令和3(行ケ)10129 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年12月21日 知的財産高等裁判所 4部 判決 請求棄却
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判決文本文59,458 文字)

令和4年12月21日判決言渡 令和3年(行ケ)第10129号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和4年10月31日判決 原告 ツールゲンインコーポレイテッド 同訴訟代理人弁護士 奥村直樹 西村英和 同訴訟代理人弁理士 田代玄 滝澤敏雄 被告 特許庁長官 同指定代理人 長井啓子 上條肇 井上千弥子 宮岡真衣 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求 特許庁が不服2020-000013号事件について令和3年6月8日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 本件は、特許拒絶査定の不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。 1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。) ⑴ 原告は、平成29年8月10日、名称を「標的DNAに特異的 本件は、特許拒絶査定の不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。 1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)⑴ 原告は、平成29年8月10日、名称を「標的DNAに特異的なガイドR NAおよびCASタンパク質コード核酸またはCASタンパク質を含む、標的DNAを切断するための組成物、ならびにその使用」とする発明について、特許出願(特願2017-155410号。平成25年10月23日〔パリ条約による優先権主張平成24年10月23日米国平成25年3月20日米国平成25年6月20日米国〕を国際出願日とする特願2015-5 38033号の一部を新たな特許出願としたもの。以下「本件出願」という。 請求項の数41)をし、平成30年9月14日付けの拒絶理由通知を受けたことから、平成31年3月25日、手続補正書を提出したが(以下、この手続補正書による補正を「本件補正」という。)、令和元年8月26日付けの拒絶査定を受けた。 ⑵ 原告は、令和2年1月6日、拒絶査定不服審判請求をし、特許庁は、上記請求を不服2020-000013号事件として審理を行い、令和3年6月8日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。附加期間90日)をし、その謄本は、同月29日、原告に送達された。 ⑶ 原告は、令和3年10月25日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提 起した。 2 特許請求の範囲の記載本件補正後の請求項1の発明(以下「本願発明」という。)に係る特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。 真核細胞における標的デオキシリボ核酸(DNA)の切断のためのタイプⅡ のクラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復配列(CRISP 次のとおりである。 真核細胞における標的デオキシリボ核酸(DNA)の切断のためのタイプⅡ のクラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復配列(CRISP R)/Casシステムを含む組成物であって、該CRISPR/Casシステムが(i)Cas9ポリペプチドおよび核局在化シグナルをコードする核酸、または核局在化シグナルを有するCas9ポリペプチド、および(ⅱ)真核細胞中の標的DNAにハイブリダイズするガイドRNAまたは該ガ イドRNAをコードする核酸、を含み、ガイドRNAがトランス活性化crRNA(tracrRNA)配列に融合したCRISPRRNA(crRNA)配列を含むキメラガイドRNAであり、該crRNA配列が該tracrRNA配列に対して5′末端側にある、上記組成物。 3 本件審決の理由の要旨本件審決は、本願発明は、本件出願の第1の優先日である平成24年10月23日(以下「本願第1優先日」という。)より前に日本国内又は外国において頒布等された甲第20号証「AprogrammableDual-RNA-GuidedDNAEndonucleaseinAdaptive BacterialImmunity、Science、 Aug 2012、 Vol.337、 p.816-821 & SupplementaryMaterials」(以下「引用文献1」という。別紙2参照)に記載の発明(以下「引用発明」という。)と周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本件出願は拒絶すべきものと判断した(以下、本件出願に係る願書に添付した明細書を、図面を含めて「本願明細書」という。別紙1参照)。 その判断の 易に発明することができたものであるから、本件出願は拒絶すべきものと判断した(以下、本件出願に係る願書に添付した明細書を、図面を含めて「本願明細書」という。別紙1参照)。 その判断の要旨は以下のとおりである。 ⑴ 引用発明の認定クラスター化され、規則的に間隔が空いている短い回文の反復(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)系を含む組成物であって、(a)Ⅱ型Cas9タンパク質、及び (b)crRNAの3′末端側にtracrRNAの5′末端側が融合したキ メラRNAを含み、キメラRNAと塩基対を形成する、プラスミド中の標的DNAを緩衝液中で切断するための組成物。 ⑵ 本願発明と引用発明との一致点標的デオキシリボ核酸(DNA)の切断のためのタイプⅡのクラスター化 された規則的間隔の短いパリンドローム反復配列(CRISPR)/Casシステムを含む組成物であって、該CRISPR/Casシステムが(i)Cas9ポリペプチド、および(ⅱ)標的DNAにハイブリダイズするガイドRNA、を含み、ガイドRNAがトランス活性化crRNA(tracrRNA)配 列に融合したCRISPRRNA(crRNA)配列を含むキメラガイドRNAであり、該crRNA配列が該tracrRNA配列に対して5′末端側にある、上記組成物。 ⑶ 本願発明と引用発明との相違点ア相違点1 本願発明は、「真核細胞」における標的DNAを切断するための組成物であって、Cas9ポリペプチドが「核局在化シグナル」を有しているのに対して、引用発明は、「緩衝液中」の標的DNAを切断するための組成物であって、Cas9ポリペプチ 標的DNAを切断するための組成物であって、Cas9ポリペプチドが「核局在化シグナル」を有しているのに対して、引用発明は、「緩衝液中」の標的DNAを切断するための組成物であって、Cas9ポリペプチドが「核局在化シグナル」を有していない点。 イ相違点2 本願発明は、Cas9ポリペプチド及びガイドRNAが、それらをコードする核酸である態様も含まれているのに対し、引用発明は、そのような態様が含まれていない点。 ⑷ 相違点の容易想到性ア相違点1 引用文献1においては、CRISPR/Cas9系をゲノム編集に利 用する可能性が強調され(816頁要約)、ゲノムを操作するための人工酵素として大きな関心を集めたジンク-フィンガーヌクレアーゼ(以下「ZFN」という。)や転写活性化様エフェクターヌクレアーゼ(以下「TALEN」という。)を例示した上で、CRISPR/Cas9系が遺伝子ターゲティングとゲノム編集への応用に向けた大きな潜在能力をもた らし得る代替的な手法として提案されている(820頁右欄2ないし9行目)。 本願第1優先日当時、ゲノム編集の主たる対象は真核細胞であって、ZFNやTALENが真核細胞中の標的DNAすなわち核内のゲノムを切断するものであることは周知であったから(甲21ないし24、25 の1及び2、26の1及び2)、引用文献1の記載に接した当業者にとって、引用発明のCRISPR/Cas9系を真核細胞の核内のゲノムに対して機能させようと試みることは、ごく自然な発想である。また、本願第1優先日当時、タンパク質や核酸を真核細胞へ送達する各種手段は周知であり(甲25の1及び2、26の1及び2)、タンパク質を真核細 胞の核内に と試みることは、ごく自然な発想である。また、本願第1優先日当時、タンパク質や核酸を真核細胞へ送達する各種手段は周知であり(甲25の1及び2、26の1及び2)、タンパク質を真核細 胞の核内に移行させるための手段も周知であったから(甲27ないし29)、当業者が前述のごく自然な発想を抱くことを妨げる特段の事情があったとはいえない。 したがって、引用発明のCRISPR/Cas9系を、真核細胞における標的DNAの切断に用いることは当業者が容易に想到し得ることで あり、その際に、真核細胞の核内に移行させるための常套手段である核局在化シグナルを引用発明のCas9ポリペプチドに付加することは、当業者が格別の創意工夫なくなし得たことであるといえる。 イ相違点2本願第1優先日当時、細胞内で機能させるためのタンパク質やRNAを、 それらをコードする核酸の形態で細胞に導入することは常套手段であり、 また、そのような核酸を真核細胞へ送達する手段も周知であった(甲25の1及び2、26の1及び2)。 そして、前記アで検討したとおり、引用発明のCRISPR/Cas9系を真核細胞の核内のゲノムに対して機能させようとすることが十分に動機付けられる以上、それらを構成する成分であるCas9ポリペプチド 及びキメラRNAを、それらをコードする核酸の形態で導入することも、当業者が適宜なし得たことにすぎない。 ウ本願発明の効果について本願明細書の記載を参酌しても、本願発明が、引用文献1に記載された発明及び本願第1優先日当時の周知技術からは当業者が予測できない顕 著な効果を奏するものとは推認できない。 4 取消事由引用発明に基づく本願発明の進歩性判 、引用文献1に記載された発明及び本願第1優先日当時の周知技術からは当業者が予測できない顕 著な効果を奏するものとは推認できない。 4 取消事由引用発明に基づく本願発明の進歩性判断の誤り第3 当事者の主張 1 原告 ⑴ 相違点1の容易想到性判断の誤りア真核細胞における標的DNAに適用する点について 阻害要因以下に阻害要因として掲記するとおり、原核細胞と真核細胞との間には多くの相違点や隔たりが存在しており、このようなことから、本願第 1優先日当時、当業者は、原核細胞に由来するCRISPR/Cas9系の適用は生体外系や原核細胞系等、真核細胞以外の系に制限されると考える。 なお、被告は、引用文献1が実験材料そのものとして原核細胞や真核細胞を使っていない旨主張するが、引用文献1において用いられるプラ スミドが原核細胞に由来するDNAであるなど、使用されているシステ ム自体が原核細胞由来のものであるという大前提には変わりはない。引用文献1は、要するに、原核細胞に起源のあるシステムを僅かに改変して緩衝溶液中のプラスミドに適用したというものであり、その改変は真核細胞を意図したものではない。試験管内でのプラスミドを用いたDNAcleavage(切断)試験は最も基本的なステップであって、むしろ原核 細胞のDNAをcleavage(切断)する試験よりも容易であるとさえいえる。 a 阻害要因1Cas9ポリペプチドは、真核細胞の細胞質で発現され、細胞質において正しく折り畳まれて適切なマルチドメイン構造を形成し、かつ、ユビキチン経路のような、異常タンパク質を排除する真核細胞性タン パク質分解経路 プチドは、真核細胞の細胞質で発現され、細胞質において正しく折り畳まれて適切なマルチドメイン構造を形成し、かつ、ユビキチン経路のような、異常タンパク質を排除する真核細胞性タン パク質分解経路により分解されることなく安定性を保持する必要がある(甲18、77)。すなわち、Cas9ポリペプチドを含め、一般的にタンパク質は細胞核ではなく、細胞質と呼ばれる細胞内の領域で合成されて、そこで機能できるような形に折り畳まれている。一方、Cas9ポリペプチドのように真核細胞内に本来的に存在しないタンパ ク質は、ユビキチン経路と呼ばれる真核細胞に存在するタンパク質分解経路によって認識されて分解される可能性がある。それゆえ、CRISPR/Cas9系が真核細胞内で機能するためにはこの分解経路をすり抜ける必要が存在した。 しかしながら、本願第1優先日当時の当業者は、ガイドRNAと複 合体を形成する以前に、Cas9ポリペプチドが産生され、正しく折り畳まれ、ユビキチン経路からの攻撃を回避し得るかを知るものではなかった。本願第1優先日当時、タンパク質が、その本来の細胞ではなく、他の細胞において発現される場合には、異なる折り畳みが生じることがあり、不完全に折り畳まれたタンパク質が活性を欠いたり、 異常機能を示したりして、ユビキチン経路により異常タンパク質と認 識され、分解され得ることがよく知られていた。 さらに、本願第1優先日当時の当業者は、天然のコドン使用頻度の重要性を認識しており、コドンの変化がタンパク質の翻訳に動力学的な変化を生じさせ、その結果、誤った折り畳みのせいでタンパク質の活性を変化させ得ることも認識していた。すなわち、アミノ酸をコー ドするコドンの使用頻度は真核生物と原 がタンパク質の翻訳に動力学的な変化を生じさせ、その結果、誤った折り畳みのせいでタンパク質の活性を変化させ得ることも認識していた。すなわち、アミノ酸をコー ドするコドンの使用頻度は真核生物と原核生物とで異なり、その結果、たとえコードされているアミノ酸が同じであっても、タンパク質生成時におけるmRNAからアミノ酸により構成されているタンパク質への翻訳速度が変化することがあり、翻訳速度が遅いと早い段階で折り畳みが始まって本来とは違う形に折り畳まれることがあり、そうする とCas9ポリペプチドの折り畳みに影響が出る可能性がある(甲18)。 被告は、分解等の懸念があるのであれば、核酸の導入量を増やすなどの実験の最適化を当業者は行う旨を主張するが、自らのものではない異種タンパク質を大量に細胞内で発現させ、あるいは細胞内に導入 すれば、細胞に有害であることは明らかである。また、導入量を増やせばそれだけ、標的外のDNAを切断するオフターゲットの危険性も上昇する。したがって、そのようなリスクの大きい手法を当業者が簡単に講じることはできない。 b 阻害要因2 CRISPR/Cas9系を用いて真核細胞中のDNA切断を実現するためには、ガイドRNAが真核細胞性のヌクレアーゼによる分解を逃れる必要が存在した。すなわち、本願第1優先日当時の当業者は、真核細胞の細胞質及び核がRNAを切断するエキソヌクレアーゼ等のリボヌクレアーゼ(RNase)を含有しており、それらがRNAを 迅速に分解すること、また、CRISPR/Cas9系のガイドRN Aが、かかるエキソヌクレアーゼ等により仲介される分解からRNAを保護するために真核細胞性RNAが用いる改変(例えば、RNAの また、CRISPR/Cas9系のガイドRN Aが、かかるエキソヌクレアーゼ等により仲介される分解からRNAを保護するために真核細胞性RNAが用いる改変(例えば、RNAの5′側における修飾である5′キャッピング及び3′側における修飾である3′ポリアデニル化)を有しないこと、特に、ガイドRNAの5′及び3′末端の両方が裸のままであると、端から順にRNAを切 断するエキソヌクレアーゼ等の攻撃の標的とされて分解されてしまうことを認識していた(甲81の763頁)。さらに、本願第1優先日当時の当業者は、ガイドRNAに対して、上記のヌクレアーゼ等からの攻撃を緩和する改変を追加すると、そのような改変がかえってRNAをリボソームや他のタンパク質複合体のような真核細胞性構造体を動 員する役割を果たし、ガイドRNAとCas9ポリペプチドとの複合体形成を阻害すると理解していた。 また、当業者は、RNAを発現させるために、DNA上の領域であるRNAポリメラーゼⅢ(pol Ⅲ)プロモーターを使用しようとするはずであるが、真核細胞においてpol Ⅲプロモーターから産生される ガイドRNAは、核又は仁(核小体)中の豊富にある分子シャペロンタンパク質(Laタンパク質)に結合され、それらに保持される。分子シャペロンは、一般には他のタンパク質が正確な折り畳みを行うように補助する分子であり、RNAの折り畳みにも関与する分子であるが、分子シャペロンがその機能を発揮しようとしてガイドRNAに結 合すると、この分子シャペロンタンパク質は、ガイドRNAがCas9ポリペプチドと相互作用したり、ガイドRNAとCas9ポリペプチドが機能性CRISPR/Cas9複合体を形成することに干渉すると当業者は理解していた(甲18) ンタンパク質は、ガイドRNAがCas9ポリペプチドと相互作用したり、ガイドRNAとCas9ポリペプチドが機能性CRISPR/Cas9複合体を形成することに干渉すると当業者は理解していた(甲18)。 