令和5年(行コ)第24号生活保護基準引下げに基づく保護費変更(減額)処分取消請求控訴事件(原審:広島地方裁判所平成26年(行ウ)第53号)口頭弁論終結日令和6年11月18日判決当事者の表示別紙当事者目録及び別紙訴訟終了者目録記載のとおり(本文中において、1審原告らについては別紙当事者目録記載の1審原告番号で呼称し、1審被告らについては同目録記載の略称で呼称する。)(各目録の添付省略)主文 1 本件各控訴をいずれも棄却する。 2 1審原告番号9が当審において追加した予備的請求に係る訴えのうち、当審の口頭弁論終結日の翌日以降の金員の支払を求める部分を却下する。 3 1審原告番号9のその余の予備的請求を棄却する。 4 控訴費用は、1審被告ら提起の本件控訴に係る費用は1審被告らの負担とし、1審原告番号9提起の本件控訴に係る費用(当審において追加した予備的請求に係る費用を含む。)は1審原告番号9の負担とする。 5 本件訴訟のうち別紙訴訟終了者目録記載の各1審原告らの請求に関する部分は、同目録記載の日にそれぞれ同1審原告らの死亡により終了した。 事実 及び理由第1 各控訴の趣旨 1 1審被告ら⑴ 原判決中、1審被告ら敗訴部分を取り消す。 ⑵ 上記の部分につき、1審原告ら(1審原告番号9を除く。)の請求をいずれも棄却する。 令和7年4月18日判決言渡同日原本受領裁判所書記官 2 1審原告番号9⑴ 原判決中、1審原告番号9敗訴部分を取り消す。 ⑵ 主位的請求広島市東福祉事務所長が1審原告番号9に対して平成25年7月3日付けでした昭和29年社発第382号厚生省社会局長通知に基づく生活保護措置に係る保護変更措置を取り消す。 ⑶ 予備的請求(1審原告番号9が当審におい 務所長が1審原告番号9に対して平成25年7月3日付けでした昭和29年社発第382号厚生省社会局長通知に基づく生活保護措置に係る保護変更措置を取り消す。 ⑶ 予備的請求(1審原告番号9が当審において追加した請求)1審被告広島市は、1審原告番号9に対し、平成25年8月から、広島市東福祉事務所長が1審原告番号9に対してした上記⑵の保護変更措置を取り消すまで、1か月1060円の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要(以下、略称は、本判決において新たに定めるもののほか、原判決に従う。) 1 本件は、広島県内に居住し、それぞれ生活保護(外国人である1審原告番号9については、昭和29年社発第382号厚生省社会局長通知(昭和29年通知)に基づく生活保護措置)を受けていた1審原告らが、平成25年厚生労働省告示第174号による保護基準の改定(平成25年改定)に伴い、各福祉事務所長からそれぞれ生活扶助費を減額する内容の保護変更決定(1審原告番号9については、生活扶助費を減額する内容の保護変更措置)を受けたことにつき、平成25年改定は憲法25条を具体化した生活保護法8条等に反し、上記各保護変更決定等は違法であると主張して、その取消しを求めた事案である。 原審は、①平成25年改定には、デフレ調整分として生活扶助基準を同年から3年間にわたり4.78%引き下げることとした点において、生活保護法3条、8条2項に違反した違法があり、これに基づいて1審原告ら(1審原告番号9を除く。)に対してされた各保護変更決定はいずれも違法であるとして、その取消しを求める同1審原告らの請求を認容する一方で、②1審原告番号9に対してされた保護変更措置は取消訴訟の対象となる行政処分には当たらない として、1審原告番号9の訴えを不適法として却下したことから、1審被告ら らの請求を認容する一方で、②1審原告番号9に対してされた保護変更措置は取消訴訟の対象となる行政処分には当たらない として、1審原告番号9の訴えを不適法として却下したことから、1審被告ら及び1審原告番号9は、これを不服としてそれぞれ控訴した。 1審原告番号9は、当審において、上記保護変更措置の取消請求を主位的請求とした上で、予備的請求として、昭和29年通知に基づく生活保護措置に基づき、平成25年8月(上記保護変更措置がされた月の翌月)から上記保護変更措置が取り消されるまでの間、1か月1060円の割合による金員(生活扶助費の減額分相当額)の支払を求める請求を追加した。 2 法令等の定め及び前提事実法令等の定め及び前提事実(平成25年改定に至った経緯等、1審原告らに関する個別の事実関係)は、次のとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」欄の第2の2ないし4のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決4頁7行目から8行目にかけての「これらの標準世帯の基準額を分解する過程を「展開」という。」を「これらの標準世帯の基準額を分解し、標準世帯以外の世帯へ適用していく過程を「展開」という。」と改める。 ⑵ 原判決18頁10行目の「生活扶助費の減額」を「平成25年改定に従った生活扶助費の減額」と、14行目の「生活扶助費の減額」を「平成25年改定に準じた生活扶助費の減額」と、それぞれ改める。 3 争点及びこれに関する当事者の主張争点及びこれに関する当事者の主張は、次のとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」欄の第3(同部分で引用された原判決別紙当事者の主張を含む。)のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決19頁1行目の「本件の争点は」を「本件の1審原告ら全員に共通する争点は」と改める。 ⑵ 原判決19頁20行目末尾に 判決別紙当事者の主張を含む。)のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決19頁1行目の「本件の争点は」を「本件の1審原告ら全員に共通する争点は」と改める。 ⑵ 原判決19頁20行目末尾に、行を改めて、次のとおり加える。 「 また、控訴人である1審原告番号9については、昭和29年通知に基づく生活保護措置の生活扶助費を減額する内容の保護変更措置が、取消訴訟 の対象となる処分(行政事件訴訟法3条2項)に当たるか(主位的請求に係る本案前の争点)並びに昭和29年通知に基づく金銭請求の当否及び将来請求の必要性(予備的請求に係る争点)が争われており、これらの点に関する当事者の主張は、以下のとおりである。 4 1審原告番号9に対する保護変更措置が、取消訴訟の対象となる処分に当たるか(1審原告番号9の主張)生活保護法は国籍条項を有しておらず、同法1条、2条は「国民」と規定するだけであるから、それらの「国民」には、外国人が含まれると解すべきである。 仮にそうでないとしても、例えば、通達の内容が国民の具体的な権利、義務ないしは法律上の利益に重大な関わりを持ち、その影響が単に行政組織の内部関係にとどまらず外部にも及び、国民の具体的な権利、義務ないしは法律上の利益に変動を来し、通達そのものを争わせなければ権利救済を全からしめることができないような特殊例外的な場合などには、通達等に基づく行政庁の行為について処分性が認められる場合があるというべきところ、昭和29年通知に基づく行政措置により事実上生活保護の対象となり得るかは、申請者にとって、生命に関わる重大な法律上の利益(行政事件訴訟法9条1項)があること等を踏まえると、保護変更措置について処分性を認めるべきである。 1審原告番号9は、太平洋戦争が終結した昭和20年9月2日以前、 、生命に関わる重大な法律上の利益(行政事件訴訟法9条1項)があること等を踏まえると、保護変更措置について処分性を認めるべきである。 