平成26(ワ)21436 特許権侵害差止請求事件

裁判年月日・裁判所
平成28年7月20日 東京地方裁判所
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判決文本文39,907 文字)

平成28年7月20日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成26年(ワ)第21436号特許権侵害差止請求事件口頭弁論終結日平成28年6月8日判決原告株式会社中部メディカル原告合資会社ヤスイペイント工芸所上記2名訴訟代理人弁護士青山學同井口浩治同平林拓也同福井秀剛同出口敦也同滝恵美同細川俊輔同内海智直同補佐人弁理士森泰比古被告株式会社東京オリジナル・カラー・シール・センター同訴訟代理人弁護士岩永利彦同補佐人弁理士安瀬正敏 主文 1 被告は,別紙物件目録記載の製品を製造し,譲渡し,又は譲渡の申出をしてはならない。 2 被告は,前項の製品を廃棄せよ。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 主文同旨第2 事案の概要 1 本件は,発明の名称を「治療用マーカー」とする特許権(第3609289号。以下「本件特許権」又は「本件特許」という。)を有する原告らが,被告の製造・販売等する別紙物件目録記載の各製 案の概要 1 本件は,発明の名称を「治療用マーカー」とする特許権(第3609289号。以下「本件特許権」又は「本件特許」という。)を有する原告らが,被告の製造・販売等する別紙物件目録記載の各製品が,上記特許の特許請求の範囲請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)の技術的範囲に属すると主張して,被告に対し,特許法100条1項及び2項に基づき,上記各製品の製造,譲渡等の差止め及び廃棄を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがない事実又は文中に特に掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)(1) 当事者ア原告株式会社中部メディカル(以下「原告中部メディカル」という。)は,医療・福祉機器並びに用品の製造,販売,リース業等を目的とする株式会社である。 イ原告合資会社ヤスイペイント工芸所(以下「原告ヤスイペイント」という。)は,塗装事業等を目的とする合資会社である。 原告ヤスイペイントは,本件特許権を実施した製品を製造し,原告中部メディカルがこれを販売している。 ウ被告は,カラー・シール及びこれに類似する印刷物の販売等を目的とする株式会社である。 (2) 原告らの有する特許権原告らは,以下の本件特許権(請求項の数3。本件特許に係る明細書及び図面〔甲5〕を「本件明細書等」という。なお,本件特許の特許公報を末尾に添付する。)を有している。 特許番号第3609289号発明の名称治療用マーカー 出願日平成11年6月2日公開日平成12年12月12日登録日平成16年10月22日(3) 本件特許に係る特許請求の範囲本件特許権の特許請求の範囲請求項1の記載は,別紙「特許公報」のとおりである。同請求項に係る本件発明を構成要件に分説すると,次 日平成16年10月22日(3) 本件特許に係る特許請求の範囲本件特許権の特許請求の範囲請求項1の記載は,別紙「特許公報」のとおりである。同請求項に係る本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの記号に従って「構成要件A」などという。)。 A 表面に治療用の目印となるマークが印刷されている基台紙と,B 該基台紙の裏面に剥離可能に積層されている透明な保護シート層と,C 該保護シート層の裏面に積層され,前記基台紙に印刷されたマークと同一のマークを形成するインク層と,D 該インク層の裏面に積層されている接着層と,E 該接着層の裏面に剥離可能に積層されている保護紙とによって構成され,F 前記保護紙を剥がして,前記基台紙に水分を含ませると共に,前記接着層を皮膚に押し当てることにより,前記接着層,インク層及び保護シート層を皮膚側に転写して,各種の治療の際の目印となり,前記保護シート層,インク層及び接着層が皮膚に対して柔軟性に富み,かつ摩擦に強いものである治療用マーカー(4) 被告の製品被告は,別紙被告製品目録記載の各製品のうち同目録記載1ないし4及び9ないし11の各製品(以下併せて「被告旧製品」という。)を製造し,販売し又は販売の申出を行っていたことがあり,平成26年2月頃以降は,同目録記載5ないし8及び12ないし17の各製品(以下併せて「被告新製品」という。)を製造し,販売し又は販売の申出をも行っている(以下,同目録記載の各製品をその冒頭の数字に従って,それぞれ「被告製品1」ないし「被 告製品17」といい,これらを総称して「被告各製品」という。)。 なお,被告各製品は,転写されるマークの形状及び台紙に印刷されたマークの形状ごとに,被告製品1ないし4の製品群(以 告製品17」といい,これらを総称して「被告各製品」という。)。 なお,被告各製品は,転写されるマークの形状及び台紙に印刷されたマークの形状ごとに,被告製品1ないし4の製品群(以下「被告旧製品(直線)」という。),被告製品5ないし8の製品群(以下「被告新製品(直線)」という。),被告製品9ないし11の製品群(以下「被告旧製品(十字)」という。),被告製品12ないし14の製品群(以下「被告新製品(十字)」という。),被告製品15ないし17の製品群(以下「被告新製品(L字)」という。)に分類される。上記それぞれの群を構成する製品はそれぞれ色が異なるのみの同種(転写されるマークの形状がそれぞれ同一で,台紙に印刷されたマークの形状がそれぞれ同一)の製品である。 (5) 本件特許出願前の先行文献の存在本件特許の出願日(平成11年6月2日)の前に頒布された刊行物として,以下の文献が存在する。 ア平成8年8月13日に公開された公開特許公報(特開平8-207499号。乙1。以下,同公報記載の発明を「乙1発明」といい,同公報を「乙1公報」という。)。 イ平成2年1月23日に公開された実願昭63-84323号(公開実用平2-10096号)の願書に添付した明細書等の文献(乙2。以下,同文献を「乙2文献」という。)。 ウ平成11年2月26日に登録された特許第2891256号の特許公報(乙3。以下,同公報を「乙3公報」という。)。 エ平成6年(1994年)4月26日に登録された米国特許第5306271号の米国特許公報(乙4。以下,同公報を「乙4公報」という。)。 3 争点(1) 被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するかア被告各製品の構成 イ構成要件A(「治療用」「治療用の目印となるマーク」)の ,同公報を「乙4公報」という。)。 3 争点(1) 被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するかア被告各製品の構成 イ構成要件A(「治療用」「治療用の目印となるマーク」)の充足性ウ構成要件B(「裏面に」「透明な保護シート層」)の充足性エ構成要件C(「同一のマーク」)の充足性オ構成要件D(「インク層の裏面に積層されている接着層」)の充足性カ構成要件Eの充足性キ構成要件Fの充足性(2) 本件特許権が特許無効審判により無効にされるべきものか否かア無効理由1(サポート要件違反・実施可能要件違反)の成否イ無効理由2(明確性要件違反)の成否ウ無効理由3(乙1発明に基づく進歩性欠如)の成否(3) 差止めの必要性第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)(被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するか)について〔原告らの主張〕(1) 被告各製品の構成ア被告各製品は,いずれも以下のとおりの構成を有している(甲6,7)。 a 表面に貼り付ける位置を確認できる合わせ用ラインを入れた台紙と,b 該台紙の裏面に剥離可能に積層されている透明なシート層と,c 該透明なシート層の裏面に積層され,前記台紙に印刷されたマークと同一のマークを形成するインク層と,d 該インク層の裏面に積層されている接着層と,e 該接着層の裏面に剥離可能に積層されている保護シートとによって構成され,f 前記保護シートを剥がして,台紙に水分を含ませて皮膚に押し当てることにより,前記接着層,インク層,及び透明なシート層を皮膚側に貼り付けて転写して用いる放射線治療の際のポイントマーカーであり, 前記透明なシート層,インク層,及び接着層が皮膚になじんで伸縮し,ひび割れしない。 ,及び透明なシート層を皮膚側に貼り付けて転写して用いる放射線治療の際のポイントマーカーであり, 前記透明なシート層,インク層,及び接着層が皮膚になじんで伸縮し,ひび割れしない。 イ被告の主張に対する反論被告は,本件発明が5層構造であるのに対して被告各製品は7層構造であると主張する。 しかし,被告の主張する構成b’(デンプンのり層)は,構成a’(台紙)の裏面に対して構成c’(高輝度反射層)を「剥離可能に積層」するためのものであるから,特別な1層というものではない。 構成e’(保護層)についても,「該インク層の裏面に積層されている接着層」を形成するためのものにすぎないか,あるいは,「構成d’(顔料層)と重なる様に構成c’(高輝度反射層)の裏面に印刷されたもの」というべきであり,やはり特別な1層というものではない。 (2) 構成要件A(「治療用」「治療用の目印となるマーク」)の充足性についてア被告各製品には,台紙があり,台紙の表面には貼り付ける位置を確認できるラインが入れてある(構成a)。これは,「表面に治療用の目印となるマークが印刷されている基台紙」との構成要件Aに該当する。 イ被告は,被告各製品の台紙のラインは「放射線治療用」であり,「治療用」ではないと主張するが,「治療用」とは「放射線治療用」を含む概念であるから,被告の主張は失当である。 ウ構成要件Aにおける「治療用の目印となるマーク」とは,請求項の記載のとおり,「基台紙の表面に印刷される印刷図柄」を指している。 そして,被告旧製品には「台紙」の表面に治療の目印となる「直線」「十字」が印刷されており,被告新製品には,「台紙」の表面に治療の目印となる「直線」「十字」「L字」と「それ以外の余分な線等」が印刷されているから,被告各製品は,表面 表面に治療の目印となる「直線」「十字」が印刷されており,被告新製品には,「台紙」の表面に治療の目印となる「直線」「十字」「L字」と「それ以外の余分な線等」が印刷されているから,被告各製品は,表面に「治療用の目印となるマーク」が印刷さ れた基台紙を有している。 (3) 構成要件B(「裏面に」「透明な保護シート層」)の充足性についてア被告各製品には,台紙の裏面に剥離可能に積層されている透明なシート層がある(構成b)。この透明なシート層は,マークを皮膚に転写した際に,マークを覆うようにマークと共に皮膚に転写される。被告各製品がこのような透明なシート層を有する目的は,皮膚に転写されたマークを保護するためである。 したがって,被告各製品の構成bは,「基台紙の裏面に剥離可能に積層されている透明な保護シート層」との構成要件Bに該当する。 イ被告は,「裏面に」のクレーム解釈について「裏面に直接」を意味すると主張し,被告各製品においては台紙の「裏面に直接」積層されているのはデンプンのり層であって,透明な保護シート層ではないから,構成要件Bを充足しないと主張する。 