- 1 -主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1請求麹町税務署長が平成17年12月26日付けで原告に対してした,平成13年3月分,平成15年7月分及び平成15年12月分の各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分及び不納付加算税の各賦課決定処分をいずれも取り消す。 第2事案の概要本件は,中小企業等協同組合法に基づく事業協同組合である原告が,組合員の死亡脱退に係る脱退組合員持分払戻金のうち組合員の出資金を超える部分が所得税法25条の定めるみなし配当に当たるとして,配当所得に係る源泉所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分を受けたことから,上記払戻金は組合員の死亡後確定するものであって組合員に帰属するものではないから,組合員の所得に係る所得税の課税の対象とならないなどとして,それらの取消しを求めた事案である。 法令等の内容(1) 平成18年法律第10号による改正前の所得税法25条1項6号(平成13年法律第6号による改正前の同項2号)は,法人の出資者が,当該法人からの脱退による持分の払戻しにより金銭の交付を受けた場合において,その金銭の額が当該法人の出資金額と資本積立金額の合計額のうちその交付の基因となった当該法人の出資に対応する部分の金額を超えるときは,その超える部分の金額は,24条1項(配当所得)に規定する剰余金の配当,利益の配当又は剰余金の分配の額とみなす旨定めている。 (2) 所得税法36条1項は,その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とす- 2 -べき金額は,別段の定めがあるものを除き,その年において収入すべき金額とする旨定めている。 (3) 同法181条は,居住者に対し国内において24条1項(配当所得)に規定する配当等の支払をする者は,その支払 額は,別段の定めがあるものを除き,その年において収入すべき金額とする旨定めている。 (3) 同法181条は,居住者に対し国内において24条1項(配当所得)に規定する配当等の支払をする者は,その支払の際,その配当等について所得税を徴収し,その徴収の日の属する月の翌月10日までにこれを国に納付しなければならず(1項),支払の確定した日から1年を経過した日までにその支払がされない場合には,その1年を経過した日においてその支払があったものとみなして1項の規定を適用する(2項)旨定めている。 (4) 中小企業等協同組合法19条1項2号は,組合員は,死亡によって脱退する旨定めている。 (5) 同法20条1項は,組合員は,死亡により脱退したときは,定款の定めるところにより,その持分の全部又は一部の払戻しを請求することができる旨,また,同条2項は,上記持分は,脱退した事業年度の終わりにおける組合財産によって定める旨それぞれ定めている。 (6) 相続税法3条1項2号は,被相続人の死亡により相続人その他の者が当該被相続人に支給されるべきであった退職手当金,功労金その他これらに準ずる給与で被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものの支給を受けた場合においては,当該給与の支給を受けた者について,当該給与を相続又は遺贈により取得したものとみなす旨定めている。 争いのない事実等(証拠等により容易に認められる事実については,各項末尾に証拠等を掲記した。)(1) 原告は,中小企業等協同組合法3条1号に規定する事業協同組合たる法人である。 (2) 原告の定款14条は,「組合員が脱退したときは,当該事業年度末の決算貸借対照表における出資金,法定利益準備金,資本準備金,特別積立金,繰越損益金及び当期利益剰余金のうち本組合に留保した金額(教育情報費用繰- 3 -越金 合員が脱退したときは,当該事業年度末の決算貸借対照表における出資金,法定利益準備金,資本準備金,特別積立金,繰越損益金及び当期利益剰余金のうち本組合に留保した金額(教育情報費用繰- 3 -越金を除く。)