平成23(ワ)11104 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年2月28日 大阪地方裁判所
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平成25年2月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年(ワ)第11104号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成24年10月25日判決原告株式会社サカエ同訴訟代理人弁護士今川 忠同白木裕一同補佐人弁理士酒井正美同稲岡耕作同安田昌秀 被告トラスコ中山株式会社(以下「被告トラスコ中山」という。) 被告コージ産業株式会社(以下「被告コージ産業」という。) 被告ら訴訟代理人弁護士鎌田邦彦同山本和人同福本洋一被告ら補佐人弁理士西 博幸 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告トラスコ中山は,別紙物件目録記載の製品(以下「被告製品」という。)を販売し,又は販売の申し出若しくは販売のための展示をしてはならない 2 被告コージ産業は,被告製品を製造してはならない 3 被告らは,被告製品及び半製品(被告製品の構造を具備しているが製品として完成するに至らないもの)を廃棄せよ 4 被告らは,原告に対し,連帯して金2200万円及びこれに対する平成23年9月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え第2 事案の概要本件は,発明の名称を「金属製棚及び金属製ワゴン」とする特許第4473095号の特許権(以下「本件特許権」という。)を有する原告が,被告 まで年5分の割合による金員を支払え第2 事案の概要本件は,発明の名称を「金属製棚及び金属製ワゴン」とする特許第4473095号の特許権(以下「本件特許権」という。)を有する原告が,被告らによる被告製品の製造販売等が本件特許権を侵害すると主張して,被告らに対し,特許法100条1項,2項に基づき,被告製品の製造販売等の差止め及び廃棄等を求めると共に,特許権侵害の不法行為に基づき,損害賠償金2200万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成23年9月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 判断の基礎となる事実以下の事実については,当事者間に争いがないか,掲記の各証拠又は弁論の全趣旨より認められる。 (1) 当事者原告は,工場用品,事務機器及びオート用品等の設計・製作,並びに,販売を業とする株式会社である(甲1)。被告トラスコ中山は,作業用品,ハンドツール,物流保管製品及びオフィス住設用品の卸売等を業とする株式会社である(甲2)。被告コージ産業は,金属製品の製造・加工を業とする株式会社である。 (2) 本件特許権ア原告は,本件特許権を有しており,その内容は下記のとおりである(以下,下記の特許を「本件特許」という。また,本件特許に係る明細書を「本件明細書」といい,下記特許請求の範囲【請求項2】の発明を「本件発明」という。)。 記登録番号第4473095号発明の名称金属製棚及び金属製ワゴン出願日平成16年10月27日登録日平成22年3月12日特許請求の範囲 【請求項2】「複数枚の直角四辺形の金属製棚板と,山形鋼で作られた4本の支柱とからなり,各棚板 出願日平成16年10月27日登録日平成22年3月12日特許請求の範囲 【請求項2】「複数枚の直角四辺形の金属製棚板と,山形鋼で作られた4本の支柱とからなり,各棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し,ボルトにより固定して組み立てることとした金属製棚において,上記棚板は直角四辺形の箱底の四辺に側壁と内接片とがこの順序に連設されていて,各側壁が箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜き,内接片を折り返して側壁に重ね合わせるとともに,内接片が箱の内側へくるように側壁を起立させて浅い箱状体としたものであって,側壁の切欠部内に延出している内接片を支柱の内側に当接し,切欠によって作られた側壁の側面で支柱の両側面を挟み,内接片を支柱にボルトにより固定し,各支柱の下方にキャスターを付設して金属製棚を移動可能としたことを特徴とする,金属製ワゴン」イ本件発明は,以下の構成要件に分説することができる。 A 複数枚の直角四辺形の金属製棚板と,山形鋼で作られた4本の支柱とからなり,各棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し,ボルトにより固定して組み立てることとした金属製棚において,B 上記棚板は直角四辺形の箱底の四辺に側壁と内接片とがこの順序に連設されていて,C 各側壁が箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜き,D 内接片を折り返して側壁に重ね合わせるとともに,内接片が箱の内側へくるように側壁を起立させて浅い箱状体としたものであって,E 側壁の切欠部内に延出している内接片を支柱の内側に当接し,切欠によって作られた側壁の側面で支柱の両側面を挟み,F 内接片を支柱にボルトにより固定し,G 各支柱の下方にキャス って,E 側壁の切欠部内に延出している内接片を支柱の内側に当接し,切欠によって作られた側壁の側面で支柱の両側面を挟み,F 内接片を支柱にボルトにより固定し,G 各支柱の下方にキャスターを付設して金属製棚を移動可能としたH ことを特徴とする,金属製ワゴン(3) 被告らの行為被告トラスコ中山は,遅くとも平成23年1月以降,被告製品の販売及び販売の申し出を行うと共に,販売のためにカタログやインターネット等を通じて被告製品の展示を行っており(甲5),被告コージ産業は,被告製品を製造し,被告トラスコ中山に納入している。なお,被告製品である金属製ワゴンの構造,棚板の展開図は,別紙被告製品図面記載のとおりである(なお,以下,被告製品の部品等に付した番号は,同図面の番号を表す。)。 2 争点(1) 被告製品は本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)(2) 本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点2)(3) 原告の損害(争点3)第3 争点に係る当事者の主張 1 争点1(被告製品は本件発明の技術的範囲に属するか)について【原告の主張】(1) 被告製品の構成被告製品の構成は,別紙被告製品の構成(原告の主張)記載のとおりである。 (2) 被告製品の構成要件充足性被告製品は,以下のとおり,本件発明の構成要件A~Hを充足することから,本件発明の技術的範囲に属する。 ア構成要件Aについて(ア) 構成要件Aを充足すること被告製品は,複数枚の金属製棚板1及び山形鋼で作られた4本の支柱13を有していることから,構成要件Aの「複数枚の直角四辺形の金属製棚板と,山形鋼で作られた4本の支柱とからなる」を充足する。ま 被告製品は,複数枚の金属製棚板1及び山形鋼で作られた4本の支柱13を有していることから,構成要件Aの「複数枚の直角四辺形の金属製棚板と,山形鋼で作られた4本の支柱とからなる」を充足する。また,被告製品は,金属製棚板1のコーナー部2に支柱13を外側から重ねて,ボルト21により両者を固定して組み立てることから,構成要件Aの「各棚板の四隅のかど部を支柱の内側に当接し,ボルトにより固定して組み立てることとした金属製棚」を充足する。 (イ) 「山形鋼」についてa 被告らは,「山形鋼」とは形鋼の一つであると解した上で,被告製品の支柱はこれを充足しないと主張する。 しかしながら,スチール製ワゴンでの「山形鋼」とは,鋼板を切断し,山形に折り曲げたものをいうと解すべきであり,被告製品の支柱は「山形鋼」を充足する。なお,形鋼の一つとしての山形鋼は,土木建築などの資材として用いられるもので,スチール製ワゴンの支柱として用いられるものではない。被告らが提出する乙13~16の各文献の組立式棚をみても,そこで使用されている支柱は,鋼板を山形に曲げたものであり,形鋼ではない。b また,被告らは,「山形鋼」とはL字状の中実構造をいうと解した上で,被告製品の支柱は,断面形状が中空構造になっているため,これを充足しないと主張する。しかしながら,被告製品は,支柱に厚みを持たせたに過ぎず,その形状を全体として観察すると,厚みを有する山型の鋼板であることに変わりはなく,支柱の機能としても厚みを有しない場合と同様である。 したがって,被告製品の支柱は「山形鋼」を充足する。 (ウ) 「直角四辺形」について被告らは,被告製品の棚板1は「直角四辺形」ではないと主張するが,その主張に理由がないことは後記イのと したがって,被告製品の支柱は「山形鋼」を充足する。 (ウ) 「直角四辺形」について被告らは,被告製品の棚板1は「直角四辺形」ではないと主張するが,その主張に理由がないことは後記イのとおりである。 イ構成要件Bについて(ア) 構成要件Bを充足すること被告製品の棚板の底板3は,構成要件Bの「直角四辺形の箱底」に相当し,その四辺には外側板5と内側板7がこの順で連設されている。したがって,被告製品は構成要件Bを充足する。(イ) 「直角四辺形の箱底」について被告製品の棚板1の底板3は,全体が直角四辺形で,その四隅がわずかにL字状に切り欠かれた形状である(別紙被告製品図面図9参照)。しかしながら,この四隅の切り欠きは,棚板1のコーナー部を支柱13の内側面に当接する際に,支柱13の厚みを吸収する目的で形成されたものに過ぎず,基準となる直角四辺形の面積に比べると極めて僅かである。また,底板3は,支柱13と組み立てることにより,僅かなL字状の切り欠きも埋まるため,これによって底部が直角四辺形に形成されることになる。したがって,被告製品は,「直角四辺形の箱板」を充足する。 (ウ) 「連設」について被告らは,「連設」とは部材と部材が他の部材を介さずに直接につなが っている状態を意味すると解した上で,被告製品では,外側板5と内側板7が直接につながっていないから「連設」されていないと主張する。しかしながら,「連設」とは部材と部材とが他の部材を介してつながっている場合も含む概念である。この点は,本件明細書の【図6】の実施例で,側壁32と内接片42との間に,被告製品の上面板6に相当する上面部分が形成されていることからも明らかである。したがって,被告製品の棚板1は,外 念である。この点は,本件明細書の【図6】の実施例で,側壁32と内接片42との間に,被告製品の上面板6に相当する上面部分が形成されていることからも明らかである。したがって,被告製品の棚板1は,外側板5と内側板7がこの順に「連設」されているといえる。ウ構成要件Cについて被告製品は,外側板5が,棚板の底部の角であるZから支柱の幅L2だけ切り欠かれた形状となっており,構成要件Cを充足する。 エ構成要件Dについて(ア) 構成要件Dを充足すること被告製品は,内側板7を折り返して外側板5に重ね合わせるとともに,内側板7が箱の内側にくるように外側板5を起立させて浅い箱状体を形成しており,構成要件Dを充足する。 (イ) 「重ね合わせる」についてa 被告らは,「重ね合わせる」とは物の上に更に物をのせて隙間なく接して一体にする意味であると解した上で,被告製品は,内側板7と外側板5との間に隙間があるから,「重ね合わせる」とはいえないと主張する。 しかしながら,「重ね合わせる」の字義どおりの解釈からすると,内接片を折り返すことで金属製棚の側面を側壁と内接片の二重構造にし,その上で直接これを向き合わせる構成というべきであり(甲12,乙10の2),隙間がないという限定までは導かれない。また,金属板は本質的に堅く厚みがあるため,折り返した際に必ず空隙ができ,隙間なく密着させることはできない。 「折り返して…重ね合わせる」とは,内接片を側壁と平行に延ばすための一手段であって(段落【0011】,【0012】参照),全面にわたって隙間なく密着させるまでの意味は存在しない。さらに,被告らは,出願経過での意見書(平成21年10月30日受付。乙3)の記載に照らして,「重ね合わせる」とは内接片と 0012】参照),全面にわたって隙間なく密着させるまでの意味は存在しない。さらに,被告らは,出願経過での意見書(平成21年10月30日受付。乙3)の記載に照らして,「重ね合わせる」とは内接片と側壁との間に隙間がない状態に限定されると主張するが,上記意見書の記載は文献の読み誤りによる誤記で,技術的な意味を確定することができず,補正内容とも関連しないことから,参酌すべきではない。b なお,被告製品は,外側板5から内側板7を折り返し,内側板7を外側板5と平行に延ばし,内側板7の下端辺を折り曲げて形成していた下板8を外側板5に隙間なく当接させ,内側板7を外側板5と一体化し,動かないように固定化しているのであるから,この点においても「内接片を折り返して側壁に重ね合わせた」を充足する。オ構成要件Eについて(ア) 構成要件Eを充足すること被告製品は,外側板5の側面で支柱13の両側面を挟み込んでいることから,「切欠によって作られた側壁の側面で支柱の両側面を挟む」構成を有しており,構成要件Eを充足する。 (イ) 「挟む」について被告らは,「切欠によって作られた側壁の側面で支柱の両側面を挟む」とは,側壁の側面の全長にわたり,支柱の両側面が当接して固定された状態をいうと解した上で,被告製品では,外側板5の端面と支柱13の端板15との間に隙間があるため当接しておらず,「挟む」とはいえないと主張する。 