2,845 文字
主文 本件控訴を棄却する。理由 本件控訴の趣意は弁護人瞿曇・・作成の控訴趣意書記載のとおりであるからこれを引用する。控訴趣意第一点(事実誤認の主張)について。所論は、被告人は確定的殺意は勿論未必的にも殺意はなかつたのに殺意ありと認定したのは事実誤認であるというのである。記録を精査するに、原判示事実は、未必的殺意の点を含めて原判決挙示の各証拠を総合して十分認めることができる。すなわち右各証拠によると、被告人は予てから原判示のような理由で父Aを快よく思つていなかつたこと、本件犯行に使用した刺身庖丁は自宅階下炊事場にあつたもので、被告人が父に頭部を殴打されるや憤慨の余り「親父殺したろか」といいながら、被告人自身もそのつもりで二階から下りて持ち出して来たことは、警察官に対して自ら認めている(被告人の司法警察員に対する自首調書及び司法警察職員に対する各供述調書)ところであるし、又右庖丁は刃渡り一四、五センチメートルの極めて鋭利なもので、用法によつては容易に人を殺害し得るものであることは一見して明らかであり、而も被告人はこれを持つて二階に行こうとした際、母Bに足を掴まれ制止されたのを振り切つて再び二階に戻るなり、右庖丁で、敷居に腰を下していた父の胸部を力強く二回突き刺し、その結果、右前胸部横隔膜を刺通し、肝右葉まで達する深さ八センチメートルの刺創等を負わせたものであることが認められる。そうして右事実に徴すると被告人は確定的殺意はともかく自分の行為によつて父が死亡するも已むを得ないことの認識すなわち未必の殺意のあつたことを認めるに十分である。被告人の検察官に対する供述調書及び原審、当審各公判廷の各供述中右認定に反する部分は信用し難い。そうすると被告人に未必の殺意を認めた原判決の事実認定には何ら 必の殺意のあつたことを認めるに十分である。被告人の検察官に対する供述調書及び原審、当審各公判廷の各供述中右認定に反する部分は信用し難い。 く自分の行為によつて父が死亡するも已むを得ないことの認識すなわち未必の殺意のあつたことを認めるに十分である。被告人の検察官に対する供述調書及び原審、当審各公判廷の各供述中右認定に反する部分は信用し難い。そうすると被告人に未必の殺意を認めた原判決の事実認定には何ら 必の殺意のあつたことを認めるに十分である。被告人の検察官に対する供述調書及び原審、当審各公判廷の各供述中右認定に反する部分は信用し難い。そうすると被告人に未必の殺意を認めた原判決の事実認定には何ら誤りのかどはない。論旨は理由がない。控訴趣意第二点(法の解釈適用の誤りの主張)について。所論は、刑法二〇〇条は日本国民に対してのみ適用があり、外国人には適用がないのに、原判決が、被告人も被害者も共に韓国人である本件につき、尊属殺人未遂を以て問擬しているのは法の解釈適用を誤つたものであるというのである。<要旨>わが刑法は、その一条において、いわゆる属地主義を採用し、「本法ハ何人ヲ問ハス日本国内ニ於テ罪ヲ犯</要旨>シタル者ニ之ヲ適用ス」とし、いやしくも日本国内で罪を犯した者は国籍の如何を問わず刑法の適用を受ける旨を規定しているのである。従て刑法二〇〇条も外国人にも又適用のあることは当然としなくてはならない。けだし同条について、外国人を除外する旨の規定もなく、また日本人の直系尊属についてのみ適用すべきであるという特別の理由も見出すことができないからである。ところで刑法二〇〇条は「自己……ノ直系尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス」と規定しているが、ここにいう直系尊属とは子又は孫等よりみて父母、祖父母等の系列にあたる者をいうものと解すべきところ、その関係は事実上の関係ではなく法律上の関係をいうものであることは明白である。従てその法律関係は日本人については民法等日本の法律により、その定めるところに従うべきことは勿論であるが、外国人については、民法等日本の法律の適用があるわけではないから、結局法例二〇条、二二条等によつてこれを定めるべきものと解せられる。そして本件に関する親子間の法律関係は、法例二〇条によれば、父の本国法によるべきも は、民法等日本の法律の適用があるわけではないから、結局法例二〇条、二二条等によつてこれを定めるべきものと解せられる。そして本件に関する親子間の法律関係は、法例二〇条によれば、父の本国法によるべきものと規定するから、被告人と父A間に法律上の親子関係従て尊属関係が認められるかどうかはAの本国法たる韓国法によつて決すべきものと解せられるのである。 の法律関係は、法例二〇条によれば、父の本国法によるべきも は、民法等日本の法律の適用があるわけではないから、結局法例二〇条、二二条等によつてこれを定めるべきものと解せられる。そして本件に関する親子間の法律関係は、法例二〇条によれば、父の本国法によるべきものと規定するから、被告人と父A間に法律上の親子関係従て尊属関係が認められるかどうかはAの本国法たる韓国法によつて決すべきものと解せられるのである。そこで韓国法をみるに、韓国民法(西紀一九五八年法律四七一号)八四四条、八五五条等によれば法律上の実親子関係について定められており、七六八条以下に尊属に関する規定があつて親が子にとつて直系尊属とせられることが明らかであるし、(同民法は同附則二条によつて遡及効を有する旨定められるから、当然被告人及びAについても適用がある。)更に韓国戸籍法及び記録中の被告人の戸籍謄本を対照してみると、本件被害者であるAと被告人間には韓国法上親子関係があり、被告人によつてAが直系尊属にあたることが明らかである。しかもその関係はわが民法に照しても又同様であることが明白であるから、Aは被告人にとつてわが刑法二〇〇条に定める「自己ノ直系尊属」に該当するものといわなくてはならない。然らば原判決が被告人に対し尊属殺人未遂罪として刑法二〇〇条、二〇三条を適用処断したことは正当であり所論の如き法律の解釈適用を誤つたものということはできない。論旨は理由がない。控訴趣意第三点(量刑不当の主張)について。所論は、本件については尊属殺の法条の適用がないことを前提とし、原判決の量刑不当を主張するものであるが、右前提とする所論の採用し難いことはさきに判断したとおりであり、又原判決は本件につき未遂減軽、酌量減軽をした上、その処断刑の最下限を量刑したものであるから、その不当を主張する所論は当らない。本論旨も理由がない。よつて刑事訴訟法三 きに判断したとおりであり、又原判決は本件につき未遂減軽、酌量減軽をした上、その処断刑の最下限を量刑したものであるから、その不当を主張する所論は当らない。本論旨も理由がない。よつて刑事訴訟法三九六条を適用し、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官山田近之助裁判官藤原啓一郎裁判官瓦谷末雄)
▼ クリックして全文を表示