平成15(ワ)28 損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年4月22日 青森地方裁判所 弘前支部 棄却
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判決文本文18,525 文字)

- 22 - 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告に対し,金1000万円及び内金500万円に対する平成14年12月14日から,内金500万円に対する平成15年2月14日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,株式会社東奥日報社発行の東奥日報及び株式会社陸奥新報社発行の陸奥新報の,各朝刊最終版に,別紙記載の謝罪広告を別紙記載の条件で各1回掲載せよ。 第2 事案の概要本件は,H市議会議員の地位にある原告が,新聞記事として掲載された記者会見における被告の2度の発言はいずれも原告の名誉を毀損するものであるとして,不法行為に基づき,1つの名誉毀損行為につきそれぞれ500万円の損害賠償及びこれらに対する不法行為後である被告の発言が新聞記事として掲載された日から支払済みまで,民法所定の年5分の遅延損害金の支払を求めるとともに,謝罪広告の掲載を求める事案である。 1 争いのない事実等(1) 原告は,H市議会議員の地位にある者である。 被告は,H商工会議所会頭の地位にある者である。 (2)原告は,H市大字a字b57番の土地(地目・畑,以下,「57土地」という。)を昭和38年に取得し,平成8年5月14日,同土地を57番1ないし3の3筆に分筆した(以下,分筆後の土地については,「57-1土地」の例で表記する。)。また,原告は,平成4年4月24日,分筆前の57土地の東側に隣接するH市大字a字c1番76の土地(地目・山林,以下,「1-76土地」という。)を取得した。 原告は,平成8年ころから,これらの土地付近において,ゴルフ練習場(本件ゴルフ練習場)を経営している。 (3)ア被告は,平成14年12月13日,H市役所内で記者会見を開き,原告が,産業 した。 原告は,平成8年ころから,これらの土地付近において,ゴルフ練習場(本件ゴルフ練習場)を経営している。 (3)ア被告は,平成14年12月13日,H市役所内で記者会見を開き,原告が,産業廃棄物を不法投棄し,その事実を隠蔽しているとして,要旨,以下のような内容を発表した。 「原告は,自己の所有するH市大字a字b57番地2,面積1万9486㎡の土地にゴルフ練習場を開設するにあたり,当該土地を造成する際産業廃棄物を不法に投棄し覆土していた事実が多くの市民から指摘されている。平成8年6月19日付で農地法4条に基づく転用許可が出されていることから,不法投棄は,概ね転用許可前後になされたものと推測される。 これまでの調査によると,不法投棄を隠蔽するため事前着工し始末書を提出したことも判明している。また,造成時に不法投棄したコンクリートの団塊が随所に露出,散在している。」(以下,この発言を「産廃不法投棄発言」という。)イ同月14日,青森県内で発行される東奥日報と陸奥新報の朝刊に,それぞれ,被告の発表内容と同旨の記事が掲載された。 (4)ア被告は,平成15年2月13日,H商工会館で記者会見を開き,原告が,本件ゴルフ練習場の土地の一部について農地転用許可を受けていないとして,要旨,以下のような内容を発表した。 「原告は,平成8年5月,原告所有の農地をゴルフ練習場に転用の許可を申請する際,一筆の農地をわざわざ3筆に分筆した上,中央部を占める地番57-2(1万9243㎡)のみの許可を受け,残りの57-1(6473㎡),57-3(4537㎡)は許可を受けずに,ゴルフ練習場用地として一体的に使用している。 これは農地法4条違反にあたる行為である。当時,2万㎡を超えると大臣許可となるための作為的かつ悪質な脱法行為である。」(以下,この発言を「農地法 けずに,ゴルフ練習場用地として一体的に使用している。 これは農地法4条違反にあたる行為である。当時,2万㎡を超えると大臣許可となるための作為的かつ悪質な脱法行為である。」(以下,この発言を「農地法違反発言」という。)イ同月14日,前記東奥日報の朝刊に,「被告は,本件ゴルフ練習場の計3筆の土地のうち,2筆が農地転用許可を受けていないとして『脱法行為で許されない。』と述べた。」旨の記事が掲載された。 2 争点(1) 争点1…被告による産廃不法投棄発言及び農地法違反発言が専ら公益を図る目的に出たものか否か(被告の主張)ア被告が発言において指摘した農地法違反の問題も,産業廃棄物の問題も,全くの私事ではなく,公的な問題である。ことに,産業廃棄物の問題は,本件ゴルフ場がりんご畑に囲まれて存在しているだけに,土壌汚染につながれば地域経済を揺るがしかねない深刻な社会問題に発展するものである。 イ被告が平成14年12月13日に最初の記者会見を開いた目的は,原告の市議会議員としての社会的評価を毀損することを積極的に企図したものではない。 産業廃棄物を不法に投棄した疑いを持った相手方が市議会議員という責任ある立場にある者であったことから,真偽のほどをH市議会において解明してもらうべく,H市議会議長あてに申立書を提出したものの,市議会として十分な調査をする意図のないことが判明したことから,そのような対応でいいのか,H市民の代表が集うH市議会の対応の当否を市民に問うべく,また,原告の所属するH市議会によって真相解明が図られることを期待して,被告は,記者会見を開いたものである。 