平成13(行ヒ)106 公文書非開示処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年6月10日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄差戻 福岡高等裁判所 平成11(行コ)19
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判決文本文6,131 文字)

主文 原判決を破棄する。 本件を福岡高等裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人金子龍夫,同野田部哲也,同古賀正浩,同泥谷和男,同山崎新,同松尾隆幸の上告受理申立て理由(第3の2を除く。)について 1 本件は,福岡県(以下「県」という。)の住民である被上告人が,平成8年10月14日,福岡県情報公開条例(昭和61年福岡県条例第1号。平成9年福岡県条例第62号による改正前のもの。以下「本件条例」という。)に基づき,上告人に対し,① 県警察本部総務課の平成7年度の懇談会費支出に係る支出証拠書類一切(以下「本件文書1」という。),② 県警察本部総務課の平成7年度の旅費支出に係る支出証拠書類一切(以下「本件文書2」という。),③ 県議会議員及び県議会事務局に対する平成7年度の懇談会費支出に係る支出証拠書類一切(以下「本件文書3」という。),④ 県議会議員及び県議会事務局に対する平成7年度の旅費支出に係る支出証拠書類一切(以下「本件文書4」という。)の開示を請求したところ,上告人から,知事部局において管理していないという理由で同月28日付けの公文書不存在決定(以下「本件各処分」という。)を受けたので,その取消しを求める事件である。 2 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。 (1) 本件条例2条1項は,「この条例において『公文書』とは,実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書,図画,写真,フィルム,録音テープ及びビデオテープであって,決裁又は回覧等の手続が終了し,実施機関において管理しているものをいう。」と規定している。そして,同条2項は,上告人を実施機関としているが,県議会及び県警察本部長を実施機関としていない。 - 1 -(2) 福岡県財務規則(昭和39年福岡県 て管理しているものをいう。」と規定している。そして,同条2項は,上告人を実施機関としているが,県議会及び県警察本部長を実施機関としていない。 - 1 -(2) 福岡県財務規則(昭和39年福岡県規則第23号。平成9年福岡県規則第82号による改正前のもの。以下「本件規則」という。)は,本件規則にいう本庁には,県警察本部及び県議会事務局が含まれ(2条3号),本件規則にいう課には,県警察本部会計課及び県議会事務局総務課が含まれる(同条4号)ものとしている。そして,本件規則にいう財務担当課とは,本庁において財務会計事務を所掌する課をいい(本件規則2条5号),県警察本部においては会計課が,県議会事務局においては総務課が財務担当課に当たる(福岡県財務規則運用要綱2条関係3項)ものとされている。 (3) 本件規則は,本庁に出納員を置き,本件規則の別表一の上欄に掲げる職にある者をもって充てる(6条1項)ものとし,当該職員が事務吏員でない場合は,別に辞令を用いず,当該職に補されたときをもって事務吏員に併任された(同項ただし書)ものとし,出納員は,別表一の中欄に掲げる出納長の事務を補助し,当該課に属する同表の下欄に掲げる事務を行う(同条2項)ものとしている。また,本件規則は,知事は必要があるときは,本庁の課及び廨に経理員を置くものとし,この場合において,6条1項ただし書の規定を準用する(11条1項)ものとしている。 (4) 本件規則131条1項は,「出納長及び出納員は,収入及び支出に係る証拠書類を,会計ごとに区分し,予算科目により分類して月ごとに編集しなければならない。」とし,同条2項は,「前項の証拠書類は,別に定める文書管理の方法により編集し,保存するものとする。」と規定している。そして,同項の「別に定める文書管理の方法」とは,福岡県文書管理規程 ばならない。」とし,同条2項は,「前項の証拠書類は,別に定める文書管理の方法により編集し,保存するものとする。」と規定している。そして,同項の「別に定める文書管理の方法」とは,福岡県文書管理規程(昭和61年福岡県訓令第1号),福岡県教育庁文書管理規程(昭和61年教育委員会教育長訓令第4号)等を指す(福岡県財務規則運用要綱131条関係4項)ものとされている。 (5) 県では,支出証拠書類は,財務担当課から出納長に送付され,支出決定が- 2 -された後,出納事務局(出納課)において保管されていたが,出納事務局長は,平成8年10月1日付けで,本庁各部(室)長,教育長,警察本部長,各委員会(委員)事務局長及び県議会事務局長に対し,支出事務完了後に各部局から支出証拠書類保管の要請があれば移管する旨の通知を行った。