平成27(行ウ)272 道路位置指定取消処分の義務付け等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成28年6月17日 東京地方裁判所 その他
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判決文本文21,225 文字)

平成28年6月17日判決言渡平成27年(行ウ)第272号道路位置指定取消処分の義務付け等請求事件 主文 1 新宿区長が原告に対し平成26年7月18日付け26新都建調第○号をもってした別紙1物件目録記載1及び2の土地に係る道路の位置の指定の取消しをしない旨の処分を取り消す。 2 新宿区長は原告が平成26年4月10日付けで申請した別紙1物件目録記載1及び2の土地に係る道路の位置の指定の取消しをせよ。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求主文同旨第2 事案の概要本件は,原告が,道路の位置の指定のされた,原告の所有する土地の一部と他の者の所有する土地の一部から成る土地について,その指定の取消しを申請したところ,建築基準法の規定する特定行政庁である新宿区長から,当該道路の位置の指定のされた土地,これに沿接する土地及びこれらの土地にある建築物に関して権利を有する者の承諾が得られていないとして,道路の位置の指定の取消しをしない旨の処分(以下「本件処分」という。)をされたことについて,これらの者の承諾を得る必要はないから,本件処分は違法であり,新宿区長は道路の位置の指定を取り消す義務があるとして,本件処分の取消しと道路の位置の指定を取り消す旨の決定をすることの義務付けを求める事案である。 1 関係法令等の定め別紙3「関係法令等の定め」に記載したとおりである(同別紙3で定める略称等は,以下においても用いることとする。)。 2 前提事実(証拠等を掲記しない事実は当事者間に争いがない。)(1) 東京都知事は,昭和26年6月13日,別紙1物件目録記載1及び2の土地(以下,これらを総称して「本件土地」という。)について,別紙1物件目録記載1の土地を含む新宿区(住所省略)の土地(以 (1) 東京都知事は,昭和26年6月13日,別紙1物件目録記載1及び2の土地(以下,これらを総称して「本件土地」という。)について,別紙1物件目録記載1の土地を含む新宿区(住所省略)の土地(以下「原告土地」という。)を所有するA株式会社の申請に基づき,法42条1項5号(昭和34年法律第156号による改正前のもの)に規定する道路として指定した(以下「本件道路位置指定」という。)(甲16,乙1)。 原告土地及び別紙1物件目録記載2の土地を含む新宿区(住所省略)の土地(以下「隣接土地」という。)は,西側において,原告土地については概ね15メートル,隣接土地については10メートル以上,法42条1項1号所定の道路と接しているところ,本件道路位置指定は,原告土地を四つに区画し,上記の道路と接する区画以外の三つの区画について,建築物の敷地として接道義務を満たすためにされたものである(甲3,乙1)。 また,法42条1項5号所定の道路(以下「位置指定道路」という。)である本件土地の面積は,74平方メートルであるところ,そのうち原告の所有する原告土地上にある別紙1物件目録記載1の土地の面積は73平方メートルであり,その余のいわゆる隅切り部分である隣接土地上にある別紙1物件目録記載2の土地の面積は1平方メートルである(甲3)。 (2) 原告は,昭和46年9月30日,A株式会社と合併して原告土地の所有者となった株式会社Bから,原告土地を買った(甲16)。 原告は,原告土地上に,本件土地の一部の上にも建築物が存するようにマンション(以下「本件マンション」という。)を建築し,昭和47年12月21日,同年11月30日新築を原因とする所有権保存登記を受けた。本件マンションが建築されて以降は,本件土地は,接道義務を満たすためのものとしては,位置指定道路として 。)を建築し,昭和47年12月21日,同年11月30日新築を原因とする所有権保存登記を受けた。本件マンションが建築されて以降は,本件土地は,接道義務を満たすためのものとしては,位置指定道路としての必要性はなくなっている。(甲3,17~19,30,31) (3) 原告は,平成26年4月10日,新宿区長に対し,本件土地について,本件道路位置指定の取消しの申請(以下「本件申請」という。)をした。 (4) 新宿区長は,平成26年6月20日付けで,原告に対し,本件申請に当たり原告が提出した本件取扱基準所定の道路位置指定取消申請図の「承諾者」欄に,①原告土地及びその土地上の建物の所有権者及び根抵当権者,②隣接土地の所有権者及び根抵当権者,③隣接土地外1筆において建築中の建築物の建築主の氏名を記入し,承諾の印を受けるよう補正を求める通知をした。 本件マンションは,前記(2)のとおり建築されて以降,原告土地上に存在しており,その1階部分は駐車場として使用されているところ,本件土地を構成する別紙1物件目録記載1の土地の一部の上には,本件マンションの一部が存する上,同土地のその余の部分には,庭木が植えられているほか,屋外駐車場等として使用されており,本件土地を構成する別紙1物件目録記載2のいわゆる隅切り部分の土地も,別紙1物件目録記載1の土地との間の境界に塀が設けられるなどしており,本件土地は,位置指定道路としての実態を有していない(甲32,33,38,弁論の全趣旨)。 (5) 原告は,平成26年7月4日付けで,新宿区長に対し,前記(4)の補正の求めに応じない旨の通知をした。 (6) 新宿区長は,平成26年7月18日付けで,原告に対し,前記(4)の補正の求めに応じないとして,本件申請による本件道路位置指定の取消しをしない旨の本件処分(26 めに応じない旨の通知をした。 (6) 新宿区長は,平成26年7月18日付けで,原告に対し,前記(4)の補正の求めに応じないとして,本件申請による本件道路位置指定の取消しをしない旨の本件処分(26新都建調第○号)をした。 (7) 原告は,平成26年9月4日,新宿区建築審査会に対し,本件処分の取消しを求める審査請求をしたところ,新宿区建築審査会は,平成27年2月9日,これを棄却する旨の裁決をした。 (8) 原告は,平成27年5月1日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 3 争点(1) 本件処分の適法性 (2) 本件道路位置指定の取消しの義務付けの可否 4 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(本件処分の適法性)(被告の主張の要旨)ア新宿区法施行細則及び本件取扱基準の定めが法の趣旨にかなうものであること(ア) 新宿区法施行細則は,特定行政庁たる新宿区長が,法,法施行令及び法施行規則に基づき規定すべき事項に加え,新宿区長及び新宿区建築主事が,法,法施行令及び法施行規則を施行するのに必要な事項を定めるものである。 これは,特定行政庁たる新宿区長が,建築主事,建築監視員その他の職員を指揮監督するほか,自ら建築基準行政上広汎かつ重要な権限を行使し,法の施行事務において中心的な役割を果たしており,現場の最前線に立って法を運用する立場から,法又は法施行令に明文の規定がない事項についても,法所定の事務が有機的に機能し,執行されるようにとの趣旨で,法から立法権も含めて一定の裁量が付与されているといえることから,また,地方公共団体の長には,地方自治法15条の規定により規則制定権限が付与されていることから定めているものである。 (イ) 新宿区法施行細則17条2項及び本件取扱基準は,位置指定道路の指定の取消しを求める者 共団体の長には,地方自治法15条の規定により規則制定権限が付与されていることから定めているものである。 (イ) 新宿区法施行細則17条2項及び本件取扱基準は,位置指定道路の指定の取消しを求める者に対し,関係権利者の承諾を受けることを求めているが,これは,特定行政庁が当該道路の指定の取消しを認めるか否かの裁量判断を行う際の資料として,主として次の三つの理由により,その提出を求め,同廃止に係る形式的要件としている。 第1の理由は,法43条1項に違反する建築物の敷地が生じることがないことの確認の趣旨から,道路に沿接する敷地の所有者等の確認を取るものである。 第2の理由は,当該道路の敷地が数筆の所有地にまたがっていた場合に調整をする趣旨である。すなわち,当該敷地が共有地であれば,民法の共有に係る規定から必然的に共有者全員による申請又は他の共有者の承諾書が添付されることとなろうが,数筆の場合,仮に一筆の敷地所有者のみによる廃止申請で当該道路の位置の指定の取消しを認めるとすれば,当該道路が虫食い状態となったり,他の筆の敷地所有者の権利利益が害されるおそれがあり,かかる趣旨でその提出を求めるものである。 第3の理由は,道路に沿接する住民等の利益保護のためである。ひとたび私道が位置指定道路として開設された場合,一般的に,当該道路を前提として市街地が形成され,道路に沿接する住民らの日常生活も長年築き上げられていることなどに鑑み,当該道路が特定個人の日常生活に不可欠のものであって,それが廃止されるときは当該個人に著しい支障が生じることがあることから,その有無の確認の趣旨で,また,当該道路の廃止により,道路に沿接する敷地の建築物が違反建築物となることが見込まれる場合の調整との趣旨で,その提出を求めるものである。すなわち,位置指定道路の廃止 ら,その有無の確認の趣旨で,また,当該道路の廃止により,道路に沿接する敷地の建築物が違反建築物となることが見込まれる場合の調整との趣旨で,その提出を求めるものである。すなわち,位置指定道路の廃止については,法3条2項が適用とならず,仮に当該位置指定道路が存在することを前提に道路に沿接する敷地の所有者が建築物を建築していた場合,当該建築物は,当該道路の廃止により,直ちに違反建築物となってしまう。この場合,特定行政庁としては,法9条1項所定の是正措置命令の行使を検討することとなるが,それより前の段階で,当該位置指定道路の廃止につき,承諾書を得るという形で,申請者と道路に沿接する敷地の所有者等との協議に委ね,両者による自主的な是正・解決を求めることにより,強権的な手段である法9条1項所定の是正措置命令の行使を避けるというものである。かかる趣旨は,警察比例の原則,法9条が特定行政庁による効果裁量を認めていることにも適合し,また,社会経済的損失の防止,相対立する財産権の調 整といった観点からも合理的というべきである。 (ウ) 原告は,新宿区法施行細則17条2項及び本件取扱基準の定めについて,私道の廃止は私道所有者の自由であり,法の関連法令においても,廃道処分の実質的要件を定めた規定は法45条1項の規定のみであって,その他に私道の廃止を制限する法令上の根拠はないのであるから,処分行政庁が法律の委任に基づくことなく,内規により廃道処分の実質的要件を加重することはできない旨主張する。 しかし,前記(イ)で述べたところに加え,法45条は,その2項に主眼を置いた規定であり,私道の変更又は廃止によってその道路に接する敷地が法43条の接道義務に抵触することとなる場合は,特定行政庁は,対象物が建築物や工作物でなくとも,塀等の障害物を設けて通行を遮 主眼を置いた規定であり,私道の変更又は廃止によってその道路に接する敷地が法43条の接道義務に抵触することとなる場合は,特定行政庁は,対象物が建築物や工作物でなくとも,塀等の障害物を設けて通行を遮断し,制限したりする場合にも,法9条に基づく一般の是正措置命令に準じた手続で私道の廃止等を禁止等することができるというのが同条の法意なのであって,かかる趣旨からすれば,廃道処分の実質的要件が法45条1項に限定されるとはいえない。 (エ) 以上から,新宿区法施行細則17条2項及び本件取扱基準は,法が許容する合理的な規定であり,法に違反するものではないし,法の趣旨からすれば,新宿区法施行細則及び本件取扱基準の規定にかかわらず,特定行政庁には,位置指定道路の指定の取消しをしない裁量がある。 原告は,位置指定道路の指定の取消しに当たり,道路敷地の権利者及び隣地の権利者の承諾をいずれも不要である旨主張するが,これらを要する旨の新宿区法施行細則17条2項及び本件取扱基準が法に違反するものではないことは,上記のとおりであり,道路敷地の権利者については,当該土地を道路として使用するか否かの権利利益を有しているという観点からも,その承諾を要すると解される。 