令和7年3月13日判決言渡 令和6年(ネ)第10071号損害賠償請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和5年(ワ)第30359号) 口頭弁論終結日令和7年1月21日判決 控訴人 X 同訴訟代理人弁護士足立正 被控訴人 Y 同訴訟代理人弁護士阿部大介 同山崎真一郎 同押見和彦 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由(注)略語の定義は、原判決で定義しているものは原判決に従う。主な略語及びその定義は、次のとおりである。 原告 :控訴人(1審原告) 被告 :被控訴人(1審被告) 東京会 :東京都行政書士会 東京会目黒支部:東京都行政書士会目黒支部 東政連 :東京行政書士政治連盟 東政連目黒支部:東京行政書士政治連盟目黒支部 本件総会 :東京会目黒支部の令和5年度定時総会 本件発言 :本件総会における被告の発言 不競法 :不正競争防止法 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被告は、原告に対し、220万円及びこれに対する令和5年4月21日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 3 被告は、原告が、令和3年実施の第49回衆議院議員総選挙に関して、公職選挙法違反の嫌疑がかけられたとの事実を告知し、又は流布してはならない。 支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 3 被告は、原告が、令和3年実施の第49回衆議院議員総選挙に関して、公職選挙法違反の嫌疑がかけられたとの事実を告知し、又は流布してはならない。 4 被告は、原判決別紙目黒支部会員一覧表記載の東京都行政書士会目黒支部会員に対し、原判決別紙謝罪広告リスト1項「文案」記載の訂正文を本判決確 定の日から10日以内に書留郵便にて送付せよ。 5 被告は、原告に対し、原判決別紙謝罪広告リスト2項「記載要領」記載の各媒体に、それぞれ、同項記載の記載要領に従い、同別紙1項「文案」記載の謝罪広告を1回掲載せよ。 第2 事案の概要 本件は、東京会目黒支部所属の行政書士である原告が、同支部所属の行政書士である被告に対し、本件総会における被告の本件発言は、虚偽の事実を摘示又は流布することにより原告の名誉ないし営業上の信用を毀損するものであり、名誉毀損の不法行為(民法709条)及び信用毀損の不正競争(不競法2条1項21号)に当たる旨主張して、損害金220万円及びこれに対する令和5年4月21 日(不法行為の日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求めると共に、虚偽の事実の告知又は流布の差止め(不競法3条)及び名誉ないし信用回復措置(民法723条、不競法14条)を求める事案である。 原審が、本件発言は原告の名誉及び信用を毀損する行為とは認められないとして、原告の請求をいずれも棄却したところ、原告がこれを不服として控訴した。 1 前提事実、争点及び争点に対する当事者の主張は、後記2のとおり当審にお ける原告の補足的主張を加えるほかは、原判決の「事実及び理由」中、第2の2から4まで(原判決2頁10行目から9頁14行目まで)に記載のとおりであるから、これ 主張は、後記2のとおり当審にお ける原告の補足的主張を加えるほかは、原判決の「事実及び理由」中、第2の2から4まで(原判決2頁10行目から9頁14行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 なお、本件発言を再掲すると、以下のとおりである。 「実は前回の衆議院議員選挙のときに、当支部は公職選挙法違反の嫌疑という ものがかかって大変な騒ぎになりました。これ本会の政連の会長、幹事長にA支部長、X政連支部長呼ばれて、厳重注意を受けておるはずです。これは私聞いてます。違うとおっしゃるんだったら、会長に私確認とりますから。この内容なんですけれども、特定の候補者の選挙ビラを写真撮って全支部に回してるんです。これ、今、A先生笑われてたんですけど、とにかく僕ら政連の現場で 大変だったんですよ。最終的に告発には至りませんでしたけれども、これ厳重注意をしたのはBさんに聞きました。厳重注意と思っていらっしゃらないんだったら、本会確認します私。こういう事情があって、今回、政連支部長の候補者に、A支部長が選ばれて、あげてる方は、当該写真に写っている方です。というのは、外部的に見て、政連が行った、もっと言えば支部が行った選挙違反 嫌疑を直接かけられているという方をわざわざこのタイミングでなぜ推薦して支部長候補になられるんですか。見識がないにもほどがある!これみんなおもってますよ。政連本部。」 2 当審における原告の補足的主張(争点1(本件発言による原告の名誉又は信用毀損の有無)について) ⑴ 原告が東政連目黒支部の2期目の支部長に就任した令和3年5月1日以降の任期中、東京会目黒支部の会員宛てメーリングリストにおいて、東政連から発信する者は原告だけであった(甲13)。本件総会に出席した行政書士の一人も、「特 2期目の支部長に就任した令和3年5月1日以降の任期中、東京会目黒支部の会員宛てメーリングリストにおいて、東政連から発信する者は原告だけであった(甲13)。本件総会に出席した行政書士の一人も、「特定の選挙ビラを写真撮って全支部に回している」旨の発言の指し示す人物は原告であると理解していた(甲14)。 したがって、本件総会当時、東京会目黒支部及び東政連目黒支部所属の会 員間において、東政連からの発信は原告による発信と同じ意味であり、本件発言に係る「選挙ビラ」の「写真」の送付者として原告が明示的かつ容易に想起される状況であったから、本件発言によって、原告の社会的評価が低下した。 ⑵ 本件発言が、仮に、A、Cの名誉を棄損するものであるとしても、同時に、 原告に対する名誉棄損となるものである。 ⑶ 原判決が判示するように、「組織としての問題が生じた場合に、その責任者が、個人としての責任の有無にかかわりなく組織の責任者として注意を受けることは一般にあり得るところである」としても、公職選挙法違反の嫌疑がかけられて厳重注意を受けたという発言については、通常の組織内での注 意があったというレベルの問題ではなく、犯罪行為に関わるレベルのもので、嫌疑がかかれば、個人として警察、検察への対応を強いられるものである。 したがって、厳重注意との発言は、それを聞いた者が、社会的評価の点においても、東政連の支部長としての社会的評価に関わる話題として限定して受け止めるものとはいえず、原告個人の社会的評価と不可分一体である。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、本件発言は原告の名誉及び信用を毀損する行為とは認められないから、原告の請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は、後記2のとおり当審における原告の補足的主張に対す 判所の判断 1 当裁判所も、本件発言は原告の名誉及び信用を毀損する行為とは認められないから、原告の請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は、後記2のとおり当審における原告の補足的主張に対する判断を付加するほかは、原判決「事実及び理由」第3の1(原判決9頁16行目から15頁3行目まで)に記 載のとおりであるから、これを引用する。 2 当審における原告の補足的主張に対する判断⑴ 原告は、原告が東政連目黒支部の支部長であった令和3年5月1日以降の任期中、東京会目黒支部の会員宛てメーリングリストにおいて、東政連から発信する者は原告だけであったとして、甲13、14を提出する。 しかし、甲13は、いずれも具体的な送信先アドレス等の記載がなく、一 部に「過日ML配信した内容の転載です」と記載されているものの(1、2枚目)、そもそも、東政連から東京会目黒支部会員宛てのメーリングリストへの発信者が原告のみであり、他の発信者がいなかったことを裏付けるものではない。仮に、東政連からのメーリングリストへの発信者が原告のみであったということが事実であり、本件総会に出席した行政書士の中に本件発言 の「特定の候補者の選挙ビラを写真撮って全支部に回してる」の指し示す人物は原告であると理解した者が存在した(甲14)としても、一般人の普通の読み方(本件の場合は、聴き方。以下同じ。)と注意を基準とした場合、本件発言において、公職選挙法違反の嫌疑がかけられているのは東政連目黒支部であり、その直接的、具体的な違反行為の主体、すなわち「支部が行っ た選挙違反嫌疑を直接かけられているという方」として挙げられているのは、「支部長候補」として推薦されたCであると理解されることは、前記引用した原判決のとおりである。すなわち、本件発言は、 っ た選挙違反嫌疑を直接かけられているという方」として挙げられているのは、「支部長候補」として推薦されたCであると理解されることは、前記引用した原判決のとおりである。すなわち、本件発言は、原告が公職選挙法の具体的違反行為を行った者であるという事実を摘示しているとは認められないのであるから、そうである以上、原告の主張及び前掲各証拠は、本件の結論を 左右するに足りるものではない。 ⑵ 原告は、本件発言が、仮に、A、Cの名誉を棄損するものであるとしても、同時に、原告に対する名誉棄損となるものである旨主張する。 しかし、原告は、A、Cと原告が社会的に同視されるような密接な関係にある等、A、Cに対する名誉棄損行為が原告に対する名誉棄損行為となると 評価すべき具体的な事実を何ら主張していないのみならず、本件発言の内容自体においても、一般人の普通の読み方と注意を基準として、A、Cに対する名誉棄損行為が同時に原告に対する名誉棄損になると解されるような事実関係の摘示はされていないから、原告の主張は失当である。 ⑶ 原告は、公職選挙法違反という犯罪行為に関わる重大な嫌疑について厳重 注意を受けたという発言は、東政連支部長としての立場にとどまらず、原告 個人の社会的評価を低下させる旨主張する。 そこで検討するに、本件発言において、原告に明示的に言及する部分は「本会の政連の会長、幹事長にA支部長、X政連支部長呼ばれて、厳重注意を受けておるはずです」というものであり、そのこと自体は、東政連目黒支部の公職選挙法違反の嫌疑に関し、原告が東政連支部長としての立場におい て、A東京会支部長と併せて厳重注意を受けたはずだという以上に、具体的な注意の内容や原告個人の具体的非違行為について述べるものではない。また、本件発言 し、原告が東政連支部長としての立場におい て、A東京会支部長と併せて厳重注意を受けたはずだという以上に、具体的な注意の内容や原告個人の具体的非違行為について述べるものではない。また、本件発言は、役員選任が議題となっていた本件総会の質疑の中で質問者の被告が行った発言であり、その全体をみると、過去に公職選挙法違反の嫌疑を直接かけられていた者(C)が支部長候補として推薦されるのは相当で はないという被告の意見を表明する点に主眼があることは明らかである。しかも、本件発言の直後、同じ本件総会の場でA東京会支部長から「公職選挙法違反の嫌疑をかけられた事実はない。東政連より、交通費の使い方等に関し、疑念を抱かれないようと注意を受けた。」との説明がされている(甲8)。これらの点を踏まえると、一般人の普通の読み方と注意を基準にした 場合、本件発言により、原告個人の社会的評価が低下したとまでは認めることはできないというべきである。したがって、原告の主張は採用することができない。 ⑷ なお、原告は、従前の被告との関係や本件発言を巡る状況についてるる主張するが、仮にそれらの事実が認められるとしても、本件発言により原告個 人の社会的評価が低下したとは認められない旨の前記認定判断を左右するに足りるものではない。 3 結論よって、原告の請求をいずれも棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官清水響 裁判官菊池 裁判官清水響 裁判官菊池絵理 裁判官頼晋一
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