平成19年3月26日判決言渡平成17年(ワ)第1231号損害賠償等請求事件主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 被告は,原告に対し,金284万7820円及び内金18万9080円に対する平成16年6月21日から,内金31万0040円に対する平成16年7月22日から,内金104万8700円に対する平成17年3月30日から,内金130万円に対する平成17年7月9日から各支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 原告と被告との間において,原告の被告に対する一般公衆浴場を用途とした水道料金を超えた水道料金債務は存在しないことを確認する。 第2事案の概要本件は,千葉県松戸市において公衆浴場(以下,「本件公衆浴場」という。)を経営する原告が,本件公衆浴場の水道料金について,(ア)地方自治体である被告が,原告に対しては一般公衆浴場用の低額な料金計算に基づき水道料金を請求すべきところ,高額な一般用の料金計算に基づき水道料金を請求することは,信義則に違反するとして,原被告間において,本件公衆浴場の水道料金について,一般公衆浴場としての料金を越えた水道料金債務が存在しないことの確認を求めるとともに,(イ)仮に原告が一般用の料金計算に基づく水道料金を負担すべきであるとしても,被告保健所職員は,原告に対し,「その他の公衆浴場」としての営業許可が下りた場合一般用の水道料金が課される こと及び本件公衆浴場が一般用の水道料金が課されない「一般公衆浴場」としての営業許可が下りる可能性があることについての説明を怠ったことなどにより,原告が本来支払うべき金額を超過して水道料金を支払わざるを得なくなったと主張して,国家賠償法1条1項に基づき,被った損害のうち一部について 下りる可能性があることについての説明を怠ったことなどにより,原告が本来支払うべき金額を超過して水道料金を支払わざるを得なくなったと主張して,国家賠償法1条1項に基づき,被った損害のうち一部についての賠償を請求した事案である。 争いのない事実等(1)原告は,千葉県松戸市a65番40所在の本件公衆浴場を経営する者である。 (2)原告は,平成12年ころ,本件公衆浴場の開業を思い立ち,A(以下「A」という。)に対し,許可申請手続を依頼した。(証人A)(3)Aは,そのころ,松戸保健所に公衆浴場の許可申請手続の相談に行ったが,当時,窓口で対応したのがB(以下「B」という。)であった。 (4)当時,本件公衆浴場から300メートル以内の距離に既設の一般公衆浴場(松戸ヘルスランド)が存在した。 (5)Aは,平成14年8月14日,松戸保健所長に対し,主要用途を「その他の公衆浴場」とする公衆浴場を新築することの適否について,意見書を交付することを願い出たところ,松戸保健所長は,同年9月9日,原告に対し,適当と思料される旨の意見書を交付した。 (6)原告は,平成15年11月13日,千葉県知事に対し,公衆浴場法2条1項に基づき,公衆浴場の種類を「その他の公衆浴場」として公衆浴場営業の許可申請をした。 (7)松戸保健所長は,同月28日,原告に対し,公衆浴場の種類を「その他の公衆浴場」,許可条件を「一般公衆浴場への切り替えはできない。」として,公衆浴場の営業許可をした。 (8)原告は,平成16年2月10日,二階建(1階部分が公衆浴場,2階部分が共同住宅)の本件公衆浴場を建設し,そのころ,本件公衆浴場の営業 を開始した。 (9)被告は,原告に対し,本件公衆浴場の水道料金として,一般用の料金計算に基づき,次の金員の支払をそれぞれ請求した。 ア平 の本件公衆浴場を建設し,そのころ,本件公衆浴場の営業 を開始した。 (9)被告は,原告に対し,本件公衆浴場の水道料金として,一般用の料金計算に基づき,次の金員の支払をそれぞれ請求した。 