平成12(行コ)332 固定資産評価審査決定取消請求控訴事件(原審 東京地方裁判所平成8年(行ウ)第203号)

裁判年月日・裁判所
平成13年8月27日 東京高等裁判所 租税
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判決文本文12,835 文字)

主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 3 原判決主文第一項を次のとおり,また,同第二項中「二」とあるのを「三」とそれぞれ更正する。 「一控訴人が被控訴人に対し平成8年6月19日付けでした別紙目録1記載の土地に係る平成6年度固定資産課税台帳の登録価格についての審査の申出に対する決定のうち,上記土地の価格が11億3908万6080円を超える部分の審査の申出を棄却した部分を取り消す。 二被控訴人のその余の請求を棄却する。」 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人の控訴の趣旨(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人の請求を棄却する。 2 被控訴人の請求の趣旨(1) 主位的請求控訴人が被控訴人に対し平成8年6月19日付けでした別紙目録1記載の土地(以下「本件土地」という。)に係る平成6年度固定資産課税台帳の登録価格についての審査の申出に対する決定を取り消す。 (2) 予備的請求控訴人が被控訴人に対し平成8年6月19日付けでした別紙目録1記載の土地に係る平成6年度固定資産課税台帳の登録価格についての審査の申出に対する決定のうち,上記土地の価格が3億3784万2570円を超える部分の審査の申出を棄却した部分を取り消す。 (なお,被控訴人は,当審において,上記(1)及び(2)の各請求の関係を上記のとおり訂正したものである。)第2 事案の概要 1 原判決の記載の引用本件における事案の概要,前提となる事実,本件決定の根拠,当事者双方の主張及び争点は,次項以下に当事者双方の当審における主張を補足するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第二事案の概要」の項の記載のとおりであるから,この記載を引用する。なお,以下では,地方税法を「法」と略称する。 すなわち,東京都知事は,別紙目録 を補足するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第二事案の概要」の項の記載のとおりであるから,この記載を引用する。なお,以下では,地方税法を「法」と略称する。 すなわち,東京都知事は,別紙目録1記載の本件土地の平成6年度の固定資産の価格を別紙目録3記載のとおりに決定し,東京都渋谷都税事務所長は,この価格を固定資産課税台帳に登録した(以下,この登録価格を「本件登録価格」という。)。本件土地の所有者であって,本件土地の固定資産税の納税義務者である被控訴人は,本件登録価格が高額すぎるとして,平成6年4月18日,控訴人に対し審査の申出をしたが,控訴人は,平成8年6月19日,この審査の申出を棄却する旨の本件決定をした。そこで,本件決定を不服として,被控訴人が,控訴人に対し,本件決定の取消しを求めているのが本件である。 (1) 被控訴人が本件決定の違法事由として主張する主要なものは,次のとおりである。 ア本件登録価格は,賦課期日である平成6年1月1日時点の本件土地の価格でなければならないが(法349条1項),実際は,上記の時点より時価が高額であった平成5年1月1日時点の本件土地の価格を登録価格としているのであるから,本件決定は上記条項に違反している。 イ土地の課税標準については,税負担が重くならないよう時価の一定の割合をもって課税標準とすることとされ,この割合が15%とされていた。ところが,都は,平成6年度の土地の課税標準の評価替えに際して,7割評価通達(平成4年1月22日自治固第3号)に基づき,土地の課税標準を時価の70%に引き上げた。 このような大幅な評価割合の引上げを通達で行うことは,租税法律主義に違反する違法なものであり,また,上記通達にいう70%という数値自体も,その根拠に欠ける不合理なものである。 ウ固定資産税は,土地の使用によ 大幅な評価割合の引上げを通達で行うことは,租税法律主義に違反する違法なものであり,また,上記通達にいう70%という数値自体も,その根拠に欠ける不合理なものである。 