しかし,台紙とインク層の間に何らかの層が介在することはあり得ることであり,これをもって「裏面に」が「裏面に直接」の意味であると解釈することはできない。「裏面に」とは,他の構成が積層される方向を示す言葉にすぎない。 ウ被告各製品において「台紙」と「保護紙」との間に存在するのは,「透明な保護シート層」又は「高輝度反射層」,「顔料層」,「接着層」であり(甲14),被告旧製品と被告新製品の層構造における相違点は,被告旧製品では「透明な保護シート層」であるところが,被告新製品では「高輝度反射層」であるという点である。 被告は,被告新製品の「高輝度反射層」は,透 製品と被告新製品の層構造における相違点は,被告旧製品では「透明な保護シート層」であるところが,被告新製品では「高輝度反射層」であるという点である。 被告は,被告新製品の「高輝度反射層」は,透明ではないし,保護層でもシートでもないと主張するが,証拠(甲7・写真13~16,甲8・写真17,甲9)にあるとおり,高輝度反射層は,顔料層の直線の幅よりも広幅で顔料層を完全に被覆し,かつ,顔料層の直線の視認を妨げないもの となっているから,「顔料層を保護するシート状のものであって透明性を有する層」である。 この点に関して被告は,高輝度反射層は,雲母の細かく薄い粒を敷き詰めた砂利道と同様のものである旨主張するが,雲母は,はがれ易い鉱物であって,雲母のみで高輝度反射層を構成することはできない。 一般に,印刷インキの成分には,色のもととなる「顔料」(インキ全体の20~30%くらい),流動性と乾燥性を与える「ビヒクル」(60~75%くらい),インキの性質などを調整する「助剤」の三つが含まれ,「ビヒクル」の中身は,合成樹脂(フェノール樹脂など),乾燥性のある植物油(アマニ油など),石油系溶剤などであるが,樹脂は,インキに流動性や粘りを与え,乾燥後の印刷面に光沢や耐摩擦性などを与えるものとされており,パール顔料として利用されている(甲10ないし12)。このように,雲母は,「顔料」として合成樹脂等に混ぜたインキとして用いることで初めて層状に積層定着されることが可能となるのである。被告が顔料層がむき出しになっている部分であると主張する部分は,雲母を混ぜた合成樹脂のうちの合成樹脂の部分を介して顔料層が視認されている個所である。 したがって,高輝度反射層は,雲母の細かく薄い粒を含む透明樹脂を主体とする耐摩擦性を有するシート状の層 は,雲母を混ぜた合成樹脂のうちの合成樹脂の部分を介して顔料層が視認されている個所である。 したがって,高輝度反射層は,雲母の細かく薄い粒を含む透明樹脂を主体とする耐摩擦性を有するシート状の層であるから,まさに「透明な保護シート層」に当たる。 エ以上のとおり,被告各製品は,いずれも構成要件Bを備えている。 (4) 構成要件C(「同一のマーク」)の充足性についてア被告各製品には,台紙に印刷されたマークと同一のマークを形成するマーカーとして,インクが透明なシート層の裏面に積層されている(構成c)。 これは,「保護シート層の裏面に積層され,前記基台紙に印刷されたマークと同一のマークを形成するインク層」との構成要件Cに該当する。 イ被告旧製品については,台紙表面にマーク(被告旧製品(直線)は「直線」,被告旧製品(十字)は「十字」)が印刷されており,顔料層によって台紙のマークと同一のマークである「直線」又は「十字」が形成されるから,構成要件Cを充足することは明らかである。 ウ被告新製品については,①被告新製品(直線)では,台紙表面に「直線」及び「これに対して斜めに交差する線など」が印刷されており,顔料層によって台紙と同じ「直線」が形成されており,②被告新製品(十字)では,台紙表面に「十字」及び「これに対して斜めに交差する線など」が印刷されており,顔料層によって「十字」及び「その中心を指し示す矢印」が形成されたものであり,③被告新製品(L字)では,台紙表面に「L字」及び「これに対して斜めに交差する線など」が印刷されており,顔料層によって「L字」及び「その角部を指し示す矢印」が形成されたものである。 以下それぞれについて詳細に述べる。 (ア) 治療の目印につき済生会滋賀県病院・放射線治療室作成に係る「放射 り,顔料層によって「L字」及び「その角部を指し示す矢印」が形成されたものである。 以下それぞれについて詳細に述べる。 (ア) 治療の目印につき済生会滋賀県病院・放射線治療室作成に係る「放射線治療のしおり」と題する書面(甲15。以下「甲15文献」という。)によれば,放射線治療に当たっては,治療範囲の中心を示す「十字」と,方向を示す「直線」とによって放射線治療の目印を患者の皮膚に付すことが説明されている。放射線治療においては,他の臓器に対する影響を与えない様に,中心に対して所定の範囲を治療範囲とする。したがって,「十字」のマークは,その中心の交差部分が目印となるのであって,十字の端部が目印となる訳ではない。 (イ) 被告新製品(直線)につき台紙表面に印刷された直線以外のものは,「5mmの目盛り」,「マーカーの色名」,「45度のガイドライン」などであって,台紙には,治療の目印である「直線」と「それ以外の余分な線等」が印刷されてい る。 顔料層によって形成される「直線」は,放射線治療に当たって方向を示す目印となるものである。 よって,台紙に「直線」が印刷され,顔料層によって台紙と同じ「直線」が形成された被告新製品(直線)は,構成要件Cを充足している。 (ウ) 被告新製品(十字)につき台紙表面に印刷された十字以外のものは「5,10,20mmの目盛り」,「マーカーの色名」,「45度のガイドライン」などであって,台紙には,治療の目印である「十字」と「それ以外の余分な線等」が印刷されている。 顔料層によって形成される「十字の中心を指し示す矢印」は,「目標を定めやすい矢印」であって,あくまでも「十字」,さらにいうならば「十字の交差部」がまさに,放射線治療に当たって治療範囲の中心を示す「治療の目 よって形成される「十字の中心を指し示す矢印」は,「目標を定めやすい矢印」であって,あくまでも「十字」,さらにいうならば「十字の交差部」がまさに,放射線治療に当たって治療範囲の中心を示す「治療の目印」なのである。 よって,台紙に「十字の交差部」が印刷され,顔料層によって台紙と同じ「十字の交差部」が形成された被告新製品(十字)は,構成要件Cを充足している。 (エ) 被告新製品(L字)につき台紙表面に印刷されたL字以外のものは「5mmの目盛り」,「マーカーの色名」,「放射状のガイドライン」などであって,台紙には,治療の目印である「L字」と「それ以外の余分な線等」が印刷されている。 顔料層によって形成される「L字の角部を指し示す矢印」は,「目標を定めやすい矢印」であって,あくまでも「L字」がまさに「治療の目印」なのである。 よって,台紙に「L字」が印刷され,顔料層によって台紙と同じ「L字」が形成された被告新製品(L字)は,構成要件Cを充足している。 (5) 構成要件D(「インク層の裏面に積層されている接着層」)の充足性についてア被告各製品は,インク層を皮膚に接着して使用するものであり,インク層の裏面にはインク層を皮膚に接着させる何らかの接着剤が積層されている(構成d)。これは,「インク層の裏面に積層されている接着層」との構成要件Dに該当する。 イ被告は,構成e’及び構成f’と構成要件Dを対比し,構成e’は接着層ではなく保護層であるとし,構成f’は接着層ではあるが保護層を介在しているから,いずれも構成要件Dに該当しないと主張する。 しかし,「裏面に」のクレーム解釈として「裏面に直接」と解する必要のないことは前記(3)のとおりである。 そして,原告らは,構成e’の存在について不知であるが,仮に 要件Dに該当しないと主張する。 しかし,「裏面に」のクレーム解釈として「裏面に直接」と解する必要のないことは前記(3)のとおりである。 そして,原告らは,構成e’の存在について不知であるが,仮に構成e’が介在しているとしても,構成e’の保護層は構成f’の接着層と一体として「該インク層の裏面に積層されている接着層」として機能している。 よって,被告各製品は,本件発明の構成要件Dを備えている。 (6) 構成要件Eの充足性について構成e は構成要件Eに該当する。 (7) 構成要件Fの充足性について被告各製品においては,被告の主張する接着層f’と保護層e’が構成要件D(接着層)に該当し,顔料層d’が構成要件C(インク層)に該当し,高輝度反射層c’が構成要件B(保護シート層)に該当する。 そして,接着層f’と保護層e’が「皮膚に対する柔軟性」を担保し,高輝度反射層c’が「耐摩擦性」を担保している。 したがって,被告各製品は,構成要件Fを充足する。 〔被告の主張〕(1) 被告各製品の構成について ア被告各製品のうち,被告新製品の構成は以下のとおりである。そして,被告旧製品は,高輝度反射層が存在しないが,それ以外は全て被告新製品と同一の構成を有している。 a’ 貼り付ける時に位置を確認できる合わせ用ラインが印刷された台紙と,b’ 該台紙の裏面に積層されているデンプンのり層と,c’ デンプンのり層の裏面に積層されている半透明の高輝度反射層と,d’ 該高輝度反射層の裏面に積層され,前記台紙に印刷された合わせ用ラインとは異なる形状のマーカーを形成する顔料層と,e’ 該顔料層の裏面に積層されている保護層と,f’ 該保護層の裏面に積層されている接着層と,g’ 該接着層の裏面 台紙に印刷された合わせ用ラインとは異なる形状のマーカーを形成する顔料層と,e’ 該顔料層の裏面に積層されている保護層と,f’ 該保護層の裏面に積層されている接着層と,g’ 該接着層の裏面に積層されている保護シートとによって構成され,h’ 前記保護シートを剥がして,台紙に水分を含ませて皮膚に押し当てることにより,前記接着層,保護層,顔料層,及び透明でない高輝度反射層を皮膚側に貼り付けて転写して用いる放射線治療の際のポイントマーカーイ本件発明と被告各製品とでは,そもそも技術的思想が異なる。 本件発明の膜構造は5層構造であるが,被告各製品はいずれも7層構造であり,被告各製品では,顔料層(構成d’)と接着層(構成f’)の間に,保護層(構成e’)が介在している。被告各製品においては,接着力をより増すため,顔料層の幅に比して接着層の幅を広くしており,接着層の一部が顔料層等に覆われていない。そこで,接着層の表面への露出を防ぐために,顔料層と接着層の間に,幅広の接着層と同幅の保護層を介在させている。 一方,本件発明では,インク層(構成要件C)と接着層(構成要件D)の幅がほぼ同じである。 つまり,被告各製品は,本件発明よりも転写の際の接着力に優れている という作用効果の違い,ひいては技術的思想の違いがある。 (2) 構成要件A(「治療用」「治療用の目印となるマーク」)の充足性についてア被告各製品には台紙があり,この台紙の表面には,貼り付ける位置を確認できるラインが印刷してあるが(構成a’),このラインは,広く「治療用」のものではなく,放射線治療用のものである。 イ被告各製品には,「治療用の目印となるマーク」は存在しない。被告各製品にあるのは,「貼り付ける時に位置を確認できる合わせ用ライン」(構成a’)だけ 」のものではなく,放射線治療用のものである。 イ被告各製品には,「治療用の目印となるマーク」は存在しない。被告各製品にあるのは,「貼り付ける時に位置を確認できる合わせ用ライン」(構成a’)だけであり,この合わせ用ラインは,実際に治療する際には存在しないものであって,治療時に用いる治療用のマークではない。 ウしたがって,被告各製品は,いずれも構成要件Aを充足しない。 (3) 構成要件B(「裏面に」「透明な保護シート層」)の充足性についてア 「裏面に」につき(ア) 被告各製品においては,台紙と保護紙との間には,デンプンのり層,高輝度反射層,顔料層,保護層及び接着層が順次積層された構造をとっており(なお,被告旧製品には高輝度反射層は存在しない。),台紙と高輝度反射層その他の層との間にデンプンのり層という介在層が存在する。 そこで,構成要件Bの「裏面に」のクレーム解釈が問題となるが,まず,広辞苑によれば,「裏面」について「うら,うらがわ」とあるのみで,直接のみか介在層があってもよいかは不明である。 つぎに,クレーム内での検討であるが,構成要件Bに「裏面に」とあるのは,構成要件Aの冒頭に「表面に」とあることとの対照である。そして,この構成要件Aでは台紙にマークが直接印刷されているのでなければ意味がないのは自明である。そうすると,構成要件Aの「表面に」とは,「表面に直接」という意味であることは論を俟たない。 さらに,本件明細書等の記載を考慮すると,段落【0011】及び図1は,以下のとおりである(下線は被告による。)。 「【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態について,図面を参照しつつ説明する。 実施の形態としての放射線治療用ラインマーカー1は,図1に示す様に,表面に治療用の目印となるライン3 。)。 「【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態について,図面を参照しつつ説明する。 実施の形態としての放射線治療用ラインマーカー1は,図1に示す様に,表面に治療用の目印となるライン3が印刷されている基台紙5と,この基台紙5の裏面に剥離可能に積層されている透明な保護シート層7と,この保護シート層7の裏面に積層され,基台紙5に印刷されたライン3と同一のラインを形成するインク層9と,このインク層9の裏面に積層される接着層11と,この接着層11の裏面に剥離可能に積層されている保護紙13とによって構成されている。なお,基台紙5の裏面には水溶性の糊がコーティングされている。」 上記の本件明細書等の記載から,基台紙5の「裏面に直接」保護シート7が積層されていることがわかる。そして,介在層が存在する場合の態様は記載されていない。 なお,本件明細書等の段落【0016】には,「以上,本発明の実施の形態について説明したが,本発明は上述した実施の形態に限られることなく,その要旨を逸脱しない範囲内において,さらに種々の態様にて 実施することができる。」とあるが,どのような材質でいくらの膜厚を何層での介在層を介在させた場合に「その要旨を逸脱しない範囲内」であるかなどの記載も示唆もないから,第三者の自由実施に干渉せず,萎縮効果を防止するという明確性などの観点も加味すると,本件明細書等の記載を考慮した「裏面に」の意味は,「裏面に直接」であると解釈せざるをえない。 以上の理由から,構成要件Bの「裏面に」のクレーム解釈としては,直接の裏面に限る趣旨であり,介在層が存在する場合は「裏面に」に当たらない。 (イ)被告各製品のb’との対比被告各製品においては,上記のとおり,台紙の裏面に直接積層されているのは,デンプ ,直接の裏面に限る趣旨であり,介在層が存在する場合は「裏面に」に当たらない。 (イ)被告各製品のb’との対比被告各製品においては,上記のとおり,台紙の裏面に直接積層されているのは,デンプンのり層であり,「透明な保護シート層」ではない。 したがって,被告各製品のb’は,構成要件Bに該当しない。 イ 「透明な保護シート層」につき仮に,「透明な保護シート層」が台紙の裏面に直接積層されていることを要しないとしても,原告が,「透明な保護シート層」に当たると主張する被告新製品の「高輝度反射層」(構成c’)は,次に述べるとおり,「透明な保護シート層」に当たらない。 (ア) 被告新製品が高輝度反射層を有しているのは,放射線治療用という限られた用途の製品であるためである。放射線治療では放射線を照射する位置及び面積を正確に決定する必要があり,そのような正確な決定は,目視ではなく精緻なレーザー光によらなければならない。そのため,被告新製品は,レーザー光の反射を大きくするため,顔料層の直上に,細かい雲母の粒を敷き詰めた高輝度反射層を設けている。 そして,この高輝度反射層は「反射」を目的とするため,光が透過,つまり透明では意味をなさないのであって,高輝度反射層は「透明」で はない。顔料層が透けているように見えるのは,下層の顔料層がそのままむき出しとなっているところが多数存在しているためであって,高輝度反射層が透明であるためではない。 (イ) 高輝度反射層は,顔料層と同一の線幅で積層されており,顔料層の側面がむき出しであるし,高輝度反射層はたいへん薄い層であって凹凸があり,密度の密な部分と疎な部分が混在して,顔料層がむき出しとなっているところも散見される。したがって,高輝度反射層は顔料層を保護するものではなく「保護層」 輝度反射層はたいへん薄い層であって凹凸があり,密度の密な部分と疎な部分が混在して,顔料層がむき出しとなっているところも散見される。したがって,高輝度反射層は顔料層を保護するものではなく「保護層」に当たらない。 (ウ) 広辞苑によると「シート」とは「薄板や紙などの一枚」を意味するものとされている。ところが,高輝度反射層は,雲母の細かい粒を敷き詰めたものであり,砂・砂利と同じようなものであって「シート」のような連続した膜状のものではない上,隙間も散見されることからして,「シート」に当たらないことは明らかである。 (4) 構成要件C(「同一のマーク」)の充足性についてア被告旧製品につき(ア) 被告旧製品(直線)につき顔料層に形成されている形状は直線ではあるものの,台紙に印刷された直線とは太さ及び色調が異なる(甲14・写真101,102)。さらに,台紙には,「アタリケイ」という文字が等間隔に存在しているが,これは顔料層には存在しない。 (イ) 被告旧製品(十字)につき顔料層に形成されている形状は,十字ではあるものの,台紙に印刷された十字とは太さ及び色調が異なる(甲14・写真101,102)。 さらに,台紙には,「アタリケイ」という文字が縦方向と横方向に存在しているが(甲14・写真101),これは顔料層には存在しない。 (ウ) したがって,被告旧製品は,構成要件Cを充足しない。 イ被告新製品につき(ア) 治療の目印につき甲15文献に基づく原告らの主張は否認する。甲15文献には,「十字」のマークは,その中心の交差部分が目印になる」旨の記載も「十字の端部が目印になる訳ではない」旨の記載もない。 仮に甲15文献の記載内容を原告らが主張するとおりに解釈できたとしても,それはあくまで,「 マークは,その中心の交差部分が目印になる」旨の記載も「十字の端部が目印になる訳ではない」旨の記載もない。 仮に甲15文献の記載内容を原告らが主張するとおりに解釈できたとしても,それはあくまで,「インク層」ないし顔料層の話であって,台紙に印刷された模様の話ではない。 (イ) 被告新製品(直線)につき被告新製品(直線)の台紙上には,直線のほかに,5mmの目盛り,切り取る際の細線,45度のガイドライン等,様々な形状が印刷されており,顔料層のマーカーの模様(直線のみ)の形状とは明白に異なる。 原告らは,直線以外の形状を「余分な線である」と主張をしているが,「余分な線」などではない。被告新製品(直線)では,台紙に,貼り付ける時に位置を確認できる合わせ用ラインが複数あり,太線と細線のコンビネーションにより,様々な角度を持って貼り付けることができ,また,細線に沿って切断することもできる(甲14・6頁説明②参照)。 したがって,被告新製品(直線)は,構成要件Cを充足しない。 (ウ) 被告新製品(十字)につき被告新製品(十字)の台紙上には,5,10及び20mmの目盛り,45度のガイドライン等,様々な形状が印刷されているが,顔料層のマーカーの模様の形状は,4本の矢印及びそれと離隔した小さい十字マークであって(甲14・6頁説明⑥参照),明白に異なる。 また,被告新製品(十字)に「余分な線」など一つもないことは,被告新製品(直線)と同様である。 したがって,被告新製品(十字)は,構成要件Cを充足しない。 (エ) 被告新製品(L字)につき被告新製品(L字)の台紙上には,5mmの目盛り,放射状のガイドライン等,様々な形状が印刷されているが,顔料層のマーカーの模様の形状は,1本の矢印と,それと離隔し,矢印がその 製品(L字)につき被告新製品(L字)の台紙上には,5mmの目盛り,放射状のガイドライン等,様々な形状が印刷されているが,顔料層のマーカーの模様の形状は,1本の矢印と,それと離隔し,矢印がその角部を指し示すL字のマークであって(甲14・6頁説明④参照),明白に異なる。 また,被告新製品(L字)に「余分な線」など一つもないことは,被告新製品(直線)と同様である。 したがって,被告新製品(L字)は,構成要件Cを充足しない。 (5) 構成要件D(「インク層の裏面に積層されている接着層」)の充足性についてア構成e’との対比構成要件Dは,「該インク層の裏面に積層されている接着層と」というものであるが,被告各製品の構成e’は単なる保護層であり,接着剤が存在したり,その他の接着作用を有するものでない。 したがって,被告各製品の構成e’は構成要件Dに該当しない。 イ構成f’との対比前記(3)のとおり,本件発明において「裏面に」とは「裏面に直接」を意味する。ところで,被告各製品の構成f’は接着層ではあるものの,顔料層(構成d’)の裏面に直接積層されたものではなく,間に保護層(構成e’)を介在している。 したがって,被告各製品の構成f’も,構成要件Dに該当しない。 (6) 構成要件Eの充足性について上記のとおり,構成要件Dに該当する層は,被告各製品には存在しないから,構成要件Eも充足しない。 (7) 構成要件Fの充足性について被告各製品には,構成要件AないしEに該当する層が存在しないから,構 成要件Fを充足しない。 そして,被告各製品で,皮膚側に転写されるのは,接着層,保護層,顔料層及び高輝度反射層の4層であるから,構成要件Fの「前記接着層,インク層及び保護シート層を皮膚側に転 成要件Fを充足しない。 そして,被告各製品で,皮膚側に転写されるのは,接着層,保護層,顔料層及び高輝度反射層の4層であるから,構成要件Fの「前記接着層,インク層及び保護シート層を皮膚側に転写して」を充足しない。 また,被告各製品では,顔料層に比べて接着層が非常に広いことから(甲8・写真16),優れた密着性を有するものの,本件発明のようにインク層と接着層が略同じ幅のものに比べれば,柔軟性に乏しい。さらに,被告新製品の高輝度反射層は非常に薄く隙間が多いから(乙7・写真4),顔料層を十分保護するものではない。 したがって,被告各製品は,構成要件Fの「皮膚に対して柔軟性に富み,かつ摩擦に強いものである」を充足しない。 2 争点(2)(本件特許権が特許無効審判により無効にされるべきものか否か)について〔被告の主張〕(1) 無効理由1(サポート要件違反・実施可能要件違反)についてア前記1〔被告の主張〕(3)アのとおり,本件特許にいう「裏面に」の意義は「裏面に直接」の意味であるが,仮にこれが,介在層が存在する場合も含む意味とした場合,以下のとおり,本件特許は,サポート要件(特許法36条6項1号)及び実施可能要件(同条4項)に違反する。 イサポート要件違反本件では,本件明細書等における発明の詳細な説明には,介在層が存在しない構造(「裏面に直接」の構造)の開示しかない(段落【0011】及び図1)ことから,介在層が存在する場合を含むとした場合,その介在層の膜厚,材質,一層のみか複数の介在層も含んでよいかなど,当業者をもってしても決定できない事項が多岐にわたる。そしてこの介在層については,どのような膜をどの程度の膜厚で何層介在させるとよいなどの技術 常識もない。 