平成26年1月23日判決言渡平成25年(行コ)第139号,同年(行コ)第178号弁護士報酬請求控訴,同附帯控訴事件主文 1 本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却する。 2 原判決主文第1項を次のとおり更正する。 「控訴人は,被控訴人ら各自に対し,400万円及びこれに対する平成24年1月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。」 3 控訴費用は控訴人の,附帯控訴費用は被控訴人らの各負担とする。 事実 及び理由 第1 控訴・附帯控訴の趣旨 1 控訴の趣旨(1) 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 (2) 被控訴人らの請求を棄却する。 2 附帯控訴の趣旨(1) 原判決を次のとおり変更する。 (2) 控訴人は,被控訴人らに対し,440万円及びこれに対する平成24年1月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨(1) 本件は,神戸市の住民である被控訴人らが,地方自治法242条の2第1項4号に基づき神戸市に代位して提起した住民訴訟において一部勝訴したことから,同条12項に基づき,控訴人に対し,上記訴訟において訴訟委任をした弁護士に支払うべき報酬額の範囲内で相当と認められる額として440万円及び履行の請求をしたとする日である平成24年1月1日から支払済み まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 控訴人は,①被控訴人らの請求権は弁護士の職務に関する債権であるから,5年の消滅時効を定める地方自治法236条1項ではなく,2年の消滅時効を定める民法172条1項の適用があり,時効消滅している,②被控訴人らが訴訟委任した弁護士の報 護士の職務に関する債権であるから,5年の消滅時効を定める地方自治法236条1項ではなく,2年の消滅時効を定める民法172条1項の適用があり,時効消滅している,②被控訴人らが訴訟委任した弁護士の報酬請求権も同様に時効消滅しており,地方自治法242条の2第12項の「報酬を支払うべきとき」に当たらない,③被控訴人らの請求権行使は権利濫用に当たり許されない,④弁護士報酬額の範囲内の相当額はもっと低額であるなどと主張して,争った。 (2) 原審は,控訴人の上記①~③の各主張を排斥した上で,弁護士報酬額の範囲内の相当額を400万円と認め,被控訴人らの請求を400万円及びこれに対する平成24年1月6日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容した。 そこで,控訴人が原判決中請求認容部分を不服として控訴し,被控訴人らが原判決中請求棄却部分を不服として附帯控訴した。 なお,被控訴人らは,当審において,附帯請求に係る遅延損害金の起算日を原審認定の平成24年1月6日に改め,請求を減縮した。 2 前提事実本件の争点を判断するための前提となる事実で,当事者間に争いがないか,証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実は,原判決の「事実及び理由」第2の2(原判決2頁14行目から10頁4行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 争点及びこれに関する当事者の主張(1) 争点及びこれに関する当事者の主張は,次のとおり原判決を補正し,(2)のとおり控訴人の当審補充主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」第2の3ないし7(原判決10頁5行目から15頁13行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 ア原判決12頁16行目の「阿部弁護士が」の次に「被控訴人らの訴訟代理人として」を加え 2の3ないし7(原判決10頁5行目から15頁13行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 ア原判決12頁16行目の「阿部弁護士が」の次に「被控訴人らの訴訟代理人として」を加え,同頁16・17行目の「本件における」を「本件において」に改める。 イ同14頁8行目の「重複」を「重複して」に改める。 (2) 控訴人の当審補充主張ア 12項請求権に適用される消滅時効の規定(争点1)地方自治法236条は,行政処分等により大量に画一的に発生する債権債務に適用されると解すべきであるところ,12項請求権は被控訴人らの勝訴の確定により抽象的に発生はするものの一義的に額が定まるわけではなく,発生頻度も他の地方公共団体に係る債権債務に比べて格段に少ない。 12項請求権よりも格段に発生量が多く画一性の要素が強い公立病院の診察料・治療費や水道の使用料に係る債権でさえ同条の適用がないのであるから,12項請求権には同条の適用はあり得ない。 民法172条1項は,弁護士の職務に関する債権であれば,弁護士の依頼者に対する債権に限らず適用され,また,住民訴訟における住民側代理人弁護士と地方公共団体とは実質的には弁護士と依頼者との関係にあることからすれば,12項請求権には同条項が適用ないし類推適用されるというべきである。 イ弁護士報酬請求権の債務の承認の有無(争点2)弁護士は,委任事務を処理する場合には,委任の趣旨に関する依頼者の意思を尊重してその自己決定権を十分に保障するため,依頼者に対し適切な説明をする義務を負い,本件の場合,阿部弁護士は,被控訴人らに対し,弁護士報酬請求権の時効が完成していること,時効を援用する場合と援用せずに債務を承認する場合のメリット・デメリット等について,弁護士に通常要求され得る ,本件の場合,阿部弁護士は,被控訴人らに対し,弁護士報酬請求権の時効が完成していること,時効を援用する場合と援用せずに債務を承認する場合のメリット・デメリット等について,弁護士に通常要求され得る知識に基づいて誠実に説明を果たすべき義務を負っていた。