令和4(ワ)12383 特許報酬、損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年1月31日 東京地方裁判所
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令和6年1月31日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和4年(ワ)第12383号特許報酬、損害賠償等請求事件口頭弁論終結日令和5年10月30日判決 原告X 被告全国農業協同組合連合会 同訴訟代理人弁護士菅原清暁 同西村公芳 同吉田夏子 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は、原告に対し、5320万円を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の要旨本件は、被告の元従業員である原告が、被告に対し、別紙1特許目録記載1ないし8の各特許に係る発明(以下、同目録記載の番号の順に「本件発明1」ないし「本件発明8」といい、これらを総称して「本件各発明」という。)は いずれも原告の職務発明であり、被告に本件各発明に係る特許を受ける権利を承継させたと主張して、特許法(平成20年法律第16号による改正前のもの又は平成27年法律第55号による改正前のもの。)35条3項に基づき相当の対価の額である4820万円の支払を求めるとともに、被告の従業員等から違法なハラスメントを受けたと主張して、民法715条1項(使用者責任)に 基づき、損害金500万円の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠(以下、書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨等により容易に認められる事実)⑴ 当事者原告は被告の元従業員であり、被告は農業の経営及び技術の向上に関する指導等の事業を行う連合会である(弁論の全趣旨)。 ⑵ 職務発明に関する被告の社内規定ア特 られる事実)⑴ 当事者原告は被告の元従業員であり、被告は農業の経営及び技術の向上に関する指導等の事業を行う連合会である(弁論の全趣旨)。 ⑵ 職務発明に関する被告の社内規定ア特許権等管理細則(甲3、4、乙9、弁論の全趣旨)被告は、特許権等の管理手続について、「特許権等管理細則」(平成23年7月1日改定前の名称は「発明等管理細則」。以下「本件細則」という。)を定めている。 本件細則は、昭和61年7月1日に施行され、その後も改定が繰り返されているところ、その出願日を基準に、本件発明1ないし5及び8については平成17年7月29日改定後のもの(甲3。以下「平成17年細則」という。)が、本件発明6及び7については、平成23年7月1日改定後のもの(乙9の1。以下「平成23年細則」という。)が、それぞれ適用 される。 平成17年細則及び平成23年細則には以下の定めが存在する(なお、「会」とは被告のことを指す。)。 平成17年細則について「第3条職務発明をした発明者が特許出願をする場合は、次による。 (1)発明者は、出願する権利の譲渡証(様式1)を付して特許出願提案書(様式2)により、当該室部長に提案する。 (2)当該室部長は、本所当該部長または県本部長に提案する。 (3)本所当該室部長または県本部長は、出願内容を検討し、出願手続を行う。 第4条会は、前条第3号による出願手続をした日から当該権利を 承継する。」平成23年細則について「第3条職務発明者は、出願する権利の譲渡証(様式1)を付して特許等出願提案書(様式2)により、本所当該部または県本部に提案する。 平成23年細則について「第3条職務発明者は、出願する権利の譲渡証(様式1)を付して特許等出願提案書(様式2)により、本所当該部または県本部に提案する。 2.本所当該部または県本部は、発明内容を検討し、出願手続を行う。 第4条会は、出願手続をした日から当該権利を承継する。なお、権利を承継する対価は、原則として無償とする。」イ特別表彰の適用基準に関する内規(乙1、10、弁論の全趣旨) 被告は、特別表彰の判断基準について、「特別表彰の適用基準に関する内規」(以下「本件内規」という。)