- 1 -平成19年6月27日判決言渡平成16年(ワ)第8109号損害賠償請求事件判決主文 原告の被告らに対する請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第一請求被告らは,原告に対し,連帯して金6171万円及びこれに対する平成15年3月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第二事案の概要本件は,A(以下「亡A」という)が,被告国が設置運営するB病院(以。 下「被告病院」という)において、被告C医師(以下「被告C医師」とい。 う)の執刀により肝切除手術を受けたものの,その後退院できないまま死亡。 したことに関し、手術適応がないのに手術した過失、手術による合併症や死亡率などを伝えずに手術をした説明義務違反等を主張して、亡Aの子である原告が,被告国に対しては、診療契約の債務不履行又は民法715条の使用者責任に基づき、被告C医師に対しては、民法709条不法行為に基づき、連帯して損害賠償金の支払を求め、併せて不法行為又は債務不履行がなされた日である手術時から支払済みまで民法所定年5分の割合による損害金の支払を請求した事案である。 一争いのない事実等(以下のかっこ内に根拠となる証拠等を示したものの他は,当事者間に争いがない)。 1(一)亡Aは,大正13年2月11日生まれの女性であり,平成15年5月- 2 -)。 6日死亡した。原告は,亡Aの娘であり,他に相続人はいない(甲B2原告は,亡父が設立したD工業株式会社の代表取締役を務めており,亡Aは,同社の取締役として同社の業務全般を把握していた。同社は,長く板金プレス業を営んできたが,社会情勢の変化に伴い事業転換をし,その後は不動産賃貸業を営んでいた(甲14)。 B(二)被告国は,被告病院を設置運営している。 務全般を把握していた。同社は,長く板金プレス業を営んできたが,社会情勢の変化に伴い事業転換をし,その後は不動産賃貸業を営んでいた(甲14)。 B(二)被告国は,被告病院を設置運営している。被告C医師は,亡Aが被告病院で手術を受けた当時,同病院に外科医として勤務していた。 亡Aは,元来健康で,嫁いでから寝込んだことはなく,年を取ってからもしばしば旅行に出かけ,趣味として水泳,スキー,クラッシックバレエ鑑賞などを楽しんでいた(甲14)。 B亡Aは,平成9年5月22日に2泊3日の奈良旅行から帰宅した後の同月24日夜,激しい腹痛,嘔吐を訴えて,翌25日休日当番医のE病院を受診し,緊急入院した結果,胃けいれん,胆石症の診断を受け同年6月2日E病院を退院した。亡Aは,その後同年6月4日,両側胸部の締めつけ感を訴えてF病院(以下「F病院」という)を受診し,超音波検査で肝腫瘍が発見。 されたため,同月14日F病院に入院した。亡Aは,入院して検査した結果,肝内胆管癌,肝血管腫,胃癌,十二指腸乳頭状腺腫,総胆管結石という診断を受け,G医師(以下「G医師」という)は,同年7月29日,手術を検。 討してもらう目的で亡Aを被告病院の被告C医師に紹介した。G医師は,亡Aに対し,胆管悪性腫瘍,胃悪性腫瘍,十二指腸乳頭腺腫と病名を説明した。 (甲14,乙1-)BAP6,P8 亡Aは,平成9年7月30日,被告病院外来を受診して被告C医師の診察を受け,腹部検査と腹部検査を受けた結果被告病院に入院するこCTMRIとになり,同年8月11日から同年9月17日まで被告病院に入院した。 (乙1-~)AP17,P61P88亡Aは,平成9年8月21日,被告病院で肝内胆管細胞癌及び胃癌との診- 3 -断を受け,被告C医師の執刀で肝拡大 年9月17日まで被告病院に入院した。 (乙1-~)AP17,P61P88亡Aは,平成9年8月21日,被告病院で肝内胆管細胞癌及び胃癌との診- 3 -断を受け,被告C医師の執刀で肝拡大左葉切除,胆管空腸吻合術及び幽門側胃切除術(以下「第1手術」という)を受けた。 。 4(一)亡Aは,退院後も被告病院に通院を続け3か月ごとに検査を受けCTていたが,平成14年9月4日に受けた検査の結果,腫瘍の再発が疑CTわれ,平成15年1月16日から同年2月14日まで被告病院に入院して検査を受けた。 (二)亡Aは,平成15年2月14日被告病院をいったん退院したが,同年3月18日再度被告病院に入院した。亡Aは,同月25日,被告C医師の執刀で右肝前区域切除及び空腸吻合部切除の手術(以下「本件手術」という)を受けた。 。 (三)亡Aは,本件手術後傾眠傾向が続き,3日後の同月28日には意識障害が増悪し,同月29日には昏睡状態となり,同月30日,腹腔内から大量の出血をして出血性ショックとなった。そこで,被告C医師が,同月31日,保存的治療では止血不可能と判断して緊急開腹手術を行ったところ,胆管空腸吻合部背面の固有肝動脈のピンホールから動脈性の出血をしていたことから,止血術,総胆管空腸吻合再建術(以下「再手術」という)。 が実施された。 (四)亡Aは,再手術後,黄疸が強くなり血小板も減少して,同年4月2日には進行性の肝不全と診断され,血漿交換等の治療が繰り返し行われたが意識が回復することもなく,同年5月6日死亡した。 被告C医師は,亡Aが死亡するに至った機序について,本件手術後胆管空腸吻合部の縫合不全が生じ,そのために固有肝動脈の結紮した分枝から結紮した糸がはずれて動脈性の出血を招き,再手術によって出血は止めたものの,肝不全を招いたた るに至った機序について,本件手術後胆管空腸吻合部の縫合不全が生じ,そのために固有肝動脈の結紮した分枝から結紮した糸がはずれて動脈性の出血を招き,再手術によって出血は止めたものの,肝不全を招いたためであると推測しているところであるが(乙-,AP135第1回被告C医師本人,その推測が誤りであると断定するに足P27,P30,P31)りる証拠はない。 - 4 -二 争点 亡Aには手術適応がないのに,被告C医師は本件手術を実施したか。 被告C医師は,亡Aに対して説明義務を尽くしたか。 原告の損害はいくらか。 三争点に関する当事者の主張 亡Aには手術適応がないのに,被告C医師は本件手術を実施したか。 (原告の主張)(一)本件手術のリスクは高かった。 亡Aは,本件手術当時79歳と高齢であり,平成9年には第1手術で肝拡大左葉切除術を受けていて手術部位には癒着が生じており,本件手術の際には,癒着の剥離に時間を要し出血量が多くなることが事前に予想できた。したがって,亡Aが,高齢で2回目の手術であることを考慮すると,本件手術のリスクは極めて高かった。 (二)亡Aの腫瘍は,病理学的には良性腫瘍又は低悪性度の悪性腫瘍である。 ( )亡Aが平成9年8月21日に受けた第1手術の切除標本の病理学 的検査(乙1-)では「腫瘍細胞は好酸性の円柱状の胞体をAP187,有し,その核は類円形~楕円形で異型性に乏しい。胆管パピロマトーシス(胆管乳頭腫症)に類似する」と記載されている。 。 胆管パピロマトーシスは,WHOの「肝腫瘍の組織学的分類」によれば,良性腫瘍に分類されている(甲3。胆管壁の浸潤や悪性転B)lowgrade化の症例が報告されていることは指摘されているものの,(低悪性度の悪性腫瘍)あるいは(良性malig によれば,良性腫瘍に分類されている(甲3。胆管壁の浸潤や悪性転B)lowgrade化の症例が報告されていることは指摘されているものの,(低悪性度の悪性腫瘍)あるいは(良性malignancyborderlinemalignancyB腫瘍と悪性腫瘍の境界域)とされているように,悪性度は低い(甲4。 )このように平成9年の第1手術の時点では,亡Aの腫瘍は,良性腫- 5 -瘍ないし悪性度の低い胆管パピロマトーシスであった。 ( )本件手術の切除標本の病理学的検査(乙-)では「腫瘍 AP197,の組織像からは異型を伴う肝内胆管パピロマトーシスか肝内胆管乳頭腺癌か鑑別が難しく,免疫染色による検討を追加した。その結果,異型の強い部では,CEAの胞体強陽性像を認める成分は少なく,また腫瘍細胞の増殖能も低かった。腫瘍は浸潤像は示しておらず,免疫染色の結果も考慮し,異型を伴うパピロマトーシスと考えた」と記載。 されている。 ( )亡Aが平成9年から本件手術時まで約6年間通常の日常生活を送 れる程度に健康な状態で生存した事実と,本件手術後の病理組織検査報告書の内容に照らすと,本件手術時に存在した腫瘍が悪性のものであったとは考えられない。 (三)亡Aの腫瘍には,手術以外の保存的治療法が存在していた。 ( )胆管パピロマトーシスに関する文献は,その危険性について「腫 瘍の増大や粘液の分泌過多に伴い,胆道閉塞が出現し,間欠性の閉塞性黄疸が出現することが多い「黄疸発生以前に,胆道閉塞に起因。」する胆管炎や発熱が生じやすい」と指摘している(甲4。 。 )B亡Aは,前述したように腫瘍の増殖そのものによって死亡する危険性はなかったが,胆汁のうっ滞により閉塞性黄疸を生じ,さらに胆管炎を発症して肝不全により死亡する い」と指摘している(甲4。 。 )B亡Aは,前述したように腫瘍の増殖そのものによって死亡する危険性はなかったが,胆汁のうっ滞により閉塞性黄疸を生じ,さらに胆管炎を発症して肝不全により死亡する危険はあった。したがって,亡Aについては,閉塞性黄疸及び胆管炎を防ぐ必要があった。 ( )しかし,亡Aの閉塞性黄疸や胆管炎を防ぐためには,(経皮 PTCD経肝胆管ドレナージ)すなわち外部から皮膚を通して肝臓に針を刺して先端を胆管内に到達させ,胆管内の胆汁を抜く措置を執ることも可能であった。また,によって刺入したチューブを用いて胆道内PTCDにステントを挿入し,胆道の狭窄部が閉塞しないように胆汁の流出路- 6 -を確保すれば,本件手術のように危険性の高い外科手術をしなくとも,より低侵襲の処置によって死亡の危険を回避することができた。 ( )また,腔内照射という放射線治療の方法もあった。腫瘍に対する レーザー照射に加えてステントを留置する方法もある。 ( )腫瘍掻爬術+ドレナージ留置(甲4-)は,腫瘍が進展し BP83てドレーンを閉塞し黄疸が生じるようになったら,腫瘍を掻き出してドレーンを入れ替えることを繰り返す治療法である。亡Aの腫瘍は,再発までにかなりの年数を要し成長の遅いタイプであるから,この治療法を採用していれば,患者が手術に耐えきれずに亡くなるという事態は避けられ,仮に再発してもドレーンの入れ替えによって予後も少なくとも数年程度の生存が可能であった。 治療の本来の目的は、疾患があることを前提に,よりよい人生を選択しそれを実現することにある。したがって,再発が考えられる場合qualityofであっても,患者の年齢,体力,本人の希望,QOL()を考慮して治療方法を決めるべきである。手術は根治術であるlife れを実現することにある。したがって,再発が考えられる場合qualityofであっても,患者の年齢,体力,本人の希望,QOL()を考慮して治療方法を決めるべきである。手術は根治術であるlifeが,ハイリスク・ハイリターンであり,姑息的手段の1つである腫瘍掻爬術+ドレナージ留置は,ローリスク・ローリターンである。 (四)被告らは,肝臓切除術は根治的治療法であるのに対し,原告が主張するやステント留置は腫瘍の増殖を止める効果のない姑息的治療PTCD法に過ぎないから選択の余地はないと主張する。しかし,根治的治療法が優れていて姑息的治療法は価値がないという考え方は誤りである。病気の性質や根治的治療法のリスク,患者の年齢や希望などを考慮した総合的判断が必要である。 被告らは肝臓切除術を根治的治療法というが,乙6によれば2度B目の肝臓切除術を実施してもその後に再再発する場合が81%に達し,肝臓切除術は文字通りの根治が期待できるわけではなく,再発の可能性- 7 -が高い治療法である。 他方,ステントの留置によって相当期間胆道の閉塞を防止することが可能であったのであるから,姑息的治療法であっても,有効性においては肝臓切除術と大差ないものであったことは明白である。平成15年から平成17年までの岡山大学における症例では,ステントの開存期間の中央値は260日に達しており,閉塞した場合であっても再度のステント留置が可能であり,再挿入に困難を来すこともなかったとされているから,きわめて長期間のステント留置が可能である(甲18。帝京B)大学の報告でもステント治療のめざましい進歩が指摘されており,ステント挿入後の合併症として最も問題となるチューブの閉塞については,金属製ステントで最短5か月,チューブステントで平均3~4か月であるが,ステント もステント治療のめざましい進歩が指摘されており,ステント挿入後の合併症として最も問題となるチューブの閉塞については,金属製ステントで最短5か月,チューブステントで平均3~4か月であるが,ステントの再挿入,クリーニング,交換などで対応できるとされていて,それに次ぐ合併症の膵炎については保存的治療で軽快することが多いとされている(甲19。いずれの文献も,被告が主張するよB)うな感染や黄疸は問題とされてはいない。 さらに,平均余命を考えると,患者が高齢者である場合,危険を冒して根治治療を受けた場合と姑息的治療を受けた場合とで結果に大差がないことは明らかである。 (五)したがって,被告らは,本件手術による縫合不全等のリスクが極めて高いことを認識し,手術以外の保存的療法を十分検討し選択すべきであったのにこれを怠り,代替的治療法を十分検討せずに「は困難,PTCD腔内照射の適応もないと思います」との結論を出して,亡Aに本件手。 術を強行したのであり,被告らには,手術適応を誤った過失がある。 (被告らの主張)(一)亡Aに関していえば,本件手術のリスクは高くなかった。 ( )亡Aは,79歳と高齢ではあったが,体力があり,各種検査の結 - 8 -果から高血圧,糖尿病,心臓疾患等の高齢者の手術を困難にする合併症は存在せず,肝機能も正常で,肝臓の予備能を示す指標であるプロトロンビン時間(凝固能,インドシアニングリーン停滞率(検)ICG査,血清総ビリルビン,血清アルブミンはいずれも正常であり,腹)水もなく,肝臓は手術に耐えられると判断された。 ( )肝臓は「60%までは肝機能にほとんど影響を与えずに切除で ,きる「切除から1年で肝体積の90%以上の回復を見る」とされて」いる。本件手術は,第1手術から5年以上経過した後でなされ 。 ( )肝臓は「60%までは肝機能にほとんど影響を与えずに切除で ,きる「切除から1年で肝体積の90%以上の回復を見る」とされて」いる。本件手術は,第1手術から5年以上経過した後でなされており,本件手術の時点では肝臓はほぼ100%再生している。 本件手術で切除が必要なのは,肝臓の35%に過ぎない。したがって,本件手術では,肝機能にほとんど影響を与えずに肝臓を切除することができる。 ( )本件手術は,第1手術から5年以上経過して亡Aの体力は回復し ている。肝臓切除術においては,2度目の再切除術であってもその危険性は1度目と変わらないとされており,2度目の手術であるから危険性が高いとはいえない。 (二)亡Aの腫瘍は,悪性腫瘍であった。 ( )亡Aの腫瘍が胆管パピロマトーシスであったか否かについては, 確定できていない。 第1手術の病理組織検査報告書(乙1-)によれば「良性,AP187,悪性の鑑別診断が難しく,非典型的な症例でもあり,胆管の乳頭状腫瘍と診断する」と記載されていて,良性とも悪性とも鑑別が困難であるとされている。 亡Aの腫瘍は,その後現実に再発し,増殖して胆管2本を閉塞した。 平成15年1月17日の超音波検査の結果「胆道癌である,肝門部,から区胆管内に高エコーの腫瘍があって胆管内を充満している,B8- 9 -穿刺造影は困難である,腔内照射の適応はない」との診断がなされ(乙1-,同月24日の検査にて,8区胆管内に乳頭AP183MRI)状腫瘍があるが後区域には同様の病変がないことが判明した。これらの検査結果をふまえて,被告病院は,同月28日に院内症例検討会を実施し,亡Aの腫瘍を「肝前区域に再発した胆管内発育型の肝内胆管癌」と判断した。 ( )本件手術の切除標本の病理組織検査報告書( れらの検査結果をふまえて,被告病院は,同月28日に院内症例検討会を実施し,亡Aの腫瘍を「肝前区域に再発した胆管内発育型の肝内胆管癌」と判断した。 ( )本件手術の切除標本の病理組織検査報告書(乙1-)によ AP197れば,癌であるかどうかの鑑別が難しいこと,腫瘍細胞が増殖すること,再発の可能性もあるので経過観察が必要なことが記載されている。 そもそも病理組織学的に悪性の判断が下せなくとも,後に再発や転移を起こしたものは悪性腫瘍と同一の取扱をすべきであり,病理診断は絶対的なものではなく,臨床経緯と病理診断が食い違う場合は臨床経緯を優先して判断がなされるべきである。 亡Aの腫瘍は,再発をきたしていることから悪性腫瘍と扱うべきである。 lowgrade( )胆管パピロマトーシスは,低グレード悪性腫瘍()あるいは境界型悪性腫瘍()と考えらmalignancyborderlinemalignancyれており,良性腫瘍とはいえない。 亡Aの腫瘍が胆管パピロマトーシスであったとしても,手術は以下の理由により必要であった。 人の肝臓には,一般的に肝内胆管は8本(1ないし8)あるが,bb亡Aは,第1手術によりすでにそのうちの左胆管側の4本(1ないbし4)が切除されており,右胆管側の4本(5ないし8)しかbbb残存していなかった。亡Aの腫瘍は,5と8の合流点(右前区域bb胆管)に存在しており,本件手術の時点ですでに5と8の胆管はbbその機能をほぼ失っていた。 5と8の合流点(右前区域胆管)とbb- 10 -6と7の合流点(右後区域胆管)とは5程度しか離れていなbbmmい。したがって,腫瘍があと5程度増殖して6と7の合流点mmbb(右後区域胆管)に達すれば, bb- 10 -6と7の合流点(右後区域胆管)とは5程度しか離れていなbbmmい。したがって,腫瘍があと5程度増殖して6と7の合流点mmbb(右後区域胆管)に達すれば,腫瘍の切除を行うことは全ての肝内胆管を失うことになるので不可能となる。腫瘍が6と7の合流点にbb達した後さらに増殖して6と7の合流点(右後区域胆管)を閉塞bbすれば,亡Aの全ての肝内胆管は機能を失い,亡Aは死に至る。 被告C医師は,亡Aに手術を行わなかった場合,腫瘍が6と bbの合流点(右後区域胆管)に達するのは,平成15年3月25日から数週間後であり,この場合の亡Aの余命は3か月程度と考えていた。 平成14年9月の検査時の腫瘍の大きさを検査で検出できるCTCT最小の大きさである直径5であると仮定し,平成15年3月2mm5日の本件手術時の腫瘍の大きさが22×17×35であったmmことから腫瘍の増殖速度を計算すると,約1か月で2倍の体積に成長していたと考えられる。そうすると,本件手術時から1か月後には,腫瘍は22×17×35の倍の体積に成長し,6と7の合流mmbb点(右後区域胆管)に達したことが予想される。したがって,本件手術をしなければ,亡Aの腫瘍は,1か月後には右後区域胆管に達し,さらに1か月程度で右後区域胆管を閉塞し,亡Aを死に至らしめたことが予想される。 (三)原告が主張する他の治療法は根治的治療法ではないから長期の生存は期待できず,長期生存が期待できる治療法としては肝臓切除術しかなく,他の治療法は適応がなかった。 ( )放射線治療(腔内照射)は,以下の理由で適応がなかった。 亡Aに関しては,①腔内照射と線外照射の併用,②陽子線外照X射の2つの方法が検討された。 亡Aの場合, 治療法は適応がなかった。 ( )放射線治療(腔内照射)は,以下の理由で適応がなかった。 亡Aに関しては,①腔内照射と線外照射の併用,②陽子線外照X射の2つの方法が検討された。 亡Aの場合,第1手術によって胆管と小腸(空腸)が吻合されてい- 11 -るため,本件腫瘍と空腸が近接しており,線外照射はもちろんそれXよりも被曝範囲が狭い腔内照射を選択しても陽子線外照射を選択しても,実施すれば空腸が被曝することを避けられない位置関係にあった。 一般に小腸は放射線に弱いが,空腸が被曝すると,潰瘍が生じて出血したり穿孔が生じて腹膜炎を起こす危険性が高い。放射線の被曝によって小腸に生じた潰瘍から出血した場合,止血剤以外に止血する方法はなく,止血剤による止血ができなければ出血によって死亡する。小腸が穿孔した場合には手術ができないので,腹膜炎によって激痛のうちに死に至る。 したがって,亡Aは,①腔内照射と線外照射の併用,②陽子線X外照射のいずれの方法によっても,空腸が被曝するために少量の放射線しか照射できず,放射線による治療効果は期待できない状態であった。 さらに,腔内照射を実施するにはのチューブを入れることがPTCD必要であるが,亡Aは,後述するようにが困難と見られていたPTCDので,腔内照射が実際に実施可能であったかどうかは不明である。 ( )は困難で危険性が高かった。 PTCDは,開腹せずに超音波で胆管や血管の位置を見ながら皮膚のPTCD上からガイドワイヤーを細い肝内胆管に挿入する方法によって行われる。 ところが,亡Aは,第1手術で胆管の下流部が切除されていて上流部のみが残っているが,胆管は上流(末梢)に行くほど細い。そして第1手術によって,胆管や血管の位置が通常とは異なった位置にあるうえに手術瘢痕もあり,超音波 第1手術で胆管の下流部が切除されていて上流部のみが残っているが,胆管は上流(末梢)に行くほど細い。そして第1手術によって,胆管や血管の位置が通常とは異なった位置にあるうえに手術瘢痕もあり,超音波によって胆管,血管の見極めが困難であった。さらに本件腫瘍は,胆管内充満型腫瘍であったため,胆管内狭窄型と違い末梢の胆管は拡張していない。 - 12 -したがって,亡Aの場合,拡張していない細いままの胆管にガイドワイヤーを挿入しなければならず,そのような手技は極めて困難であるうえ,胆管,血管の見極めがつかないままガイドワイヤーを挿入すると,胆管に挿入できず動脈を傷つけて出血を起こす危険性が高いので,は実施できない。 PTCD( )原告が主張する胆管内へのステント留置やは,まずガイド PTCDワイヤーを胆管内に挿入し,ガイドワイヤーに沿ってステントを挿入したり,ドレナージチューブを挿入する方法によって実施される。しかし,亡Aは,上記( )記載のとおり,そもそもガイドワイヤーの挿 入が困難であるため,自体が危険で実施できなかった可能性がPTCD高い。そうすると,胆管内へのステント留置もドレナージチューブの挿入も困難であり実施できなかった可能性が高い。 ( )第1手術後のステントの挿入は,禁忌である。 亡Aは,第1手術により肝門部胆管空腸吻合術を受けており,胆管は空腸(小腸)に縫合されている。したがって,ステントの先端を胆道内にとどめることができず先端は小腸に達するが,そうなると,逸脱,迷入(胆管内からステントが落ちて他の箇所に入り込むこと)やこれによる致死的な腸管穿孔,出血や敗血症をおこす危険がある。逸脱や迷入がなくともステントの先端が小腸に達すると,小腸内の細菌による感染から肝膿瘍を起こしやすく,敗血症を起こして死に至っ むこと)やこれによる致死的な腸管穿孔,出血や敗血症をおこす危険がある。逸脱や迷入がなくともステントの先端が小腸に達すると,小腸内の細菌による感染から肝膿瘍を起こしやすく,敗血症を起こして死に至ったり,ステントやドレナージチューブが食物残渣で詰まりやすくなる。 そこで,肝門部胆管空腸吻合術を受けた患者に対するステントの留置は禁忌である。 原告が提出した甲第18号証,第19号証は,亡Aの胆管内充B満型腫瘍とは異なりいずれも胆管狭窄型腫瘍であって,しかも肝門部胆管空腸吻合がなされていない症例についてのものである。したがっ- 13 -て,本件には当てはまらない。 ( )原告が主張するように,空腸までのステント留置やドレナージチ ューブの挿入を行うには,胆管内に充満した腫瘍の中をガイドワイヤーを貫通させなくてはならないが,この際にはガイドワイヤーが腫瘍を傷つけて腫瘍から出血する危険性が高い。しかも,本件腫瘍は,胆管内充満型腫瘍であるので,胆管狭窄型の腫瘍に比してより一層ステントの隙間から腫瘍進展を起こし,ステント内又はドレナージチューブ内に腫瘍組織による閉塞を起こす。 さらに,空腸内には食物残渣があるので,ステントの先端が空腸内に達すると,食物残渣による閉塞を招く。 ( )ステントやドレナージチューブ()は,腫瘍の増殖を防止する PTCD効果は全くなく,ステントやドレナージチューブを入れた位置まで腫瘍が増殖してステントやドレナージチューブを閉塞すれば,全く機能しなくなる。したがって,この方法は,ステントやドレナージチューブを入れた部分まで腫瘍が達するまでのわずかな期間しか有効ではない。 ( )レーザー治療については,現時点(2005年)においても,未 だその効果等について有効・無効の議論の分かれる治療法であって,保険診 分まで腫瘍が達するまでのわずかな期間しか有効ではない。 ( )レーザー治療については,現時点(2005年)においても,未 だその効果等について有効・無効の議論の分かれる治療法であって,保険診療対象となっていないばかりか,高度先進治療方法としても認められていないものである。 原告らが主張するレーザー治療とは,内視鏡的胆道ドレナージと併用して大口径のステントを挿入してレーザー治療を施す方法である。 しかし,内視鏡的胆道ドレナージは,切除不能の悪性胆道狭窄に対する治療法として行われているものであるが,亡Aの腫瘍は,合併症の危険はあっても切除が可能である腫瘍であり切除不能ではないこと,本件腫瘍は狭窄型ではなく胆管内充満型腫瘍であること,前述したよ- 14 -うにステント挿入が困難でかつ禁忌とされていて,レーザー治療の前提となる大口径のステント挿入が可能ではないことから,亡Aの腫瘍は,レーザー治療の対象ではない。 ( )原告が主張する腫瘍掻爬術+ドレナージ留置における腫瘍掻爬術 は,1980年代に行われた開腹術を意味している。この腫瘍掻爬術は,画像診断が未発達で術前の診断が詳細でなく,の技術も未PTCD発達で危険であった時代に,診断目的で開腹し,術中造影を行って切除できないことが判明すれば,何もしないで閉腹するよりはその時点でできる姑息的な処置を実施した方がよいとして行われたものである。 開腹術であることによる負担と,実施しても得られる胆管開存期間が短期間(腫瘍増殖による再閉塞までのわずかな期間)であることを比較すると,現在では,このような開腹術は行われない。 現在,腫瘍掻爬術+ドレナージ留置は一般的に行われていない手技なので,この治療法が選択されることはなく,亡Aにも適応はない。 ( )以上によれば,原告が主張する他の治療法は, な開腹術は行われない。 現在,腫瘍掻爬術+ドレナージ留置は一般的に行われていない手技なので,この治療法が選択されることはなく,亡Aにも適応はない。 ( )以上によれば,原告が主張する他の治療法は,そもそも手術が可 能であった亡Aにとっては,長期的生存が得られない劣った治療法であるばかりか,第1手術を受けた亡Aにとって,はそもそも実PTCD施自体ができなかった可能性が高く,ステント挿入は禁忌とされ,ステントを留置しても極めて早期の閉塞が予測され,細菌感染による肝膿瘍,敗血症を起こす危険性が高い方法である。したがって,亡Aには,原告が主張する他の治療法の適応はない。 (四)亡A自身が,被告病院に入院中治療方針について悩んでいたが,後記争点2(被告らの主張)(二)で記載したような経過で,平成15年2月2日に合併症の危険を伴う手術ではなく放射線治療を選択した。被告C医師は,亡Aを放射線科に紹介し,亡Aは,同月6日放射線科を受診して,同科のH医師(以下「H医師」という)から説明を受けた。H。 - 15 -医師は,亡Aに対し,放射線治療を行っても効果は望めないので長期生存を望むのであれば手術をするよう勧めた。亡Aは,手術と放射線治療の選択で迷い,同月14日いったん被告病院を退院した。亡Aは,同年3月18日に被告病院に再入院したが,その間自宅で考えて再入院した時点では手術を受けることを決心していた。 このように,本件手術は,亡A自身が選択した治療法である。 被告C医師は,亡Aに対して説明義務を尽くしたか。 (原告の主張)(一)治療のための行為が患者の身体やその機能に影響を及ぼす侵襲に相当する場合,患者は自己の生命,身体,機能をどのように維持するかについて自ら決定する権能を有するのであるから,医師は,患者の病状,医師が必要と考える医 為が患者の身体やその機能に影響を及ぼす侵襲に相当する場合,患者は自己の生命,身体,機能をどのように維持するかについて自ら決定する権能を有するのであるから,医師は,患者の病状,医師が必要と考える医療行為とその内容,これによって生ずると期待される結果及びこれに付随する危険性,当該医療行為を実施しなかった場合に生ずると見込まれる結果について,患者に説明し,承諾を受ける義務がある。 また,医師の側で当該施設における同種症例の手術結果について一定の経験と知見を有している場合には,単に手術の危険性について抽象的,一般的な説明にとどまることなく,適宜それらの手術実績に基づく知見をも情報として示すなどし,患者が当時における保存的療法と外科的療法双方の予後,危険性等について適切な比較検討をなし得るため,十分な具体的説明を行うべき義務がある(東京高判平成11年5月31日。 判時1733号37頁)判例(最判平成13年11月27日判タ1079号198頁)は,説明義務について「医師は,患者の疾患の治療のために手術を実施する,に当たっては,診療契約に基づき,特別の事情のない限り,患者に対し,当該疾患の診断(病名と病状,実施予定の手術の内容,手術に付随す)- 16 -る危険性,他に選択可能な治療方法があれば,その内容と利害得失,予後になどについて説明すべき義務がある「説明義務における説明は,」患者が自らの身に行われようとする療法(術式)につき,その利害得失を理解したうえで,当該療法(術式)を受けるか否かについて熟慮し,決断することを助けるために行われるものである」としている。 (二)本件において,仮に被告らの主張するとおり,出血,胆汁漏れ,縫合不全が不可避の合併症であるとした場合,被告らには,出血,胆汁漏れ,縫合不全などの死にも至る合併症の危険があ ある」としている。 (二)本件において,仮に被告らの主張するとおり,出血,胆汁漏れ,縫合不全が不可避の合併症であるとした場合,被告らには,出血,胆汁漏れ,縫合不全などの死にも至る合併症の危険がある手術であることを十分に説明すべき注意義務があった。 すなわち,被告らは,亡Aが手術を受けるか否かを選択するに際して,亡Aに対し,手術の危険性として,どのような合併症が存在するか,具体的には,出血,胆汁漏れ,縫合不全などの死にも至る合併症の危険がある手術であること,亡Aと同年齢の者の術後在院死亡率,これらの危険と比して手術をしなかった場合の予後について具体的に説明すべき義務があった。 AP37しかしながら,被告C医師は,亡Aに対し,面談票(乙1-~)に記載された事項と輸血に関する一般的な説明をしたのみであ り,本件手術には具体的に出血,胆汁漏れ,縫合不全などの死にも至る合併症の危険が伴うものであることを説明していない。 亡Aは,手術時期についても,平成15年3月18日に入院した際には,そのわずか1週間後に予定されているとは考えもしていなかった。 被告C医師からは,口頭で「手術の翌日から食事ができる「4月15」日から20日くらいには退院できる。千鳥ヶ淵の桜は無理でも,娘さんに車で走ってもらえば甲府の先あたりの桜が見られる」と言われたため,亡Aと原告は,すぐに回復できる手術を受けるものと誤信した。 (三)被告C医師は,亡A及び原告に対し,本件手術を受けなかった場合- 17 -の余命について,約3か月程度との説明もしなかった。被告C医師は,亡Aと同年齢の人が肝臓切除術を受けたときの死亡率も説明しなかった。 (四)被告C医師が手術以外の治療法として呈示したのは,主に放射線治療のうちの陽子線治療であり,その他の治療法については説明をして 亡Aと同年齢の人が肝臓切除術を受けたときの死亡率も説明しなかった。 (四)被告C医師が手術以外の治療法として呈示したのは,主に放射線治療のうちの陽子線治療であり,その他の治療法については説明をしていない。 ( )被告C医師は,陽子線治療について,第1手術の結果肝臓の近く に他の臓器があり放射線を照射すると他の臓器まで被曝するので手術しかないとして,手術を推奨している。面談票には,そのほかの治療法として,放射線治療のうちの腔内照射の記載と黄疸が生じた場合のについての記載があるが,そういった手段をとった場合の余命PTCDとリスクについては,亡Aが比較・選択できるような具体的な説明はなされていない。 ( )亡Aには,手術や放射線治療の他に,保存的治療として,閉塞性 黄疸及び胆管炎を防ぐためにあるいはによって作成されPTCDPTCDた経路を利用して胆道内にステントを留置して胆道の狭窄部の開存性を確保するという方法があり,本件手術のような侵襲性の高い手術をしなくとも,より低侵襲の手段によって死亡の危険を回避することができた。 (五)( )亡Aが平成15年1月23日の時点で「元気だけど前回より5 年歳をとっているしね」と発言していたとしても,手術の危険性について合併症の具体的内容や高齢によるリスクの増減等の説明を受けたうえでの発言ではない。亡Aは,本件手術による危険とは,手術によって体力が落ちることと手術後回復が遅いといった具合に抽象的にしか理解していなかった。原告も,同月31日の時点で,前回の手術後に日常生活が送れるまでには大分時間がかかったが,今回はそれ以上に時間がかかるという程度の認識しかなかった。 - 18 -( )亡Aは,同年3月18日に被告病院に再入院したのは形式的には 手術目的であったが,原告は,同日 分時間がかかったが,今回はそれ以上に時間がかかるという程度の認識しかなかった。 - 18 -( )亡Aは,同年3月18日に被告病院に再入院したのは形式的には 手術目的であったが,原告は,同日被告C医師に対して,3日前に掲載された肝臓癌に対する血管塞栓治療に関する新聞記事(甲5)Bを持参して手術以外の方法もあるのではないかと提案した。被告C医師は,それはだめだと述べるのみで相手にしなかったが,原告が入院当日にこのような提案をしたことに照らしても,亡Aが同日積極的に手術を希望した事実はない。 (被告らの主張)(一)被告C医師は,亡Aに対し,出血,胆汁漏れ,縫合不全といった手術の合併症の説明を,平成14年12月11日,平成15年1月23日,同月31日の3回にわたり行った。 ( )被告C医師は,亡Aに対し,平成14年12月11日外来で入院 を決めた際に,次の内容の説明をした「腫瘍が再発している可能性。 が高いので,入院して検査を受けてもらうべきである。現在は,胆管のうちの1本が詰まりかけているが,今後胆管が詰まった場合には,黄疸を防ぐために胆汁を外に出す脇道をチューブ()を入れてPTCD作る方法がある。再発した腫瘍を治すためには,手術をして切り取ることもあるが,手術には危険性がある。もともと高齢であったが,Aさんには体力があり5年前の手術はうまくいった。しかしあれから更に5年分年をとっているので,それだけリスクが増している。よく検査をしてから治療法を考えましょう」。 ( )被告C医師は,平成15年1月23日,入院中の亡Aに対し,次 のような説明をした。 被告C医師は「手術は技術的には可能かも知れない。肝臓を切る,手術は時間も長くかかり,術中の麻酔のトラブルや手術の後には出血や胆汁漏れ,肝不全が起こる可能性があり し,次 のような説明をした。 被告C医師は「手術は技術的には可能かも知れない。肝臓を切る,手術は時間も長くかかり,術中の麻酔のトラブルや手術の後には出血や胆汁漏れ,肝不全が起こる可能性があり,亡くなる危険性もあり得- 19 -ます」と肝臓等の手術時に一般的に行う説明をした。そのうえで,。 ,,被告C医師は「もともと普通の高齢者よりもAさんは元気であるがやはり高齢であることには間違いがない。さらに5年前より5年分歳をとったので,全身状態のリスクは増している」ことを説明したと。 ころ,亡Aは「元気だけど前回より5年分歳をとっているしね」と。 危険性を理解していた。 被告C医師は,その後原告と廊下で話をし「手術には合併症や死,亡の危険性があり,元気そうでも高齢なので危険性はその分増している」と話したところ,原告は「母は前回うまくいったので今回も。 ,手術を受けたいんだと思うが,術後のトラブルが心配なのとトラブルになって私に世話をかけるのを心配しているようだ。だから私からは,手術を勧めも止めもしない。本人の選択に任せたい」と述べた。 。 ( )被告C医師は,平成15年1月31日,亡Aに対し,これまでの 検査で,亡Aの病状は,前回と同様の腫瘍再発であり,手術が可能であることと治療法は手術か放射線であることを説明し,肝臓の病変部の近くには放射線に弱い小腸などがあるので,放射線を当てるのも危険性があること,根本的に治す治療としては手術しかないが,手術は合併症や死亡のリスクがあること,亡Aの場合,これに加えて高齢であるので負担はそれだけ大きく危険性は高くなることを説明したところ,亡A及び原告ともに,手術か放射線治療か悩んで即答できなかった。 (二)亡Aは,次のような経緯をたどり,最終的に自らの意思で手術を選択したものである。 大きく危険性は高くなることを説明したところ,亡A及び原告ともに,手術か放射線治療か悩んで即答できなかった。 (二)亡Aは,次のような経緯をたどり,最終的に自らの意思で手術を選択したものである。 ( )被告C医師は,平成15年2月2日,亡Aに対し「どうするか ,考えがまとまりましたか」と尋ねると,亡Aは「手術はせずに放。 ,射線に」と答えたので,被告C医師は「分かりました。手術の準備,- 20 -はせずに放射線科を受診していただきます」と話した。 。 ( )亡Aは,同月6日,放射線科を受診し,H医師から放射線治療に ついて説明を受けた。H医師は,亡Aに対し,放射線治療の方法として,線を体外から照射する方法,腔内照射する方法及び陽子線治療Xがあることを説明し,合併症として腸の潰瘍,出血及び穿孔の危険性を説明した。H医師は,いずれの放射線治療の方法も効果が少ない可能性があり,手術の方が根本的な治療であることを説明した。 ( )被告C医師は,同月7日,亡Aに対し,H医師の説明を聞いた後 で治療法の選択について確認したところ,亡Aは,陽子線治療を希望しつつ,再びかなり悩んでいた。 ( )被告C医師は,同月12日,亡Aと原告に対し,意思確認をした ところ,亡A及び原告は,放射線治療の副作用や根治的治療法が手術であることから放射線治療を選択するか手術を選択するか悩んでいたことから,手術も放射線治療もどちらもしない選択肢もあることを話すと,亡Aは,どちらもしない選択肢については即座に拒絶し,よくなるための治療をしたいとの希望を表明して悩んでいた。 ( )亡Aは,直ちに治療法の選択をすることができず,退院して自宅 でよく考えたいとのことで,同月14日,被告病院をいったん退院した。 ( )亡Aは,同年3月18日「今回は 明して悩んでいた。 ( )亡Aは,直ちに治療法の選択をすることができず,退院して自宅 でよく考えたいとのことで,同月14日,被告病院をいったん退院した。 ( )亡Aは,同年3月18日「今回は,最初からちゃんと心を決め ,てきました」と発言し,自身で肝臓切除術を決意したことを明示し。 て再度被告病院に入院した。被告C医師は,同月24日亡Aに対し,手術の最終説明として,残った肝臓の約半分を切り取る「前区域切除」を行うこと,合併症として一般的に起こる手術中の予期せぬトラブルのほか肝臓切除術の合併症として「出血「胆汁漏れ「肝不」,全」で長期入院や死に至ることもあることを話し,亡Aから同意書を- 21 -受領した。 (三)本件手術は,悪性腫瘍を原因とする肝臓及び胆管の切除術である。 原告は,会社を経営しており,テレビや新聞で癌について見聞きしたことがあり,常識的にも,本件手術により死亡する可能性があることは亡Aも原告も十分に理解していたものである。 原告自身も,平成15年1月31日の説明の際「今は歳も歳なので,私からは無理に勧められない。前回は無事に家に帰れたけれど」と,。 今回は無事に帰宅できない可能性があることを前提とした話をしている。 原告は,一時退院中に,F病院のG医師に相談に行き,G医師から「大丈夫ですよ」と言われたと供述し,亡Aに対して他の医療機関の。 セカンドオピニオンを受けることを勧めたと供述する。かかる原告の行動は,手術の危険性がないと考えていたのであれば矛盾する行動である。 それに加えて,原告は,被告C医師に対して,本件手術から死亡に至るまでの1か月半の期間中,一度も「本件手術について)危険性の説(明を受けたことがない」との主張をしたことがない。原告が,危険性。 の説明を受けておらず危険性の存在を認識して 本件手術から死亡に至るまでの1か月半の期間中,一度も「本件手術について)危険性の説(明を受けたことがない」との主張をしたことがない。原告が,危険性。 の説明を受けておらず危険性の存在を認識していなかったのであれば,手術から亡Aの死亡に至るまでの間あるいは死亡直後にその旨の主張がなされるはずである。 以上のような原告の行動は,原告が危険性の説明を受けかつこれを理解していたことの現れである。 (四)原告が主張する他の治療法については,以下に述べるとおり被告C医師は説明義務を負わない。 ( )本件手術を受けるという選択は,亡A自身が一時退院中に決めた ものであり,原告は,亡Aの選択に任せる旨の発言をしていた。 亡Aは,再入院の際「今回は,最初からちゃんと心を決めてきま,した」と発言していて「つい(腫瘍)がおなかにあるんだ…と考。 ,,- 22 -えちゃって…何だかスッキリしないんですよ」とも述べていて,再。 入院した目的は,亡A自身が根治手術を希望したからであると認められる。 原告も「黙って死を受け入れるという覚悟があったら,病院の門,はくぐらない「母の希望で住宅も建て替えて…年取ってから楽に。」暮らしたいと思って建て替えた」と述べており,被告C医師も,亡。 Aが「家を建て替えてちゃんと治ってもう一回,ちゃんと暮らしたい。 健康な状態で家に帰りたい」とおっしゃっていたと述べており,亡。 Aが根治を望んでいたことは明らかである。 以上からすると,手術が標準的治療である本件において,自ら「今回は,最初から…心を決めてきました」と述べる亡Aに対して,被。 告C医師に姑息的治療法の説明をする法的な義務があるとはいえない。 ( )被告C医師に姑息的治療法の説明をする法的な義務があるとはい えない点は,さておくとしても,被告C医 る亡Aに対して,被。 告C医師に姑息的治療法の説明をする法的な義務があるとはいえない。 ( )被告C医師に姑息的治療法の説明をする法的な義務があるとはい えない点は,さておくとしても,被告C医師は,亡Aに対して姑息的治療法に関する説明を行っている。 被告C医師は,亡Aに対し,平成14年12月11日外来で入院を決めた際に「この先,胆管が全て詰まって胆汁が出せなくなり黄疸,が出た場合には,チューブ()を入れて胆汁を外に出す脇道をPTCD作る方法がある「チューブで抜くとしてもいずれにしても一時し。」のぎで致命的な状態になります」と説明している。亡Aは,肝臓切。 除術や放射線治療を受けない場合に,ドレナージをする方法()があることや,それをしても効果が一時しのぎで死に至るPTCDことの説明は受けていたのである。このことは,原告も時期の点を除いて(原告は平成16年1月16日と主張)認めているところであり,原告本人は,この説明を記載した面談票(乙1-)の写しを亡AP37A自身が所持していたことをも認める供述をしている。 - 23 -,( )前記争点1(被告らの主張)(三)( )ないし( )で記載したとおり 又はに加えて胆道内にステントを留置する方法は,いずPTCDPTCDれも腫瘍の増殖を防ぐ効果がない姑息的治療法である。亡Aの腫瘍は,胆管内充満型腫瘍であるため,一般的な胆道狭窄型腫瘍と比べて延命効果が期待できず,わずかな期間の黄疸症状の緩和の効果しかなく,根治的治療法である肝臓切除術の代替手段とはそもそもなりえない。 しかも,前述したとおり,胆管内充満型腫瘍である亡Aの腫瘍では完全閉塞に至らないので胆管の拡張が見られないため,ガイドワイヤーの挿入が難しく,はそもそも実際には実施することができなP りえない。 しかも,前述したとおり,胆管内充満型腫瘍である亡Aの腫瘍では完全閉塞に至らないので胆管の拡張が見られないため,ガイドワイヤーの挿入が難しく,はそもそも実際には実施することができなPTCDかった可能性が高い。第1手術を受けた亡Aにとって,ステント挿入は禁忌とされ,ステントを留置しても極めて早期の閉塞が予測され,細菌感染による肝膿瘍,敗血症を起こす危険性が高い方法である。 亡Aの腫瘍のような胆管内充満型腫瘍は,①完全閉塞ではないにせよ胆管の狭窄をおこして上流から流れてくる胆汁の大半の排出を妨げることに加え,②乳頭状胆管内充満型腫瘍自体が胆管壁に沿って増殖して胆管の枝分かれ部をふさぎ,枝分かれ胆管からの胆汁の排出を妨げる。ステントやドレナージチューブと胆管壁の間を腫瘍が進展するので,ステントやドレナージチューブを入れることによっても,②を防ぐことはできず,②によって胆汁を排出できない枝分かれ胆管部分の流域の肝細胞が死滅するのを防止できない。 したがって,被告C医師に対して,明らかに治療効果が劣りかつ危険性が高い治療法を説明すべき義務を課すことはできない。 ( )放射線治療については,前記争点1(被告らの主張)(三)( )で記 載したとおりの危険性があり,亡Aが第1手術を受けているため,空腸の被曝が避けられず十分な治療効果を上げられるだけの線量を照射できないことから肝臓切除術と比べて治療効果が劣ることを亡Aに対- 24 -して説明した。被告C医師は,亡Aに対し,①手術による合併症及び死に至る危険性の説明,②放射線治療の合併症及び死に至る危険性の説明,③手術も放射線治療もしないという3つの選択肢があることを告げている。 亡Aは,かかる説明を理解して選択に迷い,いったん退院までして検討し,自ら手術という根治的治療法を選 及び死に至る危険性の説明,③手術も放射線治療もしないという3つの選択肢があることを告げている。 亡Aは,かかる説明を理解して選択に迷い,いったん退院までして検討し,自ら手術という根治的治療法を選択したものである。 したがって,被告C医師は,亡Aに対して,放射線治療に関する説明義務を尽くしている。 ( )レーザー治療については,現時点(2005年)においても,未 だその効果等について有効・無効の議論の分かれる治療法であって,保険診療対象となっていないばかりか,高度先進治療方法としても認められていないものである。 原告が主張するレーザー治療は,現時点でも全くその有効性が実証されておらず確立されていない治療法であるので,かかる治療法についてまで,医師は説明義務を負うものではない。 (五)被告C医師は,亡Aに対して,本件手術をせずに放置した場合の余命について3か月という数字を示し説明してはいない。しかし,被告C医師は,放置すれば死亡することを説明しており,説明義務は尽くしている。被告C医師に,余命3か月という推測に過ぎない数値を示して説明する義務はない。 また,被告C医師に,手術による同年齢者の死亡率を説明する義務はない。 原告の損害はいくらか。 (原告の主張)(一)逸失利益合計1991万円( )給与分1091万円 - 25 -亡Aは,死亡当時79歳で,収入としてはD工業株式会社の取締役として360万円の年収を得ていた。平均余命は10年,就労可能年数は余命の半分の5年とすると,5年のライプニッツ係数は4.3294であり,生活費控除率を30%とすると,逸失利益は1091万0088円となるが,そのうちの1091万円を請求する。 ①万円×( -)×=万円 0.34.329410910088( ) 費控除率を30%とすると,逸失利益は1091万0088円となるが,そのうちの1091万円を請求する。 ①万円×( -)×=万円 0.34.329410910088( )年金分900万円 亡Aは,2か月分で27万7583円の年金を受給していた。そうすると,亡Aは,平均余命の10年間にわたり年金を受給できたはずであるから,10年のライプニッツ係数は7.7217であり,生活費控除率を30%とすると,逸失利益は,900万2333円となるが,そのうちの900万円を請求する。 ②万円××( -)×=万円 7583 0.37.7217 2333( )( )と( )を合計すると1991万円となる。 (二)慰謝料合計3500万円( )亡Aの慰謝料3000万円 ( )原告固有の慰謝料500万円 (三)葬儀費用120万円(四)小計5611万円(五)弁護士費用560万円(六)総計6171万円(被告らの主張)(一)逸失利益について亡Aの収入は,役員報酬であるので利益配当分は逸失利益とならない。 遺族年金についても逸失利益とならない。生活費控除率も争う。 余命については,平成15年3月25日に本件手術を受けなかった場- 26 -合には,約3ヶ月程度の余命しかなく,就労可能期間は存在しない。したがって,逸失利益はない。 (二)慰謝料について争う。 (三)葬儀費用及び弁護士費用について知らない。 第三当裁判所の判断一医学的知見BB甲第3号証,第4号証,第8号証ないし第10号証,第11号証,乙第1号証,第3号証,第4号証,第6号証,第8号証,第10号証,第11号証の1,2,第12号証,証人H医師の証言,被告C医師本人尋問の結 第3号証,第4号証,第8号証ないし第10号証,第11号証,乙第1号証,第3号証,第4号証,第6号証,第8号証,第10号証,第11号証の1,2,第12号証,証人H医師の証言,被告C医師本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば,次の医学的知見を認めることができる。 胆管パピロマトーシス(胆管乳頭腫症)について(一)頻度胆管パピロマトーシスは,1894年に最初に報告されて以来,1996年ころまでの100年あまりの間に全世界で50例程度の報告があるのみで,非常にまれな疾患である(甲4,乙1。 BB)(二)腫瘍の性格胆管パピロマトーシスは,WHOの「肝腫瘍の組織学的分類(199」4年)によれば,肝内胆管腺腫などとならんで良性腫瘍に分類されている(甲3。 B)胆管パピロマトーシスは,胆管被覆上皮の乳頭状の増殖を特徴とし,組織学的に核異型や核分裂像の出現はまれで,浸潤像は見られず,胆道癌とは区別され胆道の良性腫瘍として分類されている。しかし中には,組織学的に良性であっても,門脈周囲のリンパ節に転移が見られたという報告や,胆管壁への浸潤がある症例や約3割の症例で診断時もしくは経過観察中に- 27 -悪性転化することも知られており,(低悪性度の悪性lowgrademalignancy腫瘍)あるいは(良性腫瘍と悪性腫瘍の境界域)と扱うborderlinemalignancy方が適切かも知れないとされている。また,切除標本の詳細な検索で,組織病理学的に癌の部位を含んでいる,いわゆるパピロマトーシスの一部に癌()が存在する症例も報告されているcarcinomainbiliarypapillomatosis(甲4,乙1。 BB)(三)病態病変部では,乳頭腫細胞が大量のゼリー状粘液を産生することが る症例も報告されているcarcinomainbiliarypapillomatosis(甲4,乙1。 BB)(三)病態病変部では,乳頭腫細胞が大量のゼリー状粘液を産生することが多く,これが胆管内腔に充満し胆道閉塞を来すことが多い。臨床的には,間欠性の閉塞性黄疸で発症する例がほとんどで,約8割が上腹部痛を,7割が胆管炎を合併する。間欠性の閉塞性黄疸が生じる原因として,増殖した乳頭状の腫瘍断片や粘液が種々の程度に胆管を閉塞するが,十二指腸に排泄されることがあり,完全閉塞にはなりにくいためとされている(甲4,B乙1。 B)(四)治療と予後患者は,外科的切除術や胆管内腔の腫瘍断片の掻爬によって生存率の延長が期待され,4~5年の平均生存率といわれている。死因は,胆道閉塞による敗血症に起因することが多く,腫瘍の増殖や転移に伴う癌性悪液質によるものはほとんどない。 従来は,胆嚢摘出術,腫瘍掻爬術+ドレナージチューブ留置といった姑息的手術が施行されることが多かったが,それらのうちのほとんどは黄疸や胆管炎で再発しており,再発率は追跡調査された例の8割にも達するとする文献もある。平成8年ころには,パピロマトーシスは,胆道癌に準じて扱われるため,治療法として外科手術が選択されるようになった。 根治手術施行症例では,術後4~5年の追跡で再発のない症例もあり,長期生存が期待できる。パピロマトーシスが肝臓の一側の葉に限局してい- 28 -ることが明らかな例では,根治手術は妥当な選択と考えられ,とくに若年者には,長期生存の可能性も含めて根治手術が検討されるのが望ましい。 他方,肝臓の両葉に広がるパピロマトーシスは,根治手術の適応とならない。長期間の体外ドレナージを避けるため,姑息的手術及び体内バイパス術が選択されることが多い。経 根治手術が検討されるのが望ましい。 他方,肝臓の両葉に広がるパピロマトーシスは,根治手術の適応とならない。長期間の体外ドレナージを避けるため,姑息的手術及び体内バイパス術が選択されることが多い。経肝ステント留置が有効であったという報告もある。放射線療法,化学療法についての著効例は報告されておらず,効果のほどは不明である。しかし,腫瘍の完全摘出が不可能な場合,及び再発が見られた場合の予後は不良で,閉塞性黄疸とその合併症,感染などが死因となる(甲4,乙1)。 BB腫瘍掻爬術+ドレナージチューブ留置という治療法は,1980年代に行われたもので,画像診断が未発達で術前の診断が詳細でなくの技PTCD術も未発達で危険であった時代に,診断目的で開腹し,術中造影を行って切除できないことが判明すれば,何もしないで閉腹するよりはその時点でできる姑息的な処置として行われたものである。開腹術であることによる患者のリスクと負担に比べて,実施しても得られる胆管開存期間が短期間(腫瘍増殖による再閉塞までのわずかな期間)であることから,現在では,腫瘍掻爬術+ドレナージチューブ留置を目的とした開腹術は行われていない(甲4,乙1,第2回被告C医師本人,弁論の全趣旨)。 BBP14 肝臓切除術について(一)切除限界肝硬変のない肝臓では,非癌肝の60%までは肝機能にほとんど影響を与えずに切除できるが,70%を超えると何らかの肝機能障害を起こし,合併症を併発すると肝不全で死亡することがある。広範囲肝切除では,肝機能から見ると1週間以内に95%以上の回復を見,肝体積も1年で90%以上の回復(再生肥大)を見る。 (二)術式- 29 -肝切除は,1970年代になって4つの肝切除術,すなわち右葉切除,拡大右葉切除,左葉切除,左外側区域切除が標準 復を見,肝体積も1年で90%以上の回復(再生肥大)を見る。 (二)術式- 29 -肝切除は,1970年代になって4つの肝切除術,すなわち右葉切除,拡大右葉切除,左葉切除,左外側区域切除が標準術式として確立した。上記4つの肝切除術よりも小範囲の切除術は,1980年代に入って確立したもので,系統的亜区域切除術,区域切除術などがあり,区域切除術には,右後区域切除,右前区域切除,左内側区域切除,左外側区域切除がある。 (乙4)B(三)再度の肝切除の危険性,予後(乙6)B本件とは原疾患が異なるが,大腸癌の肝転移に対しては,現在のところ肝切除術が長期生存及び治癒を望みうる唯一の治療法とされており,肝切除後の5年生存率は25~40%と報告されている。しかし,肝切除術後の再発率は高く,全肝切除症例の55~80%に再発が生じ,このうち肝臓単独の再発は15~40%の症例で起きる。実際に再度の肝切除術の適応となる症例は,肝単独再発例の30%程度,もしくは初回肝切除症例の8%程度と報告されている。 再度の肝切除に際しては,癒着剥離や解剖学的同定の困難さに伴い出血その他の合併症の頻度が初回肝切除術時よりも高くなることが予想されるが,これは,術中超音波検査を施行し腫瘍と周囲の主要な脈管との解剖学的位置関係を把握したり,術中の丁寧な止血操作により回避できうる問題と考えられる。諸家の報告でも,再肝切除術後の手術死亡率は0~3%と初回肝切除術時の5%以下と同等であった。これらの結果は,肝再発に対する再切除術が初回切除時と同程度安全に施行できることを示している。 未治療の大腸癌肝転移症例の余命は,45~142月と報告されてお..り,初回肝切除後の再発症例における生存期間の中間値は未治療の場合4か月であったと報告する文献もある。これに対し,乙第6号 。 未治療の大腸癌肝転移症例の余命は,45~142月と報告されてお..り,初回肝切除後の再発症例における生存期間の中間値は未治療の場合4か月であったと報告する文献もある。これに対し,乙第6号証では,B再度の肝切除例の生存期間の中間値は自験例では43か月,過去の報告でも35か月程度となっており,未治療症例に比して明らかに予後延長効果- 30 -があるといえる。一方肝動注化学療法(もしくは肝動注+全身化学療法)については,奏効率40~70%と報告されているが,奏効期間は多くの場合1年で,生存期間の中間値も12~28か月と報告されている。いまprospectiverandomizedだ再肝切除と化学療法を含めた他の治療法での(ランダム化比較試験)は施行されておらず,以上の結果のみからstudy明確な結論を得ることはできないが,いずれにしても再肝切除のみが長期生存をもたらしうる唯一の治療法と考えるとされている。 (四)肝切除における手術時間,出血量( )東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座消化器外科における過 去5年間(~)の肝門部上部胆管癌切除症例は40例1998.4.12003.3.31で,胆管切除のみの2例を除く肝切除38例では,平均手術時間558分,平均出血量2103gであった。うち5例(132%)が無輸血.であった。また,肝門部胆管癌に対して肝拡大右葉切除,尾状葉切除,門脈合併切除が施行された1例(2004年3月11日施行分)は,手術時間674分,出血量985gであった(甲8)。 B( )国立がんセンター中央病院(東京)における肝門部胆管癌に対する 根治的肝切除を伴う胆道手術の症例102例(~)で,手術関20002004連死亡はゼロであったところ,その平均手術時間は合併症がないも センター中央病院(東京)における肝門部胆管癌に対する 根治的肝切除を伴う胆道手術の症例102例(~)で,手術関20002004連死亡はゼロであったところ,その平均手術時間は合併症がないものが630分,合併症があったものが660分であり,平均出血量は合併症がないものが1822g,合併症があったものが1943gであった。 (乙11の1及び2)B 胆道ステントについて(一)胆道ステントの適応と問題点(乙3)B( )胆道ステントの種類と特徴 ア胆道ドレナージの方法には,その経路によって,経皮経肝胆道ドレナージ()と経十二指腸乳頭的アプローチによる内視鏡的胆道PTCD- 31 -ドレナージ()の2種類がある。この両者には,体外へドレナーEBDジチューブが出るか(,体内にドレナージチューブが留まるPTCD)か()の違いが存する(乙3。 EBDB)イメタリックステントは,1990年代に入ってから使用されるようになった。メタリックステントはプラスチックステントに比べて,開存期間が明らかに長いという評価が一般的であるが,網目状構造であるため,腫瘍がメッシュ間隙を超えてステントの内側に進展してくる()ことによる早期閉塞が問題である。そこで,ポリウレタンingrowthcoveredやポリエチレンの膜によって被覆したメタリックステント()が用いられ,その有用性が認められるようになってきた。 metallicstent(乙3)Bメタリックステントには,腫瘍がステントの内側に進展()ingrowthしてくることにより内腔が閉塞する可能性があること,高価であること,抜去不可能であることといった欠点がある(甲9-。 BP827)Bウプラスチックステントは,挿入と抜去が簡単で安価で thしてくることにより内腔が閉塞する可能性があること,高価であること,抜去不可能であることといった欠点がある(甲9-。 BP827)Bウプラスチックステントは,挿入と抜去が簡単で安価である(甲10-。しかし,プラスチックステントは,留置できるチューP233)ブ径が細く,開存期間,固定性,逆行性感染などの点で多くの問題点を残していた。特に,ステントの移動は全例の3~6%に,ステントの閉塞は全例の6~20%に認められ,ステントの開存期間は平均して約25週間であったとの報告がある。 メタリックステントは,従来のプラスチックステントと比較すると,大口径であり十分なドレナージ効果を得られ,自己拡張能により長期開存が期待できる,また挿入後数週間でステントが胆管上皮で覆われ,感染が起こりにくいとも報告されている(甲9-。 BP835)メタリックステントは,従来のプラスチックステントでは困難であった複数の肝内胆管の枝を内瘻化(ドレナージ)することができるメ- 32 -リットもある(甲11-。 BP249)患者が比較的長く生存できそうな場合はメタリックステント,そうでない場合はプラスチックステントなどの使い分けが必要であろうとされている(甲10-。 BP233)( )胆道ステント挿入の適応(乙3) B胆道ステント挿入の適応は,いうまでもなく閉塞性黄疸症例の胆道閉塞あるいは狭窄の治療である。メタリックステントは,長期開存が期待できるが,一般的に回収や交換が困難であり,また必ず閉塞することから良性狭窄に対して行うことは不適当である。悪性例で,しかも切除不能例あるいは手術不能例がよい適応である。 胆道ステント挿入は,悪性胆道閉塞の姑息的手段であり,予後が短期間である症例が適応である。胆管癌に関しては,放射線療 とは不適当である。