令和4年7月5日東京地方裁判所刑事第15部宣告令和3年特第539号、同年刑第1527号出入国管理及び難民認定法違反、詐欺各被告事件 主文 被告人A株式会社を罰金30万円に、被告人Bを懲役6月及び罰金30万円に処する。 被告人Bにおいてその罰金を完納することができないときは、金5000円を1日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。 被告人Bに対し、この裁判確定の日から2年間その懲役刑の執行を猶予する。 本件公訴事実中、令和3年6月28日付け追起訴状記載の公訴事実については、被告人Bは無罪。 理由 【罪となるべき事実】被告人A株式会社(以下「被告会社」という。)は、東京都新宿区ab 丁目c 番d号に本店を置き、飲食店の経営等の事業を営むもの、被告人Bは、被告会社の代表取締役として、被告会社が経営する特定遊興飲食店Cの業務全般を統括管理するものであるが、被告人Bは、被告会社の業務に関し、令和2年(2020年)12月1日から同月17日までの間、東京都豊島区ef 丁目g 番h 号において、いずれもベトナム社会主義共和国の国籍を有する外国人であるD及びEが、いずれも「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で本邦に在留し、出入国在留管理庁長官の資格外活動の許可を受けていない者であったのに、D及びEをいずれも店員として稼働させて、在留資格に応じた活動に属しない報酬を受ける活動に従事させ、もって事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた。 【争点に対する判断】 1 本件の争点等 ⑴ 令和3年6月28日付け追起訴状記載の公訴事実は「被告人Bは、被告会社の代表取締役として、同社が経営するC(以下「本件飲食店」という。)の業務全般を統括管理するものであるが、東京都が実施する営 ⑴ 令和3年6月28日付け追起訴状記載の公訴事実は「被告人Bは、被告会社の代表取締役として、同社が経営するC(以下「本件飲食店」という。)の業務全般を統括管理するものであるが、東京都が実施する営業時間短縮に係る感染拡大防止協力金支給事業を利用して同協力金の名目で金銭をだまし取ろうと考え、令和3年(2021年)2月26日、東京都港区ij 丁目k 番l 号のF税理士事務所において、情を知らない同事務所職員のGに、インターネット回線に接続されたパーソナルコンピュータを使用させ、東京都が開設した同協力金申請用ホームページに接続させて、東京都に対し、真実は、同店が営業時間短縮要請期間である令和2年(2020年)12月18日から令和3年1月7日までの間に、営業時間を午前5時から午後10時までに短縮した事実も、酒類の提供を終日行わなかった事実もないなど、受給要件を欠いているのに、同店が受給要件を満たすかのように装い、同店が上記営業時間短縮要請期間における営業時間を午前5時から午後10時までに短縮し、その間、酒類の提供を終日行わなかった旨の内容虚偽の情報を記載した「営業時間短縮に係る感染拡大防止協力金(令和2年12月18日~令和3年1月7日実施分)申請書」(以下「本件申請書」という。)のデータ等を送信させて同協力金の給付申請(以下「本件給付申請」という。)をし、その頃、東京都新宿区の東京都庁において、東京都産業労働局産業企画担当部長のHら審査担当者にこれらを閲覧させ、同給付申請が受給要件を満たす正当な給付申請であると誤信させ、同年3月3日、Hに、同社に対する同協力金(以下「本件協力金」という。)84万円の給付を決定させ、よって、同月12日、東京都の担当者に、株式会社I銀行J支店に開設された上記被告会社名義の普通預金口座に現金84万円を振込入金させ る同協力金(以下「本件協力金」という。)84万円の給付を決定させ、よって、同月12日、東京都の担当者に、株式会社I銀行J支店に開設された上記被告会社名義の普通預金口座に現金84万円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させたものである。」