平成30(行ウ)322 遺族厚生年金不支給処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和元年12月19日 東京地方裁判所
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判決文本文25,260 文字)

令和元年12月19日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(行ウ)第322号遺族厚生年金不支給処分取消等請求事件口頭弁論終結日令和元年9月17日判決主文 1 厚生労働大臣が平成28年11月30日付けで原告に対してした遺族厚生年金を支給しない旨の処分を取り消す。 2 厚生労働大臣は,原告が平成28年10月12日にした裁定請求に係る遺族厚生年金の支給裁定をせよ。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求主文第1項及び第2項と同旨第2 事案の概要本件は,亡Aの妻であった原告が,Aの死亡後,遺族厚生年金の裁定請求(以 下「本件裁定請求」という。)をしたところ,厚生労働大臣(処分行政庁)から,厚生年金保険法(以下「厚年法」という。)59条1項所定の「被保険者の配偶者であって,被保険者の死亡の当時,その者によって生計を維持したもの」に該当しないとの理由により,平成28年11月30日付けで遺族厚生年金を支給しない旨の処分(以下「本件不支給処分」という。)を受けたことか ら,被告を相手に,同処分の取消しを求めるとともに,厚生労働大臣が本件裁定請求に係る遺族厚生年金の支給裁定をすることの義務付けを求める事案である。 1 関係法令等の定め⑴ 本件に関係する法令等の定めは,別紙2-1から2-3までのとおりであ る。なお,以下,別紙2-2の厚生年金保険法施行令を「厚年法施行令」と いい,別紙2-3の「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて」(平成23年3月23日年発0323第1号厚生労働省年金局長通知。ただし,平成27年改正後のもの。乙4)を「認定基準」という。 ⑵ 遺族厚生年金の支給要件について厚年法 取扱いについて」(平成23年3月23日年発0323第1号厚生労働省年金局長通知。ただし,平成27年改正後のもの。乙4)を「認定基準」という。 ⑵ 遺族厚生年金の支給要件について厚年法59条1項は,遺族厚生年金を受けることができる遺族について, 被保険者等(被保険者又は被保険者であった者。以下同じ)の死亡当時,「その者によって生計を維持したもの」であることを要するものとし(以下「生計維持要件」という。),同条4項は,生計維持要件の認定に関し必要な事項は政令で定めるものとしている。そして,かかる委任を受けて定められた厚年法施行令3条の10は,生計維持要件を満たす配偶者等について,被保険 者等の死亡当時,「その者と生計を同じくしていた者」(以下「生計同一要件」という。)であって,「厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のもの」(以下「収入要件」という。)その他これに準ずる者として厚生労働大臣の定める者とする旨規定している。 本件においては,原告が被保険者であるAの配偶者であること及び収入要件を満たすことについては当事者間に争いがなく,生計維持要件のうち生計同一要件を満たすか否かが争われている。 ⑶ 認定基準について生計維持要件の認定については,厚生労働省年金局長の通知により,認定 基準が定められている。認定基準においては,生計維持要件を構成する二つの要件(生計同一要件及び収入要件)の認定に当たって留意すべき事項が定められる一方,「これにより生計維持関係の認定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合」には,認定基準の定めによらずに認定するものとされている(認定基準の「1 総論」「⑴ 生計維持認定対象者」のた 実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合」には,認定基準の定めによらずに認定するものとされている(認定基準の「1 総論」「⑴ 生計維持認定対象者」のただし書部分。以下「認定基準総論た だし書」という。)。 認定基準は,被保険者等の配偶者が生計同一要件に該当する場合について定める(認定基準の「3 生計同一に関する認定要件」「⑴ 認定の要件」「① 生計維持認定対象者(中略)が配偶者又は子である場合」に係る部分。 以下「認定基準①」という。)ところ,このうち認定基準①ア,イ,及びウ は当該配偶者が被保険者等と住民票上の世帯又は住所を同一にする場合や,現に起居を共にしている場合について定めたものであり,認定基準①ウは,これらの場合に当たらなくても生計同一要件を満たすと評価できる場合について定めたものであり,具体的には,「単身赴任,就学又は病気療養等のやむを得ない事情により別居しているが,生活費,療養費等の経済的な 援助が行われていることや,定期的に音信,訪問が行われていることといった事実が認められ,その事情が消滅したときには,起居を共にし,消費生活上の家計を一つにすると認められるとき」がこれに当たるものとされている。 本件においては,原告がAの死亡当時,同人と別居し,住民票上の世帯及び住所も別であったため,認定基準①ア,イ,ウのいずれの場合にも当た らないことが明らかであり,これらの場合に当たらなくてもなお生計同一要件を満たすと評価し得る事情が存するか否かが問題となっている(なお,原告は,上記事情はいる。)。 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨 により容易に認められる事実)⑴ 原告(昭和21年11月25日生)は,昭和 なお,原告は,上記事情はいる。)。 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨 により容易に認められる事実)⑴ 原告(昭和21年11月25日生)は,昭和44年10月13日,A(昭和15年4月25日生)と婚姻し,両名の間には,昭和45年11月10日,長女B(以下「長女」という。)及びその双子のきょうだいであるC(以下「長男」という。)が出生した(甲1,2,54)。 ⑵ Aは,昭和34年にEに入社し,継続して勤務していたが,平成6年5月 11日に熊本市内のパチンコ店で景品を万引きした疑いで逮捕され,同月24日に起訴猶予となった後,同年6月末にEを依願退職した。そして,同年7月1日からFに入社し,平成12年4月末に同社を退職した。(甲10,41の2,48)⑶ 原告は,Aとの婚姻後,Aと同居し専業主婦として生活していたが,平成 15年5月15日,Aによる暴力に耐えかねて自宅を出て,以後,Aが死亡するまで同人と同居することはなかった(甲10,弁論の全趣旨)。 ⑷ Aは,平成24年10月18日に熊本市内の銀行において支店長ほか2名の職員に対して暴行するとともに,平成25年3月11日に熊本市内の駐車場で女性1名に対して暴行したとの罪で,同年8月21日,熊本地方裁判所にお いて,懲役1年4月,執行猶予4年の有罪判決を受けた(甲47)。