平成29年12月21日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成27年第726号損害賠償請求事件(口頭弁論終結日平成29年9月14日)判決 主文 1 被告組合は,X1に対し,27万5000円及びこれに対する平成25年10月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告組合は,X2に対し,27万5000円及びこれに対する平成25年10月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らの被告県に対する請求をいずれも棄却する。 4 原告らの被告組合に対するその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用のうち,原告らと被告県との間に生じたものは,原告らの負担とし,原告らと被告組合との間に生じたものは,これを25分し,その4を被告組合の負担とし,その余を原告らの負担とする。 6 この判決は,1項及び2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 1 被告らは,X1に対し,連帯して330万円及びこれに対する平成25年10月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告らは,X2に対し,連帯して330万円及びこれに対する平成25年10月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は被告らの負担とする。 4 仮執行宣言第2 事案の概要 1 本件は,後記交通事故(以下「本件事故」という。)によって死亡したAの相続人(子)である原告らが,被告らに対し,本件事故現場に臨場して救命救 急活動等に従事した被告組合に所属する救急隊員ら及び被告県に所属する警察官らがAを車内から発見するのが著しく遅滞したことについて,同救急隊員ら及び警察官らは,救 件事故現場に臨場して救命救 急活動等に従事した被告組合に所属する救急隊員ら及び被告県に所属する警察官らがAを車内から発見するのが著しく遅滞したことについて,同救急隊員ら及び警察官らは,救急救命活動における要保護者探索についての基本的な注意義務に違反し,そのためAを救命できなかったとして,国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき,各330万円(Aの慰謝料相続分,固有の慰謝料及び弁護士費用の合計額)及びこれらに対する不法行為の日である平成25年10月16日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。 2 判断の前提となる事実以下の事実は,当事者間に争いのない事実並びに括弧内に摘示する証拠(書証は枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実である。 当事者等(枝番を含む甲1,甲11,乙14,ほぼ争いがない)Aは,昭和14年〇月〇日生まれの女性であり,平成25年10月17日午前0時32分に,B病院にて死亡が確認されたものである。 X1及びX2は,Aの子である。また,Aの配偶者は,Cであり,これら3名がAを相続した。 本件事故の発生(争いがない)ア日時平成25年10月16日午後8時50分ころイ場所島根県a市b町c番地d(以下「本件事故現場」という。)ウ事故態様 D運転の中型貨物自動車(ナンバー略,以下「D車」という。)がE運転A後部座席同乗に係る普通乗用自動車(ナンバー略,以下「E車」という)に追突し,ほか自動車3台に次々に追突した玉突き事故 警察官・救急隊員らの臨場(争いがない)本件事故現場に臨場したのは,島根県a警察署(以下「警察署」という。) に所属する警察官ら 突し,ほか自動車3台に次々に追突した玉突き事故 警察官・救急隊員らの臨場(争いがない)本件事故現場に臨場したのは,島根県a警察署(以下「警察署」という。) に所属する警察官ら(以下,臨場した警察官を「警察官ら」という。)と被告組合設置のa広域消防署(以下「消防署」という。)に所属する救急隊員ら(以下,臨場した救急隊員らを「救急隊員ら」という。)である。 本件事故が発生してからAの死亡が確認されるまでの経過(甲3,11,20,22,乙1,14,15,丙6,7)以下,特に断らない限り,年月日は平成25年10月16日を指す。 ア本件事故現場の状況及び本件事故時の車両の位置関係等については,別紙のとおりである。本件事故現場は,南北に通じる道路と東西に通じる道路が交差する十字路交差点(以下「本件交差点」という。)付近である。 E車は,D車に衝突された。E車は,衝突の衝撃で,本件交差点内にはじき出され,対向車線で右折待ちをしていた他の車両にさらに衝突し,本件交差点内に停止した。 E車の後部座席に座っていたAは,本件事故の衝撃により,車内に倒れ込んだ(AがE車の車内のどの位置に倒れ込んだかについては,後記のとおり,争いがある。)。 イ Dは,午後8時55分に,110番通報をした。また,非番でたまたま現場付近を通行していた消防署の消防隊員が,午後8時57分に,119番通報をした。なお,午後9時1分に,島根県警察本部通信指令課も,消防署に対し,本件事故について通報している。 ウ救急隊員らは,救急車2台で消防署を出場し,午後9時7分ころに本件事故現場に到着した。救急隊員らは,午後9時16分に,他の車両に乗車していた10代女性をF病院に,午後9時17分に,EをB病院に各救急搬送した。このとき,AはE車 署を出場し,午後9時7分ころに本件事故現場に到着した。救急隊員らは,午後9時16分に,他の車両に乗車していた10代女性をF病院に,午後9時17分に,EをB病院に各救急搬送した。このとき,AはE車の車内にいたが,救急隊によって発見されることはなかった。 エ警察官らも,本件事故現場に到着し,交通整理や実況見分等を実施した。 なお,警察官らは,後記カまでの間,他に負傷者がいないかを確認するな どはしていない。 オ午後11時18分ころ,B病院から警察署に対して,「事故当事者の家族が来ているが,まだ家族が戻ってきていないとのこと,現場はまだ終わっていないか。」との問い合わせがあり,さらに,午後11時25分ころ,Cらがタクシーに乗って本件事故現場に到着し,警察官らに対して,Aを探している旨を申し出た。 カそこで,警察官らが,再度,E車の車内を確認したところ,午後11時29分に,Aが発見された。警察官らは,消防署に連絡し,救急要請をし,午後11時39分に,本件事故現場に到着した消防署の救急隊らにAを引き継いだ。 キ救急車は,Aを乗せて,午後11時50分に,B病院に向けて出発し,午後11時53分に,同病院に到着した。 ク Aは,平成25年10月17日午前0時32分に,同病院において死亡が確認された。 解剖の実施(甲33,乙18)警察官らは,Aの死体に関し,損傷の部位及び程度,死因,死後経過時間,死亡推定時刻,その他参考事項(受傷時期,創傷別と死因との因果関係,受傷後死亡までの時間等)等について,G大学医学部法医学講座教授のH医師に鑑定を嘱託し,H医師は,平成25年10月17日午後1時10分から午後4時51分までの間に,Aの死体を解剖して鑑定を実施した。 H医師は,平成26年2月7日に,上記鑑定 学講座教授のH医師に鑑定を嘱託し,H医師は,平成25年10月17日午後1時10分から午後4時51分までの間に,Aの死体を解剖して鑑定を実施した。 H医師は,平成26年2月7日に,上記鑑定にかかる鑑定書を作成した(以下「本件鑑定書」という。)。