そうすると,本件特許は,介在層が存在しない場 決定できない事項が多岐にわたる。そしてこの介在層については,どのような膜をどの程度の膜厚で何層介在させるとよいなどの技術 常識もない。 そうすると,本件特許は,介在層が存在しない場合と介在層が存在する場合を両方含むクレームであるにもかかわらず,発明の詳細な説明中には,介在層が存在する場合の開示が存在しないことになるから,サポート要件違反に当たる。 ウ実施可能要件違反本件明細書等には介在層が存在する場合について何ら開示がされておらず,当業者にとって,例えば糊以外の介在層を含む構成について,どのように製造し,使用すればいいのか知り得ないから,本件特許は実施不可能というほかない。 (2) 無効理由2(明確性要件違反)についてア 「裏面に」につき本件特許のクレームには「裏面に」という言葉が四つの構成要件中に存在する。しかし,「裏面に」という文言の意味は,直接の裏面に限定する意味と,直接の裏面だけでなく介在層を含んでもよい意味の両方が考えられる。 本件明細書等の記載などからすると,直接の裏面に限定する趣旨だと考えられるが,クレームの文言上は限定する用語はない。他方,逆に,直接の裏面だけでなく介在層を含んでもよいとすると,どのような膜をどのような膜厚で何種類含んでよいかなどが不明であるから,権利範囲が無限定に広がってしまう。 そうすると,結局どちらの意味か確定することができず,本件発明の構成を明確に把握することができない。 したがって,本件特許は明確性要件(特許法36条6項2号)に違反する。 イ 「透明な」につき 本件のクレームには「透明な」(構成要件B)という言葉が存在するが,「透明」の意義が本件特許等の記載からは一義的に明らかではない。 まず,「透明」というのは,光の透過率に つき 本件のクレームには「透明な」(構成要件B)という言葉が存在するが,「透明」の意義が本件特許等の記載からは一義的に明らかではない。 まず,「透明」というのは,光の透過率に関する言葉と推測される。しかし,光というのは,周波数(ないし波長)によって様々な特徴を有するものであるから,波長等を特定しなければならない。次に,光の波長等が特定されても,例えば何%以上の透過率を有する場合が透明であるなどとした定義が必要である。そうでなければ,透明-半透明-不透明の間で,あいまいでおぼろげな権利範囲しか設定できず,第三者に不測の不利益を与えるからである。例えば,一般的に「透明」とされる板ガラスでも,波長によって透過率が様々に変化する。つまり,ある波長では「透明」といえても,他の波長では「透明」といえないのである(乙6)。 それにもかかわらず,本件特許では,「透明」の定義がされておらず,波長等や透過率の特定もされていない。 したがって,本件特許は明確性要件に違反する。 ウ 「治療用の目印」につき構成要件Aは「表面に治療用の目印となるマークが印刷されている基台紙と」というものであるが,当該基台紙は,最終的には剥がされるものであり,実際に治療する際には存在しない。そのため,治療用の目印になるのは,構成要件Cの「インク層」であって構成要件Aの「基台紙」ではない。それゆえ,この構成要件Aの「治療用の目印となる」という部分は技術的に矛盾している。 そして,本件明細書等をみると,段落【0006】には,「基台紙を患部に貼り付ける際には,その表面に印刷されているマークによってどこに貼り付けたらよいかが容易に判明する。そして,患者の皮膚にはこのマークと同一のマークからなる目印が転写されるので,・・・」との記載がある。この段落 には,その表面に印刷されているマークによってどこに貼り付けたらよいかが容易に判明する。そして,患者の皮膚にはこのマークと同一のマークからなる目印が転写されるので,・・・」との記載がある。この段落には,「基台紙の表面に印刷される印刷図柄」が,あくまで, 貼るときに目印となるマークであって,「治療用の目印となるマーク」ではないことがはっきりと記載されている。さらに,「インク層」についても,貼るときに目印となるマークと同一のマークであるとの記載があるだけで,「治療用の目印となるマーク」と同一であるとの記載はどこにもない。つまり,そもそも構成要件Aの記載は,本件明細書等の記載とも齟齬を生じているのである。 したがって,本件特許は明確性要件に違反する。 (3) 無効理由3(乙1発明に基づく進歩性欠如)について本件発明は,乙1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであって,本件特許は同法123条1項2号に該当し,無効とされるべきものである。 ア乙1発明の構成は次のとおりである。 A’剥離性シート1とB’該剥離性シート1の裏面に剥離可能に積層されている透明な透明弾性層2と,C’該透明弾性層の裏面に積層された着色印刷インキ層3と,D’該着色印刷インキ層3の裏面に積層されている粘着剤層4と,E’該粘着剤層4の裏面に剥離可能に積層されているセパレーター5とによって構成され,F’前記セパレーター5を剥がして,前記粘着剤層4を皮膚に押し当てることにより,前記粘着剤層4,着色印刷インキ層3及び透明弾性層2を皮膚側に転写して,前記透明弾性層2,着色印刷インキ層3及び粘着剤層4が皮膚に対して柔軟性に富み,かつ摩擦に強いものである転写シー ることにより,前記粘着剤層4,着色印刷インキ層3及び透明弾性層2を皮膚側に転写して,前記透明弾性層2,着色印刷インキ層3及び粘着剤層4が皮膚に対して柔軟性に富み,かつ摩擦に強いものである転写シール。 イ本件発明と乙1発明との対比 (ア)本件発明と乙1発明との一致点は,以下のとおりである。 「基台紙と,該基台紙の裏面に剥離可能に積層されている透明な保護シート層と,該保護シート層の裏面に積層されたインク層と,該インク層の裏面に積層されている接着層と,該接着層の裏面に剥離可能に積層されている保護紙とによって構成され,前記保護紙を剥がして,前記接着層を皮膚に押し当てることにより,前記接着層,インク層及び保護シート層を皮膚側に転写して,前記保護シート層,インク層及び接着層が皮膚に対して柔軟性に富み,かつ摩擦に強いものである転写シール。」(イ) 本件発明と乙1発明との相違点は,以下のとおりである。 ① 相違点1構成要件Aに関し,本件発明では,基台紙の表面に目印となるマークの印刷がされているのに対し,乙1発明には,そのような開示はない点。 ② 相違点2構成要件Cに関し,本件発明では,インク層のマークが基台紙のマークと同一であるのに対し,乙1発明には,そのような開示はない点。 ③ 相違点3構成要件Fに関し,本件発明では,転写する際に,基台紙に水分を含ませているのに対し,乙1発明では,水分を含ませるかどうか必ずしも明らかではない点。 ④ 相違点4構成要件Fに関し,本件発明が,転写シールではあるが,各種の治療の際の目印となる治療用マーカーであるのに対し,乙1発明は,単な る転写シールである点。 ウ各相違点の容易想到性(ア) 相違点1につき乙2文献は,転写マークの発 各種の治療の際の目印となる治療用マーカーであるのに対し,乙1発明は,単な る転写シールである点。 ウ各相違点の容易想到性(ア) 相違点1につき乙2文献は,転写マークの発明に関するものであるが,同文献(5頁13行~15行)には,「基材1は透明又は半透明とし,予め位置決め用のラインを印刷しておくと,マーク層の貼付位置が正確となる」という記載があり,転写シール等の貼付目標位置の目印として,その転写シールの基台紙などに予めマークをしておくことはよく行われることであった。そして,転写シールの一応用分野が治療用マーカーである。 そうすると,治療用マーカーと転写シールは,必ずしも技術分野は同一ではないが,極めて近接した技術分野といえる。また,治療用マーカーでも転写シールでも,人の皮膚に貼り付ける際の目標が必要であるという課題も共通し,そのため,作用・機能の共通性も存在する。 したがって,乙2文献記載の技術を乙1発明に組み合わせる動機付けがあるということができ,相違点1は容易想到といえる。 (イ) 相違点2上記(ア)のとおり,基台紙の表面に目印となるマークを印刷することは容易想到であるが,その際,インク層と基台紙上のマークが同一であれば,貼付位置が更に正確となるのは明らかである。 また,基台紙上のマークをどのような図柄・形態等にするかは,様々な因子に由来して変わり得る単なる設計事項にすぎず,上記の貼付位置の正確さという観点からは,インク層と同一の図柄・形態等にすることに何ら困難性はない。 したがって,相違点2についても,容易想到である。 (ウ) 相違点3乙3公報は,転写シールの発明に関するものであるが(発明者の一部 が乙1発明と同じである。),乙3公報の段落【0003】には,「水転写タ いても,容易想到である。 (ウ) 相違点3乙3公報は,転写シールの発明に関するものであるが(発明者の一部 が乙1発明と同じである。),乙3公報の段落【0003】には,「水転写タイプ入れ墨転写シールの貼着操作は,まずセパレーターを取り除き,転写シールを水で湿し,転写紙の糊層を水で膨潤・溶解させると共に,水活性接着剤や粘着剤の接着層を皮膚に宛がって押さえ付け,転写紙と図案層・接着層が離れる頃合を見計らって,ずらすようにして転写紙を分離し,図案層・接着層のみを皮膚に貼着する。」という記載があり,水分を含ませて転写する水転写タイプに係る記載がある。また,乙1公報(段落【0002】【従来の技術】)にも,「水転写タイプ」という記載がある。 そうすると,相違点3に関しては,乙1公報には明示の記載こそないものの,水転写タイプの転写シールであれば,わざわざ詳細に記載しなくても「水転写タイプ」とだけ記載すれば足りるものであって,技術常識に属するものといえる。 したがって,相違点3は,乙1公報に記載されているに等しい事項であって,実質的な相違点ではない。 (エ) 相違点4乙4公報は,治療用マーカーの一種である放射線治療用皮膚マーカーの発明に関するものであるが,「放射線治療用皮膚マーカーは放射線治療を受ける患者の放射線治療導入部の輪郭を描くために使用可能である。」という記載があり,また,従来技術の一つで,入れ墨が放射線治療用皮膚マーカーとして使用されていた旨の記載がある。 他方,上記(ア)のとおり,治療用マーカーと転写シールは,下位概念と上位概念の関係にある。また,乙1公報(段落【0002】)には,転写シールの一例として「入れ墨転写シール」の記載がある。さらには,入れ墨,入れ墨転写シール及び治療用マーカーは,皮膚にマーキン 概念と上位概念の関係にある。また,乙1公報(段落【0002】)には,転写シールの一例として「入れ墨転写シール」の記載がある。さらには,入れ墨,入れ墨転写シール及び治療用マーカーは,皮膚にマーキングを行う技術という点で共通しており,相互に密接な関係にある。 以上から,入れ墨転写シールに関する技術を治療用マーカーに関する技術に組み合わせることについて困難性はなく,相違点4についても,乙4公報などから容易想到である。 エ以上のとおり,相違点3は実質的な相違点ではなく,相違点1及び2は乙2文献から,相違点4については乙4公報からそれぞれ容易想到であった。 したがって,本件発明は,乙1ないし乙4公報から,本件特許出願前に当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであって,本件特許は同法123条1項2号に該当し,無効とされるべきものである。 〔原告らの主張〕(1) 無効理由1(サポート要件違反・実施可能要件違反)について被告は,「裏面に」の意義として介在層が存在する場合を含むと仮定すると,本件明細書等の発明の詳細な説明には,「裏面に直接」の構造の開示しかない( 段落【0011】及び図1)ことから,サポート要件違反となると主張する。 