令和4年4月8日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成30年(ワ)第36232号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日令和4年2月9日判決 原告株式会社シンコウフーズ 原告スターゼン株式会社 原告ら訴訟代理人弁護士弓削田博同河部康弘同平田慎二原告ら訴訟代理人弁理士河部秀男原告ら補佐人弁理士平木祐輔同藤田節同田中夏夫同漆山誠一 被告滝沢ハム株式会社 被告訴訟代理人弁護士新田裕子同海老原輝同小池亮史同前田葉子同日野英一郎 被告訴訟復代理人弁護士家村洋太 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙被告製品目録記載の各製品を製造,販売してはならない。 2 被告は,前項の各製品を廃棄せよ。 3 被告は,別紙被告方法目録記載の各方法 とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙被告製品目録記載の各製品を製造,販売してはならない。 2 被告は,前項の各製品を廃棄せよ。 3 被告は,別紙被告方法目録記載の各方法を使用してはならない。 4 被告は,原告スターゼン株式会社に対し,6億2073万2976円及びうち 1億7290万2345円に対する平成30年11月19日から支払済みまで,うち4億4783万0631円に対する令和2年2月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要 本件は,発明の名称を「特定加熱食肉製品,特定加熱食肉製品の製造方法及び特定加熱食肉製品の保存方法」とする特許権を有する原告株式会社シンコウフーズ(以下「原告シンコウフーズ」という。)及び原告シンコウフーズから本件特許の独占的通常実施権を付与された原告スターゼン株式会社(以下「原告スターゼン」という。)が,被告が製造,販売している別紙被告製品目録記載のローストビ ーフ(以下,同目録記載1の製品を「被告製品1」,同目録記載2の製品を「被告製品2」,同目録記載3の製品を「被告製品3」といい,これらを総称して「被告製品」という。)が同特許権に係る特許発明の技術的範囲に属するとして,被告に対し,特許法100条1項,2項に基づき,同特許権に係る方法で製造される被告製品の製造,販売の差止め及び廃棄を求めるとともに,民法709条及び特許 法102条2項に基づき,特許権侵害の損害賠償として6億2073万2976 円及びうち平成30年11月19日までの販売に係る損害1億7290万2345円について同日から支払い済みまで,平成30年11月20日から令和2年2月11日までの販売に係る損害4億4783万0631円について同 平成30年11月19日までの販売に係る損害1億7290万2345円について同日から支払い済みまで,平成30年11月20日から令和2年2月11日までの販売に係る損害4億4783万0631円について同日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実。末尾の括弧内に証拠(以下、明示しない限り枝番号を含む。)を掲記する。) ア原告シンコウフーズは,食肉製品の製造販売,食肉製品の製造技術のコンサルティング及び販売等を業とする株式会社である。 イ原告スターゼンは,食肉の加工及び売買等を業とする株式会社である。 ウ被告は,食肉の加工及び販売,食肉加工品の製造及び販売等を業とする株式会社である。 (争いなし)原告シンコウフーズは,以下の特許権(以下,「本件特許権」といい,本件特許権に係る特許を「本件特許」という。)を有している。(甲1,2) 特許番号特許第5192595号発明の名称特定加熱食肉製品,特定加熱食肉製品の製造方法及び特定加熱食肉製品の保存方法出願日平成24年5月17日出願番号特願2012-113587 登録日平成25年2月8日原告スターゼンは,遅くとも平成28年4月19日までに,原告シンコウフーズから本件特許の独占的通常実施権を取得した。(甲8,弁論の全趣旨)本件特許権に係る特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである(以下,請求項1に記載された発明を「本件発明」という。また,本件特許権 に係る明細書を「本件明細書」と総 論の全趣旨)本件特許権に係る特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである(以下,請求項1に記載された発明を「本件発明」という。また,本件特許権 に係る明細書を「本件明細書」と総称する。)。 「特定加熱食肉製品をスライスする工程と,スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程と,当該酸素化する工程の後,スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含み,上記スライスされた上記特定加熱食肉製品は,ガスバリア性を有する包材に密封された状態,且つ, 当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で,全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上,メトミオグロビンが50%未満,還元型ミオグロビンが34%以上となる割合となっていることを特徴とする特定加熱食肉製品の製造方法。」同請求項を分説すると,以下のとおりとなる。(以下,分説された構成要件の 符号に従い,「構成要件A」などという。)A 特定加熱食肉製品をスライスする工程と,B スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程と,C 当該酸素化する工程の後,スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸 素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含み,D 上記スライスされた上記特定加熱食肉製品は,ガスバリア性を有する包材に密封された状態,且つ,当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で,全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上,メトミオグロビンが50%未満,還元型ミオグロビンが34% 以上となる割合(以下「本件ミオグロビン割合」とい の条件下で,全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上,メトミオグロビンが50%未満,還元型ミオグロビンが34% 以上となる割合(以下「本件ミオグロビン割合」といい,3種のミオグロビンが占める割合を「ミオグロビン割合」という。)となっていることE (構成要件A~D)を特徴とする特定加熱食肉製品の製造方法。 本件特許の出願日当時,次の事項が技術常識であった。 食肉の色は,ミオグロビンという,筋肉中の酸素の貯蔵・運搬の役割を果た す水溶性タンパク質によって左右される。ミオグロビンは,酸素と結合しやす い性質を有している。 家畜を屠殺すると,家畜は呼吸をしなくなって酸素の供給が断たれ,筋肉内の酸素はすべて消費されるため,筋肉内のミオグロビンは酸素を奪われて還元型ミオグロビンになる。還元型ミオグロビンは,酸素を奪われて不安定な状態にあり,酸素と結合しやすい。この還元型ミオグロビンを大量に含む食肉(切 った直後の食肉)は,紫がかった赤色をしている。 この食肉が空気にさらされ少し時間が経つと,還元型ミオグロビンは空気中の酸素と結合し,オキシミオグロビンとなる。このオキシミオグロビンを大量に含む食肉は,人が「新鮮である,美味しそうである」と感じる鮮やかな赤色となる。 ローストビーフを製造する食肉加工業者の立場からすれば,このオキシミオグロビンを大量に含む状態にローストビーフを留めておきたい。しかし,実際には,同ローストビーフは,長時間が経つと食肉中のオキシミオグロビンがさらに酸化してメトミオグロビンに変化し,食肉は次第に褐色になってしまう。 この褐色化した肉は経験的に古い肉と判断され,好まれない。メトミオグロビ ン割合が50%以上になると明瞭に色調の劣化が認められる。 してメトミオグロビンに変化し,食肉は次第に褐色になってしまう。 この褐色化した肉は経験的に古い肉と判断され,好まれない。メトミオグロビ ン割合が50%以上になると明瞭に色調の劣化が認められる。 (甲5~7)被告は,令和2年2月まで少なくとも被告製品の一部を製造販売しており,被告製品は,いずれも,特定加熱食肉製品をスライスして製造されている(以下,被告製品の製造方法を「被告方法」という。)から,構成要件Aを充足する。 また,被告製品には,いずれも,非鉄系脱酸素剤が入っており,ガスバリア性を有する素材でトレイがシールされて(なお,被告製品2のトレイがガスバリア性を有していることについては争いがないが、被告製品1,3のトレイのガスバリア性については後記のとおり争いがある。)密封されている。 (争いなし。) 3 争点 被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか否か(争点1) ア被告製品は,構成要件B(還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程)を充足するか(争点1-1)イ被告製品は,構成要件C(当該酸素化する工程の後,スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程)を充足するか(争点1-2) ウ被告製品は,構成要件D(ガスバリア性を有する包材に密封された状態,且つ,当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で,全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上,メトミオグロビンが50%未満,還元型ミオグロビンが34%以上となる割合となっていること)を充足するか(争点1-3) 本件特許は,乙12号証の発明を主引例として進歩性を欠き,特許無効審判により無効にされるべきか(争点2)差止めの対象( %以上となる割合となっていること)を充足するか(争点1-3) 本件特許は,乙12号証の発明を主引例として進歩性を欠き,特許無効審判により無効にされるべきか(争点2)差止めの対象(争点3)原告スターゼンは,原告シンコウフーズから損害賠償請求権を取得したか(争点4) 損害額(争点5) 4 争点に対する当事者の主張被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか否か(争点1)ア被告製品は,構成要件B(還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程)を充足するか(争点1-1) (原告らの主張)塊状のローストビーフの中の肉は,空気に触れないから,死後の酸素の供給が断たれて酸素が全て消費された状態,すなわち還元型ミオグロビンが多い状態になっている。ローストビーフをスライスすれば,必然的にスライスされたローストビーフの断面は空気に触れることになり,不安定な還元型ミオグロビ ンは酸素と結合してオキシミオグロビンになる。したがって,酸素を含む空気 下でローストビーフを切り分けて密封する被告方法においても,還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程が必然的に含まれることとなる。 また,脱酸素剤を入れたとしても,包装内の酸素濃度がすぐに検出限界以下になるわけではなく,包材内に残存する酸素によって酸素化は進むのであるか ら,本件発明は,包材内に残存する酸素による酸素化を当然に予定している。 酸素化が意図的に行われることは本件特許請求の範囲にも本件明細書にも記載がない。また,被告は,メトミオグロビンの割合が増加する前にローストビーフを包材に密封しており,この意味で処理時間を意図的にコントロールしている。 明細書の「30分~90分・・の処理時間とすることができ 被告は,メトミオグロビンの割合が増加する前にローストビーフを包材に密封しており,この意味で処理時間を意図的にコントロールしている。 明細書の「30分~90分・・の処理時間とすることができる」との記載は好適な条件を記載したものに過ぎず,酸素化する工程をこの時間に限定するものではない。 本件発明に係る審査官の拒絶理由通知は,「酸素化する工程」の前に「脱酸素剤とともに密封する工程」が存在するのではなく,「酸素化する工程」の後に 「脱酸素剤とともに密封する工程」が存在することを明確にするように求めてされたものであり,「酸素化する工程」に「目的」や「一定の時間」を要求していたわけではない。 (被告の主張)構成要件Bには,「工程」と記載されており,また,本件明細書の酸素化する 工程の定義に「スライス断面が紫赤色から鮮赤色に変化させることを目的として」と記載していることからすると,同工程は作為を意味する。作為には,必然的に作為の目的を伴い,単なる自然現象は作為に当たらない。 また,構成要件Bの「酸素化」という文言は,現象の機能,作用効果を表現するにとどまり,具体的な構成は明らかにしていない。本件明細書には,酸素 化に関する具体的な構成としては,空気に,特定加熱食肉製品を30分~90 分程度さらして酸素化処理を行うことのみが記載されている。他方で,従来のスライスされたローストビーフの包装方法として,ローストビーフをスライスした後,当該スライスをトレイに並べ,間もなく当該トレイと脱酸素剤とを袋状の容器に挿入して密封し,直ちに容器内の酸素を減少させて容器内を脱酸素状態に維持する工程を含む包装方法が知られており(乙12参照),当業者の 間では,この包装方法では,「スライスし,トレイに並べる間,スライス面 密封し,直ちに容器内の酸素を減少させて容器内を脱酸素状態に維持する工程を含む包装方法が知られており(乙12参照),当業者の 間では,この包装方法では,「スライスし,トレイに並べる間,スライス面が酸素に触れるため,その間,酸素の影響を受けてしまう」と理解されていた。これらの事実を前提にすると,構成要件Bの「酸素化させる工程」とは,スライスした後,スライスされたローストビーフを脱酸素剤と共に包材で密封して包材内の酸素を低下させる工程に入る前に,30~90分程度,意図的に酸素含 有気体中にスライスされたローストビーフを置いて,スライス面のオキシミオグロビンを増加させて強い赤みを呈する状態にすることであると解される。 また,本件特許の出願過程において,審査官が,酸素化させる工程を密封工程よりも前に行われることを明確になるようにするようにと補正を促したことは,構成要件Bの酸素化する工程について,ローストビーフをスライスすれ ば必然的にローストビーフの断面は酸素含有気体である空気に触れることを含む構成ではないとしていたことを前提にしており,出願人はこれに反論せずに補正案を受け入れて特許を取得しているのであるから,原告らが,構成要件Bにつき上記構成を主張することは禁反言により許されない。 ●省略● イ被告製品は,構成要件C(当該酸素化する工程の後,スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程)を充足するか(争点1-2)(原告らの主張)販売されていた被告製品1,3のパック内の酸素濃度が空気中の酸素濃度よ りも著しく低くなっていたことから、被告製品1,3についてトレイがガスバ リア性を有している。被告製品は,酸素化する工程の後,非鉄系脱酸素剤ととも ク内の酸素濃度が空気中の酸素濃度よ りも著しく低くなっていたことから、被告製品1,3についてトレイがガスバ リア性を有している。被告製品は,酸素化する工程の後,非鉄系脱酸素剤とともにガスバリア性を有する包材に密封しているものであり、構成要件Cを充足する。 被告製品は,消費者に購入されて開封されるまで,密封されたままであることが予定されているから,仮に出荷・納品時までに酸素濃度が検出限界以下に なっていないとしても,被告自身によって出荷後も小売店や消費者を道具として密封する工程を実施しているものと同視して侵害を判断すべきである。 仮に被告製品の中に包材内の酸素濃度が検出限界以下になる前に購入されるものがあったとしても,同製品は消費期限までには検出限界以下になるから,被告製品は「その方法の使用に用いる物(日本国内において広く一般に流通し ているものを除く。)であってその発明による課題の解決に不可欠なもの」(特許法101条5号)に当たるから,間接侵害品である。 (被告の主張)被告製品1,3は,トレイの材質に本件明細書に記載されているエチレン-ビニルアルコール共重合体が含まれていないので,包材全体としてはガスバリ ア性を有しているとはいえない。 本件明細書には,「・・・特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素剤とともにガスバリア性を有する包材に密封する。この工程では,包材内に密封された気体に含まれる酸素及び特定加熱食肉製品のオキシミオグロビンに結合した酸素を非鉄系脱酸素剤により吸収する」(【0030】)などの記載があり,「密封する工 程」は,包材内に密封された気体に含まれる酸素及び特定加熱食肉製品のオキシミオグロビンに結合した酸素を非鉄系脱酸素材により吸収する工程も含んでいる。さらに,本件明細書には,「 ,「密封する工 程」は,包材内に密封された気体に含まれる酸素及び特定加熱食肉製品のオキシミオグロビンに結合した酸素を非鉄系脱酸素材により吸収する工程も含んでいる。さらに,本件明細書には,「この工程では,・・・酸素を吸収している。 これにより,包材内の酸素濃度が検出限界以下になったときに特定加熱食肉製品に含まれる各ミオグロビンの割合を所望の範囲に制御することができる」 (【0034】)などの記載があるので,当該脱酸素処理は,包材内の酸素濃度 が検出限界以下になるまで行う必要がある。 被告方法は,スライスされたローストビーフを包材に物理的に密封した時点で完了しており,被告方法の実施を認め得るのは,被告製品に対して被告の支配が及ぶ,被告製品が出荷されるまでであり,最長でも被告製品が販売先に納品される時点までである。被告製品1,3については,納品時点で包材内の酸 素濃度が検出限界以下になっていないし,被告製品2については,納品までの時間によっては,検出限界以下になっていないものもあった。 ウ被告製品は,構成要件D(ガスバリア性を有する包材に密封された状態,且つ,当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で,全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上,メトミオグロビンが5 0%未満,還元型ミオグロビンが34%以上となる割合となっていること)を充足するか(争点1-3)(原告らの主張)本件発明の実施例において用いられている測定機器の分解能が0.1%であることや,脱酸素剤の業界における脱酸素状態を酸素濃度0.1%としている ことからすると,構成要件Dの酸素濃度が検出限界以下であることは,酸素濃度0.1%未満を意味すると解するべきである。また,「当該包材内の酸素濃度が検出 脱酸素状態を酸素濃度0.1%としている ことからすると,構成要件Dの酸素濃度が検出限界以下であることは,酸素濃度0.1%未満を意味すると解するべきである。また,「当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で」とは,当該条件下のいずれかの時点で本件ミオグロビン割合になっていれば足りる。仮に当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で常に本件ミオグロビン割合になっていることが必要とすると,ガ スバリア性を有する包材で密封されていれば,一度酸素濃度が検出限界に達すれば,開封しない限りその状態が半永久的に続くから,特定加熱食肉製品のミオグロビンの割合も半永久的に本件ミオグロビン割合を満たすことが必要になってしまうが,特定加熱食肉製品の成分が半永久的に変わらないことはあり得ないから不合理である。本件明細書でも,せいぜい30日間優れた肉食の状 態を維持することを想定している。 原告らが被告製品を購入し,消費期限当日にSCE(正反射光除去)方式を用いて分光反射率の測定し,明細書所定の計算方法でミオグロビンの割合を算定したところ,いずれの製品のミオグロビン割合も本件ミオグロビン割合の範囲内であったので,被告製品はいずれも構成要件Dを充足する。 仮に被告が主張するとおり,包材内の酸素濃度が検出限界以下になってから 消費期限まで常に本件ミオグロビン割合が維持されていなければならないとしても,酸素濃度が検出限界に達して以降,消費期限当日までの間に,オキシミオグロビンの割合が減ってメトミオグロビンの割合が増えることはあっても,その逆はないから,原告らの実験結果のとおり,消費期限当日にミオグロビンが本件ミオグロビン割合になっていれば,必然的にそれ以前も本件ミオグ ロビン割合を満たしていたといえる。 被告 も,その逆はないから,原告らの実験結果のとおり,消費期限当日にミオグロビンが本件ミオグロビン割合になっていれば,必然的にそれ以前も本件ミオグ ロビン割合を満たしていたといえる。 被告は,分光反射率の測定に当たり,SCE(正反射光除去),SCI(正反射光込み)方式のいずれの方式をとってもその測定結果に基づくミオグロビンの割合は本件ミオグロビン割合になることが必要であると主張するが,食品及び食肉の分野ではSCE(正反射光除去)で測定するのが一般的である。また, 本件特許では人の目での見え方が問題になっているから,これにより近いSCE(正反射光除去)を用いるべきである。本件明細書では,包材を介さずに特定加熱食肉製品を直接測定することを原則とし,例外的に分光色差計を用いる場合には包材ごと測定してもかまわないとしているが,これは,分光色差計では,正反射光が除かれる測定方法しか存在しないため,包材に封入した状態で 測定しても,包材の光沢による誤差が最小限に抑えられるからである。 ローストビーフの色で色票を作成して被告が実験に用いた分光測色計とほぼ同等の能力を有する装置で分光反射率を測定したところ,包材なしで色票を直接測定するとSCE(正反射光除去),SCI(正反射光込み)方式のいずれの方法でも同じ数値が得られたのに対し,包材越しに測定すると,SCE(正 反射光除去)方式では,包材なしのときに近い測定結果を得られたが,SCI (正反射光込み)方式では,大きく値がずれた。このことからすると,包材越しの測定においてSCI(正反射光込み)方式を採用することは,技術的に明らかに誤っているといえる。 原告らが改めて包材なしで被告製品をSCE(正反射光除去),SCI(正反射光込み)方式の両方式で測定したところ,酸素 I(正反射光込み)方式を採用することは,技術的に明らかに誤っているといえる。 原告らが改めて包材なしで被告製品をSCE(正反射光除去),SCI(正反射光込み)方式の両方式で測定したところ,酸素濃度1.38%での測定では あるが、いずれの方式の測定に基づいてもミオグロビンの割合は本件ミオグロビン割合に収まったのであるから,包材越しのSCE(正反射光除去)による測定に基づく算定は信頼でき,包材越しのSCI(正反射光込み)方式による測定に基づく算定は,包材の影響を受けて正しくないミオグロビン割合を導き出すから誤っているといえる。 (被告の主張)構成要件Dでは,「当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で」のミオグロビンの割合が問題になっているが,本件明細書【0042】から【0044】等の記載によれば,肉色を鮮赤色に長期に亘って維持することができるという本件発明の効果は,その間,各ミオグロビンが本件ミオグロビン割合に なっていることにより実現されていると解される。したがって,「当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で」とは,スライスされた特定加熱食肉製品が包材に密封され,かつ,製品の消費期限内において包材内の酸素濃度が検出限界以下にあるときにはいつでも,各ミオグロビンが,本件ミオグロビン割合になっていると解するのが相当である。 仮に,これを,「当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件のいずれかの時点で」と解釈すると,明細書及び実施例の記載と矛盾する。実施例1では,非鉄系脱酸素剤の割合を42.9%としたとき,酸素濃度0.0%下で,スライスから1日後,2日後では本件ミオグロビン割合になっているが,3日後には本件ミオグロビン割合からはずれ,褐変しており,この場合,褐変すること なく長期にわたって優 酸素濃度0.0%下で,スライスから1日後,2日後では本件ミオグロビン割合になっているが,3日後には本件ミオグロビン割合からはずれ,褐変しており,この場合,褐変すること なく長期にわたって優れた肉色を維持できているとはいえない。また,原告ら の主張するように解釈すると,消費期限の当日にのみ本件ミオグロビン割合を満たす製品も本件発明の技術的範囲に入ることになるが,このような製品は消費期限の前日までは「褐変することなく優れた肉食が維持されている」とはいえない。 被告による実験結果(包材越しのSCI(正反射光込み)方式による分光反 射率の測定)によれば,被告製品1,2については,販売期間中にミオグロビンが本件ミオグロビン割合になることはなく,被告製品3も多くの場合同様であり,少なくとも被告製品は,いずれも,酸素濃度が検出限界以下の時に常にミオグロビン割合が本件ミオグロビン割合にあるわけではなかった。 分光測色計を使用して分光反射率を測定する方法には,SCI(正反射光込 み)方式とSCE(正反射光除去)方式があり,いずれもそれぞれの特性に沿って広く使用されているところ,本件明細書におけるミオグロビン誘導形態の割合を算出するために分光反射率を測定する条件としてSCE(正反射光除去)方式を用いるべきとの記載はなく,また,そのことが当業者に明らかであるともいえない。このような場合には,いずれの方法によって測定しても,特許請 求の範囲の記載の数値を充足する場合でない限り,特許権侵害を構成しないと解するべきである。 本件特許は,乙12号証の発明を主引例として進歩性を欠き,特許無効審判により無効にされるべきか(争点2)(被告の主張) 特開平10-327807号公報(乙12)には、以下の発明(以下「乙1 許は,乙12号証の発明を主引例として進歩性を欠き,特許無効審判により無効にされるべきか(争点2)(被告の主張) 特開平10-327807号公報(乙12)には、以下の発明(以下「乙12発明」という。)が記載されている。 a ローストビーフをスライスする工程と,b スライスされたローストビーフをトレイ上に並べる工程と,c スライスされたローストビーフを脱酸素剤と共に酸素ガスバリア性を有 する容器内に配置し,前記容器内を窒素ガス又は二酸化炭素ガス雰囲気に 置換した後,該容器を密封して,該容器内の残存酸素濃度が0.01%以下に維持されるようにするe ことを特徴とするスライスされたローストビーフの包装方法。 本件発明と乙12発明の相違点は以下のアないしウのとおりである。なお,世間一般では,ローストビーフは特定加熱食肉製品のローストビーフを指すこ とは明らかであるから,乙12公報では当該ローストビーフが特定加熱食肉製品であることが明示されていないものの,当該ローストビーフは特定加熱食肉製品といえ、この点に本件発明との相違点はない。仮に当該ローストビーフが加熱食肉製品であろうとも、ローストビーフの赤みは、ミオグロビンの作用によるものであることは共通しているから、消費者への有効な視覚的アピールを するべき赤色を保持するという課題を解決するために、乙12発明に後記の発明を組み合わせることは、当該ローストビーフが特定加熱食肉製品の製造方法で製造されたローストビーフであるか否かに関係なく、当業者は容易に想到することができる。 ア本件発明では,「スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグ ロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」を含むのに対し,乙12発明では,還元型ミオグロビンをオキ ことができる。 ア本件発明では,「スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグ ロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」を含むのに対し,乙12発明では,還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程は記載されていない点(以下「相違点1」という。)。 イ本件発明では,脱酸素材は非鉄系であり,包材内を窒素ガス又は二酸化炭素ガス雰囲気に置換していないのに対し,乙12発明では,脱酸素剤は鉄系 であり,包材を密封する前に,窒素ガス又は二酸化炭素ガス雰囲気に置換している点(以下「相違点2」という。)。 ウ本件発明では,「上記スライスされた上記特定加熱食肉製品は,ガスバリア性を有する包材に密封された状態,且つ,当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で,ミオグロビンが,本件ミオグロビン割合となっている」 のに対し,乙12発明ではミオグロビン割合を記載していない点(以下「相 違点3」という。)。 相違点1については,消費者への有効な視覚的アピールを目的として,ミオグロビンを含む食品を保存するにあたって,酸素濃度を低下させて保存する前に,1時間程度,酸素濃度を低下させない状態で収納容器内に貯蔵して,還元状態のミオグロビンをオキシミオグロビンに変化させて,食品を鮮やかな赤色 とする技術が公開されており(特開2012-37202。乙13。以下、「乙13発明」という。),当業者に容易に想到することができる。この工程には,メトミオグロビンを還元型ミオグロビンに還元するメトミオグロビン還元活性の有無は無関係であり,乙13発明が生肉を対象としていることは同結論を左右しない。 相違点2については,生の牛ひき肉をエージレスS-200(鉄系脱酸素材)と共に密封包装して冷蔵保存すると,保存2日目 係であり,乙13発明が生肉を対象としていることは同結論を左右しない。 相違点2については,生の牛ひき肉をエージレスS-200(鉄系脱酸素材)と共に密封包装して冷蔵保存すると,保存2日目に褐色となり,3日目以降は赤紫色に変色するという欠点が生じていたところ,エージレスG-200(CO2発生型非鉄系脱酸素材)と共に密封包装して冷蔵保存すると,無酸素状態下においてもあざやかな赤味を保持することが特許公報に公開されていた(特開 昭60-221031。乙14。以下、同公報に記載された発明を「乙14発明」という。)。また、牛ひき肉を鉄系脱酸素材と共に包材で密封包装すると,1日後及び2日後にメトミオグロビンの濃度が50%以上となり,褐色となることが知られていた(特開昭58-158129。乙18)。また,包装製品に一般的に行われている包装後の金属探知機による異物混入試験を行うために, 鉄系でなく非鉄系の脱酸素材を用いる必要があることが知られていた。そして,脱酸素剤を単独で使用するか,窒素ガス又は二酸化炭素ガス置換法と併用するかは,必要に応じて当業者が適宜選択できる事項である。そうすると,乙12発明において,脱酸素材と共に密封包装して冷蔵保存する際に,ローストビーフが褐色や赤紫色に変色することを防止することや金属探知機による異物混 入試験を行うこと等のために,窒素ガス又は二酸化炭素ガス置換法と併用する ことなく,乙14発明の技術を適用し,脱酸素材としてCO2発生型の非鉄系脱酸素材を単独で用いることは,当業者が容易に想到できることである。 本件発明と乙14発明とは,非鉄系脱酸素材を使用すれば肉色を良好にできるものである点で共通しており,特に実施例レベルでは,鉄系脱酸素材を使用すれば変色するが,CO2発生型の非鉄系 きることである。 本件発明と乙14発明とは,非鉄系脱酸素材を使用すれば肉色を良好にできるものである点で共通しており,特に実施例レベルでは,鉄系脱酸素材を使用すれば変色するが,CO2発生型の非鉄系脱酸素材を使用すれば赤色を保持で きるという点で完全に一致している。仮に本件発明と乙14技術との間に作用機序の相違があるとしても,乙12発明に,乙14記載の技術を適用する動機付けはある。 また,脱酸素を行う過程でメトミオグロビン還元酵素の活性は無関係であるから,乙14発明が生肉を対象としていることは乙14発明を組み合わせる動 機付けを損なうものではない。 そもそも,本件明細書の実験結果によれば,時の経過によりメトミオグロビンの割合が減っているものもあり,特定加熱食肉製品においてメトミオグロビン還元酵素が失活しているとの原告らの主張にも疑問がある。 また,原告らは,乙12発明で課題が解決しているため,乙14発明を組み 合わせる動機がないと主張するが,乙12発明は開封後30分後の状態を検証しているにすぎず,保存期間中に視覚的アピールをするという課題が解決できているかは不明である。 顕著な効果に関する原告らの主張は,本件発明の効果に関する主張ではないから参酌する余地はない。 相違点3については,数値限定の技術的意義は,本件明細書の記載によれば,保存状態において,特定加熱食肉製品が褐変することなく本来の赤色を呈しており,優れた商品価値を維持し,また,保存後に包材を開封して空気に曝すとより鮮明な鮮赤色を呈することであるとされており,ミオグロビン割合を限定したことに何らかの臨界的意義があるとは記載されていない。上記のとおり乙 12発明及び乙13発明を適用すれば,ローストビーフは,保存状態において, 鮮やかな ,ミオグロビン割合を限定したことに何らかの臨界的意義があるとは記載されていない。上記のとおり乙 12発明及び乙13発明を適用すれば,ローストビーフは,保存状態において, 鮮やかな赤色を維持し,容器を開封して酸素に曝すとオキシミオグロビンの鮮紅色を呈することになるのであるから,相違点3に係る構成に容易に想到することができる。 仮に数値限定に何らかの技術的意義があるとしても,ミオグロビンのうち30%から40%以上がメトミオグロビンに酸化されると,肉の変色が目に見え て分かり,消費者の購買意欲がなくなることは知られていた。さらに,食肉製品の色は,ミオグロビンのオキシミオグロビン,還元型ミオグロビン及びメトミオグロビンの各々の混在割合によって決定するから,鮮やかな赤色を維持するには,オキシミオグロビンの割合がある程度高くなければならないことは自明であり,密封された包材から取り出されたときに鮮やかな赤色が回復するに は,還元型ミオグロビンがかなりの割合で存在している必要があることも自明であり,これらの数値は適宜設定できる値にすぎない。 (原告らの主張)乙12発明の対象物は,ローストビーフと記載されており,ローストビーフには特定加熱食肉製品と加熱食肉製品の両方があるから,乙12発明のロース トビーフが特定加熱食肉製品であるとはいえない。加熱食肉製品であれば、肉を成型したり、調味液を肉の内部に浸透させたりと様々な加工ができ、許容される処理が全く異なるので、当業者にとっては特定加熱食肉製品と加熱食肉製品は全くの別物である。また、加熱食肉製品の場合には、発色剤(亜硝酸塩と硝酸塩)を用いることが可能であり、その場合、ミオグロビンに発色剤から発 生する一酸化窒素が作用することで赤色を呈するのであり、特定加熱食 ある。また、加熱食肉製品の場合には、発色剤(亜硝酸塩と硝酸塩)を用いることが可能であり、その場合、ミオグロビンに発色剤から発 生する一酸化窒素が作用することで赤色を呈するのであり、特定加熱食肉製品における赤色の発色の機序も効果も全く異なる。よって、乙12発明を特定加熱食肉製品に適用して奏功するとは理解しないしその動機付けもない。さらに、乙14発明には、「炭酸ガスを発生しない型の脱酸素剤を使用した場合あるいはN2ガス、CO2ガス置換によって容器内の酸素濃度が数%~10数%程度に 達すると生肉中のミオグロビンはメト化して急速に赤身が失われて褐変する。」 との記載があり、原告らの実験結果でも特定加熱食肉製品について窒素ガスで置換して脱酸素すると加熱食肉製品では赤色を維持できる一方で特定加熱食肉製品では褐色になる。当業者であれば、乙12発明の加熱食肉製品という構成を特定加熱食肉製品に変更すれば、ローストビーフが褐変して元に戻らなくなることを理解しているから、乙12発明の構成を加熱食肉製品から特定加熱 食肉製品に変更することに動機付けがなく、むしろ阻害要因が存在する。 さらに、本件発明が包装状態での色合いを問題にしているのに対し,乙12発明は,開封30分後の色合いを問題にしている点についても異なる。 相違点1について,乙13発明は,メトミオグロビン還元活性がある生肉に関するものである上,冷凍庫に備えられた酸素減少手段で冷凍庫内の酸素を減 少させて食品を冷凍庫で冷凍する装置に関するものであり,本件発明と技術分野がかけ離れている。 相違点2について,本件発明では,二酸化炭素を発生させる脱酸素剤を必須とはしておらず,二酸化炭素を発生させずとも肉の色調を保持できるものであるから,二酸化炭素の発生を必要とする乙14 れている。 相違点2について,本件発明では,二酸化炭素を発生させる脱酸素剤を必須とはしておらず,二酸化炭素を発生させずとも肉の色調を保持できるものであるから,二酸化炭素の発生を必要とする乙14発明は明らかに作用機序が異な り,同発明を組み合わせても本件発明には至らない。 また,①乙14に記載してあるのは生肉に関する技術であって,当業者であれば,メトミオグロビン還元酵素をはじめとする酵素が失活し,生肉中では生存していた微生物等も死滅している特定加熱食肉製品に生肉の技術を適用するとは考えられない。さらに,②乙12発明の方法で十分長持ちするローストビ ーフを製造できるのにそのほとんどの構成を変更して新たなローストビーフの製造方法を模索するとは考え難い。また,③金属探知機が異物混入の唯一の探知方法ではない。そもそも金属探知機による異物混入検査は被告自身も行っていない。 さらに,乙14発明の実施例では包装から13日後までしか検証していない が,本件発明は,4℃以下では30日間保存できるものであり(【0039】), 実施例でもスライス加工から20日後まで行われており,明らかに予測しがたい顕著な効果が出ている。 また,乙12発明ではガス置換法が必須の構成とされており,脱酸素剤単独の使用に変更する動機付けはない。 相違点3について,被告の主張では,どのような方法で本件発明の本件ミオ グロビン割合に至るのかが不明である。本件発明は,従来議論されてきた生肉ではなく,特定加工食肉製品において,理想的なミオグロビン含量を持つ製品を製造することに成功したものであり,本件ミオグロビン割合は適宜設定できる数値限定ではない。本件発明の製造品は,発明者の努力により世界で初めて製作されたものであり,これを測定すること 含量を持つ製品を製造することに成功したものであり,本件ミオグロビン割合は適宜設定できる数値限定ではない。本件発明の製造品は,発明者の努力により世界で初めて製作されたものであり,これを測定することによって導き出したのであるから, 容易に導き出せるものではない。 差止めの対象(争点3)(原告らの主張)本件発明によって製造される特定加工食肉製品は,スライスした後も鮮やかな赤みを保持し続ける特殊なものであり,その実施品である原告製品以前には, スライスされた状態でパック詰めされた長期間変色せずに流通させられるローストビーフは存在しなかったことからすると,「その物が特許出願前に日本国内において公然知られた物でない」といえ,特許法104条の適用を受けるから,方法によって差止め対象物を特定する必要はない。 (被告の主張) 本件発明は,物を生産する方法の発明であり,生産方法を特定しない請求の趣旨は過剰な差止めを要求するものであり,認められるべきではない。 仮に被告製品が本件発明の方法によって生産される物と同一であったとしても,特許出願前に国内において公知であったから,特許法104条に基づく推定を受けない。 原告スターゼンは,原告シンコウフーズから損害賠償請求権を取得したか (争点4)(原告らの主張)原告シンコウフーズは,令和2年6月12日付訴え変更申立書をもって,原告スターゼンに対して被告に対する被告製品販売に係る損害賠償請求権を譲渡した。 債権譲渡については,債権譲渡の事実のみが主要事実であり,それ以上の主張は必要ない(最高裁昭和41年9月22日判決(民集20巻7号1392頁)参照)。本件については,債権譲渡は無償で行われ,実際に弁護士が代理しているのであるから,信託 が主要事実であり,それ以上の主張は必要ない(最高裁昭和41年9月22日判決(民集20巻7号1392頁)参照)。本件については,債権譲渡は無償で行われ,実際に弁護士が代理しているのであるから,信託法10条に反する余地はない。また,原告ら訴訟代理人は,原告シンコウフーズ及び原告スターゼンから事前に債権譲渡につき承諾を 得ているから,双方代理は有効である。 (被告の主張)原告らが譲渡として主張するものは原告シンコウフーズから原告スターゼンに対する一方的な意思表示にすぎず,合意の体をなしていない。また,原告らは,債権譲渡の取得原因事実について具体的に主張しておらず,失当である。 原告らが無償で債権譲渡したとは考えにくいため,同債権譲渡は原告スターゼンに訴訟行為をさせることを主たる目的とした訴訟信託(信託法11条)に該当する疑いが強い。また,原告らの主張は双方代理に当たり,民法上,原則として許されていない。 損害額(争点5) (原告らの主張)ア被告の損害を特許法102条2項に基づき計算すると,次のとおりである。 被告は,被告製品をイトーヨーカ堂で販売しており,被告のイトーヨーカ堂への販売価格はイトーヨーカ堂の一般消費者に対する販売価格の70%を下らない。被告のイトーヨーカ堂への販売価格は次のとおりである。 被告製品1 369円×70%=258円(税抜き) 被告製品2 550円×70%=385円(税抜き)被告製品3 680円×70%=476円(税抜き)被告製品の販売個数は,次のとおりと推計できる(以下,被告製品の販売期間である平成30年7月から令和2年2月10日までを「損害期間」という。) 被告製品1 平成30年7月から令和2年2月まで130万0200個被告製品2 平成3 きる(以下,被告製品の販売期間である平成30年7月から令和2年2月10日までを「損害期間」という。) 被告製品1 平成30年7月から令和2年2月まで130万0200個被告製品2 平成30年7月から令和2年2月まで197万0400個被告製品3 平成30年7月から同年11月まで10万8600個そして,被告製品1,2の利益率は45%を下らず,被告製品3の利益率は40%を下らない(国産牛を用いており,被告製品1,2より原価率が高 いと考えられる。)。 よって,原告スターゼンの損害額は,次のとおりとなる。 被告製品1258円×130万0200個×45%=1億5095万3220円被告製品2 385円×197万0400個×45%=3億4137万1800円被告製品3476円×10万8600個×40%=2067万7440円合計5億1300万2460円これに,消費税10%(損害賠償請求権も消費税課税対象になるため,消 費税相当額も損害に含まれる。また,損害賠償金は食品ではないから軽減税率の対象にはならず,10%である。)を加算すると5億1300万2460円となる。 また,弁護士・弁理士費用相当損害金は10%を下らないから,5643万0270円となる。 イ訴え提起時である平成30年11月19日から発生していた遅延損害金 の計算は以下のとおりである。 被告による平成30年11月までの販売個数の合計は次のとおりである。 被告製品1 31万5000個被告製品2 50万1600個被告製品3 10万2000個 そうすると,平成30年11月19日までの消費税込みの損害額は,被告製品1 258円×31万5000個×45%×110%=4022万8650円被告製品2 被告製品3 10万2000個 そうすると,平成30年11月19日までの消費税込みの損害額は,被告製品1 258円×31万5000個×45%×110%=4022万8650円被告製品2 385円×50万1600個×45%×110%=9559万2420円 被告製品3 476円×10万2000個×40%×110%=2136万2880円合計1億5718万3950円これに,10%の弁理士・弁護士費用を加算すると1億7290万2345円となるから,同額については平成30年11月19日から年5分の遅延 損害金が生じている。 その余の請求である4億4783万0631円については,被告製品の販売終了日の翌日である令和2年2月11日からの遅延損害金を請求する。 ウ本件特許権を有する原告スターゼンが本件発明を実施しているのであるから,「侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろう という事情が存在する」というべきである。特許法102条2項により,被告の利益の額が原告らの損害額であると推定される。同推定の基礎としては,原告スターゼンがイトーヨーカ堂に原告製品を販売して同等の利益を得られる見込みがあることが認められる必要はないというべきである。 また,被告はイトーヨーカ堂に対して,非鉄系脱酸素剤を用いて本件発明を 実施することによってローストビーフの赤みが明らかに強くなることを訴求 してイトーヨーカ堂のオリジナル商品として採用された。よって,イトーヨーカ堂には,本件発明を唯一適法に実施することができる原告スターゼンに対してイトーヨーカ堂のオリジナル商品の製造を委託する理由があったといえる。 原 のオリジナル商品として採用された。よって,イトーヨーカ堂には,本件発明を唯一適法に実施することができる原告スターゼンに対してイトーヨーカ堂のオリジナル商品の製造を委託する理由があったといえる。 原告スターゼンがイトーヨーカ堂と共同開発を行えば,その商品は原告スターゼンがイオンと共同開発した商品と同じ商品になることはないのであるから, 原告スターゼンがイオンに対してイオンと共同開発したローストビーフを販売していることは,原告スターゼンが新たにイトーヨーカ堂ともローストビーフの共同開発をしても支障はない。また,イオンは,原告スターゼンが競業他社の商品に本件発明の技術を用いても問題視しない。このことは,原告スターゼンが,コンビニ大手ローソンの傘下にある成城石井に本件発明の実施品を販 売していることからも明らかである。 エ次のとおり,被告が主張する推定覆滅事由は存在しない。 イトーヨーカ堂は,本件発明の実施品である被告製品以外に密封タイプのローストビーフのスライスを購入していないから,被告が列挙する商品はいずれも競合品たりえない。また,被告の主張のとおりであれば,イトーヨー カ堂は,加熱食肉製品を販売していないから加熱食肉製品は競合品に当たらない。