しかしながら,支柱の両側面と側壁の側面が近接してさえいれば,支 柱がわずかに傾くと支柱は側壁の側面に当接してそれ以上の大きな傾きを防止できるのであるから,「挟む」についてはそのような近接で足りるというべきであり,被告らの主張するように限定して解すべき理由はない。 被告製品において,支柱13の両側 してそれ以上の大きな傾きを防止できるのであるから,「挟む」についてはそのような近接で足りるというべきであり,被告らの主張するように限定して解すべき理由はない。 被告製品において,支柱13の両側面と外側板5の側面は近接しており,「切欠によって作られた側壁の側面で支柱の両側面を挟む」といえる。 カ構成要件Fについて被告らは,被告製品では,ボルトによって支柱に固定しているのは,内側板7の突出端部7aと固定板9を一体化したものであることから,構成要件Fの「内接片を支柱にボルトにより固定」を充足しないと主張する。 しかしながら,突出端部7aは「内接片」に相当し,外側板5の切欠部内に延出している突出端部7aを支柱13の内側に当接し,突出端部7aを支柱13にボルト21で固定した構造を備えている以上,構成要件Fを充足するというべきである。キ構成要件Gについて被告らは,被告製品は,最下段の棚板の下面の4つのコーナー付近にキャスター22を付設しているため,構成要件Gの「各支柱の下方にキャスターを付設して」を充足しないと主張する。しかしながら,被告製品のキャスター22は,最下段の棚板の下面の4つのコーナー付近に付設されているとしても,各支柱13の下方にキャスターが付設され,金属製棚1を移動可能な状態にしていることに変わりはなく,構成要件Gを充足する。ク構成要件Hについて被告製品は,金属製ワゴンであって,構成要件Hを充足する。(3) 被告製品が本件発明の作用効果を奏すること なお,以下のとおり,被告製品は,本件発明の作用効果を奏する。ア被告製品は,壁部4の外面と支柱13の外面とは面一になっていることから,棚板の取り扱いが容易となり棚板の支柱への組み立てが容易になるととも 下のとおり,被告製品は,本件発明の作用効果を奏する。ア被告製品は,壁部4の外面と支柱13の外面とは面一になっていることから,棚板の取り扱いが容易となり棚板の支柱への組み立てが容易になるとともに,棚の見栄えが良好になっている。被告らは,被告製品においては壁部4の外面と支柱13の外面とは面一になっていないと主張するところ,確かに壁部4の外面は支柱13の外面より約1mm程度引き込んでいるといえるが(甲8参照),この引き込みは棚板4と支柱13の大きさに比べると僅かであり,実質的には面一といえる。イまた,被告製品では,棚板に対する支柱の傾きを確実に防止することができる(甲10参照)。(4) 被告製品について均等侵害が成立すること仮に,被告製品が構成要件Dの「内接片を折り返して側壁に重ね合わせる」の文言を充足しないとしても,以下のとおり,均等侵害が成立する。ア本件発明の非本質的部分であること本件発明の課題を解決する手段を基礎付ける特徴的部分は,①棚板について,内接片が箱の内側へくるように側壁を起立させて浅い箱状体としたものであること,②棚板の側壁に切欠部が形成され,切り欠きによって作られた側壁の側面で支柱の両側面を挟むことにあり,これらの構成が本件発明の本質的部分である。構成要件Dの「内接片を折り返して側壁に重ね合わせる」構成は,本件発明の非本質的部分である。イ置換可能性があること被告製品は,上記(3)のとおり本件発明の作用効果を奏することから,置換可能性がある。ウ置換容易性があること本件発明の「内接片を折り返して側壁に重ね合わせる」構成を,被告製品のように内接片と側壁との間に隙間を設ける構成に置換することは,被告製品の製造時に 換容易性があること本件発明の「内接片を折り返して側壁に重ね合わせる」構成を,被告製品のように内接片と側壁との間に隙間を設ける構成に置換することは,被告製品の製造時に容易に想到し得たものである。エ被告製品には容易推考性がないこと被告製品は,本件発明の本質的部分の構成をそのまま採用しており,本件特許の出願当時の公知技術と同一ではなく,または当業者がこれら技術から容易に推考できたものではない。オ被告製品は,本件特許の出願経過において,意識的に除外されたものには当たらないこと本件特許の出願経過での補正によって意識的に除外されたのは,側壁と内接片とが折り返しの構成になっておらず,この順序に連設されていない構成(段落【0023】,【図5】)に限られるのであって,内接片と側壁に隙間がある構成,ましてや内接片の下端辺が側壁に当接する構成まで意識的に除外したとは認められない。【被告らの主張】(1) 被告製品の構成被告製品の構成は,別紙被告製品の構成(被告の主張)記載のとおりである。なお,被告らが販売しているのは,被告製品である金属製ワゴンを組み立てる前の部品であり,組み立てた状態の金属製ワゴンは販売していない。 (2) 被告製品は本件発明の構成要件を充足しないこと被告製品は,以下のとおり,本件発明の構成要件A~Gをいずれも充足しない。 ア構成要件Aについて(ア) 「山形鋼」について「山形鋼」とは,形鋼の一つであって,横断面がL字形をした圧延鋼材をいう(乙8,9)。また,圧延とは,回転するロールの間に常温または高熱した金属素材を通して,棒状・板状・管状などに引き延ばし,かつ材質を均質化させることをいう(乙10の 延鋼材をいう(乙8,9)。また,圧延とは,回転するロールの間に常温または高熱した金属素材を通して,棒状・板状・管状などに引き延ばし,かつ材質を均質化させることをいう(乙10の1)。このような製法ゆえに,「山形鋼」は中実の鋼材である。 被告製品の支柱13は,板金加工(打ち抜きと曲げ加工)によって製造されており,また,中空の構造であるため,「山形鋼」ではない。 (イ) 「直角四辺形」について後記イのとおり,被告製品の棚板は「直角四辺形」ではない。 イ構成要件Bについて(ア) 「直角四辺形の箱底」について被告製品の棚板1の底板3は,直角四辺形の4つの隅部を階段状に切り欠いた変則二十角形ともいうべき形状であるため(別紙被告製品図面図9),「直角四辺形」ではない。 原告は,切り欠かれた部分は支柱によって埋められると主張するが,構成要件Bの「箱底」は,支柱と接続する前の箱底自体を指しており,支柱によって埋められることは影響しない。 (イ) 「連設」について構成要件Bは「箱底の四辺に側壁と内接片とがこの順序に連設」とされるところ,「連設」とは連なった状態で設けることを意味し(乙11),本件明細書【図6】の実施例では,箱底の底板の縁と側壁の付け根が直接につながり,さらに側壁の先端と内接片の付け根が直接につながっている。したがって,「連設」とは,部材と部材が他の部材を介さずに直接つながっている状態を意味すると解される(なお,本件明細書【図6】の実施例における上面部分は,鋼板の厚み程度のもので,別部材として認識されるほどのものではない。)。被告製品の棚板1では,外側板5と内側板7との間に上面板6が介在しており,外側板5と内側板7は直接つながっていないため,「連設」 のもので,別部材として認識されるほどのものではない。)。被告製品の棚板1では,外側板5と内側板7との間に上面板6が介在しており,外側板5と内側板7は直接つながっていないため,「連設」されていない。ウ構成要件Cについて被告製品では,外側板5と上面板6と下板8は,直角四辺形の隅を階段状に切り欠く前の角Zから支柱13の内側面の幅よりも長い長さで切り欠かれており,内側板7は,角Zから支柱13の内側面の幅よりも短い長さで切り欠かれている。したがって,「各側壁が箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜」かれた構成にはなっていない。また,そもそも,角Zは仮想の点であり「箱底のかど」ではない。エ構成要件Dについて(ア) 構成要件Dは,「内接片を折り返して側壁に重ね合わせる」とされているところ,「重ね合わせる」とは,同種の物が隙間なくぴったりと接している状態をいうと解される。 すなわち,重ねるとは,物の上に物をさらにのせるという意味であり(乙10の2,12の1),合わせるとは,二つの物がすきまなくぴったりと接するようにするという意味である(乙10の3,12の2,34,甲12)。本件明細書では,「図3に示した打ち抜き板Fは,まず内接片41,42,43及び44を点線に沿って何れも同じ方向に折り返し,それぞれ側壁31,32,33及び34に重ね合わせる」(段落【0019】)と記載され,【図4】に内接片と側壁とが隙間なくぴったりと接している状態が示されている(なお,段落【0011】,【0012】の記載は,請求項2の解釈に当たって参酌し得るものではない。)。また,本件発明は,「支柱の側面に…側壁の側面を当接して支柱を側壁の側面で挟むことに」よって「棚板に対する支柱の傾きを 】,【0012】の記載は,請求項2の解釈に当たって参酌し得るものではない。)。また,本件発明は,「支柱の側面に…側壁の側面を当接して支柱を側壁の側面で挟むことに」よって「棚板に対する支柱の傾きを確実に防止することができる」(段落【0013】参照)ことを特徴とするものであるが,このような作用効果を奏するために,内接片を折り返して側壁に隙間なくぴったりと当接させることによって,内接片を支柱の内側に当接した際に,側壁の側面と支柱の側面とが対向する位置関係を確保しているといえる。このように,「内接片を折り返して側壁に重ね合わせる」との構成は,側壁の側面のかかる位置決めをするという技術的意義も有している。 原告は,鋼板を折り返した際には必ず空隙ができると主張するが,板材の縁を本体部に折り返して重ねる際に,縁部を本体部に対して押圧して折り返し部を潰すことで縁部と本体部とを隙間なく密着させることは本件特許の出願前から広く行われており(乙25,26),本件発明も,このような板金業界の技術常識を当然に前提にしていると解されるし,仮に隙間が生じるとしても僅かなものであり,被告製品のように約1cmもの大きな空間とは異質のものである。(イ) 被告製品では,外側板5と内側板7との間には約1cmの大きな空間が空いており,内側板7は外側板5にぴったりと接していない(乙38)。 また,原告は,被告製品が内側板7の下端辺を下板8として外側板5側に曲げて隙間なく当接させることによって,内側板7を外側板5に重ね合わせている旨主張するが,そもそも下板8は,内側板7の一部として「内接片」に相当する部材ではないし,下板8の最先端は外側板5に接近しているものの僅かな隙間が空いており,下板8と外側板5が一体化しているわけでもない。 もそも下板8は,内側板7の一部として「内接片」に相当する部材ではないし,下板8の最先端は外側板5に接近しているものの僅かな隙間が空いており,下板8と外側板5が一体化しているわけでもない。したがって,被告製品は,「内接片を折り返して側壁に重ね合わせる」に相当する構成を有しておらず,構成要件Dを充足しない。 (ウ) なお,「重ね合わせる」が,側壁と内接片との間に隙間を有しない構成を意味することは,本件特許の出願経過からも明らかである。 出願人は,平成21年10月30日受付の意見書(乙3)で「かりに文献2を文献1に結びつけると,文献2は棚板の側壁に段差をつけることを教えている。そこで,側壁に段差をつけると,側壁は中央部で内接片から離れて間に隙間を生じて,本願のようなものにならない」と主張するとともに,同日受付の手続補正書(乙4)で,特許請求の範囲の請求項2について「側壁の内側には側壁と平行に延びる内接片が固定されて」との記載を削除し,代わりに「内接片を折り返して側壁に重ね合わせる」との記載を付加している。 出願人の上記意見書の記載は,本件発明が,引用文献1(乙5)の側壁に,引用文献2(乙6)図1のような段差を形成して接続部を設ける技術を適用した構成とは異なることを主張するために,側壁に段差を形成すると中央部が内接片から離れて間に隙間を生じるので本件発明の構成と相違する旨述べたものであり,本件発明が,側壁と内接片との間に隙間を有しないことを内容とするものといえる。出願人の上記手続補正書の記載もこのような趣旨に沿うものである。 このような出願経過も踏まえると,本件発明が側壁と内接片が全面にわたってぴったりと密着する構造に限定されるとまではいえなくても,少なくとも,被告製品のように内側面7と外側面5 である。 このような出願経過も踏まえると,本件発明が側壁と内接片が全面にわたってぴったりと密着する構造に限定されるとまではいえなくても,少なくとも,被告製品のように内側面7と外側面5との間に大きな隙間が空いたものは含まれないというべきであるオ構成要件Eについて(ア) 構成要件Eは,「切欠によって作られた側壁の側面で支柱の両側面を挟」むとされる。本件明細書には,「…また,支柱の側面に側壁の切欠によって作られた側壁の側面を当接して支柱を側壁の側面で挟むこととしたから,側壁の高さ全体に延びる長い側面で支柱を挟むことになり,従って棚板に対する支柱の傾きを確実に防止することができる。」(段落【0013】),「支柱Bが棚板Aの側面321と331とに挟まれて固定されると,側面321と331とは棚板Aの側壁の高さ全体に延びているため,支柱Bは棚板Aから棚板Aの厚みの全長にわたって傾斜を防ぐ力を受けるから,棚板Aに対して傾くことが確実に防がれる。」(段落【0022】)と記載されており,これらの記載等によれば,「側壁の側面で支柱の両側面を挟」むとは,棚板に対する支柱の傾きを確実に防止するために,側壁の側面と支柱の両側面が側壁の側面の全長にわたって当接して固定されている状態を意味すると解される。 (イ) 被告製品では,壁部4を構成する外側板5の端面と支柱13の端板15との間に0.03mm以上の隙間を生じており,当接していない(乙27,36参照)。 したがって,被告製品は構成要件Eを充足しない。