平成25年1月24日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年(ワ)第10389号不当利得返還請求事件口頭弁論終結日平成24年10月22日判決原告 P 1同訴訟代理人弁護士山口智之同髙田義之同天野真 佑 子被告星和電機株式会社同訴訟代理人弁護士平野惠稔同小田勇一 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,金3150万円及びこれに対する平成23年2月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 前提となる事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,掲記の各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。 (1) 当事者被告は,昭和24年に設立された電機メーカーであり,原告は,昭和45年からP2の屋号で工業デザインを行う個人事業主である。 (2) 原告と被告との関係原告は,昭和51年頃,被告から工業デザインの業務委託を受けるようになり,平成3年以降,原告と被告は,翌年3月31日までを契約期間とし,3か月前までに解除の申し出がないときはさらに1年間継続する旨を定めて,原告はデザイン関係全般の業務その他を委託業務として行い,被告は,月額で定める委託業務料を支払う旨の業務委託契約を締結した。平成7年4月1日付け業務委託契約における委託業務料は月額60万円,平成11年4月1日付け業務委託契約におけ を委託業務として行い,被告は,月額で定める委託業務料を支払う旨の業務委託契約を締結した。平成7年4月1日付け業務委託契約における委託業務料は月額60万円,平成11年4月1日付け業務委託契約における委託業務料は月額32万円であった(乙13,甲1。以下,前者の契約を「乙13契約」,後者の契約を「甲1契約」という。)。 原告と被告は,平成12年4月1日,契約期間を同日から平成13年3月31日までとした上で,被告が支払う業務料については別に定めること,前記同様に契約は更新されること等を内容とする業務委託基本契約を締結した(甲2。以下「甲2契約」という。)。甲2契約は,平成13年4月1日以降も自動的に更新されたが,被告は,平成17年7月26日付けで,同年10月31日の経過をもって甲2契約を終了する旨を通知し(甲14),同日,甲2契約は終了した。 (3) 本件意匠の登録,無効審決ア原告による意匠創作原告は,平成11年7月,被告の委託を受けて道路灯のデザイン製作を行い,同年8月,同デザイン案(甲5・Aの1~5)を被告に提供した。 イ被告の意匠登録出願被告は,平成11年11月5日,原告から提供された上記デザイン案を基にした別紙意匠公報記載の意匠(以下「本件意匠」という。)について,創作者を被告従業員であるP3とする意匠登録出願をし,平成13年10月26日,意匠登録がされた(甲7。登録意匠番号第1129314号。 以下「本件意匠権」という。)。 ウ意匠登録無効審判原告は,平成22年2月17日,本件意匠は原告が創作したものであるため,本件意匠の意匠登録は意匠法48条1項3号の無効理由に該当すると主張して,本件意匠権の意匠登録無効審判請求をしたところ,特許庁 原告は,平成22年2月17日,本件意匠は原告が創作したものであるため,本件意匠の意匠登録は意匠法48条1項3号の無効理由に該当すると主張して,本件意匠権の意匠登録無効審判請求をしたところ,特許庁は,原告の主張を認めて意匠登録を無効とする旨の審決をし(以下「本件審決」という。),平成23年2月16日,同審決は確定した。 (4) 被告による本件意匠の実施品の販売被告は,いずれも本件意匠の実施品である道路灯として,平成12年7月以降「パロス」(乙1)を,平成16年3月以降「パロス・ミクロス」を,平成22年11月以降「LEDパロス」をそれぞれ販売している。 2 事案の概要本件は,原告が,甲2契約解消時に,原被告間で原告が本件意匠の創作者であることが検証された場合には,ロイヤリティーを支払う旨の合意があったと主張して,同合意に基づき,実施料相当額3150万円及びこれに対する本件審決確定の後の日である平成23年2月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めると共に,選択的に,不当利得返還請求権に基づき,実施料相当額3150万円及びこれに対する平成23年2月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息金の支払を求める事案である 3 争点(1) 本件意匠につきロイヤリティー支払の合意があったか(争点1)(2) 原告は被告に対する不当利得返還請求権を有するか(争点2)第3 争点に係る当事者の主張 1 争点1(本件意匠につきロイヤリティー支払の合意があったか)について【原告の主張】(1) 原告は,平成15年頃,P4部長に,本件意匠をデザインしたのは自分である旨伝えたところ,同部長は原告が辞めるときが大変であるなどと述べていた。