悪性例で,しかも切除不能例あるいは手術不能例がよい適応である。 胆道ステント挿入は,悪性胆道閉塞の姑息的手段であり,予後が短期間である症例が適応である。胆管癌に関しては,放射線療法や化学療法,温熱療法などの集学的治療による有効性が認められており,積極的に行うことにより長期間延命が得られる症例もある。その場合には,メタリックステントを選択することが多いが,閉塞時の対策も考慮に入れてステントの種類を選択する必要がある。 ( )胆道ステント挿入の問題点(乙3) B胆道ステント挿入の合併症は,肝膿瘍,急性胆嚢炎,急性胆管炎,急性膵炎が主なものであり,その他として逸脱,迷入があり,問題点として最も多いのは閉塞であった。とくに肝膿瘍は,死に至る合併症として最も注意を要する。 閉塞の部位別では,肝門部では,肝膿瘍の合併が最も多く,挿入するステントの本数,挿入法が問題であり,下部胆管では,ステントを十二指腸へ出すために生じる急性胆嚢炎や急性胆管炎などの感染症,急性膵炎の予防をどうするかといった問題がある。さらには,ステント閉塞の予測と予防や閉塞時の対応など,多くの問題点が残っている。 - 33 -(二)肝門部胆管ステント挿入の問題点(甲10)B( )メタリックステントの問題点としては,次のようなものがある。 ①ステントの閉塞:腫瘍がステント内部に向かって進展する,胆泥,浮腫,反応性肉芽腫が原因となる。 ②逸脱:胆管狭窄と拡張部の力関係でステントが少しずつ移動して逸脱することがある。特に,肝門部胆管空腸吻合部狭窄に挿入した場合は,確実に逸脱するのでメタリックステントは禁忌である。 ③胆管炎,胆嚢炎④胆管出血,胆管穿孔,胆管穿通⑤腸管穿孔⑥全ての胆管への留置が困難⑦急性膵炎( )手術後の肝門部胆管 に挿入した場合は,確実に逸脱するのでメタリックステントは禁忌である。 ③胆管炎,胆嚢炎④胆管出血,胆管穿孔,胆管穿通⑤腸管穿孔⑥全ての胆管への留置が困難⑦急性膵炎( )手術後の肝門部胆管空腸吻合部狭窄に対するメタリックステントの 挿入が禁忌である理由は,腸管内腔が広いため,ステントの拡張する力が胆管狭窄部に均等に及ばないためと,腸管の蠕動運動によりステントが逸脱する可能性が高いからである。腸管に逸脱したステントは,腸管穿孔をおこしたり,周囲門脈,下大静脈に穿通して出血や敗血症などの感染を来したりする。 ( )肝門部胆管癌の患者に肝拡大右葉切除術を施行したが,胆管狭窄を 繰り返すようになり,手術から6か月後に肝門部胆管空腸吻合部にメタリックステントを挿入した。その後1年間に何回も高熱を発するようになり最後は敗血症で死亡したが,解剖したところステントが腸管から下大静脈に穿通していた症例が報告されている(甲10-。 BP230) 胆管癌・胆嚢癌に対する放射線治療計画ガイドライン()(乙8)2004B(一)放射線療法の目的・意義- 34 -肝内胆管癌,肝門部胆管癌,肝外の上・中・下部の胆管癌及び胆嚢癌に対して,現在のところは,手術のみが根治性を持つ治療である。よって,放射線治療の目的は,手術根治性の向上,手術不能時には延命を目指す姑息的治療,ステント開存保持や減黄などの対症治療である。この領域は,組織型,進展様式,切除可能性,再発様式などそれぞれの部位で異なり,治療にあたってそれらの違いを良く理解しておく必要がある。放射線治療の有効性を示唆する論文もあるが,エビデンスレベルは低く,明確な有用性は導き出されていない。進行癌には標準治療といえるものはない。 基本的な放射線治療手段は,外照射である。この領域の腫 る。放射線治療の有効性を示唆する論文もあるが,エビデンスレベルは低く,明確な有用性は導き出されていない。進行癌には標準治療といえるものはない。 基本的な放射線治療手段は,外照射である。この領域の腫瘍は放射線感受性が低く,線量増加の手段が必要との認識で,腔内照射併用の報告が多い。しかし合併症が無視できず,腔内照射は臨床試験段階として捉えられている。 (二)病態による放射線療法の適応手術不能例では,延命あるいは対症治療となる。早期癌や胆管周囲に限局した胆管癌は,病巣に線量を集中できれば根治性あるいは延命効果を期待できる。危険臓器である肝や消化管の耐容線量には十分配慮する。一般的にメタリックステントによる内瘻化は照射の後で行う。 (三)線量分割Gy.Gy.外照射の根治照射量は,少なくとも60(グレイ,18~2) /回,5回/週,5~6週が必要であるが,照射野に含まれる周囲Gy組織の耐容線量の限界により,総線量が45~55程度とせざるを得Gyないことが多い。術後照射の場合も同様である。腔内照射法を用いる場合には,外照射の線量を減じる。 (四)標準的な治療成績切除不能の場合の放射線単独あるいは化学療法・放射線療法併用の代表的な治療成績では,生存期間の平均値は4~17か月である。 - 35 -(五)合併症放射線治療の合併症は,消化管出血,胆道狭窄などがあり,前者はしばしば重篤である。腸や肝への影響を回避するためには,線量が制限される。 消化管の合併症は,外照射50以上で生じやすい。早期障害では,照Gy射期間中に嘔気,食欲不振,全身倦怠感が見られやすいが,多くは一過性で対症的治療で緩和される。肝障害や消化管潰瘍は,亜急性の経過で生じる。晩期障害には,肝萎縮,十二指腸などの消化管潰瘍・閉塞がある。胆道の瘢痕狭窄 食欲不振,全身倦怠感が見られやすいが,多くは一過性で対症的治療で緩和される。肝障害や消化管潰瘍は,亜急性の経過で生じる。晩期障害には,肝萎縮,十二指腸などの消化管潰瘍・閉塞がある。胆道の瘢痕狭窄で胆汁うっ滞性胆管炎が生じることがある。 胆管癌の治療成績胆管癌の治療成績については,根治手術がなされた場合,生存期間の中央値が11~38月,5年生存率は23~56%と報告されている。胆管癌の放射線治療については,1980年代までは外部照射40~50が基本Gy的に行われてきたが,この線量では病巣の制御率が不良なため,これに腔内照射20~30が併用(総線量60~80)されるようになったもGyGyのの,それでも生存期間の中央値は12月程度,5年生存率は10~12. 5%という成績であり,明らかに外科切除より治療成績は不良である(乙。 10第の)B 放射線療法と胆道ステントの併用療法について放射線療法と胆道ステントの併用療法については,次のような報告がある。 (甲)B11(一)腫瘍がメッシュの隙間からステント内部に進展して早期閉塞をきたすメタリックステントの欠点を補う目的で,メタリックステントを膜で被覆したカバーステント()が用いられるようになった。しかしcoveredstent現時点(2001年)におけるカバーステント()のよい適coveredstent応は肝外胆管であり,左右肝管が限度である。 ステントを用いた内瘻術の目標は,死亡するまでの比較的短期間,黄疸- 36 -の再発や胆管炎・肝膿瘍などの合併症がなく経過できることである。この観点から,メタリックステントと放射線治療による併用療法の最もよい適応は,放射線治療が比較的有効な胆管癌症例で,特にカバーステント()の適応がなく,複数枝の肝内胆管 なく経過できることである。この観点から,メタリックステントと放射線治療による併用療法の最もよい適応は,放射線治療が比較的有効な胆管癌症例で,特にカバーステント()の適応がなく,複数枝の肝内胆管の内瘻化が困難なためcoveredstentにプラスチックステント(チューブステント)の成績が不良な肝内胆管枝に閉塞を伴った症例であると考えられる()。P250(二)胆管癌の治療として根治を求める場合,第1選択は切除であることには異論はない。しかしながら,根治手術の適応例が少ないのが現状であり,特に肝門部胆管癌ではその傾向が強い。また,高齢者が比較的多く,重篤な合併疾患を有する症例や,手術を望まない症例も少なくない。これらの症例に対して,症状の改善,延命効果を期待して放射線治療が行われてきた()。P250(三)放射線治療の成否は,病巣の治療線量と周囲正常組織の耐容線量との兼ね合いである治療可能比()にかかっている。胆管癌の病巣は,病TR理組織学的に放射線抵抗性の腺癌であり,一般的に治癒期待線量は70~ (グレイ)程度が必要とされている。この線量を外照射単独で行Gyうことは困難なため,腔内照射の併用が腫瘍制御のために必要となる。腔内照射は,小線源照射装置を用いてチューブから照射を行うため胆PTCD管に限局した照射が可能であり,1回の治療時間が5分間程度と短いため,全身状態が不良な症例や高齢者にも安全に施行できる()。P250,P252(四)旭川厚生病院放射線科で放射線治療とステント留置の併用療法を施行した肝門部胆管癌症例112例の治療成績は,累積生存率では,手術をしたが癌を完全に切除することができなかった非治癒切除例と遜色がなく,ステントの開存率も従来の成績と比較すると良好である。このことから,根治切除 管癌症例112例の治療成績は,累積生存率では,手術をしたが癌を完全に切除することができなかった非治癒切除例と遜色がなく,ステントの開存率も従来の成績と比較すると良好である。このことから,根治切除困難例に対しては,積極的に腔内照射を併用した放射線療法が行われるべきと考えられている。 - 37 -放射線治療などにより腫瘍の縮小が図られた症例では,メタリックステントによる内瘻術により開存期間,生存期間とも延長させることができる。 この観点から,メタリックステントによる内瘻術の最もよい適応は,放射線治療で効果が見られた胆管癌で,特にプラスチックステントの成績が不良な肝内胆管枝に閉塞を伴った症例と考えられている()。P252 (経皮経肝胆管ドレナージ)についてPTCDは,胆管が閉塞して胆管の拡張や黄疸が生じた時に,胆汁を体外にPTCD出して黄疸を軽減し肝不全を防ぐために必要となる対症的治療法であり,胆PTCD管の拡張がない段階ではそもそも胆管を穿刺することが困難である。 は,失敗すると肝臓の表面に穴が開いて胆汁や血液が継続的に流れ出し,緊急手術となることも多く,そのまま死亡することもある(証人H医師,。 P6,第1回被告C医師本人)P7P15 閉塞性黄疸を起こした患者の予後(第2回被告C医師本人~,P12P14~)P29P31胆管が閉塞して黄疸をきたした患者について,等黄疸を減らす措置PTCDを何らとらなかった場合であっても,胆管炎を起こさなければその予後は2か月程度生きることもある。しかし,閉塞性黄疸を来したうえに胆管炎を起こした場合には,敗血症で数時間あるいは数日程度で急死してしまう危険性が高い。そして,亡Aのように胆管空腸吻合術を受けた患者は,胆管の十二指腸部分に存在する胆汁の逆流防止弁を切除 たうえに胆管炎を起こした場合には,敗血症で数時間あるいは数日程度で急死してしまう危険性が高い。そして,亡Aのように胆管空腸吻合術を受けた患者は,胆管の十二指腸部分に存在する胆汁の逆流防止弁を切除してしまっているので,腸内から細菌が胆管内に入りやすく,胆管炎を起こす危険性は高い。 高齢者の手術について(乙12,第2回被告C医師本人~,弁BP15P16論の全趣旨)70歳を超えるような高齢者については,昭和62年ころまでは手術はあまりなされていなかった。しかし,最近の10年間で,年齢が80歳代であれば,心肺機能や腎機能に問題がなく脳血管障害もなく全身状態が良好な高- 38 -齢者には,通常と同じく全身麻酔を伴う手術が実施されるようになった。これは,診断技術が進歩して腫瘍が小さいうちに発見できるようになり,検査機器や薬剤など術後管理が進歩し,患者の体力が向上したことが原因である。 もちろん患者が80歳あるいは90歳といった高齢者であれば,心肺機能・腎機能に問題がなく脳血管障害もなく全身状態が良好であっても,若い人とリスクが全く同じとは言い切れず,若い人よりはリスクが高い高齢者が存在することは否定できない。しかしながら,高齢者は年齢以上に個人差が大きく,特定の患者についてどれだけ若い人よりもリスクが高いかを評価する手段がなく,当該個人についてリスクが具体的にどの程度高いかは予測不可能である。 国立がんセンター中央病院の統計によると,肝癌・胆管癌で肝切除を実施した症例のうち,平成12年()は82例のうち70歳以上の患者が120009例で23.2%(75歳以上は4例で4.9%,平成13年()は)200184例のうち70歳以上の患者が23例で27%(75歳以上は8例で9. 5%,平成14年()は84例のうち70歳以上の患 9例で23.2%(75歳以上は4例で4.9%,平成13年()は)200184例のうち70歳以上の患者が23例で27%(75歳以上は8例で9. 5%,平成14年()は84例のうち70歳以上の患者が28例で3)20023%(75歳以上は11例で13.1%,平成15年()は67例の)2003うち70歳以上の患者が21例で31.3%(75歳以上は6例で9.0). %,平成16年()は62例のうち70歳以上の患者が16例で2520048%(75歳以上は8例で12.9%,平成17年()は43例のう)2005ち70歳以上の患者が15例で34.9%(75歳以上は6例で14.0%)と,肝切除をした症例の3割前後を70歳以上の高齢者が占めている。 二診療経過に関する診療録の記載等乙A第1号証,証人H医師の証言及び被告C医師本人尋問の結果によれば,亡Aに関する被告病院の診療録に次の記載があることを認めることができる。 (かっこ内の数字は乙第1号証の該当頁を表す。 A)なお,被告C医師は,亡A又は原告と面談して病状や治療方針について説明- 39 -した際は,その内容等を面談票に記載して複写式の用紙のうち一枚を相手方に交付し,残りの1枚を診療録に綴じ込む扱いをしていた。 本件手術までの記載(一)第1手術までの記載( )診療録の平成9年8月15日欄には,第1手術の術前カンファレン スが開催されたことを示す次の記載がある()。P62<フィルム手術前カンファ>血管造影上の所見,上の所見が記載され,腫瘍は肝臓の区CTS4域にあると結論を出している部分が存在する。 その続きの部分では「胆管内発育型であり,境界は明瞭と思われ,る。→左葉切除で「また,区域表面の転移?は性状が少し異な。」S7るが,血管腫 S4域にあると結論を出している部分が存在する。 その続きの部分では「胆管内発育型であり,境界は明瞭と思われ,る。→左葉切除で「また,区域表面の転移?は性状が少し異な。」S7るが,血管腫ではない「以上より,幽門側胃切除+肝左葉切除+。」区域部分切除で」と記載されている。 S7かかる記載によれば,同日に近接する日に手術前カンファレンスが開かれ,第手術の切除範囲が決定されたことが認められる。 ( )被告C医師は,第1手術の前の平成9年8月16日,亡Aと面談し て,面談票に肝臓と胃についてそれぞれ術前と術後の図を描いて腫瘍の位置や切除範囲,術後の吻合状況を示したうえで,次のとおり記載した。 ()P358:30入室マスイ9:30スタート7時間16:30終わりがん,良性ゆっくり大きくなる。 (肝臓について)もしも一か所しかなければ切除してしまえば再発しないかも知れない。 →切除した方がいい。 - 40 -肝臓:切られても元の大きさに戻る。85%とってよい(15%で。 生きている)(胃について)カメラで見たところ,早期がん+ちょっと進行取ったら治る(再発しない)→切除した方がよい(手術後のこと)手術で起こること・胆汁もれ(肝を切った面から)30~40%止まるまで管を入れておく普通は1週間~2週間で止まる。 ・膵液もれ(膵の被膜をはがす)止まるまで管を抜かない・ごはんは1週間たべない(胆管と小腸をつながなければ,3日~4日でたべられる)(胃の働き)・ごはんをためる・ごはんをならす→6か月すると気にならなくなる(腸が胃のないことに慣れてくる)( )被告C医師は,平成9年8月21日,第1手術終了後,原告と面談 して,面談票に肝臓と胃の術前と術後の図を描き,次のとおり記載した。 () 気にならなくなる(腸が胃のないことに慣れてくる)( )被告C医師は,平成9年8月21日,第1手術終了後,原告と面談 して,面談票に肝臓と胃の術前と術後の図を描き,次のとおり記載した。 ()P36病状は前回お話ししたと変わりない。病気は全部とれている。輸血しました。 2900CC出血+腹水=+=1500CC1500CC1200CC 960CC輸血()肝炎:ウイルスで移る-分かっている項目はすべてない。 :原因不明- 41 -・肝臓がびっくりして(ストレス)・未知の感染( )第1手術に伴う入院時の看護記録には次の記載がある。 ア看護婦用問題リストには,問題点として,次の4つが記載されている()。P442①血管造影施行に伴う合併症出現の潜在的状態(8月15日)②術前の共同問題(8月15日)③術後の合併症(8月21日)出血,肺合併症,術式より肝機能低下より肝不全へ移行する可能性,縫合不全の可能性④経口摂取開始に伴う腹部症状出現の可能性イ患者は,出来ることなら入院,手術はしたくないと言っている(8月15日。())P445入院日である平成9年8月11日の欄には,亡Aの発言として「今は何も症状なくケロッとしているんですよ」と記載されている。 。 同月12日の欄には,亡Aの発言として「とくに自覚症状ないですね」と記載されている()。 。P460ウ平成9年8月18日の欄には,亡Aの発言として「先生からお話,を聞いたら胸がいっぱいになっちゃった。2~3時間の手術だと思っていたら7時間と聞いて何だか怖くなっちゃう」と記載されている。 ()P463エ亡Aは,平成9年8月15日に中心静脈栄養()の点滴が入ってIVH以降,どこへ行くにも点滴スタンドを引っ張って行かねばならない 聞いて何だか怖くなっちゃう」と記載されている。 ()P463エ亡Aは,平成9年8月15日に中心静脈栄養()の点滴が入ってIVH以降,どこへ行くにも点滴スタンドを引っ張って行かねばならないこP463とが苦痛で,同月19日,同月20日と不満を漏らしている(。 ~)P465オ亡Aは,第1手術後の平成9年8月25日,管がたくさんついてい- 42 -て大変,管のところがつれる感じがするとこぼしており,同月27日からは痛みを訴えている()。P465,P466,P469( )第1手術の手術記録には次の記載がある() P125。 ml手術時間8時間46分,出血量2990しかし,面談票()の記載と総合すると,出血量のうちの半分はP36腹水であり,実際の出血量は1500である。 ml( )第手術後の診療録には,次の記載がある。 ①亡Aには,第手術後,5か所で合計8本のドレーンチューブが留 置されていたことを示す図が描かれている()。P72②第1手術後,平成9年8月28日まで連日発熱が続き,発熱の原因を検討した旨の記載がある(ないし)。P70P79③同年8月31日,下血が発生し,大腸からの出血を疑って,翌9月1日大腸内視鏡検査及び胃内視鏡検査を実施したが,いずれも出血等特記すべき事項はなかった()。P81,P82④同年9月5日,昨日から食事の経口摂取を開始した()。P85( )退院間際の看護記録には,亡Aの発言として次の記載がある。 ()P491,492①9月14日の欄には,先生は,退院の時薬いらないって言ってたけど,少し心配だわね。 ②退院は不安だけど,病院にずっといるわけにはいかないものね。C先生にもいろいろうかがえてよかった。大丈夫でしょう。 (二 日の欄には,先生は,退院の時薬いらないって言ってたけど,少し心配だわね。 ②退院は不安だけど,病院にずっといるわけにはいかないものね。C先生にもいろいろうかがえてよかった。大丈夫でしょう。 (二)被告病院退院後再発が判明するまでの記載診療録には,第手術後の亡Aの被告病院への通院状況について次の記 載がある。 ( )亡Aは,平成9年9月17日退院後,ほぼ3か月ないし6か月に一 度被告C医師の外来を受診して腹部検査を受けていたこと,被告CCT- 43 -医師は,平成11年8月18日以降は,亡A宛に,後日検査結果を記載した手紙を書いていたことが記載されている(~)。P88P92( )被告C医師は,平成13年3月20日,亡Aに対する手紙に「今 ,回3月7日にとらせていただきましたでは再発は見られませんでしCTた。今回で3年6か月です。今後ともよろしくお願いします」と記載。 した()。P92被告C医師は,平成14年6月12日,亡Aに対し「6月5日に撮,影したでは再発は見られませんでした。ただ総胆管が少しづつ太くCTなってきているので,今後も定期的に(6か月に1度でよいと思いますが)検査した方がよいとのコメントをいただきました。次回9月にお待ちしています」と記載した手紙を送付した()。 。P93( )亡Aは,平成14年9月4日,腹部検査を受けたところ,上 CTCT再発が認められた。 