を定めている。 本件内規は、平成17年3月1日に施行され、その後も改定が繰り返されているところ、その登録日を基準に、本件発明1ないし5については平成19年6月1日改定後のもの(乙10の3)が、本件発明6及び8につ いては平成27年4月1日改定後のもの(乙1)が、本件発明7については平成28年10月1日改定後のもの(乙10の6。以下「平成28年内規」という。)が、それぞれ適用される。 平成28年内規の内容は別紙2のとおりである(ただし、同内容は抜粋である。)。 ⑶ 本件各発明に係る特許権の設定登録について原告は、被告の従業員であった間に、本件各発明を行い、本件各発明は原告の職務発明に該当し、被告は、本件細則に基づき、原告から本件各発明に係る特許を受ける権利を承継した。 本件各発明は、それぞれ、別紙1特許目録の「出願日」欄記載の日に特許 出願され、同目録の「登録日」欄記載の日に特許権の設定登録がされた(乙 7、15ないし17)。 ⑷ 原告は、平成30年11月12日付けで被告に対する民事調停の申立てをした(乙8)。 ⑸ 原告は、令和 録の「登録日」欄記載の日に特許権の設定登録がされた(乙 7、15ないし17)。 ⑷ 原告は、平成30年11月12日付けで被告に対する民事調停の申立てをした(乙8)。 ⑸ 原告は、令和4年5月23日、本件訴訟を提起した。 ⑹ 被告は、原告に対し、令和4年9月22日の本件口頭弁論期日において、 本件発明1ないし6及び8に係る相当の対価請求権並びに違法なハラスメントに基づく損害賠償請求権についての消滅時効を援用する旨の意思表示をした(当裁判所に顕著な事実)。 3 争点⑴ 特許法35条3項に基づく相当の対価請求について ア相当の対価の額(争点1)イ相当の対価請求権に係る消滅時効の成否(争点2)⑵ 違法なハラスメントに基づく損害賠償請求についてウ違法なハラスメントの有無(争点3)エ損害の発生及び額(争点4) オ損害賠償請求権に係る消滅時効の成否(争点5)第3 争点に関する当事者の主張 1 特許法35条3項に基づく相当の対価請求について⑴ 争点1(相当の対価の額)について(原告の主張) ア一般的な企業では、発明を特許出願した場合(出願補償)や発明を特許登録した場合(登録補償)に職務発明の対価を支払うことを定めている。 出願補償や登録補償の金額については、公表された基準は存在しないが、一般的な企業における支給水準からすれば、本件各発明に対する出願補償は各10万円、登録補償は各30万円の合計320万円とすべきである。 また、本件発明2及び3については、実用化され、現在も被告において 利用されているから、発明の実施に対する補償(実績補償)として1年当たり150万円の対価が発生しており、本件訴訟では9年分の対価に相当する合計2700万円を請求す され、現在も被告において 利用されているから、発明の実施に対する補償(実績補償)として1年当たり150万円の対価が発生しており、本件訴訟では9年分の対価に相当する合計2700万円を請求する。 さらに、本件発明7については、物流全体での利用が可能な画期的な発明であったことからすれば、同様に1年当たり150万円を支払うべきで あり、本件訴訟では5年分の対価に相当する750万円を請求する。 そして、本件発明8については、今後の農業ハウスの省エネルギー化に寄与するものであるから、同様に1年当たり150万円を支払うべきである。本件訴訟では7年分の対価に相当する1050万円を請求する。 したがって、本件各発明に関する相当の対価の額は、上記の金額を合 計した4820万円とするのが相当である。 イこれに対し、被告は、本件発明7を利用したACトップ(生産品を段ボールに梱包し輸送をする際に、積み上げた段ボールの上部に乗せる輸送積荷用動吸振器)が実用化に至らなかったと主張する。 しかし、平成28年3月14日付けの被告生産資材部が作成した資料 (甲9)では、本件発明7に係る特許は承継すべき有用な特許であると明記されている上、最近の新聞記事等(甲15ないし17)においても、被告が本件発明7に関する実証実験を継続していることが記載されている。 したがって、ACトップが実用化に至らなかったという被告の主張は誤りである。 (被告の主張)ア原告は、本件各発明に関する相当の対価の額は合計4820万円とすべきであると主張するが、この金額が相当であることを示す根拠は示されておらず、そもそも、本件発明7以外の発明に係る相当の対価請求権ついては、消滅時効が完成している。 イ本 0万円とすべきであると主張するが、この金額が相当であることを示す根拠は示されておらず、そもそも、本件発明7以外の発明に係る相当の対価請求権ついては、消滅時効が完成している。 イ本件発明7について、被告は、その発明を利用した製品としてACトッ プの実用化に向けた輸送試験等を実施した。 しかし、上記試験等の結果、ACトップには、トラックの輸送時に発生する横揺れに対して効果は認められず、効果が認められた上下揺れについても、重量物を配置するなどの他の方法によっても同様の効果を得ることができる可能性があった。 他方、上記試験等を実施していく中で、ACトップについては、輸送する貨物の上部に設置するものであり、それ以上の貨物を重ねることができなくなるため、貨物効率が下がる、貨物の上部にACトップを設置することで、貨物に負担がかかる、ACトップを導入した場合、配送後にACトップを産地に再度輸送する必要があるなどといったデメリットが存在する ことが判明し、最終的にACトップは実用化に至らなかった。 したがって、本件発明7は、業務上活用できるような有益な発明とはいえないから、同発明に係る相当の対価請求権は発生しない。また、仮に何らかの相当の対価請求権が発生するとしても、平成28年内規においては、特許権の設定登録1件につき3万円を支給すると定められていることから、 相当の対価の額は3万円とすべきである。 ウこれに対し、原告は、平成28年3月14日付けの被告生産資材部が作成した資料(甲9)や最近の新聞記事等(甲15ないし17)の各記載に基づき、本件発明7(ACトップ)が業務上活用できる有益な発明であると主張する。 しかし、上記資料の記載はあくまで実用化に向けた取組を継 の新聞記事等(甲15ないし17)の各記載に基づき、本件発明7(ACトップ)が業務上活用できる有益な発明であると主張する。 しかし、上記資料の記載はあくまで実用化に向けた取組を継続する意思を示したものにすぎず、また、原告の指摘する新聞記事等はいずれもACトップとは異なる技術を用いた実証実験に関するものである。上記のとおり、被告はACトップの実用化に向けた取組を行ったものの、その課題を解決することはできず、最終的には本件発明7とは異なる技術を用いて、 実証実験を継続しているのである。 そうすると、原告の指摘する上記の資料や新聞記事等の各記載は、本件発明7(ACトップ)が業務上活用できる有益な発明であることを裏付けるものではない。 ⑵ 争点2(相当の対価請求権に係る消滅時効の成否)について(被告の主張) 一般に特許法35条3項に基づく相当の対価請求権は、権利の譲渡時がその消滅時効の起算点であると解されるところ、本件細則では出願日が権利の譲渡時となると定められているから、本件では出願日が消滅時効の起算点となる。そして、本件発明1ないし6及び8については、本件訴訟が提起された時点で、既に出願日から10年が経過している。 したがって、上記各発明に係る相当の対価請求権についてはいずれも消滅時効が完成している。 (原告の主張)特許法が産業の発達等を目的とする法律であることからすれば、消滅時効の起算点は、出願日ではなく、特許庁に対して最終意見書を提出した日、特 許の登録日又は原告が被告に対して民事調停の申立てをした日とするべきである。 2 違法なハラスメントに基づく損害賠償請求について⑴ 争点3(違法なハラスメントの有無)について(原告の主張) 以下 原告が被告に対して民事調停の申立てをした日とするべきである。 2 違法なハラスメントに基づく損害賠償請求について⑴ 争点3(違法なハラスメントの有無)について(原告の主張) 以下の行為はいずれも違法なハラスメントに該当し、被告は、使用者責任に基づき、原告に生じた損害を賠償する責任を負っている。 ア特許権の譲渡申出に関する法令順守違反被告法務コンプライアンス部の部長であったWは、平成30年10月16日、弁理士事務所を通じて、原告に対し、「件名:貴殿が発明者となっ ている特許権について」と題する書面(甲8)を送付したところ、同書面 は、本件発明1、4、5及び8について、高額の買取要求をし、さらに、この要求に応じなければ、特許権が消滅する可能性があると原告を脅すものであった。 