このことは,最高裁昭和41年(行ツ)第34号同47年7月25日 第3小法廷判決・民集26巻6号1236頁(以下「最高裁昭和47年判決」という。)が,道路敷地の所有者の承諾を欠く位置指定道路の指定の取消しを違法である旨判示していて,位置指定道路の指定の取消しには,道路敷地の所有者の承諾を要するとの立場をとっていることからも裏付けられる。 イ本件申請が新宿区法施行細則の要件を満たしていないこと(ア) 新宿区法施行細則17条2項は,位置指定道路の指定の取消しを求める者は,新宿区長に対し,申請書 っていることからも裏付けられる。 イ本件申請が新宿区法施行細則の要件を満たしていないこと(ア) 新宿区法施行細則17条2項は,位置指定道路の指定の取消しを求める者は,新宿区長に対し,申請書のほか,承諾者欄が記載された「道路(位置)指定・指定変更・指定取消申請図(第17号様式)」に加え,承諾者の印鑑登録証明書を提出しなければならないとされているところ,本件取扱基準においては,第17号様式の承諾者欄に記載すべき承諾者の範囲として,「道路となる土地,道路に沿接する敷地及びこれらの土地にある建築物若しくは工作物に関して権利を有する者」を定めている。 しかるに,本件申請においては,「道路(位置)指定・指定変更・指定取消申請図(第17号様式)」の承諾者欄に記載が一切なく,新宿区法施行細則17条の要件を満たしていない。 (イ) また,本件においては,前記ア(イ)のとおり,道路の廃止につき,関係権利者の承諾を求めた趣旨が実質的にも妥当する。 すなわち,本件土地は,原告土地の一部及び隣接土地の一部という数筆の土地にまたがっているところ,本件道路位置指定の取消しにつき,隣接土地の敷地所有者の承諾がなく,承諾がないまま本件道路位置指定の全部を取り消した場合,同敷地所有者の意思に反して同土地が変更されることとなり,また,その一部を取り消したとしても,不整形な道路の一部が残存することとなる。 また,隣接土地を含む土地には,本件道路位置指定を前提として本件処分時に建築中であった建築物(以下「本件隣接建築物」という。)が 存在し,本件道路位置指定が取り消されると,建ぺい率違反(法53条),防火戸その他の防火設備違反(法64条,2条9号の2のロ),高度地区による高さの制限違反(法58条,都市計画法9条17項),日影による中高層の建築物の高さの制 消されると,建ぺい率違反(法53条),防火戸その他の防火設備違反(法64条,2条9号の2のロ),高度地区による高さの制限違反(法58条,都市計画法9条17項),日影による中高層の建築物の高さの制限違反(法56条の2)の各点で違反建築物となり,違反是正のためには,耐震構造等の観点から取壊しをせざるを得ない可能性も高く,同建築物の建築主等が被る不利益は重大である。そして,この点は,市街地に違反建築物を現出させないという公益的見地からも,位置指定道路の指定の取消しが認められないというべきである。 ウ本件の具体的事実関係に基づく原告の主張に対する反論(ア) 原告は,①本件土地は,40年以上にわたって一度も道路としての実態を有したことがないこと,②隣接土地の所有者も本件土地が位置指定道路でないことを前提として行動していたこと,③本件隣接建築物の建築主が,これらを認識し,原告からも事前の連絡を受けながら規制の緩和を受けた本件隣接建築物を建築したこと,④本件土地を含めた土地を敷地とし,本件土地が位置指定道路でないことを前提とする本件マンションについて,その建築計画が適法であるとの判断を受けていることにも照らせば,本件申請が認められるべきであると主張する。 (イ) しかしながら,本件道路位置指定は,現在も有効に存在しており,客観的には原告の所有する本件マンションが違反建築物なのであって,そのような原告が,本件隣接建築物に係る適法な建築確認を受けた建築主等には保護される利益はないとして,本件処分の取消しを求めているのであり,原告の主張は失当といわざるを得ない。 (ウ) また,①位置指定道路は,現実の開設の有無にかかわらず,特定行政庁の指定の処分により道路としての効果を生ずるものであること,②隣接土地の所有者も,本件土地が位置指定道路でない るを得ない。 (ウ) また,①位置指定道路は,現実の開設の有無にかかわらず,特定行政庁の指定の処分により道路としての効果を生ずるものであること,②隣接土地の所有者も,本件土地が位置指定道路でないことを前提として 行動していたという根拠が薄弱であること,③位置指定道路は指定の処分により道路としての効果を生ずるものであるから,本件隣接建築物の建築主の行動は法的に責められるものではないこと,④建築確認をする建築主事は,建築確認手続において位置指定道路の指定をすることはできないのであって,位置指定道路の指定の有無は建築主事の建築確認についての判断によって左右されるものではないことなどからしても,原告の主張は理由がない。 (原告の主張の要旨)ア本件申請に際し,第三者の承諾は不要であること(ア) 位置指定道路は,私人が自己の所有する土地等を提供して築造する道路(私道)であり,その管理も私人が自ら行うものであるから,本来,位置指定道路の指定の取消しは,私道の所有者の自由であるところ,法45条1項は,道路に接する敷地が法43条1項の規定に抵触することとなる場合等に限って,特定行政庁が私道の廃止を禁止又は制限することができると定めている。 私道の廃止の実質的要件を定めた規定は同項の規定のみであり,その他に新宿区法施行細則を含めた法の関連法令において,私道の廃止の実質的要件を定めた規定はない。新宿区法施行細則17条は,道路の位置の指定,変更及び取消しの別を特に区別することなく,申請書や添付図書の様式と添付すべき書類及び申請の手続を定めているにすぎず,その添付図書の様式である「道路(位置)指定・指定変更・指定取消申請図(第17号様式)」には,承諾者欄が設けられているが,承諾者の範囲は定められていないのであって,その文理上,これらの申 にすぎず,その添付図書の様式である「道路(位置)指定・指定変更・指定取消申請図(第17号様式)」には,承諾者欄が設けられているが,承諾者の範囲は定められていないのであって,その文理上,これらの申請に際して承諾を得るべき者の範囲(すなわち,道路の位置の指定,変更及び取消しに関する実質的要件)を定めているものではない。 