被告C医師は,同月11日,亡Aに対し,で肝内胆管に腫瘍状のCTものが認められるので胆管の状態がより詳しくわかる検査をしたMRIいから検査日程を決めるために被告C医師に電話するように求める内容の手紙を送ったが,届かず返送された(その時のあて所に尋ねあたりませんとして返送された手紙が診療録に綴じ込ま かる検査をしたMRIいから検査日程を決めるために被告C医師に電話するように求める内容の手紙を送ったが,届かず返送された(その時のあて所に尋ねあたりませんとして返送された手紙が診療録に綴じ込まれている。被告C医。)師は,同月18日電話もつながらなかったので,亡Aを紹介したF病院のG医師に連絡を依頼した()。P93,P30,P31(三)再発判明後第2回入院までの記載( )亡Aは,平成14年12月11日,腹部検査を受けた。被告C CT医師は,同日亡Aを外来で診察して「時々発熱があること,G医師か,ら処方された粉薬を飲むとすぐに下がること→胆管炎を既に発症,1/16に入院,(胆管穿刺造影)を行って腫瘍の範囲を確認して腔内PTC照射か手術」と記載した()。P93- 44 -( )被告C医師は,平成14年12月11日,亡Aを外来で診療した際 に,面談票に第1回手術前と現在の肝臓の図を描き,現時点の腫瘍の広がりを放置しておくと肝門部に向かって胆管内を腫瘍が進展していって4本の胆管を閉塞するまで成長する図を描き次の手術で切除予定の範囲を点線で示したうえで,次のとおり記載した。ただし,面談票には日付,患者氏名の記載はない()。P37,P93胆管内乳頭状がん(肺とかに転移する)腺腫(良性(転移しない))今は枝一本がつまりかけているだけですが,この先,本幹がつまってしまうと,胆汁が流れなくて黄疸が出る。 →胆汁を外に出す脇道をチューブを入れて作る。 1/16(木)9:30(原則)なお,原告は,被告C医師からこの面談票に基づく説明を受けた日付を平成15年1月16日の入院後であると主張し,甲第14号証及Bび原告本人尋問の結果中には,これに沿う部分がある。しかし「1/,16(木)9:30(原則」との記載 談票に基づく説明を受けた日付を平成15年1月16日の入院後であると主張し,甲第14号証及Bび原告本人尋問の結果中には,これに沿う部分がある。しかし「1/,16(木)9:30(原則」との記載は,その記載の趣旨からして入)院日及び病院に来院する時刻を記載したものと認められ,それらは入院後には記載する必要性が全く認められない事項であることに照らすと,上記面談票は平成14年12月11日に腹部検査を受けた後の外来CT受診時に作成され,亡Aにその写しが交付されたものと認めるのが相当であり,これに反する原告の上記主張は採用することができない。 ( )被告C医師は,平成14年12月11日,亡Aと原告に対し,上記 ⑵のとおり亡Aの病状等について説明するとともに,もしもこのまま放置するとつらい話をすることになるなどと告げた。(甲14-)BP4(四)第2回入院後一時退院するまでの記載診療録等には,亡Aが平成15年1月16日被告病院に入院し同年2月- 45 -14日にいったん退院するまでの状況について,次の内容の記載がある。 ( )亡Aは,平成15年1月17日,腹部超音波検査を受けたが,その 結果について次のとおり記載されている。 ア同日のI医師及びJ医師が作成した超音波検査診断レポートには,超音波診断として胆管癌,所見として8区胆管末梢の拡張,胆管内に腫瘍栓と思われる不整形の高エコーが肝門部付近まで。 は困難。腔内照射の適応もないと思います()PTCDP183。 イ被告C医師は,診療録に次の記載をした。 超音波:腫瘍は前区域枝~肝門部まで進展している。腔内照射の適応はなさそう。手術か外部照射か。()P93( )被告C医師は,同月23日診療録に次の記載をした。 腔内照射については否定的,腫瘍が前区域に限局して 枝~肝門部まで進展している。腔内照射の適応はなさそう。手術か外部照射か。()P93( )被告C医師は,同月23日診療録に次の記載をした。 腔内照射については否定的,腫瘍が前区域に限局していれば切除は可能か。切除体積は40%くらいであるが,胆管炎で機能が低下した部分を取るので肝容量的には。身体的所見は元気であるが,高齢なのでOK全身状態のリスクがある「元気だけど前回より5年年を取っているし。 ね」とリスクは理解しておられる。手術の選択については,長女(原。 告)は口出ししないようにしているとのこと。予備力の予測は困難。一応手術の準備はするが,患者の気持ちをよく聞いて判断する(今は放。 射線治療>手術のようだ())P93( )看護記録には,以下の記載がある() P493。 ア平成15年1月17日の看護記録では,亡Aが「え,外泊できるんですか?今家を建てているところで,いろいろ手続があるので,外泊できればしたいです」と発言しており,同日15時から外泊した旨。 の記載がある。 イ同月20日の看護記録には,亡Aが「できればもうおなかは切りたくないわね」と発言した旨の記載がある。 。 - 46 -( )同月28日の診療録には,次の記載がある。 検査を実施して,15分停滞率は9.3%(~%が正常。 ICG )検査では,8区胆管に乳頭状腫瘍,後区域枝は拡張あるものの明MRIらかな病変は描出不可能()。P94また,同月30日の診療録には次の記載がある。 (穿刺胆管造影)を23ゲージ針にて透視下で後区域枝を穿刺すPTCる方法で造影したが,後区域枝腸管に明らかな腫瘍はなし。 →手術へ()。P94( )ア被告C医師は,平成15年1月31日,亡Aと面談して,面談票 に現在の肝臓と吻合した空腸 を穿刺すPTCる方法で造影したが,後区域枝腸管に明らかな腫瘍はなし。 →手術へ()。P94( )ア被告C医師は,平成15年1月31日,亡Aと面談して,面談票 に現在の肝臓と吻合した空腸の図を描き,本件手術で切除予定の範囲を点線で書き込んだうえ,次のとおり記載した()。P38今回できているものは,前回のものとほぼ同様のもの←ゆっくり発育右前区域枝を充満するように出来ていて近いうちに完全に充満して右前区域を機能不全にします。しかし,この状況でも後区域が生きていれば生活には支障がない(十分大丈夫。→やがて,いつか後区域)枝にも波及してくる。 胆管がん…胆管によく似た細胞がたくさん増殖肝内胆管がん肝臓の容積は元に戻る①切り取る外から当てる②放射線〈前区域の枝の中へ放射線を出す棒を入れてかけるイ同日の看護記録には,被告C医師が亡Aと原告に対して,次のような説明をした旨の記載がある()。P497,P498- 47 -(C医師)前の胆管に癌があり,治療としては手術と放射線があるが,Aさんの場合は,前回の手術で肝臓の近くにあるものをいろいろつなげているので,放射線を当てるのは危険がある。近くにあるものまで放射線がかかってしまうので。治療としては手術しかないが,高齢でもあるし負担は大きいだろう。 (亡A)おなかはもう切りたくないわ。ほおっておくうちに寿命がきちゃうんじゃないかしら。 (原告)前回の手術の時は,せっぱ詰まっていたので,手術するしかないと思ったが,今は年も年なので,私からは無理には勧められない。 前回手術後無事に家に帰れたが,今までどおりの日常生活が送れるまでには大分時間がかかりました。今回は,それ以上の時間がかかるのではないかと思います。それでは母がかわいそうで。手術をするとしても,本人のし 術後無事に家に帰れたが,今までどおりの日常生活が送れるまでには大分時間がかかりました。今回は,それ以上の時間がかかるのではないかと思います。それでは母がかわいそうで。手術をするとしても,本人のしっかりとした意志がないと乗り越えていけないと思います。私(母の誤記と思われる)の選択に任せて,私は母を支えていきたいと思います。 上記説明に引き続いて,記載した看護師の「本人は手術をするかしないかについて相当悩まれており,2/2(日)夕方までに一応考えておくこととなる。本人は,手術はもうしたくないという思いがあるが,娘を1人残してしまうことが気になる様子」という評価が記載されている。 亡Aは,2月2日に帰室予定で同日21時30分から外泊した。 ( )ア平成15年2月2日の看護記録には,亡Aが外泊から戻り,次の ような発言をした旨の記載がある()。P498- 48 -切りたくないです。考える時間も1日くらいしかなかったですけど。 先生方には申し訳ないんだけど,手術する決意はできなくてお断りしました。今は本当症状もなく何ともないし,手術した後のこと考えるとお腹を切るのはもうしたくないんです。 また,看護師は「手術をしたくないという気持ちは固まっているが,手術を勧めてくれた主治医等に申し訳ないという内容訴えられる」。 と記載するとともに「被告C医師に面談。手術中止,明日血管造影,中止となる」と記載した。 イ同月3日の看護記録には,亡Aが次のような発言をした旨の記載がある()。P499どうもおなか切る気になれなくてね。何か他の方法があればいいんだけど。熱あっても,全然辛くないのよ。 ウ診療録の平成15年2月3日の欄には,次の記載がある()。P94//患者の希望により,血管造影,手術ともに中止放射線治療,陽子線を検討する。 , んだけど。熱あっても,全然辛くないのよ。 ウ診療録の平成15年2月3日の欄には,次の記載がある()。P94//患者の希望により,血管造影,手術ともに中止放射線治療,陽子線を検討する。 ,( )ア亡Aは,平成15年2月4日,穿刺胆管造影()を受けたが PTC前区域枝の中にも後区域枝の中にも腫瘍陰影がはっきりしなかったので,検査を受けたところ腫瘍を確認できた。 画像をもとに切除CTCT. 予定の肝臓の体積を計算すると,前区域が43.1%,後区域が569%と算出された。許容切除量は,肝硬変がない症例で71.2%,肝硬変のある症例で61.9%と計算された()。P94,P124イ被告C医師は,平成15年2月5日,亡Aと面談して,面談票に現在の肝臓と吻合した空腸の図を描き,次のとおり記載した()。P40放射線X線β線拡散- 49 -陽子線集中的に放射線が当てられる保険がきかないウ被告C医師は,陽子線科のH医師に対して亡Aを紹介し,紹介伝票(病棟から外来への他科依頼伝票)に次のとおり記載した()。P95診断:再発肝内胆管癌に対する陽子線治療第1手術後の肝臓と空腸の図を描きその中に腫瘍の部位を示して,肝内胆管癌(胆管内発育型,極めて高分化型)で左葉切除後5年経ち,残右葉に飛び石状の再発があります。79歳で手術は拒否され,陽子線治療を希望されております(とても元気なのですが… 。図)のように微妙な位置にあります。何とぞよろしくお願い申し上げます。 エ被告病院放射線科のH医師は,平成15年2月6日,亡Aに対して面談票に次の内容を記載して説明した。()P41肝内胆管がん①手術 放射線治療腸は放射線に弱い潰瘍→出血↓穴が開く X線:体の外から照射↓外から胆管内にチューブ Aに対して面談票に次の内容を記載して説明した。()P41肝内胆管がん①手術 放射線治療腸は放射線に弱い潰瘍→出血↓穴が開く X線:体の外から照射↓外から胆管内にチューブを入れ内側から放射能をもった球を入れて照射 陽子線治療X線と陽子線治療の効果は同じオ放射線科のH医師は,平成15年2月7日の診療録に次のとおり記載した()。P95- 50 -小腸が線量制限因子となり,可能性としては, X線外照射40(グレイ)+腔内照射8×3GyGY 陽子線60? Gyですが,根治性としては期待薄です。私は手術を勧めました。放射線治療1,2とも効果は同等と思います。残肝機能的には2がよいですが,河島先生は1カ平成15年2月6日の看護記録には,亡Aが次のような発言をした旨の記載がある()。P501手術がいいって勧められたんだけど,やっぱりおなかは切りたくない。気持ちは変わらないと思うわ。陽子線にしようかしらね。 キ同月7日の看護記録には,看護師の次のような評価が記載されている()。P501突然の再発に対し,本人,娘共におどろきや信じられないという思い,動揺している面も見られたが,再発に対しての受け入れはしっかりとできていると思われる。治療については,手術を勧められるが,もうおなかは切りたくないという本人の思い強く,陽子線治療となっていくと思われる。娘も母をサポートしていくとの言葉あり。本人の思いも表出できているので,今後も疑問や訴え等あればフォローし,治療に望めるようにしていきたい。 ( )ア被告C医師は,平成15年2月7日の診療録に次のとおり記載し た。 患者希望としては,もう手術はしたくない。最初にそう決めたので陽子線でやりたい,とのこと。本日より外泊()。P95本 )ア被告C医師は,平成15年2月7日の診療録に次のとおり記載し た。 患者希望としては,もう手術はしたくない。最初にそう決めたので陽子線でやりたい,とのこと。本日より外泊()。P95本人再び手術も考え出したよう。()P96同日の看護記録には,14時外泊へ,2/1116時帰室予定との記載がある()。P501- 51 -イ平成15年2月12日の看護記録には,原告の希望にて亡Aと共に被告C医師と面談をした旨の記載があり,その内容は次のとおりである()。P502(原告)放射線科の医師から色々な副作用きいて,手術が第1選択といわれて。 (亡A)でも手術は嫌なんです。 (C医師)放射線治療で副作用(腸穿孔)の方が恐いです。あまり効果はないかもしれません。何もしないという手もあります。 (亡A)そうすると,悪くなってしまいますよ。まだ生きたいですから…。 (原告)放射線治療して途中効果が出なかったら,もう治療やめたら何もすることはないんでしょうか…。 (C医師)すすみぐあいによって手術という方法もありますが,そうならば逆に放射線治療しない方がよい。 (看護師の印象)本人は,何か治療をして生きたいという気持ちがあるが,手術は嫌がっている。しかし,まだ迷っている節がみられる。娘さん(原告)的には手術と思っているようだが,患者の気持ちを尊重したい様子。 ウ平成15年2月12日の看護記録には,亡Aが次の発言をした旨の記載がある()。P502- 52 -放射線はやっぱりあまり効かないみたいね。手術が不安というわけではないのよ。ただふんぎりがつかないというかね。もう少し考えてみます。 エ平成15年2月13日の看護記録には,亡Aが次の発言をした旨の記載がある()。P503結局,どうするかは決まっていないん ないのよ。ただふんぎりがつかないというかね。もう少し考えてみます。 エ平成15年2月13日の看護記録には,亡Aが次の発言をした旨の記載がある()。P503結局,どうするかは決まっていないんですよ。なかなか決められないですね。 1回退院することになりました。頭を冷やしてまた来ようかと思うんですけどね。 手術はしようかな,とは思っていますけどね。放射線も素人考えで,ただ当てるだけと思っていたけど色々あるみたいでね。先生も少し切るだけって言ってたし,前回ほどの大きな手術にはならないだろうと言ってたの。手術して体力を落とすのが嫌でね。今,本当に何ともないからね。でもいずれは何かしなきゃいけないしね。 オ被告C医師は,平成15年2月13日,入院申し送りを記載して亡Aの次回入院を3月中旬希望として入院予約を入れ,診療録の同月14日の欄に次の記載をした。()P34,P963月に再入院し,手術の方針。 入院申し送り書には,第1手術後の肝臓と空腸の図を描き腫瘍の位置を記載して,→放射線治療,→手術,一旦退院して再入院と記載した。 (五)第3回入院から本件手術までの記載亡Aが平成15年3月18日に三度目の入院をして以降の状況については,診療録に次の内容の記載がある。 ( )平成15年3月18日の看護記録には,次の内容の記載がある。 ()P504- 53 -ア経過先月退院後,自宅で変わりなくすごす。しかし,手術しないと決めて退院したものの‘お腹に癌がある’ということで,何となく気持,ち的にスッキリしなかったため,手術を決意し,手術目的で入院となる。 イ亡Aは,次の内容の発言をしている。 前の入院の時,放射線治療の話も聞いたんですけど,副作用の方も強いみたいなんで。お腹を切るのは嫌ですけど,しょうがないですね。 楽しいこと 目的で入院となる。 イ亡Aは,次の内容の発言をしている。 前の入院の時,放射線治療の話も聞いたんですけど,副作用の方も強いみたいなんで。お腹を切るのは嫌ですけど,しょうがないですね。 楽しいことをしているうちは,癌のことを忘れられるんですけど,ついお腹にあるんだ…って考えちゃって…何だかスッキリしないんですよ。 今回は,最初からちゃんと心を決めてきました。 ( )診療録の平成15年3月20日の欄に引き続いて,手術前のまとめ として次の内容の記載がある()。P96,P97現病歴,現症,血液検査結果,心電図,呼吸機能検査結果,胸部X線写真の結果,その時点における肝臓内の腫瘍と胆管の位置関係等を記載したうえで,診断として8区胆管の乳頭状腫瘍,治療プランとして前区域切除(43%切除,リスクとして高齢。 )( )亡Aは,平成15年3月24日,本件手術に際して肝前区域切除術 を受けることについての手術同意書に署名しているが,手術同意書には,不動文字で「その必要性,内容,危険性などについて担当の医師から,15年3月24日十分な説明を受け,了解しましたので,その実施に同意いたします」と記載されている()。 。P57( )ア被告C医師は,本件手術の手術記録( )及び( )に次のとおり記載 した。()P130,P131手術時間は12時間04分,出血量6590(ただし60%はml- 54 -滲出した腹水)感想として,①手術適応の適否は適。②難易は癒着剥離が難渋であったが,術式は単純で易,胆管空腸吻合部の前後枝の分離は術前の予想よりも容易であった。③偶発事故はなし。⑤予後の見通しは,手術は根治的で良好な予後が期待される。手術時間が長く,腹水の滲出が多量(出血カウントの60%は滲出した腹水)であった。 開腹:全身 前の予想よりも容易であった。③偶発事故はなし。⑤予後の見通しは,手術は根治的で良好な予後が期待される。手術時間が長く,腹水の滲出が多量(出血カウントの60%は滲出した腹水)であった。 開腹:全身麻酔下,前回手術の字切開に沿って開胸開腹した。腹J壁と臓器の繊維性癒着は硬くはないが上腹部全面にわたっており剥離に長時間を要した。挙上空腸脚,肝表面,肝離断面などを分離したが,これらを損傷することなくきれいに分離することができた。 術中超音波検査:エコー上は,8区胆管の頭側枝の根部付近から空腸吻合部にかけて高エコーな充実性腫瘍が胆管内を充満するように存在し,腫瘍より末梢胆管は拡張していた。もう一つの前区域枝の根部も前述の高エコーな充実性腫瘍に巻き込まれているように見え,後者を分離して温存すると腫瘍を取り残す可能性が高いと考えられた。右後区域胆管は異常なく,後区域の温存は問題がないと考えられた。肝前区域は,後区域に比べて特に頭側で萎縮しており,前区域切除を行っても最大40%切除程度と予測された。前区域の少なくとも頭側は,胆管の不全閉塞によって機能障害を伴っていることを考慮すれば,より根治的な前区域切除を選択しても,残肝機能上問題がなく,手術時間の長くなる複雑な術式より単純な術式を選択すべきと考えられた。以上の所見から,術式は右前区域切除術と決定した。 イ被告C医師は,平成15年3月25日本件手術終了後,原告と面談して,面談票に現在の肝臓と吻合した空腸の図を描き,本件手術で切- 55 -除した線を入れて次のとおり記載して説明した()。P42切除した範囲は35%,切除した残りが65%,肝内胆管に存在する腫瘍を指して熱の原因になり始めている。 最低72時間は水をのめない。 手術中のトラブルはなくて,時間はかかりましたが順調に進みまし 切除した範囲は35%,切除した残りが65%,肝内胆管に存在する腫瘍を指して熱の原因になり始めている。 最低72時間は水をのめない。 手術中のトラブルはなくて,時間はかかりましたが順調に進みましたが,長い手術になったので,手術後の回復(肺炎,黄疸)で問題がなければよくなられる。 栄養が各臓器にうまくゆきわたらない(六)その他の記載亡Aは,平成15年1月16日,被告病院に入院した際の看護に関する問診票に,自分の性格をおおらかと記載した。()P543また,第手術のための入院期間中の看護要約には,病気の説明とこれ からの方針についての患者の受け止め方の欄に「ほとんど手術前に自覚,症状がなかったせいか,現状を軽く受け止める傾向あり」と記載されている()。P546 病理診断(一)第1手術で切除した臓器の病理組織検査によると,病理組織診断として次の診断がなされている()。P185,P187①早期胃癌,中分化腺癌②胆管の乳頭状の新生物(癌又は良性の腫瘍の総称)③リンパ節転移なし(0/41)④慢性胆嚢炎所見としては,組織学的には,病変は嚢胞状に拡張した肝内胆管内に発生した腫瘍であり,それらは間質を伴い乳頭状管状の形状を示し胆管内を充満している。