令和7年6月12日宣告令和6年(わ)第1356号殺人被告事件 主文 被告人を懲役10年に処する。 未決勾留日数中80日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、かねてより実家の賃貸住宅にて実父のAと二人で生活していたところ、やがて無職となって収入がほぼなくなり、Aの年金を頼りに二人の生活を維持していたが、経済的に困窮して家賃を滞納した結果、住居の明渡しの強制執行が行われることになった。被告人は、住まいを失ってはいよいよ生活が立ち行かなくなると思い、Aを殺害して自殺することを決意し、令和6年11月12日頃、福岡市a 区bc 番d 号の被告人方において、A(当時76歳)に対し、殺意をもって、その頸部をタオルで絞め付け、よって、その頃、同所において、同人を頸部圧迫に基づく窒息により死亡させて殺害した。 (証拠の標目)省略(法令の適用)省略(量刑の理由)そもそも殺人は重い犯罪であり、本件犯行により、今後も生きることを当然としていた実父が死亡したという結果が重大なことはいうまでもない。それを前提とした上で、同種事案(単独犯、被害者は親で、落ち度はなし、同一又は同種の罪1件で処断罪と異なる主要な罪はなく、量刑上考慮した前科なし)の量刑傾向を参照して検討すると、本件で、寝ている実父に対し、被告人の体感として二、三十分かけてその頸部をタオルで絞め付けたという犯行態様は、強固な犯意に基づくものであ るものの、同種事案との比較において際立った悪質性があるとまではいえない。むしろ、本件では、その動機・経緯に着目するべきである。すなわち、被告人は、生活保護の受給など、自らの経済状況を改善するための方策が複数考えられ、実際、実父の通院先のソーシャルワーカ ではいえない。むしろ、本件では、その動機・経緯に着目するべきである。すなわち、被告人は、生活保護の受給など、自らの経済状況を改善するための方策が複数考えられ、実際、実父の通院先のソーシャルワーカーからその示唆を受けることもあったのに、生活保護受給に伴って保有する自動車を手放す必要が生じることを案じるなどして、物事の優先順位を誤り、問題を先送りする中で、実父に事態の相談等をすることもないまま、一方的に実父を殺害し、自殺を図るという最悪の選択をした。このことは、身勝手で安易な判断というほかなく、厳しい非難を免れない。この点を踏まえると、被告人の刑事責任は重く、本件は同種事案の中で中程度からやや重いものとして位置づけられるべきである。その上で、被告人が事実を認め、本件犯行に至ったことについて後悔の念を述べているといった一般情状を考慮し、被告人に対しては、主文の刑を科すのが相当であると判断した。 (求刑-懲役12年、弁護人の科刑意見-懲役7年6月)令和7年6月13日福岡地方裁判所第3刑事部 裁判長裁判官森喜史 裁判官岡本康博 裁判官髙橋宏一
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