仮に新宿区法施行細則が,私道の廃止に際して承諾を得るべき者の範 囲を定めていると解釈されるのであれば,法45条1項の趣旨に抵触することは明らかであり,また,地方公共団体の長が,規則において,義務を課し,又は権利を制限する内容を定めることはできないこと(地方自治法14条2項)からしても,法令に反するものとして無効となる。 (イ) 本件取扱基準は,位置指定道路の指定,変更,取消しについて,法施行令144条の4,新宿区法施行細則9条,昭和45年建設省告示第1837号及び新宿区法施行細則に定めがあるもののほか,その具体的な基準を定めることを目的とするものであり,法の施行に必要な事項を定めるものであるところ,「第5 承諾を必要とする範囲」において,位置指定道路に関する権利者の承諾の範囲が定められ,指定,変更又は取消しといった申請の種類を特に区別することなく,申請の際に承諾を要する権利者が掲げられている。 前記(ア)のとおり,本来,位置指定道路の指定の取消しは,私道所有者の自由であり,法の関連法令においても,その実質的要件を定めた規定は法45条1項の規定のみであるから,新宿区都市計画部長が法律の委任に基づくことなく,法の施行に必要な事項について定めた内規又は基準にすぎない本件取扱基準により,位置指定道路の指定の取消しの実質的要件を加重することができないことは明らかである。 法の趣旨に沿って本件取扱基準を合理的に解釈す 必要な事項について定めた内規又は基準にすぎない本件取扱基準により,位置指定道路の指定の取消しの実質的要件を加重することができないことは明らかである。 法の趣旨に沿って本件取扱基準を合理的に解釈するためには,法45条1項の規定に照らし,本件取扱基準の「第5 承諾を必要とする範囲」の各号に掲げる権利者のうち,位置指定道路の指定の取消しに際して承諾が必要となる者は,6号に掲げる者のみであり,同号の「取消しにより直接影響を及ぼすと考えられる部分の権利者」とは,道路に接する敷地が法43条1項の規定又は同条2項の規定に基づく条例の規定に抵触することとなる場合における当該敷地の権利者に限られると解釈するほかない。 被告は,特定行政庁は,裁量権の行使として,位置指定道路の指定の取消しの実質的要件を規則で定めることができるし,新宿区法施行細則や本件取扱基準にかかわらず,位置指定道路の指定の取消しをしない裁量がある旨主張するが,財産権の制限は法律で定める旨を規定する憲法29条2項の趣旨に反するものであり,同時に地方自治法14条2項にも違反するから,特定行政庁にかかる裁量を認めることはできない。 (ウ) 本件申請においては,隣接土地は,公道に概ね10メートル以上接しているのであるから,本件道路位置指定が取り消されても,法43条1項の規定に抵触することとはならず,道路の隣地の権利者としての立場からの隣接土地の権利者の承諾は要しない。 また,本件土地は原告土地の一部及び隣接土地の一部から成るところ,位置指定道路の指定の取消しは,指定による私権の制限の解除を意味するものにすぎず,道路敷地の所有権を侵害するものではないから,道路敷地の所有者の承諾を得る必要はないと解するのが相当であり,現にその旨の法令の規定は存在しないのであるから,道路敷地の権 解除を意味するものにすぎず,道路敷地の所有権を侵害するものではないから,道路敷地の所有者の承諾を得る必要はないと解するのが相当であり,現にその旨の法令の規定は存在しないのであるから,道路敷地の権利者としての立場からの隣接土地の権利者の承諾も要しない。 最高裁昭和47年判決は,道路敷地の所有者兼隣地の所有者の承諾を欠く位置指定道路の指定の取消しについての事案であるところ,位置指定道路の指定の取消しにより,法43条1項に規定する接道義務に抵触することとなる隣地の所有者としての承諾がなかったことを理由に違法な処分であるとしたものと解されるのであって,位置指定道路の指定の取消しについて,道路敷地の所有者の承諾が必要であるとしたものではない。 したがって,本件道路位置指定の取消しに当たり,隣接土地の権利者等の第三者の承諾を得る必要はないところ,本件処分は,本件土地,これに沿接する土地及びこれらの土地上の建築物の権利者の承諾がないこ とを理由とするものであり,違法である。 イ被告の主張に対する反論被告は,関係権利者の承諾が必要な理由として,当該道路の敷地が数筆の所有地にまたがっていた場合の調整や,道路沿接住民等の利益保護を挙げている。 しかし,私人間の権利関係は,通行地役権や権利濫用等の民法上の権利関係の調整に委ねられるべきであり,その判断は最終的には裁判所が行うものであって,そもそも処分行政庁は,道路の位置の指定やその取消しに関し,私人間の権利義務を調整するような立場にはなく,法(建築基準法)の定める要件のみに基づいてその可否を判断するべきである。 また,本件道路位置指定が取り消されると,本件隣接建築物が,①建ぺい率に関する規制,②防火戸その他の防火設備に関する規制,③高度地区による高さの制限及び④日影による中高層の建 判断するべきである。 また,本件道路位置指定が取り消されると,本件隣接建築物が,①建ぺい率に関する規制,②防火戸その他の防火設備に関する規制,③高度地区による高さの制限及び④日影による中高層の建築物の高さの制限に違反する違反建築物になるとしても,本件道路位置指定が存在することによるこれら制限の緩和の利益は,容積率や道路斜線制限の緩和と同様に反射的な利益にすぎず,かかる利益を失うことは事実上の不利益にすぎない。 したがって,被告の主張は理由がない。 ウ本件の具体的事実関係に照らしても,本件申請が認められるべきであること(ア) 本件土地は,少なくとも昭和46年11月1日から現在に至るまでの40年以上にわたって,一度も道路としての実態を有したことがなく,原告のみならず隣接土地の所有者も,平成24年にCが所有者になるまでは,本件土地が位置指定道路ではないことを前提として行動し,原告も,隣接土地の所有者や被告から,本件土地に道路の実態がないことについて何らの指摘を受けたこともなかった。原告は,昭和47年11月30日,本件土地が位置指定道路でないことを前提として,本件マンシ ョンを建築したところ,東京都建築主事も,これに先立ち本件マンションについて建築確認をしている。 