平成24年7月19日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成22年(ワ)第2497号解約違約金条項使用差止請求事件(第1事件)平成23年(ワ)第917号不当利得返還請求事件(第2事件)平成24年(ワ)第555号不当利得返還請求事件(第3事件)(口頭弁論終結の日平成24年4月26日)判決 主文 1 被告は,消費者との間で,au通信サービス契約を締結するに際し,別紙1記載の解約金条項を内容とする意思表示を行ってはならない。 2 被告は,原告Aに対し,1975円及びこれに対する平成23年3月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告Eに対し,5975円及びこれに対する平成23年3月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,第1・第2・第3の各事件を通じ,下記のとおりとする。 原告ら及び被告に生じた費用のうち,(1) 原告法人に生じた費用の2分の1と被告に生じた費用の6分の1を同原告の負担とし,(2) 原告Aに生じた費用の4分の3と被告に生じた費用の14分の1を同原告の負担とし,(3) 原告Eに生じた費用の3分の1と被告に生じた費用の63分の2を同原告の負担とし,(4) 原告C,同B,同D,同F及び同Gに生じた費用と被告に生じた費用の21分の2を同原告らの各負担とし,(5) その余を被告の負担とする。 6 この判決は,第2項及び第3項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求の趣旨(第1事件) 1 被告は,消費者との間で,au通信サービス契約を締結するに際し,別紙1記載の解約金 項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求の趣旨(第1事件) 1 被告は,消費者との間で,au通信サービス契約を締結するに際し,別紙1記載の解約金条項など,下記の事項を内容とする意思表示を行ってはならない。 記au通信サービス契約における2年の定期契約を締結した消費者は,同契約が自動更新される前に,被告又は消費者が同定期契約を解除したときは,被告に対し,9975円(消費税転稼分を含む。)以上の解約金を支払う。 2 被告は,消費者との間で,au通信サービス契約を締結するに際し,別紙1記載の解約金条項など,下記の事項を内容とする意思表示を行ってはならない。 記au通信サービス契約における2年の定期契約を締結した消費者は,au通信サービス契約が2年経過して自動更新された後,被告又は消費者が同定期契約を解除したときは,被告に対し,解約金を支払う。 3 仮執行宣言(第2事件) 1 被告は,原告A,同B,同C,同D,同Eに対し,それぞれ9975円及びこれに対する平成23年3月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Fに対し,1万9950円及びこれに対する平成23年3月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 仮執行宣言(第3事件) 1 被告は,原告Gに対し,9975円及びこれに対する平成24年2月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 仮執行宣言第2 事案の概要本件は,① 消費者契約法(以下「法」という。)13条に基づき内閣総理大臣の認定を受けた適格消費者団体である原告法人が,電気通信事業等を目的とする株式会社である被告に対し,被告が消費者との間で携帯電話を利用 消費者契約法(以下「法」という。)13条に基づき内閣総理大臣の認定を受けた適格消費者団体である原告法人が,電気通信事業等を目的とする株式会社である被告に対し,被告が消費者との間で携帯電話を利用する通信サービス契約を締結する際に現に使用し又は今後使用するおそれのある,消費者が2年間の定期契約を契約期間の途中に解約する際に解約金を支払うことを定める契約条項が,法9条1号及び10条により無効であると主張して,法12条3項に基づき,被告が消費者との間で上記定期契約を締結する際,上記解約金条項を内容とする意思表示をすることの差止めを請求する事案(第1事件),及び② 被告との間で約2年間の定期契約である上記通信サービス契約を締結し,契約期間途中の解約の際に9975円(消費税転嫁分を含む。以下,同様とする。)の解約金の支払義務があることを定める契約条項に基づき,被告に対し解約金を支払った第2事件原告ら及び第3事件原告(以下,併せて「個人原告ら」という。)が,上記解約金条項は,法9条1号及び10条により無効であると主張して,被告に対して,不当利得返還請求権に基づき,上記解約金相当額及びこれに対する訴状送達日の翌日を起算日とする民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案(第2事件,第3事件)である。 1 前提事実(証拠等の掲記のない事実は争いがない。)(1) 当事者ア原告法人は,法13条の規定に基づき,内閣総理大臣の認定を受けた適格消費者団体である。 イ被告は,電気通信事業等を目的とする株式会社であり,不特定かつ多数の消費者との間で,携帯電話端末を利用する通信サービス契約(au通信サービス契約。以下「本件通信契約」という。)を締結している。 (2) 本件通信契約に とする株式会社であり,不特定かつ多数の消費者との間で,携帯電話端末を利用する通信サービス契約(au通信サービス契約。以下「本件通信契約」という。)を締結している。 (2) 本件通信契約における定期契約の内容等本件通信契約に適用される約款(以下「本件約款」という。)には,次の内容の定めがある(甲3)。 ア契約期間消費者は,被告との間で本件通信契約を締結する際,契約期間の定めのない一般au契約(以下「通常契約」という。)のほか,契約期間の定めのあるau定期契約を選択することができる(本件約款6条)。このうち,第4種定期au契約(以下「本件定期契約」という。)は,契約締結日の属する月から数えて24か月目の月の末日をもって期間満了となる約2年間の定期契約である(同23条)。 イ定期契約の更新本件定期契約は,契約期間の満了日の翌日(以下「更新日」という。)に自動的に更新される(本件約款24条1項)。ただし,更新日の属する月に解約をした場合は,更新日に通常契約を締結したものとみなされ,更新の効果は生じない(同2項)。 ウ本件定期契約と通常契約の契約内容の差異(ア) 本件定期契約の月々の基本使用料金の額は通常契約の月々の基本使用料金の額の半額に設定されている(本件約款78条,料金表第1表第1,1の(4)の4,2-1-1の(1)及び(5))。 (イ) 本件定期契約の契約者は,本件定期契約を解約する際には,更新日の属する月に解約する場合や,解約に伴い契約種別を変更して本件通信契約を継続する場合等,本件約款別記20に定める場合を除き,被告に対し,契約解除料(以下「解約金」という。)