その後,上記通知に従って,本件文書1及び2を含む県警察本部の支出証拠書類は県警察本部会計課に,本件文書3及び4を含む県議会事務局の支出証拠書類は県議会事務局総務課にそれぞれ移管された(以下「本件移管」という。)。 3 原審は,上記事実関係等の下において,次のとおり判断して,本件各処分を取り消した。 (1) 本件各文書は,県警察本部及び県議会事務局の財務担当課から出納長に送付され,本件各処分の時点までに決裁又は回覧等の手続が終了していたものであるから,上告人の職員である出納長が職務上取得した文書であって,決裁又は回覧等の手続が終了したものに該当する。 (2) 本件規則131条2項は,文書管理の主体を明示的に定めていないが,同条1項の「編集」の主体は,出納長及び出納員であるから,同条2項にいう「文書管理」の主体も出納長及び出納員であると解するのが自然である。本件規則93条2項は,出納長が支払負担行為の決裁が適正にされていること等を確 」の主体は,出納長及び出納員であるから,同条2項にいう「文書管理」の主体も出納長及び出納員であると解するのが自然である。本件規則93条2項は,出納長が支払負担行為の決裁が適正にされていること等を確認することができないときは,その理由を明らかにして送付された書類を支出命令者に返送しなければならないと定めているが,本件規則中には,支出がされた後の支出証拠書類について,これを返還ないし送付すべき旨を定めた規定は存在しない。そうすると,本件規則131条は,出納長及び出納員が収入及び支出に係る証拠書類を管理すべき旨を定める規定であると解するのが相当であるから,本件各文書は,上告人の職員である出納長が管理している文書であると認められる。 上告人は,本件文書1及び2は県警察本部が福岡県警察文書規程(昭和42年福- 3 -岡県警察本部訓令第21号)に基づいて,本件文書3及び4は県議会が福岡県議会事務局規程(昭和35年福岡県議会公示)に基づいてそれぞれ管理していると主張する。しかし,本件規則131条が支出証拠書類の管理主体を定める規定である以上,上記各規程によって本件規則に定められた管理主体を変えることはできないから,上記各規程は,前記解釈を妨げるものではない。 (3) 仮に,本件各処分がされる前に本件移管が行われていたとしても,本件規則131条が出納長及び出納員による支出証拠書類の管理を定めている以上,実際に支出証拠書類を管理しているのがだれであっても,知事部局の職員に併任されている出納員又は経理員が支出証拠書類を管理していると解すべきである。したがって,本件移管後も,実施機関である上告人において本件各文書を管理しているものと認められる。 4 しかしながら,原審の上記3(2)及び(3)の判断は是認することができない。 その理由は,次のとおりである ,本件移管後も,実施機関である上告人において本件各文書を管理しているものと認められる。 4 しかしながら,原審の上記3(2)及び(3)の判断は是認することができない。 その理由は,次のとおりである。 (1) 本件条例2条1項にいう「管理」は,同条2項に掲げられた各実施機関がその主体であると構成されていることからみても,当該公文書を現実に支配,管理していることを意味するものと解すべきである。そして,実施機関が請求に係る公文書を現実に支配,管理しているかどうかは,当該地方公共団体における保存の根拠規定,保存に至る手続,保存の方法等の実態を踏まえて判断すべきである(最高裁平成11年(行ヒ)第221号同13年12月14日第二小法廷判決・民集55巻7号1567頁参照)。 (2) 本件規則131条2項は,保存の主体について規定しておらず,別に定める文書管理の方法によるものとしているのであるから,同条1項の「編集」の主体が出納長及び出納員であるからといって,直ちに同条2項が出納長及び出納員において文書を管理すべき旨を定めた規定であると断ずることはできない。そして,原- 4 -審の確定した事実によれば,福岡県財務規則運用要綱131条関係4項は,本件規則131条2項の「別に定める文書管理の方法」とは,福岡県文書管理規程,福岡県教育庁文書管理規程等を指すものとしているというのであり,このことにかんがみると,同項は,収入及び支出に係る証拠書類の文書管理の方法を福岡県文書管理規程,福岡県警察文書規程,福岡県議会事務局規程等の定めるところにゆだねたものと解され,その「文書管理の方法」には文書の保存の主体の点も含むものと解するのが相当である。なお,本件規則93条2項は,出納長が支出をするために必要な確認をすることができない場合の手続を定めたものにすぎないから の「文書管理の方法」には文書の保存の主体の点も含むものと解するのが相当である。なお,本件規則93条2項は,出納長が支出をするために必要な確認をすることができない場合の手続を定めたものにすぎないから,本件規則中に支出後の支出証拠書類の返還ないし送付を定めた規定が存在しないからといって,支出後も出納長が支出証拠書類を管理することが予定されていると解すべきことにはならない。 