- 1 -主文原判決を破棄する。 本件を東京高等裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人佐々木新一の上告受理申立て理由について 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。 (1)上告人Xは,さいたま市A区大字B字C×××番3の土地(以下,字C所 在の土地は地番のみで示す。)を所有し,同番13の土地の2分の1の持分を有している。上告人Xは,同番5及び同番15の各土地を所有している(以下,上告 人らの所有又は共有する上記各土地を併せて「上告人ら土地」という。)。被上告人Yは,同番2,同番7,同番8,同番11及び同番12の各土地(以下,併せ て「被上告人土地」という。)を所有している。上記各土地の位置関係は第1審判決別紙地形図のとおりであって,上告人ら土地のうち,南側にある同番15及び同番13の各土地は,その間にある第三者所有の同番14の土地並びに西側にある同番2及び同番7の各土地(被上告人土地のうち南側にある土地で,北から同番7,同番2の順に位置している。以下,この2筆の土地を併せて「本件土地」という。)と共に,西方の公道に通ずる通路を形成している(以下,この通路を「本件道路」という。)。そして,本件道路に接して,同番5,同番3,同番12及び同番8の各土地が東から西へ順に位置している。 (2)被上告人土地は,平成5年8月,被上告人Yが売買により取得した土地で あり,平成6年3月,被上告人Yが×××番12の土地に自宅建物を新築し,被 上告人Yも,同じころ,同番8の土地に自宅建物を新築した。その際,被上告人 - 2 -らは,いずれも,本件土地を含む本件道路が建築基準法(以下「法」という。)42条2項所定の道路(以下「2項道路」という。)であることにより接道義務を満たすものとして建築確認を得た。そして,被上告人Yは, ,いずれも,本件土地を含む本件道路が建築基準法(以下「法」という。)42条2項所定の道路(以下「2項道路」という。)であることにより接道義務を満たすものとして建築確認を得た。そして,被上告人Yは,それまではおおむね同 番2の土地の部分に限られていた通路部分を同番7の土地部分にまで拡幅して舗装し,幅員4mの道路として整備した。 (3)上告人ら土地のうち,×××番3の土地は,平成11年4月,上告人Xが 同土地上の建物(昭和56年に建築されたものであり,その建築に際しても本件道路が2項道路であることを前提に建築確認を得たものと推測される。)及び同番13の土地の持分2分の1と共に売買により取得した土地である。上告人Xは,上 記建物に転居した同年6月ころ,従前は同番13の土地内に設置されていた垣根を後退させ,同土地全体を幅員4mの道路として整備した。 (4)上告人ら土地のうち,×××番5及び同番15の各土地は,平成元年12月,上告人Xが贈与により取得した土地である。上告人Xは,平成12年夏こ ろ,同番5の土地に自宅建物を新築したが,その際,本件道路が2項道路であることにより接道義務を満たすものとして建築確認を得た。 (5)被上告人らは,上告人Xが×××番3の土地上の建物に転居した平成11 年6月ころ,同番2の土地と同番7の土地との境界及び同番2の土地の南辺等にタイヤ止めを設置するとともに,「私有地につき関係者以外の立入禁止」と記載した立て看板を設置し,上告人らが本件道路を通行することを妨げるようになった。また,被上告人Yは,平成12年8月,同番2の土地と同番7の土地との境界に東 西に,同番7の土地と同番13の土地との境界に南北に,それぞれブロック塀を設置した。これにより,上告人らは,軽自動車よりも大きな普通乗用自動車で本件道 月,同番2の土地と同番7の土地との境界に東 西に,同番7の土地と同番13の土地との境界に南北に,それぞれブロック塀を設置した。これにより,上告人らは,軽自動車よりも大きな普通乗用自動車で本件道- 3 -路を通行することができなくなった。 (6)A市(現さいたま市)は,A市建築基準法施行細則において,「法42条2項の規定により市長が指定する道は,幅員が4m未満1.8m以上のものとする。」と定めることにより,2項道路の指定を一括して行っている。上告人ら土地及び被上告人土地の周辺地域に法第3章の規定が適用されることとなった時点(以下「基準時」という。)は,同地域が都市計画区域に指定された昭和29年5月3日である。 本件は,上告人らが,本件道路が2項道路であると主張して,通行の自由権(人格権的権利)に基づく妨害排除請求として,被上告人らに対し,本件土地に被上告人らが設置した上記タイヤ止め,ブロック塀等の工作物の撤去を求める事案である。 これに対し,被上告人らは,本件道路は基準時である昭和29年5月当時に法42条2項の要件を満たしていなかったと主張して,本件道路が2項道路であるとの上告人らの主張を争っている。 原審は,本件道路が基準時当時に法42条2項の要件を満たしていたことの立証がなく,本件道路が2項道路であるとは認められないとして,上告人らの請求を棄却した。 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。 (1)法は,43条1項において,建築物の敷地は道路に2m以上接しなければならないものと定めるとともに(接道義務),その道路は,法42条に定めるものでなければならないものとしている。その趣旨は,建物を建築しようとする者に対- 4 -し,建物の敷地が幅員4m以上の道路に接することを義務 めるとともに(接道義務),その道路は,法42条に定めるものでなければならないものとしている。その趣旨は,建物を建築しようとする者に対- 4 -し,建物の敷地が幅員4m以上の道路に接することを義務づけることによって,当該建物に係る避難,通行又は防火上の安全等を確保し,ひいては,その周辺に存する建物やその居住者の安全等にも寄与することにあると解される。 前記事実関係によれば,被上告人らは,被上告人土地に自宅建物を建築するに際し,本件道路が2項道路であることを前提に法43条1項の接道義務を満たすものとして建築確認を得,本件土地に幅員4mの道路を開設したというのであるから,上記の法の趣旨に照らせば,本件土地を含む本件道路は,被上告人らの上記建物のみならず,その周辺に存する建物やその居住者の安全等にも寄与することが求められているものというべきである。しかも,被上告人らは,平成6年以降,5年以上にわたって本件道路が2項道路であることを前提に建物を所有してきたことに加え,記録によれば,本件土地は公衆用道路として非課税とされていることが明らかであることをも考慮すると,被上告人らが,現に建物を所有しながら本件道路が2項道路であることを否定することは,本件道路周辺の建物所有者等との関係において著しく正義に反するものといわなければならない。そうすると,被上告人らが,本件訴訟において,本件道路周辺の建物所有者である上告人らに対し,本件道路が2項道路であることを否定する趣旨の主張をすることは,信義則上許されないというべきである。 (2)以上によれば,上記のような点を考慮することなく,本件道路が2項道路であることを否定する被上告人らの主張を踏まえ,本件道路が基準時において2項道路として指定される要件を満たしていたことの立証がないとして本件道路の2項道路該当性 考慮することなく,本件道路が2項道路であることを否定する被上告人らの主張を踏まえ,本件道路が基準時において2項道路として指定される要件を満たしていたことの立証がないとして本件道路の2項道路該当性を否定し,上告人らの請求を棄却した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の違反があるというべきである。論旨はこの趣旨をいうも- 5 -のとして理由があり,原判決は破棄を免れない。 そして,本件については,上告人らが本件土地につき妨害排除を求めることのできる人格権的権利を有するか否かについて,更に審理を尽くさせる必要があるから,本件を原審に差し戻すこととする。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官甲斐中辰夫裁判官横尾和子裁判官泉徳治裁判官島田仁郎裁判官才口千晴)- 6 -
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