そもそも,被告は,市場占有率などの競合の有無や程度を示す事情について明らかにしておらず,競合関係の立証は一切ない。 特許法102条2項の推定を覆滅するために必要な営業努力は,通常の範囲を超える格別の工夫や営業努力に限られる。被告にとってイトーヨーカ堂 が最大の販売先であったとしても,そのことは,上記営業努力を示すものではない。イトーヨーカ堂がプライベートブランド(以下「PB」という。)のみを販売しているのは,自社の収益を確保するために都合が良いからであり,また,被告が ても,そのことは,上記営業努力を示すものではない。イトーヨーカ堂がプライベートブランド(以下「PB」という。)のみを販売しているのは,自社の収益を確保するために都合が良いからであり,また,被告が選ばれたのは,被告の製品を高く評価しているからとは限らない。 被告製品のイトーヨーカ堂に対するサンプル導入決定報告書にも,ロース トビーフが脱酸素剤入りであることは大きく記載されているが,被告の主張する優れた特徴については言及がない。原告らによる本訴提起にもかかわらず,被告が被告製品の設計変更しなかったのは,イトーヨーカ堂の要望が本件発明の効果を満たすことにあったからであり,被告の製品に優れた特徴があったからではない。 イトーヨーカ堂が原告らによる本訴提起にもかかわらず被告製品の購入中止も被告に対する技術変更要請もしなかったのは,単に本件特許の実施品が欲しかったに過ぎない。イトーヨーカ堂が裁判所の心証開示後の設計変更に応じたのは,原告らがライセンス付与の和解を拒絶したため,やむをえず行ったことである。 被告は,本件発明の実施の効果の発現が限定的であると主張するが,本件発明の実施品と非実施品の肉食は明らかに異なっている。本件発明の実施に効果がないのであれば,被告は,平成30年8月14日に原告らから警告を受けた時点で脱酸素剤を除けばよかったにもかかわらず,これをしなかったのであるから,これは,本件発明に効果があったからに他ならない。 被告の設計変更後の商品の売上が設計変更前よりも伸びているとしても,これは,設計変更以前に本件発明による見た目の良さに惹かれて初回の購入をし,設計変更後もリピーターが設計変更品の需要を支えていること及びコロナ禍による外食控え,自宅におけるプチ贅沢需要が重なったからで れは,設計変更以前に本件発明による見た目の良さに惹かれて初回の購入をし,設計変更後もリピーターが設計変更品の需要を支えていること及びコロナ禍による外食控え,自宅におけるプチ贅沢需要が重なったからであると考えるのが相当である。 (被告の主張)ア原告らが主張する被告の利益の額については争う。 イ原告シンコウフーズからの損害賠償請求権の譲渡は有効ではないから,原告スターゼンの損害からはライセンス料相当損害金が控除されるべきである。また,102条2項の損害に消費税相当額を含める理由はなく,仮に加算すると しても,被告製品は食料品であるから税率は8%である。 ウ被告製品が製造されなかったとしても,次のとおり原告らが利益を得られたとはいえなかったから,特許法102条2項は適用されない。被告製品は,チームMD方式(小売業者が消費者情報を収集・分析し,その情報をメーカー側に報知することで,顧客ニーズに合った新商品を開発する方式)によりイトーヨーカ堂と共同して開発した,イトーヨーカ堂にしか販売していないイトーヨ ーカ堂のオリジナル商品である。そして,イトーヨーカ堂では,商品の種類に応じて,イトーヨーカ堂オリジナル商品のみを取り扱うか,メーカーの独自商品たるナショナルブランド商品(以下「NB商品」という。)も取り扱うかを厳格に検討しているところ,イトーヨーカ堂で取り扱っている密封タイプのローストビーフのスライス製品は,被告が納入する商品のみであり,イトーヨーカ 堂に同タイプのローストビーフを納入するには,同様の方式で開発された商品であったことが前提であったといえる。 原告スターゼンのグループ会社である,スターゼン販売株式会社は,被告製品の販売以前から直近に至るまで,イオンが開発,製造,販売の全工程につい で開発された商品であったことが前提であったといえる。 原告スターゼンのグループ会社である,スターゼン販売株式会社は,被告製品の販売以前から直近に至るまで,イオンが開発,製造,販売の全工程について責任を持つと表明しているPBである「トップバリュ」のローストビーフ製 品を販売してきた。イトーヨーカ堂はセブン&アイ・ホールディングス(以下「セブン&アイ」という。)の子会社であり,中核企業である。イオンとセブン&アイはライバル関係として周知であり,イトーヨーカ堂が,最大の競合相手であるイオンのPBのローストビーフ製品を製造している原告スターゼンに対して,商品開発情報等の開示が避けられないMD方式でイトーヨーカ堂のオ リジナル商品として,同じくローストビーフ製品の製造を委託するとは考え難い。他方,イオンの信頼を得てPBのローストビーフのスライス製品の全ラインアップの製造委託を受けている原告スターゼンが,完全競合関係に立つ製品をイトーヨーカ堂のオリジナル商品として,同時並行して開発,製造,供給することは考え難い。 エ推定覆滅事由としては,次の事情があった。 損害期間において,被告は,イトーヨーカ堂以外の小売業者に対して,NBとして,ローストビーフ(加熱食肉製品も,特定加熱食肉製品も含む。)を販売していた。また,他のメーカーでは,加熱食肉製品ではあるものの,本件損害期間の全期間において4種のローストビーフが販売されており,さらに4種のローストビーフ商品が本件損害期間の途中から販売開始された。 その他,販売時期が不明なものの,現時点でも販売されているものが複数ある。消費者には特定加熱食肉製品と加熱食肉製品の区別がつくとは考えられない。 次のとおり,被告製品の販売による利益に本件発明の寄与度は認められ が不明なものの,現時点でも販売されているものが複数ある。消費者には特定加熱食肉製品と加熱食肉製品の区別がつくとは考えられない。 次のとおり,被告製品の販売による利益に本件発明の寄与度は認められない。 被告とイトーヨーカ堂は昭和47年から取引を開始し,昭和59年度には,イトーヨーカ堂グループとの取引額は約15%を占め,他の主要販売先の取引額を大きく上回り,イトーヨーカ堂が最大の販売先であることは現在に至るまで変わっていない。イトーヨーカ堂は,平成2年頃からチームMD方式で商品の開発,改良を進めてきたが,ローストビーフについては,一貫して 被告をパートナーとして選び続けてきた。 被告製品は,真空調理した後に真空袋を開封して牛塊肉を招請することで焼成香が残るようにするなど,様々な工夫を凝らしている。 被告製品は,チームMD方式で開発され,何度もイトーヨーカ堂の要請に応じてリニューアルを重ねてきた。被告は,本訴提起後,直ちにイトーヨー カ堂に事情を伝えたが,イトーヨーカ堂は,被告製品の購入を中止することも,技術変更を要請することも一切せずに被告製品の購入を続けた。被告は,令和2年2月12日出荷分から,脱酸素剤の入っていないローストビーフ製品に切り替えたが,イトーヨーカ堂は従前と変わらず購入している。よって,被告製品が本件発明の実施品であることは,イトーヨーカ堂の購入動機に全 く影響しておらず,イトーヨーカ堂が被告製品を購入したのは,それが被告 の製造する製品であるからに他ならなない。 次のとおり,被告製品の販売による利益に本件発明の効果は寄与していない。 メトミオグロビンが40%を超えると,褐色を呈し,また,消費者の需要度が著しく低下するとされているところ,原告らによる被告製品の測定結果 品の販売による利益に本件発明の効果は寄与していない。 メトミオグロビンが40%を超えると,褐色を呈し,また,消費者の需要度が著しく低下するとされているところ,原告らによる被告製品の測定結果 (甲120)によれば,いずれのサンプルも3分の1または3分の2の割合でメトミオグロビンが40%を超える部位を含んでおり,被告製品において,「褐変させること無く長期に亘って優れた肉食を維持するように保存できる」という本件発明の効果の発現は極めて限定的である。 また,令和2年2月11日に本件特許を利用しない商品に設計変更を行っ たところ,設計変更をした後の各月ごとの売上は,設計変更以前よりもほとんどの月において上回っており本件発明が消費者の購入意欲に一切寄与していないことは明らかである。 第3 当裁判所の判断 1 本件発明について 本件明細書には、以下の記載がある。 【技術分野】【0001】本発明は、スライスされたローストビーフ等の特定加熱食肉製品、当該特定加熱食肉製品の製造方法及び当該特定加熱食肉製品の保存方法に関する。 【背景技術及び発明が解決しようとする課題】【0002】特定加熱食肉製品とは、その中心部の温度を63℃で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法以外の方法による加熱殺菌を行った食肉製品(乾燥食肉製品及び非加熱食肉製品を除く)をいうと定義されている。 より具体的に、特定加熱食肉製品としては、一例としてローストビーフを挙げ ることができる。このような特定加熱食肉製品は、スライスされた状態で真空パックや含気パックで保存されると、短時間で褐変してしまい商品価値が損なわれる。そこで、特定加熱食肉製品はスライスされる前のブロックの状態で流通することが一般的で 肉製品は、スライスされた状態で真空パックや含気パックで保存されると、短時間で褐変してしまい商品価値が損なわれる。そこで、特定加熱食肉製品はスライスされる前のブロックの状態で流通することが一般的であった。 【0003】 また、ブロック状態で流通した特定加熱食肉製品は、そのままの状態で販売されるか、店内生食厨房がある一部の小売店舗内でスライスされ、蓋付きトレイにて販売される。また一部店舗では、センターパック供給も行なっている。 いずれにしても、特定加熱食肉製品の賞味期限は、スライス加工日から2~3日程度と短く設定される。また、このようなスライス加工やトレイ内へのパッ ク作業自体がコスト高の要因となる。さらにこのようなスライス加工やトレイ内へのパック作業には、高度な衛生管理が必要であり、これもコスト高の要因となる。 【0004】以上のように、特定加熱食肉製品をスライスされた状態で長期に亘って保存 できる技術があれば、上述したコストの問題や衛生管理の問題を解決することができる。しかし、上述のように、特定加熱食肉製品はスライスしてから短時間で褐変してしまうこと、また、この褐変を防止する技術が無いために上述したような問題は未解決であった。 【0005】 特定加熱食肉製品とは異なる生肉に関する従来技術として、特許文献1及び2を挙げることができる。特許文献1には、生肉の色の変化について以下のように述べている。すなわち、牛肉等の赤身の新鮮な肉は、筋肉中の還元型ミオグロビンによる紫がかった暗赤色を呈している。この新鮮肉を空気にさらすと、還元型ミオグロビンと酸素が結合してオキシミオグロビンとなり、きれいな赤 色へと変化し、さらに、長時間空気にさらすと、ヘム鉄が酸化されてメトミオ グロビンに変化し を空気にさらすと、還元型ミオグロビンと酸素が結合してオキシミオグロビンとなり、きれいな赤 色へと変化し、さらに、長時間空気にさらすと、ヘム鉄が酸化されてメトミオ グロビンに変化し、肉色は次第に褐色となる。いわゆる肉質の低下の目安となる"メト化"の現象である。そして、特許文献1に開示された技術は、・・・・・【0008】上述のように、褐変した生肉に関する肉色を制御する方法(特許文献1)や生肉の肉色を維持した冷蔵保存方法(特許文献2)は知られているものの、特 定加熱食肉製品をスライスした後の褐変を防止して優れた肉色を維持して保存する技術は全く知られていなかった。そこで、本発明は、上述した実情に鑑み、スライスした後の褐変を防止して優れた肉色を維持した特定加熱食肉製品及びその製造方法を提供することを目的とし、また、褐変を防止して優れた肉色を維持したスライスされた特定加熱食肉製品の保存方法を提供することを 目的とする。 【課題を解決するための手段】【0009】上述した目的を達成するため、本発明者等が鋭意検討した結果、特定加熱食肉製品をスライスした後、所定の手順及び条件にて処理することでスライスさ れた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビン、オキシミオグロビン及びメトミオグロビンの存在比を所望の範囲に制御することができ、その結果、長期保存によっても褐変することなく良好な色調を維持できることを見いだし、本発明を完成するに至った。 【発明の効果】 【0014】本発明に係る特定加熱食肉製品は、スライスされた状態であるにも拘わらず、褐変すること無く長期に亘って優れた肉色を維持することができる。特に、本発明に係る特定加熱食肉製品は、密封された包材から取り出されと鮮やかな赤色が回復し、包材内に イスされた状態であるにも拘わらず、褐変すること無く長期に亘って優れた肉色を維持することができる。特に、本発明に係る特定加熱食肉製品は、密封された包材から取り出されと鮮やかな赤色が回復し、包材内に保存された状態よりも優れた肉色を呈することができる。 【0015】 また、本発明に係る特定加熱食肉製品の製造方法によれば、褐変すること無く長期に亘って優れた肉色を維持できる、スライスされた特定加熱食肉製品を製造することができる。すなわち、本発明によれば、極めて商品価値の高い特定加熱食肉製品を製造できるようになる。 【0016】 さらに、本発明に係る特定加熱食肉製品の保存方法は、スライスされた特定加熱食肉製品を褐変させること無く長期に亘って優れた肉色を維持するように保存できる。したがって、本発明に係る特定加熱食肉製品の保存方法を適用することによって、スライスされた特定加熱食肉製品の商品価値を長期間に亘って維持することができる。 【発明を実施するための形態】【0018】本発明において特定加熱食肉製品とは、一般に食品規格基準にて規定されるように、その中心部の温度を63℃で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法以外の方法による加熱殺菌を行った食肉製品(乾燥食肉 製品及び非加熱食肉製品は除く)を含む意味とする。 【0020】ローストビーフ等の特定加熱食肉製品は、肉塊を塩やコショウ、その他香辛料や調味料等により調味し、表面全体を焼きあげて表面に焼き色をつけ又は焼かずに、その後、肉塊全体を緩やかな条件で加熱することで製造される。・・・ 【0021】本発明では、先ず、上述したように加熱加工された特定加熱食肉製品をスライスする。スライスする際の肉厚としては、目的とする商品形態 やかな条件で加熱することで製造される。・・・ 【0021】本発明では、先ず、上述したように加熱加工された特定加熱食肉製品をスライスする。スライスする際の肉厚としては、目的とする商品形態等に応じて適宜設定することができ、何ら限定されない。 【0022】 本発明では、スライス加工の後、特定加熱食肉製品を酸素化する。ここで酸 素化とは、酸素含有気体中にスライスされた特定加熱食肉製品を置くことにより、還元型ミオグロビンが酸素と結合(酸素化)してオキシミオグロビンとなることを意味する。すなわち、酸素化処理によって、スライス直後の特定加熱食肉製品に含まれる還元型ミオグロビンが減少しオキシミオグロビンが増加することとなる。これは、特定加熱食肉製品における断面がスライス直後の紫赤 色から鮮赤色に変化する現象として捉えることもできる。ただし、スライスされた特定加熱食肉製品を酸素含有気体に長時間放置すると、オキシミオグロビンが更に酸化されメトミオグロビンの割合が増加し、特定加熱食肉製品の断面が褐変する。 【0023】 したがって、スライス加工の後、特定加熱食肉製品を酸素化は、メトミオグロビンの割合が増加する前に終了することが好ましい。例えば、スライス加工の後、空気に特定加熱食肉製品をさらすことで酸素化処理を行う場合、例えば30~90分、好ましくは50~70分、より好ましくは60分の処理時間とすることができる。上記範囲の処理時間とすることで、メトミオグロビンの割 合が増加することなく、オキシミオグロビンが増加して強い赤みを呈することができる。 【0024】また、酸素化の処理条件については、使用する肉の種類や部位、個体差によるミオグロビン総量の違いにより条件を設定することができる。例えば、酸素 て強い赤みを呈することができる。 【0024】また、酸素化の処理条件については、使用する肉の種類や部位、個体差によるミオグロビン総量の違いにより条件を設定することができる。例えば、酸素 化処理は、特定加熱食肉製品の断面におけるスライス直後の紫赤色が鮮赤色に変化する状態を目視により確認し、十分に赤色を呈した段階で処理を終了しても良い。 【0025】なお、特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビン、オキシミオグロビン 及びメトミオグロビンの存在割合は、以下のようにして、反射スペクトル法に より算出することができる。すなわち、一例として「食肉の科学 Vol. 40、 No.2、(1999)、p213-214」に詳述されているように、スライス面における480nm、525nm、560nm 及び580nm の吸光度を測定する。測定した各数値を下記式に代入して、還元ミオグロビン及びメトミオグロビンの割合を算出することができる。 【0026】【数1】 【0027】なお、上記式の右辺は上から、480nm の吸光度を525nm の吸光度で割った 値、560nm の吸光度を525nm の吸光度で割った値、及び580nm の吸光度を525nm の吸光度で割った値を代入すること意味している。また、上記式の左辺における、o はオキシミオグロビンの割合、r は還元ミオグロビンの割合、mはメトミオグロビンの割合を意味している。この方法において使用する分光光度計としては、特に限定されず、上述した各波長の吸光度を測定できる装置を 使用することができる。 【0028】また、特定加熱食肉製品の色調については、分光色差計を使用してL*a*b*表色系にて評価することができる。すなわち、特定加熱食肉製品のスラ きる装置を 使用することができる。 【0028】また、特定加熱食肉製品の色調については、分光色差計を使用してL*a*b*表色系にて評価することができる。すなわち、特定加熱食肉製品のスライス面における色調は、L*値:「明度指数」、a*値及びb*値:「クロマティクネス指数」 によって定量的に評価できる。なお、クロマティクネス指数のうちa*値は赤の色相を示しており、b*値は黄の色相を示している。また、分光色差計としては、JISZ 8722 にて推奨される「反射物体の照射および受光の幾何条件」を満たし、JISZ 8720 に規定される光源D65/2°を有し、JISZ 8729 に規定される L*a*b*系によって物体色を表示でき、測定波長400~700nm 及び間隔10nmであるハロゲンランプを備える装置を使用することが好ましい。例えば、分光色差計としては、例えば日本電色工業社製の商品名:NF999 を使用することができる。なお、分光色差系としては、その他にもコニカミノルタセイジング社製、スガ試験機社製及び村上色彩研究所社製の装置を使用することもできる。 また、分光色差計で測定する場合、特定加熱食肉製品を包材に封入した状態で測定しても良い。 【0029】また、分光色差計として例示した日本電色工業社製の商品名:NF999 は、L*a*b*表色系にて色調を評価できるとともに、上述した各波長の吸光度を測定 することができる。すなわち、日本電色工業社製の商品名:NF999 は等の分光色差計には、上述した各波長の吸光度を測定する分光光度計として機能するものもある。よって、特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビン、オキシミオグロビン及びメトミオグロビンの存在割合と、特定加熱食肉製品の色調とを同一の装置に 吸光度を測定する分光光度計として機能するものもある。よって、特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビン、オキシミオグロビン及びメトミオグロビンの存在割合と、特定加熱食肉製品の色調とを同一の装置によって測定することができる。 【0030】上述のように、スライスされた特定加熱食肉製品を酸素化した後、スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する。この工程では、包材内に密封された気体に含まれる酸素及び特定加熱食肉製品のオキシミオグロビンに結合した酸素を非鉄系脱酸素材によ り吸収する。なお、この工程では、スライスされた特定加熱食肉製品を、ポリプロピレン等の樹脂等を原料とした食品包装容器(トレイ)に載置し、スライスされた特定加熱食肉製品を当該容器ごと包材に密封しても良い。 【0031】ここで、ガスバリア性を有する包材としては、特に限定されず、従来、食品 特に食肉製品に使用されているもの挙げることができる。ガスバリア性を有す る包材としては、ガスバリア性を有する樹脂材料からなる包材を挙げることができる。特にガスバリア性としては、酸素に対するバリア性能を意味する。すなわち、本発明においては、酸素に対するバリア性を有する包材を使用することが好ましい。より具体的に、酸素に対するバリア性を有する樹脂材料としては、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポ リアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリビニルアルコールを挙げることができる。なお、樹脂材料における酸素に対するバリア性は、酸素透過係数に基づいて判断することができる。 【0032】本工程では、非鉄系脱酸素材を使用して上述のように脱酸素処理を行ってい る。非鉄系 なお、樹脂材料における酸素に対するバリア性は、酸素透過係数に基づいて判断することができる。 【0032】本工程では、非鉄系脱酸素材を使用して上述のように脱酸素処理を行ってい る。非鉄系脱酸素材としては、アスコルビン酸又はその塩を主剤とし、これにアルカリ金属の炭酸塩、金属化合物及び水を添加し、無機フィラーと混合したものを挙げることができる。ここで、無機フィラーとしては、組成中の鉄分6000ppm 以下であるものが好適に用いられる。より具体的に、非鉄系脱酸素材としては、三菱化学社製のエージレスを使用することができる。エージレス のなかでも、複合機能タイプ、すなわち酸素吸収と同時に炭酸ガスを発生するタイプ(GT タイプ)を使用することが好ましい。酸素吸収と同時に炭酸ガスを発生するタイプを使用することで、包材の収縮といった問題を回避できる。 包材の収縮を回避することで、特定加熱食肉製品からのドリップの発生を防止することができる。 【0034】この工程では、非鉄系脱酸素材を使用することで、包材内に密封された気体に含まれる酸素及び特定加熱食肉製品のオキシミオグロビンに結合した酸素を吸収している。これにより、包材内の酸素濃度が検出限界以下になったときに特定加熱食肉製品に含まれる各ミオグロビンの割合を所望の範囲に制御す ることができる。すなわち、特定加熱食肉製品のスライスされた面において、 全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上という割合に調整することができる。 【0035】このとき仮に、鉄系脱酸素材のみを使用して包材内の酸素及び特定加熱食肉 製品のオキシミオグロビンに結合した酸素を吸収すると、短時間に酸素 以上という割合に調整することができる。 【0035】このとき仮に、鉄系脱酸素材のみを使用して包材内の酸素及び特定加熱食肉 製品のオキシミオグロビンに結合した酸素を吸収すると、短時間に酸素吸収が行われ、オキシミオグロビンの割合を12%以上に維持することができないし、場合によってはメトミオグロビンの割合が50%を超えることもある。