本件意匠が被告 告の主張】(1) 原告は,平成15年頃,P4部長に,本件意匠をデザインしたのは自分である旨伝えたところ,同部長は原告が辞めるときが大変であるなどと述べていた。本件意匠が被告の冒認出願によって登録されたものであることは,当時から原被告間で共通の理解であった。 (2) 原告は,甲2契約を解消する際,被告に対し,功績を認めて欲しいと訴えたところ,被告は「業務委託契約終了通知」(甲14。以下「本件通知」という。)を原告に交付した。本件通知には,「P2業務委託終了に伴う関連事項」第5項(「意匠等のロイヤリティーについては,具体的に検証できる場合のみ検討する。」。以下「本件条項」という。)が記載されているが,これは,被告の冒認出願により登録されていた本件意匠を念頭に,ロイヤリティーの支払を規定したものである。 本件審決の確定は,本件条項の「具体的に検証できる場合」に該当するので,被告は,ロイヤリティーの支払義務を負っている。 (3) 本件意匠のロイヤリティーの金額は,被告が決定すべきものであるが,被告が決定しない以上,原告がこれを決定し,請求することができることは当然である。 本件意匠のロイヤリティーは実施品の販売総額の5%が相当である。ロイヤリティー料率が5%であるのは,原告が,平成17年7月,被告のP5部長から,原告が共同創作者の一人として関与した光害対策型街路灯について,「将来この考案が,大きく業績に貢献した場合は,P1と星和電機株式会社との間の請負契約の条件にて考慮する。」(甲9)との取り決め内容の意味を確認したところ,「契約条件にて考慮」とは,5%のロイヤリティーを支払うことである旨の説明を受けたことによる。 (4) 被告による「パロス」,「LEDパロス」の1台あたりの販売価格は 容の意味を確認したところ,「契約条件にて考慮」とは,5%のロイヤリティーを支払うことである旨の説明を受けたことによる。 (4) 被告による「パロス」,「LEDパロス」の1台あたりの販売価格は6万円を下らず,本件意匠権の設定登録から無効審決が確定するまでの期間の販売台数は合計1万台を下らないと推測される。したがって,「パロス」,「LEDパロス」の販売に係るロイヤリティーは3000万円を下らない。 また,被告による「パロス・ミクロス」の1台当たりの販売価格は3万円を下らず,上記期間の販売台数は合計1000台を下らないと推測される。 したがって,「パロス・ミクロス」の販売に係るロイヤリティーは150万円を下らない。 したがって,本件意匠のロイヤリティーの総額は3150万円である。 【被告の主張】原被告間では,原告が共同創作者の一人として関与した光害対策型街路灯の意匠について,「将来この考案が,大きく業績に貢献した場合は,P1と星和電機株式会社との間の請負契約の条件にて考慮する。」(甲9)との取り決めがされていた。 本件条項は,甲2契約解消時の本件通知に記載されたものであるが,甲2契約自体が終了した後も,原告が創作者であることを確認した意匠等について,上記取り決めの趣旨を残すためのものであって,本件意匠の実施につきロイヤリティー支払の合意ではない。 原告は,「意匠等のロイヤリティーについて…具体的に検証できる場合」とは,被告が実施した意匠が原告の創作によるものであることが立証できた場合を指す旨主張するが,被告は,本件通知をした当時,被告は原告が本件意匠を創作したと主張していることを聞いておらず,原告が主張するような趣旨で合意をするはずがない。 なお,本件意匠につきロイヤリティー支払の合意があったと認められる 通知をした当時,被告は原告が本件意匠を創作したと主張していることを聞いておらず,原告が主張するような趣旨で合意をするはずがない。 なお,本件意匠につきロイヤリティー支払の合意があったと認められるとしても,原告は,自ら本件意匠の意匠登録を無効にしたにもかかわらず,一方でロイヤリティーを請求するという矛盾した行為をとっており,原告の請求は権利濫用として排斥されるべきである。 