カ構成要件Fについて構成要件Fは,「内接片を支柱にボルトにより固定」したものである。被告製品は,2枚の突出端部7aに板厚が棚板1の本体部分の板厚よりも厚い固定板9を溶接で固定すること カ構成要件Fについて構成要件Fは,「内接片を支柱にボルトにより固定」したものである。被告製品は,2枚の突出端部7aに板厚が棚板1の本体部分の板厚よりも厚い固定板9を溶接で固定することによって一体化された部材を形成し,この一体化された部材を支柱13にボルトで固定しているところ,この一体化された部材は,「内接片」とはいえない。したがって,被告製品は構成要件Fを充足しない。キ構成要件Gについて構成要件Gは,「各支柱の下方にキャスターを付設して」いるものであるところ,「支柱の下方」とは支柱の下端と解すべきである。被告製品のキャスターは,最下段の棚板1の下面の4つのコーナー付近に付設されていることから,構成要件Gを充足しない。 (3) 被告製品の作用効果についてなお,被告製品では,壁部4の外面と支柱13の外面とは,面一ではなく約1mmの段差がある(別紙被告製品図面図7参照)。原告は,「側壁の表面は,支柱の外面と面一になっているところ,約1mmとはいえ,支柱が壁部よりも外側に突出して段差を生じるのであれば,棚板の取り扱いが容易とな り棚板の支柱への組み立てが容易になるという,本件発明の作用効果を奏しない。また,被告製品では,壁部4を構成する外側板5の端面と支柱13の端板15との間には隙間を生じており(乙27参照),棚板に対する支柱の傾きを確実に防止するという本件発明の作用効果を奏しない(乙28,37参照)。(4) 被告製品について均等侵害も成立しないこと以下のとおり,被告製品については,均等侵害も成立しない。 ア本質的部分について支柱の両側面と側壁の側面を当接して支柱の傾きを防止するためには,そもそも支柱の両側面と側壁の側面が対向する位置関係になること 製品については,均等侵害も成立しない。 ア本質的部分について支柱の両側面と側壁の側面を当接して支柱の傾きを防止するためには,そもそも支柱の両側面と側壁の側面が対向する位置関係になることが必要であるところ,かかる位置関係は内接片と側壁の重ね合わせと切欠部内に延出している内接片と支柱の当接によって果たされる。したがって,内接片を側壁に「重ね合わせる」構成は,本件発明の本質的部分である。イ置換可能性について被告製品が本件発明の作用効果を奏しないことは,上記(3)のとおりである。なお,被告製品では,突出端部7aに肉厚の固定板9を溶接することによって,支柱13に固定される部分の強度を増すとともに壁部4を全体として一体化して棚板1の剛性を高め,支柱13と棚板1を確実に固定している。ウ置換容易性(置換想到性)について原告の主張は,置換容易性を基礎付けるものではなく失当である。エ意識的除外について上記(2)エ(ウ)のとおり,本件特許の出願経過に照らすと,出願人は,内接片と側壁との間に空間がある構成を本件発明から除外している。 2 争点2(本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものであるか)について【被告らの主張】本件特許は,以下のとおり,出願時に公知であった発明に基づき,当業者が容易に想到し得るものであるから,特許無効審判によって無効にされるべきものである(特許法29条2項)。(1) 乙13に基づく主張ア乙13発明乙13には,「複数枚の直角四辺形の金属製棚板と,4本の山形鋼等からなる支柱とからなり,各棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し,ボルトにより固定して組み立てることとした金属製棚において,上記棚板は直角四辺形の箱底 の直角四辺形の金属製棚板と,4本の山形鋼等からなる支柱とからなり,各棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し,ボルトにより固定して組み立てることとした金属製棚において,上記棚板は直角四辺形の箱底の四辺に側板の外側の部分(「側板7」の外側の板)と側板の内側の部分(「側板7」の内側の板)とがこの順序に連設されていて,側板の内側の部分(「側板7」の内側の板)を折り返して側板の外側の部分(「側板7」の外側の板)に重ね合わせるとともに,側板の内側の部分(「側板7」の内側の板)が箱の内側へくるように側板の外側の部分(「側板7」の外側の板)を起立させて浅い箱状体としたものであって,側板の外側の部分(「側板7」の外側の板)及び側板の内側の部分(「側板7」の内側の板)を支柱にボルトにより固定した,金属製棚」が開示されている(以下「乙13発明」という。)。イ本件発明と乙13発明との対比(ア) 本件発明と乙13発明は,以下の点において一致する。 複数枚の直角四辺形の金属製棚板と,山形鋼で作られた4本の支柱とからなり,各棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し,ボルトにより固定して組み立てることとした金属製棚において,上記棚板は直角四辺形の箱底の四辺に側板の外側の部分(本件発明では「側壁」,乙13発明では「側板の外側の部分」)と側板の内側の部分(本件発明では「内 接片」,乙13発明では「側板の内側の部分」)とがこの順序に連設されていて,側板の内側の部分を折り返して側板の外側の部分に重ね合わせるとともに,側板の内側の部分が箱の内側へくるように側板の外側の部分を起立させて浅い箱状体としたものであって,側板の内側の部分を支柱にボルトにより固定した金属製棚である点(イ) 本件発明と乙13発明は,以下の点において の内側へくるように側板の外側の部分を起立させて浅い箱状体としたものであって,側板の内側の部分を支柱にボルトにより固定した金属製棚である点(イ) 本件発明と乙13発明は,以下の点において相違する。 a 相違点1本件発明では,各「側壁」が,箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜かれているため,「側壁」の切欠部内に延出している「内接片」を支柱の内側に当接し,切欠によって作られた「側壁」の側面で支柱の両側面を挟んでいるのに対し,乙13発明では,各「側板の外側の部分」が箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜かれていないため,「側板の内側の部分」は「側板の外側の部分」の切欠部内に延出せず,支柱の内側に当接しておらず,切欠によって作られた「側板の外側の部分」の側面で支柱の両側面を挟んでいない点b 相違点2本件発明は金属製棚の各支柱の下方にキャスターを付設して移動可能とした金属製ワゴンであるのに対し,乙13発明はキャスターを備えていない点ウ相違点1について(ア) 乙7発明の適用a 乙7には,「複数枚の直角四辺形の金属製棚板と,4本のL型支柱とからなり,各棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し,ボルトにより固定して組み立てることとした金属製棚において,上記棚板は金属板を打ち抜き・折曲して浅い箱状としたもので,直角四辺形の底板 の4辺に折り返して重ね合わせられて二重となった側板(「折り返し片16ないし19」と「縁片12ないし15」)が設けられており,側板の外側の部分(「折り返し片16ないし19」)が箱底(「平板11」)のかどから支柱(「支柱6」)の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜き,側板の内側の部分( し15」)が設けられており,側板の外側の部分(「折り返し片16ないし19」)が箱底(「平板11」)のかどから支柱(「支柱6」)の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜き,側板の内側の部分(「縁片12ないし15」)を側板の外側の部分(「折り返し片16ないし19」)の切欠部内に延出させ,これを支柱(「支柱6」)の内面に当接し,側板の内側の部分(「縁片12ないし15」)を支柱(「支柱6」)にボルトにより固定した金属製棚」が開示されている(以下「乙7発明」という。)。b 本件発明,乙13発明,乙7発明は,いずれも「複数枚の直角四辺形の金属製棚板と,4本のL型支柱とからなり,各棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し,ボルトにより固定して組み立てることとした金属製棚において,上記棚板は金属板を打ち抜き・折曲して浅い箱状としたもので直角四辺形の底板の4辺に折り返して重ね合わせられて二重となった側板が設けられている」という点で基本的構成を共通にしている。また,本件発明と乙7発明は,支柱の傾きを防止するという課題において共通しているところ,この課題は棚板の四隅を支柱に当接させて固定させる棚一般に共通する周知の課題であって(乙7,14~16,19,30),乙13発明にも妥当する。よって,乙13発明に乙7発明を適用する動機付けがあるといえ,側板の内側の部分を折り返して二重となっている乙13発明に,乙7発明に開示された「側板の外側の部分を箱底のかどから支柱の幅の長さだけ切り欠いて,切欠部内に延出している側板の内側の部分を支柱の内側に当接し,切欠によって作られた側板の外側の部分の側面で支柱の両側面を挟み,側板の内側の部分を支柱によりボルトで固定する」という技術を適用することにより,上記相違点1に係る構成を得るこ し,切欠によって作られた側板の外側の部分の側面で支柱の両側面を挟み,側板の内側の部分を支柱によりボルトで固定する」という技術を適用することにより,上記相違点1に係る構成を得ることができる。なお,支柱は棚板のかど部に外側から重ねられるのであるから,側板の外側の部分を切り欠くのは必然ともいえる。c 以上のとおり,乙13発明に乙7発明を適用して相違点1に係る構成を得ることは,当業者にとって容易に想到し得る。なお,そもそも本件発明と乙7発明は,棚板の側板は内側に折り返されて二重となっているか,外側に折り返されて二重となっているかという点に基づく相違しかなく,側板の外側の部分を内側に折り返して二重構造とすることは,周知技術であるから(乙13~17,30,乙7の従来技術等),乙7をみた当業者が,これを側板の外側の部分を内側に折り返した棚板に適用しようとすることは当然のことといえる。その際,側板の外側の部分を切り欠くことは,技術の具体的な適用場面での設計変更にすぎない。 (イ) 乙18発明の適用a 乙18には,「複数枚の直角四辺形の金属製棚板(棚アセンブリ)と,4本のL型支柱(隅柱アセンブリ)とからなり,各棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し,ボルトにより固定して組み立てることとした金属製棚において,棚アセンブリはスカート内側部分10bが内側に折り返されてスカート外側部分10aに重ね合わせられた二重構造になっており,棚アセンブリのスカート外側部分10aが支持面9のかどから隅柱アセンブリ1の幅の長さ分だけ切欠かれており,スカート内側部分10bをスカート外側部分10aの切欠部内に延出させ,これを隅柱アセンブリ1の内面に当接して,スカート外側部分10aの側面で隅柱アセンブリ1の両側面を挟む」構成が開 切欠かれており,スカート内側部分10bをスカート外側部分10aの切欠部内に延出させ,これを隅柱アセンブリ1の内面に当接して,スカート外側部分10aの側面で隅柱アセンブリ1の両側面を挟む」構成が開示されている(以下「乙18発明」という。)。b 本件発明は支柱の傾きを防止するという課題を有するところ,この課題は棚板の四隅を支柱に当接させて固定する棚一般の課題であり,乙18発明にも共通する。また,本件発明と乙18発明は,いずれも,棚板の側板が二重構造になっており,側板の外側の部分を箱底のかどから支柱の幅の長さだけ切り欠いて,切欠部内に延出している側板の内側の部分を支柱の内側に当接して,切欠によって作られた側板の外側の部分の側面で支柱の両側面を挟むものであり,作用効果も基本的に一致する。なお,原告は,乙18発明は,ボール紙を代表とする材料を使用した一時的な陳列台であることから適用困難であるか又は阻害要因があると主張するが,これらは作用効果に関するものではないし,乙18発明は金属が使用できる旨明記されていることから,原告の主張には理由がない。c したがって,乙13発明に乙18発明を適用して相違点1に係る構成を得ることは,当業者にとって容易に想到し得る。(ウ) 乙19発明の適用a 乙19には,第7図ないし第9図の変形例において,段部15,15′を形成するため,「第1前側片10a,第1後側片11a,第1左側片12a,第1右側片13aを支柱の幅の長さ分だけ切欠き」,さらに,コーナー壁を形成するため,「第2前側片10b,第2後側片11b,第2左側片12b,第2右側片13bを第1前側片10a,第1後側片11a,第1左側片12a,第1右側片13aの切欠部内に延出させ,これを支柱1′の内側に当接して,段 前側片10b,第2後側片11b,第2左側片12b,第2右側片13bを第1前側片10a,第1後側片11a,第1左側片12a,第1右側片13aの切欠部内に延出させ,これを支柱1′の内側に当接して,段部15,15′で支柱1′の両側面を挟む」構成が開示されている(以下「乙19発明」という。)。b 本件発明と乙19発明は支柱の傾きを防止するという課題において共通している。また,本件発明と乙19発明は,いずれも棚板の側板が二重構造になっており,側板の外側の部分を箱底のかどから支柱の幅の長さだけ切り欠いて,切欠部内に延出している側板の内側の部分を支柱の内側に当接して,切欠によって作られた側板の外側の部分の側面で支柱の両側面を挟むものであり,作用効果も基本的に一致している。 