ウ固定資産税は,土地の使用により取得し得る収益に担税力を認めているものである。したがって,仮に時価の70%の評価が許されるとしても,地価公示価格や不動産鑑定士による土地の鑑定評価額が土地の最有効利用を前提としているのに対し,固定資産税の評価が上記のとおり土地の通常の使用(収益価格)を前提としていることから生ずる相違を考慮すれば,上記の70%評価は固定資産税における土地評価の上限を示していることとなり,時価の70%を上回る評価は違法となる。 エ自治大臣告示で定めている固定資産の評価基準(昭和38年12月25日自治省告示第158号)及びこの評価基準の取扱いについて定めた取扱通達(昭和38年12月25日自治乙固発第30号)は,いずれも法的拘束力を持たないところ,その内容も大量の宅地を短期間で評価するための大雑把な基準であるにすぎず,内容の不備もあり,また,これらに基づく不動産鑑定士の評価にも開きがあることからすると,時価の70%とする7割評価通達が定める評価を上回る評価は違法というべきである。 オ本件土地の評価に係る標準宅地の選定,商況に係る格差率の認定,三角地であることによる補正率の認定には誤りがあり,その結果,本件評価額が「適正な時価」を超えるに至っている。 (2) これに対し,控訴人は,被控訴人の上記主張を争うとともに,次のように主張している。 ア土地の固定資産税の課税標準は賦課期日における価格と定められているが,実際には,評価事務に一定の時間を要することからして,法は,賦課期日から一定の期間(評価作業に要する合理的な期間)をさかのぼった過去の時点に価格調査の基準日を 課期日における価格と定められているが,実際には,評価事務に一定の時間を要することからして,法は,賦課期日から一定の期間(評価作業に要する合理的な期間)をさかのぼった過去の時点に価格調査の基準日を定め,この時点の価格を賦課期日における価格とみなすことを許容しているものというべきである。本件においては,評価作業に要する合理的な期間内である平成5年1月1日にこの価格調査基準日が設けられているのであるから,平成5年1月1日の本件土地の価格を平成6年度の登録価格としたことは適法である。仮に,本件評価額が本件賦課期日である平成6年1月1日時点の本件土地の価格でなければならないとしても,実際には,価格調査基準日の時価の70%を評価額としており,また,時価はその性質上ある程度の幅を持つ価格といえるため,これが違法な価格となることはない。 イ 7割評価通達により,本件土地の登録価格が引き上げられたとしても,これは,むしろ,土地の固定資産評価額を「適正な時価」とする旨を規定している法341条5号の趣旨に適合するものである。したがって,7割評価通達の内容が法令の正しい解釈に合致する以上,これに沿った本件登録価格の決定も法令の根拠に基づいた適法なものということとなる。したがって,評価基準,7割評価通達等に従って決定された本件土地の価格は適法なものである。 ウ本件土地の評価に係る標準宅地の選定,商況に係る格差率の認定,三角地であることによる補正率の認定は,評価基準に従って適正にされており,本件評価額が「適正な時価」を超えることはない。2 控訴人の当審における補足主張(1) 固定資産課税台帳に登録する価格と賦課期日における当該土地の価格とは,登録価格と課税標準が乖離している現行法のもとでは,一致しなければならないものでない。 (2) 法349条1項は,課税標準 (1) 固定資産課税台帳に登録する価格と賦課期日における当該土地の価格とは,登録価格と課税標準が乖離している現行法のもとでは,一致しなければならないものでない。 (2) 法349条1項は,課税標準を「基準年度に係る賦課期日における価格で土地課税台帳等に登録されたもの」と規定している。これは,各市町村長に土地課税台帳に価格を登録するに当たり種々の手続を履践するよう求めていることから,課税標準を,単に賦課期日における価格ではなく,賦課期日に土地課税台帳に登録された価格,すなわち,法の要求する種々の手続を履践した上で賦課期日に課税台帳に登録することができる価格としているのである。したがって,登録価格の算定基準日は,賦課期日とする必要はなく,賦課期日から評価事務に要する一定期間をさかのぼった過去の時点とすることが許容されているのである。 