令和3(ワ)135 国家賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年9月29日 富山地方裁判所
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判決文本文25,229 文字)

1 主文1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由第1 請求5被告は、原告に対し、金2602万円及びこれに対する平成30年6月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要1 事案の要旨(本判決で使用する略語は、別紙略語表のとおりである。)【別紙略語表は省略。】10本件は、分離前相被告(犯人)が、平成30年6月26日、富山県警察の交番を襲撃し、警察官を殺害して拳銃を奪取した上(第1事件)、この拳銃により交番の周辺で働いていた警備員である被害者を射殺した事件(第2事件)につき、被害者の配偶者である原告が、第2事件が発生して被害者が殺害されたのは、富山県警察の警察官が第1事件発生後に交番周辺の住民や通行人等に警告15を発しなかったためであると主張して、富山県警察を設置する富山県(被告)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等合計2602万円及びこれに対する本件事件発生日である平成30年6月26日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 20なお、原告は、犯人に対しても不法行為に基づき上記同額の支払を求めていたところ、当裁判所はこれを認容する判決を言い渡し、同判決は確定した。 2 前提事実等(当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実等)⑴ 当事者等25ア 被害者は、警備会社で警備員として勤務していた者であり、平成30年2 6月26日に死亡した(甲3)。 イ 原告は、被害者の配偶者である。被害者の相続人は原告と被害者の直系尊属であり、原告の法定相続分は3分の2である(弁論の全趣旨)。 た者であり、平成30年2 6月26日に死亡した(甲3)。 イ 原告は、被害者の配偶者である。被害者の相続人は原告と被害者の直系尊属であり、原告の法定相続分は3分の2である(弁論の全趣旨)。 ウ 被告は、富山県警察を設置する地方公共団体である。 エ 犯人は、自衛隊で勤務した経験を有し、本件事件当時21歳であった男5性である(甲6、49)。 ⑵ 第1事件及び第2事件の前提となる状況ア 本件交番の状況富山県富山中央警察署が設置する本件交番では、平成30年6月26日の第1事件発生時、警察官である交番所長と、交番相談員である60代の10男性1人(本件相談員)が勤務していた(甲7。以下、同日の出来事については、日付の記載を省略し、時刻のみを記載することがある。)。 交番相談員は、地域警察活動について知識及び経験を有する者から任命される非常勤の職員であり、地域警察活動のうち住民の困りごと、意見、要望等の聴取及び住民に対する助言並びに犯罪の予防、災害事故の防止等15についての指導連絡等に従事する者である(地域警察運営規則(昭和44年国家公安委員会規則第5号)29条)。本件相談員は、警察官の制服ではなく、水色のシャツ、青色のベスト、茶色のズボンを着用していた(甲9)。 イ 本件小学校及び被害者等の状況本件交番は南北に走る本件県道に面して東側にあるところ、本件交番か20ら本件県道を概ね北方に70メートルほど進んだ西側に本件小学校の正門があり、正門から南北を住宅等に挟まれた約22メートルの通路を西方に進んだ先に校舎があり、その裏(南西側)に校庭がある(甲1、13、29、40)。 本件小学校は、本件事件当時は改修工事中であり、児童に危険が生じな25いように、警備会社の警備員が工事車両の誘導等に従事していた。本件 その裏(南西側)に校庭がある(甲1、13、29、40)。 本件小学校は、本件事件当時は改修工事中であり、児童に危険が生じな25いように、警備会社の警備員が工事車両の誘導等に従事していた。本件事3 件当日は、被害者を含む3人の警備員が勤務しており、被害者が本件小学校の北側を、ほかの警備員のうち1人(同僚警備員)が本件小学校の東側を、残りの1人が本件小学校の西側を担当していた。被害者を含む上記警備員らは、青色の長袖又は半袖の制服の上に黄色の安全ベストを着用し、白色のヘルメットを被っており、安全ベストの背中側には、警備会社の会5社名が記載されていた。(甲11、24)⑶ 第1事件及び第2事件の発生並びに犯人の逮捕等ア 第1事件の発生犯人は、アルバイト先で店長を殴るなどした後、自暴自棄となり、自衛隊での訓練等で身に付けた自分の能力が通用するのか戦いによって確か10めたいなどと考え、警察官を襲撃することとし、斧やナイフ3本を携帯して本件交番を訪れ、通用口(勝手口)の外側付近で交番所長を襲撃した。 交番所長は、刃物を持った犯人の腕をつかんで犯人ともみあう状態になり、本件相談員は、刺股を使って交番所長に加勢したものの、犯人を制圧することができなかったため、応援を呼ぼうと、午後2時7分頃、本件交番内15の警察電話で110番通報をした。この間、交番所長は、「撃つぞ」と警告をした上で2回にわたり着装していた拳銃を発射した。しかし、犯人は、交番所長をナイフで多数回突き刺すなどして殺害し、拳銃を奪取した上、その拳銃を構えて通用口から本件交番内に侵入した。本件相談員は、犯人が本件交番内に侵入してきそうな気配を感じて本件交番の正面出入口か20ら避難し、本件県道を挟んで向かい側にある店舗に行き、店長に依頼して再び110番通報を 件交番内に侵入した。本件相談員は、犯人が本件交番内に侵入してきそうな気配を感じて本件交番の正面出入口か20ら避難し、本件県道を挟んで向かい側にある店舗に行き、店長に依頼して再び110番通報をした。(甲6~9、11、49、乙2)イ 第1事件後の状況富山中央警察署で自動車警ら勤務に従事していた警察官2人(先着警察官ら)は、午後2時8分頃、本件交番に向かうよう指令を受け、緊急走行25をして午後2時13分頃に本件交番に到着したが、犯人は既に本件交番付4 近にはいなかった。(甲8、乙2)ウ 第2事件の発生犯人は、さらに警察官を襲撃しようと考え、本件小学校の正門から校舎に向かう通路を歩いていた同僚警備員を見て、警察官であると誤認し、本件県道の反対側(東側)の路地から同僚警備員に対し、交番所長から奪取5した拳銃で2回発射したが、命中しなかった。引き続き、犯人は、本件県道を横断し、本件小学校の正門付近にいた被害者を警察官であると誤認し、午後2時24分頃、被害者に対し至近距離から上記拳銃で1回発射し、被害者を殺害した。(甲6、10~12、24、29、49、50の1・2)エ 犯人の逮捕10犯人は、校舎の方に向かって逃げ出した同僚警備員を追いかけて校舎の方に向かい、手に斧を持って校舎の周辺を徘徊していた。本件交番の周辺に臨場していた富山中央警察署の刑事第一課長らは、発砲音を聞いて犯人が本件小学校付近にいることを察知して駆けつけ、犯人を発見した。そして、犯人が襲い掛かってきたことから、刑事第一課長が犯人に対し着装し15ていた拳銃を1回発射し、犯人を制圧して現行犯逮捕した。