平成20年4月10日判決言渡平成18年(ワ)第238号債務不存在確認等請求本訴事件平成19年(ワ)第264号損害賠償請求反訴事件主文 原告が,被告に対し,別紙事故目録記載の事故について,損害賠償債務を負担しないことを確認する。 被告は,岐阜県羽島市a町b丁目c番地所在の羽島市民病院第d病棟e号室から退去せよ。 被告は,原告に対し,175万4540円及びこれに対する平成18年4月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告の反訴請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,本訴反訴を通じて被告の負担とする。 この判決は,第2,3項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求 本訴主文1項ないし3項と同旨。 反訴原告は,被告に対し,4908万7347円及びこれに対する平成14年11月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要,(「」。),,本訴は羽島市民病院以下原告病院というを開設運営する原告が原告病院第d病棟e号室に5年間以上にわたり入院したまま退去しない被告に対し,①原告病院の医師が,被告に対して行った急性心筋梗塞の治療に係る医療事故別紙事故目録記載の事故以下本件事故というに基づく原告の(。 「」。)被告に対する損害賠償債務が存在しないことの確認,②原告と被告との間の入 院契約が終了したことに基づく原告病院からの退去,③未払診療費及び食事負担金の合計175万4540円及びこれに対する平成18年4月22日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 反訴は,被告が,原告に対し,上記治療の際,原告病院の医師の過失により損害を被ったとし 22日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 反訴は,被告が,原告に対し,上記治療の際,原告病院の医師の過失により損害を被ったとして,主位的に,不法行為の使用者責任に基づく損害賠償として,予備的に,診療契約の債務不履行に基づく損害賠償として,被告の被った損害額4908万7347円及びこれに対する平成14年11月17日(本件事故の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 争いのない事実など(争いのない事実のほかは,各項に掲載の証拠により認められる)。 (1)当事者ア原告は,岐阜県羽島市a町b丁目c番地に,原告病院を開設,運営している。 イ被告(昭和15年3月27日生)は,平成14年11月16日,原告病院において,心電図検査の結果,急性心筋梗塞と診断され,緊急に,右上腕動脈から心臓カテーテル検査以下本件検査という及び経皮的冠(「」。)動脈再建術以下本件PTCAというを受け原告病院に入院した(「」。),患者であり,その後,現在に至るまでe号室で起居している。 (2)診療経過ア被告は,平成14年11月13日頃より胸痛があったことから,同月15日にAクリニックを受診し,翌16日の午後4時ころから疼痛が続いたため,同クリニックを再受診し,心電図検査の結果,急性心筋梗塞の疑いがあると診断され,原告病院を紹介された(甲A1の診療情報提供書)。 イ被告の疼痛は,被告が原告病院を受診した上記16日午後5時35分こ ろには消失していたが,原告病院の医師は,心電図検査の結果から,被告を急性心筋梗塞と診断し,同日午後6時25分ころから右肘部の右上腕動脈を穿刺した上で,本件検査及び本件PTC 日午後5時35分こ ろには消失していたが,原告病院の医師は,心電図検査の結果から,被告を急性心筋梗塞と診断し,同日午後6時25分ころから右肘部の右上腕動脈を穿刺した上で,本件検査及び本件PTCAを実施した。 ウ原告病院の医師は,本件検査及び本件PTCA実施後,穿刺部位からの出血を防ぐため圧迫止血器以下本件止血器というによる圧迫止,(「」。)血を行ったが(以下「本件圧迫止血」という,同圧迫止血開始後,被告。)が動脈穿刺部の圧迫部に疼痛や痺れを訴えたため,原告病院の看護師が本件止血器の空気を同日午後7時30分ころに15ミリリットル,午後8時30分ころに5ミリリットル除去し,鎮痛剤の内服や筋肉注射を行い,翌17日午前8時に被告から本件止血器を除去した(甲A2の監視表)。 ,,エ本件検査及び本件PTCA後被告の右上肢に正中神経不全麻痺が生じその後反射性交感神経性萎縮症以下RSDというによる拘縮が,(「」。)生じたため,原告病院は,被告に対し,治療として,鎮痛剤の投与や,リハビリによる機能回復訓練などを行っている。 オ被告は,原告に対し,本件事故について,損害賠償請求権を有していると主張している。 