として9975円を支払わなければならない(本件約款80条,料金表第1表第4,2,別記20。以下「本件解約 件約款別記20に定める場合を除き,被告に対し,契約解除料(以下「解約金」という。)として9975円を支払わなければならない(本件約款80条,料金表第1表第4,2,別記20。以下「本件解約金条項」という。)。 (3) 個人原告らの解約金の支払等(弁論の全趣旨)ア原告A(ア) 原告Aは,平成18年2月20日,被告との間で,本件定期契約を締結した。 (イ) 上記契約は,平成20年2月1日に,更新された。 (ウ) 同原告は,平成21年12月8日,本件定期契約を解約し,平成22年1月9日,本件解約金条項に基づき,被告に対し,9975円を支払った。 イ原告B(ア) 原告Bは,平成19年3月15日,被告との間で,本件定期契約を締結した。 (イ) 上記契約は,平成21年3月1日に,更新された。 (ウ) 同原告は,平成22年3月23日,本件定期契約を解約し,平成22年5月10日,本件解約金条項に基づき,被告に対し,9975円を支払った。 ウ原告C(ア) 原告Cは,平成19年10月3日,被告との間で,本件定期契約を締結した。 (イ) 上記契約は,平成21年10月1日に,更新された。 (ウ) 同原告は,平成22年4月1日,本件定期契約を解約し,平成22年6月17日,本件解約金条項に基づき,被告に対し,9975円を支払った。 エ原告D(ア) 原告Dは,平成22年1月18日,被告との間で,本件定期契約を締結した。 (イ) 同原告は,平成22年5月20日,本件定期契約を解約し,平成22年7月26日,本件解約金条項に基づき,被告に対し,9975円を支払った。 オ原告E(ア) 原告Eは,平成20年8月13日,被告との間で,本件定期契約を締結した。 (イ) 同原 2年7月26日,本件解約金条項に基づき,被告に対し,9975円を支払った。 オ原告E(ア) 原告Eは,平成20年8月13日,被告との間で,本件定期契約を締結した。 (イ) 同原告は,平成22年7月7日,本件定期契約を解約し,同月31日,本件解約金条項に基づき,被告に対し,9975円を支払った。 カ原告F(ア) 原告Fは,平成19年3月20日及び同年9月6日,被告との間で,それぞれ本件定期契約を締結した。 (イ) 同原告は,平成20年12月22日,上記各契約を解約し,平成21年2月2日,本件解約金条項に基づき,被告に対し,1万9950円を支払った。 キ原告G(ア) 原告Gは,平成23年3月18日,被告との間で,本件定期契約を締結した。 (イ) 同原告は,平成23年6月7日,本件定期契約を解約し,同日,本件解約金条項に基づき,被告に対し,9975円を支払った。 (4) 書面による事前の請求原告法人は,平成22年3月1日,被告に対し,法41条所定の書面により,消費者との間で本件通信契約を締結するに際し,本件解約金条項を内容とする意思表示を行わないことを請求した。 2 争点及びこれに関する当事者の主張(1) 本件解約金条項が法9条1号により無効であるか(原告らの主張)ア本件解約金条項の性質本件解約金条項は,本件定期契約を解約する際には,理由の如何を問わず,解約金として9975円を支払うことを定めており,解約に伴う違約金としての性質を有する。 イ本件解約金条項に係る解約金の額が,解約に伴い被告に生じる「平均的な損害」(法9条1号。以下「平均的損害」ということがある。)の額を超過すること(ア) 基本使用料金の累積割引額について被告は,本件定期 係る解約金の額が,解約に伴い被告に生じる「平均的な損害」(法9条1号。以下「平均的損害」ということがある。)の額を超過すること(ア) 基本使用料金の累積割引額について被告は,本件定期契約が期間満了前に解約されると,2年間の定期契約であることを前提に割引をした基本使用料金の累積割引額が,平均的損害として生じると主張する。 しかし,被告は,本件定期契約に加入した場合の基本使用料金の額を50%割引であるとして,あたかも割引サービスを提供しているかのように見せているが,実際には,同業他社との関係で,基本使用料金を競争可能な価格である従前の半額程度に設定せざるを得なくなったにすぎない。新規契約者のほとんど,又は,全ての者が本件定期契約に加入しているのが実態であり,本件定期契約の本質・実態は,競争可能な基本使用料金の価格に不当な2年間拘束を付加しただけのものである。このような本件定期契約の本質・実態に照らせば,本件定期契約は,基本使用料金の割引という利益を消費者に付与するものではなく,基本使用料金の累積割引額を本件定期契約の中途解約に伴う損害とみることはできない。 (イ) 得べかりし通信料収入等について被告は,本件定期契約が解約された場合,契約が継続していれば契約期間満了までに得られたであろう通信料収入等が損害として生じると主張する。 しかし,解約により,被告は,将来にわたって通信サービスの提供を免れるのであるから,被告には損害が生じない。また,被告は,解約後の得べかりし通信料等の収入の内訳は,①代理店へのコミッション等,②設備投資・運用費用等,③逸失利益であると主張するが,次のとおり,これらが平均的損害になるとはいえない。 ① 代理店へのコミッション等 りし通信料等の収入の内訳は,①代理店へのコミッション等,②設備投資・運用費用等,③逸失利益であると主張するが,次のとおり,これらが平均的損害になるとはいえない。 ① 代理店へのコミッション等具体的な内容が明らかではない。また,消費者が全く関与しない被告と代理店との間での取り決めに基づく支払いは,消費者の中途解約との関係で相当因果関係のある損害ということができない。 ② 設備投資・運用費用等具体的な内容が全く不明である。また,個別の契約毎に発生する費用ではないから,個別の契約の解約による損害とはならない。 ③ 逸失利益準委任契約はいつでも自由に解約することができるから(民法656条,651条1項),得べかりし通信料収入は損害とはならない。 また,平均的損害に逸失利益が含まれるのは,当該消費者契約の目的が他の契約において代替ないし転用される可能性のない場合に限られるというべきである。携帯電話事業は,大量の新規契約,解約が予定されていることから,解約に伴う逸失利益は平均的損害には含まれないというべきである。 ウ更新後について本件定期契約においては,契約後2年を経過すると,自動的に契約が更新される。仮に,契約から2年以内に解約をする際に解約金を徴収することが,被告に生じる平均的損害を塡補するものとして許容されるとしても,更新がされた後には,契約者は既に2年間の契約期間に拘束された以上,解約金を徴収されることに合理性はない。少なくとも,本件解約金条項のうち,更新後の本件定期契約に適用される部分は,法9条1号に反し,無効である。 (被告の主張)ア本件解約金条項の性質本件定期契約においては,契約者が死亡した場合等,一定の場合には,解約金の支払いを要しないのであるから,理由 分は,法9条1号に反し,無効である。 (被告の主張)ア本件解約金条項の性質本件定期契約においては,契約者が死亡した場合等,一定の場合には,解約金の支払いを要しないのであるから,理由の如何を問わず解約金を支払わなければならないことを理由として本件解約金条項が違約金に当たるとする原告らの主張は誤りである。 イ解約に伴い被告に生じる平均的損害の額本件定期契約が解約された場合,被告には,(ア)月々の基本使用料金の累積割引額と(イ)通信料収入等の減少額が平均的損害として生じ,下記のとおり,その額は9975円を優に超える。 (ア) 基本使用料金の累積割引額についてa 本件定期契約は,契約者が中途解約をしないことを前提として,通常契約の基本使用料金の割引をする制度であるが,有期契約たる本件定期契約を中途解約するということは,当初から期間の定めのない契約を締結したのと同じことであると評価し得るものである。 そうすると,契約者が本件定期契約を中途解約した場合は,中途解約しないことを前提に割引をした基本使用料金の累積額に相当する損害が被告に生じる。 b 平成21年度における,本件定期契約の加重平均値(本件定期契約において,契約者が選択し得る料金プランのうち代表的なものに関し,各料金プランの割引額に,その料金プランを選択している契約者数の比を乗じて得た額を合算した,1か月あたりの平均的な割引額)は1748円である。本件定期契約を中途解約した者の契約時から解約時までの平均月数は11.59か月であることから,被告は,基本使用料金の累積割引額に係る損害として,1748円×11.59=2万0259円の平均的損害を被っているといえる。 (イ) 通信料収入等の減少についてa 平成21年度における,本 被告は,基本使用料金の累積割引額に係る損害として,1748円×11.59=2万0259円の平均的損害を被っているといえる。 (イ) 通信料収入等の減少についてa 平成21年度における,本件定期契約におけるARPU(通信事業者の1契約あたりの1か月の売上を表す数値。)は,5624円である。また,本件定期契約を契約しながら中途解約した者の契約時から解約時までの平均月数は11.59か月であり,予定された契約期間である2年間と比較すると,12.41か月間,契約期間が短くなっている。したがって,被告には,5624円×12.41=6万9793円の通信料収入等の減少が生じている。 b 被告のARPUに占める各種コストの内訳としては,①料金を回収するためのコスト(請求コスト)及び通話等の際に他の電気通信事業者に支払う接続料金(アクセスチャージ)等,契約者の解約により被告が以後の支払いを免れるもの,②代理店において契約者が契約を締結した際に被告から販売代理店に支払われる手数料や,設備投資・運用費用等,解約以降も支出を止められないもの又は既に支出済みのものがあり,その余が③逸失利益となる。上記①ないし③の割合は,概ね,①が15~20%,②が55~65%,③が20~25%である。 上記によれば,解約に伴い被告に生じる損害額は,通信料収入等の平均的な減収額である6万9793円(前記a)から,解約に伴い被告が支出を免れる上記①を控除した額であるから,通信料収入等の減収額に係る損害は,5万5834円ないし5万9324円となる。 ウ更新後について被告は,契約者に対し,更新するか否かの判断を2年毎に求めており,更新後についても,更新とはいいながらも,本件定期契約を2年毎に新たに締結するのと同じことであ なる。 ウ更新後について被告は,契約者に対し,更新するか否かの判断を2年毎に求めており,更新後についても,更新とはいいながらも,本件定期契約を2年毎に新たに締結するのと同じことであるから,中途解約により被告に生じる損害は,更新前と同様である。 エ(原告らの主張)イ,(イ),③に対する反論電気通信サービスの提供契約は,不特定多数の消費者との間で可能な限り多数の契約を締結することにより,契約の一つ一つから得られる利益の集積によって事業を成り立たせることを前提する契約であり,ある一人が解約し,次いで,他の一人が契約したとしても,それは解約された契約が次の契約によって代替されたとはいえない。したがって,本件通信契約において,逸失利益を平均的損害の中に含めるべきではないという原告らの主張は誤りである。 (2) 本件解約金条項が,法10条により無効であるか(原告らの主張)ア法10条前段の意義について(ア) 任意規定の有無によって不当条項の有効・無効が左右されることは極めて不合理であることから,「民法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害する」という法10条後段の要件を満たす契約条項は,任意規定の有無にかかわらず,無効である。 (イ) 仮に,同条前段に一定の意義があるとしても,「民法,商法,その他の法律の公の秩序に関しない規定」とは,講学上の任意規定に限定されず,判例や条理に基づく法準則,契約に関する一般法理も含まれると解すべきである。 イ法10条前段該当性について(ア) 本件通信契約は,消費者の需要に応じた各種の通信サービスを提供する行為であり,法律行為以外の事務の委託と解されるので,準委任又はこれに類似する非典型契約にあたる。準委任契約においては,民法656 通信契約は,消費者の需要に応じた各種の通信サービスを提供する行為であり,法律行為以外の事務の委託と解されるので,準委任又はこれに類似する非典型契約にあたる。準委任契約においては,民法656条,651条1項により,有期契約においても解約の自由が原則であり,解約者は,相手方にとって不利な時期に解約した場合にのみ,同条2項に基づき,損害賠償義務を負うにすぎない。 本件解約金条項により,契約者は,民法651条2項によっては損害賠償債務が発生しない場合において,解約に伴い被告に生じる損害をはるかに超える額の解約金の支払いを余儀なくされるから,本件解約金条項は,民法656条,651条に比して,消費者に不利益を与える契約条項であるといえ,法10条前段の要件を満たす。 (イ) 仮に,本件通信契約が準委任ないし準委任に類似する性質を有しないとしても,ナンバーポータビリティー制度(以下「MNP制度」という。)の趣旨や,継続的契約関係においては長期間の拘束が許されず,一定の場合には解約が認められるべきであるという契約の基本原理に照らせば,本件解約金条項は法10条前段の要件を満たす。 ウ法10条後段該当性について(ア) 被告は,同業他社との関係で,基本使用料金を競争可能な価格である従前の半額程度に設定せざるを得なくなっただけであるにもかかわらず,本件定期契約を締結した場合の月額基本使用料金の額を50%割引であるとして,あたかも割引サービスを提供しているかのように見せている。実際には,新規契約者のほとんど,又は,全ての者が,本件定期契約を締結しているのが実態であり,本件定期契約の本質・実態は,競争可能な基本使用料金の価格に不当な2年間拘束を付加しただけのものであって,契約者に基本使用料金の割引というメリット 本件定期契約を締結しているのが実態であり,本件定期契約の本質・実態は,競争可能な基本使用料金の価格に不当な2年間拘束を付加しただけのものであって,契約者に基本使用料金の割引というメリットを付与するものではない。