したがって,本件土地については,少なくとも40年以上にわたって,道路としての実態がないことを前提とする事実関係が積み重ねられてきた。 (イ) また,①建ぺい率に関する規制,②防火戸その他の防火設備に関する規制,③高度地区による高さの制限及び④日影による中高層の建築物の高さの制限は,それぞれ防火や住環境,市街地の環境維持等を目的とした規制であり,その緩和は,実態のある道路が存在することを前提として適用されるものであって,前記(ア)のとおり,本件土地について, の高さの制限は,それぞれ防火や住環境,市街地の環境維持等を目的とした規制であり,その緩和は,実態のある道路が存在することを前提として適用されるものであって,前記(ア)のとおり,本件土地について,少なくとも40年以上にわたって道路としての実態がないことからすれば,これらの規制の緩和が適用されるべき実質的理由はない。 しかるに,本件隣接建築物の建築主である株式会社Dは,本件土地には,本件マンションが建築されており,長年にわたって道路としての実態がないことを認識していながら,本件道路位置指定が形式的に残っていることを奇貨として,あえて上記①ないし④の規制の緩和を受けた本件隣接建築物を建築したのである。このように,本件土地について,道路としての実態がない以上,本件隣接建築物がこれら規制の緩和を受けるべき実質的な理由はなく,むしろそのような建物が存在する方が,公益的見地から問題である。 また,原告は,隣接土地の所有者であるCや,本件隣接建築物の建築主及び施工業者に対し,本件申請をする予定であることなどを事前に連絡し,本件道路位置指定の取消しを前提として建築物の建築を進めるよう要請したのに,これが無視されて本件隣接建築物が建築されたのである。 (ウ) このような本件の具体的事実経過に照らしても,本件隣接建築物の 建築主の利益を優先して原告の本件道路位置指定の取消しを求める自由を制限する公益的理由は一切なく,当然に本件申請が認められるべきである。 (2) 争点(2)(本件道路位置指定の取消しの義務付けの可否)(原告の主張の要旨)前記(1)(原告の主張の要旨)のとおり,本件処分は違法で取り消されるべきであり,新宿区長において,本件申請に基づき道路の位置の指定の取消しをすべきことは明らかであるから,その旨の決定をすることの義務付 (1)(原告の主張の要旨)のとおり,本件処分は違法で取り消されるべきであり,新宿区長において,本件申請に基づき道路の位置の指定の取消しをすべきことは明らかであるから,その旨の決定をすることの義務付けを求める。 (被告の主張の要旨)原告が本件申請に基づく道路の位置の指定の取消しをすることの義務付けを求める訴えは,行政事件訴訟3条6項2号所定のいわゆる申請型の義務付けの訴えであると解されるところ,本件申請を却下した本件処分は適法であって,取り消されるべきものではないから,行政事件訴訟法37条の3第1項2号の訴訟要件を欠くものとして不適法であり,却下を免れない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件処分の適法性)(1) 法42条1項のいわゆる柱書及び5号は,法第3章の規定における「道路」として,土地を建築物の敷地として利用するため,政令で定める基準に適合する道で,これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたものに該当する幅員4メートル以上のものをいう旨を定め,法施行規則9条は,法42条1項5号に規定する道路の位置の指定を受けようとする者は,指定を受けようとする道路の敷地となる土地の所有者及びその土地又はその土地にある建築物若しくは工作物に関して権利を有する者の承諾書を添えて,特定行政庁に申請書を提出するものとする旨を定める。 このように,道路の位置の指定を受けるに当たり,道路の敷地となる土地 の権利者等の承諾が要求されているのは,道路の位置の指定がされると,その指定部分に建築物を建築することができなくなるなど(法44条1項),その権利に重大な制約を受けることになるため,かかる権利の制約を受ける者の承諾を要求することにより,その保護を図ったものと解される。 そして,法42条1項5号において,特定行 など(法44条1項),その権利に重大な制約を受けることになるため,かかる権利の制約を受ける者の承諾を要求することにより,その保護を図ったものと解される。 そして,法42条1項5号において,特定行政庁が道路の位置の指定をする旨が規定されていることからすれば,特定行政庁が道路の位置の指定の取消し(撤回)をすることもできると解されるところ,かかる指定の取消しは,主として,上記のような指定による権利の制限の解除を意味するものというべきであって,これにより,指定によって制約されていた権利が回復することになるのであるから,指定の取消しの申請を拒否することが,権利の回復を制限することとなる場合において,特定行政庁が指定の取消しを制限することができるのは,法令に根拠がある場合に限られるものというべきである。 (2) そこで,上記の点に関する法令についてみるに,法45条1項は,私道の変更又は廃止によってその道路に接する敷地が接道義務について定める法43条1項の規定に抵触することとなる場合又は同条2項の規定に基づく条例の規定に抵触することとなる場合においては,私道の変更又は廃止を制限又は禁止することができる旨を,法45条2項は,違反建築物に対する措置を命ずる場合の手続に関する規定を,同条1項の措置を命ずる場合に準用する旨を定めている。 法45条1項が,私道の変更又は廃止によってその道路に接する敷地が接道義務を満たさなくなる場合に,私道の変更又は廃止を制限又は禁止することができることを定めたものであることからすれば,同項は,私道の変更又は廃止によって,その道路に接する敷地が接道義務を満たさなくなる場合に,特定行政庁において,法45条2項の規定により当該変更又は廃止に係る事実上の行為の制限又は禁止をすることができることのみならず,その道路の位置の指定 路に接する敷地が接道義務を満たさなくなる場合に,特定行政庁において,法45条2項の規定により当該変更又は廃止に係る事実上の行為の制限又は禁止をすることができることのみならず,その道路の位置の指定の取消しの申請に対し,その敷地又は敷地上の建築物の権利者の 承諾がない限り,これを拒否する旨の処分をすることができる趣旨をも含むものと解すべきである。 