さらに,Aは,同年12月5日及び同月6日に熊本市内のスーパーマーケットで店長ほか1名の店員に対して暴行したとの罪で,平成26年2月26日,熊本地方裁判所において懲役1年2月の有罪判決を受け,同判決は控訴審における控訴棄却判決を経て確定したため,同年8月12日,上記の執行猶予が取り消され, その後,平成28年8月下旬頃まで大分刑務所で服役した( おいて懲役1年2月の有罪判決を受け,同判決は控訴審における控訴棄却判決を経て確定したため,同年8月12日,上記の執行猶予が取り消され, その後,平成28年8月下旬頃まで大分刑務所で服役した(甲33の1及び2,34)。 ⑸ Aは,平成28年8月下旬頃に大分刑務所を出所した後,同月21日頃から同月31日頃までの間に死亡した。Aに係る死亡の届出は,同年9月6日,原告によってされた。(甲1) ⑹ 本件訴訟に至る経緯等ア原告は,平成28年10月12日,Aを被保険者とする遺族厚生年金の裁定を請求した(甲6,乙1。本件裁定請求)。これに対し,厚生労働大臣は,同年11月30日付けで,原告がAの死亡当時に同人によって生計を維持していた遺族とは認められないとの理由で,原告に対し遺族厚生年 金を支給しない旨の処分(本件不支給処分)をした(甲8)。 イ原告は,平成29年2月27日,本件不支給処分を不服として審査請求をしたが,九州厚生局社会保険審査官は,同年5月18日付けで,原告の審査請求を棄却する旨の決定をした(甲9,12)。 ウ原告は,上記イの決定を受け,平成29年7月14日,再審査請求をしたが,社会保険審査会は,平成30年2月28日付けで,原告の再審査請 求を棄却する旨の裁決をした(甲13の1,14,乙2)。 エ原告は,平成30年8月8日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 ⑺ なお,原告は,Aの妻として自己の老齢基礎年金へ加算される振替加算の請求をしたところ,平成30年4月5日付けで,原告が65歳に達した平成23年11月24日当時において原告とAとの間に生計維持関係があったと 認められることを前提に,振替加算の認定がされた(甲37の1及び2,弁論の全趣旨)。 3 争点本件の争点は,本件不 3年11月24日当時において原告とAとの間に生計維持関係があったと 認められることを前提に,振替加算の認定がされた(甲37の1及び2,弁論の全趣旨)。 3 争点本件の争点は,本件不支給処分の適法性であり,具体的には,原告が厚年法59条1項にいう「被保険者の死亡の当時,その者によって生計を維持したも の」(生計維持要件)に該当するかであり,さらにいえば,厚年法施行令3条の10にいう「被保険者の死亡の当時,その者と生計を同じくしていた者」(生計同一要件)に該当するかである。 4 争点に関する当事者の主張の要旨争点に関する当事者の主張の要旨は,別紙3記載のとおりである(同別紙で 使用した略語は本文においても用いる。)。 第3 当裁判所の判断当裁判所は,原告は被保険者であるAの死亡当時同人によって生計を維持した配偶者に当たると認められ,原告がこれに当たらないことを理由に遺族厚生年金を支給しないものとした本件不支給処分は違法であり,厚生労働大臣は本 件裁定請求に係る遺族厚生年金の支給裁定をすべきであるから,原告の請求は いずれも理由があり認容すべきものと判断する。その理由の詳細は,以下のとおりである。 1 認定事実前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。なお,以下において,証人B(長女)については「証人B」と表記す る。 ⑴ 原告がAと別居に至るまでの経緯ア原告は,昭和44年10月13日,Aと婚姻し,その後,平成15年5月15日に別居するまでの約33年間にわたり,同人と同居していた(なお,Aは,昭和59年11月に熊本市内に自宅を新築し,その後,人事異 動に伴い九州各所への転居を経て,平成4年以降は熊本市内の自宅に戻った。原告は の約33年間にわたり,同人と同居していた(なお,Aは,昭和59年11月に熊本市内に自宅を新築し,その後,人事異 動に伴い九州各所への転居を経て,平成4年以降は熊本市内の自宅に戻った。原告は,Aが昭和61年に佐世保市に単身赴任したときは同行しなかったものの,平成元年の鹿児島市への赴任及び平成3年の北九州市への赴任の際は,Aと共に転居した。)。 原告は,Aと婚姻する以前に短い期間就労したことがあったが,婚姻後 は,専業主婦となり,専らAの収入によって生活を維持していた。なお,両名の同居期間中,Aの銀行等口座は原告が管理していた。 (以上につき,前提事実⑴,⑶,甲10,29の1~4,51,証人B)イ原告とAとの間には,昭和45年11月10日,双子である長男及び長女が出生したが,Aは,その頃から,原告に対してたびたび暴力を振るう ようになった(前提事実⑴,甲10,42)。 Aは,平成2年頃から,原告や長女に対して頻繁に暴力を振るうようになり,Eを依願退職して転職した直後の平成6年7月6日には,長女に暴力を振るって右耳の鼓膜に傷害を負わせるなどしたため,長女は同年9月より一人暮らしを始めた。なお,長女は,同年4月から,Gの職員として 勤務している。(前提事実⑵,甲11,17,51,53の1~4,証人 B)。 その後,長男も,平成7年春頃,地元を離れて東京で就職するために家を出た(甲11,51)。 ウ原告は,Aによる暴力をその後も繰り返し受け,平成11年1月21日には,Aにより顔面を殴打され,全治1か月を要する鼻骨骨折の傷害を負 った。Aの暴力により身の危険を感じたとき,原告は,一時的な避難のために家を出て,長女や親戚の家に身を寄せるなどし,このような家出は複数回に上った。また,平成11年春頃 する鼻骨骨折の傷害を負 った。Aの暴力により身の危険を感じたとき,原告は,一時的な避難のために家を出て,長女や親戚の家に身を寄せるなどし,このような家出は複数回に上った。また,平成11年春頃に原告が家出をしたとき,Aが長女のアパート(熊本市内)へ訪ねてきたことがあり,原告の避難先がAに知られてしまったことから,長女は,同年8月に同市内の別のアパートに転 居した。 原告は,これらの家出の際,自己が管理していたAの銀行等口座から預貯金を引き出し,当面の生活費として使用したほか,いざというときのために現金で貯蓄していた(貯蓄した金額は不明。以下「同居時貯蓄金」という。)。なお,原告は,平成11年の家出中に運転免許を取得した。 (以上につき,甲10~12,18,19,20の2,51,証人B)エ Aは,平成12年4月末にFを定年退職し,以後,無職となった。なお,Aは,同退職後,保険料を支払うのを嫌がって国民健康保険(以下「健康保険」という。)に加入しなかったため,配偶者である原告も加入することができなかった。 10,41の2,51) オ長女は,平成14年1月15日,Dと婚姻し,その後は同人とともに熊本市内に居住していた(証人B)。 カ原告は,平成15年5月14日,Aから激しい暴力を受けた上,「明日はバットを持ってきてたたき殺すから,がん首洗って待っておけ。」と言われ,生命の危険を感じ,翌15日にAが外出している隙に長女に迎えに 来てもらい,Aとの別居生活を開始した(証人B,甲20の2,36の4, 51)。 キ原告は,上記カのとおり別居を開始する際,Aが自宅の金庫内で保管していた現金200万円(長女の婚姻時の結納金100万円,Aの母の遺産分配金100万円)を持ち出したほか,平 51)。 キ原告は,上記カのとおり別居を開始する際,Aが自宅の金庫内で保管していた現金200万円(長女の婚姻時の結納金100万円,Aの母の遺産分配金100万円)を持ち出したほか,平成15年5月16日,Aの肥後銀行の口座から合計170万円を引き出したのを始めとして,同年12月 16日までに総額385万8000円を引き出した(上記の持ち出した現金との合計金額は,585万8000円)。