の合計額から,当期損失金を減額した金額(以下本条において「払戻対象金額」という。)(本組合の財産が払戻対象金額より減少したときは払戻対象金額から当該減少額を減額した金額)につき,その出資口数に応じて算定した金額を限度として払いもどすものとする。ただし除名による場合はその半額とする。」と定めている。 (3) 原告の組合員であったAは平成▲年▲月▲日に,Bは平成▲年▲月▲日に死亡したため,中小企業等協同組合法19条1項2号の規定により,それぞれ原告から脱退した。 (4) 原告は,平成15年5月30日に開催された第50回通常総会において,上記各脱退に基づく払戻金(以下「本件各払戻金」という。)の支払を決議した。それぞれの払戻金,出資金,出資金超過額の内訳は,別表1のとおりである。(乙2)(5) 原告は,別表2のとおり,A及びBの相続人らに対し,払戻金を支払った。 (6) 麹町税務署長は,原告に対し,平成17年12月26日付けで,別表6のとおり,原告の平成13年3月分,同15年7月分及び同年12月分の各月分の払戻しにつき,源泉徴収すべき所得税の各納税告知処分(以下「本件各納税告知処分」という。)及び不納付加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」といい,本件各納税告知処分とあわせ「本件各処分」という。)を行った。これらに対する原告の不服申立ての経緯は,別表7のとおりである。 また,被告が本訴において主張する本件各処分の根拠は,別紙のとおりである。 争点 (1) 事業協同組合の組合員の死亡による脱退に伴う持分の払戻請求権は,死亡し の経緯は,別表7のとおりである。 また,被告が本訴において主張する本件各処分の根拠は,別紙のとおりである。 争点 (1) 事業協同組合の組合員の死亡による脱退に伴う持分の払戻請求権は,死亡した組合員に帰属し,その出資額を超過した払戻額は,死亡した組合員の所得となるか。 - 4 -(2) 事業協同組合の組合員の死亡による脱退に伴う持分の払戻請求権は,相続税法3条1項2号及び相続税基本通達が定める,死亡後3年以内に支払われる退職手当金等と同様に,相続税のみを課し,所得税は課されないと解すべきか。 争点に関する当事者の主張(1) 事業協同組合の組合員の死亡による脱退に伴う持分の払戻請求権は,死亡した組合員に帰属し,その出資額を超過した払戻額は,死亡した組合員の所得となるか。 (被告の主張)ア事業協同組合の出資者である組合員は,中小企業等協同組合法19条1項2号により,死亡によって脱退し,同法20条1項により,組合員は,死亡により脱退したときは,定款の定めるところにより,その持分の全部又は一部の払戻しを請求することができるとされているから,死亡によって脱退した者の持分の払戻請求権は,組合員の脱退の事実があった日,すなわち死亡の日に確定し,その日に組合員の所得が実現することとなる。 イ持分の払戻請求権の額が,組合員が脱退した事業年度の終わりにおける組合財産によって定められるとしても,そのことは,持分の払戻請求権の額に未確定要素があるために行使できない状態にあるというにすぎず,死亡した組合員の納税義務を承継した相続人は,払い戻される額を見積もって準確定申告を行い,後に金額が具体的に確定すれば更正の請求(国税通則法23条1項)をし,組合も,同様に払い戻される額を見積もって源泉徴収を行い,後に金額が具体的に確定すれば誤納金還付請求( 積もって準確定申告を行い,後に金額が具体的に確定すれば更正の請求(国税通則法23条1項)をし,組合も,同様に払い戻される額を見積もって源泉徴収を行い,後に金額が具体的に確定すれば誤納金還付請求(同法56条)等で対応すればいいのであり,持分の払戻請求権が脱退の時に発生すると解することの妨げとなるものではない。 ウ所得税法36条1項のいわゆる権利確定主義は,当該所得が,1つの権利義務の主体のどの年の所得として認識されるかという年度帰属の問題で- 5 -あり,権利が誰に帰属するかという問題ではないところ,組合員が死亡により脱退すれば,組合員に当然に払戻請求権が発生し,帰属することになるから,この払戻請求権は,組合員の死亡の時点で,当該組合員のその年の所得として確定するというべきである。 (原告の主張)アそもそも死亡により成立する権利が,死亡した者にいったん帰属することはあり得ない。 イ原告の定款においては,その11条により,組合員が死亡した場合は,相続人が,死亡した組合員の地位を承継することができ,相続人が組合員の地位を承継しない選択をして初めて脱退の効力が生じるのであるから,払戻請求権は相続人固有の権利であり,死亡した組合員の所得とはならない。 ウ中小企業等協同組合法20条1項は,定款の定めるところにより,その持分の全部又は一部の払戻しを請求することができる旨を規定し,原告の定款の14条においても,持分払戻額はあくまで上限額が定められているだけであって,本件において,組合員死亡時には具体的な払戻請求権が発生しておらず,平成15年5月30日の総会決議により初めて具体的な払戻請求権が確定したのであるから,その時点において死亡した組合員は権利帰属主体たり得ず,死亡した組合員の所得として観念することは不可能である。 エ中小企業等 30日の総会決議により初めて具体的な払戻請求権が確定したのであるから,その時点において死亡した組合員は権利帰属主体たり得ず,死亡した組合員の所得として観念することは不可能である。 エ中小企業等協同組合法20条2項によれば,持分払戻請求権は脱退後の事業年度の末日を基準として定められるものであり,また同法18条において自由脱退においても事業年度が終了するまで持分払戻請求権を取得・行使することができないとされていることからすれば,死亡脱退の場合も死亡した年の事業年度が終了するまでは持分払戻請求権は発生も確定もしていないのであり,所得税法36条1項の「権利確定主義」の考え方から- 6 -も,死亡時に未だ確定していない持分払戻請求権が,死亡脱退した組合員に帰属することは考えられない。 (2) 事業協同組合の組合員の死亡による脱退に伴う持分の払戻請求権は,相続税法3条1項2号及び相続税基本通達が定める,死亡後3年以内に支払われる退職手当金等と同様に,相続税のみを課し,所得税は課されないと解すべきか。 (原告の主張)出資持分の払戻しは,組合員が生前組合活動に貢献してきた代償としての死亡退職金や賞与等に類似する性格を持つから,相続税法3条1項2号が,被相続人の死亡による退職手当金,功労金その他これらに準ずる給与で被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものを相続により取得したものとみなし,また,相続税基本通達3-32,3-33が,被相続人の死亡後に確定した賞与や相続開始時に支給期が到来していない俸給・給料等は,相続財産であるとして,所得税を課税せず,相続税のみを課税するとしているのであるから,死亡後3年以内の支給が確定した死亡退職金,賞与や,支給期が到来していない給料等と同様に,相続財産として取り扱われるべきであって,所得税を課すべきではな 相続税のみを課税するとしているのであるから,死亡後3年以内の支給が確定した死亡退職金,賞与や,支給期が到来していない給料等と同様に,相続財産として取り扱われるべきであって,所得税を課すべきではない。 (被告の主張)そもそも出資持分の払戻金は,死亡した者の勤務に係るものではなく,むしろ,出資持分払戻金のうち,出資金超過額は,剰余金の分配額とみなされるものであって,原告が主張する退職手当金,功労金等や賞与,給料等とは性質を異にするから,原告主張の相続税法や基本通達等が適用されることにはならず,所得税が課税されないこととはならない。 第3争点に対する判断 争点(1)(事業協同組合の組合員の死亡による脱退に伴う持分の払戻請求権は,死亡した組合員に帰属し,その出資額を超過した払戻額は,死亡した組合- 7 -員の所得となるか。)について(1) 中小企業等協同組合法19条1項柱書きは「組合員は,次の事由によつて脱退する。」として,組合員の法定脱退事由を定め,同項2号は,法定脱退事由として「死亡又は解散」を掲げている。