その結果、特定加熱食肉製品のスライス断面は褐変してしまう。 【0036】 しかし、本工程では、鉄系脱酸素材を補助的に利用して、包材内の酸素及び特定加熱食肉製品のオキシミオグロビンに結合した酸素を吸収する処理時間を短縮することができる。この場合でも、上述した非鉄系脱酸素材を使用しているため、包材内の酸素濃度が検出限界以下になったときに、特定加熱食肉製品のスライスされた面において、全ミオグロビン量を100%とした場合のオ キシミオグロビン割合を12%以上、メトミオグロビン割合を50%未満、還元型ミオグロビン割合を34%以上とすることができる。鉄系脱酸素材を使用を補助的に使用する場合、鉄系脱酸素材は、非鉄系脱酸素材と鉄系脱酸素材の合計量を100%としたときに37.5%以下とすることが好ましい。鉄系脱酸素材をこの範囲で使用することで、上述した褐変を防止しながら脱酸素処理 の時間を短縮できる。 【0038】本工程は、包材内に密封された気体に含まれる酸素及び特定加熱食肉製品のオキシミオグロビンに結合した酸素を吸収するのに十分な時間で実施すればよい。より具体的に、本工程では、包材内の酸素濃度が検出限界以下になるま で行えばよい。本工程が終了したら、包材内の非鉄系脱酸素材、或いは非鉄系 脱酸素材及び鉄系脱酸素材を取り除いても良いし、そのまま包材内に入れておいても良い。なお、 限界以下になるま で行えばよい。本工程が終了したら、包材内の非鉄系脱酸素材、或いは非鉄系 脱酸素材及び鉄系脱酸素材を取り除いても良いし、そのまま包材内に入れておいても良い。なお、非鉄系脱酸素材や鉄系脱酸素材を包材内から取り除く場合、非鉄系脱酸素材や鉄系脱酸素材を包材の一方端部に寄せておき、非鉄系脱酸素材や鉄系脱酸素材と特定加熱食肉製品との間をヒートヒールした後、非鉄系脱酸素材や鉄系脱酸素材を含む部分を削除する方法が挙げられる。この方法によ れば、包材を開封して密封状態を破ることなく、非鉄系脱酸素材や鉄系脱酸素材を取り除くことができる。なお、非鉄系脱酸素材や鉄系脱酸素材を包材内から取り除く場合、一旦包材を開封して密封状態を破る場合であっても、非鉄系脱酸素材や鉄系脱酸素材を迅速に取り除き直ちに密封することで、特定加熱食肉製品の肉色に変化はなく問題が無い。 【0039】このように、本工程が終了したことで、特定加熱食肉製品は優れた肉色の状態を維持して保存することができる。このとき、保存の形態は、冷蔵保存でもよいし、チルド保存でもよいし、冷凍保存でもよい。ここで、特定加熱食肉製品を冷蔵保存する場合には4℃以下で30日間、好ましくは25日間、更に好 ましくは20日間、最も好ましくは15日間保存することができる。・・・【0041】特に、非鉄系脱酸素材や鉄系脱酸素材を包材から取り除いた後は、この真空パックとして保存することが好ましい。真空パックとすることによって、一旦、包材の密封が破られたとしても、空気中の酸素により各種ミオグロビンの割合 が変動する(酸化)ことを防止できるからである。なお、非鉄系脱酸素材や鉄系脱酸素材を包材に載置した状態で、真空パックとしてもよい【0042】以上のように、本 より各種ミオグロビンの割合 が変動する(酸化)ことを防止できるからである。なお、非鉄系脱酸素材や鉄系脱酸素材を包材に載置した状態で、真空パックとしてもよい【0042】以上のように、本発明によれば特定加熱食肉製品を新規な方法で処理して保存することができる。上述したように、スライスされた特定加熱食肉製品を非 鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封して酸素を吸収する と、スライスされた特定加熱食肉製品を酸素化したときと比較して、赤色調のa*値及びb*値が若干低下する(すなわち、鮮明な鮮赤色からやわらかい赤色といった色調に変化する)。また、上述したように、スライスされた特定加熱食肉製品を保存すると、経日変化でもa*値が更に若干低下する。但し、上述した保存状態において、スライスされた特定加熱食肉製品は、褐変することなく本来 の赤色を呈しており、優れた商品価値を維持している。例えば、ローストビーフの場合、5日間(120時間)蛍光灯点灯下で、保管しても色調の変化は無く、鮮明な赤色を維持することができる。 【0043】上述のように保存されている、スライスされた特定加熱食肉製品は、包材を 開封して空気に曝すと、赤色調のa*値が上昇してより鮮明な鮮赤色を呈することとなる。この鮮明な鮮赤色は、長期に亘って維持することができる。 【0044】このような本発明による優れた効果は、上述した工程により特定加熱食肉製品を処理することで、包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、スライス された特定加熱食肉製品における全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となることによる。スライスされた特定加熱食肉製品を保存す における全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となることによる。スライスされた特定加熱食肉製品を保存する際に、急激な脱酸素処理によってオキシミオグロビンが12%未満となると、これに伴いメトミオグロビンの割合が50%を超えてしまい、不可 逆的に褐変してしまう。また、上述した工程により特定加熱食肉製品を処理することで、還元型ミオグロビンが34%以上とすることができるため、包材を開封して空気に曝すと鮮明な赤色が回復すると考えられる。 【実施例】【0045】 以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は 以下の実施例に限定されるものではない。 【0051】<ミオグロビン割合の算出>ローストビーフのスライス面の吸光度を測定することで、オキシミオグロビン、還元ミオグロビン及びメトミオグロビンの割合を算出した。この算出方法 については「食肉の科学 Vol. 40、 No. 2、(1999)、p213-214」に詳述されている。具体的には、日本電色工業社製、商品名:NF999 を使用して、480nm、525nm、560nm 及び580nm の吸光度を測定し、下記式に代入して、還元ミオグロビン及びメトミオグロビンの割合を算出した。 【0052】 【数2】 【0053】なお、上記式の右辺は上から、480nm の吸光度を525nm の吸光度で割った値、560nm の吸光度を525nm の吸光度で割った値、及び580nm の吸光度を 525nm の吸光度で割った値を代入すること意味している。また、上記式の左辺における、o はオキシミオグロビンの割合、r は還元ミオグロビンの割 吸光度で割った値、及び580nm の吸光度を 525nm の吸光度で割った値を代入すること意味している。また、上記式の左辺における、o はオキシミオグロビンの割合、r は還元ミオグロビンの割合、mはメトミオグロビンの割合を意味している。 【0054】<色調の測定> ローストビーフのスライス面の色調は、日本電色工業社製、商品名:NF999を使用して測定した。測定結果としては、L*値、a*値及びb*値が出力される。 なお、ローストビーフのスライス面の色調を測定する際、上述した包材を介して分光色差計を測定対象のスライス面に当てて測定した。 本件発明の意義前記によれば、本件発明の意義は次のとおりであると認められる。 特定加熱食肉製品は、スライスされた状態で真空パックや含気パックで保存されると、短時間で褐変してしまい商品価値が損なわれる。褐変した生肉に関する肉色を制御する方法や生肉の肉色を維持した冷蔵保存方法は知られてい るものの、特定加熱食肉製品をスライスした後の褐変を防止して優れた肉色を維持して保存する技術は全く知られていなかった。 本件発明は、特定加熱食肉製品をスライスした後、適切な手法による酸素化させる工程の後、ガスバリア性を有する包材で特定加熱食肉製品と非鉄系脱酸素材を適切な割合以上含む脱酸素剤を密封すると、酸素濃度が検出限界以下の 時に本件ミオグロビン割合という、望ましい赤みを帯びた色調となるミオグロビン割合となり、長期間にわたって赤みを帯びた望ましい色調のまま保管することができることを見出してされたものである。 2 被告製品は、構成要件B(還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程)を充足するか(争点1-1)について 特許請求の範囲には、還元型ミオグロビン 出してされたものである。 2 被告製品は、構成要件B(還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程)を充足するか(争点1-1)について 特許請求の範囲には、還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程が記載されているところ、その具体的な手法については何ら限定がされていない。そして、本件明細書には、酸素化について、「酸素含有気体中にスライスされた特定加熱食肉製品を置くことにより、還元型ミオグロビンが酸素と結合(酸素化)してオキシミオグロビンとなることを意味する。」(【0022】) と記載されている。そうすると、本件発明における酸素化とは、スライスされた特定加熱食肉製品を酸素含有気体中に暴露する工程であるといえる。 本件発明は、特定加熱食肉食品を優れた色調を維持したまま保管することを目的とするものである。そして、本件明細書の記載によれば、本件ミオグロビン割合になっていることが保存状態における優れた色調とされており(【00 44】参照)、酸素化の工程が、ミオグロビンの割合を変化させるものとされて いる(【0022】)。また、本件発明の最終的な目的が、ミオグロビン割合が構成要件D所定の酸素濃度が検出限界以下の条件下で本件ミオグロビン割合になるようにすることにあるところ、酸素濃度が検出限界以下の条件下でのミオグロビン割合が、密封前の酸素化の量に影響を受ける。これらの本件明細書の記載や本件発明の技術的意義からすると、本件発明における酸素化の工程は、 それによりスライスされた特定加熱食肉製品のミオグロビン割合が変化することによって、その後の脱酸素の工程とあいまって、同製品が所望の色調となるような、スライスされた特定加熱食肉製品を酸素含有気体中に暴露する工程をいうと解される。 製品のミオグロビン割合が変化することによって、その後の脱酸素の工程とあいまって、同製品が所望の色調となるような、スライスされた特定加熱食肉製品を酸素含有気体中に暴露する工程をいうと解される。 被告は、酸素化する「工程」という文言から、酸素化する工程は単なる自然 現象ではなく目的を伴う作為があることが必要であると主張する。 被告の上記主張について、製造者が対象に何らかの行為を加えるという作為が必要であるとの趣旨と解したとして、本件明細書においては、酸素を含む気体に暴露して一定時間放置することをもって酸素化の一態様とすることが記載されているから(【0022】)、本件明細書によれば、本件発明における酸素 化については、酸素を含む空気に触れさせれば足り、特別な操作は不要であることが記載されていると認められる。また、被告の上記主張について、工程が酸素化のみを目的とするものであることが必要であるとの趣旨と解しても、特定加熱肉食品が酸素に暴露されていれば、その工程がパッキング等の別の目的を併存して有していたとしても、本件発明の酸素化する工程の技術的意味から も、その工程の機能を果たしている。そして、構成要件D所定の酸素濃度が検出限界以下の状態で本件ミオグロビン割合になるように行う酸素化の具体的な方法、時間は、肉の種類、暴露される酸素の濃度、密閉される容器の容積、肉の表面積、用いる脱酸素剤の種類及び量など種々の要素によって変わり得る(【0024】)。パッキング等の目的のために空気に暴露されたものであって も、結果として、その後の工程と相まって最終的に酸素濃度が検出限界以下に なった時に所望のミオグロビン割合になる場合には、それ以上酸素化のための追加の暴露が不要になるといえるから、本件発明の酸素化の技術 、その後の工程と相まって最終的に酸素濃度が検出限界以下に なった時に所望のミオグロビン割合になる場合には、それ以上酸素化のための追加の暴露が不要になるといえるから、本件発明の酸素化の技術的意義からも、それを本件発明の酸素化する工程から除外すべき理由はなく、また、酸素化のみを目的とする別途の工程を設けることが必要である理由はないと解される。 被告は、酸素化させる工程について「例えば30~90分、好ましくは50 ~70分、より好ましくは60分の処理時間とすることができる。」との本件明細書の記載(【0023】)などを根拠に、30分から90分程度、意図的に酸素含有気体中に暴露することと解するべきであると主張する。しかし、本件明細書には、「酸素化の処理条件については、使用する肉の種類や部位、個体差によるミオグロビン総量の違いにより条件を設定することができる。」(【00 24】)との記載がある。本件明細書の記載によっても、本件発明では、適切な酸素化のための暴露時間は種々の条件によって変わることは当然に予定されており、また、各種条件に応じて暴露時間が変化することは当業者にも明らかであるといえる。そして、本件明細書には、どのような肉、どのような条件下における構成要件Cの工程を前提にしても、30分から90分の暴露時間が適 切であることを示唆する記載があるものではなく、この記載は、特定の条件の場合の例を示したものであると解するのが相当である。被告の主張は採用できない。 さらに、被告は、本件特許の出願過程において、審査官が、原告シンコウフーズに対し、酸素化させる工程を密封工程よりも前に行われることが明確にな るようにするように補正を促したところ、これは、構成要件Bの酸素化する工程が、ローストビーフをスライスすれば必然的に フーズに対し、酸素化させる工程を密封工程よりも前に行われることが明確にな るようにするように補正を促したところ、これは、構成要件Bの酸素化する工程が、ローストビーフをスライスすれば必然的にローストビーフの断面は酸素含有気体である空気に触れることを含む構成ではないことを前提にしており、原告シンコウフーズが補正に応じたことから、構成要件Bの解釈において上記構成を含む旨主張することは禁反言によって許されないと主張する。 しかし、もともと酸素ガス不存在下でスライス等を行うのであればスライス 等によって必ず酸素化が生じるとはいえないといえるほか、上記審査官の補正の促しは、当該先行発明が、密封後、脱酸素化を行い、これによって生じた対象物が酸素不足によって適切な色調になっていないためその後酸素化して望ましい色調の製品を得るという発明であるところ、本件発明において酸素化の工程が密封工程の前のものであるのであれば、そのことを明確にするように促 したものと解される。前記補正の促しにおいては、密封工程の後に酸素化工程がなく、密封工程の前の段階で必要な酸素の供給が終了していることを明確化するかが問題とされていたと解され、スライス等に伴って酸素に暴露されることが酸素化の工程とはいえないことを前提としていたとは認めるに足りない。 そうすると、原告シンコウフーズが補正したことによって、原告らが本件訴訟 においてしている主張をすることが禁反言によって許されないとの被告の主張は、前提を欠くものといえる。 ●省略● 3 被告製品は、構成要件C(当該酸素化する工程の後、スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程) を充足するか(争点1-2)について 本件明細書の記載によ 件C(当該酸素化する工程の後、スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程) を充足するか(争点1-2)について 本件明細書の記載によれば、構成要件C所定の、特定加熱食肉製品を酸素化した後、包材で密封する工程(以下「密封工程」という。)には、密封された気体等の脱酸素化までが含まれることが前提とされており(【0030】、【0032】)、この脱酸素化は、包材内の酸素濃度が検出限界以下になるまで行うこ ととされている(【0038】)。このことは、構成要件Dで、ミオグロビンの割合の測定が、酸素濃度が検出限界以下の条件下で行われることからも裏付けられる。よって、本件発明で規定される方法では、包材内の酸素濃度が検出限界以下になることが前提となっているといえる。 そして、本件発明が、特定加熱食肉製品が短時間で褐変してしまうことによ って損なわれる「商品価値」を問題にし(【0002】、【0042】)、特定加熱 食肉製品の色調を問題にしていることからすると、本件発明は、特定加熱食肉製品の一般消費者への訴求力を問題にしていると解される。本件発明が、酸素濃度検出限界以下で、本件ミオグロビン割合で保存されている状態を優れた色調としているのであるから、本件発明で規定される方法は、包材内の酸素濃度が遅くとも消費者によって開封されるまでの間に酸素濃度検出限界以下に達 し、消費者に本件発明で規定される優れた色調を訴求する機会があることが前提になっていると解される。よって、本件発明の実施においては、遅くとも消費者が商品を開封するまでに酸素濃度が検出限界以下になっていることを要するといえる。 この点につき、被告は、被告方法の実施が認められるのは、被告製品に対し て被告 実施においては、遅くとも消費者が商品を開封するまでに酸素濃度が検出限界以下になっていることを要するといえる。 この点につき、被告は、被告方法の実施が認められるのは、被告製品に対し て被告の支配が及ぶ被告製品が出荷されるまでであり、最長でも、被告製品が販売先に納品される時点までであって、この時点までに酸素濃度が検出限界以下に達する必要があると主張する。しかし、本件発明の方法は、特定加熱食肉製品が脱酸素剤と共に包材で密封された後は、当該製品物品につき何ら操作が加えられないことが前提になっている(本件明細書には、脱酸素後に脱酸素剤 を撤去する方法も記載されているが、これは飽くまで任意の操作として規定されている。)。そうすると、本件発明の実施に係る作為は密封により完了するのであって、酸素濃度が検出限界になることはその結果にすぎないといえるものであり、被告が主張する時点までに結果が生ずることを要件とすべき理由はないと解される。被告の主張は採用できない。 「検出限界以下」の意義について検討すると、特許請求の範囲にも本件明細書にも、それについての具体的な記載はない。しかし、本件発明の実施例において用いられている酸素濃度の測定機器の分解能が0.1%であり、また、脱酸素剤により実施される脱酸素の完了が酸素濃度0.1%を基準としていることがうかがわれること(甲28~32)に照らすと、当業者は、酸素濃度が0. 1%以下となることをもって検出限界以下と理解すると認められる。 構成要件Cでは、使用する包材が「ガスバリア性」を有するとされているところ、特許請求の範囲には、包材の性質についてこれ以上の記載はない。本件明細書では、酸素に対するバリア性能を問題にしていて、特に包材の種類については限定されないと記載されており 有するとされているところ、特許請求の範囲には、包材の性質についてこれ以上の記載はない。本件明細書では、酸素に対するバリア性能を問題にしていて、特に包材の種類については限定されないと記載されており、ガスバリア性を有する包材に関する素材の例示はあるものの、酸素透過係数等の具体的な数値等、ガスバリア性の限 界等を規定する記載はない(【0031】)。 本件発明の目的は褐変を防止して優れた肉色を維持することにあるところ(【0008】)、褐変の原因が特定加熱食肉製品が酸素にさらされることにあり(【0005】)、また、いったん酸素濃度が検出限界以下になった後に、空気中の酸素が流入すると各種ミオグロビンの割合が変動し、そのことを望ましく ないこととしていること(【0041】)からすれば、本件発明の包材がガスバリア性を有することの技術的意義は、ガスバリア性を有することによって、脱酸素剤の封入することで酸素を検出限界以下にすることができ、かつ、検出限界以下に達した後はその状態を維持することにあると解するべきである。そうすると、本件発明において包材に要求されるガスバリア性は、既存の脱酸素剤 を用いて包材内の酸素濃度を検出限界以下にすることができ、かつ、それを維持できることをいうと解される。 以上を前提に被告方法が構成要件Cを充足するか検討する。 被告方法では脱酸素剤として、鉄系の脱酸素剤及び非鉄系の脱酸素剤が併用されており(甲14、15、弁論の全趣旨)、使用する脱酸素剤に、非鉄系脱酸 素剤を含む。前記認定のとおり、被告方法では、特定加熱食肉製品のローストビーフはスライス後、空気にさらされた後に包材に密封されている。そして、乙26によれば、被告製品は、十分な時間経過後には、酸素濃度が0.1%以下になっており、使用された包材 定加熱食肉製品のローストビーフはスライス後、空気にさらされた後に包材に密封されている。そして、乙26によれば、被告製品は、十分な時間経過後には、酸素濃度が0.1%以下になっており、使用された包材はいずれもガスバリア性のあるものであったことが認められる。 被告の実験結果によれば、被告製品1は概ね包装後26時間から少し経過し た後に0.1%に、被告製品2は概ね包装後13時間経過後に、被告製品3は、包装後26時間経過する少し前に0.1%に達したことが認められる(乙36。 なお、原告らも被告製品の消費期限である製造後96時間経過後の直前に酸素濃度が高くとも0.002%であったことを確認している。甲9)。他方で、被告製品1は、包装後、約9.5時間から13.5時間、被告製品2は、包装後、 約6.5時間から12.5時間経過後、被告製品3は、包装後11時間から13.5時間経過後の、概ね21時半~23時に、販売先であるイトーヨーカ堂の物流センターに納品されていたことが認められる(乙32~34)。これらによれば、イトーヨーカ堂の物流センターから各イトーヨーカ堂に配送されて店頭で消費者の目に触れる販売開始までの時間を考慮すると、被告製品2につ いては、その全てが販売開始までに酸素濃度が0.1%に達していたことが推認できる。他方で被告製品1、3については、その多くが販売開始時には0. 1%に達しておらず、その数時間後に上記の数値に達したことが推認できる。 もっとも、消費期限等を考慮すると、販売された商品のほとんどは酸素濃度が0.1%に達した後に販売され、消費者が開封したことが推認できる。 これらによれば、被告製品のうち、被告製品2についてはその全てが、被告製品1、3についても、そのほとんどが、酸素化の工程の後に、特定加熱食肉 後に販売され、消費者が開封したことが推認できる。 これらによれば、被告製品のうち、被告製品2についてはその全てが、被告製品1、3についても、そのほとんどが、酸素化の工程の後に、特定加熱食肉製品たるローストビーフが非鉄系の脱酸素剤とともにガスバリア性のある包材で密封され、酸素が検出限界以下である0.1%以下に達していたといえ、構成要件Cを充足することが認められる。 4 被告製品は、構成要件D(ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となる割合となっていること)を充足するか(争点1-3)について 構成要件Dは、包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、特定加熱食肉 製品のミオグロビンの割合が、本件ミオグロビン割合になっているというものであるところ、特許請求の範囲には、本件ミオグロビン割合となる時点の記載はなく、本件明細書にもこれを直接明示する記載はない。