その一方,原告は,Aの生活費として提供する趣旨で,同年6月13日に14万円を,同年8月15日に16万円を,同年11月4日に16万円を,Aのゆうちょ銀行の口座に入金するとともに,Aの受領する年金を折半することを提案する旨を記載 した書簡を,預金通帳の払出票を添えて送付した(上記585万8000円から上記返還金合計46万円を控除した金額は,539万8000円〔以下「別居時持ち出し金」という。〕。)Aは,原告が上記のとおり金銭を持ち出すなどしたことについて,長女に対する電話で不満をもらしていたものの,「お金がなくなれば戻ってく れば良い」などと言うのみで,原告に対して返金を求めたことはなかった。 その後,Aは,年金の受取口座を原告が管理していた肥後銀行の口座からゆうちょ銀行の口座に変更した。 (以上につき,甲10~12,21~27,51,証人B)⑵ 別居開始後の状況等 ア原告は,平成15年5月15日にAとの別居を開始して以降,熊本県天草市内の実家や,千葉県八千代市内の原告の妹の家,熊本市内の長女の家,東京都足立区内の長男の家などに身を寄せ,長男の家には平成15年7月から平成16年1月中旬まで及び同年6月から同年8月下旬まで(通算して10か月弱程度)滞在した。その後,原告は,同年3月に出産した長女 が職場に復 家などに身を寄せ,長男の家には平成15年7月から平成16年1月中旬まで及び同年6月から同年8月下旬まで(通算して10か月弱程度)滞在した。その後,原告は,同年3月に出産した長女 が職場に復帰するのを機に,同年8月末頃に熊本市に戻り,同市内で長女 と同居し,孫の養育を手伝うなどしていた。 他方,Aは,別居開始以降,原告の居場所を探して,原告の実家や熊本市内の親戚の家を訪ねた。このとき,原告の弟が「とにかく姉を叩かんでください。」と言ったのに対し,「これからも叩く。俺の言うことをきかないなら叩く。」などと言い,原告に対する暴力を反省する態度は全く見 せなかった。 原告は,平成15年6月,熊本市総合女性センターにおける弁護士相談で,Aの暴力について相談したところ,Aが年を取って体力的に衰えない限り暴力は続くと思われるため,別居して身を守ることを優先すべきである旨の助言を受け,Aとの別居が長期化してもやむを得ないと覚悟した。 (以上につき,甲7,10,51,52)イ原告は,Aとの別居を開始した後もしばらくは住民票上の住所をそのまま(Aと同一世帯)にしていたが,前記⑴エのとおりAが健康保険に加入していなかったため自らも加入することができず,平成16年3月9日に病院を受診した際に医療費の全額(約2万円)を支払わなければならなか ったことから,健康保険への加入の必要性を強く感じた。そこで,原告は,同年4月4日,自らの住民票上の住所を東京都足立区の長男の住所へ移し,さらに,長男が平成24年7月24日に千葉県鎌ケ谷市に転居した際にも,住民票上の住所を長男の転居後の住所へ移した。もっとも,原告が長男と同居したのは,上記アの10か月弱のみであり,上記鎌ケ谷市の住居で長 男と同居したことはなかった。 (甲 に転居した際にも,住民票上の住所を長男の転居後の住所へ移した。もっとも,原告が長男と同居したのは,上記アの10か月弱のみであり,上記鎌ケ谷市の住居で長 男と同居したことはなかった。 (甲5,10,12,51,54,証人B)ウ原告は,平成18年11月25日に60歳となり,同年12月から厚生年金を受給するようになったが,婚姻前の短い期間しか就労していなかったため,年金額も少額であった(平成20年当時における1回分の年金額 は,1万1350円程度である。)。 その後,原告が平成23年11月25日に65歳となり,同年12月から国民年金(老齢基礎年金)を受給するようになったため,1回分の年金額が約7万8000円となった。原告は,その支給請求に当たり,長女を通じてAに対し,いわゆるカラ期間(厚生年金の被保険者の被扶養配偶者が国民年金に任意加入しなかった期間で所定の年度のものは,老齢基礎年 金の合算対象期間となる。)を使用してよいかと尋ねたところ,Aはこれに反対しなかった。 (以上につき,甲10,12,13の2)。 エ原告は,Aとの別居開始後,稼働先を見つけることができず,上記ウの年金以外に収入はなかった。長男や長女の家での生活においても,食費な ど生活費の一部を原告が負担することはあったが,これらの費用は,原告の年金収入のほか,同居時貯蓄金(前記⑴ウ)や,別居時持ち出し金(約540万円,前記⑴キ)を取り崩すなどして充てていた。(甲10,証人B)オ Aは,原告との別居開始後も,原告が65歳に達する平成23年11月 まで,自己によって生計を維持される65歳未満の配偶者(原告)がいることを前提に,老齢厚生年金に係る加給年金額の支給を受けていたほか,少なくとも平成24年及び平成25年の る平成23年11月 まで,自己によって生計を維持される65歳未満の配偶者(原告)がいることを前提に,老齢厚生年金に係る加給年金額の支給を受けていたほか,少なくとも平成24年及び平成25年の所得申告において配偶者控除を受けていた。また,Aは,原告と別居後の平成17年12月に葬儀保険に加入し,加入名義人をAとして家族名を原告及び長男としたものと,加入 名義人を原告として家族名をA及び長男としたものについて保険料を支払っていた。(甲7,10,41の3,42)カ原告は,Aと別居を開始して以降,熊本市から離れた場所にいるときでも,Aに見つかって再び暴力を受けるのではないかという恐怖に絶えず付きまとわれていた。別居開始後,原告がAと直接会ったり電話で話したり することはなく,上記に認定したほかは手紙等による連絡もしなかった。 また,原告又はAのいずれからも,離婚に向けた何らかの働きかけをすることはなかった。(甲10,証人B)⑶ Aの刑事事件及び死亡の経緯等ア Aは,平成24年10月18日に熊本市内の銀行において支店長ほか2名の職員に対して暴行したことで逮捕され,熊本北警察署の警察官から長 女の夫に連絡があった。上記逮捕について知った原告は,自ら同警察署に連絡したところ,Aの家族から事情を聴きたいと言われたため,Aの妻として同警察署を訪ね,警察官と面会した。原告は,警察官から事件の詳細について説明を受け,他人にまで暴力を振るうようになったAに対し取るべき対応はないかと考え,精神鑑定はできないのかと尋ねたところ,警察 官から,今回のような事件では精神鑑定はできない旨の回答を受けた。(前甲10,42)イその後,Aは,平成25年3月11日に熊本市内の駐車場で女性1名に対して暴行し,この罪と上記 ,警察 官から,今回のような事件では精神鑑定はできない旨の回答を受けた。(前甲10,42)イその後,Aは,平成25年3月11日に熊本市内の駐車場で女性1名に対して暴行し,この罪と上記アの罪により,同年8月21日,熊本地方裁判所において,懲役1年4月,執行猶予4年の有罪判決を受けた。さらに, Aは,同年12月5日及び同月6日に熊本市内のスーパーマーケットで店長ほか1名の店員に対して暴行したとの罪で,平成26年2月26日,熊本地方裁判所において懲役1年2月の有罪判決を受け,同判決が確定したため,同年8月12日,上記の執行猶予が取り消され,その後,平成28年8月下旬頃まで大分刑務所で服役した 大分刑務所には,九州に居住するAの親族の連絡先として長女の携帯電話番号等を知らせていたため,原告は,Aが同刑務所を出所するときには長女に連絡が来るものと考えていたが,平成28年8月下旬頃にAが出所したことに関し,同刑務所からの連絡はなかった(甲10,証人B)。 