2 争点2(原告は被告に対する不当利得返還請求権を有するか)について【原告の主張】被告は,原告が有する本件意匠の意匠登録を受ける権利を冒認登録により侵害した結果,実施料相当額である3150万円を不当に利得し,原告に同額の損失を与えたしたがって,原告は,被告に対する,同金額についての不当利得返還請求権を有する。 (1) 原告が本件意匠について意匠登録を受ける権利を有していること本件意匠は,原告が被告の委託を受けて平成11年8月17日までに提供した意匠と実質的に同一であって,その創作者は原告である。 また,原告は,本件意匠の意匠登録を受ける権利を被告に譲渡したこともない。原告が共同創作者の一人として関与した光害対策型街路灯については,平成11年2月に原被告間の打合せで「この出願の出願者(権利者)は,星和電機株式会社とする」旨確認されたが(甲9),本件意匠に関して,原被告間で意匠登録を受ける権利の帰属について話し合いはされていないし,甲1契約には,成果物の意匠登録を受ける権利については定めがなく,同契約に基づいて意匠登録を受ける権利が承継されたということもできない。 (2) 被告は原告の意匠登録を受ける権利を侵害したこと被告は,本件意匠の意匠登録を受ける権利を有していないにもかかわらず,意匠登 登録を受ける権利が承継されたということもできない。 (2) 被告は原告の意匠登録を受ける権利を侵害したこと被告は,本件意匠の意匠登録を受ける権利を有していないにもかかわらず,意匠登録出願をし,この冒認出願による意匠登録によって,原告の意匠登録を受ける権利を侵害した。 無効審決の確定により,本件意匠権が初めから存在しないことになっても,審決確定までの間,被告が意匠権者であるかのような外観を備え,本件意匠及びその類似意匠を実施しようとする者を排除し,又はこの者に許諾を与え得る地位にあったことまで否定されるものではなく,被告がこのような実質的な経済的利益を得ていたことは否定されない。 (3) 原告の「損失」と被告の「利得」原告は,本件意匠の意匠登録を受ける権利を有していることから,意匠権者として,被告から実施料を得るべき地位にあった。 したがって,原告には,得べかりし実施料相当額を逸失したことによる「損失」が生じており,被告には,実施料の支払を免れたことによる「利得」が生じている。実施料相当額は,実施料率を5%として,上記1【原告の主張】(4)のとおり3150万円である。 なお,仮に原告自身が意匠権者となっていた場合に被告から実施料を収受する法的根拠があったかどうかという問題は措くとしても,原告は少なくとも本件意匠ないし類似意匠を実施したいという第三者から実施料の支払を受けることができたはずであり,被告による本件意匠の登録は,原告のこのような利益・機会を剥奪するものであり,被告の「利得」,原告の「損失」が認められる。 【被告の主張】本件では,以下のとおり,不当利得返還請求権の成立要件が認められず,被告は,原告に不当利得返還義務を負わない。 (1) 原告の「損失」がない 得」,原告の「損失」が認められる。 【被告の主張】本件では,以下のとおり,不当利得返還請求権の成立要件が認められず,被告は,原告に不当利得返還義務を負わない。 (1) 原告の「損失」がないことア本件意匠の創作者は原告ではないこと(ア) 被告が行う道路灯の開発には,反射板等(ランプ・ガラスを含む。)の開発,これらを収納する灯具の開発という二つの課題があったところ,主たる課題は前者であり,たとえば,反射板の開発過程で反射板・ガラスの形状やそれとランプとの位置関係等に変更が生じた場合,それらを収納する灯具の形状にも変更する必要が生じるなどした。 被告は,効率的な配光設計の観点から,広い間口部を確保すべく,角形のガラス形状を採用するため,原告に対し,原告から提供を受けた灯具のデザインを開口部のガラス形状に合わせて角型に変更すること等を指示したりした。 (イ) 本件意匠は,意匠法3条1項3号該当を理由とする拒絶査定を受け,その後審判で当該拒絶査定が取り消されたものであるが,上記拒絶査定に対する審判請求では,被告は,引用意匠(東芝ライテック株式会社の「PREA-road」)との違いとして,主に,①「灯具本体の上面が,略六角形の平面とこの略六角形の各辺から下方に延びる複数の傾斜面で構成されており,それら傾斜面間にエッジが現れている」,②「灯具本体の側面が,灯具本体の中央部あたりからポール取り付け部に向けてくびれる形状とされ,そのくびれ部分の開始位置にエッジが現れているとともに,灯具本体の上下分割線の下方側が垂直面と傾斜面で構成され,これら垂直面と傾斜面との間にエッジが現れている」という灯具本体の形状を強調し,その結果,拒絶査定が取り消され,意匠登録されたものである。 