主文 一被告が都労委平成五年(不)第二五号事件について平成九年四月一五日付けで発した命令を取り消す。 二訴訟費用は、原告と被告との間では被告の負担とし、補助参加によって生じた訴訟費用は被告補助参加人の負担とする。 事実及び理由 第一請求主文同旨第二事案の概要本件は、被告補助参加人(以下、単に「補助参加人」という。)が、争議行為として、東海道新幹線を走行している新幹線列車「のぞみ」号に乗務する予定の補助参加人組合員である新幹線の運転士(以下「組合員運転士」という。)に対し、時速二七〇キロメートルで通過することとされている岐阜羽島駅、三河安城駅、新富士駅の三駅(以下、これらの三つの駅を総称するときは、単に「三駅」という。)を時速二三〇キロメートルで通過するよう減速して走行する(以下「本件減速走行」という。)ことを指令し、これを受けた組合員運転士において、本件減速走行による就労を原告に申し入れたところ、原告は、その受領を拒否して賃金等の支払をせず、次の乗務の出発地への移動に要する費用を同運転士の負担とさせたが、被告がこれらは不当労働行為であるとして救済命令を発したため、原告がその取消を求めた事案である。 一争いのない事実 1 当事者(一) 原告は、日本国有鉄道が分割・民営化された際に、昭和六二年四月一日、東海地方を中心にして東海道新幹線をはじめとする旅客鉄道輸送等を業とする株式会社として発足したものであり、肩書地に本社を、名古屋市に東海鉄道事業本部を、東京に新幹線鉄道事業本部を、静岡市及び大阪市に支社を、津市、飯田市に支店を、それぞれ置き、従業員数は約二万二〇〇〇名である。 (二) 補助参加人は、平成三年八月一一日結成された原告の労働組合である。 2 「のぞみ」号の運行と故障・事故(一) 原告は、平成四年 田市に支店を、それぞれ置き、従業員数は約二万二〇〇〇名である。 (二) 補助参加人は、平成三年八月一一日結成された原告の労働組合である。 2 「のぞみ」号の運行と故障・事故(一) 原告は、平成四年三月一四日のダイヤ改正に伴い、同日以降、東海道新幹線の東京・新大阪間において、ATC(自動列車制御装置)信号走行による最高速度が時速二七〇キロメートル、所要時間が二時間三〇分の「のぞみ」号を一日二往復で運行し(これにより所要時間が従前の新幹線列車より三〇分短縮される。)、平成五年三月一八日のダイヤ改正以降、その運転本数は、臨時列車も含め、一日当たり上下線併せて最大合計三五本となった。 なお、「のぞみ」号は、三〇〇系と呼ばれる車両を使用している。 (二)(1) 平成四年三月一四日から同年九月四日までの間に、三〇〇系車両について、二件の運休を含め、主電動機取付ボルトの脱落、主変換装置の保護回路動作による故障表示、空気調和装置の冷房効果不良、タンパ類のボルトの緩みなどの故障が発生した。 (2) 原告は、右(1)の故障は、いずれも初期故障であり、三〇〇系車両のシステム自体にかかわる本質的な故障ではないと考えていたが、補助参加人は、三〇〇系車両の故障、欠陥は克服されておらず、時速二七〇キロメートルでの走行の安全性には問題があるとの立場をとっていた。 (三) 平成五年四月四日、「のぞみ」号が岐阜羽島駅を通過する際、バラスト(レールの下に敷き詰めている石)を跳ね上げたため、同駅ホームで列車の通過待ちをしていた乗客の足に当たり、けがをさせるという事故(以下「岐阜羽島駅事故」という。)が発生し、同月三〇日には、「のぞみ」号が豊橋駅を通過する際、跳ね上げられた小石が反対側ホーム上にいた乗客に当たるという事故(以下「豊橋駅事故」という。)が発生した。 3 労務提供 事故」という。)が発生し、同月三〇日には、「のぞみ」号が豊橋駅を通過する際、跳ね上げられた小石が反対側ホーム上にいた乗客に当たるという事故(以下「豊橋駅事故」という。)が発生した。 3 労務提供と受領拒否(一) 補助参加人は、平成五年五月一七日、原告に対し、本件減速走行を行うことを内容とする争議行為を行う旨通告し(以下、この通告に係る争議行為を「本件減速闘争」という。)、同月二一日から同年九月一四日までの間、組合員運転士に対し、補助参加人が指定した「のぞみ」号の乗務につき、本件減速走行を行うよう指令するとともに、原告に対し、各争議指定日の指名者を通知した。 (二) 本件減速闘争に参加した組合員運転士は、原告に対し、本件減速走行を行うことを予告して「のぞみ」号に乗務することを申し入れ、労務の提供をした。 (三) これに対し、原告は、組合員運転士を「のぞみ」号に乗務させないこととして、提供された労務の受領を拒否(以下「本件受領拒否」という。)し、本件受領拒否に係る「のぞみ」号の乗務に要する賃金及び手当の支払をしない(以下「本件賃金カット」という。)とともに、本件受領拒否をした「のぞみ」号の乗務に続く次の乗務先への移動に要する費用(交通費及び宿泊費。以下、併せて「本件移動費用」という。)は、当該運転士本人の負担とする(以下「本件移動費用本人負担」という。)取扱いをした。 (四) 本件減速闘争は、平成五年九月二四日二四時をもって終結し、本件減速闘争に参加した組合員運転士は二八〇名、延べ三〇八名であった。 4 救済命令補助参加人は、平成五年五月二四日、3(三)の被告の措置は不当労働行為に当たるとして、原告を被申立人として被告に対し救済の申立てをし(都労委平成五年不第二五号事件)、これを受けて被告は、平成九年四月一五日付けで別紙一のとおりの命 、3(三)の被告の措置は不当労働行為に当たるとして、原告を被申立人として被告に対し救済の申立てをし(都労委平成五年不第二五号事件)、これを受けて被告は、平成九年四月一五日付けで別紙一のとおりの命令(以下「本件命令」という。)を発した。 三争点 1 本件減速闘争に参加する組合員運転士がした本件減速走行を行うことを予告しての「のぞみ」号への乗務申し入れが、債務の本旨に従った労務の提供といえるか。ひいて、原告が本件受領拒否をしたことが正当か。 2 争議行為である本件減速闘争が、労働組合法七条一号にいう「労働組合の正当な行為」に当たるか。 3 本件受領拒否に伴う本件賃金カットが、労働組合法七条一号の不利益取扱い又は同条三号の支配介入に当たるか。 4 本件移動費用本人負担が、労働組合法七条一号の不利益取扱い又は同条三号の支配介入に当たるか。 第三争点に関する当事者の主張(要旨)一原告 1 争点1(本件受領拒否の正当性)について(一) 補助参加人の本件減速闘争指令に基づく組合員運転士による「のぞみ」号の運転は、次のとおり、新幹線列車の運転士が雇用契約上負っている債務の本旨に従った労務給付義務に違反する。 (1) 定時運転義務違反ア鉄道事業法一七条及び同法施行規則三五条一項は、鉄道運送事業者に対し、列車の最高許容速度及び各停車場の出発、通過又は到着時刻(以下「発着時刻」という。) 等を含む列車の運行計画を運輸大臣に届け出ることを義務づけている。また、鉄道営業法一条を受けて定められた新幹線鉄道運転規則は、列車の運転は、発着時刻を定めて行うこと、列車の最高速度は、線路及び電車線路の状態、車両の構造並びに列車保安方式の種類ごとに定めること等とし、鉄道事業者に対し、同規則の実施に関する規定を定めて運輸大臣に届け出ることを義務づけている。 原告は、こ 高速度は、線路及び電車線路の状態、車両の構造並びに列車保安方式の種類ごとに定めること等とし、鉄道事業者に対し、同規則の実施に関する規定を定めて運輸大臣に届け出ることを義務づけている。 原告は、これらの法令の定めに従って、具体的な運行計画や、新幹線運転取扱心得(以下「取扱心得」という。)、新幹線運転作業要領(以下「作業要領」という。)等の各種の規程等を設けており、新幹線運転士は、これらの規程等に従って列車を運転する義務がある。 イ原告の運行計画では、「のぞみ」号のように三〇〇系車両で組成した新幹線列車の最高速度は時速二七〇キロメートルとされており、線路が曲線となる場合には、曲線半径に応じた制限速度が設けられている(運行計画の中の「新幹線列車運転速度表」。以下「運転速度表」という。)。 しかし、線路上にはほぼ毎日工事等による徐行区間が設けられるため、実際の最高速度は、運行計画に定める最高速度の範囲内で、工事等に伴う徐行等を考慮して具体的に定められ、こうして定められた最高速度が、運転時にATC(自動列車制御装置)信号により運転士に現示される仕組みになっている。 したがって、新幹線の運転士は、ATC信号で現示された速度以下で新幹線を運転する義務(以下「最高速度遵守義務」という。)がある(取扱心得四一条、作業要領№13)。 ウ原告では、運行計画に従って東京駅と新大阪駅の間の新幹線の線路上に一九箇所の地点(停車場)を設け、「東海道・山陽新幹線列車運行図表」。以下、単に「運行図表」という。)により、各停車場の発着時刻を定めており、新幹線の運転士には、右の時刻どおりに新幹線列車を運転する義務(以下「定時運転義務」という。)がある(取扱心得一四条)。 原告は、右の各停車場の予定発着時刻が遵守されるよう、各運転士に対し、当該運転士の乗務列車、各停 右の時刻どおりに新幹線列車を運転する義務(以下「定時運転義務」という。)がある(取扱心得一四条)。 原告は、右の各停車場の予定発着時刻が遵守されるよう、各運転士に対し、当該運転士の乗務列車、各停車場の発着時刻を具体的に記載した「乗務員仕業票」(以下「仕業票」という。)を事前に交付し、さらに、工事等の当日の運行条件を具体的に確認させ、仕業票どおりの定時運転を行うよう指示している。 エ原告では、定時運転を確保するため、列車ごと区間ごとに停車場間の「基準運転時分」と「余裕運転時分」を定めている。 「基準運転時分」とは、運行計画上定められた最高速度に従って運転した場合の各停車場間の運転時間のことであり、「余裕時分」とは、工事等に伴う徐行区間の存在や自然条件、先行列車の運行状況等の諸状況により基準運転時分に対して遅延が生じ得ることを想定し、定時運転を行うために各停車場間の基準運転時分に加える時間のことである。仕業票で定める各停車場の発着時刻は、各停車場間の基準運転時分に余裕時分(各区間ごとに一五秒ないし四五秒が定められている。)を加えた運転時間によって設定されている。 したがって、例えば、新幹線列車の運転士は、工事区間や自然条件等の諸状況に基づく遅れが生じた場合でも、余裕時分を利用して適宜回復運転等を行うことにより、安全、快適で経済的な運転を行いながら仕業票どおりの定時運行を確保することができるのであるが、工事等の徐行区間の設定箇所・設定数や、自然条件、先行列車の状況等によっては、余裕時分をすべて利用して回復運転を行ってようやく定時運転を確保することができる場合や、それでも各停車場で予定された発着時刻に遅れが生じる場合があり、このような場合に本件減速走行を行えば、運転時刻に遅延が生じたり、既に発生している遅延の増大が生じることは明らかであ とができる場合や、それでも各停車場で予定された発着時刻に遅れが生じる場合があり、このような場合に本件減速走行を行えば、運転時刻に遅延が生じたり、既に発生している遅延の増大が生じることは明らかである。 このような遅延の発生又は増大は、原告が乗客に対して負っている旅客運送契約の債務不履行になるばかりか、ダイヤの乱れによる他列車への影響、乗客への迷惑や乗客とのトラブル、平常時とは異なる作業による運転誤操作の可能性の発生など、列車を高速運転する新幹線の安全上極めて重大な事態である。 以上のとおり、本件減速走行は、定時運転義務に違反する。 オ本件減速闘争は、新幹線列車の遅延の発生、増大が生じても、それと関係なく闘争指令に従い新幹線列車の運転を行わせようとするもので、当初から定時運転義務を無視し、運転時刻の遅れを当然に容認しているから、本件減速闘争それ自体が定時運転義務に違反する。 (2) 適合運転義務違反ア新幹線列車の運転士は、各停車場間の運転に際して、各停車場間の「基準運転時分」を標準としながら、「余裕時分」を適切に利用して、そのときの状況に適合した安全、快適でかつ経済的な新幹線列車の運転を行う義務を負っている。 本来新幹線列車の運転は、ATC信号により現示される最高速度の範囲内で、すべて機械的に計算された安全、快適な経済運転速度及び方法によって一律に行われることが望ましいが、実際には、工事等に伴う徐行区間が設けられていることや、風雨等の自然条件や先行列車の運行状況等が異なるので、あらかじめ定められた運転速度、方法による運転ができない事態があり得る。 そこで、原告は、新幹線の運転士に対し、最高速度の範囲内で運転時の諸状況に適合するよう運転速度を加減調整しながら、安全、快適な経済運転を行うことを義務づけている(原告の定める「新幹線動力車 得る。 そこで、原告は、新幹線の運転士に対し、最高速度の範囲内で運転時の諸状況に適合するよう運転速度を加減調整しながら、安全、快適な経済運転を行うことを義務づけている(原告の定める「新幹線動力車乗務員作業標準」(以下「作業標準」という。)一五項(2)、同「運転士作業マニュアル」(以下「マニュアル」という。)第三章一四項。以下、右の義務を「適合運転義務」という。)。 イ適合運転義務は、基準運転時分を標準としながら、余裕時分を適切に利用することにより履行されるものであるから、本件減速闘争のように、基準運転時分を当初から無視し、本件減速走行によって生じる遅れを回復する目的で余裕時分を利用することは、余裕時分設定の目的を逸脱した利用方法であり、現実に運転時刻に遅れが生じたか否かにかかわらず、適合運転義務に違反する。 また、本件減速走行は、本来減速を要しない区間について、いったん減速した上再び加速するというものであって、速度むらを意図的に作出するものであるから、快適かつ経済的な運転方法に反し、その意味でも適合運転義務に違反する。 (3) 原告の労務指揮権の侵害本件減速闘争は、原告の定める運転速度を排除し、補助参加人自ら新たに運転速度を設定して組合員運転士に運転させようとするものであるから、原告の労務指揮権を積極的に排除し、原告の業務を積極的に補助参加人及びその組合員の支配下に置きつつ管理するもので、原告の労務指揮権を積極的に侵害し、それ自体違法である。 (二) 本件減速闘争当時、新幹線列車には二名の運転士が乗務し、乗務区間の途中で運転を交代することとし、運転業務に従事しない区間は車掌業務に従事していたが、補助参加人は、本件減速走行の手段を特定、明示していないから、原告には、本件減速闘争の開始及び終了時点を確定することが不可能である上、運転業 とし、運転業務に従事しない区間は車掌業務に従事していたが、補助参加人は、本件減速走行の手段を特定、明示していないから、原告には、本件減速闘争の開始及び終了時点を確定することが不可能である上、運転業務の交代を巡って組合員運転士と非組合員運転士との間で混乱が生じることは必至である。したがって、組合員運転士がした本件減速走行による「のぞみ」号乗務の申し入れが債務の本旨に従った労務の提供といえない以上、車掌業務に従事する区間を含めた全労務の提供が債務の本旨に従った労務の提供とはいえない。 (三) 以上のとおり、組合員運転士がした労務の提供は、債務の本旨に従ったものとはいえないから、原告がした本件受領拒否は正当である。 2 争点2(争議行為の正当性)について本件減速闘争は、平常の運転方法では時速二七〇キロメートルで通過することが予定されている三駅において、補助参加人の独自の目的と見解の下に、原告には無断で平常とは異なる時速二三〇キロメートルで通過しようというもので、単なる労務提供義務の不履行(労務提供の拒否)という不作為を超えて、原告の業務を積極的に自己の支配下に置きつつ管理することを企図したものである。