ウ Aは,大分刑務所を出所後,平成28年8月21日頃から同月31日頃 までの間に自宅で死亡した。Aの死亡は同年9月6日に発見され,死亡の届出は原告が行った。また,Aの葬儀は原告が喪主となって行い,原告は,葬儀費用約100万円(そのうち葬儀保険で賄うことができたのは18万8000円)及び死体検案書費用3万3000円を負担した。(甲7,35,証人B) エ原告は,Aの死亡後,同人が平成18年から健康保険に加入したこと,その保険料を滞納したために自宅の土地建物を平成19年12月に熊本市から差し押さえられていたことを知り,その滞納分を支払った。これにより,平成28年9月27日に上記の差押えは解除された(甲10,28,29の1及び4)。 宅の土地建物を平成19年12月に熊本市から差し押さえられていたことを知り,その滞納分を支払った。これにより,平成28年9月27日に上記の差押えは解除された(甲10,28,29の1及び4)。 オ原告は,65歳に達した翌月の平成23年12月から老齢基礎年金の支給を受けていたところ(前記⑵ウ),当初は,Aとの別居を理由に,いわゆる振替加算(老齢厚生年金の受給権者がその配偶者の生計を維持している場合に当該老齢厚生年金に加算されていた加給年金について,当該配偶者が65歳に達し老齢基礎年金が支給されるようになったときに,当該老 齢基礎年金に対し,上記加給年金から振り替えられた加算が行われるもの。)がされていなかった。原告は,本件訴訟の提起後である平成29年頃に振替加算がされていないことに気付き,同年10月26日付けで,別居の理由はAの暴力から逃れるためであり平成23年当時において生計維持関係を有していたことを主張して,振替加算額の支給を請求した。厚 生労働大臣は,原告の上記主張を認め,平成30年4月5日付けで,平成23年12月に遡って振替加算をする旨の決定をし,時効消滅した平成24年9月以前の分を除き,過去分の振替加算額を支払った。(甲36の1~4,37の1及び2,41の3) 2 検討 以下,上記認定事実に基づいて,原告がAの死亡した平成28年8月当時, 同人と生計を同じくしていた者(厚年法施行令3条の10)に当たるか否かについて検討する。 ⑴ 厚年法59条1項が,遺族厚生年金を受けることができる遺族について,被保険者等の死亡当時,その者によって生計を維持したものであることを要する(生計維持要件)としているのは,被保険者等の死亡によって生計の途 を失う者は生活保障の必要性が高いため,これを遺 いて,被保険者等の死亡当時,その者によって生計を維持したものであることを要する(生計維持要件)としているのは,被保険者等の死亡によって生計の途 を失う者は生活保障の必要性が高いため,これを遺族厚生年金の支給対象として保護しようとするものと解される。ところで,同条4項は,生計維持要件の認定に関し必要な事項は政令で定めるものとし,これを受けて定められた厚年法施行令3条の10は,同条に定める生計同一要件及び収入要件を満たす配偶者は生計維持要件に該当する旨を規定しており(関係法令等⑵), 同条がこのように定めているのは,被保険者等と生計を同じくし,かつ一定の収入以下である配偶者は,通常,被保険者等の収入によって生計を維持していたものと推認することができることを前提に,被保険者等の収入の具体的金額や,それが当該配偶者の生計を維持する上でどの程度の割合を占めていたか等を問わず,生活保障の必要性があるものとして生計維持要件該当性 を認める趣旨であると解することができる。 なお,生計同一要件等の認定に係る行政庁の運用指針を定める認定基準(関係法令等⑶,別紙2-3)は,当該配偶者が被保険者等と住民票上の世帯又は住所を同一にしている場合については,実際に同居しているか,消費生活上の家計を一つにしているか等を特に審査することなく,生計同一要件を満 たすものと認定することとしているが,これは,被保険者等と住民票上の世帯又は住所を同一にしている配偶者は被保険者等と生計を同じくするものと推認し得るとしたものであると解される。一方,当該配偶者が被保険者等と住民票上の世帯又は住所を同一にしておらず,起居を共にしているとも認められない場合について,認定基準①ウは,「単身赴任,就学又は病気療養 等のやむを得ない事情により別居し 偶者が被保険者等と住民票上の世帯又は住所を同一にしておらず,起居を共にしているとも認められない場合について,認定基準①ウは,「単身赴任,就学又は病気療養 等のやむを得ない事情により別居しているが,生活費,療養費等の経済的な 援助が行われていることや,定期的に音信,訪問が行われていることといった事実が認められ,その事情が消滅したときには,起居を共にし,消費生活上の家計を一つにすると認められるとき」であれば生計同一要件を満たすものと認定し得ることとしているが,これは,当該配偶者が被保険者等と別居し,住民票上の世帯及び住所も別にしているが生計同一要件を満たすと評価 できる典型的な場合について定めたものというべきであり,夫婦の在り方にも様々なものがあり得ることに照らせば,生計同一要件を満たすと評価される場合を認定基準①に定める場合に限定するのは相当ではない。この点,認定基準総論ただし書において,認定基準の定めに従うことにより生計維持関係の認定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり社会通念上妥当性 を欠くこととなる場合には,認定基準の定めによらずに認定すべきものとしているのは,以上に説示したところと同旨をいうものとして正当というべきである。 ⑵ 本件において,原告は,被保険者であるAの死亡当時,同人と住民票上の世帯又は住所を同一にしておらず,起居を共にしていたとも認められないた め,それでもなお生計同一要件を満たすと評価できる事情があるといえるか否かについて,上記⑴のような観点から検討する。 ア前記認定事実によれば,原告は,昭和44年10月にAと婚姻してから平成15年5月に別居を開始するまでの約33年間にわたり,Aと同居し,あるいは,同人の単身赴任中であっても生計を同一にしてきたものであっ によれば,原告は,昭和44年10月にAと婚姻してから平成15年5月に別居を開始するまでの約33年間にわたり,Aと同居し,あるいは,同人の単身赴任中であっても生計を同一にしてきたものであっ て,専業主婦として専らAの収入により生計を維持してきたものである(認定事実⑴ア)。しかし,長男及び長女が出生した昭和45年頃から始まったAによる暴力が,次第にその頻度及び程度を増し,一時的な避難のための家出を繰り返しても事態は改善しないどころか,生命の危険を感じる事態となったことから,原告は,平成15年5月にAとの別居を開始するに 至ったものであり(認定事実⑴イ,ウ,カ),別居はやむを得ない事情に よるものということができる。 そして,別居開始後,原告は,自ら就労して収入を得ることができず,長男や長女の家などに身を寄せながら,平成18年12月以降に受給するようになった年金(当初は1回につき約1万1000円,平成23年12月以降は1回につき約7万8000円)のほか,Aとの同居中に同人の銀 行等口座から引き出して貯蓄した金銭(同居時貯蓄金),別居開始時に自宅から持ち出すなどした金銭(539万8000円。別居時持ち出し金)を取り崩して生活費に充てていたものであり(認定事実⑴ウ,キ,⑵ウ,エ),長男や長女から相応の経済的援助があったことを考慮しても,これらの別居時持ち出し金等は,原告の生計を維持するために欠くことができ ないものであった。