主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求める裁判 1 控訴人(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人は,控訴人に対し,80万1750円及びこれに対する平成7年4月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 2 被控訴人主文と同旨第2 事案関係 1 本件は,外国人である控訴人が,被控訴人の設置する市立大学の講師として任期を定めて任用され,同任期後更新されないで退職したところ,控訴人は被控訴人に対し,退職手当に関する条例に基づき支給された退職金につき,整理退職の場合の金額が支給されるべきところ普通退職の場合の金額しか支払われなかったと主張し,その差額金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案の控訴審である。 2 当事者の主張は,次のとおり補正し,下記3の当審における主張を付加するほか,原判決の「事実」欄の第2記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決2頁13行目の「被告に対し,」の次に「本件条例に基づき,」を付加する。 (2) 同2頁14行目から15行目にかけての「支払済みまで」の次に「民法所定の」を付加する。 (3) 同2頁15行目の「金員」を「遅延損害金」に改める。 3 当審における控訴人の主張(1) 労働者の勤労条件の基準は法定されており(憲法27条2項),地方公務員の場合は,地方公務員法,労働基準法が勤労条件の基準を定めている。 控訴人の任用において,当初の「外国人であるので,3年の任用とする。」との「3年任期」及びそれが有効であることを前提とするその後の各「1年任期」はいずれも労働基準法3条,同法14条,地方公務員法22条1項に抵触し無効であるから(労働 であるので,3年の任用とする。」との「3年任期」及びそれが有効であることを前提とするその後の各「1年任期」はいずれも労働基準法3条,同法14条,地方公務員法22条1項に抵触し無効であるから(労働基準法13条,地方自治法2条17項),その部分については労働基準法の定めた基準によることとなる。よって,控訴人が平成2年4月1日に任用された後1年を経過した平成3年4月1日現在,労働基準法及び地方公務員法上,控訴人の任用に関する「期間の定め」(任期)は消滅している。 したがって,既に消滅した「任期」を判決の基礎とすることはできない。 (2)ア本件大学の労働関係の決定権を持つ教授会が「地方公務員法では,労働基準法14条は適用しない。」「3年後の任期満了は条件によっては認められる旭川判例がある。」等の主張をして,3年任期を有効とした点は公序良俗に反する。 イまた,被控訴人は,大学人事を監督,是正すべき立場にあって,瑕疵ある任期を援用して普通退職だと主張することは,公序良俗に反する。 (3) 仮に,本件任期が有効であるとしても,任期の性質は職務の性質により客観的に判断すべきである。すなわち,任期は職務によって,更新が予定されているものと,予定されていないものとがあり,臨時的・非常勤でない学者,研究者における任期は,学問の自由を確実にするため,その身分を保障し,再任の保障が与えられるべきであり,一般労働者として生存権,労働権が保障されている以上,合理的理由のない一方的更新拒絶は許されない。 したがって,再任が保障されているにもかかわらず,任期が終了したとして意に反して退職(更新拒絶)させられるのは,「整理退職」である。 (4) 被控訴人は,控訴人の退職が整理退職であるとしても,本件条例5条1項の市長の承認がなされていない旨主張するが,同条項の承認は割増 に反して退職(更新拒絶)させられるのは,「整理退職」である。 (4) 被控訴人は,控訴人の退職が整理退職であるとしても,本件条例5条1項の市長の承認がなされていない旨主張するが,同条項の承認は割増し手当を出すかどうかの承認ではなく,労働者を保護するために整理解雇する場合は,労働基準監督機関である市長の承認がいるとの趣旨である。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の本件請求は理由がないものと判断するが,その理由は,下記2の当審における控訴人の主張に対する判断を付加し,次のとおり補正するほか,原判決の「理由」欄記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決3頁4行目の「見込まれていたこと」の次に「,控訴人の能力が必ずしも明らかでなかったこと,控訴人が外国人であることから,日本語の能力(日本語による授業)に不安があったこと,控訴人の在留期間に制限があること」を付加する。 (2) 同3頁7行目の「原告は,」の次に「被控訴人から」を付加する。 (3) 同4頁9行目の「期間に限り」の次に「被控訴人から」を付加する。 2 当審における控訴人の主張について(1) 控訴人は,労働者の勤務条件は憲法27条により法定されているところ,控訴人が当初任用期間を3年とされた雇用条件は労働基準法3条,同法14条,地方公務員法22条に反するものであり,これを前提とする各再任における1年の任期の定めはいずれも無効である旨主張する。 