そうすると,平成6基準年度の評価替えにおける価格算定基準日を平成4年7月1日(なお,平成4年7月1日から同5年1月1日までの時点修正がされているため,実際は同5年1月1日となる。)としたことは,法が容認しているものであるから,本件登録価格は適法である。 (3) 仮に,本件土地の評価額が平成6年1月1日時点の「適正な時価」を超えないことを要するとしても,本件土地の評価額は,平成6年1月1日時点の「適正な時価」を超えていないのである。すなわち,本件土地の評価額は,平成5年1月1日時点の本件土地の「適正な時価」より30%減額した価格としているが,本件土地の半径500m以内の地価公示地5地点(いずれも商業地)及び東京都基準地3地点(いずれも商業地)並びに本件土地の半径1㎞以内の地価公示地9地点(いずれも商業地)及び東京都基準地8地点(いずれも商業地)の価格の下落率の平均をみても,平成5年1月1日から平成6年1月1日 3地点(いずれも商業地)並びに本件土地の半径1㎞以内の地価公示地9地点(いずれも商業地)及び東京都基準地8地点(いずれも商業地)の価格の下落率の平均をみても,平成5年1月1日から平成6年1月1日までの時価下落率は,マイナス31.1%にとどまる。この時価下落率は30%をやや超えるものの,「適正な価格」とは,固定的なものではなく,ある幅を持った価格帯に存する価格を指すというべきであるから,上記地価公示地等の価格の平均下落率を1.1ポイント超えるにすぎない本件評価額は,平成6年1月工日時点の「適正な時価」の範囲内にあるというべきである。 (4) なお,本件登録価格が違法であるとしても,本件決定の全部が取り消されるべきではなく,「適正な時価」を超える部分のみが取り消されるべきである。すなわち,本件訴訟は,本件価格決定に係る登録価格の適否を判断するものであるから,「適正な時価」を超える部分のみを取り消す一部取消判決をすれば,取消判決の拘束力(行政事件訴訟法33条1項)により,関係行政庁である市町村長は判決の判断内容を尊重した決定をすることが義務づけられるのであり,この新たな決定が,取り消されなかった決定の残部と論理的に矛盾することもなく,実際上も紛争の永続化を防いで妥当な結果をもたらすのである。むしろ,全部の取消しがされると,是正すべき評定方法が一義的に明らかとならず,場合によっては,紛争の抜本的解決を図ることができなくなる危険性がある。 3 被控訴人の当審における補足主張固定資産課税台帳に登録される価格は「適正な時価」でなければならず,これは固定資産の客観的交換価値ではなく,収益価格と解すべきであるが,仮にこれが客観的交換価値であると解したとしても,その評価は,7割評価通達で定めた評価限度,すなわち,評価基準によって評価した賦課期日の価 定資産の客観的交換価値ではなく,収益価格と解すべきであるが,仮にこれが客観的交換価値であると解したとしても,その評価は,7割評価通達で定めた評価限度,すなわち,評価基準によって評価した賦課期日の価格の70%を上限とするものでなければならない。 すなわち,評価基準は,各筆の土地を個別評価するものではなく,諸制約の下において大量の土地について可及的に適正な時価を評価する技術的方法を規定するものであり,標準宅地の客観的時価に価格形成要因の主要なものに関する補正等を加えて,対象土地の価格を比準評定するものである。ところが,評価基準及びこれに基づく東京都の取扱要領は,日影規制に基づく建物の高さ制限などの実効容積率に対応して評価する基準を設けておらず,建築基準法42条2項に基づいてセットバックをするため建物の建築ができない部分が生ずる宅地についてこの評価減を行う基準を設けていないなど,当該土地の「適正な時価」を算出する基準としては不十分かつ大雑把な欠陥基準である。したがって,この基準によって10割の評価をした場合は,その評価額が賦課期日の適正な時価を超える可能性が高い。したがって,7割評価通達による評価を行うにしても,評価額の70%を上限とするものでなければならないのである。 第3 当裁判所の判断 1 原判決の説示の引用当裁判所も,本件土地に係る平成6年度固定資産課税台帳の登録価格についての審査の申出に対する本件決定のうち,上記土地の価格が11億3908万6080円を超える部分の審査の申出を棄却した部分は違法であると判断する。 その理由は、次項に当裁判所の判断を補足するほかは、原判決がその「事実及び理由」欄の「第三争点に対する判断」の項で説示するとおりであるから、この理由説示を引用する。 