c したがって,乙13発明に乙19発明を適用して相違点1に係る構成を得ることは,当業者にとって容易に想到し得る。 エ相違点2について棚板と支柱からなる棚において支柱の下方にキャスターを付設して移動可能なワゴンとすることは,当業者が棚の利用状況に応じて任意に選択し得る周知技術であり,乙20,21にも開示されている。 したがって,乙13発明に当該周知技術を適用して相違点2に係る構成を得ることは,当業者にとって容易に想到し得る。 (2) 乙14に基づく主張ア乙14発明乙14には,「複数枚の直角四辺形の金属製棚板と,4本のアングル支柱とからなり,各棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し,ボルトにより固定して組み立てることとした金属製棚において,上記棚板は直角四辺形の箱底の四辺に側板の外側の部分(「外壁板(10)」)と側板の内側の部分(「内壁板(11)」)とがこの順序に連設されていて,側板の内側の部分(「内壁板(1 した金属製棚において,上記棚板は直角四辺形の箱底の四辺に側板の外側の部分(「外壁板(10)」)と側板の内側の部分(「内壁板(11)」)とがこの順序に連設されていて,側板の内側の部分(「内壁板(11)」)を折り返して側板の外側の部分(「外壁板(10)」)に重ね合わせるとともに,側板の内側の部分(「内壁板(11)」)が箱の内側へくるように側板の外側の部分(「外壁板(10)」)を起立させて浅い箱状体としたものであって,側板の外側の部分(「外壁板(10)」)及び側板の内側の部分(「内壁板(11)」)を支柱にボルトにより固定した,金属製棚」が開示されている(以下「乙14発明」という。)。 イ本件発明と乙14発明との対比(ア) 本件発明と乙14発明は,以下の点で一致する。 複数枚の直角四辺形の金属製棚板と,4本のアングル支柱とからなり,各棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し,ボルトにより固定して組み立てることとした金属製棚において,上記棚板は直角四辺形の箱底の四辺に側板の外側の部分(本件発明では「側壁」,乙14発明では「折曲側面の外壁板」)と側板の内側の部分(本件発明では「内接片」,乙14発明では「折曲側面の内壁板」)とがこの順序に連設されていて,側板の内側の部分を折り返して外側の板に重ね合わせるとともに,側板の内側の部分が箱の内側へくるように外側の板を起立させて浅い箱状体としたものであって,内側の板を支柱にボルトにより固定した,金属製棚である点(イ) 本件発明と乙14発明は,以下の点で相違する。a 相違点1本件発明では支柱が「山形鋼」で作られているのに対し,乙14発明ではL型支柱であるものの「山形鋼」であるかは不明である点b 相違点2本件発明では,各「側壁」が箱底 a 相違点1本件発明では支柱が「山形鋼」で作られているのに対し,乙14発明ではL型支柱であるものの「山形鋼」であるかは不明である点b 相違点2本件発明では,各「側壁」が箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜かれているため,「側壁」の切欠部内に延出している「内接片」を支柱の内側に当接し,切欠によって作られた「側壁」の側面で支柱の両側面を挟んでいるのに対し,乙14発明では,各「折曲側面の外壁板」が箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜かれていないため,「折曲側面の内壁板」は「折曲側面の外壁板」の切欠部内に延出せず,支柱の内側に当接しておらず,切欠によって作られた「折曲側面の外壁板」の側面で支柱の両側面を挟んでいない点c 相違点3本件発明は金属製棚の各支柱の下方にキャスターを付設して移動可能とした金属製ワゴンであるのに対し,乙13発明はキャスターを備えていない点(ウ) 相違点1について本件発明の「山形鋼」はL型支柱である点で乙14発明と共通しており,乙14発明のL型支柱を本件発明の「山形鋼」に置換して相違点1に係る構成を得ることは,当業者にとって容易に想到し得る(乙13,30では支柱に山形鋼が採用されており,これらを参照すれば容易に想到し得る。)。 (エ) 相違点2について上記(1)の場合と同様に,乙14発明に乙7発明,乙18発明,乙19発明を適用して相違点2に係る構成を得ることは,当業者にとって容易に想到し得る。 (オ) 相違点3について上記(1)の場合と同様に,乙14発明に周知技術(乙20,21)を適用して相違点3に係る構成を得ることは,当業者にとって容易に想 容易に想到し得る。 (オ) 相違点3について上記(1)の場合と同様に,乙14発明に周知技術(乙20,21)を適用して相違点3に係る構成を得ることは,当業者にとって容易に想到し得る。 (3) 乙17に基づく主張ア乙17発明について乙17には,「複数枚の直角四辺形の金属製棚板と,4本のL型支柱とからなり,各棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し,ボルトにより固定して組み立てることとした金属製棚において,上記棚板は直角四辺形の箱底の四辺に側板の外側の部分(「前後側板2,3」及び「左右側板4,5」)と側板の内側の部分(「補強板6」)とがこの順序に連設されていて,側板の内側の部分(「補強板6」)を折り返して側板の外側の部分(「前後側板2,3」及び「左右側板4,5」)に重ね合わせるとともに,側板の内側の部分(「補強板6」)が箱の内側へくるように側板の外側の部分(「前後側板2,3」及び「左右側板4,5」)を起立させて浅い箱状体としたものであって,側板の外側の部分(「前後側板2,3」及び「左右側板4,5」)及び側板の内側の部分(「補強板6」)を支柱にボルトにより固定した,金属製棚」が開示されている(以下「乙17発明」という。)。イ上記(2)の場合と同様に,本件発明は,乙17発明に基づき,当業者にとって容易に相当し得る。 (4) 乙7記載の従来技術に基づく主張ア乙7には,従来技術として,「複数枚の直角四辺形の金属製棚板と,4本のL型支柱とからなり,各棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し,ボルトにより固定して組み立てることとした金属製棚において,上記棚板は直角四辺形の箱底の四辺に側板の外側の部分(「側壁」の外側の部分)と側板の内側の部分(「側壁」の内側の部分 支柱の内側面に当接し,ボルトにより固定して組み立てることとした金属製棚において,上記棚板は直角四辺形の箱底の四辺に側板の外側の部分(「側壁」の外側の部分)と側板の内側の部分(「側壁」の内側の部分)とがこの順序に連設されていて,側板の内側の部分(「側壁」の内側の部分」)を折り返して側板の外側の部分(「側壁」の外側の部分)に重ね合わせるとともに,側板の内側の部分(「側壁」の内側の部分)が箱の内側へくるように側板の外側の部分(「側壁」の外側の部分)を起立させて浅い箱状体としたものであって,側板の外側の部分(「側壁」の外側の部分)及び側板の内側の部分(「側壁」の内側の部分)を支柱にボルトにより固定した,金属製棚」が開示されている(以下「乙7従来技術」という。)。 イ上記(2)の場合と同様に,本件発明は,乙7従来技術に基づき,当業者にとって容易に相当し得る。 【原告の主張】(1) 乙13に基づく主張についてア本件発明と乙13発明との相違点について(ア) 本件発明は,「内接片」及び「側壁」を備えるのに対し,乙13発明は, 本件発明の重要な構成要素である「内接片」及び「側壁」を備えていない。したがって,これらの点も相違点として認定されるべきである。すなわち,「内接片」とは,棚板側壁の内側にあって,側壁の切欠部内に延出し,単独でボルトの固定により棚板が支柱からズレ落ちることを防止する部分でなければならないところ,乙13発明の側板7の内側部分が外側部分の切欠内に延出することはあり得ず,内側部分だけで棚板を支柱に固定することもできない。したがって,被告らの「側板7の内側部分が内接片に相当する」という主張は誤りである。(イ) また,本件発明と乙13発明は,加工の順番も相違する。 だけで棚板を支柱に固定することもできない。したがって,被告らの「側板7の内側部分が内接片に相当する」という主張は誤りである。(イ) また,本件発明と乙13発明は,加工の順番も相違する。すなわち,本件発明は,「内接片を折り返して側壁に重ね合わせるとともに,内接片が箱の内側へくるように側壁を起立させて浅い箱状体としたもの」であるところ,乙13発明は,このような順序を明示していない。 被告らは,板金加工の手順として素材板の端から順に曲げ加工することは周知技術であると主張するが,そのような立証はない。 (ウ) さらに,乙13発明は,「上記棚板の側端部には係止部材の先端部が嵌入される係合孔が形成され,この係合孔の上辺部には側板の内方に傾斜して伸びる係止部材案内用の傾斜面を備えたテーパ溝部が形成された」構成を必要不可欠な要素としているのに対し,本件発明はこのような構成を全く必要としておらず,この点も相違点とされるべきである。イ乙7発明の適用について(ア) 乙7発明の開示内容についてa 被告らが主張するとおり,乙7発明の縁片12ないし15が折り返し片16ないし19の切欠部内に延出しているとみた場合,乙7発明の「縁片」が本件発明の「内接片」,乙7発明の「折り返し片」が本件発明の「側壁」に相当することになり,乙7発明では,「側壁」を外側に折り返して棚板の厚み方向に延びる「内接片」に重ね合わせる構成(棚板→内接片→側壁)が開示されているといえる。しかしながら,本件発明では,「側壁」と「内接片」は直角四辺形の箱底の四辺にこの順序(箱底→側壁→内接片)で連設されていなければならず(構成要件B),乙7発明の連設順序は,同構成要件と矛盾する。また,本件発明では,内接片が箱の内側へくるように「側壁を 四辺形の箱底の四辺にこの順序(箱底→側壁→内接片)で連設されていなければならず(構成要件B),乙7発明の連設順序は,同構成要件と矛盾する。また,本件発明では,内接片が箱の内側へくるように「側壁を起立させなければならない」ところ(構成要件D),乙7発明の連設順序は,同構成要件とも矛盾する。b また,本件発明は,内接片が延出した構造であるところ,乙7発明には「延出」という文言はなく,折り返す前から存在する縁片に,小片が付設されない端部が生じたからといって,「延出」ということはできない。c よって,乙7発明には,本件発明に相当する構成は記載も示唆もされていない。(イ) 乙13発明に乙7発明を適用することの困難性a 本件発明,乙13発明,乙7発明は,基本的構成を共通にしていない。 b 乙13発明の課題は支柱の傾きの防止ではないところ(簡単な取付作業で棚板と支柱とを強固に連結することができるものである。),本件発明の課題は,支柱の傾き防止のみならず美観の向上も含んだものである。また,支柱の傾き防止という課題を解決しようとする技術が多く存在する中で,乙13発明にあえて乙7発明を適用する積極的な動機付けはない。乙13発明は,本件発明に全く関係のない「上記棚板の側端部には係止部材の先端部が嵌入される係合孔が形成され,この係合孔の上辺部には側板の内方に傾斜して伸びる係止部材案内用の傾斜面を備えたテーパ溝部が形成された」構成を必要不可欠な要素としてお り,このような構成によって,係止部材によって棚板の四隅をそれぞれ支柱に仮止めした後,棚板を押し下げるという簡単な操作で支柱と棚板とを強固に連結することができるため,棚の組立作業を簡略化できるとともに,強 ような構成によって,係止部材によって棚板の四隅をそれぞれ支柱に仮止めした後,棚板を押し下げるという簡単な操作で支柱と棚板とを強固に連結することができるため,棚の組立作業を簡略化できるとともに,強固な組立強度を得ることができるのである。したがって,当業者は,乙13発明にあえて乙7発明を適用し,側壁の端部を切欠して,支柱と棚板との接合部を弱めるようなことをすることはない。さらに,乙13発明のうち,棚板の組立作業の簡略化及び強固な組立てに必要な傾斜面を備えたテーパ溝部の構造については,乙7発明を適用した場合に,いかなる場所に設けることになるかも全く不明瞭であって,両者を物理的に組み合わせること自体も極めて困難である(乙13の第1図からは,内接片部分にテーパ構造を残存させることは,およそ困難である。)。よって,乙13発明に乙7発明を適用することについては,動機付けがなく,むしろ重大な阻害要因があるというべきである。c 本件発明は,支柱の傾きを防止するのみならず,内接片の折り返しによって美観を向上させるという点において,乙7発明とは異なる作用効果を有している。また,乙13発明と乙7発明には作用効果の一致を見出すこともできない。そもそも,箱状棚板では側壁の一部が切欠されると,棚板は切欠部で撓み易くなるから,本件特許の出願当時,側壁は切欠してはならないものと考えられており,直角四辺形の浅い箱状棚板は,専ら四隅のかどを支柱の内側面に当接してボルトで固定して支柱に接続されていた(乙7発明も棚板の側壁を切欠せずに,側壁の先を外側へ折り返した上でその折り返し片を切欠している。)。このような状態の下で,本件発明は初めて棚板四隅の側壁を切欠し たものであり,その背後には,側壁を直接支柱に ,側壁の先を外側へ折り返した上でその折り返し片を切欠している。)。このような状態の下で,本件発明は初めて棚板四隅の側壁を切欠し たものであり,その背後には,側壁を直接支柱に当接してボルトで固定しなくても,内側への折り返し片を支柱にボルトで固定すれば,棚板を支柱に強固に固定できることが実験によって確認された事実が存在している。したがって,乙13発明の側壁の外側の部分を切り欠くことを設計事項と評価することは失当であり,乙13発明に乙7発明を適用することが容易であったとはいえない。