令和1(ワ)20849 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年1月27日 東京地方裁判所
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判決文本文32,020 文字)

- 1 -令和4年1月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和元年(ワ)第20849号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和3年10月28日判決主文 1 原告が,破産者クリアアンサー株式会社に対し,東京地方裁判所令和元年(フ)第9296号破産事件につき55万円の破産債権を有することを確定する。 2 原告が,破産者リアライズ株式会社に対し,東京地方裁判所令和元年(フ)第9297号破産事件につき55万円の破産債権を有することを確定する。 3 被告A,被告B及び被告Cは,原告に対し,連帯して,55万円及びこれに 対する平成29年10月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告の被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,これを10分し,その9を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。 6 この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 原告が,破産者クリアアンサー株式会社に対し,東京地方裁判所令和元年(フ)第9296号破産事件につき550万円の破産債権を有することを確定す る。 2 原告が,破産者リアライズ株式会社に対し,東京地方裁判所令和元年(フ)第9297号破産事件につき550万円の破産債権を有することを確定する。 3 被告A,被告B及び被告Cは,原告に対し,連帯して,550万円及びこれに対する平成29年10月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支 払え。 - 2 -第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,破産者クリアアンサー株式会社(以下「クリアアンサー」という。)の従業員兼破産者リアライズ株式会社(以下「リアライズ」という。)の代表者であった被告A及び 事案の概要等 1 事案の概要本件は,破産者クリアアンサー株式会社(以下「クリアアンサー」という。)の従業員兼破産者リアライズ株式会社(以下「リアライズ」という。)の代表者であった被告A及びクリアアンサーの従業員であった被告B並びに原告の母 である被告Cが,共謀の上,平成29年10月3日,引きこもりの状態にあった原告に自立支援サービスを受けさせるため,被告Cと同居する原告の自宅(以下「原告ら自宅」という。)2階の原告の部屋(以下「原告部屋」という。)から,原告をその意に反して連れ出し,同日から同月5日まで,原告をその意に反してクリアアンサーが管理していた施設内で監禁したとして,原告 が,被告A,被告B及び被告Cに対しては,民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下,単に「民法」という。)719条1項に基づく損害賠償として慰謝料500万円及び弁護士費用50万円並びにこれらに対する損害発生日である同月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,被告クリアアンサー破産管財人に対しては,民法715条1 項に基づく損害賠償金550万円の破産債権を有することの確定を,被告リアライズ破産管財人に対しては,民法715条1項又は会社法350条に基づく損害賠償金550万円の破産債権を有することの確定を,それぞれ求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに括弧内に記載した証拠及び弁論 の全趣旨により容易に認められる事実。以下,単に「前提事実」という。)(1) 当事者等ア原告原告は,平成19年3月に大学の心理学科を卒業し,千葉県鎌ケ谷市所在の病院においてデイケアの相談員として約2年間勤務した後,資格取 得のため福岡県に転居して同県内の専門学校に通学し,社会福 原告は,平成19年3月に大学の心理学科を卒業し,千葉県鎌ケ谷市所在の病院においてデイケアの相談員として約2年間勤務した後,資格取 得のため福岡県に転居して同県内の専門学校に通学し,社会福祉士及び - 3 -精神保健福祉士の各資格を取得した。 その後,原告は,平成23年3月に発生した東日本大震災を機に千葉県鎌ケ谷市所在の実家(原告ら自宅)に戻り,両親(原告の父がD,母が被告Cである。)及び妹との生活を始めたが,同年12月にDが原告ら自宅を出て別居し,また,統合失調症の妹が平成29年6月から原告ら 自宅を出て一人暮らしを始めたことから,その後は,原告ら自宅において被告Cと2人で生活をしていた。 原告は,原告ら自宅での生活を始めた後,ネットカフェでのアルバイトとして勤務していたが,体調の悪化を理由に平成27年9月頃にアルバイトを辞めた後は,職に就かず2階の自室(原告部屋)で過ごすことが 多くなっていた。 原告は,平成30年1月31日から通院及び加療を続けていた千葉県船橋市所在のこころクリニック船橋(以下「こころクリニック船橋」という。)において,同年10月14日,注意欠如症及び自閉スペクトラム症と診断され,また,令和元年9月8日,既存障害として受容性言語症 及び注意欠如症があるほか自閉症及び心的外傷後ストレス障害を発病しているとの診断を受けた。 (甲2,10,15,弁論の全趣旨)イ D及び被告CDは,原告の父であり,被告Cは,原告の母である。 Dは,鬱病を患っており,松戸市役所に定年まで勤め,定年後も再任用されていたが,現在は無職である。 被告Cは,複数の病院で看護師として勤務した後,現在は特別養護老人ホームの施設長を務めている。 Dが平成23年12月に原告ら自宅を出て行ったことか 定年後も再任用されていたが,現在は無職である。 被告Cは,複数の病院で看護師として勤務した後,現在は特別養護老人ホームの施設長を務めている。 Dが平成23年12月に原告ら自宅を出て行ったことから,D及び被告 Cは別居生活をすることとなり,平成26年6月に両者は離婚した。 - 4 -(甲11,丙1)ウ被告A,被告B,クリアアンサー及びリアライズクリアアンサーは,引きこもり等の問題を抱えた者の自立支援サービスを提供する団体を運営していた株式会社であり,「あけぼのばし自立研修センター」という名称の施設(以下「本件施設」という。)において, 上記サービスを提供していた。 リアライズは,クリアアンサーの完全子会社であり,「東京自立研修センター」という名称の施設において,クリアアンサーと同様のサービスを提供するほか,クリアアンサーが提供するサービスに関する集客活動を行っていた。 リアライズが用いている契約書によれば,リアライズが受託する業務をクリアアンサーの運営する施設において実施するものとされており,また,リアライズにおける業務の前提となる訪問カウンセリングについても,クリアアンサーが運営する施設に入所させる目的で行うものとされている。 被告Aは,本件当時,クリアアンサーの従業員兼リアライズの代表取締役であった。また,被告Bは,本件当時,クリアアンサーの従業員であった。 (乙6及び8の各1及び2,弁論の全趣旨)(2) 原告が本件施設に入所するまでの経緯 ア被告Cとリアライズの間の契約締結被告Cは,平成29年9月30日,リアライズに対して,原告が2年ほど原告部屋内において引きこもりの状態にあることなどを相談し,担当となった被告A及び被告Bから本件施設の説明を受けた。これを受 締結被告Cは,平成29年9月30日,リアライズに対して,原告が2年ほど原告部屋内において引きこもりの状態にあることなどを相談し,担当となった被告A及び被告Bから本件施設の説明を受けた。これを受けて,同日,被告Cは,リアライズとの間で,クリアアンサーの運営する施設 (本件施設)において,リアライズが,原告に対して,社会人として自 - 5 -立した生活を営むための指導・支援及びその前提となる就業についての指導・支援などを行う業務(自立支援サービス)を提供するとの契約を結び(以下「本件契約1」という。),その後,その対価として235万4400円を支払った。また,被告Cは,同日,リアライズに対して,本件契約1に関連して,原告がクリアアンサーの運営する施設(本件施 設)に入所するように説得するためのカウンセリングを目的とした面談等を行うとの契約を結び(以下「本件契約2」という。また,本件契約1と併せて「本件各契約」という。),同年10月4日,その対価として83万1600円を支払った。 (乙1ないし3,6及び8の各1及び2,弁論の全趣旨) イ原告が原告ら自宅を出るまでの経緯被告A及び被告Bの両名を含むクリアアンサーの従業員合計4名(うち1名は女性である。以下,これら4名を「被告Aら」という。)は,本件契約2に基づき,原告へのカウンセリングを行うため,平成29年10月3日の遅くとも午前10時頃までに,原告ら自宅を訪れた。 