(甲6、27、28、49、乙2、5)⑷ 本件当時の富山県警察の体制ア 富山県警察本部地域部通信指令課富山 犯人に対し着装し15ていた拳銃を1回発射し、犯人を制圧して現行犯逮捕した。(甲6、27、28、49、乙2、5)⑷ 本件当時の富山県警察の体制ア 富山県警察本部地域部通信指令課富山県警察本部地域部通信指令課(県警通信指令課)は、富山県内の12010番通報を受理する唯一の部署である。県警通信指令課は、通信指令官1人と通信指令課員5人を1つの班として業務を行い、通信指令課員5人は1時間交代で、3人が受理を、1人が指令を担当し、1人が休憩をする体制を基本としていた。県警通信指令課と警察署や警察車両との間の指令や報告は、無線(車載通信系・県内系)で行われる。(甲4、5、乙2、6、25証人指令官、弁論の全趣旨)5 イ 富山中央警察署通信指令係富山中央警察署は、地域部に通信指令係(中央署通信指令係)を設けており、警察官2人が富山中央警察署の警察官との無線の受理や指令を行っていた。この無線は、県警通信指令課が使用している無線とは別の系統であるが(署活系)、県警通信指令課はこの無線も傍受することができる。(甲55、弁論の全趣旨)⑸ 防災行政無線富山市は、災害時などに、住民に対して一斉に避難情報等を伝達するため、防災行政無線の屋外拡声子局を設置しており、放送する情報は、富山市役所の防災危機管理部等から送信され、屋外拡声子局のスピーカーやサイレンで10市民に伝達される。本件小学校に最も近い屋外拡声子局は、本件小学校から数百メートルの距離にある本件公園に設置されており、この子局はモーターサイレンを備えていた。(甲38~41)3 争点及び争点に関する当事者の主張⑴ 争点1(県警警察官らが被害者に対して警告を発しなかったことに国家賠15償法1条1項所定の違法性があるか)について(原告の主張) 甲38~41)3 争点及び争点に関する当事者の主張⑴ 争点1(県警警察官らが被害者に対して警告を発しなかったことに国家賠15償法1条1項所定の違法性があるか)について(原告の主張)警察法2条1項は、警察は個人の生命、身体及び財産の保護に任ずると定めており、警察官職務執行法は、この法律は警察官が警察法に規定する個人の生命、身体及び財産の保護等の職務を忠実に遂行するために必要な手段を20定めることを目的とするとして(1条1項)、警察官が行使し得る種々の手段を定めている(2条以下)。したがって、警察官は、特定の個人が犯罪等の危険にさらされている場合、その危険を除去するために法律上許容される範囲内で必要かつ相当な措置をとる権限を有するとともに、このような規制権限を行使すべき一般的な義務を負うものであるが、一定の場合には、一般的な25義務にとどまらず、特定の個人に対し、警察官が法令上有する規制権限を行6 使すべき個別の法的義務を負うものというべきである。具体的には、①特に国民の生命、身体等の重大な法益に対する加害行為が正に行われ、又は行われる危険が切迫しており、②警察官においてそのような状況を知り、又は容易に知ることができ、③警察官が警察権等の法令上の権限を行使することによって上記危険を除去し、上記加害行為によって生ずべき結果を回避、防止5することが可能であり、④そのような警察権等の法令上の権限を警察官が行使することが困難ではない場合には、特定の個人に対する個別の法的義務を負い、この義務に反して規制権限を行使せず、又は許された裁量の範囲を超えて不適切に行使したために犯罪等の危険が現実化して当該国民の重大な法益が侵害されたときには、警察官による規制権限の行使又は不行使が国家賠10償法1条1項所定の故意又は は許された裁量の範囲を超えて不適切に行使したために犯罪等の危険が現実化して当該国民の重大な法益が侵害されたときには、警察官による規制権限の行使又は不行使が国家賠10償法1条1項所定の故意又は過失による違法な公権力の行使に該当するというべきである。 これを本件についてみるに、別紙主張対照表の「原告の主張」欄に記載のとおり、午後2時10分から午後2時20分にかけて、前記①~④の要件がいずれも満たされていたから、県警警察官らは、警察車両に搭載された拡声15器や富山市の防災行政無線を使用して被害者に対して警告を発すべき個別の法的義務を負っていた。ところが、県警警察官らが何らの警告も発しなかったため、被害者は、犯人が近くにおり、生命の危険があることを知らずに、警察車両のサイレンの音を聞いて、本件小学校の北側の持ち場から正門の方に来て犯人に接近してしまい、犯人に殺害されたものであるから、県警警察20官らが警告を発しなかったことは故意又は過失による違法な公権力の行使に該当する。 (被告の主張)警察官の権限不行使が特定の個人との関係で違法になる場合があることは認めるが、別紙主張対照表の「被告の主張」欄に記載のとおり、原告が主張25する①~④の要件はいずれも満たされていなかった。したがって、県警警察7 官らが被害者に対して警告を発しなかったことが違法であるということはできない。 ⑵ 争点2(損害額)について(原告の主張)ア 被害者に対する慰謝料 2800万円(原告の相続分 1866万円)5イ 原告固有の慰謝料 500万円ウ 弁護士費用 236万円エ 合計 2602万円(被告の主張)争う。 10第3 当裁判所の判断1 認定事実前記前提事実に 500万円ウ 弁護士費用 236万円エ 合計 2602万円(被告の主張)争う。 10第3 当裁判所の判断1 認定事実前記前提事実に加え、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 防災行政無線に関する協議15富山県警察と富山県内の各市町村は、かねて担当者間の口約束として、警察が依頼をすれば各市町村の防災行政無線を使用することができるとの合意をしていたが、富山県警察は、平成27年9月に発生した埼玉県熊谷市で6人が殺害された事件を踏まえ、平成28年頃、富山市に対し、覚書の締結を申し入れた。この覚書は、結局締結されなかったものの、引き続き、富山20県警察が富山市に依頼をすれば、富山市の防災行政無線を使用することができる状況にあった。もっとも、緊急地震速報や大雨特別警報等は、あらかじめ録音した内容が自動で放送される仕組みになっているのに対し、警察の依頼による放送等の場合は、放送内容を県警通信指令課がその都度決定する必要がある。(甲38、52~58、証人指令官)25⑵ 県警通信指令課の執務態勢等(乙6、証人指令官)8 ア 設備等通信指令室は、一段高いところにある通信指令官の机の前方に通信指令課員5人の机が配置されている。机にはそれぞれ端末や複数のモニターが設置されており、壁面には大型のモニターが設置されている。受理担当者は、110番通報をしてきた者から聴取した情報をタッチペンやキーボー5ドで端末に入力することになっており、入力された情報は他の職員のモニターにも表示されて共有され、指令担当者は、これを見て指令をする態勢になっている。通信指令課員は、片耳のヘッドフォンとマイクからなるヘッドセットを装着しており、これによ 力された情報は他の職員のモニターにも表示されて共有され、指令担当者は、これを見て指令をする態勢になっている。通信指令課員は、片耳のヘッドフォンとマイクからなるヘッドセットを装着しており、これにより110番通報をしてきた者等と会話をするのと同時に、室内にいる指令官や他の課員の指示等を聞くことが10できるようになっている。