c 阻害要因3 CRISPR/Cas9系を活用して真核細胞の標的DNAを切断 するためには、ガイドRNA及びCas9ポリペプチドが核内へと活性を有した状態で輸送される必要があり、真核細胞性の遮断因子との相互作用によって阻害されることなく近接して、複合体を形成する必要がある。 しかしながら、当業者は、真核細胞に特有の区画化された構造(特 に核膜)が、CRISPR/Cas9系が真核細胞のDNAにアクセスする上で顕著な追加の障害になると理解していた。すなわち、真核細胞のDNAは、核内に折り畳まれており、それゆえ、DNAは細胞質から核膜により物理的に隔離されている。一方、Cas9ポリペプチドは細胞核とは異なる細胞質で生成され、細胞核内へのアクセスの ためには核膜という物理的障壁を通過する必要がある。このようなことから、当業者は、核膜のような物理的障壁のない原核細胞に由来する引用文献1のCas9ポリペプチドが、真核細胞の細胞質からその核内へと移動し、次いでガイドRNAを見つけ出しそれと機能可能な正しい複合体を形成することが起きることについて否定的であった。 d 阻害要因4CRISPR/Cas9複合体は、真核細胞のDNAがクロマチンに折り畳まれているにもかかわらず、DNAにアクセスした上で、真核細胞のDNAを所望のように走査できる必要がある。 しかしながら、本願第1優先日当時、当業者は、細菌のDNAは原 核 り畳まれているにもかかわらず、DNAにアクセスした上で、真核細胞のDNAを所望のように走査できる必要がある。 しかしながら、本願第1優先日当時、当業者は、細菌のDNAは原 核細胞内でいわば裸の状態で存在するので自由にアクセス可能であるのに対して、真核細胞のDNAはクロマチン内に存在するため自由にアクセスすることが困難であると理解していた。これは、クロマチンがヒストンタンパク質等の真核細胞に特有の構成要素とDNAとが、複雑に折り畳まれた、高度に充填された構造であり、それによって真 核細胞の巨大なDNAが核内に密に詰め込まれているからである(甲 82)。このような相違から、当業者は、真核細胞性ではない酵素や、原核細胞性の部位特定基遺伝子標的化システム(CRISPR/Cas9系はこの一種である。)を真核細胞で使用することは阻まれると認識していた(甲50、51、18)。 e 阻害要因5 真核細胞のゲノムは、比較的小さな原核細胞のゲノムや原核細胞に作用するウイルスのゲノムと比較して顕著に大きく、かつ高度に充填されたクロマチン構造として折り畳まれている。そして、真核細胞のゲノムを切断する場合、CRISPR/Cas9系は、真核細胞の巨大なゲノム中にある、特異的なDNA標的配列を成功裏に認識し、そ れに結合する必要がある。 本願第1優先日当時、哺乳動物のゲノムは、CRISPR/Cas9系が天然で機能するバクテリオファージのゲノムよりも、ゲノムサイズが何桁も大きいことが知られていた。具体的には、ヒトゲノムの大きさは、約3.2ギガbp(3234メガbp)であるのに対して(甲 54)、CRISPR/Cas9系の天然DNA標的を保有するバクテ 何桁も大きいことが知られていた。具体的には、ヒトゲノムの大きさは、約3.2ギガbp(3234メガbp)であるのに対して(甲 54)、CRISPR/Cas9系の天然DNA標的を保有するバクテリオファージの一種であるT4ウイルスのゲノムは、約169キロbpであり、これはヒトゲノムの約1万9000分の1である。当業者は、ゲノムサイズのこの顕著な違いから、原核細胞内で機能し、バクテリオファージのゲノム等を標的として進化してきたCRISPR/ Cas9系が、1万倍もサイズの大きい真核細胞のゲノム内で標的配列にアクセスしそれを特異的に切断することは、不可能又は相当な困難を伴うと認識していた(甲18)。 その上、CRISPR/Cas9系は、PAM配列(プロトスペーサー隣接モチーフ 5′―NGG―3′)に近い7ないし12塩基の みが特異性(狙った箇所のみを切断する性質)として重要であり(甲 93)、見かけ上のcrRNA全体の長さよりも特異性が低い(甲94、95)。これは、原核細胞に由来するCRISPR/Cas9系は、本来的には、比較的単純なゲノムしか持たないファージ(細菌に感染するウイルスの一種)に対する免疫機構であるという性質上からである。 そして、このような特異性の低さから、ゲノムサイズの大きい真核生 物を標的とする場合には標的外のDNAを切断するオフターゲットの可能性が高まることとなり、真核生物への適用は現実的ではないと認識されていた。 f 阻害要因6CRISPR/Cas9複合体を用いて真核細胞中のゲノムDNA を切断するためには、CRISPR/Cas9複合体が真核細胞内の低濃度マグネシウムイオンという条件下でも酵素活性を維持する必要がある(甲 PR/Cas9複合体を用いて真核細胞中のゲノムDNA を切断するためには、CRISPR/Cas9複合体が真核細胞内の低濃度マグネシウムイオンという条件下でも酵素活性を維持する必要がある(甲18)。本願第1優先日当時、原核細胞と真核細胞(例えば、哺乳動物細胞)とでは遊離マグネシウム濃度が大きく異なることが当業者には広く知られていた。そうすると、当業者は、低濃度のマグネ シウムイオン環境である真核細胞においては、CRISPR/Cas9複合体を適用してDNAを切断することはできないものと認識する。 すなわち、CRISPR/Cas9複合体は、切断反応にマグネシウムイオンを必要とし、その活性もマグネシウム濃度に依存する。引用文献1にも、CRISPR/Cas9複合体が、1mMの場合より も、5mMというMg2+濃度において有意により効果的に機能することを教示している(816頁右欄26ないし28行目、SUPPLEMENTARYMATERIALSANDMETHODS の「PlasmidDNAcleavageassay」、図S4)。一方、真核細胞における細胞内Mg2+濃度は、一般には1mM未満であり、例えば、典型的な哺乳動物細胞の 細胞内のMg2+濃度は0.5mM程度である(甲18)。これに対して、 引用文献1は、真核細胞がCas9ポリペプチドが機能し得る十分な量の遊離マグネシウムを含有することについては何ら開示していない。 しかも、引用文献1に係る実験は生体外(invitro)で、高濃度のCas9ポリペプチド及びDNAを使用して行われたものであるが、このような条件は真核細胞内では生じ得ない。 そして、本願第1優先日当時、当業者は、本願発明と同様に原核細 高濃度のCas9ポリペプチド及びDNAを使用して行われたものであるが、このような条件は真核細胞内では生じ得ない。 そして、本願第1優先日当時、当業者は、本願発明と同様に原核細胞性であり、エンドヌクレアーゼ(核酸切断酵素)を有するグループⅡイントロンシステムについての確立された先例を熟知しているところ、このグループⅡイントロンシステムは、特定の実験条件下で人工的に高レベルのマグネシウムイオンを添加した後に初めて、真核細胞 において機能したことが知られている(甲53の6頁左欄11ないし15行目)。 そうすると、本願第1優先日当時の当業者は、グループⅡイントロンシステムの確立された先例や引用文献1の教示に基づき、CRISPR/Cas9系は、グループⅡイントロンシステムの場合と同様に、 Mg2+条件の制限を受ける蓋然性が非常に高く、真核細胞の生理学的Mg2+濃度では効率的に機能しないと結論付けたものである。 g 阻害要因7CRISPR/Cas9系が真核細胞で機能するためには、細胞毒性(細胞傷害性)の問題を克服する必要がある。 すなわち、ガイドRNAのような構造をもつRNAは一般に細胞にとって異物であり、有害であると認識されて細胞による攻撃の対象となり得るから、これを真核細胞に導入することに伴う細胞毒性の可能性がある。例えば、5′三リン酸を特徴とする構造化されたRNA分子は、RIG-Iのようなパターン認識受容体を活性化し、抗ウイル ス作用を示すインターフェロン産生の誘導(細胞性インターフェロン 応答)等の生来的な免疫応答を惹起することが知られていた(甲65の1頁要約、甲83の997頁要約、甲84)。そして、構造 インターフェロン産生の誘導(細胞性インターフェロン 応答)等の生来的な免疫応答を惹起することが知られていた(甲65の1頁要約、甲83の997頁要約、甲84)。そして、構造化されたRNAモチーフ、例えば、dsRNA(二本鎖RNA)の領域は、真核細胞内で種々のdsRNA結合型タンパク質と相互作用し、細胞性の抗ウイルス免疫機構の一部としてインターフェロン応答を惹起する ことが知られていた。 また、Cas9ポリペプチドは、限られた大きさしかない原核細胞ゲノム内の固有の標的配列を認識するように天然において進化したものであり、限られた配列特性しか要求されておらず、crRNA配列は一般には長くはないので、ゲノムサイズが大きい真核細胞において は、特異性の低いcrRNAが誤った箇所を切断する可能性がある。 そのため、オフターゲットDNA配列(本来の標的ではないDNA配列)に結合すること等により引き起こされる細胞毒性(細胞傷害性)の問題を克服する必要もある。当業者は、Creレコンビナーゼ(バクテリオファージ由来の遺伝子組換酵素)やCRISPR/Cas9 系のような原核細胞性の遺伝子編集システムを、より顕著に大きなゲノムサイズを有する真核細胞に導入する場合、真核細胞のゲノムはその大きさの違いに比例して、より多くの非特異的標的部位を有すると予測され、それがランダムなオフターゲット活性及び細胞毒性をもたらすと予測する(甲18)。 被告は、オフターゲット切断がされても、細胞にはDNA修復機構があるから引用発明の真核細胞への適用には支障がない旨主張するが、細胞のDNA修復機構には限界があり、一定限度を超えれば本来の機能が変化することは当業者にとって自明な事項である。あらゆる 機構があるから引用発明の真核細胞への適用には支障がない旨主張するが、細胞のDNA修復機構には限界があり、一定限度を超えれば本来の機能が変化することは当業者にとって自明な事項である。あらゆるDNA切断がDNA修復機構によって容易に修復されるのであれば、そも そもゲノム編集自体が不可能である。 本願第1優先日当時における当業者の認識及び技術常識a 本願第1優先日当時、真核細胞由来ではないシステム及び遺伝子を真核細胞において機能させる数々の試みが失敗していたことが知られていた(甲18)。 T7 RNAポリメラーゼの事例 天然では原核細胞内で作動し、DNAからRNAへの転写を駆動することにより遺伝子発現に関与するバクテリオファージ由来の酵素であるT7 RNAポリメラーゼが、クロマチンにアクセスし、クロマチンを構成するDNAからRNAを伸長する能力を欠くことから、真核細胞内では正しく機能し得ないことが知られていた (甲50ないし52)。 ⒝ グループⅡイントロンシステムの事例グループⅡイントロンシステムの遺伝子標的化作用に対して、真核細胞のクロマチンが顕著な障壁となることが知られていた。 さらに、グループⅡイントロンが機能するためには、人工的技術 によってしか真核細胞内で達成できない量の遊離マグネシウムが必要であることも知られていた。 ⒞ リボスイッチの事例mRNAの一部分であるリボスイッチは、リガンド(タンパク質等の生体物質と結合する物質)に応答して原核細胞内で遺伝子発現 (mRNAからタンパク質が製造されること)を制御するが、RNA構 mRNAの一部分であるリボスイッチは、リガンド(タンパク質等の生体物質と結合する物質)に応答して原核細胞内で遺伝子発現 (mRNAからタンパク質が製造されること)を制御するが、RNA構築物の折り畳みが試験管と細胞内とで異なる可能性があることなどから、当初は真核細胞内での遺伝子発現制御のための潜在的なツールとして脚光を浴びたものの、有用な遺伝子発現を制御するスイッチとなることを妨げられたことが知られている(甲18、5 9の1190頁左欄下から5ないし4行目)。 ⒟ リボザイムの事例リボザイムは生化学反応を触媒するRNA分子であり、invitro(生体外)では有効であったが、invivo(生体内)では予測どおり機能しなかった。これは、リボザイムが標的RNAへ結合することに対する細胞内タンパク質の干渉、リボザイム機能に不十分な細胞内 イオン濃度及びRNAse(リボヌクレアーゼ)によるリボザイムへの攻撃が理由であることが知られていた(甲18、60)。 b 当業者は、本願第1優先日当時、CRISPR/Cas9系が真核細胞内で機能し得ることについては専ら否定的な見解を有していた。 本願第1優先日前後の文献には、本願第1優先日当時について、例 えば、「このような細菌系が真核細胞で機能するかどうかは知られていなかった。」(甲48の2頁)、「(この発表は)大きな成功であったが、問題があった。我々には、CRISPR/Cas9系が真核生物-植物及び動物細胞で機能するか否か確かではなかった。」(甲49の4頁)、「Doudnaは、CRISPRをヒト細胞で機能させることについて「多 くの挫折」を経験し、これに成功すれば、CRISPRは「 び動物細胞で機能するか否か確かではなかった。」(甲49の4頁)、「Doudnaは、CRISPRをヒト細胞で機能させることについて「多 くの挫折」を経験し、これに成功すれば、CRISPRは「非常に大きな発見」となることを知っていた。」(甲37の3頁)、「生物の遺伝子の特定の要素を改変する能力は、ヒトの健康を含む生物学の理解を進展させるために不可欠であった。・・・しかし、動物およびヒトにおけるこれらの改変を行う技術は、ヒト治療学における研究および開発 の双方において巨大な障害となってきた。」(甲87の2頁)、「真核細胞におけるシステムの活性はどうか? ジンクフィンガー及びTALEモジュールの双方は、クロマチン内の標的に結合する天然の転写因子由来である。これはCRISPR成分には当てはまらない。Cas9ポリペプチドがクロマチン標的に対して効果的に作用すること、又 は必要なDNARNAハイブリッドがこの状況で安定化され得ること について何の保証もない。この構造は、いずれもがRNA複製の際にRNAプライマーの除去のために機能するリボヌクレアーゼH及び/又はFEN1によるRNA加水分解の基質となり得る。真核生物におけるシステムに適用する試みのみが、これらの懸念事項に対処することになるであろう。」(甲41の1660頁中欄9行目ないし右欄6行 目)、「私の見解では、2012年の時点において当業者が真核細胞においてCRISPR-Cas9システムが機能することを予測できなかったであろうという直接的な同時期の証拠が、【A】 2012の発表後の本技術分野の研究者らの同時期になされた言説と彼らの実施経過という形で存在する。」(甲92の156ないし164段落)、「昨日、【B】 にメールで伝えたよ 拠が、【A】 2012の発表後の本技術分野の研究者らの同時期になされた言説と彼らの実施経過という形で存在する。」(甲92の156ないし164段落)、「昨日、【B】 にメールで伝えたように、【C】のデータは、8月の最初の結果が再現不可能であることが判明したけれども、論文にはなっておらず、その後の実験に照らして、おそらく何らかのコンタミネーションがあったと思われる。」(甲96)等の記載がみられる。 c 本件審決は、相違点1を想到する動機付けとなるとして以下の文献 の記載を引用するが、誤りである。 すなわち、甲第41号証(本件審決の参考資料5)には、「試してみる価値が明らかにある」との記載があるが、「真核細胞」ということが明示されているわけではないし、真核細胞へ適用するに当たって考えられる各技術的障害をいかに克服するかも何ら検討しておらず、単な る当業者の願望を記載したものにすぎない。また、甲第49号証(本件審決の参考資料13)には、「真核細胞において」との記載はあるが、本願第1優先日後の文献であり、これを根拠にして本願第1優先日当時、CRISPR/Cas9系を真核細胞に適用しようとすることに動機付けがあったことが示唆されることはない。甲第48号証(本件 審決の参考資料12)も本願第1優先日の後の文献であり、その記載 内容も、バクテリアシステム(細菌系)で発見されたゲノム編集技術が、真核細胞において機能することについては否定的な見解がとられていたことを示唆するものである。 ZFN及びTALENとCRISPR/Cas9系との相違以下のとおり、ZFNやTALENといった従来技術の活用例から、 CRISPR/Cas9系を真核細胞 のである。 ZFN及びTALENとCRISPR/Cas9系との相違以下のとおり、ZFNやTALENといった従来技術の活用例から、 CRISPR/Cas9系を真核細胞へと適用することの動機付けを見いだすことはできない。 ZFNは、真核細胞のゲノムDNAに結合するように自然に進化したジンクフィンガーモジュールと、細菌由来であるがZFNが発明された時点でゲノムDNA配列を切断する機能が周知であったDNA切断酵素 であるFok1酵素とを人工的に結合させたものであり、TALENは、真核細胞である植物細胞のゲノムDNA配列に結合するように自然に進化した細菌タンパク質(TALエフェクター)に上記Fok1酵素を人工的に結合させたものである(甲90)。ZFNやTALENは、切断するDNAを認識するのも、DNAを切断するのもタンパク質である。ま た、Fok1酵素部分は二量体化が必要なため、ZFNやTALENは2つの分子を設計して一組として使用する必要がある。