しかしながら,時効を援用せずに不必要な公金支出を招くことが被控 訴人らの真意にかなうとはいえないことなどからすれば,阿部弁護士は,被控訴人らに対し,上記説明義務を果たさず,弁護士報酬請求権の時効の完成を秘匿して本件訴訟の訴訟委任状を作成させたものと推認され,上記訴訟委任をもって債務の承認があったとはいえない。 ウ 12項請求権の行使が権利濫用か(争点3)時効制度の存在理由や地方公共団体の支出が謙抑的に行われるべきであるとする規律(地方自治法2条14項,地方財政法4条1項等)に鑑みれば,弁護士報酬請求権の時効完成後における12項請求権の行使は権利の濫用というべきである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,被控訴人らの請求は400万円及びこれに対する平成24年1月6日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるものと判断する。その理由は,次の2のとおり控訴人の当審補充主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」第3(原判決15頁15行目から23頁12行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 控訴人の当審補充主張に対する判断(1) 争点1(12項請求権に適用される消滅時効の規定)について控訴人は,公立病院の診察料・治療費や水道の使用料に係る債権でさえ地方自治法236条1項の適用がないのであるから,これらほど頻度かつ画一的に発生しない12項請求権にはなおさら同条項の適用がないと主張する。 立病院の診察料・治療費や水道の使用料に係る債権でさえ地方自治法236条1項の適用がないのであるから,これらほど頻度かつ画一的に発生しない12項請求権にはなおさら同条項の適用がないと主張する。 しかしながら,公立病院の診療に関する債権に地方自治法236条1項の適用がないのは,公立病院における診療は私立病院における診療と本質的な差異がなく,その診療に関する法律関係は目的・性質に照らし私法上の法律関係というべきだからであり(最高裁平成17年(受)第721号同年11月21日第二小法廷判決・民集59巻9号2611頁参照),債権発生の頻 度や債権の画一性とは関係がない。したがって,これらの債権との比較を理由とする控訴人の主張は失当である。 また,控訴人は,住民訴訟における住民側代理人弁護士と地方公共団体とは,実質的には弁護士と依頼者との関係にあるとして,民法172条1項が12項請求権に適用ないし類推適用されると主張する。しかし,12条請求権は,住民訴訟の原告と地方公共団体との法律関係であり,両者の間に弁護士と依頼者との関係との類似性を見出すことはできないから,控訴人の上記主張も採用できない。 (2) 争点2(弁護士報酬請求権の債務の承認の有無)について控訴人は,被控訴人らが阿部弁護士に本件訴訟を委任した時点において,阿部弁護士の被控訴人らに対する弁護士報酬請求権について時効が完成していることを前提として,同弁護士に説明義務違反があることを理由に被控訴人らの上記訴訟委任によって債務の承認があったとはいえないと主張する。 しかしながら,控訴人も主張するとおり,本件の弁護士報酬請求権の消滅時効の起算日は平成22年6月28日であるところ,被控訴人らは,阿部弁護士に対して本件訴訟の訴訟委任をした平成23年2月16日頃に しかしながら,控訴人も主張するとおり,本件の弁護士報酬請求権の消滅時効の起算日は平成22年6月28日であるところ,被控訴人らは,阿部弁護士に対して本件訴訟の訴訟委任をした平成23年2月16日頃に弁護士報酬支払債務を承認したと認められる。この時点では,弁護士報酬請求権の消滅時効は完成していないから,阿部弁護士に上記のような説明義務がないことは明白であり,控訴人の主張は失当である。 (3) 争点3(12項請求権の行使が権利濫用か)について控訴人は,弁護士報酬請求権の時効完成後における12項請求権の行使は権利の濫用であると主張するが,本件の弁護士報酬請求権は平成23年2月16日頃の債務の承認により消滅時効が中断しており,本件訴訟が提起された平成24年12月10日当時は時効消滅していなかったと認められるから,上記主張は前提を欠いており失当である。 3 なお,12項請求権は,その性質上,不可分債権というべきであるから,被 控訴人ら各自が全額を請求しうるというべきであり,被控訴人らも,不可分債権に基づいて請求しているものと解される。 第4 結論以上によれば,被控訴人らの請求は,各自400万円及びこれに対する平成24年1月6日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却すべきであり,これと同旨の原判決は相当であって,本件控訴及び附帯控訴はいずれも理由がないから棄却すべきである。 なお,被控訴人らの請求が不可分債権に基づくことは明らかであるから,原判決主文第1項を主文第2項のとおり更正し,その旨を明らかにすることとする。 よって,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第13民事部 裁判長裁判官山下郁夫 裁判官 主文 第2項のとおり更正し,その旨を明らかにすることとする。 よって,主文のとおり判決する。 理由 大阪高等裁判所第13民事部 裁判長裁判官山下郁夫 裁判官神山隆一 裁判官堀内有子
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