争点 (1)争点の概略①被告の原告に対する損害賠償請求権についてア過失の有無(ア)本件圧迫止血時に止血器の十分な減圧処置を行わなかった過失(過失①)(イ)圧迫止血開始後3時間程度で止血器を除去しなかった過失(過失②)イ因果関係(ア)過失と正中神経不全麻痺との因果関係(因果関係①) (イ)過失とRSDとの因果関係(因果関係②)ウ本件事故により被告に生じた損害②退去請求について被告の退去義務の有無③治療費及び食事負担金の支払請求についてア原告の被告に対す ) (イ)過失とRSDとの因果関係(因果関係②)ウ本件事故により被告に生じた損害②退去請求について被告の退去義務の有無③治療費及び食事負担金の支払請求についてア原告の被告に対する治療費及び食事負担金の支払請求権の有無イ短期消滅時効の成否(民法170条1号,174条4号)(2)過失の有無(被告の主張)ア本件圧迫止血時に止血器の十分な減圧処置を行わなかった過失(過失①)被告は,本件圧迫止血開始後約10分経過した後から疼痛や痺れを訴え続けていたのであり,このような状態で圧迫を継続することにより神経の損傷するおそれがあることを予見し得たのであるから,原告病院の医師又,,は医師から指示を受けた原告病院の看護師は被告の本件圧迫止血処置中1時間毎に,被告の止血の状態を確認し,血腫が生じない範囲で本件止血器の減圧を図る処置をすべき注意義務があったにもかかわらず,これを怠った過失がある。 イ圧迫止血開始後3時間程度で止血器を除去しなかった過失(過失②),,本件圧迫止血開始後3時間程度で止血が完了していたはずであるから原告病院の医師には,その時点で本件止血器を取り外すべき注意義務があったにもかかわらず,これを怠り,翌日午前8時まで本件止血器を除去しなかった過失がある。 (原告の主張)被告主張の過失をいずれも争う。本件においては,次のとおり十分な圧迫止血を行う必要があったものであり,圧迫止血の方法及び止血時間はいずれ も適切であった。 ア被告が,本件圧迫止血開始から解除までの間,疼痛を訴え続けていたわけではないことなどの事情にかんがみれば,原告病院の医師が,被告に正中神経不全麻痺が発症することを予見することは困難であった。 イPTCA実施後において上腕動脈の穿刺部の圧迫が不十分であると,血,,液が穿刺部 どの事情にかんがみれば,原告病院の医師が,被告に正中神経不全麻痺が発症することを予見することは困難であった。 イPTCA実施後において上腕動脈の穿刺部の圧迫が不十分であると,血,,液が穿刺部から血管外に漏出して血腫を形成し神経を含む組織を圧迫し障害するおそれがあること,再出血すると,最初から圧迫止血をやり直す必要が生じ,結果として圧迫止血の時間が長くなり,被告に対する身体的負担が大きくなることなどから,十分に圧迫止血を行う必要があった。 一方,止血による痛みの殆どは一過性のもので,時間とともに痛みが消失していくのが通常である。 圧迫止血の際,上腕動脈と正中神経は近傍を走行しているため,正中神経の圧迫を避けて動脈の穿刺部だけを圧迫するのは不可能である。 以上より,仮に圧迫止血の際に正中神経を圧迫していたとしても,まず止血を行うべきである。 ウ本件当時,PTCA実施後の圧迫止血の方法,止血時間などについて明確なガイドラインや文献などはなかった。 しかし,原告病院の医師及び看護師は,本件止血器の使用説明書に従って本件止血器を被告に装着した。 そして,原告病院の医師又は看護師は,本件PTCA終了後,最初の4時間は,1時間毎に被告の状態を観察し,特に問題がなかったものの,その後も2時間毎に監視を行い,被告の強い痛みの訴えに対しては,通常よりも止血器を緩め,止血効果を確保しつつも,可能な限り圧迫を緩めた状態にしており,適切に管理が行われた。 エまた,心臓カテーテル検査を多く手がける岐阜大学附属病院や岐阜市民病院では,午後に心臓カテーテル検査を行った場合は,翌朝まで止血器を 装着するという措置が採られており,原告病院の医師及び看護師は,被告に対して同様の止血措置を行った。 オ以上からすれば,当時の医療水準に照らし,相応の方法にて本件止血器 合は,翌朝まで止血器を 装着するという措置が採られており,原告病院の医師及び看護師は,被告に対して同様の止血措置を行った。 オ以上からすれば,当時の医療水準に照らし,相応の方法にて本件止血器を使用し,止血器の装着時間にも問題はなかったものであって,原告病院の医師及び看護師に過失はない。 (3)因果関係(被告の主張)ア過失と正中神経不全麻痺との因果関係(因果関係①)本件止血器により正中神経が圧迫されたことにより,被告は正中神経不全麻痺となり,その症状として母指,示指の屈曲不能,中指の屈曲の不完全が生じた。 イ過失とRSDとの因果関係(因果関係②)RSDは,右上肢の正中神経不全麻痺と同様,右上肢に発生し,右上肢の神経に関連する麻痺性の疾患であるから,被告のRSDは,原告病院の医師又は看護師の過失により被告に生じた正中神経不全麻痺が原因となっている。そして,RSDの症状として被告に右肩関節の拘縮,中指の屈曲不能,環指・小指の屈曲不完全が生じた。 (原告の主張)ア過失と正中神経不全麻痺との因果関係(因果関係①)正中神経不全麻痺の原因としては,本件止血器による圧迫から生じた正中神経障害のほかに,心疾患に関連した「肩手症候群」や心因的疼痛が複合的に関与した可能性があり,本件止血器による圧迫と断定することはできない。 イ過失とRSDとの因果関係(因果関係②)正中神経不全麻痺であれば,止血部位の末梢側に神経症状が認められるのが通常であり,被告のRSDのように止血部位の中枢側右上肢に神経症 状が起こることが説明できないこと,RSDの発症には,交感神経の異常亢進が指摘されており,その交感神経の異常亢進には,心因性の要因が大きく関与していることなどから,被告に生じた正中神経不全麻痺とRSDとの間に因果関係があるかは不明である。 ( には,交感神経の異常亢進が指摘されており,その交感神経の異常亢進には,心因性の要因が大きく関与していることなどから,被告に生じた正中神経不全麻痺とRSDとの間に因果関係があるかは不明である。 (4)本件事故により被告に生じた損害(被告の主張)被告は,本件事故によって,正中神経不全麻痺ないしRSDになったことにより,以下の損害を被った。 なお,被告は,本訴提起日(平成18年4月5日)以降も治療を受けているが,本訴提起日に症状固定があったものとして以下の計算をする。 ア入院雑費183万4500円1日あたり1500円,期間1223日間(平成14年11月30日から平成18年4月5日まで。 。)イ上記平成18年4月5日までの入院期間分の慰謝料400万円ウ上記平成18年4月5日までの休業損害1436万2375円35万7200円(被告の本件事故当時の年齢62歳の平均賃金月額)×12÷365×1223日エ後遺障害に対する慰謝料1180万円オ平成18年4月6日以降の逸失利益1709万0472円32万8900円(平成18年4月6日時点の被告の年齢66歳の平均賃金月額)×0.67(労働能力喪失率)×6.463(就労可能年数8年のライプニッツ係数)カ合計4908万7347円(原告の主張)被告の主張は,否認ないし争う。 (5)被告の退去義務の有無 (原告の主張)原告病院では,平成16年7月13日の時点で,被告の病状(心筋梗塞,糖尿病,正中神経不全麻痺,RSD)について入院治療の必要がないと診断している。 入院契約は,入院治療の必要性がある場合に限り認められるものであり,病院において医学的見地から入院治療の必要性がないと判断し,患者に対し退院すべき旨の意思表示を行った場合には当然に終了する。 また,原告病院の院長は, 療の必要性がある場合に限り認められるものであり,病院において医学的見地から入院治療の必要性がないと判断し,患者に対し退院すべき旨の意思表示を行った場合には当然に終了する。 また,原告病院の院長は,平成16年1月8日,被告の代理人と名乗るBに対して,退院するよう口頭で通知し,同年7月2日,被告に対して,退院するよう通知し,平成17年11月1日,被告に対して,退院を命じ,その旨を記載した書面を交付し,原告は,平成19年4月16日の本件弁論準備,,,,手続期日において被告に対して退院命令の意思表示をしており原告は被告に対して,入院治療の必要性がないこと及び退院すべき旨を何度も伝えている。 よって,原告は,被告に対し,①治療目的の到達による退去義務,②平成17年11月1日付退去命令による退去義務,③平成19年4月16日本件弁論準備手続期日における退院命令による退去義務を選択的に主張する。 (被告の主張)ア原告の主張は,否認ないし争う。 (),,イ羽島市民病院管理規則甲C1は退院命令をなしうる場合を列挙しその行為者を院長と定めており同規則12条1項同規則は退院の強(),,制はすべて院長の退院命令によるとの立場を採用していると解釈すべきである。 原告主張の退院命令は,同規則にのっとっていないので,原告の被告に対する退院請求は失当である。 ウ仮に,退院命令によらない退院請求が原告被告間の契約上可能と解され るとしても,被告には収入も見るべき資産もなく,帰るべき住居も存在しないから,退院させられればホームレス生活を余儀なくされる。 また,そもそも被告の就労が困難なのは原告の医療過誤に原因がある。 こうした中で,原告が賠償金も支払わないまま被告に退院を請求するのは,信義則に反し許されない。 (6)原告の被告 を余儀なくされる。 また,そもそも被告の就労が困難なのは原告の医療過誤に原因がある。 こうした中で,原告が賠償金も支払わないまま被告に退院を請求するのは,信義則に反し許されない。 (6)原告の被告に対する治療費及び食事負担金の支払請求権の有無(原告の主張)ア原告は,平成14年11月16日に被告が急性心筋梗塞で原告病院に入院して以降現在に至るまで,被告に対し,診療行為及び食事給付を行ってきた。 イ平成14年11月16日から平成18年2月末日までの診療費(但し,被告は平成15年8月に身体障害3級の認定を受け,診療費は公費負担となったため被告が負担すべき診療費は同年7月分までのものである及,。)び食事負担金び合計は金175万4540円である。 (被告の主張)被告が診療費及び食事負担金を支払っていないことは認め,その支払義務については争う。 (7)短期消滅時効の成否(民法170条1号,174条4号)(被告の主張)被告は,原告に対し,平成18年9月21日の本件弁論準備手続期日において,平成15年4月4日までの治療費及び平成17年4月4日までの食事負担金につき,時効を援用するとの意思表示をした。 (原告の主張)争う。 第3当裁判所の判断 被告の原告に対する損害賠償請求権について (,,,,,,,(1)前記争いのない事実に証拠甲A1 B1の2 C716,17,証人C)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 ア被告は,平成14年11月16日(以下,特に断りのない限り,時刻は同日のことを指す,原告病院で急性心筋梗塞と診断され,その後,当時。)