- 1 -主文被告人を懲役7年6月に処する。 未決勾留日数中200日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,A及びBと共謀の上,第1 通行人から現金を喝取しようと考え,平成28年3月18日午前零時30分頃,名古屋市a区bc丁目d番e号付近路上において,C(当時28歳)に対し,被告人ら3名で取り囲み,「分かるよな。」,「いいから財布を出せ。」などと言い,その前頸部付近を手で押すなどの暴行,脅迫を加えて,現金の交付を要求し,もしこの要求に応じなければ同人の生命,身体等にいかなる危害をも加えかねない気勢を示して同人を怖がらせ,よって,その頃,同所において,同人から現金7000円の交付を受けてこれを脅し取った,第2 通行人から金品を強取しようと考え,同月23日午前1時頃,名古屋市f区gh丁目i番j所在の駐車場及びその付近において,D(当時42歳)に対し,その顔面を拳で殴り,その腹部を蹴り付けてその場に転倒させ,さらに,その頭部,胸腹部を踏み付けるなどの暴行を加え,その反抗を抑圧した上,同人所有の現金約1500円在中の財布1個を奪い,その際,上記一連の暴行により,同人に治ゆの見込みのないびまん性軸索損傷,全治不明の下顎骨骨折,加療約3か月間を要する右側頬骨骨折,加療約2か月間を要する左側頬骨骨折,加療約4週間を要する肝損傷,右第6,7,8肋骨骨折,加療約2週間を要する右外傷性気胸等の傷害を負わせた。 (争点に対する判断)第1 争点等恐喝(判示第1)の事実について,被告人が犯人か否かに争いがある。被告人は,この事実を否認する供述をし,弁護人は,被告人の供述に基づき,Cに - 2 -対する恐喝事件があったことを積極的に争うものではないが,その犯人は被告人らではなく別の3人組である可能性が 告人は,この事実を否認する供述をし,弁護人は,被告人の供述に基づき,Cに - 2 -対する恐喝事件があったことを積極的に争うものではないが,その犯人は被告人らではなく別の3人組である可能性があること,A及びBは別の機会に行った恐喝とCに対する恐喝とを混同している可能性があることなどを主張する。 第2 Cの公判供述の内容及びその信用性について 1 Cの公判供述の要旨は,次のとおりである。 平成28年3月18日午前零時15分頃,「ヒュー,おい。」などと大声で呼び掛けてくる18歳から20歳くらいの3人組の男とすれ違った。すれ違った後も声が続いていたので振り向くと,一人の男(以下「①の男」という。)と目が合った。①の男は,「何を見てるんだ。」などと言いながら,近づいてきて,名古屋市a区bc丁目d番k号所在の建物北側の路上で,私の進行方向を塞いだ。①の男から「ポッケから手を出せ。」,「お兄ちゃん何歳だ。」などと言われ,「すみません。」,「28歳。」などと答えると,「なんだその謝り方は。」などと言われた。①の男に絡まれている間に,ほかの二人の男も近づいてきて,「お前何見てるんだ。」,「なんだその謝り方は。」などと言われ,「すみません。」と謝った。 一人の男(以下「②の男」という。)から,「こっち来いや。」などと言われ,同区bc丁目d番e号所在のマンション東側の路上(以下「本件路上」という。)のごみ置き場の前に連れて行かれた。②の男は,たばこを吸っており,その煙を吹き掛けられた。②の男に首元辺りを押されて道路の反対側に移動し,植木に背をもたれるような体勢になった。その際,私から見て右側に①の男,正面に②の男,左側にもう一人の男(以下「③の男」という。)が私を取り囲むように立っていた。②の男から「分かるよな。」と言われ, 木に背をもたれるような体勢になった。その際,私から見て右側に①の男,正面に②の男,左側にもう一人の男(以下「③の男」という。)が私を取り囲むように立っていた。②の男から「分かるよな。」と言われ,恐怖を感じ,金を出して助かるならそうして早く立ち去りたいと思い,「金か。そんなに持ってないぞ。」と言った。さらに,②の男から「いいから財布を出せ。」などと言われて,スーツのズボンの右後ろポケットから右手で財布を取り出した。