本件鑑定書には,①解剖結果,検査結果及びAが発見された状況等から考えると,Aは,主として,頭部,顔面,胸腹部及び右上肢打撃に基づく骨折,多臓器損傷及び出血等による外傷性ショックに陥って死亡したものと考えられること,②受傷後死亡までの時間について,Aは,受傷後ほぼ即死あるいは短時間のうちに死亡したものと考えら れること,③死後経過時間等について,死体現象の各指標(直腸内温度,死体硬直,死斑,角膜混濁及び内臓諸臓器の腐敗の程度等),死体の置かれていた場所,当時の気温等から総合的に推定すると,死後経過時間は,解剖開始時において,およそ16時間程度であろうと推測されることなどが記載されている。 交通事故捜査処理要領(甲5)交通事故の取扱いについて,必要な事項を定め安全,迅速かつ,適正な捜査処理を図ることを目的に定められた交通事故捜査処理要領(概要)(昭和47年9月27日発交指第465号)(以下「交通事故捜査処理要領」という。)には,次のように定められている(抜粋。なお,第5は,交通事故捜査処理要領の「第1章総則」に,第12,第14ないし第16は,同「第2章現場措置」に,第18は,同「第3章重大特異事故等の措置」に,それぞれ規定されている。)。 (事故取扱い上の留意事項)第5 交通事故の取扱いにあたっては,次の事項に留意しなければならない。 1~3 省略 4 負傷者の救護,事故の再発防止など当面必要な措置をとるとともに,交通の回復をは )第5 交通事故の取扱いにあたっては,次の事項に留意しなければならない。 1~3 省略 4 負傷者の救護,事故の再発防止など当面必要な措置をとるとともに,交通の回復をはかること。 5 物的証拠は,その所在地点および状況を,人的証拠は,つとめて多数をすみやかに確保すること。 (現場における応急措置)第12 現場に先着した警察官は,次の要領により迅速に適切な措置をとらなければならない。 1 当事者,目撃者,加害車両,被害車両等を確保し記録すること。 2 死傷者があるときは,直ちに救護措置をとるとともに病院に収容する等最善を尽くすこと。 3 省略 4 死傷者および関係車両をやむを得ず移動するときは,その位置,方向,状態および関係物件との関係位置を表示し記録すること。 5,6 省略(死傷者の取扱い)第14 死傷者の取扱いにあたっては,次の事項に留意しなければならない。 1 負傷者の救護措置を,他に優先して行うこと。 2 省略 3 死亡しているか否かの判断は慎重に行い,重傷を死亡と即断し,または外傷がないことなどの理由から救護の時機を失することのないようにすること。 4,5 省略(現場保存)第15 現場保存は,事故の規模,交通の状況などを考慮し,次によって行わなければならない。 1 衝突痕,印象痕,血痕,ガラス破片,塗膜片等の位置,当事車両の位置およびその状況を白墨等で表示し,できる限り現状の状態で保存すること。 2 資料が滅失,き損,変質,散いつのおそれがあるときは,機を失せずこれを収集し,その場所を表示して記録しておくこと。 3,4 省略(交通渋滞の解消)第16 交通渋滞が発生しまたは発生 2 資料が滅失,き損,変質,散いつのおそれがあるときは,機を失せずこれを収集し,その場所を表示して記録しておくこと。 3,4 省略(交通渋滞の解消)第16 交通渋滞が発生しまたは発生のおそれがある場合は,次の措置により解消につとめなければならない。 1 通行の禁止制限等の交通規制措置をとるとともに,第8に定める関係機関(救急病院その他の救護機関,電気,ガス,水道等の復旧作業機関, クレーン車の所有者等および危険物の排除機関等)の協力を得て,危険物等の排除に努めること。 2 その場に居合わせた公衆に協力を求めるなど,適宜の措置をとること。 3 省略(重大事故等の応急措置)第18 重大事故等の発生を認知した警察署長等は,規模に応じた数の警察官を現場に急行させ,第2章「現場措置」によるほか。現場責任者を指定して,次の措置をとらなければならない。 1 省略 2 一般通行車両,その場に居合わせた者の協力を求め,死傷者の救出につとめること。 3,4 省略 3 争点 被告県が,国賠法1条1項に基づく損害賠償責任を負うか否か 被告組合が,国賠法1条1項に基づく損害賠償責任を負うか否か 4 争点に対する当事者の主張 (被告県が,国賠法1条1項に基づく損害賠償責任を負うか否か)について(原告らの主張)ア本件事故後のAの状況Aは,警察官らに発見されたとき,頭部を助手席側に,脚部を運転席側にして,後部座席に横たわっている状態であった。 被告らは,Aが,前部座席と後部座席の間に落ち込んでいたと主張するが,E車の助手席の背部と後部座席の間隔は,22センチメートルで,さらに,本件事故による車体の変形により,その間隔が縮まっているといえるところ, が,前部座席と後部座席の間に落ち込んでいたと主張するが,E車の助手席の背部と後部座席の間隔は,22センチメートルで,さらに,本件事故による車体の変形により,その間隔が縮まっているといえるところ,Aが身長149センチメートル,体重49.4キログラム(本 件事故当時)であったことを勘案すると,前部座席と後部座席の狭いスペースに落ち込むということなどは考え難い。 イ警察官らの救護等義務違反警察法2条には「警察は,個人の生命,身体及び財産の保護に任じ」と定められており,また,交通事故捜査処理要領には,「当事者,目撃者,加害車両,被害車両等を確保し記録すること。(第12の1)」,「負傷者の救護措置を,他に優先して行うこと。(第14の1)」などと定められているとおり,事故現場においては,死傷者の救護が警察官の最優先の義務であるから,救急隊員に救護等義務があることは当然のことながら,警察官にも救護等義務が存在するというべきである。 また,本件では,警察官らが本件事故現場に到着した時刻(午後9時3分)の方が,救急隊員らが本件事故現場に到着した時刻(午後9時7分)よりも早いので,警察官らに死傷者の救護等義務が存在することは明白である。 そして,死傷者は,事故車両内に倒れているのが通常であるから,事故車両内の死傷者の有無を確認するのは警察官の当然の義務というべきであるところ,本件では,警察官らは,負傷者の救助とともに,事故車両の内部にライトを当てるなどして,負傷者が残っていないかを探すべきであったのに,これを怠り,上記アのとおり,E車の後部座席に倒れていたAを発見することができなかった過失がある。 ウ Aの人格権侵害上記イの警察官らの過失により,Aは,本件事故から約2時間半もの間,E車に放置されて,その人格権が侵害さ 後部座席に倒れていたAを発見することができなかった過失がある。 ウ Aの人格権侵害上記イの警察官らの過失により,Aは,本件事故から約2時間半もの間,E車に放置されて,その人格権が侵害されたといえる。 Aには,下記エのとおり,救命可能性があったが,仮に,即死していたとしても,速やかに救命措置を受けるべき立場にあったから,Aの人格権が侵害されたという結論を左右するものではない。 エ Aの救命可能性Aには,救急隊員らから処置を受けた午後11時45分から午後11時53分ころ,死斑や死後硬直などの死体現象が現れていなかったし,また,翌日である平成25年10月17日午前0時32分まで治療が行われたB病院のカルテにも四肢硬直や死斑等の死体現象が現れていたことをうかがわせる記載はない。そうすると,Aには,本件事故から3時間半も経過した時点で,死体現象が現れていないから,本件事故直後に即死したことにはならず,Aは,午後11時から午後11時30分ころまで生存していたと考える方が,死体現象からみた医学的な知見に合致するといえる。 これに対し,本件鑑定書には,死後経過時間,死亡推定時刻について,要旨「本屍の皮色に関して,顔面蒼白,背面蒼白ないし諸処紫紅色,死斑は背面に認められ,指圧により褪色した。死体硬直は,全身の諸関節においてやや強く認められた。解剖開始時において直腸内温度は約25.0℃(ときに室温約21.0℃)であった。