もっとも、本件発明は、褐変を防止して優れた肉色を維持した特定加熱食肉製品の保存を目的とする方法であり、本件明細書においては、本件ミオグロビン割合は、保存状態に おける望ましい色調として設定されていることが記載されており(【0044】参照)、また、酸素濃度が検出限界以下に達した後には、その後、その色調が継続することが記載されている(【0042】)。また、本件発明は、飽くまで優れた色調を従来よりも長く維持することに意義がある(優れた色調が永続しないことを前提にしていることは、本件明細書も前提としている(【0039】。)。 色調の変化がミオグロビンの割合の変化によっ た色調を従来よりも長く維持することに意義がある(優れた色調が永続しないことを前提にしていることは、本件明細書も前提としている(【0039】。)。 色調の変化がミオグロビンの割合の変化によって生じることからすると、色調が変化しないとは、ミオグロビン割合が変化しないことを意味するといえる。 一般的に肉の色調を変化させる要因として酸素の影響が大きいものとされ(【0005】)、本件明細書においても、酸素濃度が検出限界以下になった後に酸素が流入するとミオグロビン割合が変化する危険性があることが記載さ れ(【0041】参照)、本件発明では、酸素濃度が検出限界以下の状態で保存されることが当然の前提になっていることを併せ考えると、本件発明は、いったん酸素濃度が検出限界以下になり、それが保たれていれば、ミオグロビン割合の変化が従来の保存方法に比べると緩やかであり、そのため、優れた色調が維持される発明であると理解することができる。そうすると、本件発明は、酸 素濃度が検出限界以下の時点でひとたび本件ミオグロビン割合になっていれば、ミオグロビン割合の変動をもたらす酸素が検出限界以下になった時点から、ミオグロビンの割合は測定時の値とほとんど変わらず、優れた色調が維持されていることを前提とする方法の発明であるといえる。これらによれば、本件発明においては、酸素濃度が検出限界以下に達している期間において、本件ミオ グロビン割合が満たされる時点があれば足りるといえる。 対象物のミオグロビンの割合について、特許請求の範囲には、割合算定の具体的な方法についての記載はない。本件明細書には、反射スペクトル法による算出方法が言及されているが(【0025】)、その算定の前提となる対象物の吸光度の測定に用いる分光光度計については、特に限定され 体的な方法についての記載はない。本件明細書には、反射スペクトル法による算出方法が言及されているが(【0025】)、その算定の前提となる対象物の吸光度の測定に用いる分光光度計については、特に限定されるものではないとされていて(【0027】)、他に測定方法について何ら直接的な記載はない。 本件明細書では、色調の測定についても言及しており、これについて分光色差計を用いるものとしており、その測定方法について、「分光色差計で測定する場合、特定加熱食肉製品を包材に封入した状態で測定しても良い」との記載があり(【0028】)、実施例でも包材越しで測定した旨の記載がある(【0054】)。他方で、吸光度の測定については、包装越しであるか否かについて言 及がない(【0027】、【0051】~【0053】)。もっとも、構成要件Dは、酸素濃度が検出限界以下でのミオグロビン割合を問題にしている。包材を開封して対象ローストビーフを空気に触れさせてしまうと、短時間で酸素化されてしまい、包材に密封されて酸素濃度が検出限界以下になった状態でのミオグロビン割合を測定したとはいえなくなってしまう。酸素濃度が検出限界以下の状 態を維持したまま包材を開封して吸光度を測定することは困難であり現実的ではないこと(甲119参照)、包材を開封すればミオグロビン割合が変化するところ、本件明細書にはミオグロビン割合の測定との関係で包材の開封についての記載が全くないことも考慮すると、本件明細書の記載や技術常識から、当業者は、ミオグロビン割合を算定する前提となる吸光度の測定は、包材越し に行うものと理解するといえる。なお、本件発明は、ローストビーフを店頭に並べた時の消費者への訴求力を問題にしているところ、一般に流通する包材の種類によって同一の測定条件下で吸光度に顕著 越し に行うものと理解するといえる。なお、本件発明は、ローストビーフを店頭に並べた時の消費者への訴求力を問題にしているところ、一般に流通する包材の種類によって同一の測定条件下で吸光度に顕著な差があることを認めるに足りる証拠はない。 原告らは、本件発明の分光光度計を用いて吸光度を測定する方法は正反射光 を除去して測定するSCE方式であると主張する。本件出願日当時、分光光度 計を用いて吸光度を測定する方法としては、正反射光を除去して吸光度を測定するSCE方式のほかに、測定に当たり対象物からの正反射光込みで吸光度を測定するSCI方式が知られていた(甲59、弁論の全趣旨)。 構成要件Dは、吸光度そのものではなく、ミオグロビン割合によって規定されており、吸光度の測定はその割合を間接的に算定するための手段なのである から、吸光度の測定方法は、測定対象物のミオグロビンの割合を算定するという目的に合致するものであることが求められるといえる。吸光度に基づくミオグロビン割合の算定は、測定対象物に係る特定の4つの波長の吸光度の組み合わせがミオグロビンの特定の割合に対応することを前提にしているものであるから、測定の対象は、飽くまで対象物の吸光度である。そうすると、当業者 は、包材の影響を受けにくい方式による測定方式を用いて本件発明に係る吸光度を測定することができると理解するといえる。そして、SCE方式とSCI方式による測定値の差は正反射光を測定値に加味するか否かに基づくものであるところ、一般に、光沢の強い物質では正反射光が強くなることが知られている(甲55)。包材で覆われた食肉等を目視すると包材が光沢を帯びるもの も多いことからすると、当業者は、SCI方式は包材の光沢により強い影響を受け、測定対象物のミオ が強くなることが知られている(甲55)。包材で覆われた食肉等を目視すると包材が光沢を帯びるもの も多いことからすると、当業者は、SCI方式は包材の光沢により強い影響を受け、測定対象物のミオグロビンの割合に対応する吸光度と異なる吸光度を得てしまうことになってしまうので、SCI方式を用いることは適当ではないと認識するといえる。なお、SCE方式の方が包材の影響を受けにくいことは、SCE方式とSCI方式でローストビーフの肉色に近い色票を用いて吸光度 を測定した場合、包材を介さない場合にはその値が一致したところ、包材越しにSCE方式でこれを測定するとその吸光度は上記値に近い値を示すのに対し、SCI方式では大きく外れてしまうことが認められる(甲102、103)ことからも裏付けられる。これらの本件発明の意義や技術常識等を勘案すれば、当業者は、本件発明において包材越しにローストビーフのミオグロビン割合を 算出する前提とするためにその吸光度を測定するに当たって、SCE方式を用 いると認識できたといえる。 以上を前提に被告製品が構成要件Dを充足するか検討すると、証拠(甲9、64、65)及び弁論の全趣旨によれば、消費期限日に購入した被告製品1、2、3のいずれについても、包材内の酸素濃度が0.1%以下の状態で、包材越しにSCE方式で吸光度を測定し、ミオグロビン割合を算出したところ、そ の値は本件ミオグロビン割合であったことが認められる。そして、本件明細書の実施例によれば、酸素濃度が0.1%以下まで低下した後は、本件ミオグロビン割合は一般的なローストビーフの消費期限の期間程度では大きな変動をしないことが認められるから、被告製品のうち、酸素濃度が0.1%に達した以降は、消費期限に至るまで、開封されるまでの間、本件ミオグロビン 合は一般的なローストビーフの消費期限の期間程度では大きな変動をしないことが認められるから、被告製品のうち、酸素濃度が0.1%に達した以降は、消費期限に至るまで、開封されるまでの間、本件ミオグロビン割合が 維持されるものであると推認することができる。よって、これらの被告製品については、いずれも構成要件Dを充足するものと認められる。 上記によれば、被告製品2については、販売されたもの全てが本件発明の技術的範囲に属するといえ、被告製品1、3については、そのほとんどが本件発明の技術的範囲に属することが認められる。 5 本件特許は、乙12発明を主引例として進歩性を欠き、特許無効審判により無効にされるべきか(争点2)乙12公報の記載【特許請求の範囲】【請求項1】 スライスされたローストビーフを、脱酸素剤と共に、酸素ガス バリア性材料からなる容器内に配置し、前記容器内を窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換した後、該容器を密封して、該容器内の残存酸素濃度が0.01%以下に維持されるようにすることを特徴とする、スライスされたローストビーフの包装方法。 【請求項2】 酸素ガスバリア性材料からなり、内部が窒素ガス及び/または 二酸化炭素ガス雰囲気に置換されている容器と、該容器内に配置された脱酸素 剤とを備え、前記容器内の残存酸素濃度が0.01%以下に維持されていることを特徴とする、スライスされたローストビーフの包装体。 【発明の詳細な説明】【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、スライスされたローストビーフの品質保 持のために用いられる包装方法及び包装体に関するものである。 【0002】【従来の技術】従来、ローストビーフは製造業者によって加工され、品質保持のためにブロ スされたローストビーフの品質保 持のために用いられる包装方法及び包装体に関するものである。 【0002】【従来の技術】従来、ローストビーフは製造業者によって加工され、品質保持のためにブロックのまま小売業者に流通されていた。また、小売業者に流通されたローストビーフは、小売業者のバックヤードでスライス加工されて消費者 の手に渡るか、あるいはブロックのまま消費者の手に渡り、家庭でスライスされて食されていた。しかし、昨今の食生活の改善、衛生上の問題の回避、及び家庭における簡便性の追求により、ローストビーフを製造業者があらかじめスライスして流通させる必要性が高まっている。 【0003】スライスされたローストビーフを流通させる上での主な問題点は、 スライスすることによって外気との接触面積が大きくなるため、ローストビーフの酸化が激しくなるという点である。その結果、消費者の手に渡るまで、色、臭い、味などを維持することが困難になる。 【0004】酸化を防止するために、スライス面が外気に触れないようにスライスしたローストビーフをブロック状態に維持したまま真空包装する方法な どが知られている(特開昭59-149468)。 【0005】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記スライスされたローストビーフをブロック状態を維持したまま真空包装する方法においては、以下のような問題があった。 【0006】まず第一に、上記方法においては、切断面が外気に触れない状態 で切断しなくてはならないため、特別の装置を用いなくてはならず、多大なコストがかかる。 【0007】第二に、上記方法においては、ブロック状態を維持しているため、スライスされたローストビーフのスライス面が外部から見えず、ローストビーフの品質、特に色 はならず、多大なコストがかかる。 【0007】第二に、上記方法においては、ブロック状態を維持しているため、スライスされたローストビーフのスライス面が外部から見えず、ローストビーフの品質、特に色調を消費者にアピールできない。 【0008】第三に、上記真空包装においては、ローストビーフからのドリップが激しくなり、商品価値が著しく低下する。 【0009】本発明は、上記問題点を解決し、製造業者によってスライスされたローストビーフを、消費者の手に渡るまで、具体的には流通温度が0~5℃において1週間程度、簡易かつ効率よく保存可能とすると共に、スライス面が 外部から見えるようにすることによって、消費者への有効な視覚的アピールをすることが可能な、スライスされたローストビーフの包装方法及び包装体を提供することを目的とする。 【0010】【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明のスライス されたローストビーフの包装方法は、スライスされたローストビーフを、脱酸素剤と共に、酸素ガスバリア性材料からなる容器内に配置し、容器内を窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換した後、容器を密封して、容器内の残存酸素濃度が0.01%(容量%、以下同じ)以下に維持されるようにすることを特徴としている。 【0011】また、上記課題を解決するために、本発明のスライスされたローストビーフの包装体は、酸素ガスバリア性材料からなり、内部が窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換されている容器と、該容器内に配置された脱酸素剤とを備え、前記容器内の残存酸素濃度が0.01%以下に維持されていることを特徴としている。 【0012】脱酸素剤と窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス置換とを併用す ることにより容 とを備え、前記容器内の残存酸素濃度が0.01%以下に維持されていることを特徴としている。 【0012】脱酸素剤と窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス置換とを併用す ることにより容器内の残存酸素濃度を0.01%以下に維持することが簡易かつ確実になり、また、容器内の残存酸素濃度を0.01%以下に維持することにより、スライスされたローストビーフの酸化を十分に防止することが可能となる。 【0013】 【発明の実施の形態】以下、本発明のスライスされたローストビーフの包装方法並びに包装体の好適な実施形態について説明する。 【0014】まず、本発明の実施形態にかかるスライスされたローストビーフの包装体について説明する。図1(省略)は、本実施形態にかかるスライスされたローストビーフの包装体の断面図である。包装体1は、トレイ11、トレ イ11を包み込む袋状の容器12及び容器12内に配置された脱酸素剤13から構成されている。スライスされたローストビーフ2は、トレイ11内に並べられている。容器12は、内部を窒素ガス置換された状態でヒートシール部14をヒートシールすることにより密封されている。 【0015】容器12は、温度が30℃かつ相対湿度が80%の条件下におい て酸素ガス透過度が1500ml/m2・day・atm以下である酸素ガスバリア性材料から形成されていることが望ましく、温度が30℃かつ相対湿度が80%の条件下において酸素ガス透過度が400ml/m2・day・atm以下である酸素ガスバリア性材料から形成されていることが特に望ましい。容器12を形成する材料の酸素ガス透過度が1500ml/m2・day・atmを 越えると、容器12内に酸素が侵入し、スライスされたローストビーフ2の酸化の程度が激しくなる傾向に 特に望ましい。容器12を形成する材料の酸素ガス透過度が1500ml/m2・day・atmを 越えると、容器12内に酸素が侵入し、スライスされたローストビーフ2の酸化の程度が激しくなる傾向にある。 【0016】また、容器12は、上記条件を満たす酸素ガスバリア性材料から形成されていれば、材質、厚み、構成は特に問わない。ナイロン、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコールなどの単層フィルムから構成されているもの や、ナイロン/ポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデンコートナイロン/ポリオ レフィン、ポリオレフィン/ポリ塩化ビニリデン/ポリオレフィンなどの積層フィルムから構成されているものなどから任意に選択できる。尚、上記のポリオレフィンの中には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレンなどが含まれる。 【0017】また、本実施形態において、容器12内の残存酸素濃度を必要レ ベル(0.01%以下)まで確実に下げるためには、窒素ガス置換のみでは十分でなく、脱酸素剤13を容器12内に封入する必要がある。脱酸素剤13は、容器容積の0.25倍以上の酸素吸収能力を持つことが望ましく、容器容積の0.5倍以上の酸素吸収能力を持つことが特に望ましい。酸素吸収能力が容器容積の0.25倍未満である場合は、容器内の残留酸素濃度を、0.01%以 下に維持することが難しくなる傾向にある。このような脱酸素剤13としては、例えば三菱ガス化学(株)製、商品名:エージレスSS-200が挙げられる。 【0018】トレイ11は、容器12内の残存酸素濃度の維持に悪影響を及ぼさない材質のものであれば良く、発泡性材料以外の材料で形成されていることが望ましい。これらの材料にはポリプロピレン、ポリスチレンなどが挙げられ る。 【0019】 素濃度の維持に悪影響を及ぼさない材質のものであれば良く、発泡性材料以外の材料で形成されていることが望ましい。これらの材料にはポリプロピレン、ポリスチレンなどが挙げられ る。 【0019】包装対象となるローストビーフは、家庭において加工を必要としないように、あらかじめスライスされたものである。スライスされる厚みは、通常1~2mmくらいである。また、スライスされたローストビーフ2は、切り口が外部から見えるような状態でトレイ11上に並べられている。これによ り、消費者に対して、有効な視覚的アピールをすることが可能となっている。 【0020】容器12内は、脱酸素剤13の封入および窒素ガス置換によって、残存酸素濃度が0.01%以下に維持されている必要があり、0.007%以下であることが好ましく、特に0.002%以下であることが好適である。容器12内の残存酸素濃度が0.01%より大きいと、周囲温度が5℃の状態に おいて、スライスされたローストビーフの鮮度を1週間以上維持することがで きなくなり、スライスされたローストビーフの流通において必要なシェルフライフを満たすことができなくなる。 【0021】次に、本発明の実施形態に係るスライスされたローストビーフの包装方法について説明する。本実施形態に係るスライスされたローストビーフの包装方法の第1の工程では、トレイ11上にスライスされたローストビーフ 2を並べる。第2の工程では、第1の工程にてスライスされたローストビーフ2を並べられたトレイ11と、脱酸素剤13とを袋状の容器12に挿入する。 第3の工程では、ガス置換兼用真空包装機を用いて、容器12内を窒素ガスで置換し、容器12を密封して完了する。 【0022】本実施形態において、容器12内の残存酸素濃度を必要レベル、 に挿入する。 第3の工程では、ガス置換兼用真空包装機を用いて、容器12内を窒素ガスで置換し、容器12を密封して完了する。 【0022】本実施形態において、容器12内の残存酸素濃度を必要レベル、 つまり0.01%以下まで確実に下げるためには、脱酸素剤13の封入のみでは十分ではなく、脱酸素剤13の封入と窒素ガス置換との併用が必要である。 容器12内の残存酸素濃度を低減するために、脱酸素剤13と窒素ガス置換とを併用するため、窒素ガス置換直後の容器12内の残存酸素濃度は0.08%以下であれば良く、残りは、脱酸素剤13によって残存酸素濃度が必要レベル まで低減される。 【0023】窒素ガス置換方法としては、容器12内を減圧せずに窒素ガスを吹き込んだ後に密封する方法や、容器12内を減圧して窒素ガスを吹き込んだ後に密封する方法などがある。この場合、減圧および窒素ガス吹き込みの回数は特に制限されない。 【0024】以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。すなわち、例えば上記実施形態において、スライスされたローストビーフはトレイ11上に並べられていたが、図2(省略)に示すように、台紙15上に並べられていても良い。この場合、台紙15は、容器12内の残存酸素濃度の低減に悪影響を及ぼさない材質のものであれば良 い。 【0025】また、上記実施形態において、容器12としては袋状のものを用いて、スライスされたローストビーフ2の並べられたトレイ11全体を覆って密封していたが、図3(省略)に示すように、容器本体12aを、上記容器12と同様な、酸素ガスバリア性材料から形成し、容器本体12aの内部を窒素ガスで置換した後、容器本体12aの上部に、同様の酸素ガスバリア性材料か ら形成 に示すように、容器本体12aを、上記容器12と同様な、酸素ガスバリア性材料から形成し、容器本体12aの内部を窒素ガスで置換した後、容器本体12aの上部に、同様の酸素ガスバリア性材料か ら形成された容器蓋部12bを張り付けて容器12を形成し、密封しても良い。 【0026】さらに、容器12内を置換するガスは窒素ガスに限らず、二酸化炭素ガスでも良いし、また窒素ガスと二酸化炭素ガスとの混合ガスでも良い。 窒素ガスと二酸化炭素ガスとの混合ガスの場合は、混合比を任意に設定できる。 容器12内を置換するガスとして窒素ガスを用いた場合は、スライスされたロ ーストビーフ2の色、味が特に高水準な状態で保存できる傾向にある。一方、窒素ガスと二酸化炭素ガスとの混合ガス、または二酸化炭素ガスを用いた場合は、容器12内の静菌効果を向上させることができる。 【0027】これらのような形態にしても、簡易かつ確実に、容器12内の残存酸素濃度を0.01%以下に維持することができ、上記実施形態と同様の効 果が得られる。 【0028】【実施例】以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 【0029】実施例1および比較例1~3 容器12内を窒素ガス置換すると共に、容器12内に脱酸素剤13を封入した状態(実施例1)、容器12内を窒素ガス置換せずに含気包装し、脱酸素剤13も使用しない状態(比較例1)、容器12内を窒素ガス置換せずに含気包装し、容器12内に脱酸素剤13を封入した状態(比較例2)、容器12内を窒素ガス置換し、脱酸素剤13を使用しない状態(比較例3)で、それぞれスライス されたローストビーフ2を保存し、スライスされたローストビーフ2の色、臭 い、味、ドリップ発生量及び を窒素ガス置換し、脱酸素剤13を使用しない状態(比較例3)で、それぞれスライス されたローストビーフ2を保存し、スライスされたローストビーフ2の色、臭 い、味、ドリップ発生量及びスライスされたローストビーフ2を含む包装体1の外観の評価を実施した。 【0030】上記実施例及び比較例における包装体1は、図1に示すものを用いた。トレイ11はポリプロピレンで形成されており、内容積420cm3 の大きさのものを用いている。袋状の容器12は、温度が30℃かつ相対湿度が 80%の条件下において酸素ガス透過度が60ml/m2・day・atmの酸素ガスバリア性材料である、エチレンビニルアルコール共重合体/ポリオレフィン/ポリオレフィンの積層フィルムから構成されているものを選択した。脱酸素剤13としては、三菱ガス化学(株)製、商品名:エージレスSS-200を使用し、酸素吸収能力が容器容積の0.5倍となるようにした。 【0031】評価対象のスライスされたローストビーフ2は、1枚の厚みが1mm程度に切断されているもの用いた。全部で7~8切れ、重量にして約40gのスライスされたローストビーフ2をトレイ11に並べ、そのトレイ11の外側を、袋状の容器12で覆った。