したがって,本件解約金条項は,消費者にとって利益がなく,義務だけを課す規定であるから,消費者に一方的に不利益な条項に該当する。 (イ) MNP制度は,電話番号を維持しつつ契約先を他の電気通信事業者に変更できる制度であり,その制度趣旨は,利用者の利便性の向上,携帯電話事業者間の競争の促進等にある。同制度により,消費者は,自由に携帯電話会社を選択する権利・利益が保障されている。本件解約金条項は,定期契約期間中の解約を不当に制限し,MNP制度により保障された消費者の自由に携帯電話会社を選択できる権利・利益を阻害するといえるから,消費者に一方的に不利益な条項に該当する。 (ウ) 本件約款において,本件定期契約の基本使用料金は,通常契約の基本使用料金の半額に設定されており,しかも,被告は,本件定期契約の契約者に限り,携帯電話端末の割引等の特典を付与し,本件定期契約のメリットを強調している。また,本件通信契約には多くの料金体系や割引プランがあり,どれが消費者にとって有利であるかは分かりにくいのが現状である。結果として,消費者は,代理店等で勧められる本件定期契約に加入することがほとんどであり,その契約が自分にとって最も相応しいものかどうかは十分に理解できていない。本件定期契約を選択する消費者が多いことは,同契約が客観的にみて消費者にとって魅力的なプランであることを意味しない。 エ更新後について本件定期契約においては,契約後2年を経過すると,自動的に契約が更新されることとなっている。仮 同契約が客観的にみて消費者にとって魅力的なプランであることを意味しない。 エ更新後について本件定期契約においては,契約後2年を経過すると,自動的に契約が更新されることとなっている。仮に,契約から2年以内に解約する際に解約金を徴収することが許容されるとしても,更新がされた後は,契約者は既に2年間の契約期間に拘束された以上,解約金を徴収されることに合理性はない。少なくとも,本件解約金条項のうち,更新後の本件定期契約に適用される部分は,法10条後段に反し,無効である。 (被告の主張)ア法10条前段の意義について法10条前段にいう「民法,商法,その他の法律の公の秩序に関しない規定」は,明文のある任意規定に限られる。 イ法10条前段該当性について本件定期契約は,次の理由等から,準委任契約とはその本質を全く異にする契約であり,民法651条の規律は及ばない。 (ア) 本件通信契約は,被告が顧客に対し電気通信サービスを提供し,顧客がこれに対する対価を支払うことを中核的な要素とする有償双務契約である。 (イ) 電気通信サービスには,電話サービス,インターネットサービスその他の多様なサービスが含まれ,被告と顧客の間には複合的な契約関係が成立することから,本件通信契約は単に事務の委託を目的とする契約ではない。 (ウ) 本件通信契約には準委任契約の本質である当事者間の特別な信任関係がない。 (エ) 本件通信契約は有期契約であり,解約自由が原則とはなっていない。 (オ) 本件通信契約は,準委任契約と異なり,受任者の裁量の余地が少なく,むしろメールや電話等,契約者の主体的な利用行為が前提となっている。 ウ法10条後段該当性について(ア) MNP制度は,他の電気通信事業者へ契約先を変更しても,現 任者の裁量の余地が少なく,むしろメールや電話等,契約者の主体的な利用行為が前提となっている。 ウ法10条後段該当性について(ア) MNP制度は,他の電気通信事業者へ契約先を変更しても,現在の電話番号を維持できるという制度にすぎず,電気通信サービスの利用契約は何時でも自由に終了させる契約でなければならないことを定める制度ではない。有期契約である本件定期契約について,中途解約権を認めるか否かは,MNP制度とは無関係であり,被告の営業判断に委ねられるべき事柄である。 (イ) 本件定期契約は,2年間の有期契約であるから,契約者は,本来,契約期間中は契約関係を維持すべき義務を負うのであって,解約金の支払いを要するとはいえ,契約者に解約権を認めていることは,契約者の利益を図る意図に基づく。 (ウ) 契約者は,2年間の契約継続と引き換えに,基本使用料金の50%割引という料金メリット等を享受している。このように,多種多様な料金プランを提供することは,消費者の選択肢を広げ,消費者の利益に合致することとなるのであり,本件解約金条項により,消費者の利益が信義誠実の原則に反して一方的に害されているとはいえない。 (エ) 本件定期契約は,2年間の有期契約であれば期間の定めのない契約に比してより長期の利用が見込まれること等を勘案して,基本使用料金を50%割り引くということにしたのであって,名ばかりの高額な基本使用料金を設定し,これを外見上割り引くことにしたというようなことは全くない。原告らは,割引後の基本使用料金の価格が,競争可能な価格であると主張するが,電気通信サービスの提供契約においては,基本使用料金のみならず,通信料金,通信品質,速度等のサービス内容及び携帯電話端末の魅力等の様々な条件が重要な要素とな 競争可能な価格であると主張するが,電気通信サービスの提供契約においては,基本使用料金のみならず,通信料金,通信品質,速度等のサービス内容及び携帯電話端末の魅力等の様々な条件が重要な要素となっており,基本使用料金を安くしただけで同業他社との競争に勝つことはできないのであるから,基本使用料金の額だけを取り上げて競争可能か否かを問題にすべきではない。他社との競争の関係で,基本使用料金を半額に設定せざるを得なかったという原告らの主張は,失当である。 (オ) 原告らは,被告の契約者のほとんどが本件定期契約に加入していることから,基本使用料金の割引は消費者にとって利益となっていない旨主張するが,通常契約を締結している契約者も数百万人という規模で存在しているから,その主張の前提が誤っている。また,契約者は,多様な料金プラン,割引サービスの中から,利得損失を考慮し,自らにとってもっとも相応しい契約プランを自由な判断で選択しているのであり,本件定期契約は契約者にとって相応の利益があるからこそ,多くの契約者から支持されているのである。加えて,選択する者は少なくても,通常の契約プランも,それを選択した者にとっては,魅力的なプランである。本件定期契約が消費者にとって一方的に不利益であるとの原告らの主張は当たらない。 エ更新後について被告は,契約者に対し,更新するか否かの判断を2年毎に求めており,更新とはいいながらも,本件定期契約を2年毎に新たに締結するのと同じことであるから,本件解約金条項が消費者にとって一方的に不利益であるとはいえないことは更新前の契約と同様である。 第3 当裁判所の判断 1 本件解約金条項が法9条1号により無効であるか否か(争点(1))(1) 本件解約金条項が「解除に伴う損害賠償 利益であるとはいえないことは更新前の契約と同様である。 