しかし,同段落7行目には「なお,基台紙5の裏面には水溶性の糊がコーティングされている。」と記載されており,被告の主張は誤りである。そもそも,本件発明における「裏面」とは「表面」に対して用いられている用語であって,そのことは本件明細書等を通じて一貫しており,当業者に対する十分な技術事項の説明となっている。 よって,被告のサポート要件違反の主張は,失当である。 (2) 無効理由2(明確性要件違反)についてア 「裏面 件明細書等を通じて一貫しており,当業者に対する十分な技術事項の説明となっている。 よって,被告のサポート要件違反の主張は,失当である。 (2) 無効理由2(明確性要件違反)についてア 「裏面に」につき被告は,「裏面に」が不明確であると主張するが,「表面」に対して「裏面」であることを特定できれば,本件発明の構成要件の特定として不足は ない。 よって,本件特許には,「裏面に」に関し,明確性要件違反の無効理由は存在しない。 イ 「透明な」につき被告は,「透明」について「光の透過率」との関係が明確でないなどと主張する。 しかし,「透明」とは,一般に透きとおって向こうがよく見えることをいうのであり,何ら不明確ではない。本件発明では,構成要件Fにおいて明らかにしているとおり,「皮膚に転写された接着層,インク層及び保護シート層」が「各種の治療の際の目印」となればよいのであって,「光の透過率で規定すべき板ガラスの発明」などとは全く性質を異にするものである。 よって,本件特許には,「透明な」に関し,明確性要件違反の無効理由は存在しない。 ウ 「治療用の目印」につき構成要件Aにおける「治療用の目印となるマーク」とは,「基台紙の表面に印刷される印刷図柄」を指しており,皮膚側に転写されるのは「接着層,インク層及び保護シート層」(構成要件F)であって,これらの「皮膚側に転写」されたものが各種の治療の際の目印となる。 このことは,本件明細書等の段落【0006】において,「本発明の治療用マーカーによれば,・・・,接着層,インク層及び保護シート層を皮膚側に転写して,各種の治療の際の目印とすることができる。・・・そして,患者の皮膚にはこのマークと同一のマークからなる目印が転写されるので,鮮明で正確な目印を患者の皮膚にマーキ 及び保護シート層を皮膚側に転写して,各種の治療の際の目印とすることができる。・・・そして,患者の皮膚にはこのマークと同一のマークからなる目印が転写されるので,鮮明で正確な目印を患者の皮膚にマーキングすることができる。・・・」と,明確な技術的説明を行っており,何ら不明確ではない。 よって,本件特許には,「治療用の目印」に関し,明確性要件違反の無 効理由は存在しない。 (3) 無効理由3(乙1発明に基づく進歩性欠如)について被告は,乙1発明から本件発明が容易想到であると主張し,その根拠として乙1ないし乙4公報を指摘するが,そもそも,これらのうち乙4公報以外は「治療用マーカー」について記載したものではない。 そして,被告が乙2文献の記載内容のうち指摘する部分は,「マーク層3」を貼り付けるための「目印用のライン」を,「透明又は半透明の基材1」に対して印刷しておくという技術事項に関するものであって,マークを品物Aに貼り付ける際の目印のことをいうものではなく,「治療用マーカー」において,「基台紙の裏面側の印刷層のマークの位置を基台紙の表面側から認識できる様にするためのマーク(構成要件A)」を示唆するものではなく,かつ,「インク層に形成されたマーク」との関係をどの様に構成すべきか(構成要件AとCの関係)を示唆するものでもない。 乙4公報は,「入れ墨により治療用マークを施す」という従来技術の問題点を課題とし,シール式の治療用マーカーを提案するものであって,台紙から剥がしたパーツを患者の皮膚に貼り付けて用いるものを開示してはいるが,「転写シール」についての記載はなく,示唆もない。 そして,乙4公報記載の技術(組み合わせシール式の治療用マーカーに関するもの)は「入れ墨」に問題があるということを前提とする技術であるから,むしろ, 転写シール」についての記載はなく,示唆もない。 そして,乙4公報記載の技術(組み合わせシール式の治療用マーカーに関するもの)は「入れ墨」に問題があるということを前提とする技術であるから,むしろ,入れ墨,入れ墨転写シール及び治療用マーカーの関係を否定する文献といえる。 以上からすると,本件発明が乙1ないし乙4公報から容易に想到できたとする被告の主張には理由がない。 3 争点(3)(差止めの必要性)について〔原告らの主張〕被告は,平成26年2月より,被告旧製品から被告新製品へとデザインを変 更したと主張するが,同月7日時点においては,被告旧製品と被告新製品とを併売していた(甲13・2頁)。もっとも,平成27年10月11日時点においては,被告のホームページ上から,被告旧製品に関する記載が削除されている(甲13・7頁)。 ところで,被告のホームページのトップには被告旧製品のチラシに掲載されたものと同じ箱の写真が表示されている(甲14・2~7頁)。また,被告旧製品は被告新製品よりも安価である(甲13・3頁)。そして,被告旧製品の存在及びその価格が被告新製品よりも安いことを知っている取扱店が7社以上存在する(甲13・5頁,10頁)。 そうすると,本件訴訟により,被告が被告新製品の差止めが認められた場合に,被告旧製品についても差止めを認めないならば,上記7社をはじめとする取扱店が,被告に対し,被告旧製品の提供を求め,被告がこれに応ずる可能性があるから,被告旧製品及び被告新製品のいずれをも対象として,差止めを求める必要性がある。 〔被告の主張〕被告旧製品に関する記載がホームページ上から削除されていることは認め,その余は否認する。被告は,平成26年2月より被告旧製品から被告新製品へとデザインを変更しており,現在 。 〔被告の主張〕被告旧製品に関する記載がホームページ上から削除されていることは認め,その余は否認する。被告は,平成26年2月より被告旧製品から被告新製品へとデザインを変更しており,現在被告旧製品を販売しておらず,また,販売等する可能性はない。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明の意義等(1) 本件明細書等の発明の詳細な説明には次の記載がある。 ア 【発明の属する技術分野】・「本発明は,患者の皮膚にライン等のマークを記入して,例えば放射線治療の際の目印としたり,放射線治療以外の治療における目印とするための治療用マーカーに関するものである。」(段落【0001】) イ 【従来の技術】・「従来,ガン患者の治療において,放射線を患部に照射する治療が一般的に行われている。この放射線治療においては,患部を特定するための目印として,患者の皮膚に,油性インクやフクシンリゾルシン液等を用いてラインや十字等の目印を記入している。」(段落【0002】)ウ 【発明が解決しようとする課題】・「しかし,油性インク等を用いてライン等を記入する場合,皮膚のしわ等により正確な直線を引くことができなかったり,滲んでしまってラインが不鮮明になるという問題がある。また,術者や患者の衣服や手を汚してしまうという問題もある。」(段落【0003】)・「そこで,本発明は,患者の皮膚に治療用の目印をマーキングする際に,術者や患者の衣服等を汚すことがなく,鮮明で正確な目印をマーキングできるようにすることを目的とするものである。」(段落【0004】)エ 【課題を解決するための手段】・「かかる目的を達成するためになされた本発明の治療用マーカーは,表面に治療用の目印となるマークが印刷されている基台紙と,該基台紙の裏面に剥離可能に積層され )エ 【課題を解決するための手段】・「かかる目的を達成するためになされた本発明の治療用マーカーは,表面に治療用の目印となるマークが印刷されている基台紙と,該基台紙の裏面に剥離可能に積層されている透明な保護シート層と,該保護シート層の裏面に積層され,前記基台紙に印刷されたマークと同一のマークを形成するインク層と,該インク層の裏面に積層されている接着層と,該接着層の裏面に剥離可能に積層されている保護紙とによって構成され,前記保護紙を剥がして,前記基台紙に水分を含ませると共に,前記接着層を皮膚に押し当てることにより,前記接着層,インク層及び保護シート層を皮膚側に転写して,各種の治療の際の目印となり,前記保護シート層,インク層及び接着層が皮膚に対して柔軟性に富み,かつ摩擦に強いものである。」(段落【0005】)・「本発明の治療用マーカーによれば,保護紙を剥がした後に,患者の患 部の皮膚に対して,接着層を押し付ける様に基台紙を貼り付け,基台紙に水分を十分に含ませることによって接着層を皮膚に接着させた後で,この基台紙を剥がしてやれば,接着層,インク層及び保護シート層を皮膚側に転写して,各種の治療の際の目印とすることができる。なお,保護紙を剥がした基台紙を皮膚に貼り付ける前に,基台紙に水分を含ませておく様にしてもよい。ここで,基台紙を患部に貼り付ける際には,その表面に印刷されているマークによってどこに貼り付けたらよいかが容易に判明する。そして,患者の皮膚にはこのマークと同一のマークからなる目印が転写されるので,鮮明で正確な目印を患者の皮膚にマーキングすることができる。また,この目印は,保護シート層によって表面を保護されているので,衣服等で擦れたりしても消えることがなく,長期間に渡って目印を施した状態を維持することができ 患者の皮膚にマーキングすることができる。また,この目印は,保護シート層によって表面を保護されているので,衣服等で擦れたりしても消えることがなく,長期間に渡って目印を施した状態を維持することができる。」(段落【0006】)オ 【発明の実施の形態】・「以下,本発明の実施の形態について,図面を参照しつつ説明する。実施の形態としての放射線治療用ラインマーカー1は,図1に示す様に,表面に治療用の目印となるライン3が印刷されている基台紙5と,この基台紙5の裏面に剥離可能に積層されている透明な保護シート層7と,この保護シート層7の裏面に積層され,基台紙5に印刷されたライン3と同一のラインを形成するインク層9と,このインク層9の裏面に積層される接着層11と,この接着層11の裏面に剥離可能に積層されている保護紙13とによって構成されている。なお,基台紙5の裏面には水溶性の糊がコーティングされている。」(段落【0011】)・「この放射線治療用ラインマーカー1を使用するに当たっては,まず,保護紙13を剥がした後に,患者の患部の皮膚に対して,基台紙3の表面に印刷されているライン3にて位置を合わせながら接着層11を押し 付ける様に基台紙5を貼り付ける。そして,この状態において,水を含ませた脱脂綿や霧吹き等によって基台紙5に水分を十分に含ませる。すると,基台紙5にコーティングされている水溶性の糊が溶けて保護シート層7が基台紙5から剥がれ易くなると共に,接着層11が患者の皮膚に対してしっかりと接着する。こうして接着層11を皮膚にしっかりと接着させた後に基台紙5を剥がしてやれば,接着層11,インク層9及び保護シート層7を皮膚側に転写して,放射線治療の際の目印とすることができる。なお,基台紙5を剥がした後に,かるく水分を拭き取り乾燥させ させた後に基台紙5を剥がしてやれば,接着層11,インク層9及び保護シート層7を皮膚側に転写して,放射線治療の際の目印とすることができる。なお,基台紙5を剥がした後に,かるく水分を拭き取り乾燥させることにより,この目印をしっかりと皮膚に接着させた状態とすることができる。」(段落【0013】)カ 【発明の効果】・「以上説明した様に,本発明によれば,患者の皮膚に治療用の目印をマーキングする際に,術者や患者の衣服等を汚すことがなく,鮮明で正確な目印をマーキングすることができる。」