ウその後,被告は,平成15年2月13日,2度目の記者会見を開いているが,その目的は,前回の記者会見及び新聞報道を受けて,被告に更なる情報や意見が寄せられたため,その情報や意 を開いたものである。 ウその後,被告は,平成15年2月13日,2度目の記者会見を開いているが,その目的は,前回の記者会見及び新聞報道を受けて,被告に更なる情報や意見が寄せられたため,その情報や意見を寄せてくれた者に対しても,また,原告を市民の代表として選出した市民のためにも,是が非でも真相を明らかにしなければならないという義憤に駆られたというものである。 エ一連の記者会見は,H市議会やH市長などに対する申立てでは真相解決には至らないと考えた被告が,その目的を達するために取り得た手段だったのであり,原告にかかっている疑念を広くH市民に知ってもらい,真相解明を図るべしという世論の喚起を図ったものだったのである。 よって,被告による産廃不法投棄発言及び農地法違反発言が,公共の利害に関し,専ら公益を図る目的に出たものであることは明らかである。 (原告の主張)ア被告が産廃不法投棄発言及び農地法違反発言において摘示した事実が,公共の利害に関する事柄であることは争わないが,被告が専ら公益を図ってこれらの発言をしたかについては,否定すべきである。 イ原告は,従前,H市議会において,被告の関与するH市との公共事業,第三セクター問題について様々な問題提起を行ってきた。これは,被告にとって見れば,「恫喝」と受け取られるほどの鋭い舌鋒であった。 被告にとって,原告の問題提起は自己のプライバシーを暴く違法行為として映っていたものであることは,被告が第1回目の記者会見に先立ってH市議会に提出した「申立書」に,産業廃棄物の不法投棄問題と並んで,原告の議会内での発言について問責しようとする内容が記載されていることからも明らかである。 また,被告は,第1回記者会見に先立ちH市議会議長に対して,原告を除名せよと申し入れている。 被告は,農地法違反の問題につい について問責しようとする内容が記載されていることからも明らかである。 また,被告は,第1回記者会見に先立ちH市議会議長に対して,原告を除名せよと申し入れている。 被告は,農地法違反の問題についても,産業廃棄物不法投棄の問題についても,原告に対して直接抗議したり,是正を求めることを行っていない。被告は,このような行動を一切とることなく,市議会議員選挙を間近に控える時期を狙って記者会見を行い,原告の名誉を毀損し原告を遵法精神のない人間として描き出し,選挙を通じて政治生命を絶とうとした企図と推認せざるを得ない。 ウこのように,被告は,専ら議員の資質を選挙において問うという公益を図る目的ではなく,専ら,原告の政治生命を絶ち,自己に関わる事柄について議会内で追及している原告の政治生命を絶つことを目的として,産廃不法投棄発言及び農地法違反発言をしたものである。 (2) 争点2…産廃不法投棄発言の真実性・相当性(被告の主張)ア以下に述べるとおり,原告は,産業廃棄物が本件ゴルフ練習場付近の土地に不法に投棄されたのを黙認し,むしろ,原告自身が,あえて業者に産業廃棄物の投棄を勧めていたものであって,被告の産廃不法投棄発言は真実である。 ① 青森県当局の現地調査により,平成14年12月25日,本件ゴルフ練習場東側法面になっている1-76土地からコンクリート塊が発見されたことは事実である。 ② 平成4,5年ころ,本件ゴルフ練習場設置工事に携わった者は,当時の工事中に産廃等のゴミを一切確認していない。にもかかわらず,1-76土地からコンクリート塊が発見されたということは,原告が1-76土地を取得した平成4年4月25日以降にコンクリート塊が投棄されたとしか考えられない。 ③ 原告は,平成5,6年ころ,A株式会社の専務取締役であったBに対して,当時57 ということは,原告が1-76土地を取得した平成4年4月25日以降にコンクリート塊が投棄されたとしか考えられない。 ③ 原告は,平成5,6年ころ,A株式会社の専務取締役であったBに対して,当時57-2土地とそれに隣接する土地の一部に,同人が2トントラック2台分の廃材等を投棄するのを了承し,同人を投棄場所まで案内している。 また,1-76土地にトラックで産業廃棄物を捨てる場合,付近の土地の状況上,本件ゴルフ練習場東側法面に接する農道を通って下から投棄することは困難であって,本件ゴルフ練習場側から投棄するしかない。 そうすると,1-76土地にある産業廃棄物は,原告が同土地を取得した平成4年以降に,原告の関与,指示のもとになされたものであることは明らかである。 ④ 平成8年ころ,本件ゴルフ場東側に大量の産業廃棄物が投棄され,ゴミが飛び散ったり,廃材が火事になったりした。また,このころ,本件ゴルフ練習場に産業廃棄物が捨てられ,その上から土がかけられる工事が行われていた。 原告は,一貫して本件ゴルフ練習場の設営に関わってきたものであるところ,産業廃棄物が自己所有地に捨てられていたとすれば,工事業者から当然その報告も受けるであろうし,また,現地を全く見分しないとも考えられないので,原告は産業廃棄物が投棄されていたことを十分に認識していたはずである。 