本件減速闘争は、不法に使用者側の自由意思を抑圧しあるいはその財産に対する支配を阻止する行為であり、正当な争議行為には当たらない。 3 争点3(本件受領拒否に伴う本件賃金カットの不当労働行為性)について(一) 争点1、2についての原告の主張のとおり、本件受領拒否は正当であり、また、本件減速闘争は正当な争議行為に当たらない。 (二) 原告が補助参加人を嫌悪している事実はなく、原告は、業務委員会などを開催して補助参加人との協議の場を設け、具体的な事故対策を説明したが、補助参加人はこれを理解しようとしなかったため、労使間の協議が不調に終わり、補助参加 している事実はなく、原告は、業務委員会などを開催して補助参加人との協議の場を設け、具体的な事故対策を説明したが、補助参加人はこれを理解しようとしなかったため、労使間の協議が不調に終わり、補助参加人は本件減速闘争に及んだのである。したがって、労使間の協議が不調となった時点において、原告には本件減速闘争を回避する方策はなく、回避する方策を講ずるべき義務もなかったし、本件減速闘争により「のぞみ」号の運行に遅延の発生、増大が生じることは、きわめて重大な事態であるから、原告のとった本件受領拒否の措置はやむを得ないものである。 (三) 右(一)、(二)からして、原告がした本件受領拒否に伴う本件賃金カットは、何ら不当労働行為に当たらない。 4 争点4(本件移動費用本人負担の不当労働行為性)について(一) 新幹線の運転士の雇用契約上の労務の内容は、定められた仕業票に基づく新幹線の運転等の一連の業務であり、仕業票には、乗務すべき新幹線列車ごとに、乗務を開始すべき場所、乗務を開始すべき時刻及び運転時刻等が具体的に定められている。 (二) したがって、仕業票で定められた「のぞみ」号の運転業務について労働者自らが債務の本旨に従った労務の提供をしない場合には、当該労働者は、原告の特段の指示がない限り、仕業票で予定されたその後の乗務列車の乗務開始場所・時刻に労務の提供を行う雇用契約上の債務を負っており、右の債務の履行に要する費用(弁済費用)は、特約のない限り、労働者(債務者)の負担である(民法四八五条本文)。 (三) 右のとおり、組合員運転士が債務の本旨に従った労務の提供をしなかった以上、本件移動費用は同人が負担すべきものであるから、原告が本件移動費用本人負担の措置をとったことについて、不当労働行為が成立する余地はない。 二被告 1 本件命令に係る処分理由は、別 をしなかった以上、本件移動費用は同人が負担すべきものであるから、原告が本件移動費用本人負担の措置をとったことについて、不当労働行為が成立する余地はない。 二被告 1 本件命令に係る処分理由は、別紙一記載のとおりであり、被告の事実認定及び判断に誤りはない。 2 争点1(本件受領拒否の正当性)について(一) 組合員運転士による労務の提供は、次のとおり債務の本旨に従った労務の提供に当たらないとまではいえない。 (1) 定時運転義務違反についてア本件減速闘争は、運転時の諸状況の下で安全を確実なものにするという目的のために、快適性、経済性をできる限り損なうことなく、定時運転できるという見込みの下に減速しようとしたものであるし、本件減速走行を行っても遅延が生じない場合もあり得るから、必ずしも定時運転義務違反とまではいえない。 イまた、旅客輸送では、「正確な時間で快適に経済的に輸送すること」を「安全確実に輸送すること」より優先することは許されないところ、本件減速闘争が行われた当時、岐阜羽島駅事故、豊橋駅事故が発生していたのであるから、組合員運転士が「のぞみ」号の安全性に疑問を持ったのも不自然ではなく、原告にはその疑問を解消すべき義務があったというべきである。 原告は、本件減速走行が安全上きわめて重大な事態とするが、補助参加人は、逆に本件減速走行により危険を回避できると認識していたのであり、両者の間に安全に対する認識に大きな隔たりがあったものである。このように労使間に安全性についての認識に齟齬があるときに安全確保のために行われた本件減速闘争について、定時運転義務を果たしているか否かという観点だけで債務の本旨に従った労務給付義務に違反しているか否かを判断すべきではない。 (2) 適合運転義務違反について定められた発着時刻を守るため、新幹線列車 定時運転義務を果たしているか否かという観点だけで債務の本旨に従った労務給付義務に違反しているか否かを判断すべきではない。 (2) 適合運転義務違反について定められた発着時刻を守るため、新幹線列車運転の際に余裕時分を費消して減速し、時間調整をするタイミングは、事実上運転士の判断に委ねられている。 本件減速闘争は、乗客の命を預かり、安全に目的地に輸送するという使命を課されている運転士が、安全に不安がある場合に、ダイヤを乱すおそれはないという認識の下に、補助参加人の指令に基づき不安を取り除くために減速し、その後余裕時分を利用して定められた時間で走行しようとしたものであって、余裕時分の費消方法が右のとおり事実上運転士の判断に委ねられていることを併せ考えると、このような余裕時分の費消方法が、余裕時分の利用目的を逸脱したものとまではいえない。 (3) 原告の労務指揮権の侵害について「のぞみ」号に運転士が乗務しているということは、新幹線列車の走行中の運転士には、安全・快適・正確・経済的に輸送を行うため、事実上ある一定の裁量が与えられているとみるべきである。本件減速闘争は、最も重要な責務である安全輸送を確実なものにするために、補助参加人の指令に基づいて本件減速走行を行おうというものであって、原告の労務指揮権を積極的に排除し、侵害するものとはいえない。 (二) 本件受領拒否が正当であるか否かは、提供された労務の瑕疵の内容が職務遂行に及ぼす影響、程度、範囲、労使双方の受ける利害得失等の諸事情を具体的に検討して決すべきであり、一部について瑕疵があるにすぎない場合には、その部分について受領拒絶ができるにすぎない。 本件減速闘争は、車掌業務に従事する部分については債務の本旨に従った労務の提供である。また、それ以外の部分についても、仮に本件減速走行により遅 合には、その部分について受領拒絶ができるにすぎない。 本件減速闘争は、車掌業務に従事する部分については債務の本旨に従った労務の提供である。また、それ以外の部分についても、仮に本件減速走行により遅れが生じたとしても一駅について最大一〇数秒であり、その影響はきわめて軽微であって、労働者の業務阻害行為が原告に異常な損害を与える態様でされるものではなく、労務の受領を拒絶しなければ著しく原告が不利になる程度、態様のものではないから、本件受領拒否が正当とはいえない。 3 争点2(争議行為の正当性)について本件減速闘争は、安全確保のため本件減速走行を行うというもので、正当な争議行為と認められる。 三補助参加人 1 争点1(本件受領拒否の正当性)について(一) 組合員運転士のした本件減速走行による労務の提供は、次のとおり債務の本旨に従った労務の提供である。 (1) 定時運転義務違反についてア基準運転時分とは、原告主張のとおり、運行計画上定められた最高速度に従って運転した場合の各停車場の運転時間のことであるが、基準運転時分での通過速度とは、許容最高速度であって、その速度以下の運転速度で運転せよという意味であり、その速度で運転せよという意味ではない。「のぞみ」号の場合、三駅通過運転速度が最高時速である時速二七〇キロメートルで通過してもよいということを意味するにすぎず、新幹線の運転士に時速二七〇キロメートルで通過する義務があるわけではないから、本件減速走行により基準時分からの遅れが生じても、そのこと自体は何ら債務の本旨に反するものではない。 イ各停車場の発着時刻が各停車場の基準運転時分に余裕運転時分を加えた運転時間によって設定されていることは原告主張のとおりであるが、余裕時分の意義についての原告の主張は誤りである。 基準運転時分に余裕時分を加算 発着時刻が各停車場の基準運転時分に余裕運転時分を加えた運転時間によって設定されていることは原告主張のとおりであるが、余裕時分の意義についての原告の主張は誤りである。 基準運転時分に余裕時分を加算した時分で運行して初めて定時運転となるが、基準運転時分、すなわち運行計画上定められた最高速度で運転していると、定められた発着時刻より早く発着してしまうことになるので、定時運転するためには運転士の判断により減速することが必要となることから、余裕時分が設けられているのである。工事等による徐行区間の存在や、自然条件等による徐行のために生じる遅れを回復するために余裕時分を利用することはあり得るが、このような徐行がない場合でも、余裕時分を費やさなければ定時運転が確保できないのであり、余裕時分の利用については運転士の裁量が認められている。 ウ本件減速闘争において組合員運転士が現実に本件減速走行をする駅は、新幹線の運転士は乗務中に交替して車掌業務に就くことがあることから、三駅のうち一駅又は二駅であり(後記(二)(2)イ)、基準運転時分からの遅れは一駅当たり一〇数秒(二駅で二〇数秒)にすぎない。 そして、アのとおり、通過駅を許容最高速度以下で運転した(基準運転時分から遅れた)からといって、そのことが定時運転義務違反になるものではないし、一五秒ないし四五秒で設定されている余裕時分の長さからして、現実の遅れは発生しない。 仮に本件減速走行により現実の遅れが生じるとしても、その遅れはせいぜい一〇数秒ないし二〇数秒にすぎず、右の程度の遅れが安全上きわめて重大な事態であるとはいえない。 エまた、本件減速走行が予定されていた運転区間には、時速二三〇キロメートル以下で三駅を通過するよう徐行区間が設定されていた場合が多数あるが、このような場合は、本件減速走行によるまで とはいえない。 エまた、本件減速走行が予定されていた運転区間には、時速二三〇キロメートル以下で三駅を通過するよう徐行区間が設定されていた場合が多数あるが、このような場合は、本件減速走行によるまでもなく当然に減速走行しなければならないから、本件減速走行による遅れは全く発生しない。 オ以上のとおり、本件減速走行は何ら定時運転義務に違反しないし、本件減速闘争も、定時運転からの遅れを当然に容認するものではない。 (2) 適合運転義務違反についてア本件減速走行により、三駅を通過する際に基準運転時分からの遅れが生じても、基準運転時分の意味((1)ア)からして、本件減速走行自体は何ら適合運転義務に違反しない。 そして、基準運転時分と余裕時分を合計した運転時分で運転してはじめて定時運転ができるのであるから、余裕時分を利用して基準運転時分からの遅れを回復しても、余裕時分の設定目的を逸脱した利用方法には当たらない。 イ本件減速走行により速度むらが生じるとの原告の主張は、三駅を時速二七〇キロメートルで通過すべきであることを前提としているが、基準運転時分の意味からしてそのようには解されない上、本件減速闘争においては、本件減速走行は惰行による運転方法によって行うこととされていたから、この方法によって速度むらが生じることはない。 平常の運転でも、余裕時分を消費するために、最高許容速度から減速し、再び最高許容速度で「のぞみ」号を運行することは常時行われていたから、本件減速走行によって速度むらが発生すると非難することはできない。 (3) 原告の労務指揮権の侵害について原告の主張は、基準運転時分の意味を誤り、本件減速走行と定時運転義務及び適合運転義務との関係、基準運転時分と余裕時分との関係並びに本件減速闘争による遅れ等についての誤った理解を前提とするもので、 原告の主張は、基準運転時分の意味を誤り、本件減速走行と定時運転義務及び適合運転義務との関係、基準運転時分と余裕時分との関係並びに本件減速闘争による遅れ等についての誤った理解を前提とするもので、失当である。 (二)(1) 仮に本件減速闘争への参加を指令された組合員運転士による労務の提供が債務の本旨に従った労務の提供に当たるとはいえないとしても、その受領を拒否することができるためには、正当な事由の存することが必要である。 そして、右の正当の事由の有無は、労働争議における労使間の交渉態度、労働者側の争議行為の態様、これによって使用者側が受ける打撃の程度等に関する具体的諸事情に照らし、その労務の受領拒否が衡平の見地から見て労働者側の争議行為に対する対抗手段として相当であるといえるかどうかによって判断すべきである。 (2) 本件受領拒否に関する諸事情は次のとおりである。 ア労使間の交渉態度、経過「のぞみ」号に使用されている三〇〇系車両については、平成四年三月一四日の営業運転開始前から、それ自身の安全性や、右車両による時速二七〇キロメートルという高速運転の安全性が問題となっていた。 しかし、原告は、三〇〇系車両の安全性の点検や試験走行などの安全性確認作業を十分に行うことなく「のぞみ」号の営業運転を開始し、そのため、営業運転直後から、モーター取り付けボルトの脱落・緩み等多数の事故・故障が発生した。 このような中で、平成五年四月四日、岐阜羽島駅事故が発生したため、補助参加人は、翌五日、原告に対し、「安全対策の緊急の申し入れ」を提出し、人身事故等防止のため、「のぞみ」号通過駅での時速二三〇キロメートル運行を当分の間時速二二〇キロメートルに減速し、その上で原因の究明と「のぞみ」号の安全対策を講じること及び経営協議会、業務委員会の開催を要求したが、原 め、「のぞみ」号通過駅での時速二三〇キロメートル運行を当分の間時速二二〇キロメートルに減速し、その上で原因の究明と「のぞみ」号の安全対策を講じること及び経営協議会、業務委員会の開催を要求したが、原告は、補助参加人の要求を無視し、業務委員会も開催しなかった。 補助参加人は、同月二二日、原告に対し、「バラスト跳ね上がり防止対策の申し入れ」を提出し、右の要求に加えて、原告がバラスト跳ね上がり防止対策として実施したバラスト面を五センチメートル下げる作業の実施状況の報告、「のぞみ」号通過駅の軌道にバラスト跳ね上がり防止ネットを設置することを要求した。 しかし、原告は、ようやく四月二八日に業務委員会を開催したものの、バラスト面を五センチメートル下げたので安全対策は万全であるとして、バラスト跳ね上がり防止ネット設置や通過駅での減速運行の必要性を否定した。 ところが、その直後の同月三〇日、豊橋駅事故が発生したため、補助参加人は、翌五月一日、原告に対し、「バラスト跳ね上がり防止対策の再緊急申し入れ」を提出し、再度、バラスト跳ね上がり防止ネット設置及び通過駅での時速二二〇キロメートル運行を要求し、さらに、同月一三日、原告に対し、「バラスト跳ね上がり防止対策の再々申し入れ」を提出し、原告の不誠実な態度に抗議するとともに、業務委員会を開催して誠意ある回答をすることを求めた。 補助参加人は、五月一〇日、原告に対し、争議行為を予告し、同月一七日、原告に対し、争議行為の細部について通知したが、原告は、同日になって業務委員会を開催したにすぎない。 イ本件減速闘争の態様、使用者が受ける打撃の程度補助参加人は、原告の安全姿勢を正し、三〇〇系車両の安全性を確立するために争議行為として本件減速闘争を行ったものである。 本件減速闘争は、許容最高速度が時速二七〇キロメ 、使用者が受ける打撃の程度補助参加人は、原告の安全姿勢を正し、三〇〇系車両の安全性を確立するために争議行為として本件減速闘争を行ったものである。 本件減速闘争は、許容最高速度が時速二七〇キロメートルと定められている三駅の通過速度を時速二三〇キロメートルとすること(本件減速走行を行うこと)であるが、前記(一)(1)のとおり、本件減速走行自体には労務の瑕疵は存しないし、仮に遅延が発生したとしても、労務の瑕疵の内容は軽微である。 