そして,同法20条1項は,「組合員は,第18条又は前条第1項第1号から第4号までの規定により脱退したときは,定款の定めるところにより,その持分の全部又は一部の払戻を請求することができる。」と規定している。 これらの規定によれば,組合員が死亡した場合には,当該組合員は,当然に組合から脱退するとともに,その持分の払戻請求権を取得することを定めたものと解するのが自然である一方,中小企業等協同組合法の他の規定を見ても,持分払戻請求権が,組合員の死亡等による脱退の時点ではなく,それよりも後の時点で発生することをうかがわせる規定や,持分払戻請求権が,死亡した組合員ではなく,その相続人に発生することをうかがわせる規定は何ら存在しない。 ( の死亡等による脱退の時点ではなく,それよりも後の時点で発生することをうかがわせる規定や,持分払戻請求権が,死亡した組合員ではなく,その相続人に発生することをうかがわせる規定は何ら存在しない。 (2) そして,中小企業等協同組合法20条2項は,同条1項により払戻請求をすることができる脱退組合員の持分は,脱退した事業年度の終わりにおける組合財産によって定める旨を規定しており,それ以上の具体的な定めは,同条1項にいう定款の定めに委ねているものと解されるところ,中小企業等協同組合法は,中小規模の事業を行う者,勤労者等が,相互扶助の精神に基づき協同して事業を行うために必要な組織等を定め,これらの者の自主的な経済活動を促進し,経済的地位の向上を図ることを目的とするものであって(1条),組合員の持分は,いわば組合の純資産に対して組合員が有する「分け前」であり,その払戻請求権は,持分を金銭化したもので,組合員にとって最も重要な基本的権利であるということができるのであり,また,同法5条1項2号が,組合員に脱退の自由を法律上保障していることをあわせ考えるならば,定款によって,組合員が脱退する際の持分払戻請求権を剥奪- 8 -することができないことはもとより,具体的な払戻額を,当該組合員の払込済出資額(組合財産全体が全体としての払込済出資額に達しないときは,その差額のうち脱退者の出資口数に応ずる部分を,払込済出資額から減額した額)(以下「払込済出資額等」という。)にまで制限することはできても,それより少ない額にすることは,原則として許されないと解すべきである。 この点,原告の定款を見るに,前記争いのない事実等(第2の2(2))記載のとおり,原告の定款(甲1)の14条本文には,組合員が脱退したときは,当該事業年度末の決算貸借対照表における出資金,法定利益 この点,原告の定款を見るに,前記争いのない事実等(第2の2(2))記載のとおり,原告の定款(甲1)の14条本文には,組合員が脱退したときは,当該事業年度末の決算貸借対照表における出資金,法定利益準備金,資本準備金,特別積立金,繰越損益金及び当期利益剰余金のうち原告に留保した金額の合計額から,当期損失金を減額した金額(以下「払戻対象金額」という。)につき,その出資口数に応じて算定した金額を限度として払い戻すものとする旨の定めがあることが認められるが,他方,脱退した組合員の持分払戻請求権を全て剥奪したり,具体的な払戻額を,一般に払込済出資額等より少ない額にすることを特に許容することをうかがわせる規定はない。むしろ,原告の定款(甲1)の14条ただし書きには,組合員が除名により脱退した場合,その他の事由により脱退した場合の「半額」とする旨の規定があることが認められるから,そうすると,除名以外の事由によって脱退する組合員は,払戻対象金額を出資口数に応じて算定した金額の持分の払戻請求権を,また,除名により脱退する組合員はその半額の持分払戻請求権を,それぞれ脱退によって当然に取得し,協同組合の財産的基礎を堅実にするために総会決議によって減額される余地はあるものの,その場合でも払込済出資額等より少ない額に減額されることはないと解すべきである。 (3) したがって,中小企業等協同組合法の規定及び原告の定款によれば,原告においては,組合員の死亡により,原則として,脱退後の事業年度末日における払戻対象金額を出資口数に応じて算定した金額の持分の払戻請求権が当然に発生し,払込済出資額等以上の額の部分は,総会決議により減額される- 9 -ことがあることをいわば一部解除条件として,死亡した組合員がこれを取得するというべきである。 (4) これに対し原告は,死 発生し,払込済出資額等以上の額の部分は,総会決議により減額される- 9 -ことがあることをいわば一部解除条件として,死亡した組合員がこれを取得するというべきである。 (4) これに対し原告は,死亡により成立する権利が死亡した者にいったん帰属することはあり得ない旨を主張するが,持分払戻請求権は組合員の死亡によって発生する権利であって,およそ死亡によって組合員にいったん帰属することが法律上あり得ないということはできない上,実質的にみても,持分払戻請求権は組合員が有していた持分がいわば金銭に転化したものであって,同一性が認められるから,持分払戻請求権が死亡した組合員にいったん帰属すると解すべきことには合理性が認められるのであって,この点についての原告の主張は採用の限りでない。 また,原告は,原告の定款(甲1)の11条により,組合員が死亡した場合,相続人は,死亡した組合員の地位を承継することができ,相続人が組合員の地位を承継しない選択をして初めて脱退の効力が生じるのであるから,払戻請求権は相続人固有の権利である旨を主張するが,原告の定款11条は,死亡した組合員の相続人で組合員たる資格を有する者の1人が相続開始後30日以内に加入の申出をしたときは,「相続開始の時に組合員になったものとみなす」旨の規定であり,その規定ぶりからも明らかなように,中小企業等協同組合法19条1項2号の規定により組合員の死亡によっていったん脱退の効果が生じることを前提とした上で,組合員である相続人が,被相続人たる組合員の死亡後に加入の申出をした場合に,遡ってその相続人が相続開始の時に組合員となったと「みなす」にすぎず,原告の主張するように,組合員たる相続人が加入の申出をしなかったときにはじめて,死亡した組合員の脱退の効力が生じたり,持分の払戻請求権が発生することを定め 始の時に組合員となったと「みなす」にすぎず,原告の主張するように,組合員たる相続人が加入の申出をしなかったときにはじめて,死亡した組合員の脱退の効力が生じたり,持分の払戻請求権が発生することを定めた規定であると解することは到底できないから,この点についての原告の主張も理由がない。 さらに,原告は,原告の定款は持分払戻額の上限額を定めただけであって,- 10 -平成15年5月30日の総会決議により初めて具体的な払戻請求権が確定したのであり,その時点において死亡した組合員は権利帰属主体たり得ないから,死亡した組合員の所得として観念することは不可能である旨を主張するが,前記のとおり,原告の定款が持分払戻請求権の上限額を定めたものであるとしても,総会決議により持分払戻請求権を全く剥奪したり,前記限度額を下回るものとすることは許されないと解すべきであって,前記のとおり,脱退者が,その持分払戻請求権を取得すると解すべきであるから,原告の上記主張も理由がないというべきである。 また,原告は,持分払戻請求権は脱退後の事業年度の末日を基準として定められるものであること等から,組合員が死亡した年の事業年度が終了するまでは持分払戻請求権は未だ発生も確定もしていない旨を主張するが,前記のとおり,実体法上は,一部解除条件付きではあるものの,脱退後の事業年度末日における払戻対象額を出資口数に応じて算定した金額の持分の払戻請求権の発生が確定したといえるから,この点についての原告の主張も理由がないというべきである。 なお,原告は,持分払戻請求権は少なくとも事業年度が終了するまでは確定せず,法律上行使することは不可能であるから,所得税法36条1項のいういわゆる「権利確定主義」の「確定」の要件を充たしていないと主張するが,そもそも権利確定主義は,当該所得が1つの権利 