(以下「本件公訴事実」という。)というものである。 ⑵ 本件公訴事実について、Gが、本件協力金に関して本件飲食店が受給要件を欠いているのに受給要件を満たすかのように本件給付申請をし、本件公訴事実のとおり、被告会社名義の普通預金口座に現金84万円の振込入金があったことなど は、当事者間に争いがなく、証拠上も優にこれを認定することができる。 本件の争点は、本件公訴事実のうち、被告人Bが本件協力金の名目で金銭をだまし取ろうとしたか否か、すわなち、本件飲食店が本件協力金の受給要件を欠いているのに同店が受給要件を満たすかのように装い、Gに本件給付申請をさせたという事実について、被告人Bに、その認識(故意)が認められるか否かである。 2 前提となる事実関係上記争点を判断する上で前提となる事実関係の概要は次のとおりである。 ⑴ 被告人Bは、平成17年(2005年)4月に来日し、語学学校や専門学校に通うなどした後、K大学を卒業した。被告人Bは、ラーメン店でアルバイトをするなどした後、自らラーメン店の経営を始め、その頃、Gと知り合った。Gは、税理士資格を持っていなかったが、父親が経営するF 税理士事務所において、監査部門主査という肩書で働いており、顧客の税務、会計、コンサルタント等の業務を行っていた。被告人Bは、自ら経営するラーメン店の確定申告等をGに有償で依頼するようになった。 被告人Bは、上記ラーメン店を閉めた後、平成27年(2015年)11月、被告会社を設立し、ベトナムから留学生を募集して日本 は、自ら経営するラーメン店の確定申告等をGに有償で依頼するようになった。 被告人Bは、上記ラーメン店を閉めた後、平成27年(2015年)11月、被告会社を設立し、ベトナムから留学生を募集して日本の学校に紹介するなどの事業を始め、被告会社に関する確定申告等の税務や社会保険の加入、助成金の申請等に際しては、Gに有償でそれらを依頼していた。被告人Bは、平成29年(2017年)、本件飲食店を開店し、令和2年(2020年)4月、特定遊興飲食店の許可申請をしたが、その際には、営業時間を午後5時から午前5時としていた。 ⑵ その頃、新型コロナウイルスの蔓延に伴い、緊急事態宣言が出され、被告人Bは本件飲食店をしばらくの間、営業しなかった。被告人Bは、ニュース等で持続化給付金等の制度があることを知り、Gにそれらの申請手続を依頼して、同年4月に国の持続化給付金を、同年夏には東京都の感染拡大防止協力金をそれぞれ受け取り、いずれもその8パーセントを報酬としてGに支払った。 Gには、違法賭博等で多額の借金があり、毎月約20万円の返済に追われてい た。 ⑶ 本件協力金の申請受付期間は、令和3年(2021年)1月26日から同年2月26日までであり、その支給額は一事業者あたり一律84万円であった。その受給要件は、夜間時間帯(22時から翌朝5時までの間)に営業し、顧客に酒類の提供を行っていた飲食店が、令和2年12月18日から令和3年1月7日までの全ての期間において、㋐東京都の要請に応じ、5時から22時までに営業時間を短縮すること、㋑東京都の要請に応じ、酒類の提供を終日行わないことの㋐㋑いずれかに該当すること、㋒ガイドラインを遵守のうえ「感染防止徹底宣言ステッカー」(以下「本件ステッカー」という。)を対象店舗において申請期間中に顧客が見やすい場所に掲示して 終日行わないことの㋐㋑いずれかに該当すること、㋒ガイドラインを遵守のうえ「感染防止徹底宣言ステッカー」(以下「本件ステッカー」という。)を対象店舗において申請期間中に顧客が見やすい場所に掲示していることなどであったが、被告人Bは、上記期間において、本件飲食店において、㋐夜間時間帯にも営業をし、㋑酒類の提供もし、㋒本件ステッカーを掲示することもしていなかった。 被告人Bは、ニュースで本件協力金の制度があることを知り、その受給条件等が記載された東京都のホームページを見つけ、令和3年2月16日午後1時34分、メッセージアプリ・ライン(以下、単に「ライン」という。)