- 1 -令和4年(行ツ)第78号、令和4年(行ヒ)第79号選挙無効等請求事件令和4年10月31日第二小法廷判決 主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告人の上告理由及び上告受理申立て理由について 1 本件は、東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和44年東京都条例第55号。以下「本件条例」という。)に基づいて令和3年7月4日に行われた東京都議会議員一般選挙(以下「本件選挙」という。)について、江東区選挙区の選挙人である上告人が、本件選挙当時、本件条例のうち、①大島町、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、八丈町、青ヶ島村及び小笠原村の区域(以下「島しょ部」という。)を合わせて1選挙区(島部選挙区)とする規定(2条3項。以下「本件島部選挙区規定」という。)が公職選挙法271条、憲法14条1項等に違反するとともに、②各選挙区において選挙する議員の数を定める規定(3条。以下「本件定数配分規定」という。)が公職選挙法15条8項、憲法14条1項等に違反すると主張して、これらに基づき行われた本件選挙の江東区選挙区における選挙を無効とすること等を求める事案である。 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。 都道府県議会の議員の定数については、地方自治法において、条例で定めるものとされている(90条1項)。 そして、都道府県議会の議員の選挙区については、公職選挙法において、一の市の区域、一の市の区域と隣接する町村の区域を合わせた区域又は隣接する町村の区域を合わせた区域のいずれかによることを基本とし、条例で定めるものとされ(15条1項)、 いては、公職選挙法において、一の市の区域、一の市の区域と隣接する町村の区域を合わせた区域又は隣接する町村の区域を合わせた区域のいずれかによることを基本とし、条例で定めるものとされ(15条1項)、選挙区は、その人口が当該都道府県の人口を当該都道府県議会の議員- 2 -の定数をもって除して得た数(以下「議員1人当たりの人口」といい、当該選挙区の人口を議員1人当たりの人口で除して得た数を「配当基数」という。)の半数以上になるようにしなければならないが(同条2項前段)、昭和41年1月1日当時において設けられていた選挙区については、当該区域の人口が議員1人当たりの人口の半数に達しなくなった場合においても、当分の間、当該区域をもって1選挙区を設けることができるものとされている(271条。以下、この規定によって存置が認められた選挙区を「特例選挙区」という。)。なお、特別区については、市に関する規定が適用される(同法266条1項)。 上記各規定等により定められた各選挙区において選挙すべき議員の数については、公職選挙法において、人口に比例して、条例で定めなければならないが(15条8項本文)、特別の事情があるときは、おおむね人口を基準とし、地域間の均衡を考慮して定めることができるものとされている(同項ただし書)。 ア本件選挙当時、本件条例の定める選挙区及び各選挙区における議員の数は、原判決別紙1「都議会議員選挙区別議員1人当たりの人口及び較差」の「選挙区」欄及び「条例定数」欄記載のとおりであり、島部選挙区を含む42選挙区に127人の定数が配分されている。 イ島部選挙区は、昭和44年の本件条例の制定当時から、特例選挙区として存置されていたところ、東京都議会に設置された都議会のあり方検討会は、平成24年6月19日、東京都議会に対し、島部選挙 る。 イ島部選挙区は、昭和44年の本件条例の制定当時から、特例選挙区として存置されていたところ、東京都議会に設置された都議会のあり方検討会は、平成24年6月19日、東京都議会に対し、島部選挙区について、その地理的特殊性等を考慮して特例選挙区とされてきたもので、これを見直す状況には至っていないことから引き続き特例選挙区として存置すべきであるとの検討結果を報告した。 ウ本件条例については、令和2年東京都条例第80号により、2選挙区の定数を1増1減する改正がされた(以下「令和2年条例改正」という。)。なお、島部選挙区の配当基数は、令和2年条例改正当時、0.249(以下、配当基数に関する数値は概算である。)であったが、令和2年条例改正において、島部選挙区に関する改正はされていない。 - 3 - 前記2の各規定に照らせば、特例選挙区の設置を適法なものとして是認し得るか否かは、その設置についての都道府県議会の判断が、当該都道府県の行政施策の遂行上当該地域からの代表を確保する必要性の有無・程度、隣接する他の市町村の区域との合区の困難性の有無・程度等に照らし、当該都道府県全体の調和ある発展を図るなどの観点からする裁量権の合理的な行使として是認されるかどうかによって決すべきものである(最高裁平成4年(行ツ)第172号同5年10月22日第二小法廷判決・民集47巻8号5147頁等参照)。 前記事実関係等によれば、島部選挙区は、本件条例制定当時から特例選挙区として存置されているが、これは、島しょ部は、離島として、その自然環境や社会、経済の状況が東京都の他の地域と大きく異なり、特有の行政需要を有することから、東京都の行政施策の遂行上、島しょ部から選出される代表を確保する必要性が高いものと認められる一方、その地理的状況から、他の市町村 状況が東京都の他の地域と大きく異なり、特有の行政需要を有することから、東京都の行政施策の遂行上、島しょ部から選出される代表を確保する必要性が高いものと認められる一方、その地理的状況から、他の市町村の区域との合区が、地続きの場合に比して相当に困難であることなどが考慮されてきたものということができる。