2 当裁判所の判断の補足(1)固定資産税の課税標準と 所の判断を補足するほかは、原判決がその「事実及び理由」欄の「第三争点に対する判断」の項で説示するとおりであるから、この理由説示を引用する。 2 当裁判所の判断の補足(1)固定資産税の課税標準となる土地価格の評価等についてア法349条1項は,「基準年度に係る賦課期日に所在する土地に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準は,当該土地の基準年度に係る賦課期日における価格で土地課税台帳又は土地補充課税台帳に登録されたものとする。」と規定し,この「個定資産税の賦課期日」は、当該年度の初日の属する年の1月1日とすると定め(法359条),この「価格」は,「適正な時価」と定めている(法341条5号)。また,固定資産税が,固定資産の所有者に対して,その所有という事実に担税力を認めて課税する財産税であることからすれば,この「適正な時価」とは,正常な条件の下に成立する当該土地の売買価格,すなわち客観的な交換価値(客観的時価)をいうものと解される。そうすると,土地課税台帳に登録すべき当該土地の適正な登録価格とは,当該基準年度の1月1日における当該土地の客観的時価,本件についていえば,平成6年1月1日における本件土地の客観的時価ということとなる。 これに対し,控訴人は,登録価格と課税標準が乖離している現行法のもとでは,登録価格と賦課期日における価格が一致しなければならないものではないと主張する。なるほど,法附則に特例として定められている課税標準の調整措置及び税額の負担調整措置などにより,土地課税台帳等に登録された価格に所定の税率を適用して税額を算出するという関係には一定の変更が加えられていることが認められるが,このような特例による暫定的な措置が定められているからといって,これにより登録価格が賦課期日における価格であるとの原則が変更されたと解すること う関係には一定の変更が加えられていることが認められるが,このような特例による暫定的な措置が定められているからといって,これにより登録価格が賦課期日における価格であるとの原則が変更されたと解することはできないから,控訴人の上記主張は採用することができない。 また,被控訴人は,固定資産税は土地の使用により取得し得る収益に担税力を認めているものであると主張する。しかし,かつての地租・家屋税とは異なり,固定資産税は,土地,家屋等の資産価値に着目し,これを所有すること自体に担税力を認めて課する一種の財産税であるから(最高裁判所第二小法廷昭和59年12月7日判決・民集38巻12号1287頁参照),上記の「適正な時価」とは,その通常の用法どおり,正常な条件下に成立するその時点の取引価格をいうものと解するのが相当である。したがって,被控訴人の上記主張も採用することができない。 イところで,法は,土地に関する固定資産の価格決定について,全国の土地を各市町村が同一の基準で評価し,さらに,都道府県間及び各都道府県内の市町村間の評価の均衡を図るためにそれぞれ所定の調整を行うこととする一方(法418条,419条1項,422条の2第1項),市町村長の価格決定を賦課期日の約2か月後に当たる基準年度の2月末日までに行うべきものとしている(法410条)。 そうすると,大量に存在する課税対象についてそれぞれ適正な時価を算定する事務手続の量を考慮すると,約2か月間のうちにこの評価事務のすべてを行うことは困難であるものといわざるを得ない。したがって,法は,賦課期日から一定の期間(評価作業に要する合理的な期間)をさかのぼった過去の時点を価格調査の基準日と定め,この時点の価格を一つの資料として,賦課期日における価格を算定することまで禁止するものではないと解すべきである。したがっ 価作業に要する合理的な期間)をさかのぼった過去の時点を価格調査の基準日と定め,この時点の価格を一つの資料として,賦課期日における価格を算定することまで禁止するものではないと解すべきである。したがって,平成6年度の固定資産の価格評定事務について,価格調査の基準日を平成4年7月1日とし,平成5年1月1日時点における地価の動向をも勘案して地価変動に伴う修正を行うものとした手続自体には,違法な点はないものというべきである。 これに対し,控訴人は,上記の手続の負担を理由として,法は,登録価格の算定基準日を賦課期日から評価事務に要する一定期間をさかのぼった過去の時点にすることまでも許容していると主張する。