主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 原告ら(1) 被告は,別紙請求金額一覧表の「原告」欄記載の各原告に対し,同表「請求金額」欄記載の各金員及びこれに対する平成12年12月9日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による各金員を支払え。 (2) 仮執行宣言 2 被告(1) 主文第1項と同旨(2) 敗訴の場合,担保を条件とする仮執行免脱宣言第2 事案の概要 1 事案の概要本件は,原告らが,①国立山形大学(以下「大学」という。)の職員らが原告山形大学学寮自治会(以下「原告自治会」という。)の活動を組織的に密偵し,②山形大学長(以下「学長」という。)らが密偵行為を隠蔽する目的で原告らを監禁罪及び強要罪で虚偽告発し,③(①でないとしても)大学の臨時用務員が文書を窃取隠匿保管し,①及び③によって原告らの学生寮の自治権(以下「学寮自治権」という。)を侵害し,②によって逮捕勾留された4名の原告らの名誉を毀損するなどしたとして,国家賠償法1条1項に基づき,被告に対し,原告らの被った別紙請求金額一覧表記載の各損害の賠償とこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 前提となる事実(証拠を掲記した事実の他は争いがない。)(1) 当事者ア原告自治会は,「教育の機会均等を守り,寮生活の向上と学問の発展の為に努力し,共同生活を通じて,自主的民主的人間形成をめざし,社会進歩に寄与すること」を目的とする権利能力なき社団であり,後記イ記載の学生寮(以下「学寮」という。)に居住するすべての学生(以下「寮生」という。)をもって構成されていた(甲57,弁論の全趣旨)。 原告自治会を除く原告らは,平成12年3月 り,後記イ記載の学生寮(以下「学寮」という。)に居住するすべての学生(以下「寮生」という。)をもって構成されていた(甲57,弁論の全趣旨)。 原告自治会を除く原告らは,平成12年3月17日当時原告自治会に入会して学寮に居住していた。 イ被告は,国有財産である寄宿寮(山形市大字a字bc番外所在,鉄筋コンクリート造4階建)を所有し,国有財産法及び文部省所管国有財産取扱規程に基づき学長が学寮としてこれを管理し,学生部厚生課長を国有財産監守者に指定してその監守を行わせていた(後に「厚生課」は「学生サービス課」へ,「学生部」は「学務部」へ組織名称が変更された(この点は乙3,19)が,以下には従前の名称で呼称する。)。これに基づき,厚生課課員が寮の管理運営を担当した(以下,これを担当する厚生課課員を「寮務担当職員」という。)。 (2) 原告自治会や寮生と大学との対立原告自治会と大学は平成8年ころから休学寮生への退寮処分を発端として学寮の管理等を巡って対立するようになり,平成10年ころからは,大学の職員は原告自治会や寮生らの拒否により,現業者以外は学寮内に立ち入ることができない状態となっていた(時期については甲57,69,乙22,25の1)。 (3) 大学によるA用務員の雇傭大学は,平成10年4月1日,学寮の清掃及び維持管理等に当たる臨時用務員として,Aを雇傭した。 (4) Aによる文書の持ち去りAは,平成12年3月16日,学寮内ロビーの机上に置かれた原告自治会作成の会議レジュメやビラを密かに持ち去った(甲2,9,弁論の全趣旨)。 (5) 文書保管行為の発覚原告らは,同月17日,Aがその管理下にある学寮内の倉庫及び用務員控室に,原告自治会作成の寮生大会議案書,会議レジュメ,ビラ,原告B名義 (甲2,9,弁論の全趣旨)。 (5) 文書保管行為の発覚原告らは,同月17日,Aがその管理下にある学寮内の倉庫及び用務員控室に,原告自治会作成の寮生大会議案書,会議レジュメ,ビラ,原告B名義の講義ノート等(以下「文書」と総称することがある。)約80点を保管しているのを発見した。 (6) 原告らによるAの事情聴取原告らは,同日,学寮内ラウンジにおいて,Aから,上記(4)及び(5)の事実等について事情聴取した(以下「本件事情聴取行為」という。)。 (7) Aによる謝罪文書の作成Aは,原告らの求めにより,同日,原告らが本文を作成した謝罪文書に作成者として署名指印した(以下,この文書を「本件謝罪文書」,原告らがAにこれに署名指印させた行為を「本件謝罪文書作成行為」という。)。 (8) 学長による告発C学長(以下,人については2回目以降,氏と職名で呼称する。)