【DRY-RUN】主 文 原判決中被告人Aに関する部分を破毀する 右被告人に対する事件を東京高等裁判所に差戻す その余の被告人に関する上告を各棄却する 理 由
主文 原判決中被告人Aに関する部分を破毀する右被告人に対する事件を東京高等裁判所に差戻すその余の被告人に関する上告を各棄却する 理由 弁護人横田隼雄上告趣意第一点について。 原審判決書を見ると、謄写機を以て印刷した文字の上に毛筆で書き加えた部分があるが、これは印刷が克明でなかつた文字を明瞭にしたまでのことであつて、改竄というべきものでない。またその他にも挿入削除が若干あるけれども、何れも刑事訴訟法第七十二条所定の方式に従つているので、同条違反の点はない。よつて論旨は理由がない。 同上第二点について。 所論の通り原判決は、被告人Aの原審公判廷における判示と同旨の供述及び医師Bの作成した死体検案書中Cの死因と死亡時間につき判示と同旨の記載を綜合して、判示第二の事実を認めているけれども、右の死体検案書を原審公判廷において被告人Aに読み聞かしてその意見弁解の有無を訊ねた旨の記載は、原審公判調書の中に見当らない。結局原判決は、適法な証拠調を経ない。従つて、また証拠能力の無い同検案書を証拠として事実を認定したものであつて、採証の法則に違背し破毀を免れない。論旨は理由がある。 同上第三点について。 被告人等の生年月日が何時であるかということは、事実問題であつて、その認定は原審の専権に属し、原審が被告人等の供述に基いて、その生年月日を認定したことには、何等の違法もない。原審が、被告人等に対する裁判権は日本の裁判所に属すると認めたのは記録の上で明かなように、日本の裁判所が昭和二十一年五月八日- 1 -附聯合軍軍政府当局より東京刑事地方裁判所に対する刑事裁判管轄に関する指令書によつて、被告人等に対する本件被告事件の裁判権を与えられたからであつて、必ずしも被告人等の本籍に関する供述を - 1 -附聯合軍軍政府当局より東京刑事地方裁判所に対する刑事裁判管轄に関する指令書によつて、被告人等に対する本件被告事件の裁判権を与えられたからであつて、必ずしも被告人等の本籍に関する供述を措信しなかつたためではない。論旨は原審の事実認定を非難するに帰し理由がない。 被告人A及びDの上告趣意について。 両被告人は各々警察に於て拷問せられて不実の自白をなし、第一審及び第二審でも真実を述べることができなかつたと云い、強盗事件には関係無かつた旨を主張している。然し警察並に第一審及び第二審の公判廷における被告人等の自白が警察での脅迫の影響を受けたといふ形跡は記録中に見当らないし、そのような推定を下すべき根拠はない。論旨は結局事実誤認の主張に帰し、適法な上告理由となり得ないものである。 被告人Eの上告趣意書は、その提出期間経過後に提出されたものであるから、これに対する判断を示さない。 なお職権を以て調査してみると、原判決がその主文に於て、被告人Aに対して罰金五百円の言渡をしながら、これを完納しない場合労役場に留置する期間の換算を言渡していないことは、刑法第十八条第四項に対する違反である。 しかして、前記原判示第二事実に関する違法は被告人Aに対する事実の確定に影響を及ぼす虞があるから、原判決中同被告人に関する部分を破毀して、その事件を東京高等裁判所に差戻すこととし、その余の被告人に関する上告はいづれも理由がないから、これを棄却することとし、刑事訴訟法第四百四十八条ノ二及び第四百四十六条に従ひ主文の通り判決する。 以上は裁判官全員一致の意見によるものである。 検察官宮本増蔵関与昭和二十三年十月五日- 2 -最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官長谷川太一郎 るものである。 検察官宮本増蔵関与昭和二十三年十月五日- 2 -最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官長谷川太一郎裁判官井上登裁判官島保裁判官河村又介- 3 -
▼ クリックして全文を表示