また,Aは,原告が金銭を持ち出すなどしたことに不満を述べながらも,原告に対しその返還を求めたことはなく(認定事実⑴キ),原告が持ち出すなどした金銭を生活費に充てることについては,Aも黙認していたものといえる。 原告とAとの別居は,Aが死亡する平成28年8月まで約13年間継続 ことはなく(認定事実⑴キ),原告が持ち出すなどした金銭を生活費に充てることについては,Aも黙認していたものといえる。 原告とAとの別居は,Aが死亡する平成28年8月まで約13年間継続 し,その間,原告が同人と直接会ったり電話で話したりすることはなく,手紙等による連絡もほとんどなかったが,これは,①Aが,別居開始以降,原告の居場所を探しまわっていた上,「これからも叩く」などと断言して反省の態度を全く見せていなかったことや,②原告が熊本市総合女性センターで弁護士に相談した際にも,Aが老齢のため体力的に衰えない限り暴 力は続くと思われるため別居して身を守ることを優先すべきである旨の助言を受けたこと,③さらに,Aが,平成24年10月以降,第三者への暴行を繰り返して逮捕され,平成26年8月から平成28年8月まで刑務所で服役していたことなどによるものであり(認定事実⑵ア,カ,⑶ア,イ),相応の理由に基づくものと認められる。そして,この間,①原告又はAの いずれからも離婚に向けた働きかけをすることはなく,むしろ,②Aにお いては,原告との別居開始後も,原告がAによって生計を維持される配偶者であることを前提に老齢厚生年金に係る加給年金額の支給を受け,所得申告において配偶者控除を受けていたほか,原告が老齢基礎年金の支給請求に当たってAの被扶養配偶者であるとしてカラ期間を使用することに反対せず,さらには,原告及びAを加入名義人とした葬儀保険に加入しその 保険料を支払っていたものであり,③原告においては,Aが平成24年10月に逮捕された際,Aの妻として警察署を訪れて警察官と面談したほか,Aの死亡の際も,死亡の届出をするとともに,自ら喪主として葬儀を行い,葬儀費用等を負担したことなどが認められ(認定事実⑵ウ,オ,カ,⑶ に逮捕された際,Aの妻として警察署を訪れて警察官と面談したほか,Aの死亡の際も,死亡の届出をするとともに,自ら喪主として葬儀を行い,葬儀費用等を負担したことなどが認められ(認定事実⑵ウ,オ,カ,⑶ア,ウ),これらの事情に照らせば,原告とAとの婚姻が形骸化し,婚姻が解 消されたのと同様の状態にあったとは評価することができないものというべきである。 なお,原告は,別居を開始して約1年後の平成16年4月4日に住民票上の住所を長男と同じ住所へと移しているが,これは,Aが平成12年4月に退職後,保険料を支払うのを嫌がって健康保険に加入しなかったため, 原告も加入することができず,平成16年3月に病院を受診した際に医療費の全額を支払わなければならなかったことから,健康保険への加入の必要性を強く感じたことによるものであって(認定事実⑴エ,⑵イ),かかる事情がなければ,原告が住民票上の住所を移す必要はなかったものといえる。 イ以上のとおり,①原告がAとの別居を開始したことはやむを得ない事情によるものであり,別居が長期間に及んだことも相応の理由に基づくものといえるところ,②別居中の原告の生計を維持するには,原告の年金収入及び長男や長女等による経済的援助だけでは足りず,Aの収入から得られた財産(同居時貯蓄金及び別居時持ち出し金)を用いることが不可欠であ ったものであり,原告が持ち出すなどした金銭を生活費に充てることにつ いてはAも黙認していたものである。また,③長期間に及ぶ別居にもかかわらず,原告又はAのいずれからも離婚に向けた働きかけがされたことはなく,そのほかの両名の行動に照らしても,原告とAとの婚姻が形骸化し,婚姻が解消されたのと同様の状態にあったとは評価することができない。 これらの事情に照らせば, も離婚に向けた働きかけがされたことはなく,そのほかの両名の行動に照らしても,原告とAとの婚姻が形骸化し,婚姻が解消されたのと同様の状態にあったとは評価することができない。 これらの事情に照らせば,原告は,別居中も,Aとの婚姻関係を基礎とし て,同人の収入によって生計を維持していたものということができるから,Aの死亡当時同人と生計を同じくしていた(生計同一要件を満たす)ものと評価するのが相当である。 ウ被告の主張について被告は,本件が,認定基準①ウ,療養費等の経済的な 援助が行われている」場合や「定期的に音信,訪問が行われている」場合に当たらない旨を主張する。 しかし,,当該配偶者が被保険者等と別居し,住民票上の世帯及び住所も別にしているが生計同一要件を満たすと評価できる典型的な場合について定めたものであり,生計同一要件を満たすと評価され る場合をこれに限定するのが相当でないことは,前記⑴に説示したとおりである。また,上記ア及びイのとおり,原告がAと長期間にわたり別居したのはAの暴力から逃れるためであるから,Aの原告に対する積極的な経済的援助や定期的な音信,訪問等が期待し得る状況になかったことは明らかであり,本件の事情の下において,これらの経済的援助や音信等がない からといって生計同一要件を認めないとすることは,厚年法施行令3条の10の解釈適用を誤るものといわざるを得ない。 なお,前記⑴のとおり,認定基準総論ただし書は,認定基準の定めに従うことにより生計維持関係の認定を行うことが実態と著しくかけ離れたものとなり社会通念上妥当性を欠くこととなる場合には,認定基準の定めに よらずに認定すべきものとしているところ,上記ア及びイのような本件の 事実関係の下においては,原告がA くかけ離れたものとなり社会通念上妥当性を欠くこととなる場合には,認定基準の定めに よらずに認定すべきものとしているところ,上記ア及びイのような本件の 事実関係の下においては,原告がAの死亡当時同人と生計を同じくしていたと評価することが,生活保障を必要とする被保険者等の配偶者を保護しようとする厚年法59条1項の趣旨に沿うものということができる上,原告が住民票上の住所を移した理由は,Aが健康保険に加入せず,医療費の全額を支払わなければならない状態にあったためであり,このような状態 になければ別居後もAと住民票上の世帯を同じくしていた可能性が否定できない。これらの事情を考慮すると,本件について認定基準①に基づき生計同一要件の認定を行うことは,実態と著しくかけ離れたものとなり,社会通念上妥当性を欠くこととなるものといえるから,本件は認定基準総論ただし書の場合に当たるものということができる。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 ⑶ 小括以上によれば,原告については,厚年法施行令3条の10に定める生計同一要件及び収入要件のいずれも満たすものと認められ,したがって,厚年法59条1項にいう生計維持要件を満たすものと認められるから,同項に定め る遺族厚生年金を受けることができる遺族に該当する。そうすると,原告がこれに該当しないことを理由として遺族厚生年金を支給しないものとした本件不支給処分は違法であり,取り消されるべきである。 3 義務付け請求について本件裁定請求に係る遺族厚生年金の支給裁定の義務付けを求める訴えは,申 請型義務付けの訴え(行政事件訴訟法3条6項2号,37条の3)であるところ,上記のとおり,本件不支給処分は取り消されるべきものであるから,同条1項2号の要件を満た 義務付けを求める訴えは,申請型義務付けの訴え(行政事件訴訟法3条6項2号,37条の3)であるところ,上記のとおり,本件不支給処分は取り消されるべきものであるから,同条1項2号の要件を満たし,適法であると認められる。