にもかかわらず,原告は,市議会議員という立場にありながら,産業廃棄物の投棄について全く問題とせず,何らの処置も施さず,かえって,投棄された産業廃棄物の上から土をかけているものであるから,少なくとも,原告は,何者かが産業廃棄物を投棄するのを黙認していたというべきである。 イ被告は,平成10年ころから,本件ゴルフ練習場の法面が崩落する危険があるとの苦情を受けていた。そこで,産廃不法投棄発言の約7か月 は,何者かが産業廃棄物を投棄するのを黙認していたというべきである。 イ被告は,平成10年ころから,本件ゴルフ練習場の法面が崩落する危険があるとの苦情を受けていた。そこで,産廃不法投棄発言の約7か月半前,被告が中心となって現地調査に赴いたところ,コンクリート塊が発見された。 加えて,被告は,ゴルフ練習場付近の住民や,本件ゴルフ練習場所在地の元町会長から,原告が,1-76土地取得後何年にもわたって,もともと原告所有地であった土地の方から大量のゴミを運んでは捨て,上からさらに土を被せていったことを聞いていたものである。 そうすると,原告が,産業廃棄物の不法投棄に関わっていたことを信ずるにつき相当の理由もある。 (原告の主張)ア被告の産廃不法投棄発言は,以下のとおり真実ではない。 ① 原告が,真実,産業廃棄物を不法投棄した,ないし不法投棄に関与したのであれば,遅くとも,被告が行政当局に通報し,当局の調査が入った平成14年12月以後に,原告が告発されたり,原告に対して何らかの命令が出されたりする事態に至っているはずである。 しかしながら,現実には告発もなされていないし,命令も出されていないが,これは,当局によっても原告の関与は認定されていないことを現している。この一事をもっても,真実性の証明はなされていない。 ② 平成14年12月になされた青森県当局による現地調査は,原告の申出によりなされたものである。これは,原告が産業廃棄物の不法投棄をしていないという絶対的自信のもとになされたものであり,少しでも原告にやましいところがなければ,そのような申出をするはずがない。 ③ C工業という名称で土木工事業,住宅基礎工事業,解体工事業を営んでいたCは,原告が1-76土地を取得する前である平成3年秋に,台風19号によって被害を受けた家屋の解体を依頼され, るはずがない。 ③ C工業という名称で土木工事業,住宅基礎工事業,解体工事業を営んでいたCは,原告が1-76土地を取得する前である平成3年秋に,台風19号によって被害を受けた家屋の解体を依頼され,解体工事によって出たコンクリート製基礎の廃材を2トントラックで2台分,1-76土地に無断で投棄した。同人が投棄したときには,すでに同じ場所に別の者によってコンクリート塊等が投棄されていた。 しかも,同人は,ゴルフ練習場の造成が始まった後にも,原告に無断で,1か月くらいの間に2トントラック15台分の,産業廃棄物が混じった土砂を法面の上から土砂とともに投棄していた。 いずれも,原告とは無関係になされたことである。 ④ 被告が依拠するBの供述は,その内容自体不合理であり,しかも客観的な裏付けもないものであって,信用性に欠ける。 イまた,以下のとおり,被告において,原告が産業廃棄物の不法投棄に関わっていたと信ずるに足りる相当の理由もない。 ① 原告が1-76土地を取得するまでに,土地所有権は転々と移転しており,その間の管理は極めてずさんであったと考えられ,また,同土地はゴルフ練習場管理者の目の届かない場所であるから,コンクリート塊などを投棄した可能性のある者は無数に存在している。よって,コンクリート塊が存在するという一事をもって,その投棄者を現所有者である原告であるという結論を導くのは不可能である。 ② 被告は,産廃不法投棄発言の約7か月半前に,本件ゴルフ練習場において産業廃棄物を現認したとするが,平成14年12月6日及び同月9日になされた青森県当局の現地調査の結果は,産業廃棄物が不法投棄されているという事実が確認できなかったというものであるから,真実,被告が産業廃棄物を現認したかは疑わしい。また,前記のような調査結果からすれば,同月25日に本件 調査の結果は,産業廃棄物が不法投棄されているという事実が確認できなかったというものであるから,真実,被告が産業廃棄物を現認したかは疑わしい。また,前記のような調査結果からすれば,同月25日に本件ゴルフ練習場から発見された産業廃棄物は,何者かによって置かれたものである可能性は否定できない。 ③ 被告は,Dや周辺住民から情報を得たとする。 しかし,まず,Dは,原告から産業廃棄物を自己所有地に投棄していることを通報されたことで,原告に対して一種の恨みをもっており,また,同人は,原告に対抗してH市議会議員に立候補しようとしていたものであるから,そのような者の供述については,詳細な聴き取りをしたり,その信用性を疑って裏付け調査を行うべきものであるところ,被告はそのようなことをしていない。また,同人の供述は伝聞ないし推測によるところが大きい。 また,被告がEとFから事情を聞いたのは,産廃不法投棄発言の後であるから,両名の供述は,被告において原告の不法投棄を真実であると信ずるに足りる相当な理由の基礎にはならない。 また,被告が事情を聞いた周辺住民のうち,氏名が判明しているのは,前記のようにその供述の信用性に疑問があるDだけである。 (3) 争点3…農地法違反発言の真実性・相当性(被告の主張)ア以下に述べるとおり,原告が,農地法4条の許可を受けずに農地を転用して本件ゴルフ場を建設していること,それが農地法の脱法行為であることは真実である。 ① 原告は,57-2土地についてのみ農地転用の許可を得ており,57-1,57-3の各土地については転用許可を得ていない。 