1審原告番号9は、太平洋戦争が終結した昭和20年9月2日以前、すなわち戦前から日本に在留していた在日韓国人であって、改正前のポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律(昭和27年法律第126号)2条6項により在留が認められ、日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成3法律第71号)3条1号イにより特 別永住者として永住が認められるものであるところ、少なくともこのような者については、平和条約発効の際、国籍選択の権利がなく、日本国籍を選択することができなかった以上、日本国籍を有する者と同様の扱いがされるべきである。 (1審被告広島市の主張)取消訴訟の対象となる処分(行政事件訴訟法3条2項)とは、公権力の主体たる国又は公共団体が法令の規定に基づき行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。 昭和29年通知は、生活保護法が外国人に適用されないことを前提に、生活に困窮する一定の外国人に対し、行政措置として事実上の保護を行うことを定めた行政通達にすぎず、同法を根拠とするものでも、同法の委任を受けて定められたものでもない。したがって、昭和29年通知に基づいて行われる一定の外国人に対する生活保護措置は、権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものではないから、取消訴訟の対象となる処分に当たらない。よって、1審原告番号9の訴えは不適法である。 5 昭和29年通知に基づく金銭請求の当否及び将来請求の必要性(1審原告番号 認められているものではないから、取消訴訟の対象となる処分に当たらない。よって、1審原告番号9の訴えは不適法である。 5 昭和29年通知に基づく金銭請求の当否及び将来請求の必要性(1審原告番号9の主張)1審原告番号9に対する保護変更措置は違法であり、取り消されるべきであるから、1審原告番号9は、1審被告広島市に対し、昭和29年通知に基づき、上記保護変更措置が取り消されるまでの間、減額分である1か月1060円の割合による金員の支払を求めることができる。 (1審被告広島市の主張)⑴ 1審原告番号9の金銭請求に係る訴えのうち、口頭弁論終結日の翌日以降の金員の支払を求める部分は、将来給付の訴えであり、あらか じめその請求をする必要がある場合(民事訴訟法135条)に当たらないから、不適法である。 ⑵ 昭和29年通知に基づく外国人に対する生活保護措置の法的性質は贈与契約であり、保護基準が改定された場合に、生活保護法に基づく生活保護の取扱いに準じて、保護実施機関が改定後の保護基準に従って給付の内容を変更し得ることをその内容とする。したがって、1審原告番号9は、1審被告広島市に対し、平成25年改定後の保護基準に従い1審被告広島市が変更した後の金額の保護費の支払を請求できるにすぎず、それ以上に、上記変更前の金額の保護費の支払を請求する権利はない。」第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、原審と同様、①平成25年改定には、デフレ調整分として生活扶助基準を3年間で4.78%引き下げることとした点において違法があり、これに基づいて1審原告ら(1審原告番号9及び別紙訴訟終了者目録記載の1審原告らを除く。)に対してされた各保護変更決定はいずれも違法であるから、その取消しを求める同1審原告らの請求は理由があるが、他方で、②1審原告番 告ら(1審原告番号9及び別紙訴訟終了者目録記載の1審原告らを除く。)に対してされた各保護変更決定はいずれも違法であるから、その取消しを求める同1審原告らの請求は理由があるが、他方で、②1審原告番号9に対してされた保護変更措置は取消訴訟の対象となる処分には当たらないから、1審原告番号9の主位的請求に係る訴えは不適法であり却下すべきである、また、③1審原告番号9が当審において追加した予備的請求に係る訴えのうち、当審の口頭弁論終結日の翌日以降の金員の支払を求める部分は将来請求の必要性が認められず不適法であるから却下すべきであり、その余の予備的請求は理由がないから棄却すべきであると判断する。その理由は、以下のとおりである。 2 生活扶助基準の改定の適否に関する判断枠組み原判決「事実及び理由」欄の第4の1のとおりであるから、これを引用する。 3 ゆがみ調整について 原判決「事実及び理由」欄の第4の2のとおりであるから、これを引用する。 4 デフレ調整について⑴ 基準部会等の専門機関による審議検討を経ていないことの適否について原判決「事実及び理由」欄の第4の3⑴のとおりであるから、これを引用する。 ⑵ 物価変動を指標として生活扶助基準の改定を行ったことの適否について原判決「事実及び理由」欄の第4の3⑵のとおりであるから、これを引用する。 ⑶ 物価変動率の算定方法(本件手法)の適否についてア生活扶助相当品目を対象としたことの適否について1審被告らは、平成25年当時、生活扶助による支出が想定される品目の価格指数及びウエイトを網羅した信頼性の高い客観的なデータとしては総務省CPIしかなかったが、その指数品目には、家賃、教育費、医療費、自動車関係費、NHK受信料等の生活扶助による支出がおよそ想定されない品目が多数 イトを網羅した信頼性の高い客観的なデータとしては総務省CPIしかなかったが、その指数品目には、家賃、教育費、医療費、自動車関係費、NHK受信料等の生活扶助による支出がおよそ想定されない品目が多数含まれており、生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加の程度を把握するためには、これらを含めて算定することは相当でないと考えられたため、厚生労働大臣は、「生活扶助において捕捉され得るか否か」という客観的かつ明確な基準に従って選択した品目を除外し、生活扶助相当品目を対象として消費者物価指数(生活扶助相当CPI)を算定することとした旨主張する。 そこで検討すると、生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加の程度を把握するという目的の下、生活扶助による支出がおよそ想定されない品目を除外すること自体は、一定の合理性を有するといえる。 イ一般国民全体を調査対象とする家計調査により算出されたウエイトを用いたことの適否について本件手法のウエイトと生活保護受給世帯の消費実態との差異 本件手法による生活扶助相当CPIは、前記アにおいて除外されずに残った品目について、総務省CPI(平成22年基準)のウエイトをそのまま採用している。この総務省CPIのウエイトは、一般国民全体を調査対象とする家計調査(2人以上の世帯)に基づき、平成22年平均1か月の1世帯当たり品目別消費支出金額を用いて作成されたものである(乙28〔8頁〕)。 その結果、生活扶助相当CPIにおける支出項目ごとのウエイト及びその構成比は、別紙ウエイト対照表C欄(平成20年)及びD欄(平成23年)のとおりであり、①教養娯楽費のウエイト構成比は16.5~17.1%、そのうち②教養娯楽用耐久財(テレビ、ビデオレコーダー、パソコン等)は2.7%、更にそのうち③テレ 0年)及びD欄(平成23年)のとおりであり、①教養娯楽費のウエイト構成比は16.5~17.1%、そのうち②教養娯楽用耐久財(テレビ、ビデオレコーダー、パソコン等)は2.7%、更にそのうち③テレビ、ノートパソコンはそれぞれ1.5~1.6%、0.3%となっており、基となった総務省CPI(平成22年基準)におけるウエイト構成比(同表B欄)よりも高い割合を占めている(乙28、30)。 しかし、厚生労働省が生活保護受給世帯の生活実態を明らかにすることによって生活保護基準の改定等生活保護制度の企画運営のために必要な基礎資料を得ること等を目的として行っている社会保障生計調査(平成22年、2人以上の世帯)の結果によれば、別紙ウエイト対照表E欄のとおり、①教養娯楽費の支出の構成比は6.4%、そのうち②教養娯楽用耐久財は0.6%、更にそのうち③PC・AV機器(パソコン、テレビ、ビデオデッキ等)は0.4%にとどまっており(甲全113、209〔資料2〕、乙46)、これと比較すると、上記生活扶助相当CPIにおけるテレビ及びノートパソコンを含む教養娯楽費ないし教養娯楽用耐久財のウエイト構成比は過大であり、生活保護受給世帯の消費実態との乖離が大きいというべきである。 