ア平成15年12月分として,950円イ平成16年1月及び2月分として,4400円ウ平成16年3月及び4月分として,22万8260円エ平成16年5月及び6月分として,36万9090円オ平成16年7月及び8月分として,44万4200円カ平成16年9月及び10月分として,56万3200円キ平成16年11月及び12月分として,23万5040円(10)原告は,被告からの上記請求を受け,被告に対し,平成16年3月23日に前項ア及びイの金員を,同年6月21日に前項ウの金員を,同年7月22日に前項エの金員を,平成17年3月30日に前項オ,カ及びキの金員をそれぞれ支払った。 (11)ア公衆浴場法施行条例2条1項及び2項においては,公衆浴場の種類として,「一般公衆浴場」(同時に多数人を入浴させる公衆浴場であって,地域住民の日常生活において保健衛生上必要な施設として利用されるものをいう。)及び「その他の公衆浴場」(一般公衆浴場以外の公衆浴場をいう。)が定められている。 イ一般公衆浴場については,同条例3条1項においてその配置基準(設置しようとする一般公衆浴場の本屋の壁面と最も近い既設の一般公衆浴場の本屋の壁面との水平投影面における直線による最短の距離が,市部にあっては三百メートル以上,郡部にあっては四百メートル以上であること)等が定められているほか,物価統制令4条,公衆浴場入浴料金の統制額の指定等に関する省令(昭和32年9月12日厚生省令第38号)2条及び公衆浴場入浴料金の統制額(平成9年11月7日告示第806号)により, その入浴料金につい 統制令4条,公衆浴場入浴料金の統制額の指定等に関する省令(昭和32年9月12日厚生省令第38号)2条及び公衆浴場入浴料金の統制額(平成9年11月7日告示第806号)により, その入浴料金について千葉県知事から統制額の指定を受けている。 そして,一般公衆浴場の水道料金については,一般公衆浴場が物価統制令4条の規定により入浴料金の価格の統制額の指定を受ける公衆浴場とされる結果,千葉県水道事業給水条例24条,別表第1により,一般用の水道料金に比べて安い単価で従量料金が設定されている。 ウ他方,その他の公衆浴場については,一般公衆浴場におけるような配置基準,公衆浴場入浴料金についての統制額の指定はないが,その水道料金については,一般公衆浴場用の水道料金よりも従量料金が高く設定されている千葉県水道事業給水条例24条,別表第1の一般用の水道料金が適用される。 争点 本件における争点は,(ア)本件公衆浴場につき,一般用の水道料金を課してこれを請求することが,禁反言の原則ないし信義則に反するか否か,(イ)被告保健所職員の説明義務違反の有無,(ウ)被告保健所職員の説明行為は原告の営業の自由(憲法22条1項)を侵害したか否か,④本件公衆浴場に対して一般用の水道料金を課することは平等権(憲法14条)の侵害になるか否かの4点である。 当事者の主張(1)争点1(一般用の水道料金を請求することが禁反言の原則ないし信義則に反するか否か)について(原告の主張)ア一般公衆浴場とは,いわゆる銭湯がその典型例であるのに対し,その他の公衆浴場は,いわゆるスーパー銭湯,サウナ,健康ランド等の施設を指すところ,本件公衆浴場は,まさに一般的な銭湯そのものである。 また,千葉県水道事業給水条例において,その他の公衆浴場に比較して一般公衆浴場の水道料金が安く設定さ 銭湯,サウナ,健康ランド等の施設を指すところ,本件公衆浴場は,まさに一般的な銭湯そのものである。 また,千葉県水道事業給水条例において,その他の公衆浴場に比較して一般公衆浴場の水道料金が安く設定されているのは,一般公衆浴場におい ては,銭湯利用者を保護すべく,その入浴料金が低価格に統制されているからであるが,本件公衆浴場の入浴料金は,大人一人当たりわずか350円であり,これはいわゆるスーパー銭湯のようなその他の公衆浴場一般の入浴料金相場よりもはるかに安いばかりでなく,千葉県の価格統制額(385円)と比べてもさらに安いのである。 このように,本件公衆浴場の実体はまさに銭湯そのものなのであるから,被告がその水道料金を設定するに当たっても,本件公衆浴場の実質を重視し,一般公衆浴場と同様に低額の水道料金を課すべきである。 