このような経緯からすれば,本件意匠 傾斜面で構成され,これら垂直面と傾斜面との間にエッジが現れている」という灯具本体の形状を強調し,その結果,拒絶査定が取り消され,意匠登録されたものである。 このような経緯からすれば,本件意匠は,上記のような灯具本体の形状において新規性が認められたものといえるが,当該形状は,原告独自の発想ではなく,被告の上記指示に基づき創作されたものである。 (ウ) したがって,原告は本件意匠の創作者ではなく,原告に「損失」は認められない。 イ原告は意匠登録を受ける権利を譲渡していること仮に,原告が本件意匠の創作者に含まれるとしても,原告は,甲1契約に基づき,意匠登録を受ける権利を被告に譲渡している。 甲1契約では,原告から提供された業務の内容を問わず,被告は原告に一定の報酬を支払い,なおかつ当初予定した以上の業務委託量になった場合には,別途追加報酬を支払うこととされていた。したがって,被告が,原告から意匠登録に値する業務の提供を受ける場合であっても,原告は追加料金を支払わなければならないわけではなく,その際,意匠登録を受ける権利は,当該業務の提供に伴って当然に承継されると考えるべきである。 したがって,原告は本件意匠の意匠登録を受ける権利を有しておらず,「損失」は認められない。 ウ本件意匠登録は,新規性又は創作非容易性を欠く無効原因があること本件意匠は,本件意匠登録出願前の公知意匠であった,東芝ライテック株式会社の「PREA-road」,岩崎電気株式会社の「PAZU」(甲4)と類似しており,新規性が認められない。 また,仮に新規性が認められるとしても,灯具の形状に角張ったイメージをもたせるためエッジが現れるようにデザインすることは,誰でも容易に思いつ 甲4)と類似しており,新規性が認められない。 また,仮に新規性が認められるとしても,灯具の形状に角張ったイメージをもたせるためエッジが現れるようにデザインすることは,誰でも容易に思いつくことであって,創作非容易性を見出すことはできない。 したがって,本件意匠の意匠登録を受ける権利は無価値というべきであるから,「損失」は認められない。 (2) 被告の「利得」が存しないことア本件意匠登録には無効原因があること上記(1)ウのとおり,本件意匠登録は無効原因を有し,実施料を支払うに値しないことから,被告に実施料の支払を免れたという「利得」は認められない。 イ本件意匠権は,実施品の販売実績に貢献していないこと本件意匠は,平成13年10月に意匠登録されたが,それ以前から販売されていたパロスの販売数量は,意匠登録の前後で特段増加したわけではない。また,本件意匠登録の無効審決は平成22年2月に確定したが,パロス,パロス・ミクロス,LEDパロスの販売数量は,無効審決確定の前後で特段減少したわけでもない。 したがって,本件意匠の意匠権による排他的効力が存した期間と被告の実施品の販売数量との間には相関関係を見出せず,本件意匠権は被告の実施品の販売実績に貢献しておらず,被告に「利得」は認められない。なお,本件意匠の意匠登録出願は,万が一競合他社から製品の形状の類似性を指摘された場合に備え,防御的に行ったものである。 (3) 被告が「利得」を得ることに「法律上の原因」があること仮に,被告に実施料相当額の「利得」があると認められるとしても,被告は甲1契約に基づき,原告に実施料を支払うことなく本件意匠を使用できるのであり,被告の「利得」には「法律上の原因」がある。 と仮に,被告に実施料相当額の「利得」があると認められるとしても,被告は甲1契約に基づき,原告に実施料を支払うことなく本件意匠を使用できるのであり,被告の「利得」には「法律上の原因」がある。 なお,原告は,被告以外の第三者から実施料相当額の支払を受ける利益・機会を奪われたと主張するが,本件意匠について原告が第三者に実施許諾をすることは,甲1契約上許されるものではない。 (4) 利得と損失との間に因果関係がないこと原告が主張する「利得」とは意匠登録された本件意匠の実施料相当額であるところ,意匠権は,出願者が費用をかけて意匠登録出願をし,その後,特許庁の審査・設定登録という手続を経て付与されるものであり,意匠登録を受ける権利とは別のものである。 したがって,原告が仮に意匠登録を受ける権利を有しており,これが侵害されたからといって,もともと原告が得られなかった意匠登録を前提とする本件意匠の実施料相当額を,因果関係ある「利得」として取得できるはずがない。