上記乖離が生じる原因について見ると、社会保障生計調査による生活 保護受給世帯(2人以上の世帯)の消費支出額は月額17万3266円であり、家計調査による一般世帯(2人以上の世帯)の消費支出額(月額29万0244円)の約6割にとどまっていることから、生活保護受給世帯においては、食料、光熱・水道等の生活必需品に支出の多くを振り向けざるを得ず、上記のとおり教養娯楽費ないし教養娯楽用耐久財に振り向けられる割合が少ないことは必然的なことといえる(甲全113、133、162〔31~32 熱・水道等の生活必需品に支出の多くを振り向けざるを得ず、上記のとおり教養娯楽費ないし教養娯楽用耐久財に振り向けられる割合が少ないことは必然的なことといえる(甲全113、133、162〔31~32頁〕、163〔12頁〕、164〔5頁〕)。 また、家計調査(平成27年10~12月)の結果によれば、年間収入第1・十分位の世帯において、①消費支出に対する教養娯楽費の構成比は9.1%(≒11,088円÷122,055円)、そのうち②教養娯楽用耐久財は0.25%(≒300円÷122,055円)にとどまっており(乙47)、このことからも、生活保護受給世帯を含む低所得世帯において教養娯楽費ないし教養娯楽用耐久財に対する支出のウエイトが低いことは一貫した傾向であると認められる。 なお、平成22年に実施された「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」の結果によれば、生活保護受給世帯における普及率は、カラーテレビが98.0%、ビデオレコーダーが65.1%、パソコンが36. 1%に上っている(乙37)。しかし、生活保護受給世帯においては、家電製品を新品で購入する資金がないため、中古品で購入したり、知人や親族からもらい受けたり、長年にわたり買い替えることなく同じ物を使用し続けたりする場合が多いと認められ(1審原告番号1、38、48、60各本人)、平成22年には、地上デジタル放送への移行に際しテレビを買い替えられない生活保護受給世帯に無料チューナーが配布されたこと(甲全131〔38頁〕、163〔12頁〕)も、このことを裏付けている。そうすると、教養娯楽用耐久財の普及率の高さは、これに対する消費支出(特に新品の購入に充てられる消費支出)の高さを意味 するものではなく、生活保護受給世帯が教養娯楽用耐久財の価格変動の影響を受ける程度は、一般世帯と比べ の高さは、これに対する消費支出(特に新品の購入に充てられる消費支出)の高さを意味 するものではなく、生活保護受給世帯が教養娯楽用耐久財の価格変動の影響を受ける程度は、一般世帯と比べて著しく低いと考えられる。 テレビ等のウエイトが高いことによる物価変動率への影響他方で、平成22年を100としたときの各年の価格指数は、①教養娯楽費については平成20年の104.3から平成23年の96まで下落し、そのうち②教養娯楽用耐久財については160.3から72.5まで、更にそのうち③テレビについては205.8から69.1まで、ノートパソコンについては281.6から76まで、それぞれ大幅に下落しているが、食費は微減にとどまるなど、教養娯楽用耐久財以外の品目には、上記②、③ほど大幅に下落しているものはない(乙30)。 仮にテレビ及びノートパソコンという2品目を除外するほかは本件手法と同様に生活扶助相当CPIを算定するとすれば、平成20年は102. 28、平成23年は100.02となり、その間の変化率は-2.21%にとどまることに照らすと(甲全102)、本件手法により生活扶助相当CPIの変化率が-4.78%と算定されたのには、テレビ及びノートパソコンの大幅な価格下落が大きく寄与していることが明らかである。研究者らの計算によれば、平成20年から平成22年にかけての生活扶助相当CPIの変化率-4.29%のうち、教養娯楽用耐久財の寄与度が-2.72%、そのうちテレビの寄与度が-1.59%、ノートパソコンの寄与度が-0.56%を占めており(甲全163〔9~10頁〕、164〔3頁〕、189〔1-11~1-13頁〕、190)、このことからも、テレビ及びノートパソコンの価格下落の寄与がいかに大きいかが見て取れる。 そうすると、本件手法による生活扶 9~10頁〕、164〔3頁〕、189〔1-11~1-13頁〕、190)、このことからも、テレビ及びノートパソコンの価格下落の寄与がいかに大きいかが見て取れる。 そうすると、本件手法による生活扶助相当CPIにおいては、テレビ及びノートパソコンを含む教養娯楽費ないし教養娯楽用耐久財について、生活保護受給世帯の消費実態と乖離した過大なウエイトを殊更採用した 結果、これらの品目の大幅な価格下落が過大に反映された(いみじくも導かれた)といえる。 厚生労働大臣の判断過程に関する1審被告らの主張についてa 家計調査の精度等について1審被告らは、厚生労働大臣が生活扶助相当CPIの算定基礎となるウエイトを定めるに当たって家計調査によるウエイトを用いた理由について、家計調査においては詳細な品目別の支出額が調査の対象となっており、調査対象世帯の選定方法も含め、統計資料としての精度が高いだけでなく、家計上の支出(詳細な品目ごとの支出額)等の把握を目的とした調査であるから、総務省CPIないし生活扶助相当CPIの算定に用いられる各品目のウエイトを把握するのに最も適したデータである旨主張する。 しかし、統計資料としての精度が高いからといって、生活扶助受給世帯の消費実態と乖離したウエイトのデータを用いることに合理性があるとは認められない。 また、総務省CPIにおいては、品目ごとの価格指数と共に、これにウエイトをかけて加重平均した小分類、中分類及び大分類ごとの価格指数が算定されているから(乙28)、支出項目を構成する品目ごとの価格指数及びウエイトが分からなくても、支出項目に対応する小分類、中分類ないし大分類の価格指数を用いれば、生活扶助相当CPI及びその変化率を求めることができるのであり(甲全133。社会保障生計調査の支出項目を用い イトが分からなくても、支出項目に対応する小分類、中分類ないし大分類の価格指数を用いれば、生活扶助相当CPI及びその変化率を求めることができるのであり(甲全133。社会保障生計調査の支出項目を用いた計算例として甲全209〔資料7、8〕参照。なお、本件手法においても、小分類、中分類ないし大分類のウエイト及び価格指数が用いられている箇所がある(乙30)。)、品目ごとのウエイトを把握する必要性が高いとはいえない。 そうすると、品目ごとのウエイトを把握できることを理由に、生活 扶助受給世帯の消費実態と乖離したウエイトのデータを用いることに合理性があるとは認められない。 b 従来の改定の考え方との整合性について1審被告らは、生活扶助基準の水準は、これまでも一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方に立脚して改定が行われてきており、一般国民の消費を表す家計調査により算出された消費者物価指数のウエイトデータを用いることは、従来の改定の考え方とも整合する旨主張する。 しかし、生活保護法8条2項が、保護基準について、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであることを要求していることに照らすと、生活扶助受給世帯の消費実態と乖離したウエイトのデータを強いて用いることにより、生活扶助受給世帯を含む低所得世帯が経験したことのない物価下落を理由に、生活扶助基準を切り下げることに合理性があるとは認められない。 