【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告代理人福間昌作の上告理由第一点について。 原審の確定する事実によれば、合
主文本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由上告代理人福間昌作の上告理由第一点について。 原審の確定する事実によれば、合名会社D商事をも含めた訴外E建設株式会社に対する債権者が、右E建設の事業を継続せしめてその再建をはかることにより自らの債権の満足をえようとして、D商事の代表者FらがE建設よりその経営一切の委任を受けたというのであり、右委任に基づいてFらは本件請負工事を続行したというのであるから、本件委任事務の処理は、委任者の利益であると同時に受任者の利益でもある場合にあたるものというべきである。そして、委任が当事者双方の対人的信用関係を基礎とする契約であることに徴すれば、右のような場合においても、受任者が著しく不誠実な行動に出た等やむをえない事由があるときは、委任者は民法六五一条に則り委任契約を解除することができるものと解するのを相当とする(昭和三九年(オ)第九八号・同四〇年一二月一七日第二小法廷判決・裁判集八一号五六一頁)。 而して、原審の確定する事実によれば、D商事は、E建設の乗用車一台を私物視して他の債権者に非難され、また、E建設所有の不動産を他の債権者およびE建設の承諾もなく所有名義をD商事に移転したため、他の債権者の足並みが乱れ、右事実に端を発し、他の債権者も我勝ちにE建設の動産類を持ち出し、遂にE建設は不渡を出すに至つた、というのであるから、このような受任者である会社の代表者Fらの行動は、著しく不誠実なものというべく委任者たるE建設としては、委任契約を解除するに足りるやむをえない事由あるものということができる。したがつて、E建設のした本件委任契約解除の意思表示を有効と認めた原審の判断は、結局、正- 1 -当である。 所論は、Fに対する経営委 解除するに足りるやむをえない事由あるものということができる。したがつて、E建設のした本件委任契約解除の意思表示を有効と認めた原審の判断は、結局、正- 1 -当である。 所論は、Fに対する経営委任と本件建築工事遂行および代金受領事務の委任とを別個の委任契約に基づくものであるとの前提のもとに、D商事の不信行為は、建築工事請負代金受領事務の委任を解除する理由たりえない旨主張するが、原審の確定する事実によれば、所論のごとく別個の委任契約が成立したものではないから、右論旨は、原審の確定しない事実関係に立つて原判決を非難するに帰し、採ることをえない。また、原審の確定する事実関係に照らせば、本件委任契約の解除をもつて、信義誠実の原則に反し、権利の濫用にあたるものとすることはできず、原審の判断は正当である。それ故、原判決には所論のごとき違法はなく、論旨は理由がない。 同第二点について。 所論の約定遅延損害金債権に基づく相殺契約の主張は、上告人の被承継人である有限会社AとD商事との間に成立した旨主張されているのであることは本件記録上明らかであり、被上告人に対し右反対債権をもつて相殺の主張がされているものと解することはできない。所論引用の判例はいずれも本件に適切でなく、原判決には所論のごとき違法はない。それ故、論旨は理由がない。 同第三点について。 所論の点に関する上告人の抗弁の要旨は、D商事との間の法律行為により請負代金債務が消滅したものであることを主張するものであることは本件記録に照らして明らかであり、所論のごとくE建設との間の債務消滅の法律行為を主張するものではない。したがつて、この点につき判断を加えなかつた原判決に所論のごとき違法ありとはいえず、論旨は理由がない。 同第四点について。 原審に所論のごとき釈明義務あるものとすることはできな するものではない。したがつて、この点につき判断を加えなかつた原判決に所論のごとき違法ありとはいえず、論旨は理由がない。 同第四点について。 原審に所論のごとき釈明義務あるものとすることはできないから、所論の点について釈明権を行使しなかつた原審に釈明権不行使の違法ありとすることはできない。 - 2 -所論引用の判例は必ずしも本件に適切なものとはいえず、原判決には所論の違法はなく、論旨は理由がない。 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官奥野健一裁判官草鹿浅之介裁判官城戸芳彦裁判官石田和外裁判官色川幸太郎- 3 -
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