【DRY-RUN】主 文 原判決及び第一審判決を破棄する。 本件を徳島地方裁判所に差し戻す。 理 由 弁護人牧野内武人、黒田寿男、田村五男の上告趣意第三点は、原判決が
主文 原判決及び第一審判決を破棄する。 本件を徳島地方裁判所に差し戻す。 理由 弁護人牧野内武人、黒田寿男、田村五男の上告趣意第三点は、原判決が憲法一四条に違反すると主張するのであるが、その趣旨は、第一審判決も原判決も、被告人が労働者農民党に所属するために、強いて有罪となるように採証及び事実の判断をしているということに帰着するのであるから、それは結局、採証法則違反乃至事実誤認の主張に帰し、刑訴四〇五条の定める上告理由にはあたらない。またその余の論旨も、すべて同条所定の上告理由を主張するものではない。 しかし、論旨第一点の三において主張するところを調査すると、第一審判決は、被告人が「取引高税印紙の実際納税額が五万円以上の人はそれに関する帳簿を全然作らずにやればよい、すると税務署ではそれを違反として挙げても帳簿を作つてないので証拠がなく五万円以上の罰金には処せられない、罰金で済ます度胸のあるものは左様にやれ、課税所得が三十万円である人は追徴及加算税が十五万円程度になるが右の手段に依ると五万円の罰金で済むから十万円助かる、現にa町の或ラムネ屋に左様な例がある」という趣旨の説話をした事実を認定しているのであつて、原判決は、右のような認定が採証法則に違反し誤認の事実であるという、控訴趣意の詳細な論旨に対し、採証法則違反、事実誤認はないとして、簡単にこれを排斥しているのである。しかしながら、取引高税法(昭和二三年九月一日施行、昭和二五年一月一日廃止)によれば、取引高税の課税標準は取引金額であり、その税率は取引金額の百分の一である。従つて年五万円以上の取引高税を納付すべき者は、年間五百万円以上の取引があるものでなければならないから、第一審の判示するような意味において、被告人が脱税を煽動する対象と は取引金額の百分の一である。従つて年五万円以上の取引高税を納付すべき者は、年間五百万円以上の取引があるものでなければならないから、第一審の判示するような意味において、被告人が脱税を煽動する対象とは考えられない。さらに、課税所得が- 1 -三十万円の人は追徴加算税が十五万円程度になるというのも、取引高税の話とするとまつたく意味をなさない。なぜなら取引金額が三十万円であれば、取引高税は三千円にすぎず、追徴税及び加算税が合せて十五万円ほどになるということはありえないからである。そうして、いやしくも取引高税を納める立場にあり、その税率くらいは心得ているはずの人々に対し、右のような全然桁ちがいの話をして脱税を煽動するというようなことは、普通には到底考えられないこどである。第一審判決の援用する証人Aに対する裁判官の尋問調書中には、被告人が右のような話をしたという供述が記載されているけれども、記録にあらわれている他の証拠を精査検討すると、右の証言はその場における色々な話(所得税の大口脱税者の非難など)の断片を不当につなぎ合せたものと見られるのであつて、同人も第一審公判廷では証人として右のような供述をしていないのであり、実際には被告人がそのような趣旨の話をしたものとは認められない。要するに第一審判決の前記事実認定は明らかに実験則に背き、事実に即しないものと認められるのであつて、この認定を支持した原審の判断には重大な事実の誤認があるものといわざるをえない。そうして右の事実誤認はもとより判決に影響を及ぼし且つ著しく正義に反するものと認むべきであるから、刑訴四一一条三号を適用して原判決を破棄すべきものと認められる。 よつて刑訴四一三条本文に従い、裁判官全員一致の意見により主文のとおり判決する。 検察官浜田龍信関与昭和二六年九月一四日 一一条三号を適用して原判決を破棄すべきものと認められる。 よつて刑訴四一三条本文に従い、裁判官全員一致の意見により主文のとおり判決する。 検察官浜田龍信関与昭和二六年九月一四日最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官霜山精一裁判官栗山茂裁判官小谷勝重- 2 -裁判官藤田八郎- 3 -
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