ところが,57-1土地上にはゴルフ練習場のグリーンがあり,練習場建物の一部もかかっている。57-3土地には,本件ゴルフ練習場の客が駐車場まで通行するために設置された,中央分離帯のある舗装 ない。 ところが,57-1土地上にはゴルフ練習場のグリーンがあり,練習場建物の一部もかかっている。57-3土地には,本件ゴルフ練習場の客が駐車場まで通行するために設置された,中央分離帯のある舗装道路が設置されている。1-76土地の一部もゴルフ練習場となっている。 ② 平成8年当時,2万㎡を超える農地の転用許可には農林水産大臣の許可が必要であった。 57-1ないし3の土地はもともと1筆の農地であったが,原告は,これを3つに分筆して,都道府県知事の許可だけで足りる57-2の土地(1万9243㎡)についてのみ転用許可を受けている。 ③ 原告は,農地転用許可申請以前からすでにゴルフ練習場造成工事に事前着工し,転用許可申請の時点では,本件ゴルフ練習場の一部の土地についてのみ転用許可申請をしていることを十分に認識していた。 そうすると,原告は,事前に一筆の農地を分筆し,農林水産大臣許可ではなく都道府県知事許可で足りる状況を作出し,その1筆の土地のみについて許可申請しているのであって,このような行為は意図的な行政法規の潜脱であって,法律に対する姿勢を問われる市議会議員としてあるまじき所為であり,「脱法行為」であることは明らかである。 イまた,前記ア①ないし③記載の事実によれば,被告において,原告が,農地法4条の許可を受けずに農地を転用して本件ゴルフ場を建設していること,それが農地法の脱法行為であると信じたことについて相当の理由があることも明らかである。 (原告の主張)ア転用許可を受けていない57-1,57-3,1-76の各土地を本件ゴルフ練習場用地として使用していることは事実であり,原告の行為は客観的には行政法規に反しているが,これを,意図的に適法行為であるかのような形式を装って社会を欺く行為という意味を持つ「脱法行為」と摘示することは,事 として使用していることは事実であり,原告の行為は客観的には行政法規に反しているが,これを,意図的に適法行為であるかのような形式を装って社会を欺く行為という意味を持つ「脱法行為」と摘示することは,事実に反する。 イ本件ゴルフ練習場用地として用いられている土地を合計しても2万㎡未満であるので,もともと農林水産大臣の許可は必要なく,原告には,あえて違法行為を行う必要性はなかった。 にもかかわらず,被告は,原告の手続上の過誤を,真実に反して,また,登記簿謄本や国土調査図面を調査すれば手続上の過誤であることが容易に判明するにもかかわらず,あえて「脱法行為」と摘示しているものである。 (4) 争点4…原告の損害及び謝罪広告の必要性(原告の主張)ア被告は,原告の市議会議員としての社会的評価の毀損を積極的に企図して,産廃不法投棄発言,農地法違反発言に及んだものである。 これらの被告の名誉毀損行為により原告が被った精神的苦痛を含む無形の損害に対する賠償としては,1回の名誉毀損行為につき500万円,合計1000万円が相当である。 イまた,原告の名誉を回復するためには,損害に対する金銭賠償に加えて,被告が名誉毀損行為の手段として悪用した新聞紙上に謝罪広告を掲載させる必要がある。 (被告の主張)アいずれも否認し,争う。 イ原告は,平成15年4月のH市議会議員選挙においては上位当選を果たしており,原告の社会的評価は低下していない。 第3 争点に対する判断 1 争点1(被告による産廃不法投棄発言及び農地法違反発言が専ら公益を図る目的に出たものか否か)について(1) 被告による産廃不法投棄発言及び農地法違反発言は,その発言自体から,原告が,産業廃棄物の不法投棄に関与し,ないし,農地転用許可申請について脱法行為を行ったという印象を与えるものであって,い (1) 被告による産廃不法投棄発言及び農地法違反発言は,その発言自体から,原告が,産業廃棄物の不法投棄に関与し,ないし,農地転用許可申請について脱法行為を行ったという印象を与えるものであって,いずれも,原告の社会的評価を低下させるものである。 しかしながら,民事上の不法行為たる名誉棄損については,その行為が公共の利害に関する事実に係りもっぱら公益を図る目的に出た場合には,摘示された事実が真実であることが証明されたときは,この行為には違法性がなく,不法行為は成立しないものと解するのが相当であり,もし,この事実が真実であることが証明されなくても,その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには,この行為には故意もしくは過失がなく,結局,不法行為は成立しないものと解するのが相当である(最判昭和41年6月23日民集20巻5号1118頁)。 (2) これを本件について検討すると,まず,被告が記者会見において摘示する事実が公共の利害に関わる事実であることは,当事者間に争いがない。 (3) しかも,被告の発言内容を斟酌すれば,被告による発言は,このような公共の利害に関わる事実を公表し,その是正を求めるとともに,H市議会議員選挙の有権者に対して,市議会議員の資質についての疑問を呈示しようとするものであるから,専ら公益を図る目的に出たものであることも認めることができる。 (4) これに対し,原告は,前記争点1(原告の主張)欄記載のとおり,被告による発言は,専ら公益を図る目的に出たものではないと主張する。 