原告病院の当直医であったD医師が救急室において,被告,被告の元妻及び長男に対し,心臓カテーテルの本を見せながら,心臓カテ は同日のことを指す,原告病院で急性心筋梗塞と診断され,その後,当時。)原告病院の当直医であったD医師が救急室において,被告,被告の元妻及び長男に対し,心臓カテーテルの本を見せながら,心臓カテーテル検査及びPTCAの必要性,手術療法との比較(PTCAによる致死率は1パーセント程度であり,開胸手術に比べれば死亡率は低いこと,検査に伴う。)(,,,合併症2次的な心筋梗塞血栓が飛ぶことによる脳梗塞穿刺部の出血皮下出血,不整脈など)などについて説明し,被告からPTCAを実施することについての同意を得た(甲A1,5,C16,証人C13頁)。 イ午後6時25分頃,被告は心臓カテーテル室に入室し,主治医であるE医師が,右上腕動脈を穿刺した上で,カテーテルを挿入し,冠状動脈(心臓の上を走っている動脈)の造影検査を行った。 本件検査は,被告の右肘部から正中動脈に,シース(カテーテルを通すための管)を挿入し,シースを通してカテーテルを入れ,肩から心臓までカテーテルを動かし,冠状動脈を造影し,様々な方向から写真を撮る方法。(,,,,,,)により行われた甲A1 C16証人C4頁13頁32頁ウ本件検査の結果,冠動脈の一部に100パーセントの狭窄が認められたことから,E医師は,被告に対し,午後6時45分ころからPTCAを実施した。 ,(),本件PTCAはガイドワイヤ細い針金状の器具を閉塞部位に通しガイドワイヤが通ったところで,バルーンがついているカテーテルをそのガイドワイヤに沿って入れ,閉塞した部位でバルーンを膨らませるという方法で行われた。 本件PTCAの実施においては,バルーンで広げても,75パーセント程度の狭窄が残ったので,ステント(針金の管上の器具)を狭窄部分に留置し,狭窄が でバルーンを膨らませるという方法で行われた。 本件PTCAの実施においては,バルーンで広げても,75パーセント程度の狭窄が残ったので,ステント(針金の管上の器具)を狭窄部分に留置し,狭窄が悪化しないように内部から補強した。その結果,狭窄が25,,,,パーセントとなり改善が見られたためE医師は午後7時20分ころPTCAを終了し,カテーテル,シースを抜去し,本件止血器により,動脈穿刺部の圧迫を開始した甲A2 C16証人C4頁 。(,,,,,3頁)エ本件止血器は,商品名をブリードセーフといい,透明な止血バルーンに,,空気を注入して穿刺部を押さえて止血する使い捨ての腕用止血器であり空気の最大充填量は75ミリリットルとされている。 本件当時,原告病院では,PTCA実施後の圧迫止血は,本件止血器装着後,55ないし60ミリリットルの空気を注入し,脈がかすかに触知できる程度の状態とし,穿刺部位の状態などを観察しながら,基本的に1時間ごとに約5ミリリットル程度ずつ,4時間程度で合計20ミリリットル程度空気を抜いて減圧し,その時点で異常がなければそのままの状態で観察するという方法で止血器の減圧処置及び管理が行われていた。 止血器の装着により痛みやしびれを訴える患者は2割位おり,そのうち半数程度の患者には鎮痛剤が処方され,状況によって早めに空気を抜く措置がされていた。 本件圧迫止血も,原告病院で通常行われていたのと同様に,穿刺部位にガーゼを当て,ガーゼの上から透明のビニール様の本件止血器を装着した上で,止血バルーン(本件止血器の空気注入部分)に空気を注入し,止血部位よりも抹消側で橈骨動脈の血流の触知が確認できるまで,空気を抜いて減圧する方法で行われた甲A2B2 C16 証人C1。(, ルーン(本件止血器の空気注入部分)に空気を注入し,止血部位よりも抹消側で橈骨動脈の血流の触知が確認できるまで,空気を抜いて減圧する方法で行われた甲A2B2 C16 証人C1。(,,,,,0,15頁,16,18頁)オ被告は,本件止血器を装着した午後7時20分ころは特に異常を訴えて いなかったものの,午後7時30分ころ,激しい痛みを訴えたので,原告病院の看護師のFは,E医師の指示により,動脈穿刺部からの出血がないこと及び止血部位より抹消側で橈骨動脈の血流の触知が良好であることを確認した上で,鎮痛剤(ポンタール)を内服させ,本件止血器の空気を15ミリリットル除去し,午後8時30分ころ,鎮痛剤(セソゴン及びアタラクスP)の筋肉注射をした上で,本件止血器の空気を5ミリリットル除去した。このころ,被告は「痛くて手がもたん。指が腐る」と痛みを訴,。 えて怒っていた(甲A2,5,B1の2,C7,16,17。 。 )カその後,被告からは,午後9時30分ころ,午後10時30分ころに疼痛などの訴えがあったものの,翌17日の午前0時,午前2時,午前4時の原告病院の看護師による巡回の際には,疼痛などの訴えはなく,同日午前6時30分ころから再び手が痛くて痛くて…などと疼痛などを訴え「。」るようになった(甲A2,C16)。 キ被告は17日午前8時ころ本件止血器を除去され昼ころには手,,,,「の痛みはだいぶ良くなりました。大丈夫です」と言っていた(甲A2,。 。 5)ク原告病院の医師又は看護師は,本件圧迫止血中,本件止血器装着後約4,,,,時間の間は1時間毎にその後は2時間毎に被告の状態を観察したが被告には本件圧迫止血中止血部位周辺に腫脹浮腫などはなかった甲,,,。 (A 止血中,本件止血器装着後約4,,,,時間の間は1時間毎にその後は2時間毎に被告の状態を観察したが被告には本件圧迫止血中止血部位周辺に腫脹浮腫などはなかった甲,,,。 (A2,C17,証人C10頁)ケ被告は,同月18日,19日には主に頭痛を訴えていたが,同月20日に「検査が終わってからずっと右手がしびれている。感覚もよくわから,んすぐ治るって言われたのにまだ治らん大丈夫かなどと不満を訴え。 。 。」た。E医師は,同日,被告の動脈穿刺部を観察したが,血腫や仮性動脈瘤は認められなかった。被告は,その後,穿刺部の疼痛や止血部位の末梢側の手指の痺れ,運動障害を訴えている(甲A2)。 コ被告は本件当時,糖尿病に罹患していた(甲A1)。 (2)本件に関する医学的知見証拠(甲B1の1,2,6,C16,17,乙B1,2,4,証人C)によれば,本件に関し,以下の医学的知見が認められる。 ア止血の必要性(ア)PTCA実施後の圧迫止血処置において,止血が不十分なまま圧迫を解除すると,穿刺部から再出血し,血液が皮下にたまり,血腫が形成され,皮下組織や神経を圧迫し,神経麻痺を生じさせる可能性がある。 また,再出血すると,最初から圧迫止血をやり直す必要が生じ,結果として圧迫止血の時間は長くなり,患者に対する身体的負担が大きくなる(証人C7,8頁)。 (イ)一方,止血による痛みのほとんどは一過性のもので,時間とともに痛みが消失していくのが通常で,治療過程で知覚過敏などが生じた場合であっても長期に持続することは少なく,数か月以内に自然に消失するのが通常である(甲C16)。 イ止血の方法肘窩部は神経・血管が近接して走行する部位であること,局所的な血管と神経の位置関係には個人差があり,血管と神経の走行の状況を 数か月以内に自然に消失するのが通常である(甲C16)。 イ止血の方法肘窩部は神経・血管が近接して走行する部位であること,局所的な血管と神経の位置関係には個人差があり,血管と神経の走行の状況をあらかじめ知ることはできないことなどから,肘窩部における止血操作に際し,正中神経へ圧迫をさけて,動脈の穿刺部だけを圧迫をすることは不可能である(甲B1,2,6,C16)。 ウ止血解除の方法及び止血時間など(ア)本件当時,止血時間及び管理の方法について明確なガイドラインや文献などはなかった(証人C5,10,11頁)。 (イ)本件当時,岐阜大学附属病院や,心臓カテーテル検査を年間約2000例(県内で一番多い)手がける岐阜市民病院では,午後に心臓カテ ーテル検査を行った場合には翌朝まで止血器を装着していた甲C1,。(6,証人C6,7頁)(ウ)原告病院では,動脈穿刺部以外の毛細血管などからの出血を防ぐため及び肘部を屈曲することによる穿刺部からの再出血を防ぐために,止血器を減圧したら,そのままの状態でしばらく観察するという方法で止血管理をしていた(甲C16,17,証人C18,19頁)。 (エ)圧迫止血の際に患者が訴える痛みの原因としては,圧迫帯より末梢,,側へ血流が行かないこと内出血による血腫が正中神経を圧迫することあるいは圧迫帯による物理的圧迫が正中神経へ加わることにより,患者の正中神経を損傷することなどが考えられ,その管理のために,脈を触知できるかを確認する。麻痺があるかどうかは,手が動くかどうかを観察することによって判断する甲B1の1証人C17頁20頁 。(,,,2頁,25頁)エ圧迫止血と糖尿病との関係糖尿病の既往歴がある患者は,動脈硬化がすすみ,動脈の血管壁の弾力が低くなっている場合がある する甲B1の1証人C17頁20頁 。(,,,2頁,25頁)エ圧迫止血と糖尿病との関係糖尿病の既往歴がある患者は,動脈硬化がすすみ,動脈の血管壁の弾力が低くなっている場合があるため,止血しにくなっており,再出血を起こすリスクは,糖尿病の既往症のない患者よりも高い(証人C8頁)。 オ正中神経不全麻痺正中神経不全麻痺の症状としては,母指,示指の屈曲が不能となり,中指の屈曲が不完全となることなどがあげられる。 緊急心臓カテーテル検査,PTCAを行う際の肘部上腕動脈穿刺に伴う合併症として,0.2から1.4パーセント程度の頻度で,高位正中神経麻痺を発症し,その原因として,①出血や血腫,偽性動脈瘤による直接圧迫,②局所麻酔やイントロデューサー挿入の際の直接損傷,③カテーテル。(,,,)操作後の上腕動脈閉塞による血行障害がある甲B1 乙B1カRSD RSDの症状としては,交感神経の異常亢進,肩関節の拘縮,中指の屈曲不能環指小指の屈曲不全などがありその原因は多彩である乙B,,,。(2)(3)過失の有無ア過失①本件圧迫止血時に止血器の十分な減圧処置を行わなかった過失(ア)被告は,原告病院の医師又は医師から指示を受けた原告病院の看護師には,被告が,本件圧迫止血開始後約10分経過した後から疼痛や痺れを訴え続けていたのであり,このような状態で圧迫を継続することにより神経の損傷するおそれがあることをは予見し得たのであるから,被告の本件圧迫止血処置中,1時間毎に,被告の止血の状態を確認し,血腫が生じない範囲で本件止血器の減圧を図る処置をすべき注意義務があったにもかかわらず,これを怠った過失があると主張する。 (イ)たしかに,前記認定事実及び医学的知見によれば,被告は,本件止血器を装 腫が生じない範囲で本件止血器の減圧を図る処置をすべき注意義務があったにもかかわらず,これを怠った過失があると主張する。 (イ)たしかに,前記認定事実及び医学的知見によれば,被告は,本件止血器を装着してから約10分後から約3時間10分後の間に,被告病院の医師又は看護師に対し,4回疼痛を訴えたこと,圧迫止血の際に患者の正中神経を損傷する可能性があることなどが認められる。 しかし,前記認定事実及び医学的知見によれば,被告は,本件止血器を装着してから約4時間40分経過した平成14年11月17日午前0時ころ以降は同日午前6時30分ころまで疼痛などを訴えなかったこと,被告には,本件圧迫止血中,止血部位周辺に腫脹,浮腫などがみられなかったこと,止血による痛みのほとんどが一過性のものであることなどが認められる。 また,前記認定事実及び医学的知見によれば,圧迫止血処置が不十分であると,穿刺部からの再出血により血腫が形成され,皮下組織や神経を圧迫し,神経麻痺を生じさせる可能性があること,被告のように糖尿病の既往症がある患者は,既往症のない患者よりも止血に時間がかかる 場合があること,本件当時,PTCA実施後の圧迫止血の時間には明確な基準はなかったものの,午後にPTCAを行った場合には翌朝まで止血器を装着しているのが標準的な装着時間であったこと,原告病院の医師は,被告に対し,午後に,本件PTCAを行い,翌朝まで本件止血器を装着させたことが認められる。 さらに,前記認定事実及び医学的知見によれば,圧迫止血の際に患者,,が訴える痛みの管理のために脈が触知できるかなどを確認するところ原告病院の医師又は看護師は,被告に装着された本件圧迫止血器を減圧する際に,動脈穿刺部からの出血がないこと及び末梢側の橈骨動脈の触知が良好であることなどを確認したこと,疼痛 るかなどを確認するところ原告病院の医師又は看護師は,被告に装着された本件圧迫止血器を減圧する際に,動脈穿刺部からの出血がないこと及び末梢側の橈骨動脈の触知が良好であることなどを確認したこと,疼痛を訴える被告に対し,通常より早期に,多めの減圧を行ったこと,本件圧迫止血中,本件止血器装着後約4時間の間は,1時間毎に,その後は2時間毎に,被告の状態を観察したことなどが認められる。 (ウ)以上によれば,被告が本件圧迫止血中に痛みを訴え続けていたわけではなかったことなどから,被告の神経を損傷するおそれがあることを予見することは困難であり,また,原告病院の医師及び看護師は,本件圧迫止血中,被告に対し,正中神経の圧迫が生じないように必要な管理を行うなどしていた。 そうであれば,原告病院の医師及び看護師は,被告に対して,適切に圧迫止血措置を行っていたということができ,被告が主張するように,圧迫止血中常に,1時間毎に,被告の止血の状態を観察して更に減圧すべき注意義務があったとはいえず,原告病院の医師又は看護師に過失があったとは認められない。 イ過失②圧迫止血開始後3時間程度で止血器を除去しなかった過失(ア)被告は,原告病院の医師には,本件圧迫止血開始後,3時間程度で止血が完了していたはずであるから,その時点で本件止血器を取り外す べき注意義務があったにもかかわらず,これを怠り,17日午前8時まで本件止血器を除去しなかった過失があると主張する。 (イ)しかし,止血後3時間程度で止血が完了していたという事実を認めるに足る証拠がない。 ウ以上のとおり,本件の診療経過において,原告病院の医師又は看護師には,被告の主張する過失があったと認めることはできない。 したがって,そのほかの争点について判断するまでもなく,被告の請求には理由がない。 り,本件の診療経過において,原告病院の医師又は看護師には,被告の主張する過失があったと認めることはできない。 したがって,そのほかの争点について判断するまでもなく,被告の請求には理由がない。 退去請求について(,,,,,(1)前記争いのない事実に及び証拠甲A2 5ないし7 12,14ないし16,B1の2,1の3,C1,3ないし10,12,13,15,16,18,証人C,被告)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 ア心筋梗塞の治療状況(ア)E医師が,平成14年12月9日,被告に対して心臓カテーテル検査を行ったところ左肘部より穿刺前回狭窄のあった部分に再狭窄が(),みられた。そのため,同医師が,再びPTCAを施行したところ,狭窄はなくなった(甲A2,5,6,B1の2)。 (イ)被告の心機能は,平成16年6月28日にはほぼ正常化し,原告病院の医師は,同年7月1日の時点では,被告に入院治療の必要はなく,外来での通院治療が可能であるとの診断した。そして,その診断は平成19年10月11日の時点まで変わりはない甲A5 C16証。(,,,人C11頁)イ正中神経不全麻痺,RSDの治療状況,,原告病院の医師は被告の正中神経麻痺及びRSDに対する治療として理学療法(手指巧緻運動,可動領域訓練,拘縮予防)や薬物治療(ビタミ ン剤鎮痛剤などの投与遠赤外線照射を行っていたが平成17日10,),,月31日の時点で,被告が入院を継続する必要はないと診断し,平成19。 (,,,年10月11日の時点でもこの診断に変わりはない甲A6A710証人C11頁)ウ糖尿病の治療状況原告病院の医師は,平成16年7月13日,被告の既往症である糖尿病につい 。 (,,,年10月11日の時点でもこの診断に変わりはない甲A6A710証人C11頁)ウ糖尿病の治療状況原告病院の医師は,平成16年7月13日,被告の既往症である糖尿病について,元々入院加療の必要性はなく,経口内服薬の治療にて血糖は良。 ,好にコントロールできており入院治療の必要はないとの診断したそして平成19年10月11日の時点でもこの診断に変わりはない(甲A5,。 6,C16,証人C11頁)エ被告の入院状況及び原告病院との交渉経緯(ア)原告病院の院長は,平成16年7月2日,被告に対して,退院するよう口頭で通知した(弁論の全趣旨)。 (イ)原告は,被告が病棟内で大声を出すなどと主張して,同月26日,被告を相手方として退去・妨害禁止等仮処分命令の申立て(岐阜地方裁判所平成16年(ヨ)第88号)を行った。これに対し,岐阜地方裁判所は,被告が,治療行為に必要な範囲を超えて医療従事者に面談を求めること,指定場所以外での喫煙,建物内での携帯電話の使用,敷地内で大声を出すこと,そのほか,原告病院の院長が指定した行為などを禁止する旨の決定をし,原告病院では,これを受けて同年8月9日付及び平成17年4月25日付で計25項目の事項の遵守を指定した甲A4 。(,1,14,C3ないし6)しかし,被告は,その後も,大声での怒号など,上記指定事項に反す。 (,,,る行為を繰り返していた甲A1416証人C28頁ないし30頁被告12頁ないし19頁)(ウ)原告病院の院長は,平成17年11月1日,被告に対して退院を命 じ,その旨記載した書面を交付し,さらに,平成19年4月16日の本件弁論準備手続期日において,被告に対し,退院命令の意思表示をするなど,入院治療の必要性がないこと及び退院すべき旨を被告に対して じ,その旨記載した書面を交付し,さらに,平成19年4月16日の本件弁論準備手続期日において,被告に対し,退院命令の意思表示をするなど,入院治療の必要性がないこと及び退院すべき旨を被告に対して何度も伝えたが,被告は退院を拒絶した(甲C7)。 (エ)被告は,原告病院に入院中,怒号,無断外出,院内の禁煙区域での喫煙,病院敷地内への車の持込みなどを繰り返していたほか,原告に対し,原告病院の対応を街宣車などを使って非難する旨文書で通告し,原告病院内通路に設置された手すりに原告病院を非難する内容の看板を置。(,,,,,,くなどしている甲A15 C7ないし10 証人C28頁ないし30頁,被告12頁ないし19頁)また,被告は,411号室内に私物のテレビや棚を持ち込み,雑多な日用品を乱雑に置いたり,洗濯した衣類や靴下などをカーテンレールや,,,ベッドに掛けて干したりし清潔整頓を要請される入院患者の病室を自己の居室として気ままに使用している(甲C12)。 ,(),(オ)原告病院では病院管理規則12条入院等の制限1項において①患者が病院に関する規定に違背し,又は職員の指示に従わず病院の運営に不都合の行為があると認めたとき同項2号②その他院長におい(),て特に必要があると認めたとき(同項3号)には,院長は,退院を命ずることができる旨定めている(甲C1)。 (カ)被告は,自動車運転免許を持っており,自動車を運転することに支障はなく,自動車免許の更新もして,実際に自動車を運転して外出しているまた被告は右手で箸を持ち文字を書くこともできる被告。 ,,,。(10,11,40,41頁)(キ)原告病院は,働くことができず,退院しても住むところがないという被告に対して いるまた被告は右手で箸を持ち文字を書くこともできる被告。 ,,,。(10,11,40,41頁)(キ)原告病院は,働くことができず,退院しても住むところがないという被告に対して,生活保護の説明などを行ったが,被告は,扶養義務者である親族がいるためその申請をしていない甲A12C13被,。(,, 告20頁)(ク)被告は,日常生活に支障を生じるとして,e号室からの退去を拒んでいる(被告33頁)。 (2)被告の退去義務の有無ア当事者間に争いのない事実及び前記認定事実によれば,平成14年4月16日,原告と被告との間で,原告病院への入院を伴う診療契約が締結されたことが認められる。 入院を伴う診療契約は,病院の入院患者用施設を利用して,患者の病状が,通院可能な程度にまで回復するように,治療に努めることを目的とした私法上の契約であり,医師が,患者の病状が,通院可能な程度にまで治癒したと診断した場合に,同診断に基づき病院から患者に対し退院すべき旨の意思表示があったときは,医師の上記診断が医療的裁量を逸脱した不合理なものであるなどの特段の事由が認められない限り,入院を伴う診療契約は終了し,患者は速やかに入院患者用施設である病室から退去する義務を負うものと解される。 上記入院を伴う診療契約の終了と患者の退去義務は,同契約の性質上当然のこととして,契約当事者の合理的意思解釈により,同契約の内容となっていると解すべきである。 イ前記認定事実によれば,当初の治療目的である心筋梗塞については平成16年7月1日の時点で,本件事故における正中神経不全麻痺及びRSDについては,平成17年10月31日の時点で,被告の病状は通院治療でコントロールできると診断されていること及び平成16年7月2日以降には,原告病院は被告に対 件事故における正中神経不全麻痺及びRSDについては,平成17年10月31日の時点で,被告の病状は通院治療でコントロールできると診断されていること及び平成16年7月2日以降には,原告病院は被告に対して,入院治療の必要性がないこと及び退院すべき旨を告げていることが認められることから,遅くとも平成17年10月31日の時点で原告・被告間の入院を伴う診療契約は終了しているといえる。 