なお,本屍は,解剖当日朝までの約3時間,冷蔵庫内(約5.0℃)で保存されていた。左右角膜は軽度混濁し,左右瞳孔径約0.4センチメートルを透見することができた。左右眼球は弾力性を欠いていた。諸臓器には,腐敗の進行はほとんど認められなかった。死後経過時間を推定するために用いる死体現象の上記各指標 し,左右瞳孔径約0.4センチメートルを透見することができた。左右眼球は弾力性を欠いていた。諸臓器には,腐敗の進行はほとんど認められなかった。死後経過時間を推定するために用いる死体現象の上記各指標(直腸内温度,死体硬直,死斑,角膜混濁,及び内臓諸臓器の腐敗の程度等),本屍の置かれていた場所,当時の気温等から総合的に推定すると,本屍の死後経過時間は,解剖開始時において,およそ16時間程度であろうと推測される。」とされているが,解剖開始時が,死後16時間程度であることの具体的な理由が示されていないどころか,本件鑑定書の記載によれば,死後13時間程度という説明もできる。 また,本件鑑定書には,「本屍の解剖結果,検査結果,及び本屍が発見された状況等から考えると,本屍は主として,頭部,顔面,腹胸部,及び 上肢打撃に基づく骨折,多臓器損傷および出血等により,外傷性ショックに陥って死亡したものと考えられる。」と記載されているが,Aの多臓器損傷は,胸骨圧迫によって骨折した多数の肋骨によって生じたものであるから,本件事故による損傷ではない。また,本件鑑定書に記載された出血量も,合計350ミリリットル(胸部250ミリリットル,腹部100ミリリットル)であるところ,これは,Aの血液量(体重の約7パーセントである約3.5リットル)の10パーセント程度で,重度の出血と評価される30パーセントに至らないこと(なお,胸部の出血は,胸骨圧迫によって骨折した多数の肋骨によるものである可能性が高い。)も併せ考えると,本件事故時に生じた外傷が厳しいなどとは到底いえない。 さらに,本件鑑定書によると,Aには,急死の三主徴,すなわち,心臓内には暗赤色流動性血液を容れており,諸臓器はうっ血状を呈し,眼瞼,眼球,諸臓器表面に溢血点が多数認められる 底いえない。 さらに,本件鑑定書によると,Aには,急死の三主徴,すなわち,心臓内には暗赤色流動性血液を容れており,諸臓器はうっ血状を呈し,眼瞼,眼球,諸臓器表面に溢血点が多数認められるとされているが,仮に,Aが急死したとしても,死亡時刻が事故直後であることを裏付けているとはいえない。 したがって,Aは,午後11時から午後11時30分ころまで生存していたのであり,即死ではない。さらに,本件鑑定書に現れたAの傷害内容をみても,脳挫滅や心臓破裂のように,臓器機能が高度に傷害され,直ちに治療が開始されたとしても救命の可能性が全くなかった傷害とはいえないから,救命可能性があったといえる。 オ損害額Aの慰謝料額 600万0000円Aは,警察官らの救護等義務違反により,人格権を侵害されているところ,Aの精神的損害を慰謝するための慰謝料額は,次の各事情を考慮すると600万円を下らない。 a 警察官らの救護等義務違反は,本件事故から約2時間半もの間,A を,E車の中に放置するというもので,重大な過失である。 bAには救命可能性があった。 c 警察は,本件事故後,C宅を訪問して謝罪と経緯説明を行ったが,これに納得できない原告らが求めた書面による経緯説明を放置し,真摯な対応をしようしない。 原告ら固有の慰謝料額各150万0000円原告らは,警察官らの救護等義務違反により,Aの子として,多大な精神的な苦痛を受けたから,被告県に対し,固有の慰謝料請求権を有する。 原告らの精神的損害を慰謝するための慰謝料額は,上記各事情を考慮すると各150万円を下らない。 弁護士費用 ,被告県に対し,固有の慰謝料請求権を有する。 原告らの精神的損害を慰謝するための慰謝料額は,上記各事情を考慮すると各150万円を下らない。 弁護士費用各30万0000円原告らは,Aの慰謝料額について,各4分の1ずつ相続しているから,して(600万円×1/4+150万円),損害額は300万円となるところ,弁護士費用は,その1割である30万円が相当である。 カよって,原告らは,被告県に対し,国賠法1条1項に基づき,各330万円及びこれらに対する不法行為の日である平成25年10月16日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告県の主張)ア本件事故後のAの状況について,否認する。 Aは,発見時,頭部を助手席側,脚部を運転席側に膝を折り曲げた姿勢で横たわり,背面の一部が後部座席面より上に見え,頭部及び足部分は後部座席面より低い位置にあった。また,Aの着衣は,濃緑長袖ジャケットとこげ茶色スカートで,暗い色のものであった。 原告らは,E車の助手席の背部と後部座席の間隔が22センチメートル であると指摘するが,Aを救出する際に前部座席を一番前まで移動させ,救出後に前部座席を最も後ろに下げた上で22センチメートルと計測されているので,本件事故時に22センチメートルであったことを示すものではない。 イ警察官らの救護等義務違反について,否認し争う。 警察法2条は,一般的な警察の責務を規定したものとどまり,交通事故捜査処理要領にしても,具体的事案において,特定の負傷者の存在を未だ警察が認識していない場合に,当該負傷者の存否をどのタイミングでどの程度探索する義務があるか の責務を規定したものとどまり,交通事故捜査処理要領にしても,具体的事案において,特定の負傷者の存在を未だ警察が認識していない場合に,当該負傷者の存否をどのタイミングでどの程度探索する義務があるかを一般的に定めたものではない。 本件では,警察官らが本件事故現場に臨場した時点で,すでに救急隊員6名が十分な装備とマンパワーをもって迅速に救護活動にあたっており,また,警察官らにおいて,2名の負傷者が救急搬送されたのを確認している。消防は,救護活動の専門組織で,警察は,交通上の安全確保と事故の捜査を専門とする組織であるところ,このような状況においては,警察官らは,交差点内における二次事故の発生を防止し,救急隊員の救護作業が安全,円滑に行われるための交通規制や事故車両の移動等や事故の捜査に専念すべきであり,これらの任務を遂行しないまま,消防の救護活動に介入することなどおよそ想定することはできない。 また,救急隊員らが救急活動を終えて撤収した後,他に負傷者が残されている可能性があるといった情報が全くなかったのであるから,警察官らにおいて,救急隊員らが発見できてない負傷者が残っている可能性について思いが至らないのは当然であり,救急隊員が撤収した後についても,警察官らにおいて負傷者を探索すべき義務はない。 さらに,上記アの状況のとおり,Aの存在に気付くこと自体が極めて困難な状況にある。 これらの事情に照らすと,Aの発見が遅れたことについて,警察官らに, 救護等義務違反があったということはできない。 ウ Aの人格権侵害について,否認し争う。 Aは,次の理由から,本件事故による受傷後,ほぼ即死かあるいは短時間(遅くとも10分かからない程度)のうちに死亡したといえ,警察官らが本件事故現場に到着した時点で について,否認し争う。 Aは,次の理由から,本件事故による受傷後,ほぼ即死かあるいは短時間(遅くとも10分かからない程度)のうちに死亡したといえ,警察官らが本件事故現場に到着した時点ですでに死亡していた蓋然性が認められるので,Aの発見が遅れたことによる人格権侵害は認められない。 Aには,急死の三主徴の所見が認められるから,受傷後即死あるいは短時間(遅くとも10分かからない程度)のうちに死亡したといえる。 まず,血液の暗色流動性が認められるということは,生体反応である血液の凝固起点が利かないうちに死亡したことを示すものとして,急死の所見とされる。また,人が急に死亡した場合に血液の流れが不均一となり,一部に詰まったりすることから諸臓器のうっ血が急死の所見とされる。