ウ乙18発明の適用について ア 乙18発明の開示内容について乙18発明には,被告らが主張する「スカート外側部分10aが支持面9のかどから隅柱アセンブリ1の幅の長さ分だけ切欠し」という構成の記載はなく,かかる構成を示唆する記載も見当たらない。乙18図2には隅柱アセンブリ1が示されていないし,スカート外側部分10aの切欠が隅柱アセンブリ1の幅の長さ分であることも示されていない。また,乙18発明は,組み立てた状態では,支柱1のアーム6又は7が,スカート10の二重構造の間に差し込まれるため,二重構造の支柱の外側部分2b又は3bは,棚8のスカート外側部分10aの裏側に接触することとなる(乙18図4参照)。したがって,支柱1の側面は棚8の切欠によって生じた側面に当接することにはならず,スカート外側部分10aの側面で隅柱アセンブリ1の両側面を挟むことにもならない。 (イ) 乙13発明に乙18発明を適用することの困難性a 乙18発明では,ボール紙を代表とする材料を使用して一時的な陳列台を作ることを前提にしているから,棚に重量物を載せることは想定されていないし,また支柱の傾きを防止することなど全 との困難性a 乙18発明では,ボール紙を代表とする材料を使用して一時的な陳列台を作ることを前提にしているから,棚に重量物を載せることは想定されていないし,また支柱の傾きを防止することなど全く考えられていない。したがって,作用効果の共通性から乙13発明に乙18発明を適用することが,当業者にとって容易であるとはいえない。b 乙18発明は,「折り曲げることのできる部材」に関するものであるが,これは人の力によって折り曲げ可能なものを指すと考えるのが妥当である。また,乙18発明では,棚板8の側壁10を二重構造とするに当たって,内側スカート10bの先端に差し込み突起11を設け,突起11を天板9に穿設したスロット(孔)11bの中へ差し込んで,内側スカート10bを外側スカート10aに重ね合わせる構成をとっているが,これは,材料がボール紙であって,内側スカート10bを折り返して外側スカート10aに重ね合わせようとしても内側スカート10bが反発する状況で二重構造を維持するためのものである。一方,鋼板を材料とするスチール棚では,折り返した鋼板がはね返ることはないから,このような差し込み固定をする必要はなく,また実施することはできない。さらに,乙18発明では,棚板8を支柱1に接続するのに,図1に示した支柱1のアーム6及び7を,図2に示した棚板8の側壁10の二重構造の間へ差し込むことだけによって固定している。このような固定方法ができるのは,材料がボール紙のように曲げ易いものであるからであり,このような固定方法で足りるのは,陳列台が一時的なものだからである。鋼板を材料とするワゴンではこのような固定方法を採ることができない。以上のとおり,乙18発明では,棚板側壁を二重構造にしたのは,棚板の補 で足りるのは,陳列台が一時的なものだからである。鋼板を材料とするワゴンではこのような固定方法を採ることができない。以上のとおり,乙18発明では,棚板側壁を二重構造にしたのは,棚板の補強ではなくて,支柱からのアームを二重構造の間へ受け入れたり,二重構造の支柱へのアームを作ったりするためであり,二重構造の側壁の切欠の構造は,アーム自体又はアームの差込口を設けるために過ぎない。したがって,乙18発明は参照する価値がなく,乙13発明に乙18発明を適用して本件発明に想到することについては,極めて重大な阻害要因が存在するといえる。 c また,上記イ(イ)のとおり,乙13発明は,棚の組み立て作業の簡略化と支柱と棚板との強固な連結という課題を既に解決しているから,乙13発明に,あえて乙18発明を適用し,側壁の端部を切欠して,支柱と棚板との接合部を弱めるようなことをする当業者はいない。よって,乙13発明に乙18発明を適用することについては,動機付けがなく,むしろ重大な阻害要因があるというべきである。ウ乙19発明の適用について(ア) 乙19発明の開示内容について乙19の実用新案公報には,被告らが主張する構成は全く開示されていない。同公報における考案の目的,課題,効果,実施例に関する説明及び図面のいずれにおいても,第1側片を支柱の幅だけ切り欠く一方で第2側片については延出させる旨の記載や示唆はなく,側片の一部を切り欠いて延出させようという技術思想すら見出すことはできない。 (イ) 乙13発明に乙19発明を適用することの困難性a 本件発明は,棚板の側壁そのものを切欠して,支柱を側壁の側面で挟みこみ支柱の傾きを防止する点で乙19発明と相違し,内接片の折り返しによ 乙13発明に乙19発明を適用することの困難性a 本件発明は,棚板の側壁そのものを切欠して,支柱を側壁の側面で挟みこみ支柱の傾きを防止する点で乙19発明と相違し,内接片の折り返しによって美観を向上させるという点でも乙19発明と相違する。また,支柱の傾き防止という課題を解決しようとする技術が多く存在する中で,乙13発明にあえて乙19発明を適用する積極的な動機付けはない。b 乙19発明は,棚板の四隅に「45°の角度で傾斜する斜面」を設け,これに対応して支柱も「45°の角度で傾斜する斜面」が必要とされ,さらに,上記各斜面をボルトで結合して棚板を支柱に接続することを必要としている。しかしながら,本件発明の棚板には,このような斜面を設けることはできないし,本件発明の支柱は,「山形鋼」であって,このような斜面を持たない。したがって,乙19発明は,本件発明,乙13発明とも全く関連性はなく,乙13発明に乙19発明を適用することは困難である。c また,上記イのとおり,乙13発明は,棚の組み立て作業の簡略化と支柱と棚板との強固な連結という課題を既に解決しているから,乙13発明にあえて乙19発明を適用し,側壁の端部を切欠して,支柱と棚板との接合部を弱めるようなことをする当業者はいない。よって,乙13発明に乙19発明を適用すべき動機付けはなく,むしろ,重大な阻害要因があるというべきである。エ顕著な作用効果について本件発明は,従来不可能だと考えられていた棚板四隅の側壁を切欠することにより,支柱の傾きを防止するとともに棚の外観の向上という顕著な作用効果の発生をもたらしているのであって,かかる効果は,上記各発明(乙13,7,18,19)からは到底予想されない顕著なもので ることにより,支柱の傾きを防止するとともに棚の外観の向上という顕著な作用効果の発生をもたらしているのであって,かかる効果は,上記各発明(乙13,7,18,19)からは到底予想されない顕著なものであることは明らかである。(2) 乙14に基づく主張についてア本件発明と乙14発明との相違点について(ア) 本件発明は,「内接片」及び「側壁」を備えるのに対し,乙14発明は,本件発明の重要な構成要素である「内接片」及び「側壁」を備えていない。したがって,これらの点も相違点として認定されるべきである。すなわち,「内接片」とは,棚板側壁の内側にあって,側壁の切欠部内に延出していて,単独でボルトの固定により棚板が支柱からズレ落ちることを防止する部分でなければならないところ,乙14発明の内側板(11)は,外側板(10)の切欠部内に延出していないし,また,単独でボルトの固定により棚板が支柱からズレ落ちることを防止する役目も果たしていない。よって,内側板(11)は「内接片」に相当するものでない。 (イ) また,本件発明と乙14発明は,加工の順番についても相違する。すなわち,本件発明は,「内接片を折り返して側壁に重ね合わせるとともに,内接片が箱の内側へくるように側壁を起立させて浅い箱状体としたもの」であるところ,乙14発明は,このような順序を明示していない。 被告らは,板金加工の手順として素材板の端から順に曲げ加工することは周知技術であると主張するが,そのような立証はない。 (ウ) さらに,乙14発明は,「その棚板の折曲側面にフィットするお互いに直角な一対の垂直板に開口されたボルト貫通孔の周辺に,ボルトとナットの締結時に押圧されて棚板の側面に喰付く爪を突設した」構成を必要不可欠な要素とし 発明は,「その棚板の折曲側面にフィットするお互いに直角な一対の垂直板に開口されたボルト貫通孔の周辺に,ボルトとナットの締結時に押圧されて棚板の側面に喰付く爪を突設した」構成を必要不可欠な要素としているのに対し,本件発明はこのような構成を全く必要としておらず,この点も相違点とされるべきである。 イ乙7発明,乙18発明,乙19発明の適用について乙7発明,乙18発明,乙19発明に,被告らが主張するような内容の開示がないことは,上記(1)のとおりである。 また,乙14発明に乙7発明,乙18発明,乙19発明をそれぞれ適用することの困難性についても,上記(1)のとおりである。さらに,乙14発明では,「その棚板の折曲側面にフィットするお互いに直角な一対の垂直板」や「開口されたボルト貫通孔の周辺に,ボルトとナットの締結時に押圧されて棚板の側面に喰付く爪」の存在が必要不可欠とされているが,このことは,乙7発明,乙18発明,乙19発明を適用することと,相容れないものである。(3) 乙17,乙7記載の従来技術に基づく主張について乙17発明,乙7従来技術に基づく主張についても,上記(1)(2)と同様である。 3 争点3(原告の損害)について【原告の主張】(1) 特許法102条1項による損害賠償請求被告トラスコ中山は,遅くとも平成23年1月から被告製品の販売を開始しており,被告コージ産業は,同時期から被告製品を製造し,被告トラスコ中山に納入している。被告らによる被告製品の販売数は,本件訴訟提起時である平成23年8月末日時点の8か月間の間で少なくとも2000個であると考えられる。 被告らによる侵害行為がなければ,原告が販売できた原告の製品の1個あたりの販売利益は,1万円である。 る平成23年8月末日時点の8か月間の間で少なくとも2000個であると考えられる。 被告らによる侵害行為がなければ,原告が販売できた原告の製品の1個あたりの販売利益は,1万円である。 したがって,原告の損害額は,特許法101条1項により2000万円と推定される。 (2) 弁護士費用原告は,弁護士費用相当額の損害を被っており,その損害額は,上記(1)の1割である200万円を下回るものではない。 (3) 小括以上より,被告の本件特許権侵害行為により生じた損害の総額は,金2200万円である。 【被告らの主張】原告の主張は,否認ないし争う。 なお,原告は本件特許権を株式会社アサヒから平成23年4月21日に譲り受けた旨主張しており,同日以前については,当然に損害賠償を請求できるものではない。また,被告らへの請求が連帯となる根拠も不明である。第4 当裁判所の判断 1 争点1(被告製品は本件発明の技術的範囲に属するか)について(1) 構成要件Aの「山形鋼」についてア被告製品の構成被告製品の支柱は,鋼板を打ち抜いた上で曲げ加工をすることによって製造されており,その断面の基本的な形状はL字型で,その先端2箇所が内向きに鉤型となっており,支柱に厚みを持たせた構造になっていることが認められる(別紙被告製品図面図4参照)。 イ 「山形鋼」の充足性被告らは,構成要件Aの「山形鋼」について,形鋼の一つである圧延鋼材であり,中実の鋼材であって中空の構造を含まない旨主張する。 しかしながら,「山形鋼」は,本件発明において「山形鋼で作られた4本の支柱」とされるにとどまり,本件明細書の記載を総合しても,「山形鋼」の意義について,日本工業規格が の構造を含まない旨主張する。 しかしながら,「山形鋼」は,本件発明において「山形鋼で作られた4本の支柱」とされるにとどまり,本件明細書の記載を総合しても,「山形鋼」の意義について,日本工業規格が定める山形鋼(乙9。Lの字に似た断面形状に圧延した鋼材)といった特別の限定が加えられていると解することはできず,単に山形(L字型又は三角形の二辺)の鋼板を意味すると解するのが相当である。 被告製品の支柱は,1枚の帯状の鋼板を中心付近で折り曲げ,先端2箇所を内向きに鉤型にして厚みをもたせたものであって,上記のとおり,その断面の基本的な形状は山形であるから,「山形鋼」に当たる。被告らの主張には理由がない。 (2) 構成要件A「直角四辺形」,構成要件B「直角四辺形の箱底」,「連設」,構成要件D「重ね合わせる」についてア被告製品の構成(ア) 棚板の底板(展開図)の構成被告製品の棚板1の底板3は,間口が600mm,奥行きが400mmの直角四辺形について,その四隅付近が,各頂点Zから頂点を挟む二辺に沿って,長さ約49mm,幅約10mmで切り欠きされていると認 められる(甲9,別紙被告製品図面図9参照)。 また,上記底板3の四辺(切り欠きを除いた部分)には,外側板5,上面板6,内側板7,下板8がこの順でつながっていることが認められる(別紙被告製品図面図2,11参照)。 (イ) 棚板の壁部の構成被告製品の棚板1の各壁部4は,外側板5が底板3の縁から直角に立ち上がり,その上端に連続して断面が上向きの半円状である上面板6,これに連続して外側板5と約10mmの間隔をあけて対向する位置にある内側板7,その下端から折れ曲がり,外側板5の方向に斜め下向きに延びる下板8を有しており 続して断面が上向きの半円状である上面板6,これに連続して外側板5と約10mmの間隔をあけて対向する位置にある内側板7,その下端から折れ曲がり,外側板5の方向に斜め下向きに延びる下板8を有しており,その両端が開口する中空構造になっていることが認められる(甲9,別紙被告製品図面図2参照)。 イ 「連設」の充足性について構成要件Bは,「上記棚板は直角四辺形の箱底の四辺に側壁と内接片とがこの順序に連設されていて,」であり,被告製品の底板1は,「箱底」に,外側板5は「側壁」に,内側板7は「内接片」にそれぞれ該当するところ,被告らは,被告製品の外側板5と内側板7は,その間に上面板6が存在するため「連設」していないと主張する。