を利用して、上記ホームページのURLをメッセージに張り付け、Gに送信した(そのメッセージを以下「本件メッセージ」という。)。被告人Bは、同日午後1時36分、Gにラインで電話をし、48秒間、Gと通話をした(以下「本件通話」という。)。 その後、被告人BとGとの間で次のようなラインのやりとりがある。 ・「助成金が2つ合わせて270万ですね。クライアントが100社くらい順番待ちをしているので前金で手数料を支払って頂けたら、1番早く申請できます。 手数料は10%+消費税を頂くので297、000円です。今週お振り込み頂けたら、1番目に申請致します」(同月17日午前8時38分、Gから被告人B)・「ありがとうございますが前回と同じに8%でお願いいたします」(同日午前8時53分、被告人BからG)・「8%かしこまりました。237、600円のお振り込みお願い致します」(同 日午前9時13分、Gから被告人B)・「本日お振り込み頂けたら、今日から申請準備致します」(同日午前9時16分、Gから被告人B)・「本日、お振り込み可能でしょうか?」(同日午後1時12分、Gから被告人B) 、Gから被告人B)・「本日お振り込み頂けたら、今日から申請準備致します」(同日午前9時16分、Gから被告人B)・「本日、お振り込み可能でしょうか?」(同日午後1時12分、Gから被告人B)・「明日振り込み下さい。今日から申請を進めます」(同日午後2時1分、Gから被告人B)被告人Bは、同月18日、被告会社の口座からGに23万7600円を送金して上記手数料を支払った。支払先は、F 税理士事務所名義の口座ではなく、G個人の名義の口座であり、Gは、上記手数料を上記事務所に入れることなく、自ら使用したが、本件給付申請には着手しなかった。 Gは、申請期間最終日(同月26日)の前日(同月25日)、本件給付申請に着手し、上記受給要件㋒に関して、ラインで、被告人Bとの間で次のようなやり取りをした。 ・「感染防止徹底宣言ステッカーを店の扉に貼ってありますか?その写真が必要です」(同日午前9時22分、Gから被告人B)・「(本件飲食店のドア等の写真)」「これしかないけど」(同日午前9時24分、被告人BからG)・「(本件ステッカーを表示させた画面のスクリーンショットの写真)」「貼ってないですか?」(同日午前9時34分及び35分、Gから被告人B)・「無いです」(同日午前9時35分、被告人BからG)・「感染防止ステッカーを取りました。東京都の補助金申請期限は明日までです」(同日午後0時59分、被告人BからG)・「ステッカーを店に貼って写真を撮って下さい。それをメールで送って下さい。 それであれば今日の打ち合わせはキャンセルです。もちろん明日までに申請完了させます。」(同日午後1時6分)・「(本件飲食店のドアに本件ステッカーが貼付されている写真)」(同日午後4時 53分)Gは、本件給付申請に必要な書類で 。もちろん明日までに申請完了させます。」(同日午後1時6分)・「(本件飲食店のドアに本件ステッカーが貼付されている写真)」(同日午後4時 53分)Gは、本件給付申請に必要な書類である本件申請書、誓約書(以下「本件誓約書」という。)、「感染拡大防止のための営業時間短縮のお知らせ」と題する書面(以下「本件お知らせ」という。)を作成し、翌26日、本件給付申請をした。本件申請書には、上記受給要件㋐㋑㋒を満たすことについてチェックボックスにチェックを入れる欄があったが、本件申請書を作成するにあたり、Gは上記受給要件を満たすか否かについて被告人Bに確認をしなかった。また、本件誓約書には、「下記の内容について、誓約します」「申請要件を満たしています。虚偽が判明した場合は、協力金の返還等に応じるとともに、協力金と同額の違約金を支払います。」「※法人の代表者又は個人事業主が自署してください。」等の記載があったが、Gは、被告人Bに確認したり同人の同意を得たりすることなどないまま、所在地、法人名、代表者職・氏名欄に、被告会社の所在地、名前、被告人Bの氏名等を手書きして本件申請書を作成した。