本件減速闘争当時、「のぞみ」号は二名の運転士が乗務して交代して運転することになっており、運転士は、東京・新大阪間の全区間において運転業務を行うわけではなく、運転業務に従事しない区間は車掌業務に従事することになっていた。具体的には、下り便は豊橋で、上り便は浜松で、それぞれ運転業務と車掌業務を交替するため、運転業務に従事するのは、下り便の場合は東京・豊橋間又は豊橋・新大阪間であり、上り便の場合は新大阪・浜松間又は浜松・東京間である。 したがって、東京・豊橋間(下り)又は浜松・東京間(上り)の運転業務に従事する者が本件減速走行をすることができるのは、新冨士駅の通過時のみであり(これに該当する本件減速闘争への参加者は延べ一六二名にすぎない。)、豊橋・新大阪間(下り)又は新大阪・浜松間(上り)の又は浜松・東京間で運転業務に従事する者が本件減速走行をすることができるのは、三河安城駅及び岐阜羽島駅の通過時のみである。 しかも、組合員運転士が運転業務に従事する予定であった区間内の三駅付近において、計画徐行(工事等の都合によりあらかじめ予定された徐行)のため最高制限速度が時速一七〇キロメートルに制限されていた場合があり、この場合はそもそも本件減速走行をすることができなかったのである。 右の最高速度制限により本件減速走行をする め予定された徐行)のため最高制限速度が時速一七〇キロメートルに制限されていた場合があり、この場合はそもそも本件減速走行をすることができなかったのである。 右の最高速度制限により本件減速走行をする余地がなかった者は一〇名であり、これらの者について本件受領拒否をする理由は何ら存しない。右の最高速度制限により一駅のみの本件減速走行とならざるを得なかった者は三一名であり、これと、新冨士駅通過時に本件減速走行をすることができる者一五二名(前記一六二名から本件減速走行をする余地がなかった一〇名を差し引いた人数)を合わせた合計一八三名については、遅れによる影響は一〇数秒にすぎず、労務の瑕疵の内容、原告に与える影響は全く軽微である。 これに対し、車掌業務部分を含めた「のぞみ」号乗務部分の全ての労務受領を拒否された運転士の損害は莫大である。 ウ原告の意図原告は、右イでみた組合員運転士の業務内容等を個別具体的に検討することなく、一律に本件受領拒否をしたもので、その真意は、補助参加人の争議行為を破壊し、補助参加人に対する支配介入をすることにあった。 (3) このような、本件減速闘争に至る経緯、本件減速闘争の目的、原告の安全問題に対する対処、補助参加人を敵視した労務政策などの補助参加人に対する原告の対応、原告の本件受領拒否の意図等からして、原告のした本件受領拒否には何ら正当の事由が存しない。 (三) 仮に争議行為に際して債務の本旨に従った労務の提供でないことを理由に、使用者がその受領を拒否することに正当な事由が存することが必要でないとしても、債務の本旨に従わない労務の提供に対し、賃金支払を全額拒否することが許されるわけではない。 賃金支払の全額拒否は、労働者に対して賃金の絶対的喪失という回復不可能な不利益を与えることになるから、提供された労務の瑕疵が い労務の提供に対し、賃金支払を全額拒否することが許されるわけではない。 賃金支払の全額拒否は、労働者に対して賃金の絶対的喪失という回復不可能な不利益を与えることになるから、提供された労務の瑕疵が賃金全額の支払拒否に値するほどの瑕疵であるかどうかを具体的に判断すべきであり、本件減速闘争については、本件減速走行による具体的影響の有無・程度を考慮し、実際に新幹線列車の運行が遅延するおそれがあったか否かを問題にすべきである。前記のとおり、本件減速走行による遅れの影響は全くないか、きわめて軽微であるから、原告のした本件受領拒否は不当である。 2 争点2(争議行為の正当性)について(一) 本件減速闘争は、「のぞみ」号のような三〇〇系車両の安全走行を目的としてされたもので、組合員運転士が職場から離脱せず、通常の乗務を行いながら、三駅通過区間において本件減速走行をするという態様の争議行為であり、使用者である原告の指揮命令から完全に離脱することなく、これを部分的に排除しつつ不完全な労働力を提供する怠業という争議行為であり、正当な争議行為である。 (二) 労働者が争議行為として怠業を行う場合、使用者が労務の提供を全面的に拒否し、賃金の支払を拒否するためには、労働組合の争議行為に対する対抗手段として認められた争議行為であるロックアウトによるべきであり、ロックアウトによらずして本件受領拒否をして本件賃金カットをすることは許されない。 第四当裁判所の判断一争点1(本件受領拒否の正当性)について 1 労働者の就労の申入れが債務の本旨に従った労務の提供といえない場合、使用者は、労働契約に基づく労務給付請求権の債権者として、その受領を拒否し、その労務にかかる賃金の支払を拒否することができると解すべきであるが、賃金が労働者にとって最も重要な労働条件の一つであること 用者は、労働契約に基づく労務給付請求権の債権者として、その受領を拒否し、その労務にかかる賃金の支払を拒否することができると解すべきであるが、賃金が労働者にとって最も重要な労働条件の一つであることを考慮すれば、労働者の就労の申入れが債務の本旨に従った労務の提供といえるかどうかは、求められる労務の内容、程度、就労申し入れに至った経緯、労務の瑕疵の内容、程度、それが職務の遂行に及ぼす影響の程度等に照らし、提供された労務が賃金の支払を拒否するに足りる程度に不十分であるといえるかどうかによって判断すべきものと解するのが相当である。 右の見地から、以下、本件減速走行を予告しての組合員運転士による就労申し入れが債務の本旨に従った労務の提供といえるか否かについて検討する。 2 第二の一の事実及び証拠(甲二の1、五ないし七、九、一〇の各1、一一、一二の1、2、一三、一四の各1、一五ないし一九、三三の1、2、三四、乙一〇ないし三二、三五、三九ないし四六、四八、五〇、五一、五九ないし六一、七七、七八、八三ないし九九、一〇三ないし一一一、一一四ないし一一九、一二一ないし一三九、一四三、一四四、一四七、一五一、一五四、一五七ないし一六二、一六五ないし一七一、丙一、二の1、三、四の1、五、七、証人A、同B)並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。(証拠のうち、主要な書証は認定事実の末尾に摘示する。)(一) 新幹線の運行に関する法令の定め及び運行計画等(1) 原告は、鉄道事業法三条に定める鉄道事業の免許を受けた鉄道事業者(同法七条)であり、鉄道運送事業者(同法一三条一項)である。 原告は、運輸大臣に対し、同法四条一項五号に定める鉄道事業基本計画を提出していたが、平成三年一二月九日、東海道新幹線において時速二七〇キロメートルによる営業運転を実現し、到 法一三条一項)である。 原告は、運輸大臣に対し、同法四条一項五号に定める鉄道事業基本計画を提出していたが、平成三年一二月九日、東海道新幹線において時速二七〇キロメートルによる営業運転を実現し、到達時間の短縮と列車本数の増加による利用客の利便を図る目的で、同法七条に基づいて事業基本計画の変更を申請し、平成四年二月一二日、運輸大臣から右の変更について認可を受けた。 鉄道事業法一七条は、鉄道運送事業者に対し、運輸省令で定めるところにより、列車の運行計画を定め、あらかじめその旨を運輸大臣に届け出ることを義務づけており(運行計画の変更の場合も同様である。)、これを受けた同法施行規則三五条は、右運行計画の設定又は変更の届出に当たり提出すべき運行計画設定(変更)届出書には、運行計画を設定し又は変更しようとする列車の運行計画を適用する区間、設定し又は変更しようとする列車の最高許容速度、定期に運転する列車の発着時刻(列車運行図表をもって表示する。)、実施予定日等を記載すること、右届出書には、設定し又は変更しようとする列車の最高許容速度が安全上支障のないものであることを証する書類及び運転曲線図(変更届での場合は既に提出されたものと異なるときに限る。)を添付すること、右の最高許容速度については、鉄道路線の構造及び車両の走行性能、軌道中心線の曲線半径及び車両の曲線通過性能並びに軌道中心線のこう配及び車両の制動性能の異なるごとに定めた最高許容速度を記載することを求めている。(乙一二八、一二九)右の法令の定めに従い、原告は、運転速度表及び運行図表を定めている。(乙一三四、一三九)(2) また、鉄道営業法一条によれば、鉄道の建設、車両器具の構造及び運転については、命令をもって定める規程によるとされており、これに基づいて定められた新幹線鉄道運転規則は、列車等 三四、一三九)(2) また、鉄道営業法一条によれば、鉄道の建設、車両器具の構造及び運転については、命令をもって定める規程によるとされており、これに基づいて定められた新幹線鉄道運転規則は、列車等の運転について、「列車又は車両は、鉄道信号の現示又は表示に従って運転しなければならない。」(四四条)、「列車の運転は、停車場における出発、通過又は到着の時刻を定めて行わなければならない。」(四九条一項)、「列車の運行がみだれたときは、列車の性質等を考慮して運転整理を行い、所定の運行に復するように努めなければならない。」(同条二項)、「列車の最高速度は、線路及び電車線路の状態、車両の構造並びに列車保安方式の種類ごとに定めなければならない。」(七三条)と定め、同規則三条において、鉄道事業者は、同規則の実施に関する規定を定めなければならないとしている。(乙一三〇、一三一)(3) 原告は、右の規定に従い、取扱心得、「新幹線運転取扱心得細則」(以下「取扱心得細則」という。)、作業要領、作業標準等の規程及び「余裕時分表」を設け、これらを運転速度表、運行図表と併せて運転士全員に配布して周知徹底を図るとともに、日常的に運転士に対しこれらに基づく指導を行っている。 運転速度表は、三〇〇系車両で組成した新幹線列車(「のぞみ」号)の最高運転速度を東京駅・新大阪駅間で時速二七〇キロメートルと定め、線路が曲線となる場合には、曲線半径の長さに応じて設定した一四段階の区分に応じ、速度二七〇キロメートルから速度九五キロメートルまでの制限速度を定めており(なお、曲線半径三〇〇〇メートル以上の区間の制限速度は最高運転速度と同一の時速二七〇キロメートルであり、三駅は曲線半径三〇〇〇メートル以上の区間である。)、これを受けて、取扱心得四一条は、「列車は、別に定める運転速度をこえて トル以上の区間の制限速度は最高運転速度と同一の時速二七〇キロメートルであり、三駅は曲線半径三〇〇〇メートル以上の区間である。)、これを受けて、取扱心得四一条は、「列車は、別に定める運転速度をこえて運転してはならない。(運転速度表参照)」と定めている。(乙四四、四五、一三二、一三四)しかし、実際には工事等に伴う徐行区間の存在や風雨等の自然条件、先行列車の運転状況等の諸事情により、必ずしも右の最高運転速度及び制限速度(以下、右の両速度を併せて「所定速度」という。)のとおりに運転することができない事態が生じることもあるため、実際の最高運転速度は、運転速度表に定める所定速度の範囲内で、工事等に伴う徐行を考慮して具体的に定められ、運転時にはATC信号によって運転士に現示されており、作業要領№13は、「運転士は、ATC信号の現示の速度をこえて運転しないこと。」と定めている(ただし、東京駅と新横浜駅の間及び車両基地構内においては、ATC信号の現示の速度ではなく、取扱心得細則五条に定める制限速度(四〇キロメートルないし一一五キロメートル)を超えて運転してはならないとされている。)。(乙一三三、一三五)三〇〇系車両で組成した新幹線列車(「のぞみ」号)について、工事等に伴う徐行を考慮する前では、三駅を通過する際のATC信号の現示の速度はいずれも時速二七〇キロメートルとされている。(乙四六)なお、新幹線列車のATC信号の現示の速度が最高速度未満の場合には、その新幹線列車の速度がATC信号の現示の速度に達すると、ATC信号により自動的にブレーキが掛かるので、ATC信号の現示の速度よりも約五キロほど遅い速度で運転することとされている。 運行図表は、東京・新大阪間五一五・四キロメートルの新幹線の線路上に一九箇所の停車場(停車場とは、各駅、信号所及び車両 ATC信号の現示の速度よりも約五キロほど遅い速度で運転することとされている。 運行図表は、東京・新大阪間五一五・四キロメートルの新幹線の線路上に一九箇所の停車場(停車場とは、各駅、信号所及び車両所の総称である。)を設け、各停車場の発着時刻を一五秒単位で定めており、原告は、取扱心得一四条一項で、「列車は所定の運転時刻により運転するものとする。」と定め、各運転士に対し、当該運転士の乗務列車及び各停車場の発着時刻を具体的に記載した仕業票を事前に交付するとともに、乗務当日の工事等の運行条件を具体的に確認させている。 右の各停車場の発着時刻は、余裕時分表で列車ごと、区間ごとに定められた各停車場間の「基準運転時分」(運転速度表に定める所定速度に従って運転した場合の各停車場間の運転時間)に、主に前記工事等に伴う徐行区間の存在や風雨等の自然条件、先行列車の運転状況等による新幹線列車の基準運転時分からの遅延を想定して、定時運転を確保するために設定された一五秒ないし四五秒の「余裕時分」と呼ばれる時間を加えた運転時間(以下「運転時分」という。)に基づいて設定されている。 右の運転時分は、運転士が乗務するごとに仕業票により運転士に示されている。 乗客が利用する列車時刻表に掲載された新幹線列車の発着時刻は右の運転時分に基づいて決められた発着時刻である。(乙三九ないし四三、一三八)原告は、作業標準において、「列車の運転時刻の採時は、三〇秒単位で遅延時分を記録すること。」(第一一)、「乗務員は、運転中において速度計・圧力計・表示灯その他の機器の状態に注意すること。」(第一二)、「発車時のノッチ扱いは衝動の無いように努め、以後は信号及び速度条件に適合したノッチ位置とすること。」(第一五(2))と定め、マニュアル(新幹線鉄道事業本部東京運転所作成)第三章一四項に 第一二)、「発車時のノッチ扱いは衝動の無いように努め、以後は信号及び速度条件に適合したノッチ位置とすること。」(第一五(2))と定め、マニュアル(新幹線鉄道事業本部東京運転所作成)第三章一四項において、「(1)定時運転におけるノッチ扱いは余裕時分表を参考にする。」、「(2)駅間が長い区間においては、中間に目標点を定め、次駅までの時分の照合を行い、遅延防止に努める。」、「(5)徐行などを除き経済運転に努めること。」と定めた上で、各運転士に対し、各停車場間の距離と運転時分から平均速度を算出し、その平均速度に従って速度むらのない滑らかな運転をするよう指導している。(甲一一、乙一三六、一三七)新幹線の運転士は、工事等に伴う徐行が予定されている場合は、余裕時分の長さからして、徐行区間以外はできるだけATC信号の現示の速度どおりに新幹線列車を運転することになるが、工事等に伴う徐行が予定されていない場合にATC信号の現示の速度どおりに新幹線列車を運転すると、余裕時分の分だけ早く停車場に到着することになり、これを避ける必要があることから、その場合でも、緊急徐行のあり得ることを念頭に置いた上で、余裕時分を平均的に使用して新幹線列車を運転するよう努めなければならない。原告のする右の指導は、かかる場合も含めて新幹線列車が定時に、かつ快適・経済的に運転されるよう運転士に求めているもので、運転士は、停車場に早く到着することを避けるために、到着時間を調整する目的で新幹線列車の走行速度をATC信号の現示の速度よりも落として運転することがある。