イ千葉県松戸保健所長の平成14年9月9日付け意見書には,「建築場所について(公衆浴場の場合,既設公衆浴場との距離関係)」という項目において,「適当と思料される」と記載されており,その他の公衆浴場の場合には問題とはならない既設公衆浴場との距離関係についても適当である旨の意見が付されている体裁になっているのであるから,被告は,当該意見書を出した時点では,原告に対して一般公衆浴場としての営業許可を与える予定であったと考えられる。 ウ以上からすれば,被告が,原告に対して,その他の公衆浴場の営業許可を前提として,一般用の水道料金の支払を請求するのは不合理であり,禁反言の原則ないし信義則に反する。 (被告の主張)ア本件公衆浴場は,一般公衆浴場の設置に必要な配置基準を満たしていなかったため,平成15年11月28日,千葉県松戸保健所長から,その他の公衆浴場としての営業許可が与えられている。 イその他の公衆浴場としての営業許可が与え 衆浴場の設置に必要な配置基準を満たしていなかったため,平成15年11月28日,千葉県松戸保健所長から,その他の公衆浴場としての営業許可が与えられている。 イその他の公衆浴場としての営業許可が与えられている本件公衆浴場に対しては,一般用の水道料金が課されるのは当然であり,被告がこれを請求することが禁反言の原則ないし信義則に反するとはいえない。 (2)争点2(被告保健所職員の説明義務違反の有無)について (原告の主張)ア仮に,本件において,本件公衆浴場に一般用の水道料金が課されるとしても,当時の被告保健所職員であったBは,原告及び原告から本件公衆浴場の営業許可申請手続の代行の依頼を受けた設計士であるAに対し,一般公衆浴場とその他の公衆浴場とでは水道料金に差があり,本件公衆浴場はその他の公衆浴場として高額な一般用の水道料金が課されるということを全く説明しなかった。 原告としては,事前に,一般用の水道料金を負担せざるを得ない旨の説明を受けていれば,そもそも本件公衆浴場の所在地において公衆浴場を経営しようとは考えなかったのであって,被告においてもこのことは十分に認識していたはずである。 イまた,公衆浴場法施行条例は,当該公衆浴場が同条例の定める配置基準を満たしていないときでも,一般公衆浴場としての営業許可を受けることが可能な場合がある旨を定めており,Bは,この点に関する十分な説明を怠った。 すなわち,同条例3条2項には,「前項の規定にかかわらず,知事は,公衆衛生上必要があると認めるときは,同項に定める基準を緩和することができる。」と定められているのであるから,本件公衆浴場が同条例3条1項の配置基準を満たしていないとしても,知事が「公衆衛生上必要があると認めるときは」一般公衆浴場としての営業許可が得られる可能性があった。 ウにもか ているのであるから,本件公衆浴場が同条例3条1項の配置基準を満たしていないとしても,知事が「公衆衛生上必要があると認めるときは」一般公衆浴場としての営業許可が得られる可能性があった。 ウにもかかわらず,Bは,本件公衆浴場に対しては一般公衆浴場としての営業許可は下りないとの誤った説明を行い,原告及びAをして一般公衆浴場としての営業許可申請を行うことを断念させ,本件公衆浴場が「公衆衛生上必要があると認めるとき」に当たるか否かについて知事の判断を受ける機会を失わせたものである。 (被告の主張)ア松戸保健所長は,本件公衆浴場に対して,公衆浴場としての営業許可が出せるか否かについて原告及びAから相談を受け,また,原告に対して意見書を交付したのであり,水道料金についての説明を行うことは,担当職務外,権限外である。 Bは,原告及びAに対して,水道料金についての誤った情報を提供したわけではないし,原告は,経営者として,公衆浴場の水道料金につき自己の責任において調査すべきであったのに,Bに対して,自ら水道料金についての照会や質問等一切行わなかったのであるから,本件において,Bに,水道料金についてまで説明する職務上の法的義務がないことは明らかである。 イ公衆浴場の設置場所については,各都道府県がそれぞれ独自に条例を定め,運用をしている。 