本件お知らせには、「東京都からの要請により令和2年12月18日から令和3年1月7日までの期間におきましては22時をもちまして閉店とさせていただきます。」「【通常営業時】17:00~翌5:00」「【要請期間中】17:00~22:00」「C店主」等の記載があるが、これらの文面は被告人Bに確認しないまま、Gが内容等を考えて記載した。被告人Bは本件給付申請にあたり、Gがこれらの書面を作成していたことを知らなかった。 3 G及び被告人Bの公判供述の概要本件通話等について、G及び被告人Bは、当公判廷において、概要、次のとおり供述している。 ⑴ Gの公判供述( がこれらの書面を作成していたことを知らなかった。 3 G及び被告人Bの公判供述の概要本件通話等について、G及び被告人Bは、当公判廷において、概要、次のとおり供述している。 ⑴ Gの公判供述(第3回公判調書中の証人Gの供述部分)本件メッセージを受けて、そのURLの中身を見ていたところ、被告人Bから電話があり、本件通話をした。被告人Bが「うちの会社、これ、もらえますよね」ということを言ったので、「営業時間短縮してる22時以降、22時閉店してればもらえるんじゃないでしょうか」、「もらえると思いますよ」という程度の答えを した。この際に「営業時間の短縮をしていれば」と言ったのか、「22時閉店してますか」と言ったのか、記憶は曖昧である。被告人Bが「お客なんか全然いないよ、売上もありません、営業してないのと一緒だよ」というようなことを言ったので、それを聞いて、営業時間を短縮しているものと解釈した。被告人Bが「売上も厳しいんで申請を早くしてください」というようなことを言い、「私ももう少し詳しく調べるので」ということを言って本件通話は終わった。被告人Bから、時短営業をしているという趣旨の明確な発言はなかったが、URLをラインに添付して送ってきている時点で被告人Bはその内容を既に把握して理解しているものと解釈したので、被告人Bの「もう営業してないのと一緒ですよ」という回答だけで、営業時間を短縮しているものと認識した。本件協力金の内容等を確認して、もらえるだろうと判断したので、本件通話の翌日に被告人Bにラインでもらえる旨を伝えた。手数料を早く振り込ませるように促したのは、個人的な事情で支払いがあるためであり、少しでも早くお金が欲しかった。令和3年2月25日に、被告人Bとラインのやりとりをして、本件ステッカーを本件飲食店に貼っていなか 振り込ませるように促したのは、個人的な事情で支払いがあるためであり、少しでも早くお金が欲しかった。令和3年2月25日に、被告人Bとラインのやりとりをして、本件ステッカーを本件飲食店に貼っていなかったことが分かったが、時短協力金というのは時短をしていればいいのだろうと考えて、後から本件ステッカーを貼ってもいいのではないかと自分で判断した。本件申請書、本件誓約書、本件お知らせは、申請期限が迫っていたので被告人Bに説明や確認等をすることなく、自分で作成した。 ⑵ 被告人Bの公判供述令和2年6月頃から本件飲食店の営業を再開したが、営業時間は午前0時から午前5時までだった。午後6時から午前5時まで営業する予定だったが、新型コロナウイルスがまだ収まっていなかったので、近所に迷惑をかけられないと思って、営業時間は午前0時からとした。同年4月に国の持続化給付金を、同年夏には東京都の感染拡大防止協力金をそれぞれ受け取ったことがあったが、それらの制度はテレビなどで知り、Gに問合せをして、手続をしてもらった。給付金等をもらう条件については、日本語の専門的な用語をあまり知らないので、自分で調 べはせず、そういうことを専門的にやっているGに調べてもらって、条件が当てはまらないなら、申請をしないつもりだった。上記給付金等を受給し、その8パーセントを報酬としてGに支払った。嘘をついて、それらをもらったということはない。 本件協力金についてもテレビのニュースで知り、ホームページを見つけた。ホームページの全部を読んだわけではなく、最初のページを見て、営業時間を短縮していれば本件協力金の制度を活用できるというように理解した。