第3 当裁判所の判断 1 本件解約金条項が法9条1号により無効であるか否か(争点(1))(1) 本件解約金条項が「解除に伴う損害賠償の額の予定」又は「違約金」に該当するか前記前提事実のとおり,本件解約金条項は,更新日の属する月に解約をする場合や,解約に伴い契約種別を変更して本件通信契約を継続する場合等を除き,本件定期契約の解約に伴い解約金として9975円を支払う義務があることを定める契約条項であり,契約者は,本件定期契約を契約期間の途中で解約し,被告との間の契約関係の解消を望む場合には,解約事由の如何を問わず,上記解約金の支払いを余儀なくされる。したがって,本件解約金条項は,本件定期契約の「解除に伴う損害賠償の額の予定」又は「違約金」にあたる。 (2) 法9条1号にいう「平均的な損害」の意義についてア法9条1号が,解除に伴う損害賠償の予定等を定める条項につき,解除に伴い事業者に生じる平均的損害の額を超過する損害賠償の約定を無効とした趣旨は,事業者が,消費者に対し,消費者契約の解除に伴い事業者に「通常生ずべき損害」(民法416条1項)を超過する過大な解約金等の請求をすることを防止するという点にある。したがって,法9条1号は,債務不履行の際の損害賠償請求権の範囲を定める民法416条を前提とし,その内容を定型化するという意義を有し,同号にいう損害とは,民法416条にいう「通常生ずべき損害」に対応するものである。なお,本件解約金条項が定めるのは,消費者に留保された解約権の行使に伴う損害賠償の予定であり,債務不履行による損害賠償の予定ではない。しかし,このような消費者の約定解除(解約)権行使に伴う損害賠償の範囲は,原則として,契約 ,消費者に留保された解約権の行使に伴う損害賠償の予定であり,債務不履行による損害賠償の予定ではない。しかし,このような消費者の約定解除(解約)権行使に伴う損害賠償の範囲は,原則として,契約が履行された場合に事業者が得られる利益の賠償と解され,それは結局民法416条が規定する相当因果関係の範囲内の損害と等しくなる。したがって,本件解約金条項について法9条1号該当性を検討するときも,同号にいう「損害」は上記のとおり解すべきこととなる。 イまた,同号が,「平均的」という文言を用いたのは,消費者契約は不特定かつ多数の消費者との間で締結されるという特徴を有し,個別の契約の解除に伴い事業者に生じる損害を算定・予測することは困難であること等から,解除の事由,時期等により同一の区分に分類される複数の契約における平均値を用いて,解除に伴い事業者に生じる損害を算定することを許容する趣旨に基づくものと解される。 そして,法9条1号は,「当該条項において設定された解除の事由,時期等の区分に応じ」て事業者に生ずべき平均的損害を算定することを定めるが,上記アの同号の趣旨にかんがみると,事業者が解除の事由,時期等による区分をせずに,一律に一定の解約金の支払義務があることを定める契約条項を使用している場合であっても,解除の事由,時期等により事業者に生ずべき損害に著しい差異がある契約類型においては,解除の事由,時期等により同一の区分に分類される複数の同種の契約における平均値を用いて,各区分毎に,解除に伴い事業者に生じる損害を算定すべきである(ただし,「解除の事由」により事業者の損害に著しい差異が生ずることは,通常,考えにくい。)。 ウ以上によれば,法9条1号の平均的損害の算定は,民法416条に基づく損害の算 算定すべきである(ただし,「解除の事由」により事業者の損害に著しい差異が生ずることは,通常,考えにくい。)。 ウ以上によれば,法9条1号の平均的損害の算定は,民法416条に基づく損害の算定方法を前提とし,解除事由,時期等により同一の区分に分類される同種の契約における平均値を求める方法により行うべきである。 (3) 本件定期契約の解約に伴う平均的損害の算定方法について上記のような考えに基づくと,本件定期契約の解約に伴い被告に生じる平均的損害の算定方法は次のとおりである。 ア平均的損害の算定の基礎となる損害額について契約締結後に一方当事者の債務不履行があった場合に,他方当事者が民法415条,416条により請求のできる損害賠償の範囲は,契約が約定どおり履行されたであれば得られたであろう利益(逸失利益)に相当する額である。したがって,本件定期契約の中途解約に伴い被告に生じる平均的損害を算定する際にも,上記民法の規律を参照し,中途解約されることなく契約が期間満了時まで継続していれば被告が得られたであろう通信料収入等(解約に伴う逸失利益)を基礎とすべきである。 イ解約に伴う逸失利益の算定方法証拠(甲3)によれば,本件通信契約の料金体系は,定額制である基本使用料金と従量制の通信料金を組み合わせたものであり,契約プランの種別によって基本使用料金の額や通信料金の単価等が異なることが認められる。また,契約者は,本件定期契約の契約期間中,自由に契約プランを変更し,月々に支払う基本使用料金の額及び通信料金の単価等を増減させることができる。したがって,個々の契約者の月々の通信料金等は,加入している契約プランの種別及び通信量等に応じてばらつきがあり,同じ契約者であっても,契約期間中に一定の変動がある 等を増減させることができる。したがって,個々の契約者の月々の通信料金等は,加入している契約プランの種別及び通信量等に応じてばらつきがあり,同じ契約者であっても,契約期間中に一定の変動があることが想定される。このような本件通信契約における料金体系等を考慮すると,本件定期契約の解約に伴う逸失利益の算定は,本件定期契約のARPUを基礎として,これに解約時から契約期間満了時までの期間を乗ずる方法により行うのが相当である。 また,民法の規定により債務不履行に基づく損害賠償請求をする際,当該債務不履行に起因して債権者が支出を免れた費用等がある場合には,その額を控除して賠償額を算定することとされている。したがって,法9条1号における平均的損害の算定にあたっても,解約に伴い事業者が支出を免れた費用を解約に伴う逸失利益から控除すべきである。 ウ本件定期契約における解約に伴う逸失利益の額(ア) 証拠(甲37,乙7,乙10)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 a 本件定期契約の契約者のARPUの推移は,次のとおりである。 ① 平成21年度 5624円② 平成22年4月ないし12月の間 4940円③ 平成23年4月ないし12月の間 4480円b 被告が本件通信契約の締結に伴い支出する経費の種別及び内訳は,次のとおりである。このうち,月々の下記②の経費の額は,ARPUの15%ないし20%の額に相当する。 ① 中途解約により支出を免れない費用代理店において契約者が契約を締結した際に被告から販売代理店に支払われる手数料や,設備投資・運用費用等② 中途解約に伴い支出を免れる費用料金を回収するためのコスト(請求コスト)及び通話等の際に他の電気通信事業 を締結した際に被告から販売代理店に支払われる手数料や,設備投資・運用費用等② 中途解約に伴い支出を免れる費用料金を回収するためのコスト(請求コスト)及び通話等の際に他の電気通信事業者に支払う接続料金(アクセスチャージ)等,契約継続に伴い発生する費用(イ) 上記(ア)の認定によれば,本件定期契約の契約者のARPUは一定の変動があることに加え,平成21年度以降,徐々にその額が下落していることが認められる。