そして、TALENで使用するTALENモジュールもZFNで使用するジンクフィンガーも、真核細胞内のクロマチン環境の中で標的と結合する天然の転写因子及び天然の構造に由来しており、原核細胞には存在しないものであ って、原核生物の系を真核生物へと移植したものではない。 これに対して、CRISPR/Cas9系は、本来的に原核細胞に由来するものであり、Cas9ポリペプチドは、真核細胞におけるDNA配列と結合するために進化したものではなく、ウイルス配列を切断するために進化したDNA切断酵素である。そして、CRISPR/Cas 9系は、ガイドRNAとCas9ポリペプチドは直接結合しておらず、 非共有結合に ルス配列を切断するために進化したDNA切断酵素である。そして、CRISPR/Cas 9系は、ガイドRNAとCas9ポリペプチドは直接結合しておらず、 非共有結合によって複合体を形成していて、ガイドRNAが切断するDNAを認識し、Cas9というポリペプチドがDNAを切断する。また、DNAを切断するためにCas9ポリペプチドの二量体化は不要なため、2つの分子を設計する必要はなく、RNA-DNA相互作用を利用することから、ガイドRNAがゲノムなDNAに結合する過程では、DNA の巻き戻し(DNAの二重らせん構造の開放)が行われる。 このように、TALENやZFNといった従来例と原核生物起源のCRISPR/Cas9系は関連性の低い技術である。 イ核局在化シグナルの付加の点について 細胞環境 引用発明の系の環境は、真核生物細胞の環境とは本質的に異なる。すなわち、本願第1優先日当時、核内移行シグナル(核局在化シグナル)を利用してポリペプチドを真核生物の核内に移行させる技術は知られていたものの、その技術を採用することが動機付けられるのは、ポリペプチドを核内に移行させ何らかの作用を奏させることが可能であることを 前提とする。そうすると、CRISPR/Cas9系は、核内に移行し、そこでガイドRNAと複合体を形成しなければその作用を奏しないから、核局在化シグナルをCas9ポリペプチドに付することが動機付けられるためには、Cas9ポリペプチドが核内に移行できるだけでなく、核内でガイドRNAと複合体を形成できることが想定される必要がある。 原核生物に起源する新しいシステムにおいて、Cas9ポリペプチドが核内に移行できるか否か、核内に移行したCas9ポリ なく、核内でガイドRNAと複合体を形成できることが想定される必要がある。 原核生物に起源する新しいシステムにおいて、Cas9ポリペプチドが核内に移行できるか否か、核内に移行したCas9ポリペプチドとガイドRNAとが機能可能に正確な複合体を形成し、さらに、引用文献1のようなinvitro(生体外)の系と同様に標的DNAを切断する機能を示すことができるかは、当業者であっても予測できたものではない。このよ うに、CRISPR/Cas9系は、Cas9ポリペプチドが核内に移 行するだけでなく、核内でガイドRNAと複合体を形成しないと機能しない点で、ZFN及びTALENとは根本的に異なるものであるから、単にCas9ポリペプチドが核内に移行できさえすればよいというものではない。 サイズの相違 CRISPR/Cas9系とTALEN及びZFNとの間には、そのサイズに大きな違いが存在し(甲89)、このようなサイズの違いから、当業者は、ZFNやTALENにおいて核局在化シグナルの使用が動機付けられたからといって、CRISPR/Cas9系においても同様に核局在化シグナルを用いることが動機付けられた、あるいは、当業者が その適用を創意工夫なくなし得たとはいえない。すなわち、従来技術とされるTALEN(分子量105kD以下)やZFN(分子量40kD以下)と比較すると、Cas9ポリペプチド(分子量163kD)は、そのタンパク質サイズが大きく、その分子の形状についてみても、Cas9ポリペプチドは球状構造であるのに対して、TALEN及びZFN は単純な反復構造(比較的伸びた形状)を有するものにすぎない。そして、タンパク質は、核膜の穴を通して核内へと移行することが想定されるところ ドは球状構造であるのに対して、TALEN及びZFN は単純な反復構造(比較的伸びた形状)を有するものにすぎない。そして、タンパク質は、核膜の穴を通して核内へと移行することが想定されるところ、TALENやZFNと比較して顕著にサイズが大きいCas9ポリペプチドが、これらの従来技術と同様に、核膜を通過して核内へと移行することが当然に想定できるわけではない。 「容易の容易」当業者が、相違点1に係る構成を想到して本願発明の構成に至るためには、まず、①原核細胞を対象とした引用発明について、対象を真核細胞へと変更することを想到し、この構成の変更を前提にして、次に、②タンパク質の核内移行手段として核局在化シグナルを用いる、という2 つのステップを踏む必要がある(いわゆる「容易の容易」)。そして、こ のように主引用発明から2つの段階を経てようやく相違点の構成に至るような発明は、当業者にとっては通常格別な努力を必要とするものであるから、容易には発明できないとして、進歩性が認められるべきである。 ⑵ 予測できない顕著な効果に関する判断の誤り本願発明の有利な効果は、CRISPR/Cas9系が真核細胞において ゲノムDNAを切断することができたという点にあり、これ自体が本願第1優先日当時の公知技術と比較して驚くべき効果であり、本願第1優先日当時の技術水準の下で当業者が予測することができたものではない。そして、引用文献1は、CRISPR/Cas9系が真核細胞において機能し得ることすら実証又は示唆するデータを開示しておらず、まして、CRISPR/C as9系が真核細胞内で有利に標的特異性を有する可能性について示唆もしていない。そのため、CRISPR/Cas9系を ことすら実証又は示唆するデータを開示しておらず、まして、CRISPR/C as9系が真核細胞内で有利に標的特異性を有する可能性について示唆もしていない。そのため、CRISPR/Cas9系を真核細胞において成功裏に用いることができたこと自体が、本願第1 優先日当時の刊行物の記載及び技術水準から予測可能なものではなく、本願発明の従来技術に勝る有利な効果である。本願発明は、治療剤の開発において新世界を開く効果があり、そ の技術的、商業的価値は多大なものである。現に、CRISPR/Cas9系を用いてヒト細胞(真核細胞)のDNAを切ることができるという実験が成功したときに世界が熱狂し、注目したことは周知の事実である。このように、CRISPR/Cas9系を真核細胞系に適用することが可能であると示されたことによってゲノム編集技術への応用可能性が格段に広まり、CR ISPR/Cas9系は様々な場面で幅広く用いられることとなった。このこと自体が本願発明の顕著な作用効果として認定されるべきものである。その後のゲノム編集技術の発展をみても、本願発明は、画期的であり革新的なブレイクスルー発明である。 2 被告 ⑴ 相違点1の容易想到性の誤りの主張について ア真核細胞における標的DNAに適用する点について 阻害要因について引用発明は、Ⅱ型Cas9タンパク質と、天然では別個に存在するcrRNAとtracrRNAとを人工的に融合してなるキメラRNAとを含む、人工物たるCas9ポリペプチドを含む「プラスミド中の標的 DNAを緩衝液中で切断するための組成物」であって、天然(原核細胞)のCas9ポリペプチドをそのまま含むものではない。また、切断の対象は、「緩衝液中 s9ポリペプチドを含む「プラスミド中の標的 DNAを緩衝液中で切断するための組成物」であって、天然(原核細胞)のCas9ポリペプチドをそのまま含むものではない。また、切断の対象は、「緩衝液中」に存在する「プラスミド(環状二本鎖DNA)中の標的DNA」である。そうすると、引用発明は天然の原核細胞と関係はなく、原告が主張する真核細胞と原核細胞の相違は、そもそも、引用発明 を真核細胞に適用することの阻害要因たり得ない。 そして、原告が阻害要因として指摘する点は、当業者の誰もが求める真核細胞における優れたゲノム編集ツールを、開発を試みることもなくこれを断念させるようなものではない。実際のところ、本願発明の発明特定事項には、原告が阻害要因として指摘する点を回避するための創意 工夫は含まれていないし、実施例をみても、原告が阻害要因として指摘する点に着目してそれを回避するための検討を行っていたことをうかがわせる記載は見いだせない。 a 阻害要因1について本件審決が認定した引用発明は、「(a)Ⅱ型Cas9タンパク質」 自体を含んでおり、これは、「プラスミド中の標的DNAを緩衝液中で切断するため」に、当然、正しく折り畳まれたものであるから、「Cas9タンパク質」に関して、本願発明の「(ⅰ)核局在化シグナルを有するCas9ポリペプチド」と引用発明の「(a)Ⅱ型Cas9タンパク質」との相違部分は、「核局在化シグナル」を有しているか否かだけ である。したがって、原告が主張する阻害要因1は、相違点1とは関 係がないものであり、その主張は前提において誤りである。 また、仮に、阻害要因1が、本願発明のうち、「(ⅰ)Cas9ポリペプチドおよび核局在化シグ 1とは関 係がないものであり、その主張は前提において誤りである。 また、仮に、阻害要因1が、本願発明のうち、「(ⅰ)Cas9ポリペプチドおよび核局在化シグナルをコードする核酸」の場合についての主張であるとしても、次のとおり、その主張は失当である。 すなわち、分解等の懸念があるのであれば、核酸の導入量を増やす など、当業者は、実験条件の最適化を当然行う。しかも、本願第1優先日までに、原核細胞に由来するタンパク質を真核細胞中で機能的に発現させた例は枚挙するにいとまがない。古くは1996年に、原核細胞(大腸菌)に由来し、DNAに作用するタンパク質であるRecAを、本願発明と同様に、核局在化シグナルを付加した形で真核細胞 (植物細胞)内において発現したところ、核内に移行し、植物細胞ゲノムDNAに対して正常な機能を発揮したことが報告されている(乙20の3094頁右欄20ないし33行目)。 本願発明も、真核細胞内でCas9ポリペプチドを正常に発現し、折り畳み、分解されないようにするための発明特定事項は含んでいな いし、実施例にも、Cas9ポリペプチドを正常に発現し、折り畳み、分解されないようにするための創意工夫は何ら認められない。本願発明は、Cas9ポリペプチドをRecAなどと同様に誰もが望む真核細胞で発現させてみたところ、予想どおり、何らの問題もなく、正常に発現され、折り畳まれて、機能が発揮されたというだけのことであ る。 b 阻害要因2について仮に、ガイドRNAがヌクレアーゼによって分解等される懸念があるのであれば、ガイドRNAの導入量を増やすなど、当業者は、実験条件の最適化を当然行う。 本願発 仮に、ガイドRNAがヌクレアーゼによって分解等される懸念があるのであれば、ガイドRNAの導入量を増やすなど、当業者は、実験条件の最適化を当然行う。 本願発明も、真核細胞環境内でガイドRNAが分解されないように するための発明特定事項は含んでいないし、実施例にも、ガイドRNAを分解から保護するための創意工夫は何ら認められない。本願発明でも、CRISPR/Cas9系を真核細胞に導入したところ、予想どおり、ガイドRNAも含めて特段の問題もなく存在し得て、機能が発揮されたというだけのことである。 c 阻害要因3について当業者であれば、引用発明を真核細胞に適用することを想起しただけで、自ずと常套手段である核局在化シグナルの付加を導き出し、これによりCas9ポリペプチドがガイドRNAと複合体を形成することを当然予測し得た。 本願発明も、Cas9ポリペプチドを核内へ移行させるための手段として、核局在化シグナルを付加すること以外の発明特定事項は含んでいないし、実施例にも、核局在化シグナル以外の創意工夫は何ら認められない。本願発明でも、CRISPR/Cas9系に真核細胞の核内移行における常套手段を適用したところ、予想どおり、何らの問 題もなく核内に移行して機能を発揮したというだけのことである。 d 阻害要因4について本願第1優先日当時、既に、クロマチンの存在にもかかわらず外来タンパク質が真核細胞の核内のゲノムDNAに作用した数多の例が知られていた。例えば、CRISPR/Cas9系と同様に原核細胞に 由来するRecA(乙20)や、CRISPR/Cas9系と同様にゲノム編集ツールとして周知の ゲノムDNAに作用した数多の例が知られていた。例えば、CRISPR/Cas9系と同様に原核細胞に 由来するRecA(乙20)や、CRISPR/Cas9系と同様にゲノム編集ツールとして周知のZFN(甲21、22、25、26、乙7)やTALEN(甲23、24、30、乙7)である。 本願発明も、クロマチンの存在による悪影響を低減させるための発明特定事項は含んでいないし、実施例にも、クロマチンの存在による 悪影響を低減させるための創意工夫は何ら認められない。本願発明で も、RecA、ZEN及びTALEN等の先例から予想されるとおり、クロマチンによる悪影響はなかったというだけのことである。 e 阻害要因5について本願第1優先日前に、既に、ZFN及びTALENで真核細胞ゲノムにおける標的配列を切断することが広く知られていたところ(甲2 1ないし26)、これらのゲノム編集ツールが、サイズの大きなゲノムを対象とする場合に標的配列へのアクセスが不可能となったり、困難を伴うとの事情があったとは認められない。また、各ゲノム編集ツールの標的配列の長さに着目すると、ZFNは、18ないし36塩基対、TALENは、24ないし40塩基対であって(甲90)、いずれも、 真核細胞ゲノム中でこのような長さの標的配列にアクセスし、切断することができていたものである。これに対して、CRISPR/Cas9系の標的配列の長さは、17ないし23塩基対程度であって(甲20の820頁図5A、甲90)、ZFNやTALENの標的塩基対と同程度なのだから、当業者は、真核細胞ゲノムが大きいためにCRI SPR/Cas9系が標的配列を探し当てられないとか、アクセスできないなどとは考えない。 ZFNやTALENの標的塩基対と同程度なのだから、当業者は、真核細胞ゲノムが大きいためにCRI SPR/Cas9系が標的配列を探し当てられないとか、アクセスできないなどとは考えない。 本願発明も、サイズの大きな真核細胞ゲノム中の標的にアクセスするための発明特定事項は含んでいないし、実施例にも、真核細胞ゲノムの大きさを克服して標的にアクセスするための創意工夫は何ら認め られない。本願発明でも、ZFNやTALENの先例から予測されるとおり、CRISPR/Cas9系が真核細胞ゲノム中の標的配列にアクセスしてその場で切断することができたというだけのことである。 f 阻害要因6についてグループⅡイントロンシステムはCRISPR/Cas9系とは別 物であって、CRISPR/Cas9系と関連性の薄い事例にすぎな い。 本願発明は、真核細胞中のマグネシウムイオン濃度に対応するための発明特定事項は含んでいないし、実施例にも、真核細胞中のマグネシウムイオン濃度に対応するための創意工夫は何ら認められない。本願発明は、引用発明のCRISPR/Cas9系を真核細胞中に移し たところ、そのまま機能し得たというだけのものにすぎない。 g 阻害要因7についてオフターゲットDNA配列への結合可能性は、DNA結合ドメインの特異性の程度に依存し、従来から使用されていたZFN及びTALENでも同様に留意される切断特異性の問題である。そして、オフタ ーゲット切断であれ、オンターゲット切断(本来の標的配列の切断)であれ、DNAが切断されても、細胞はDNA修復機構を有しており、死滅するわけではないのだから、オフターゲット結合やオフターゲッ ーゲット切断であれ、オンターゲット切断(本来の標的配列の切断)であれ、DNAが切断されても、細胞はDNA修復機構を有しており、死滅するわけではないのだから、オフターゲット結合やオフターゲット切断の懸念が、CRISPR/Cas9系を真核細胞に適用することを妨げるはずはない。 本願発明は、CRISPR/Cas9系によって生じる可能性がある細胞毒性を回避するための発明特定事項は含んでいないし、実施例にも、そのための創意工夫は何ら認められない。本願発明は、引用発明のCRISPR/Cas9系を真核細胞中に移したところ、そのまま機能し得たというだけのものにすぎない。 本願第1優先日当時における当業者の認識及び技術常識についてa 原告が前記1⑴アaにて示した例(T7 RNAポリメラーゼ、グループⅡイントロンシステム、リボスイッチ、リボザイム)は、いずれもCRISPR/Cas9系とは関連性の薄い技術であって、引用発明のCRISPR/Cas9系を真核細胞に適用することの強い 動機付けを阻害するほどの事情ではない。むしろ、真核細胞に由来し ないシステムを真核細胞において機能させる試みが数多く存在するという事実は、真核細胞で機能させることが望まれるシステムはその由来にかかわらず真核細胞に導入してみることが、当業者にとっていかに自然な発想であるかを如実に示している。 