(段落【0021】)(2) 本件発明の意義前記(1)からすると,本件発明は,患者の皮膚にライン等のマークを記入して,放射線治療等の際の目印とするための治療用マーカーに関するものであり,従来,放射線治療において患部を特定するための目印として,患者の皮膚に油性インク等を用いてラインや十字等の目印を記入していたところ,皮膚のしわ等により正確な直線を引くことができなかったり,滲んでしまってラインが不鮮明になったり,術者や患者の衣服や手を汚してしまうという課題があったことから,患者の皮膚に治療用の目印をマーキングする際に,術者や患者の衣服等を汚すことがなく,また,鮮明で正確な目印をマーキングできるようにすることを目的とするものである。 そして,本件発明の治療用マーカーは,表面に治療用の目印となるマークが印刷されている基台紙と,基台紙の裏面に剥離可能に順次積層されている 透明な保護シート層,前記基台紙に印刷されたマークと同一のマークを形成するインク層,接着層,保護紙とによって構成されており,これを使用するときには,前記保護紙を剥がして,前記基台紙に水分を含ませると共に,前記接着層を皮膚に押し当てることにより,前記接着層,インク層及び保護シート層を 層,保護紙とによって構成されており,これを使用するときには,前記保護紙を剥がして,前記基台紙に水分を含ませると共に,前記接着層を皮膚に押し当てることにより,前記接着層,インク層及び保護シート層を皮膚側に転写し,転写されたマークを各種の治療の際の目印とし,転写されたマークは,保護シート層によって表面を保護されているので,衣服等で擦れたりしても消えることがなく,長期間に渡って目印を施した状態を維持することができる構成を有することによって,上記課題を解決するものと認められる。 2 争点(1)(被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するか)について(1) 被告各製品の構成について証拠(甲6ないし9,14,16,乙5,7)によれば,被告各製品は,次の構成を有していることが認められる。 ア被告新製品の構成(ア) 共通の構成貼り付けるときに位置を確認できる合わせ用ライン等が印刷された台紙と,台紙の裏面に,デンプンのり層,高輝度反射層,顔料層,保護層,接着層及び保護シートが順次積層された構成を有しており,前記保護シートをはがして台紙に水分を含ませて皮膚に押し当てることにより,接着層,保護層,顔料層,高輝度反射層を皮膚に転写して用いる放射線治療用のポイントマーカー。 (イ) 被告新製品(直線)顔料層が直線のマークを形成しており,台紙の表面には,顔料層のマークと同一の位置に直線が印刷されており,さらに,同直線よりも細い線で,直角に交差する線や45度で交差する線が印刷されている。 また,台紙表面には,顔料層のマークの色を示すローマ字(「BK」 「R」など)が印刷されている。 (ウ) 被告新製品(十字)顔料層には,十字のマークが形成されているとともに,十字のマークの直線を延長する位置に十字の中心に向かう四つの矢 K」 「R」など)が印刷されている。 (ウ) 被告新製品(十字)顔料層には,十字のマークが形成されているとともに,十字のマークの直線を延長する位置に十字の中心に向かう四つの矢印のマークが形成されており,台紙の表面には,顔料層の十字のマークと同一の位置に十字(ただし上下左右方向に同じ太さで直線が延長されている。)が印刷されており,さらに,十字の線よりも細い線で,十字に45度で交差する線や十字の中心を中心点とする大小複数の四角が印刷されている。また,台紙表面には,顔料層のマークの色を示すローマ字(「BK」「R」など)が印刷されている。 (エ) 被告新製品(L字)顔料層には,L字のマーク及びL字の角を指す一つの矢印が形成されており,台紙の表面には,顔料層のL字のマークと同一の位置にL字が印刷されており,さらに,L字の線よりも細い線で,L字を構成する直線と2辺を共通とする大小複数の四角,L字の角を四等分する角度の位置にL字の角から延びる直線が印刷されている。また,台紙表面には,顔料層のマークの色を示すローマ字(「BK」「R」など)が印刷されている。 イ被告旧製品の構成(ア) 共通の構成被告旧製品は,上記ア(ア)の構成のうち高輝度反射層を有していないが,高輝度反射層に代わって,透明な「シート層」(甲7・写真16)があり,このシート層は転写時に顔料層を覆っている。 (イ) 被告旧製品(直線)顔料層が直線のマークを形成しており,台紙の表面には,顔料層のマークと同一の位置に直線が印刷されている。台紙表面に,「アタリケイ」 の文字が印刷されているものがある。 (ウ) 被告旧製品(十字)顔料層が十字のマークを形成しており,台紙の表面には,顔料層のマークと同一の位置に十字が印刷されて 「アタリケイ」 の文字が印刷されているものがある。 (ウ) 被告旧製品(十字)顔料層が十字のマークを形成しており,台紙の表面には,顔料層のマークと同一の位置に十字が印刷されている。台紙表面には,「アタリケイ」の文字が印刷されている。 (2) 構成要件A(「治療用」「治療用の目印となるマーク」)の充足性についてア 「治療用」につき被告は,被告各製品においては,台紙に印刷されたラインが放射線治療用のものであって,広く「治療用」のものではないから,構成要件Aを充足しないと主張する。 しかし,構成要件Aの「治療用」という文言は,一般的に「放射線治療用」を含む概念であると考えられるし,本件明細書等の記載をみても,本件特許が「放射線治療の際の目印としたり」する治療用マーカーに関するものである旨記載されており(段落【0001】),「放射線治療用」のマーカーを除外していない。 したがって,構成要件Aの「治療用」という文言は「放射線治療用」を含むものと解釈すべきであるから,被告の上記主張は採用できず,被告各製品は「治療用」のマーカーに当たるというべきである。 イ 「治療用の目印となるマーク」につき(ア) 被告は,被告各製品の台紙には「貼り付ける時に位置を確認できる合わせ用ライン」が印刷されているが,これは「治療用の目印となるマーク」ではないと主張している。 たしかに,前記(1)の被告各製品の構成に照らすと,被告各製品は,台紙に積層された顔料層等を皮膚に転写して使用するものであって,治療時には台紙は存在しないから,台紙に印刷されたラインそのものを治療 時に目印として使用するものではない。 (イ) そこで,構成要件Aの「治療用の目印となるマーク」の意義について検討するに,本件発明の構成要件をみると に印刷されたラインそのものを治療 時に目印として使用するものではない。 (イ) そこで,構成要件Aの「治療用の目印となるマーク」の意義について検討するに,本件発明の構成要件をみると,構成要件Cには「該保護シート層の裏面に積層され,前記基台紙に印刷されたマークと同一のマークを形成するインク層と」とあり,インク層のマークが基台紙に印刷されたマークと同一の形状であることが示されている。そして,構成要件Fには,「前記接着層,インク層及び保護シート層を皮膚側に転写して,各種の治療の際の目印となり」とあり,インク層が皮膚に転写されて治療の際の目印となることが示されている。そうすると,構成要件Aの「治療用の目印となるマーク」とは,「インク層に形成される治療用のマークと同一のマーク」をいうものと解される。 ここで,「同一のマーク」の意義について検討する。本件明細書等には「基台紙を患部に貼り付ける際には,その表面に印刷されているマークによってどこに貼り付けたらよいかが容易に判明する。そして,患者の皮膚にはこのマークと同一のマークからなる目印が転写される」(段落【0006】),「患者の患部の皮膚に対して,基台紙3の表面に印刷されているライン3にて位置を合わせながら接着層11を押し付ける様に基台紙5を貼り付ける」(段落【0013】)といった記載があるから,これらを考慮すると,基台紙の表面に印刷されているマークは,インク層に形成される治療用のマークを皮膚に貼り付ける際の位置合わせのためのものであって,インク層のマークと同一の位置に存在することを要するものといえる。 以上からすると,「同一のマーク」とは,インク層に形成される治療用のマークと「同一の位置にあるマーク」を意味すると解することが相当である。 (ウ) 以上を前提として被告 とを要するものといえる。 以上からすると,「同一のマーク」とは,インク層に形成される治療用のマークと「同一の位置にあるマーク」を意味すると解することが相当である。 (ウ) 以上を前提として被告各製品について検討する。前記(1)のとおり, 被告各製品の台紙には,貼り付ける時に位置を確認できる合わせ用ラインが印刷されているから,インク層に形成される治療用のマークを皮膚に貼り付ける際の位置合わせのためのマークが台紙に印刷されているといえる。 そこで,これを前提として,まず被告旧製品をみると,同製品では台紙に直線又は十字が印刷されているが,その位置は,転写される顔料層(インク層)の直線又は十字のマークと同一である。そうすると,被告旧製品は,「インク層に形成される治療用のマークと同一のマーク」を有すると認めるのが相当である。 次に,被告新製品をみると,同製品の台紙には,直線,十字又はL字が印刷されているところ,その位置は,転写される顔料層(インク層)の直線,十字(ただし直線部分は台紙に印刷された十字よりも短縮されている。),L字と同一である。なお,被告新製品(十字)及び被告新製品(L字)においては,十字やL字のマークのみならず矢印のマークもインク層に形成されているが,矢印の性質上,矢印自体が治療用の目印となるものではなく,矢印は治療用の目印の存在する箇所を強調するための付加的な記載にすぎないというべきであるから,矢印が指し示す部分(十字の場合は十字の中心,L字の場合はL字の角)が治療用の目印に当たると認めるのが相当である。 そうすると,被告新製品についても,「インク層に形成される治療用のマークと同一のマーク」を有すると認めるのが相当である。 (エ) 以上から,被告各製品は「治療用の目印となるマーク」を有す 。 そうすると,被告新製品についても,「インク層に形成される治療用のマークと同一のマーク」を有すると認めるのが相当である。 (エ) 以上から,被告各製品は「治療用の目印となるマーク」を有する。 ウしたがって,被告各製品は構成要件Aを充足する。 (3) 構成要件B(「裏面に」「透明な保護シート層」)の充足性についてア 「裏面に」につき被告は,「裏面に」とは「裏面に直接」を意味するものであり,被告各 製品は,台紙の裏面に直接積層されているのはデンプンのり層であって,剥離可能な保護シート層ではないから構成要件Bを充足しないと主張する。 しかし,被告が指摘する本件明細書等の記載部分をみると,「基台紙5の裏面には水溶性の糊がコーティングされている。」との記載も存在しており,基台紙と保護シート層の間に水溶性の糊によるコーティング,すなわち介在層が存在する実施例が記載されている。そもそも,本件明細書等には,保護シート層が接着能を有することを示唆する記載はないところ,接着能を有しない保護シートを台紙に接着させるために糊などの接着層の介在を要することは明らかであるから,本件発明は,少なくとも台紙と保護シートの間にデンプンのり層を含む接着能を有する層の介在を前提としているというべきである。そして,広辞苑(第6版)によれば,「裏面」とは「うらがわの面」を意味するものであって,「裏面に直接に」ということまでを意味するものではなく,また,本件明細書等のその余の記載をみても,「裏面に直接に」と限定的に解するべきであることを示唆する記載はない。 