るまでは確定せず,法律上行使することは不可能であるから,所得税法36条1項のいういわゆる「権利確定主義」の「確定」の要件を充たしていないと主張するが,そもそも権利確定主義は,当該所得が1つの権利義務の主体のどの年の所得として認識されるべきであるかという,所得の年度帰属の問題であるところ,組合員の死亡脱退に伴う持分払戻請求権は,前記のとおり,組合員の死亡によって組合員の所得として発生するのであって,組合員が死亡した年の所得として認識されることになることは明らかであり,また,実質的にも,死亡した組合員の納税義務を承継した相続人は,払い戻される額を見積もって準確定申告を行い,後に金額が具体的に確定すれば更正の請求(国税通則法23条1項)をし,組合も,同様に払い戻される額を見積もって源泉徴収- 11 -を行い,後に金額が具体的に確定すれば誤納金還付請求(同法56条)等で対応すればいいのであり,しかも,所得税法181条1項,2項によれば,組合は,最終的には,支払の確定をした日から1年を経過したいわゆるみなし支払日の翌月10日までに源泉所得税を納付すれば足りるのであり,その間に事業年度の終期が到来し,中小企業等協同組合法20条2項にいう脱退した事業年度の終わりにおける組合財産が判明することは明らかであるから,組合に対して,原告のいうような不可能を強いることにはならないのであって,この点についての原告の主張もまた理由がないというべきである。 (5) したがって,原告において,組合員の死亡による脱退に伴う持分の払戻請求権は,組合員が死亡した時点で確定的に発生し,死亡した組合員に帰属するというべきであるから,その出資金超過額は死亡した組合員の所得となるというべきであって,争点(1)に関する被告の主張は理由がある。 争点(2)(事業協同組合の組合 発生し,死亡した組合員に帰属するというべきであるから,その出資金超過額は死亡した組合員の所得となるというべきであって,争点(1)に関する被告の主張は理由がある。 争点(2)(事業協同組合の組合員の死亡による脱退に伴う持分の払戻請求権は,相続税法3条1項2号及び相続税基本通達が定める,死亡後3年以内に支払われる退職手当金等と同様に,相続税のみを課し,所得税は課されないと解すべきか。)について相続税法3条1項2号は,被相続人の死亡により相続人その他の者が当該被相続人に支給されるべきであった退職手当金,功労金その他これらに準ずる給与で被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものの支給を受けた場合においては,当該給与の支給を受けた者について,当該給与を相続又は遺贈により取得したものとみなす旨定め,所得税法9条1項15号は,このようなみなし相続財産につき所得税を課さないものと規定している。 また,相続税基本通達3-32,3-33は,被相続人の死亡後に確定した賞与や相続開始時に支給期が到来していない俸給・給料等は,相続財産であるとして,所得税を課税せず,相続税のみ課税するとしている。 しかしながら,中小企業等協同組合法の定めの下での,組合員の持分,ある- 12 -いはその払戻請求権が,これらの所得税法又は相続税基本通達にいう退職手当金,功労金及びこれらに準ずる給与あるいは賞与,俸給又は給与等に,直接に該当すると解することはできず,原告の主張はそもそも租税法律主義の点からも疑問があることはもとより,前記のとおり,組合員の持分,あるいはその払戻請求権は,いわば組合の純資産に対して組合員が当然に持つべき「分け前」であり,組合員の基本的な権利として位置づけられる性質を有するものであって,実質的にみても,これを雇用契約等から生じる退職手当金,賞与,給 ,いわば組合の純資産に対して組合員が当然に持つべき「分け前」であり,組合員の基本的な権利として位置づけられる性質を有するものであって,実質的にみても,これを雇用契約等から生じる退職手当金,賞与,給与等と同一に扱うべき理由はない。 したがって,争点(2)に関する被告の主張も理由がある。 このほか,原告は,本件各賦課決定処分について,組合員死亡時において,持分払戻請求権は支払金額も支払時期も未確定であり,権利確定主義は一定の算定基準となるべき事業年度末すら到来していない時点に適用されないなどとしてその適法性を争っているものの,前記1(4)記載のとおり,原告の上記主張は理由がなく,原告がこれと異なる認識を有していたとしても,平成18年法律第10号による改正前の国税通則法67条1項ただし書きの「正当な理由があると認められる場合」に該当するともいえない。 