なお、工事等に伴う計画徐行は、工事の進捗度合い等により、運転士に周知された後でも、場合によっては運転中に解除されることもある。 (二) 新幹線運転士の労務の内容、程度原告における新幹線の運転士の業務は、次のとおりである 行は、工事の進捗度合い等により、運転士に周知された後でも、場合によっては運転中に解除されることもある。 (二) 新幹線運転士の労務の内容、程度原告における新幹線の運転士の業務は、次のとおりである。 (1) 運転士は、予備勤務の場合を除き、毎月二五日に交番順序表に基づいた仕業番号で翌月分の勤務を指定される。 (2) 東海道新幹線列車には、「のぞみ」号、「ひかり」号及び「こだま」号があるが、運転士の乗務列車がいずれかに固定されることはなく、例えば、行きの乗務が「のぞみ」号で帰りの乗務が「こだま」号であったりした。 (3) 運転士は、始業時刻までに出勤し、出勤後点呼を受ける。運転士の始業時刻、点呼時刻、乗務する新幹線列車などは、仕業番号ごとにあらかじめ定められ、運転士に周知徹底されている。出勤した運転士は、運転を担当する新幹線列車の停車場の発着時刻、徐行等の注意事項、点呼時刻、退出時刻等を点呼や乗務員仕業票等に基づいて具体的に指示される。勤務を終えた運転士に対しては、その運転士が勤務を終了した際に、次の仕業番号及び仕業時刻等を再度確認して次の仕業の周知徹底を図っている(終了点呼の際に次の仕業を確認することを「次仕業確認」と呼んでいる。)。 運転士は、右(一)の取扱心得、作業要領等及びこれらに基づく指導、事前に交付された仕業票により、ATC信号で現示された速度以下で新幹線を運転し(最高速度遵守義務)、予定された各停車場の発着時刻どおりに新幹線を運転する義務(定時運転義務)を負っており、また、各停車場間の基準運転時分を標準としながら余裕時分を適切に利用し、運転時の諸状況に適合した安全、快適でかつ経済的な運転を行う義務(適合運転義務)を負っている。運転士は、原告があらかじめ計画している道床更換等の工事等のための計画徐行、車体や線路の異常を感知した し、運転時の諸状況に適合した安全、快適でかつ経済的な運転を行う義務(適合運転義務)を負っている。運転士は、原告があらかじめ計画している道床更換等の工事等のための計画徐行、車体や線路の異常を感知した際の緊急徐行、風雨等の自然条件などによる遅れについては、余裕時分を使って取り戻す努力をすることになる。 (4) 本件減速闘争当時、「のぞみ」号に乗務する運転士は二名であり、東京駅又は新大阪駅から出発する際に内一名が運転士としての業務に従事し、残りの一名が車掌としての業務(ただし、検札を含む。)に従事する。右の二名は、下り便は豊橋で、上り便は浜松で、それぞれ運転業務と車掌業務を交替する。したがって、運転士が運転業務に従事するのは、下り便の場合は東京・豊橋間又は豊橋・新大阪間であり、上り便の場合は新大阪・浜松間又は浜松・東京間である。ただし、繁忙期や乗客の病気等の緊急事態が発生などした場合は、車掌業務に追われるため、右の交替をしないままに乗務を終えることもあった。 (三) 補助参加人の結成と原告との紛争(1) 東海旅客鉄道労働組合(以下「東海労組」という。)ないしその前身である東海旅客鉄道労働組合連合会は、昭和六二年四月三〇日及び平成二年六月八日に、原告との間で、原告の経営基盤の確立、相互に理解と信頼に基づいた健全かつ対等的な労使関係の確立等を内容とする共同宣言に調印していたが、その上部団体である全日本鉄道労働組合総連合会(以下「鉄道労連」という。)が、労使関係を更に強化させる前提としての労使対等のための組織体制を強化するため、ストライキ権(以下「スト権」という。)確立に向けた職場討議を提起したことを受けて、平成二年六月の定期大会において、スト権について議論を行う方針を決定した。当時の東海労組の中央執行委員長は、Cであった。 原告は、争議権(ス 」という。)確立に向けた職場討議を提起したことを受けて、平成二年六月の定期大会において、スト権について議論を行う方針を決定した。当時の東海労組の中央執行委員長は、Cであった。 原告は、争議権(スト権)については、共同宣言と一体として議論すべきもので、本来行使が必要となった場合に確立すべきものであり、そのような前提がないのにスト権を確立しておくことは、共同宣言の趣旨に相容れないとの立場をとり、同年八月、その趣旨を記載した「争議権(スト権)論議について」と題する書面を原告の管理職の一部に配布した。 東海労組は、スト権の確立に賛成する者と反対する者に分かれ、賛成派(約一二〇〇名)は、中央執行委員会で少数派となり、平成三年七月の定期大会開催延期問題をきっかけに東海労組を脱退し、同年八月一一日、補助参加人を結成した。(乙一五一)(2) 補助参加人は、平成三年一二月、原告が便宜供与の停止、補助参加人組合員の脱退慫慂等をしたとして静岡県地方労働委員会に、補助参加人及び補助参加人新幹線地方本部東京運転所分会は、平成四年三月、原告が補助参加人組合員の脱退慫慂等をしたとして東京都地方労働委員会に、いずれも原告を被申立人として、不当労働行為の救済申立てをし、また、鉄道労連及びCは、平成四年五月、原告らを被告として、原告らが東海労組の運営に支配介入したため、Cが東海労組からの脱退を余儀なくされたとして、損害賠償を求める訴えを提起した。(乙五九ないし六一)(四) 本件減速闘争に至る経緯(1) 原告は、平成四年三月一四日のダイヤ改正から、東海道新幹線の東京・新大阪間で時速二七〇キロメートルの速度で走行する「のぞみ」号の運行を開始した。 「のぞみ」号は、三〇〇系と呼ばれる車両を使用しているが、三〇〇系車両について、平成四年三月一四日から同年九月四日までに 阪間で時速二七〇キロメートルの速度で走行する「のぞみ」号の運行を開始した。 「のぞみ」号は、三〇〇系と呼ばれる車両を使用しているが、三〇〇系車両について、平成四年三月一四日から同年九月四日までに、二件の運休を含め、主電動機取付ボルトの脱落、主変換装置の保護回路動作による故障表示、空気調和装置の冷房効果不良、ダンパ類のボルトのゆるみ、窓ガラスの打痕・ひび割れなどの故障が発生した。 原告は、これらの故障はいずれも初期故障と呼ばれる故障であり、三〇〇系車両のシステム自体にかかわる本質的な故障ではないと考えていた。 これに対し、補助参加人は、三〇〇系車両の故障、欠陥は克服されておらず、安全に関して多くの問題があるとして、平成五年一月二五日、闘申第二号「安全確立のための申入れ」を提出し、原告に対し、三〇〇系車両そのものの故障は改善されたのか明らかにすること、時速二七〇キロメートル運行に関する地上設備の改善は確立されているのか明らかにすることなど、運行に関する事項を挙げて、団体交渉、経営協議会、業務委員会を開催して回答するよう申し入れた。(乙一〇)原告と補助参加人との間では、労働協約として基本協約が締結されており、労使間で、「業務の合理化ならびに能率の向上に関する事項」、「事故防止に関する事項」等について経営協議会を、これらの事項の細則について業務委員会を開催するとされている。また、基本協約では、補助参加人が争議行為を行う場合は、日時及び場所並びに争議行為の概要を一〇日前までに、争議行為の目的、形態、規模、日時、期間及び場所等の具体的かつ詳細な内容をその七二時間前までに、文書をもって原告に通知しなければならないとされ、補助参加人が争議行為の予告内容を変更する場合には、その都度、変更した争議行為の開始日時の四八時間前までに原告に通知しなけ 容をその七二時間前までに、文書をもって原告に通知しなければならないとされ、補助参加人が争議行為の予告内容を変更する場合には、その都度、変更した争議行為の開始日時の四八時間前までに原告に通知しなければならないとされている(基本協約二三五条ないし二四一条、二五九条)。(甲六、乙七七)(2) 平成五年四月四日、岐阜羽島駅事故が発生した。原告は、調査した結果、線路の状況や車両の状況に異常はないとし、現段階で原因を特定するに至っていないが、現実にバラストが飛んだことから、当面の対策として緊急にバラストの整理を強化することにし、バラストを安定した状態にするため、バラストの高さが枕木面と同レベルになっている箇所について、全線(総延長約四三〇キロメートル)にわたり、バラスト面を枕木面より五センチメートル程度下げる工事を一ないし二か月程度の間に緊急に実施することとし、同駅構内については、同日に右工事を完了した。 原告は、翌五日、右の調査結果及びバラストの緊急強化対策を、「岐阜羽島駅における飛石の原因等について」と題する書面に取りまとめ、同書面を原告広報部名で発表するとともに、補助参加人をはじめとする原告内に存する労働組合に配布した。(乙一一五)補助参加人は、岐阜羽島駅事故は、「のぞみ」号を時速二七〇キロメートルで運転していることに起因する事故であるとして、同五日、原告に対し、闘申第一八号「安全対策の緊急の申し入れ」を提出し、同駅事故を教訓として、「のぞみ」号通過駅での時速二七〇キロメートル走行を止め、当分の間時速二二〇キロメートルの臨速手配(自動列車制御装置の速度表示を臨時に変えること)をとり、その上で事故の原因を解明して抜本的な対策を講じることなど六項目を申し入れるとともに、早急に安全のための経営協議会・業務委員会を開催するよう申し入れた。 制御装置の速度表示を臨時に変えること)をとり、その上で事故の原因を解明して抜本的な対策を講じることなど六項目を申し入れるとともに、早急に安全のための経営協議会・業務委員会を開催するよう申し入れた。補助参加人が、右の時速での臨速手配を申し入れたのは、「のぞみ」号以外の新幹線列車の最高速度が時速二二〇キロメートルであったためである。(乙一三)また、補助参加人は、同月二二日、原告に対し、闘申第二一号「バラスト跳ね上がり防止対策の申し入れ」を提出し、右の要求に加えて、原告の対策では、原因がはっきりしない中で再び同種の死傷事故が発生する可能性があり、軌道の安全が確保されるか疑問であるとして、原告の実施したバラスト面を五センチメートル下げる作業の実施状況の報告を求めるとともに、「のぞみ」号の時速二二〇キロメートルないし二七〇キロメートル通過駅の軌道にバラスト跳ね上がり防止用のネットを設置することを要求した。(乙一五)原告は、同月二六日、「三〇〇系新幹線電車の安定輸送対策について」と題する書面を取りまとめて発表し、同日、同書面を補助参加人をはじめとする原告内に存する労働組合にも配布した。同書面には、トラブル対策の実施状況、確認・点検の主な項目と結果と併せ、「これまでに発生したトラブルはいずれも三〇〇系車両のシステムにかかわる本質的な故障ではなく、個別に対策をうつことにより解決することができる初期的な故障であり、これらのトラブルに対しては同月二七日までに必要な対策を終了することとする。」、「今回すべての三〇〇系車両を対象に確認、点検をメーカーと共同で実施し、問題のないことを確認した。」などと記載されていた。(乙一六、八三)原告と補助参加人は、同月二八日、業務委員会を開催した。同委員会において、原告は、バラスト面を枕木面より五センチメートル程 施し、問題のないことを確認した。」などと記載されていた。(乙一六、八三)原告と補助参加人は、同月二八日、業務委員会を開催した。同委員会において、原告は、バラスト面を枕木面より五センチメートル程度下げることを徹底することによって岐阜羽島駅事故の再発は防げるし、ガラス割れや打痕については三〇〇系車両に限ったものではなく、特に多くなってもいないなどとして、「のぞみ」号の通過速度を下げたり、バラスト面にネットを張る考えがないことを説明したが、補助参加人は納得せず、両者の話合いは平行線のままに終わった。 その直後の同月三〇日、豊橋駅事故が発生した。原告は、事故後現場付近を調査した結果、上り本線内に新しい裂傷のある幼児用靴が発見されたことから、この靴が何らかの理由により線路内に投げ込まれ、通過中の列車が靴を巻き込んで石が飛んだものと思われたため、その旨を記載した「豊橋駅における飛石について」と題する書面を同日発表した。なお、事故に遭った乗客には、特に外傷もなく、その乗客は予定どおり新幹線に乗車した。(甲七、乙一一六)補助参加人は、翌五月一日、原告に対し、闘申第二三号「バラスト跳ね上がり防止対策の再緊急申し入れ」を提出し、「豊橋駅事故は、補助参加人が憂慮していた事態がまたまた発生したもので、バラスト面の五センチメートル下げで安全であるとする原告の主張が覆されたとして、再度、バラスト跳ね上がり防止ネット設置及び通過駅での時速二二〇キロメートル運行を要求し、原告が対策を講じなければ、労働組合として重大な決意で臨む。」旨申し入れたが、原告は、豊橋駅事故の原因は発表した書面のとおりであり、岐阜羽島駅事故とは異なるとの見解を示した。 (乙一八)原告は、岐阜羽島駅事故及び豊橋駅事故の発生により、確認車による綿密な異物点検強化を実施してきたが、さらに 原因は発表した書面のとおりであり、岐阜羽島駅事故とは異なるとの見解を示した。 (乙一八)原告は、岐阜羽島駅事故及び豊橋駅事故の発生により、確認車による綿密な異物点検強化を実施してきたが、さらに駅構内における一層の安定化を図るために、バラスト表面を乳剤により固化させることとし、そのための工事を、一二駅を対象に、施工延長約一三キロメートルの区間で、同月二〇日に完了させる予定で行うこととした。また、原告が実施したバラスト面を枕木面より五センチ程度下げる工事は同年四月二六日までに完了していたため、原告は、同年五月一〇日、そのことと新たに実施する右の乳剤固化工事の内容、及び乳剤の効果として、乳剤を表面に散布することによりバラストとバラストが接着され飛石防止になることを記載した「道床の安定化対策について」と題する書面を発表するとともに、補助参加人をはじめとする原告の労働組合に配布した。(乙八四)原告は、同月二〇日までにバラスト面への乳剤散布を完了したが、同日以降バラストの跳ね上げによる事故は起こっていない。 (五) 本件減速闘争(1) 補助参加人は、平成五年五月一〇日、原告に対し、闘申第二四号「争議行為の予告」を提出し、次のとおり争議行為をする旨を予告し、同日、労働大臣及び中央労働委員会に対し、同様の予告をした。(乙二四)争議の目的補助参加人が平成五年一月二五日以降重ねて原告にした申し入れの未解決事項、安全についての要求など争議の期間同年五月二一日〇時から問題が完全解決に至るまでの間争議の場所補助参加人の組合員が従事する職場の全部又は一部争議の態様 「のぞみ」号の減速行動などストライキを含むあらゆる形の争議行為の実施補助参加人は、同月一三日、原告に対し、闘申第二五号「バラスト跳ね上がり防止対策の再々申し入れ」を提出し、 一部争議の態様 「のぞみ」号の減速行動などストライキを含むあらゆる形の争議行為の実施補助参加人は、同月一三日、原告に対し、闘申第二五号「バラスト跳ね上がり防止対策の再々申し入れ」を提出し、従前の要求を繰り返すとともに、業務委員会を開催して誠意ある回答をすることを求めた。(乙一九)また、補助参加人は、同日、各地方本部執行委員長に対し、「のぞみ」号の安全行動を闘うための準備体制の確立について指令を発し、各地方本部が万全な準備体制の確立を図ることを求めた。(乙二一)(2) 原告と補助参加人は、日程調整の上、同月一七日、二回目の業務委員会を開催した。同委員会において、原告は、枕木面での風速は、〇系車両及び一〇〇系車両の「ひかり」号が時速二二〇キロメートルで走行した場合と三〇〇系車両の「のぞみ」号が時速二七〇キロメートルで走行した場合とで同じであること、補助参加人が要求しているネットの設置は、夏に熱がこもり、熱によるレールの伸びに悪影響を及ぼすので採用できないこと、乳剤の散布計画とその効果等について説明したが、補助参加人は納得せず、両者の話合いは平行線のままに終わった。 