そして,溢血点とは,点状出血などの小さな出血をいうが,激しい死線期の状況では,血液循環が不均一になり,血液の詰まったところから,小さな出血が認められるから,諸臓器の溢血点が急死の所見とされる。Aに急死の三主徴が認められるということは,受傷後即死あるいは短時間のうちに死亡したことを示す。 加えて,本件鑑定書によると,受傷については,「過伸展によって第2胸椎離断骨折およびその付近の挫裂創を伴う軟部組織出血を生じ,それとほぼ同時期に,頭部および顔面の激しい振動によって広範囲のクモ膜化出血,及び右手首の捻転によって右尺骨脱臼および右橈骨骨折が生じ」「その他の多臓器損傷および多発骨折等は,いずれも上記損傷とほぼ同時期に生じたものと推測され」,死因については,「主として,頭部,顔面,胸腹部,及び上肢打撲に基づく多臓器損傷および出血等により外傷性ショック」とされているところ,この鑑定結果は,Aの傷害の内容及び程度が,アメリカ自動車医学振興協会が刊行する人体傷害度 頭部,顔面,胸腹部,及び上肢打撲に基づく多臓器損傷および出血等により外傷性ショック」とされているところ,この鑑定結果は,Aの傷害の内容及び程度が,アメリカ自動車医学振興協会が刊行する人体傷害度 (AIS)の重症度スコア(ISS)の短時間死亡群に相当することとも矛盾しない。 以上のとおり,Aには,急死の所見が確認され,受傷後即死あるいは短時間のうちに死亡したと推定されるところ,このことは,受傷の重症度などとも矛盾しないし,さらに,腸内温度や他の死体現象とも矛盾しないから,Aは,受傷後即死あるいは短時間のうちに死亡したといえる。 なお,原告らは,死体現象から推定した死亡時刻を主張するが,死体現象から推定される死亡時刻は,死因や死体の保管状況,環境等による影響を受け,比較的早い段階で解剖した場合であっても,相当幅のある数字しか出せない。死亡時刻は,事故の状況や解剖所見等を中心に据えて考察すべきである。 エ救命可能性については,否認し争う。上記ウのとおりである。 オ損害額については,否認し争う。 被告県は,主に警察署の副署長であるIが窓口となり,本件事故の翌日である平成25年10月17日から平成26年3月14日まで27回対応しており,遺族の要望に応えて,文書による回答を3回実施している。確かに,文書の内容は,被告県の法的責任を認めるものではないが,責任逃れをしたなどの事実はない。 また,原告らが,固有の慰謝料を請求できるのは,Aの生命侵害ないしこれに比肩すべき精神的苦痛を受けた場合に限られるというべきである(最高裁昭和31年(オ)第215号昭和33年8月5日第三小法廷判決・民集12巻12号1901頁)。救命可能性については上記ウ,エのとおりであるところ,その余の点について に限られるというべきである(最高裁昭和31年(オ)第215号昭和33年8月5日第三小法廷判決・民集12巻12号1901頁)。救命可能性については上記ウ,エのとおりであるところ,その余の点についての原告らの主張を前提としても,原告らがAの生命侵害に比肩すべき精神的苦痛を受けたとはいえないから,原告らが固有の慰謝料を請求することはできない。 (被告組合が,国賠法1条1項に基づく損害賠償責任を負うか否か) について(原告らの主張)ア救急隊員らの救護等義務違反救急隊員らは,事故現場に到着した際には,負傷者の救助とともに,事故車両の内部にライトを当てるなどして,負傷者が残っていないかを探すべきであるのに,これを怠り,救急隊員らは,E車の後部座席をライトで照らすなどして確認することなく,E車の後部座席に倒れていたAを発見することができなかった過失が認められる。 救急隊員らが,E車の車内をライトで照らして確認していないことは,本件事故に関する新聞記事に,「救急隊員らは,街灯や救急車の作業灯の明かりに頼り,懐中電灯やヘッドライトを使っていなかった」と記載されていることからも裏付けられる。 イ Aの人格権侵害上記アの救急隊員らによる過失により,Aは,本件事故から約2時間半もの間,E車に放置され,その人格権が侵害されたといえる。 Aのとおり,救命可能性があったが,仮に,即死していたとしても,速やかに救命措置を受けるべき立場にあったから,Aの人格権が侵害されたという結論を左右するものではない。 ウ損害額 Aの慰謝料額 600万0000円Aは,救急隊員らの救護等義務違反により,人格権を侵害されているところ,Aの精神的損害を慰謝するための慰謝料額は,次 ウ損害額 Aの慰謝料額 600万0000円Aは,救急隊員らの救護等義務違反により,人格権を侵害されているところ,Aの精神的損害を慰謝するための慰謝料額は,次の各事情を考慮すると600万円を下らないというべきである。 a 救急隊員らの救護等義務違反は,本件事故から約2時間半もの間,Aを,E車の中に放置するというもので,重大な過失である。 bAには救命可能性があった。 c 消防署は,本件事故後,C宅を訪問して謝罪と経緯説明を行ったが,これに納得できない原告らが求めた書面による経緯説明を放置し,真摯な対応をしようしない。 原告ら固有の慰謝料額各150万0000円原告らは,救急隊員らの救護等義務違反により,Aの子として,多大な精神的な苦痛を受けたから,被告組合に対し,固有の慰謝料請求権を有する。 原告らの精神的損害を慰謝するための慰謝料額は,上記各事情を考慮すると各150万円を下らないというべきである。 弁護士費用各30万0000円原告らは,Aの慰謝料額について,各4分の1ずつ相続しているから,600万円×1/4+150万円),損害額は300万円となるところ,弁護士費用は,その1割である30万円が相当である。 エよって,原告らは,被告組合に対し,国賠法1条1項に基づき,各330万円及びこれに対する不法行為の日である平成25年10月16日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告組合の主張)ア救急隊員らの救護等義務違反について,否認し争う。 救急隊員らは,救急搬送された負傷者以外に負傷者がいないかを 分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告組合の主張)ア救急隊員らの救護等義務違反について,否認し争う。 救急隊員らは,救急搬送された負傷者以外に負傷者がいないかを確認している。具体的には,Eの救急搬送を行ったJ救急隊長は,E車の車内を目視により確認しているし,また,K隊員は,ヘルメットに取り付けてあるヘッドライトを照らしてE車の車内を確認している。 なお,原告らが指摘する新聞記事は,新聞記者から取材を受けた消防署の担当者が正確に事実関係を把握していないと回答している以上,新聞記者の誤解等に基づいて報道されたものと考えられる。 したがって,救急隊員らは,負傷者の確認を怠ったとはいえない。 イ Aの人格権侵害については,否認し争う。 なお,原告らは,Aに救命可能性があったとも主張するが,Aに救命可能性がないことは,本件鑑定書の記載により,明らかである。 ウ損害額については,否認し争う。 被告組合は,原告らに対し,「b町交通事案における救急隊の現場活動状況について(報告)」と題して,平成25年11月13日付の書面にて,X1及びX2にそれぞれ書留郵便の方法により送付するなどし,真摯な対応をしている。 また,原告らが,固有の慰謝料を請求できるのは,Aの生命侵害ないしこれに比肩すべき精神的苦痛を受けた場合に限られるというべきである(最高裁昭和31年(オ)第215号昭和33年8月5日第三小法廷判決・民集12巻12号1901頁)。救命可能性については上記イのとおりであるところ,その余の点についての原告らの主張を前提としても,原告らがAの生命侵害に比肩すべき精神的苦痛を受けたとはいえないから,原告らが固有の慰謝料を請求することはできない。 