生活保護において保障すべき最低生活の水準が一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという、昭和58年意見具申で示された考え方(乙8)は、生活扶助基準が一般国民の消費実態との均衡上妥 いて保障すべき最低生活の水準が一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという、昭和58年意見具申で示された考え方(乙8)は、生活扶助基準が一般国民の消費実態との均衡上妥当な水準に達しているか否かの検証・調整をする上での基本的な考え方としては妥当であるが、それは要保護者ないし生活扶助受給世帯の消費実態と適合しない平均的な統計数値を一律に要保護者ないし生活扶助受給世帯に当てはまるかのように取り扱うことを正当化するものではないし、実際にもそのような正当化のために(言わば逆向きに)上記考え方は運用されてきていない。 また、デフレ調整の目的は、本来、デフレによって生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加したと評価されるため、物価変動を生 活扶助基準に反映させることにあったのであるから(引用した原判決「事実及び理由」欄の第2の3⑶ア〔原判決15頁〕)、生活保護受給世帯の消費実態と乖離したウエイトのデータを用いることは、上記目的と整合しない(前記アのとおり、本件手法において非生活扶助相当品目を除外した趣旨とも整合しない。)。 なお、1審被告らは、当審において、生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加したという説明は、生活扶助相当CPIの変動率をもって生活扶助基準の水準を改定した結果生じた状態を「可処分所得」という概念を用いて言い換えたものにすぎず、それ以上特段の意味があるものではないと主張するに至ったが、そうなると、実質的な購買力の維持ないし(従前と)同じような生活水準の維持をデフレ調整の根拠に挙げていた平成25年改定当時の厚生労働省の説明(甲全94〔24、27頁〕、185〔4頁〕、216、乙16〔30頁〕、20〔27頁〕)及び原審における1審被告らの主張と整合しないこととなるし、そもそも生活 た平成25年改定当時の厚生労働省の説明(甲全94〔24、27頁〕、185〔4頁〕、216、乙16〔30頁〕、20〔27頁〕)及び原審における1審被告らの主張と整合しないこととなるし、そもそも生活保護受給世帯の可処分所得の増加という説明自体に特段の意味がないのであれば、もはやデフレ調整を正当化する実質的根拠が失われたことを自認するに等しいというべきであって、首尾一貫しない不合理な主張というほかない。 c 社会保障生計調査の精度等について1審被告らは、生活扶助相当CPIの算定に際し社会保障生計調査によるウエイトを用いなかった理由に関し、社会保障生計調査は、調査世帯の選定において地域等による偏りが生じる可能性があることや、サンプル数が必ずしも多くないこと等を踏まえると、生活保護受給世帯全体の家計支出の状況を推測する精度に一定の限界があること、社会保障生計調査は生活保護受給世帯の詳細な支出先や支出額を把握するものではないから、調査の手法としても、個別品目の消費支出の割 合等を正確かつ詳細に記載させるための措置が講じられておらず、その調査結果を分析しても、家計調査のように詳細な品目ごとのウエイトは把握できないことを主張する。 そこで検討すると、①社会保障生計調査は、当時、全国の生活保護受給世帯を対象として全国を地域別に10ブロックに分け、各ブロックごとに都道府県・指定都市・中核市のうち1~3か所を調査対象自治体として選定し、1110世帯を抽出する方法により行われていた(甲全208、乙46、77)。一方、家計調査は、全国の世帯を対象として層化3段抽出法(第1段階で全国の市町村をその特性ごとにグループ(層)に分け、各グループから168市町村を抽出し、第2段階で各市町村から調査地区を無作為に抽出し、第3段階で各調査地区の中 象として層化3段抽出法(第1段階で全国の市町村をその特性ごとにグループ(層)に分け、各グループから168市町村を抽出し、第2段階で各市町村から調査地区を無作為に抽出し、第3段階で各調査地区の中から調査世帯を無作為に抽出する方法)により約9000世帯を抽出して行われていた(乙75、76)。 そうすると、社会保障生計調査の調査世帯数は家計調査より少ないが、生活保護受給世帯約150万世帯からの社会保障生計調査の抽出率は、日本全国の世帯約5000万世帯からの家計調査の抽出率より高いし、社会保障生計調査も、調査対象自治体の選定の上である程度地域的なバランスを考慮しているといえる(甲全133〔6頁〕)。平成22年の社会保障生計調査によるウエイトを用いて生活扶助相当CPIを試算すると、2人以上世帯では-1.83%、単身世帯では-1.27%となる一方で、家計調査による年間収入第1・五分位ウエイト及び年間収入第1・十分位ウエイトを用いて生活扶助相当CPIを試算すると、それぞれ-1.95%、-1.78%となり、本件手法による場合(-4.78%)と比べてはるかに良く近似するといえ(甲全162〔29~30頁〕)、むしろ低所得世帯の消費構造をより反映しているという点で、社会保障生計調査の精度は決して悪くない ことが見て取れる。 また、前記aのとおり、品目ごとのウエイトを把握する必要性が高いとはいえないところ、社会保障生計調査の支出項目は家計調査の品目分類と相当程度対応しており、社会保障生計調査の支出項目を家計調査の品目分類に合理的に当てはめることは可能であるから(甲全113、133〔7~9頁〕)、品目ごとのウエイトが把握できないことが、社会保障生計調査によるウエイトを参照しないことの合理的理由となるとはいえない。 小括以上によ とは可能であるから(甲全113、133〔7~9頁〕)、品目ごとのウエイトが把握できないことが、社会保障生計調査によるウエイトを参照しないことの合理的理由となるとはいえない。 小括以上によれば、物価変動率を基礎としてデフレ調整を行うこと自体について基準部会(平成25年検証)では議論されていないため、物価変動率の算定方法についての専門的知見が得られていない状況において、テレビ及びノートパソコンを含む教養娯楽費ないし教養娯楽用耐久財について、社会保障生計調査から見て取れる生活保護受給世帯の消費実態と乖離した過大なウエイトをあえて採用した結果、これらの品目の大幅な価格下落が過大に反映されるような方法をとったことは、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を著しく欠くというべきである。 ウ平成22年のウエイトを用いたことの適否についてウエイト参照時点に関する一般的手法物価指数を算定する上でどの時点のウエイトを用いるかについては、基準時点のウエイトを用いるラスパイレス指数、比較時点のウエイトを用いるパーシェ指数、ラスパイレス指数とパーシェ指数とを幾何平均したフィッシャー指数等、複数の手法が提唱されている(乙26、35)。 なお、ウエイト参照時点bの数量に基づいて次式のように加重平均をとって求めた指数をロウ指数といい(次式中の𝑝0は基準時点の品目ごと の価格、𝑝𝑡は比較時点の品目ごとの価格、𝑞𝑏はb時点の品目ごとの数量である。)、ラスパイレス指数はbを基準時点とするロウ指数、パーシェ指数はbを比較時点とするロウ指数と位置付けられる(甲全165〔4~5、756頁〕)。 ロウ指数𝑃𝐿𝑜=∑𝑝𝑡𝑞𝑏∑𝑝0𝑞𝑏 一般に、基準時点から比較時点までの間に値下がりした品目の消費シェアは拡大し、値 点とするロウ指数と位置付けられる(甲全165〔4~5、756頁〕)。 ロウ指数𝑃𝐿𝑜=∑𝑝𝑡𝑞𝑏∑𝑝0𝑞𝑏 一般に、基準時点から比較時点までの間に値下がりした品目の消費シェアは拡大し、値上がりした品目の消費シェアは縮小する傾向にあるため、ラスパイレス指数を用いた場合、値下がりして消費シェアが拡大した商品について、比較時点においても基準時点の小さいウエイトでしか消費しない一方、値上がりして消費シェアが縮小した品目について、比較時点においても基準時点の大きいウエイトで消費するという、比較時点においては非現実的で不経済な消費行動を仮想して算定する結果、真の物価変動より過大に物価上昇を評価する(過小に物価下落を評価する)という上方バイアスが働くこととなる。