②の男は財布を取り上げてすぐに現金7000円 - 3 -(千円札7枚)を抜き取った。③の男が②の男に対して「身分証明は取らなくていいのか。」と聞き,②の男が「そんなもんええわ。」などと答えた。 財布は手元に戻ってきた。犯人らが脇道(本件路上)の奥の方へ逃げ去ったのを見てから犯人らと反対の方向へ逃げた。約10分後,110番通報をした。 犯人らのうち,②の男を含む二人の男がたばこを吸っており,本件路上に吸い殻を捨てた。 2 Cの上記公判供述の信用性について検討する。 Cの供述内容は具体的であり,不自然,不合理な点はない。さらに,Cと犯人らに面識はなく,虚偽の供述をする動機が見当たらない。 また,Cから110番通報を受けたE警察官の公判供述や捜査報告書によれば,Cは,18歳から20歳くらいの男3人組に胸倉をつかまれて現金7000円を取られた,3人組に「ヒュー」と言われた旨通報し,警察官を本件路上に案内していることが認められる。そうすると,Cは,犯人の人数や大まかな年齢,被害場所やその状況,被害金額等について,一貫した供述や説明をしていることがうかがわれる。 Cが被害に遭ったのは,深夜,街灯もまばらな薄暗い路上であったこと,面識のない男3人組に突然襲われ,かなり狼狽した心理状態であったと思わ ,一貫した供述や説明をしていることがうかがわれる。 Cが被害に遭ったのは,深夜,街灯もまばらな薄暗い路上であったこと,面識のない男3人組に突然襲われ,かなり狼狽した心理状態であったと思われることから,犯人らの特徴や,誰が何をしたかといった細かな事柄についてまで,正確に識別できていなかった可能性はある。しかし,上記のとおり,Cの供述の根幹部分は一貫しており,犯人の人数や大まかな年齢,被害場所やその状況,被害金額に関する供述は,十分に信用することができる。 第3 A及びBの各公判供述の内容及びその信用性等について 1 Aの公判供述の要旨は,次のとおりである。 平成28年3月中旬頃(強盗致傷事件の1週間くらい前),被告人,B及び僕の交際相手とカラオケ店で遊ぶために,bへ行った。カラオケ店に入る - 4 -には身分証明書が必要だったが,被告人は持っておらず,身分証明書を他人から取るついでに金も取ろうという話になり,僕の交際相手と合流するまでの間に恐喝をすることになった。午前零時頃,電車でb駅に到着して,1時間くらい物色し,被害者(身長170センチメートル前後,細身,スーツとワイシャツ着用,40代くらいの男性)を発見した。 僕が被害者に因縁を付けた。そして,被告人かBが,被害者を本件路上に連れて行き,被害者の首を押さえた。植木に背を向けて立っている被害者に対し,被害者から見て左側に僕が立っていたことは間違いなく,右側にB,正面に被告人が立っていたと思うが曖昧である。被害者が謝ってきたところ,被告人が「社会に通じるのか。」と言った。被害者が「お金ですか。」と言い,被告人かBが「自分で考えや。」と言った。被害者がもう一度「お金ですか。」と言うと,Bが「出しゃあ。」と言った。被害者がズボンの右後ろポケットから長財 。」と言った。被害者が「お金ですか。」と言い,被告人かBが「自分で考えや。」と言った。被害者がもう一度「お金ですか。」と言うと,Bが「出しゃあ。」と言った。被害者がズボンの右後ろポケットから長財布を取り出し,Bがそれを取り上げて現金7000円(千円札7枚)を抜き取り,財布を返した。僕がBに対して「身分証は。」と聞いたところ,Bが「そんなのいいわ。」などと答えた。被害者が先に走ってbの方へ立ち去ったので,僕たちも同じ方向へ向かった。 場所は覚えていないが,被害者から取った7000円のうち2000円を受け取った。他の二人がどのように金を分配したかは分からない。 被告人とBが先にカラオケ店に入り(被告人は僕の身分証明書を使った。),僕は交際相手を店外で待っていた。交際相手が急に来られなくなったので僕も後から入店し,3人で朝までカラオケ店で過ごした。 僕は,恐喝をした時,たばこを吸っており,吸い殻を本件路上に捨てた。 