しかしながら,市議会において,原告が被告に関する様々な問題提起を行ってきた経緯があることや,被告作成の申立書にそのような内容の記載があることが,直ちに,被告に公益目的がなかったことを推認させるものではないし,市議会議員に不正の 告が被告に関する様々な問題提起を行ってきた経緯があることや,被告作成の申立書にそのような内容の記載があることが,直ちに,被告に公益目的がなかったことを推認させるものではないし,市議会議員に不正の行為があると考えた者が,市議会議長に対してその是正を求めたり,除名を求めたことについても,特段の問題点を見出すことはできない。 したがって,被告による発言が市議会議員選挙の前になされていることを考慮したとしても,前記判断を左右するとは解されない。 (5) 以上によれば,原告の前記主張は理由がない。 2 本件ゴルフ練習場建設の経緯等について(1)被告による産廃不法投棄発言及び農地法違反発言において摘示された事実が真実であるか,又は,被告においてこれらの事実を真実と信ずるについて相当の理由があるかどうかを判断する前提として,まず,被告による本件ゴルフ練習場建設の経緯及び産業廃棄物の存否に関する事実を認定することとする。 (2) 前記(争いのない事実等)欄記載の各事実及び証拠によれば,以下の事実が認められる。 ア原告が相続によって取得したH市大字a字b57番の土地(地目・畑)は,取得当時,南西側から東側に向かっての下り斜面になっており,原告は,同土地でりんごと栗を栽培していた。同土地は,東側に1-76土地が食い込んだ形状をしている。 イ原告は,57土地の南西に隣接する土地を取得したことから57土地の斜面の土を切り取って谷側に押し出して平坦にし,農作業を容易にするとともにりんごと栗の樹種を変更することを考えていた。 しかしながら,原告は,平成4年4月ころまでには,平坦にした土地で農業を行うのではなく,ゴルフ練習場を建設することを考えるに至った。 ウそこで,原告は,同月27日,株式会社G(代表取締役・L(原告の妻))の名義で,ほぼ分筆後の57-2 までには,平坦にした土地で農業を行うのではなく,ゴルフ練習場を建設することを考えるに至った。 ウそこで,原告は,同月27日,株式会社G(代表取締役・L(原告の妻))の名義で,ほぼ分筆後の57-2土地に相当する部分(1万9486㎡)について,H市長に対し,農業振興地域整備計画を変更して,農用地区域内から除外することを申請し,同年10月23日,変更が認可された。 エこれと並行して,原告は,同年4月ころ,株式会社Iに,57土地を平坦にするための工事を依頼した。Iは,南西側の土を切り崩して北東側に押し出し,斜面を平坦にする工事をおこなった。 Iは平成5年7月ころまでに工事を終了したが,同工事の結果,分筆後の57-1,57-2土地に相当する部分が概ね平坦にされ,1-76土地との境界付近まで造成が行われた。 この工事をしている間,Iでは,1-76土地に産業廃棄物が投棄されていることを確認していない。 オ原告は,平成4年4月24日,57土地に隣接する1-76土地を取得したが,同土地を購入する前に現地を見た際に,産業廃棄物の存在を確認していない。 カ Iによる造成工事が終わったものの,造成工事にやり残しがあった上に,造成工事の結果東側にできた斜面が崩落するおそれがあったため,原告は,平成五,六年ころ,株式会社Jに,Iがやり残した造成工事と東側斜面の崩落防止のための応急工事を依頼した。 Jが工事をしている間,Jでは,1-76土地に産業廃棄物が投棄されていることを確認していない。 キところが,それでも崩落の危険性があったため,原告は,平成7年6月ころ,別の業者に造成地の手直し工事を依頼し,東側斜面の崩落防止工事をした。 このころまでに,原告が平成4年に取得した1-76土地についても,57土地と同様の造成工事が行われ,ほぼ現状の地形となった。 ク 別の業者に造成地の手直し工事を依頼し,東側斜面の崩落防止工事をした。 このころまでに,原告が平成4年に取得した1-76土地についても,57土地と同様の造成工事が行われ,ほぼ現状の地形となった。 ク原告は,K測量士作成の図面に基づき,平成8年5月14日,57土地を57-1ないし3の3筆に分筆する登記を行い,これと前後して,同月2日,青森県知事に対し,57-2土地(1万9243㎡)について,農地法4条に基づく農地転用許可申請を行った。原告が転用許可申請の際に添付した土地利用計画平面図によれば,ゴルフ練習場は,概ね,57-2土地上に作られることとされていた。 原告の申請に対し,青森県知事は,同年6月19日,転用を許可する処分を行った。許可申請の過程で,原告は,転用許可を受ける前に造成工事に着手したことについての違法性を指摘され,H市農業委員会と青森県知事に宛てて,今後は農地法を遵守する旨の始末書を提出した。 ケ本件ゴルフ練習場は,平成8年から営業を開始した。 完成した本件ゴルフ場の形状は,57-2土地の西側境界付近の法面上部に防護ネットが設置され,打球が落下する平坦部分は,57-2土地,57-1土地,1-76土地上にまたがっている。また,57-1土地と1-76土地上には防護ネットが設置され,同ネットから各土地の東側境界までは,境界の方に向かって下る法面になっている。本件ゴルフ場の西側及び東側の各法面には,農地としての利用実態はない。また,57-3土地の一部は,本件ゴルフ練習場の駐車場に進入するための道路として利用されている。 