b 甲第48号証には、当業者がCRISPR/Cas9系をZFNや TALENに替わる真核細胞のゲノム編集ツールとして期待を寄せ、実際に適用したことが示されており(甲48の1頁要約、Introduction、訳文は乙21)、甲第49号証には、引用文献1の発行直後に当業者がCRISP 核細胞のゲノム編集ツールとして期待を寄せ、実際に適用したことが示されており(甲48の1頁要約、Introduction、訳文は乙21)、甲第49号証には、引用文献1の発行直後に当業者がCRISPR/Cas9系の真核細胞への適用に取りかかっていたことが示されており(甲49の4頁左欄6行目ないし右欄4行目、 訳文は乙22)、甲第37号証には、引用文献1に接した当業者が速やかに植物や動物といった真核細胞に適用したことが示されており(甲37の2頁24ないし31行目、訳文は乙23)、甲第87号証には、引用文献1のCRISPR/Cas9系が、引用文献1発行直後に真核細胞に適用されたことが紹介されており(甲87の1頁本文14な いし23行目、訳文は乙24)、甲第41号証には、CRISPR/Cas9系を真核細胞に適用することを強く推奨し、その成功が期待できることが示されている(甲41の1658頁中欄10ないし14行目、1660頁右欄5ないし6行目、同頁右欄26ないし30行目、訳文は乙25)。 c 甲第41、第48及び第49号証は、引用文献1の影響力の大きさを裏付けるとともに、数多くの当業者グループが、独立に、しかし、まるで示し合わせたかのように、引用文献1の発行直後にCRISPR/Cas9系を真核細胞に適用し始めたことを示すものである。 ZFN及びTALENとCRISPR/Cas9ポリペプチドとの相 違について 引用発明は、本来的に原核細胞を対象とした技術ではなく、CRISPR/Cas9系が天然の原核細胞で見いだされたことは、もはや引用発明とは関係のないことなのだから、CRISPR/Cas9系が原核細胞由来であることから真核細胞に適用することが困難とする 、CRISPR/Cas9系が天然の原核細胞で見いだされたことは、もはや引用発明とは関係のないことなのだから、CRISPR/Cas9系が原核細胞由来であることから真核細胞に適用することが困難とする原告の主張は、前提において誤りがある。引用発明のCRISPR/ Cas9系のRNA成分である「(b)crRNAの3′末端側にtracrRNAの5′末端側が融合したキメラRNA」(原告の主張においては「g(ガイド)RNA」。)は、自然界に存在するcrRNAとtracrRNAとを人工的に融合して単純化したものであって、自然状態において原核細胞で生じるものではない。 しかも、それぞれのDNA結合ドメインを比べてみると、ZFNでは、1モジュールのタンパク質が3塩基の標的配列を認識して結合し、TALENでは、1モジュールのタンパク質が1塩基の標的配列を認識して結合し、CRISPR/Cas9系では、1塩基のRNAが1塩基の標的配列を認識して結合するから(乙7の9頁図1)、いずれの DNA結合ドメインにしても、DNAという物質に直接作用して、きわめて機械的な機序で標的配列を認識して切断する活性を有するにすぎない。そして、ZFNやTALENのDNA結合ドメインが、真核細胞のクロマチン環境に特化した構造や標的配列認識機構を有しているわけではないし、CRISPR/Cas9系のDNA結合ドメイン が原核細胞のDNAしか認識できないわけでもない。 また、CRISPR/Cas9系が標的配列に結合するに際して標的DNAの二重らせん構造の開放を行うという点は、CRISPR/Cas9系がDNA(二重らせん構造を有することは自明である。)の標的配列に結合してその場でDNAを切断する以上は、引用文献1自 体に示 の二重らせん構造の開放を行うという点は、CRISPR/Cas9系がDNA(二重らせん構造を有することは自明である。)の標的配列に結合してその場でDNAを切断する以上は、引用文献1自 体に示されていることであり、引用発明の真核細胞への適用を妨げる ことはない。 イ核局在化シグナルの付加の点について 核局在化シグナルを付加することは、ポリペプチドを核に送達するための常套手段であって、引用発明を真核細胞に適用することを想起しただけで自ずと導き出される常套手段にすぎない。実際、引用文献1の発 行からわずか数か月のうちに、数多の研究グループが、独立して、一斉に、CRISPR/Cas9系を使って真核細胞のゲノム編集を行ったところ、それらの全てにおいて、例外なく、核局在化シグナルが付加されていたというのが、本願第1優先日当時の実情である。 細胞環境について 核局在化シグナルとは、細胞核の中で働くタンパク質が細胞質で合成された後、核内にまで能動的かつ選択的に輸送されるために必要な数個ないし十数個のアミノ酸からなる配列をいう(乙4)。真核細胞内において、核局在化シグナルを有する物質は、核膜に存在する小さな核膜孔を、シャッターのように直径約100nmに開いて、核内へと通過する(乙 29、30)。また、直径9nm程度(ガイドRNAは優にこれを下回る。)より小さな物質は、核局在化シグナルがなくとも、小さな核膜孔を自由に通過する(乙30)。Cas9ポリペプチド(約163kDa)のようなタンパク質の大きさは、せいぜい数nm程度である(乙31ないし33)から、核局在化シグナルを有してさえいれば、そのまま、直径約1 00nmに開口した核膜孔を通過して、核内へと kDa)のようなタンパク質の大きさは、せいぜい数nm程度である(乙31ないし33)から、核局在化シグナルを有してさえいれば、そのまま、直径約1 00nmに開口した核膜孔を通過して、核内へと移行する。 サイズの相違について核局在化シグナルは、核内へ移行するための必要かつ十分な活性をもつものであって、それさえ有していれば、約170kDaのMTase(DNAシトシン―5―メチルトランスフェラーゼ)(乙34)、約18 5kDaのトポⅡ(DNAトポイソメラーゼⅡ)(乙35)、約239k DaのSen1p(乙36)といった、Cas9ポリペプチド(約163kDa)を上回るサイズのタンパク質のみならず、桁違いに大きく複雑な巨大複合体であるウイルス粒子でさえ、核膜孔を直径約100nmに開口して通過することが広く知られていた(乙37)。直径約100nmに開口した核膜孔と比べて、数十ないし数百kDa程度のタンパク質 は十分小さく、その形状が核膜孔の通過しやすさに影響するとは到底考えられない。 したがって、Cas9ポリペプチドのサイズや形状は、核局在化シグナルを付加することを妨げる理由にはならない。 「容易の容易」について 本件審決は、核局在化シグナルの付加は、引用発明のCRISPR/Cas9系を真核細胞に適用することを想起しただけで、何らの創意工夫もなく導き出される程度のことにすぎないとしたものであって、いわゆる「容易の容易」に当たらないことは、本件審決の文言上明らかである。 ⑵ 予測できない顕著な効果に関する判断の誤りについて本願発明の効果は、CRISPR/Cas9系が真核細胞において標的DNAを切断することが 本件審決の文言上明らかである。 ⑵ 予測できない顕著な効果に関する判断の誤りについて本願発明の効果は、CRISPR/Cas9系が真核細胞において標的DNAを切断することができたというものであるが、これは、まさに、引用発明のCRISPR/Cas9系を真核細胞に適用することを想起すると同時に当然想定される結果にすぎず、効果の顕著性など見いだす余地もない。 第4 当裁判所の判断 1 本願発明について本願明細書には、別紙1「本願明細書の記載事項(抜粋)」のとおりの記載があり、この記載によると、本願発明について、次のような開示があると認められる。 ⑴ 技術分野 本願発明は、真核細胞又は真核生物における標的化ゲノム編集に関するに関するものである(【0001】)。 ⑵ 背景技術CRISPR(クラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復配列、ClusteredRegularlyInterspacedShortPalindromicRepeat) は、配列決定された細菌の約40%及び配列決定された古細菌の90%のゲノムにおいて見出される多数の短い直列反復配列を含む遺伝子座であるが、原核生物の免疫系として機能する(【0002】)。タイプⅡCRISPR/Casシステムに必須のタンパク質成分であるCas9ポリペプチドは、CRISPRRNA(crRNA)及びトランス活性化crRNA(trac rRNA)と呼ばれる2つのRNAと複合体を形成した場合、活性を有するエンドヌクレアーゼを形成し、それによって侵入したファージ又はプラスミド中の外来遺伝因子を切断して、宿主細胞を防御する(【0003】)。 近年、【A】ら(1 合体を形成した場合、活性を有するエンドヌクレアーゼを形成し、それによって侵入したファージ又はプラスミド中の外来遺伝因子を切断して、宿主細胞を防御する(【0003】)。 近年、【A】ら(1)は、crRNA及びtracrRNAの必須部分の融合によって産生された一本鎖キメラRNAがCas9/RNA複合体中の2 つのRNAと置き換え可能であり、機能的なエンドヌクレアーゼを形成できることを実証した(【0003】)。 ヌクレオチド結合CRISPR-Casタンパク質における部位特異性は、設計及び合成がより困難であり得るDNA結合タンパク質の代わりに、RNA分子に支配されているので、CRISPR/Casシステムは、ジンクフ ィンガー及び転写活性化因子様エフェクターDNA結合タンパク質に対して利点を提供する(【0004】)⑶ 発明が解決しようとする課題今まで、CRISPR/Casシステムに基づくRNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)を用いたゲノム編集法は開発されていなかったところ、 本願発明は、CRISPR/Casシステムに基づくゲノム編集法であり、 真核細胞及び真核生物において標的化してDNAを切断するプログラム可能なRNA誘導型エンドヌクレアーゼを開発したものである(【0004】、【0006】)。 ⑷ 課題を解決するための手段本願発明の目的は、標的DNAに特異的なガイドRNA若しくはガイドR NAをコードするDNA、及びCasタンパク質コード核酸若しくはCasタンパク質を含有する、真核細胞又は真核生物中の標的DNAを切断するための組成物を提供することである(【0007】)。 ⑸ 発明の効果本願発明は、新しい便利なゲノム編集ツール Casタンパク質を含有する、真核細胞又は真核生物中の標的DNAを切断するための組成物を提供することである(【0007】)。 ⑸ 発明の効果本願発明は、新しい便利なゲノム編集ツールを提供する(【0021】)。 ⑹ 発明を実施するための形態ア本願発明より前に、Casタンパク質のエンドヌクレアーゼ活性は知られていたが、真核生物のゲノムの複雑さのため、Casタンパク質のエンドヌクレアーゼ活性が真核細胞中で機能するかどうかは知られていなかった(【0025】)。ZFN及びTALENと比較して、Casタンパク質 に基づく本願発明の組成物は、合成ガイドRNA成分が置き換えられるだけで新たなゲノム編集ヌクレアーゼを作製できるため、より容易にカスタム化され得る上、オフターゲット作用を持たないため、望ましくない突然変異、欠失、逆位、及び重複を引き起こさない特性を有することから、真核細胞及び真核生物におけるゲノム工学のための拡張性のある、汎用的で 便利なツールとなる(【0026】)。 イ Casの遺伝子及びタンパク質に関する情報は、国立生物工学情報センター(NationalCenterforBiotechnologyInformation、NCBI)のGenBankから、制限なく利用できる(【0027】)。3種類のCRISPR-Casシステムが存在し、そのうち、Cas9タンパク質並びにc rRNA及びtracrRNAを含むタイプⅡCRISPR/Casシ ステムが代表的であり、よく知られている(【0028】)。 ウ本願発明の組成物は、タンパク質の形態で、又はCasタンパク質をコードする核酸の形態で、Cas成分を含有しうるものであり、Casタンパク質は、 であり、よく知られている(【0028】)。 ウ本願発明の組成物は、タンパク質の形態で、又はCasタンパク質をコードする核酸の形態で、Cas成分を含有しうるものであり、Casタンパク質は、ガイドRNAと複合体を形成した際、それがエンドヌクレアーゼ活性又はニッカーゼ活性を有する限り、任意のCasタンパク質であり 得る(【0029】)。 エ本願発明では、ガイドRNAは、CRISPRRNA(crRNA)及びトランス活性化crRNA(tracrRNA)で構成され、又はcrRNA及びtracrRNAの必須部分の融合によって作製される一本鎖RNA(sgRNA)やcrRNA及びtracrRNAを含むデュ アルRNAであり得、ガイドRNAがcrRNA及びtracrRNAの必須部分並びに標的と相補的な部分を含むならば、任意のガイドRNAが本願発明において使用され得る(【0033】)。 オガイドRNAは、RNA又はガイドRNAをコードするDNA(核酸)の形態で、細胞又は生物に移入され得る(【0035】)。 2 取消事由(引用発明に基づく本願発明の進歩性判断の誤り)の有無について⑴ 相違点1の容易想到性判断の誤りの有無についてア引用発明1について引用文献1には、別紙2「引用文献1の記載事項(抜粋・訳文)」のとおりの記載があり(訳は、甲20添付訳文及び乙8による。)、①クラスター 化され、規則的に間隔が空いている短い回文の反復(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)系を構成するtracrRNA及びcrRNAに基づいて設計されたキメラRNAとⅡ型Cas9タンパク質とにより、プラスミド中の、キメラRNAと塩基対を形成する標的DNAが、緩衝液中で切断されることを実験により確認 racrRNA及びcrRNAに基づいて設計されたキメラRNAとⅡ型Cas9タンパク質とにより、プラスミド中の、キメラRNAと塩基対を形成する標的DNAが、緩衝液中で切断されることを実験により確認したこと、②当該キメラRNAが、 crRNAの3′末端側にtracrRNAの5′末端側を融合させた ものであることが記載されており、これら記載によると、引用発明として、本件審決が認定するとおりのものを認定することができ、この点は、当事者間にも争いがない。 イ相違点1について 本願発明の組成物と引用発明の組成物とを対比すると、相違点として、 本件審決が認定するとおりの相違点1及び2を認定することができ、この点は、当事者間にも争いがない。 ここで、原告は、相違点1を「本願発明は、「真核細胞」における標的DNAを切断するための組成物であるのに対して、引用発明は、「緩衝液中」の標的DNAを切断するための組成物である点」(以下「相違点1A」 という。)と「本願発明は、Cas9ポリペプチドが「核局在化シグナル」を有しているのに対して、引用発明は、Cas9ポリペプチドが「核局在化シグナル」を有していない点」(以下「相違点1B」という。)とに分けてその容易想到性を論じているから、当裁判所も、ひとまず便宜的にこれに従い、以下、判断を加える。 相違点1Aについて引用文献1には、「クラスター化され、規則的に間隔が空いている短い回文の反復(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)系」のcrRNAとトランス活性化crRNA(tracrRNA)が塩基対になって形成されるデュアル-tracrRNA:crRNAが、Cas9 ポリペプチドに標的DNAの ISPR関連(Cas)系」のcrRNAとトランス活性化crRNA(tracrRNA)が塩基対になって形成されるデュアル-tracrRNA:crRNAが、Cas9 ポリペプチドに標的DNAの二本鎖切断を指示することが記載され、その上で、「このデュアル-tracrRNA:crRNAは、一本鎖RNAキメラとして設計されたときも、配列特異的に、Cas9による二本鎖DNA切断を誘導する。私たちの研究は、部位特異的DNA切断のためにデュアル-RNAを使用するエンドヌクレアーゼのファミリーを明 らかにし、RNAでプログラム可能なゲノム編集のためにこのシステム を利用する可能性を強調する。」と記載されている(816頁要約)。そして、引用文献1には、引用発明のCRISPR/Cas系に関して、「ゲノム標的化及びゲノム編集のための・・・システムを開発することができるという刺激的な可能性を示している。」(816頁中欄35行目ないし右欄3行目)及び「プログラムされたDNA切断及びゲノム編集 において潜在的に有用であるため、魅力的である。」(820頁左欄2ないし5行目)とも記載されている。さらに、引用文献1には、「ジンク-フィンガーヌクレアーゼや転写活性化様エフェクターヌクレアーゼは、ゲノムを操作するために設計された人工酵素として、大きな関心を集めた。私たちは、遺伝子ターゲティングとゲノム編集への応用に向けた大 きな潜在能力をもたらし得るRNAによりプログラムされたCas9に基づく代替的な手法を提案する。」(820頁右欄2ないし9行目)と記載されている。 これらの記載からみて、引用文献1には、引用発明1のCRISPR/Cas9系がゲノム編集に有用であろうことが示唆されており、CR ISPR 欄2ないし9行目)と記載されている。 