しかし,法が「適正な時価」の算定基準日を賦課期日である当該年度の初日の属する年の1月1日と定めている以上,「適正な時価」の算定基準日を実質的に価格調査基準日等の他の期日に変更したり,賦課期日以外の期日における価格を賦課期日における価格とみなすことまでを法が許容しているものと解することはできない。したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 ウ上記のとおり,土地に関する固定資産の価格決定については,価格調査基準日を設けて,その価格に基づいて賦課期日における評価を行うことが許されるが,この価格調査基準日の価格自体は賦課期日における客観的時価の一資料であるにすぎず,また,自治大臣が定める評価方法である評価基準による評価も,大量処理のための方法であって,その評価額と客観的時価との間に誤差が生じることも考えられ,さらに,将来の地価の変動を予想することの困難さからすれば,少なくとも,評価額が客観的時価を超えるという事態を生じさせないようにするために,「適正な時価」をあらかじめ控えめに評定することは,課税処分の謙抑性の観点からしても許されるものと 困難さからすれば,少なくとも,評価額が客観的時価を超えるという事態を生じさせないようにするために,「適正な時価」をあらかじめ控えめに評定することは,課税処分の謙抑性の観点からしても許されるものというべきである。したがって,宅地の評価に当たっては,地価公示価格等から求められた価格の70%程度をその適正な時価として扱うとする7割通達の内容は,その本来の趣旨が土地基本法16条の趣旨を踏まえて地価公示価格等の公的土地評価の均衡化,適正化を目指すものであって,賦課期日までの時点修正を直接の目的とするものではないものの,これが法の禁ずるものということはできないのであり,この7割評価通達に従った評価にも違法性がないものというべきである。 これに対し,被控訴人は,7割評価通達の内容及びこれが通達という手続でされたことが違法であると主張する。しかし,たとえ,土地の登録価格が時価の15%程度でされるという行政実務がある程度の期間行われ,納税者の間にこれへの信頼が存在していたとしても,そのような行政措置により,法が定める「適正な時価」という概念そのものが実質的に変更されたり,上記行政実務が法的な規範性を獲得したということはできない。むしろ,7割評価通達の実施は,法の趣旨に反するそれ以前の行政実務を法の定めに合致する方向に是正変更するための行政上の措置であって,何ら新たな立法をするものではないというべきである。したがって,被控訴人の上記主張は採用することができない。 エ以上述べたところによれば,地価が下落した結果,7割評価という修正を加えられた価格をもってしても,評価価格が賦課期日における客観的時価を超える事態となった場合には,この超過部分は違法なものというほかない。 これに対し,被控訴人は,7割評価通達による時価の70%の評価は,固定資産税における土 ,評価価格が賦課期日における客観的時価を超える事態となった場合には,この超過部分は違法なものというほかない。 これに対し,被控訴人は,7割評価通達による時価の70%の評価は,固定資産税における土地評価の上限となり,これを上回る評価は違法であると主張する。しかし,7割評価通達の実施は,法の趣旨と乖離していた従前の行政実務を法の定めに合致する方向に是正変更するための行政上の措置というべきであるから,法の規定を実質的に変更するものでも,法と同価値の規範性を獲得するものでもあり得ないのであるから,上記通達により時価の70%という評価の上限が法的な規範として設定されたものとみることはできない。したがって,被控訴人の上記主張は,その余の点について判断するまでもなく採用することができない。 もっとも,7割評価通達により評価時の時価の70%をもって土地の評価をした場合でも,平成5年1月1日から平成6年1月1日までの地価の下落率は地域によって異なるので,当該土地の賦課期日における時価に対する評価価格の割合は地域ごとに異なることとなるが,これは賦課期日からさかのぼった時点を基準とする評価を行う以上必然的に生ずる結果であるから,これも法が容認するものといわざるを得ない。 (2) 本件土地の評価額についてア固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続についての基本的な事項を定めた評価基準,取扱要領(東京都固定資産(土地)評価事務取扱要領)及び比準表(東京都土地価格比準表)は,本件土地を評価する基準及び方法として合理性を有し,また,これらを本件土地の評価に適用して,市街地宅地評価法により評価を行うこととした上で,本件土地の状況類似地区内から本件標準宅地を選定したこと,本件土地について採用した奥行価格補正率,不整形地の補正率がいずれも合理性を有するこ 用して,市街地宅地評価法により評価を行うこととした上で,本件土地の状況類似地区内から本件標準宅地を選定したこと,本件土地について採用した奥行価格補正率,不整形地の補正率がいずれも合理性を有することは,前記引用に係る原判決の説示にあるとおりである。 イしかし,本件土地周辺の時価は価格調査の基準日となる平成5年1月1日から本件賦課期日である平成6年1月1日までの間に下落しているのであるから,賦課期日である平成6年1月1日における本件土地の客観的時価を評価するためには,上記の価格調査の基準日から賦課期日までの時価下落率を算出し,これによる時点修正を行うことが相当である。そうすると,本件標準宅地の価格を鑑定するに当たり基準とされたα5-12(渋谷区β213番)の地価公示価格は,本件標準宅地(渋谷区β35番3)及び本件土地(渋谷区β118番2)に近接かつ類似した場所にあることからして,本件標準宅地の上記期間の地価下落率をほぼ正確に反映しているものと推認されるところ,α5-12の公示価格は,上記期間において,2270万円から1500万円まで33.9%下落していることが認められる(乙5,32の1ないし3)。したがって,本件標準宅地は,上記期間内に33.9%の割合の地価の下落があったものと推認するのが相当である。 これに対し,控訴人は,本件土地の半径500m以内の地価公示地5地点(いずれも商業地)及び東京都基準地3地点(いずれも商業地)並びに本件土地の半径1㎞以内の地価公示地9地点(いずれも商業地)及び東京都基準地8地点(いずれも商業地)の価格の下落率の平均を見るべきであると主張する。しかし,α5-12は,本件土地と同じくJRα駅近隣の高度商業地区内の東急本店通りに面し,しかも,本件土地及び標準宅地に近接した位置にあるのに対し,控訴人の主張する多数 均を見るべきであると主張する。しかし,α5-12は,本件土地と同じくJRα駅近隣の高度商業地区内の東急本店通りに面し,しかも,本件土地及び標準宅地に近接した位置にあるのに対し,控訴人の主張する多数の地点は,本件土地及び標準宅地と距離が離れていたり,街路条件等が異なるなどその類似性が劣るものというべきであるから(乙32の1ないし3,乙33の1ないし3),これが本件標準宅地の価格変動を反映する程度はα5-12に比較して小さいといわざるを得ない。そうすると,他に適切な資料のない本件においては,α5-12の公示価格の変動に従って本件標準宅地の客観的時価の時点修正をするのが最も合理的というべきである。したがって,控訴人の上記主張は採用できない。 また,控訴人は,「適正な価格」とは個定的なものではなく,ある幅を持った価格帯に存する価格を指すと主張する。しかし,法341条5号の「適正な価格」とは,合理的な鑑定・評価によって算定された結果である一義的な価格を指すものと解すべきであって,固定資産の評価価格がこれを上回っているにもかかわらず,価格帯に幅があることを理由としてこれを是認することはできない。したがって,控訴人のこの点の主張も採用することができない。 ウ平成6年1月1日における本件標準宅地の路線価は,上記の時点修正を経た結果1920万点と算出され,これに格差率93%を乗じて本件土地に沿接する正面路線の路線価を1780万点とし(有効数字上位3桁),さらに,これに奥行価格補正率0.98,不整形地補正率0.90の補正処理を行い,本件土地の単位地積当たりの評点を1566万4000点とし,これに本件土地の地積72.72㎡を乗じて総評点を11億3908万6080点とし,これに1点当たりの価格1円を乗じると,本件土地の評価額が11億3908万6080円と 評点を1566万4000点とし,これに本件土地の地積72.72㎡を乗じて総評点を11億3908万6080点とし,これに1点当たりの価格1円を乗じると,本件土地の評価額が11億3908万6080円と算出されることは,前記引用に係る原判決の説示にあるとおりである。 (3) まとめ以上のように,本件土地の平成6年1月1日時点の固定資産税の課税標準となるべき価格は11億3908万6080円とするのが相当であるから,本件土地の登録価格12億0307万9680円のうち上記価格を超える部分は違法であり,被控訴人の本訴請求は,本件決定のうち上記価格を超える部分の取消しを求める限度で理由があり,その余は失当として棄却すべきこととなる。 3 原判決主文第1項等の更正原審も,本件決定は,本件土地価格を11億3908万6080円を上回る12億0307万9680円と認定した点において違法であると判断したが,そのよう場合でも,固定資産評価委員会のした決定の一部のみの取消しは許されないとして,本件決定の全部を取り消した。 確かに,法は,審査委員会が審査決定をした場合における登録価格等の修正手続を規定しているが(法435条),確定判決があった場合の登録価格等の修正手続を規定していないので,裁判所としては,審査委員会の審査決定の一部に違法がある場合でも,常に審査決定の全部を取り消して,審査委員会に判決の判断に従った審査決定を改めて行わせ,この審査決定により,市町村長に上記の登録価格等の修正手続による登録価格等の修正をさせるという見解も成り立ち得る。 しかし,本件訴訟においては,本件決定が認定し登録価格の適否を判断するのであるから,適正な時価を超える認定部分を特定して,これのみを取り消すことも可能であり,また,このような一部取消判決がされたとしても,取消判決の拘束 いては,本件決定が認定し登録価格の適否を判断するのであるから,適正な時価を超える認定部分を特定して,これのみを取り消すことも可能であり,また,このような一部取消判決がされたとしても,取消判決の拘束力を規定した行政事件訴訟法33条1項によって,市町村長は審査決定の場合と同様の措置を義務付けられるものと解されるのであるから,審査委員会の審査決定を介在させる必要はなく,介在させないことによって特に不都合が生ずるとも考えられないというべきであり,むしろ,一部取消判決をすることで紛争が早期に解決することにもなるのである。したがって,違法の理由が審査手続の違法である場合や内容の違法であっても例外的に審査委員会に審査のやり直しを求めるのが相当である場合を除いては,審査決定のうちの違法な部分のみを取り消せば足りるものというべきである。 そうすると,本件決定については,平成6年1月1日時点における適正な時価を超える価格を認定した点のみが違法とされるのであるから,審査委員会に審査のやり直しを求める理由もないのであって,この適正な時価を超える部分のみを取り消せば足りるのである。 また,訴訟当事者が審査決定のうち適正な価格と主張する価格を超える部分の取消しのみを求めた場合でも,これは勝訴判決の上限としての価格の取消しを求める範囲を画する訴訟行為として有効なものと解されるのであるから(最高裁判所第一小法廷昭和62年5月28日判決・訟務月報34巻1号157頁参照),上記の解釈は,審査決定取消訴訟における審判の対象である訴訟物は当該審査決定の違法性一般であるとする行政訴訟における訴訟物理論と食い違うこともないのである。 そうすると,原判決が本件決定の全部を取り消したことは,明白な誤りというべきであるから,原判決主文第一項等を主文第3項のとおり更正することとする 訴訟における訴訟物理論と食い違うこともないのである。 そうすると,原判決が本件決定の全部を取り消したことは,明白な誤りというべきであるから,原判決主文第一項等を主文第3項のとおり更正することとする。 第4 結論以上の次第で,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,また,原判決主文第一項等を更正し,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第15民事部裁判長裁判官近藤崇晴裁判官宇田川基裁判官加藤年男目録 1 東京都渋谷区β118番の2 宅地 72.72㎡ 2 平成5年度登録価格 3億3784万2570円 3 平成6年度登録価格 12億0307万9680円目録 1 東京都渋谷区β118番の2 宅地 72.72㎡ 2 平成5年度登録価格 3億3784万2570円 3 平成6年度登録価格 12億0307万9680円

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