したがって,構成要件Bの「裏面に」とは,台紙の片方の面を表面(表側の面)とした場合の反対側の面を指して,「裏側に」あるという位置関係を示すものであると認めるのが相当であり,「裏面に 載はない。 したがって,構成要件Bの「裏面に」とは,台紙の片方の面を表面(表側の面)とした場合の反対側の面を指して,「裏側に」あるという位置関係を示すものであると認めるのが相当であり,「裏面に直接」の意味であると限定的に解することはできない。 そうすると,仮に被告が主張するように,被告各製品の台紙の裏面に直接積層されているのはデンプンのり層であったとしても,被告各製品は構成要件Bの「裏面に」を充足すると認めるのが相当である。 イ 「透明な保護シート層」につき(ア) 「透明な保護シート層」の意義前記1(2)のとおり,本件発明は,治療用マーカーに関するものであって,皮膚に転写された治療用のマークの表面を保護シート層によって保 護することで,衣服等でこすれたりしても消えることなく長期間にわたって目印を施した状態を維持することができるというものであるから,保護シートが「透明な」とされているのは,皮膚に転写された治療用のマークが保護シートを通して目印として利用可能な程度に容易に目視できることを意味するというべきである。そして,「保護シート層」は,皮膚に転写された顔料層による目印が衣服等にこすれるなどして剥離することを防止し,長期間にわたって維持するためのものであるから,顔料層を完全に被覆したシート状のものであって容易に剥離しないものをいうと解することが相当である。 (イ) 被告旧製品につき証拠(甲7・写真16,甲14・11~12頁)によれば,被告旧製品は,皮膚に転写された治療用マークが,同マークが容易に目視可能な程度に透明で,かつ,マークの線よりも幅の広いシート状のもので覆われていることが認められる。そして,証拠(甲14・4頁)によれば,被告は,被告旧製品について,「患者さんがそのままお風呂に入れる」「皮膚と 透明で,かつ,マークの線よりも幅の広いシート状のもので覆われていることが認められる。そして,証拠(甲14・4頁)によれば,被告は,被告旧製品について,「患者さんがそのままお風呂に入れる」「皮膚と一緒に伸縮し,1週間ほどは落ちない」といった特徴があることや,「アルコールで拭いても取れません」などという宣伝文句を記載したチラシを使用していたことが認められるところ,被告旧製品において顔料層を覆うシートが,顔料層を完全に被覆しておらず,また,容易に剥離するようなものであった場合には,上記特徴及び宣伝文句は達成することができない。 そうすると,被告旧製品における顔料層の上部のシート層は,顔料層を完全に被覆したシート状のものであって容易に剥離しないもの,すなわち「保護シート」に当たると認めるのが相当である。 したがって,被告旧製品は,構成要件Bの「透明な保護シート層」を有している。 (ウ) 被告新製品につき被告は,「高輝度反射層」は雲母の細かい粒を敷き詰めたものであって,透明ではないし,保護層でもシートでもないから構成要件Bの「透明な保護シート層」には当たらないと主張する。 しかし,証拠(甲8・写真17)によれば,被告新製品の高輝度反射層は,その下層の顔料層のマークが容易に目視可能な程度に透明であることが認められる。 また,証拠(甲10)によれば,雲母は鉱物であってはがれやすいものであると認められるから,被告が主張するように「高輝度反射層」が雲母の細かい粒を敷き詰めたものであるとするならば,高輝度反射層が顔料層の上部(治療用マークの最上部)に存在する被告新製品において,「患者さんがそのままお風呂に入れる」「皮膚と一緒に伸縮し,1週間ほどは落ちない」といった特徴(甲14・5頁)が実現できるとはおよそ考えがたい。そし 用マークの最上部)に存在する被告新製品において,「患者さんがそのままお風呂に入れる」「皮膚と一緒に伸縮し,1週間ほどは落ちない」といった特徴(甲14・5頁)が実現できるとはおよそ考えがたい。そして,証拠(甲11,12)によれば,雲母はパール顔料として用いられており,パール顔料は,二酸化チタンで被覆した薄板状の雲母粒子が層状にされることによって光が多重層反射されて真珠と同じような光沢感を与えるものであること,パール顔料は印刷インキにも使用できること,一般的に印刷インキには顔料と樹脂などのビヒクルが含まれること及び樹脂は印刷インキに流動性や粘りを与え,乾燥後の印刷面に光沢や耐摩擦性などを与えることが認められる。これらを総合すると,「高輝度反射層」は,雲母の細かい粒を敷き詰めただけのものではなく,上記パール顔料としての雲母を樹脂などのビヒクルとともに印刷インキとして,ないしはこれに近いものとして使用したものであると推認することが相当である。 そうすると,被告新製品では,雲母の細かい粒に流動性や粘りを与える樹脂などを混ぜ合わせたものを用いて,光沢と耐摩擦性を有する高輝度反射層を構成していると認められる。 そして,被告新製品の有する「患者さんがそのままお風呂に入れる」「皮膚と一緒に伸縮し,1週間ほどは落ちない」といった特徴からすると,雲母と樹脂などを混ぜ合わせたものは,顔料層を完全に被覆するようにシート状に形成されており,また,容易に剥離しないものであると認めることが相当である。 したがって,雲母と樹脂などを混ぜ合わせたものである「高輝度反射層」は,構成要件Bの「透明な保護シート層」に当たると認められる。 ウそして,被告各製品において,透明な保護シート層に当たる「シート層」ないし「高輝度反射層」は,デンプンのり層を介し 「高輝度反射層」は,構成要件Bの「透明な保護シート層」に当たると認められる。 ウそして,被告各製品において,透明な保護シート層に当たる「シート層」ないし「高輝度反射層」は,デンプンのり層を介して,台紙のマークが印刷されている面を表面とした場合の反対側の面である裏面に積層されているから,結局,被告各製品はいずれも構成要件Bを充足する。 (4) 構成要件C(「同一のマーク」)の充足性についてア 「同一のマーク」の意義前記(2)イで説示したとおり,本件明細書等においては,「同一のマーク」の文言が,台紙の表面に印刷されているマークとインク層に形成される治療用のマークが同一の位置にあることを意味するものとして用いられているから,構成要件Cの「同一のマーク」とは,「台紙の表面に印刷されているマークと同一の位置にある治療用のマーク」を意味すると解するのが相当である。 イ被告の主張に対する判断この点に関して被告は,被告旧製品において,顔料層(インク層)に形成されている線が,台紙に印刷された線と色や太さが異なることや,台紙に印刷されている「アタリケイ」の文字が顔料層に存在しないこと,被告新製品において,台紙に印刷された線のうち顔料層に形成されていない線が複数存在することや,台紙に印刷されていない矢印が顔料層に形成されていることなどを指摘して,台紙に印刷されたマークと同一のマークがイ ンク層に形成されているとはいえないと主張する。 しかし,上記説示のとおり,「同一のマーク」とは「台紙の表面に印刷されているマークと同一の位置にある治療用のマーク」を意味するのであり,台紙に印刷されたマークとインク層に形成されたマークの線の太さや色が異なることや,台紙に治療用のマークと同一のマークに加えて,線や文字が印刷されていることや, る治療用のマーク」を意味するのであり,台紙に印刷されたマークとインク層に形成されたマークの線の太さや色が異なることや,台紙に治療用のマークと同一のマークに加えて,線や文字が印刷されていることや,治療用のマークそのものではない矢印がインク層に形成されており,これが台紙には印刷されていないことは,「同一マーク」の存否の判断を左右しない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 ウ被告各製品につき証拠(甲15)によれば,放射線治療の際には,皮膚にマークした直線や十字を方向の目印としたり,十字の中心点を治療範囲の中心点の目印とするものであることが認められるから,十字のマークを使用する場合には,その中心点の位置と交差する2本の直線の方向が,L字のマークを使用する場合には,その角部分の位置と角から延びる2本の直線の方向がそれぞれ治療用の目印となるものと認められる。 そうすると,被告各製品においては,治療用のマークは,被告旧製品(直線)及び被告新製品(直線)では直線,被告旧製品(十字)及び被告新製品(十字)では十字の中心点の位置と直線の方向がわかる程度の長さの直線部分を有する十字の中心部分,被告新製品(L字)の治療用のマークはL字の角の位置と角から延びる2本の直線の方向がわかる程度の長さの直線部分を有するL字の角部分であると認められる。 そして,被告旧製品(直線)及び被告新製品(直線)では,台紙に印刷されている直線と同じ位置にインク層において直線が形成されており,被告旧製品(十字)及び被告新製品(十字)では,台紙に印刷された十字の中心部分と同じ位置にインク層において十字の中心部分が形成されており, 被告新製品(L字)では,台紙に印刷されたL字の角部分と同じ位置にインク層においてL字の角部分が形成されている の中心部分と同じ位置にインク層において十字の中心部分が形成されており, 被告新製品(L字)では,台紙に印刷されたL字の角部分と同じ位置にインク層においてL字の角部分が形成されているから,被告各製品はいずれも,台紙の表面に印刷されているマークと同一の位置に治療用のマークがインク層において形成されていると認められる。 したがって,被告各製品は構成要件Cを充足する。 (5) 構成要件D(「インク層の裏面に積層されている接着層」)の充足性について前記(3)アのとおり,「裏面に」は「裏側に」という位置関係を示すものであると認めるのが相当であり,「裏面に直接」の意味であると限定的に解することはできない。そして,被告各製品において,インク層の裏側(台紙が存在する方向を表側とした場合の反対側)に接着層が存在することは当事者間に争いがない。 したがって,被告各製品は構成要件Dを充足する。 (6) 構成要件Eの充足性について前記(5)のとおり,被告各製品は,構成要件Dを充足しており,構成要件Eにおける「該接着層」を有する。そして,被告各製品の接着層の裏面に剥離可能に積層されている保護紙が存在することは当事者間に争いがない。 したがって,被告各製品は構成要件Eを充足する。 (7) 構成要件Fの充足性について被告は,被告各製品においては皮膚側に転写されるのは「接着層,保護層,顔料層及び高輝度反射層」の4層であるから,構成要件Fの「前記接着層,インク層及び保護シート層を皮膚側に転写して」を充足しないと主張する。 しかし,被告各製品においては,接着層,インク層に当たる「顔料層」及び保護シート層に当たる「高輝度反射層」又は「シート層」が転写されるのであるから,構成要件Fの「前記接着層,インク層及び保護シート層を皮膚側に転写して」を ては,接着層,インク層に当たる「顔料層」及び保護シート層に当たる「高輝度反射層」又は「シート層」が転写されるのであるから,構成要件Fの「前記接着層,インク層及び保護シート層を皮膚側に転写して」を充足するというべきである。 なお,被告は,本件発明は5層構造であるところ,被告各製品は7層構造であり,特に接着層の幅を広くしているために皮膚への接着力に優れるものとしていることから,保護層が必要となっており,本件発明とは技術的思想が異なる旨主張するが,被告各製品において接着層の幅を広くすることで接着力が増大するという作用効果が生じていたとしても,そもそも被告各製品は,水転写タイプの治療用マーカーであって保護シート層が存在することにより長時間維持できるという本件発明の技術的意義を具備しているのであるから,保護層が存在することをもって,被告各製品が本件発明の技術的範囲に属さないということはできない。 