イ原告の父親の葬儀に関するハラスメント原告の父親が平成19年10月25日に亡くなったにもかかわらず、関 係者連絡会の担当者であり、被告の元従業員であるY(以下「Y」という。)は、原告の父親の訃報を関係者連絡会の参加企業に連絡しなかった。 ウ不当な勤務査定原告は、農林水産省に申請した共同研究が採用されるなどの実績を上げていたにもかかわらず、平成21年9月頃の勤務査定では、Z部長(以下 「Z部長」という。)の判断で、最低評価であるC査定を受けた。 エ技術協力約束の不履行被告は、福岡県農林業総合試験場との間で、「イチゴ損傷関連遺伝子に関する検討・研究開発等」についての技術協力の約束をしたが、原告から業務を引き継いだ被告担当者は、福岡県農林業総合試験場に対して、技術 移転等を行わなかった。 オ JICAの視察研修におけるハラスメント原告は、JICA(独立行政法人 が、原告から業務を引き継いだ被告担当者は、福岡県農林業総合試験場に対して、技術 移転等を行わなかった。 オ JICAの視察研修におけるハラスメント原告は、JICA(独立行政法人国際協力機構)の視察研修の依頼を受け、被告の営農・技術センターに協力を依頼したが、被告は、営農・技術センター内の会議室の使用や昼食の提供を拒否した。 (被告の主張)ア特許権の譲渡申出に関する法令順守違反について被告は、原告に対し、本件発明1、4、5及び8の譲渡対価を提示しただけであり、その提示金額は正当な根拠をもって算出されたものであるから、被告の行為が違法なハラスメントに該当することはない。 イ原告の父親の葬儀に関するハラスメントについて 被告は、関係者連絡会の一会員にすぎず、関係者連絡会内の事情については不知であるが、被告が原告の父親の葬儀に関してハラスメントをした事実はない。 ウ不当な勤務査定について勤務査定は様々な考慮要素を踏まえて行われるものであり、原告に対す る勤務査定が不当なものとはいえないから、Z部長による勤務査定が違法なハラスメントに該当するとはいえない。 エ技術協力約束の不履行について被告は、福岡県農林業総合試験場との間で、「イチゴ損傷関連遺伝子に関する検討・研究開発等」について秘密保持契約を締結しただけであり、 原告が主張するような技術協力の約束(合意)は存在しない。 そして、結果的に技術移転が行われなかったのは、福岡県農林業総合試験場が被告に対し技術移転の要求をしなかったからにすぎない。 したがって、福岡県農林業総合試験場に対する被告の行為が、違法なハラスメントに該当するとはいえない。 オ JICAの視察研修 が被告に対し技術移転の要求をしなかったからにすぎない。 したがって、福岡県農林業総合試験場に対する被告の行為が、違法なハラスメントに該当するとはいえない。 オ JICAの視察研修におけるハラスメントについて原告の主張する事実が存在するかは不知であるが、会議室については、スケジュールの関係上、貸与できないこともある上、昼食についても、宗教上の食習慣等の観点から、被告の食堂等では対応できないというケースもあるため、原告の主張する事実を前提にしても、被告が違法なハラスメ ントを行ったとはいえない。 ⑵ 争点4(損害の発生及び額)について(原告の主張)前記⑴(原告の主張)のとおり、原告は合計5件のハラスメントを受け、これらのハラスメントにより原告に生じた損害の額については、1件当たり 100万円の合計500万円とするのが相当である。 (被告の主張)争う。 ⑶ 争点5(損害賠償請求権に係る消滅時効の成否)について(被告の主張)原告の主張によれば、本件で問題となるハラスメントは遅くとも民事調停 の申立日である平成30年11月12日までに行われたものと解されるところ、本件訴訟が提起された時点で、既に同日から3年が経過しているから、原告の損害賠償請求権は時効によって消滅している。 (原告の主張)争う。 第4 当裁判所の判断 1 特許法35条3項に基づく相当の対価請求について事案に鑑み、まず、争点2(相当の対価請求権に係る消滅時効の成否)から検討する。 ⑴ 争点2(相当の対価請求権に係る消滅時効の成否)について ア民法166条1項(平成29年法律第44号による改正前のもの)は、債権は「権利を行使することができる時から」消滅時 討する。 ⑴ 争点2(相当の対価請求権に係る消滅時効の成否)について ア民法166条1項(平成29年法律第44号による改正前のもの)は、債権は「権利を行使することができる時から」消滅時効が進行する旨を定めているところ、職務発明について特許を受ける権利を使用者に承継させる旨を定めた勤務規則等がある場合においては、従業者は、当該勤務規則等により、特許を受ける権利を使用者に承継させたときに、相当の対価の 支払を受ける権利(相当の対価請求権)を取得することになる(特許法35条3項)。そして、本件細則においては、被告は「出願手続をした日から当該権利を承継する」と定められており(第4条)、対価の支払時期に関する定めは存在せず(前提事実⑵ア)、この「出願手続をした日」については、特許庁に特許出願に係る願書を提出した日、すなわち、特許の出 願日であると解されるから、原告は、本件各発明に係る特許の出願日以降、 相当の対価請求権の権利行使をすることができたといえる。 したがって、原告の相当の対価請求権に係る消滅時効の起算点は本件各発明に係る特許の出願日であると解すべきであるから、これに反する原告の主張は採用できない。 イ前提事実⑶及び⑸によれば、本件各発明は別紙1特許目録の「出願日」 欄記載の日に特許出願されたこと、本件訴訟が提起された令和4年5月23日の時点で、本件発明1ないし6及び8については既に特許の出願日から10年が経過していたことが認められるところ、前提事実⑹のとおり、被告は上記各発明に係る相当の対価請求権の消滅時効を援用する旨の意思表示をしたものである。 したがって、本件発明1ないし6及び8に係る相当の対価請求権は時効により消滅している。 ⑵ 争点1(相当の対価の額)について の消滅時効を援用する旨の意思表示をしたものである。 したがって、本件発明1ないし6及び8に係る相当の対価請求権は時効により消滅している。 ⑵ 争点1(相当の対価の額)について前記⑴のとおり、本件発明1ないし6及び8に係る相当の対価請求権は時効によって消滅しているから、以下、本件発明7に係る相当の対価の額を検 討する。なお、本件発明7は、出願日である平成25年7月3日にその権利の承継が行われたものと解されるから、相当の対価請求権に係る規定については、平成27年法律第55号による改正前の特許法が適用される。 ア相当の対価の額の定め方について特許法35条4項は、契約、勤務規則その他の定めにおいて相当の対 価について定める場合には、対価を決定するための基準の策定に際して使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況、策定された当該基準の開示の状況、対価の額の算定について行われる従業者等からの意見の聴取の状況等を考慮して、その定めたところにより対価を支払うことが不合理と認められるものであってはならないとし、同条5項は、同条4 項の対価についての定めがない場合又はその定めたところにより対価を 支払うことが同項の規定により不合理と認められる場合には、その対価の額は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額、その発明に関連して使用者等が行う負担、貢献及び従業者等の処遇その他の事情を考慮して定めなければならないとしている。 前提事実⑵アのとおり、本件発明7については平成23年細則が適用 され、同細則では、「権利を承継する対価は、原則として無償とする」と定められている。 他方、前提事実⑵イのとおり、同発明には平成28年内規が適用されるところ、同内規では、「業務上、有益な発明・発見 され、同細則では、「権利を承継する対価は、原則として無償とする」と定められている。 