そして,上記2のとおり説示したところに照らせば,Aに係る遺族厚生年金の支給を求めた本件裁定請求については,原告は,Aの死亡当時同人により生計を維持していた配偶者であると認められ,「遺族厚生年金を受けることができる遺族」(厚年法59条1項)に該当し,原告に遺族厚生年金を支給すべきことが厚年法及び関係法令の規定から明らかであるから,行政事件訴訟法37条の3第5項の要件を満たし,厚生労働大臣(処分行政庁)に対し,本件裁定請求に係る遺族厚生年金の支給裁定をすべき旨を命ずるのが相当である。 第4 結論 以上によれば,原告の請求はいずれも理由があるからこれらを認容することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第51部 裁判長裁判官 清水知恵子 裁判官 進藤壮一郎 裁判官 田中慶太は,差支えのため署名押印することができない。 裁判長裁判官 清水知恵子 (別紙2-1) ○ 厚生年金保険法 (受給権者) 第五十八条 遺族厚生年金は、被保険者又は被保険者であった者が次の各号のいずれかに該当する場合に、その者の遺族に支給する。ただし、第一号又は第二号に該当する場合 が次の各号のいずれかに該当する場合に、その者の遺族に支給する。 ただし、第一号又は第二号に該当する場合にあつては、死亡した者につき、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の三分の二に満たないときは、この限りでない。 一 被保険者(失踪の宣告を受けた被保険者であつた者であつて、行方不明となつた当時被保険者であつたものを含む。 )が、死亡したとき。 二~四(省略) (省略) (遺族) 第五十九条 遺族厚生年金を受けることができる遺族は、被保険者又は被保険者であつた者の配偶者、子、父母、孫又は祖父母(以下単に「配偶者」、「子」、「父母」、「孫」又は「祖父母」という。 )であつて、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時(失踪の宣告を受けた被保険者であつた者にあ う。 )であって、被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時(失踪の宣告を受けた被保険者であった者にあっては、行方不明となった当時。以下この条において同じ。)その者によって生計を維持したものとする。ただし、妻以外の者にあっては、次に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。 一 夫、父母又は祖父母については、五十五歳以上であること。 二 子又は孫については、十八歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にあるか、又は二十歳未満で障害等級の一級若しくは二級に該当する障害の状態にあり、かつ、現に婚姻をしていないこと。 ~ (省略) 第一項の規定の適用上、被保険者又は被保険者であった者によって生計を維持していたことの認定に関し必要な事項は、政令で定める。 (別紙2-2) ○ 厚生年金保険法施行令 (遺族厚生年金の生計維持の認定) 第三条の十 法第五十九条第一項に規定する被保険者又は被保険者で (遺族厚生年金の生計維持の認定) 第三条の十 法第五十九条第一項に規定する被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者によつて生計を維持していた配偶者、子、父母、孫又は祖父母は、当該被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた者であつて厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたつて有すると認められる者以外のものその他これに準ずる者として厚生労働大臣の定める者とする。 (別紙2-3)生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて 1 総論⑴ 生計維持認定対象者 次に掲げる者(以下「生計維持認定対象者」という。)に係る生計維持関係の認定については,2の生計維持関係等の認定日において,3の生計同一要件及び4の収入要件を満たす場合(中略)に受給権者又は死亡した被保険者若しくは被保険者であった者と生計維持関係があるものと認定するものとする。 ただし,これにより生計維持関係の認定を行うことが実態と著しく懸け離れた ものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合には,この限りでない。 ①~⑦(略)⑧ 遺族厚生年金(昭和60年改正法による改正後の厚生年金保険法による特例遺族年金を含む。)の受給権者 ⑨(略)⑵ 生計同一認定対象者(以下略) い。 ①~⑦(略)⑧ 遺族厚生年金(昭和60年改正法による改正後の厚生年金保険法による特例遺族年金を含む。)の受給権者 ⑨(略)⑵ 生計同一認定対象者(以下略) 2 生計維持関係等の認定日(以下略) 3 生計同一に関する認定要件⑴ 認定の要件 生計維持認定対象者及び生計同一認定対象者に係る生計同一関係の認定に当たっては,次に該当する者は生計を同じくしていた者又は生計を同じくする者に該当するものとする。 ① 生計維持認定対象者及び生計同一認定対象者が配偶者又は子である場合ア住民票上同一世帯に属しているとき イ住民票上世帯を異にしているが,住所が住民票上同一であるとき ウ住所が住民票上異なっているが,次のいずれかに該当するとき現に起居を共にし,かつ,消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき単身赴任,就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっているが,次のような事実が認められ,その事情が消滅したとき は,起居を共にし,消費生活上の家計を一つにすると認められるとき生活費,療養費等の経済的な援助が行われていること定期的に音信,訪問が行われていること②(略)⑵ 認定の方法(以下略) 4 収入に関する認定要件⑴ 認定の要件① 生計維持認定対象者(中略)に係る収入に関する認定に当たっては,次のいずれかに該当する者は,厚生労働大臣の定める金額(年額850万円)以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外の者に該当するもの とする。 ア前年の収入(前年の収入が確定しない場合にあっては,前々年の収入)が年額850万円未満であること。 イ前年の所得(前 ると認められる者以外の者に該当するもの とする。 ア前年の収入(前年の収入が確定しない場合にあっては,前々年の収入)が年額850万円未満であること。 イ前年の所得(前年の所得が確定しない場合にあっては,前々年の所得)が年額655.5万円未満であること。 ウ一時的な所得があるときは,これを除いた後,前記ア又はイに該当すること。 エ前記のア,イ又はウに該当しないが,定年退職等の事情により近い将来(おおむね5年以内)収入が年額850万円未満又は所得が655.5万円未満となると認められること。 ②(略) ⑵ 認定の方法これらの認定については,受給権者からの申出及び生計維持認定対象者の状況に応じ別表3の書類の提出を求め行うものとする。 