それら個々の腫瘍細胞は,好酸性の円柱状の胞体を有し,その核は類円形~楕円形で異型性に乏しい。胆管パピロマトーシスに類似- 56 -する。ただし,胆管パピロマトーシスは多発する病変であり,本症例は異なる。また,胆管上皮発生の腺腫も考えられるが,組織像は典型的ではない。また,肝実質への浸潤はないが,腫瘍内間質内に浸潤を疑う像もあることより,高分化肝内胆管癌との鑑別も必要である。良・悪性の鑑別が難しく,非典型的な症例でもあり,胆管乳頭腫瘍と診断する。 (二)本件手術 ,肝実質への浸潤はないが,腫瘍内間質内に浸潤を疑う像もあることより,高分化肝内胆管癌との鑑別も必要である。良・悪性の鑑別が難しく,非典型的な症例でもあり,胆管乳頭腫瘍と診断する。 (二)本件手術で切除した臓器の病理組織検査によると,病理組織診断として次の診断がなされている()。P197診断名:異型を伴う胆管パピロマトーシス組織学的(ミクロ)所見として,肉眼では,肝内胆管内に乳頭状増殖を示す腫瘍を認め,その大きさは,22×17×35㎜であり,肝内胆管内を進展しており,明らかな浸潤像は認められなかった。組織学的には,腫瘍は高分化な像を呈する乳頭状腺癌であり,細管状構造,篩状構造などの構造異型を示すが,個々の腫瘍細胞の異型は弱い。…中略…腫瘍の組織像からは,異型を伴う肝内胆管パピロマトーシスか肝内胆管乳頭腺癌か鑑別が難しく,免疫染色による検討を追加した。その結果,異型の強い部ではの胞体強陽性像を認める成分は少なく,また腫瘍細胞の増殖能も低CEAかった。腫瘍は浸潤像は示しておらず,免疫染色の結果も考慮し,異型を伴うパピロマトーシスと考えた。ただし,パピロマトーシスは,低悪性度腫瘍とみなすとする考えもあり,術後の経過観察は必須である。 三本件手術に至る全診療経過上記一及び二で認定した事実と甲第14号証,乙第1号証,乙第9BAB号証,証人H医師の証言,原告本人尋問の結果,被告C医師本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 被告病院では,毎週火曜と水曜の2回にわたり症例検討会が開催されており,主治医の意向のみで手術ができるわけではなく,手術等の治療方針を決定するためには必ず2回にわたる症例検討会でプレゼンテーションして各科- 57 -の医師による検討を経ることが必要な取り扱いになっていた。 の意向のみで手術ができるわけではなく,手術等の治療方針を決定するためには必ず2回にわたる症例検討会でプレゼンテーションして各科- 57 -の医師による検討を経ることが必要な取り扱いになっていた。火曜の症例検討会には,主に腹部外科と腹部内科,放射線科の医師が20ないし30人くらい参加し,水曜の症例検討会は総合カンファレンスで,肺内科,血液内科等も参加して総勢40人くらいで開催されていた。 被告C医師は,亡Aについて,第1手術の際も本件手術の際も症例検討会にかけて,手術(の適応がある)という治療方針が承認された。 被告C医師は,平成元年からの17年間で約800例の肝臓・胆道・膵臓の手術を執刀しており,被告病院では6年間で475例の肝臓・胆道・膵臓の手術を執刀している。手術後30日以内の死亡例(手術後直接死亡)はなく,手術関連死亡(手術後31日以後の手術に関連する合併症で死亡)は,亡Aを含めて3例で,被告病院における手術死亡率は0.6%である。なお,肝臓・胆道・膵臓の一般的な手術死亡率は,手術難易度が高いので,3%前後とされている(乙9。 B)3(一)被告C医師は,上記二1(一)( )で認定したとおり,平成9年8月1 6日に亡Aと原告に対して,肝臓切除術に伴う一般的な合併症として,第1手術後に胆汁漏れや膵液漏れが生じることがあることを説明したうえで面談票に記載して交付しており,少なくとも第1手術の際に,胆汁漏れや膵液漏れについて説明していたことは明らかである。 そうすると,被告C医師は,麻酔中に起こる予期せぬトラブルや一般的な手術に伴う危険性の他に,肝臓切除手術によって生じる一般的な合併症については,どの患者に対してもスタンプで押したように,出血,胆汁漏れ,肝不全が生じることがあり場合によっては入院が長引いて亡くなることもあ う危険性の他に,肝臓切除手術によって生じる一般的な合併症については,どの患者に対してもスタンプで押したように,出血,胆汁漏れ,肝不全が生じることがあり場合によっては入院が長引いて亡くなることもあるという同一内容の説明を毎回していたと本人尋問で供述(第1回被告C医師本人)しているが,胆汁漏れや膵液漏れのみ説明して他のことは説明しなかったと解するのは不自然であるから,亡Aに対しても,被告C医師が供述するとおり本件手術に先立って,出血や肝不全が合併症とし- 58 -て発症することがあり,退院できないまま死亡することもあるという説明をしたと認めるのが相当である。 (二)上記二1(一)( )で認定したとおり,被告C医師は,平成9年8月1 6日に亡Aと原告に対して,肝臓については「もしも1カ所しかなければ切除してしまえば再発しないかも知れない」と説明して面談票を交付しており,第手術前に再発の可能性について説明したうえで手術を勧めてい ,ること,上記二1(二)( )で認定したとおり,被告C医師は亡Aに対して 平成13年3月20日及び平成14年6月12日に受診した検査の結CT果を知らせる手紙を送付して,いずれも「では再発は見られませんでCTした」と記載していること,上記二1(一)( )で認定したとおり,亡A。 が当初は入院はいやだと言っていたにもかかわらず第1手術後退院直前の時期になると退院することについて不安を述べていること,原告はテレビや新聞等の報道で癌には再発があるという知識は有していたこと(原告本人尋問,被告C医師から平成14年6月12日に6か月おきの外来受診)でよいといわれた後もほぼ3か月毎に通院して検査を受けていたことCTに照らすと,被告C医師は,亡Aに対して,第1手術後も再発の危険があること及び再発の 14年6月12日に6か月おきの外来受診)でよいといわれた後もほぼ3か月毎に通院して検査を受けていたことCTに照らすと,被告C医師は,亡Aに対して,第1手術後も再発の危険があること及び再発の発見を主な目的として第1手術後も被告病院への通院が必要であることを説明しており、亡Aもこのことを認識し,再発の不安があるから退院を不安に思ったり,遠方にもかかわらず定期的に被告病院の外来を受診していたことが認められる。 原告は,本人尋問において,亡Aも原告も再発の可能性について考えておらず,被告病院への3か月おきの通院,検査の目的が再発があるかCTどうかを発見するためであったことを否定するが,上記認定に照らして採用できない。 (三)上記二1(一)( )ウで認定したとおり,亡Aは,第1手術が7時間か かると聞いて怖くなったと述べており,第1手術が大手術であることをよ- 59 -うやく認識するとともに第1手術が危険性を伴うものであることも認識している。 上記二1(四)( )イで認定したとおり,被告C医師は,平成15年1月 ,,31日,亡Aと原告に対して,本件手術について「放射線は危険があり治療としては手術しかないが,高齢でもあるし負担は大きいであろう」と説明したことが認められ,手術には高齢であることに基づく危険性が伴うことを説明している。原告は「前回の手術後,無事に家に帰れたが」,「手術をするとしても,本人のしっかりとした意志がないと乗り越えていけないと思います」と述べたことが認められ,このことからすると,少。 なくとも,原告は,本件手術をした場合には無事に家に帰れないことがある,すなわち退院できないまま死亡することがあることを認識していたものと認められる。 また,亡Aは,再手術後も会話できるような状態まで回復することなく約1 術をした場合には無事に家に帰れないことがある,すなわち退院できないまま死亡することがあることを認識していたものと認められる。 また,亡Aは,再手術後も会話できるような状態まで回復することなく約1か月後に死亡するに至っているにもかかわらず,原告は,被告C医師に対し,手術で死亡する危険性があることを全く説明してくれなかったなどと不満を述べたり問いただしたりしたことはない。 原告は,本件手術に関しては,いかなる時点においても手術のマイナス面,デメリット,危険性について,被告C医師から一度も説明を受けたことがないと本人尋問で供述するが,上記認定に照らし,採用することができない。 (四)( )原告は,陳述書(甲14)で,第1手術前のことではあるが, B亡Aは被告病院を受診するまで癌という病名告知を受けていなかったので被告C医師から癌と告げられて青天の霹靂で仰天したと記載し,本人尋問においてもその旨供述するが,G医師の平成9年7月29日付の紹介・診療情報提供書(乙1-)によれば,その備考欄に「患者にAP6は胆管悪性腫瘍,胃悪性腫瘍,十二指腸乳頭腺腫と説明しています」と- 60 -記載されているところであり,これによれば,亡Aは,被告C医師から癌の告知を受ける以前に,G医師から胆管及び胃の悪性腫瘍(癌)という病名の告知を受けているものと認められる。 ( )原告は,陳述書(甲14)で,平成15年1月31日,亡Aは手 B術を嫌がり陽子線治療にしていただくことはできないかと強く申し入れたが,被告C医師は陽子線は効果もない,保険も利かないと言って取り合ってもらえなかったと記載するが,上記二1(四)( )ないし( )で認定 した事実によれば,被告C医師は,同年2月5日,亡Aの希望を入れて亡Aを放射線科のH医師に紹介して放射線 と言って取り合ってもらえなかったと記載するが,上記二1(四)( )ないし( )で認定 した事実によれば,被告C医師は,同年2月5日,亡Aの希望を入れて亡Aを放射線科のH医師に紹介して放射線治療が可能かどうかの検討を依頼し,H医師は同月6日亡Aを診察して意見を述べていることが認められることに照らすと,被告C医師は亡Aの希望を入れて放射線治療の方針をいったんは採用したものであり,被告C医師が亡Aの希望を取り合わなかったという事実は認められない。 ( )原告は,陳述書(甲14)で,平成15年3月18日,亡Aは被 B告病院に行ったがまだ手術を決意していたわけではなかったと記載し,本人尋問においても,再入院後に被告C医師からこの手術は心配するようなことはないと確認をもらった後になって最終的に手術に同意したと供述する。しかし,上記二1(五)( )イで認定したように,亡Aは「今 回は最初からちゃんと心を決めてきました」と同日看護師に対して述。 べており,亡Aは,入院前から手術を決意して来院したものと認められる。 ( )以上によれば,原告の陳述書(甲14)や本人尋問における供述 Bのうち,被告C医師の説明及び亡Aの言動等に関する部分には,客観的な証拠,事実関係と符合しない部分があり,にわかに採用することができない。 4(一)被告C医師は,亡Aに,心筋梗塞,脳卒中といった手術を困難にする- 61 -合併症がなく,検査も正常値で肝機能にも異常はなく,肝硬変も合併ICGしておらず,切除予定の肝臓の体積を計算すると,前区域切除で43%であり切除限界とされている65~70%を大きく下回っていることなどを根拠として,腫瘍が胆管の後区域枝に達していなければ亡Aに手術適応があると考えていた。また,被告C医師は,上記二1(五)( ) %であり切除限界とされている65~70%を大きく下回っていることなどを根拠として,腫瘍が胆管の後区域枝に達していなければ亡Aに手術適応があると考えていた。また,被告C医師は,上記二1(五)( )で認定したと おり,亡Aが高齢であることが本件手術のリスクにはなることは認識していたが,高齢者の体力は個人差が大きく体力面では暦年齢よりも大幅に若い人もいれば老けている人もいて,高齢者の予備力を予測する手段がなく予備力を予測することは困難であり,手術をしてみない限り現実の予備力は知るすべがないとも考えていた。 (二)第1手術の手術記録(乙1-)には,次の記載がある。 AP125第1手術については,8時間46分を要し,出血量は2990で,ml感想として,手術適応は適,手術難易度は中程度,偶発事故はなし,予後の見通しとして,重複癌であるがどちらも高分化であり良好と考えられる。 ただし肝内胆管癌は飛び石状に肝内多発することによる再発があり,注意を要する。 なお,出血量に関しては,上記二1(一)( )で認定した事実によれば, 腹水を含む量であり,純粋の出血量は1500と認められる。 ml(三)上記二1(五)( )アで認定した本件手術記録の記載と上記一2(四)で 認定した事実によれば,本件手術の手術時間は12時間4分を要しているが,上記第1手術の手術時間や東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座消化器外科で肝門部上部胆管癌に対して肝切除を実施した38例の平均手術時間は9時間18分であること,がんセンター中央病院での肝門部胆管癌に対する根治的肝切除102例の平均手術時間が10時間30分又は11時間であることに照らすと,肝切除術として異常に長い手術時間であるということはできない。本件手術の出血量6590についても,腹ml- 的肝切除102例の平均手術時間が10時間30分又は11時間であることに照らすと,肝切除術として異常に長い手術時間であるということはできない。本件手術の出血量6590についても,腹ml- 62 -水を除外すると純粋の出血量は約2600であり,上記消化器外科でml肝門部上部胆管癌に対して肝切除を実施した38例の平均出血量2103g,がんセンター中央病院での同様の平均出血量が1822g又は1943gであることと対照しても,本件手術の出血量が大幅に多いとはいえない。 (四)上記一2で認定した事実によれば,肝臓は切除しても体積は1年で元の9割以上まで再生するから,亡Aの肝臓は第1手術から5年経過して元の体積に戻っていること,大腸癌の肝転移の症例における肝切除後の再発に対しては再度の肝切除が実施されているが,その手術死亡率は初回肝切除時と同等であることが認められる。そしてこのことは,亡Aとは腫瘍の原発巣が異なるけれども,再度の肝切除という点では共通であり本件手術にも当てはまるものと認められる。 第1手術と本件手術を比較すると,第1手術は肝切除だけにとどまらず胃も同時に切除しているのに対し,本件手術は肝切除にとどまり他の臓器を合併切除していないことから,本件手術は,第1手術よりも切除範囲が少ないことは明らかである。そして,前記二1(四)( )エによれば,亡A は,本件手術は切除の範囲も小さく,本件手術よりも第1手術の方が大きい手術であると理解していたことが認められる。 手術のリスクは,切除範囲の大小によってのみ定まるものではないが,術後の体力の低下の程度は,一般的には,切除範囲が小さいほど体力の低下の程度も低い。胃の手術だけ単独で受けても患者はかなりの体力の低下をきたすことは明らかであり,第1手術と比較して本件手術は胃の手術がなく 力の低下の程度は,一般的には,切除範囲が小さいほど体力の低下の程度も低い。胃の手術だけ単独で受けても患者はかなりの体力の低下をきたすことは明らかであり,第1手術と比較して本件手術は胃の手術がなく肝切除のみであり切除する肝臓の大きさも第1手術と大差がないことに照らすと,体力の低下の程度は第1手術よりも少ないといえる(第2。 回被告C医師本人,)P18P23そうすると,亡Aの本件手術に対する上記のような理解は,あながち誤- 63 -っているというわけではなく,これをもって,被告C医師が亡Aに対して,ことさらに誤解を招くような説明をしたとは認められない。 (五)上記(一)ないし(四)で認定した事実によれば,本件手術と他の施設で一般的になされている肝切除術を比較した場合に,検査結果で事前に知りうる限りでは,本件手術が一般的に患者に対してなされる肝切除術と比べて特別の危険を伴うことを具体的に示すものはなく,再切除であることを考慮しても特段本件手術の危険性が増していたとはいえない。前記一9で認定したように,最近では70歳を超す高齢者の肝切除手術も増えていて,高齢者であっても安全に肝切除術を実施できるようになってきているという事実をも併せ考えると,高齢であることによるリスクは抽象的なものにとどまり,個人差が大きい高齢者の予備力を事前に評価することは困難であるから,高齢であるということのみで,本件手術のような肝切除術が若い人の手術と比べ必ずしも危険性が高いものとはいうことはできず,亡Aが本件手術前外泊が可能な程度に元気であったことに照らすと,亡Aの79歳という年齢が本件手術の手術適応に疑問を抱かせるものであったとは認め難い。また,亡Aは,第1手術の際にも既に74歳と相当高齢であったが,本件手術よりも胃を合併切除しているので,その負担は Aの79歳という年齢が本件手術の手術適応に疑問を抱かせるものであったとは認め難い。また,亡Aは,第1手術の際にも既に74歳と相当高齢であったが,本件手術よりも胃を合併切除しているので,その負担ははるかに大きかったと推認されるにもかかわらず,さしたる術後の合併症もおこすことなく第1手術を乗り切ったことも,5歳年を取っているとはいえ,第1手術よりも切除範囲の小さい本件手術に耐えられるだけの予備力が存在するであろうと判断する根拠となりうるものである。 したがって,本件手術が一般的になされている肝切除術よりも特に危険性が高かったとはいえない。また,現実になされた本件手術も,癒着が上腹部全面にわたって存在したので剥離するのに長時間を要したため手術時間も長くなり出血量も多くなったが,肝切除術における平均の手術時間や出血量と比べると,あるいは第1手術と比べても,本件手術が格別手術時- 64 -間が長かったとか出血量が多かったとはいえない。 肝切除術は,手術時間が長くなっても丁寧な手術をした方が,手術時間が短くても粗い手術をするよりも,現時点では,手術成績が良くなっている(第2回被告C医師本人)。 P19,P20(六)被告C医師は,自分の母親が亡Aと同じ病気で同様の状況に陥ったとすると,手術を勧めるかそれとも別の治療法を検討するか非常に迷うところであり,あえて後ろから手術を受けなさいとは母に言えないと第1回本人尋問で供述した(第1回被告C医師本人)。 P69そして,その供述の趣旨について,被告C医師は,第2回本人尋問において,次のように供述している。仮に被告C医師の母親(78,9歳)が亡Aと同一の病気になって手術を受けたくない旨の意思を表明したとすれば,被告C医師としては,手術が最も成績のよい治療法であり手術を受けるのが最も合理的な ている。仮に被告C医師の母親(78,9歳)が亡Aと同一の病気になって手術を受けたくない旨の意思を表明したとすれば,被告C医師としては,手術が最も成績のよい治療法であり手術を受けるのが最も合理的な選択であるとわかっているので手術を受けることを勧めるけれども,患者はこれまでの個人としての人生経験や人生観などに基づいて迷うもので合理的な選択をするとは限らないから,どの選択が正しいとか正しくないと言えるような領域ではない。仮にうつ状態に近いような精神状態で治療を放棄して何もしたくないという希望を母親が表明したとしても,医師としても異常かもしれないが母親がそのような気持ちになることも理解できる。上記の供述部分は,そのような意味で被告C医師自身も母親と一緒になって手術を受けるかどうか迷うという意味で供述したものである。医師として,高齢者の手術成績が上がったといっても,若い人と比べると評価不能のリスク部分が存在していて高齢者の手術リスクが高く手術に対する不安が残ると判断して,手術を受けるかどうか迷うと述べたわけではない(第2回被告C医師本人,~,,)。 P8P20P22P26P275(一)被告C医師は,平成14年12月11日,外来で亡Aの検査を実CT施し,亡Aが時々発熱してG医師から解熱剤を処方されていることを聞い- 65 -て,既に腫瘍の再発に伴って胆汁のうっ滞が生じ胆管炎を起こし始めていると判断した。被告C医師は,亡Aの入院予約を取ったところ平成15年1月16日に入院できることになり,この時点では手術が可能かどうか不明なので,入院後(胆管穿刺造影)を実施して腫瘍がどこまで広がっPTCているかその範囲を確認したうえで手術が可能かどうか判断し,治療として放射線の腔内照射か手術をすることを計画した。 被告C医師は, ので,入院後(胆管穿刺造影)を実施して腫瘍がどこまで広がっPTCているかその範囲を確認したうえで手術が可能かどうか判断し,治療として放射線の腔内照射か手術をすることを計画した。 