第3 イのとおりであるところ,その余の点についての原告らの主張を前提としても,原告らがAの生命侵害に比肩すべき精神的苦痛を受けたとはいえないから,原告らが固有の慰謝料を請求することはできない。 第3 当裁判所の判断 1 判断の前提となる事実,証拠(甲2,3,11,13~15,19,20,22,33,乙1~16,18~22,丙1~3,5~9,証人L,証人J,証人H)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。ただし,上記証拠のうち,次の認定に反する部分は採用しない。 Dは,D車を運転して,長距離運転の疲労等のため仮睡状態に陥り,前方を注視することが困難になっていたにもかからず,速度を落とすことなく進行し,信号待ちのため,本件交差点の南詰停止線手前に先頭から3台目で停車していたE車の後部に追突した(別紙「第1回目衝突」)。E車は,この衝撃で,前方にはじき出され,先頭から2台目に停車していた車両(別紙 「チェイサー」とされている車両。以下「チェイサー」という。)に追突した(別紙「第2回目衝突」)のち,さらに,対向車線で右折待ちをしていた車両(別紙「大型トラック」とされている車両。以下「大型トラック」という。)に衝突して(別紙「第4回目衝突」),本件交差点中央部分付近に停止した。なお,E車に追突されたチェイサーは,その衝撃で,先頭で停車していた車両(別紙「AZワゴン」とされている車両。以下「AZワゴン」という。)に追突し(別紙「第3回目衝突」),本件交差点内にはじき出され,チェイサーに衝突されたAZワゴンも,その衝撃で,本件交差点内にはじき出された。 Aは,本件事故の衝撃で,E車の前部座席シートと後部座席シートの間に,頭部を助手席側に向け,脚部を運転席に向けるとともに膝を折り曲げ,背中を丸めた姿勢で落ち込んだ。 差点内にはじき出された。 Aは,本件事故の衝撃で,E車の前部座席シートと後部座席シートの間に,頭部を助手席側に向け,脚部を運転席に向けるとともに膝を折り曲げ,背中を丸めた姿勢で落ち込んだ。 E車には,本件事故により,後部荷台部分がつぶれ,後部の左右ドアが曲がり,後部窓及び側面ドア窓のガラスが割れて脱落するなどの損傷が生じた。 Dは,午後8時55分に,110番通報をした。Dは,その中で,本件事故を起こしたことの他,けが人が2人で,2人とも女性であると説明をした。 また,非番でたまたま本件事故現場付近を通行していた消防署の消防隊員が,午後8時57分に,119番通報をした。同消防隊員による通報内容は,「車両5台の事故で負傷者2名。1名は10代女性で過呼吸,もう1名は50代女性で外傷はないが車の損傷がひどい。」というものであった。午後9時1分に,島根県警察本部の通信指令課から消防署に通報した際,消防署から「同じ事案だと思われますが,こちらも入電しています。負傷者2名で10代女性,50代女性。車両5台の事故。」との応答がされた。 消防署は,これらの通報を受けて,けが人が2名であることを前提に,救急車を2台(救急1号隊及び救急2号隊)出動させた。救急車2台は,午後9時7分ころに,本件事故現場に到着したが,その時点では,警察署のパト カーは1台も到着していなかった。 J隊員,K隊員,M隊員が乗車していた救急1号隊は,本件事故現場到着時に,Eが乗車しているE車の方に向かった。他方で,救急2号隊は,もう1名の負傷者(10代の女性)が乗車しているAZワゴンの方に向かった。 J隊員は,EがE車から出ようとしていたので,そのまま車内に座るよう指示し,Eに対してネックカラーの装着その他の処置をしながら,事情を聴取した。Eは 乗車しているAZワゴンの方に向かった。 J隊員は,EがE車から出ようとしていたので,そのまま車内に座るよう指示し,Eに対してネックカラーの装着その他の処置をしながら,事情を聴取した。Eは,会話が可能な状態で,J隊員からの質問に対し,事故のことは覚えていないとか,特に連絡するような家族はおらず一人暮らしであるなどと答えた。J隊員は,Eに対して,E車の他に同乗者の有無などは確認しなかった。また,J隊員は,E車の車内を目視したが,負傷者は,Eと10代の女性の2名だけであるという思い込みがあり,車内を注視することまでしなかった。 K隊員は,Eの貴重品の有無を確認するために,ヘルメットについているヘッドライトを使ってE車の車内を確認し,助手席にあった鞄や紙袋を救急1号隊に積み込むなどしたが,Aを発見するには至らなかった。 島根県警察本部の通信指令課から臨場指令を受けたパトカー4台も順次,本件事故現場に到着した。 アまずは,午後9時7分ころ,N警察官とO警察官が乗車するパトカー(a1。以下「a1」という。)が到着した。N警察官らが,a1から降りて本件交差点に進入した時点で,すでに,救急隊員らが,ストレッチャーなどを準備して,負傷者の搬送準備にとりかかっているところであった。 その中で,O警察官が,救急隊員らに負傷者の搬送先病院を確認するなどのやり取りがされている。 N警察官らは,二次的な事故を防ぐために,本件交差点の南側及び西側の車両通行止め等の交通整理を実施した。 イ次いで,午後9時8分ころ,P警察官,Q警察官及びR警察官が乗車す るパトカー(a3)が到着した。 P警察官らは,四方向からの車両の進入を防止するために,本件交差点の北側及び東側の車両通行止め等の交通整理を実施した。 ウそして,午後9時9分ころ,L るパトカー(a3)が到着した。 P警察官らは,四方向からの車両の進入を防止するために,本件交差点の北側及び東側の車両通行止め等の交通整理を実施した。 ウそして,午後9時9分ころ,L警察官(現場責任者)とS警察官が乗車する交通捜査車であるパトカー(a21)が到着した。 L警察官は,本件交差点の車両通行止めが全方向で完全にできていることを確認してから,午後9時10分ころに,事故当事者から事情を聴取するなどして実況見分を開始した。また,S警察官は,L警察官から指示を受けて,本件事故現場の状況を保全するために,写真撮影を行った。 エ最後に,午後9時16分ころ,T警察官とU警察官が乗車するパトカー(a2。以下「a2」という。)が到着した。a2は,当初は交番待機であったものの,本件事故が,車両5台が絡む事故であることが判明し,臨場指示を受けたものである。T警察官らが,a2から降車し,本件事故現場に向かおうとしたときには,救急車2台が順次,本件事故現場から各病院に向けて出発するところであった。 オまた,この間,P警察官,N警察官及びO警察官は,本件交差点の車両通行止めが完全にでき,路上のオイル漏れやガラス片の確認を行った。なお,路上のオイル漏れについては,ガソリンが漏れているのではなく,ラジエーターの液体が漏れているものであることが確認されている。 午後9時16分ころ,AZワゴンに乗車していた10代女性を乗せた救急隊2号は,F病院に向けて,午後9時17分ころ,Eを乗せた救急隊1号は,B病院に向けて,それぞれ出発した。 救急車2台が出発してから,警察官らにおいて,Dの飲酒検知や実況見分を実施したり,自走可能な事故車両は誘導して脇道に移動させ,自走不能な事故車両を押して歩道上に移動させるなどした後に,渋滞車両の 救急車2台が出発してから,警察官らにおいて,Dの飲酒検知や実況見分を実施したり,自走可能な事故車両は誘導して脇道に移動させ,自走不能な事故車両を押して歩道上に移動させるなどした後に,渋滞車両の通行のための交通規制緩和を行ったりした。具体的な状況は以下のとおりである。 ア L警察官は,Dの様子から,飲酒検知を実施する必要性があると判断し,飲酒検知を実施したところ,検知結果が0.05未満であった。 イ L警察官は,Dの飲酒検知の結果やすでに救急車が出発していることを踏まえて,渋滞車両の通行を優先するため,警察官らに本件交差点の車両をそれぞれ道路脇に寄せるように指示した。 