被告Cは,原告に対して被告Aらを紹介した後,原告部屋から退出した。 これを受けて,被告Aらが原告部屋に入り,「あけぼのばし自立研修センター」の資料(乙7(乙5を抜粋したもの))を見せながら本件施設の説明をした。原告は,当初,被告Aに対して背を向け,全く返事をしなかったが,被告Aが質問 が原告部屋に入り,「あけぼのばし自立研修センター」の資料(乙7(乙5を抜粋したもの))を見せながら本件施設の説明をした。原告は,当初,被告Aに対して背を向け,全く返事をしなかったが,被告Aが質問を続けるうち,しばらくして返事をするよう になった。 原告は,同日午前10時3分頃,Dに対し,自立支援サービスのセンターから相談員が来訪したことなどを伝える旨のメールを送信した。Dは,これを受けて,遅くとも同日午前11時頃までに,原告ら自宅を訪れた。 Dは,原告部屋において,原告及び被告Aに対して,現在の状況につい て説明を求めたことから,被告Aは,被告Cと直接話をしてもらう必要 - 6 -があると考え,Dを原告ら自宅の1階に誘導し,同所において,被告C,D及び被告Aらの話合いの場が設けられた。その際,被告Cは,Dに対し,原告が自立した生活を営めるようにするためにクリアアンサー及びリアライズに支援を依頼することとなった経緯等につき説明した。 その後,原告は,同日午後5時頃,部屋着のまま着替えることなく原告 部屋を後にし,靴を履かずに裸足のまま原告ら自宅を出て,被告Aらとともに,同人らが用意していた自動車に乗った。 (甲3,乙7,弁論の全趣旨)ウ原告の本件施設内における状況(ア) 原告が生活していた本件施設内の部屋について 原告は,平成29年10月3日から同月5日までの間,本件施設に入所した。本件施設内において原告が生活していた4階の部屋(以下「本件部屋」という。)は,別紙図面のとおりであり,風呂・トイレや電子レンジ,冷蔵庫,キッチンなど生活に必要な設備は整っていたものの,入所者が寝食する場所とは別に,原告の動静を24時間にわたって監督 するクリアアンサーの女性従業員が常駐する場所が設けられてい レンジ,冷蔵庫,キッチンなど生活に必要な設備は整っていたものの,入所者が寝食する場所とは別に,原告の動静を24時間にわたって監督 するクリアアンサーの女性従業員が常駐する場所が設けられていた。 また,入所者が寝食する場所は,畳敷きになっており,外側には鍵付きの窓が備え付けられていた。 (乙9の1ないし14,乙10,弁論の全趣旨)(イ) 平成29年10月3日から同月5日までの原告の状況 原告は,平成29年10月3日午後5時頃に原告ら自宅を出た後,同日午後7時頃,被告Aらの案内により,本件部屋に入った。 クリアアンサーの従業員は,原告に対し,同日以降,弁当とお茶を提供していたが,原告がこれを口にすることはなかった。これを受けて,同月5日,クリアアンサーからの連絡により被告Cが本件部屋を訪れて 原告に対して声を掛けたものの,原告が全く反応しなかったことから, - 7 -同日午後4時30分頃,クリアアンサーの従業員が救急車を呼び,原告は,東京女子医科大学病院に救急搬送された。 原告は,同年11月4日までの間,上記病院に入院した。また,同病院において,原告が適応障害及び脱水症を発症したという内容の同年12月22日付け診断書が作成された。 (甲1,乙9の1ないし4,弁論の全趣旨)(3) 本件訴訟の提起並びにクリアアンサー及びリアライズに対する破産手続開始決定等原告は,令和元年8月2日,本件訴訟を提起した。 クリアアンサー及びリアライズは,令和元年12月23日午後1時,東京 地方裁判所より破産手続開始決定を受け(同裁判所令和元年(フ)第9296号,同裁判所令和元年(フ)第9297号),同日,両社の破産管財人として,弁護士E(被告クリアアンサー破産管財人兼被告リアライズ破産管財人)が選任さ 開始決定を受け(同裁判所令和元年(フ)第9296号,同裁判所令和元年(フ)第9297号),同日,両社の破産管財人として,弁護士E(被告クリアアンサー破産管財人兼被告リアライズ破産管財人)が選任された。 本件訴訟手続は,クリアアンサー及びリアライズとの関係において,上記 破産手続開始決定により中断したが,その後,被告クリアアンサー破産管財人及び被告リアライズ破産管財人が,クリアアンサー及びリアライズに係る各破産事件において,原告の届け出た破産債権各550万円の全額を認めなかったことから,原告は,令和3年8月3日,当裁判所に対し,被告クリアアンサー破産管財人及び被告リアライズ破産管財人に本件訴訟手続を受継さ せる旨の申立てをし,当裁判所はこれを認めた。 (当裁判所に顕著) 3 争点(1) 被告A及び被告Bの行為が不法行為に当たるか。(争点1)(2) クリアアンサー及びリアライズが,被告A及び被告Bの不法行為につき民 法715条1項に基づく損害賠償責任を負うか。(争点2) - 8 -(3) リアライズが,被告Aの不法行為につき会社法350条に基づく損害賠償責任を負うか。(争点3)(4) 被告A,被告B及び被告Cは,原告に対する不法行為について共謀していたか。(争点4)(5) 損害の発生及びその数額(争点5) 4 争点に関する当事者の主張(1) 被告A及び被告Bの行為が不法行為に当たるか。(争点1)(原告の主張)以下の各事実に着目すると,被告A及び被告Bが,平成29年10月3日午前9時頃に原告ら自宅を訪れ,本件施設に入所するよう説得を続けた上で, 同日午後5時頃,原告を,被告A及び被告Bを含むクリアアンサーの従業員が用意した自動車に乗り込ませて原告ら自宅から連れ出して本件施設 原告ら自宅を訪れ,本件施設に入所するよう説得を続けた上で, 同日午後5時頃,原告を,被告A及び被告Bを含むクリアアンサーの従業員が用意した自動車に乗り込ませて原告ら自宅から連れ出して本件施設に入所させ,同日午後7時から同月5日までの間,本件部屋内に監禁した一連の行為は,原告の意に反するものであって,不法行為に当たる。 ア原告が原告ら自宅を出て本件施設に向かうまでの状況 被告A及び被告Bを含む4,5名のクリアアンサーの従業員(被告Aら)は,平成29年10月3日午前9時頃から同日午後5時頃まで,原告部屋において,原告に対し,被告Aらに同行してクリアアンサーの運営する施設(本件施設)に入所し,同施設内において生活するよう求めた。 その後,被告Aらのうち,2名の従業員が原告の両腕をそれぞれ抱え込 み,1名の従業員が原告の胴体を後ろから抱えて羽交い絞めにし,同日午後5時頃,原告の意に反して,原告を原告ら自宅から連れ出して被告Aらの用意した自動車に乗せ,同日午後7時頃,本件施設に連行した。 イ原告の本件施設内における処遇被告A及び被告Bは,平成29年10月3日午後7時頃から同月5日ま で,原告を本件部屋に閉じ込めた。 - 9 -本件部屋内においては,原告の行動を監視するために,クリアアンサーの従業員が24時間常駐していた。 本件部屋の出入口のドアノブには,室内側・室外側双方にシリンダー錠が付いており,部屋の内外いずれからも鍵によって施錠及び解錠することができたが,施錠及び解錠に用いるための鍵は,本件部屋内において 原告を監視していたクリアアンサーの従業員が所持していた。 また,本件部屋内において原告が居住していた畳敷き部分の窓には,もともと窓に取り付けられていた鍵を固定する補助鍵が設置されて施錠 いて 原告を監視していたクリアアンサーの従業員が所持していた。 また,本件部屋内において原告が居住していた畳敷き部分の窓には,もともと窓に取り付けられていた鍵を固定する補助鍵が設置されて施錠されており,施錠及び解錠に用いるための鍵は,同じく本件部屋内に常駐するクリアアンサーの従業員が所持していた。 さらに,本件施設の非常階段に出るためのドアには,「非常階段は施錠いたします。鍵は,スタッフが持っています。」と記載された貼り紙があり,同ドアも常時施錠されていた。 本件部屋及び本件施設から自由に外出することのできなかった原告は,恐怖と不安のあまり,全身の震えと涙が止まらない状態が続き,東京女 子医科大学病院に救急搬送されるまで,食事も水も取ることができなかった。 (被告A,被告B,被告クリアアンサー破産管財人及び被告リアライズ破産管財人の主張)以下のとおり,被告A及び被告Bの行為が原告の意に反するものではない ことなどからすれば,被告A及び被告Bの行為が不法行為に当たるとはいえない。 ア原告が原告ら自宅を出て本件施設に向かうまでの状況平成29年10月3日,D及び被告Cは,クリアアンサーの運営する施設(本件施設)に入所することに同意しない原告を説得するため,原告 部屋に入り,Dが,原告に対し,「起きなさい○○(原告)。行かなく - 10 -ちゃだめよ。」などと声を掛けた上で脇を抱えて原告を立ち上がらせた。 その後,原告は,自ら歩いて原告部屋を出て階段を降り,同日午後5時頃,被告Aらが用意した自動車に歩いて乗った。これは,原告が,これ以上原告ら自宅で生活を続けることはできないと観念し,自らの意思で行動したものである。 イ原告の本件施設内における処遇(ア) 被告A及び被告Bが本 車に歩いて乗った。これは,原告が,これ以上原告ら自宅で生活を続けることはできないと観念し,自らの意思で行動したものである。 イ原告の本件施設内における処遇(ア) 被告A及び被告Bが本件施設内における原告の処遇に関与していないこと被告A及び被告Bは,本件当時,クリアアンサーの業務部又は業務統括部に所属していた者であり,原告の本件施設到着以降の処遇を所管し ていた育成部に所属していたわけではなく,原告の処遇に関与していなかった。 (イ) クリアアンサーが違法な監禁行為をしていないこと本件部屋内の出入口ドアや,原告が居住していた畳敷き部分の窓には,原告が自身で解錠できない鍵は設置されていなかった。 また,本件部屋内にクリアアンサーの従業員が常駐することは,未知の施設において生活することに対する精神的な不安を和らげるための措置であるし,従業員が常駐していた場所と原告が居住していた場所とは明確に区分されており,原告のプライバシーは十分に保たれていた。 さらに,原告は,クリアアンサー従業員に対し,同人が常駐すること について明確に拒否する意思を伝えたこともなかった。 (被告Cの主張)ア原告が原告ら自宅を出て本件施設に向かうまでの状況被告A,被告B,被告クリアアンサー破産管財人及び被告リアライズ破産管財人の主張アと同旨。 イ原告の本件施設内における処遇 - 11 -本件施設内における原告の状況等については知らない。 また,被告A及び被告Bが原告を本件施設に入所させたことが不法行為に当たるとの主張は争う。 (2) クリアアンサー及びリアライズが,被告A及び被告Bの不法行為につき民法715条1項に基づく損害賠償責任を負うか。(争点2) (原告の主張)平成29年10月 当たるとの主張は争う。 (2) クリアアンサー及びリアライズが,被告A及び被告Bの不法行為につき民法715条1項に基づく損害賠償責任を負うか。(争点2) (原告の主張)平成29年10月3日当時,クリアアンサー及びリアライズの被用者であった被告A及び被告Bが行った原告に対する不法行為は,クリアアンサー及びリアライズの事業の執行に伴うものである。 したがって,クリアアンサー及びリアライズは,被告A及び被告Bの不法 行為につき,民法715条1項に基づく損害賠償責任を負う。 (被告クリアアンサー破産管財人及び被告リアライズ破産管財人の主張)被告A及び被告Bが行った原告に対する不法行為がクリアアンサー及びリアライズに対する事業の執行に伴うものであること並びに被告A及び被告Bがリアライズの被用者であったことは,いずれも否認ないし争う。 (3) リアライズが,被告Aの不法行為につき会社法350条に基づく損害賠償責任を負うか。(争点3)(原告の主張)平成29年10月3日当時,リアライズの代表取締役であった被告Aが行った原告に対する不法行為は,リアライズの職務を行うに際してされたもの である。 したがって,リアライズは,被告Aの上記不法行為につき,会社法350条に基づく損害賠償責任を負う。 (被告リアライズ破産管財人の主張)リアライズの法人登記簿において,平成29年10月当時,被告Aがリア ライズの代表取締役として記載されていたことは認めるが,その余は否認な - 12 -いし争う。 (4) 被告A,被告B及び被告Cは,原告に対する不法行為について共謀していたか。(争点4)(原告の主張)被告A,被告B及び被告Cは,共謀の上,平成29年10月3日,原告の 意に反して原告を原告ら自 A,被告B及び被告Cは,原告に対する不法行為について共謀していたか。(争点4)(原告の主張)被告A,被告B及び被告Cは,共謀の上,平成29年10月3日,原告の 意に反して原告を原告ら自宅から連れ出した上,同日から同月5日までの間,原告の意に反して本件施設において監禁した。 したがって,被告A,被告B及び被告Cは,民法719条1項の共同不法行為に基づく損害賠償責任を負う。 (被告らの主張) 否認ないし争う。 (5) 損害の発生及びその数額(争点5)(原告の主張)被告A,被告B及び被告Cによる上記共同不法行為によって原告に発生した損害は,精神的損害につき500万円,弁護士費用につき同損害額の1割 に相当する50万円である。 (被告らの主張)否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 前提事実及び当事者間に争いのない事実,括弧内に記載した証拠並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 平成29年10月3日に至る経緯ア被告Cは,平成29年,原告部屋内において引きこもりの状態にあった原告を自立させることを意図して,インターネット上で,自立支援サービ スを提供する事業者を探していたところ,クリアアンサー及びリアライズ - 13 -の情報を発見し,リアライズに架電して面談を申し込んだ。(前提事実(2)ア,丙1,被告A本人,被告C本人)イ被告Cは,平成29年9月30日,被告A及び被告Bと面談をした。被告A及び被告Bは,被告Cが記入した書面に基づき,原告が生まれてから引きこもりに至るまでの経緯,原告と両親(D及び被告C)との関係,精 神的な疾患や自殺願望の有無,暴力性の有無,現在被告Cら家族が困っていること,これに対して家族が取っている対策 が生まれてから引きこもりに至るまでの経緯,原告と両親(D及び被告C)との関係,精 神的な疾患や自殺願望の有無,暴力性の有無,現在被告Cら家族が困っていること,これに対して家族が取っている対策等を確認したほか,クリアアンサーが管理する「あけぼのばし自立研修センター」(本件施設)に関して,資料(乙5)を用いて説明を行った。 被告A及び被告Bが説明に用いた資料には,本件施設の概要として「私 たちは,引きこもり・ニート・家庭内暴力・精神疾患などの問題を抱えた未就労の方々を研修生として迎え入れ,自立生活・就労の支援を行っている民間の自立支援センターです。」などの説明が記載されているほか,本件施設内の設備,提携支援団体・企業,クリアアンサーの関連企業,自立支援サービスに関する契約締結までの流れ,本件施設の入所者 (以下,単に「入所者」という。)が受けることとなるプログラムの内容などが記載されている。また,本件施設におけるプログラムに関し,入所者に対する「ご説明・説得」について,「ご本人様の部屋まで相談員が伺い,同じ目線で説得を致します。対話を繰り返し,説明・説得を試みます。」との記載が,「ご入所直後」について,「入所後当日に, センターのルールなどの説明をし,荷物の預かり,日用品の確認,部屋の選定などご本人と事務的な手続きをいたします。」との記載がある。 (前提事実(2)ア,乙1ないし5(枝番を含む。),30,被告A本人,被告B本人)ウ被告Cは,上記イの説明を踏まえて,被告A及び被告Bに対し,原告が 3か月間本件施設に入所するプランにより自立研修プログラムを実施して - 14 -もらいたいとの意向を伝え,平成29年9月30日,リアライズとの間で,リアライズが,原告に対して,社会人として自立した生活 設に入所するプランにより自立研修プログラムを実施して - 14 -もらいたいとの意向を伝え,平成29年9月30日,リアライズとの間で,リアライズが,原告に対して,社会人として自立した生活を営むための指導・支援及びその前提となる就業についての指導・支援などを行う業務(自立支援サービス)を提供し,被告Cがリアライズに対し,その対価として235万4400円を支払う内容の契約(本件契約1)及び本件契約 1に関連して,リアライズが原告に対し,クリアアンサーの施設に入所するように説得するためのカウンセリングを目的とした面談を行い,被告Cがリアライズに対し,その対価として83万1600円を支払う内容の契約(本件契約2)を締結した。また,被告C,被告A及び被告Bは,同日,原告と上記面談をするために原告ら自宅を訪問する日を,同年10月3日 とすることを決めた。 本件契約1に係る契約書においては,「丙(原告)の『衣・食・住』等の基本的な実生活の行動全てにおいて,適当と判断される時期に至るまで原則的に乙(リアライズ)が管理するものとし,乙(リアライズ)が適当と認める事象以外において,丙(原告)の独断での行動を原則的に 制限する。」などの定めがある。 また,本件契約2に係る契約書においては,「乙(リアライズ)は丙(原告)の心理状態を把握した上で,クリアアンサー株式会社が運営する『あけぼのばし自立研修センター』…に入所させる目的で,本業務のプランニングを行い,丙(原告)へのアプローチを行う。また甲(被告 C)は乙(リアライズ)のプランニングに原則的に従うこととする。」などの定めがある。 被告Cは,リアライズに対し,本件契約1の対価である235万4400円を分割して支払い,本件契約2の対価である83万1600円を平成29 ランニングに原則的に従うこととする。」などの定めがある。 被告Cは,リアライズに対し,本件契約1の対価である235万4400円を分割して支払い,本件契約2の対価である83万1600円を平成29年10月4日に振り込んで支払った。 なお,リアライズの実施する自立支援サービスについても,クリアアン - 15 -サーが実質的なサービスの提供を行っており,クリアアンサー及びリアライズは,自立支援サービスについて,実態として一体的な業務運営を行っていた。 (前提事実(1)ウ,(2)ア,乙6及び8の各1及び2,乙30,被告A本人) (2) 原告が平成29年10月3日に本件施設に入所するまでの経緯ア原告は,平成30年1月31日から通院及び加療をしていたこころクリニック船橋において,同年10月14日に注意欠如症及び自閉スペクトラム症と診断されていること及び平成29年10月3日当時,アルバイトとして勤めていた職場を強いストレスを理由として退職し,引きこもりの状 態にあったことなどからすると,同日当時においても,少なくとも上記障害の兆候があったものと考えられる。