また、機械を操作することにより、他の課員が受理している110番通報を傍受することもできる。(乙7、8)イ 無線通信の仕組み無線通信は、その性質上、同時に複数の者が発信をすることはできない。 そのため、県警通信指令課が指令をしている間は、警察署や警察車両等が15報告をすることはできず、警察署等が報告をしている間は、県警通信指令課が指令をすることはできない。(乙1、弁論の全趣旨)ウ 本件事件当日の態勢本件事件当日、通信指令官として勤務していた本件指令官は、第1事件発生時、上司に対する説明のため、通信指令室を離席しており、警部補の20通信指令課員2人に指令官の任務の代行を命じていた。 ⑶ 第1事件の経過並びに第1事件に関する通報及び警察の対応等(甲7~9、30の1、甲49、乙1、2)ア 午後2時6分頃犯人は、間口の狭い通用口のドアからナイフによる接近戦を仕掛ければ25自分の方が有利であるなどと考え、ナイフと斧を持って、午後2時6分29 6秒頃、本件交番の裏側(東側)にある通用口のドアを叩き、通用口から外に出た交番所長に対し襲い掛かった。交番所長は、刃物を持った犯人の腕をつかんで犯人ともみあう状態になり、本件相談員は、刺股を使って交番所長に加勢した。 イ 午後2時7分頃5交番所長は、午後2時7分5秒頃、犯人に対し、「撃つぞ」と警告した。 本件相談員は、応援を呼ぼうと本 みあう状態になり、本件相談員は、刺股を使って交番所長に加勢した。 イ 午後2時7分頃5交番所長は、午後2時7分5秒頃、犯人に対し、「撃つぞ」と警告した。 本件相談員は、応援を呼ぼうと本件交番内の警察電話で110番通報をし、午後2時7分17秒頃から、強盗です、刃物持った者が暴れて入っております、すぐ来てくださいなどと言った。この間に、交番所長は、犯人に対し、再度「撃つぞ」と警告した上で、発砲した。本件相談員は、これを聞10いて、警察官が発砲した、警察官が鉄砲で撃たれました、早く来てくださいなどと言った(なお、本件相談員が通報をしていた警察電話の場所から通用口の外にいる交番所長や犯人の様子を見ることはできなかった。また、実際に交番所長が犯人に銃で撃たれた事実はない。)。 ウ 午後2時8分頃15交番所長は、午後2時8分1秒頃、犯人に対し、再度発砲した。本件相談員は、これを聞いて、撃たれました、すぐ来てくださいなどと言った後、本件交番の表側(西側、本件県道側)にある正面出入口から一旦避難した。 県警通信指令課員は、午後2時8分23秒頃、富山中央警察署に対し、至急として、本件交番の相談員から110番、刃物を持って暴れている、鉄20砲で撃たれたなどの文言あり、現在本部から呼びかけるも応答がない状況と伝え、本件交番に臨場して確認するよう指示した。これを受けて、先着警察官らは、警察車両で本件交番に向かって緊急走行を開始した。また、刑事第一課長は、課内にいた数人の警察官に拳銃を着装して本件交番に急行するよう指示するとともに、自身も拳銃を着装して本件交番に向かった。 25他方、犯人は、交番所長をナイフで多数回突き刺し、うつ伏せに倒れこん10 だ交番所長の拳銃の吊り紐を斧で切断して拳銃を奪取した上、その拳銃を構えて通用 銃を着装して本件交番に向かった。 25他方、犯人は、交番所長をナイフで多数回突き刺し、うつ伏せに倒れこん10 だ交番所長の拳銃の吊り紐を斧で切断して拳銃を奪取した上、その拳銃を構えて通用口から本件交番内に侵入し、各部屋をのぞいて本件相談員を探すなどした。(乙5、証人課長)エ 午後2時9分頃犯人は、本件交番の通用口から一旦外に出た。本件相談員は、本件交番5に戻ってきて正面出入口から中に入り、通用口の方の様子を窺っていた。 オ 午後2時10分頃犯人は、再び拳銃を構えて通用口から本件交番内に侵入した。本件相談員は、犯人が本件交番内に侵入してきそうな気配を感じて本件交番の正面出入口から避難した。犯人は、各部屋をのぞいて本件相談員を探すなどし10た後、通用口から外に出て、本件交番の北東側の住宅街の路地に向かった。 犯人は、白色の半袖シャツを着用していたが、その前面や両腕は広範囲にわたり血で赤く染まっており、犯人は路上等に点々と血痕を遺留していた。 この頃までに、先着警察官らのほか、少なくとも4台の警察車両が本件交番に向かって緊急走行を開始していた。(甲14、15)15⑷ 第1事件発生後の状況(甲30の1、乙1、2、6、証人指令官、証人課長)ア 午後2時11分~12分頃本件相談員は、本件県道を挟んで本件交番の向かい側にある店舗に入り、店長に110番通報を依頼し、午後2時11分頃、店長が110番通報を20した。店長は、本件相談員の話として、本件交番で刃物を持った男に警察官が撃たれたか刺された、犯人はまだ中にいる、どこかに逃げたかもしれないなどと説明し、このような説明を受けて、県警通信指令課員は、無線を傍受している者全員に対し、未だ犯人は本件交番内にいる模様、逃げたかもしれないなど情報が輻輳 まだ中にいる、どこかに逃げたかもしれないなどと説明し、このような説明を受けて、県警通信指令課員は、無線を傍受している者全員に対し、未だ犯人は本件交番内にいる模様、逃げたかもしれないなど情報が輻輳している、犯人の人着等は詳細不明と伝え、25対刃防護衣や防弾チョッキ等あらゆる装備資機材を有効活用し、緊急配備11 に備えるよう指示した。なお、緊急配備とは、重要事件等が発生した際に、迅速に被疑者を検挙するため、警戒員を配置して行う検問、張り込み等をいう(弁論の全趣旨)。 イ 午後2時13分~15分頃先着警察官らは、午後2時13分頃に本件交番の向かい側に到着し、本5件相談員と合流して本件交番に向かった。そして、本件交番の通用口の外側に交番所長が血だらけで呼び掛けても反応がない状態で倒れているのを発見するとともに、本件交番内や付近には犯人が見当たらないことを確認して、富山中央警察署に報告した。 この後、午後2時24分頃までの間に、合計約30人の警察官らが順次10警察車両等で本件交番周辺に到着し、現場警察官らは、手分けをして、遺留された血痕の追跡、本件相談員や店長からの事情聴取、本件交番の防犯カメラの確認、現場の保存、本件県道の交通誘導、警察車両を使用した犯人の捜索(犯人を捜し出すことを意味するにとどまり、強制捜査としての「捜索」を意味するものではない。以下同様である。)等を開始した。犯人15の捜索に従事する警察車両の中には、本件小学校の南側や西側の住宅街に向かった車両もあった。県警通信指令課員が現場警察官らに対して、付近の一般市民への警戒の呼び掛けを指示したことはなかったが、現場警察官らの中には、前記任務に従事しながら、近くにいる一般市民に対し、「危ないから中に入っていてください」などと警戒の呼び掛けをする者もいた 一般市民への警戒の呼び掛けを指示したことはなかったが、現場警察官らの中には、前記任務に従事しながら、近くにいる一般市民に対し、「危ないから中に入っていてください」などと警戒の呼び掛けをする者もいた。 20(弁論の全趣旨)本件指令官は、この頃、通信指令室に戻り、通信指令課員から本件交番が襲撃されたことを聞き、緊急配備を指示した。この時点までに、5人の通信指令課員全員が職務に従事していた。 ウ 午後2時16分頃25県警通信指令課員は、午後2時16分頃、無線を傍受している者全員に12 対し、殺人未遂事件として緊急配備を発令するとともに、犯人は逃走した模様、血痕が付近にあり、逃走方向は北東方向、徒歩で向かっている模様などと周知した。