これらの記載からみて、引用文献1には、引用発明1のCRISPR/Cas9系がゲノム編集に有用であろうことが示唆されており、CR ISPR/Cas9系はゲノムを操作するために設計された人工酵素であるZFNやTALENに替わり得る新たなゲノム編集の手段として提案されていたと認められる。 一方、本願第1優先日当時、ゲノム編集の主たる対象は真核細胞であって、ZFNやTALENが真核細胞中の標的DNAすなわち核内のゲ ノムを切断するものであることは技術常識である(甲21の1464頁34ないし36行目、甲22の339頁右欄15行目ないし340頁左欄16行目、甲23の143頁右欄8ないし13行目、甲24の2頁右欄35ないし40行目、甲25の1[0064]〔訳は甲25の2【0064】による。〕、甲26の1[CLAIM 3]、[0075]ないし[007 8]〔訳は甲26の2【請求項3】、【0075】ないし【0078】によ る。〕)。 また、本願第1優先日当時、タンパク質や核酸を真核細胞へ送達する各種手段は周知技術である(甲25の1[0068]〔訳は甲25の2【0068】による。〕、甲26の1[0075]、[0104]、[0105]〔訳は甲26の2【0075】、【0104】、【0105】による。〕)。 これらの点を踏まえれば、引用文献1の記載に接した当業者は、引用文献1にいう「ゲノム編集」は「真核細胞」におけるゲノム編集をも意図するものと認識し、本願第1優先日当時の周知技術に基づいて、引用発明のCRISPR/Cas9系を、真核細胞のゲノム上の標的DNAの切断に用いようと試みるものといえる。 をも意図するものと認識し、本願第1優先日当時の周知技術に基づいて、引用発明のCRISPR/Cas9系を、真核細胞のゲノム上の標的DNAの切断に用いようと試みるものといえる。 相違点1Bについて真核細胞のゲノムが核内に存在することは当業者にとって自明の事項であるところ、タンパク質を真核細胞の核内に移行させるために核局在化シグナルを付加することは、本願第1優先日当時の常套手段である(甲24の2頁図1、甲25の1[0039]〔訳は甲25の2【0039】 による。〕、甲26の1[0085]〔訳は甲26の2【0085】による。〕、甲27の23頁27行目ないし24頁6行目、甲28【請求項1】、甲29【0147】)。 そうすると、上記のとおりに引用発明のCRISPR/Cas9系を真核細胞のゲノム上の標的DNAの切断に用いようと試みる当業者は、 Cas9ポリペプチドに核局在化シグナルを付与することを常套手段として当然に行うと認められるから、核局在化シグナルの付与に独自の創意工夫を挟ませる余地はないといえる。 小括以上からすると、相違点1は容易に想到できるといえる。 ウ原告の主張について 原告は、前記第3の1⑴アのとおり、引用発明を真核細胞へ適用する際の阻害要因(同)、本願第1優先日当時の当業者の認識及び技術常識(同)、又は引用発明とZFN及びTALENといった従来技術との相違(同)から、引用発明のCRISPR/Cas9系を真核細胞の核内のゲノムに対して機能させようと試みることは動機付けられない旨主張する。 本願発明と引用発明とは、引用発明のCas9ポリペプチドが「核局在化シグナル」を /Cas9系を真核細胞の核内のゲノムに対して機能させようと試みることは動機付けられない旨主張する。 本願発明と引用発明とは、引用発明のCas9ポリペプチドが「核局在化シグナル」を有していない点(相違点1B)を除き、①物としての構成、すなわち、(ⅰ)Cas9ポリペプチドと(ⅱ)crRNA配列がtracrRNA配列に対して5′末端側に融合し、標的DNAにハイブリダイズするガイドRNAを含むキメラガイドRNAを含む組成物であるという 点で一致し、②用途としての構成、すなわち、標的DNAを切断するためのCRISPR/Cas9系である点で一致する。そして、真核細胞に適用するための単なる常套手段である上記相違点1B以外、本願発明が真核細胞における標的DNAを切断するための組成物である点(相違点1A)に関して、そのような用途に用いるについて本願発明が特徴的な構成を有 することは原告から何も主張されておらず、実際、本願発明の構成から、引用発明の構成に加えて、そのような特徴的な構成のための限定あるいは付加をうかがうことはできない。そうすると、本願発明の構成を前提とする限り、本願発明は、引用発明のCRISPR/Cas9系を常套手段を用いて真核細胞に適用できることを確認したにすぎないものである。 したがって、なおも本願発明の構成を前提としてこれが容易想到であるとはいえないというためには、本願発明が真核細胞における標的DNAを切断するための組成物である点(相違点1A)について、引用発明のCRISPR/Cas9系を真核細胞に適用しようと試みることは動機付けられないとする特別な事情が必要である。 以下、このような観点から、原告において本願発明が容易に想到できる とはい 細胞に適用しようと試みることは動機付けられないとする特別な事情が必要である。 以下、このような観点から、原告において本願発明が容易に想到できる とはいえないことを基礎付けると主張する阻害要因等について検討する。 阻害要因について原告は、前記第3の1⑴アのとおり、本願第1優先日当時の当業者の認識として、①Cas9ポリペプチドのように真核細胞内に本来的に存在しないタンパク質は、真核細胞内では、不適切なフォールディングに より活性を失うか、ユビキチン経路と呼ばれる真核細胞に存在するタンパク質分解経路によって認識されて分解されることが想定された(阻害要因1)、②ガイドRNAがCas9ポリペプチドと複合体を形成するよりも前に真核細胞性のヌクレアーゼによって分解されたり、分子シャペロンがガイドRNAに結合して機能性CRISPR/Cas9系が形成 されるのが邪魔されることが想定された(阻害要因2)、③Cas9ポリペプチドが、真核細胞の細胞質から核へと移動し、次いでガイドRNAを見つけ出しそれと機能可能な正しい複合体を形成することができないことが想定された(阻害要因3)、④真核細胞のゲノムDNAが高度に折り畳まれているクロマチンによってCRISPR/Cas9系の使用が 阻まれることが想定された(阻害要因4)、⑤CRISPR/Cas9系がゲノムサイズの大きな真核細胞ゲノムについて標的配列ではないDNA配列を切断してしまうことが想定された(阻害要因5)、⑥低濃度のマグネシウムイオン環境である真核細胞においては、CRISPR/Cas9複合体を適用してDNAを切断することはできないことが想定され た(阻害要因6)、⑦ガイドRNAを真核細胞に導入することに伴う細胞 ウムイオン環境である真核細胞においては、CRISPR/Cas9複合体を適用してDNAを切断することはできないことが想定され た(阻害要因6)、⑦ガイドRNAを真核細胞に導入することに伴う細胞毒性があることが想定された(阻害要因7)ことが阻害要因となる旨、るる主張する。 しかしながら、原告の上記主張は、原核細胞と真核細胞の相違から、引用発明のCRISPR/Cas9系を真核細胞に適用する際に生じ得 る事象の一般的・抽象的な可能性又は懸念を述べるにとどまるものであ って、具体的にこれら事象が生じることが確認されていたことを示すものではないから、引用発明を真核細胞に適用するに際する障害として、引用発明の構成から具体的に克服しなければならない課題を述べるものとはいえない。 したがって、上記のような一般的・抽象的な可能性又は懸念をもって、 引用発明のCRISPR/Cas9系を真核細胞に適用しようと試みることが動機付けられない特別の事情に当たるとはいえず、むしろ、前記イのとおり、引用文献1に接した当業者は、当然に、CRISPR/Cas9系を真核細胞に適用しようと試みるものといえる。 したがって、原告主張の上記各阻害事由は、本件結論を左右し得るも のではない。 当業者の認識及び技術常識について原告は、前記第3の1⑴アaないしcのとおり、①本願第1優先日当時、T7 RNAポリメラーゼ、グループⅡイントロンシステム、リボスイッチ、リボザイムのように真核細胞由来ではないシステム及び遺 伝子を真核細胞において機能させる数々の試みが失敗してきた、②当業者はCRISPR/Cas9系が真核細胞内で機能し得ることについては専ら否定的な見解 ように真核細胞由来ではないシステム及び遺 伝子を真核細胞において機能させる数々の試みが失敗してきた、②当業者はCRISPR/Cas9系が真核細胞内で機能し得ることについては専ら否定的な見解を有していた旨主張する。 しかしながら、原告の指摘内容からしても、T7 RNAポリメラーゼ、グループⅡイントロンシステム、リボスイッチ、リボザイムは、真 核細胞由来ではないシステムという限度でCRISPR/Cas9系と関連するのにとどまり、CRISPR/Cas9系とは関連性の薄い技術に関するものにすぎず、少なくとも、T7 RNAポリメラーゼ等の前記技術を真核細胞に適用することに失敗した例を報告する論文があったとしても、CRISPR/Cas9系を真核細胞に適用することを試 みることを妨げるものとはいえない。 また、本願第1優先日当時の当業者の認識等について、原告は、前記第3の1⑴アbのとおり、本願第1優先日前後に刊行された各文献に、CRISPR/Cas9系が真核細胞内で機能し得ることについて否定的な記載がある旨主張するが、これらの記載は、真核細胞への適用に当たり解決すべき課題として当業者が認識していたものを具体的に明らか にするものではない。かえってこれらの文献には、「真核細胞において部位特異的DNA切断をするための代替手段は、非常に興味深い。」(甲48の1頁Introduction6ないし8行目、訳は乙21による。)、「【D】は、『私の研究室は、どのようにすればCRISPR/Cas9が真核細胞において適切に機能するかについて探索を始めた』と述べた。『その間、 ハーバード大学の【E】やMITの【F】の研究グループもまた、CRISPR/Cas9が真核細胞において機能 as9が真核細胞において適切に機能するかについて探索を始めた』と述べた。『その間、 ハーバード大学の【E】やMITの【F】の研究グループもまた、CRISPR/Cas9が真核細胞において機能し得るかを確認するため、懸命に作業を行っていた』。」(甲49の20頁左欄13ないし17行目。 訳は乙22による。)、「単一のプログラム可能なRNA鎖のみを必要とするようにシステムを設計できるとしたらどうだろうか。そうすると、生 物学者はそれを使用して任意のDNA配列を簡単に標的化して切断することができる。【D】は『興奮の寒気』を感じた。」(甲37の2頁26ないし28行目。訳は乙23による。)、「先週サイエンス誌速報に発表された2つの新しい論文は、この技術がヒト細胞でも作用することを示した。 ヒト細胞での同様の成功を報告する【D】らの論文は新しいオープンア クセスなeLife誌で発行されることが受理された。」(甲87の1頁20ないし23行目。訳は乙24による。)、「【A】らによる新しい研究は、特定のゲノム配列を標的とすることができる試薬の設計のための、新しいアプローチ―最も原始的なDNA認識に基づく―を提供した」(甲41の1658頁中欄10ないし14行目。訳は乙25による。)、「この システムを真核細胞に適用する試みだけが、これらの懸念を払拭するで あろう。」(甲41の1660頁右欄5ないし6行目。訳は乙25による。)、「CRISPRシステムが、標的切断手法の次の次の世代を提供するかどうかはまだわからないが、試す価値があることは明らかである。乞うご期待。」(甲41の1660頁右欄26ないし30行目。訳は乙25による。)とあるように、当業者は、原核細胞と真核細胞の違いを認識しつ つも、CRIS が、試す価値があることは明らかである。乞うご期待。」(甲41の1660頁右欄26ないし30行目。訳は乙25による。)とあるように、当業者は、原核細胞と真核細胞の違いを認識しつ つも、CRISPR/Cas9系を真核細胞に適用することを試みる価値のある有望なものと認識していたものであって、実際に、本願第1優先日当時、複数の研究機関がその適用を試みており(甲35、36、48、49、乙15)、むしろ、CRISPR/Cas9系の真核細胞への適用を試みることには当業者にとって何ら障害のあるものではなかった というべきである。 以上のとおりであるから、原告の上記主張を採用することはできない。 ZFN及びTALENとCRISPR/Cas9系との相違について原告は、前記第3の1⑴アのとおり、ZFNやTALENはCRISPR/Cas9系のようにRNAと複合体を形成するような構造では ないことから、ZFNやTALENといった従来技術の活用例から、CRISPR/Cas9系を真核細胞へと適用することの動機付けを見いだすことはできない旨主張する。 しかしながら、原告の指摘内容にあるとおり、ZFNは、真核細胞のゲノムDNA配列に結合するジンクフィンガーモジュールと細菌由来の ゲノムDNA配列を切断する機能を有するFok1酵素とからなり、TALENは、真核細胞である植物細胞のゲノムDNA配列に結合するTALエフェクターと上記Fok1を組み合わせたものであり、真核細胞由来以外の要素も含むものであるから、CRISPR/Cas9系が原核細胞由来のものであるというだけで、当業者がCRISPR/Cas 9系を真核細胞に適用することの試みさえ躊躇するものとはいい難い。 また、Z SPR/Cas9系が原核細胞由来のものであるというだけで、当業者がCRISPR/Cas 9系を真核細胞に適用することの試みさえ躊躇するものとはいい難い。 また、ZFNやTALENのDNA結合ドメインが、真核細胞のクロマチン環境に特化した構造や標的配列認識機構を有しているとの事情も見いだせない。そうしてみると、ZFNやTALENと、CRISPR/Cas9系との構造等の違いをもって、CRISPR/Cas9系を真核細胞における標的DNAの切断に適用することが動機付けられないと はいえない。 以上のとおりであるから、原告の上記主張を採用することはできない。 核局在化シグナルの付加の点について原告は、前記第3の1⑴イのとおり、①ZFNやTALENよりもサイズが大きく構造も異なるCRISPR/Cas9系が真核細胞の核膜 を通過して核内へと移行することは想到できない、②核局在化シグナルを利用してポリペプチドを真核生物の核内に移行させられ得るとしても、核内に移行したCas9ポリペプチドがガイドRNAと複合体を形成できるか予測できない、③引用発明の対象を真核細胞へと変更し、さらに、核内移行手段として核局在化シグナルを用いることは、いわゆる2ステ ップを要する「容易の容易」であるから、容易想到とはいえない旨主張する。 しかしながら、核局在化シグナルを有する物質が核膜に存在する小さな核膜孔を直径約100nmに開いて核内へと通過することは、本願第1優先日当時の技術常識であり(乙29)、約170kDaのMTase (DNAシトシン―5―メチルトランスフェラーゼ)(乙34)、約185kDaのトポⅡ(DNAトポイソメラーゼⅡ)(乙35)、約239kDa 術常識であり(乙29)、約170kDaのMTase (DNAシトシン―5―メチルトランスフェラーゼ)(乙34)、約185kDaのトポⅡ(DNAトポイソメラーゼⅡ)(乙35)、約239kDaのSen1p(乙36)といった天然の核局在化シグナルを有するタンパク質が核膜孔を直径約100nmに開口して通過することが広く知られていたから、163kDa程度の分子量であるCas9ポリペプ チドについて、核局在化シグナルを付加するという常套手段を採用する ことによって核内に移行させ得ることを十分に期待できたといえ、CRISPR/Cas9系がZFNやTALENよりもサイズが大きく構造も異なる点は、CRISPR/Cas9系を真核細胞へ適用することの試みを何ら妨げない。そして、Cas9ポリペプチドが核内に移行してガイドRNAと複合体を形成できるか予測できないと主張する点は、前 記第3の2⑴アcの阻害要因3と同趣旨の主張であるから、前記のとおり、単にCRISPR/Cas系を真核細胞に適用する際に生じる事象の一般的・抽象的な可能性又は懸念を述べるにとどまるものである。 そして、核局在化シグナルはタンパク質を真核細胞の核内に移行させるための常套手段であるから、引用発明のCRISPR/Cas9系を 真核細胞に適用しようとすること、すなわち、Cas9ポリペプチドを真核細胞の核内に移行しようとするならば、真核細胞の核内に移行する手段を採用するのは至極当然のことであり、Cas9ポリペプチドへの核局在化シグナルの付加は、引用発明のCRISPR/Cas系を真核細胞へ適用しようと試みると同時に当然導き出されることである。そう すると、核局在化シグナルの付加は、真核細胞に適用されたCRISPR/Cas9 付加は、引用発明のCRISPR/Cas系を真核細胞へ適用しようと試みると同時に当然導き出されることである。そう すると、核局在化シグナルの付加は、真核細胞に適用されたCRISPR/Cas9系との構成を前提にしてこれに対して更に改変を加えるというものではなく、いわゆる「容易の容易」に当たるようなものではない。 以上のとおりであるから、原告の上記主張を採用することはできない。 そのほか原告がるる主張するところも、前記イの判断を左右するものではない。 ⑵ 予測できない顕著な効果について原告は、前記第3の1⑵のとおり、本願発明には、真核細胞内のゲノムDNAを切断し、編集することができるという予測できない顕著な効果がある 旨主張する。 