他方、前提事実⑵イのとおり、同発明には平成28年内規が適用されるところ、同内規では、「業務上、有益な発明・発見・改良または工夫・考察」をしたときには特別表彰を行うものとし(同内規3(4))、 これに該当する事例として、「業務上、有益な発明・改良・工夫・考察により、本会(被告)の事業機能強化に寄与した場合」について、「特別功労賞(改良・工夫・考察により、全会的に有益な、極めて革新的な提案を行い採用された場合)」、「功労賞(改良・工夫・考察により、複数本部にわたって有益な、革新的な提案を行い採用された場合)」及び 「奨励賞(職員督励的な事業奨励の表彰基準を、原則として事前に本部毎に定め、周知したうえで、その基準を満たした場合)」を設けた上で、各賞の副賞として基準に応じた金員(金額は個人とグループによって異なるが、最大50万円)を支給することを定め(同内規4(4)ア)、また、「特許、育成者権、実用新案、意匠登録時報奨金」として、「業務 上活用できる有益な発明・発見・改良または工夫・考察について特許、品種、実用新案、意匠の出願を行い、その出願について権利の設定登録があった時」には、特許、品種についての権利の設定登録1件につき、個人の場合は3万円、グループの場合は最大15万円を支給すると定められており(同内規4(4)イ)、このような平成28年内規の定めは、 特許法35条4項における相当の対価の定めに該当するものと解される。 そこで、平成28年内規について、特許法35条4項の不合理と認められるものか否かを検討すると、証拠(乙10の5)及び弁論の全趣旨によれば、平成28年内規は、その概要が従業員に向けて開示されたことが認 こで、平成28年内規について、特許法35条4項の不合理と認められるものか否かを検討すると、証拠(乙10の5)及び弁論の全趣旨によれば、平成28年内規は、その概要が従業員に向けて開示されたことが認められるところ、前記で認定した平成28年内規の具体的な定めを検討しても、その具体的な報酬額等が不合理と認められるものでは なく、本件全証拠によっても、対価を決定するための基準の策定に際して使用者等と従業者等との間で行われる協議、策定された当該基準の開示、対価の額の算定について行われる従業者等からの意見の聴取等が不十分であると認めることはできない。 したがって、平成23年細則及び平成28年内規の定めたところによ り対価を支払うことが不合理と認められるものに該当するとはいえないから、本件発明7に係る相当の対価の額は、上記の定めに従って決定されることになる。 イ本件発明7が「業務上、有益な発明・発見・改良または工夫・考察」に該当するかについて 本件発明7について、後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 a 被告は、本件発明7を利用したACトップの製品化に向けた輸送試験等を実施した。 しかし、平成25年6月13日の千葉トマトを利用した輸送試験で は、ACトップによって上下揺れが既存の方法と比較して30ないし40%以上低減したが、横揺れに対しての効果は見られず、輸送した商品に対する損傷や荷崩れについては、ACトップの有無によって目立った差はなく、また、同年10月1日の山梨ブドウを利用した輸送試験では、ACトップによって上下揺れは既存の方法と比較して2 2%低減したものの、横揺れには効果が見られなかった(乙11、乙 12)。 b また、ACトップは、一部地域のイチゴの輸送の は、ACトップによって上下揺れは既存の方法と比較して2 2%低減したものの、横揺れには効果が見られなかった(乙11、乙 12)。 b また、ACトップは、一部地域のイチゴの輸送の際に導入された事例もあったが、商品の損傷の減少については、目視を中心にした確認で若干の効果が見られただけであり、明確な効果があるといえる状況ではなかった(乙11)。 c そのような中、平成25年10月23日の被告生産資材部の事業検討会においては、ACトップ以外の方法による輸送実験の実施についても検討すべきであるという意見も出され、その後も、ACトップに関する研究開発は継続されたものの、その実用化には至らなかった(乙13、14)。 このように、被告においては、ACトップの実用化に向けた輸送実験等を行っていたものの、十分な成果が得られなかったため、実用化を断念したことが認められる。そして、本件証拠上、被告が、本件発明7について、第三者との間のライセンス契約に基づいて同発明の実施を許諾している事実も認められないことも踏まえると、本件発明7が平成28 年内規の定める「業務上、有益な発明・発見・改良または工夫・考察」に該当すると認めることはできない。 