補助参加人は、同月一七日、業務委員会終了後、原告に対し、闘申第二六号「争議行為に関する通知」を提出し、「岐阜羽島駅事故以降、補助参加人による再三にわたる申し入れにもかかわらず、原告は業務委員会を二回開催したにすぎず、しかも、原告の回答は何ら抜本的な対策になっていない。補助参加人はさらに協議、交渉を行っていくが、平和的に解決できない場合、すでに予告してある争議行為を実施する。」として、次の内容の争議行為を行う旨通告した。(乙二六)争議行為の目的 「のぞみ」の駅通過は時速二二〇キロメートル以下とすること、その他安全対策に関する補助参加人の要求の解決を図ることなど争議 」として、次の内容の争議行為を行う旨通告した。(乙二六)争議行為の目的 「のぞみ」の駅通過は時速二二〇キロメートル以下とすること、その他安全対策に関する補助参加人の要求の解決を図ることなど争議形態 「のぞみ」乗務の全運転士による時速二七〇キロメートル通過駅である三駅を時速二三〇キロメートルで通過する安全確認のための減速行動争議の期間・場所平成五年五月二一日出勤時より別に通知するまでの当分の間、東京運転所と大阪運転所で行う。 補助参加人が、三駅を時速二三〇キロメートルで通過する争議形態をとることとしたのは、ATC信号では、その仕組み上、時速二三〇キロメートルの表示はできても、補助参加人の求める時速二二〇キロメートルを表示することができないためである。 (3) 補助参加人からの右の通告を受けた原告は、①本件減速闘争が「正当」な争議行為であるかどうかは疑義があるが、通知は一応通知として受け取ること、②「のぞみ」号を減速することは、労務の完全な提供ではなく、「のぞみ」号の乗務の部分の労務の受領を拒否すること、を説明した。これに対し、補助参加人からは、①原告の対応はロックアウトではないか、②変仕業(当初予定の作業を変更すること)ではないか、③「のぞみ」号に遅れが出なければ問題ないではないか、といった意見が出されたが、原告は、①ロックアウトではないこと、②変仕業ではないこと、③結果として遅れが出る出ないかが問題ではなく、遅れが出る可能性があること自体が問題であること、を説明し、さらに、労務の受領を拒否した部分については労働時間と扱わず、賃金及び手当を支払わないこと、労務の受領拒否に伴い、次に予定されている勤務に就くための移動に要する移動費用(本件移動費用)は運転士本人に負担させること、移動に当たって運転士が制服を着用することを禁止 及び手当を支払わないこと、労務の受領拒否に伴い、次に予定されている勤務に就くための移動に要する移動費用(本件移動費用)は運転士本人に負担させること、移動に当たって運転士が制服を着用することを禁止することを説明した。なお、補助参加人は、本件減速走行をどのような方法で行うかについては原告に明らかにしなかった。 補助参加人は、争議行為に伴う年次有給休暇の扱いの関係から、右の通告でした争議行為を、東京運転所と大阪運転所で行う拠点方式から争議行為の対象者を個別に指名する指名方式に変更することとし、同月一八日、同月二一日に「のぞみ」号に乗務することが予定されている組合員運転士のうち東京運転所の二名、大阪運転所の一名に対し、三駅を時速二三〇キロメートルで通過することを指令するとともに、原告に対し、闘申第二八号「争議行為に関する通知の一部変更について」を提出し、同年五月二一日の争議行為の対象者を右の者に変更、指定することを通知した。補助参加人は、以後、毎日、本件減速闘争に参加する組合員運転士(一日数名)に対し、同様の指令をするとともに、原告に対し、争議行為の対象者を書面で通知した。(乙三一)他方で補助参加人は、同月一八日、原告に対し、同月一七日に示された原告の見解は納得できないとして、闘申第二七号「緊急団体交渉の申し入れについて」を提出し、緊急に団体交渉を行うよう申し入れ、同月二〇日にも、重ねて団体交渉を申し入れた。(乙二八、二九)原告は、補助参加人の申入れに係る事項はいずれも団体交渉事項には該当しないので、団体交渉をすることはできないが、話し合いの場は早急に持った方がよいと判断し、同月二〇日、補助参加人と話し合ったが、双方が主張を述べ合うに止まり、話合いは平行線のまま終わった。 (4) 補助参加人から本件減速闘争参加の指令を受けた組合員運転 場は早急に持った方がよいと判断し、同月二〇日、補助参加人と話し合ったが、双方が主張を述べ合うに止まり、話合いは平行線のまま終わった。 (4) 補助参加人から本件減速闘争参加の指令を受けた組合員運転士は、仕業終了の点呼を受け次の仕業の確認をする際などに、「のぞみ」号への乗務を申し入れたが、いずれも拒否され、拒否された乗務に係る賃金及び手当を支給されず、次の乗務に就くための移動に要する費用(本件移動費用)も自己負担とされた。なお、基本協約においては、原告は、争議行為に参加し又は争議行為に起因して業務に就かなかった組合員に対し、業務に就かなかった日又は時間についての賃金(基本給、都市手当、役付手当及び技能手当に対応する額)を減額するとされている(基本協約二六六条)(甲六、乙七七)本件減速闘争は平成五年九月一四日二四時をもって終結したが、本件減速闘争に参加した補助参加人の組合員は二八〇名、延べ三〇八名であった。 (5) なお、補助参加人は、同日、原告に対し、ストライキを含むあらゆる形の争議行為を同月二五日以降改めて行う旨予告した上、同月二六日から同月二九日までの間に原告の各地区運転区等の職場で指名ストライキを行った。 (六) 本件減速走行による影響についての労使の理解(1) 本件減速走行を現実に行うにあたって、時速二七〇キロメートルから時速二三〇キロメートルに減速する方法としては、三駅を通過する手前でブレーキをかけて強制的に減速する方法と、三駅を通過する前にノッチを切り、惰行運転をして減速する方法とが考えられるが、補助参加人は、いずれの方法をとるかについては必ずしも決定していなかった。しかし、組合員運転士の間では、ブレーキ操作の方法では乗客に衝撃が生じ、不快感を与えて快適運転を損なうおそれがあることから、後者の方法が望ましいとの考えが強く、 ついては必ずしも決定していなかった。しかし、組合員運転士の間では、ブレーキ操作の方法では乗客に衝撃が生じ、不快感を与えて快適運転を損なうおそれがあることから、後者の方法が望ましいとの考えが強く、通過する駅の前後各四キロメートル程度を惰行運転により減速し、通過駅のみを時速二三〇キロメートルで運転すれば、本件減速走行によって一駅当たり基準運転時分から一〇数秒の遅れが生じるが、この遅れは基準運転時分からの遅れであって、現実の遅れではないし、平常時と同様、余裕時分を利用することにより現実の遅れは生じないし、仮に現実の遅れが生じても最大一駅当たり一〇数秒遅れるにすぎないと考えていた。 これに対し、原告は、時速二三〇キロメートルにATC信号の現示の速度を設定して試算した結果では一分程度の遅れが見込まれたものの、本件減速走行の方法が明らかでないことから、現実の遅れがどの程度生じるかは一概にはいえないと考えていた。 (2) なお、前記のとおり、新幹線運転士は、車掌業務を兼務することから、東京・豊橋間(下り)又は浜松・東京間(上り)の運転業務に従事する組合員運転士が本件減速走行をすることができるのは、新冨士駅の通過時のみであり、これに該当する本件減速闘争への参加者は延べ一六二名であった。また、右の車掌業務兼務の関係で、豊橋・新大阪間(下り)又は新大阪・浜松間(上り)又は浜松・東京間で運転業務に従事する組合員運転士が本件減速走行をすることができるのは、三河安城駅及び岐阜羽島駅の通過時のみであったし、組合員運転士が運転業務に従事する予定であった区間内の三駅付近において、計画徐行(工事等の都合によりあらかじめ予定された徐行)のため最高制限速度が時速一七〇キロメートルに制限されていた場合があり、この場合はそもそも本件減速走行をすることができなかったが、右 において、計画徐行(工事等の都合によりあらかじめ予定された徐行)のため最高制限速度が時速一七〇キロメートルに制限されていた場合があり、この場合はそもそも本件減速走行をすることができなかったが、右の最高速度制限により本件減速走行をする余地がなかった組合員運転士は一〇名、右の最高速度制限により一駅のみの本件減速走行となる者は三一名であった。 3 以上の認定事実に基づき検討する。 (一) 原告は、新幹線の利用者に対し、駅での新幹線列車の発着時刻を列車時刻表として公表しているが、そのような場合は、利用者は、公表に係る発着時刻のとおりに列車が発着することを前提として行動するから、原告には、定時性、すなわち、その公表に係る発着時刻のとおり列車を運行させることが求められものである。そして、東京・新大阪間において、高速で走行し、多数の乗客を一時に短時間で運送する新幹線のような高速度公共交通機関については、右の定時性の要請は一層強いものというべきであり、定時性の遵守は新幹線の使命ともいうべきものである。 原告の公表に係る発着時刻は、新幹線列車の運転士が、原告が運輸大臣に届け出た運行計画に基づき具体的に定められ、かつ、乗務に当たって仕業票により指示・確認されたところの運転速度、運転時分等に従って新幹線列車を運行させることを前提として作成されているのであるから、定時性遵守のためには、新幹線列車の運転士が、右の運転速度、運転時分等に従って新幹線列車を運行させることが必要不可欠となる。 このことと、新幹線列車の運転士は、定時運転義務及び適合運転義務を負っていることからすれば、同運転士には、あらかじめ原告が運輸大臣に届け出た運行計画に基づき具体的に定められ、かつ、乗務に当たって仕業票により指示・確認されたところの運転速度、運転時分等に従い、所定の発着時刻に新幹 らすれば、同運転士には、あらかじめ原告が運輸大臣に届け出た運行計画に基づき具体的に定められ、かつ、乗務に当たって仕業票により指示・確認されたところの運転速度、運転時分等に従い、所定の発着時刻に新幹線列車が各停車場を発着するように新幹線列車を運転すべき労働契約上の義務があるというべきであり、右の義務に従って新幹線列車を運転することが、新幹線の運転士としての債務の本旨に従った労務の履行であるというべきである。もとより、新幹線列車の実際の運転に際しては、当該運転時の具体的諸状況により必ずしも所定の運転速度、運転時分等により難いことは否定できないところであるが、そのような具体的諸事情を離れて一律に右の義務に抵触する運転速度、運転時分等によって新幹線列車を運転することは、債務の本旨に従った労務の履行と認めることはできない。 本件減速走行は、当該運転時の具体的諸状況にかかわらず、所定速度が時速二七〇キロメートルと定められている三駅の通過時に「のぞみ」号を時速二三〇キロメートルで運転することを内容とするものであるから、債務の本旨に従った労務の履行であると認めることができないことは明らかである。 (二) 被告は、本件減速闘争の目的、本件減速走行によって遅れが生じない場合もあること、本件減速闘争に至る経緯、余裕時分の利用が運転士の判断に委ねられていること等からして、組合員運転士がした乗務申入れは債務の本旨に従ったものでないとまではいえないと主張する(第三の二2)。 また、補助参加人も、基準運転時分での通過速度とは許容最高速度のことであり、三駅通過速度の最高速度が時速二七〇キロメートルとされているからといって、新幹線の運転士にその時速で通過する義務はない上、定時運転をするためには余裕時分を利用して運転しなければならず、余裕時分の利用について運転士の裁量 が時速二七〇キロメートルとされているからといって、新幹線の運転士にその時速で通過する義務はない上、定時運転をするためには余裕時分を利用して運転しなければならず、余裕時分の利用について運転士の裁量が認められているが、余裕時分を利用して運転すれば遅れは生じないこと、惰行運転により本件減速走行をすることにより速度むらは生じないこと等を理由に、本件減速走行は定時運転義務、適合運転義務に違反せず、原告の労務指揮権を侵害するものではないし、本件減速闘争に参加することを予告してされた組合員運転士による「のぞみ」号への乗務の申入れは、債務の本旨に従った労務の提供である旨主張する(第三の三1(一))。 補助参加人主張のとおり、最高速度とは、最高速度を超えて運転してはならないという最高許容速度の意味であって、新幹線列車の運転士が最高速度で新幹線列車を運転しなければならない義務を負っているわけではなく、したがって、三駅通過速度の最高速度が時速二七〇キロメートルとされているからといって、新幹線の運転士にその時速で通過する義務があるとまではいえない。また、工事等に伴う徐行が予定されていない場合には、ATC信号の現示の速度で新幹線列車を運転すると、余裕時分の分だけ早く停車場に到着することになるから、運転士は、余裕時分を適切に利用しつつ、ATC信号の現示の速度に達しない速度で新幹線列車を運転する必要がある。したがって、その意味で、新幹線列車の運転士には、被告及び補助参加人主張のとおり、一定範囲において、余裕時分を利用した運転速度の加減調整についての事実上の裁量が認められているということができる。 しかしながら、余裕時分は、主に、工事等に伴う徐行区間の存在、風雨等の自然条件、先行列車の運転状況等の諸状況により基準運転時分で運転することができない場合があることに備 ているということができる。 しかしながら、余裕時分は、主に、工事等に伴う徐行区間の存在、風雨等の自然条件、先行列車の運転状況等の諸状況により基準運転時分で運転することができない場合があることに備え、基準運転時分と併せて定時運転をするためにあらかじめ設定されているものであるから、余裕時分は、運転時の具体的諸状況に応じてその設定目的に従って消化されるべきであって、工事等に伴う徐行が予定されていない場合でも、緊急徐行のあり得ることを念頭に置いた上で、余裕時分を平均的に使用して新幹線列車を運転するように努めなければならないのである。 したがって、新幹線列車の運転士に認められている余裕時分の利用についての事実上の裁量は、当該運転時における具体的諸状況の下で認められているものであって、右の運転時の具体的諸状況を離れて、自由に認められているものではない。 しかるに、本件減速闘争は、運転時の具体的諸状況とはかかわりなく、意図的に三駅通過時に本件減速走行を行おうとするものであるから、新幹線列車の運転士に認められた右の具体的諸状況の下での余裕時分利用についての裁量の範囲を超えたもので、本件減速走行をするため、あるいは本件減速走行によって生じた基準運転時分からの遅れを回復のために使用することは、原告の管理下にあり、その設定目的と原告の指示に従って消化されるべき余裕時分を、設定目的及び原告の指示から逸脱して、一時的にせよ、組合員運転士、ひいては、同運転士に本件減速闘争を指令した補助参加人の管理下に置くことになるもので、このようなことは、本件減速闘争の目的が「のぞみ」号の安全確保にあるからといって、労務の提供として、到底許されることではない。 本件減速闘争に基づき本件減速走行をすることは、運転時の具体的諸状況と離れて所定の運転速度、運転時分で運転しないもの 」号の安全確保にあるからといって、労務の提供として、到底許されることではない。 