しかしながら,法45条のほかには,法,法施行令,法施行規則などの国の法令において,私道の変更又は廃止の制限又は禁止について定めた規定や,道路の位置の指定の取消しに際し,承諾を要する者の範囲を定めた規定はなく,本件においては,都及び被告の条例においても,私道の変更又は廃止の制限又は禁止について定めた規定や,道路の位置の指定の取消しに際し,承諾を要する者の範囲を定めた規定は見当たらない。 この点,新宿区長が地方自治法15条1項に規定する規則として定めた新宿区法施行細則は,17条において,法42条1項5号の規定による道路の位置の指定又は指定の変更若しくは取消しを求める者は,道路(位置)指定・指定変更・指定取消申請書(第16号様式)に,道路(位置)指定・指定変更・指定取消申請図(第17号様式)及び当該申請に係る承諾者の印鑑登録証明書等を添付して新宿区長に届け出なければならない旨を定め,上記第17号様式(甲3参照)には,「承諾者」の項目があり,そこに「承諾者」の印を求める体裁となっており,本件取扱基準は,その第5において,道路の位置の指定の取消しに際し,承諾を必要とする者の範囲を定めている。 しかしながら,普通地方公共団体は,義務を課し,又は権利を制限するには,法令に特別の定めがある場合を除くほか,条例によらなければならない(地方自治法14条2項)ところ,本件においては,法令には,規則におい ながら,普通地方公共団体は,義務を課し,又は権利を制限するには,法令に特別の定めがある場合を除くほか,条例によらなければならない(地方自治法14条2項)ところ,本件においては,法令には,規則において権利を制限することができる旨の特別の定めはないことからすれば,法令の根拠に基づかずに新宿区法施行細則や本件取扱基準によって新たに私人の権利を制限することはできないというべきである。 したがって,道路の位置の指定の取消しの申請について,これを拒否することが指定によって制約された権利の回復を制限することとなる場合には,国の法令に根拠がある場合でなければ,承諾を必要とする者の範囲を定めた 規定である新宿区法施行細則17条及び本件取扱基準の第5の規定に基づき,これらの者の承諾がないことをもって当該申請を拒否することはできないものと解すべきである。 (3) 以上によれば,位置指定道路の敷地である土地の所有者が,道路の位置の指定の取消しの申請をした場合に,その申請を受けた特定行政庁である新宿区長は,その取消しにより,接道義務に違反することとなる敷地及びその土地上の建築物の権利者の承諾がないときには,上記申請を拒むことができるものの,その取消しにより,接道義務に違反することとなる敷地がない場合において,当該道路の敷地である土地やその土地上の建築物又は工作物の権利者や,当該道路に接する敷地及びその土地上の建築物又は工作物の権利者の承諾がないことを理由として上記申請を拒むことはできないこととなる。 (4)アこれに対し,被告は,本件取扱基準において,道路の位置の指定の取消しにつき,関係権利者の承諾を受けることを求めているのは,指定の取消しをするか否かという裁量判断に当たり,①接道義務違反の敷地が生じないようにするため,道路に沿接する敷地の所有者 の位置の指定の取消しにつき,関係権利者の承諾を受けることを求めているのは,指定の取消しをするか否かという裁量判断に当たり,①接道義務違反の敷地が生じないようにするため,道路に沿接する敷地の所有者等の確認が必要である,②当該道路の敷地が数筆の所有地にまたがっていた場合の調整のため,当該道路の敷地である土地の所有者等の確認が必要である,③当該道路を前提として市街地が形成されており,道路に沿接する住民の日常生活の保護や,道路に沿接する敷地の建築物が違反建築物となる場合の調整のため,道路に沿接する住民の確認が必要である,という趣旨に基づくものであるなどとして,上記の関係権利者の承諾がない場合には,上記の指定の取消しの申請を拒むことができる旨主張する。 しかしながら,本件取扱基準は,新宿区都市計画部長が,法42条1項5号の道路の位置の指定,変更及び取消しについて,法,法施行令,法施行規則及び新宿区法施行細則の施行のために定めた基準であり,これらの解釈ないし運用の基準にすぎないのであって,義務を課し,又は権利を制 限することができる法令に当たらないことは明らかである。 その上で,上記①の接道義務違反の敷地が生じないようにするため,その確認の趣旨で当該道路の位置の指定が取り消されると接道義務違反となる敷地やその土地上の建築物の権利者の承諾を要するとすることは,前記(2)で述べたとおりの法45条の趣旨に照らして首肯し得るとしても,取消しの申請に際し,接道義務違反の敷地が生じないことが明らかな場合にもこれを要するとすることは,前記(2)に述べた地方自治法14条2項の規定の趣旨に反することになるから,このような場合には,上記の承諾がないことをもって申請を拒否することはできないというべきである。 また,国の法令である法,法施行令及び法施行規 方自治法14条2項の規定の趣旨に反することになるから,このような場合には,上記の承諾がないことをもって申請を拒否することはできないというべきである。 また,国の法令である法,法施行令及び法施行規則には,道路の位置の指定に際し,当該道路の敷地となる土地の所有者等の権利者の承諾書を要する旨の法施行規則9条の規定があるのと異なり,道路の位置の指定の取消しに際しては,かかる権利者の承諾を要する旨の規定はなく,位置指定道路の敷地である土地の所有者がその指定の取消しを求める場合においても,これを制限することは制約された権利の回復の制限となるのであるから,普通地方公共団体の条例の規定がないにもかかわらず,当該道路の敷地が数筆の所有地にまたがっていた場合の調整のために(上記②),当該道路の敷地である他の土地の所有者等の権利者の承諾がないことを理由として,指定の取消しの申請を拒否することはできないものと解すべきである。 