自走可能なチェイサー,AZワゴン,大型トラックについては,警察官らが誘導して,本件交差点内から道路脇に移動させた。 E車は,自走不可能と判断され,T警察官,S警察官,R警察官,U警察官の4人が,E車を押して近くの歩道まで移動させた。また,Q警察官は,E車のダッシュボード内から同車の車検証を取り出して,コピーを取った。 ウ L警察官は,警察官らが,D車を除く事故車両を,本件交差点内から移動し終えたことを確認し,規制体制を整え,現場保存のために,D車のみを路上に残して,本件交差点の車両通行止め規制を解除し,交通の流れを確保した。 エ L警察官は,DとE以外の事故当事者から詳細な衝突状況を聴取し,各事故車両の衝突痕跡を比較した上で,衝突の順序を特定し,聴取を終えた事故当事者を順次現場から離脱させた。 オ午後11時ころ,T警察官とU警察官は,D車を誘導して,通行の妨げにならない場所に移動させてから,L警察官の指示で,本件事故現場を離れ,交番へ帰所した。 ア午後11時25分ころ,Cらがタクシーに乗って本件事故現場に到着し,Dから事情 導して,通行の妨げにならない場所に移動させてから,L警察官の指示で,本件事故現場を離れ,交番へ帰所した。 ア午後11時25分ころ,Cらがタクシーに乗って本件事故現場に到着し,Dから事情を聴取していたL警察官らに対して,「私の妻であるAを探している。」,「私の妻は,Eさんという友人の車に乗っていたはずで,帰ってこないため探したところ,友人のEさんが交通事故を起こしたと聞き,Eさんの運ばれたB病院に行った。」,「Eさんは,『Aは乗っていた, Aはどこへ行きましたか』と言われたので,もしかしたら事故現場に残って話をしていると思い,ここに来た」などと申し出た。 イ Cからの申出を受けて,Q警察官らが,E車の車内を確認したところ,後部座席と助手席の間にAの手が見えたことなどから,午後11時29分ころに,Aが発見された。Aは,発見時,頭部を助手席側,脚部を運転席側に膝を折り曲げた姿勢で横たわり,背面の一部が後部座席面よりも上に見え,頭部及び足部分は後部座席面より低い位置にあるという状態で,呼吸と脈拍がなかった。 ウ Q警察官は,警察署に救急要請をし,午後11時33分ころに,警察署から消防署に救急要請が行われた。 エ L警察官らは,AをE車の車内から救出しようとし,開くことのできた助手席ないし運転席ドアを開けて,各座席の背もたれを前に倒し,各座席を前にスライドさせてスペースを作って,Aを持ち上げようとしたが,下半身が座席の間に食い込んでいたために,上半身を後部座席に乗せることができるにとどまった。 オ L警察官は,救急車が到着するまでの間,E車の車内に手を差し入れ,Aに対し胸部圧迫による心肺蘇生を実施した。 警察署からの救急要請を受けて,救急車は,午後11時39分ころ,本件事故現場に到着し,午 は,救急車が到着するまでの間,E車の車内に手を差し入れ,Aに対し胸部圧迫による心肺蘇生を実施した。 警察署からの救急要請を受けて,救急車は,午後11時39分ころ,本件事故現場に到着し,午後11時50分ころ,Aを乗せて,B病院に向けて出発した。 J隊員も本件事故現場に臨場した。J隊員は,Aの心肺停止状態を確認した上で,胸骨圧迫を継続しながら,救急車内に移動させて,除細動心電図モニターを装着し,心静止状態であることを確認した。そこで,J隊員らは,医師に指示を要請し,医師の指示により,救命措置(LT~食道閉鎖式エアウェイ挿入及び静脈路確保,薬剤〈アドレナリン〉投与)を実施したが,静脈路確保は,血管内に留置針を留置できず,薬剤投与には至らなかった。 Aを乗せた救急車は,午後11時53分ころ,B病院に搬送されたが,Aは,平成25年10月17日午前0時32分,同病院のV医師により死亡が確認された。 Aは,本件事故で,臓器損傷及び多発骨折の傷害を負い,外傷性ショックにより死亡した。 また,Aは,警察官らや救急隊員らが臨場した時点で,死亡していたとまではいえないが,救命可能性がない状態にあった。 2 事実認定の補足説明原告らは,Aの身体はE車の後部座席上にあり,前部座席シートと後部座席シートの間に落ち込んでなどいない旨主張し,その根拠として,上記のシート間距離が22センチメートルに過ぎず,事故当時のAの体格から落ち込むことはあり得ないと主張する。しかしながら,上記距離のみから,直ちに事故の衝撃によってもおよそ座席下部に落ち込まないといえるかは疑問である上,上記距離の測定はA救出後にE車の前部座席を最も後ろに下げた状態での測定であるとの被告県の主張をあながち排斥することはできず,また,Aが発見された際 座席下部に落ち込まないといえるかは疑問である上,上記距離の測定はA救出後にE車の前部座席を最も後ろに下げた状態での測定であるとの被告県の主張をあながち排斥することはできず,また,Aが発見された際の状況を被写体とする写真(甲19の2,乙16の写真番号36)によっても,Aが座席下部に落ち込んでいる様子がうかがわれる。 よって,原告らの主張は採用できない。 また,原告らは,本件事故現場には警察車両が救急車よりも先着していた旨主張し,その根拠として,原告らが事故翌日である平成25年10月17日に警察署から渡された書面(本件事故現場における警察官の活動状況に係る時系列表,甲41)に,警察車両3台の現場到着時刻が午後9時3分と記載されており,救急車やパトカーが最初に臨場した時刻として,被告県が提出する証拠(乙1)に記載されている午後9時7分よりも早いこと及び島根県警察の隠蔽体質等を挙げる。しかしながら,そもそも,救急隊が本件事故現場に到着した正確な時刻はこれを裏付けるに足りる資料が見当たらない上, 同書面(甲41)には,救急車や救急隊員らが臨場した時刻やEなどが救急搬送された時刻などが記載されておらず,もっぱら警察官らの行動を中心にまとめたものと認められることからすると,同書面は,本件事故翌日,警察署が原告らAの遺族に警察の活動を説明するために[甲9(4~5頁)],事実関係の整理が不十分な状態で作成されたものとうかがわれる。加えて,同書面によっても,午後9時10分ころには救急隊が負傷者2名の救出及び具体的搬送先に係る報告を警察官に行っているとされることに照らせば,救急隊がそれまでに現場に到着して相応の救急救命活動を行っていたと推認でき,これらの事情に照らせば,パトカーが救急車よりも明らかに本件事故現場に先着していたと認めることはで とされることに照らせば,救急隊がそれまでに現場に到着して相応の救急救命活動を行っていたと推認でき,これらの事情に照らせば,パトカーが救急車よりも明らかに本件事故現場に先着していたと認めることはできず,上記のとおり1のとおり認定することができる。原告らが島根県警察の隠蔽体質を裏付けるとする証拠(甲32)は,上記認定・説示を左右しない。 被告県が,国賠法1条1項に基づく損害賠償責任を負うか否か)について 交通事故捜査処理要領には,負傷者の救護措置を他に優先して行うことや,現場に先着した警察官は,死傷者があるときは,直ちに救護措置を行うことなどが定められている(判断の前提となる事実)が,他方で,同要領には,警察官は,交通事故の取扱いに際しては,負傷者の救護のみならず,事故の再発防止など当面必要な措置をとるとともに交通の回復をはかったり,物的証拠はその所在地点及び状況を,人的証拠はつとめて多数をすみやかに確保したりすることに留意しなければならないとも定められていること(判断の前提となる事実)などからすれば,事故の規模や現場の具体的状況にかかわらず,常に負傷者の救護を優先させなければならないと解することは相当ではなく,警察官は,事故の規模や現場の具体的状況に応じて,負傷者の救護以外の措置を優先させることも許される場合があると解するのが相当である。