本件減速闘争に基づき本件減速走行をすることは、運転時の具体的諸状況と離れて所定の運転速度、運転時分で運転しないものであるから、当該列車、その前後に運転される他の列車及び新幹線全体の運転自体並びに旅客等に対する影響の有無及びその影響の具体的な度合い等について論ずるまでもなく、そのこと自体が債務の本旨に従った労務の履行とは認められないのであって、結果として、速度むらが生じることなく所定の運転時分内に運転されれば債務の本旨に従った労務の履行であるとすることはできないから、被告及び補助参加人の主張は採用できない。 右のとおり、組合員運転士が本件減速闘争に参加し、本件減速走行を行う旨予告してした「のぞみ」号への乗務(就労)の申入れは、あらかじめ原告が運輸大臣に届け出た運行計画に基づき具体的に定められ、かつ、乗務に当たって仕業票により指示・確認されたところの運転速度、運転時分等に従い、所定の発着時刻に新幹線列車が各停車場を発着するように新幹線列車を運転すべき新幹線列車の運転士としての労働契約上の義務に違反するとともに、原告が有する余裕時分についての管理権を排除し、組合員運転士ないし補助参加人の管理下に置こうとするものであるから、原告の労務指揮権を侵害するものといえ、余裕時分を新幹線という高速度公共交通機関を経営し、基準時分と余裕時分を併せた運転時分によって定時運転をすることにより、その運行について要求される定時性を充たそうとしている原告にとって、提供された労務の瑕疵の程度は大きく、それが職務の遂行に及ぼす影響も看過できないものといわざるを得ないから、賃金の支払を拒否するに足りる程度に不十分な労務の提供であり、債務の本旨に従った労務の提供ということはできない。 (三) 大きく、それが職務の遂行に及ぼす影響も看過できないものといわざるを得ないから、賃金の支払を拒否するに足りる程度に不十分な労務の提供であり、債務の本旨に従った労務の提供ということはできない。 (三) 被告は、本件減速闘争は、車掌業務に従事する部分については債務の本旨に従った労務の提供である旨主張し、補助参加人も、車掌業務部分を含め一律にされた本件受領拒否は不当である旨主張する(第三の二2(二)、同三1(二)(2)、(三))。 確かに、「のぞみ」号に乗務する運転士は、東京駅と新大阪駅の間の乗務のすべてについて運転士としての業務に従事するわけではなく、兼掌業務と呼ばれる車掌としての業務(検札を含む。)にも従事する(2(二)(4))が、運転士は、「のぞみ」号に乗務することにより、当然に運転業務と車掌業務を交替して行うことが予定されているのであって、乗務に当たり、車掌業務のみに従事することが予定されているわけではない(繁忙期などに結果として車掌業務のみに従事することもあるが、そのことが当初から予定されているわけではない。)から、「のぞみ」号に乗務する運転士のこれらの業務は、当該運転士が「のぞみ」号に乗務する限り、不可分一体のものとみるのが相当である。 したがって、本件減速闘争に参加するために組合員運転士がした「のぞみ」号への乗務申し入れについては、それが運転業務についての債務の本旨に従った労務の提供といえない以上、車掌業務部分も含め、「のぞみ」号への乗務について提供された労務の受領全体を拒否することができるというべきである。被告及び補助参加人の主張は、「のぞみ」号に乗務する運転士が車掌業務のみに従事することも許されることを前提とするものであるが、そのような前提をとることはできないから、採用できない。 (四) 以上によれば、本件減速闘争に参加し 、「のぞみ」号に乗務する運転士が車掌業務のみに従事することも許されることを前提とするものであるが、そのような前提をとることはできないから、採用できない。 (四) 以上によれば、本件減速闘争に参加した組合員運転士のした労務の提供は、債務の本旨に従った労務の提供とはいえないから、原告がした本件受領拒否は、正当である。 4(一) 補助参加人は、本件減速闘争への参加を指令された組合員運転士による労務の提供が債務の本旨に従った労務の提供に当たるとはいえないとしても、その受領を拒否することができるためには、正当な事由の存することが必要である旨主張する(第三の三1(二))。 しかしながら、労働者の就労の申し入れが債務の本旨に従った労務の提供といえない以上、使用者がその受領を拒否できるのは当然であり、受領を拒否するためにさらに正当な事由が必要であるとすることはできないから、補助参加人の主張は採用できない。 補助参加人が主張するような諸事情の多くは、労務の提供が債務の本旨に従ったものといえるかどうかの判断に当たって考慮すべき事柄であるとはいえるが、前記2で認定した事実に照らし、本件減速闘争への参加を指令された組合員運転士による労務の提供が債務の本旨に従った労務の提供に当たるとはいえないことは3のとおりである。 (二) また、補助参加人は、原告がした本件受領拒否は、債務の本旨に従わない労務の提供に対し、賃金支払を全額拒否した点で不当である旨主張するが(第三の三1(三))、組合員運転士がした労務の提供が、原告において賃金の支払を全額拒否するに足りる程度に不十分であったこと、そのことは、本件減速走行による具体的影響の有無及び程度にかかわらないことは、前記3で検討したとおりであるから、この点に関する補助参加人の主張も採用できない。 二争点2(争議行為とし であったこと、そのことは、本件減速走行による具体的影響の有無及び程度にかかわらないことは、前記3で検討したとおりであるから、この点に関する補助参加人の主張も採用できない。 二争点2(争議行為としての正当性)について 1 本件減速闘争は、組合員運転士が職場から離脱せず、通常の乗務を行いながら、三駅通過区間において本件減速走行をするという態様の争議行為であるから、補助参加人主張のとおり、使用者である原告の指揮命令から完全に離脱することなく、これを部分的に排除しつつ不完全な労働力を提供する怠業という争議行為であるということができる。 怠業は、必然的に企業の業務の正常な運営を阻害するものではあるが、その本質は労働者が労働契約上負担する労務供給義務の不完全履行であり、その手段方法は労働者が団結してその持つ労働力を使用者に完全には利用させないことにあるのであって、それを超えて、不法に使用者側の自由意思を抑圧しあるいはその財産に対する支配を阻止するような行為をすることは許されず、そのような行為は正当な争議行為と解することはできないというべきである(ストライキに関する最高裁平成四年一〇月二日第二小法廷判決・裁判集(民事)一六六号一頁参照)。 本件減速走行は、補助参加人の統一した意思に基づく本件減速闘争として補助参加人の指令に基づき組合員運転士が行おうとしたものであるが、これは、争点1について判断したとおり、新幹線の運行に関し、余裕時分に対する原告の管理権を一時的に排除し、これを組合員運転士ないし補助参加人の管理下に置くことを意味するものというべきであるから、たとえ本件減速闘争の目的が被告及び補助参加人の主張するように三〇〇系車両の安全走行を目的としたものであったとしても、到底正当な争議行為と認めることができない。 2 補助参加人は、労働者が争議行 、たとえ本件減速闘争の目的が被告及び補助参加人の主張するように三〇〇系車両の安全走行を目的としたものであったとしても、到底正当な争議行為と認めることができない。 2 補助参加人は、労働者が争議行為として怠業を行う場合、使用者が労務の提供を全面的に拒否し、賃金の支払を拒否するためには、ロックアウトによるべきである旨主張するが(第三の三2(二))、右のとおり、本件減速闘争は正当な争議行為と認めることができない上、使用者は、労働者が争議行為として怠業を行う場合でも、操業を継続するために必要とする対抗措置をとることができると解するのが相当であり、必ずしもロックアウトによらなければ労務の提供を拒否することができないとはいえないから、補助参加人の主張は採用できない。 三争点3(本件受領拒否に伴う本件賃金カットの不当労働行為性)について組合員運転士のした就労申し入れが債務の本旨に従った労務の提供とはいえず、原告のした本件受領拒否が正当であり、また、本件減速闘争が正当な争議行為であると認めることができないことは、争点1、2について判断したとおりである。 そうすると、前記一2(三)、(四)で認定した原告と補助参加人との間の紛争の存在、本件減速闘争に至る経緯を考慮しても、原告が本件受領拒否に伴い本件賃金カットをしたことが、労働組合法七条一号(不利益取扱い)又は同条三号(支配介入)に当たるとすることはできないし、他に原告の右行為について不当労働行為の成立を認めるに足りる証拠はない。 四争点4(本件移動費用本人負担の不当労働行為性)について原告のした本件受領拒否が正当であり、また、本件減速闘争を正当な争議行為と認めることができないことは前記のとおりである。 一2(二)(3)で認定した事実によれば、新幹線の運転士は、乗務列車の運転業務等を行うため、原 拒否が正当であり、また、本件減速闘争を正当な争議行為と認めることができないことは前記のとおりである。 一2(二)(3)で認定した事実によれば、新幹線の運転士は、乗務列車の運転業務等を行うため、原告の特段の指示のない限り、仕業票で予定された乗務列車の乗務開始場所・時刻に労務の提供を行う労働契約上の債務を負担しているということができる。したがって、原告のした本件受領拒否に伴い、新幹線運転士は、仕業票でその次に予定された乗務に就くため、当該乗務に係る乗務開始場所に赴き、乗務開始時刻に労務の提供を行う債務を負担しているというべきである。 そして、債務の弁済に関する費用は、別段の意思表示のない限り、債務者が負担すべきものであり(民法四八五条本文)、右の別段の意思表示を認めるに足りる証拠はないから、原告のした本件受領拒否に伴い生じた本件移動費用は、債務者である組合員運転士が負担すべきことになる。 そうすると、原告のした本件移動費用本人負担の措置が労働組合法七条一号(不利益取扱い)又は同条三号(支配介入)に当たるとすることはできないし、他に原告の右行為について不当労働行為の成立を認めるに足りる証拠はない。 五結論以上によれば、原告の不当労働行為の成立を認めた本件命令は違法であるから、その取消を求める原告の請求は理由がある。 よって、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第一九部裁判長裁判官山口幸雄裁判官鈴木正紀裁判官吉崎佳弥・別紙一命令書上記当事者間の都労委平成5年不第25号事件について、当委員会は、平成9年4月1日第1197回および同年4月15日第1198回公益委員会議において、会長公益委員D、公益委員E、同F、同G、同H、同I、同J、同K、同L、同M、同N、同O、同Pの合議により、次のとおり命令す 4月1日第1197回および同年4月15日第1198回公益委員会議において、会長公益委員D、公益委員E、同F、同G、同H、同I、同J、同K、同L、同M、同N、同O、同Pの合議により、次のとおり命令する。 主文 1 被申立人東海旅客鉄道株式会社は、申立人ジェイアール東海労働組合から減速闘争の指令を受けた組合員の「のぞみ」への乗務を拒否して、その組合員に対して支払わなかった賃金および乗務に伴う手当を支払わなければならない。 2 被申立人会社は、前記組合員が東京・新大阪間を移動したことによって負担した費用を支払わなければならない。 理由 第1 認定した事実 1 当事者(1) 被申立人東海旅客鉄道株式会社(以下「会社」という。)は、昭和62年に日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)が分割・民営化され、東海地方を中心にして、東海道新幹線をはじめとする旅客鉄道輸送等を業とする株式会社として発足したものであり、肩書地に本社、名古屋市に東海鉄道事業本部、東京に新幹線鉄道事業本部、静岡市、大阪市に支社、津市、飯田市に支店をそれぞれ置き、従業員数は約22,000名である。 (2) 申立人ジェイアール東海労働組合(以下「組合」という。)は、申立外東海旅客鉄道労働組合(以下「東海労組」という。)に所属していた組合員ら約1,200名が平成3年8月11日に同労働組合を脱退して結成した労働組合である。 (3) 会社には、組合のほか、東海労組、国鉄労働組合などがある。 2 組合結成前後の労使関係(1) 国鉄の従業員の一部をもって組職する国鉄動力車労働組合(以下「動労」という。)、鉄道労働組合、全国施設労働組合及び真国鉄労働組合は、昭和61年7月、国鉄改革に協力する立場に立ち、国鉄改革労働組合協議会を結成した。同協議会は下部組職として、 労働組合(以下「動労」という。)、鉄道労働組合、全国施設労働組合及び真国鉄労働組合は、昭和61年7月、国鉄改革に協力する立場に立ち、国鉄改革労働組合協議会を結成した。同協議会は下部組職として、設立準備中の会社の営業区域に東海国鉄改革労働組合協議会を発足させた上、昭和62年2月国鉄従業員の一部を構成員とする他の組合をも加えて全日本鉄道労働組合総連合会(以下「鉄道労連」という。)に組織を変更した。 東海国鉄改革労働組合協議会は、昭和62年3月東海旅客鉄道労働組合連合会(以下「東海鉄道労連」という。)に、ついで同年9月、単一組合である東海労組に組織を変更した上、鉄道労連に加盟した。 東海鉄道労連は、動労出身のCを中央執行委員長に選任し、同人はその後東海労組においても中央執行委員長に選ばれた。 (2) 東海鉄道労連はそれより先、同年4月30日、会社との間で、相互の信頼関係を基礎に一致協力して活力ある会社を築きあげるとの趣旨の「共同宣言」に調印した。東海鉄道労連の後身である東海労組は、平成2年6月8日、会社とともに上記共同宣言をさらに強化する趣旨の第二次共同宣言に調印した。このように労使関係は協調を旨として発展してきた。 (3) 鉄道労連は、これより先、平成2年3月、JR各社が日本国有鉄道清算事業団から旧国鉄職員を採用しないと称していたにもかかわらず、政治の介入に応じて採用したことは、労使の信頼関係に反すると考え、将来も外部からの介入によって職員人事が行われれば、労使の信頼関係を危うくし、労働組合否定にもつながりかねないと懸念、このような場合に労働組合は予めスト権を確立し、これを行使する体制を要するとの基本姿勢をとるべきものとして、同年6月の定期大会にその旨提案した上、現場での討議を促し、近く就任する次期執行部においてこれを集約することとし 合は予めスト権を確立し、これを行使する体制を要するとの基本姿勢をとるべきものとして、同年6月の定期大会にその旨提案した上、現場での討議を促し、近く就任する次期執行部においてこれを集約することとした。 (4) 東海労組は、鉄道労連の動向に即応して同年6月の大会で、「スト権確立」について、組合内で議論を行う方針を決定し、この方針に基づいて各地でこの問題について議論を重ねることにした。 会社は、東海労組がスト権を確立すれば、上記2(2)の共同宣言で確立された労使の協調路線が崩壊してストライキの頻発を招き、新幹線の定時運行が妨げられ、乗客の信頼を失って運送業界での競争上不利な立場に立たされることを恐れ、東海労組のこの方針に強く反発して、「争議権論議について」と題する書面を助役以上の役職者に配布し、その中でスト権を行便すれば大変なことになる、スト権は、団体交渉をつくしたにもかかわらず労使双方の主張が一致しない場合等の前提があって、その行使が必要になった場合に確立すべきものであり、その前提がないのにスト権を確立しておくということは、2年6月8日に取り交わした前記2(2)の共同宣言の趣旨に反するものである旨述べて、会社がスト権確立に反対しているとの姿勢を明らかにした。 