その後、Multivac(株)製、Multivac AG2000型ガス置換兼真空包装機を用いて、容器12内を 窒素ガスで置換した。容器12内におけるスライスされたローストビーフ2の容積占有率は10容量%程度である。 【0032】上記それぞれの状態で、外気温5℃の暗所に7日間保存後、スライスされたローストビーフ2の色、臭い、味、ドリップ発生量及びスライスされたローストビーフ2を含む包装体1の外観の評価と総合評価を以下のよう に実施した。評価結果を表1に示す。 保存後、スライスされたローストビーフ2の色、臭い、味、ドリップ発生量及びスライスされたローストビーフ2を含む包装体1の外観の評価と総合評価を以下のよう に実施した。評価結果を表1に示す。 【0033】(色の評価)包装体を開封して30分後に、日本電色工業(株)製SE2000型分光式測色色差計を用いて、スライスされた2枚のローストビーフ2の中心部のそれぞれ3カ所、計6カ所のa値を測定し、平均値を求めた。 a値とは、色差表示方法(JIS Z 8730)の「ハンターの色差式によ る色差」の項に示されているように、JIS Z 8722に規定される色の 三刺激値から計算された値であり、この数値が大きいほどスライスされたローストビーフ2の赤みが強く、変色度合いが小さいことを意味する。なお、評価としては、上記のように測定したa値の平均値に基づき、下記の評価基準:5:7.0<a値の平均値4:6.0<a値の平均値≦7.0 3:5.0<a値の平均値≦6.02:3.0<a値の平均値≦5.01: a値の平均値≦3.0に従って5段階に評価した。 【0034】(臭いの評価)3人のパネラーによる官能検査を行った。具体的に は、包装体1を開封して直後に、各パネラーに、スライスされたローストビーフ2の臭いを嗅いでもらい、下記の評価基準:5:保存前と比較して全く臭いの劣化が認められず、商品として大変優れている4:保存前と比較してほとんど臭いの劣化が認められず、商品として問題はな い3:保存前と比較してわずかに臭いの劣化が認められ、商品としては若干問題がある2:保存前と比較して著しい臭いの劣化が認められ、商品としては明らかに問題がある 1:異臭、特に酸化臭が強く感じられ、 と比較してわずかに臭いの劣化が認められ、商品としては若干問題がある2:保存前と比較して著しい臭いの劣化が認められ、商品としては明らかに問題がある 1:異臭、特に酸化臭が強く感じられ、商品価値は無いに従って5段階に評点してもらい、平均点(四捨五入)を求めた。 【0035】(味の評価)3人のパネラーによる官能検査を行った。具体的には、包装体1を開封して10分後に、各パネラーに、スライスされたローストビーフ2を1枚食してもらい、下記の評価基準: 5:保存前と比較して全く味の劣化が認められず、商品として大変優れている 4:保存前と比較してほとんど味の劣化が認められず、商品として問題はない3:保存前と比較してわずかに味の劣化が認められ、商品としては若干問題がある2:保存前と比較して著しい味の劣化が認められ、商品としては明らかに問題がある 1:外観の変化、異臭が強く食べられないに従って5段階に評点してもらい、平均点(四捨五入)を求めた。 【0036】(ドリップ発生量の評価)包装体1を開封して直後に、トレイ11内に蓄積しているドリップ量を、下記の評価基準:5:全く認められない 4:ほとんど認められない3:少し認められる2:多く認められる1:非常に多く認められるに従って5段階に目視評価した。 【0037】(外観の評価)3人のパネラーによる官能検査を行った。具体的には、包装体1を開封直前に、各パネラーに、スライスされたローストビーフ2の乾燥度合い、包装体1の減圧による変形度合いの観点からスライスされたローストビーフ2及び包装体1の外観を目視してもらい、下記の評価基準:5:保存前と比較して全く変化が認められず、商品として大変優れている 4:保存前と比較して 合いの観点からスライスされたローストビーフ2及び包装体1の外観を目視してもらい、下記の評価基準:5:保存前と比較して全く変化が認められず、商品として大変優れている 4:保存前と比較してほとんど変化が認められず、商品として問題はない3:保存前と比較してわずかに変化が認められ、商品としては若干問題がある2:保存前と比較して著しい変化が認められ、商品としては明らかに問題がある1:保存前の状態をとどめておらず、商品価値は無い に従って5段階に評点してもらい、平均点(四捨五入)を求めた。 【0038】(総合評価)上記の色、臭い、味、ドリップ発生量、外観の評価結果を総合し、下記の評価基準:◎:商品として優れている○:商品として問題なし△:商品として若干問題がある ×:商品として明らかに問題があるに従って、4段階に評価した。 【0039】【表1】 【0040】表1の結果からわかるように、比較例1に示す含気包装においては、スライスされたローストビーフ2の色、臭い、味ともに著しく劣化し、スライスされたローストビーフ2の鮮度を維持することができない。比較例2の如く脱酸素剤13のみを用いて容器12内を脱酸素した場合、開封直前の容器12内の残存酸素濃度は0.013%程度になる。この場合は、色の保持は可 能であるが、臭い、味の劣化が認められる。また、比較例3の如く窒素ガス置換のみを用いて容器12内を脱酸した場合、開封直前の容器12内の残存酸素濃度は0.042%程度になる。この場合は、味の劣化は認められなかったが、変色の度合いが大きくなる。 【0041】以上の結果より、スライスされたローストビーフ2を最低7日間 保存するためには、容器12内の残存酸素濃度を0.01%以下に の劣化は認められなかったが、変色の度合いが大きくなる。 【0041】以上の結果より、スライスされたローストビーフ2を最低7日間 保存するためには、容器12内の残存酸素濃度を0.01%以下に維持することが必要であることが分かる。また、残存酸素濃度が0.01%以下のレベルを確実に実現するための脱酸素方法としては、窒素ガス置換と脱酸素剤13との併用が必要であることも分かる。 【0042】比較例4参考のため、容器12内を窒素ガス置換し、かつ、脱酸素剤13を使用する代わりに、容器12内を真空にした状態(比較例4)について、上記実施例1と同様の実験を行った。容器12内を窒素ガス置換し、かつ、脱酸素剤13を使用する代わりに、容器12内を真空にしたこと以外の条件は実施例1と同様で ある。 【0043】比較例4のように真空包装した場合は、スライスされたローストビーフ2の臭い、味は比較的良好な状態で保存されるが、スライスされたローストビーフ2が圧迫されて、ドリップが多く(約2g程度)発生するため、商品価値が無くなる。 【0044】実施例2~5容器12内に脱酸素剤13を封入すると共に、容器12内を窒素ガスで置換した状態(実施例2)、容器12内に脱酸素剤13を封入すると共に、容器12内を窒素ガス70%(容量%、以下同じ)と二酸化炭素ガス30%との混合ガスで置換した状態(実施例3)、容器12内に脱酸素剤13を封入すると共に、容 器12内を窒素ガス30%と二酸化炭素ガス70%との混合ガスで置換した状態(実施例4)、容器12内に脱酸素剤13を封入すると共に、容器12内を二酸化炭素ガスで置換した状態(実施例5)を作り、スライスされたローストビーフ2の保存状態を調べた。 【0045】容器12内を置換するガスとして、窒 2内に脱酸素剤13を封入すると共に、容器12内を二酸化炭素ガスで置換した状態(実施例5)を作り、スライスされたローストビーフ2の保存状態を調べた。 【0045】容器12内を置換するガスとして、窒素ガスの代わりに上記の組 成の置換ガスを用いたこと以外は、実施例1と同様な条件で実験を行った。 【0046】また、実施例1と実施例2における相違点は、実施例2においては、容器12を密封した直後の容器12内の残存酸素濃度が実施例1と比較して小さい点である。以下、結果を表2に示す。 【0047】 【表2】 【0048】表2から分かるように、容器12内を窒素ガスで置換する場合と同様に、二酸化炭素ガス、あるいは窒素ガスと二酸化炭素ガスとの混合ガスで置換することによっても、スライスされたローストビーフ2の品質を必要な期間維持することが可能である。また、密封直後の残存酸素濃度を小さくしてお けば、容器12内の酸素濃度をより低く維持することができ、保存状態が良くなる傾向にある。 【0049】【発明の効果】本発明のスライスされたローストビーフの包装方法および包装体により、製造業者によってスライスされたローストビーフを、流通温度が0 ~5℃において1週間程度、簡易かつ効率よく保存することが可能となる。また、スライス面が外部から見えるようにすることによって、消費者への有効な視覚的アピールをすることが可能となる。 技術常識等ア本件出願日当時、次の事項が技術常識であった。 食肉の色はミオグロビンの割合に左右され、家畜の屠殺後、筋肉中のミオグロビンは還元型ミオグロビンとなって食肉は紫赤色になり、空気にさらされて還元型ミオグロビンが酸素と結合してオキシミオグロビンとなると、食肉は鮮やかな赤色になり、さら れ、家畜の屠殺後、筋肉中のミオグロビンは還元型ミオグロビンとなって食肉は紫赤色になり、空気にさらされて還元型ミオグロビンが酸素と結合してオキシミオグロビンとなると、食肉は鮮やかな赤色になり、さらに時間が経過すると、オキシミオグロビンが酸化してメトミオグロビンになり、食肉は褐色になっていく。オキシミオグ ロビンを大量に含む食肉は、人が「新鮮である、美味しそうである」と感じる鮮やかな赤色となる一方、褐色化した肉は経験的に古い肉と判断され、好まれない。メトミオグロビン割合が50%以上になると明瞭に色調の劣化が認められる。(甲5~7) この還元型ミオグロビンからオキシミオグロビンへの変化は可逆的であり、酵素等も関与していない。他方で、生体内では、メトミオグロビンが還元型ミオグロビンに変化するが、この反応には、メトミオグロビン還元酵素という酵素が必要である。(甲7、45、乙14)このメトミオグロビン還元酵素については、昭和54年の学術論文で、5 0度まで加熱すると失活することが報告されていた(甲46の2)。仮にメトミオグロビン還元酵素が失活すれば、上記のメトミオグロビンから還元型ミオグロビンへの反応が生じないことになる。 イ乙12発明の出願日当時、ローストビーフには加熱食肉製品のローストビーフと特定加熱食肉製品としてのローストビーフがあった。特定加熱食肉製 品とは、食肉の中心部の温度を63度で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法以外の方法による加熱殺菌を行った食肉製品(乾燥食肉製品及び非加熱食肉製品を除く)と定義されており、その製造基準については、中心部を55度から63度の間の温度で一定時間(55度であれば97分、56度であれば64分、63度であれば瞬時など温度によって規 定 食肉製品を除く)と定義されており、その製造基準については、中心部を55度から63度の間の温度で一定時間(55度であれば97分、56度であれば64分、63度であれば瞬時など温度によって規 定されている時間は異なる。)加熱し、又はこれと同等以上の効力を有する方法により殺菌しなければならないこととされている。また、加熱食肉製品の製造基準としては、中心部の温度を63度で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法により殺菌しなければならないとされている。(甲1、13の2、52、弁論の全趣旨) ウ特定加熱食肉製品と加熱食肉製品では法律上、次のとおり、取り扱いの制限が異なる。(甲13の2、145)特定加熱食肉製品の保存基準は4℃以下であるが、加熱食肉製品は10℃以下。 特定加熱食肉製品は、単一の肉塊を用いなければならないが、加熱食肉 製品は、肉片を成型することも許される。 特定加熱食肉製品のpHは、6.0以下としなければならないが、加熱食肉製品には制限がない。 特定加熱食肉製品で調味液等を用いる場合には、肉の表面に塗布しなければならない。食肉の塩漬けを行う場合には、肉塊のままで、乾塩法又は塩水法しか使えない。例えば一本針注入法のように肉の内部に調味液を 浸透させることができない。 エ特定加熱食肉製品と異なり、加熱食肉製品については塩せき工程で発色剤(亜硝酸塩や硝酸塩)を加えることができる。亜硝酸塩が還元されると一酸化窒素が生成し、酸素の代わりに一酸化窒素がミオグロビンに配位する。 一酸化窒素は酸素に比べてミオグロビンに対して300万倍の親和性を持 っており、加熱しても乖離せずに安定な赤色を保ち続ける。この赤色は、冷暗所でかつ酸素を遮断すると数年間安定に保たれる場合もあるが 化窒素は酸素に比べてミオグロビンに対して300万倍の親和性を持 っており、加熱しても乖離せずに安定な赤色を保ち続ける。この赤色は、冷暗所でかつ酸素を遮断すると数年間安定に保たれる場合もあるが、酸素に暴露した条件で光を照射すると、1時間程度で退色する。他方、酸素を遮断して光照射を行った場合、あるいは光を遮断して酸素に暴露した場合には、退色はわずかに進行するのみとなる。(甲148) 前記の乙12公報の記載によれば、乙12発明の内容は次のとおりであると認められる。 a ローストビーフをスライスする工程と、b スライスされたローストビーフをトレイ上に並べる工程と、c スライスされたローストビーフを脱酸素剤と共に酸素ガスバリア性を有 する容器内に配置し、前記容器内を窒素ガス又は二酸化炭素ガス雰囲気に置換した後、該容器を密封して、該容器内の残存酸素濃度が0.01%以下に維持されるようにするe ことを特徴とするスライスされたローストビーフの包装方法。 本件発明と乙12発明には、少なくとも、次の相違点があると認められる。 ア相違点1 本件発明では、構成要件Bに「スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」を含むのに対し、乙12発明では、ローストビーフをスライスし、スライスされたローストビーフをトレイ上に並べ、脱酸素剤と共に容器内に配置して容器内を窒素ガス又は二酸化炭素ガスで置換するのは空気下で行われるものの、それ以上 に還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程は記載されていない点イ相違点2本件発明では、構成要件Cの脱酸素材は少なくとも非鉄系のものを含み、かつ、包材内を窒素ガス又は二酸化炭素ガス雰囲気に置換してい キシミオグロビンに酸素化する工程は記載されていない点イ相違点2本件発明では、構成要件Cの脱酸素材は少なくとも非鉄系のものを含み、かつ、包材内を窒素ガス又は二酸化炭素ガス雰囲気に置換している構成と包 材内を窒素ガス又は二酸化炭素ガス雰囲気に置換していない構成のいずれをも含むのに対し、乙12発明では、その請求項では酸素剤の種類の限定はないものの、少なくとも具体的に記載された脱酸素剤は鉄系であり、かつ、包材を密封する前に、窒素ガス又は二酸化炭素ガス雰囲気に置換することを必須としている点 ウ相違点3本件発明では、構成要件Dに「上記スライスされた上記特定加熱食肉製品は、ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、ミオグロビンが、本件ミオグロビン割合となっている」と規定しているのに対し、乙12発明では、ミオグロビン割合 について何ら記載されていない点他の相違点についてア以上の相違点に加えて、原告らは、本件発明の対象が特定加熱食肉製品であるのに対し、乙12発明は特定加熱食品とはいえない点が異なり、また、加熱食肉製品の構成を特定加熱食品の構成とすることは容易に想到できず、 発色剤を用いる特定加熱食品の発明に対して被告が主張する発明を適用する ことには阻害要因がある旨主張する。 イ乙12公報には、対象となるローストビーフが特定加熱食肉製品である旨明記されていない。また、特定加熱食肉製品であるか加熱食肉製品であるか否かは、肉の中心部の加熱時間によって定まるところ(前記イ)、乙12公報には、ローストビーフの中心部の加熱時間についての直接的な記載がない。 ウ食肉の赤味を帯びた色は、発色剤が使用されていない場合、主として還元型ミオグ って定まるところ(前記イ)、乙12公報には、ローストビーフの中心部の加熱時間についての直接的な記載がない。 ウ食肉の赤味を帯びた色は、発色剤が使用されていない場合、主として還元型ミオグロビン、酸素化ミオグロビン、メトミオグロビンの割合によって定まり、酸素の存在と経時等によってこれらが変化することが知られており(前記ア)、特定加熱食肉製品であるローストビーフの色味も、この機序によって定まるといえる。 他方で、発色剤が使用されていなければ、仮に乙12公報のローストビーフが特定加熱食肉製品所定の加熱を超える加熱がされ、特定加熱食肉製品に属しないものであったとしても、乙12公報に記載されたローストビーフは赤味を有していたことが認められる(乙12発明では、その実施例において、色の劣化の評価にa値を用いることとした上で、「a値・・・が大きいほどス ライスされたローストビーフ2の赤みが強く、変色度合いが小さいことを意味する。」(乙12【0032】)との記載があるから、保管前のローストビーフが赤味を有しており、その維持が発明の課題であることが前提となっているといえる。)から、その加熱の程度は、特定加熱食肉製品所定のものに近かったことが推認できる。少なくとも、乙12公報のローストビーフが、上記 の肉色が定まる機序と異なる機序によって色味が決定されることを基礎付ける事情は見受けられない。なお、メトミオグロビン還元酵素の存在下では、いったんメトミオグロビンが生成しても、還元型ミオグロビンに変化することがあるため、当業者は、メトミオグロビン還元酵素の有無に応じて、存在する酸素の濃度、経時について同じ条件下でも色の変化に関する機序が異な るため、その肉の色の変化の態様が異なると想定することが推認できるとは オグロビン還元酵素の有無に応じて、存在する酸素の濃度、経時について同じ条件下でも色の変化に関する機序が異な るため、その肉の色の変化の態様が異なると想定することが推認できるとは いえるが、特定加熱食肉製品であるか加熱食肉製品であるかによって、メトミオグロビン還元酵素の活性の有無が異なるとの技術常識があったとはいえない。かえって、特定加熱食肉製品と加熱食肉製品のいずれであっても加熱によりメトミオグロビン還元酵素が失活するとの知見があったことが認められる(前記ア)。 そうすると、乙12発明のローストビーフが特定加熱食肉製品ではあるか特定加熱食品であるかは不明であり、それが加熱食肉製品の可能性があったとしても、発色剤が用いられていないのであれば、ローストビーフの色の変化に関する機序はそのローストビーフが特定加熱食品であった場合と異なるとはいえない。 エ他方で、ローストビーフに発色剤が用いられる場合には、食肉が赤色を呈する機序が異なるので、以下、乙12発明のローストビーフにおいて発色剤が用いられていたか否かについて検討する。 発色剤を用いる場合には、上記の還元型ミオグロビン、酸素化ミオグロビン、メトミオグロビンの可逆的な割合の変化により肉色が定まるのと異なり、 一酸化窒素の配位という異なる機序で赤い色味が生じ、酸素を除去して冷暗所において保存すると年単位で赤色が保持され、退色するにも酸素と光の両方が必要という異なる効果を発揮する(前記エ)。そうすると、発色剤を使用するか否か及び利用条件は、一定期間経過後の肉色に関する実験の趣旨、目的、評価に大きな影響を及ぼすといえる。しかし、乙12公報には、発色 剤の使用の有無に言及する記載はない。このことは、乙12公報に記載された発明がロー 定期間経過後の肉色に関する実験の趣旨、目的、評価に大きな影響を及ぼすといえる。しかし、乙12公報には、発色 剤の使用の有無に言及する記載はない。このことは、乙12公報に記載された発明がローストビーフの色等の維持を課題としていることに照らせば、仮に発色剤を用いているのであれば極めて不自然といえる。また、乙12公報に記載された発明は、スライスされたローストビーフの品質保持のために用いられる包装方法及び包装体に関するものであり(乙12【0001】)、本 件発明と同様、スライスされたローストビーフを流通させると、外気との接 触面積が大きくなるため、ローストビーフの酸化が激しくなり、その結果、消費者の手に渡るまでに色等を維持することが困難になること(乙12【0003】)を課題とし、その解決方法として、前記のとおり、酸化の原因となる包装内の気体を置換して、酸化をコントロールしてローストビーフの色等を適切なものに維持して消費者にアピール(乙12【0007】参照)でき るようにするというものである。乙12公報では、その課題についても、解決方法についても、もっぱら7日間程度の期間に関する外気との接触による色味の劣化のみに言及されており、本来、発色剤を用いた特定加熱食肉製品であれば、外気に加えて光の影響さえなければ年単位での色味の維持が期待できることを前提とした記載になっているとは認めがたい。これらの点を考 慮すると、当業者は、乙12公報に記載されたローストビーフには、発色剤は用いられていないと理解するといえる。 オ上記エの点につき、原告らは、生肉に関する乙14公報には「炭酸ガスを発生しない型の脱酸素剤を使用した場合あるいはN2ガス、CO2ガス置換によって容器内の酸素濃度が数%~10数%程度に達すると生肉中のミオ エの点につき、原告らは、生肉に関する乙14公報には「炭酸ガスを発生しない型の脱酸素剤を使用した場合あるいはN2ガス、CO2ガス置換によって容器内の酸素濃度が数%~10数%程度に達すると生肉中のミオグ ロビンはメト化して急速に赤味が失われて褐変する。」との記載があること、実際に原告らの実験(甲152)でも、特定加熱ローストビーフの場合、窒素でガス置換して脱酸素剤を用いると褐変したことを挙げて、当業者であれば、乙12発明は加熱食肉製品のものであり、これを特定加熱食肉製品に当てはめればローストビーフは褐変して元に戻らなくなることを理解すると 主張する。 しかし、乙14公報の原告らが指摘する記載は生肉に関するものであり、乙12発明は特定加熱食肉としての加熱又はそれ以上の加熱が行われている食肉に関するものである。加熱食肉製品の発色剤については、前記エのとおりのことが知られていたところ、当業者は、乙12発明と、乙14公報 の前記記載が前提としている生肉には、少なくとも各種酵素が失活している ことなどの差異があることを理解するといえる。そうすると、当業者が、生肉につき上記記載があることをもって、乙12発明につき発色剤を用いていない限り窒素でガス置換して脱酸素剤を用いると褐変するから乙12発明は発色剤を用いていると考えるとはいえない。 また、原告らの実験結果(甲152)を検討すると、用いられた脱酸素剤 の種類、ガス置換の程度などの詳しい実験条件が明示されておらず、乙12発明の実施例と直ちに比較することはできない。また、同実験結果によっても、特定加熱ローストビーフで窒素置換し、脱酸素剤を用いたものについて、2日経過したものと4日経過したものを比べると、4日経過したものの方がa値が改善していることが認められる。そう 実験結果によっても、特定加熱ローストビーフで窒素置換し、脱酸素剤を用いたものについて、2日経過したものと4日経過したものを比べると、4日経過したものの方がa値が改善していることが認められる。そうすると、原告らの上記実験結果 は、当業者であれば、特定加熱食肉製品において窒素置換をするとローストビーフは褐変して元に戻らなくなることを理解しているという原告らの主張に沿わない結果を示しているものといえる(なお、本件発明は、特定加熱食肉製品のローストビーフについてガス置換後に脱酸素剤を投入する構成を含むものであった。