そのため,警察官が,上記場合に上記措置を行う限りにおいては,負傷 者の救護にあたらなかったことをもって,警察官として職務上尽くすべき注意義務を懈怠したとはいえないというべきである。 本件についてみると,警察官らが到着した時点で,救急車2台で臨場した救急隊員らによる救護活動が開始されており,また,本件事故が,自動車5台が絡む玉突き事故であるものの,臨場した救急隊 る。 本件についてみると,警察官らが到着した時点で,救急車2台で臨場した救急隊員らによる救護活動が開始されており,また,本件事故が,自動車5台が絡む玉突き事故であるものの,臨場した救急隊員らにおいて十分に救護可能な状況(医療機関等に搬送を要する負傷者がAを含めて3人)にあるといえることに照らせば,警察官らにおいて,負傷者の救護活動を最も優先しなければならない状況にあったとはいえない。また,本件事故によって,複数の車両が本件交差点内にはじき出されている状況,二次事故等の発生を防止するために,本件交差点の通行規制や車両の移動などの措置を行う必要性が高い状況にあるといえること,さらに,本件事故態様によれば,事故当事者が少なくないことや衝突機序が複雑であることなどが予想され,人的ないし物的証拠の保全の必要性が高い状況にあるといえることに照らせば,警察官らが,本件事故現場に臨場した時点で,早急に交通整理ないし捜査を行う必要性が高い状況にあったと認めるのが相当である。また,救急車2台が負傷者を救急搬送し,Aが発見されるまでの間も,交通整理ないし捜査が完了していなかったことから,未だその必要性が高い状況にあったといえる。 そうすると,警察官らにおいては,本件事故に関し,本件事故現場に臨場した時点からAが発見されるまでの間に,負傷者の救護以外の措置を優先することも許される状況にあったといえる。さらに,上記のとおり,警察官らは,本件事故現場に臨場してから,交通整理ないし捜査を継続して行っているのであるから,Aの発見が遅れたことについて,警察官として職務上尽くすべき注意義務を懈怠したということはできない。 これに対し,原告らは,①事故現場における警察官においては,死傷者の救護等義務が最優先の義務であるとか,②そもそも本件では警察官 官として職務上尽くすべき注意義務を懈怠したということはできない。 これに対し,原告らは,①事故現場における警察官においては,死傷者の救護等義務が最優先の義務であるとか,②そもそも本件では警察官らが救急 隊員よりも先に本件事故現場に到着していると主張するから検討する。 まず,②については,既に上記2において説示したとおりである。次に①については,原告らは,警察法2条や交通事故捜査処理要領の規定を根拠とするが,警察法2条は,交通事故現場における負傷者の救護を最優先すべきであるという義務を直接定めたものではないし,交通事故捜査処理要領によっても,警察官が,いかなる場合においても,負傷者の救護を最優先させなければならないと解することが困難であることは既に説示したとおりであり,独自の見解というほかない。 以上のとおり,原告らの主張はいずれも採用できない。 以上からすると,警察官らは,Aの発見が遅れたことについて,警察官として職務上尽くすべき注意義務を懈怠したということはできないから,原告らの被告県に対する国賠法1条1項に基づく請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。 被告組合が,国賠法1条1項に基づく損害賠償責任を負うか否か)について救急隊員は,事故等により,医療機関等に搬送すべき負傷者については,医療機関等に緊急に搬送すべき職務上の義務があるといえるところ,当該義務を履行する前提として,事故等の現場に臨場した際には,当該事故等によって負傷した者の存否を確認すべき義務を負っていることは明らかである。そして,負傷者の存否確認の具体的方法は,臨場した現場の状況等に応じて異なり得るが,少なくとも,事故等が発生した状況・経過を,臨場した際の四囲の状況や事故関係者からの聞き取り等によって らかである。そして,負傷者の存否確認の具体的方法は,臨場した現場の状況等に応じて異なり得るが,少なくとも,事故等が発生した状況・経過を,臨場した際の四囲の状況や事故関係者からの聞き取り等によって的確に把握した上で,当該事故状況等から通常想定される範囲の検索等を行うとともに,事故関係者については,当該関係者自体の負傷の有無や程度,救急搬送の必要性を検討するだけでなく,当該関係者の心身の状況に応じた聞き取り等を行うことによって,更なる負傷者の有無を確認すべき義務がある といえる。 イこれを本件についてみると,本件事故の発生が夜間であることや,Aが,暗い色の洋服を着用しており(乙16),さらに,前部座席と後部座席の間に落ちてこんでいたことで,Eの救護を担当したJ隊員とK隊員において,E車の車内を一見しただけではAを発見できる状況にはなかったといえる(この点,原告らは,Aは,警察官らに発見されたとき,頭部を助手席側に,脚部を運転席側にして,後部座席に横たわっている状態であったと主張するが,これを認めることができないことは,既に上記2において説示したとおりであって,原告らの主張は採用できない。)。 しかし,警察官らが,Cからの申出を受けて,E車の捜索をした際に,後部座席と助手席の間からAの手が見えたことからすると(上記1,E車の車内を注意深く観察すれば,Aを発見できた可能性が高かったといえる。救急隊員らにおいて,E車の車内を注意深く観察することを妨げる事情はなかった(本件証拠上,Eについて,意識障害等があるなどして一刻の猶予もないほど緊急に搬送しなければならない状況であったといった事情は見当たらない。)のであるから,J隊員とK隊員がE車の車内を確認したことのみをもって,事故等による負傷者の存否を確認すべき義務を尽くし いほど緊急に搬送しなければならない状況であったといった事情は見当たらない。)のであるから,J隊員とK隊員がE車の車内を確認したことのみをもって,事故等による負傷者の存否を確認すべき義務を尽くしたとは認められない(この点,原告らは,K隊員がヘッドライトを用いて車内を確認していないと主張し,これに沿う新聞記事〈甲39〉を提出するが,信用性が高い証拠とはいえず,その他これを認めるに足りる証拠はないから採用できない。ただし,K隊員による確認をもって,事故等による負傷者の存否を確認すべき義務を尽くしたといえないことは,上記のとおりである。)。 ウさらに,Eは,事故のことは記憶にないとはいうものの,E車にAが乗っていることの記憶は保持されている(上記1)。そうすると,救急隊員らにおいて,Eに,同乗者の有無 などを確認さえしていれば,その回答を端緒にしてE車の車内を捜索し,Aを発見することができたというべきである。J隊員がEから事情を聴取した際に,同乗者の有無を確認していないのだから,事故等による負傷者の存否の確認すべき義務を怠ったといえる。 エしたがって,J隊員とK隊員は,救急隊員として通常尽くすべき注意義務を懈怠したものと認められる。 Aは,速やかに救護されていたとしても,救命可能性はなかったのであるから,上記4Aの生命ないし相当程度の生存可能性が侵害されたということはできない(原告らもこのような主張をしない。そもそも,原告らは,救命の可能性が全くなかった傷害とはいえなかったと主張するのみで,救命の可能性があったことの根拠について十分な主張をしない。)。 他方で,事故等による負傷者は,消防等に発見してもらい,救護を受ける人格的利益を有していると解され,Aも,救急隊員らが速やかに臨場した時点では,死亡してい の根拠について十分な主張をしない。)。 他方で,事故等による負傷者は,消防等に発見してもらい,救護を受ける人格的利益を有していると解され,Aも,救急隊員らが速やかに臨場した時点では,死亡していたとまではいえないのであるから,上記人格的利益を有していたものと認められる。 