この時点で、先着警察官らを含め、犯人の人相や着衣に関する情報を入手していた者はおらず、県警通信指令課員らは、犯人の人着は不明と伝えた。 5エ 午後2時18分頃富山中央警察署生活安全課の少年警察補導員らは、小中学校の下校時間が迫っていたことから、生活安全課課長の指示の下、午後2時18分頃、本件小学校を含む周辺の小中学校に対し、本件交番の付近を、刃物を持った不審者が逃げているので、児童の下校を見合わせてほしいと連絡した。 10本件小学校の校長は、これを受けて、職員を招集し、児童の下校を見合わせ、校舎のドアや窓をすべて施錠するよう指示するとともに、自ら北玄関の施錠を確認しに向かった。(甲27、28、乙3、弁論の全趣旨)オ 午後2時20分~23分頃刑事第一課長は、本件交番に向かう途中で、渋滞のため警察車両が進め15なくなったため、本件交番から数百メートル離れた場所で車両を降りて走って本件交番に向かい、午後2時20分頃に到着した。その時点で本件交番周辺に停止して 向かう途中で、渋滞のため警察車両が進め15なくなったため、本件交番から数百メートル離れた場所で車両を降りて走って本件交番に向かい、午後2時20分頃に到着した。その時点で本件交番周辺に停止していた警察車両は二、三台であった。同じ頃、救急隊員らが到着し、うつ伏せに倒れている交番所長を仰向けにして心臓マッサージを行った。刑事第一課長は、救急隊員が交番所長を動かす前に写真を撮影20するなど現場の保存に当たっていたが、仰向けになった交番所長の腰のホルスターの蓋が半開きになっており、中が空であることに気付き、拳銃が奪取されたものと考え、その旨を自身の携帯電話で富山中央警察署に報告するとともに、部下に対して県警通信指令課に報告するよう指示した。(甲7、乙5、証人課長)25現場警察官らは、午後2時21分40秒頃から、県警通信指令課に対し、13 その時点までに判明した事項を報告し、犯人については、中年男性、小太り、短髪、白っぽいシャツに黒っぽいズボンを着用していると思料される、詳細については現在カメラを確認中と報告した。また、現場警察官らは、午後2時23分頃、至急として、拳銃奪取事案、犯人は拳銃を奪取して逃走していると報告し、県警通信指令課員は、午後2時23分31秒頃、無5線を傍受している者全員に対し、至急として、拳銃が奪取されたことや、報告を受けた犯人の特徴を伝えた。 カ 被害者や同僚警備員の動静本件事件当日、本件小学校の児童がバスで校外学習に行っており、午後2時から3時頃に戻ってくる予定になっていた。本件小学校の東側を担当10していた同僚警備員は、サイレンの音を聞き、交通の状況等を把握するため、正門から本件県道に出て、本件交番付近に警察車両が数台停止しており、本件県道が渋滞しているのを見ていた。 校の東側を担当10していた同僚警備員は、サイレンの音を聞き、交通の状況等を把握するため、正門から本件県道に出て、本件交番付近に警察車両が数台停止しており、本件県道が渋滞しているのを見ていた。すると、被害者が、担当していた本件小学校の北側から同じ場所に来て、被害者と同僚警備員は「何かあったのかな」「分からないな」などと会話をした。その後、同僚警備員は、15状況を学校に知らせようと校舎の方に歩き始めた。(甲11、24)キ 犯人の足取り犯人は、本件交番の裏側(東側)の路地を北に20~30メートル進み、東方向に曲がって80メートルほど進んだ場所にある民家の敷地内で止血処置をして包帯やガーゼを遺留し、さらに東に20メートルほど進んだ20場所にある空き家の敷地内で、携帯電話で家族にメッセージを送信した後、この携帯電話を壊して遺留した。その後、路地を北に50メートルほど進み、左に曲がって西に50メートルほど進み、左に曲がって南に十数メートル進み、右に曲がって路地を西に50メートルほど進み、本件小学校の正門の向かい側付近に至っていた。(甲14、15、49)25ク 犯人の追跡14 現場警察官らのうち数人は、遺留されていた血痕をたどって犯人を追跡し、民家の前に血だまりが遺留されているのを見て、その住宅の住民から事情を聴取した結果、同住民が第1事件と関係がないことを確認した上で、手分けをして現場の保存をするとともに、さらに血痕をたどっていった。 そして、前記キの空き家の敷地内に血だまりや携帯電話が遺留されている5のを発見し、犯人がこの空き家に潜伏している可能性があると判断して、突入する準備をしていた。 ⑸ 第2事件の経過等(甲10~13、24、29、50の1、2)ア 同僚警備員に対する発砲犯人は、 を発見し、犯人がこの空き家に潜伏している可能性があると判断して、突入する準備をしていた。 ⑸ 第2事件の経過等(甲10~13、24、29、50の1、2)ア 同僚警備員に対する発砲犯人は、本件小学校の正門から校舎に向かう通路を歩いていた同僚警備10員を見て、同人が警察官であると誤認し、午後2時24分24秒頃、本件県道の反対側(東側)の前記路地から同僚警備員に対し、拳銃を2回発射したが、命中しなかった。 イ 被害者に対する発砲犯人は、走って本件県道を横断し、本件小学校の正門付近にいた被害者15を警察官であると誤認し、午後2時24分38秒頃、被害者に対し、至近距離から拳銃を1回発射し、被害者を殺害した。 ⑹ 第2事件後の状況(甲27、28、30の1、乙1、2、4、5、証人課長)ア 午後2時24分頃20同僚警備員は、振り返って犯人が走ってくる様子や被害者が倒れている様子を見て、犯人に襲われると感じて走って逃げ出し、校舎の前を右に曲がって北方に向かった(甲11、24)。犯人は、弾丸がなくなった拳銃を投棄し、ナイフを持って同僚警備員を追いかけて校舎の前を曲がって北方に向かい、さらに斧をリュックサックから取り出した。 25本件交番にいた刑事第一課長や前記⑷キの空き家への突入を準備して15 いた警察官らを含む現場警察官らは、発砲音を聞いて犯人が本件小学校付近にいることを察知し、それぞれの場所から本件小学校の方向に急行した。 また、一部の警察官は、県警通信指令課に対し、本件交番の北側約100メートル先から発砲音が聞こえたことを報告したり、警察車両の拡声器で周辺の市民に対して「建物内に入ってください」などと呼び掛けたりした。 5なお、現場警察官らはパトカーや捜査用車両合計12台に乗車して本件交番周辺に急 聞こえたことを報告したり、警察車両の拡声器で周辺の市民に対して「建物内に入ってください」などと呼び掛けたりした。 5なお、現場警察官らはパトカーや捜査用車両合計12台に乗車して本件交番周辺に急行してきたところ、これらの警察車両には拡声器が搭載されている車両と搭載されていない車両、車載無線が搭載されている車両と搭載されていない車両が混在していた。 イ 午後2時25分頃10本件小学校の校長は、北側玄関付近に犯人がいるのを見かけ、職員室に戻って110番通報をするよう指示し、職員が午後2時25分11秒頃、110番通報をして、拳銃を持った人が今来ていますなどと言った。県警通信指令課員は、無線を傍受している者全員に対し、犯人が本件小学校に来ていると伝え、避難、退避を誘導するよう指示した。また、刑事第一課15長は、本件小学校の出入口付近で民間ガードマンと思われる男性が負傷している、犯人に発砲されたものと思われる、警察官の拳銃が血まみれの状態で落ちているなどと報告した。 