これに対し、パーシェ指数を用いた場合、値下がりして消費シェアが拡大した品目について、基準時点においても比較時点の大きいウエイトで消費する一方、値上がりして消費シェアが縮小した品目について、基準時点においても比較時点の小さいウエイトでしか消費しないという、基準時点においては非現実的で不経済な消費行動を仮想して算定する結果、真の物価変動より過小に物価上昇を評価する(過大に物価下落を評価する)という下方バイアスが働くこととなる。(乙26、35)また、パーシェ指数においては、価格比の調和平均(価格比の逆数(𝑝𝑡𝑝0)−1=𝑝0𝑝𝑡の相加平均の逆数)をとることになるから(甲全125〔8頁〕、165〔本文5頁〕、乙41)、値下がりした品目がある場合、そ の下落幅が価格指数の上で大きく表現されることになり(例えば、ある品目が半額に値下がりした場合、比較時点の価格指数を100として基準時点の価格指数を200という大きな値で評価し、これを基にウエイトをかけて相加平均 数の上で大きく表現されることになり(例えば、ある品目が半額に値下がりした場合、比較時点の価格指数を100として基準時点の価格指数を200という大きな値で評価し、これを基にウエイトをかけて相加平均した上で逆数をとることになり(甲全167参照)、ラスパイレス指数と同様に基準時点の価格指数を100として比較時点の価格指数50を基にウエイトをかけて相加平均した場合(甲全49の1参照)と比べ、小さい値となる。)、価格下落局面で下方バイアスが特に強く表現されることとなる(甲全125〔28~38頁〕、134〔23~25頁〕、188〔6頁〕)。 中間年のウエイトを用いることの異例性本件手法において算定された生活扶助相当CPIは、平成22年基準のウエイトを用いて平成20年及び平成23年における各品目の価格指数をそれぞれ加重平均して算出していることから、平成20年から平成22年にかけてはパーシェ指数と概ね同等、同年から平成23年にかけてはラスパイレス指数と同等であるといえ、全体としては中間年をウエイト参照時点とするロウ指数(中間年指数)と概ね同等であるといえる(乙72。なお、平成20年の時点では平成22年基準の指数品目の一部が価格の調査対象となっていなかったため、「買物かご」が一貫しておらず、正確にはパーシェ指数ないしロウ指数としては問題があるが(甲全125、134〔11頁〕、162〔26~27頁〕)、物価変動率の算定結果への影響は限定的と見られることから(乙72〔8頁〕)、ここでは捨象する。)。 しかし、本件手法のように中間年のウエイトを用いて始期及び終期の物価指数を算定して比較する方法は、政府統計において一般的に採用されているものではない。すなわち、総務省CPIにおいては、平成17年、平成22年といった5年ごとを基準時点とするラスパイレ 及び終期の物価指数を算定して比較する方法は、政府統計において一般的に採用されているものではない。すなわち、総務省CPIにおいては、平成17年、平成22年といった5年ごとを基準時点とするラスパイレス指数が 採用されているところ、基準時点をまたぐ始期から終期にかけて(本件に即していえば平成22年をまたぐ平成20年から平成23年にかけて)の物価変動を評価するためには、平成17年基準のウエイトで算定された始期(平成20年)における総務省CPIを、平成17年基準のウエイトで算定された平成22年の総務省CPIで割るという方法により、平成22年基準に換算(接続)した上で、比較することとされている(乙27〔28頁〕、28〔6~7頁〕)。また、内閣府のGDPデフレーターは連鎖方式パーシェ指数(パーシェ指数の過度な下方バイアスを防ぐため、1年ごとに指数及びウエイトを更新する方式)を、財務省の貿易価格指数はフィッシャー指数を、日本銀行のWPI商品群指数(卸売物価指数)は幾何平均指数を採用しているが、中間年のウエイトを用いた政府統計の例は見当たらない(甲全149、151、乙26〔図表2〕)。 研究者らも、中間年のウエイトを用いることや、ラスパイレス指数とパーシェ指数とを混合して用いることは通常の方法ではない旨指摘している(甲全125、134〔8~10、22~23頁〕、162〔27頁〕、164〔2頁〕、189〔1-4~1-8頁〕)。 平成22年基準のウエイトを用いたことによる物価変動率への影響総務省CPIの平成17年基準のウエイトは、別紙ウエイト対照表A欄のとおりであったのに対し(甲全49の3)、平成22年基準のウエイトは、同表B欄のとおりであった。そのうち、テレビのウエイトは、平成17年基準では38(ブラウン管及び薄型の合計)であ イト対照表A欄のとおりであったのに対し(甲全49の3)、平成22年基準のウエイトは、同表B欄のとおりであった。そのうち、テレビのウエイトは、平成17年基準では38(ブラウン管及び薄型の合計)であったのに対し、平成22年基準では97と大幅に増大しており、これがそのまま生活扶助相当CPIで用いられている。 総務省CPIが平成17年基準から平成22年基準に改定された際、テレビのウエイトが大幅に増大したことは、消費者物価指数年報(平成 23年)にも記載された、有識者の間ではよく知られた事実であった。 この時期のテレビの消費支出増大の原因は、家電エコポイント制度の開始(平成21年)や、地上デジタル放送への移行(平成23年完全移行)に備えた需要増加であると指摘されており(なお、平成22年10月には、家電エコポイント制度について同年12月以降は付与ポイント数を減少させるとの見直しが発表され、その前の駆け込み需要も発生した。)、テレビの価格下落と相まって、総務省CPIを大きく押し下げたことが内閣府の平成24年度年次経済財政報告(経済財政白書)に記述されている。(甲全163〔11頁〕、189〔1-13~2-4頁〕、191、192)このように、平成22年基準のウエイトを用いて平成20年の生活扶助相当CPIを算定した結果、同年の時点では家電エコポイント制度や地上デジタル放送への移行が始まっておらず、すなわち、テレビのウエイトが増大していなかったと考えられるにもかかわらず、同年時点においても平成22年の増大後のウエイトで消費するというおよそ非現実的で不経済な消費行動を仮想して算定することとなり、テレビの大幅な価格下落(前記イ)を更に強く反映することとなったといえる(別の観点から見れば、前記のパーシェ指数に見られる下方バイアスが、値 実的で不経済な消費行動を仮想して算定することとなり、テレビの大幅な価格下落(前記イ)を更に強く反映することとなったといえる(別の観点から見れば、前記のパーシェ指数に見られる下方バイアスが、値下がりに伴う消費シェア拡大という一般的な要因に加え、家電エコポイント制度及び地上デジタル放送への移行という特別の要因により増幅されたといえる。)。 これに対し、総務省CPIで採用されている接続方法(前記の一般的方法)によって生活扶助相当CPIを計算すると、平成20年から平成22年にかけての変化率は-1.77%、同年から平成23年にかけての変化率は-0.50%となり、平成20年から平成23年にかけての変化率は-2.26%にとどまる(甲全163〔8頁〕、164〔2 頁〕、189〔1-10頁〕)。 そうすると、本件手法は、一方で総務省CPIの価格指数を用いながら、他方で総務省CPIで採用されている接続方法によらずに、中間年である平成22年のウエイトを用いて平成20年の生活扶助相当CPIを遡って算定するという異例の方法をとったこと(前記)によって、家電エコポイント制度や地上デジタル放送への移行という特別の要因が加わり、真の物価変動に対する下方バイアスを増幅させたこととなる。 加えて、生活保護受給世帯に無料チューナーが支給された経緯等(前記イ)に照らすと、生活保護受給世帯が家電エコポイント制度や地上デジタル放送への移行に伴い直ちにテレビを買い替えられたとは考えられないから、上記下方バイアスは、生活保護受給世帯の消費実態との乖離をますます拡大するものでもある。 