もらえるかどうかは分からなかったが、Gに問合せをするために、ホームページのURLを張り付けて本件メッセージをGに送った。本件 時間を短縮していれば本件協力金の制度を活用できるというように理解した。もらえるかどうかは分からなかったが、Gに問合せをするために、ホームページのURLを張り付けて本件メッセージをGに送った。本件通話では、まずラインを送ったことを確認した後、「うち、お店、元々営業時間が短いですから、これはもらえますか」と聞いた。Gは、「はい、分かりました。確認します」とだけ言った。Gから夜10時までに営業を終えてますかというようなことは聞かれていない。Gから、本件協力金の条件に当てはまらないと言われたら、申請しないつもりだった。本件通話の翌日、Gから報酬を請求されたので、本件協力金は問題なくもらえると思った。その後、Gから連絡が来なかったので、どうなっているか確認するために令和3年2月24日にラインで電話をした。翌25日、Gからのラインで、本件ステッカーをお店に貼ることになったが、Gの指示に従っただけで、令和2年12月18日から令和3年1月7日までの全ての期間において本件ステッカーを貼らなければいけないということは知らなかった。 4 検討⑴ 本件の争点について、検察官は、①本件飲食店はそもそも営業時間を短縮していなかった、②本件協力金の受給要件について被告人Bは相当程度理解していたとし、①②からすれば、被告人Bは本件飲食店には本件協力金の受給要件がないことを認識していたと推認できる、さらに、③Gの供述は信用することができ、それによれば、被告人BはGに対して本件飲食店の受給資格を積極的に偽ったのであり、このことは被告人Bに詐欺の故意があったことを推認させるなどと主張 するので、検討する。 まず、検察官は、①本件飲食店が営業時間を短縮していなかった理由として、本件飲食店のフェイスブックのアカウントでは「8時から飛びます」(令和2年1 るなどと主張 するので、検討する。 まず、検察官は、①本件飲食店が営業時間を短縮していなかった理由として、本件飲食店のフェイスブックのアカウントでは「8時から飛びます」(令和2年12月31日午後7時2分)、「スタートは、夜の8時から、終わりは明日の朝8時までだよ」(同日午後7時11分)という動画の配信や、「今日9時から音楽が始まります。」(同日午後7時2分)などの投稿があり、また、同日午後9時17分ころ、被告人Bは妻と共に本件飲食店を訪れて客の呼び込みをしていることなどを挙げ、これらの事実からすれば、被告人Bは、夕方頃から本件飲食店の営業を行っていたことが推認できるなどと主張する。しかしながら、これらはいずれも令和2年12月31日の配信等であり、いわゆる年越しのイベントがある例外的な日として営業時間が通常よりも拡張されていた可能性があるのであって、そのような日の営業時間をもって他の日も営業時間が短縮されていなかったと断ずることはできない。むしろ、上記配信の中には「12時に会いましょう」(令和2年12月23日午後8時31分)、「普段通りに営業しています。夜、12時から朝6時までです」(令和3年1月6日午後8時45分)などと被告人Bの供述内容に沿うものもあるのであって、上記配信等から本件飲食店において営業時間を短縮していなかったと推認することはできない。 その他にも、検察官は、本件飲食店における本件時短要請期間の1日あたりの売上や酒類の仕入れ額が平均より上回っていることや、本件飲食店のセキュリティとして稼働していたLは「勤務時間は午後10時から翌午前6時までであり、営業時間は短縮していなかった」などと供述しており、その供述は信用できるなどとして、本件飲食店の営業時間は短縮していない旨主張する。しかしながら、本件時短要請期間 後10時から翌午前6時までであり、営業時間は短縮していなかった」などと供述しており、その供述は信用できるなどとして、本件飲食店の営業時間は短縮していない旨主張する。しかしながら、本件時短要請期間が繁忙期である年末年始を含む期間であることなどからすれば、売上や仕入れが平均より多くなることは当然ともいえ、売上や仕入れの量から営業時間を推認することはできない。