そして、東京都議会は、都議会のあり方検討会での検討を経た上で、令和2年条例改正の際にも、島部選挙区の配当基数は小さいものの、島しょ部の地理的特殊性等に照らし、島部選挙区を引き続き特例選挙区として存置することを決定したものとうかがわれる。本件選挙の直近に行われた令和2年の国勢調査の人口等基本集計による人口に基づいて計算すると(公職選挙法施行令144条参照)、島部選挙区の配当基数は、0.221となるが、以上で説示したところに鑑みれば、この配当基数が、東京都議会において島部選挙区を特例選挙区として存置することが許されない程度にまで至っているとはいえない。他に、同議会が令和2年条例改正後の本件条例において島部選挙区を特例選挙区として存置していたことが社会通念上著しく不合理であることが明らかであると認めるべき事情もうかがわれない。 以上によれば、東京都議会が、島部選挙区を特例選挙区として存置していたことは、同議会に与えられた裁量権の合理的な行使として是認することができる。した- 4 -がって、本件島部選挙区規定は、本件選挙当時、公職選挙法271条に違反していたものとはいえない。 公職選挙法15条8項は、憲法の要請を受け、都道府県議会の議員の定数の各選挙区に対する配分につき、人口比例を最も重要かつ基本的な基準とし、投票価値の平等を強く要求していると解されるところ、前記2の各規定に照らせば、条例の定める定数配分が同項の規定に適合するかどう の各選挙区に対する配分につき、人口比例を最も重要かつ基本的な基準とし、投票価値の平等を強く要求していると解されるところ、前記2の各規定に照らせば、条例の定める定数配分が同項の規定に適合するかどうかについては、都道府県議会の具体的に定めるところが、上記各規定の定める選挙制度の下における裁量権の合理的な行使として是認されるかどうかによって決せられるべきものと解される。 本件定数配分規定は、公職選挙法15条8項ただし書を適用して各選挙区に対する定数の配分を定めたものと解されるところ、令和2年の国勢調査の人口等基本集計による人口に基づいて計算すると、本件定数配分規定においては、特例選挙区以外の選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差は1対2.54(以下、較差に関する数値は概算である。)であって、人口比定数(配当基数に応じて同項本文の人口比例原則を適用した場合に各選挙区に配分されることとなる定数)による特例選挙区以外の選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差と差異がなく、また、6選挙区において人口比定数との差異がみられたが、その差はいずれも1人であり、いわゆる逆転現象は3通りにとどまり、定数差はいずれも1人であった。そうすると、前記2の各規定の定める選挙制度の下においては、本件選挙当時における投票価値の不平等は、東京都議会において地域間の均衡を図るために通常考慮し得る諸般の要素をしんしゃくしてもなお一般的に合理性を有するものとは考えられない程度に達していたものとはいえず、また、令和2年条例改正時及び本件選挙当時において、同項ただし書に定める特別の事情があるとの評価が合理性を欠いていたなどというべき事情は見当たらない。 以上によれば、本件選挙の施行前に本件定数配分規定を改正しなかったことは、東京都議会に与えられた裁量権の合理的な行使として 事情があるとの評価が合理性を欠いていたなどというべき事情は見当たらない。 以上によれば、本件選挙の施行前に本件定数配分規定を改正しなかったことは、東京都議会に与えられた裁量権の合理的な行使として是認することができる。したがって、本件定数配分規定は、本件選挙当時、公職選挙法15条8項に違反してい- 5 -たものとはいえない。 5 所論は、さらに、本件選挙当時、本件島部選挙区規定及び本件定数配分規定が憲法14条1項、15条1項、3項、92条及び93条に違反する旨をいう。 しかしながら、本件選挙当時の本件条例による特例選挙区の存置や各選挙区に対する定数の配分が東京都議会に与えられた裁量権の合理的な行使として是認することができることは、前記3及び4において説示したとおりであり、本件選挙当時、本件島部選挙区規定及び本件定数配分規定が憲法の上記各規定に違反していたものとはいえないことは、当裁判所大法廷判決(最高裁平成11年(行ツ)第7号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1441頁等)の趣旨に徴して明らかというべきである(最高裁平成30年(行ツ)第92号、同年(行ヒ)第108号同31年2月5日第三小法廷判決・裁判集民事261号17頁参照)。 6 以上の次第であるから、本件請求を棄却した原審の判断は、結論において是認することができる。論旨は、いずれも採用することができない。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官岡村和美裁判官三浦守裁判官草野耕一裁判官尾島明)
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