東海労組と会社とはこれより先同年1月、組合員の範囲拡大について合意したことにより、新たに組合員となった課長代理などの役職者などは、あるいは東海労組の副執行委員長として、あるいは一組合員として、中央執行委員会または東海労組が各地で行ったスト権確立のための集会で、会社のこの姿勢に賛同して、東海労組の方針に反対する旨の発言を行い、東海労組のスト権確立賛成派と反対派との対立は激化し、中央執行委員会では賛成派は少数となった。そしてスト権確立を目指す賛成派は、翌3年7月定期大会開催延期問題を 労組の方針に反対する旨の発言を行い、東海労組のスト権確立賛成派と反対派との対立は激化し、中央執行委員会では賛成派は少数となった。そしてスト権確立を目指す賛成派は、翌3年7月定期大会開催延期問題をきっかけに東海労組から脱退して組合を結成するに至った。 (5) 会社が、会社浜松運転区において、基本協約(平成3年8月30日締結)に組合が違反したとして、一切の便宜供与を停止したこと、組合員の出向・配転に際し、組合に所属している限り、意に反した職場に配属することをほのめかすことにより、組合からの脱退を慫慂したこと等を主張して、組合は、3年12月5日、静岡県地方労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てた(静労委平成3年不第4号事件)。これに対して7年3月28日、同労働委員会は会社に対し、組合に掲示板を貸与することを中止したり、組合からの脱退を慫慂したりして組合の運営に支配介入してはならないこと等を命令した。 (6) 4年3月16日、東海労組の組合員でもある助役が、組合の組合員2名に対し、東海労組への加入を慫慂し、さらに新幹線鉄道事業本部管理部人事課長が、そのうちの1名の組合員に対し、会社を信じて組合を脱退して東海労組に加入するよう慫慂した等と主張して、組合および組合新幹線地方本部東京運転所分会は、4年3月24日に当委員会に不当労働行為の救済を申し立てた(都労委平成4年不第14号事件)。そして7年5月9日付けで、当委員会は上記組合の主張事実を認め、会社に対し、会社は、新幹線鉄道事業本部管理部人事課長をして、組合の組合員に対して組合からの脱退を勧奨する言動を行わせることによって、また、助役が組合の組合員に対して組合からの脱退を勧奨する行為を容認することによって、申立人組合の組織運営に支配介入してはならない旨命令した。 (7) その他にも、組合結成直後 行わせることによって、また、助役が組合の組合員に対して組合からの脱退を勧奨する行為を容認することによって、申立人組合の組織運営に支配介入してはならない旨命令した。 (7) その他にも、組合結成直後に当時の会社の役員が「(組合を)1年以内にぶっつぶす」などと発言したこともあり、また、組合と会社の間には、4年5月15日に東京地方裁判所に当時の組合の委員長と鉄道労連が、会社および当時の会社役員等を相手に、損害賠償を求める訴えを提起し、6年9月30日には、大阪府地方労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てるなど、紛争が相次いでいる。 3 新幹緑「のぞみ」の事故と労使の対応(1) 会社は、平成4年3月14日のダイヤ改正から、東海道新幹線において、東京・新大阪間を従前より30分短縮する時速270キロメートル(以下「キロ」という。)の「のぞみ」の運行を開始した。なお「のぞみ」は、300系と呼ばれる車輌を使用している。 (2) 「のぞみ」の運行開始以降、同年9月4日までに生じた300系車輌の故障は、2件の運休を含め、主電動機取付ボルトの脱落、主変換装置の保護回路動作による故障表示、空気調和装置の冷房効果不良、タンパ類のボルトの緩みなどであった。 (3) 翌5年1月25日、組合は、会社に対し、ダイヤ改正まで2か月足らずとなったが、300系車輌の故障・欠陥は克服されていないとして、300系車輌そのものの故障は改善されたのか、ことに改善を要する事項として8項目、その他時速270キロ走行に伴う施設・設備の改善など運行に関する事項をあげて、基本協約に基づく団体交渉、経営協議会、業務委員会を開催して回答するよう申し入れた。 (4) 経営協議会、業務委員会とは、基本協約に基づき本社、事業本部、支社、支店ごとに開催されるが、本件に関連する新幹線事業本部については、会社 協議会、業務委員会を開催して回答するよう申し入れた。 (4) 経営協議会、業務委員会とは、基本協約に基づき本社、事業本部、支社、支店ごとに開催されるが、本件に関連する新幹線事業本部については、会社・組合とも、3ないし7名が出席して開催し、付議事項としては、「業務の合理化ならびに能率の向上に関する事項」、「福利厚生に関する事項」、「事故防止に関する事項」、「その他会社側と組合側が必要と認めた事項」となっている。また会社が組合に説明する事項としては、「事業計画に関する事項」、「営業報告及び決算に関する事項」、「その他会社が必要と認めた事項」となっている。 経営協議会と業務委員会とは、組合側出席者がいずれも地方組織の三役と関係部長であるが、会社側の出席者が、経営協議会では、関係課長以上となっているのに対し、業務委員会では、課長代理以上となっている。 (5) 4月4日、岐阜羽島駅において、「のぞみ」が通過する際に、バラスト(レールの下に敷きつめている石)をはね上げ、ホームで列車の通過待ちをしていた乗客の足にあたって怪我をさせるという事故が起こった。 組合は、この事故が、「のぞみ」を時速270キロで運転していることに起因する事故であるとして、4月5日、この事故を教訓として、「のぞみ」が時速270キロで通過する駅(新富士、三河安城、岐阜羽島)での時速270キロ走行をやめ、当分の間、時速220キロの臨速手配(自動列車制御装直の速度表示を臨時に変えること)とし、そのうえで、事故の原因を解明し、抜本的な対策を講じることなど6項目の申し入れを行い、早急に安全確保のための経営協議会、業務委員会の開催を申し入れた。 (6) 一方、会社は、4月5日付けの「岐阜羽島駅における飛石の原因等について」と題する会社広報部名の書面において、当面の対策として、「バラスト 保のための経営協議会、業務委員会の開催を申し入れた。 (6) 一方、会社は、4月5日付けの「岐阜羽島駅における飛石の原因等について」と題する会社広報部名の書面において、当面の対策として、「バラストを安定した状態にするため、マクラギ面と同レベルとなっている箇所についても、さらに5センチ程度下げる工事を全線にわたり緊急に実施する(約430キロ、工期1~2か月程度)」と発表した。 (7) 4月22日、組合は、「バラスト跳ね上がり防止対策の申し入れ」と題する書面において、(会社の対策が)バラスト面を5センチ下げたとしているが、これでは、原因の究明が不十分であり、対策として十分かもはっきりせず再び同種の死傷事故が発生する可能性があるとして、「バラスト面を5センチ下げたのは、いつ、どのような方法、どこの駅、どこの場所で実施したのかを明らかにされたい」、また4月4日の事故を教訓にして「のぞみ時速220キロ~270キロ通過駅にバラスト跳ね上がり防止用のネットを早急に張られたい。それまでの間、時速220キロの臨速手配とされたい」旨申し入れ、早急に経営協議会、業務委員会を開催するようかさねて申し入れた。 (8) 4月26日、会社は、「300系新幹線電車の安全輸送対策について」と題する書面において、発生したトラブルは、300系システムに係わる本質的な故障ではなく、初期的な故障であり、27日までに必要な対策を終了するとして、バラスト対策など5項目のトラブル対策の実施状況を発表した。 (9) 4月28日、組合と会社との間でこの問題に関する第1回目の業務委員会が開催されたが、組合の要求に対して会社は、バラスト跳ね上がり防止用ネット、時速220キロ臨速手配については必要ない、ガラス割れや打痕については300系に限ったものではなく、特に多くもなっていないなどと主張し が、組合の要求に対して会社は、バラスト跳ね上がり防止用ネット、時速220キロ臨速手配については必要ない、ガラス割れや打痕については300系に限ったものではなく、特に多くもなっていないなどと主張し、双方の意見は平行線のままに終わった。 (10) 4月30日、豊橋駅で「のぞみ」が時速約225キロで通過中、バラストを跳ね上げ、ホームで列車の通過待ちをしていた乗客が負傷するという事故が再度起こった。 これに対して組合は、5月1日、会社に対し、「バラスト跳ね上がり防止対策の再緊急申し入れ」と題する書面で、「『のぞみ』の駅の通過は、時速220キロの臨速手配とされたい。『のぞみ』の通過駅の軌道にバラスト跳ね上がり防止用のネットを張られたい。」「バラスト面を5センチ下げたので安全対策は万全だ、としていた貴側の今回の事故に対する見解と責任を明らかにされたい」として、「貴側がなんらの対策も講じなければ、自らと乗客の生命を守るために労働組合として重大な決意で臨むことを明らかにする」と申し入れた。 会社はこれに対して、この事故は、幼児の靴を何者かが軌道内に投げ入れたことによるものであり、それによって幼児の靴を巻き上げ、つられてバラストが跳ね上げられたものであり、従来の事故とは異なるとの見解を示した。 (11) 5月10日、会社は、バラスト面をより安定化させるために、「のぞみ」が通過する12駅の構内の道床に乳剤を散布し、バラストの表面を固化する作業を、5月20日までに完了する予定である、との対策を発表した。 (12) 5月13日、組合は会社に対し、バラスト跳ね上がり防止対策に関する事故後4回目の申し入れを行い、5月17日に第2回目の業務委員会が開催されたが、この問題に関する双方の主張は変わらなかった。 (13) 会社は、5月20日までにバラスト面への乳剤散布を完 対策に関する事故後4回目の申し入れを行い、5月17日に第2回目の業務委員会が開催されたが、この問題に関する双方の主張は変わらなかった。 (13) 会社は、5月20日までにバラスト面への乳剤散布を完了し、同日以降バラスト跳ね上げによる事故は起こっていない。 4 「のぞみ」運行の実態(1) 会社は、平成4年3月14日のダイヤ改正から、東海道新幹線において、東京・新大阪間を2時間30分で結ぶ最高時速270キロの「のぞみ」の1日2往復の運行を開始し、翌5年3月18日のダイヤ改正以降は、1日上下34本を運行していた。 (2) 会社における新幹線の運転士の業務は、次のとおりである。 ① 運転士は、大きく分けて、会社から交番に指定される者と予備に指定される者に分かれる。 交番とは、当月の25日に翌月の勤務が指定されるものであり、運転士は、その指定に従って勤務する。また予備に指定された者は、休日だけが指定され、他の運転士が休むときにその運転士に代わって勤務するもので、勤務は5日前に指定される。 ② 東海道新幹線には「のぞみ」「ひかり」「こだま」があるが、運転士の乗務はいずれかに固定されることはなく、例えば行きは「のぞみ」で帰りが「こだま」であるなど、さまざまな組み合わせが指定される。 ③ 運転士は、交番で指定された日時に出勤すると、乗務員仕業票により、出・退勤、点呼の時刻、乗務する列車、発車・停車・到着時刻、通過駅の通過時刻など、細かく指示される。 例えば「8-1仕業」によれば、出勤は当日の16時57分、17時22分に点呼を受け、東京駅17時56分30秒出発の列車に乗務し、浜松駅と豊橋駅の間で運転操縦を交代するまで「兼掌」と呼ばれる車掌業務に従事し、運転交代後20時26分45秒に新大阪に到着するまで運転士として列車を操縦する。そして新大阪と大阪第1 の列車に乗務し、浜松駅と豊橋駅の間で運転操縦を交代するまで「兼掌」と呼ばれる車掌業務に従事し、運転交代後20時26分45秒に新大阪に到着するまで運転士として列車を操縦する。そして新大阪と大阪第1車輌所の間の回送運転を1往復行い大阪で宿泊する。翌日は、8時8分に起床し、8時18分に点呼をうけ、新大阪8時57分30秒発の列車に乗務し、豊橋・浜松間で交代するまで車掌の業務を行い、その後東京に13時17分30秒に到着するまで運転士として列車を操縦し、14時5分に退出する。なおこの間の通過駅の通過時刻、停車訳の到着・出発時刻は、15秒単位で細かく定められている。 ④ 「のぞみ」の運行は、自動列車制御装置(ATC)に表示される速度(以下「ATC信号現示」という。)に従って行われる。この表示は、区間毎の最高速度を示すものであり、運転士は、この表示以下の速度で運転しなければならない。 停車駅の相違または列車による相違はあるが、このATC信号現示に従って運転した際の各駅間の所要時間を「基準運転時分」というが、ダイヤは、基準運転時分で組まれているわけではなく、通常各駅間に15秒から最高45秒(列車によっては、まれに0秒または1分の場合もある)の「余裕時分」が設けられている。従って、ATC信号現示によって運転すれば、次の停車駅までに、通過する駅の余裕時分の合計秒数だけは早く到着することになる。 ⑤ 「のぞみ」も、会社があらかじめ計画している道床更換などのための計画徐行、車体や線路の異常を感知した際の緊急徐行、気象状況などによる遅れもあり、運転士は、この余裕時分を使って遅れを取り戻す努力をすることになる。 5 本件争議について(1) 平成5年5月10日、組合は、会社に対し、争議行為の予告を行った。 その内容として、この争議の目的は組合が4月5日以降、重ねて って遅れを取り戻す努力をすることになる。 5 本件争議について(1) 平成5年5月10日、組合は、会社に対し、争議行為の予告を行った。 その内容として、この争議の目的は組合が4月5日以降、重ねて申し入れていた安全対策についての要求の実現などで、日時は5月21日以降争議の目的が完全に達成されるまでの間、争議の場所は組合員が従事する職場の全部または一部、争議の態様は「のぞみ」の減速闘争などストライキを含むあらゆる形の争議、となっている。 なお、同日、組合は、労働大臣、中央労働委員会に対して、同趣旨の「争議行為に関する通知」を行った。 (2) 5月17日、組合は会社に対し、基本協約に基づいて「争議行為に関する通知」を行った。その内容は、およそ次のとおりであった。 4月4日の負傷事故以降、組合の前記第1、3(5)、(7)、(10)、(12)の申し入れにもかかわらず、会社は、業務委員会の開催に2回応じた(4月28日、5月17日)にすぎない。しかも会社の回答はなんら抜本的な対策になっておらず、組合としてはさらに協議・交渉を求めていくが、平和的に解決できない場合、すでに予告してある争議行為を実施する。争議の目的は、「のぞみ」の駅通過を時速220キロ以下とすること、その他安全対策に関する組合要求の解決を図ることなど、争議形態は「『のぞみ』乗務の全運転士による時速270キロ通過駅である岐阜羽島駅、三河安城駅、新富士駅を時速230キロで通過する安全確認のための減速行動」であり、5月21日から東京運転所・大阪運転所で行う。 なお、この減速闘争によるダイヤへの影響について、組合の試算によると1駅で10数秒、会社の試算によれば1分程度の遅れが見込まれた。この時間の差は、組合が通過する駅の前後各4キロ程度を惰行運転により減速し、通過駅のみを時速230キロで 響について、組合の試算によると1駅で10数秒、会社の試算によれば1分程度の遅れが見込まれた。この時間の差は、組合が通過する駅の前後各4キロ程度を惰行運転により減速し、通過駅のみを時速230キロで運転するものとして試算したのに対し、会社は、ATC信号現示を230キロに設定して試算したことによる差である。 (3) 5月17日、この通知時において、組合、会社間でおよそ次のようなやりとりがあった。 