また、Lの供述が信用できるとしても、同人が何と比較して営業時間を短縮していないなどと供述しているのかは必ずしも明 確ではない。 被告人Bは、令和2年(2020年)4月、特定遊興飲食店の許可申請をしているところ、その際には営業時間を午後5時から午前5時としていたのであり、その時間と比較すれば、営業時間が短縮されていたことはLの供述からも明らかであって、そうだとすれば、被告人Bとしても、本件飲食店の営業時間を短縮していると認識していた疑いは相当程度残るものというほかない。この点に関する検察官の主張は採用できない。 次に、検察官は、②本件協力金の受給要件について被告人Bが相当程度理解していたことは、本件ステッカーに関する被告人BとGとの間のラインのやりとりや、被告人Bがパソコンで本件協力金に関するホームページ等を閲覧した履歴が多数残っていることなどから推認できるなどと主張する。しかしながら、本件ステッカーに関する被告人BとGとのやりとりを見ても、被告人Bは、当初、本件ステッカーの内容や意味等を理解しておらず、Gから本件ステッカーを表示させた画面のスクリーンショットを送ってもらうなどGからの指示等を受けて、それに従って行動しているだけのようにも見えるのであって、本件ステッカーに関するやり取りなどから、被告人Bが本件協力金の受給要件等を理解していたとは推認できない。また、ホーム からの指示等を受けて、それに従って行動しているだけのようにも見えるのであって、本件ステッカーに関するやり取りなどから、被告人Bが本件協力金の受給要件等を理解していたとは推認できない。また、ホームページの閲覧履歴等についても、閲覧履歴等が残っているのは本件給付申請がなされた後の令和3年3月8日のものであることなどからすれば、これらの閲覧履歴等によっても、本件給付申請の時点において、被告人Bが本件協力金の受給要件等を理解していたと推認することはできない。さらに、検察官は、被告人Bが日本の4年制大学の学位を有しており、Gとのやりとりを見る限りでも意思疎通に支障はないことなどからも、上記推認ができる旨主張する。しかしながら、被告人Bの日本語能力がどの程度のものであるかは必ずしも明らかではない上、ある程度の日本語能力があったとしても、被告人Bも供述しているとおり、受給要件の有無の判断等については専門的な知識等が必要であると考えて、自分で確認や判断等をすることなく、専門家の判断に委ねるとい うのもあり得ないこととはいえない。そして、被告人Bは、Gを専門家であると認識していたのであり、そうであるからこそ、高額の報酬を支払って、受給要件に関する判断等も含めて本件給付申請をGに依頼したとも考え得るのであって、上記推認にも疑いを入れる余地があるといわざるを得ない。この点に関する検察官の主張も採用できない。 さらに、③Gの供述は信用することができ、それによれば、被告人BはGに対して受給資格を積極的に偽ったのであり、このことは被告人Bに詐欺の故意があったことを推認させるなどという検察官の主張についても検討すると、Gの供述は、上記3⑴のとおり、「もう営業してないのと一緒ですよ」などという被告人Bの言葉をもって、Gが本件飲食店は営業時間を短縮して ったことを推認させるなどという検察官の主張についても検討すると、Gの供述は、上記3⑴のとおり、「もう営業してないのと一緒ですよ」などという被告人Bの言葉をもって、Gが本件飲食店は営業時間を短縮しているものと解釈し、さらには受給要件もあるものと考えたという趣旨のものであるところ、被告人Bが受給要件に関するものとしてGに伝えたというのは、ごく短時間の本件通話の際における、上記のような曖昧でわずかな言葉に過ぎない。そうすると、仮にGの供述内容を前提としたとしても、その言葉をもって、被告人BがGに対して受給要件を積極的に偽ったとまで評するのはそもそも困難というべきである。また、この点を措いて、Gの供述の信用性を検討しても、Gが、借金の返済に窮しており、本件協力金に関する報酬をすぐにでも得たいと考えていたことは、本件通話翌日の被告人Bとのラインのやりとりなどからも明らかであり、本件給付申請をすることについては、Gにも強い誘因があったといえる。