これに対し、原告は、①平成28年3月14日付けの被告生産資材部が作成した資料(甲9)では、本件発明7は継承すべき有用な特許であると明記されている上、②最近の新聞記事等(甲15ないし17)には、 被告が本件発明7に関する実証実験を継続している旨の記載があることから、本件発明7が「業務上、有益な発明・発見・改良または工夫・考察」に該当すると主張する。 しかし、上記①について、証拠(甲9)によれば、平成28年3月14日付けの被告の生産資材部が作成した資料には、今後の生産資 「業務上、有益な発明・発見・改良または工夫・考察」に該当すると主張する。 しかし、上記①について、証拠(甲9)によれば、平成28年3月14日付けの被告の生産資材部が作成した資料には、今後の生産資材研究 室の取組として「AC段ボール、ACトップの普及」が挙げられており、 また、ACトップについて、「現時点では輸送距離の短い国内輸送のみの実用化であるため国内産地での評価は高くないが、今後、海上輸出の鮮度保持技術としては普及の可能性を秘めている」と記載されていることが認められるものの、これらの記載は、いずれも被告内部においてACトップに関する研究開発を継続していくことを意味するものにすぎな い。 また、上記②について、原告の指摘する新聞記事等(甲15ないし17)に記載されている実証実験は、本件発明7(ACトップ)とは異なる防振パレットに関する特許を利用した実験であると認められる(乙18、19)。 そうすると、原告の指摘する事情は、いずれも本件発明7が「業務上、有益な発明・発見・改良または工夫・考察」に該当することを直ちに裏付けるものではなく、前記及びの判断を左右するものとはいえない。 以上のとおり、本件発明7は、平成28年内規の定める「業務上、有益な発明・発見・改良または工夫・考察」に該当するとは認められ ず、他に同発明の対価請求を認める根拠も見当たらないことからすれば、原告の本件発明7に係る相当の対価請求は理由がない。 ⑶ 小括以上によれば、原告の本件各発明に係る相当の対価請求はいずれも理由がない。 2 違法なハラスメントに基づく損害賠償請求について⑴ 争点3(違法なハラスメントの有無)についてア特許権の譲渡申出に関する法令順守違反について原告は、原告 由がない。 2 違法なハラスメントに基づく損害賠償請求について⑴ 争点3(違法なハラスメントの有無)についてア特許権の譲渡申出に関する法令順守違反について原告は、原告に送付された「件名:貴殿が発明者となっている特許権について」と題する書面(甲8)が、本件発明1、4、5及び8に係る特許 権について、高額の買取要求をし、さらに、この要求に応じなければ、こ れらの特許権が消滅する可能性があると原告を脅すものであるから、違法なハラスメントに該当すると主張する。 しかし、証拠(甲8)によれば、同書面は、上記4件の発明は、現在、被告で実施されておらず、今後も実施される見込みがないことから、被告としては、同発明に係る特許権について、第三者に有償譲渡するか、次の 維持年金を納付せずに権利消滅をさせる意向を有していることを前提に、原告に対し、同特許権の有償譲渡を受ける意向があるかを確認するために送付したものと認められ、このような対応に特段不合理な点や不当な点はうかがわれない。 また、上記の書面には、上記4件の発明に係る特許権を譲渡する際の被 告の希望金額が記載されているが、この金額が不相当に高額であることを認めるに足りる証拠はなく、他の記載内容を見ても、原告に対して特許権の買取りを強制するような表現は認められない。 したがって、原告に甲8の書面を送付することが、違法なハラスメントであるとは評価できず、原告の上記主張は理由がない。 イ原告の父親の葬儀に関するハラスメントについて原告は、Yが原告の父親の訃報を関係者連絡会の参加企業に連絡しなかったことが違法なハラスメントに該当すると主張する。 しかし、原告の父親が亡くなった平成19年10月25日 について原告は、Yが原告の父親の訃報を関係者連絡会の参加企業に連絡しなかったことが違法なハラスメントに該当すると主張する。 しかし、原告の父親が亡くなった平成19年10月25日当時、Yは、被告を既に退職していたことが認められ(原告本人)、そうだとすれば、 同日頃のYの行為が被告の事業の執行についてされたものとはいえない。 また、本件全証拠によっても、Yが原告の父親の葬儀に関して違法なハラスメントを行ったと認めることもできない。 