なお、平成22年基準のウエイトを用いて平成23年の生活扶助相当CPIを算定している部分は、ラスパイレス指数と同等であるから(前記)、一定の上方バイアスが生じる可能性 ます拡大するものでもある。 なお、平成22年基準のウエイトを用いて平成23年の生活扶助相当CPIを算定している部分は、ラスパイレス指数と同等であるから(前記)、一定の上方バイアスが生じる可能性があるものの、テレビが平成22年から平成23年にかけて値下がりしたにもかかわらず、これに対する消費支出は減少していること(甲全193)に照らすと、テレビに関しては特段の上方バイアスが生じないと考えられるし、平成22年から平成27年にかけてのラスパイレス指数とパーシェ指数はほとんど乖離していないから(甲全162〔28頁〕、164〔4頁〕)、平成22年から平成23年にかけて大きな上方バイアスが生じたとは認められない。 厚生労働大臣の判断過程に関する1審被告らの主張について1審被告らは、平成25年当時、家計調査によるウエイトのデータとしては、平成17年以前のものと平成22年のものが存在したところ、厚生労働大臣は、国民の消費の内容は経時的に変化することから、現実 の消費実態を反映した物価指数を算定するためには、物価指数の算定時点に可能な限り近接した時点の消費の構造を示すデータを用いるのが相当と考え、平成22年のウエイトを用いて各品目の価格を加重平均することにより生活扶助相当CPIを算定することとした旨主張する。 しかし、平成17年と平成20年との間隔(3年)より平成20年と平成22年との間隔(2年)の方がやや短いからといって、平成20年の消費実態を反映するために平成22年のウエイトを用いることが必ずしも適切とは限らないところ、前記のとおり、平成25年改定の時点で、家電エコポイント制度の開始(平成21年)や、地上デジタル放送への移行(平成23年完全移行)に備えたテレビの消費支出の増大が、総務省CPIを大きく押し下げるほどの効 とおり、平成25年改定の時点で、家電エコポイント制度の開始(平成21年)や、地上デジタル放送への移行(平成23年完全移行)に備えたテレビの消費支出の増大が、総務省CPIを大きく押し下げるほどの効果を持っていたことが平成24年度年次経済財政報告に記述されていたにもかかわらず、専門家の知見を求めることなく、平成22年のウエイトを用いたことは、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を全く欠いているというほかない。 小括以上によれば、平成22年には家電エコポイント制度や地上デジタル放送への移行という特別の要因によってテレビの価格が大幅に下落するとともにウエイトが増大し、総務省CPIを大きく押し下げていることが明らかであるにもかかわらず、厚生労働大臣が専門家の知見を求めることなく、総務省CPIにおいて採用されている接続方法を含む通常の方法と異なり、あえて中間年である平成22年のウエイトを用いて平成20年の生活扶助相当CPIを求めるという下方バイアスを生じさせる方法をとったことは、ここでも統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を著しく欠くというべきである。 エ物価変動率の算定期間を平成20年から平成23年までとしたことの適 否について平成20年の物価水準平成16年4月に生活扶助基準が0.2%引き下げられてから、平成25年改定までの間に、生活扶助基準の改定はされていないところ(乙10)、平成16年から平成23年までの総務省CPI(平成22年基準、全国・総合・年平均)は次表のとおりであり(乙29)、平成20年に一時的に顕著に上昇している。 平成16年100.7平成17年100.4平成18年100.7平成19年100.7平成20年 おりであり(乙29)、平成20年に一時的に顕著に上昇している。 平成16年100.7平成17年100.4平成18年100.7平成19年100.7平成20年102.1平成21年100.7平成22年100.0平成23年99.7ところが、本件手法は、物価変動率の算定期間の始期を平成20年としているため、同年の物価上昇を生活扶助基準に反映しないまま、同年の一時的な高い物価水準を基準として平成23年までの物価下落を評価していることとなる。 平成19年検証について1審被告らは、厚生労働大臣が物価変動率の算定の始期を平成20年としたのは、平成19年検証において生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態と比較して高いとの見解が示されながら、平成20年以降同検証に基づく減額改定が行われなかったという経緯の下で、デフレ調整の目的が、同年以降のデフレ傾向によって拡大した生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との不均衡を是正することにあったためである旨主 張する。 そこで検討すると、平成19年検証を行った生活扶助基準検討会は、社会保障審議会運営規則8条に基づき社会保障審議会(厚生労働省設置法7条1項に定める厚生労働大臣の諮問機関)の福祉部会内に設置された専門委員会(乙12の1)や、上記規則2条に基づき社会保障審議会に設置された基準部会(乙22)と異なり、法令上の根拠に基づかずに厚生労働省社会・援護局長の下に設置された会合であり(乙14の1)、平成19年10月19日の第1回会議から同年11月30日の第5回会議までという短期間で平成19年報告書を取りまとめたものである(引用した原判決「事情及び理由」欄の第2の3⑵イ〔原判決9頁〕)。そして、平成19年報告書には、これまで比較の対 1月30日の第5回会議までという短期間で平成19年報告書を取りまとめたものである(引用した原判決「事情及び理由」欄の第2の3⑵イ〔原判決9頁〕)。そして、平成19年報告書には、これまで比較の対象としてきた夫婦子1人世帯の第1・十分位の消費水準は、第3・五分位の7割に達しているが、単身世帯(60歳以上)については、その割合が5割(第1・五分位でみると約6割)にとどまっている点に留意する必要がある旨注記されているところ(乙5〔5頁〕)、生活扶助基準検討会の委員は、全員の連名で同年12月11日に発表した「「生活扶助基準に関する検討会報告書」が正しく読まれるために」と題する文書において、上記注記に関し、単身世帯の生活扶助基準額について検討する場合は、第1・十分位を比較基準とすることが適当であるかどうかは、その消費支出が従来よりも相対的に低くなってしまうことに留意する必要があること、仮に第1・五分位を基準に比較した場合、現在の生活扶助基準額は均衡した状態にあると評価されること、平成19年報告書に「これまでの給付水準との比較も考慮する必要がある」と記載したとおり、生活扶助基準額の引き下げについては慎重であるべきとの考えを全委員の総意により確認したことを指摘している(甲全47)。 上記事情に照らすと、平成19年検証には、もともと検討期間の短さ 等による限界があることに加え、平成19年検証を基に、生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態と比較して高いという一般論を導いた上、年齢、世帯構成及び所在地域を問わずに一律に適用される改定率を算定基礎とした点において、極めて一面的(端的にいえば恣意的)であるといわざるを得ない。 なお、基準部会による平成25年検証においても、生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態と比較して高いか否かの検証 基礎とした点において、極めて一面的(端的にいえば恣意的)であるといわざるを得ない。 なお、基準部会による平成25年検証においても、生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態と比較して高いか否かの検証は行われていない(乙6、25)。 