(前提事実(1)ア,弁論の全趣旨)イ被告A及び被告Bの両名を含むクリアアンサーの従業員合計4名(うち1名は女性)(被告Aら)は,平成29年10月3日の遅くとも10時頃までに,本件各契約に基づき,本件施設に入所するよう原告を説得するた め,原告ら自宅を訪れた。被告Cは,原告部屋に入り,ベッドで横になっていた原告に対し,「○○(原告)を支援する人を連れてきたから,よく話を聞きなさい。今日からこの人たちの支援を受けて自立するため,ここから出て行って支援を受けてほしい。」と伝え,原告部屋から退出した。 (前提事実(2)ア,イ,被告A本人,被告B本人) ら,よく話を聞きなさい。今日からこの人たちの支援を受けて自立するため,ここから出て行って支援を受けてほしい。」と伝え,原告部屋から退出した。 (前提事実(2)ア,イ,被告A本人,被告B本人) ウ被告Aらは,被告Cが原告部屋から退出した後,原告部屋に立ち入り,部屋着でベッドに横たわっていた原告に対して,被告Aが自らの名刺を渡しながら,原告の支援をするクリアアンサーという施設の従業員である旨声を掛け,本件施設の資料(乙7)を見せながら説明をした。これに対して,原告は,被告Aらが引きこもりの状態にある者を無理やり連れ出す業 者であると考え,同日午前10時3分,自らのタブレット端末を用いて, - 16 -Dに対し,「自立センターのとこから相談員さんたちが来たんだけど私が悪いってことだよね」というメールを送った。 原告は,当初,被告Aに対して背を向け,全く返事をしなかったが,被告Aが質問を続けるうち,しばらくして返事をするようになり,「引きこもってしまっているのは何が原因か。」との質問に対しては「母の暴 言。」と回答し,「センター(本件施設)に興味を持ってくれたか。」との質問に対しては「興味ない。」と回答したが,「このままの状態で苦しくないの。」との質問に対しては無言で回答しなかった。 (前提事実(2)イ,甲3,原告本人,被告A本人,被告B本人)エ被告Aは,被告Aら4名で話をするよりも,一対一で話合いをした方が 原告の本音を聞きやすいと考え,被告B及びクリアアンサー従業員2名を原告部屋から退出させた。 その後,遅くとも同日の午前11時頃までに,原告ら自宅に到着したDが原告部屋に入り,被告Aに対して「おたくらは誰なんですか。」などと話しかけたので,被告Aは,被告Aらの訪問について事情を知らない の後,遅くとも同日の午前11時頃までに,原告ら自宅に到着したDが原告部屋に入り,被告Aに対して「おたくらは誰なんですか。」などと話しかけたので,被告Aは,被告Aらの訪問について事情を知らない Dと,依頼者であるCを含めて話をするため,Dを原告ら自宅の1階に誘導し,被告C,D,被告Aらの6名で,これまでの経緯等を含めた原告と被告C,被告Aらが置かれている状況について話をすることとした。 (前提事実(2)イ,被告A本人,被告B本人)オ Dからの求めに応じて,被告Cは,Dに対し,原告の自立のために本件 各契約を締結した経緯を説明した上で,原告が引きこもりを続けるのであれば,自分がこれ以上面倒をみることはできないことを伝え,Dが代わって原告を自立させたり支援したりすることができるのかと尋ねた。Dが,自分では支援等を行うことができないと回答すると,被告Cは,Dも支援をすることができないのであれば第三者の支援を仰ぐしかないと述べたが, Dは,第三者の支援を仰ぐことにも抵抗を感じるとの回答をした。 - 17 -そこで,被告Aが,Dに対して,本件施設の資料(乙7)を見せて本件施設における自立支援プログラムの内容を説明し,被告Cも,第三者の支援を仰ぐべきだと再度述べたところ,Dは,一応の納得をして,本件施設に入所するよう原告を説得させてほしいと述べて原告部屋に入ったものの,30分から40分程度かけてのDによる説得も奏功せず,原告 ら自宅の1階に戻ったDは,原告を説得するに至らなかったと述べた。 これに対して,被告Cは,被告Aに対し,「なんとか今日連れて行ってもらいたい。」などと念を押したが,被告Aは,原告の同意を得て,原告自身で自動車に乗るのでなければ,本件施設に連れて行くことはできないと答えた。 そ 告Aに対し,「なんとか今日連れて行ってもらいたい。」などと念を押したが,被告Aは,原告の同意を得て,原告自身で自動車に乗るのでなければ,本件施設に連れて行くことはできないと答えた。 その後,被告Aが,Dに対して,被告Cは長年の原告に対する支援に限界を感じたために本件各契約を締結したことを説明し,この支援をDが拒むのであれば,D自身が原告を支援するべきではないかと改めて伝えたところ,Dが「そうだな。最後は俺が背中を押すしかないだろう。俺が説得します。」などと述べて,再び原告に対する説得を試みることと なった。 Dと被告Cは,2人で原告部屋に入り,被告Aは,同人らの後ろについて原告ら自宅の2階に上がり,原告部屋の入口で待機していた。Dは,原告部屋内で横になっていた原告に対して,「起きなさい○○(原告)。 行かなくちゃだめよ。」と声を掛け,脇腹を支えるような形で原告を起 き上がらせ,立ち上がった原告の手を引っ張って誘導するような形で原告ら自宅の1階に連れて行った。その流れで,原告は,同日午後5時頃,部屋着のまま着替えず,また,靴を履くことなく裸足のまま,被告Aらの用意した迎えの自動車に乗り込んだ。 (前提事実(2)イ,被告A本人,被告B本人) (3) 平成29年10月3日から同月5日の間における原告の状況 - 18 -ア本件施設及び本件部屋について(ア) 本件施設及び本件部屋の施錠状況等本件部屋は,別紙図面のとおり,入所者が寝食する部分(別紙図面上の「研修生スペース」)と原告の動静を監視するクリアアンサーの女性従業員が24時間常駐する部分(別紙図面上の「従業員スペース」)と に分かれており,両者を隔てる扉に鍵は設置されていなかった。他方で,本件部屋と本件施設内部とを隔てる出入口のド アアンサーの女性従業員が24時間常駐する部分(別紙図面上の「従業員スペース」)と に分かれており,両者を隔てる扉に鍵は設置されていなかった。他方で,本件部屋と本件施設内部とを隔てる出入口のドアには錠が取り付けられていたものの,原告において本件部屋の内部から同ドアを開けることが物理的に不可能又は著しく困難であったと認めるに足りる証拠はない。 また,本件施設内の非常階段に続くドアには「非常階段は施錠いたしま す。鍵は,スタッフが持っています。声を掛けて下さい。ご協力お願いします。」という紙が貼られ,施錠されていたため,入所者が自由に非常階段を利用することはできなかった。(前提事実(2)ウ(ア),甲5の1及び2)(イ) 入所者が退去したい旨申し出た場合におけるクリアアンサーの対応 例前記(1)ウのとおり,本件契約1には,「丙(原告)の『衣・食・住』等の基本的な実生活の行動全てにおいて,適当と判断される時期に至るまで原則的に乙(リアライズ)が管理するものとし,乙(リアライズ)が適当と認める事象以外において,丙(原告)の独断での行動を原則的 に制限する。」などの定めがあるところ,クリアアンサーにおいては,入所者が退去したい旨を申し出た場合,入所者に対し,どこで生活するのか,自宅以外に生活する場所が確保されているのか,などといった点を確認するため,当該入所者の家族との面談を実施し,同入所者の要求を受け入れるかどうかを判断することとされていた。 また,クリアアンサーにおいては,従業員が入所者の体に触れること - 19 -は禁止されていたものの,退去を申し出た入所者が,家族からの意見を聞く前に本件施設からの退去を強行しようとした場合には,施設にとどまるよう,同人を説得することとされていた。 さらに - 19 -は禁止されていたものの,退去を申し出た入所者が,家族からの意見を聞く前に本件施設からの退去を強行しようとした場合には,施設にとどまるよう,同人を説得することとされていた。 さらに,クリアアンサーにおいては,仮に,従業員が説得したにもかかわらず,入所者が退去を強行した場合には,行方を確認するために, 同人に従業員が同行することとされており,その上で,入所者に対して,本件施設に戻るように再度説得を試みることとされていた。 (被告A本人,弁論の全趣旨)イ本件部屋内における原告の状況(ア) 平成29年10月3日 原告は,平成29年10月3日午後7時頃,被告Aらの案内を受けて本件部屋に入った。クリアアンサーにおいては,一般的に,本件施設に入所する者に対して,入所に対する同意書に署名するように求めているが,本件において,原告が本件施設に入所するに際しては,かかる書面を作成していない。 原告の入所後,クリアアンサーの育成部の従業員は,原告に対し,弁当とお茶を渡したが,原告はこれをごみ箱に投げ捨て,全く口にしなかった。また,原告は,同日午後8時頃,本件部屋内の原告が寝食する場所を隔てる扉を閉めて閉じこもり,以後,本件部屋から出たり,本件部屋内に常駐していた従業員とコミュニケーションを取ったりすることは なかった。 被告A及び被告Bは,クリアアンサーの業務部に所属していたため,原告の本件部屋における生活の面倒を直接見ることはなかったが,育成部の従業員から逐次報告を受けていた。