この点,「連設」とは,連なった状態に設けることであり(乙11),構成要件Bの「上記棚板は直角四辺形の箱底の四辺に側壁と内接片とがこの順序に連設されていて,」とは,箱底,側壁,内接片がこの順序で連なって設けられていることを意味するところ,ここでいう連なるとは,棚板の展開図上で連続した平面にあることを意味し,「この順序に連設されていて」とは,箱底と側壁との間に内接片がくる構成を排除して,箱底と内接片との間に側壁がくる構成に限定する趣旨と解するのが相当である。このような順番を備えている以上「連設」に当たるというべきであって,被告製品のように外側板5と内側板7の間にそれをつなぐ幅10mm程度の上面板6が存在したとしても,底板1,外側板5,内側板7がこの順番で設けられている以上,「この順序に連設されてい」るといえる。ウ 「重ね合わせる」の充足性について(ア) 構成要件Dには,「内接片を折り返して側壁に重ね合わせるとともに,」とあることについて,被告製品の内側 序に連設されてい」るといえる。ウ 「重ね合わせる」の充足性について(ア) 構成要件Dには,「内接片を折り返して側壁に重ね合わせるとともに,」とあることについて,被告製品の内側板7は「内接片」に,外側板5は「側壁」にそれぞれ該当するところ,被告らは,被告製品の外側板5と内側板7との間には上面板6があり,外側板5と内側板7の間には約10mmの隙間があることから,「重ね合わせる」に該当しない旨主張する。この点,「重ねる」とは,物の上に更に物をのせる(乙10の2,12の1,乙35),「合わせる」とは,①二つ以上のものを一つにする,②二つのものの間をしっくりさせる,また,そのものをあるものにあてはめる,③直接向き合うようにさせるなどの意味で用いられるところ(甲12,乙12の2,乙35),「重ね合わせる」といった場合に,隙間なく密着させた状態のみを指すと解することはできず,本件明細書の記載を総合しても,「重ね合わせる」がそのような意味で用いられるとも認められない。 そうすると,被告製品においては,内側板7と外側板5が,約10mm程度の隙間で向かい合っている状態は,内側板7を折り返して外側板5に「重ね合わせた」状態に該当するということができる。 (イ) なお,本件特許の出願人は,出願経過での拒絶理由通知(乙2)において,本件発明は,特許第3437988号公報(乙5。引用文献1)に実願平1-1093号(実開平2-92109号)のマイクロフィルム(乙6。引用文献2)記載の技術を適用するに当たって,「棚板の側壁に支柱との係合部となる切り欠きを設け,該切り欠きにのぞんで支柱との接続用の内接片を設けることは当業者が容易になし得ることであ る」と通知された。これに対し,出願人は, 棚板の側壁に支柱との係合部となる切り欠きを設け,該切り欠きにのぞんで支柱との接続用の内接片を設けることは当業者が容易になし得ることであ る」と通知された。これに対し,出願人は,平成21年10月30日受付の意見書(乙3)を提出し,その中で,「かりに文献2を文献1に結びつけると,文献2は棚板の側壁に段差をつけることを教えている。そこで,側壁に段差をつけると,側壁は中央部で内接片から離れて間に隙間を生じて,本願のようなものにならない。」と述べている。また,出願人は,同日受付の手続補正書(乙4)を提出し,本件発明について,「側壁の内側には側壁と平行に延びる内接片が固定されて」との記載を削除して,「内接片を折り返して側壁に重ね合わせる」との記載を付加している(乙1,4)。被告らは,上記補正により,本件発明は,側壁と内接片との間に隙間を有しない構成に限定されたと主張する。しかしながら,本件発明は,「側壁が面一となっているために,棚の取り扱いが容易であり,さらに棚の見栄えが良好とな」ることも発明の効果としているが(段落【0013】),側壁に段差を付けた場合には,本件発明のようなものにならないことは明らかである。上記意見書の記載は,このことについて,「側壁は中央部で内接片から離れて間に隙間を生じて,本願のようなものにならない」と述べているものと解される。 したがって,上記意見書の記載は,側壁と内接片との間に何らかの隙間が生じている構成がすべて本件発明に含まれない旨を述べたとは解されず,また,上記手続補正書の記載についても,元の請求項2に元の請求項3を結合させて新たな請求項2としたものにすぎず(乙1,3),側壁と内接片との間に隙間を有しない構成に限定した趣旨を読み取ることはできない。 記載についても,元の請求項2に元の請求項3を結合させて新たな請求項2としたものにすぎず(乙1,3),側壁と内接片との間に隙間を有しない構成に限定した趣旨を読み取ることはできない。したがって,本件特許の出願経過をもって,「重ね合わせる」が,側壁と内接片との間に隙間を有しない構成に限定されると解釈することはできない。 エ 「直角四辺形」,「直角四辺形の箱底」の充足性について構成要件Bは,「上記棚板は直角四辺形の箱底の四辺に側壁と内接片とがこの順序に連設されていて,」であり,被告製品の底板3は「箱底」に該当するところ,底板3は,間口が600mm,奥行きが400mmの直角四辺形の四隅付近が,各頂点Zから頂点を挟む二辺に沿って,長さ約49mm,幅約10mmで切り欠きされているため(甲9),直角四辺形そのものではない。 しかしながら,底板3は,直角四辺形を前提として支柱に厚みを持たせたことに対応して四隅の一部が切り欠かれているに過ぎず,当該切り欠かれた部分も棚板と支柱と接続した場合には支柱で埋められ,全体として直角四辺形となることが予定されている部分である。 そうすると,被告製品の底板3は,支柱と接続されることによって,実質的に「直角四辺形の箱底」に該当するということができ,同文言を充足するというべきである(構成要件Aの「直角四辺形」についても,同様に充足する。)。 (3) 構成要件C「各側壁が箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜き」についてア被告製品の構成被告製品の棚板は,材料である鋼板の打ち抜きによって作られるところ,この鋼板を打ち抜く形状については,外側板5と上面板6と下板8については,底板3の四隅を切り欠く前の直角四辺形の頂 構成被告製品の棚板は,材料である鋼板の打ち抜きによって作られるところ,この鋼板を打ち抜く形状については,外側板5と上面板6と下板8については,底板3の四隅を切り欠く前の直角四辺形の頂点Zを基準として,頂点を挟む二辺に沿って約49mmの長さ切り欠かれている。なお,支柱13の外側面14の幅は約50mmであることが認められる(甲9)。イ 「各側壁が箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜き」の充足性被告製品の外側板5は「側壁」,鋼板は「金属板」に該当し,また,被告製品においては,上記のとおり,底板3の四隅の切り欠き部が支柱で埋められた状態をもって「直角四辺形」に該当することから,その頂点Zが「箱底のかど」に該当する。そして,支柱の外側面の幅は約50mmであるところ,被告製品の外側板5は,頂点Zを基準として頂点を挟む二辺に沿って約49mmの長さ切り欠かれていることから,支柱13の外側面14の幅の長さ分だけ切り欠かれたといえる。 したがって,被告製品は,「各側壁が箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜き」を充足する。 なお,被告らは,被告製品の外側板5の切り欠きの長さは,支柱の内側面の幅よりも長いため,「各側壁が箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜き」とはいえない旨主張するが,「支柱の幅」は,支柱13の外側面14の幅と解すべきであって,被告らの主張は採用できない。 (4) 構成要件E「切欠によって作られた側壁の側面で支柱の両側面を挟み」についてア被告製品の構成被告製品において,各壁部4のうち外側板5,上面板6及び下板8の各端部(以下「側壁端部」という。)は,支柱13の両側面に設けられた端 両側面を挟み」についてア被告製品の構成被告製品において,各壁部4のうち外側板5,上面板6及び下板8の各端部(以下「側壁端部」という。)は,支柱13の両側面に設けられた端面15に対向していることが認められる(別紙被告製品図面図1,7,8参照)。そして,側壁端部と支柱13の端面15との間には,加工や組立ての状況等により製品毎に差はあるものの,0.03mmないし0.36mm程度の隙間があると認められる(乙27)。イ 「切欠によって作られた側壁の側面で支柱の両側面を挟み」の充足性被告製品の外側板5の端部は,「切欠によって作られた側壁の側面」に該当するところ,被告らは,被告製品では,外側板5の端部と支柱13の端板15との間には隙間を生じ当接していないことから,「支柱の両側面を挟み」に該当しない旨主張する。この点,本件明細書には,「…また,支柱の側面に側壁の切欠によって作られた側壁の側面を当接して支柱を側壁の側面で挟むこととしたから,側壁の高さ全体に延びる長い側面で支柱を挟むことになり,従って棚板に対する支柱の傾きを確実に防止することができる。」(段落【0013】),「支柱Bが棚板Aの側面321と331とに挟まれて固定されると,側面321と331とは棚板Aの側壁の高さ全体に延びているため,支柱Bは棚板Aから棚板Aの厚みの全長にわたって傾斜を防ぐ力を受けるから,棚板Aに対して傾くことが確実に防がれる。」(段落【0022】)と記載されており,これらの記載等から「側壁の側面で支柱の両側面を挟」むとは,これによって棚板に対する支柱の傾きを防止しようとするものであることが認められる。 被告製品の棚板は間口×奥行きが,600mm×400mm又は750mm×500mmもの 支柱の両側面を挟」むとは,これによって棚板に対する支柱の傾きを防止しようとするものであることが認められる。 被告製品の棚板は間口×奥行きが,600mm×400mm又は750mm×500mmもの大きさであり,被告製品1台(棚板は2,3段)当たりの最大積載量は200kg~300kgあることからすれば,外側板5の端部と支柱13の端板15との間に0.03mmないし0.36mm程度の隙間があったとしても,水平方向に荷重が加わり,棚板に対し,支柱が傾いた際には,外側板5の端部がそれ以上の傾きを防止しようとすることは明らかである(甲10,乙28参照)。したがって,被告製品は,「切欠によって作られた側壁の側面で支柱の両側面を挟み」を充足する。 (5) 構成要件F「内接片を支柱にボルトにより固定し」についてア被告製品の構成被告製品において,底板3のコーナーを挟んで隣り合った2枚の内側板7の突出端部(7a)は,その内側において,断面がL字型の固定部材9と溶接によって一体化されており,その外側において,ボルトによって支柱に固定されていると認められる(別紙被告製品図面図7参照)。イ 「内接片を支柱にボルトにより固定し」の充足性被告製品の内側板7は「内接片」に該当するところ,被告製品においては,内側板7と支柱13とをボルトで固定していることから,「内接片を支柱にボルトにより固定し」を充足することは明らかである。 (6) 構成要件G「各支柱の下方にキャスターを付設して」についてア被告製品の構成被告製品においては,最下段の棚板1の下面の4つのコーナー付近にキャスター22を付設されている(別紙被告製品図面図10参照)。なお,各支柱の下端は,最下段の棚板の底面と同じ 被告製品においては,最下段の棚板1の下面の4つのコーナー付近にキャスター22を付設されている(別紙被告製品図面図10参照)。なお,各支柱の下端は,最下段の棚板の底面と同じ高さである。イ 「各支柱の下方にキャスターを付設して」の充足性被告製品におけるキャスターの付設箇所は,各支柱の下方であることから,各支柱の下方にキャスターを付設して」を充足することは明らかである。 (7) 小括以上のとおりであって,被告製品は,本件発明の構成要件A~Hをすべて充足すると認められることから,本件発明の技術的範囲に属する。 なお,被告らは,販売しているのは被告製品である金属製ワゴンを組み立てる前の部品であり,組み立てた状態の金属製ワゴンは販売していないと主張するが,被告製品の販売態様を踏まえると,組み立てた状態の被告製品を販売していると認めるのが相当である。 2 争点2(本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものであるか)について当裁判所は,本件発明は,乙13発明に乙7発明等を適用することによって容易想到と認められることから,本件特許は,特許無効審判による無効にされるべきと判断する。 (1) 本件発明の内容本件発明は,特許請求の範囲記載のとおり,以下のとおりと認められる。 A 複数枚の直角四辺形の金属製棚板と,山形鋼で作られた4本の支柱とからなり,各棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し,ボルトにより固定して組み立てることとした金属製棚において,B 上記棚板は直角四辺形の箱底の四辺に側壁と内接片とがこの順序に連設されていて,C 各側壁が箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜き,D 内接片を折り返して側壁に重ね合わ 棚板は直角四辺形の箱底の四辺に側壁と内接片とがこの順序に連設されていて,C 各側壁が箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜き,D 内接片を折り返して側壁に重ね合わせるとともに,内接片が箱の内側へくるように側壁を起立させて浅い箱状体としたものであって,E 側壁の切欠部内に延出している内接片を支柱の内側に当接し,切欠によって作られた側壁の側面で支柱の両側面を挟み,F 内接片を支柱にボルトにより固定し,G 各支柱の下方にキャスターを付設して金属製棚を移動可能としたH ことを特徴とする,金属製ワゴン(2) 乙13に記載された発明についてア本件特許出願前に頒布された刊行物である実開昭62-85140のマイクロフィルム(乙13。