原告が問題としている公衆浴場法施行条例3条2項の千葉県における運用は,県として統一的な条例の解釈運用をするため,各保健所長宛平成5年12月27日付け衛第372号千葉県衛生部長通知が出されており,同通知においては,知事が公衆衛生上必要と認めて配置基準を緩和できる場合とは,(ア)既設の一般公衆浴場において営業者が交代する場合,(イ)既設の一般公衆浴場における建て替えの場合,(ウ)一般地域住民に開放される老人福 事が公衆衛生上必要と認めて配置基準を緩和できる場合とは,(ア)既設の一般公衆浴場において営業者が交代する場合,(イ)既設の一般公衆浴場における建て替えの場合,(ウ)一般地域住民に開放される老人福祉センター等を設置しようとする場合で,既設の一般公衆浴場等の意見も十分に聴取し,総合的に判断し支障ない場合のいずれかであり,これらの場合に該当しなければ,一般公衆浴場としての営業許可が出されることはない。 そして,本件公衆浴場は,上記いずれの場合にも該当しない。 ウしたがって,本件公衆浴場に対しては一般公衆浴場としての営業許可は下りない旨のBの説明に誤りはなく,説明義務違反があるとの原告の主張 は失当である。 (3)争点3(営業の自由の侵害の有無)について(原告の主張)ア原告は,Bの「本件公衆浴場の申請は,一般公衆浴場としての営業許可が下りることはない。」旨の誤った説明により,本件公衆浴場が公衆浴場法施行条例3条2項の「公衆衛生上必要があると認めるとき」に該当するか否かについての知事による判断を受ける機会を失った。 イ憲法22条1項は,国民に対して営業の自由を保障しているところ,原告は,上記の誤った説明によって一般公衆浴場としての営業許可申請を断念させられた結果,一般公衆浴場としての営業を行うことができなくなってしまった以上,Bの説明は原告の営業の自由を不当に侵害するものである。 (被告の主張)争う。原告の主張は,独自の見解に過ぎない。 (4)争点4(平等権の侵害の有無)について(原告の主張)ア本件公衆浴場の付近に既に存在した一般公衆浴場は,銭湯とは思えない建物であるのに対して,本件公衆浴場は,誰が見ても昔ながらの銭湯そのものである。 イ被告は,およそ銭湯という外観を有しない上記の一般公衆浴場に対しては格安の水道料金を課し 浴場は,銭湯とは思えない建物であるのに対して,本件公衆浴場は,誰が見ても昔ながらの銭湯そのものである。 イ被告は,およそ銭湯という外観を有しない上記の一般公衆浴場に対しては格安の水道料金を課し,他方で,誰が見ても銭湯にしか見えない本件公衆浴場に対しては一般用の高額な水道料金を課しており,憲法14条が保障する平等権を明らかに侵害している。 (被告の主張)争う。原告の主張は,独自の見解に過ぎない。 第3争点に対する判断 認定事実後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。 (1)原告は,平成12年ころ,本件公衆浴場の建設を計画した。原告が本件公衆浴場の建設を計画した理由は,両親の墓がある松戸市に対して恩返しをしたいという思いと,客も多いだろうから採算が採れないということはないと考えたことなどであった。 (2)原告は,本件公衆浴場の営業を計画した際,収支予測や必要経費に関する調査等を全く行わなかった。 (3)原告は,本件公衆浴場の設計及び公衆浴場の営業許可を受けるに当たっての申請等必要な手続を,Aに依頼した。 (4)Aは,原告からの上記依頼を受け,保健所長宛,構造設備及び建築場所等の適否についての意見書交付願を作成するに当たって,当時松戸保健所の職員であったBに対して,数回にわたり,その記載内容についての相談をした。 (5)Bは,上記相談の際,Aに対し,本件公衆浴場の300メートル以内に既設の一般公衆浴場(松戸ヘルスランド)があるため,一般公衆浴場としての営業許可は下りないこと,千葉県では一般公衆浴場として営業許可申請がなされ,営業許可が下りる例はほとんどないこと,一般公衆浴場ではなくその他の公衆浴場であれば,入浴料金の統制も距離制限もないので営業許可を得る見通しがあること,その他の公衆浴場では一般公 許可申請がなされ,営業許可が下りる例はほとんどないこと,一般公衆浴場ではなくその他の公衆浴場であれば,入浴料金の統制も距離制限もないので営業許可を得る見通しがあること,その他の公衆浴場では一般公衆浴場の受けている補助金等は支給対象とはならないこと等を説明した。 (6)Bは,同人自身,一般公衆浴場とその他の公衆浴場とで異なる水道料金体系が適用されるということを知らなかったため,原告及びAに対し,水道料金に関する説明はしなかった。 (7)原告及びAは,Bに対して,水道料金に関することで相談や質問をしたことはなかった。 (8)Bは,原告及びAに対し,公衆浴場法施行条例3条2項において,例外的に配置基準が緩和される場合があることの説明をしなかった。(証人B8頁)(9)Aは,Bの上記(5)の説明を受け,平成14年8月14日,「主要用途」欄に「その他の公衆浴場」と記載した意見書交付願を作成し,原告に代わって,必要書類とともに松戸保健所に提出した。 (10)松戸保健所長は,同年9月9日,原告に対し,本件公衆浴場の建築に係る構造設備及び場所等について,いずれも適当と思料される旨の意見書を交付した。同意見書においては,「建築場所について」との文言に続けて,「(公衆浴場の場合,既設公衆浴場との距離関係)」との記載がある。 (11)Aは,平成15年11月13日,原告に代わって,「公衆浴場の種類」欄に「その他の公衆浴場」と記載した公衆浴場営業許可申請書を,必要書類とともに松戸保健所に提出した。 (12)松戸保健所長は,同年11月28日,原告に対し,本件公衆浴場につき,公衆浴場の種類は「その他の公衆浴場」,許可条件は「一般公衆浴場への切り替えはできない。」として,公衆浴場の営業を許可した。 (13)原告は,平成16年2月10日,二階建(1階 本件公衆浴場につき,公衆浴場の種類は「その他の公衆浴場」,許可条件は「一般公衆浴場への切り替えはできない。」として,公衆浴場の営業を許可した。 (13)原告は,平成16年2月10日,二階建(1階部分が公衆浴場,2階部分が共同住宅)の本件公衆浴場を建設し,そのころ,被告との間で水道の給水契約を締結し,本件公衆浴場の営業を開始した。 (14)Bは,松戸保健所に勤務していたのは平成15年3月31日までであり,同年11月の営業許可申請については関与していない。 (15)千葉県衛生部長は,各保健所長に宛て,平成5年12月27日付け衛第372号「公衆浴場法施行条例の施行に伴う運用について(通知)」と題する書面(以下「本件通知」という。)により,公衆浴場法施行条例の施行に当たっては,本件通知に基づく運用を行うよう通知した。本件通知においては,配置基準を緩和できる場合として,(ア)既設の一般公衆浴場にお いて,施設はそのままで,営業者が変わることにより新たな営業許可を取得する場合,(イ)既設の一般公衆浴場において,営業者が変わることなく,同一場所に一般公衆浴場を建て替えることにより新たな営業許可を取得する場合,(ウ)一般地域住民に開放される老人福祉センター等を設置しようとする場合で,近接して既設の一般公衆浴場がある場合は,既設の公衆浴場はもとより公衆浴場業環境衛生同業組合の意見等も十分聴取し,総合的に判断し支障ない場合が挙げられている。 争点1(一般用の水道料金を請求することが,禁反言の原則ないし信義則に反するか否か)について(1)上記認定事実によれば,本件公衆浴場は,平成15年11月28日,松戸保健所長により,その他の公衆浴場としての営業許可が与えられていることが認められる。そうすると,本件公衆浴場は,一般公衆浴場には該当しないの 実によれば,本件公衆浴場は,平成15年11月28日,松戸保健所長により,その他の公衆浴場としての営業許可が与えられていることが認められる。そうすると,本件公衆浴場は,一般公衆浴場には該当しないのであるから,原告と被告との間の水道の給水契約は,一般用の水道料金が適用されることを内容として締結されたものと認めるのが相当である。 (2)そして,上記認定の経緯によれば,被告が原告に対し,一般用の水道料金を請求することが禁反言の原則ないし信義則に反するものとは到底いえない。 (3)この点,原告は,本件公衆浴場の営業形態は銭湯そのものなのであるから,水道料金の設定についても,その実体を重視して,一般公衆浴場と同様の水道料金を課すべきである旨主張する。 しかしながら,そもそも,原告は,その他の公衆浴場の営業許可しか取得していないのであるから,被告が一般公衆浴場としての水道料金を課することはできないものというべきである。また,原告の主張によっても,いわゆる「銭湯」がどのような営業形態まで含むのかは一義的に明らかではない。 そして,その他の公衆浴場は,一般公衆浴場におけるような統制額の指定はないのであるから,採算が合うように入浴料金を設定することが可能である し,逆に,一般公衆浴場であっても,営業努力によって営業形態や外観に工夫を凝らすことはあり得るのであるから,実体を重視して水道料金の設定を行うべきであるとの原告の主張は,理由がない。 (4)原告は,松戸保健所長の意見書の記載からすれば,被告は,原告に対して一般公衆浴場としての営業許可を与える予定であったと考えられる旨を主張する。 しかしながら,上記意見書のみでなく,Aが作成した意見書交付願も合わせ読むと,意見書交付願においては,公衆浴場のみではなく下宿,興行場についても使用される定型文言を使 たと考えられる旨を主張する。 しかしながら,上記意見書のみでなく,Aが作成した意見書交付願も合わせ読むと,意見書交付願においては,公衆浴場のみではなく下宿,興行場についても使用される定型文言を使用しているところ,意見書交付願に対応する意見書における建築場所についての記載も,公衆浴場法施行条例3条1項に定める配置基準のみを前提にしたものではないことが窺われるから,意見書の「2建築場所について(公衆浴場の場合,既設公衆浴場との距離関係)」の項目に「適当と思料される。」旨の記載があることのみをもって,被告が本件公衆浴場に対して一般公衆浴場としての営業許可を与える予定であったということはできない。 (5)よって,この点に関する原告の主張は,理由がない。 争点2(被告保健所職員の説明義務違反の有無)について(1)ア上記認定事実によれば,Bは,原告及びAに対し,本件公衆浴場に対しては一般公衆浴場としての営業許可は下りないことを前提として,一般公衆浴場とその他の公衆浴場とでは入浴料金額の統制の有無,距離制限がないこと等の違いを説明したが,水道料金に差があるという違いについては説明をしなかったことが認められる。 イそこで,Bに水道料金についてまで説明すべき義務があったか否かにつき検討するに,公衆浴場の営業許可申請に関連して保健所が行うべき事柄は,公衆浴場の設置の場所若しくはその構造設備が公衆衛生上不適当であるか否か及び設置の場所が配置の適正を欠くか否かを審査することであっ て(公衆浴場法2条2項参照),公衆浴場の営業許可申請は上記審査を通ることを目的としてなされるものであるから,保健所は,公衆浴場の営業許可申請を行おうとする者に対して,上記審査に関連する事項について,その申請書の記載に不備が生じない程度に説明すれば足りるというべきで ことを目的としてなされるものであるから,保健所は,公衆浴場の営業許可申請を行おうとする者に対して,上記審査に関連する事項について,その申請書の記載に不備が生じない程度に説明すれば足りるというべきである。 そして,水道料金は水道局が所管するものであるし,水道料金等の必要経費がいくらかかるかという点は,専ら収支採算の問題であり,一次的には経営者が自ら責任をもって調査すべき性質のものであることなどに鑑みれば,被告保健所職員が水道料金について説明すべき義務の程度としては,営業許可申請者が,保健所職員に対して,水道料金についても具体的な説明を求めた場合に,担当部署は水道局であるからそちらに問い合わせるよう教示するなどの義務が生じるにとどまると解するのが相当である。 ウそうすると,原告及びAから積極的に水道料金についての相談や質問を行ったような事情が認められない本件においては,Bにおいて,その他の公衆浴場に課せられる水道料金の額についてまで説明すべき義務はないというべきである。 エよって,この点に関する原告の主張は,理由がない。 (2)ア次に,原告は,配置基準を緩和することができる場合を,本件通知が挙げる3つの場合に限定することはできないのであるから,本件公衆浴場が公衆浴場法施行条例3条1項に定める配置基準を緩和することができる場合に該当する可能性があるのに,Bはその旨の説明を怠ったと主張する。 イしかしながら,そもそも公衆浴場の設置場所の配置基準については,公衆浴場施行条例3条2項において知事に一定の裁量が認められているところ,県として統一的な運用を行うため,本件通知によって,「公衆衛生上必要があると認めるとき」に該当する場合をあらかじめ限定しておくこと にも合理性が認められる。 そして,前記前提事実及び上記認定事実によれば,本件公 運用を行うため,本件通知によって,「公衆衛生上必要があると認めるとき」に該当する場合をあらかじめ限定しておくこと にも合理性が認められる。 そして,前記前提事実及び上記認定事実によれば,本件公衆浴場の建築場所は市部であり,営業許可申請時において,本件公衆浴場から300メートル以内の距離に既設の一般公衆浴場があったのであるから,本件公衆浴場は公衆浴場法施行条例3条1項の定める一般公衆浴場の配置基準を満たさないこと,また,本件公衆浴場は,本件通知が「知事が同条例3条1項の配置基準を緩和できる場合」として挙げる場合のいずれにも該当しないことが認められるところ,これらに加え,公衆衛生上,配置基準を緩和する必要があると認められるような事情も見当たらない本件においては,仮に知事がその裁量で配置基準を緩和するとの判断を行う可能性が観念できるとしても,その可能性は極めて少ないのであるから,原告の主張する「知事の判断を受ける機会を失った利益」は,法的保護に値しないといわざるを得ない。 ウしたがって,Bにおいて,本件公衆浴場が,公衆浴場法施行条例3条1項に定める配置基準を緩和することができる場合に該当する可能性があることについての説明をする義務自体が存在しないから,この点を原告及びAに対して説明しなかったとしても,説明義務違反とはならない。 エよって,この点に関する原告の主張は,理由がない。 争点3(営業の自由の侵害の有無)について(1)原告は,Bの説明によって一般公衆浴場としての営業許可申請を断念させられた結果,一般公衆浴場としての営業を行うことができなくなってしまった以上,Bの説明は原告の営業の自由を侵害する旨主張する。 (2)しかしながら,原告は,その他の公衆浴場として公衆浴場の営業を行うことについては何ら制限されていないし,上述の ができなくなってしまった以上,Bの説明は原告の営業の自由を侵害する旨主張する。 (2)しかしながら,原告は,その他の公衆浴場として公衆浴場の営業を行うことについては何ら制限されていないし,上述のように,本件公衆浴場に対しては一般公衆浴場としての営業許可が下りる可能性は極めて少ない以上,Bの説明によって原告が一般公衆浴場としての営業ができなくなったという こともできない。 (3)したがって,この点に関する原告の主張は,理由がない。 争点4(平等権の侵害の有無)について(1)原告は,本件公衆浴場に対して高額の水道料金を課すことは,一般公衆浴場には低額の水道料金が課されるのに比して不平等である旨を主張する。 (2)しかしながら,一般公衆浴場に対して低額の水道料金しか課されないのは,一般公衆浴場においては入浴料金の統制額の指定がなされているからであり,統制額の指定を受けないその他の公衆浴場に対しては優遇的措置を施す必要がないのであるから,その他の公衆浴場としての営業許可が与えられている本件公衆浴場に対して,一般用の水道料金を適用することは,そもそも不合理な差別的取扱いに当たらない。 (3)したがって,この点に関する原告の主張は,理由がない。 第4 結論 以上によれば,原告の本訴請求は,いずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 千葉地方裁判所民事第2部裁判長裁判官小磯武男裁判官田原美奈子裁判官内藤和道
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