さらに,道路の位置の指定が取り消されることにより,道路に沿接する敷地上の建築物が違法建築物となる場合がある(法53条,56条の2,58条,64条等)ものの,法においては,法45条1項で法43条に規定する接道義務に違反することとなる建築物の敷地がある場合の私道の変更又は廃止が制限又は禁止されているほかは,道路の位置の指定の取消しを制限する旨の規定はなく,上記のとおり,位置指定道路の敷地である土 地の所有者がその指定の取消しを求める場合に,これを制限することは制約された権利の回復の制限となるのであるから,普通地方公共団体の条例の規定もないにもかかわらず,道路に沿接する住民の日常生活の保護,道路に沿接する敷地の建築物の保護(上記③)のために,当該道路に接する敷地及びその土地上の建築物の権利者の承諾がないことを理由として,道路 もないにもかかわらず,道路に沿接する住民の日常生活の保護,道路に沿接する敷地の建築物の保護(上記③)のために,当該道路に接する敷地及びその土地上の建築物の権利者の承諾がないことを理由として,道路の位置の指定の取消しを制限することはできないものと解すべきである。 イまた,被告は,最高裁昭和47年判決は,位置指定道路の敷地である土地の所有者の承諾を欠く道路の位置の指定の取消しを違法であるとしており,位置指定道路の指定の取消しには,当該道路の敷地である土地の所有者の承諾を要するとの立場をとっている旨主張する。 しかし,最高裁昭和47年判決は,平成11年法律第87号による改正前の地方自治法の下において,普通地方公共団体の長が,法律又はこれに基づく政令によりその権限に属する国の事務(いわゆる機関委任事務)を管理し及びこれを執行するものとされていた当時に都知事が定めた同法15条1項に規定する規則である建築基準法施行細則(昭和25年東京都規則第194号。乙11)8条において,道路の敷地である土地の所有者,管理者及び使用権者の承諾を要する旨が定められていることを前提として判断したものであるのに対し,本件では,既に述べたとおり,上記改正後の地方自治法の下において,道路の位置の指定の取消しに際し,法45条の趣旨から,その取消しにより接道義務に違反する敷地がある場合に,その敷地及び敷地上の建築物の権利者の承諾がない限り,その取消しをしないことができると解されるほかは,国の法令及び普通地方公共団体の条例には,私道の変更又は廃止を禁止又は制限する旨の規定や,承諾を要する者の範囲を定める規定はなく,他に,位置指定道路の敷地である土地の所有者がその取消しを求める場合に,これを制限することができる旨の国の法令及び普通地方公共団体の条例の規定がないのであるから を要する者の範囲を定める規定はなく,他に,位置指定道路の敷地である土地の所有者がその取消しを求める場合に,これを制限することができる旨の国の法令及び普通地方公共団体の条例の規定がないのであるから,事案を異に するものである。 (5) 以上に述べたところに従い本件についてみると,前提事実(3)ないし(5)のとおり,本件申請は,本件道路位置指定の対象である本件土地の一部である原告土地の所有者である原告によりされたものであり,隣接土地の所有者等の権利者や隣接土地上に建築中の建築物の建築主の承諾はないところ,前提事実(1)のとおり,隣接土地は,本件土地以外にも2メートル以上道路に接しており,本件道路位置指定が取り消されても接道義務に違反することにはならないのであるから,道路の位置の指定の取消しに際し,これらの者の承諾は要しないことになる。 したがって,①原告土地及びその土地上の建物の所有権者及び根抵当権者,②隣接土地の所有権者及び根抵当権者,③隣接土地外1筆において建築中の建築物の建築主の承諾を得ていないことを理由としてした本件道路位置指定の取消しをしない旨の本件処分は違法であり,取り消されるべきものである。 なお,本件においては,前提事実(1),(4)のとおり,位置指定道路である本件土地の面積74平方メートルのうち,原告が所有する原告土地上にある別紙1物件目録記載の1の土地の面積が73平方メートルであるのに対し,Cの所有する隣接土地上にある同目録記載2の土地の面積は,いわゆる隅切り部分の1平方メートルにすぎず,しかも,上記隅切り部分の土地は何ら道路としての実態がなく,これを含めた本件土地全体をみても,位置指定道路としての実態を有していないのであるから,上記隅切り部分の土地の所有者であるCの利益を保護すべきものとはいい難い 分の土地は何ら道路としての実態がなく,これを含めた本件土地全体をみても,位置指定道路としての実態を有していないのであるから,上記隅切り部分の土地の所有者であるCの利益を保護すべきものとはいい難いし,また,本件道路位置指定の取消しがされると,本件隣接建築物が建ぺい率等に関して違反建築物となるとしても,上記の事情の下においては,本件隣接建築物の所有者等は,他人である原告が大部分を所有する本件土地が,道路の実態がないのに,道路の位置の指定がされたままとなっていることにより利益を受けることになるにすぎないというべきであるから,本件の具体的事情に照らしても,これら の者の利益を保護すべきものということはできない。 2 争点(2)(本件道路位置指定の取消しの義務付けの可否)新宿区法施行細則17条2項は,道路の位置の指定の取消しの申請について規定しているから,本件道路位置指定の取消しの義務付けを求める訴えは,行政事件訴訟法3条6項2号に規定するいわゆる申請型の義務付けの訴えと解されるところ,前記1のとおり,本件申請に対してした本件道路位置指定の取消しをしない旨の本件処分は取り消されるべきものであり,新宿区長が本件道路位置指定の取消しをすべきことが法の規定から明らかであると認められるから,新宿区長は,本件道路位置指定を取り消す処分をすべきである。 3 よって,原告の請求は,いずれも理由があるから,これらを認容することとして主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官舘 内 比佐志 裁判官荒谷謙介 裁判官宮端謙一 別紙3関係法令等の定め 1 地方自治法(1) 地方自治法14条地方自治法14条1項は,普通地方公共団体は 荒谷謙介 裁判官宮端謙一 別紙3関係法令等の定め 1 地方自治法(1) 地方自治法14条地方自治法14条1項は,普通地方公共団体は,法令に違反しない限りにおいて,同法2条2項の事務(地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるもの)に関し,条例を制定することができる旨を定める。 