本件明細書によれば、鉄系脱酸素剤のみを用いると褐 変し、非鉄系脱酸素剤を用いると褐変しない理由について、酸素の減少速度が緩やかであることを根拠としているところ(【0035】)、ガス置換すれば急速に酸素濃度が低下することは明らかである。本件発明は、特定加熱食肉製品であるローストビーフについて、窒素置換して脱酸素剤を投入しても、ローストビーフは褐変して元に戻らないということはないことを前提にし ているといえる。)。 カ以上のとおりであって、乙12発明で用いられているローストビーフについてこれが特定加熱食肉製品であることについての直接的な記載はない。もっとも、乙12発明のローストビーフは発色剤が用いられていないと認められる。そして、仮に当該ローストビーフについての加熱が特定加熱食肉製品 所定のものを上回り、特定加熱食肉製品に当たらず、この点が相違点となる としても、その加熱の程度は内部に赤味を残す程度のものであり、乙12発明のローストビーフも特定加熱食肉製品のローストビーフと同様に、技術常識から、その肉色は、主として還元型ミオグロビン、酸素化ミオグロビン、メトミオグロビンの割合によって定まり、酸素 であり、乙12発明のローストビーフも特定加熱食肉製品のローストビーフと同様に、技術常識から、その肉色は、主として還元型ミオグロビン、酸素化ミオグロビン、メトミオグロビンの割合によって定まり、酸素の存在と経時等によってこれらが変化するものであると当業者は理解することから、当業者は、乙12発 明のローストビーフについて、同じローストビーフのうちの特定加熱食肉製品とすることを容易に想到することができたといえる。 原告らは、本件発明が包装状態での色合いを問題にしているのに対し、乙12発明が開封30分後の色合いを問題にしている点が異なると主張する。 しかし、乙12公報には、発明の課題として、「消費者の手に渡るまで、色、 臭い、味などを維持することが困難になる。」(乙12【0003】)、「ブロック状態を維持しているため、スライスされたローストビーフのスライス面が外部から見えず、ローストビーフの品質、特に色調を消費者にアピールできない。」(乙12【0007】)との記載があることからすると、乙12発明は、ローストビーフが、消費者への訴求を問題にしていると認められる。そして、一般に、 消費者は店頭において開封することなく商品を購入するのであるから、乙12発明は、未開封状態での色の維持をも問題にしていると理解できる。乙12発明の実施例は開封後30分後の色合いを評価根拠としているが、これは、包材の影響を受けずに測定を容易に行える開封後の色合いをもって開封前の色合いの評価根拠としているものといえる。開封30分後の測定としたことにより、 還元型ミオグロビンがオキシミオグロビンに変化してより赤色に変化していることから、開封前の色合いは、上記の実験結果ほど良好なものでなかった可能性はあるものの、開封後に良好な色合いを得たものの方が開封前 元型ミオグロビンがオキシミオグロビンに変化してより赤色に変化していることから、開封前の色合いは、上記の実験結果ほど良好なものでなかった可能性はあるものの、開封後に良好な色合いを得たものの方が開封前も同様であったことを前提に、上記観点からこのような評価方法をとったことがうかがえ、また、ことさらにこれを否定すべき事情も見受けられない。そうすると、乙1 2発明も本件発明と同様に、開封前の色合いも念頭に置いたものであり、当業 者もそのことを前提に発明を理解するといえるから、乙12公報において、開封後の色調を問題としている点が本件発明と乙12発明の相違点になるとは認められない。 相違点1についてア本件発明の酸素化工程は、前記2で説示したとおり、それによりスライ スされた特定加熱食肉製品のミオグロビン割合が変化することによって、その後の脱酸素の工程とあいまって、所望の色調となるような、スライスされた特定加熱食肉製品を酸素含有気体中に暴露する工程である。また、この酸素に暴露する時間は、特定加熱食肉製品の性質、用いる非鉄系脱酸素剤の性質に依存し、上記の工程といえるものであればよい。ここで、乙12公報に は、当該ローストビーフをスライスし、トレイに並べることが記載されているが、これが前記のとおりのものである本件発明の酸素化工程であることが記載されているものではない。当該ローストビーフの種類、用いる脱酸素剤の種類、量等によっては、その後の脱酸素の工程とあいまって当該ローストビーフが所望の色調となるには乙12公報記載の工程を空気下で行うのみ では足りずに、さらに空気等の酸素含有気体に触れさせる必要がある場合があり得る。そうすると、本件発明の酸素化工程が乙12公報に記載されているとまでは認められないから、乙12公 気下で行うのみ では足りずに、さらに空気等の酸素含有気体に触れさせる必要がある場合があり得る。そうすると、本件発明の酸素化工程が乙12公報に記載されているとまでは認められないから、乙12公報記載の上記工程とは別に、酸素含有気体に暴露する時間を設ける構成を当業者が容易に想到することができるか否かについて検討する。 イ乙13公報(乙13)には、以下の記載がある。 【特許請求の範囲】【請求項1】冷気を用いてミオグロビンを含む食品を貯蔵する方法において、箱体の内部に収容した前記食品に対して冷気を供給し前記食品を冷却す るとともに前記食品の酸化を維持する期間を設け、その後、前記箱体内の酸 素を減少させることを特徴とする食品の貯蔵方法。 【請求項2】前記食品の酸化を維持する期間は、食品が凍結するまでとすることを特徴とする請求項1に記載の貯蔵方法。 【請求項3】 前記食品の酸化を維持する期間に前記箱体内部の酸素濃度を増加させることを特徴とする請求項1又は2に記載の貯蔵方法。 【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】 本発明の実施形態は、食品の貯蔵方法に関する。 【背景技術】【0002】冷蔵庫などに貯蔵される食品の劣化要因として、空気中に存在する酸素による食品の酸化が知られている。そこで、食品を貯蔵する貯蔵空間の酸素を 減少させることで、食品の酸化を抑えて食品の鮮度を維持できることが知られている(例えば、特許文献1参照)。 【先行技術文献】【特許文献】【0003】 【特許文献1】 特開2004-167472号公報【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0004】肉や赤身の魚などのミオグロビ 献】【特許文献】【0003】 【特許文献1】 特開2004-167472号公報【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0004】肉や赤身の魚などのミオグロビンを含む赤色の食品では、一般的に、鮮や かな赤色であるほど新鮮であるとされ人々に好まれるが、上記のような冷蔵 庫でミオグロビンを含む食品を保存する場合、貯蔵空間に投入された食品が冷却される前に貯蔵空間の酸素を減少させると、食品自身の鮮度は維持できるものの、食品が青みを帯びた赤色(紫赤色)に変色することを本発明者は見出した。 【0005】 そこで、本発明は、ミオグロビンを含む赤色の食品の鮮やかな赤色を維持しつつ、貯蔵空間の酸素を減少させ食品の鮮度を維持することができる食品の貯蔵方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】【0006】 本発明の実施形態に係る食品の貯蔵方法は、冷気を用いてミオグロビンを含む食品を貯蔵する方法において、箱体の内部に収容した前記食品に対して冷気を供給し前記食品を冷却するとともに前記食品の酸化を維持する期間を設け、その後、前記箱体内の酸素を減少させることを特徴とする。 【発明を実施するための形態】 【0008】以下、図面に基づき本発明の1実施形態について説明する。 【0017】酸素濃度調節装置70は、図2及び図3に示すように、収納容器60の内部空間の酸素を減少させる酸素減少手段72と、収納容器60の内部空間の 酸素を増加させる酸素増加手段74とを備える。 【0032】このような構成の冷蔵庫10において、使用者が操作パネル36の操作スイッチ37を操作することで「赤みモード」を選択すると、制御部34は、「赤みモード」を実 手段74とを備える。 【0032】このような構成の冷蔵庫10において、使用者が操作パネル36の操作スイッチ37を操作することで「赤みモード」を選択すると、制御部34は、「赤みモード」を実行する。ここで「赤みモード」とは、肉や赤身魚などの ミオグロビンを含み赤身の食品Mを保存する貯蔵方法であって、食品Mの鮮 やかな赤色を維持又は向上させるための貯蔵方法である。 【0035】次いで、制御部34は、タイマ66によって測定される収納容器60内に食品Mが貯蔵されてからの経過時間が所定時間(例えば、1時間)に達するまで、酸素減少手段72を停止させた、あるいは酸素減少手段停止72の停 止を維持した状態で収納容器60内の食品Mを冷却することで、収納容器60内の酸素濃度を低下させずに食品Mが収納容器60内の酸素によって酸化しやすい状態を維持しつつ食品Mを冷却する(図5のステップS2、ステップS3参照)。つまり、収納容器60内に食品Mが貯蔵されてから所定時間に達するまでの期間は、食品Mの酸化を維持する期間に相当する。 【0036】なお、上記した所定時間は、収納容器60内に投入される食品Mの凍結が予想される時間以上に設定されることが好ましい。 【0037】そして、収納容器60内に食品Mが貯蔵されてから所定時間が経過すると、 収納容器60内の酸素を減少させ始めるための所定条件を満たしたとして、その後、酸素減少手段72の動作を開始して収納容器60内の酸素を減少させ始める(図5のステップS4参照)。そして、収納容器60内の酸素濃度が所定値以下になるまで、あるいは、酸素減少手段72の動作時間が所定時間に達するまで酸素減少手段72を動作させ、その後、酸素減少手段72を停 止する(図5のステッ て、収納容器60内の酸素濃度が所定値以下になるまで、あるいは、酸素減少手段72の動作時間が所定時間に達するまで酸素減少手段72を動作させ、その後、酸素減少手段72を停 止する(図5のステップS5参照)。また、酸素減少手段72の動作を開始した後も第2冷凍室46内が所定温度になるように継続して冷却されている。 【0038】以上のように、本実施形態の食品の貯蔵方法では、収納容器60内に食品Mが投入されてから所定条件を満たすまで、収納容器60内の食品Mを冷却 するとともに、酸素減少手段72を停止させ収納容器60内に貯蔵された食 品Mの酸化を維持する期間を設けている。 【0039】これにより、食品Mに含まれるミオグロビンのうち、青みを帯びた赤色(紫赤色)を呈する還元状態にあるミオグロビン(MbFe(II))が酸化され鮮やかな赤色を呈するオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)に変化し、食 品Mの色彩がより鮮やかな赤色となり、食品Mの赤みが向上する。また、食品Mに含まれるミオグロビンのうち、収納容器60に投入される前から既に酸化状態にあるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)は、還元状態のミオグロビン(MbFe(II))との間で可逆的に酸化還元反応が起こりえるが、上記のように酸素減少手段72を停止させ収納容器60内の酸素分圧がほ ぼ一定に維持されているため、オキシミオグロビン(MbFe(II)O2)の還元反応を抑えて収納容器60内に貯蔵された食品Mの鮮やかな赤色を維持することができる。 【数1】 【0040】そして、所定条件を満たしてから酸素減少手段72を動作させ収納容器60内の酸素を減少させるため、収納容器60内に投入された食品Mがある程度冷却されオキシミオグロビン 【0040】そして、所定条件を満たしてから酸素減少手段72を動作させ収納容器60内の酸素を減少させるため、収納容器60内に投入された食品Mがある程度冷却されオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)の還元反応を起こりにくくしてから収納容器60内の酸素を減少させることができる。そのため、 収納容器60内の酸素が減少しても、食品Mに含まれるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)が還元されて青みを帯びた赤色(紫赤色)を呈する還元状態にあるミオグロビン(MbFe(II))が生成されにくくなり、食品Mの鮮やかな赤色を維持することができる。 【0041】 しかも、所定条件を満たした後では、収納容器60内の酸素が減少しているため、食品Mに含まれるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)が上記式(1)に示すような褐色を呈するメトミオグロビン(metMbFe(III))に変化する、いわゆるメト化を抑えることができ、食品Mの劣化を抑え鮮度を維持することができ長期保存が可能になる。 【0042】特に、本実施形態では、収納容器60を配設する第1冷凍室44内の温度が、食品Mを凍結させることができる0℃以下に設定されている場合において、収納容器60内に投入された食品Mが凍結するまで酸素減少手段72を停止させた状態で収納容器60内の食品Mを冷却し、食品Mの凍結後に酸素 減少手段72の動作を開始して収納容器60内の酸素を減少させ始めることが好ましい。このような場合であると、食品組織が凍結し食品Mに含まれるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)がほぼ還元されることがない状態になってから収納容器60内の酸素を減少させることができ、より一層、食品Mに含まれるオキシミオグロビン(MbFe Mに含まれるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)がほぼ還元されることがない状態になってから収納容器60内の酸素を減少させることができ、より一層、食品Mに含まれるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)が還元されにく くなり、食品Mの鮮やかな赤色を維持しつつ、貯蔵空間の酸素を減少させ食品Mの鮮度を維持することができる。 【実施例】【0048】上述した「赤みモード」によって冷凍貯蔵された牛肉の色度を測定し、貯 蔵性能評価試験を行った。 【0049】試験では、実施例として、第1冷凍室44に配設した収納容器60内に牛肉を貯蔵してからT1(=1時間)経過するまで、つまり、時刻0から時刻T1まで酸素減少手段72を停止(OFF)させ、その後、時刻T1から時 刻T2(=1週間)まで酸素減少手段72を動作(ON)させて、収納容器 60内の酸素濃度を低下させた雰囲気下で牛肉を冷凍貯蔵した。 【0050】また、比較例1として、収納容器60内に食品Mを貯蔵した直後からT2(=1週間)経過するまで、つまり、時刻0から時刻T2まで酸素減少手段72を停止(OFF)させ て、収納容器60内の酸素濃度を低下させずに牛肉を冷凍貯蔵した。 【0051】比較例2として、収納容器60内に牛肉を貯蔵した直後からT2(=1週間)経過するまで、つまり、時刻0から時刻T2まで酸素減少手段72を動作(ON)させて、収納容器60内の酸素濃度を低下させた雰囲気下で牛肉 を冷凍貯蔵した。 【0052】比較例3として、収納容器60内に牛肉を貯蔵してからT1(=1時間)経過するまでつまり、時刻0から時刻T1まで酸素減少手段72を動作(ON)し、その後、時刻T1から時刻T2(=1週間)まで酸素減少手段 較例3として、収納容器60内に牛肉を貯蔵してからT1(=1時間)経過するまでつまり、時刻0から時刻T1まで酸素減少手段72を動作(ON)し、その後、時刻T1から時刻T2(=1週間)まで酸素減少手段72 を停止(OFF)させて、収納容器60内の酸素濃度を低下させずに雰囲気下で牛肉を冷凍貯蔵した。 【0053】なお、実施例、比較例1~3では、いずれも、第1冷凍室44内の温度を-20度に設定した。 【0054】上記のような実施例及び比較例1~3の各方法により貯蔵された牛肉について、収納容器60内に貯蔵してから1時間(T1)経過したもの、及び収納容器60内に貯蔵してから1週間(T2)経過したもののそれぞれについて、分光測色方法(JIS Z8722)により色を測定した。結果を下 記表1に示す。 【表1】 【0055】実施例及び比較例1と、比較例2及び3とを比較すると明らかなように、収納容器60内に牛肉を貯蔵してから1時間(=T1)経過するまで酸素減 少手段72を停止(OFF)し収納容器60内の酸素濃度を維持することで、鮮やかな赤色を維持したまま牛肉が凍結したが、収納容器60内の酸素濃度を低下させると紫赤色に変色した状態で牛肉が凍結した。 【0056】また、実施例では、収納容器60内に牛肉を貯蔵してから1時間(=T1) 経過後から酸素減少手段72を動作(ON)して収納容器60内の酸素を減少させることで、鮮やかな赤色を維持したまま牛肉を1週間凍結保存することができたが、比較例1では、凍結保存中に牛肉の色が褐色に変化し、比較例2では、紫赤色に変色した状態を維持したまま牛肉が1週間凍結保存され、比較例3では、凍結保存中に牛肉の色が褐色に変化しており ことができたが、比較例1では、凍結保存中に牛肉の色が褐色に変化し、比較例2では、紫赤色に変色した状態を維持したまま牛肉が1週間凍結保存され、比較例3では、凍結保存中に牛肉の色が褐色に変化しており、各比較例1~ 3では牛肉が褐色あるいは紫赤色に変色したが、本実施例では鮮やかな赤色を維持したまま冷凍保存が可能となっていた。 ウ以上によれば、乙13発明は、肉などのミオグロビンを含む赤色の食品を 冷蔵庫で貯蔵する場合、食品の冷却前に貯蔵空間の酸素を減少させると、食品が紫赤色になるため、赤色を維持するために、冷却時に酸素減少手段を一時停止して酸素化を維持する期間を設け、これにより、還元型ミオグロビンがオキシミオグロビンに変化することで食品の色彩がより鮮やかな赤色になり、その後、酸素を減少させて保存することにより、貯蔵中も新鮮である と人々に好まれる鮮やかな赤色を維持することができるという発明と認められる。(乙13【0004】~【0006】、【0038】、【0039】)。 したがって、乙13発明は、還元型ミオグロビンが大量に含まれることによって赤紫色になっている肉について、貯蔵に先立ち、酸素にさらすことによって、還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに変化させ、その後の酸素 を減少させる工程等とあいまって、当該肉が所望の色調になるものという工程を有するといえる。 エ乙12公報には、そこに記載された発明の課題として、「消費者の手に渡るまで、色、臭い、味などを維持することが困難になる。」(乙12【0003】)、「ブロック状態を維持しているため、スライスされたローストビーフ のスライス面が外部から見えず、ローストビーフの品質、特に色調を消費者にアピールできない。」(乙12【0007】)との記載があり、消費者 ク状態を維持しているため、スライスされたローストビーフ のスライス面が外部から見えず、ローストビーフの品質、特に色調を消費者にアピールできない。」(乙12【0007】)との記載があり、消費者への訴求を問題として、その色調を問題とし、具体的に赤味の強さを問題としている。また、本件出願日当時、食肉の色は、ミオグロビンの割合に左右され、家畜の屠殺後、食肉は還元型ミオグロビンのために紫赤色になり、空気にさ らされて、還元型ミオグロビンが酸素と結合すると、食肉が鮮やかになることが技術常識であり(前記ア))、このことは、その機序から、ローストビーフにも生肉も妥当し、それらが技術常識であったと認められる。 乙12発明の課題が上記のとおりのものであったところ、同じ食肉の分野であり、ローストビーフにおけるのと同じ技術常識を適用することができる 乙13発明について、これを乙12発明に組み合わせて相違点1に係る本件 発明の構成とすることは、当業者が容易に想到することができたと認められる。 なお、乙13公報では、特許請求の範囲には、冷気を用いた貯蔵方法とされている一方、その実施例は、最終的な貯蔵を冷凍によって行っている。しかし、特許請求の範囲には、文言上、冷凍による貯蔵のほか、冷蔵による貯 蔵も技術的範囲としており(実施例においても、酸素化の工程は、冷蔵状態で行っている。)、冷凍による貯蔵でなければならないことなどが記載されているものではない。また、ミオグロビンの変化に関係する相違点1に係る本件発明の工程の組合せの場面において、貯蔵条件は関係ないから、乙13公報の実施例の貯蔵が冷凍により行っているとしても、乙12発明に、乙13 公報に記載された発明を組み合わせることは容易に想到することができたとの上記判断 おいて、貯蔵条件は関係ないから、乙13公報の実施例の貯蔵が冷凍により行っているとしても、乙12発明に、乙13 公報に記載された発明を組み合わせることは容易に想到することができたとの上記判断を左右するものではないといえる。 以上によれば、相違点1に係る本件発明の構成は、当業者が容易に想到することができたというべきである。 相違点2について ア乙14公報には、以下の記載がある。 【特許請求の範囲】生肉を酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生する脱酸素剤とともに実質的に非通気性の容器に密封し、冷蔵あるいは氷温に保存することを特徴とする生肉の保存方法 【発明の詳細な説明】本発明は生肉の保存方法に関するものである。 特に生肉の鮮度の指標となる赤味の保持効果を高めた発明に関するものである。 更に詳しくは、脱酸素剤効果によって生肉の変質を防止するとともに従来、 脱酸素剤による保存方法の欠点であった、無酸素状態に置くことでひき起こ されていた生肉が赤紫色あるいは赤黒く変色することを防止し、無酸素状態下においてもあざやかな赤味を保持する生肉の保存方法に関する発明である。 畜肉や魚肉は赤色を呈しているが、この赤い色はミオグロビンやヘモグロビンによるもので、一般にミオグロビンが80~90%を占めている。ミオ グロビンは空気中の酸素と結合してオキシミオグロビンの形でも存在するが、肉類の鮮度が落ちるとオキシミオグロビンは酸化されて褐色のメトミオグロビンに変化し、肉は褐色を呈するようになる。 本発明は肉類を脱酸素剤とともに密封するものであり、本発明方法の場合は包装容器を開封せずに、肉類の赤色を保持することが可能である。 従来、肉類は流通経路においては空気中の酸素と容易にふれる 本発明は肉類を脱酸素剤とともに密封するものであり、本発明方法の場合は包装容器を開封せずに、肉類の赤色を保持することが可能である。 従来、肉類は流通経路においては空気中の酸素と容易にふれる様な包装方法が採用されているので、肉類の変色または退色現象がおきる場合が多かった。 例えばチルドビーフは牛肉のブロックをEVA/PVDC/EVAの共押出しフィルムで収縮パックする方法が採用されているが、この場合はパッ ク内に残存する酸素またはフィルムを透過して侵入して来る空気中の酸素により変色または退色がおこる欠点があった。 肉の赤色を保持させる方法としては発色剤として硝酸塩を用いる方法があるが、この方法は化学物質を食品に添加するので好ましい方法ではない。 本発明者等は肉類を脱酸素剤と共に密封し、肉類の退色を防止する方法につ いて研究を行なった結果、炭酸ガスを発生させながら、容器中の酸素濃度を低下させることによって、密封した場合でも肉の赤味を保持出来ることを発見して本発明を完成するに至った。 本発明において、肉類は特に限定されるものではなく、例えばとり、豚、牛肉等の畜肉、またはマグロ、カツオなどの魚肉等の食肉を意味するもので ある。 