ウ 午後2時26分~27分頃刑事第一課長を含む警察官ら10人以上が本件小学校に到着して校舎付20近で犯人を発見し、犯人が刃物を振りかざして向かってきたことから、刑事第一課長が犯人に対して、着装していた拳銃を1回発射し、犯人を制圧して現行犯逮捕した。 2 争点1(県警警察官らが被害者に対して警告を発しなかったことに国家賠償法1条1項所定の違法性があるか)について25⑴ 判断枠組み16 公務員による公権力の行使が違法となり、国家賠償責任が肯認されるためには、当該公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背したと認められることが必要である(最高裁判所昭和60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号 り、国家賠償責任が肯認されるためには、当該公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背したと認められることが必要である(最高裁判所昭和60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁参照)。 この点、原告は、①特に国民の生命、身体等の重大な法益に対する加害行5為が正に行われ、又は行われる危険が切迫しており、②警察官においてそのような状況を知り、又は容易に知ることができ、③警察官が警察権等の法令上の権限を行使することによって上記危険を除去し、上記加害行為によって生ずべき結果を回避、防止することが可能であり、④そのような警察権等の法令上の権限を警察官が行使することが困難ではない場合には、警察官は加10害行為を受けそうになっている者に対し、規制権限を行使すべき職務上の法的義務を負うものであると主張するところ、被告も、このような判断枠組み自体については積極的に争っておらず、上記判断枠組みは合理的なものと認められる。そこで、当裁判所もこれを前提に検討することとする。 なお、警察官職務執行法4条1項は、人の生命や身体に危険を及ぼすおそ15れのある事態がある場合、警察官が、その場に居合わせた者等に必要な警告を発し、危害を受けるおそれがある者を必要な限度で引き留め、あるいは避難させることができる旨定めているから、県警通信指令課員が現場警察官らに指示して一般市民への警告を発させることや、現場警察官らが自らの判断に基づき警告を発することは、警察官が有する一般的な権限の行使として可20能であったものと認められる。 ⑵ 危険の切迫性について認定事実⑶ア~オのとおり、午後2時10分頃までに、犯人が多数の刃物を携帯して交番所長を襲撃し、ナイフで多数回突き刺して拳銃を奪取した上、この拳銃を構えて本件相談員にも危害を加 険の切迫性について認定事実⑶ア~オのとおり、午後2時10分頃までに、犯人が多数の刃物を携帯して交番所長を襲撃し、ナイフで多数回突き刺して拳銃を奪取した上、この拳銃を構えて本件相談員にも危害を加える姿勢を示した後、本件交番を25離れて周辺の住宅街に向かったことが認められる。このように、警察官を襲17 撃するような凶悪な犯人が拳銃や刃物を持って本件交番の周辺を徘徊していたのであるから、犯人が拳銃や刃物を使用して周辺の住民や通行人等を襲撃する可能性や、犯人が拳銃を発射した際に流れ弾が周辺の住民等に命中する可能性があり、周辺の住民等の生命や身体に対する危険が平時と比較して相当程度高まっていたものということができる。もっとも、この時点では、犯5人は、被害者の持ち場であった本件小学校の北側から70メートル以上離れた場所にいたのであり、被害者の存在を認識すらしていなかったものと認められるから、被害者に対する加害行為が正に行われ、又は行われる危険が切迫していたものと認めることは困難といわざるを得ない。犯人は、本件において無差別殺人を企図していたものではなく、警察官を襲撃しようとしてい10た(前提事実等⑶ア)のであるから、警察官ではない被害者が襲撃される危険性は必ずしも高くなかったということもできる。例えば家人を殺害する目的で凶器を準備して住居に侵入してきた者と対峙しているような状況と本件とでは、危険の切迫性に大きな差があることは明らかである。やはり、本件において、被害者に対する具体的な危険の切迫性が肯定できるのは、犯人が、15本件小学校の正門付近にいた被害者を警察官であると誤認し、拳銃を発射した午後2時24分頃であるというべきである(もっとも、この時点で危険の切迫性が認められたとしても、県警警察官らにとって、本件犯行を防ぎ 小学校の正門付近にいた被害者を警察官であると誤認し、拳銃を発射した午後2時24分頃であるというべきである(もっとも、この時点で危険の切迫性が認められたとしても、県警警察官らにとって、本件犯行を防ぎようがなかったといえる。)。 もっとも、犯人が徘徊していた住宅街の住民等の生命や身体に対する危険20は相応に高い状態にあったということができるところ、警察は、個人の生命や身体等の保護を任務としているのであり(警察法2条1項)、一定の範囲の人々の生命や身体に等しく脅威が迫っている場合には、これらの者を包括的に保護すべき責務を負うものとして、被害者を含む本件交番周辺の住民や通行人等について等しく危険が切迫していたと解する余地が全くないとまでは25いえない。 18 また、被害者の服装は前提事実等⑵イのとおりであり、一見して交通整理等に従事している警備員と認識できるものであるが、警察官の制服に全く似ていないとまではいえず、現に、犯人は被害者が警察官であると誤認したこと、犯人は警察官の制服を着ていない本件相談員(前提事実等⑵ア)に対しても危害を加える意思を示していたことを考慮すると、被害者に対する危険5は本件交番周辺の住民や通行人等一般に対する危険より一定程度高かったともいい得る。 こうした事情に鑑み、念のため、危険の切迫性以外の要件についても検討する。 ⑶ 危険の認識可能性について10認定事実⑶イ、ウのとおり、本件相談員が午後2時7分頃に110番通報をし、刃物を持った男が暴れている、警察官が発砲したなどと言った後、連絡をとることができない状況になっていたことからすると、午後2時10分頃の時点で、県警通信指令課員は、何者かが刃物を持って本件交番を襲撃したことや、その者を未だ制圧できていない可能性が高いことを認識すること ことができない状況になっていたことからすると、午後2時10分頃の時点で、県警通信指令課員は、何者かが刃物を持って本件交番を襲撃したことや、その者を未だ制圧できていない可能性が高いことを認識すること15ができ、ひいては、その者が本件交番周辺の住民や通行人等をも襲撃する抽象的な可能性があることを認識可能であったといえる。しかし、この時点では、犯人の所在場所や上記襲撃の動機、犯人が交番所長の拳銃を奪取済みであることなどの情報は判明していなかったのであるから、県警警察官らが、被害者はいうまでもなく周辺の住民や通行人等に対する(銃撃等による)危20険が切迫しているとまで認識することはできなかったというべきである。なお、認定事実⑶ウ及び⑷イのとおり、本件相談員による110番通報の1分余り後に緊急走行を開始した先着警察官らが本件交番に到着したのは午後2時13分頃であるから、交番所長の拳銃が犯人によって奪取されたことを認識することが可能であったのは、いかに早くともそれ以降であることが明ら25かであり、実際には、認定事実⑷オのとおり、県警警察官らが拳銃の奪取を19 認識したのは午後2時20分~23分頃であるから、この頃までは、県警警察官らが、犯人が被害者はもちろん本件交番周辺の住民や通行人等に対して拳銃を発射する具体的危険性があることを認識し得たとはいえない。 