そして,被告Cとの連絡業務を担当していた被告Aは,同日,被告Cに対し,原告がクリアアンサーの 運営する施設に到着したこと,育成部による原告の支援体制及び原告が - 20 -食事を取っていないことを連絡した。 担当していた被告Aは,同日,被告Cに対し,原告がクリアアンサーの 運営する施設に到着したこと,育成部による原告の支援体制及び原告が - 20 -食事を取っていないことを連絡した。 (前提事実(2)ウ(イ),被告A本人)(イ) 平成29年10月4日クリアアンサーの従業員は,平成29年10月4日,原告に対し,昼食を食べるように勧めたが,原告は全く反応しなかった。しばらくした 後に確認したところ,クリアアンサーの従業員が提供したお茶がごみ箱に入れられ,弁当はごみ箱の横に置かれていた。 その後も,クリアアンサーの従業員は,原告に対し,何度か話しかけたものの,原告が言葉を発することはなかった。 被告Aは,同日,被告Cに対し,原告が全く食事を取っていないこと を伝えた上で,仮に原告が明日まで食事を取らなければ救急車を呼ぶ必要があることから,一度被告Cに本件施設まで来てもらいたい旨連絡した。 (前提事実(2)ウ(イ),被告A本人)(ウ) 平成29年10月5日 原告は,平成29年10月5日になっても,クリアアンサーの従業員が提供した朝食,昼食をいずれも全く口にしなかった。そこで,クリアアンサーの従業員は,同日午後3時頃,原告の身体を起こしてスポーツドリンクを原告の口に注いで飲ませた。 原告が引き続き食事を取らなかったことから,本件施設を訪れた被告 Cが,原告に対し,「○○(原告),どうして食事取らないの。」などと声を掛けたものの,原告は,これにも全く反応しなかった。この状況から,被告Cは,過去の経験を踏まえて点滴が必要であると判断し,被告Aが,同日午後4時30分頃,救急車を呼び,原告は東京女子医科大学病院に救急搬送された。 原告は,搬送された上記病院において,脱水症との診断を受け, を踏まえて点滴が必要であると判断し,被告Aが,同日午後4時30分頃,救急車を呼び,原告は東京女子医科大学病院に救急搬送された。 原告は,搬送された上記病院において,脱水症との診断を受け,同日 - 21 -から同年11月4日まで,同病院に入院した。なお,同病院において,原告が適応障害及び脱水症を発症したという内容の同年12月22日付け診断書が作成されている。 (前提事実(2)ウ(イ),被告A本人,被告C本人)(エ) 本件部屋内における原告の処遇について クリアアンサーにおいては,自社で運営していた「キッチンあけぼの」という弁当屋で作った弁当を原告に対して提供していたものの,原告が弁当を全く口にしなかったことから,クリアアンサーの従業員は,原告に対し,コンビニエンスストアでおにぎり,サンドイッチ,ヨーグルト,ゼリーなどを購入して提供していた。しかしながら,原告は,これらも 全く口にすることはなかった。 また,原告は,本件部屋内において,風呂やトイレ等を自由に使用できる状態にあったものの,前記ア(イ)のとおり,部屋から外に出るためには,部屋に常駐する従業員の許可を事実上得る必要があった。 (4) 平成29年10月5日以降のDの行動 ア平成29年10月5日(ア) Dは,平成29年10月5日,本件施設への入所に掛かる費用や本件施設からの退去方法等について相談するため,鎌ケ谷市役所の健康福祉部健康増進課(以下「健康増進課」という。)及び商工振興課消費生活センター(以下「商工振興課」という。),新宿区社会福祉協議会並 びに牛込警察署に相談した。(乙27,28,調査嘱託の結果,弁論の全趣旨)(イ) Dは,まず,健康増進課において,同課職員と面談を行った。Dとの面談結果について,以下のと 会福祉協議会並 びに牛込警察署に相談した。(乙27,28,調査嘱託の結果,弁論の全趣旨)(イ) Dは,まず,健康増進課において,同課職員と面談を行った。Dとの面談結果について,以下のとおりの内容の同課作成の記録が存在する。 「<主訴>おととい長女(原告)がひきこもり対応の寮?に入った。納 得して送り出したつもりだが,本当にこれで良かったのか。連れ戻す - 22 -ことはできないか。」「<長女入寮の経緯>(略)ことし(平成29年)6月ごろから,長女(原告)からのメールがひんぱんに届くようになり,『母とつかみ合いのけんかをした』などと話があった」「おととい(10/3)(平成29年10月3日)長女(原告)からメ ール受け,『寮に入れられる』と話あり,あわてて長女宅(原告ら自宅)へ向かった。」「『あけぼの橋自立研修センター』(本件施設)という民間の団体(クリアアンサー)で,母(被告C)が長女(原告)に内緒で相談し,入寮の手続きすすめていたとの事。職員4名(被告Aら)が車でおとず れ,長女(原告)の説得にあたった。」「その際父(D)もその場では娘(原告)の為にと納得し入寮をすすめた。」「長女(原告)はいやがったが,最終的に職員(被告Aら)と共に自宅を出た。」 「<助言>(略)(同課職員が)娘(原告)さんにとってもしかすると良いことなのかもしれないと伝えると,(Dが)『そうかもしれないですよね』(と答えた。)」(乙28,調査嘱託の結果,弁論の全趣旨)(ウ) Dは,続いて,商工振興課において,同課職員と面談を行った。D との面談結果について,以下のとおりの内容の同課作成の記録が存在する。 「2日前(平成29年10月3日)施設の職員が4人(被告Aら)来て,自分(D)と元 おいて,同課職員と面談を行った。D との面談結果について,以下のとおりの内容の同課作成の記録が存在する。 「2日前(平成29年10月3日)施設の職員が4人(被告Aら)来て,自分(D)と元妻(被告C)と二人で嫌がる娘(原告)を施設の自動車に乗せた。」 「(原告は)母親(被告C)と折り合いが悪い」 - 23 -「センターから職員(被告Aら)が来て 10月3日(原告が)入所した 10月3日に納得した」(乙27,調査嘱託の結果,弁論の全趣旨)イ平成29年10月6日Dは,平成29年10月6日,被告Aに架電し,本件施設を実際に確認 したいことなどを伝え,同月8日午前10時にクリアアンサー事務所内において面談をすることとなった。 ウ平成29年10月8日Dは,平成29年10月8日,本件施設を訪れて見学した。 Dは,同日,対応した被告A及び被告Bに対し,原告が本件施設に入所 するような事態になったのは被告Cのせいであると考えていることを伝えた上で,「ここに来たのは間違いではなかった。」と述べたほか,被告Aらが原告ら自宅を訪れた同月3日におけるDの言動につき頭を下げて,「あのときは申し訳なかったです。」と述べるなどした。 (被告A本人) エ平成29年10月9日Dは,平成29年10月9日,被告Aに対し,「昨日はどうもありがとうございました。お話しした書類をお送りいたします。よろしくお願いいたします。」という内容のメールを送信するとともに,同メールの添付ファイルとして,原告の家庭内における被告Cの言動等について, 「父親(D)・長女(原告)からの希望母親(被告C)の長女(原告)への攻撃を無くしたい。→母親(被告C)にきちんと治療してもらいたい。」などと記載された書面を送付 被告Cの言動等について, 「父親(D)・長女(原告)からの希望母親(被告C)の長女(原告)への攻撃を無くしたい。→母親(被告C)にきちんと治療してもらいたい。」などと記載された書面を送付した。(乙26の1及び2)(5) 平成29年10月5日以降の原告の状況ア原告は,平成29年10月28日,入院していた東京女子医科大学病院 において,看護師に対し,本件施設に預けられていた原告の所持品が原告 - 24 -に返却されて嬉しい旨を述べた。(甲14)イ東京女子医科大学病院において,原告が「自身の意志に反して強制的に曙橋自立支援センター(本件施設)へ入所させられ,身体の自由や通信の制限等を強いられ」,適応障害及び脱水症を発症したという記載内容の平成29年12月22日付け診断書が作成された。(甲1) ウ原告は,こころクリニック船橋において,平成30年10月14日,注意欠如症及び自閉スペクトラム症との診断を受けたほか,令和元年9月8日には,同年7月30日時点における精神障害の原因となった傷病として,自閉症及び心的外傷後ストレス障害,既存障害として受容性言語症及び注意欠如症があるとの診断を受けた。同病院における原告の主訴は,上記診 断に係る診断書の記載によれば,「平成29年10月3日,強引に母親の依頼したあけぼのばし自立研修センター(本件施設)に拉致され,閉じ込められた。」というものであった。(前提事実(1)ア,甲15) 2 争点1(被告A及び被告Bの行為が不法行為に当たるか。)について(1) 原告は,被告Aらが,平成29年10月3日午前9時頃に原告ら自宅を訪 れ,原告に対し本件施設に入所するよう説得を続けた上で,同日午後5時頃,原告を羽交い絞めにして無理やり自動車に乗り込ませて原告ら自宅か 告Aらが,平成29年10月3日午前9時頃に原告ら自宅を訪 れ,原告に対し本件施設に入所するよう説得を続けた上で,同日午後5時頃,原告を羽交い絞めにして無理やり自動車に乗り込ませて原告ら自宅から連れ出し,同月5日に至るまで,原告を本件施設に入所させて本件部屋内に監禁した一連の行為は,原告の意に反するものであって,民法709条所定の不法行為に当たると主張する。そこで,原告が原告ら自宅を出て本件施設に入 所するまでの状況及び本件施設内における処遇について,被告A及び被告Bの行為が原告の意に反するものであったか否かを検討する。 (2) 原告の本件施設内における処遇についてまず,原告は,被告A及び被告Bが,平成29年10月3日午後7時頃,原告を本件施設に入所させ,本件部屋に入室させるなどした行為が監禁に当 たると主張するので,この点について検討する。 - 25 -ア原告が本件部屋又は本件施設から外出することが不可能であったかについて前記認定事実によれば,本件施設の非常階段に出る扉が施錠されていた事実は認められるものの,本件全証拠によっても,上記のほか,本件施設又は本件部屋において,入所者が外出するに際して開閉する必要がある扉 又は窓につき原告が解錠することができない鍵で施錠されていた事実までは認められない。 これに対し,原告は,本件部屋内の出入口ドアノブには,部屋の内外双方から施錠できるよう両面にシリンダー錠が設けられており施錠されていた,また,本件部屋内において原告が居住していた畳敷き部分の窓には, もともと窓に取り付けられていた鍵を固定する補助鍵が更に設置されて施錠されていたと主張し,これに沿う供述をする。 しかしながら,これを裏付ける客観的な証拠はなく,むしろ室外から更に非常階段に もともと窓に取り付けられていた鍵を固定する補助鍵が更に設置されて施錠されていたと主張し,これに沿う供述をする。 しかしながら,これを裏付ける客観的な証拠はなく,むしろ室外から更に非常階段に出る際にはスタッフに声を掛けることを知らせる貼り紙が存在することにも照らせば,この点に関する原告の主張を直ちに採用するこ とはできない。 そうすると,原告が本件施設に入所することとなった平成29年10月3日から同月5日の間,原告が本件部屋及び本件施設を出ることが物理的に不可能であったとまでは認められない。 イ原告が本件部屋又は本件施設から外出することが著しく困難であったか について(ア) もっとも,前記認定事実によれば,本件部屋は,出入口付近に原告の動静を監視するクリアアンサーの従業員が24時間常駐する部屋が存在していたところ,クリアアンサーの従業員においては,本件施設を退去したい旨申し出た入所者に対しては退去をとどまるように説得し,さ らに退去を強行した入所者に対しては行方を確認するため同行し,かつ - 26 -本件施設に戻るように説得を試みることと指示されていたから,原告の所在していた本件部屋内に常駐していた従業員においても,仮に原告が本件部屋からの外出を試みれば,外出をしないように説得を続けるとの対応になったものと考えられ,現実的に原告が本件部屋から自由に外出することは極めて困難であったと認められる。 (イ) その上で,原告は,本件当時,精神的な障害を抱え,正業に就くことができず引きこもりの状態にあったところ,後述のとおり,少なくとも7時間もの長時間にわたって原告ら自宅に滞在していた被告Aらから本件施設に入所するよう説得を続けられたことや,自分の味方になってくれるものと信頼していたDからも本 たところ,後述のとおり,少なくとも7時間もの長時間にわたって原告ら自宅に滞在していた被告Aらから本件施設に入所するよう説得を続けられたことや,自分の味方になってくれるものと信頼していたDからも本件施設に行くように促されたこと を踏まえ,本件施設へ入所する以外に選択肢はないものとの諦めの境地に至り,やむなく本件施設に入ったものと認められることからすれば,原告においても,仮に,本件部屋又は本件施設からの外出を試みようとしても,本件部屋内に所在していたクリアアンサーの従業員が,原告に対して,本件部屋内にとどまるように強く説得し,事実上,本件部屋か ら外に出ることは著しく困難であるものと認識していたと考えられる。 (ウ) 以上によれば,原告は,本件部屋又は本件施設から自らの意思で外出することが著しく困難な状態に置かれたと評価するのが相当である。 ウ被告A及び被告Bが原告を本件施設に入所させ,本件部屋又は本件施設からの外出を著しく困難にした行為が原告の意に反するものであった か否かについて前記認定事実によれば,被告Aらは,平成29年10月3日に原告ら自宅を訪れ,同日午後5時頃に至るまでの少なくとも7時間にわたって,原告を本件施設に入所させるための説得を行ったこと,原告は,一貫して被告Aらの説得に耳を傾けようとせず抵抗していたものの,最終的に は,Dによる説得を受けて,Dに抱き抱えられて起き上がる格好で本件 - 27 -施設に向かうこととしたこと,原告は,原告ら自宅を出る際,着替えをすることなく部屋着のまま,また,靴を履くことなく裸足のまま被告らの用意した自動車に乗り込んだこと,クリアアンサーにおいては,一般的には,本件施設に入所しようとする者から入所に対する同意書への署名を求めているものの,原告が また,靴を履くことなく裸足のまま被告らの用意した自動車に乗り込んだこと,クリアアンサーにおいては,一般的には,本件施設に入所しようとする者から入所に対する同意書への署名を求めているものの,原告が本件施設に入所するに際してはかかる書 面は作成されていないこと,本件部屋から救急搬送された後も,原告は担当医に対し,一貫して,自らの意に反して本件施設に入所させられたと訴えていること,の各事実が認められる。 また,前記認定事実並びに証拠(原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,本件施設への入所後,緊急搬送されるまでの間,原告において食事を取 ることのできない外部的な要因は存在せず,原告が本件部屋に入った平成29年10月3日から一貫して,原告は,本件施設への入所に対する強い抗議の意を示すため,その意思によりあえて食事を取らなかったものと認められる。 以上の事実に,上記イで述べたことを併せ考慮すると,被告A及び被 告Bが原告を本件施設に入所させ,本件部屋又は本件施設からの外出を著しく困難にした行為は,原告の意に反するものであったと認められる。 エ被告A及び被告Bの反論について(ア) これに対して,被告A及び被告Bは,①原告が本件施設に到着して以降の原告の処遇を所管していた部署は育成部であり,被告A及び被告 Bは当該部署に所属していなかったことから,原告の本件施設内における処遇に関しては同人らが不法行為責任を負う余地がないと主張する。 しかしながら,前記認定事実によれば,被告A及び被告Bは,原告の入所に関して被告Cから相談を受けて,同人に対してクリアアンサー及びリアライズにおける自立支援サービスの概要や本件施設の状況等につ いて詳細に説明を行って本件各契約を締結している上,平成29年10 - 28 -月 て,同人に対してクリアアンサー及びリアライズにおける自立支援サービスの概要や本件施設の状況等につ いて詳細に説明を行って本件各契約を締結している上,平成29年10 - 28 -月3日には,本件契約2に基づき,原告を本件施設に入所させるために少なくとも7時間もの長時間にわたって説得を行っていたほか,被告Aにおいては,原告の状況につき育成部から報告を受け,これを被告Cに報告する立場にあったことが認められる。 そうすると,被告A及び被告Bは,原告が本件施設に入所した後にい かなる処遇をされるかを認識した上で原告を原告ら自宅から連れ出して本件施設に入所させたものと認められ,本件施設に入所した後の原告の処遇を所管する部署に所属していなかったことのみをもって,原告の本件施設内における処遇に関する不法行為責任を免れることはないというべきである。この点に関する被告A及び被告Bの主張は採用できない。 (イ) また,被告A及び被告Bは,②本件部屋内にクリアアンサーの従業員が常駐することは未知の施設において生活することに対する精神的な不安を和らげるための措置であること,③従業員が常駐していた場所と原告が居住していた場所とは明確に区分されており原告のプライバシーが十分に保たれていたこと及び④原告が明確に反対する意思表示をしな かったことを考慮すれば,クリアアンサーによる本件施設での原告の処遇が同人の意に反するものであったとはいえないと反論する。 しかしながら,前記イで述べたとおり,クリアアンサーの従業員による少なくとも7時間にわたる説得活動を受けた原告においては,本件部屋又は本件施設から自らの意思で外出することが著しく困難な状態に置 かれたというべきであって,このことは,仮に上記②及び③の事実が認められるとして わたる説得活動を受けた原告においては,本件部屋又は本件施設から自らの意思で外出することが著しく困難な状態に置 かれたというべきであって,このことは,仮に上記②及び③の事実が認められるとしても変わるところではないし,原告の当時の心理状況,本件施設に入所するに至る経緯,本件施設に入所した後の原告に対する処遇内容などを考慮すれば,④原告が明確に反対する意思表示をしなかったからといって,原告が本件施設への入所や本件施設における処遇を受 け入れていたということは到底できない。そうすると,上記②ないし④ - 29 -の各事実を考慮しても,被告A及び被告Bが原告を本件施設に入所させ,本件部屋又は本件施設からの外出を著しく困難にした行為が原告の意に反するものであったとの前記認定は左右されない。 以上によれば,この点に関する被告A及び被告Bの上記主張も採用できない。 (ウ) したがって,被告A及び被告Bの主張はいずれも採用できない。 (3) 原告が意に反して原告ら自宅から連れ出されたか否かについて次に,原告は,被告A及び被告Bが平成29年10月3日,原告をその意に反して原告ら自宅から連れ出したと主張するので,この点について検討する。 