Bはたばこを吸っていなかったと思うが,被告人は分からない。 平成28年3月初旬頃から,被告人及びBとともにbで恐喝をするようになり,bのそれぞれ違う場所で合計6回恐喝を行い,そのうち3回は成功した。同年3月頃(上記7000円を恐喝した日よりも後),Bと二人でlに - 5 -おいて同一日に2回恐喝を行った。身分証明書に関する話を犯行現場でしたのは上記7000円の恐喝をした時だけである。恐喝の時に,被害者の年齢を聞いたことはない。 2 Bの公判供述の要旨は,次のとおりである。 平成28年3月中旬頃,被告人,A及びAの交際相手とカラオケ店で遊ぶために,bへ行った。カラオケ店に入店するには身分証明書が必要だったが,被告人は財布を落としたために持っていなかった。Aが「恐喝の時に身分証明書も一緒 ,被告人,A及びAの交際相手とカラオケ店で遊ぶために,bへ行った。カラオケ店に入店するには身分証明書が必要だったが,被告人は財布を落としたために持っていなかった。Aが「恐喝の時に身分証明書も一緒に取ろう。」などと言い,被告人も僕も特に反対せず,Aの交際相手と合流するまでの間に恐喝をすることになった。午後11時30分頃,電車でb駅に到着し,物色するうち,被害者(身長170センチメートル前後,顔がややふくよか,黒色短髪,スーツとコート着用,30代くらいの男性)を発見した。この時,僕たち3人は特に大声や奇声を発したりはしていない。すれ違いざまに被害者とAのそれぞれの左肩がぶつかった。被害者から謝罪の言葉がなかったので,Aが被害者を追い掛けて脇道(本件路上)へ入っていった。 僕と被告人もAと被害者を追い掛けて脇道(本件路上)に入った。Aが「(被害者に)話が通じない。」などと言って,いらいらした様子で室外機付近の壁や電柱を蹴るなどした。被告人が被害者に一方的に話し掛けている間,僕は少し離れたごみ置き場の辺りに立っていた。このままじゃ終わらないなと考えて,被害者の正面に立った。この時,被害者から見て右側に被告人,左側にAが立っていた。僕たち3人のうち誰かが被害者の身体に触れたということはなかった。 僕が,被害者に「謝ったのか。」と言うと,被害者が「謝ってません。」などと言った。僕が「じゃあどうするの。」と言ったところ,被害者が「お金ですか。」と言ってきたので,「じゃあ出しゃあ。」と言った。被害者が財布を取り出したので,僕がその財布を取り上げて現金7000円(千円札 - 6 -7枚)を抜き取り,財布を返した。僕たちの方が被害者よりも先に脇道(本件路上)の奥の方へ逃げたので,被害者がどのように逃げたかは分からない。 取り上げて現金7000円(千円札 - 6 -7枚)を抜き取り,財布を返した。僕たちの方が被害者よりも先に脇道(本件路上)の奥の方へ逃げたので,被害者がどのように逃げたかは分からない。 本件路上を離れた後,Aが「なんで身分証取らんかったの。」などと聞いてきたので,「まあ何とかなるでしょ。」と答えた。カラオケ店へ向かう道中で,被害者から取った7000円のうち3000円を僕が受け取り,他の二人が2000円ずつ分けた。 僕と被告人が先にカラオケ店に入り,Aは店外で交際相手が来るのを待っていた。交際相手が急に来られなくなったのでAのみが後から入店した。 上記犯行時,僕はたばこを吸っており,吸い殻を本件路上に捨てた。 平成28年3月以降,被告人及びAとともにbのそれぞれ違う場所で恐喝を行い,そのうち成功したのは4回,失敗したのは二,三回である。同月中旬頃,Aと二人でlにおいて同一日に2回恐喝を行った。身分証明書に関する話をしたのは上記7000円の恐喝をした時だけである。 3 A及びBの上記各公判供述の信用性について検討する。 A及びBの上記各公判供述の内容は,犯行の時期,場所,経緯,取った金額等の根幹部分について符合しており,相互にその信用性を高め合っている。 また,各供述内容は具体的で,身分証明書を取るために恐喝をしたが,結局取らなかったという特徴的な経緯も含まれている(なお,犯行時にそのようなやり取りがあったかどうかは供述が食い違っている。)。 