被告C医師は,亡Aに対し,面談票に図を描いて第1回手術時の手術範囲,現在の再発した腫瘍の位置と手術する際にはどこを切るかのライン,腫瘍が癌であっても良性の腺腫であっても肝門部に向かって胆管内を腫瘍が進展してくるので,今は詰まりかけているのは4本の胆管のうちの1本であるが,いずれ本幹が詰まると4本とも詰まってしまい,胆汁が流れなくなって黄疸が発生すること,黄疸が発生したらを実施して体外かPTCDらチューブを胆管に刺して胆汁を体外に出す脇道を造ることを説明したうえで,何もせずに放置すると死亡することを伝えた(上記二1(三)で認。 定した事実)(二)亡Aは,平成15年1月16日被告病院に入院し,同月17日腹部超音波検査を受けたところ,超音波検査を実施した内科でを専門的にPTCD担当していたI医師は,胆管内の腫瘍が肝門部付近まで存在して胆管癌と診断でき,8区胆管の末梢が拡張しているが,上記一1(三)で認定したような機序で胆管の完全閉塞には至っていないので胆管拡張の程度が小さく胆管穿刺が困難であることから,は困難であると判断した。また,PTCDI医師は,腔内照射ものチューブを利用して放射線の小線源を腫瘍PTCDが存在する部位まで入れることによって腫瘍に放射線を照射するので,が困難であれば腔内照射も難しいとも判断した。 PTCDそこで,被告C医師は,同月17日,亡Aに対する腔内照射は難しそうなので,治療法としては,手術が外部照射かの選択になるものと判断した。 - 66 -(上記二1(四)で認定した事実)(三)亡Aは,入院したときから,できれば 17日,亡Aに対する腔内照射は難しそうなので,治療法としては,手術が外部照射かの選択になるものと判断した。 - 66 -(上記二1(四)で認定した事実)(三)亡Aは,入院したときから,できれば手術はしたくないとの希望を表明していた(上記二1(四)( )イ及び同( )アで認定した事実。また,被 )告C医師は,平成15年1月23日,切除体積が肝臓の40%くらいになるが,胆管炎で機能が低下した部分を切除するので肝臓の容量としては大丈夫と考えられるから,腫瘍が前区域に限局していれば手術自体は可能であると判断した(上記二1(四)( )で認定した事実。しかし,被告C医 )師は,亡Aが元気であるが高齢なので手術には全身状態のリスクがあり,予備力の予測は困難なので,一応手術の準備はするけれども,亡Aの気持ちをよく聞いて治療方針を決めるつもりでいた。被告C医師は,亡Aの「元気だけど前回より5年年を取っているので」という発言を聞いて,亡A自身手術にリスクがあることを理解していると考えており,原告も手術を選ぶかどうかは亡Aの判断に任せて口出ししないようにしていると聞いていたので,亡A本人の意向を尊重するつもりであった。被告C医師は,その時点では,亡Aが手術よりも放射線治療を望んでいることをも認識していた。 (四)被告C医師は,同月30日検査(穿刺胆管造影)を実施して胆PTC管の後区域枝を造影したところ,明らかな腫瘍陰影が認められなかったので,後区域枝まではまだ腫瘍は進展しておらず後区域枝の温存は可能なので肝切除手術が可能であると判断した。 腫瘍が胆管の前区域枝に限局していれば,根治手術が可能であるが,腫瘍が胆管の後区域枝にまで及ぶと,第1手術後残された4本の胆管全てを切除することは肝臓全体を切除することにつながり不可能であるから,根 腫瘍が胆管の前区域枝に限局していれば,根治手術が可能であるが,腫瘍が胆管の後区域枝にまで及ぶと,第1手術後残された4本の胆管全てを切除することは肝臓全体を切除することにつながり不可能であるから,根治手術は不可能となる(上記二1(四)( )で認定した事実)。 (五)そこで,上記二1(四)( )で認定したとおり,被告C医師は,ようや く亡Aの手術が可能であろうとの見通しが立ったので,同月31日,亡A- 67 -及び原告に対して,現在の第1手術後の肝臓の図を描いて説明したうえで面談票を交付し,今回は前回と同じ腫瘍(肝内胆管癌)が再発しており,前区域枝内を充満するように進展していて近いうちに完全に充満して前区域枝の流域の肝臓を機能不全にしてしまうが,肝臓の後区域が生きていれば十分な大きさの肝臓が残っており生活には支障が生じないこと,しかし,このまま放置するといつかは後区域枝にも腫瘍が波及して後区域枝内にも腫瘍が充満し,黄疸が生じて死亡することになること,治療方法としては,①手術と②放射線治療があり,②放射線治療には,( )体外から放射線をi照射する外部照射と( )胆管の前区域枝の中に放射線を出す棒を入れて照ii射する腔内照射があること,第1手術で腫瘍の近くで肝臓と小腸をつないであるので,( )又は( )のいずれの方法をとっても放射線を当てると小腸iiiにも放射線が当たり危険があること,そうなると治療法としては手術しか残らないが,亡Aは高齢でもあり手術をすると体の負担も大きく危険性も伴うことを説明した。 亡Aは,被告C医師に対して,もう手術は受けたくないこと及び腫瘍を放置しておいても寿命まで生きられるのではないかという希望的観測を述べた。 原告は,手術後亡Aが従前どおりの生活が送れるようになるまで回復するには第1手術の時以 もう手術は受けたくないこと及び腫瘍を放置しておいても寿命まで生きられるのではないかという希望的観測を述べた。 原告は,手術後亡Aが従前どおりの生活が送れるようになるまで回復するには第1手術の時以上の長期間を要するであろうからかわいそうだし,手術に危険が伴うことは認識しているけれども,亡Aが自分から手術を希望して受けるだけの強い意志がないと手術に耐えられないとの思いから,原告としては治療法の選択については何も口を差しはさまずに亡Aの選択に任せたいと述べた。 亡Aは,手術を受けるかどうか迷い,外泊中に考えてくることになり,同日から平成15年2月2日まで外泊した。 (六)亡Aは,平成15年2月2日,外泊から戻り,発熱しても大したこと- 68 -はなく自覚症状がほとんどないこともあって,被告C医師に対して,手術を受けないことに決めたことを伝えた。 被告C医師は,亡Aの決断を聞いて,同月3日,手術の準備のための検査として同日予定されていた血管造影検査をキャンセルし,手術予定もキャンセルして放射線治療を検討することにした。 被告C医師は,同月5日,亡Aに対して,現在の肝臓と吻合した空腸の図を描いて放射線の照射方向を記載し,治療に用いる放射線の種類としてX線,β線,陽子線の3つがあり,陽子線は拡散せずに照射野に限局して照射できるという特徴があること,陽子線治療は保険がきかないことなど放射線治療の一般的な内容を説明した(上記二1(四)( )( )で認定した。 事実)(七)被告C医師は,放射線科のH医師に対して,亡Aの再発肝内胆管癌に対する陽子線治療ができないか検討することを依頼する他科依頼伝票を発行して亡Aを紹介し,現在の肝臓と吻合した空腸の図に腫瘍の位置を記載して,79歳で元気だけれども手術は拒否していて陽子線治療を希望しているこ 線治療ができないか検討することを依頼する他科依頼伝票を発行して亡Aを紹介し,現在の肝臓と吻合した空腸の図に腫瘍の位置を記載して,79歳で元気だけれども手術は拒否していて陽子線治療を希望していること,腫瘍は微妙な位置にあることを記載した。 H医師は,同月6日,亡Aを診察し,肝内胆管癌の治療には手術と放射線治療があるが,放射線治療では根治は期待できず,肝内胆管癌治療の第1選択は手術であるので自分としては手術の方を勧めること,放射線治療には①X線を( )体外から照射する外部照射と( )胆管にチューブを入れてiii内側から放射能を持った球を入れて照射する腔内照射,②陽子線照射の3つの方法があるが効果としてはどれも同じであること,腸は放射線に弱いので放射線治療をすると腸に潰瘍ができて出血したり腸に穴が開くという危険性があること,亡Aの場合は第1手術の結果小腸が腫瘍と非常に接近しているので,放射線照射によって小腸に潰瘍を作ったり,穿孔したりして腹膜炎を起こして死亡することもあることを説明し(証人H医師,P7)- 69 -手術に○をつけて面談票に記載して亡Aに交付した。 亡Aは,同日,H医師から手術が第1選択であると説明を聞いたが,やはり手術はしたくないという気持ちは変わらず,陽子線治療にしようかと考えていた。 H医師は,同月7日,亡Aの場合,小腸が線量制限因子となり,放射線治療を実施するとすれば,①X線外照射40に腔内照射8を3回GyGy加える方法,②陽子線照射60の2つがあるが,効果はどちらも同じGyでいずれも根治は望めず,自分は亡Aに対して手術を勧めたこと,肝機能に及ぼす影響としては②陽子線照射の方がよいことなどを診療録に記載して,被告C医師に報告した。 被告C医師は,同日,H医師の報告を受けて亡Aに対して手術を受ける 亡Aに対して手術を勧めたこと,肝機能に及ぼす影響としては②陽子線照射の方がよいことなどを診療録に記載して,被告C医師に報告した。 被告C医師は,同日,H医師の報告を受けて亡Aに対して手術を受ける意思がないかもう一度確認したが,亡Aは,もう二度と手術は受けたくないので,最初に決めたとおり陽子線治療でやりたいとのことであった。 亡Aは,同日から同月11日まで外泊した(上記二1(四)( )で認定。 した事実)(八)亡Aは,H医師から,放射線治療では根治が望めないことと危険な合併症が生じるかもしれないこと,肝内胆管癌の治療は手術が第1選択であるといわれたことで,手術を受けるか放射線治療を受けるか再び迷い始めた。 亡Aと原告は,平成15年2月12日,わざわざ被告C医師と面談を求めて,被告C医師に対し,H医師から放射線治療の危険性を聞かされ手術が第1選択といわれたけれども手術はいやなことを訴えた。被告C医師は,放射線治療をして腸が穿孔することのほうが怖いかもしれないし,その危険を冒して放射線治療をしても亡Aの肝内胆管癌にはあまり効果がないかもしれないことを伝え,もしも亡Aが手術はいやで放射線治療も危険な合併症があることが心配なのであれば,合併症が出る心配のない方法として- 70 -黄疸が出るまでの間今のまま何も治療しないという選択肢もあることを伝えた。しかし,亡Aは,即座に,何も治療しないと悪くなってしまい死亡することになるので,自分はもっと長く生きたい旨返答した。原告は,放射線治療をまずして効果がないようなら他の治療(手術)をするようなことができないかと尋ねたが,放射線治療を先にすると組織が癒着,繊維化して挫滅するので手術が困難となることから(証人H医師,被告C医P5)師は,手術をするのであれば放射線治療はしないほうがよいと答え ができないかと尋ねたが,放射線治療を先にすると組織が癒着,繊維化して挫滅するので手術が困難となることから(証人H医師,被告C医P5)師は,手術をするのであれば放射線治療はしないほうがよいと答えた。 亡Aは,同日,被告C医師と面談後,放射線治療があまり効果がないようなので,手術をするかどうか迷っていたが踏ん切りがつかず,翌日も決められなかったので,一旦退院して頭を冷やして治療方針を決めて再入院することになり,同月14日被告病院を退院した。 被告C医師は,同月13日,亡Aの退院に際して,入院申込みのためだけに遠方から来院するのは大変であろうと思い,予め入院予約を入れておくこととして,一旦退院した後再入院して放射線治療又は手術を受けるという方針のもとに,3月中旬の入院希望として入院予約を入れた。被告C医師は,腫瘍があとわずかに進展して肝門部の胆管の後区域枝に達すると根治手術は不可能となるので,放射線治療あるいは何もしないという選択をするのであれば決断を急ぐことはないが,手術をするのであれば早急に決断する必要があることから,再入院時期を3月中旬と決めた(上記二。 1(四)( )で認定した事実) なお,診療録の同月14日の欄に再入院して手術の方針と記載したのは,被告C医師ではなくシニアレジデントの訴外K医師であり,手術の方針が同日退院する時点で決まっていたわけではない(乙13,第1回被告BC医師本人,。 P50P51)(九)亡Aは,いったん退院後,以前と変わりなく日常生活をすごし,趣味のバレエ鑑賞をしたりデパートにショッピングに行ったりしていたが,一- 71 -時的には気が紛れて癌のことを忘れても,時が経つと自分の腹の中に癌が存在することがどうしても気にかかり,何となく気分がすっきりしなかった。亡Aは,手術をする決断がつ たりしていたが,一- 71 -時的には気が紛れて癌のことを忘れても,時が経つと自分の腹の中に癌が存在することがどうしても気にかかり,何となく気分がすっきりしなかった。亡Aは,手術をする決断がつかなかったので一旦退院したわけであるが,自分の体内に癌を抱えたまま日常生活を続けることには耐えられず,放射線治療には危険な合併症が伴い治療効果も根治が望めないので,手術はいやだけれども仕方がないとして,手術を受けることを決断した。亡Aは,手術を受けることを決めたうえで,平成15年3月18日再入院した。 (上記二1(五)( )で認定した事実) 被告C医師は,退院中の亡Aに対して一切連絡を取っていないことからすると,手術を受けることを決めたのは,亡A自身の決断であると認められる。 (一〇)被告C医師は,亡Aに対し,本件手術を行うに当たり,開腹後術中超音波検査を行って腫瘍の進展状況を確認し,胆管の前区域枝のうちの1本は頭側枝の根部から空腸吻合部まで腫瘍が胆管内に充満し,もう1本の前区域枝の根部も腫瘍に巻き込まれている状態で,前区域枝は2本とも腫瘍に侵されていて切除せざるを得ず後区域枝にも腫瘍が及んでいれば根治手術は不可能となるので肝切除を断念せざるを得ないが,幸い肝門部で前区域枝と接している後区域枝は,2本ともいまだ腫瘍の進展が及んでいなかったので温存が可能であり,根治手術が可能であることが確認できたことから,肝切除の範囲を決めて肝切除術を施行した。 6(一)亡Aと原告は,自宅を建て替えるために,平成14年10月頃から転居して東京都国立市に仮住まいしており,平成15年1月14日が上棟式,同年5月末には新居が完成する予定となっていた。仮住まいに伴って,電話番号も変更になっていた(甲14,乙1-)。 BAP1上記二1(二)( )で認 ており,平成15年1月14日が上棟式,同年5月末には新居が完成する予定となっていた。仮住まいに伴って,電話番号も変更になっていた(甲14,乙1-)。 BAP1上記二1(二)( )で認定した被告C医師が平成14年9月11日に送付 した検査日程を打ち合わせることを求める手紙は,宛先が誤って住所では- 72 -なく亡Aの本籍地となっていたために配達されずに返送されたもので,仮住まいに伴い電話番号が変更になっていたことなどから,被告C医師が電話してもつながらなかったものである(乙1-,原告本人。 AP1P8)(二)なお,原告自身は,本件手術当時から,癌患者は医療機関に足を運ぶときは少しでも良くなりたいと思って行くわけであり,積極的な治療をせずにそのまま放置してよいとか黙って死を受け入れるという覚悟があったら,病院の門はくぐらないと思っていた(原告本人。 P26) 平成15年1月17日に亡Aの超音波検査を実施したI医師,J医師は(乙1-,被告病院の内科の医師で,実際にを専門に担当しAP183PTCD)ている医師であり,同医師らは,亡Aの腫瘍については,は困難であPTCDり,腔内照射の適応もないものと思うと診断しているところである。 これは,次のような判断によるものと認められる。正常な胆管の直径は2程度であるので,正常な胆管を体外から穿刺することはほぼ不可能に近mmく,胆管に閉塞があって胆管が拡張している場合に初めては可能になPTCDる。 は,失敗すると肝臓の表面に穴が開いて胆汁や血液が継続的に腹PTCD腔内に漏れだして腹膜炎を引き起こし,緊急手術になることも多く,そのまま患者が亡くなることもある危険な手技であるので,困難であると考えたときは実施しない(第1回被告C医師本人)。 P1 PTCD腔内に漏れだして腹膜炎を引き起こし,緊急手術になることも多く,そのまま患者が亡くなることもある危険な手技であるので,困難であると考えたときは実施しない(第1回被告C医師本人)。 P14,P15これに,前記二1(四)で認定した事実をも併せて考えると,平成15年1月17日の時点ではは実施困難であり,その時点では亡Aに黄疸が生PTCDじているわけではないのでを実施する必要性はないものの,将来亡APTCDに黄疸が生じた場合であっても,胆管パピロマトーシスは胆管充満型の腫瘍であって胆管狭窄型の腫瘍ではないから,末梢の胆管がで穿刺できるPTCDほど拡張するかどうか不明であり,は実施できない可能性もあった。 PTCDそうなると,腔内照射は,で入れたチューブ内を通して放射線の小PTCD線源を腫瘍が存在する部位まで入れることによって腫瘍に接着した場所から- 73 -放射線を照射するので,が困難であればそもそも腔内照射を実施するPTCDことも困難となる(証人H医師)。 P6四争点に対する判断以下では,上記一ないし三で認定した事実に基づき争点について判断する。 パピロマトーシスに関する医学的知見について(一)上記二2で認定したとおり,第1手術で切除された手術標本に基づく病理学的診断は,胆管パピロマトーシスに類似する良性,悪性の鑑別の難しい胆管乳頭腫瘍というものであり,本件手術で切除された手術標本に基づく病理学的診断は,異型を伴う胆管パピロマトーシスというものであった。 したがって,本件手術後になって初めて亡Aの腫瘍が胆管パピロマトーシスであるという確定診断がついたのであり,本件手術時には胆管パピロマトーシスという診断はついていなかった。本件手術時には,亡Aの腫瘍は,良性か悪性か鑑別が難しい胆管乳頭腫瘍と 瘍が胆管パピロマトーシスであるという確定診断がついたのであり,本件手術時には胆管パピロマトーシスという診断はついていなかった。本件手術時には,亡Aの腫瘍は,良性か悪性か鑑別が難しい胆管乳頭腫瘍という診断しかついていない段階であったから,かかる良性か悪性か鑑別が難しい胆管乳頭腫瘍という診断を前提として,本件手術の手術適応があったか否かといったその他の問題点を検討しなければならない。 (二)良性か悪性か鑑別が難しい腫瘍の場合,仮に,医療機関が良性腫瘍として取り扱い良性腫瘍として治療方針を立てて治療したが後になって悪性腫瘍であることが判明した場合,手術の切除範囲が狭かったことあるいは手術が可能であるのにそのまま経過を観察して時を過ごしたこと等が原因で,最初に悪性腫瘍と同じ扱いをして広範囲に切除しておけば避けられたのに再発や転移を生じて死亡するに至るという取り返しのつかない結果が生じる危険性がある。 したがって,良性か悪性か鑑別の難しい腫瘍の場合,悪性腫瘍として取り扱うことの方が最も患者の利益に合致するもので,悪性腫瘍と同じ扱いをすることもやむを得ない。 - 74 -そして,本件の場合,腫瘍が良性であっても,胆道を腫瘍が閉塞するに至れば胆汁が排出されなくなって閉塞性黄疸が生じ,閉塞性黄疸を放置すると胆管炎等の感染症や肝不全を起こして死に至るという結果を招くという特色がある。さらに,本件の場合,第1手術で完全に腫瘍を摘出する根治手術がなされたにもかかわらず局所に再発したことも考慮すると,悪性腫瘍と同じ扱いをすることには合理性があるというべきである。 (三)また,本件では,本件手術の結果診断がついた胆管パピロマトーシスは,上記一1で認定したとおり,WHOの分類では良性腫瘍として分類されているが,リンパ節転移が見られたという報告や胆管壁への 。 (三)また,本件では,本件手術の結果診断がついた胆管パピロマトーシスは,上記一1で認定したとおり,WHOの分類では良性腫瘍として分類されているが,リンパ節転移が見られたという報告や胆管壁への浸潤がある症例や約3割の症例で診断時もしくは経過観察中に悪性転化することが知られていて,低悪性度の悪性腫瘍あるいは良性腫瘍と悪性腫瘍の境界域と扱う方が適切という見解もあること,現在ではパピロマトーシスの治療は胆道癌に準じて扱われ治療法として外科手術が選択されることに照らすと,仮に亡Aの腫瘍が胆管パピロマトーシスであったことを前提として考えても,上記(二)のように悪性腫瘍と同じ扱いをすることに合理性があることになる。 (四)したがって,亡Aの腫瘍も,放置すれば腫瘍が進展して前区域枝だけでなく後区域枝も閉塞するに至り,閉塞性黄疸が生じて死が避けられない事態になるものである。 そして,上記二1(三)( )で認定したとおり,被告C医師は,亡Aに対 して,このまま放置すれば死亡するに至ることを説明しているところである。 胆管癌の治療法についての医学的知見(一)上記一4ないし6で認定したとおり,肝内胆管癌に対する治療法のうち,唯一根治性のある治療は手術であり,治療法の第1選択は手術である。 