ア原告の意に反する連れ出しがあったかについて(ア) 前記認定事実によれば,被告Aらは,平成29年10月3日に原告ら自宅を訪れ,同日午後5時頃に至るまでの少なくとも7時間にわたって,原告を本件施設に入所させるための説得を行ったこと,被告Aらが原告ら自宅を訪れたことを受け,原告がDに対してメールを送信したこ と,原告は,一貫して被告Aらの説得に耳を傾けようとせず抵抗していたものの,最終的には,Dによる説得を受けて,Dに抱き抱えられて起き上がる格好で本件施設に向かうことと してメールを送信したこ と,原告は,一貫して被告Aらの説得に耳を傾けようとせず抵抗していたものの,最終的には,Dによる説得を受けて,Dに抱き抱えられて起き上がる格好で本件施設に向かうこととしたこと,原告は,原告ら自宅を出る際,着替えをすることなく部屋着のまま,また,靴を履くことなく裸足のまま被告らの用意した自動車に乗り込んだこと,本件施設に到 着後においても,同意書に署名せず,提供された食事を取らないなどして抵抗の意思を示していたこと,の各事実が認められる。 このような本件における事実経過に照らせば,被告Aらに従って本件施設に行かない限り被告Aらによる説得活動は延々と終わらないのではないかと考えた原告において,味方になってくれるものとの思いからメ ールを送信して原告ら自宅に来てもらったDからも本件施設への入所を - 30 -勧められるに至ったため,同日午後5時頃に至り,原告ら自宅を出て本件施設に向かうこと以外の選択肢がないと諦め,やむなく被告Aらに同行することとしたものと認められる。 そうすると,原告が,被告Aらの説得を受けて本件施設への入所に納得し,原告ら自宅を出て本件施設へ入所することとしたものとはいえず, 本件施設に入所することに対する真摯な承諾を与えていなかったものと認められる。 (イ) 次に,被告A及び被告Bの行為及び認識について検討すると,前記認定事実及び証拠(被告A本人)によれば,平成29年10月3日においては,被告Aらは,本件施設への入所につき原告の理解を得るべく, 原告部屋において原告に対して声掛けをした上で,本件施設に係る資料(乙7)を原告に示すなどして本件施設への入所の案内をしたことが認められる。そうすると,被告A及び被告Bにおいて,原告ら自宅に来訪した時点において て原告に対して声掛けをした上で,本件施設に係る資料(乙7)を原告に示すなどして本件施設への入所の案内をしたことが認められる。そうすると,被告A及び被告Bにおいて,原告ら自宅に来訪した時点において,本件施設の入所に対する原告の承諾の有無にかかわらず原告を本件施設に入所させようとする意図があったとまでは認めら れない。 もっとも,被告A及び被告Bは,本件契約2に基づき,原告を本件施設に入所させることを目的として原告ら自宅を訪れたものであるところ,原告にとって唯一の居場所であった原告部屋を出て,見ず知らずの場所で家族以外の者と共に生活することは,原告にとっては極めて重大な問 題であり,被告Aらが訪問した当日に初めて説明を受けて即断することが困難であることは容易に想定できる上,午前中から夕刻に至るまで少なくとも7時間にわたって延々と説得を続けていることや,既に被告Cからは自立支援サービスの対価の他に説得業務の対価として80万円以上の報酬を受領していることからすると,被告A及び被告Bにおいては, 仮に原告から本件施設への入所に対する真摯な承諾が得られなかったと - 31 -しても,原告が強硬に抵抗しておよそ任意に入所したとはいえないような状況でなければ,原告の真摯な承諾を得ることができないままに原告を本件施設に入所させる事態となってもやむを得ないとの認識も併せて有していたというべきである。 また,前記認定事実のとおり,被告Aらが原告ら自宅を訪れたことを 受けて原告がDに対してメールを送信したこと,原告は,少なくとも7時間にわたって一貫して被告Aらの説得に耳を傾けようとせず抵抗していたものの,最終的には,Dによる説得を受けて,Dに抱き抱えられて起き上がる格好で本件施設に向かうこととしたこと,原告は,原告ら自 時間にわたって一貫して被告Aらの説得に耳を傾けようとせず抵抗していたものの,最終的には,Dによる説得を受けて,Dに抱き抱えられて起き上がる格好で本件施設に向かうこととしたこと,原告は,原告ら自宅を出る際,着替えをすることなく部屋着のまま,また,靴を履くこと なく裸足のまま被告らの用意した自動車に乗り込んだことからすれば,結果として被告A及び被告Bによる説得が奏功せず,原告が本件施設への入所について真摯な承諾をしていなかったことについては,原告ら自宅を出る時点において被告A及び被告Bも認識していたものと認められる。 (ウ) したがって,被告A及び被告Bは,原告ら自宅を訪れた時点において,仮に原告から本件施設への入所につき真摯な承諾を取り付けることができなかったとしても場合によってはそのまま本件施設に連れていくことを想定しながら原告に対して説得を行ったこと,結果として,原告からかかる真摯な承諾を得ることはできなかったことを認識しつつ,原 告を原告ら自宅から連れ出したことが認められる。 イ被告A及び被告Bが原告を羽交い絞めにするなどした行為があったかについて(ア) さらに,原告は,平成29年10月3日午後5時頃,原告部屋において,被告A及び被告Bが原告を羽交い絞めにするなどしたと主張し,ま た,Dがかかる行為を目撃し,その旨を鎌ケ谷市役所の健康増進課及び - 32 -商工振興課において相談したにもかかわらず,かかる相談内容が正確に記録されていないなどと主張する。 (イ) しかしながら,鎌ケ谷市役所の健康増進課及び商工振興課の各課職員は原告及びD並びに被告らと何ら利害関係があるとは認められないところ,同職員らにおいてDから聴取した内容を書き留めた書面(乙27, 28)は,かかる相談の内 の健康増進課及び商工振興課の各課職員は原告及びD並びに被告らと何ら利害関係があるとは認められないところ,同職員らにおいてDから聴取した内容を書き留めた書面(乙27, 28)は,かかる相談の内容を詳細に書き留めており具体性に富むほか,当裁判所の認定に係る平成29年10月3日当時の状況やDが同時期にクリアアンサーに対して送付したメール及びこれに添付された書面(乙26の1及び2)に記載されたDの認識とも整合する内容が記載されていることなどからすれば,鎌ケ谷市役所において作成された各書面(乙 27,28)の記載内容を信用することができ,Dの相談内容が大筋正確に記載されているものと認めることができる。 そして,娘が羽交い絞めにされて自宅から無理やり連れ出されたといった犯罪行為ともなり得る特異な相談があれば面談記録に当然記載されてしかるべきであるところ,上記各書面においては,クリアアンサーの 従業員が原告を羽交い絞めにして連れ出した旨の記載は存在せず,また,Dは本件に関して警察にも相談をしているものの,Dにおいても,連れ出しの件についての相談はしておらず,単にクリアアンサーに関する情報を得たいがために相談したにすぎない旨述べているところであり,これは,被告A及び被告Bが原告を羽交い絞めにするなどした行為が存在 しないことを裏付けているものといえる。 そうすると,上記認定に反するDの証言を採用することはできず,Dが鎌ケ谷市役所職員に対し,クリアアンサーの従業員による羽交い絞めがあったことを相談したと認めることはできない。また,この点に関する原告の供述も,羽交い絞めにされたという最も核心的な部分において 曖昧かつ抽象的な内容となっているから,採用することができない。 - 33 -(ウ) したがって,被告 の点に関する原告の供述も,羽交い絞めにされたという最も核心的な部分において 曖昧かつ抽象的な内容となっているから,採用することができない。 - 33 -(ウ) したがって,被告A及び被告Bが原告を羽交い絞めにするなどしたとの原告本人の供述及びDの証言はいずれも採用することができず,他にこれを認めるに足りる証拠はないから,この点に関する原告の主張は採用できない。 もっとも,原告の主張するような態様による連れ出しがあったことを 認めることができないとしても,被告A及び被告Bによる連れ出しが原告の意に反していたとの上記イにおける説示の結論が左右されるものではない。 ウ小括以上によれば,原告は,その意に反して原告ら自宅から連れ出されたも のと認められる。 (4) 争点1に対する結論以上からすると,被告A及び被告Bが,平成29年10月3日午後5時頃,原告を,被告A及び被告Bを含むクリアアンサーの従業員が用意した自動車に乗り込ませて原告ら自宅から連れ出し,同日午後7時から同月5日に至る まで,原告を本件施設に入所させ,本件部屋又は本件施設からの外出を著しく困難にした一連の行為は,原告の意に反するものであって,民法709条所定の不法行為に当たる。 3 争点2(クリアアンサー及びリアライズが,被告A及び被告Bの不法行為につき民法715条1項に基づく損害賠償責任を負うか。)について 被告A及び被告Bが,いずれも,平成29年10月3日から同月5日までの間,クリアアンサーの被用者であったことにつき当事者間に争いはなく,また,前提事実(1)ウ及び(2)並びに弁論の全趣旨によれば,被告A及び被告Bによる前記2で説示した不法行為がクリアアンサーの事業の執行についてされたものであると認められるから,クリ に争いはなく,また,前提事実(1)ウ及び(2)並びに弁論の全趣旨によれば,被告A及び被告Bによる前記2で説示した不法行為がクリアアンサーの事業の執行についてされたものであると認められるから,クリアアンサーは,被告A及び被告Bによる上記不 法行為につき,民法715条1項に基づき損害賠償責任を負う。 - 34 -他方,本件全証拠によっても,被告A及び被告Bがリアライズの被用者であったと認めることはできないから,リアライズにおいて,上記両名の不法行為につき民法715条1項に基づく損害賠償責任を負うとは認められない。 4 争点3(リアライズが,被告Aの不法行為につき会社法350条に基づく損害賠償責任を負うか。)について 前提事実によれば,被告Aが,平成29年10月当時,リアライズの代表取締役であったことが認められ,リアライズは,前記2で説示した被告Aの不法行為につき,会社法350条に基づく損害賠償責任を負う。 5 争点4(被告A,被告B及び被告Cは,原告に対する不法行為について共謀していたか。)について (1) まず,被告Aと被告Bとの間における共謀が認められるかにつき検討する。 被告A及び被告Bは,前記認定事実のとおり,被告Cから相談を受けて面談をし,本件各契約の締結に関与している。その上で,前記2で説示したとおり,被告A及び被告Bは,原告ら自宅を訪れた時点において,仮に原告から本件施設への入所につき真摯な承諾を取り付けることができなかったとし ても場合によってはそのまま本件施設に連れていくことを想定しながら原告に対して説得を行っており,結果として,原告からかかる真摯な承諾を得ることはできなかったことを認識しつつ,原告を原告ら自宅から連れ出している。 以上からすれば,被告A及び被告Bは,原告 ら原告に対して説得を行っており,結果として,原告からかかる真摯な承諾を得ることはできなかったことを認識しつつ,原告を原告ら自宅から連れ出している。 以上からすれば,被告A及び被告Bは,原告を,その意に反して原告ら自 宅から連れ出した上で本件施設に入所させるなどし,もって原告の移動の自由等を侵害する一連の行為を共同したのであって,被告A及び被告Bには上記不法行為についての共謀が認められるというべきである。 (2) 続いて,上記(1)の認定を踏まえて,被告Cが,被告A及び被告Bとの間で共謀していたと認められるかにつき検討する。 前記認定事実及び証拠(乙6及び8の各1及び2,被告C本人)によれば, - 35 -被告Cから被告A及び被告Bに対して,原告の自立支援に関する相談をし,本件各契約の締結に至ったこと,被告Cは,被告Aらの訪問に先立って,原告に対して,被告Aらクリアアンサーの従業員が平成29年10月3日に来訪する予定であることを知らせていなかったことはもとより,そもそも本件施設への入所の件についても全く伝えていなかったこと,被告Cがリアライ ズとの間で結んだ本件契約1においては,クリアアンサーの運営する施設において実施する自立研修プログラムの実施に当たり,「丙(原告)の『衣・食・住』等の基本的な実生活の行動全てにおいて,適当と判断される時期に至るまで原則的に乙(リアライズ)が管理するものとし,乙(リアライズ)が適当と認める事象以外において,丙(原告)の独断での行動を原則的に制 限する」との定めがあるところ,被告Cは被告らによる上記プログラムの実施に対して200万円以上の対価を支払っていること,被告Cは,本件契約1に関連して,リアライズとの間で,被告A及び被告Bが,原告を本件施設に入所させる目 ころ,被告Cは被告らによる上記プログラムの実施に対して200万円以上の対価を支払っていること,被告Cは,本件契約1に関連して,リアライズとの間で,被告A及び被告Bが,原告を本件施設に入所させる目的で原告へのカウンセリングを目的とした面談を行うための契約(本件契約2)を締結し,被告Cはこれに対して更に80万円以上の対 価を支払っていること,原告が原告ら自宅を出ることとなった平成29年10月3日において,本件施設への入所に係る説得が難航する中で,被告Aに対し「なんとか今日(原告を本件施設に)連れて行ってもらいたい。」と述べたこと,の各事実が認められる。 以上によれば,被告Cは,被告Aらによる本件施設入所への説得が行われ るに先立ち,原告が本件施設に入所することで原告の移動の自由等が相当程度侵害され得る状況下に置かれることを認識しており,本件施設への入所につきあらかじめ原告に知らせてもこれを拒否される可能性があると考えてあえて伝えていなかったものと考えられる。また,原告に対して被告Aらが説得を試みた結果,原告が本件施設への入所について承諾をすれば何ら問題は 生じないものの,原告が直ちにこれに承諾しない可能性があることも予期し - 36 -ていたものと考えられる。そして,被告Aらが説得のために原告ら自宅を訪れた当日,被告Aらだけでなく原告の最大の理解者であるDが説得に臨んだにもかかわらず,原告が本件施設への入所を拒否するという態度を見せたことを受け,被告Aに対し,「なんとか今日(原告を本件施設に)連れて行ってもらいたい。」と述べて同日中に原告の連れ出しを完了するように念を押 して求めたことを併せ考えると,被告Cは,被告Aらによる説得活動の結果,仮に原告から真摯な承諾が得られなかったとしても,原告を原告ら自宅 。」と述べて同日中に原告の連れ出しを完了するように念を押 して求めたことを併せ考えると,被告Cは,被告Aらによる説得活動の結果,仮に原告から真摯な承諾が得られなかったとしても,原告を原告ら自宅から連れ出して本件施設に入所させることはやむを得ないとの認識であったというべきである。 そして,前記認定事実のとおり,原告は,少なくとも7時間にわたって一 貫して被告Aらの説得に耳を傾けようとせず抵抗していたものの,最終的には,Dによる説得を受けて,Dに抱き抱えられて起き上がる格好で本件施設に向かうこととしたこと,原告は,原告ら自宅を出る際,着替えをすることなく部屋着のまま,また,靴を履くことなく裸足のまま被告Aらの用意した自動車に乗り込んだことからすれば,結果として被告A及び被告Bによる説 得が奏功せず,原告が本件施設への入所について真摯な承諾をしていなかったことについては,原告ら自宅を出る時点において被告A及び被告Bのみならず,被告Cも認識していたというべきである。 (3) したがって,被告Cは,被告A及び被告Bと同様の認識の下で,被告A及び被告Bに対して,前記2で説示した不法行為を行わせたというべきであっ て,遅くとも,被告Aに対して「なんとか今日(原告を本件施設に)連れて行ってもらいたい。」と述べた時点までに被告A及び被告Bとの間で共謀が成立していたことが認められる。 これに対し,被告Cは,本件施設内における原告の具体的な処遇までは知らなかったと主張し,被告A及び被告Bとの間の共謀を否認するが,前記 (2)で説示したとおり,被告Cは,本件施設が自立支援を目的とする施設で - 37 -あって,入所後は相当程度原告の自由が奪われることになること及び原告において本件施設への入所について難色を示す可能性 したとおり,被告Cは,本件施設が自立支援を目的とする施設で - 37 -あって,入所後は相当程度原告の自由が奪われることになること及び原告において本件施設への入所について難色を示す可能性が高いことをあらかじめ認識していたこと,仮に被告Aらによる原告への説得が奏功しなかったとしても,最終的に原告の意思に反してでも本件施設へ入所させることを認容していたことからすれば,被告Cの上記主張は上記認定を左右しない。 6 争点5(損害の発生及びその数額)について前記認定事実及び証拠(原告本人)によれば,原告は,被告A,被告B及び被告Cの共同不法行為によって,適応障害及び心的外傷後ストレス障害と医師から診断される程度の精神的苦痛を被ったことが認められる。 そして,原告の意思に反して原告に無断で本件各契約が締結され,本件不法 行為が発生する事態となったという経緯,突然見知らぬ複数の人間が原告部屋を訪れ,全く見たことも聞いたこともない施設に入所するよう少なくとも7時間にわたって説得を続けられたことによる恐怖感,最終的に部屋着で裸足のまま原告ら自宅を出ることを余儀なくされ,監視付きの部屋に事実上閉じ込められた絶望感,原告の意に反して原告の自由が奪われた期間の長さ,反抗の意を 示すために食事を取らなかった結果,体調を崩し緊急入院をする事態に陥ったこと,その他本件に現れた一切の事情を踏まえると,原告が被った精神的損害を慰謝するための金額は50万円と認めるのが相当である。 また,本件不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相当額は,上記慰謝料額の1割である5万円と認めるのが相当である。 第4 結論以上によれば,原告の請求は,主文第1項ないし第3項の限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却することとし 料額の1割である5万円と認めるのが相当である。 第4 結論以上によれば,原告の請求は,主文第1項ないし第3項の限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第43部 裁判長裁判官下澤良太 裁判官廣瀬仁貴 裁判官石原拓 別紙図面につき記載省略

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