しかしながら、発明の効果が予測できない顕著なものであるかについては、当該発明の特許要件判断の基準日当時、当該発明の構成が奏するものとして当業者が予測することのできなかったものか否か、当該構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものであるか否かという観点から検討する必要がある(最高裁判所平成30年(行ヒ)第69号令和元年 8月27日第三小法廷判決・集民262号51頁参照)。そして、本願発明の構成は、真核細胞における標的DNAを切断するための組成物であるから、そのような組成物が真核細胞内のゲノムDNAを切断し、編集することができるのは当然に予想されるといい得るところ、原告が予測できない顕著な効果として主張するものは、いずれも、真核細胞における標的DNAを切断す るための組成物であれば当然に備えることが予想される範囲内の効果をいうにすぎないから、本願発明に予測できない顕著な効果を認める余地 主張するものは、いずれも、真核細胞における標的DNAを切断す るための組成物であれば当然に備えることが予想される範囲内の効果をいうにすぎないから、本願発明に予測できない顕著な効果を認める余地はない。 ⑶ まとめ以上のとおりであるから、相違点1の構成は容易に想到することができ、そして、原告は、相違点2の構成が容易に想到できるとする本件審決の判断 を争うものではなく、さらに、本願発明は予測できない顕著な効果を奏するものでもないから、本願発明は容易に発明することができたものである。 3 結論よって、取消事由は理由がないから、原告の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官菅野雅之 裁判官本吉弘行 裁判官中村恭 (別紙1)本願明細書の記載事項(抜粋) 【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】本発明は、真核細胞または真核生物における標的化ゲノム編集に関する。より詳細には、本発明は、標的DNAに特異的なガイドRNAおよびCasタンパク質コード核酸もしくはCasタンパク質を含有する、真核細胞または真核生物中の標的DNAを切断するための組成物、ならびにその使用に関する。 【背景技術】【0002】CRIS タンパク質コード核酸もしくはCasタンパク質を含有する、真核細胞または真核生物中の標的DNAを切断するための組成物、ならびにその使用に関する。 【背景技術】【0002】CRISPR(クラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復配列、ClusteredRegularlyInterspacedShortPalindromicRepeat)は、配列決定された細菌の約40%および配列決定された古細菌の90%のゲノムにおいて見出 される多数の短い直列反復配列を含む遺伝子座である。CRISPRは、原核生物の免疫系として機能し、そこでそれは、プラスミドおよびファージなどの外因性の遺伝因子に対する抵抗性を与える。CRISPRシステムは、一種の獲得免疫をもたらす。スペーサーと呼ばれる外来DNAの短いセグメントは、ゲノムのCRISPRリピートの間に組み込まれ、過去の曝露の記憶として機能する。CRISPR スペーサーは、その後、真核生物におけるRNAiと類似した方法で外因性遺伝因子を認識してサイレンシングするために用いられる。 【0003】タイプⅡCRISPR/Casシステムに必須のタンパク質成分であるCas9は、CRISPRRNA(crRNA)およびトランス活性化crRNA(tr acrRNA)と呼ばれる2つのRNAと複合体を形成した場合、活性を有するエ ンドヌクレアーゼを形成し、それによって侵入したファージまたはプラスミド中の外来遺伝因子を切断して、宿主細胞を防御する。crRNAは、以前にこのような外来侵入物から捕捉された、宿主ゲノム内のCRISPRエレメントから転写される。近年、Jinekら(1)は、crRNAおよびtracrRNAの必須部分の融合によって産生され NAは、以前にこのような外来侵入物から捕捉された、宿主ゲノム内のCRISPRエレメントから転写される。近年、Jinekら(1)は、crRNAおよびtracrRNAの必須部分の融合によって産生された一本鎖キメラRNAがCas9/RNA複合体中の2つ のRNAと置き換え可能であり、機能的なエンドヌクレアーゼを形成できることを実証した。 【0004】ヌクレオチド結合CRISPR-Casタンパク質における部位特異性は、設計および合成がより困難であり得るDNA結合タンパク質の代わりに、RNA分子に 支配されているので、CRISPR/Casシステムは、ジンクフィンガーおよび転写活性化因子様エフェクターDNA結合タンパク質に対して利点を提供する。 しかし、今まで、CRISPR/Casシステムに基づくRNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)を用いたゲノム編集法は、開発されていなかった。 一方、制限酵素断片長多型(RFLP)は、分子生物学および遺伝学においてい まだに広く使用されている、最も古く、最も簡便で、最も安価な遺伝子型決定法の1つであるが、制限エンドヌクレアーゼによって認識される適切な部位の欠如によってしばしば制限される。 【0005】人工(Engineered)ヌクレアーゼ誘発性突然変異は、様々な方法によ って検出され、それらは、ミスマッチ感受性のT7 エンドヌクレアーゼI(T7E1)アッセイまたはSurveyorヌクレアーゼアッセイ、RFLP、蛍光PCR産物のキャピラリー電気泳動法、ジデオキシ配列決定法、およびディープシークエンシング(deepsequencing)を含む。T7E1およびSurveyorアッセイは広く用いられるが、煩雑である。更に、突然変異配列が互い とホモ二本鎖を形成する よびディープシークエンシング(deepsequencing)を含む。T7E1およびSurveyorアッセイは広く用いられるが、煩雑である。更に、突然変異配列が互い とホモ二本鎖を形成する可能性があり、ホモ接合性の二対立遺伝子突然変異体クロ ーンと野生型細胞とを区別できないため、これらの酵素は突然変異頻度を過小評価する傾向がある。RFLPはこれらの制約がないため、好まれる方法である。実際、RFLPは、細胞および動物において人工ヌクレアーゼ仲介性突然変異を検出するための最初の方法の1つであった。しかし残念なことに、RFLPは適切な制限酵素認識部位の利用可能性によって制限される。目的とする標的部位で利用できる制 限酵素認識部位がない可能性がある。 【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0006】今まで、CRISPR/Casシステムに基づくRNA誘導型エンドヌクレアー ゼ(RGEN)を用いたゲノム編集法および遺伝子型決定法は、開発されていなかった。 このような状況下において、本発明者らは、多くの努力を払って、CRISPR/Casシステムに基づくゲノム編集法を開発し、ついに真核細胞および真核生物において標的化してDNAを切断するプログラム可能なRNA誘導型エンドヌクレ アーゼを確立した。 加えて、本発明者らは、多くの努力を払って、RFLP分析におけるRNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)の新規使用方法を開発した。本発明者らは、RGENを用いて、癌において見出される反復突然変異ならびにRGEN自身を含む人工ヌクレアーゼによって細胞および生物に誘発された突然変異の遺伝子型決定を 行い、それによって本発明を完成させた。 【課題を解決するための手段】【0007 変異ならびにRGEN自身を含む人工ヌクレアーゼによって細胞および生物に誘発された突然変異の遺伝子型決定を 行い、それによって本発明を完成させた。 【課題を解決するための手段】【0007】本発明の目的は、標的DNAに特異的なガイドRNAもしくはガイドRNAをコードするDNA、およびCasタンパク質コード核酸もしくはCasタンパク質を 含有する、真核細胞または真核生物中の標的DNAを切断するための組成物を提供 することである。 本発明の他の目的は、標的DNAに特異的なガイドRNAもしくはガイドRNAをコードするDNA、およびCasタンパク質コード核酸もしくはCasタンパク質を含有する、真核細胞または真核生物において標的化突然変異生成を誘発するための組成物を提供することである。 【発明の効果】【0021】真核細胞または真核生物において標的DNAを切断するための、または標的化突然変異生成を誘発するための、標的DNAに特異的なガイドRNAおよびCasタンパク質コード核酸もしくはCasタンパク質を含有する本組成物、本組成物を含 むキット、ならびに標的化突然変異生成を誘発する方法は、新しい便利なゲノム編集ツールを提供する。加えて、カスタムRGENは任意のDNA配列を標的とするように設計することができるため、ほぼすべての一塩基多型または小さな挿入/欠失(indel)は、RGEN仲介性RFLPによって分析でき、従って、本発明の組成物および方法は、自然発生多型および突然変異の検出および切断に使用さ れうる。 【図面の簡単な説明】【0022】【図1a】図1は、invitroでのプラスミドDNAのCas9触媒性切断を示す。(a)標的DNAおよびキメラRNA配列の模式図 に使用さ れうる。 【図面の簡単な説明】【0022】【図1a】図1は、invitroでのプラスミドDNAのCas9触媒性切断を示す。(a)標的DNAおよびキメラRNA配列の模式図。赤い三角形は切断部位 を示す。Cas9によって認識されるPAM配列は太字で示される。crRNAおよびtracrRNAに由来するガイドRNA中の配列は、それぞれ、囲み内および下線で示される。 【図1b】図1は、invitroでのプラスミドDNAのCas9触媒性切断を示す。(b)Cas9によるプラスミドDNAのinvitroでの切断。完全 な(intact)環状プラスミドまたはApaLI消化プラスミドを、Cas9 およびガイドRNAとともにインキュベートした。 【図3a】図3は、内在性の染色体部位でのRGEN誘発性突然変異を示す。(a)CCR5遺伝子座。(上)T7E1アッセイを用いて、RGEN誘発性突然変異を検出した。矢印は、T7E1によって切断されるDNAバンドの予測される位置を示す。突然変異頻度(Indels(%))は、バンド強度の測定によって計算された。 (下)CCR5およびC4BPBの野生型(WT)ならびに突然変異体クローンのDNA配列。ガイドRNAに相補的な標的配列の領域は、囲み(boc)で示される。PAM配列は太字で示される。三角形は切断部位を示す。マイクロホモロジーに相当する塩基には下線が引かれている。右側の列は、挿入または欠失した塩基数を示す。 【図10a】図10は、Cas9タンパク質/sgRNA複合体誘発性の標的化突然変異を示す。 【発明を実施するための形態】【0023】本発明の1つの態様に従って、本発明は、標的DNAに特異的なガイドRNAも しくはガイ ク質/sgRNA複合体誘発性の標的化突然変異を示す。 【発明を実施するための形態】【0023】本発明の1つの態様に従って、本発明は、標的DNAに特異的なガイドRNAも しくはガイドRNAをコードするDNA、およびCasタンパク質コード核酸もしくはCasタンパク質を含有する、真核細胞または真核生物中の標的DNAを切断するための組成物を提供する。加えて、本発明は、標的DNAに特異的なガイドRNAもしくはガイドRNAをコードするDNA、およびCasタンパク質コード核酸もしくはCasタンパク質を含有する、真核細胞または真核生物中の標的DNA を切断するための組成物の使用を提供する。 本発明では、組成物はまた、RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)組成物とも呼ばれる。 【0024】ZFNおよびTALENは、哺乳類細胞、モデル生物、植物、および家畜類にお いて標的化突然変異生成を可能にするが、個々のヌクレアーゼによって得られる突 然変異頻度は、それぞれ大きく異なる。更に、いくつかのZFNおよびTALENは、ゲノム編集活性を示すことができない。DNAのメチル化は、これらの人工ヌクレアーゼの標的部位への結合を制限しうる。 加えて、カスタム化ヌクレアーゼを作製することは、技術的に困難であり、時間がかかる。 本発明者らは、Casタンパク質に基づく新たなRNA誘導型エンドヌクレアーゼ組成物を開発することによって、ZFNおよびTALENの欠点を克服した。 【0025】本発明より前に、Casタンパク質のエンドヌクレアーゼ活性は知られていた。 しかし、真核生物のゲノムの複雑さのため、Casタンパク質のエンドヌクレアー ゼ活性が真核細胞中で機能するかどうかは知られていなかった。 Casタンパク質のエンドヌクレアーゼ活性は知られていた。 しかし、真核生物のゲノムの複雑さのため、Casタンパク質のエンドヌクレアー ゼ活性が真核細胞中で機能するかどうかは知られていなかった。更に、これまで、Casタンパク質またはCasタンパク質コード核酸および標的DNAに特異的なガイドRNAを含有する、真核細胞または真核生物中の標的DNAを切断するための組成物は、開発されていなかった。 【0026】 ZFNおよびTALENと比較して、Casタンパク質に基づく本RGEN組成物は、合成ガイドRNA成分が置き換えられるだけで新たなゲノム編集ヌクレアーゼを作製できるため、より容易にカスタム化され得る。サブクローニングステップは、カスタム化RNA誘導型エンドヌクレアーゼの作製に含まれない。更に、一対のTALEN遺伝子(~6kbp)と比較して、比較的小さいサイズのCas遺伝 子(例えば、Cas9では4.2kbp)は、ウイルス媒介性遺伝子送達などのいくつかの適用において、このRNA誘導型エンドヌクレアーゼ組成物に利点をもたらす。更に、このRNA誘導型エンドヌクレアーゼは、オフターゲット作用を持たないため、望ましくない突然変異、欠失、逆位、および重複を引き起こさない。これらの特性は、本RNA誘導型エンドヌクレアーゼ組成物を、真核細胞および真核 生物におけるゲノム工学のための拡張性のある、汎用的で便利なツールにする。加 えて、RGENは、任意のDNA配列を標的とするように設計することができ、ほぼすべての一塩基多型または小さな挿入/欠失(indel)が、RGEN仲介性RFLPによって分析され得る。RGENの特異性は、最大20塩基対(bp)までの長さの標的DNA配列とハイブリダイズするRNA成分および 塩基多型または小さな挿入/欠失(indel)が、RGEN仲介性RFLPによって分析され得る。RGENの特異性は、最大20塩基対(bp)までの長さの標的DNA配列とハイブリダイズするRNA成分およびプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を認識するCas9タンパク質によって決定される。R GENは、RNA成分を置き換えることによって容易に再プログラム化される。従って、RGENは、様々な配列変異に対して簡単で確実なRFLP分析を使用するための基盤をもたらす。 【0027】標的DNAは、内在性DNA、または人工DNA、好ましくは内在性DNAであ りうる。 本明細書において用いられる場合、「Casタンパク質」という用語は、CRISPR/Casシステムにおいて必須のタンパク質成分を指し、CRISPRRNA(crRNA)およびトランス活性化crRNA(tracrRNA)と呼ばれる2つのRNAと複合体を形成した場合に、活性を有するエンドヌクレアーゼまた はニッカーゼを形成する。 Casの遺伝子およびタンパク質に関する情報は、国立生物工学情報センター(NationalCenterforBiotechnologyInformation、NCBI)のGenBankから、制限なく利用できる。 【0028】 Casタンパク質をコードするCRISPR関連(cas)遺伝子はしばしば、CRISPRリピート-スペーサーアレイに関連付けられる。40を超える異なるCasタンパク質ファミリーが記載されている。これらのタンパク質ファミリーのうち、Cas1は、様々なCRISPR/Casシステムに共通して遍在していると思われる。3種類のCRISPR-Casシステムが存在する。それらのうち、 Cas9タンパク質ならびにcrR リーのうち、Cas1は、様々なCRISPR/Casシステムに共通して遍在していると思われる。3種類のCRISPR-Casシステムが存在する。それらのうち、 Cas9タンパク質ならびにcrRNAおよびtracrRNAを含むタイプⅡC RISPR/Casシステムは、代表的であり、よく知られている。cas遺伝子とリピート構造の特定の組合せを用いて、8つのCRISPRサブタイプが定義されている(Ecoli、Ypest、Nmeni、Dvulg、Tneap、Hmari、Apern、およびMtube)。 【0029】Casタンパク質は、タンパク質形質導入ドメインに結合されうる。