原告は、本件相談員による110番通報の内容や背景音、交番所長と連絡がつかない状況等からして、犯人が拳銃を所持している可能性のほか、本件5交番周辺の住民や通行人等に危害を加える可能性があることを認識可能であったと主張する。確かに、認定事実⑶イのとおり、本件相談員は、警察官が鉄砲で撃たれた旨述べているものの、その前に警察官が発砲したとも述べており、誰が発砲したかという重要な 性があることを認識可能であったと主張する。確かに、認定事実⑶イのとおり、本件相談員は、警察官が鉄砲で撃たれた旨述べているものの、その前に警察官が発砲したとも述べており、誰が発砲したかという重要な点があいまいである上、わが国では犯罪者であっても銃を所持していることは一般的ではなく、本件においても、実10際には交番所長が犯人に撃たれた事実はなく、本件相談員の前記発言内容は正確性を欠くものであった。また、交番所長と連絡がつかない理由としては、現に交番所長が犯人と対峙して制圧しようとしている、又は逃走する犯人を追跡しているといったことも十分想定可能である。さらに、本件事件当時、犯人による襲撃の動機や目的は全く判明しておらず、犯人が過去に検挙され15たことから交番所長個人を恨んでいるなどの可能性も想定され、犯人が本件交番周辺の住民等を無差別に襲撃しようとしていることをうかがわせる事情は特になかった(実際に、犯人は、周辺住民等を無差別に襲撃しようとしていたものではなかった。)。抽象的な可能性としてはともかく、本件相談員の前記通報内容やその際の背景音、交番所長と連絡がつかないこと等のみを根20拠として、交番所長の拳銃が奪取され、犯人が同拳銃を所持しており、それによって周辺住民等への襲撃のおそれがあることを具体的に想定すべきであったとまでは認められず、県警警察官らにとって、被害者はいうまでもなく本件交番周辺の住民や通行人等に対する危険が切迫していることを容易に認識可能であったとも認められない。 25原告は、刑事第一課長が拳銃の着装を指示していることや、県警通信指令20 課員が防弾チョッキを準備するよう指示していることからすると、刑事第一課長や県警通信指令課員は、拳銃発射事件であることを前提に対応しているとして、本件交番周辺 ていることや、県警通信指令20 課員が防弾チョッキを準備するよう指示していることからすると、刑事第一課長や県警通信指令課員は、拳銃発射事件であることを前提に対応しているとして、本件交番周辺の住民や通行人等が拳銃により襲撃される可能性があることを認識していたとも主張する。しかし、警察官が緊急に事件現場に臨場する際に、情報が十分にない中で、あらゆる事態を想定し、考え得る最大5限の装備を準備することは通常のことであって、このような準備状況は、県警警察官らが、犯人が拳銃を所持しており、被害者はいうまでもなく本件交番周辺の住民や通行人等が拳銃により襲撃される具体的な可能性があることを認識していたことを裏付ける事情とはいえない。 ところで、認定事実⑷イのとおり、先着警察官らは、午後2時13分頃に10本件交番に到着し、交番所長が血だらけで呼び掛けても反応がない状態で倒れているのを発見しているから、この時点で直ちに交番所長の拳銃の有無を確認することにより、拳銃が奪取されていることを発見することは必ずしも不可能ではなかったとも解し得る。そして、警察官から拳銃を奪取する理由としては、その拳銃を使って新たな犯罪を企図している可能性が高いことが15容易に想定されるから、この時点で、犯人が交番所長から奪取した拳銃により被害者を含む本件交番周辺の住民や通行人等を襲撃する危険性が切迫していることを認識し得たと解する余地もなくはない。 このような事情に鑑み、念のため、県警警察官らが、犯人によって拳銃が奪取されたことを実際に認識した午後2時20分過ぎ頃の時点に加え、午後202時13分頃の時点についても、結果回避可能性等について検討することとする。 ⑷ 結果回避可能性についてア 午後2時20分過ぎ頃について認定事実⑷オ及び⑹アのとおり 時点に加え、午後202時13分頃の時点についても、結果回避可能性等について検討することとする。 ⑷ 結果回避可能性についてア 午後2時20分過ぎ頃について認定事実⑷オ及び⑹アのとおり、本件交番周辺は、本件事件当時は渋滞25していたため、刑事第一課長が警察車両を降りて走って本件交番に向かわ21 ざるを得ない状態であり、この時点で本件交番付近に停止していた警察車両は二、三台であって、これらの車両に拡声器等が搭載されていたかは明らかでない。そうすると、刑事第一課長が交番所長の拳銃が奪取されているのを発見した後、本件交番付近に停止していた警察車両が迅速に本件県道を走行し、本件小学校の北側又は正門付近にいた被害者に対して拡声器5により警告を発することが可能であったとはいい難い。また、刑事第一課長が交番所長の拳銃が奪取されているのを発見してから第2事件が発生するまでの時間は最長でも4分程度にとどまるから、この間に現場警察官らが警告を発することが可能であったとしても、それを聞いた被害者が避難を開始して犯人による襲撃を回避することができたとも認め難い。 10さらに、認定事実⑷ウ及びクのとおり、現場警察官らは、犯人が本件交番から北東方向に徒歩で向かったものと考えて、遺留されていた血痕をたどって東方向、すなわち本件小学校とは異なる方向に進みながら犯人を追跡していたから、拳銃が奪取されたことを発見した後周辺住民等に警告を発するとしても、まずは本件交番の東側から避難を呼び掛けるのが合理的15であると解される(なお、犯人は、実際に本件交番から東方向に向かった後、進路を北方向、次いで西方向に変えて本件小学校付近に至っているから(認定事実⑷キ)、現場警察官らがまず東方向に向かって追跡を開始したこと、及びその周辺で避難を呼びか 本件交番から東方向に向かった後、進路を北方向、次いで西方向に変えて本件小学校付近に至っているから(認定事実⑷キ)、現場警察官らがまず東方向に向かって追跡を開始したこと、及びその周辺で避難を呼びかけるであろうことは何ら不合理ではない。)。他方、被害者がいたのは本件交番から北方向に位置する本件小学校20の北側又は正門付近であり、警察車両が本件交番の東側で拡声器により警告し、避難を呼び掛けていたとしても、被害者が同警告を聴取可能な場所にいたかは明らかでなく、この点からも、現場警察官らが警告を発していれば被害者が犯人による襲撃を回避することが可能であったものとは認められない。 25原告は、本件小学校の南側や西側の住宅街で犯人を捜索していた警察車22 両がいたことを指摘するが、現場警察官らが県警通信指令課に対して交番所長の拳銃が奪取されていることを報告したのは午後2時23分頃であり、通信指令課員がこれを周知したのは午後2時23分31秒頃、すなわち第2事件が発生する約1分7秒前である(認定事実⑷オ、⑸イ)。わずか1分余りの間に、これらの警察車両が、被害者が聴取できるような場所や5態様で警告を発することが可能であったとは認められない。 