また,被告は,被告各製品では,顔料層に比べて接着層が非常に広いことから柔軟性に乏しいとか,被告新製品の高輝度反射層は非常に薄く隙間が多いから(乙7・写真4),顔料層を十分保護するものではないなどとも主張しているが,高輝度反射層が顔料層を十分に保護するものであることは前記(3)で説示したとおりであり,また,被告各製品は,「皮膚と一緒に伸縮し,1週間ほどは落ちない」といった特徴(甲6,甲14・4~6頁)を有しているのであるから,被告各製品は,「皮膚に対して柔軟性に富み,かつ摩擦に強いものである」と認められる。 以上から,被告各製品は,構成要件Fを充足する。 (8) 小括以上のとおり,被告各製品は,いずれも本件発明の構成要件を全て充足するから,本件発明の技術的範囲に属する。 3 争点(2)(本件特許権が特許無効審判により無効にされ Fを充足する。 (8) 小括以上のとおり,被告各製品は,いずれも本件発明の構成要件を全て充足するから,本件発明の技術的範囲に属する。 3 争点(2)(本件特許権が特許無効審判により無効にされるべきものか否か)について(1) 無効理由1(サポート要件違反・実施可能要件違反)について前記2(3)で説示したとおり,本件発明における「裏面に」は,介在層が存在する場合も含むところ,被告は,本件明細書等には介在層を含む場合の構 造の開示がないから,サポート要件違反及び実施可能要件違反の無効理由があると主張する。 しかし,前記2(3)のとおり,本件明細書等には,基台紙と保護シート層の間に水溶性の糊のコーティングが存在する場合が開示されており,介在層を含む場合の構造が開示されている。また,本件発明は,介在層の存在を要件とするものでもないし,介在層がなければ実施できないというものでもないから,糊以外の介在層についての開示がないことをもってサポート要件や実施可能要件に違反するということもできない。 したがって,無効理由1に関する被告の上記主張は理由がない。 (2) 無効理由2(明確性要件違反)についてア 「裏面に」につき前記2(3)のとおり,本件明細書等の記載からすると,本件発明における「裏面に」は直接の裏面に限定されるものではないことが明らかであり,「裏面に」の文言が不明確であるということはできない。 なお,被告は,介在層を含んでもよいとすると,どのような膜をどのような膜厚で何種類含んでよいかなどが不明であるから権利範囲が無限定に広まってしまうと主張するが,本件発明の対象が治療用のマーカーであること,本件発明の目的及び作用効果を考慮すれば,介在層の膜厚や種類にはおのずと限界があることは明らかであるから,権利範囲が無 限定に広まってしまうと主張するが,本件発明の対象が治療用のマーカーであること,本件発明の目的及び作用効果を考慮すれば,介在層の膜厚や種類にはおのずと限界があることは明らかであるから,権利範囲が無限定に広まるとはいえない。 イ 「透明な」につき前記2(3)のとおり,本件明細書等の記載からすると,構成要件Bの「透明な」とは,皮膚に転写された治療用のマークが保護シートを通して目印として利用可能な程度に容易に目視できることを意味するものと理解できるから,「透明な」の文言が不明確であるということはできない。 ウ 「治療用の目印」につき 前記2(2)のとおり,本件明細書等の記載からすると,構成要件Aの「治療用の目印となるマーク」とは,「インク層に形成される治療用のマークと同一の位置にあるマーク」を意味するものと理解できるから,構成要件Aの「治療用の目印」という文言が不明確であるということはできない。 エしたがって,無効理由2に関する被告の上記主張は理由がない。 (3) 無効理由3(乙1発明に基づく進歩性欠如)についてア乙1発明の内容乙1発明の構成は次のとおりである。 A’剥離性シートとB’該剥離性シートの裏面に剥離可能に積層されている透明弾性層と,C’該透明弾性層の裏面に積層された着色印刷インキ層と,D’該着色印刷インキ層の裏面に積層されている粘着剤層と,E’該粘着剤層の裏面に剥離可能に積層されているセパレーターとによって構成され,F’前記セパレーターを剥がして,前記粘着剤層を皮膚に押し当てることにより,前記粘着剤層,着色印刷インキ層及び透明弾性層を皮膚側に転写して,前記透明弾性層,着色印刷インキ層及び粘着剤層が皮膚に対して柔軟性に富み,かつ摩擦に強いものである転写シール。 イ本件発明 により,前記粘着剤層,着色印刷インキ層及び透明弾性層を皮膚側に転写して,前記透明弾性層,着色印刷インキ層及び粘着剤層が皮膚に対して柔軟性に富み,かつ摩擦に強いものである転写シール。 イ本件発明と乙1発明との対比(ア)一致点乙1発明における剥離性シート,透明弾性層,着色印刷インキ層,粘着剤層,セパレーターは,それぞれ,本件発明における「基台紙」「保護シート層」「インク層」「接着層」「保護紙」に相当すると認められ,また,本件発明における「治療用マーカー」は「転写シール」の一種であるということができるから,本件発明と乙1発明は次の各点で一致する。 「基台紙と,該基台紙の裏面に剥離可能に積層されている透明な保護シート層と,該保護シート層の裏面に積層されたインク層と,該インク層の裏面に積層されている接着層と,該接着層の裏面に剥離可能に積層されている保護紙とによって構成され,前記保護紙を剥がして,前記接着層を皮膚に押し当てることにより,前記接着層,インク層及び保護シート層を皮膚側に転写して,前記保護シート層,インク層及び接着層が皮膚に対して柔軟性に富み,かつ摩擦に強いものである転写シール。」(イ) 相違点乙1公報の記載からすると,本件発明と乙1発明は,次の各点で相違する。 ① 相違点1本件発明では,基台紙の表面に治療用の目印となるマークが印刷されているのに対し,乙1発明にはそのような開示はない点② 相違点2本件発明では,インク層のマークが基台紙のマークと同一であるのに対し,乙1発明にはそのような開示はない点③ 相違点3本件発明では,転写する際に基台紙に水分を含ませているのに対し,乙1発明では,水分を含ませるかどうか必ずしも明らかではない点④ 相違点4本件発明 明にはそのような開示はない点③ 相違点3本件発明では,転写する際に基台紙に水分を含ませているのに対し,乙1発明では,水分を含ませるかどうか必ずしも明らかではない点④ 相違点4本件発明が,治療用マーカーであるのに対し,乙1発明では皮膚用の入れ墨転写シールを含めた各種用途の転写シールである点ウ容易想到性 上記相違点が,本件特許の出願当時,当業者にとって容易想到であったか否か検討する。 (ア) 乙2文献について被告は,乙1発明に乙2文献の記載を組み合わせることによって,当業者が容易に相違点①②を想到できると主張する。そこで,乙2文献についてみると,乙2文献には次の各記載がある。 ・「2.実用新案登録請求の範囲(1)伸縮自在となる基材の表面に,マーク層と,このマーク層上に粘着剤層を順次積層して設け,前記マーク層と粘着剤層が基材の伸縮性に追従する伸縮性を備えている曲面等に用いる転写マーク。」(1頁・4~8行目)・「曲面等に用いる転写マークを提供することを目的としている」(2頁・6~7行目)〔実施例〕・「シリコン等によって離型処理を施した基材1の表面に,前処理層2とマーク層3及び粘着剤層4を順次積層し,前記粘着剤層4上にこれを保護する離型シート5が重ねられている。」(3頁8~12行目)・「なお,基材1は透明又は半透明とし,予め位置決用のラインを印刷しておくと,マーク層の貼付位置が正確になる。」(5頁下から8行目~6行目)以上の記載からすると,乙2文献には「基材,マーク層,粘着剤層,離型シート」の4層からなる転写マーク(転写シールと同じものを指すと推認される。)が記載されており,これらの層は,本件発明においては「基台紙,インク層,接着層,保護紙」に相当すると考えられる。そうすると, ト」の4層からなる転写マーク(転写シールと同じものを指すと推認される。)が記載されており,これらの層は,本件発明においては「基台紙,インク層,接着層,保護紙」に相当すると考えられる。そうすると,乙2文献には,基台紙,インク層,接着層,保護紙からなる転写シールについて,インク層に形成されたマークの貼り付け位置を正 確にするために,基台紙を透明又は半透明とした上で,位置決め用のラインを印刷しておくことが記載されていると認められる。 (イ) 上記乙2文献の記載からすると,乙2文献に接した当業者は,転写シールにおいては位置決めを正確にするという課題があることを認識し,乙1発明において,基台紙を透明にして位置決め用のラインを印刷することを容易に想到できるものと一応は考えられ,本件発明との関係においても,位置決めを正確にするという課題は共通するものといえる。 しかし,本件発明において基台紙に印刷されている「治療用の目印となるマーク」は,「インク層に形成された治療用の目印となるマークと同一の位置にあるマーク」であるところ,乙1発明に乙2文献の記載を組み合わせたとしても,位置決めを正確にするという課題を解決するために,インク層と同一の位置のマークを基台紙に印刷することや,転写シールを治療用に用いることとしてインク層に治療用のマークを形成することまでを容易に想到できるとはいえない。 (ウ) そうすると,その余の相違点について検討するまでもなく,本件発明が,乙1発明から容易に想到することができたということはできない。 (4) したがって,無効理由3に関する被告の上記主張は理由がない。 4 争点(3)(差止めの必要性)について被告が,被告新製品の製造,販売及び譲渡の申し出をしていることについては当事者間に争いがなく,これらの行為の前 理由3に関する被告の上記主張は理由がない。 4 争点(3)(差止めの必要性)について被告が,被告新製品の製造,販売及び譲渡の申し出をしていることについては当事者間に争いがなく,これらの行為の前提として在庫を所有していることも認められる。 そして,被告が,かつて被告旧製品の製造,販売及び譲渡の申し出をしていたことは争いがないところ,この点に関して被告は,平成26年2月より被告旧製品から被告新製品へとデザインを変更しており,現在被告旧製品を販売しておらず,また,販売等する可能性はないと主張する。 しかし,被告は,少なくとも同月7日時点においては,被告旧製品と被告新 製品とを併売していた(甲13・2頁)ことからすると,被告が被告旧製品を今後も製造,販売及び譲渡をする可能性がないと認めることはできないというべきである。 したがって,被告各製品全てについて差止め及び廃棄に係る請求を認める必要性がある。 5 結論以上によれば,被告各製品は,いずれも本件発明の技術的範囲に属し,差止めの必要性も認められる。 したがって,原告の請求は全部理由があるから,これを認容することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 古谷健二郎 裁判官 勝又来未子 別紙物件目録 製品名:「Rポイントマーカー」但し以下の製品番号(型番)のもの。 1 P-001 2 P-002 3 P-003 4 P-00 別紙物件目録 製品名:「Rポイントマーカー」但し以下の製品番号(型番)のもの。 1 P-001 2 P-002 3 P-003 4 P-004 5 P-005 6 P-006 7 P-007 8 P-008 9 S-101S-102 11 S-103 12 S-104 13 S-105 14 S-106E-101 16 E-102 17 E-103 別紙「特許公報」は省略

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