQUID」及び「アイキャッチングビューティ ふたえリキッド」(被告商品1)、「Eye15Catching Beauty FUTAE MESH TAPE」及び「アイキャッチングビューティ ふたえメッシュテープ」(被告商品2)と認識されることがうかがわれる。 他方、被告標章については、上記(1)認定を踏まえると、以下のとおり理解される。 すなわち、「ばれない」 キャッチングビューティ ふたえメッシュテープ」(被告商品2)と認識されることがうかがわれる。 他方、被告標章については、上記(1)認定を踏まえると、以下のとおり理解される。 すなわち、「ばれない」、「バレない」、「バレナイ」は、その表記いかんにかかわらず、秘密等が露顕しないという意味である。また、被告商品が属する二重瞼形成用化粧20品等や二重瞼形成のための美容施術の宣伝広告においては、化粧品や美容施術により一重瞼を二重瞼に整えたことが他人に容易には露顕しないという当該化粧品ないし美容施術の効能や役務の内容の説明又はそのような効能等をうたうキャッチフレーズと理解される表現として、「ばれない」等に「二重」を組み合わせたものが多数みられる。また、二重瞼形成用化粧品等以外の化粧品や美容整形施術等美容関係の25商品及び役務においても、「ばれない」等の語が、他人から当該化粧品や当該施術を 16 使用していることが露顕しないという説明ないしそのような効能等のキャッチフレーズとして少なからず用いられていることがうかがわれる。これは、美容関係の商品等の需要者の多くが、当該商品等を使用して人工的・意図的にその状態を形成していることが他人には容易に明らかにならず、当該商品等を使用した結果が自然の状態として見られることを欲することを踏まえ、当該商品等の提供者において、そ5の欲求にこたえる効果を訴求することを狙ったものと理解される。 「ばれない」等の語が美容関係の商品等においてこのように多く使用されている実情を踏まえると、二重瞼形成用化粧品等の需要者である一般消費者は、「バレナイ」に「二重」が組み合わされた被告標章につき、二重瞼を形成していることが他人に容易に露顕しない化粧品等であるという被告商品の効能等の説明ないしそのような10 需要者である一般消費者は、「バレナイ」に「二重」が組み合わされた被告標章につき、二重瞼を形成していることが他人に容易に露顕しない化粧品等であるという被告商品の効能等の説明ないしそのような10効能等のキャッチフレーズと認識・理解するのがむしろ通常といえる。被告商品の包装において、被告標章は、「長時間キープ」、「リキッドタイプ」(被告商品1)又は「テープタイプ」(被告商品2)という文字等の記載に挟まれるように配置されていること、被告標章のほかに被告商品の名称と認識し得る記載が存在することなどを考慮すると、なおさらである。このことは、被告標章をなす「二重」の「二」の文15字の下部が、その左端に二条の跳ねがあるかのように図案化されていることを考慮しても異ならない。 以上より、被告標章は、被告商品の需要者である一般消費者にとって、被告商品の効能等の説明ないしキャッチフレーズとして理解されるものであり、自他商品識別又は出所識別標識としての機能を有するものとは認められない。 20(3) 原告の主張について原告は、被告商品の包装における被告標章の表示態様等から、被告標章が自他商品識別機能等を有する旨主張する。 しかし、上記(2)イのとおり、被告標章のような表現は、美容関係の商品等において、その商品等の効能等の説明ないしキャッチフレーズとして一般的に多用されて25おり、必ずしも自他商品識別標識又は出所識別標識として機能するものとはいえな 17 い。また、需要者に対して商品等の内容等を積極的・効果的に訴求するために、当該商品の包装の目立つ位置ないしデザイン等で当該商品の内容等を示すことは通常行われることであるから、被告商品の商品名に比べて被告標章が目立つような表示態様等であるからといって、必ずしも被告標章に自他商品識 の包装の目立つ位置ないしデザイン等で当該商品の内容等を示すことは通常行われることであるから、被告商品の商品名に比べて被告標章が目立つような表示態様等であるからといって、必ずしも被告標章に自他商品識別機能等が備わるわけではない。 5その他原告が縷々指摘する事情を考慮しても、この点に関する原告の主張は採用できない。 (4) 小括以上のとおり、被告標章は、需要者である一般消費者が「何人かの業務に係る商品…であることを認識することができる態様により使用」(商標法26 条1 項6 号)10された標章とはいえない。したがって、本件商標権の効力は、被告標章には及ばない。 2 まとめ以上によれば、その余の点について検討するまでもなく、原告は、被告に対し、本件商標権に基づく差止め、廃棄及び信用回復措置請求権並びに商標権侵害の不法15行為に基づく損害賠償請求権のいずれも有しない。 第4 結論よって、原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして、主文のとおり判決する。 20東京地方裁判所民事第47 部 裁判官25小 口 五 大 18 裁判官鈴 木 美 智 子5 裁判長裁判官杉浦正樹は、差支えのため署名押印することができない。 10裁判官小 口 五 大
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