防災行政無線についてみても、警告を発するためには、県警通信指令課において放送すべき内容を決定し(認定事実⑴)、富山市役所の防災危機管理部等に対して防災行政無線の使用を申し込んで放送すべき内容を伝え、同部の職員等が実際に放送をするという手順を踏むことが必要と解され10るところ(前提事実等⑸、認定事実⑴)、前述のとおり、交番所長の拳銃が奪取されたことが判明してから第2事件が発生するまでの時間は最長で4分程度にとどまり、県警通信指令課が交番所長の拳銃が奪取されているとの報告を受けてから第2事件 ⑴)、前述のとおり、交番所長の拳銃が奪取されたことが判明してから第2事件が発生するまでの時間は最長で4分程度にとどまり、県警通信指令課が交番所長の拳銃が奪取されているとの報告を受けてから第2事件が発生するまでの時間は1分余りにすぎず、この間にこれらの手順を踏むことは事実上不可能であったものといわ15ざるを得ない。また、防災行政無線の性質上、広範囲の住民に届く音量で放送されるものとは考えられるものの、緊急地震速報や大雨特別警報等のようにあらかじめ録音した聞き取りやすい音声や文言を放送するのではなく、最長でも4分程度の間に決定されて伝えられた内容を急遽放送することに照らすと、サイレン音はともかく、本件小学校から数百メートル離20れた本件公園(前提事実等⑸)に設置された子局のスピーカーから放送される文言を被害者が正確に聴取し、拳銃を持った犯人が逃走していることを理解して避難することが可能であったと認めるに足りる的確な証拠はない。 イ 午後2時13分頃について25認定事実⑷イ及びウ、⑹アのとおり、この時点で本件交番に到着してい23 た警察車両は1台、先着警察官らは2人にすぎず、同車両に警告を発するための拡声器が搭載されていたかは明らかでない。また、交番所長が血だらけで呼び掛けても反応がない状態で倒れていたことや、先着警察官らが110番通報をした本件相談員と合流したばかりであったこと、犯人が本件交番の裏側(東側)から北東方向に向かう血痕を遺留していたことなど5を踏まえると、先着警察官らには、交番所長の生存確認や救急車の要請、本件相談員からの事情聴取、血痕をたどった犯人の追跡など、とりかかるべき重要な任務が複数あったものと認められる。以上によれば、この時点で先着警察官らが上記各任務の遂行に先立って被害者を含む本件交 、本件相談員からの事情聴取、血痕をたどった犯人の追跡など、とりかかるべき重要な任務が複数あったものと認められる。以上によれば、この時点で先着警察官らが上記各任務の遂行に先立って被害者を含む本件交番の周辺住民等に警告を発することが事実上可能であったとは認められない。 10ウ 小括このように、午後2時20分過ぎ頃及び午後2時13分頃のいずれの時点においても具体的な結果回避可能性があったとは認められないから、原告の請求は理由がない。もっとも、念のため、権限行使の困難性についても判断する。 15⑸ 権限行使の困難性について認定事実⑷オのとおり、現場警察官らが、交番所長の拳銃が奪取されたことを認識したのは午後2時20分過ぎ頃であり、犯人の人相や着衣が判明したのも同じ頃である。それ以前は、交番所長が襲撃されたこと、犯人が刃物を所持している可能性が高いこと、犯人が本件交番から北東方向に徒歩で逃20走している可能性が高いことが判明するにとどまっていた。 午後2時20分過ぎ頃における状況下で、単に刃物を所持した男が本件交番の周辺にいるとして、周辺住民や通行人等に屋内へ退避するように警告を発した場合、情報が極めてあいまいなために、周辺住民等の間にパニックを誘発し、かえって大きな混乱を招く危険性があったといえる。また、警告を25発することで、警告を聞いた犯人が逃走する可能性のほか、本件交番周辺の24 住民や通行人等が犯人のいる方向や建物内に避難してしまう可能性や、犯人が周辺住民等を人質にとって近隣の建物に立て籠もる可能性など、事態が一層悪化する可能性も考慮する必要がある。これらのリスクを踏まえてもなお、周辺住民等に対する警告を発すべきことが明らかであったとは到底いえず、警告を発するとの判断が困難でなかったなどと など、事態が一層悪化する可能性も考慮する必要がある。これらのリスクを踏まえてもなお、周辺住民等に対する警告を発すべきことが明らかであったとは到底いえず、警告を発するとの判断が困難でなかったなどとは認められない。 5加えて、前述のとおり、午後2時13分頃の時点で本件交番周辺に到着していた警察車両は1台にすぎず、午後2時20分過ぎ頃の時点においても、二、三台にとどまる。警察官の人数も10人程度であったと考えられ、多数とはいえない。また、犯人は血痕を点々と遺留しており、犯人の追跡が可能と考えられる状態であった。このような状況下で、遺留された血痕の追跡、10本件相談員や店長からの事情聴取、本件交番の防犯カメラの確認、現場の保存、本件県道の交通誘導、犯人の捜索等に当たる人員を減らして、本件交番周辺の住民や通行人への警告を優先するとの判断が困難でなかったとは認められない。原告は、犯人の追跡や確保を周辺住民等に対する警告に優先させるとの県警警察官らの判断が不当であり、同判断は県警警察官らが周辺住民15等の保護を軽視していることを示すものであるかのように主張するが、これらは相容れないものではなく、犯人の逃走方向や所在を把握することは、周辺住民等に対して適切な警告を発し、避難を促すことに有益であるし、犯人を確保することにより周辺住民等に対する危険は消失するのであるから、県警警察官らの上記判断が不合理であるとは認められない。 20原告は、他県において防災行政無線による警告が実施された例を挙げて、より迅速に防災行政無線を使用して警告を発するとの判断が困難ではなかったと主張する。しかし、他県の警察が事件の第一報が入った段階又はその直後から防災行政無線を使用して警告を発するとの対応を一般的にしていると認めるに足りる的確な証拠はない。また、 判断が困難ではなかったと主張する。しかし、他県の警察が事件の第一報が入った段階又はその直後から防災行政無線を使用して警告を発するとの対応を一般的にしていると認めるに足りる的確な証拠はない。また、そのような実例があるとしても、25事案ごとに事実関係は異なるから、本件でも同様に警告を発すべきであった25 と直ちにいえるものではない。原告が主張する「あいまいな情報しかなくても、とにかく早く警告を発すべきである」との見解は、同警告により生じ得る重大なリスクを軽視するものであって、本件で県警警察官らがそのような見解に従った対応を採らなかったことが違法であるなどと断じることはできない。 5⑹ 原告のその他の主張について原告は、本件指令官や県警通信指令課員らが適性を欠いていたこと、第1事件発生時に本件指令官が離席していたこと、県警通信指令課員らや現場警察官らに危機意識が欠如していたことなどを主張し、より迅速かつ正確に第1事件について認識し、周辺住民等に警告を発することが可能であり、かつ、10そのようにすべき法的義務があったなどと主張する。しかし、本件指令官や県警通信指令課員らが適性を欠いていたことや、県警通信指令課員らや現場警察官らの危機意識が欠如していたことをうかがわせる事情は特に見当たらないし、第1事件発生時に本件指令官が別の用事のために離席していたこと自体が直ちに不当であるなどとはいえず、また通信指令官の任務を代行して15いた通信指令課員の対応が不適切なものであったことをうかがわせる事情も特に見当たらない。最初の110番通報から第2事件が発生するまでの時間は約17分にとどまり、先着警察官らが本件交番に到着してから第2事件が発生するまでの時間は約11分にとどまる。