タンパク質 形質導入ドメインは、ポリアルギニンまたはHIVに由来するTATタンパク質でありうるが、それに限定されない。 本組成物は、タンパク質の形態で、またはCasタンパク質をコードする核酸の形態で、Cas成分を含有しうる。 本発明では、Casタンパク質は、ガイドRNAと複合体を形成した際、それが エンドヌクレアーゼ活性またはニッカーゼ活性を有する限り、任意のCasタンパク質でありうる。 好ましくは、Casタンパク質は、Cas9タンパク質またはその変異型である。 Cas9タンパク質の変異型は、その中の触媒アスパラギン酸残基が他の任意のアミノ酸に変更されたCas9の突然変異型でありうる。好ましくは、他のアミノ 酸はアラニンでありうるが、それに限定されない。 【0030】更に、Casタンパク質は、ストレプトコッカス属菌(Streptococcussp.)、好ましくは化膿性連鎖球菌(Streptococcuspyogens)などの生物から単離されたもの、または組換えタンパク質でありうるが、それらに限定されない (Streptococcussp.)、好ましくは化膿性連鎖球菌(Streptococcuspyogens)などの生物から単離されたもの、または組換えタンパク質でありうるが、それらに限定されない。 化膿性連鎖球菌(Streptococcuspyogens)に由来するCasタンパク質は、NGGトリヌクレオチドを認識しうる。Casタンパク質は、配列番号109のアミノ酸配列を含みうるが、それに限定されない。 【0031】「組換え」という用語は、例えば、細胞、核酸、タンパク質、またはベクターに 関して用いられる場合、細胞、核酸、タンパク質またはベクターが、異種核酸もし くはタンパク質の導入によって、または天然の核酸もしくはタンパク質の変更によって改変されていること、あるいは細胞がそのように改変された細胞に由来することを示す。従って、例えば、組換えCasタンパク質は、ヒトコドン表を用いてCasタンパク質コード配列を再構成することによって生成されうる。 【0032】 本発明において、Casタンパク質コード核酸は、CMVまたはCAGなどのプロモーターの制御下にCasコード配列を含むプラスミドなどのベクターの形態でありうる。Casタンパク質がCas9である場合、Cas9コード配列は、ストレプトコッカス属菌(Streptococcussp.)に由来し、好ましくは化膿性連鎖球菌(Streptococcuspyogens) に由来しうる。例えば、Cas9コード核酸は、配 列番号1のヌクレオチド配列を含みうる。更に、Cas9コード核酸は、配列番号1の配列に少なくとも50%、好ましくは配列番号1に少なくとも60、70、80、90、95、97、98、または99%の相同性を有するヌクレオチド配列 列を含みうる。更に、Cas9コード核酸は、配列番号1の配列に少なくとも50%、好ましくは配列番号1に少なくとも60、70、80、90、95、97、98、または99%の相同性を有するヌクレオチド配列を含みうるが、それに限定されない。Cas9コード核酸は、配列番号108、110、106、または107のヌクレオチド配列を含みうる。 【0033】本明細書において用いられる場合、「ガイドRNA」という用語は、標的DNAに特異的であり、Casタンパク質と複合体を形成して、Casタンパク質を標的DNAに持ってくることができるRNAを指す。 本発明では、ガイドRNAは、2つのRNA、すなわち、CRISPRRNA (crRNA)およびトランス活性化crRNA(tracrRNA)で構成され、またはcrRNAおよびtracrRNAの必須部分の融合によって作製される一本鎖RNA(sgRNA)でありうる。 ガイドRNAは、crRNAおよびtracrRNAを含むデュアルRNAでありうる。 ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAの必須部分ならびに標的と相 補的な部分を含むならば、任意のガイドRNAが本発明において使用されうる。 【0034】crRNAは、標的DNAにハイブリダイズしうる。 RGENは、Casタンパク質およびデュアルRNA(不変のtracrRNAおよび標的特異的crRNA)、またはCasタンパク質およびsgRNA(不変 のtracrRNAおよび標的特異的crRNAの必須部分の融合)で構成され、crRNAの置き換えによって容易に再プログラム化されうる。 ガイドRNAは、更に、一本鎖ガイドRNAまたはデュアルRNAのcrRNAの5′末端に1つ以上の付加的なヌクレオチド 融合)で構成され、crRNAの置き換えによって容易に再プログラム化されうる。 ガイドRNAは、更に、一本鎖ガイドRNAまたはデュアルRNAのcrRNAの5′末端に1つ以上の付加的なヌクレオチドを含む。 好ましくは、ガイドRNAは、更に、一本鎖ガイドRNAまたはデュアルRNA のcrRNAの5′末端に2つの付加的なグアニンヌクレオチドを含む。 【0035】ガイドRNAは、RNAまたはガイドRNAをコードするDNAの形態で、細胞または生物に移入されうる。ガイドRNAは、単離されたRNA、ウイルスベクター内に組み込まれたRNAの形であってもよく、またはベクターにコードされる。 好ましくは、ベクターは、ウイルスベクター、プラスミドベクター、またはアグロバクテリウムベクターでありうるが、それらに限定されない。 ガイドRNAをコードするDNAは、ガイドRNAをコードする配列を含むベクターでありうる。例えば、ガイドRNAは、単離されたガイドRNA、もしくはガイドRNAおよびプロモーターをコードする配列を含むプラスミドDNAを細胞ま たは生物にトランスフェクトすることによって、細胞または生物に移入されうる。 あるいは、ガイドRNAは、ウイルス媒介性遺伝子送達を用いて、細胞または生物に移入されうる。 【0036】ガイドRNAが単離RNAの形態で細胞または生物にトランスフェクトされる場 合、ガイドRNAは、当技術分野において既知の任意のinvitro転写系を 用いたinvitroでの転写によって調製されうる。ガイドRNAは、好ましくは、ガイドRNAのコード配列を含むプラスミドの形態よりもむしろ、単離RNAの形態で細胞に移入される。本明細書において用いられる場合、「単離RNA」と によって調製されうる。ガイドRNAは、好ましくは、ガイドRNAのコード配列を含むプラスミドの形態よりもむしろ、単離RNAの形態で細胞に移入される。本明細書において用いられる場合、「単離RNA」という用語は、「裸のRNA」と置き換え可能でありうる。これは、クローニングのステップを必要としないため、コストと時間の節約になる。しかし、ガイドRNAの トランスフェクションのためのプラスミドDNAの使用またはウイルス媒介性遺伝子送達は、排除されない。 【0037】Casタンパク質またはCasタンパク質コード核酸およびガイドRNAを含有する本RGEN組成物は、標的に対するガイドRNAの特異性およびCasタンパ ク質のエンドヌクレアーゼ活性またはニッカーゼ活性のため、標的DNAを特異的に切断し得る。 本明細書において用いられる場合、「切断」という用語は、ヌクレオチド分子の共有結合骨格の切断を指す。 本発明では、ガイドRNAは、切断されるべき任意の標的に特異的であるように 調製されうる。従って、本RGEN組成物は、ガイドRNAの標的特異的部分を操作または遺伝子型決定することによって、任意の標的DNAを切断し得る。 【0039】本発明では、組成物は、invitroでの真核細胞または真核生物のゲノムの遺伝子型決定に使用されうる。 1つの特定の実施形態では、ガイドRNAは、配列番号1のヌクレオチド配列を含みうるが、そのヌクレオチド位置3~22の部分は標的特異的部分であり、従ってこの部分の配列は標的に応じて変化しうる。 本明細書において用いられる場合、真核細胞または真核生物は、当技術分野において一般的に用いられる、酵母、真菌類、原生生物、植物、高等植物、ならびに昆 虫、または両生類細胞、またはCHO、 本明細書において用いられる場合、真核細胞または真核生物は、当技術分野において一般的に用いられる、酵母、真菌類、原生生物、植物、高等植物、ならびに昆 虫、または両生類細胞、またはCHO、HeLa、HEK293、およびCOS- 1などの哺乳類細胞、例えば、培養細胞(invitro)、移植細胞および初代培養細胞(invitroおよびexvivo)、およびinvivo細胞、ならびにヒトなどの哺乳類細胞でもありうるが、それらに限定されない。 【0040】1つの特定の実施形態では、Cas9タンパク質/一本鎖ガイドRNAは、in vitroおよび哺乳類細胞内で部位特異的DNA二本鎖切断を生じることができ、その自発的修復が、高頻度で標的化ゲノム突然変異を誘発することが見出された。 更に、Cas9タンパク質/ガイドRNA複合体またはCas9 mRNA/ガイドRNAの1細胞期胚への注入によって、遺伝子ノックアウトマウスが誘導され得ること、および生殖細胞系列に伝達可能な突然変異がCas9/ガイドRNAシ ステムによって生じ得ることが見出された。 Casタンパク質をコードする核酸よりもむしろCasタンパク質を用いて、標的化突然変異生成を誘発することは、外来性DNAが生物内に導入されないため、有利である。従って、Casタンパク質およびガイドRNAを含有する組成物は、治療薬または付加価値のある農作物、家畜、家禽、魚、ペットなどの開発に使用さ れうる。 【実施例1】【0058】ゲノム編集アッセイ1-1.Cas9タンパク質のDNA切断活性 初めに、化膿性連鎖球菌(Streptococcuspyogens)に由来するCas9のDNA切断活性をinvitroでのキメラガイド セイ1-1.Cas9タンパク質のDNA切断活性 初めに、化膿性連鎖球菌(Streptococcuspyogens)に由来するCas9のDNA切断活性をinvitroでのキメラガイドRNAの存在下または非存在下で試験した。 この目的のために、E.coliで発現され、精製された組換えCas9タンパク質を用いて、23塩基対(bp)のヒトCCR5標的配列を含む前消化されたプ ラスミドDNAまたは環状プラスミドDNAを切断した。Cas9標的配列は、c rRNAまたはキメラガイドRNAと相補的な20-bpのDNA配列およびCas9自身によって認識されるトリヌクレオチド(5′-NGG-3′)プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)で構成される(図1a)。 【0059】具体的には、化膿性連鎖球菌(Streptococcuspyogens)株M1 GAS(NC _002737.1)に由来するCas9コード配列(4,104bp)を、ヒトコドン使用表を用いて再構成し、オリゴヌクレオチドを用いて合成した。初めに、重複する~35-merオリゴヌクレオチドおよびPhusionポリメラーゼ(NewEnglandBiolabs)を用いて1-kbDNAセグメントを組み立て、T-ベクター(SolGent)にクローニングした。4つの1-kbpDNAセ グメントを用いて、オーバーラップPCRによって、完全長Cas9配列を組み立てた。Cas9コードDNAセグメントを、(Invitrogen)に由来するp3sにサブクローニングした。このベクターにおいて、HAエピトープおよび核局在化シグナル(NLS)を含むペプチドタグ(NH2-GGSGPPKKKRKVYPYDVPDYA-COOH、配列番号2)を、Cas9の ブクローニングした。このベクターにおいて、HAエピトープおよび核局在化シグナル(NLS)を含むペプチドタグ(NH2-GGSGPPKKKRKVYPYDVPDYA-COOH、配列番号2)を、Cas9のC末端に付加した。 Cas9タンパク質のHEK 293T細胞における発現および核局在化を、抗HA抗体(SantaCruz)を用いたウェスタンブロッティングによって確認した。 【0060】その後、Cas9カセットをpET28-b(+)にサブクローニングして、B L21(DE3)に形質転換した。0.5mMIPTGを用いて25℃で4時間、Cas9の発現を誘導した。C末端にHis6-タグを有するCas9タンパク質を、Ni-NTAアガロース樹脂(Qiagen)を用いて精製し、20mMHEPES(pH 7.5)、150mMKCl、1mMDTT、および10% グリセロールに対して透析した(1)。精製したCas9(50nM)を、スーパーコ イルプラスミドDNAまたは前消化プラスミドDNA(300ng)およびキメラ RNA(50nM)とともに、20μlの反応容量のNEBバッファー3中で、37℃で1時間インキュベートした。消化されたDNAを、0.8%アガロースゲルを用いた電気泳動によって分析した。 Cas9は、合成RNAの存在下でのみ、予想された位置で効率的にプラスミドDNAを切断し、標的配列のない対照プラスミドを切断しなかった(図1b)。 【0061】1-2.ヒト細胞でのCas9/ガイドRNA複合体によるDNA切断RFP-GFPレポーターを用いて、Cas9/ガイドRNA複合体が哺乳類細胞においてRFPとGFP配列の間に組み込まれた標的配列を切断できるかどうかを調べた。 こ 体によるDNA切断RFP-GFPレポーターを用いて、Cas9/ガイドRNA複合体が哺乳類細胞においてRFPとGFP配列の間に組み込まれた標的配列を切断できるかどうかを調べた。 このレポーターでは、GFP配列は、フレームシフトしてRFP配列と融合している(2)。活性を有するGFPは、標的配列が部位特異的ヌクレアーゼによって切断され、エラーを起こしやすい二本鎖切断(DSB)の非相同末端結合(NHEJ)修復によって、標的配列付近にフレームシフトを起こす小さな挿入または欠失(indel)を生じた場合のみに発現する(図2)。 【0062】この研究に使用されるRFP-GFPレポータープラスミドは、以前に記載されたように構築された(2)。標的部位に対応するオリゴヌクレオチド(表1)を合成し(Macrogen)、アニールした。アニールしたオリゴヌクレオチドを、EcoRIおよびBamHIで消化したレポーターベクターにライゲーションした。 HEK293T細胞に、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を用い、24ウェルプレート中で、Cas9コードプラスミド(0.8μg)およびRFP-GFPレポータープラスミド(0.2μg)を同時トランスフェクトした。 【0063】一方、invitro転写されたキメラRNAは、下記のように調製した。M EGAshortscriptT7キット(Ambion)を用い、メーカーの説明書に従ったラ ン・オフ反応によって、RNAをinvitro転写した。RNAのinvitro転写のための鋳型は、2つの相補的な一本鎖DNAのアニーリングによって、またはPCR増幅によって生成された(表1)。転写されたRNAを8%変性尿素-PAGE tro転写した。RNAのinvitro転写のための鋳型は、2つの相補的な一本鎖DNAのアニーリングによって、またはPCR増幅によって生成された(表1)。転写されたRNAを8%変性尿素-PAGEゲル上で分離した。RNAを含むゲル切片を切り出し、プローブ溶出バッファーに移した。RNAをヌクレアーゼを含まない水に回収し、続いてフェノール・ クロロホルム抽出、クロロホルム抽出、およびエタノール沈澱を行った。精製したRNAを分光分析によって定量した。 【0064】トランスフェクションの12時間後、invitro転写によって調製されたキメラRNA(1μg)を、Lipofectamine 2000を用いてトランスフェクトした。 トランスフェクションの3日後、トランスフェクトされた細胞をフローサイトメトリーに供し、RFPとGFPとの両方を発現している細胞を計測した。 GFP発現細胞は、細胞が最初にCas9プラスミドによってトランスフェクトされ、その12時間後にガイドRNAによってトランスフェクトされた場合にのみ得られることが見出され(図2)、RGENが培養ヒト細胞中の標的DNA配列を認 識して切断できることが実証された。このように、GFP発現細胞は、同時トランスフェクションよりもむしろCas9プラスミドおよびガイドRNAの連続トランスフェクションによって得られた。 ・・・【0065】 1-3.哺乳類細胞の内在性遺伝子のRGENによる標的破壊RGENが哺乳類細胞の内在性遺伝子の標的破壊に使用され得るかどうかを試験するために、野生型と突然変異体DNA配列のハイブリダイゼーションによって形成されるヘテロ二本鎖を特異的に認識して切断するミスマッチ感受性エンドヌクレアーゼであるT7エンドヌクレアーゼI(T7E 験するために、野生型と突然変異体DNA配列のハイブリダイゼーションによって形成されるヘテロ二本鎖を特異的に認識して切断するミスマッチ感受性エンドヌクレアーゼであるT7エンドヌクレアーゼI(T7E1)を用いて、トランスフェクト された細胞から単離したゲノムDNAを分析した(3)。 RGENを用いて哺乳類細胞にDSBを導入するために、4D-Nucleofector、SFCellLine 4D-NucleofectorXKit、ProgramFF-120(Lonza)を用い、メーカーのプロトコールに従って、2×106K562細胞に20μgのCas9コードプラスミドをトランスフェクトした。