そして、本件協力金の受給要件を満たしていないことを認識していたとすれば、G自身も本件公訴事実について刑責を問われかねない立場であるから、この点に関する被告人Bとのやりとりについては、Gの供述の信用性を慎重に判断しなければならない。そのような観点から、Gの供述内容を見ると、被告人Bの上記発言のみでは、本件飲食店が実際に営業時間を短縮しているのかすら定かではなく、まして、本件飲食店の実際の営業時間や酒類提供の有無等、受給要件に関する事実関係はほとんど分からないものというほかない。それにもかかわらず、その後も被告人Bに確認等をし ないままで、本件協力金の受給要件を本件飲食店が満たすものと、なぜGが判断することができたのか、納得し得るような合理的な説明はない。この点に関するGの上記供述はにわかに信用する 認等をし ないままで、本件協力金の受給要件を本件飲食店が満たすものと、なぜGが判断することができたのか、納得し得るような合理的な説明はない。この点に関するGの上記供述はにわかに信用することができない。この点に関する検察官の主張も採用できない。 ⑵ 他方、被告人Bは、本件通話等について、上記3⑵のとおり供述しているところ、その供述内容に前提事実に反するところや不自然・不合理なところなどは特に見当たらない。検察官は、被告人Bが、深夜も営業をしており、酒類の提供等もしていながら、本件飲食店の受給資格を疑うことすらしなかったのは極めて不自然・不合理であるなどとして、被告人Bの供述は信用できない旨主張する。しかしながら、被告人Bは、営業時間を短縮していると認識していたところ、受給要件の有無を自分で確認したり判断したりせずに、専門家であるGの判断に委ねることにし、そのGから(受給要件があることを前提として)本件給付申請の報酬を請求されたことから、受給要件があると考えた旨述べているのであって、これまで検討してきたとおり、その供述内容は必ずしも不自然あるいは不合理なものとはいえない。被告人Bの供述はその信用性を否定できないというべきである。 ⑶ そうすると、本件公訴事実のうち、被告人Bが、本件飲食店が本件協力金の受給要件を欠いているのに同店が受給要件を満たすかのように装い、Gに本件給付申請をさせたという事実については、その認識(故意)について、なお合理的な疑いが残るものといわざるを得ない。 5 結論したがって、本件公訴事実については、犯罪の証明がないことになるから、刑事訴訟法336条により、被告人Bに対し、無罪の言渡しをする。 【量刑の理由】被告人Bは、被告会社の代表取締役として、資格外活動の許可を得ていない外国人2名を 罪の証明がないことになるから、刑事訴訟法336条により、被告人Bに対し、無罪の言渡しをする。 【量刑の理由】被告人Bは、被告会社の代表取締役として、資格外活動の許可を得ていない外国人2名をいずれも本件飲食店の店員として採用し、報酬を与えて継続的に働かせていたのであり、外国人の不法就労を助長し、出入国管理の秩序等を害した程度は軽 微なものとはいえない。したがって、新型コロナウイルス蔓延の影響で上記外国人2名に当初予定していた活動をさせることができなくなったという経緯等を考慮しても、被告会社及び被告人Bの刑責を軽視することはできず、被告会社についてはその刑責に相応する罰金刑を、被告人Bについてはその刑責に相応する懲役刑及び罰金刑を科さなければならない。 もっとも、同種事犯の量刑傾向等に照らせば、同種前科のない被告人Bについては、懲役刑についてその執行を猶予して、社会内での更生の機会を与えるのが相当である。 犯情等に関するこれらの判断により定められた各刑責の枠内において、被告人Bがもう二度と罪を犯さない旨誓約していることなどの一般情状を考慮して、主文の各刑を量定した。 令和4年7月5日東京地方裁判所刑事第15部 裁判官榊原敬
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