以上のとおり,争点(1)及び(2)に関する被告の主張はいずれも理由があり,このほか,本件各処分を違法とすべき理由はなく,これらはいずれも適法である。 第4 結論 以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部- 13 -裁判長裁判官定塚誠裁判官中山雅之裁判官佐々木健二- 14 -(別紙)第1本件各納税告知処分の根拠及び適法性 所得税の対象となる金員本件各払戻金のうち,A及びBの出資の額870万円を超える部分の金額1億8571万3773円は,平成18年法律第10号による改正前の所得税法25条1項6号(平成13年法律第6号による改正前の同項2号)により,利益の配当又は剰余金の分配の額とみなされる(みなし配当)。 571万3773円は,平成18年法律第10号による改正前の所得税法25条1項6号(平成13年法律第6号による改正前の同項2号)により,利益の配当又は剰余金の分配の額とみなされる(みなし配当)。 所得税を徴収すべき時期Aは平成▲年▲月▲日に,Bは平成▲年▲月▲日に死亡し,それぞれ死亡日に原告を脱退しているから,本件各払戻金の支払の確定した日はA及びBが死亡脱退した日であり,その日がみなし配当の収入金額の収入すべき時期となる(所得税法36条1項)。 そして,Aについては全額,Bについては一部について,支払確定日から1年を経過しても支払がされなかったため,同法181条2項を適用し,Aについては平成13年3月13日に,Bについては平成15年12月30日にそれぞれ支払をしたものとみなすこととなる。 したがって,原告は,同法181条1項により,払戻金を支払う際に出資金超過額について,また,みなし支払日において未払金額がある場合には同日に当該未払金額のうち出資金超過額について,それぞれ所得税を源泉徴収し,それぞれの徴収の日の属する月の翌月10日までに,源泉所得税を国に納付する義務を負うこととなる。 そして,A及びBの出資の額の納期ごとの金額は別表3記載「本件出資金」欄のとおりであり,それぞれの出資金超過額は同表記載「本件出資金超過額」欄のとおりである。 源泉徴収すべき所得税額について原告が源泉徴収すべき所得税額は,別表3記載「本件出資金超過額」欄の額- 15 -に100分の20の税率を乗じて計算した金額であり(所得税法182条2号),別表4記載「本訴において主張する納付すべき税額」欄の額である。 本件各納税告知処分の適法性本件各納税告知処分の額は,別表4記載「本件各納税告知処分における納付すべき税額」欄のとおりであり,これらの金額は, 本訴において主張する納付すべき税額」欄の額である。 本件各納税告知処分の適法性本件各納税告知処分の額は,別表4記載「本件各納税告知処分における納付すべき税額」欄のとおりであり,これらの金額は,同「本訴において主張する納付すべき税額」欄と同額又はそれ以下であるであるから,本件各納税告知処分は適法である。 第2本件各賦課決定処分の適法性原告が,本件各納税告知処分による納付すべき税額を法定納期限までに納付しなかったことについて,国税通則法67条(ただし,平成18年法律第10号による改正前のもの,以下同じ。)1項ただし書きの「正当な理由があると認められる場合」に該当するとは認められないから,当該納付すべき税額に対する不納付加算税の額は,本件各納税告知処分によって納付すべきこととなった納期の区分ごとの納付すべき源泉所得税額(ただし,国税通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数を切り捨てた後の金額。)に100分の10の割合を乗じて算出した金額(別表5記載「不納付加算税の額」欄)となり,本件各賦課決定処分における不納付加算税の額(同「本件各賦課決定処分における納付すべき税額」欄)はいずれもこれと同額であるから,本件各賦課決定処分は適法である。 以上
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