以下「乙13文献」という。)には,支柱に棚板が着脱自在に取付けられる組立式棚の改良に関し,次の事項が記載されている。 (ア) (従来技術)「従来,山形鋼等からなる支柱に薄板鋼板材等からなる棚板を容易に取付け得るようにするため,上記支柱に設けた係合ピンの先端部を棚板の側板に形成された係合孔内に嵌入することによって支柱と棚板とを連結することが行なわれている。この係合ピンを用いたものでは,ボルトによって棚板を支柱に固定する場合に比べて棚板の取付作業を簡略化できるという利点を有する反面,係合力が不足して棚板と支柱との間に隙間が形成され,がたつきを生じ易という欠点があった。」(イ) (考案の目的)「本考案は,上記欠点を解消するためになされたものであり,簡単な取付作業で棚板と支柱とを強固に連結することができる組立式棚を提供するものである。」(ウ) (考案の構成)「本考案に係る組立式棚は,山形鋼等から なされたものであり,簡単な取付作業で棚板と支柱とを強固に連結することができる組立式棚を提供するものである。」(ウ) (考案の構成)「本考案に係る組立式棚は,山形鋼等からなる一対の壁面を備えた支柱と,鋼板材等からなる天板およびその周縁部に連成された側板を備えた棚板と,この棚板の側板を支柱に係止する係止部材とを有し,上記側板の側端部には係止部材の先端部が嵌入される係合孔が形成され,この係合孔の上辺部には側板の内方に傾斜して伸びる係止部材案内用の傾斜面を備えたテーパ溝部が形成されたものである。」(エ) (実施例)「第1図において,1は山形鋼からなる支柱,2は薄板鋼板からなる棚板,3は棚板2を支柱1に取付けるための係止部材である。上記支柱1は互いに直交する一対の壁面4,4を有し(後略)」(3頁4行~8行)「また,上記棚板2は,天板6とその周縁部に連成されて下向きに突出する四周の側板7からなり,各側板7の側端部には係止部材3を介して上記支柱1に係止するための係合孔8が形成されている。この係合孔8は上記係止部材3の先端部が嵌入される大径孔部9と,この大径孔部9の上辺部に連成され,側板7の内方(側板7の中央部方向)に傾斜して伸びる係止部材案内用の傾斜面10を備えたテーパ溝部11と,このテーパ溝部11の上辺部に連成された小径孔部12とからなっている。」「上記係止部材3は頭部13と軸部14とその先端部に形成された顎状の膨出部15とからなり,この膨出部15の径が上記大径孔部9および長孔5の孔径よりも僅かに小さく形成され,軸部14の径が上記小径孔部12と同一もしくはこれよりも僅かに大きく形成されている。また,上記係合部8は,…側板7の外面と支柱1の壁面4,4の内面とを近接させた状態で 径よりも僅かに小さく形成され,軸部14の径が上記小径孔部12と同一もしくはこれよりも僅かに大きく形成されている。また,上記係合部8は,…側板7の外面と支柱1の壁面4,4の内面とを近接させた状態で,大径孔部9が支柱1の長孔5と対向するように設定されている。」「上記各部材を用いて棚を組立てるには,支柱1の中間部に位置する長孔5を貫通した係止部材3の先端部を側板7の係合孔8内に嵌入することにより,棚板2を支柱1に仮止めする。次いで,棚板2を押下げることにより,棚板2を支柱1に固定する。」「上記棚板2の取付構造は,支柱1の中間部に位置する中間棚板の限られず,支柱1の上下両端部についても適用可能である。なお,棚の組立強度をより向上させるためには上下両端部に位置する棚板を支柱1にボルト止めした構成としてもよい。」(オ) (考案の効果)「以上説明したように本考案は,棚板の側板に形成された係合孔内に係止部材の先端部を嵌入して棚板を支柱に仮止めした後,棚板を下方に移動させるという簡単な操作で,上記係合孔の傾斜溝部に沿って案内される係止部材の反作用により,棚板の側板が支柱の側面に圧接された係合状態となるように構成されているため,棚の組立作業を簡略化できるとともに強固な組立状態を得ることができるという効果がある。」(カ) 第1図(別紙乙13文献第1図参照)第1図(「本考案に係る組立式棚の腰部の実施例を示す分解斜視図」)には,棚板2の(四隅のうちの)1つのかど部と支柱1が図示されており,棚板2の直角四辺形の天板6の各辺に側板7の外側部分と内側部分 がこの順序に連設されており,側板7の内側部分を折り返して外側部分に重ね合わせて,側板7の内側部分が箱の内側へくるように側板7の外側部分を起立させて浅い箱 7の外側部分と内側部分 がこの順序に連設されており,側板7の内側部分を折り返して外側部分に重ね合わせて,側板7の内側部分が箱の内側へくるように側板7の外側部分を起立させて浅い箱状体とした構造が図示されている。 イ乙13文献に記載された発明上記記載事項及び図面の記載から,乙13文献には,次の発明が記載されていたと認められる(「乙13発明」)。A′ 複数枚の直角四辺形の薄板鋼板からなる棚板2と,山形鋼からなる4本の支柱1とからなり,各棚板の四隅のかど部を支柱1の内側面に当接し,支柱1の上下両端部に位置する棚板については,ボルトによって支柱に固定され,それ以外の棚板については,頭部13と軸部14とその先端部に形成された顎状の膨出部15とからなる係止部材3によって支柱に固定され,組み立てることとした組立式棚において,B′ 上記棚板2は直角四辺形の天板6とその周縁部に連成されて下向きに突出する四周の側板7からなり,側板7はその外側部分と内側部分とからなっていて,天板の四周に側壁7の外側部分,内側部分とがこの順に連なっており,D′ 側板7の内側部分は,外側部分と重なり合うとともに,側板7の内側部分が箱の内側へくるように側板7の外側部分を起立させて浅い箱状体としたものであって,E′ 側板7の外側部分が,支柱1の内側に当接し,F′ 側板7の外側部分及び内側部分を支柱にボルト又は係止部材により固定したG′ 組立式棚(3) 本件発明と乙13発明との対比ア一致点本件発明と乙13発明は,以下の点において一致する。 なお,乙13発明は棚板について,天板6を上にしてこぼれ止めのない平坦な板として使用することが想定されているが,これを上下逆にしてこぼれ止めのある皿状で使用 13発明は,以下の点において一致する。 なお,乙13発明は棚板について,天板6を上にしてこぼれ止めのない平坦な板として使用することが想定されているが,これを上下逆にしてこぼれ止めのある皿状で使用することも可能であることから,「天板6」は箱底ということができる。 A(A′) 複数枚の直角四辺形の金属製棚板と,山形鋼で作られた4本の支柱とからなり,各棚板の四隅のかど部を支柱1の内側面に当接し,固定して組み立てることとした金属製棚において,B(B′) 上記棚板は直角四辺形の箱底(本件発明の「箱板」,乙13発明の「天板」に相当。)の四辺に側壁の外側を構成する部分(本件発明の「側壁」,乙13発明の「側板7の外側部分」に相当。 以下「外側側壁」という。)と側壁の内側を構成する部分(本件発明の「内接片」,乙13発明の「側板7の内側部分」に相当。 以下「内側側壁」という。)とがこの順序に連設されていて,D(D′) 内側側壁を折り返して外側側壁に重ね合わせるとともに,内側側壁が箱の内側へくるように外側側壁を起立させて浅い箱状体としたH(H′) 金属製棚イ相違点(ア) 本件発明と乙13発明は,以下の点において相違する。 B(B′) 内側側壁について,本件発明では,「内接片」であるのに対し,乙13発明では,そうではない点C(C′) 外側側壁について,本件発明(「側壁」)では,「箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜」いたものであるのに対し,乙13発明(側板7の外側部分)では,そうではない点 E(E′) 棚板と支柱との接続関係について,本件発明では,「側壁の切欠部内に延出している内接片を支柱の内側に当接し,切欠によって作られた側壁の側面で では,そうではない点 E(E′) 棚板と支柱との接続関係について,本件発明では,「側壁の切欠部内に延出している内接片を支柱の内側に当接し,切欠によって作られた側壁の側面で支柱の両側面を挟」むのに対し,乙13発明では,側板7の外側部分が,支柱1の内側に当接し,側板7の外側部分に切欠部が存しないため,側板7の内側部分は支柱の内側に当接せず,切欠によって作られた側板7の外側部分の側面で支柱1の両側面を挟むことにはならない点F(F′) 側壁と支柱との固定方法について,本件発明では,「ボルト」を用いるのに対し,乙13発明では,ボルト又は係止部材を用いる点G・H(G′・H′) 本件発明は,「各支柱の下方にキャスターを付設して金属製棚と移動可能とした…金属製ワゴン」であるのに対し,乙13発明は,キャスターを付設しない金属製棚である点。 (イ) ところで,上記B(B′)に係る相違点の「内接片」は,内側側壁について,これが支柱の内側に当接する機能を有することを意味するにすぎないことから,当該相違点は,上記E(E′)に係る相違点と同内容である。また,上記C(C′)に係る相違点は,外側側壁の切欠きに関するもので,棚板と支柱の接続方法に関するものであることから,上記E(E′)に係る相違点と密接に関連する。 以上を踏まえると,本件発明と乙13発明の相違点は,以下のとおりに整理することができる。 ① 本件発明は,外側側壁(「側壁」)について,「箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜」いた上で,「当該切欠部内に延出している内接片(注:内側側壁)を,支柱の内側に当接 し,切欠によって作られた側壁(注:外側側壁)の側面で支柱の両側面を挟」むことによって,棚板と 」いた上で,「当該切欠部内に延出している内接片(注:内側側壁)を,支柱の内側に当接 し,切欠によって作られた側壁(注:外側側壁)の側面で支柱の両側面を挟」むことによって,棚板と支柱を接続するのに対し,乙13発明は,外側側壁について,切欠された形状に打ち抜かれた部分を有さず,単に,外側側壁を支柱の内側に当接することによって,棚板と支柱を接続する点(以下「相違点①」という。)。 ② 側板と支柱との固定方法について,本件発明では,「ボルト」を用いるのに対し,乙13発明では,ボルト又は係止部材を用いる点(以下「相違点②」という。)③ 本件発明は,「各支柱の下方にキャスターを付設して金属製棚を移動可能とした…金属製ワゴン」であるのに対し,乙13発明は,キャスターを付設しない金属製棚である点(以下「相違点③」という。)(ウ) 原告の主張について原告は,棚板の加工の順番について,本件発明は,内側側壁を折り返して外側側壁に重ね合わせた上で,外側側壁を起立させる旨明らかにされているのに対し(構成D),乙13発明は明らかでないことから,相違点とすべきである旨主張する。 しかしながら,本件発明は,組み立てた棚板の構造を特定したものであって,加工の順番を限定する趣旨とは解されないことから,原告の主張は採用できない。 (4) 相違点①についての検討ア乙7に記載された発明について(ア) 本件特許出願前に頒布された刊行物である特開2000-60656号公報(乙7。以下「乙7文献」という。)には,「金属製棚及び金属板製ワゴン」に関し,次の事項が開示されている。a 【請求項1】「金属板を折曲して直角四辺形の浅い箱状に成形した複数枚の棚板 いう。)には,「金属製棚及び金属板製ワゴン」に関し,次の事項が開示されている。a 【請求項1】「金属板を折曲して直角四辺形の浅い箱状に成形した複数枚の棚板と,金属板をアングル状に折曲して作られた4本の支柱とからなり,各棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し,ボルトにより固定して組み立てた金属板製棚において,各棚板の厚み方向に延びる各縁片の外側に金属板の小片を付設し,支柱の側面を金属板小片の厚み方向の側面に密接させ,支柱の両側面を金属板小片の上記側面により挟むようにしたことを特徴とする,金属板製棚。」b 【請求項3】 「金属板小片が棚板の厚み方向に延びる各縁片の先端部分を外側へ折り返して付設され,棚板の四隅に位置する折り返し片の端を支柱の幅に等しい矩形部分を切り取ることによって,支柱の側面に密接する金属板小片の厚み方向の側面が形成されていることを特徴とする,請求項1又は2に記載の金属板製棚又は金属板製ワゴン」c 【発明が解決しようとする課題】「この発明は,組み立て作業を従来通りの簡単なものにしたまま,金属板製棚又は金属板製ワゴンに横方向から力を加えても,支柱が傾かないようにすることを目的とするものである。」(【0010】)d 【発明の実施の形態】「この発明において用いられる棚板1は,これを展開すると,図3に示すように,直角四辺形の板PQRSから成る平板11の四辺に幅xの縁片12,13,14,15を付設し,さらにそれぞれの縁片に幅yの折り返し片16,17,18,19を付設した構造のものである。各折り返し片16,17,18,19は,何れも両端が長さzの矩形部分20だけ切欠されている。ここで,幅yは幅xよりも僅かに小さくされる。また 返し片16,17,18,19を付設した構造のものである。各折り返し片16,17,18,19は,何れも両端が長さzの矩形部分20だけ切欠されている。ここで,幅yは幅xよりも僅かに小さくされる。また,長さzは,のちに説明するように,支柱の幅に等しくされる。」(【0015】)「この発明において用いられる棚板1は,図3に示した金属板を図4に示したように折曲して作られる。