事後的に振り返れば、県警警察官らが第1事件の実態を 通報から第2事件が発生するまでの時間は約17分にとどまり、先着警察官らが本件交番に到着してから第2事件が発生するまでの時間は約11分にとどまる。事後的に振り返れば、県警警察官らが第1事件の実態をより迅速かつ正確に把握した上で周辺住民等に対し20て何らかの警告を発することが全く不可能であったとまではいえないにしても、十数分で状況を把握して実際にそのような対応をとることは現実的でないといわざるを得ず、県警警察官らがそのような対応をとるべき法的義務があったとは認められない。 3 まとめ25第1事件発生後第2事件発生に至るまでのいずれの時点においても、原告が26 主張する、警察官による規制権限の行使又は不行使が国家賠償法1条1項所定の故意又は過失による違法な公権力の行使に該当するための4要件が満たされていたとは認められず、県警警察官らが被害者を含む周辺住民等に対して警告を発しなかったことに国家賠償法1条1項所定の違法性があるとは認められない。 5第4 結論凶悪かつ動機も不可解である犯罪によって理不尽に配偶者を奪われた原告がやり場のない怒り等を抱いていることは理解できなくはないが、これまで説示したとおり、原告の被告に対する本訴請求は理由がないといわざるを得ないため、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 10富山地方裁判所民事部裁判長裁判官 矢口俊哉 裁判官 古庄 順15 裁判官 相島圭介 27 別紙主張対照表 原告の主張被告の主張ア午後2時10分頃① 犯人は、午後2時6分頃に交番所長を襲撃して拳銃を奪取しており、犯人が本件交番を後にして、周辺の住宅街 別紙主張対照表 原告の主張被告の主張ア午後2時10分頃① 犯人は、午後2時6分頃に交番所長を襲撃して拳銃を奪取しており、犯人が本件交番を後にして、周辺の住宅街の徘徊を開始した午後2時10分頃には、被害者を含む本件交番の周辺住民や通行人等が、犯人が所持するナイフや拳銃等により、生命や身体等の重大な法益に対する加害行為を受ける切迫した危険が生じていた。 ② 午後2時7分頃の本件相談員の口調や背景音に加え、午後2時10分頃の本件相談員からの続報の内容や交番所長との連絡がつかない状況からすれば、犯人が拳銃を所持しており交番所長に対し発砲した可能性や、犯人が本件交番の周辺住民や通行人等に危害を加える可能性があることを認識可能であった。 ③ 警察車両の拡声器や防災行政無線① 犯人が被害者を発見し、被害者が警察官であると誤認した午後2時24分頃より前の時点においては、犯人は被害者に接近していないため、被害者に具体的な危険が切迫していたとはいえない。また、犯人は午後2時24分頃までの間に無差別殺傷事件を発生させたのではなく、その意思も有していなかったのであるから、本件交番の周辺住民や通行人等一般についてみても、午後2時24分頃までは危険が切迫していたとはいえない。 ② 午後2時7分における本件相談員の通報は断片的な情報にとどまり、近隣住民に対する無差別殺傷事件を内容とするものではなく、そうした内容を認識し得る外周音もなかった。そのため、事実関係は判然とせず、本件交番でどのような事態が発28 により、「本件交番で警察官が襲撃され重傷を負う事件が発生し、現在犯人が逃走中である。犯人は鋭利な刃物のほかに拳銃も所持している可能性があるから、建物内に入るなどの危険回避 態が発28 により、「本件交番で警察官が襲撃され重傷を負う事件が発生し、現在犯人が逃走中である。犯人は鋭利な刃物のほかに拳銃も所持している可能性があるから、建物内に入るなどの危険回避行動をとるように」などと警告をすれば、被害者はこの警告を認識できたはずであり、被害者を含む本件交番の周辺住民や通行人等は警告に従い避難するはずであるから、犯人に銃撃される可能性は低下する。 ④ 県警通信指令課は、本件交番周辺の警察車両に前記③のとおりの内容の警告を実施するよう指令することが可能であるし、富山市に対して防災行政無線を使用した警告の実施を要請することも可能であった。また、本件交番の周辺に到着していた警察官ら(現場警察官ら)が、その判断により、警察車両を使用して本件交番の周辺住民や通行人等に警告を実施することも可能であった。 生しているかを断じることのできない状態であった。 また、午後2時8分頃における富山中央署における拳銃着装の指示は、拳銃事案を必ずしも想定したものではない。このことは、午後2時10分頃における防弾チョッキの着用指令についても同様である。 ③ 警察車両や防災行政無線による警告がされていたとしても、その内容を聞き取ることができるかどうか、警告に従うかどうか、危険を実際に回避できたかどうかは明らかではない。 ④ 午後2時24分より前の時点では、県警通信指令課や現場警察官らには、警告の実施の要否、可否を判断することができるだけの情報がなかった。そのため警告を実施するという権限を行使することは容易ではなかった。 イ午後2時13分頃①、③、④ アと同じ①、③、④ アと同じ29 ② 先着警察官らは、本件交番に到着して、交番所長が倒れているのを発見するとともに、 とは容易ではなかった。 イ午後2時13分頃①、③、④ アと同じ①、③、④ アと同じ29 ② 先着警察官らは、本件交番に到着して、交番所長が倒れているのを発見するとともに、本件交番内やその付近に犯人がいないことを確認した。そのため、交番所長に重傷を負わせた、凶器を所持し、拳銃も所持している可能性が高い犯人が本件交番周辺を徘徊しており、本件交番の周辺住民や通行人等に危害を加える可能性があることを認識可能であった。 ② この時点では、交番所長の拳銃が奪取されたことは判明しておらず、本件交番の周辺住民や通行人等に対する無差別殺傷事件も発生しておらず、犯人の目的や逃走方法も判明していなかったから、本件交番の周辺住民や通行人等に対して交番所長と同様の被害が生じる危険が切迫していることを認識し得る状況にはなかった。 ウ午後2時15分頃①、③、④ アと同じ② 犯人が遺留した血痕により、交番所長を襲撃した犯人の移動手段が徒歩であることが明らかになったから、犯人は本件交番から徒歩圏内におり、周辺住民や通行人等に危害を加える可能性があることを認識可能であった。 ①、③、④ アと同じ② 県警通信指令課は、犯人が本件交番から徒歩で北東方向に逃走したと推測したにすぎず、それ以降の犯人の逃走方向、逃走方法は把握できていなかった。 そのため、本件交番の周辺住民や通行人等に危険が切迫していることを認識し得る状況にはなかった。 エ午後2時20分頃①、③、④ アと同じ② 交番所長の拳銃が奪われていることが明らかになったから、犯人が拳銃を用いて本件交番の周辺住民や通行人等に危害を加える可能性があることを認識①、③、④ アと同じ② 犯人の目的や所在が判明しておらず、交番所長から奪取された とが明らかになったから、犯人が拳銃を用いて本件交番の周辺住民や通行人等に危害を加える可能性があることを認識①、③、④ アと同じ② 犯人の目的や所在が判明しておらず、交番所長から奪取された拳銃が実際に使用された事実がなかったことや、近隣住民等からの通報等がなかったことか30 可能であった。 らすれば、本件交番の周辺住民や通行人等に危険が切迫していることを認識し得る状況にはなかった。

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