5 事実婚関係(以下略) 6 重婚的内縁関係(以下略) 以上 (別紙3)当事者の主張の要旨 1 原告の主張の要旨⑴ 家庭内暴力の事案においては,「生計維持要件」について,認定基準を杓子 定規に当てはめるのではなく,実態と社会常識に即した判断をすべきである。 すなわち,夫の暴力から避難している妻に対し,夫と住所を同じくすることや,夫からの経済的援助,定期的な音信等を求めることは極めて不合理であり,このような行政実務は被害者を人身の危険に晒すものであり人道上も問題である。このように,認定基準は,家庭内暴力の被害者に対する配慮が欠如した ものであるところ,認定基準は司法判断を拘束しないものであるから,実態に即した判断がされるべきである。 仮に認定基準を適用するのであれば,同1⑴ただし書の「これにより生計維持関係の認定を行うことが実態と著しくかけ離れたものとなり, 束しないものであるから,実態に即した判断がされるべきである。 仮に認定基準を適用するのであれば,同1⑴ただし書の「これにより生計維持関係の認定を行うことが実態と著しくかけ離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合」に該当するものと判断すべきである。家庭 内暴力による別居の事案については,複数の裁決例や裁判例においても,当該要件に該当するとして生計維持要件が認定されている。 ⑵ 原告は,長男及び長女を出産後からAによる暴力を受けていたところ,平成6年7月6日に長女がAに平手打ちをされて鼓膜を破る傷害を負った。平成11年1月21日には,原告も顔面を殴打され,鼻骨骨折の傷害を負った。この ような経緯からすれば,原告がAと別居したことには「やむを得ない事情」が認められる。 また,原告は,Aとの別居後,直接の音信等を持っていなかったものの,家庭内暴力の事案において,加害者と連絡して面会しなければ遺族年金の支給を受けられないとすることは,被害者の生命・身体の安全を害するものであるか ら,当該要件は不要と解すべきである。仮にこの要件を前提としても,原告は, 長女を通じてAに対して手紙を出すなどしたり,平成24年にAが逮捕された際には妻として警察署に出向き対応したりしていることから,広い意味での音信や交流があったと評価すべきである。 さらに,経済的援助の有無についても,家庭内暴力の事案については厳格に求めるべきではないが,原告は,別居をするに当たり,Aが自宅で保管してい た現金200万円を持ち出しAの銀行口座から約340万円を引き出した。これらの合計は約540万円であるところ,原告は,Aの死亡まで,これにより生計を維持していたものである。Aは,これらの金員について原告に返 00万円を持ち出しAの銀行口座から約340万円を引き出した。これらの合計は約540万円であるところ,原告は,Aの死亡まで,これにより生計を維持していたものである。Aは,これらの金員について原告に返還を求めることはなかったのであるから,原告はAの収入により生計を維持していたものと評価することができる。一方,Aは,平成16年以降は国民健康保険料 も滞納し,平成19年12月には自宅の土地及び建物の差押えを受けるほど困窮しており,その収入は年金だけであったこと,刑務所に収監されていたことなどを考慮すれば,Aに対し経済的援助を求めることは困難であった。このような事実関係の下においては,経済的援助があったと評価すべきである。 なお,配偶者間の経済的援助について,積極的な意欲に基づくことや,直接 の援助であることは要件とされておらず,扶養される家族が生活費を費消することを容認して扶養するという実態は経済的援助の一形態である。また,Aが服役していた期間を除いた約10年間について,合計540万円(月額約4万5000円)の経済的援助は,Aの当時の収入額に照らし,婚姻費用の負担として低い額とはいえない。また,健康保険法に定める被扶養者は,主としてそ の被保険者の収入によって生計を維持しているものとされている一方,遺族厚生年金における生計維持関係は,主として生計を維持する程度までは求められていないから,原告が長男の扶養家族として健康保険に加入していることが遺族厚生年金におけるAとの生計維持関係を否定する根拠とはならない。 ⑶ そのほか,原告とAには離婚の意思も合意もなかったことや,原告は,Aの 葬儀に際して妻として喪主を務め,自宅を単独相続していることなどからすれ ば,Aの死亡当時,Aによって生計を維持したものに該当 には離婚の意思も合意もなかったことや,原告は,Aの 葬儀に際して妻として喪主を務め,自宅を単独相続していることなどからすれ ば,Aの死亡当時,Aによって生計を維持したものに該当していると認めるべきである。別居期間は約13年に及ぶものとなったものの,その間,Aの常習的暴力が収まる様子はなく,懲役刑に服するなどしていたことによるものであり,離婚の話等はなく,Aが改心し,暴力的な気質が和らぐような状況になれば,同居を再開する可能性もないとはいえなかったものである。 なお,厚生労働大臣は,原告に対し,平成23年11月24日当時のAとの生計維持関係を認定し,老齢基礎年金の振替加算の支給を認めているところ,その後,Aは逮捕,勾留され,懲役刑に服していたのであるから,その間の生計維持関係を求めることは社会通念上妥当ではなく,遺族厚生年金の裁定に際しても,生計維持関係を認定すべきである。 ⑷ よって,原告は,Aの死亡当時,Aによって生計を維持したものに該当するから,遺族厚生年金の支給が認められるべきであり,本件不支給処分は違法である。 2 被告の主張の要旨⑴ 遺族厚生年金は,被保険者等の死亡によって遺族の生活の安定が損なわれる ことを防止し,被保険者等によって生計を維持されていた遺族の生活保障を目的とする公的給付であり,被保険者等の死亡によって生計の途を失う者,すなわち生活保障の必要性がある者に限って,遺族厚生年金を支給してその生計を保護しようとするものであるから,被保険者等の法律上の配偶者であっても,被保険者等と生計維持関係がなかった場合は,公的給付によって当該配偶者の 生活を保障する必要がないため,厚生年金保険の給付を受ける「遺族」に該当せず,遺族厚生年金は支給されない。 そして,生計 者等と生計維持関係がなかった場合は,公的給付によって当該配偶者の 生活を保障する必要がないため,厚生年金保険の給付を受ける「遺族」に該当せず,遺族厚生年金は支給されない。 そして,生計維持関係の認定に関し必要な事項は,政令で定めることとされており(厚年法59条4項),これを受けて,厚年法施行令3条の10は,厚年法59条1項に規定する被保険者等の死亡の当時その者によって生計を維 持していた配偶者,子,父母,孫又は祖父母は,「当該被保険者又は被保険者 であった者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた者」(生計同一要件を満たす者)であって「厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のもの」(収入要件を満たすもの)その他これに準ずる者として厚生労働大臣の定める者とする旨を定めている。以上の規定を踏まえ,厚生労働大臣は,生計維持要件の認定基準を定めるところ,認定基準は, 生計維持要件の認定に係る統一的な基準を定め,事務処理の迅速化や客観性・公平性の確保を図る一方で,認定基準を機械的に当てはめるのが相当でない場合には家計収支に関する事実関係に基づき生計維持関係の有無を認定することとして事務処理の適正化も図っているのであり,合理性を有するというべきである。 