放射線療法は,腔内照射を併用することによって総線量を60ないしGy- 75 - まで増やしてもなお,手術と比較すると5年生存率,生存期間のGy中央値ともに大きく劣り,治療成績は明らかに手術よりも不良である。そこで,放射線療法の目的は,手術根治性の向上という手術の補助目的,手術不能時に延命を目ざす姑息的治療,ステント開存保持や黄疸を減らす対症治療ということになる。しかし,放射線治療には消化管出血や胆道狭窄といった合併症があり,小腸は放射線に弱いた う手術の補助目的,手術不能時に延命を目ざす姑息的治療,ステント開存保持や黄疸を減らす対症治療ということになる。しかし,放射線治療には消化管出血や胆道狭窄といった合併症があり,小腸は放射線に弱いため消化管出血はしばしば重篤になり,腸や肝臓への影響を回避するために治療効果がさらに落ちることを覚悟して線量を制限せざるを得ないこともある。腔内照射についても同じく合併症が無視できないので臨床試験段階と捉えられている。したがって,放射線治療には,消化管に合併症が出ない線量に制限すれば治療効果がさほど期待できず,治療効果が期待できるだけの線量を照射すれば合併症の危険が増加するというジレンマが存在する。 ステント留置については,上記一3で認定したように,胆道が腫瘍によって閉塞されて生じる閉塞性黄疸の胆道閉塞あるいは胆道狭窄の治療が目的である。ステントを留置しても,胆道の閉塞を防止するのみで腫瘍の増殖を抑える効果は全くないが,閉塞性黄疸を軽減して胆管炎や肝不全の発生を防止し,延命を図ることが可能となる。しかし,ステント留置にもやはり危険な合併症が存在しており,デメリットが全くない治療法ではない。 (二)上記(一)によると,肝内胆管癌の治療法は,客観的な治療成績の面から検討する限り,手術が可能であれば手術が最も治療成績がよく第1に検討されるべき治療方法であり,手術が何らかの方法でできない場合に放射線治療が検討されるということになる。ステント留置は,閉塞性黄疸が生じた場合の対症的治療法にとどまり腫瘍本体に対する治療効果は皆無である。 争点1「亡Aには手術適応がないのに,被告C医師は本件手術を実施したか」についての判断- 76 -(一)上記三4で認定したように,亡Aには高齢という予測困難なリスク要因が存在するものの,術前検査や肝臓の切除体積の計 応がないのに,被告C医師は本件手術を実施したか」についての判断- 76 -(一)上記三4で認定したように,亡Aには高齢という予測困難なリスク要因が存在するものの,術前検査や肝臓の切除体積の計算結果等術前に実施可能な検査結果で評価する限り、本件手術が一般的に実施されている肝切除術と比べて特別に危険な手術であるとは認められないこと,現実になされた本件手術も,平均的な肝切除術の所要時間や出血量と比べて大幅に平均値を超える長時間を要したあるいは大量出血があった手術であるとはいえないこと,上記四1で認定したように亡Aの腫瘍は悪性腫瘍と同じ扱いをすることに合理性があることに照らすと,亡Aは,本件手術について手術適応があったと認められる。 亡Aの腫瘍は,再発までに5年間を要しており,本件手術後将来再発するとしてもやはり約5年間程度要することが推測され,本件手術に耐えられれば長期生存が期待できる。 (二)原告は,手術以外の治療法の存在を主張するが,上記四2で認定したように,放射線治療やステント留置は治療の効果や危険性の点で手術よりも劣り,手術と同列において検討の対象となる代替的治療法ではない。そもそも本件手術の段階で亡Aに黄疸は生じていないから,当該時点ではステント留置の必要性,適応はないことに照らすと,亡Aとすれば,①手術を受けるか,②放射線治療を受けるか,それとも③何もせず黄疸等の症状が生じた時点で当該症状に対する対症療法的な治療を受けるかという選択肢があるだけであったといえる。 (三)なお,原告が主張する各治療法の適否について検討する。 ( )放射線治療については,上記三5(七)で認定したとおり,亡Aは, 第1手術を受けたため肝門部に空腸が吻合されていて肝外胆管が存在せず,第1手術のような手術を受けたことがない一般人と比べると,肝 )放射線治療については,上記三5(七)で認定したとおり,亡Aは, 第1手術を受けたため肝門部に空腸が吻合されていて肝外胆管が存在せず,第1手術のような手術を受けたことがない一般人と比べると,肝内胆管に存在する腫瘍と吻合された空腸との距離が非常に近くなっている。 このことは,肝門部に吻合した空腸が通常の放射線治療よりも多量の放- 77 -射線を浴びることを意味し,空腸は小腸の一部で放射線に弱いことを考慮すると,亡Aが放射線治療を受けた場合には,肝門部で縫合した空腸からの出血,穿孔といった合併症をおこす危険が,第1手術のような手術を受けていない人と比べると明らかに高いことになる。 したがって,亡Aの場合は,第1手術を受けていることから,放射線治療でも手術と比べて危険性が低いということはできず,治療効果についても,上記一4(四)及び5で認定したとおり手術よりも大きく劣る治療法というべきである。 ,( )については,上記一7,三5(二)及び三7で認定したとおり PTCD亡Aの腫瘍は,胆管内充満型で不完全閉塞をきたすタイプのため胆管拡張の程度が小さく,平成15年1月17日の時点では胆管の穿刺が困難で,にも危険性が伴うことを考慮すると,実施は難しいとする被PTCD告C医師の判断には合理性があったといえる。 そして,亡Aは,本件手術時までに黄疸が生じたことはなく,胆管の拡張も顕著ではなかったから,はその必要性がなかったものであPTCDり,が必要となるのは,将来亡Aの腫瘍が進展して胆管を全部閉PTCD塞し,胆管の拡張や黄疸が生じた段階になった後のことである。しかし,亡Aの腫瘍は,胆管内充満型で不完全閉塞をきたすタイプであることから,将来的にも果たして穿刺が可能な程度まで胆管の拡張が見られるかどうかは不明であったことから,亡A になった後のことである。しかし,亡Aの腫瘍は,胆管内充満型で不完全閉塞をきたすタイプであることから,将来的にも果たして穿刺が可能な程度まで胆管の拡張が見られるかどうかは不明であったことから,亡Aの腫瘍が進展して黄疸を来すようになっても,亡Aにが可能であったかどうかは明らかではない。 PTCDしたがって,本件でを選択するということは,亡Aは,腫瘍にPTCD対する治療は何もせず,腫瘍による黄疸が生じた後になってが可PTCD能かどうかを再度検討するということを意味することになる。 そしてその場合には,結局が実施できず,有効な黄疸の治療法PTCDがないまま胆管炎で早期に死亡する可能性も高い。 - 78 -なお,に関しては,上記三5(一)で認定したように,被告C医PTCD師は,平成14年12月11日に亡Aに対して,胆管が4本とも詰まった場合にはを行って胆汁を体外へ出すことについて説明していたPTCDものと認められる。 ( )腔内照射については,のチューブを利用して放射線の線源を PTCD腫瘍が存在する部位まで出し入れするものであるから,が困難でPTCDあれば,腔内照射も実施できない。したがって,本件手術時点では,腔内照射を実施することは困難であるというほかない。 ( )ステント留置については,上記一3(一)( )で認定したとおり,閉塞 性黄疸をきたした患者の胆道閉塞あるいは狭窄の姑息的治療法として用いられる手段である。亡Aは,本件手術時点で黄疸はきたしていないから,当該時点ではステント留置をする必要性がなく,ステントの適応がない。 そのうえ,上記一3(二)( )及び( )で認定したとおり,亡Aのような 手術後の肝門部胆管空腸吻合部に対するメタリックステントの挿入は,逸脱する可能性が高く,腸管にス テントの適応がない。 そのうえ,上記一3(二)( )及び( )で認定したとおり,亡Aのような 手術後の肝門部胆管空腸吻合部に対するメタリックステントの挿入は,逸脱する可能性が高く,腸管にステントが逸脱すると腸管穿孔や周囲の門脈,下大静脈といった血管に穿通して出血や敗血症をおこすので禁忌とされている。 ,また,上記一3(一)( )で認定したとおり,プラスチックステントは 挿入と抜去が容易であるが,直径が細く開存期間が短い,固定性が悪く移動する,逆行性感染が生じるなどの点で多くの問題点を抱えているほか,肝内胆管に挿入した場合には挿入した1本の胆管しかドレナージ効果がなく,途中の胆管の分枝を全て塞いでしまうという欠点がある。 そして,亡Aにプラスチックステントを挿入する場合,肝内胆管に挿入することになるので上記欠点が当てはまることになる。 ステント留置についても,第1手術を受けた亡Aに関しては,上述し- 79 -たようにさまざまな合併症を起こす危険性が高いということができ,胆管炎を発症してそのまま放置すれば死亡する危険性が生じて初めて,上記ステント留置に伴うリスクを冒してもステントを留置することによるメリットの方が大きいということができる。 ( )レーザー照射とステント留置の併用療法について,甲第12号証 Bによれば,1つの施設で4例の肝外胆管癌に対してレーザー照射を実施してステント留置と併用したという報告であり,被覆したメタリックステントを用いている。他に多数の施設でレーザー照射が実施されていることを認めるに足りる証拠はなく,レーザー照射とステント留置を併用した場合の治療成績についても,甲第12号証以外には全く提出さBれていない。わずか4例の報告で治療成績を論ずること自体無理があり,レーザー照射とステント留置を併 レーザー照射とステント留置を併用した場合の治療成績についても,甲第12号証以外には全く提出さBれていない。わずか4例の報告で治療成績を論ずること自体無理があり,レーザー照射とステント留置を併用する治療法が,医療水準として確立された肝内胆管癌の治療法であると認めることはできない。 また,被覆したメタリックステント()を用いていることcoveredstentから,第1手術後の亡Aの肝門部胆管空腸吻合部に対して使用することは禁忌である可能性が高い。この報告は,肝外胆管癌に対してレーザー照射を実施したもので,亡Aの肝内胆管癌に対して同様にレーザー照射を実施できるか疑問もある。 ( )甲第4号証によれば,胆管パピロマトーシスに対しては,腫瘍掻 B爬術+ドレナージ留置といった姑息的治療法が施行されることが多かった旨の記載がある。しかし,上記一1(四)で認定した事実によれば,肝切除術が根治治療であるのに対し,腫瘍掻爬術は開腹手術を前提とした昔の治療法であって,しかも姑息的治療にすぎず,現在では患者のデメリットが多く実施されていない治療法であり,亡Aにとって負担が重い開腹手術を前提とした腫瘍掻爬術+ドレナージ留置という治療法を採用する余地はない。 - 80 -( )さらに,原告は,ステント治療の有効性と合併症を問題とする必要 がないことを根拠づける証拠として,甲第18号証,甲第19号BB証を提出するが,いずれも亡Aの場合のように既に肝門部胆管空腸吻合術を受けた症例についてのものではなく,ステント留置は肝門部胆管空腸吻合術を受けた患者では禁忌とされていることに照らすと,これらの書証をもって,亡Aの場合にもステント治療が有効であるということはできない。 争点2「被告C医師は,亡Aに対して説明義務を尽くしたか」について けた患者では禁忌とされていることに照らすと,これらの書証をもって,亡Aの場合にもステント治療が有効であるということはできない。 争点2「被告C医師は,亡Aに対して説明義務を尽くしたか」についての 判断 (一)ある疾患について複数の治療法が存在する場合において,患者が第1選択(標準的治療法)とされている治療法(複数の場合もある)とは異なる治療法を選択した場合,標準的治療法(第1選択)とされた治療法は,他の治療法と比較した場合に患者のメリットとデメリットを対比して最も患者の受ける利益が大きいことから標準的治療法とされているのであって,患者は,通常の場合,患者が選択した治療法が標準的治療法よりもメリットが少ないかあるいはデメリットが多く治療成績あるいは合併症という点で劣った治療法であることを理解していないことが少なくないことに照らすと,医師は,患者に対して,標準的治療法と患者が選択した治療法の利害得失を比較対照できるように,なぜ患者が選択した治療法が標準的治療法となっていないかを患者が理解できるように具体的に説明すべき法律上の義務を負っているものというべきである。医師は,標準的治療法を拒否している患者を翻意させる義務までを負うものではないが,少なくとも患者に誤解がないかどうか確認し再検討する機会を与える義務を負っているのである。したがって,医師が上記説明を怠ったまま患者が選択した治療法を実施した場合,医師は,少なくとも説明義務違反として損害賠償責任を負うことを免れない。 - 81 -他方,患者が標準的治療法を選択している場合には,もとより患者の自己決定権の実質的な確保との観点から,標準的治療法以外の治療法の存在,そのメリット及びデメリットについても説明すべきではあるが,いやしくも医師がそれよりも治療成績あるいは合併症といった点で劣 者の自己決定権の実質的な確保との観点から,標準的治療法以外の治療法の存在,そのメリット及びデメリットについても説明すべきではあるが,いやしくも医師がそれよりも治療成績あるいは合併症といった点で劣った標準的治療法とは異なる治療法を説明して患者を翻意させ,当該標準的治療法とは異なる治療法を受けさせるようなことがあってはならないことはいうまでもないところである。 (二)本件においては,亡Aは,入院当初から,肝内胆管癌に対する治療法の第1選択である手術を拒否して,それよりも効果が劣る放射線治療を希望していた。したがって,被告C医師は,上記(一)で認定したような説明義務を負っており,手術と放射線治療の利害得失を比較対照できるように説明し,放射線治療がなぜ第1選択(標準的治療法)となっていないのかを亡Aが理解できるように説明して手術を再検討するよう促す義務を負っていたことになる。 (三)被告C医師は,上記三5(四)で認定したとおり,平成15年1月30日検査(穿刺胆管造影)を実施してようやく亡Aの根治手術が可能PTCであるとの見通しが立ったので,同月31日,亡Aと原告に対して,手術と放射線治療という2つの治療法について上記三5(五)で認定した内容の説明をしたところ,亡Aは第1選択の手術を拒否して第2選択の放射線治療を希望した。被告C医師は,同年2月2日,外泊から戻ってきた後も亡Aの手術を拒否するという方針が変わらなかったので,亡Aの決断を尊重し,同月3日,手術の準備のための検査である血管造影検査も手術の予定もキャンセルしたうえで,亡Aに対して上記三5(六)で認定した内容の説明をして,放射線治療を実施する準備として,放射線治療を担当する放射線科のH医師に対して,放射線治療が可能かどうかの検討を依頼する目的で亡Aを紹介した。H医師は,亡A 記三5(六)で認定した内容の説明をして,放射線治療を実施する準備として,放射線治療を担当する放射線科のH医師に対して,放射線治療が可能かどうかの検討を依頼する目的で亡Aを紹介した。H医師は,亡Aに対して,上記三5(六)で認定した内- 82 -容の説明をし,亡Aの腫瘍に対する第1選択の治療法は手術であり,放射線治療は効果も手術に劣り合併症の危険性もあるとして手術の方を勧めた。 亡Aは,H医師の説明を聞いた直後は,被告C医師がその意思を確認しても手術を拒否する姿勢を変えなかったが,同月12日に外泊から戻ってきたときには,放射線治療の効果が劣り,根治が期待できないことと合併症の危険があることが気にかかり,手術か放射線治療か迷い始めていた。 以上の経過においてなされたH医師の説明内容も被告C医師の説明内容も,いずれもその内容は医学的見地から見て誤ったものではなく,亡Aに対して誤った情報を与えたものでもない。 そうすると,亡Aに対して,H医師が放射線治療の効果が劣り根治が期待薄であることと放射線治療の合併症の危険性を説明して第1選択である手術の方を勧めたこと,及びH医師の意見を受けて被告C医師が再度亡Aに手術について再検討するよう促したことは,いずれも上記(二)で記載した,本件のように患者が第1選択の治療法を拒否して第2選択の放射線治療を希望した場合に医師に要求される説明義務を果たしたものと評価することができる。 (四)また,上記三3で認定したとおり,被告C医師は,亡Aに対し,第1手術前に,肝切除術に伴って出血,胆汁漏れ,肝不全といった一般的合併症が発生することがあること,場合によっては入院が長引いて死亡することもあること,手術で腫瘍を切除しても再発があり得ることを説明していたところである。 上記二1(三)及び(四)で認定したとおり,第1手 が発生することがあること,場合によっては入院が長引いて死亡することもあること,手術で腫瘍を切除しても再発があり得ることを説明していたところである。 上記二1(三)及び(四)で認定したとおり,第1手術後本件手術の前の面談票には肝切除術の一般的合併症が記載されたものは存在しないものの,被告C医師は,本件手術の前にも,肝切除術の一般的合併症の内容や場合によって無事に退院できないことがあることをも説明している。 本件手術は,第1手術と同じく肝臓の切除手術であり,亡Aは既に一度- 83 -肝切除術を経験しているから手術がどのようなものかも理解しており,患者が第1手術の際の説明で理解している部分については簡単な説明で目的を達することができるから,一度も肝切除術を経験したことがない患者と2度目に肝切除術を受ける患者とでは,具体的に何を中心に説明するか説明義務の内容・程度も自ずから異なってきてしかるべきである。 そして,前記三6で認定した事実に照らすと,亡Aは,本件手術に関する説明を受けていた当時,自宅を新築中であり,胆管腫瘍によって生活上の不便は生じておらず,悪性腫瘍という病気を抱えたままこれから生きていくつもりはなく,今後も寿命が尽きるまで新築した自宅でできるだけ長生きする治療法を希望していたと認められる。 被告C医師は,外来で腹部検査を受けた平成14年12月11日に,CT亡Aに対して,何もしないままにしていると黄疸が出現しその場合にはを実施することを説明しており,入院後一時退院する前の平成15PTCD年2月12日には,亡Aから放射線治療については副作用があることや治療成績が手術よりも悪いことを聞いて今までとは違って積極的になれず,かといって手術はいやなのでと相談された際に,何もしないという選択肢もあること(この場合には発症した症状等に応 副作用があることや治療成績が手術よりも悪いことを聞いて今までとは違って積極的になれず,かといって手術はいやなのでと相談された際に,何もしないという選択肢もあること(この場合には発症した症状等に応じ,対症療法的に,感染症などに対する抗生剤等の投薬療法,胆管ドレナージなどを実施することになる)について言及したが,亡Aからそれでは延命効果がないことを理。 由に即座に拒絶されていることに照らすと,何もしないという選択肢は,できるだけ長生きできる治療法を希望していた当時の亡Aにとって検討する余地のない治療方針であったと認められる。患者本人が,何もしない(上記のような対症療法的な治療のみを行う)という選択肢を明確に拒絶し,しかも何もしないという選択肢は患者本人にとって最もメリットが多い選択肢ではないことが明白である以上,被告C医師に,より有効性の高い放射線あるいは手術といった治療法のほかに,何もしないという選択を- 84 -前提とする治療法について,更に具体的に説明すべき法的義務があったとまでは認めることができない。また,上記(三)に照らすと被告C医師が亡A及び原告に対し,本件手術を受けなかった場合の予後,亡Aと同年齢の人が肝臓切除術を受けたときの死亡率について説明していないことをもって,同被告に説明義務違反があるともいえない。 したがって,被告C医師は,上記説明内容で自らに課された説明義務を尽くしたものと認めるのが相当であり,同被告に説明義務違反は認められない。 五 結論 以上によれば,原告の被告らに対する本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条を適用して主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部裁判長裁判官村田渉裁判官金光秀明 でもなく,いずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条を適用して主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部裁判長裁判官村田渉裁判官金光秀明裁判官小野本敦
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