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(本件意匠につきロイヤリティー支払の合意があったか)について(1) 事実関係証拠(原告本人,甲15,乙11のほか掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば,上記第2,1で認定した事実に加え,以下の事実が認められる。 ア原告と被告との関係原告は,大学で工業デザインを学び,昭和45年頃,P2の屋号で工業デザイン業を営むようになった。原告は,昭和51年頃,業務を拡大するために,被告に働きかけ,被告との間で外注取引が開始した。 原被告間では,平成2年頃までは,個別の案件ごとに業務委託ないし請負契約が締結されたが,案件が増加したことから,原告は,平成3年以降,被告との間で1年ごとに乙13契約, 始した。 原被告間では,平成2年頃までは,個別の案件ごとに業務委託ないし請負契約が締結されたが,案件が増加したことから,原告は,平成3年以降,被告との間で1年ごとに乙13契約,甲1契約と同趣旨の業務委託契約を締結し,原告の就業日に,被告の一角で被告から委託されたデザインその他の業務に従事したが,原告との雇用関係はなかった。原告は,被告から,月額の委託業務料のほか,通勤交通費の支給を受けていた。 原告は平成7年度までは,月額の委託業務料60万円の支給を受けたが,平成8年度以降,被告から仕事量が少ないことを指摘され,委託業務料は月額32万円とされた。 イ原告による意匠創作,発明(ア) 配線用ダクトの意匠,発明について原告は,平成7年頃,被告従業員と共同で配線用ダクトの意匠創作,発明を行った。その後,被告から原告に対し,これらについて出願したい旨の申し入れがあり,同年11月22日,原被告間で打合せを行い,原被告間の関係は請負契約であるので,原告及び被告従業員を考案者とし,被告を出願人(権利者)として,特許出願及び意匠登録出願を行うこと,将来この意匠・発明が大きく業績に貢献した場合には,原被告間の請負契約の条件で考慮すること等を合意した(乙9)。 (イ) 光害対策型街路灯の意匠について原告は,被告従業員と共同で光害対策型街路灯の意匠創作を行い,平成11年2月24日,原被告間で打合せを行い,前記同様,原告及び被告従業員を創作者とし,被告を出願人(権利者)として,意匠登録出願を行うこと,将来この意匠が大きく業績に貢献した場合には,原被告間の請負契約の条件で考慮すること等を合意した(甲9)。 その後,被告は,上記意匠の意匠権を取得したが(甲8),原告が,前記合意に基 ,将来この意匠が大きく業績に貢献した場合には,原被告間の請負契約の条件で考慮すること等を合意した(甲9)。 その後,被告は,上記意匠の意匠権を取得したが(甲8),原告が,前記合意に基づき契約条件の変更等を求めることはなかった。 ウ本件意匠の創作平成11年7月下旬,被告は原告に道路灯のデザイン製作を依頼し,参考資料として,東芝ライテック株式会社と岩崎電気株式会社の道路灯のカタログコピーを提供した。 原告は,同年8月,本件意匠の基となる道路灯の意匠をいくつかのパターンで被告に提供した(甲5・A-1~5,C-1~5)。 被告は,前記第2の1(3)のとおり,原告から提供を受けた意匠を基にした本件意匠について,被告従業員を創作者,被告を権利者とする意匠登録出願を行ったが,原告は,被告に提供した意匠と実質的に同一の意匠について,平成11年10月5日,知的所有権協会の「知的所有権(著作権)登録」制度への登録を行った(乙6)。 なお,原告が被告に提供した意匠について,被告は原告に道路灯のデザインの委託,参考資料の提供を行ったものの,具体的な意匠の指示をしたとまでは認められず,その創作者は原告というべきである。また,本件意匠は,原告が被告に提供した意匠と完全に同一ではないものの,同意匠の持つ独自の形態的特徴をそのまま有する実質的に同一の意匠であるから,その創作者は原告というべきである。 エ原被告間の関係解消平成12年4月1日に締結された甲2契約では,委託業務料は別途定めることとされ,原告が業務に関連して完成した発明,考案,意匠その他についての権利は原則として被告に帰属するが,原告の申し出があった場合には,原告の寄与度,創作性の程度により,原被告協議の上,権利の帰属割合等を決定する旨が規定され て完成した発明,考案,意匠その他についての権利は原則として被告に帰属するが,原告の申し出があった場合には,原告の寄与度,創作性の程度により,原被告協議の上,権利の帰属割合等を決定する旨が規定された。 