地方自治法14条2項は,普通地方公共団体は,義務を課し,又は権利を制限するには,法令に特別の定めがある場合を除くほか,条例によらなければならない旨を定める。 (2) 地方自治法15条地方自治法15条1項は,普通地方公共団体の長は,法令に違反しない限りにおいて,その権限に属する事務に関し,規則を制定することができる旨を定める。 2 建築基準法(以下「法」という。)(1) 法42条法42条1項は,法第3章の規定において「道路」とは,次の各号の一に該当する幅員4メートル以上のものをいう旨を定め,5号は,土地を建築物の敷地として利用するため,道路法,都市計画法,土地区画整理法,都市再開発法,新都市基盤整備法,大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法又は密集市街地整備法によらないで築造する政令で定める基準に適合する道で,これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたものを掲げる。 (2) 法43条法43条1項は,建築物の敷地は,道路に2メートル以上接しなければなら ない旨を定める(以下,この義務を「接道義務」という。)。 (3) 法44条法44条1項は,建築物又は敷地を造成するための擁壁は,道路内に,又は道路に突き出して建築し,又は築造してはならない旨を定める。 (4) 法45条法45条1項 という。)。 (3) 法44条法44条1項は,建築物又は敷地を造成するための擁壁は,道路内に,又は道路に突き出して建築し,又は築造してはならない旨を定める。 (4) 法45条法45条1項は,私道の変更又は廃止によって,その道路に接する敷地が法43条1項の規定又は同条2項の規定に基づく条例の規定に抵触することとなる場合においては,特定行政庁は,その私道の変更又は廃止を禁止し,又は制限することができる旨を定め,法45条2項は,違反建築物に対する措置を命ずる場合の手続に関する規定である法9条2項から6項まで及び15項の規定は,法45条1項の措置を命ずる場合に準用する旨を定める。 3 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号。以下「法施行令」という。)法施行令144条の4第1項は,法42条1項5号の規定により政令で定める基準を定める。 4 建築基準法施行規則(昭和25年建設省令第40号。以下「法施行規則」という。)法施行規則9条は,法42条1項5号に規定する道路の位置の指定を受けようとする者は,申請書正副2通に,指定を受けようとする道路の敷地となる土地の所有者及びその土地又はその土地にある建築物若しくは工作物に関して権利を有する者の承諾書を添えて特定行政庁に提出するものとする旨を定める。 5 新宿区建築基準法施行細則(昭和58年新宿区規則第17号。乙3。以下「新宿区法施行細則」という。)(1) 新宿区法施行細則1条新宿区法施行細則1条は,この細則は,区長が,法,法施行令及び法施行規則に基づき規定すべき事項並びに区長及び新宿区建築主事が,法,法施行令及び法施行規則並びに法及び法施行令に基づく条例(東京都及び新宿区が制定し た条例をいう。)を施行するに必要な事項を定めるものとする旨を定める。 (2) 新宿区法施 建築主事が,法,法施行令及び法施行規則並びに法及び法施行令に基づく条例(東京都及び新宿区が制定し た条例をいう。)を施行するに必要な事項を定めるものとする旨を定める。 (2) 新宿区法施行細則17条新宿区法施行細則17条1項は,法42条1項4号の規定による道路の位置の指定又は指定の変更若しくは取消しを求める者は,道路(位置)指定・指定変更・指定取消申請書(第16号様式)の正本及び副本に,それぞれ,道路(位置)指定・指定変更・指定取消申請図(第17号様式)を添えて区長に提出しなければならない旨を定める。 新宿区法施行細則17条2項は,法42条1項5号の規定による道路の位置の指定又は指定の変更若しくは取消しを求める者は,道路(位置)指定・指定変更・指定取消申請書の正本及び副本に,それぞれ,道路(位置)指定・指定変更・指定取消申請図及び当該申請に係る承諾者の印鑑登録証明書を添えて区長に提出しなければならない旨を定める。 6 建築基準法第42条第1項五号道路指定,変更及び取消しに係る取扱い基準(平成24年1月1日新宿区都市計画部長決定。乙4。以下「本件取扱基準」という。)(1) 第1(目的)本件取扱基準は,第1において,この基準は,法42条1項5号の規定に基づく道路の指定,変更,取消しについて,法施行令144条の4,法施行規則9条,昭和45年建設省告示第1837号及び新宿区法施行細則に定めがあるもののほか,その具体的な基準を定めることにより,手続の円滑化を図ることを目的とする旨を定める。 (2) 第5(承諾を必要とする範囲)本件取扱基準は,第5において,当該道路について,権利者の承諾の範囲は次の各号のとおりとする旨を定める。 1号道路となる土地,道路に沿接する敷地及びこれらの土地にある建築物若しくは工作物に関し 本件取扱基準は,第5において,当該道路について,権利者の承諾の範囲は次の各号のとおりとする旨を定める。 1号道路となる土地,道路に沿接する敷地及びこれらの土地にある建築物若しくは工作物に関して権利を有する者。 2号土地又はこれらの権利に関する仮登記権者。ただし,売買契約書等,権利の移行を明確に表す書類を添付した場合は除く。 3号土地及び建物が共同物件の場合は全権利者。ただし,建築の区分所有等に関する法律(昭和37年4月4日法律第69号)に規定する共同住宅棟の場合は,同法律及び管理規約による。 4号私道に接続して指定する場合は,その私道の接続部分の土地所有者。 5号法施行令144条の4第1項1号ロの「その他これに類するもの」に接続する場合は,通り抜けることについて,その権利者の承諾を必要とする。 6号変更又は取消しにより直接影響を及ぼすと考えられる部分の権利者(家屋の所有者を含む。)の承諾を得ることを原則とするが,変更又は取消しにより利益のみを得ると思われる部分の権利者の承諾は必ずしも要しない。 以上

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