なお,被告は,患者がその意に反して退去義務を負うのは管理規則に基づく病院長の退去命令がなされた場合に限られると主張するが,このように患者の退去義務が発生する場合を限定的に解すべき理由はない(もっとも本件の場合前記(1)の認定事実によれば原告病院の院長の平成17,,,)。 年11月1日の退去命令による被告の退去義務を否定すべき理由もないウ被告は,収入,資産及び居住先がないこと,被告の就労が困難である原因が原告病院の医療過誤にあるのに原告が賠償金を支払っていないことなどから,原告の被告に対する退院請求は,信義則に反し許されないと主張する。 しかし前記1の認定判断及び前記(1)の認定事実によれば本件事故に,,おいて原告病院に過失があったことは認められないこと,現在,被告は1人で車で外出することができるなど,日常生活に大きな支障のないことなどが認められ,退院した場合であっても通院加療により病状をコントロール可能であることなどが推認できることのほか,被告を扶養すべき親族が存在することもうかがわれることなどにかんがみると,原告が被告に対して退院請求することが信義則に反するものではない。 エ以上より,被告には,e号室を退去すべき義務がある。 治療費及び食事負担金の支払請求について(1)前記争いのない事実及び証拠(甲C11)及び弁論の全趣旨を総 とが信義則に反するものではない。 エ以上より,被告には,e号室を退去すべき義務がある。 治療費及び食事負担金の支払請求について(1)前記争いのない事実及び証拠(甲C11)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 ア原告は,平成14年11月16日に被告が急性心筋梗塞で原告病院に入院して以降現在に至るまで,被告に対し,診療行為及び食事給付を行ってきた。 イ同月16日から平成18年2月末日までの診療費(平成15年7月分まで)及び食事負担金の合計は175万4540円である(甲C11)。 (2)原告の被告に対する治療費及び食事負担金の支払請求権の有無 ア(1)アイにより原告病院は被告に対し入院を伴う診療契約の継続,,,,中は同契約に基づき,同契約終了後は不当利得に基づき,治療費及び食事負担金として,175万4540円を請求できる。 イ被告は,原告に医療過誤があり,原告が心筋梗塞の治療契約にかかる債務を履行したとはいえないから,被告に心筋梗塞の治療費を支払う義務はないと主張する。 ,,,しかし前記1の認定判断によれば原告には医療過誤がないことから被告の上記主張は採用できない。 ウまた,被告は原告の医療過誤に起因して発生した症状の診療行為,食事給付は,損害賠償の現物支給であるから,被告にこの対価の支払義務はない旨主張する。 ,,,しかし前記1の認定判断によれば原告には医療過誤がないことから被告の上記主張は採用できない。 (3)短期消滅時効の成否(民法170条1号,174条4号)ア被告は,入院治療中の食事負担金に民法174条4号が適用されることから,食事負担金債権は1年で時効消滅する旨主張するが,原告病院は,同条号の「旅店「料理店「貸席「娯遊場」のいずれにも当たらない。 」」 は,入院治療中の食事負担金に民法174条4号が適用されることから,食事負担金債権は1年で時効消滅する旨主張するが,原告病院は,同条号の「旅店「料理店「貸席「娯遊場」のいずれにも当たらない。 」」」よって,入院治療中の食事負担金に,民法174条4号は適用されないから,被告の同主張は採用できないイまた,被告は,治療費請求権について,民法170条1号の3年の消滅時効期間が経過した旨主張するが,同条号の時効の起算点は,本件においては,被告が原告から退院請求を受け,被告に具体的な精算義務が生じたときと解するのが相当であるから,早くとも平成16年7月2日の時点であり,同日が時効の起算点になる。 よって,本件訴えが提起された平成18年4月5日の時点では3年の時効消滅期間は経過していないので,被告の上記主張は採用できない。 ウ以上より,原告の被告に対する治療費請求権及び食事負担金請求権は時効消滅しない。 結論 ,,,以上より原告の請求はいずれも理由があるからこれを認容することとし被告の請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する(なお,主文2項について,被告に入院治療の必要性がないこと及び被告の病室での生活状況に照らし,仮執行の宣言を付すことを相当と認める。 。)岐阜地方裁判所民事第1部裁判長裁判官野村高弘裁判官岩井直幸裁判官吉武礼華 (別紙)事故目録日時平成14年11月16日場所岐阜県羽島市a町b丁目c番地所在羽島市民病院内態様被告の急性心筋梗塞に対して,右上腕動脈から心臓カテーテル検査,及び経皮的冠動脈再建術の術中,術後の止血において,被告に右上肢に正中神経不全麻痺が生じ,その後,二次的に反射性交感神経性萎縮症による拘縮が生じた。 上腕動脈から心臓カテーテル検査,及び経皮的冠動脈再建術の術中,術後の止血において,被告に右上肢に正中神経不全麻痺が生じ,その後,二次的に反射性交感神経性萎縮症による拘縮が生じた。
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