従来の脱酸素剤による生肉の保存方法は特開昭51-104061、特公昭54-34822、特開昭58-158129、特開昭58-183033、特開昭54-41355、などに記載されているが、いずれも脱酸素効果によって、生肉の赤味成分であるミオグロビンを還元型に保持し、開封して空気中の酸素に曝すことで還元型ミオグロビンの赤紫色から酸素型ミオ グロビンの鮮紅色に発色させる方法である。 炭酸ガスを発生しない型の脱酸素剤を使用した場合あるいはN2ガス、CO2ガス置換によっ 中の酸素に曝すことで還元型ミオグロビンの赤紫色から酸素型ミオ グロビンの鮮紅色に発色させる方法である。 炭酸ガスを発生しない型の脱酸素剤を使用した場合あるいはN2ガス、CO2ガス置換によって容器内の酸素濃度が数%~10数%程度に達すると生肉中のミオグロビンはメト化して急速に赤味が失われて褐変する。 そして脱酸素した後、生肉中のメトミオグロビンはメトミオグロビン還元 酵素の働きで還元され、還元型ミオグロビンに変化する。還元型ミオグロビンに変化した生肉はメトミオグロビンの褐色から還元型ミオグロビンの色調である赤紫色へと変色し、脱酸素包装中において、赤紫色の色調を保持することになる。 しかし、本発明の特徴である炭酸ガス発生をともなう脱酸素剤を使用した 場合、従来と全く異なる色調の変化が生じることが見い出された。 すなわち、脱酸素剤によって酸素が吸収され、容器内の酸素濃度が低下しても、同時に炭酸ガス濃度が高まってゆく中では生肉の褐変現象が生じにくく、脱酸素後においても酸素型ミオグロビンの色調であるあざやかに赤い色調に近い赤味を保持することが出来ることである。 この生肉の赤味は脱酸素後においてもほとんど変化せず、長期保存中においても、還元型ミオグロビンの赤紫色に変化することがなく赤味の強い色調を保持した。 また容器を開封し、空気中の酸素に曝しても通常の脱酸素剤の時と同様、生肉は酸素型ミオグロビンの鮮紅色を保持し、炭酸ガス発生型と通常を脱酸 素剤との差はなかった。 ところで、公知文献、特開昭54-41355には炭酸ガス発生型脱酸素剤の場合の記載があり、炭酸ガスの静菌効果によって鮮度の保持がなされている。しかし、色保持に関しては本発明の如き特別顕著な効果は示されていない。 本発明 54-41355には炭酸ガス発生型脱酸素剤の場合の記載があり、炭酸ガスの静菌効果によって鮮度の保持がなされている。しかし、色保持に関しては本発明の如き特別顕著な効果は示されていない。 本発明者らはこの点について疑問を持ち、該発明について種々の検討を行 なった結果、生肉の色保持に関し、本発明方法との間に重要な相違点を見い出した。 特開昭54-41355に記載されている炭酸ガス発生型脱酸素剤は、酸素吸収開始と同時に炭酸ガスの発生が行なわれるものではなく、ほぼ容器内の酸素が吸収された後に炭酸ガスが発生する型であり、本発明に使用する脱 酸素剤とは機能が全く異なるものであった。 該発明のCO2発生型脱酸素剤を生肉の保存に使用すると、始めに酸素のみが吸収され、容器内の酸素濃度が低下するとともに、生肉の褐変が生じ、褐変後の生肉を炭酸ガスに曝しても、もはや色もどりをせず、全く炭酸ガスの色保持効果が認められなかった。 本発明方法の場合のCO2発生型脱酸素剤は、02を吸収し始めると同時にCO2を発生する型であり、生肉の褐変が生じる02濃度に達する前にCO2の発生が生じる型である。また酸素の吸収量に対するCO2の発生量は02吸収量1モル当り、0.2モル以上であるが、好ましくは0.5から2モルである。2モル以上では容器が著しく変形するなどの弊害を生じるので好まし くない。 本発明においては脱酸素剤としては例えば鉄粉または亜二チオン酸塩、亜硫酸塩、第一鉄塩などの還元性の無機塩、ヒドロキノン、カテコール等で例示されるポリフェノール類、アスコルビン酸、エリソルビン酸及びその塩などで例示される還元性の多価アルコール、からなる群から選ばれる還元剤を 主たる有効成分とするCO2発生型の脱酸素剤が使用される。 ール類、アスコルビン酸、エリソルビン酸及びその塩などで例示される還元性の多価アルコール、からなる群から選ばれる還元剤を 主たる有効成分とするCO2発生型の脱酸素剤が使用される。 本発明において用いられる脱酸素剤は脱酸素剤組成物を通気性包材に密封したものである。 この場合通気性包材としては有孔プラスチックフィルムまたはこれと紙、布、不織布またはこれらの積層体から選ばれる通気性フィルムまたはシートとを積層した包材が用いられる。 本発明において、非通気性の容器としては非通気性の包材からなる容器または気密容器が用いられる。この場合の非通気性包材は通常、酸素透過度100ml/㎡・atom・d(20℃)以下のものが用いられる。例えば塩化ビニリデンまたは塩化ビニリデンを被覆またはラミネートしたフィルムは好適に用いられる。 フィルムは二軸延伸したもの、又はそれをラミネートしたものが強度の点で好ましい。非通気性包材の密封は通常、ヒートシールによるが、封止具を用いてもよい。気密容器としては成形およびヒートシール可能なプラスチックトレイと蓋材からなり、蓋材を非通気性フィルム又はシートを用いて密封シールするもの、又はプラスチックもしくは金属製密閉コンテナが用いられ る。 また本発明方法の場合は肉類は例えば10℃以下の低温で保存されるのが普通である。従ってこの様な温度においても効果を発揮する様な脱酸素剤を適宜選択して使用することが必要である。 以上の様に本発明方法によって保存することによって赤色を有する肉類 を得ることが可能である。 次に実施例によって本発明を更に詳しく説明する。 実施例 1生の牛ひき肉100gをプラスチックトレイに入れ、エージレスG-200(三菱瓦斯化学製CO2発生型 を得ることが可能である。 次に実施例によって本発明を更に詳しく説明する。 実施例 1生の牛ひき肉100gをプラスチックトレイに入れ、エージレスG-200(三菱瓦斯化学製CO2発生型脱酸素剤)と共に非通気性のKON/PE の包材で密封包装し、5℃で冷蔵保存した。 スタートの包装内の02量は150ccであった。 比較例 1エージレスG-200のかわりにエージレスS-200(三菱瓦斯化学製CO2を発生しない脱酸素剤)を用いた以外は実施例1と同様にして実施した。 比較例 2脱酸素剤を使用しない以外は実施例1と同様にして実施した。それぞれの結果を表-1、表-2に示した。 表-1より本発明方法の実施例1が色、風味ともに良好に保存出来ることがわかる。CO2を発生しない脱酸素剤区の比較例1も風味の保持は出来るが色の保持が出来ないことがわかる。又、包装内のガス分析結果を見ると比較例2は02がどんどん低下し7日で0.1%になっているが、これは肉が 腐敗しO2を消費したためである。 イ上記によれば、乙14発明は、生肉の保存方法に係る発明であり、炭酸ガスを発生する脱酸素剤等を使用した場合(実施例で炭酸ガスを発生させる脱酸素剤として用いられたエージレスG-200は非鉄系の脱酸素剤である(乙30)。)、いったん生肉のミオグロビンはメトミオグロビンに変化し、 その後、メトミオグロビン還元酵素によって還元型ミオグロビンに変化し、そのまま赤紫色の色調を保持することが知られていたところ、炭酸ガスを発生させる脱酸素剤を用いると、酸素濃度が低下しても同時に炭酸ガス濃度が高まっていく中では、生肉の褐色現象(メトミオグロビンへの変化)が生じにくく、オキシミオグロビンの色調である鮮やかな赤色を スを発生させる脱酸素剤を用いると、酸素濃度が低下しても同時に炭酸ガス濃度が高まっていく中では、生肉の褐色現象(メトミオグロビンへの変化)が生じにくく、オキシミオグロビンの色調である鮮やかな赤色を保持することがで きるとする発明であると認められる。 ここで、乙12発明は、ローストビーフのスライス面につき、スライス直後の色味は、外気と接触することによって酸化されてしまい、望ましい赤い色調等が保持できなくなることを課題とし、その解決手段として、ロースト ビーフを脱酸素剤と共に酸素ガスバリア性材料からなる容器に配置し、容器内を窒素ガス及び(又は)二酸化炭素ガス雰囲気に置換した後に、容器を密封し、容器内の残存酸素濃度を0.01%以下に維持されるようにするものである(乙12【0011】)。これらによれば、乙12発明において脱酸素剤を同封するのは、換気が不十分であったとしても酸素を除去できるように し、また、いったん空気を置換して酸素が除去された後、再び包装内に酸素が侵入してもこれを除去できるようにすることを目的にするものであると認められる。したがって、乙12発明における脱酸素剤について求められている機能は酸素を除去できるというところにあり、その機能を果たすのであれば、その同封の目的とする効果が変わるものでなく、その組成の違いに着 目されるものではないといえる。 他方、乙14発明によれば、当時、食肉の分野において、非鉄系の脱酸素剤が用いられていた。また、非鉄系脱酸素剤は、食肉製品の異物混入対策として行われる金属探知機に反応しないという利点もあった(乙22、23、弁論の全趣旨)。さらに、乙14公報によれば、その実施例1との比較(表‐ 1)において、生肉に関してではあるが、その保存に、非鉄系の脱酸素剤を用いた 応しないという利点もあった(乙22、23、弁論の全趣旨)。さらに、乙14公報によれば、その実施例1との比較(表‐ 1)において、生肉に関してではあるが、その保存に、非鉄系の脱酸素剤を用いた方が鉄系の脱酸素剤を用いるよりも、赤味を維持できるとの結果が示されている。 乙12発明において脱酸素剤について求められていた機能は酸素を除去できるというものであったところ、同じ食肉の分野において、上記のとおり の技術等が知られていたのであるから、当業者は、少なくとも乙12発明の窒素ガス又は(及び)二酸化炭素ガスに置換するという工程を維持したまま、鉄系の脱酸素剤に代えて非鉄系の脱酸素剤のみを用いることは、当業者が容易に想到することができたというべきである。本件発明は、包材内を窒素ガス又は二酸化炭素ガス雰囲気に置換している構成と包材内を窒素ガス又は 二酸化炭素ガス雰囲気に置換していない構成のいずれをも含むものである から、当業者は、少なくとも、乙12発明の脱酸素剤を非鉄系脱酸素剤にして、前者の構成とすることは容易に想到することができたといえる。 なお、乙12公報には、二酸化炭素ガスへの置換と脱酸素剤の封入を併用する構成を含む発明が記載されているのであるから、脱酸素剤によって二酸化炭素が発生することが乙12発明の鉄系脱酸素剤を二酸化炭素が発生す る非鉄系脱酸素剤に代えることを阻害するとはいえない。 相違点3について本件発明は、酸素濃度の検出限界以下の条件下におけるミオグロビン割合を本件ミオグロビン割合と規定している。 本件発明の課題は、特定加熱食肉製品をスライスした後の褐変を防止して優 れた肉色を維持することにあり(【0008】)、その解決手段として、酸素化する工程、その後、ガスバリア性の ている。 本件発明の課題は、特定加熱食肉製品をスライスした後の褐変を防止して優 れた肉色を維持することにあり(【0008】)、その解決手段として、酸素化する工程、その後、ガスバリア性のある包材で製品と非鉄系脱酸素剤を密封するという手順で処理すると、酸素濃度が検出限界以下に至ったときに、本件ミオグロビン割合になり、望ましい赤の色調を呈するというものである(【0009】)。そうすると、方法の発明である本件発明における課題解決のための手段 は、酸素化及びその後のガスバリア性のある包材で製品と非鉄系脱酸素剤を密封するという工程にあるといえる。上記工程を行う者は、特定加熱食肉製品に応じて酸素化の時間、包材の容量等の選択、脱酸素剤の種類、量の選択等をすることはできるが、酸素濃度が検出限界以下になった時のミオグロビン割合自体を直接コントロールするものではない。酸素濃度が検出限界以下になった際 に本件ミオグロビン割合になっていることは、本件発明で定められた工程を行った場合のうち、本件発明の実施といえる場合を規定したものと理解することができる。 前提事実で認定したとおり、本件出願日当時、食肉の色味については食肉のミオグロビンの割合に左右され、還元型ミオグロビンの割合が多いと赤紫色 になり、オキシミオグロビンの割合が多いと消費者への訴求の観点から望まし い赤色になり、メトミオグロビンの割合が多いと褐色になってしまうこと、メトミオグロビンの割合が50%よりも多くなってしまうと明瞭に色調が劣化していると判断されてしまうことが技術常識になっていた。したがって、メトミオグロビンの割合をできるだけ低い状態に抑え、オキシミオグロビンの割合をできるだけ高く維持することが、消費者等へ訴求する観点からは望ましいこ とは技術 が技術常識になっていた。したがって、メトミオグロビンの割合をできるだけ低い状態に抑え、オキシミオグロビンの割合をできるだけ高く維持することが、消費者等へ訴求する観点からは望ましいこ とは技術常識になっていたと認められる。 本件明細書には、実施例において、オキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上を満たすことについて、それが望ましい割合であると記載されている。もっとも、それらの数値について、何らかの臨界的意味を示す記載はないし、これらの数値が変動し た場合に前記発明の課題の達成ができなくなることを示す記載もない。他方、前記のとおり、オキシミオグロビンの割合がより多く、メトミオグロビンの割合がより少ない方が、色調の観点からはより望ましいことは技術常識であった。 当業者は、ローストビーフのオキシミオグロビン、メトミオグロビン、還元型ミオグロビンの値を測定することができ、本件明細書にも実施例等のロースト ビーフのそれらの値についての記載がある(【0056】)。本件ミオグロビン割合は、本件発明で定められた工程を行った場合のうち、本件発明の実施といえる場合を規定したものと理解することができるところ、本件明細書の記載、上記の技術常識等からすると、本件ミオグロビン割合のうち、オキシミオグロビン及びメトミオグロビンの割合は、一定の測定を行った上で、技術常識に基 づいて、望ましい色調との関係で当業者が適宜設定できたものといえる。また、本件発明では還元型ミオグロビンの割合を34%以上としているところ、前記技術常識からすると、望ましい色調であるためには、メトミオグロビンの割合を下げオキシミオグロビンの割合を上げることが必要であることは認められるものの、還元型ミオグロビン割合を一定値以上 ところ、前記技術常識からすると、望ましい色調であるためには、メトミオグロビンの割合を下げオキシミオグロビンの割合を上げることが必要であることは認められるものの、還元型ミオグロビン割合を一定値以上とすることが本件発明の課題 としていた望ましい色味に貢献するかは明らかではない。本件明細書には還元 型ミオグロビンの割合が上昇することによって開封前に本件発明が課題を解決したとする望ましい色調が得られることについて何ら記載されていない。還元型ミオグロビンの割合については、上記のとおり本件発明の課題との関係の技術的意義について本件明細書に記載されていないこと、メトミオグロビンの割合とオキシミオグロビンの割合が規定されると、その結果、還元型ミオグロ ビンがとれる割合の範囲も自ずと限定されることからすると、還元型ミオグロビンの割合を34%以上としたことは、本件発明における前記課題解決手段によって実現される結果において、本件発明の課題が解決されているとする割合を適宜、設定したものといえる。 これらによれば、本件発明の内容、本件明細書の記載、技術常識等に照らせ ば、本件発明における本件ミオグロビン割合は、技術常識を基礎として、本件発明における前記課題解決手段によって実現される結果において、本件発明の課題が解決されているとする割合を適宜、設定したものといえ、その割合の設定は当業者が容易にすることができたと認められる。 原告らは、本件特許に係る製品の製造の困難性を根拠に本件ミオグロビン割 合を見出すことが困難であるなどと主張するが、本件発明の工程等についての困難性が別途問題となるとしても(この点については、前記、)、それとは別に、前記技術常識の下で、本件ミオグロビン割合を設定することが容易にできたことについて困難性が 、本件発明の工程等についての困難性が別途問題となるとしても(この点については、前記、)、それとは別に、前記技術常識の下で、本件ミオグロビン割合を設定することが容易にできたことについて困難性があったことを認めるに足りず、また、本件発明の工程等について当業者が容易に想到することができたことは、前記、のとお りである。 なお、本件明細書には、「還元型ミオグロビンが34%以上とすることができるため、包材を開封して空気に曝すと鮮明な赤色が回復すると考えられる。」(【0044】)との記載がある。もっとも、前記のとおり、本件明細書によれば、本件発明は、特定加熱食肉製品をスライスした後の褐変を防止して優れた 肉色を維持することを課題として、望ましい色調の維持を目的とするものであ って、還元型ミオグロビンの割合を一定以上とすることであえて赤味を抑えておくなどということを課題としていたとは認められない。したがって、本件発明における課題との関係において、本件ミオグロビン割合における還元型ミオグロビンの割合に特段の技術的意義を見出したものとは認められない。 以上によれば、本件発明における本件ミオグロビン割合は、本件発明におけ る前記課題解決手段によって実現される結果において、本件発明の課題が解決されているとする割合を規定したものといえるところ、技術常識等によれば、本件オミクロン割合は、当業者が上記の観点から適宜設定することができたものであり、容易に想到することができたものといえる。 原告らは、本件発明につき、冷蔵保存する場合には、実施例を前提にしても、 スライス加工から20日間後のものについてまで色調が維持されており、乙14発明等に比して予測し難い顕著な効果を有していると主張する。 乙14公報には、実施例におい は、実施例を前提にしても、 スライス加工から20日間後のものについてまで色調が維持されており、乙14発明等に比して予測し難い顕著な効果を有していると主張する。 乙14公報には、実施例において13日後の色合い等を検討していることが記載されている(表‐1)ものの、14日後以降の色合いがどうなるのかについては何ら記載がなく、本件発明に従来技術に照らして顕著な効果があると認 めるに足りる証拠はない。よって、本件発明が、乙14発明に照らして顕著な効果を有していることを根拠に進歩性を有しているということはできない。 以上のとおりであって、本件発明の構成のうち、少なくとも、窒素ガス又は(及び)二酸化炭素ガスに置換する工程を含み、非鉄系脱酸素剤のみを用いる構成(前記イ参照)については、乙12発明との各相違点について本件発明 の構成を想到することが容易であるといえるから、本件発明は、特許無効審判によって無効とされるべき事由があると認められる。 6 結論以上によれば、被告製品2については、販売されたもの全てが本件発明の技術的範囲に属するといえ、被告製品1、3についてもそのほとんどが本件発明の技 術的範囲に属するといえるが、本件特許は、特許無効審判によって無効とされる べき事由があるといえるから、その余の争点について判断するまでもなく、原告らの請求には理由がない。よって、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官仲田憲史 裁判官棚井啓は、転補につき署名押印することができない。 裁判長裁判官柴田義明 別紙被告製品目 田憲史 裁判官棚井啓は、転補につき署名押印することができない。 裁判長裁判官柴田義明 別紙被告製品目録 下記のローストビーフ。 1 被告製品1 名称ローストビーフ(炭火焼・もも・スライス)内容量ローストビーフ74g ソース10g・レホール3g 2 被告製品2名称ローストビーフ(炭火焼・もも・スライス) 内容量ローストビーフ112g ソース10g×2・レホール3g 3 被告製品3名称ローストビーフ(スライス)内容量ローストビーフ77g・添付ソース10g×1・添付レホール3g ×1 別紙被告方法目録 1 被告方法1a ローストビーフをスライスする工程と,b スライスされたローストビーフにおける還元型ミオグロビンをオキシミオグ ロビンに酸素化する工程と,c 当該酸素化する工程の後,スライスされたローストビーフを「キーピットYF」とともにエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む物質で構成されている包材に密封する工程とを含み,d 上記スライスされた上記ローストビーフは,エチレン-ビニルアルコール共重 合体を含む物質によって構成された包材に密封された状態,且つ,当該包材内の酸素濃度が0.000%の条件下で,全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12.07%以上,メトミオグロビンが48.22%以下,還元型ミオグロビンが34.06%以上となる割合となっていることe (構成a~d)を特徴とするローストビーフの製造方法。 2 被告方法2a ローストビーフをスライスする工 以下,還元型ミオグロビンが34.06%以上となる割合となっていることe (構成a~d)を特徴とするローストビーフの製造方法。 2 被告方法2a ローストビーフをスライスする工程と,b スライスされたローストビーフにおける還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程と, c 当該酸素化する工程の後,スライスされたローストビーフを「キーピットYF」とともにエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む物質で構成されている包材に密封する工程とを含み,d 上記スライスされた上記ローストビーフは,エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む物質によって構成された包材に密封された状態,且つ,当該包材内 の酸素濃度が0.002%以下の条件下で,全ミオグロビン量を100%とし たときにオキシミオグロビンが13.16%以上,メトミオグロビンが44. 88%以下,還元型ミオグロビンが39.34%以上となる割合となっていることe (構成a~d)を特徴とするローストビーフの製造方法。 3 被告方法3a ローストビーフをスライスする工程と,b スライスされたローストビーフにおける還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程と,c 当該酸素化する工程の後,スライスされたローストビーフを「キーピットYF」 とともにエチレン-ビニルアルコール重合体を含む物質で構成されている包材に密封する工程とを含み,d 上記スライスされた上記ローストビーフは,エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む物質によって構成された包材に密封された状態,且つ,当該包材内の酸素濃度が0.000%の条件下で,全ミオグロビン量を100%としたと きにオキシミオグロビンが18.03%以上,メトミオグロビ む物質によって構成された包材に密封された状態,且つ,当該包材内の酸素濃度が0.000%の条件下で,全ミオグロビン量を100%としたと きにオキシミオグロビンが18.03%以上,メトミオグロビンが44.69%以下,還元型ミオグロビンが36.26%以上となる割合となっていることe (構成a~d)を特徴とするローストビーフの製造方法。
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