平成30(行コ)262 国籍存在確認請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成31年4月17日 東京高等裁判所
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判決文本文5,093 文字)

平成31年4月17日判決言渡し平成30年(行コ)第262号国籍存在確認請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成29年(行ウ)第294号) 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 控訴人が日本国籍を有することを確認する。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,コロンビア共和国(以下「コロンビア」という。)の国籍を有する母の子として出生した控訴人が,日本国民である男性からコロンビアにおいて認知を受けたとして,法務大臣に対して,国籍法の一部を改正する法律(平成20年法律第88号。以下「平成20年改正法」といい,この法律による国籍法の改正を附則4条1項の規定による国籍取得の届出をしたところ,国籍取得の条件を備えておらず,日本国籍を取得していないものとされたことから,日本国籍を有することの確認を求める事案である。 原審が,平成30年7月24日,控訴人が認知を行った日本国民である男性と血縁上父子関係にないこと等を理由として控訴人の請求を棄却する判決(以下「原判決」という。)をしたところ,控訴人がこれを不服として控訴を提起した。 2 関係法令の定め,平成20年改正に至る経緯等及び前提事実関係法令の定め,平成20年改正に至る経緯等及び前提事実は,原判決2頁6行目の各「別紙」をいずれも「原判決別紙」と改めるほかは,原判決の「事 実及び理由」の第2の1ないし3のとおりであるから,これを引用する。 3 争点及び当事者の主張(1) 争点及び当事者の主張は,下記(2)のとおり当審における控訴人の主張について付加するほか,原判決「事実及び理由」の第2の4に記載のとおりであるから, 引用する。 3 争点及び当事者の主張(1) 争点及び当事者の主張は,下記(2)のとおり当審における控訴人の主張について付加するほか,原判決「事実及び理由」の第2の4に記載のとおりであるから,これを引用する。 (2) 当審における控訴人の主張ア国籍法3条1項の解釈について(ア) 国籍取得者の範囲を国籍法に委ねるとした憲法10条の趣旨によれば,国籍法は,国家の構成員の範囲を定める国家存立の基本に関する公法であるから,その解釈に当たっては,拡張解釈や類推解釈を極力避けることが要請され,国籍法3条1項の「認知」との文言についても,私法規定の適用のみによっては不平等・不合理となる場合に限って拡張解釈や類推解釈が許されるべきであり,原判決のように,国籍法が我が国の構成員としての資格という国家の根幹に関する事項を規律していることを重視し,公法上のなされるべき解釈を仮定して,その解釈に沿うような私法の解釈と異なる目的論的解釈を行うことは憲法10条の趣旨に反する。 (イ) 国籍法3条1項の認知について,父子間の血縁関係を絶対的な要件として設けるのであれば,法律の制定の際にその旨を文言上付加したはずであり,そのような要件が加重されていない上,私法上の概念によっても特段の不平等・不合理となることもないにもかかわらず,生物学上の父子関係が存することとの要件を付加することは許されない。 イ本件認知の効力(ア) 認知の有効・無効については,私法上の規定の適用により判断されるべきであり,公法上の解釈の必要性を持ち出して,個別事情を一切考慮せず,血縁関係がなければ当事者間でも認知は無効であると判断する のは相当ではない。また,認知という一つの身分行為について,私法の適用上,国家に対して無効を主張することができなくなってい せず,血縁関係がなければ当事者間でも認知は無効であると判断する のは相当ではない。また,認知という一つの身分行為について,私法の適用上,国家に対して無効を主張することができなくなっているにもかかわらず,当事者間では無効とすることは無意味である上,法律関係の確定は煩雑になり,法的不安定な状態となって,混乱を呼ぶことになってしまう。 (イ) コロンビアで行われた本件認知の私法上の効力は,法適用通則法の解釈の問題となるところ,血縁関係のない父の認知については,同法42条の適用を受けるかが問題となる。そして,血縁関係のない父による認知は,我が国においても利害関係人による訴えを待たずに絶対的に無効となるわけではないことからすると,それは公の秩序に反しているとまではいえず,国籍取得のための仮装認知の場合に限って公序の問題となって法適用通則法42条が適用され,それ以外の場合,すなわち,認知が家族関係の構築を目的としてされた場合には,公序の問題とならず,同条は適用されない。そして,本件認知は,控訴人の母がAと婚姻し,日本において夫婦としての生活を構築し,控訴人と弟が本件認知とともにA夫婦と同居を開始して,これまで30年の間,親子として生活してきたものであり,国籍取得のための仮装認知ではない。したがって,本件認知は,法適用通則法42条の適用を受けることはない。 (ウ) 本件認知の有効性は,法適用通則法29条により決せられることとなるが,日本法においてもコロンビア法においても,利害関係人の訴えあるいは異議があって初めて認知が無効となると定めているのであって,本件認知についてはそのような訴えや異議はないのであるから,本件認知は無効とはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求には理由がないからこれを棄却する 定めているのであって,本件認知についてはそのような訴えや異議はないのであるから,本件認知は無効とはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求には理由がないからこれを棄却するのが相当であると判断する。その理由は,下記2のとおり当審における控訴人の主張に対す る判断を加えるほか,原判決の「事実及び理由」の第3記載のとおりであるから,これを引用する。 