そうすると、平成19年検証に基づく減額改定をすべきであったことを前提とする1審被告らの主張は、十分な専門的知見の裏付けを有するとはいえない。 平成20年を始期とすることの合理性について仮に、平成19年検証の結果を踏まえるとしても、平成19年検証は、平成16年の全国消費実態調査の結果に基づいて行われたものであるところ(乙5〔2頁〕)、前記のとおり、上記調査の後であり平成19年検証の発表後でもある平成20年に、顕著な物価上昇があったのであり、同年の高い物価水準を基準として物価下落を評価することの合理性については、何ら専門的知見の裏付けがない。 なお、1審被告らは、平成20年度の予算が編成された平成19年12月当時、既に原油価格の高騰(インフレ)等が見られており、生活に要する費用が上昇する事情も認められていたことから、厚生労働大臣は、平成20年度の生活扶助基準を据え置くという判断をした旨主張する。 しかし、厚生労働大臣は、平成19年検証の結果を基礎としつつ、現下の原油価格の高騰が消費に与える影響等を見極めるためとして、平成20年度の生活扶助基準を据え置くとの判断をしたものの(乙61)、総務省CPI(月次平均)が実際に顕著に上昇したのは平成20年4月 以降のことであり(弁論の全趣旨〔当審における1審原告らの令和6年10月21日付け訂正申立書17頁〕)、平成20年の物価上昇が同年の保護基準に織り込まれているとは認められない。 小括以上によれば、物価変動の算定期間の終期を平成23年とし 審原告らの令和6年10月21日付け訂正申立書17頁〕)、平成20年の物価上昇が同年の保護基準に織り込まれているとは認められない。 小括以上によれば、物価変動の算定期間の終期を平成23年としたことの適否は別として、その始期を一時的に物価水準が上昇した平成20年としたことについても、客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くというべきである。 ⑷ 1審被告らの補充主張についてア平成21年の全国消費実態調査のデータについて1審被告らは、厚生労働大臣は、平成20年以降の物価下落が同年9月のリーマンショックに端を発する百年に一度とも評される世界金融危機による実体経済への影響を反映したものであり、物価のみならず、賃金や消費等の経済指標も大きく下落している状況にあったこと、取り分け、平成21年の全国消費実態調査のデータによれば、平成19年検証において生活扶助基準額と比較すべきとされた夫婦子1人の一般低所得世帯(年間収入階級第1・十分位)の生活扶助相当支出額が、平成16年全国消費実態調査から約11.6%下落しており、生活扶助基準額を約12.6%下回るものとなっていたことなどに照らして、デフレ調整の改定率を生活扶助相当CPIの変動率-4.78%とするのが相当と判断したものであるから、厚生労働大臣の上記判断には統計等の客観的な数値等との合理的関連性が認められる旨主張する。 しかし、1審被告らは、原審の口頭弁論終結時(令和5年3月15日)までは、平成25年改定の時点では平成21年の全国消費実態調査のデータが明らかになっていなかったことを自認していたにもかかわらず(原審の1審被告ら第21準備書面〔43頁〕)、当審において、上記デ ータを考慮して平成25年改定を行ったとの主張に変更し(1審被告らの控訴理由書 ったことを自認していたにもかかわらず(原審の1審被告ら第21準備書面〔43頁〕)、当審において、上記デ ータを考慮して平成25年改定を行ったとの主張に変更し(1審被告らの控訴理由書〔25~26、82~83頁〕)、これに沿う当時の厚生労働省社会・援護局保護課職員の証人尋問調書(乙99の1)を提出するが、厚生労働大臣の判断過程に関する基本的な事実について主張を変遷させたことに合理的理由は認められず、上記データを考慮して平成25年改定を行ったとの1審被告らの主張及び上記証人尋問調書の記載は、採用することができない。 また、夫婦子1人の一般低所得世帯(年間収入階級第1・十分位)の生活扶助相当支出額が約11.6%下落しているとしても、生活保護受給世帯のうち3人世帯の割合は5%台にすぎないところ(甲全86の1、乙5〔4頁〕)、高齢夫婦世帯や高齢単身世帯といった様々な世帯類型における生活扶助相当支出額の増減は明らかでなく、年齢、世帯構成及び所在地域を問わず一律に-4.78%のデフレ調整を行ったことの妥当性が裏付けられているとはいえない。 加えて、平成21年の時点で夫婦子1人世帯の生活扶助基準額が夫婦子1人の一般低所得世帯(年間収入階級第1・十分位)の生活扶助相当支出額を約12.6%上回っていたとしても、上記差異の相当部分は、平成25年検証で指摘されたゆがみによるものである可能性が高い(平成25年検証では、夫婦子1人世帯についてゆがみを調整すると平均-8. 5%の影響を生じる一方、高齢単身世帯についてゆがみを調整すると平均+4.5%の影響を生じるとされている(乙6〔7~8頁〕)。)。そうすると、専門家の知見が得られていない状況の下で、上記差異をもって、ゆがみ調整とは別に、-4.78%もの大幅なデフレ調整を行ったことの妥当性が裏付 を生じるとされている(乙6〔7~8頁〕)。)。そうすると、専門家の知見が得られていない状況の下で、上記差異をもって、ゆがみ調整とは別に、-4.78%もの大幅なデフレ調整を行ったことの妥当性が裏付けられているとはいえない。 イ基準部会による平成29年の検証について1審被告らは、基準部会が平成28年5月から平成29年12月にかけ て行った生活扶助基準の検証(以下「平成29年検証」という。)において、平成26年の全国消費実態調査のデータによれば、本件保護基準改定後の生活扶助基準の水準が一般低所得世帯(年間収入階級第1・十分位)の消費実態とおおむね均衡することが確認されたと評価されており、この事実は、本件保護基準改定のうち生活扶助基準の「水準」の改定の妥当性を裏付ける結果であり、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断において、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がなかったことを示す旨主張する。 しかし、生活扶助基準を引き下げる改定に至る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落が認められる場合には、裁量権の逸脱又は濫用があると認められるのであり、事後的な検証によって改定後の生活扶助基準の水準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が確認されたとしても、直ちに上記過誤、欠落がなかったこととなるものではない。 この点をおくとしても、平成29年検証の報告書においては、夫婦子1人世帯の本件保護基準改定後の生活扶助基準額に対して、夫婦子1人世帯の年収階級第1・十分位の生活扶助相当支出額がおおむね均衡していることが確認されたものの、そこから展開した様々な世帯類型における生活扶助基準額と一般低所得世帯の生活水準との均衡を確認するまでには至らなかったことが留意事項として記載され、むしろ、高齢夫婦世帯及び高齢単身世帯では、第3・五分位の生活扶助相 々な世帯類型における生活扶助基準額と一般低所得世帯の生活水準との均衡を確認するまでには至らなかったことが留意事項として記載され、むしろ、高齢夫婦世帯及び高齢単身世帯では、第3・五分位の生活扶助相当支出額と比較して生活扶助基準額が50%台と低いことが指摘されており(乙68)、基準部会においても、複数の委員から、60%を下回ることに懸念が表明された(甲全214〔17~18頁〕、215〔4~6頁〕)。本件保護基準改定においてゆがみ調整の2分の1処理がされたことにより、ゆがみが残存していることも踏まえると、夫婦子1人世帯の本件保護基準改定後の生活扶助基準額について均衡が確認されたというだけでは、その他の 世帯類型における均衡が確認されたことになるものでもない。 