また,個別原告らが本件定期契約を締結した各時点及び本件口頭弁論終結時である平成24年4月26日の時点における本件通信契約のARPUの値を示す的確な証拠はなく,上記認定のARPUの推移によれば,上記各時点のARPUには一定の変動があることも想定される。そして,上記認定のとおり,平成21年度以降,各年度におけるARPUはいずれも4000円を上回り,このことは,個別原告らが本件定期契約を締結した各時点及び本件口頭弁論終結時においても同様であったと推測されること,上記(ア)a①ないし③のARPUの平均値は5014円(1円未満切捨て)であること等に照らすと,上記各時点におけるARPUを5000円として,本件定期解約の解約に伴う逸失利益を算定するのが相当である。 (ウ) また,上記認定によれば,本件定期契約が1か月間継続するのに伴い被告に追加的に発生する経費は,多くてもARPUの20%に相当する額であることが認められるから,同金額を,上記ARPUから控除して,1か月あたりの被告の解約に伴う逸失利益を算定すべきである。したがって,上記逸失利益は,5000円から20%を控除した額である4000円であり,これを解約時から契約期間満了時までの期間を乗じた額が,解約に伴い被告に生じる平均的損害とな べきである。したがって,上記逸失利益は,5000円から20%を控除した額である4000円であり,これを解約時から契約期間満了時までの期間を乗じた額が,解約に伴い被告に生じる平均的損害となる。 エ解約時期による区分について前記イのとおり,1か月あたりの解約に伴う逸失利益に,解約時から契約期間満了時までの期間を乗じる方法により被告に生じる平均的損害を算定すると,解約時期の違いによって,平均的損害の額には著しい差異が生ずる。したがって,前記第3,1,(2),イのとおり,このような契約類型においては,解約時期により同一に区分される複数の契約における平均値を求めることにより,各区分毎に,被告に生ずる平均的損害を算定すべきと解する。そして,①上記のとおり,本件定期契約の一契約者あたりの1か月の売上高であるARPU等を基礎に平均的損害を算定すること,②証拠(甲3,36,乙1,2の1・2,3)によれば,被告は基本使用料金を月額で設定・表示しており,通信料金等の請求も月毎に行っていることが認められること,③被告の1か月あたりの解約に伴う逸失利益は4000円であり,解約時期の違いが1か月の範囲内であれば,被告に生じる平均的損害の額に著しい差異が生ずるとまでは評価できないこと等を考慮すると,本件定期契約においては,解約時期を1か月毎に区分して,各区分毎に,被告に生じる平均的損害を算定すべきである。 オ更新後について前記前提事実及び証拠(甲3)によれば,本件定期契約においては,更新日の属する月に解約の意思表示をしない限り,期間満了日の翌日である更新日に本件定期契約が更新され,新規に本件定期契約を締結したのと同様の効果が生じることとなる。したがって,更新後の解約においても,更新前と同様,被告 表示をしない限り,期間満了日の翌日である更新日に本件定期契約が更新され,新規に本件定期契約を締結したのと同様の効果が生じることとなる。したがって,更新後の解約においても,更新前と同様,被告には契約期間満了時まで契約が継続していれば得られたであろう通信料収入等を基礎とする逸失利益が認められるから,解約に伴い被告に生じる平均的損害の算定方法も,更新前後で同様であると解する。 カ小括以上によれば,中途解約により被告に生じる平均的損害は別紙2のとおりであり,本件解約金条項中,①本件定期契約が締結又は更新された日の属する月から数えて22か月目の月の末日までに解約がされた場合に解約金の支払義務があることを定める部分は有効であるが,②本件定期契約が締結又は更新された日の属する月から数えて23か月目以降に解約した場合に別紙2の「平均的損害の額」欄記載の各金額を超過する解約金の支払義務があることを定める部分は,上記超過額の限度で,法9条1号により,無効である。 (4) 原告らの主張について原告らは,本件通信契約は,大量の新規契約等が予定されており,ある契約の解約に伴い生じる損害は,別の契約により塡補されることから,逸失利益を基礎に平均的損害を算定することはできない旨主張する。 しかし,一般に,民法の規定に基づき損害賠償請求をする場合において,債務不履行に起因して他の契約を締結する機会が新たに生じたことにより,損害が塡補されたとしても,逸失利益の請求は認められ,上記塡補額は,損益相殺の対象となるにとどまる。また,当初の契約の債務不履行に起因して他の契約締結の機会を得たとはいえない場合には,上記損益相殺は認められず,損害(逸失利益)全額について賠償請求が認められる。 法9条1号の解釈にあたっても, ,当初の契約の債務不履行に起因して他の契約締結の機会を得たとはいえない場合には,上記損益相殺は認められず,損害(逸失利益)全額について賠償請求が認められる。 法9条1号の解釈にあたっても,以上のような民法の規律を参照し,①解約に伴い,別の契約を締結する機会が新たに生じ,これにより損害が塡補されたといえる場合には,解約に伴う逸失利益から上記損害の塡補額を控除することにより平均的損害を算定するが,②解約に伴い別の契約を締結する機会が新たに生じたといえない場合には,平均的損害の算定にあたり,他の契約を締結することによる損害の塡補の可能性を考慮することはできないと解する。そして,本件通信契約においては,ある契約が締結されることにより,他の契約を締結する機会を喪失するとはいえず,それゆえ,解約に伴い別の契約を締結する機会が新たに生じるともいえないから,他の契約を締結することによる損害の塡補の可能性を考慮することはできない。したがって,上記原告らの主張は採用できない。 (5) 被告の主張について被告は,本件定期契約を中途解約した者の平均解約時期は,契約締結時又は更新時から11.59か月間(以下「平均解約期間」という。)が経過した時点であることから,1か月あたりの解約に伴う逸失利益に,2年間の契約期間から上記期間を控除した月数(12.41か月間)を乗じることにより,平均的損害をすべきである旨を主張する。 アしかし,平均解約期間は,あくまで本件解約金条項における解約金の額を前提とする実状に基づき算定されたものであるから,本件解約金条項が法9条1号に照らして有効か否かを判断する際に,平均解約期間を用いることはできないと解すべきである。 すなわち,契約者が,他の事業者に契約先を変更する際等に,被告との契約関係の 本件解約金条項が法9条1号に照らして有効か否かを判断する際に,平均解約期間を用いることはできないと解すべきである。 すなわち,契約者が,他の事業者に契約先を変更する際等に,被告との契約関係の解消を望む場合には,①解約を契約期間満了時まで待って,通信料等(少なくとも基本使用料金)の支払いを継続するか,②契約期間満了時までに本件定期契約を解約し,解約金を支払うかのいずれかを選択することになる。