この実験のために、K562(ATCC、CCL-243)細胞を、10%FBSならびにペニシリン/ストレプトマイシン 混合物(それぞれ、100U/mlおよび100μg/ml)を含むRPMI-1640中で増殖させた。 【0066】24時間後、10~40μgのinvitro転写されたキメラRNAを、1×106K562細胞にヌクレオフェクト(nucleofected)した。invitr o転写されたキメラRNAは、実施例1-2に記載されたように調製された。 RNAトランスフェクションの2日後に細胞を回収し、ゲノムDNAを単離した。 標的部位を含む領域を、表1に記載されるプライマーを用いてPCR増幅した。アンプリコンを、以前に記載されたようなT7E1アッセイに供した(3)。配列解析のために、ゲノム改変に相当するPCR産物を精製し、T-BluntPCRCloning Kit(SolGent)を用いてT-Bluntベクターにクローニングした。M13プライマーを用いて、クローニングされた産物を配列決 CR産物を精製し、T-BluntPCRCloning Kit(SolGent)を用いてT-Bluntベクターにクローニングした。M13プライマーを用いて、クローニングされた産物を配列決定した。 【0067】突然変異は、細胞がCas9コードプラスミド、その後ガイドRNAによって連続的にトランスフェクトされた場合にのみ誘発されることが見出された(図3)。相 対的なDNAバンド強度から推定される突然変異頻度(図3aのIndels(%))は、RNA用量依存的であり、1.3%~5.1%であった。PCRアンプリコンのDNA配列解析は、内在性部位でのRGEN仲介性突然変異の誘発を裏付けた。エラーを起こしやすいNHEJの特徴であるIndelおよびマイクロホモロジーが、標的部位で観察された。直接配列決定によって測定された突然変異頻度は、7.3% (=7突然変異体クローン/96クローン)であり、ジンクフィンガーヌクレアー ゼ(ZFN)または転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)によって得られるものと同程度であった。 細胞に突然変異を誘発するためには、Cas9プラスミドおよびガイドRNAの連続トランスフェクションが必要であった。しかし、ガイドRNAをコードするプラスミドの場合、連続トランスフェクションは不要であり、細胞はCas9プラス ミドおよびガイドRNAコードプラスミドによって同時トランスフェクトされた。 【0068】その一方で、ZFNとTALENとの両方は、HIV感染の必須の共受容体であるGタンパク質共役ケモカイン受容体をコードする、ヒトCCR5遺伝子を破壊するための開発に成功している(3~6)。CCR5特異的ZFNは、現在米国でAI DS治療のための臨床試験中 受容体であるGタンパク質共役ケモカイン受容体をコードする、ヒトCCR5遺伝子を破壊するための開発に成功している(3~6)。CCR5特異的ZFNは、現在米国でAI DS治療のための臨床試験中である(7)。しかし、これらのZFNおよびTALENは、オフターゲット作用を有し、それは、その配列がオンターゲット配列と相同である部位での局所的突然変異(6、8~10)、ならびにオンターゲット部位およびオフターゲット部位に引き起こされた2つの同時に起こるDSBの修復から生じるゲノム再配列(11~12)の両方を含む。これらのCCR5特異的人工ヌクレ アーゼと関連する最も顕著なオフターゲット部位は、CCR5の近縁ホモログであり、CCR5の15-kbp上流に位置する、CCR2遺伝子座に存在する。CCR2遺伝子におけるオフターゲット突然変異、ならびにCCR5オンターゲット部位とCCR2オフターゲット部位との間の15-kbp染色体セグメントの望ましくない欠失、逆位、および重複を避けるため、本発明者らは、CCR2配列と明白 な相同性を持たないCCR5配列内の領域を認識するように、我々のCCR5特異的RGENの標的部位を意図的に選択した。 【実施例2】【0071】タンパク質性のRGENによって仲介されるゲノム編集 RGENは、多くの異なる形態で細胞内に送達され得る。RGENは、Cas9 タンパク質、crRNA、およびtracrRNAで構成される。2つのRNAは、一本鎖ガイドRNA(sgRNA)を形成するように融合され得る。CMVまたはCAGなどのプロモーターの制御下でCas9をコードするプラスミドは、細胞内にトランスフェクトされ得る。crRNA、tracrRNA、またはsgRNAはまた、これらのRNA 合され得る。CMVまたはCAGなどのプロモーターの制御下でCas9をコードするプラスミドは、細胞内にトランスフェクトされ得る。crRNA、tracrRNA、またはsgRNAはまた、これらのRNAをコードするプラスミドを用いて細胞内で発現され得る。 しかし、プラスミドの使用は、しばしば、プラスミド全体または一部の宿主ゲノムへの組込みを引き起こす。プラスミドDNAに組み込まれた細菌の配列は、invivoでの望ましくない免疫反応を引き起こし得る。細胞療法のためにプラスミドをトランスフェクトされた細胞またはDNAトランスフェクト細胞に由来する動物および植物は、ほとんどの先進国において販売承認の前に、コストがかかり長期に わたる規制手続を通過しなくてはならない。更に、プラスミドDNAは、トランスフェクション後数日間細胞内に残存し、RGENのオフターゲット作用を悪化させ得る。 【0072】ここで、我々は、invitro転写されたガイドRNAと複合体を形成した 組換えCas9タンパク質を用いて、ヒト細胞の内在性遺伝子の標的破壊を誘発した。ヘキサヒスチジンタグと融合された組換えCas9タンパク質を、E.coli内で発現させ、標準的なNiイオンアフィニティークロマトグラフィーおよびゲルろ過を用いて精製した。精製された組換えCas9タンパク質を、保存バッファー(20 mMHEPESpH 7.5、150mMKCl、1mMDT T、および10%グリセロール)中で濃縮した。Cas9タンパク質/sgRNA複合体を、ヌクレオフェクション(nucleofection)によってK562細胞に直接導入した。すなわち、4D-Nucleofector、SFCellLine 4D-NucleofectorXKit、 Progr ション(nucleofection)によってK562細胞に直接導入した。すなわち、4D-Nucleofector、SFCellLine 4D-NucleofectorXKit、 ProgramFF-120(Lonza)を用い、メーカーのプロトコールに従って、10 0μlの溶液中の、100μg(29μM)のinvitro転写されたsgR NA(またはcrRNA 40μgおよびtracrRNA 80μg)と混合された22.5~225(1.4~14μM)のCas9タンパク質を1×106 K562細胞にトランスフェクトした。ヌクレオフェクション後、細胞を6ウェルプレート中の増殖培地に入れ、48時間インキュベートした。2×105 K562細胞を1/5にスケールダウンした方法でトランスフェクトした場合は、6~60 μgのinvitro転写されたsgRNA(またはcrRNA 8μgおよびtracrRNA 16μg)と混合された4.5~45μgのCas9タンパク質を用いて、20μlの溶液中でヌクレオフェクトした。ヌクレオフェクトされた細胞を、その後、48ウェルプレート中の増殖培地に入れた。48時間後、細胞を回収し、ゲノムDNAを単離した。標的部位にわたるゲノムDNA領域をPCR増 幅し、T7E1アッセイに供した。 【0073】図10に示すように、Cas9タンパク質/sgRNA複合体は、sgRNAまたはCas9タンパク質の用量依存的に4.8~38%の頻度でCCR5遺伝子座に標的化突然変異を誘発し、これはCas9プラスミドのトランスフェクションに よって得られる頻度(45%)と同程度であった。タンパク質/crRNA/tracrRNA複合体は、9.4%の頻度で突然変異を誘発することができた れはCas9プラスミドのトランスフェクションに よって得られる頻度(45%)と同程度であった。タンパク質/crRNA/tracrRNA複合体は、9.4%の頻度で突然変異を誘発することができた。Cas9タンパク質単独では、突然変異を誘発できなかった。2×105細胞を1/5にスケールダウンした用量のCas9タンパク質およびsgRNAでトランスフェクトした場合、CCR5遺伝子座での突然変異頻度は、用量依存的に2.7~57% に及び、Cas9プラスミドおよびsgRNAプラスミドの同時トランスフェクションによって得られた頻度(32%)より高かった。 【0074】我々はまた、ABCC11遺伝子を標的とするCas9タンパク質/sgRNA複合体をも試験し、この複合体が35%の頻度でindelを誘発することを見出 し、この方法の汎用性を実証した。 【実施例3】【0075】マウスにおけるRNA誘導型ゲノム編集・・・【実施例4】 【0087】植物におけるRNA誘導型ゲノム編集・・・【実施例5】【0092】 細胞透過性ペプチドまたはタンパク質形質導入ドメインを用いたCas9タンパク質形質導入・・・【実施例6】【0100】 ガイドRNA構造によるオフターゲット突然変異の制御【実施例7】【0102】ペアードCas9ニッカーゼ・・・ 【実施例8】【0105】ペアードCas9ニッカーゼによって誘発される染色体DNAスプライシング・・・【実施例9 】 【0109】 CRISPR/Casに由来するRNA誘導型エンドヌクレアーゼを用いた遺伝子型決定・・・【0129 】参考 ・・・【実施例9 】 【0109】 CRISPR/Casに由来するRNA誘導型エンドヌクレアーゼを用いた遺伝子型決定・・・【0129 】参考文献 1. M. Jineketal., Science 337, 816 (Aug 17, 2012). 【図1a】 【図1b】 【図3a】 【図4a】 【図4b】 【図4c】 【図10a】 (別紙2)引用文献1の記載事項(抜粋・訳文) [816頁表題]細菌の獲得免疫におけるプログラム可能な二重RNA誘導型DNAエンドヌクレア ーゼ [816頁要約]クラスター化され、規則的に間隔が空いている短い回文の反復(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)系は、CRISPRRNA(crRNA)を用いて、 侵入する核酸のサイレンシングを誘導することで、ウイルスやプラスミドに対する獲得免疫を細菌や古細菌に提供する。ここで私たちは、これらの系の一部において、成熟crRNAが、トランス活性化crRNA(tracrRNA)と塩基対になって2つのRNAからなる構造を形成し、CRISPR関連タンパク質Cas9に標的DNAの二本鎖切断を指示することを示す。・・・このデュアル-tracrR NA:crRNAは、一本鎖RNAキメラとして設計されたときも、配列特異的に、Cas9による二本鎖DNA切断を誘導する。私たちの研究は、部位特異的DNA切断のためにデュアル-RNAを使用するエンドヌクレアーゼのファミリーを明らかにし、RNAでプログラム可 も、配列特異的に、Cas9による二本鎖DNA切断を誘導する。私たちの研究は、部位特異的DNA切断のためにデュアル-RNAを使用するエンドヌクレアーゼのファミリーを明らかにし、RNAでプログラム可能なゲノム編集のためにこのシステムを利用する可能性を強調する。 [816頁中欄25ないし35行目]ここで私たちは、Ⅱ型の系において、Cas9タンパク質が、標的二本鎖DNAを切断するために、活性化tracrRNAと標的指向crRNAの間の塩基対構造を必要とする酵素ファミリーを構成するものであることを示す。位置特異的切断は、 標的であるプロトスペーサーDNAとcrRNAの間の塩基対を形成する相補性と、 標的DNAの領域に並置される短いモチーフ[プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる]により定められる場所で生じる。 [816頁中欄35行目ないし右欄3行目]私たちの研究は、さらに、特定のDNA部位を切断するCas9エンドヌクレアー ゼ・ファミリーが、単一のRNA分子によってプログラムされ得るため、それを応用してゲノム標的化及びゲノム編集のための二本鎖DNA切断を引き起こす、単純かつ汎用的なRNA誘導型システムを開発することができるという刺激的な可能性を示している。 [816頁右欄19ないし25行目]私たちは、成熟crRNA単独では、Cas9に触媒されるプラスミドDNAの切断を導けないことを発見した。・・・しかしながら、crRNAの反復配列と対を形成し、この系においてcrRNAの成熟に必要不可欠であるtracrRNAを追加することが、Cas9がプラスミドDNAを切断することの引き金となった。 [816頁右欄26ないし28行目]この切断反応には、マグネシウ の成熟に必要不可欠であるtracrRNAを追加することが、Cas9がプラスミドDNAを切断することの引き金となった。 [816頁右欄26ないし28行目]この切断反応には、マグネシウムおよびDNAに相補的なcrDNAの存在の両方が必要であった。 [820頁左欄2ないし5行目]・・・単一のRNA誘導型Cas9の実現性は、プログラムされたDNA切断およびゲノム編集において潜在的に有用であるため、魅力的である・・・。 [820頁左欄5ないし18行目] 私たちは、標的認識配列を5′末端に含み、その下流にtracrRNAとcrR NAの間に生じる塩基対相互作用を保持するヘアピン構造を含む2つのバージョンのキメラRNAを設計した(図5B)。・・・プラスミドDNAを用いた切断アッセイにおいて、長い方のキメラRNAは、切断されたtracrRNA:crRNA複合体を用いた場合に観察された場合と同じような挙動で、Cas9によるDNA切断を誘導できることを観察によって確認した(図5B並びに図S14A及びC)。 [820頁図5]図5 Cas9は、tracrRNAとcrRNAの特徴を組み合わせた単一のエンジニアリングされたRNA分子を使用して、プログラムすることができる。(A)(上)Ⅱ型CRISPR/Casシステムにおいて、Cas9は、活性化している tracrRNA及び標的化crRNAにより形成される2つのRNA構造により誘導されて、部位特異的に標的となった二本鎖DNAを切断する(図S1参照)。 (下)crRNAの3′末端をtracrRNAの5′末端に融合することにより生成されたキメラRNA。 [820頁左欄29行目ないし中欄14行目]最後に、キメラRNA 図S1参照)。 (下)crRNAの3′末端をtracrRNAの5′末端に融合することにより生成されたキメラRNA。 [820頁左欄29行目ないし中欄14行目]最後に、キメラRNAの設計が普遍的に適用可能であるかどうかを確認するために、緑色蛍光タンパク質(GFP:greenfluorescentprotein)をコードする遺伝子の一部を標的とする5種類の異なるキメラ誘導RNAを設計し(図S15、AとC)、GFPコード配列を有するプラスミドに対するそれらの有効性をインビトロで試験 した。全5例において、これらのキメラRNAでプログラムされたCas9は、正確な標的部位でプラスミドを効率的に切断し(図5DおよびS15D)、キメラRNAの合理的な設計が堅牢であること、および原理的には、標的配列に隣接するGGジヌクレオチドの存在を越えてほとんど制限なく任意のDNA配列の標的化を可能とし得ることを示した。 [820頁右欄2ないし9行目]ジンク-フィンガーヌクレアーゼや転写活性化様エフェクターヌクレアーゼは、ゲノムを操作するために設計された人工酵素として、大きな関心を集めた。私たちは、遺伝子ターゲティングとゲノム編集への応用に向けた大きな潜在能力をもたらし得るRNAによりプログラムされたCas9に基づく代替的な手法を提案する。 [「SUPPLEMENTARYMATERIALSANDMETHODS」の「PlasmidDNAcleavageassay」]プラスミドDNA切断アッセイ・・・未処理の、あるいは制限酵素処理により鎖状化されたプラスミドDNA(3 00ng(~8nM))は、精製されたCas9タンパク質(50~500nM)とtracrRNA:c 切断アッセイ・・・未処理の、あるいは制限酵素処理により鎖状化されたプラスミドDNA(3 00ng(~8nM))は、精製されたCas9タンパク質(50~500nM)とtracrRNA:crRNA複合体(50~500nM、1:1)とともに、Cas9プラスミド切断緩衝液(20mMHEPESpH7.5、150mMKCL、0.5mMDTT、0.1mMEDTA)中で、10mMMgCl2を加えて、あるいは加えずに、37℃で60分間インキュベートした。 [「SUPPLEMENTARYMATERIALSANDMETHODS」の「Metal-dependentcleavageassay」]金属依存性切断アッセイ・・・。 [「SUPPLEMENTARYFIGURES」]図S4.Cas9は3′―5′エクソヌクレアーゼ活性を有する、Mg2+依存性のエンドヌクレアーゼである。 [820頁図5A]

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