このような認定基準の合理性からすると,別居の原因がいわゆるドメスティック・バイオレンスであることをもって,認定基準に係る要件を不要とし,又は緩和すると解すべき理由はなく,別居の原因がドメスティック・バイオレンスであること等の認定基準に沿わない事情については,認定基準に沿った認定結果が実態と著しくかけ離れ,かつ社会通念上妥当性を欠くか否か(認定基準 総論ただし書)において考慮されることで足りる。なお,認定 こと等の認定基準に沿わない事情については,認定基準に沿った認定結果が実態と著しくかけ離れ,かつ社会通念上妥当性を欠くか否か(認定基準 総論ただし書)において考慮されることで足りる。なお,認定基準総論ただし書は,認定基準どおりに認定を行うと「生計同一要件」の充足が認められず,「生計維持要件」がないものと認定される場合であっても,「その認定結果が実態と著しくかけ離れ,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合には,家計収支に関する事実関係に基づいて,『生計維持要件』の有無を認定する」 ことをも含意するものである。 したがって,本件訴訟においても,認定基準に沿って,原告に生計維持要件が認められるか否かを判断することが相当である。 ⑵ア認定基準総①について原告は,認定基準における「3生計同一に関する認定要件」の「⑴①生計 維持認定対象者(中略)が配偶者又は子である場合」に該当するから,同① のアからウまで(認定基準①ア~ウ)のいずれかを満たさなければならない。 しかしながら,原告は,Aの死亡当時,Aと同一世帯に属しておらず,住所が住民票上Aと同一ではないから,「住民票上同一世帯に属しているとき」(認定基準①ア)及び「住民票上世帯を異にしているが,住所が住民票上同一であるとき」(認定基準①イ)のいずれにも該当しない。また,Aと別居 しており,「現に起居を共にし,かつ,消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき)にも該当しない。 さらに,原告が,別居中にAから仕送り等により経済的援助を受けていた事実は認められない。原告は,別居時に持ち出し又は引き出した約540万円をもって経済的援助があったと主張するようであるが,Aに無断で 持ち出したものにすぎず,これがAの意思に沿うものでなかったことは 認められない。原告は,別居時に持ち出し又は引き出した約540万円をもって経済的援助があったと主張するようであるが,Aに無断で 持ち出したものにすぎず,これがAの意思に沿うものでなかったことは明らかであり,殊更に返金を求める積極的な行動に及ばなかったとしても,Aにおいて経済的な援助をすることを意欲していたと評価することはできない。ましてや,別居期間は約13年にも及んでいるところ,上記の金額のみで同期間中の生活の糧にしていたと認めることは困難であり,Aの死 亡当時において経済的援助が行われたと言い得るものでないことは明らかである。原告は,平成16年頃からは長男の扶養に入って健康保険に加入しており,長男からの経済的援助があったことが推認される。したがって,原告が現金を持ち出すなどしたことをもって,Aの死亡当時,Aから原告に対し経済的援助が行われたということはできない。 また,原告の主張を前提にしても,Aへの手紙はAが死亡する約13年も前の1通のみであり,Aの死亡当時,原告とAとの間に定期的な音信があったということはできない。警察への対応等は,第三者である警察との1回的なものにすぎず,これをもって,Aとの定期的な音信に当たるということはできない。 さらに,原告は,約13年にわたり,別居の解消に向けた行動をとって おらず,Aの出所時期の把握すらしていなかったのであるから,原告及びAが再度起居を共にする意思があったとは到底認められない。したがって,原告とAの別居は,一時的・短期間のものであったということはできないから,「その事情が消滅したときは,起居を共にし,消費生活上の家計を一つにすると認められるとき」(認定基準 イ認定基準総論ただし書について上記のように,本件では,認定基準を機械的 ないから,「その事情が消滅したときは,起居を共にし,消費生活上の家計を一つにすると認められるとき」(認定基準 イ認定基準総論ただし書について上記のように,本件では,認定基準を機械的に当てはめた場合には,認定基準を満たさない。そして,そのような認定基準に沿った認定結果が社会通念上妥当性を欠くか否か(認定基準総論ただし書)を検討しても,原告とAとの生計維持関係を否定することが実態と著しくかけ離れたものと はいえず,また,社会通念上妥当性を欠くともいえない。 すなわち,原告とAとの別居がやむを得ない事情によるものであったとしても,その他の認定基準をいずれも満たしておらず,約13年間の長期にわたって別居状態を継続し,その後の別居解消の可能性も認められなかったことからすれば,原告とAの別居状態は強固に固定化し,婚姻関係が実態 を失って形骸化した事実上の離婚状態にあったものというべきであり,原告及びA双方について,Aの死亡当時における生計を維持する意思ないし生計維持の実態がなかったことは明らかである。 なお,原告に対し老齢基礎年金へ加算される振替加算が認定されたのは,あくまでも原告が65歳に到達した平成23年11月24日当時の生計維 持関係によるものであり,本件におけるA死亡当時の生計維持関係との連関を有するものではない。 ⑶ 以上のとおり,原告は,Aの死亡の当時,Aとの間に「生計維持関係」があったとは認められず(すなわち,生計維持要件を充足せず),遺族厚生年金を受けることができる「遺族」には該当しないから,本件不支給処分が適法であ ることは明らかである。 この点,原告は,平成24年10月18日から平成28年8月21日までの間のAの身柄拘束状況を考慮し,「この時期の生計維持 不支給処分が適法であ ることは明らかである。 この点,原告は,平成24年10月18日から平成28年8月21日までの間のAの身柄拘束状況を考慮し,「この時期の生計維持関係を求めることは社会通念上妥当ではな」く,「本件で行政庁が生計維持関係を仮に問うとしても平成24年夏頃」である旨主張する。しかし,生計維持関係を認定すべき時点については,厚年法59条1項に「被保険者又は被保険者であった者の死亡の 当時」と明記されていることから,死亡当時の状態で認定を行うべきであり,身柄拘束期間を考慮することには何ら法的根拠がない。むしろ,被保険者等の死亡当時の遺族の生活保障に係る事情を検討することが遺族厚生年金の制度趣旨に合致するものである。 なお,本件では,Aの身柄拘束以前及び以後のいずれの相当期間においても, Aと原告は,別居状態にあり,経済的な援助や定期的な音信・訪問もなく,仮に,Aが身柄拘束状態になかった場合でも,かかる認定基準にかかわる事情に違いがあったとも認められない。したがって,Aが身柄拘束されたことによってAと原告との同居,経済的な援助や定期的な音信・訪問が阻害されたとはいえない。 このように,生計維持関係の認定をすべき時点については,Aの身柄拘束期間を考慮することは法的根拠を欠き,Aの身柄拘束期間を考慮しないことが社会通念上妥当性を欠くともいえないから,Aの身柄拘束期間を考慮すべきではない。 以上 (別紙1)の指定代理人目録は記載を省略 理人目録は記載を省略

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