そして,いずれの選択肢を採るかは,月々の基本使用料金等の額及び契約期間満了時までの期間並びに解約金の額を比較対照して判断されることから,解約の際に支払を余儀なくされる解約金の額の増減に応じて,平均解約時期が変動することが容易に予測され,平均解約期間は,本件解約金条項において定められた9975円という解約金の額を前提とする本件定期契約の契約者の行動の結果を示すものにすぎない。本件解約金条項に係る解約金の額が平均的損害を超過するか否かを判断するにあたり,上記のとおり解約金の額の増減に応じて変動する性質を有する平均解約期間を用いることは相当ではない。 イまた,前記第3,1,(2),イのとおり,法9条1号は,解約時期に応じて事業者に生じる平均的損害の額に著しい差異が生ずる場合には,解約時期等により契約を区分して,各区分毎に平均的損害を算定することを定めていると解される。前記のとおり,1か月あたりの解約に伴う逸失利益を基礎として,被告に生じる平均的損害を算定する場合,解約時期に応じて損害額が大きく変動することになるから,解約時期による区分を一切せずに,平均解約時期を用いて一律に平均的損害を算定することは相当ではないと解する。 以上によれば,被告の上記主張は採用できない。 (6) 基本使用料金の累積割引額が,平均的損害に当たるかについて被 解約時期を用いて一律に平均的損害を算定することは相当ではないと解する。 以上によれば,被告の上記主張は採用できない。 (6) 基本使用料金の累積割引額が,平均的損害に当たるかについて被告は,本件定期契約が2年間継続することを期待して割引をした本件定期契約と通常契約の基本使用料金の差額の累積額が,平均的損害に当たると主張する。しかしながら,次のとおり,被告の主張は採用できない。 ア被告の上記主張を前提とすると,契約者が契約締結直後に解約をした場合に平均的損害の額が最も小さくなり,契約期間満了直前に解約をした場合に平均的損害の額が最も大きくなる。しかし,契約者が契約期間満了直前に解約をした場合において,被告が解約時までに得た通信料収入等は,契約期間満了時まで契約が継続したと仮定した場合に被告が得られる通信料収入等をわずかに下回るに過ぎない。契約期間満了の直前に平均的損害が最も大きくなり,契約期間満了に至った瞬間に平均的損害がゼロになるというのは,上記各場面において被告の得た通信料収入等の額の相違がほとんどないという実態に照らすと,不自然である。むしろ,本件定期契約が約2年間継続した場合に得られる通信料収入等を期待して基本使用料金の割引をした旨の被告の主張を前提とすると,解約時期が遅くなり,契約の継続期間が長くなればなるほど,被告の得られる通信料収入等が増加し,被告の上記期待が実現される関係にあるはずであるから,期間満了直前の解約の際には解約に伴う被告の損害が最小化するはずである。 イ被告の上記主張によれば,事業者が,通常契約の基本使用料金の価格を引き上げれば,その分,解約に伴い被告に生じる平均的損害が増加することとなり,事業者が容易に平均的損害の額を操作することが可能となる。しか 張によれば,事業者が,通常契約の基本使用料金の価格を引き上げれば,その分,解約に伴い被告に生じる平均的損害が増加することとなり,事業者が容易に平均的損害の額を操作することが可能となる。しかし,解約金条項のない契約プランが,常に消費者にとって実質的な選択肢として機能し,市場による価格調整が行われることの保障がないことに照らすと,上記のように解することは,民法416条を定型化し,解約に伴い事業者が消費者に対し過大な金員の請求をすることを制限するという法9条1号の趣旨を没却するおそれがある。 ウまた,前記のとおり,法9条1号の平均的損害を算定するにあたっては,解約に伴う逸失利益を基礎とすべきである。 そして,通常契約は,本件定期契約とは別個の契約であり,被告が本件定期契約の契約者から通常契約の通信料金を得ることは契約上予定されていないことからすれば,通常料金と本件定期契約の基本使用料金の差額は,上記逸失利益には当たらない。 また,上記のとおり,契約期間が2年間継続した場合に被告が得られる通信料収入等を基礎に平均的損害を算定すれば,本件定期契約が中途解約されたことにより被告に生ずべき損害は全てカバーされることとなる。これに加えて,被告が契約期間が2年間継続すると信頼して支出(割引)した額を平均的損害を算定する際の基礎とすることは,被告に生じた損害を二重に評価することとなり,妥当ではない。 エ以上によれば,本件定期契約と通常契約の基本使用料金の差額が平均的損害算定の基礎となる損害である旨の被告の主張は採用できない。 2 本件解約金条項が法10条に反するか(争点(2))(1) 法10条前段該当性についてア法10条前段における,民法等の「法律の公の秩序に関しない規定」は,明文の規定のみならず,一般 い。 2 本件解約金条項が法10条に反するか(争点(2))(1) 法10条前段該当性についてア法10条前段における,民法等の「法律の公の秩序に関しない規定」は,明文の規定のみならず,一般的な法理等も含まれる(最高裁平成22年(オ)第863号同23年7月15日第二小法廷判決参照)。 イ民法は,委任契約及び準委任契約のほか,請負契約において,役務の提供を受ける者が,一方的に契約を解除することができることを規定している。また,この場合に生じる損害を塡補するため,一定の要件の下で,解除の相手方が,解除の意思表示をした者に対し,解除に伴う損害賠償を求めることができることを定めている(以上,民法641条,651条,656条)。これらの定めによると,民法は,委任契約・準委任契約及び請負契約等の役務の提供を給付内容とする契約において,役務の提供を受ける者が,少なくとも,役務の提供者に生じる損害を塡補する限り,不必要となった役務の受領を強いられることはないという一般法理を定めているといえる。 ウ本件通信契約は,民法の定める委任契約及び準委任契約の主要な特徴である,特定の受任者に対する委任者の特別な信頼関係の存在を前提としない非典型契約であるが,被告による通信サービス役務の提供及びこれに対する契約者による代金の支払を給付内容とする契約であり,委任,準委任契約又は請負契約等の民法の定める役務提供契約と類似する性格を有する。したがって,本件通信契約においても,上記一般法理が同様に妥当すると解すべきであり,本件解約金条項は,解約に伴い被告に生じる損害の有無及びその多寡にかかわらず,一律に一定の金員の支払義務を契約者に課す点において,解約に伴い相手方に生ずる損害の限度で損害賠償請求権を認める上記一般法理と比較し 解約に伴い被告に生じる損害の有無及びその多寡にかかわらず,一律に一定の金員の支払義務を契約者に課す点において,解約に伴い相手方に生ずる損害の限度で損害賠償請求権を認める上記一般法理と比較して,消費者の権利を制限し,消費者の義務を加重しているといえる。そうすると,本件解約金条項は,法10条前段の要件を満たすということができる。 (2) 法10条後段該当性についてア本件解約金条項は,本件定期契約の契約者が,中途解約をする際に,9975円の解約金を支払うことを定める条項であり,契約者が,本件定期契約を解約し,被告との契約関係から離脱することを一定程度制限する効果を有するといえる。しかし,本件定期契約における契約期間は約2年間であり,著しく長期間にわたり,契約者の解約を制限する規定ではない。また,本件定期契約は約2年間の定期契約であり,本件解約金条項に係る解約金は,解約に伴い被告が逸失する期間満了時までの通信料収入等を塡補するという性格を有する。このことは,更新後であっても同様である。さらに,同条項において定められた9975円という額は,前記第3,1,(3),カにおいて無効と説示した部分を除いては,中途解約に伴い被告に生じる平均的損害を超過しない合理的な範囲の額にとどまる。 また,証拠(乙1,2の2)によれば,本件定期契約において,①本件解約金条項に基づき9975円の解約金の支払義務があること及び②更新日に本件定期契約が更新されることについては,契約書に一義的かつ明確に記載され,契約締結時に契約者に交付される説明書類・パンフレット等にも上記①及び②に関する説明書きがあることが認められるから,被告と契約者の間には,本件解約金条項に係る解約金の支払に関する明確な合意があったことが認められる。 付される説明書類・パンフレット等にも上記①及び②に関する説明書きがあることが認められるから,被告と契約者の間には,本件解約金条項に係る解約金の支払に関する明確な合意があったことが認められる。 したがって,本件解約金条項のうち前記第3,1,(3),カにおいて無効であると説示した部分を除いては,信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項であるとはいえず,法10条後段に該当するとはいえない。 イ他方,本件解約金条項のうち,前記第3,1,(3),カにおいて法9条1号により無効であると説示した部分については,解除に伴い被告に生じる損害を超過する解約金の支払義務を定めており,その内容は合理性を欠くといえるので,消費者の利益を一方的に害する条項であり,法10条により無効であるというべきである。 ウなお,本件解約金条項は,本件定期契約の解約に伴い全ての契約者に一律の解約金の支払義務があることを定める契約条項であり,上記イの一部無効部分と,その余の有効部分は,1つの契約条項によって定められているが,本件解約金条項の一部が無効であることは,直ちに同条項の残余部分の無効をも導くものではないと解する。 したがって,本件解約金条項は,上記イの限度で一部無効の契約条項であると解するのが相当である。 3 差止めの範囲について本件解約金条項は,解約時期等による区分をせずに,解約の際に一律に一定の金員の支払義務があることを定めており,前記第3,1,(3),カ及び第3,2,(2),ウのとおり,その一部が法9条1号,10条より無効の契約条項である。そして,被告が,今後,本件解約金条項を改訂し,本件定期契約において解約時期等による区分がある解約金条項を使用するおそれがあることを示す証拠はないことから,差止めの対 り無効の契約条項である。そして,被告が,今後,本件解約金条項を改訂し,本件定期契約において解約時期等による区分がある解約金条項を使用するおそれがあることを示す証拠はないことから,差止めの対象となるのは,あくまで被告が現に使用する本件解約金条項を含む意思表示に限られるというべきであって,被告が今後新たに解約時期等による区分がある解約金条項を使用することを想定して,一部無効となる範囲を明示した意思表示の差止めを求めることはできないと解する。 4 個別原告らの不当利得返還請求権の当否について(1) 前記前提事実のとおり,原告Aは,平成20年2月1日に本件定期契約を更新した後,契約期間満了前の平成21年12月8日(更新日の属する月から数えて23か月目の月)に本件定期契約を解約し,その翌月に,本件解約金条項に基づき,被告に対し9975円の解約金を支払った。別紙2のとおり,同解約に伴い被告に生じる平均的損害は,8000円であり,本件解約金条項のうち,上記平均的損害を超過する解約金の支払義務を定める部分は無効である。したがって,原告Aは,被告に対し,不当利得返還請求権に基づき,上記平均的損害額を超過する部分に相当する額である1975円の支払を請求することができる。 (2) 前記前提事実のとおり,原告Eは,平成20年8月13日に被告との間で本件定期契約を締結した後,契約期間満了前の平成22年7月7日に(契約締結日の属する月から数えて24か月目の月)に本件定期契約を解約し,同月31日に,被告に対し,9975円の解約金を支払った。別紙2のとおり,同解約に伴い被告に生じる平均的損害は4000円であり,上記平均的損害を超過する解約金の支払義務を定める部分は無効である。したがって,原告Eは,被告に対し,不当利得返還 った。別紙2のとおり,同解約に伴い被告に生じる平均的損害は4000円であり,上記平均的損害を超過する解約金の支払義務を定める部分は無効である。したがって,原告Eは,被告に対し,不当利得返還請求権に基づき,上記平均的損害額を超過する部分に相当する額である5975円の支払を請求することができる。 (3) 前記前提事実のとおり,上記2名を除くその余の個人原告らは,いずれも,契約締結日又は更新日の属する月から数えて22か月目の月が経過するまでに解約をしており,解約に伴い支払った9975円の解約金は,被告に生じる平均的損害を超過しない範囲の額にとどまる。したがって,上記原告らの各請求は認められない。 5 結論以上の次第で,原告法人の請求は,被告に対して,法12条3項に基づき,被告が消費者との間でau通信サービス契約を締結する際に,別紙1記載の解約金条項を意思表示の内容とすることの差止めを求める限度で理由があるからその限度でこれを認容し,その余は棄却し,原告Aの請求は,被告に対して,不当利得返還請求権に基づき,1975円及びこれに対する第2事件の訴状送達の翌日である平成23年3月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからその限度でこれを認容し,その余は棄却し,原告Eの請求は,被告に対し,不当利得返還請求権に基づき,5975円及びこれに対する上記同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからその限度でこれを認容し,その余は棄却し,その余の個人原告らの各請求はいずれも理由がないからこれらを棄却し,意思表示の差止めを命じる部分についての仮執行宣言の申立ては相当ではないからこれを却下することとして,主文の その余は棄却し,その余の個人原告らの各請求はいずれも理由がないからこれらを棄却し,意思表示の差止めを命じる部分についての仮執行宣言の申立ては相当ではないからこれを却下することとして,主文のとおり判決する。 京都地方裁判所第4民事部 裁判長裁判官佐藤明 裁判官栁本つとむ 裁判官板東純
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