コ 57-1土地と1-76土地の東側境界に沿って自動車1台が通れる程度の幅員の農道が設けられており,この農道を挟んで57-1土地に対面する土地(地番227-71)は山林として,1-76土地に対面する土地はりんご畑 1-76土地の東側境界に沿って自動車1台が通れる程度の幅員の農道が設けられており,この農道を挟んで57-1土地に対面する土地(地番227-71)は山林として,1-76土地に対面する土地はりんご畑(地番1-38)及び山林(地番1-37)として利用されている。 サ平成6年ころから,1-76土地に,ビニールパイプやトタンをはじめとする廃棄物が投棄されていることや,投棄された廃棄物の上に土砂がかけられているのが,本件ゴルフ練習場の周辺住民に目撃されるようになった。また,平成8年夏ころには,同土地に投棄されていた廃棄物から火災が発生することがあった。 平成14年4月26日,被告が本件ゴルフ練習場付近の現状を見に行った際,本件ゴルフ場の東側法面下部に,複数の産業廃棄物であるコンクリート塊が落ちているのを確認し,登記簿謄本や図面を取り寄せて検討したところ,産業廃棄物が存在していたのは原告が所有する1-76土地であることが判明した。 シ青森県環境生活部環境政策課とH環境管理事務所は,本件ゴルフ練習場に産業廃棄物が投棄されているという通報を受けて,同年12月9日及び同月10日の2回にわたり現地調査をしたが,通報の事実は確認されなかった。その後,被告の産廃不法投棄発言を受け,原告が,産業廃棄物投棄の事実について調査依頼書を提出したため,青森県環境生活部環境政策課とH環境管理事務所は,同月25日,本件ゴルフ練習場東側法面である1-76土地の掘さくを行った。その結果,3箇所の掘さく現場において,コンクリート塊,アスファルト塊,塩化ビニール製パイプなどの産業廃棄物が,幅約43.5mの範囲で存在されているのが確認された。 また,平成15年7月24日,当裁判所が本件ゴルフ練習場の検証をした際にも,1-76土地付近の法面下部にコンクリート塊や塩化ビニール製パ 物が,幅約43.5mの範囲で存在されているのが確認された。 また,平成15年7月24日,当裁判所が本件ゴルフ練習場の検証をした際にも,1-76土地付近の法面下部にコンクリート塊や塩化ビニール製パイプが存在していた。 (3) なお,Cは,原告が1-76土地を取得する前である平成3年秋ころに,台風19号により壊れた小屋の解体撤去作業により生じたコンクリート塊などを,原告に無断で,1-76土地に投棄したと供述し,同人の陳述書には,自分が投棄する前に,既に別の者も同土地に廃棄物を投棄していた旨の記載がある。 しかしながら,これらの供述等は,IやJが確認した事実と異なるばかりか,1-76土地を購入する前に見に行ったときに産業廃棄物が存在していなかったという原告自身の供述とも異なっている。しかも,同人の陳述書には,「H市は,平成3年12月にa大溜池に廃棄物を投棄することを許可したので,その許可の後であれば,廃棄物をa大溜池に捨てていると思う。」との記載があるが,H市がa大溜池に廃棄物の投棄を許可した事実はない。 そうすると,Cの前記供述を採用することはできないし,原告が1-76土地を取得する前には,同土地に産業廃棄物は存在していなかったものと認めるのが相当である。 (4)また,原告は,被告が平成14年4月26日に産業廃棄物を現認したということはなく,また,青森県環境生活部環境生活課などが行った掘さくの際に発見された廃棄物は何者かが直前になって現地に置いた可能性があると主張する。 しかしながら,平成14年4月26日の時点で産業廃棄物が存在していたのは写真から明らかであるし,また,青森県環境生活部環境生活課などが行った掘さくに近接した時期に何者かが土地を掘さくして廃棄物を埋めたのであれば,当然,事前に掘さくされた部分の植生が他の部分と異なった 写真から明らかであるし,また,青森県環境生活部環境生活課などが行った掘さくに近接した時期に何者かが土地を掘さくして廃棄物を埋めたのであれば,当然,事前に掘さくされた部分の植生が他の部分と異なったり,廃棄物が不自然な埋まり方をしているなど,一見して何者かの作為を窺わせる形跡が残ると考えられるが,掘さく時の写真を見ても,そのような形跡は見当たらない。また,掘さくに先立って行われた「現地調査」というのも,どの土地をどのように調査したかまでは明らかではなく,その時点で全く産業廃棄物が存在しなかったことを裏付けるものではない。 よって,原告の主張は採用することができず,前記認定事実によれば,産業廃棄物は,遅くとも平成6年ころから存在していたものと認められる。 3 争点2(産廃不法投棄発言の真実性・相当性)について(1) 証拠によれば,被告が産廃不法投棄発言をするに至るまでの経緯として,以下の事実が認められる。 ア被告は,平成8年ころから,本件ゴルフ練習場の周辺住民から,本件ゴルフ場に産業廃棄物が投棄されているという話を聞いていたが,平成10年11月,H商工会議所会頭に就任した際の懇親会の席上で,Dから,本件ゴルフ練習場に民間の土地としてはこの周辺では最大規模の産業廃棄物が捨てられているという話を聞いた。 イ被告は,平成14年4月26日,自ら本件ゴルフ場付近を見に行ったが,その際,本件ゴルフ練習場の東側法面下部に,複数の産業廃棄物であるコンクリート塊が落ちているのを確認し,登記簿謄本や図面を取り寄せて検討したところ,産業廃棄物が存在していたのは原告が所有する1-76土地であることが判明したことは前記認定のとおりである。 