ところで,原審の確定した事実によれば,県警察における文書の取扱い等を定めた福岡県警察文書規程は,71条において,「文書は,常に未完結文書及び完結文書に区分して,別記第5の要領で整理し,事務に支障がないようにしておかなければならない。」と規定し,別記第5の文書分類表において,大分類「E財務」・中分類「E3県費出納」・小分類「E32支出」・細分類「E32-1一般支出」の例示書類として「支出証拠書類」を挙げているというのであるから,県警察本部の支出証拠書類については,県警察本部において保存することが予定されているものと解するのが相当である。また,県議会における文書の取扱いについては,福岡県議会事務局規程の規定を検討する必要があるが,原審は,本件には平成9年議会公示第1号による改正前の同規程が適用されるにもかかわらず,同改正後の同規程の規定しか検討していない。そして,本件各処分当時の福岡県文書管理規程(昭和61年福岡県訓令第1号。平成10年福岡県訓令第18号による改正前のもの)が,知事部局の文書管理について,56条1項において,「所属長(本庁の課長等)は- 5 -,文書を分類整理するため,文書分類表(様式第13号)を定めなければならない。」と,同条3項において,「前2項に定めるもののほか,文書分類表の作成及びその取扱いについて必要な事項は,別に定める。」と,60条1号におい るため,文書分類表(様式第13号)を定めなければならない。」と,同条3項において,「前2項に定めるもののほか,文書分類表の作成及びその取扱いについて必要な事項は,別に定める。」と,60条1号において,「前会計年度及び現会計年度(暦年ごとに区分するものにあっては,前年及び現年)の完結文書」については,「主務課において保管するものとする。」と規定しており,これを受けて福岡県総務部長が平成6年4月1日付けで発した「文書分類表の作成及びその取扱い並びに共通文書の保存期間について(通達)」が,別表第3(共通文書分類区分表)において,出納事務局主管に属する文書で出納事務局以外の所属(本庁の課及び出先機関)で保存する文書として,旅費請求票,旅費支給明細票,旅費請求内訳票,支出負担行為決議書,支出負担行為決議書兼支出命令書,支出命令書,支出決定確認票,精算書その他の支出証拠書類等を挙げていることは,記録上明らかである。 【要旨】これらの規定等に照らせば,本件規則131条が,出納長及び出納員が支出証拠書類を管理すべき旨を定めていると解することはできず,本件各文書が上告人の管理するものであるかどうかは,福岡県文書管理規程,福岡県警察文書規程,福岡県議会事務局規程等の定める文書管理に関する規定,本件各処分当時における本件各文書の保存の実態等を検討した上で判断すべきものである。 ところが,原審は,本件各処分当時における福岡県文書管理規程や福岡県議会事務局規程等の規定の内容,本件移管が行われた時期等について審理判断しないまま,前記の結論を導いている。そして,仮に本件各処分前に本件移管が行われていたというのであれば,本件文書1及び2は,県警察本部が福岡県警察文書規程の規定に基づいて現実に支配,管理している文書であると解され,本件文書3及び4についても,県議会 各処分前に本件移管が行われていたというのであれば,本件文書1及び2は,県警察本部が福岡県警察文書規程の規定に基づいて現実に支配,管理している文書であると解され,本件文書3及び4についても,県議会が同様に現実に支配,管理していると解される余地があるし,仮に本件各処分時にはいまだ本件移管は行われていなかったとしても,支出証拠書類を- 6 -保存すべきものとされている県警察本部等のために出納事務局が本件各文書を所持していたにすぎないとみる余地がある(なお,原審は,県警察本部会計課ないし県議会事務局総務課に置かれた出納員ないし経理員が知事部局の職員に併任されていることを理由に,本件移管後も上告人が本件各文書を管理していると解すべきであるとしているが,本件規則6条によれば,出納員は,出納長の事務のうち物品の出納保管等のごく限られた事務について出納長を補助するものとされているにすぎず,出納員ないし経理員の支出証拠書類の保存,管理権限を定めた規定も存在しないから,原審の上記判断も,是認することができない。)。【要旨】したがって,原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,この点をいう論旨は理由がある。 5 以上によれば,原判決は破棄を免れず,本件については,上記の点につき更に審理を尽くした上,本件各文書が本件条例2条1項にいう実施機関が管理している文書に当たるか否かを判断すべきであるから,本件を原審に差し戻すこととする。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官金谷利廣裁判官濱田邦夫裁判官上田豊三裁判官藤田宙靖)- 7 - 豊三裁判官藤田宙靖)

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