2 当審における控訴人の主張に対する判断(1) 国籍法3条1項の解釈についてア控訴人は,国籍取得者の範囲を国籍法に委ねるとした憲法10条の趣旨によれば,国籍法は,国家の構成員の範囲を定める国家存立の基本に関する公法であるから,その解釈に当たっては,拡張解釈や類推解釈を極力避けることが要請され,国籍法3条1項の「認知」との文言についても,私法規定の適用のみによっては不平等・不合理となる場合に限って拡張解釈や類推解釈が許されるべきであり,原判決のように,国籍法が我が国の構成員としての資格という国家の根幹に関する事項を規律していることを重視し,公法上のなされるべき解釈を仮定して,その解釈に沿うような私法の解釈と異なる目的論的解釈を行うことは憲法10条の趣旨に反すると主張する。 憲法10条は,「日本国民たる要件は,法律でこれを定める。」と規定し,これを受けて,国籍法は,日本国籍の得喪に関する要件を規定している。憲法10条の規定は,国籍は国家の構成員としての資格であり,国籍の得喪に関する要件を定めるに当たってはそれぞれの国の歴史的事情,伝統,政治的,社会的及び経済的環境等,種々の要因を考慮する必要があることから,これをどのように定めるかについて,立法府の裁量判断に委ねる趣旨のものであると解され(最高裁判所平成20年6月4日大法廷判決・民集62巻6号13 済的環境等,種々の要因を考慮する必要があることから,これをどのように定めるかについて,立法府の裁量判断に委ねる趣旨のものであると解され(最高裁判所平成20年6月4日大法廷判決・民集62巻6号1367頁,最高裁判所平成27年3月10日第三小法廷判決・民集69巻2号265頁),この趣旨によれば,国籍の得喪に関する要件を定める法規については,立法府が考慮した種々の要因を踏まえて解釈適用を行うことが望ましく,それらの法規について形式解釈しか許されないとか,国籍法の適用の前提問題となる身分関係の決定について常に 私法に委ねなければならないとすることはむしろ合理的ではなく,国籍法の趣旨,目的に照らして同法の規定を合目的的に解釈することは許されるというべきであり(上記引用に係る原判決の「事実及び理由」の第3の1(3)),控訴人の主張は採用し得ない。 イ控訴人は,国籍法3条1項の認知について,父子間の血縁関係を絶対的な要件として設けるのであれば,法律の制定の際にその旨を文言上付加したはずであり,そのような要件が加重されていない上,私法上の概念によっても特段の不平等・不合理となることもないにもかかわらず,生物学上の父子関係が存することとの要件を付加することは許されないと主張する。 しかし,上記アのとおり,国籍法の規定について,同法の趣旨や目的に照らして合目的的に解することが許されるのであり,我が国の法体系において,血縁上の父子関係がないにもかかわらずされた認知は,認知制度の本来の趣旨に反するものであって無効であると解されるのであるから,国籍法3条1項が規定する認知について,血縁関係の存在を要件としたものと解することも許されるというべきであり,控訴人の上記主張は採用し得ない。 (2) 本件認知の効力ア上記(1)及び上記引用に係 法3条1項が規定する認知について,血縁関係の存在を要件としたものと解することも許されるというべきであり,控訴人の上記主張は採用し得ない。 (2) 本件認知の効力ア上記(1)及び上記引用に係る原判決の「事実及び理由」の第3の1のとおおり,本件認知は,国籍法3条1項の「認知」に当たらないのであり,その私法上の効力の有無にかかわらず,控訴人の請求は認められないこととなるが,念のため,本件認知の効力についての控訴人の主張についても判断を加えておくこととする。 イ控訴人は,①認知の有効・無効については,私法上の規定の適用により判断されるべきであり,公法上の解釈の必要性を持ち出して,個別事情を一切考慮せず,血縁関係がなければ当事者間でも認知は無効であると判断するのは相当ではない,②認知という一つの身分行為について,私法の適 用上,国家に対して無効を主張することができなくなっているにもかかわらず,後にこれを無効とすることは無意味である上,法律関係の確定は煩雑になり,法的不安定な状態となって,混乱を呼ぶことになってしまうと主張する。 しかし,上記①の点については,上記引用に係る原判決の「事実及び理由」の第3の2のとおり,本件認知の有効性は,旧法例18条により,父であるAの本国法である我が国の法と子である控訴人の本国法であるコロンビア法の両方の要件を具備することが必要であるところ,我が国の民法においては,血縁上の父子関係がないにもかかわらずされた認知は無効であり,本件認知は,Aと控訴人の間に法律上の親子関係を生じさせる効力を有しない。すなわち,本件認知はそもそも私法上(我が国の国際私法により定まる準拠法上)無効なものというほかなく,公法上の解釈により無効であるとされるものではないから,控訴人の主張は失当である。 また,上記 。すなわち,本件認知はそもそも私法上(我が国の国際私法により定まる準拠法上)無効なものというほかなく,公法上の解釈により無効であるとされるものではないから,控訴人の主張は失当である。 また,上記②の点については,血縁上の父子関係を欠く認知などの無効な認知は,認知をした父または母が,その認知を取り消すことができない(民法785条)からといって,有効と確定するわけではないし,認知の無効を宣言する裁判等によらなければ無効とならないとするのは相当ではなく,他の訴訟での先決関係においても主張することも可能であると解すべきであり,この点の控訴人の主張も採用し得ない。 ウまた,控訴人は,コロンビアで行われた本件認知の私法上の効力は,法適用通則法の解釈の問題となるとして,縷々主張する。 しかし,本件認知についての準拠法は,旧法例によって定められ,結局我が国の民法の要件も具備する必要があることは前判示のとおりであって,控訴人の前記主張は失当である。 第4 結論以上によれば,原判決は相当であるから,控訴人の控訴を棄却することとして, 主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第23民事部 裁判長裁判長白石 哲 裁判官金子 修 裁判官廣澤 諭

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