ウまた,被告が,本件ゴルフ練習場の工事を担当したIとJから事情を聞いたところ,両社が工事を担当しているときには産業廃棄物 が所有する1-76土地であることが判明したことは前記認定のとおりである。 ウまた,被告が,本件ゴルフ練習場の工事を担当したIとJから事情を聞いたところ,両社が工事を担当しているときには産業廃棄物は存在していなかったということだったので,被告は,原告が1-76土地を取得した後になって,同土地に産業廃棄物が投棄されたものと考えた。 エ Dは,その所有する農地に産業廃棄物が投棄されていたことを原告に通報され,そのため,関係機関の指導を受けることがあり,必ずしも原告を快くは思っていなかった。 オ被告は,これらの情報,その他の客観的事実を基に,原告が本件ゴルフ練習場に産業廃棄物を不法投棄している,ないし,原告が本件ゴルフ練習場への産業廃棄物の不法投棄を承諾ないし黙認していると判断し,平成14年12月13日,産廃不法投棄発言を行った。 (2)なお,産廃不法投棄発言以前に,被告に対し,本件ゴルフ練習場に産業廃棄物があるという話をしていた者のうち,名前が判明しているのはDであるところ,同人は原告に対して必ずしもよい感情を抱いていないと認められるから,被告においても,それらの供述の信用性は慎重に吟味すべきものであると考えられる。 しかしながら,被告による産廃不法投棄発言の後に,Fが自発的に名乗り出たことやその供述内容からすれば,本件ゴルフ練習場が存在する地区の住民は,少なからず本件ゴルフ練習場に産業廃棄物が投棄されていることを知っており,被告も,産廃不法投棄発言以前に,D以外の付近住民からも情報を入手していたと推認することができる。しかも,被告は,本件ゴルフ練習場に産業廃棄物が現存していることも確認していることからすれば,被告が,Dの供述のみに安易に依拠して産廃不法投棄発言を行った訳ではないと認められる。 (3) そうすると,ア 1-76土地に ルフ練習場に産業廃棄物が現存していることも確認していることからすれば,被告が,Dの供述のみに安易に依拠して産廃不法投棄発言を行った訳ではないと認められる。 (3) そうすると,ア 1-76土地に産業廃棄物が投棄されていること,この産業廃棄物が,原告が同土地を取得した以降である,平成6年ころから投棄されていたことは真実であり,そのことは,Dその他周辺住民や工事業者から聴取したり,自身で現場を見に行くなどして,被告も認識していたこと,イ現場の状況からして,1-76土地の法面下部に通じる細い農道を通って,同農道から廃棄物を投棄することは一般的には困難であると考えられるから(原告自身,陳述書に,「(青森県が本件ゴルフ練習場の掘さくを行った)時には,今のように広い道路がなく重機が入れなかったので私の法を削って重機を入れた。」と記載しており,農道が狭いことを認めている。),廃棄物は,本件ゴルフ練習場になっている法面上部から投棄されたと考えるのが合理的であること,ウ法面上部の土地は,所有者に無断で産業廃棄物が投棄されてもわからないような人気のない場所ではなくて,現に原告が本件ゴルフ練習場を建設していた土地であるから,ここに立ち入るためには原告の承諾ないし黙認があると考えるのが合理的であること,エ産業廃棄物は平成6年ころから長期にわたり存在しており,しかも,土地所有者であり,かつ,法令の遵守を強く求められる市議会議員であって,他人の産業廃棄物の不法投棄などについて関係各所に通報するなどしていた原告が全くそれに気づかなかったとは考えにくいこと,からすれば,産廃不法投棄発言の時点において,被告が,原告の積極的な関与ないし黙認の下に,1-76土地に違法に産業廃棄物が投棄された事実を真実と信じるについては相当な理由があると認められる。 (4) らすれば,産廃不法投棄発言の時点において,被告が,原告の積極的な関与ないし黙認の下に,1-76土地に違法に産業廃棄物が投棄された事実を真実と信じるについては相当な理由があると認められる。 (4)よって,その余の点について判断するまでもなく,被告の産廃不法投棄発言は,原告に対する不法行為を構成しない。 4 争点3(農地法違反発言の真実性・相当性)について(1) 前記2(2)認定の事実によれば,本件ゴルフ場建設により,現に農地から非農地に転用されている部分は,57-1土地と57-2土地のほぼ全部と57-3土地の一部であって,原告は,57-2土地以外の土地について農地転用許可を受けないまま,農地を非農地に転用したことになる。また,57-2土地の面積が1万9243㎡であることを考えると,非農地に転用されている部分の面積の合計が2万㎡を超えることは明らかであるところ,平成8年当時,2ha(2万㎡)を超える農地を非農地に転用する場合には,農林水産大臣の許可を受けなければならないとされていたにもかかわらず,原告は,都道府県知事に対する許可申請しか行っていない。 そうすると,被告が農地法違反発言において摘示する,原告が,農地法に違反して転用許可申請が必要な57-1土地と57-3土地について許可申請を行っていない事実,本来であれば農林水産大臣の許可を得るべき農地転用であるにもかかわらずこれを行っていない事実は,いずれも真実であると認めることができる。 (2) ところで,原告が問題にする「脱法行為」という表現は,それ自体が何らかの事実を摘示するものではなく,前記のような農地法違反の事実を基礎としての意見,論評の表明にあたるものであるが,ある真実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ, 前記のような農地法違反の事実を基礎としての意見,論評の表明にあたるものであるが,ある真実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,この意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには,人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り,この行為は違法性を欠くものというべきである(最判昭和62年4月24日民集41巻3号490頁)。 これを本件についてみるに,真実であると認められる原告による農地法違反の事実を前提にして,原告の行為を農地法の脱法行為であると論評することは,未だ,論評の域を逸脱するものではないと認められる。 そうすると,被告が脱法行為であると述べた点については,そもそも違法性を欠くというべきである。 (3) のみならず,原告は,本件ゴルフ練習場について,57-2土地だけにゴルフ練習場を建設する旨の図面を添付して転用許可申請を行っておきながら,実際には,図面と大きく異なって,57-1土地や1-76土地にまたがってゴルフ練習場を建設しているところ,57-1土地のほとんどが農地ではなくゴルフ練習場用地として利用されていることや,57-2土地と境界を接しない1-76土地にまでまたがってゴルフ練習場が建設されていることは航空写真と対照するまでもなく一目瞭然であるから,許可申請の際に添付した図面とは大きく異なるゴルフ練習場を建設していることについて原告の認識に欠けるところはなかったと認められる。 また,原告は,本人尋問において,農地として残すことを予定した土地と本件ゴルフ練習場を建設する用地に分けて分筆を行ったと供述するが,57-3土地はともかく,分筆手続を行った平成 たと認められる。 また,原告は,本人尋問において,農地として残すことを予定した土地と本件ゴルフ練習場を建設する用地に分けて分筆を行ったと供述するが,57-3土地はともかく,分筆手続を行った平成8年当時において,少なくとも,57-1土地に農地としての利用実態があったとか,農地としての利用予定があったとは認め難い(平成8年当時,57-1土地に農地としての利用実態ないし利用予定があれば,ゴルフ練習場が同土地にまたがった形で建設されるとは考えられない。)。しかも,ある土地が農業振興地域内の農用地に指定されている場合,原則として農地の転用は許可されない(農地法4条2項1号イ)が,57-1土地については,平成7年4月11日に農業振興地域内の農用地から除外されているので,同土地についても,必要であれば転用許可申請を行うことは可能である。 そうすると,結局のところ,平成8年の転用許可申請の時点で,原告が57土地を57-1ないし3に分筆し,57-2土地についてのみ転用許可申請をする合理的理由は見当たらない。 そして,これらの事実も併せ考慮すれば,本件ゴルフ練習場を建設するためには,少なくとも57-1土地についても転用許可申請をする必要があり,原告も,この必要性を十分に認識することができたにもかかわらず,農林水産大臣の許可申請にかかる手続を回避する意図の下に,57土地を3筆に分筆し,実際に建設されるゴルフ場とは異なる図面を添付して,57-2土地についてのみ,都道府県知事に対して転用許可申請を行ったといわざるを得ず,このような原告の行為は非常に悪質な農地法の脱法行為であると評価せざるを得ない。 (4)なお,原告は,甲第34号証の図面を根拠に,現に,農地から非農地に転用されている部分は約1万7827㎡であるから,もともと農林水産大臣による許可は必要 脱法行為であると評価せざるを得ない。 (4)なお,原告は,甲第34号証の図面を根拠に,現に,農地から非農地に転用されている部分は約1万7827㎡であるから,もともと農林水産大臣による許可は必要なく,単なる手続上の過誤であって脱法行為と評価されるものではないと主張する。 しかしながら,許可権者において,農地転用及びその前提となる農用地除外申請の許否を検討するにあたっては,転用が周囲の農地に及ぼす影響などを検討する必要があるところ,その検討のためには転用が予定されている土地の範囲をできるだけ正確に把握することが不可欠である。そうすると,転用許可申請の際には,転用を予定している土地を正確に申請する必要があり,それをしなかったことを単なる手続上の過誤と評価するのは相当でない。しかも,甲第34号証の図面は,本件ゴルフ練習場の平坦部分の面積だけを求めているところ,ゴルフ練習場の営業と不可分の関係にあって,現に非農地になっている部分は,西側でいうと法面上部の防護ネットの部分まで,東側でいうと法面の下部までと認められるので,原告の主張はその前提においても誤りである。 (5) よって,被告の農地法違反発言は,原告に対する不法行為を構成しない。 第4 結論よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから棄却する。 青森地方裁判所弘前支部裁判官加藤靖裁判長裁判官土田昭彦,裁判官佐藤哲治は転補につき署名押印できない。 裁判官加藤靖(別紙)略

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