アしかしながら,控訴人は日本国籍を有しない外国人であるところ,外国人は,憲法上,当然に国又は地方公共団体の公務員に就任する権利が保障されているということはできないが,一方,我が国に在住する外国人について,日本国籍を有する日本国民による国民主権の原理に反しない限り,同外国人が公務員に就任することは憲法上禁止されていないと解され されているということはできないが,一方,我が国に在住する外国人について,日本国籍を有する日本国民による国民主権の原理に反しない限り,同外国人が公務員に就任することは憲法上禁止されていないと解される。そこで,公務員であってもその担当する職務が,公権力の行使又は公の意思形成への参画の程度が低い場合には,立法政策により,日本国籍を有しない外国人が公務員に就任することは可能であると解される。この見地から,昭和57年9月1日,国立又は公立の大学における外国人教員の任用等に関する特別措置法(以下「外国人教員任用法」という。)が制定されたものであり,地方公務員法には外国人の公務員への就任に関して明文の規定がないので,外国人教員任用法は,地方公務員法の特別法にあたるものというべきである。 イ控訴人は,本件の任期が労働基準法14条に反する旨主張するところ,地方公務員法58条3項は,労働基準法14条を除外していないので,地方公務員には同条の適用があると考える余地がないではない。しかしながら,公務員については,全体の奉仕者として公共の福祉を増進するための職務に従事するという特殊性に基づいて,別途,公務員関係の諸法令が制定されており,その限りで一般の労働関係諸法令の適用を除外せざるを得ない場合があり,また,労働基準法14条は,労使当事者の自治から立場の弱い労働者の人身拘束,身分的隷属などの弊害を除去しようとの趣旨,目的から制定されたものであるから,任用行為の内容が法律,条例で制定され,分限懲戒免職事由を明定して身分を保障されている地方公務員には,原則として適用されないと解するのが相当であり,地方公務員について,地方公務員法22条が定める条件附採用及び臨時的任用の場合のほか,一般に任期を設けることはできないというべきである。 ウこの点,外国人教員任用法2 れないと解するのが相当であり,地方公務員について,地方公務員法22条が定める条件附採用及び臨時的任用の場合のほか,一般に任期を設けることはできないというべきである。 ウこの点,外国人教員任用法2条3項では,外国人教員の任用にあたっては任期を定めるべきものとされているところ,上記アのとおり,同法は地方公務員法の特別法であり,同法2条3項の立法趣旨は,①任期を付することにより,円滑なローテーションが図られ,外国人の積極的任用という目的に資すること,②共同のテーマの完成や専門分野の後継者の育成の見通し等の観点から,任期を付した方が適切な場合が少なくないこと,③任用される外国人及びその所属する機関の長の承認を得るためには任期のあった方が良いこと等にあり,その趣旨自体合理的なものであって,本件においても控訴人の任用にあたって任期を定めたことは,何ら控訴人主張の関係法規に反するものではない。すなわち,憲法14条,労働基準法3条等は,合理的差別を禁じたものではなく,上記立法趣旨のとおり任期の定めについては合理的な理由があるから,外国人を日本人と異なる扱いをしても上記各法規に反するものではないのである。 エしたがって,本件各任期が無効であるとはいえないので,控訴人の上記主張は理由がない。 (2) 控訴人は,教授会が控訴人の任用における任期を有効とした点,瑕疵ある任期を援用して普通退職であるとした点は,公序良俗に反する旨主張する。 しかしながら,上記(1)のとおり,本件任期が外国人教員任用法に基づくもので,同法が何ら控訴人主張の法規に反するものでなく,また,公序良俗に反するものでないことが明らかであるので,控訴人の上記主張は失当である。 (3) 控訴人は,本件任期が有効であるとしても,任期の性質は職務の性質により客観的に判断すべきであり,学者,研究者 公序良俗に反するものでないことが明らかであるので,控訴人の上記主張は失当である。 (3) 控訴人は,本件任期が有効であるとしても,任期の性質は職務の性質により客観的に判断すべきであり,学者,研究者には学問の自由を確実にするため,再任の保障が与えられるべきである旨主張する。 しかしながら,外国人教員任用法2条3項は,上記(1)ウに判示した趣旨により定められたものであり,任期については評議会(評議会を置かない大学にあっては教授会)の議に基づき学長の定めるところによる旨を定め,任期について裁量の余地を認めており,場合によっては期限の定めのない任期を定めることも容認しているものの,本件においては控訴人の講師の任期を当初は3年,その後各1年と定められた以上,任期満了後は当然に講師の地位を失ったものである。また,同法その他の法令において,任期が終了した外国人教員について,再任が当然に予定されているとの規定はない。したがって,控訴人の上記主張は失当である。 第4 結論以上のとおりであるから,その余の点を判断するまでもなく,控訴人の請求は理由がなく,これを棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,控訴費用の負担につき民事訴訟法67条,61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第2部裁判長裁判官大内捷司裁判官島田周平裁判官玉越義雄
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