そして,消防等の救護活動について,これに当たる救急隊員が通常尽くすべき注意義務を懈怠したことをもって上記人格的利益を侵害する違法なものであると評価できるか否かは,事故の規模や現場の状況,負傷者の状況等に照らして,救護活動が著しく不適切であると認められるか否かによって判断するのが相当であるところ,本件では,救急隊員らは,車内を注視することやEから同乗者の有無を確認することという極めて単純な救護活動を怠っており,その救護活動は著しく不適切であるといわざるをえないから,これにより,Aの上記人格的利益が違法に侵害されたといえる。 この点,原告らは,Aは救命可能性があったと主張し,被告らは,Aは本件事故により即死ないし短時間(遅くとも10分かからない程度)のうちに 死亡したと主張するから検討する。 ア証拠(乙18,証人H)によれば,①Aの受傷については,過伸展によって第2胸椎離断骨折及び付近の挫裂創を伴う軟部組織内出血を生じ,それとほぼ同時期に,頭部及び顔面の激しい振動によって広範囲のクモ膜化出血,右手首の捻転によって右尺骨脱臼及び右橈骨骨折が生じ,その他の多臓器損傷及び多発骨折等は,いずれも上記損傷とほぼ同時期に生じたものであること,②心臓内には,暗赤色流動性血液を容れており,諸臓器はうっ血状を呈し,眼瞼,眼球,諸臓器表面に溢血点が多数認められ,いわゆる急死の三主徴の所見が認められること,③Aは,主として,頭部,顔面,腹胸部,及び上肢打撃に基づく骨 性血液を容れており,諸臓器はうっ血状を呈し,眼瞼,眼球,諸臓器表面に溢血点が多数認められ,いわゆる急死の三主徴の所見が認められること,③Aは,主として,頭部,顔面,腹胸部,及び上肢打撃に基づく骨折,多臓器損傷および出血等により,外傷性ショックに陥って死亡したものであること,④Aは受傷後ほぼ即死かあるいは短時間のうちに死亡したものであり,救命可能性がないことが認められる。 イこれに対し,原告らは,①についてAの多臓器損傷は,胸骨圧迫によって生じた多数の肋骨骨折によるものである,③について出血が多量とはいえない,④について死体現象からすると受傷後ほぼ即死かあるいは短時間のうちに死亡したとはいえないなどと主張する。しかし,①についてH医師は,胸骨圧迫により,周囲に出血を伴う肋骨骨折が生じたと推測できることも踏まえて,その上で,肋骨骨折が多臓器損傷とは関係ないと判断しており,また,Aは,肋骨以外の傷害の状況も軽微とはいえないこと,本件事故態様やE車の損傷状況からすると,本件事故による衝撃が相当強いものであったと推測され,本件事故によって多臓器損傷が生じたとしても不合理といえないことにも照らすと,原告らの主張は採用できない。また,③についてH医師は,一般的には,実際に検出された血液よりも,その周囲に多量の出血があることを前提に鑑定した旨供述しており(調書23頁など),その説明に不合理な点は見受けられない上に,原告らの主張が医 学的に正当であることを裏付ける証拠もないから,採用できない。さらに,④についてH医師は,法医学においては,死体現象は時間の幅が広いので,死体現象だけで死亡推定時刻を決めることはできないと供述しており(調書18頁),その説明に不合理な点は見受けられない上に,本件では,Aに,血液の暗赤色流動性,溢血点,臓器 現象は時間の幅が広いので,死体現象だけで死亡推定時刻を決めることはできないと供述しており(調書18頁),その説明に不合理な点は見受けられない上に,本件では,Aに,血液の暗赤色流動性,溢血点,臓器のうっ血という急死の三主徴(乙22)の所見が認められ,さらには,アメリカ自動車医学振興協会が刊行する人体傷害度(AIS)の重症度スコア(ISS。AISが3点以上の損傷部位が2つ以上ある場合を多発外傷といい,各損傷部位3つのスコアをそれぞれ2乗して加えたスコアをいう。)で,短時間死亡群58.9±17.7(Aは,クモ膜下出血〈AIS3点〉,腹腔内に出血を伴う両側性血気胸〈AIS4点〉,肝臓及び脾臓等の複合破裂〈AIS5点〉で,ISSが50点〈3×3+4×4+5×5〉になる。)に相当する(乙21)ことも併せ考えると,H医師の判断に疑問を差し挟む余地はないから,原告らの主張は採用できない。 ウもっとも,④についてH医師によれば,Aは,受傷後ほぼ即死あるいは短時間で死亡しており,具体的に,短時間とは,一概にはいえないが,一般的には10分を超えないということである(調書7~8頁)。救急隊員らが到着したのが事故発生から約17分後であり(判断の前提となる事実,H医師のいう「短時間」の幅の中にあると評価しても不合理ではないことや,Aの死亡が現実に確認されたのが平成25年10月17日午前0時32分であること,現実に救護活動等も行われていることも踏まえれば,H医師のいう一般論のみをもって,救急隊員らが臨場した時点で,Aがすでに死亡していたとまで認めることは,ことの性質に照らして相当でない。この点に関する被告らの主張は採用できない。 したがって,Aは,救急隊員らが臨場した時点で,救命可能性はなかったが,死亡していたとまでは認められないとするのが相当である。 質に照らして相当でない。この点に関する被告らの主張は採用できない。 したがって,Aは,救急隊員らが臨場した時点で,救命可能性はなかったが,死亡していたとまでは認められないとするのが相当である。 損害額ア Aは,救急隊員らの違法な職務執行行為により,上記人格的利益を侵害され,精神的苦痛を受けたといえるところ,本件に現れた一切の事情を考慮して,慰謝料額としては,100万円を認めるのが相当である。 なお,被告組合は,平成25年10月17日及び同月21日に,原告らと面談をしてから(甲7,8),同年11月13日付け「b町交通事案における救急隊の現場活動状況について(報告)」と題する書面で,救急隊の現場活動状況に関して,原告らにそれぞれ回答している経過があり(丙1ないし4),また,上記経過の中で,被告組合が責任逃れに終始しているとはいえないことに照らすと,慰謝料増額事由があるとはいえない。 イ原告らが,固有の慰謝料を請求できるのは,Aの生命侵害ないしこれに比肩すべき精神的苦痛を受けた場合に限られるというべきである(最高裁昭和31年(オ)第215号昭和33年8月5日第三小法廷判決・民集12巻12号1901頁)が,本件においては,既に説示したとおり,救急隊員の違法な職務執行行為とAの死亡との間に因果関係が認められない以上,原告らがAの生命侵害に比肩すべき精神的苦痛を受けたとはいえないから,原告らが固有の慰謝料を請求することはできない。 ウ Aの相続人は,夫であるCと子である原告らであるから,原告らは,上記アのAの慰謝料請求権を法定相続分(各4分の1)に従い,原告らは,Aの慰謝料請求権を各25万円(100万円×1/4)ずつ相続した。 エ弁護士費用は,各2万5000円と認めるのが相当であ 上記アのAの慰謝料請求権を法定相続分(各4分の1)に従い,原告らは,Aの慰謝料請求権を各25万円(100万円×1/4)ずつ相続した。 エ弁護士費用は,各2万5000円と認めるのが相当である。 よって,原告らは,被告組合に対し,国賠法1条1項に基づき,各27万5000円及びこれらに対する平成25年10月16日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 5 結論以上から,原告らの被告組合に対する請求は,主文の限度で理由があるから これらを認容し,その余は理由がないからいずれも棄却し,原告らの被告県に対する請求は理由がないからいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第1民事部 裁判長裁判官黒田豊 裁判官東根正憲 裁判官熊野祐介
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