A及びBとも,強盗致傷事件の捜査中に,この恐喝事件についての供述をしたという経緯がある上,各事件について,自らの責任を認める供述をして,現在,刑や保護処分に服している。そのようなA及びBにおいて,今更,虚偽の供述をする動機に乏しい。A及びBは,被告人の役割を過 したという経緯がある上,各事件について,自らの責任を認める供述をして,現在,刑や保護処分に服している。そのようなA及びBにおいて,今更,虚偽の供述をする動機に乏しい。A及びBは,被告人の役割を過大に見せるような供述はしておらず,被告人を巻き込むために虚偽の供述をしているとも考えにくい。 他方,A及びBの各供述には,被害者の年齢,被害者を本件路上へ連行し - 7 -た方法,被害者を取り囲んだ際の各自の立ち位置,被害者の首を押さえた者がいたかどうか,身分証明書の話が本件路上で出たかどうか,本件路上からの立ち去り方など,多くの食い違いがある。しかし,上記の食い違いは,いずれも,記憶に残りにくい細かな違いにすぎないか,あるいは,上記のとおりA及びBはほぼ共通してb駅付近で6回程度恐喝を行ったと述べており,それ自体の信用性も高いことから,細部についての食い違いが他の恐喝事件と混同等して生じている可能性がある。したがって,このような食い違いは,不自然なものではない。 以上によれば,平成28年3月中旬頃,被告人,A及びBの3人が共謀の上,本件路上で7000円を恐喝したという点で,A及びBの各供述は十分に信用できる。 第4 Cに対する恐喝事件とA及びBが供述する恐喝事件(以下これらを「二つの恐喝事件」ともいう。)とが同一といえるかについて 1 Cの供述とA及びBの供述は,被害の場所が本件路上であること,時間帯が同一であること,被害金額が千円札7枚の合計7000円であること,犯人らが財布から金を抜き取る際,身分証明書を取るような話をしながら,結局取らなかったという特徴的なやり取りがあったことなどの点において合致している(身分証明書のやり取りの点は,Cの供述とAの供述との間において合致している。)。このような恐喝事件が,平成28年3月 結局取らなかったという特徴的なやり取りがあったことなどの点において合致している(身分証明書のやり取りの点は,Cの供述とAの供述との間において合致している。)。このような恐喝事件が,平成28年3月中旬頃の短期間の間に複数回起こることは通常考え難い。これらの共通点を有していることは,二つの恐喝事件が同一のものであることを強く示しているといえる。 2 また,関係証拠によれば,平成28年3月17日午後8時30分頃,Aが交際相手に対し,男友達二人とともにカラオケ店に行かないかと誘ったこと,同日午後11時30分頃,被告人,A及びBの3名が電車でb駅に到着し,同月18日午前1時から同日午前2時頃までの間に少なくともBがb駅前のカラオケ店に4名利用の予定で入店したこと,同日午前2時12分にAの交際相手が - 8 -来られなくなったことが認められる。これらは,上記A及びBの供述する7000円の恐喝事件を起こした日の経緯と整合している。A及びBが7000円の恐喝を行った日を特定できておらず,身分証明書が必要なカラオケ店に被告人と3人で行くことも一度限りではなかったことからすると,このことだけで二つの恐喝事件が同一日に起こったとはいい難いが,上記1で述べた二つの恐喝事件における共通点の存在を併せ見ると,二つの恐喝事件が同一のものであると一層強く推測できる。 3 他方,Cは,本件路上で犯人のうち2名がたばこの吸い殻を捨てたと供述し,A及びBも本件路上でたばこの吸い殻を捨てたと供述しているのに,本件路上からは,AのDNA型と合致するDNA型の唾液が付着した吸い殻1本と,被告人,A又はBのいずれとも合致しない同じDNA型の唾液が付着した吸い殻2本しか発見されていない。弁護人は,これを踏まえ,第三者を含む別の犯行グループがCに対する恐喝事件を行った可 吸い殻1本と,被告人,A又はBのいずれとも合致しない同じDNA型の唾液が付着した吸い殻2本しか発見されていない。弁護人は,これを踏まえ,第三者を含む別の犯行グループがCに対する恐喝事件を行った可能性がある旨主張する。 