図4において,折り返し片16,17,18,19は平板11に対して同じ方向へ,それぞれ縁片12,13,14,15と重なるように,まず折り返される。次いで,縁片12,13,14,15は,縁片12で示されているように,それぞれ折り返し片を伴ったまま平板11に対して,起立するように折曲され,全体が浅い箱状体となる。このとき,各折り返し片16,17,18,19が何れも箱状体の外側に来るように,各縁片を折曲する。」(【0016】)「こうして作られた浅い箱状体は,その後四隅のかど部の側壁にあたる部分に,支柱との結合用ボルト孔があけられて,この発明で用いることのできる棚板1となる。この棚板1は,四隅のかど部の構造に特徴を持つので,そのかど部を拡大して示すと図5に示したようになる。」(【0017】)「図5に示された棚板1は平板11を底とし,縁片12,13を側壁とする浅い箱状を呈している。折り返し片16,17の幅yは縁片12,13の幅xよりも僅かに小さくされているから,縁片12,13に沿って外側へ折り返された折り返し片16,17は,縁片12,13の少なくとも上半分を覆っており,折り返し片16,17の下端は縁片12,13の下端より僅か上方に位置している。折り返し片16,17は,棚の隅のところで長さzの矩形部分だけ切欠されているから,一 13の少なくとも上半分を覆っており,折り返し片16,17の下端は縁片12,13の下端より僅か上方に位置している。折り返し片16,17は,棚の隅のところで長さzの矩形部分だけ切欠されているから,一辺がzの矩形部分だけ縁片12,13が露出している。各露出部分の中央に,前述のボルト孔41,42が設けられている。」(【0018】)「他方,支柱6は,アングル状を呈し,直交する2片61,62からなり,各片61,62は等しい幅を持っている。この幅は長さzとされているから,支柱6を棚板1のかど部に当接すると,図6に示したように支柱6の側面63,64は,折り返し片16,17の切断によって生じた側面161,171にそれぞれ密接することとなる。こうして,支柱6はその両側面63と64とにおいて折り返し片16,17の間に挟まれることになる。この状態でボルト孔を合わせ,そこにボルトを通しナットを嵌めて,支柱6と棚板1とを接続する。」(【0019】)「こうして棚板1と支柱6とをボルトで固定すると,図6に示したように,支柱6は折り返し片16,17の間に密接して挟まれることとなる。このとき,折り返し片16,17の幅が縁片12と13の幅の半分以上を覆うようにすれば,支柱6の両側面63,64は相当の長さにわたって折り返し片16,17の側面161,171に密接することとなり,従って支柱6は棚板1に対して傾く余地が全くなくなる。」(【0020】)「図3ないし図6では,折り返し片16,17,18,19がそれぞれ縁片12,13,14,15と一体に付設されていて,折り返しによって支柱6に密接すべき側面161,171等が形成される例を示した。」(【0021】)「なお,棚板1は,平板11を下にして箱状体として支柱6に固定すると,周 れていて,折り返しによって支柱6に密接すべき側面161,171等が形成される例を示した。」(【0021】)「なお,棚板1は,平板11を下にして箱状体として支柱6に固定すると,周囲にこぼれ止めのある皿状のものとして使用することができる。また,上に述べた箱状体を逆にして,平板11を上にして棚板1を支柱6に固定すると,こぼれ止めのない平坦な板として使用することができる。」(【0023】) e 【発明の効果】「棚板を従来通りの浅い箱状にし,各棚板の厚み方向に延びる面の外側に金属板の小片を付設し,棚板の厚み方向に延びる金属板小片の側面が支柱の側面に密接するように棚板が作られているので,従来通り棚板と支柱との間をボルトで固定するだけで,支柱の両側面を金属板小片の側面間に挟んで,支柱を棚板に対して傾かないようにすることができる。従って,棚板の改善だけであとは従来通りの組み立て操作により,容易に傾かない金属板製棚及び金属板製ワゴンを得ることができる。」(【0025】)f 【図5】(別紙乙7文献図面参照)図5(棚板と支柱との一部切欠拡大斜視図)には,上記【0015】~【0018】に記載された棚板の四隅のかど部が図示されている。 g 【図6】(別紙乙7文献図面参照)図6(金属板製棚の一部切欠斜視図)には,上記【0019】,【0020】に記載された棚板と支柱との接続が図示されている。 (イ) 上記記載事項及び図面の記載から,乙7文献には,直角四辺形の箱底(乙7文献の実施例の「平板」)の四辺に内側側壁(乙7文献の実施例の「縁片」)と外側側壁(乙7文献の実施例の「折り返し片」)とがこの順序に連設されており,外側側壁を折り返して内側側壁に重ね合わせ 底(乙7文献の実施例の「平板」)の四辺に内側側壁(乙7文献の実施例の「縁片」)と外側側壁(乙7文献の実施例の「折り返し片」)とがこの順序に連設されており,外側側壁を折り返して内側側壁に重ね合わせるとともに,外側側壁が箱の外側へくるように起立させて浅い箱状体とした棚板において,各外側側壁の両端を支柱の幅の長さだけ切り欠き,切欠部内の内側側壁の露出部分を支柱の内側に当接し,切欠によって作られた外側側壁の側面で支柱の両側面を挟む構成が開示されている(「乙7発明」)。 イ乙7発明の適用について(ア) 上記(3)によれば,本件発明と乙13発明は,箱底の四辺の外側を折り返して形成される外側側壁と内側側壁が存する点では一致するものの,本件発明では外側側壁である「側壁」に切欠が存することから,支柱は,内側側壁である「内接片」に当接すると共に切欠によってできた「側壁」の側面に当接するのに対し,乙13発明では外側側壁に切欠が存しないため,支柱は外側側壁である側板の外側部分にのみ当接するという違いがある。この違いは,外側側壁における切欠の有無によるものであるところ,乙7発明には,外側側壁である折り返し片に切欠を設ける構成が開示されている。 (イ) そこで,乙13発明に乙7発明を適用することが容易といえるかについて検討する。 a 乙13発明は,上記のとおり,簡単な取付作業で棚板と支柱とを強固に連結することができる組立式棚を提供するものであるところ,乙7発明は,金属板製棚又は金属板製ワゴンに横方向から力を加えても,支柱が傾かないようにすることを目的とするものであって,いずれも棚板と支柱との接続を強固にするための解決方法を提示するものであり,課題に共通性が認められる(なお,このような課題を解決するための発明は多 が傾かないようにすることを目的とするものであって,いずれも棚板と支柱との接続を強固にするための解決方法を提示するものであり,課題に共通性が認められる(なお,このような課題を解決するための発明は多数存在しており,周知の課題であるともいえる。乙14~16,19,30)。b また,乙13発明の棚板は,棚板の展開図において,箱底の中心から外側に向けて(以下,これを単に「外側に向けて」という。),外側側壁と内側側壁が順に連設され,内側側壁を折り返して外側側壁に重ね合わせるとともに,外側側壁が箱の外側へくるように起立させて浅い箱状体としたものであるところ,乙7発明の棚板は,外側に向けて内側側壁と外側側壁の順に連設され,両者は,側壁を内曲げにするか外曲げにするかが異なるものの,箱底と外側側壁,内側側壁からなる棚板である点では共通している。そして,本件発明の上記相違点①に係る構成(外側側壁の切欠部)を設けるに当たっては,連設順序は重要ではなく,側壁が二重(外側側壁及び内側側壁)であることが重要であるといえることから,乙13発明には,上記課題の解決手段として乙7発明を適用することについての示唆があるということができる。 なお,乙13発明の外側側壁に切欠を設ける場合,上記のとおり連設順序が相違することに伴い,乙7発明とは,棚板の展開図において,切欠部を設ける場所が異なることになる。しかしながら,切欠部を設ける場所が異なることによって技術的な困難性に違いが生じるとはいえないから,このことは,乙13発明に乙7発明を適用することに影響を与える事情とは認められない。 c したがって,乙13発明に乙7発明を適用することは容易であったと認められる。 ウ原告の主張についての検討(ア) 原告は,乙7発明は,外側に向けて内側 える事情とは認められない。 c したがって,乙13発明に乙7発明を適用することは容易であったと認められる。 ウ原告の主張についての検討(ア) 原告は,乙7発明は,外側に向けて内側側壁,外側側壁の順に連設されている場合に外側側壁の一部を切り欠いた構成であって,乙7発明には,本件発明と乙13発明との相違点に係る構成(外側に向けて外側側壁,内側側壁の順に連設されている場合に,外側側壁の一部を切り欠いた構成)は開示されていないと主張する。 しかしながら,乙7発明に接した当業者であれば,組み立てられた状態で支柱に対向する側の側壁に切欠部を設けることによって,本件発明の課題を解決し得ることは理解できるから,展開図における外側側壁と内側側壁との連設の順序は問題にならないというべきである。 (イ) 原告は,本件特許の出願当時,箱板に直接連設された側壁は切欠してはならないものと考えられており,それゆえ,乙7発明も箱板に内側側壁を介してさらに連設された側壁を切欠したものであると主張するところ,確かに,本件特許の出願当時,箱板の側壁はいわゆる内曲げの構成が多い中(乙13~18),乙7発明は外曲げの構成を取ったものといえるが,外側に向けて外側側壁,内側側壁の順に連設し,箱板に連設する外側側壁に切欠を設けることについて,乙7発明の特許出願,あるいは本件特許出願の当時,どのような不都合があったかを何ら具体的に 明らかにしておらず,上記主張は採用できない。 (ウ) 原告は,当業者は,支柱と棚板とを強固に連結しようとする乙13発明に,あえて乙7発明を適用して側壁の端部を切り欠く構成を採用することはないと主張する。 しかしながら,乙13発明は,支柱に棚板を着脱自在に取り付ける係止部材,係合孔に関する発明 とする乙13発明に,あえて乙7発明を適用して側壁の端部を切り欠く構成を採用することはないと主張する。 しかしながら,乙13発明は,支柱に棚板を着脱自在に取り付ける係止部材,係合孔に関する発明であって,二重になった側壁の一部を切り欠くことが排除されているということはできないし,むしろ,乙7発明は,支柱を棚板に固定する点において,乙13発明と共通するものであるから,上記構成をもって,乙13発明に乙7発明を適用することが困難ということはできない。 (エ) なお,原告は,本件発明は,支柱の傾きを防止するとともに,棚の外観の美観の向上という顕著な作用効果の発生をもたらしたと主張する。 しかし,乙13発明自体,内側側壁が内側に来るよう折り返して外側側壁に重ね合わせるため,一定の美観を有すると認められるものであるし,乙13発明に乙7発明を適用し,側面の切欠部に支柱を接合させた場合に,面一となって美観が向上することは当該構成自体から自明の作用効果であることから,本件発明を容易想到でないと認めるべき特別の作用効果があるということもできない。 エ小括以上によれば,乙13発明には外側側壁に切欠がなく,支柱が内側側壁や外側側壁の側部には当接していないという相違点①について,当業者が乙7発明を適用することは容易に想到することができたというべきである。 なお,乙7発明と本件発明を対比すると,前述のとおり,外側側壁と内側側壁の連設の順(側壁の内曲げ・外曲げの別),展開図における切欠の位置といった相違点は存するものの,実際に使用する状態で見た場合には,箱底の外側を二度折り返すことで形成された内側側壁と外側側壁が存在し,外側側壁に切欠を設けることによって外側側壁の側面と内側側壁に支柱を当接させるという構成においては同一であ ,箱底の外側を二度折り返すことで形成された内側側壁と外側側壁が存在し,外側側壁に切欠を設けることによって外側側壁の側面と内側側壁に支柱を当接させるという構成においては同一であって,支柱が傾かないようにすることを目的とする点においても同一である。 乙13発明で,底板に近い方の側壁に切欠を設けることに格別の不都合があるとは認められず,曲げ加工の方向や側壁の幅,長さについては,当業者が自由に定め得るものであるところ,このような乙13発明に乙7発明を適用して本件発明の構成を想到するのが当業者にとって容易であることは,乙7発明の上記内容に照らしても明らかである。 (5) 相違点②について側板と支柱との固定方法としてボルトを用いることは,周知慣用手段といえる(乙7,19)。 したがって,本件発明の相違点②に係る構成は,当業者が容易に想到し得たと認められる。 (6) 相違点③について棚板と支柱からなる棚において,支柱の下方にキャスターを付設して,移動可能なワゴンとすることについては,当業者が任意に選択し得る技術である(乙20,21,弁論の全趣旨)。 したがって,本件発明の相違点③に係る構成は,当業者にとって自明の事項であったと認められる。 (7) 小括したがって,本件発明は,乙13発明に乙7発明等を適用することにより,容易想到であると認められることから,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。 第5 結語以上のとおり,原告の請求はその余について判断するまでもなく理由がな いから,いずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁 主文 理由 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官 谷有恒 裁判官 松川充康 裁判官 網田圭亮 く理由がないから,いずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。

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