委託業務料は,甲2契約の当初は従前どおり月額制であり,平成14年頃から業務量に応じて支払われるようになったが,委託業務料の合計が月額44万3000円に満たない場合は,その差額が支払われていた。 その後,原被告間では,取引量が減少し,被告にとっては,実際の委託業務料と月額44万3000円との差額を補填しなければならない状況が続いたことから,平成17年7月,被告のP6部長は,原告に対し,甲2契約を解消する旨を告げた。これに対し,原告は,契約関係の解消に当たっては,被告と30年近く仕事をしてきた功績を認めて欲しいという趣旨のこと述べた。 被告は,同月26日付けで,原告に対し,同年10月31日をもって甲2契約を終了する旨の本件通知を交付したが,その際,「P2業務委託終了に伴う関連事項」と題する文書を作成し,契約終了日までデスク1台,パソコン2台の置場を確保すること,契約終了後の業務委託については,部門からの発注額に応じて支払うこと等に加え,原告との間で,配線用ダクト,光害対策型街路灯について,大きく業績に貢献した場合には,原被告間の請負契約の条件で考慮するとの上記合意があったことから,「意匠等のロイヤリティーについては具体的に検証できる場合のみ検討する」とする本件条項を記載し,本件通知に添付して原告に交付した(甲14)。 原告は本件条項について,特段の修正を求めることはなかった(乙12)。 オその後の経緯(ア) 原告は,平成18年1月30日,被告に対し,本件意匠の創作者は原告であるとして金銭の支払を求め 件条項について,特段の修正を求めることはなかった(乙12)。 オその後の経緯(ア) 原告は,平成18年1月30日,被告に対し,本件意匠の創作者は原告であるとして金銭の支払を求めたところ,被告は,同年2月,本件意匠につき原告が最初にデザイン製作にかかわったのは事実であるが,最終形のデザインは複数の設計担当者による検討過程から生まれており,創作者は開発に主に携わった被告担当者であること,仮に原告が創作者であるとしても,実施品の販売実績は伸びておらず,本件意匠の販売実績への寄与度も低いため,既払いの委託業務料に付加するには及ばない旨回答した(甲6)。 (イ) 原告は,平成19年6月,被告に対し,本件意匠権を含む4件の意匠権について,創作者は原告であって冒認出願である旨主張して,権利の持分譲渡及びロイヤリティーの支払を検討するよう申し入れ(乙10),その後,前記第2の1(3)ウのとおり,本件意匠登録を無効とする審決を得た。 (2) 本件条項の解釈についてア原告は,本件条項について,被告の冒認出願により登録されていた本件意匠を念頭にロイヤリティーの支払を規定したものである旨主張する。 しかしながら,前記認定したところによれば,原被告間の契約は雇用契約ではなく請負契約であり,原告が成果物を被告に引き渡し,被告が定められた報酬を原告に支払えば,被告は成果物についての権利を取得し,これを実施して利益を得たとしても原告にさらに報酬やロイヤリティーを支払う関係にはない。また,平成3年頃から平成13年頃までの間,被告は毎月一定の委託業務料を支払っていたところ,配線用ダクト及び光害対策型街路灯については,原被告間での個別の協議により,被告が特許出願,意匠登録出願を行い,当該意匠,発明が将来被 年頃までの間,被告は毎月一定の委託業務料を支払っていたところ,配線用ダクト及び光害対策型街路灯については,原被告間での個別の協議により,被告が特許出願,意匠登録出願を行い,当該意匠,発明が将来被告の業績に大きく貢献した場合には,原被告間の請負契約の条件で考慮する旨の合意がなされたが,その趣旨は,月額の委託業務料とは別に,原告に報酬やロイヤリティーを支払うとの趣旨ではなく,原告の創作等が被告の業績に大きく貢献した場合には,次期の契約における月額の委託業務料の定め方において考慮する旨を定めたものと解するのが合理的である。 一方,本件意匠については,配線用ダクト等についてなされたような協議のないまま被告による意匠登録出願がされており,原告は,平成11年に知的所有権協会への登録をした時点で,上記事実を認識していたと解するのが合理的であるが,平成18年1月30日以前に,被告に対し,本件意匠の帰属及びロイヤリティーの支払についての申し入れを行ったことはなく,そのような行動を取らなかったことについての合理的な事情も見当たらない。 以上の事実関係によれば,被告は,配線用ダクトの意匠,発明及び光害対策型街路灯の意匠について,被告の業績に大きく貢献した場合には次期の契約条件で考慮する旨を約したにもかかわらず,契約関係の解消により,次期の委託業務料等に反映することができなくなるため,契約終了後も,これら意匠等が被告の業績に大きな貢献をしたことが具体的に検証できる場合には,何らかの金員の支払を検討することとし,これをロイヤリティーと表現したものと解するのが相当である。 