そうすると、平成29年検証によって、年齢、世帯構成及び所在地域を問わず一律に-4.78%のデフレ調整を行ったことの妥当性が裏付けられているとはいえない。 ウ平成26年の全国消費実態調査のデータについて1審被告らは、平成26年の全国消費実態調査において、夫婦子1人の一般低所得世帯(年間収入階級第1・十分位)の生活扶助相当支出額が、平成16年に比べて約8.2%下落していたから、このこともデフレ調整の減額率が上記世帯の生活扶助相当支出額の下落率を相当程度下回るものであることを示す旨主張するが、前記ア、イと同様の理由により、採用することができない。 ⑸ まとめ以上によれば、厚生労働大臣がデフレ調整分として生活扶助基準を4.78%引き下げることとした判断の過程及び手続には、生活保護受給世帯の消費実態と乖離したウエイトを採用した点、平成22年のウエイトを採用した点及び物価変動の始期を平成20年とした点において、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整 生活保護受給世帯の消費実態と乖離したウエイトを採用した点、平成22年のウエイトを採用した点及び物価変動の始期を平成20年とした点において、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無から見て明らかな過誤、欠落があったというべきであるから、上記判断には裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり、したがって、平成25年改定は、生活保護法3条、8条2項に違反して違法である。 5 1審原告番号9に対する保護変更措置が、取消訴訟の対象となる処分に当たるかについて取消訴訟の対象となる処分(行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」)とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうと解される(最高裁昭 和30年2月24日第一小法廷判決・民集9巻2号217頁、最高裁昭和39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)。 そこで本件について見ると、韓国籍の外国人である1審原告番号9は、従前、昭和29年通知に基づく生活保護措置を受けていたが、平成25年7月3日付けで、生活扶助費の減額を内容とする保護変更措置を受けたところ(引用した原判決「事実及び理由」欄第2の4⑴イ〔原判決18頁〕)、昭和29年通知は、生活保護法1条により、外国人は同法の適用対象とならないことを前提に、当分の間、生活に困窮する外国人に対しては一般国民に対する生活保護の決定実施の取扱いに準じて必要と認める保護を行うことを定めたものであって(乙個2)、法律の委任を受けて定められたものではないし、昭和29年通知に基づく給付を生活保護法に基づく給付として位置付ける法律上の根拠もないから、上記保護変更措置 護を行うことを定めたものであって(乙個2)、法律の委任を受けて定められたものではないし、昭和29年通知に基づく給付を生活保護法に基づく給付として位置付ける法律上の根拠もないから、上記保護変更措置は、権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものではなく、取消訴訟の対象となる処分に当たらない。 これに対し、1審原告番号9は、生活保護法1条、2条にいう「国民」には、外国人が含まれると解すべきである旨主張するが、同法を始めとする現行法令上、生活保護法が一定の範囲の外国人に適用され又は準用されると解すべき根拠は見当たらないから、特別永住者の在留資格を有する者を含め、外国人が同法の適用対象となるとは解されない(最高裁平成26年7月18日第二小法廷判決・訟務月報61巻2号356頁参照)。 また、1審原告番号9は、昭和29年通知に基づく行政措置により事実上生活保護の対象となり得るかは、申請者にとって、生命に関わる重大な法律上の利益があることを指摘するが、局面の異なる処分性の問題と原告適格の問題(行政事件訴訟法9条1項)とを混同するものであって、採用できない。 なお、1審原告番号9は、生活保護変更決定取消等請求に係る京都地方裁判所平成21年12月14日判決(甲全199)が、外国人である原告について、国籍を理由に生活保護変更決定の処分性が否定されることはない旨判示し、当 該原告の請求を棄却したのに対し、上告審である最高裁平成26年10月6日第一小法廷判決(甲全200)が、処分性に言及することなく上告を棄却したことを指摘するが、上記上告審において処分性の有無が争点として争われていたとは認められず、上記最高裁判決が、昭和29年通知に基づく生活保護措置に係る保護変更措置について処分性を肯定する旨の判例であると解すること るが、上記上告審において処分性の有無が争点として争われていたとは認められず、上記最高裁判決が、昭和29年通知に基づく生活保護措置に係る保護変更措置について処分性を肯定する旨の判例であると解することはできない。1審原告番号9が引用するその他の裁判例は、いずれも事案を異にするものであって、本件に適切でない。 1審原告番号9のその他の主張を踏まえても、1審原告番号9に対する保護変更措置が、取消訴訟の対象となる処分に当たるとは認められないから、上記保護変更措置の取消しを求める訴えは、不適法である。 6 昭和29年通知に基づく金銭請求の当否及び将来請求の必要性について⑴ 将来請求の必要性について1審原告番号9の金銭請求に係る訴えのうち、当審の口頭弁論終結日の翌日以降の金員の支払を求める部分は、あらかじめその請求をする必要がある場合(民事訴訟法135条)に当たるとは認められないから、不適法である。 ⑵ 昭和29年通知に基づく金銭請求の当否について昭和29年通知は、外国人は生活保護法の適用対象とならないことを前提に、当分の間、生活に困窮する外国人に対しては一般国民に対する生活保護の決定実施の取扱いに準じて必要と認める保護を行うことを定めたものである(前記5)。そうすると、昭和29年通知に基づく生活保護措置の法的性質は贈与契約であって、上記贈与契約は、昭和29年通知の定める手続に従い、保護基準の改定等に準じて給付内容が変更され得ることを前提としたものと解される。 したがって、1審原告番号9は、平成25年7月3日付け保護変更措置によって減額された後の金額による生活扶助費の支払請求権を有するにとどまり、減額前の金額による生活扶助費の支払請求権を有するものではなく、こ のことは、保護基準に対する平成25年改定に取消しの原因となる 後の金額による生活扶助費の支払請求権を有するにとどまり、減額前の金額による生活扶助費の支払請求権を有するものではなく、こ のことは、保護基準に対する平成25年改定に取消しの原因となる違法があると判断されたとしても左右されない(なお、平成25年改定が当然に無効であるとは認められない。)。 第4 結論よって、原判決は相当であり、本件各控訴はいずれも理由がないからこれを棄却し、1審原告番号9が当審において追加した予備的請求に係る訴えのうち、当審の口頭弁論終結日の翌日以降の金員の支払を求める部分は不適法であるからこれを却下し、1審原告番号9のその余の予備的請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 なお、別紙訴訟終了者目録記載の1審原告らは、いずれも同目録記載の日(原審の口頭弁論終結後)にそれぞれ死亡したことが認められ、本件訴訟のうち同1審原告らの請求に係る部分は当然に終了したことから(これに伴い、1審被告府中町(1審原告番号1の被告)も、当事者の地位を当然に失った。)、主文においてその旨宣言することとする。 広島高等裁判所第4部裁判長裁判官河田泰常裁判官中村仁子裁判官伊藤拓也
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