しかし,被告人らと合致しないDNA型の唾液が付着した吸い殻については,それがCに対する恐喝事件とは別の機会に第三者が投棄した可能性がある。また,Bの捨てた吸い殻が本件路上から発見されていないことに関しても,たばこの吸い殻の採取は,恐喝事件が発生してから約45分後に行われ,その間,現場保存はされておらず,風などで移動したり,側溝に落下したりした可能性や警察が回収し損なった可能性も十分に考えられる(いずれにせよ,現場からは,Aと第三者の捨てた吸い殻しか採取されておらず,これらがいずれもCが被害に遭った恐喝事件の犯人らのものであるとするならば,AがB及び被告人以外の2名とその恐喝を行ったことになるが,当日のAの行動やA及びBが一致して供述する内容に照らして,そのようなことはほとんど考えられないといってよい。)。弁護人の主張は理由がない。 4 Cの供述とA及びBの供述には,犯人の因縁の付け方や恐喝の態様,本件路上から立ち去った経緯について食い違いが見られる。しかし,上記1のとおり, - 9 -各公判供述は,根幹部分において合致している。また,A及びBは,被害者を怖がらせるためにあれこれ述べるのであり,被害者とは違い,因縁の付け方や恐喝の具体的な内容を逐一覚えているとは限らない上,上記のとおり,両名とも数回恐喝を行っているから,他の恐喝事件と混同している可能性も相当程度あると考えられる。よって,これらの点についての供述の不一致は,二つの恐喝事件が同一であると認める妨げにはならない。 5 以上を総合考慮すれば,Cに対 ら,他の恐喝事件と混同している可能性も相当程度あると考えられる。よって,これらの点についての供述の不一致は,二つの恐喝事件が同一であると認める妨げにはならない。 5 以上を総合考慮すれば,Cに対する恐喝事件とA及びBが供述する恐喝事件とは同一の事件であると認められる。 第5 被告人の公判供述について 1 被告人は,公判廷で次のように供述する。A及びBと恐喝をしたことは,一度もない。平成28年3月17日午後11時30分頃,A及びBと一緒にbへ行き,翌18日午前1時ないし同日午前2時頃,二人とカラオケ店に行ったことは確かだと思うが,その間のことは覚えていない,一人でファミリーレストランなどに行った可能性もあるというのである。 2 しかし,被告人は,知人に宛てたメッセージで,恐喝をしたことを告白している。このメッセージについて,被告人は,恐喝の意味を金を取ることを含まず単に人を脅すことと誤解していたと述べるが,余りに不自然である。また,同月17日から18日にかけての行動についても,A及びBと一緒にbに行きながら,一人別行動をしていたというなら,そのようにした理由やその間の具体的な行動について,何か覚えていてもよさそうであるが,それらの点についての被告人の供述は曖昧なものでしかなく,不自然である。被告人の供述は,信用できない。 弁護人は,重い強盗致傷事件を認めながら,恐喝事件を否認する理由がなく,被告人が犯人であるとすると不自然である旨も主張する。しかし,被告人は,強盗致傷事件についても自己の関与について曖昧な供述をする傾向がうかがわれるところ,本件恐喝事件のみならず,A及びBと恐喝を反復していたとなれ - 10 -ば,罪が重くなると考え,言い逃れし難い強盗致傷事件についてはおおむね認めつつ,関与の比較的浅い恐喝事件は否 れるところ,本件恐喝事件のみならず,A及びBと恐喝を反復していたとなれ - 10 -ば,罪が重くなると考え,言い逃れし難い強盗致傷事件についてはおおむね認めつつ,関与の比較的浅い恐喝事件は否定して,自分の罪を少しでも軽減しようとしている可能性がある。恐喝事件のみを否認することは不自然とまではいえない。 3 被告人の供述は,被告人が本件恐喝事件をA及びBと行ったという認定に影響を及ぼさない。 第6 結論以上検討したところによれば,被告人が本件恐喝事件の犯人であることは,合理的な疑いを容れない程度に証明されたといえる。 (法令の適用)被告人の判示第1の所為は刑法60条,249条1項に,判示第2の所為は同法60条,240条前段にそれぞれ該当するところ,判示第2の罪について所定刑中有期懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により重い判示第2の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役7年6月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中200日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由) 1 本件の量刑判断の中心となるのは,強盗致傷事件である。 まず指摘すべき点は,被害者に及ぼした犯行結果の甚大さである。被害者は,治ゆの見込みのないびまん性軸索損傷,全治不明の下顎骨骨折等の重篤な外傷を負い,いつ生命を落としてもおかしくない危険な状態に陥った。被害者の後遺障害の程度は重く,今後の人生に与えた悪影響は計り知れない。被害者が被告人に対して厳しい処罰感情を有しているのも至極当然といえる。 また,被告人らは,深夜の路上において被害者を3人で取り囲んだ上,同人の顔面を拳で殴り,その腹部を蹴り付けてその場に転 。被害者が被告人に対して厳しい処罰感情を有しているのも至極当然といえる。 また,被告人らは,深夜の路上において被害者を3人で取り囲んだ上,同人の顔面を拳で殴り,その腹部を蹴り付けてその場に転倒させ,失神している被害者 - 11 -の頭部や胸腹部を踏み付けるなどの暴行を加えた。被害者への暴行については,計画的なものではなかったとはいえ,無抵抗の被害者の身体枢要部に危険かつ強度の暴行を執拗に加え続けたものであり,犯行態様は悪質である。犯行の主たる動機は,遊興費を得るためと認められるのであって,自己中心的かつ短絡的で酌むべき余地は全くない。 加えて,上記のとおり被害者に重篤な傷害結果を生じさせる暴行を加えたのは主にAではあるものの,被告人も,被害者の顔面を拳で1回殴打した上,失神している被害者の衣服から財布を抜き取っており,犯行において重要な役割を果たした。被告人は,Bが被害者に殴られると思い,Bを助けるために被害者の右頬を軽く殴ったにすぎない旨供述する。しかし,軽く殴った程度で被害者が失神するとは考え難く,切迫した状況で手加減をして殴打したというのも不自然である。 被告人の供述は信用できない。 以上によれば,強盗致傷事件の犯情は相当重く,その上,被告人らは,深夜の路上において,被害者を3人で取り囲み,7000円を脅し取る恐喝事件にも及んでいるのであって,犯情は一層重い。 2 その余の事情を見ると,被告人は,反省文を書き,公判廷でも反省の言葉を述べているものの,恐喝事件を否認し,強盗致傷事件においても自己の果たした役割について曖昧な供述をするなどしており,事件や被害者の心情と真剣に向き合って,反省を深めているとは認められない。被害弁償は全くされておらず,謝罪もできていない。それでも,被告人は,自己の問題点を省みて,更生意 昧な供述をするなどしており,事件や被害者の心情と真剣に向き合って,反省を深めているとは認められない。被害弁償は全くされておらず,謝罪もできていない。それでも,被告人は,自己の問題点を省みて,更生意欲を表している上,21歳と若年で,保護処分歴はあるものの,刑事裁判や刑罰を受けるのは初めてであるから,今後は一層反省を深めていくことが期待される。また,父が陳述書を作成し,更生の支援を約束しており,被告人の更生の一助となることも期待される。 3 以上によると,本件の犯情には相当重いものがあるから,その余の事情のうち,被告人の更生への期待を高めさせる事情を考慮するにも限度があり,被告人には - 12 -主文程度の刑を科するのが相当と判断した。(求刑懲役9年)平成29年3月31日名古屋地方裁判所刑事第4部 裁判長裁判官景 山 太 郎 裁判官小野寺 健 太 裁判官那 智 久美子
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