会社は、①減速闘争が正当な争議行為か否か若干の疑義があるが争議行為として受け付ける、②「のぞみ」を減速することは、労務の完全な提供ではなく、債務の不完全履行であり、「のぞみ」の乗務部分の労務の受領を拒否する、との見解を口頭で表明した。 組合は、3駅減速しても遅れる事はないのに「のぞみ」乗務部分だけ労務の受領を拒否するということは、明らかなロックアウトであり、会社は、法律に基づいた手続きをすべきである、と主張した。 さらに、会社は組合に対し、ともかく会社の業務指示に従い、出先から乗務先へは自費でいくこと、制服で乗車しないことを主張し、譲らなかった。 (4) 5月18日、組合は、会社に対し、争議行為に関する通知の一部変更についてと題する書面で、「前日に細部を申し入れたが、5月21日の争議行為対象者を下記のように変更・指定するので通知する」として、東京運転所2名、大阪運転所1名を指名して通知し、以降各日毎の争議行為対象者を書面で通知した。 (5) 同5月18日、組合は、会社に対し、前日の会社の見解について「私たちは貴側の見解を到底認める訳にはいかない。そもそも理解に苦しむところである。 よって労使関係の根幹にかかわる問題なので、その貴側の真意を解明すべく早急に正式の団体交渉を開催し、協議されたい」として、緊急に団体交渉を行うよう申入れを行った。 (6) 解に苦しむところである。 よって労使関係の根幹にかかわる問題なので、その貴側の真意を解明すべく早急に正式の団体交渉を開催し、協議されたい」として、緊急に団体交渉を行うよう申入れを行った。 (6) 5月19日、東京運転所に所属する運転士で、組合から21日の減速闘争を指令されていた者が、東京運転所で仕業終了の点呼を受け、次の仕業の確認を行った際に、担当の助役から、「あなたの所属する組合からあなたが『のぞみ』の減速行動を行うとの通告がありました。会社としては『のぞみ』に関する部分の労務提供は拒否します。したがって5月21日20時30分までに大阪運転所で点呼を受けて下さい。車発機、ハンドルキー等は、その場所で授受して下さい。なお移動に必要な費用は、本人の負担です。また移動に際しての制服の着用は認めません。」と通告された。 これに対して、前述の運転士が、「ロックアウトなのか」と質したところ、助役は「そうではありません」と答え、さらに「では就業規則に基づくものなのか」と質したが、なんの回答もなかった。また、この運転士が「私は就労の意思があります。したがって所定どおりの出勤を確認します。」といったところ、助役は「困ったな」と繰り返すだけであった。 (7) さらに組合は、5月20日、会社に対し、5月18日付け団体交渉申し入れに細部を追加申し入れるとして、「貴側は、就業規則に基づき『のぞみ』担当部分の労務の受領を拒否するとしているが、規則の何条に基づくのか明らかにされたい」「『労務の受領拒否』の理由は何かを明らかにされたい」など16項目を列挙して、団体交渉を申し入れた。 (8) 5月20日、団体交渉が開催され、組合は、「列車の遅れはないし、実害はないのだから労務の受領拒否はおかしい」、「就労する意思があるのに会社の都合で労務の受領を拒否するのはおかしい し入れた。 (8) 5月20日、団体交渉が開催され、組合は、「列車の遅れはないし、実害はないのだから労務の受領拒否はおかしい」、「就労する意思があるのに会社の都合で労務の受領を拒否するのはおかしい」、「会社の都合で大阪へ出勤するのだから交通費等は会社が負担すべきだ」、「この受領拒否はロックアウトではないか」などと主張した。 これに対し会社は、それぞれ「遅れる可能性があるので債務の不完全履行であり、受領はしない」、「契約の原則から労務の受領を拒否できる」、「欠務の時間に金は支払わない」、「債務の不完全履行なので『のぞみ』の担当部分の受領を拒否する」などと主張し、平行線のまま終わった。 (9) 組合は、5月21日以降、1日数名の運転士に対し、「新富士、三河安城、岐阜羽島の3駅について、時速230キロで通過すること」を指令した。これに対し会社は、前記5月19日に運転士に通告した内容の通告を繰り返して乗務することを拒否し、「のぞみ」乗務分の賃金、手当を支払わなかった。 このように、会社が「のぞみ」への乗務を拒否したため、運転士は、次の乗務地である東京あるいは新大阪駅へ移動しなければならなくなったが、その移動のための費用は、運転士の自己負担となった。 (10) 組合のこの闘争は9月14日24時をもって終結した。 この間、争議に参加した組合員は280名、延べ308名におよんだ。 (11) そして組合は、5年5月24日、当委員会に対して、以下の事項を請求する救済内容とする不当労働行為の救済を申し立てた。 ① 被申立人会社は、申立人組合から「のぞみ」の減速闘争を指名された申立人組合組合員(新幹線運転士)に対し、「のぞみ」乗務の拒否をしてはならない。 ② 被申立人会社は、「のぞみ」減速闘争に指名され、就労を拒否された申立人組合組合員に対し、賃金及び手当等を 指名された申立人組合組合員(新幹線運転士)に対し、「のぞみ」乗務の拒否をしてはならない。 ② 被申立人会社は、「のぞみ」減速闘争に指名され、就労を拒否された申立人組合組合員に対し、賃金及び手当等をカットしてはならない。 ③ 被申立人会社は、「のぞみ」減速闘争に指名され、就労を拒否された申立人組合組合員に対し、被申立人会社が指定した出勤場所までに要した移動費用を支払わなければならない。 ④ 陳謝文の掲示と社内報への掲載第2 判断 1 当事者の主張(1) 組合の主張本件減速闘争によるダイヤへの影響は、余裕時分の活用などにより、殆どないことは明らかである。 ところが会社は、組合が減速闘争を指令した組合員に対し、組合員が就労の意思を明らかにしているにもかかわらず、「のぞみ」についての労務の受領を拒否し、さらには「のぞみ」乗務分の賃金・手当を支払わなかった。 組合員が争議行為に参加しながら、労務を提供する意思を表明した時、会社がこれを拒否し、賃金の支払いを拒否するためには、ロックアウトによらなければならないというべきであるが、会社は、これによらず、組合員に対して労務受領拒否、賃金・手当の支払い拒否を行った。これは組合員に対する不利益取扱いであるとともに、組合の争議行為に対する支配介入である。 また、「のぞみ」に乗務できなかったことにより、東京運転所と大阪運転所の間の移動を余儀なくされたが、会社は、次に乗務する列車を指定して乗務を命じながら、その間の移動について、移動費用の自己負担を強要し、制服での車内への乗り込みを禁じたことは、争議行為参加者に対する報復行為であるばかりでなく、組合の団結の破壊を意図した行為であることは明白である。 (2) 会社の主張会社が、争議行為参加者の「のぞみ」への乗務を拒否し、賃金・手当等を支払わなかったの に対する報復行為であるばかりでなく、組合の団結の破壊を意図した行為であることは明白である。 (2) 会社の主張会社が、争議行為参加者の「のぞみ」への乗務を拒否し、賃金・手当等を支払わなかったのは、個別的労働契約関係において、債務の本旨に従った労務の提供がない労働者についてその就労を拒否するというもので、一般市民法上の債権者たる地位において当然許容されるべき権利の行使である。なお、組合は、争議行為に使用者が対抗して取りうる措置は、ロックアウトに限られると主張するが、これは失当である。 また移動費用の自己負担については、労働者自身に帰すべき事由により、乗務開始場所が変更になったものであり、このような場合まで会社が移動費用を負担する謂われはなく、債務の本旨に従った労務の提供をしなかったことの当然の帰結として、当該労働者は、次に予定された乗務列車の乗務開始場所へ自らの費用をもって赴き、労務の提供をすべき債務を負うことになるのである。 2 当委員会の判断(1) 不利益取扱、支配介入の成否① 第1、2において認定したように、組合・会社間に紛争が相次いでいる伏況にあり、双方の対立は、抜き差しならない状態にあったことが窺える。さらには「スト権確立」を主張したグループが中心となって結成した組合を会社が嫌悪していたこともまた、これら紛争の状況や当時の会社役員の発言などからも明らかである。 このような労使関係のなかで、本件2事故が発生し、組合は最初の事故の翌日である4月5日事故原因の究明と根本的対策の樹立、経営協議会または業務委員会の開催を申入れ、4月22日にも同旨の申入れを行ったところ、第1回の業務委員会が開かれたのは4月28日で、双方の意見対立のまま同月30日2度目の事故が発生したのであって、その間会社は、4月5日、26日に対策実施状況を一般に 日にも同旨の申入れを行ったところ、第1回の業務委員会が開かれたのは4月28日で、双方の意見対立のまま同月30日2度目の事故が発生したのであって、その間会社は、4月5日、26日に対策実施状況を一般に公表するにとどまり、組合に対し、その要求する団体交渉等により協議したとは認められない。 このように組合に対する会社の対応が遅くなった理由についての立証もない。 ② 会社が、5月20日までに通過駅の構内道床に乳剤散布という安全対策を完了した直後に、組合は、その効果を確認することもしないまま、これでは不十分として減速闘争を行ったことは性急の感もある。 ③ そこで減速闘争が労働債務の本旨に反するか否かにつき検討する。 会社が、組合の減速闘争を若干の疑問を残しつつも、争議行為として受け付けている以上、争議行為の範囲内では債務の本旨に適う履行を当然に期待し得るものでないことは明らかであろう。 さらに、第1、4(2)③で認定した8-1仕業によれば、この運転士が運転する区間は、浜松・豊橋から新大阪に至る間であり、東京から浜松・豊橋間は、兼掌業務と呼ばれる車掌の業務に従事するのであって、減速闘争には関与できないことが明らかであり、この間は会社のいうまさに債務の本旨に従った労務の提供を申し出ていることになり、この労務の受領と賃金の支払いを拒否することは許されない。 しかも、減速闘争の対象となる駅は、浜松・豊橋から東京寄りに1駅、新大阪寄りに2駅があり、この3駅について、ATC信号現示の時速270キロに従わず、その前後を含め数キロにわたり最大時速40キロ程度を減速し、その後、正常の速度を回復するまで合計数キロないしは10数キロを要する。従って組合員は、これらの区間を除いては、「債務の本旨に従った労務」の提供を申し出ていたともいえる。 また、減速闘争による遅 その後、正常の速度を回復するまで合計数キロないしは10数キロを要する。従って組合員は、これらの区間を除いては、「債務の本旨に従った労務」の提供を申し出ていたともいえる。 また、減速闘争による遅れが生ずるが、減速闘争に参加する組合員各人が減速する筈であった駅は、浜松付近で運転士が交替するから1駅または2駅であり、遅延の時間は短く、その程度は、1駅あたり会社の指示する通過時刻にくらべて10秒から1分と予想され、この遅れは、つぎの停車駅に到着するまでにはかなり回復されると考えられる。 しかしながら、減速闘争は、会社が労務の受領を拒否したことにより、現実には実行されなかったが、会社の労務の受領拒否がなければ、減速闘争を伴う就労により、会社のいう債務の本旨に従った労務の提供が行われたとまではいいきれず、不完全履行に陥ることも考え得るところである。 ④ ところで、会社の労務受領拒否が正当であるか否かは、会社の使命である安全性、経済性の確保の必要性と減速闘争によって会社が受けるであろう不利益との比較において検討すべきであろうが、本件においては、組合が争議を予告して以降、会社と組合とは、団体交渉、業務委員会を各1回開催するなど、闘争を回避するための話し合いの機会があったにもかかわらず、会社は、減速闘争を回避する方策を講じないまま、労務の受領拒否という対抗手段を取ったのであり、予測される減速闘争の影響を勘案してもなお、性急の感を免れない。 また、減速闘争により、債務の不完全履行という事態に立至ったとしても、その程度は極めて軽微であり、実質的影響は殆どないものと推認されるところであり、また会社としてもこの事態を十分に認識し得たと考えられるから、会社のした本件集団的乗務の受領拒否は、減速闘争に対する過剰な対応というべきであり、正当ということはできない のと推認されるところであり、また会社としてもこの事態を十分に認識し得たと考えられるから、会社のした本件集団的乗務の受領拒否は、減速闘争に対する過剰な対応というべきであり、正当ということはできない。 従って、本件受領拒否は、会社の責めに帰すべき受領拒否であるから、組合員は、会社が支払わなかった賃金、手当の支払いを請求できることは当然というべきである。 ⑤ よって会社が、東京・新大阪間の約半分について車掌業務に従事する「債務の本旨に従った労務の提供」を拒否したことはもちろん、業務のごく一部について組合の指令に従うことをもって、他の大部分の債務の本旨に従った運転業務に従事することまでも拒否して、賃金、乗務に伴う手当を全く支給しなかったことは、受領拒否の要件を欠き、賃金、手当債務の不履行にあたる。 ⑥ 移動費用自己負担については、その前提としていた労働者自身の責めに帰すべき事由によって乗務場所が変更になったものではなく、会社が労務の受領を拒否できる場合でないにもかかわらずこれを拒否したために乗務場所が変更になったものであり、移動自体会社の指示に基づくものであるから、その移動に伴う費用は、会社が負担することは当然というべきであって、会社の主張は採用できない。 ⑦ 以上のとおりであるから、会社は要件を欠く受領拒否を行い、その賃金等の債務の全部または大部分および移動費用の債務を履行しなかったものである。 ⑧ 前記のような労使関係のもとで、会社が組合を嫌悪していたことと、組合の申入れに対し、十分に協議をしなかったこととを併せ考えると、組合の減速闘争が前記のように性急に行われたことを考慮しても、会社の前記借置は過剰な対応であり、労務の不適法な受領拒否であり、かつこれに伴う賃金等の債務不履行であるにとどまらず、本件減速闘争という争議行為を実行しようとした うに性急に行われたことを考慮しても、会社の前記借置は過剰な対応であり、労務の不適法な受領拒否であり、かつこれに伴う賃金等の債務不履行であるにとどまらず、本件減速闘争という争議行為を実行しようとしたが故の組合員に対する不利益取扱いに該るとともに、組合員に負担を強いることによって組合の方針に影響を与えようとしたものと判断せざるをえない。 (2) 救済の方法について申立人は、本件手続きでは第1、5(11)のような命令を求めるが、その①,②はすでに行われてしまったことは前記のとおりである。従ってそのような命令を発しても遅きに失するから、将来に向かっての労使関係の形成という趣旨で、支払われなかった賃金、手当の支払いを命ずるのが相当である。 また、移動費用についても同様の理由で会社にその支払いを命ずるのが相当である。 組合は、ポストノーティスをも求めているが、本件以降、同種の紛争が生じたことは認められないので、その必要はないと判断する。 第3 法律上の根拠以上の次第であるから、会社が減速闘争を指令された組合員の「のぞみ」への乗務を拒否し、その間の賃金・乗務に伴う手当を支払わなかったこと、東京・新大阪間の移動に伴う費用を自己負担させたことは、労働組合法第7条第1号および第3号に該当する。 よって、労働組合法第27条並びに労働委員会規則第43条を適用して主文のとおり命令する。 平成9年4月15日東京都地方労働委員会会長 D
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