したがって,本件条項は,本来,配線用ダクト及び光害対策型街路灯に関するものであって本件意匠に関するものではなく,仮にその趣旨が本件意匠に及ぶとしても,そこにいう「具 ものと解するのが相当である。 したがって,本件条項は,本来,配線用ダクト及び光害対策型街路灯に関するものであって本件意匠に関するものではなく,仮にその趣旨が本件意匠に及ぶとしても,そこにいう「具体的に検証できる場合」について,原告が主張するように,被告が実施する意匠の創作者が原告であると立証された場合のことであると解すべき理由はない。また,前記認定のとおり,原告のした創作,発明等の成果物について,請負契約の趣旨により,被告は当然にこれを実施する権利を有すると解されるから,被告が本件意匠の実施品を販売した数量に応じて,原告にロイヤリティーを支払うべき理由もないといわざるを得ない。 イ原告は,平成15年頃,被告のP4部長に,本件意匠をデザインしたのは自分である旨伝え,P4部長は辞めるときが大変であるなどと述べたと主張するが,仮にこのようなやり取りがあったとしても,P4部長は原告からの一方的な申し出を聞いたのみで,それ以上に原告との間で細かい話があったわけでもないし,被告から甲2契約の解消の話があったのは,それから少なくとも1年半も経過した後のことであり,その際,原告はこれまでの功績を認めて欲しいなどと自らの要求を述べているにもかかわらず,本件意匠のロイヤリティーの話はしていないというのであるから,甲2の契約関係を解消する当時,原被告間で本件意匠権が冒認出願されたものであることが共通認識であったということはできない。 (3) 小括したがって,本件意匠の創作者が原告であることが立証されれば,被告が原告にロイヤリティーを支払う旨の合意があったとは認められず,原告の当該合意に基づく請求には理由がない。 2 争点2(原告は被告に対する不当利得返還請求権を有するか)について(1) 原告は,第4回弁論 リティーを支払う旨の合意があったとは認められず,原告の当該合意に基づく請求には理由がない。 2 争点2(原告は被告に対する不当利得返還請求権を有するか)について(1) 原告は,第4回弁論準備手続期日(平成24年5月28日)において,不当利得返還請求権に基づく請求を取り下げたが,被告は,同日,当該取下げについて異議を述べた。そこで,不当利得返還請求権の成否について判断する。(2) 原告は,本件意匠について,原告が創作者であるにもかかわらず,被告が冒認出願をしたことを前提に,得べかりし実施料相当額を得られなかったことによる「損失」が生じ,被告は,実施料の支払を免れたことによる「利得」が生じている旨主張する。 この点,配線用ダクト,光害対策型街路灯の場合とは異なり,本件意匠については,被告が意匠登録出願をすることについて,原被告間で明確な合意があったとは認められない。しかしながら,これを前提にしたとしても,既に検討したとおり,原被告間の請負契約の趣旨によれば,原告から提供された意匠を被告が実施すること自体は当然に予定されているものといえ,これに対する報酬として,原告は委託業務料を得ている。したがって,原告が,被告に提供した意匠について自ら意匠権の権利者となり,被告に対し権利行使することは,予定されていないものというべきである。 また,原告は,意匠権を取得した場合,少なくとも第三者から実施料の支払を受けることができたはずであるとして,被告の「利得」及び原告の「損失」が生じていると主張するが,そもそも,原告が意匠権を取得した場合に,第三者への実施許諾によって実施料を得ることができたということ自体,認めるに足りる証拠はなく,当該主張についても理由がない。 (3) したがって,原告が本件意匠を した場合に,第三者への実施許諾によって実施料を得ることができたということ自体,認めるに足りる証拠はなく,当該主張についても理由がない。 (3) したがって,原告が本件意匠を実施したことによって,原告が被告に対し不当利得返還請求権を有するとは認められない。 3 結語以上のとおり,原告の請求にはすべて理由がないから,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官谷有恒 裁判官松川充康 裁判官網田圭亮
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