いずれにしても、原告の上記主張は理由がない。 ウ不当な勤務査定について 原告は、農林水産省に申請した共同研究が採用されるなどの実績を挙げ ていたにもかかわらず、Z部長からC査定の評価を受け、このような勤務査定は違法なハラスメントに該当すると主張する。 しかし、勤務査定については、通常、対象期間の勤務態度等、種々の事情によって決まるものであると考えられるから、原告の主張する事情のみをもって、その勤務査定が違法なハラスメントに該当するということはで きず、本件全証拠によっても、Z部長の勤務査定が違法であることを認めることはできない。 したがって、原告の上記主張は理由がない。 エ技術協力約束の不履行について原告は、被告と福岡県農林業総合試験場が「イチゴ損傷関連遺伝子に関 する検討・研究開発等」について技術協力を約束したにもかかわらず、被告は福岡県農林業総合試験場に技術移転を行っておらず、このことは違法なハラスメントに該当すると主張する。 しかし、証拠(乙5の1)によれば、被告と福岡県農林業総合試験場が上記研究開発等について秘密保持契約を締結したことは認められるものの、 本件全証拠によっても、両者が すると主張する。 しかし、証拠(乙5の1)によれば、被告と福岡県農林業総合試験場が上記研究開発等について秘密保持契約を締結したことは認められるものの、 本件全証拠によっても、両者が技術移転の約束(合意)をしたことを認めることはできないから、原告の上記主張はその前提を欠いている。 したがって、原告の上記主張は理由がない。 オ JICAの視察研修におけるハラスメントについて原告は、JICAの視察研修の際に、被告の営農・技術センター内 の会議室の使用や昼食の提供を拒否されたことが違法なハラスメントに該当すると主張する。 しかし、会議室の使用許可や食事の提供を行うか否かは、通常、その要望の内容や当日の予定等を踏まえて判断されるべきものと考えられるところ、単に原告の要望を拒否したという事実のみをもって、そ のような対応が違法なハラスメントに該当すると評価することはでき ず、本件全証拠によっても、被告が違法なハラスメントを行ったと認めることはできない。 したがって、原告の上記主張は理由がない。 ⑵ 小括以上のとおり、原告の違法なハラスメントに基づく損害賠償請求はいずれ も理由がないというべきである。 3 結論よって、その余の点を判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 國分隆文 裁判官 間明宏 國分隆文 裁判官 間明宏充 裁判官 木村洋一 (別紙1) 特許目録 1 特許番号特許第5055528号 発明の名称衝撃強さ評価方法出願日平成19年8月21日登録日平成24年8月10日 2 特許番号特許第5295686号 発明の名称集合包装出願日平成20年8月29日登録日平成25年6月21日 3 特許番号特許第5227118号 発明の名称包装用箱出願日平成20年8月29日登録日平成25年3月22日 4 特許番号特許第5165503号 発明の名称積荷監視方法及びそのための積荷監視システム出願日平成20年8月29日登録日平成24年12月28日 5 特許番号特許第5437012号 発明の名称輸送コンテナー又はトラック用若しくはバン用荷台、それに用いる防振部品及び振動抑制輸送方法出願日平成21年10月13日登録日平成25年12月20日 6 特許番号特許第5832818号 発明の名称青果の包装方法及び青果の包装形態出願日平成23年8月18日登録日平成27年11月6日 7 特許番号特許第6184206号 発明の名称輸送積荷用動吸振器及びそれを用いた輸送方法出願日平成25年7月3日登録日 3年8月18日登録日平成27年11月6日 7 特許番号特許第6184206号発明の名称輸送積荷用動吸振器及びそれを用いた輸送方法 出願日平成25年7月3日登録日平成29年8月4日 8 特許番号特許第5823685号発明の名称園芸温室栽培用の水タンク及びそれを用いた植物の育成方法出願日平成22年12月16日 登録日平成27年10月16日以上 (別紙2 省略)

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