は,同年4月21日,本件事情聴取行為及び本件謝罪文書作成行為等が監禁罪及び強要罪に該当する疑いがあるとして,被告発人「原告D,同E等原告自治会構成員」を山形県山形警察署(以下「山形警察署」という。)に告発した(以下「本件告発」という。)。 (9) 4名の原告の逮捕勾留原告D,同E,同F及び同G(以下「4名の原告」という。)は,同月25日,Aに対する監禁罪及び強要罪の容疑で逮捕され,続いて勾留された。 (10) 不起訴処分4名の原告は,同年6月5日,不起訴処分となった。 第3 主な争点とこれに対する当事者の主張 1 大学職員は原告自治会の諸活動を組織的に密偵したか(1) 原告らの主張学生部H次長,同部I厚生課長,J寮務担当職員及びK寮務担当職員らは,平成10年4月,Aに対し,原告自治会の諸活動に関する情報を学寮内で不正な方法により密かに収集して か(1) 原告らの主張学生部H次長,同部I厚生課長,J寮務担当職員及びK寮務担当職員らは,平成10年4月,Aに対し,原告自治会の諸活動に関する情報を学寮内で不正な方法により密かに収集して報告する(以下「密偵」ということがある。)よう指示した。 Aは,この指示に基づき,そのころから平成12年3月までの間,学寮内において,原告自治会の諸活動に関する情報を,同自治会が寮生用に作成した会議レジュメ,議案書等を机上から持ち去ったり,掲示物をはがしたり,寮生の居室に侵入したりして違法に収集し,これを上記寮務担当職員に報告した。 (2) 被告の主張学寮の維持管理や入居者の安全を確保する立場にあるI厚生課長は,Aの就労に際し,学寮内で変わったことなどがあれば教えるよう一般的な注意を与えたことはあるが,同厚生課長を含むH学生部次長ら大学職員が原告らの主張する密偵の指示をしたことはなく,それらの情報の報告を受けたこともない。 2 本件告発は違法か(1) 原告らの主張本件事情聴取行為及び本件謝罪文書作成行為は,監禁罪にも強要罪にも該当しない。C学長,学生部L部長及び同部M次長らはこれを認識しながら,大学による組織的な密偵行為を隠蔽する目的で虚偽の本件告発をしたから,本件告発は違法である。 (2) 被告の主張原告らを含む寮生十五,六名は,平成12年3月17日午後1時ころから用務員控室を訪れ,Aに対し,「おまえが盗んだんだろう。白状せい。」等と詰め寄り,倉庫の鍵を奪い,同人を倉庫まで連行し,倉庫内を物色して発見した文書を運び出し,続いて同人をラウンジに連れて行き,同所で十数人で取り囲み,脱出を困難にして数時間にわたって同人を詰問するという本件事情聴取行為をし,更に,同人に対し,用務員の仕事を辞めるよう,また,学生部からの ,続いて同人をラウンジに連れて行き,同所で十数人で取り囲み,脱出を困難にして数時間にわたって同人を詰問するという本件事情聴取行為をし,更に,同人に対し,用務員の仕事を辞めるよう,また,学生部からの指示で違法行為をしていたことを認め責任を取って辞職届を提出する旨記載された本件謝罪文書に署名指印するよう要求し,これに応じない限り帰ることはできないと考えたAをしてその意思に反して本件謝罪文書に署名指印させたから,これらの行為は監禁罪及び強要罪に該当するか,少なくともこれらの犯罪の嫌疑がある。 C学長らは,A及びK寮務担当職員から上記事実の報告を受けてこれらが監禁罪及び強要罪の嫌疑があると判断し,かつ,I厚生課長及びJ寮務担当職員らに問い合わせて大学職員による組織的な密偵行為のないことを確認した上で本件告発をしたものであるから,本件告発は違法ではない。 3 Aによる文書の窃取隠匿保管は原告らの学寮自治権を違法に侵害したか(1) 原告らの主張Aによる文書の収集保管が密偵指示に基づくものでないとしても,同人は,大学から聞かれた場合に備える目的で,原告自治会との合意に違反して,同自治会に関わる文書等を窃取隠匿保管し,これによって,学寮自治権を他者の不当な干渉なしに行うために原告らが有するところの,原告自治会等に関する情報を寮生以外の者から秘匿する権利を違法に侵害した。 (2) 被告の主張Aは原告らの主張する合意をしてはおらず,寮生が大学にも行かず何をしているのかと興味を抱いて,不特定多数の学生への配布閲覧用に置かれた書面や寮生が捨てた物を入手したのであり,原告自治会作成の会議レジュメ等を狙ったものではないし,寮生の居室等へ侵入して窃取したこともないから,Aのした文書の収集保管は国家賠償法1条1項の違法性を有さず,また原告らに損害を与 したのであり,原告自治会作成の会議レジュメ等を狙ったものではないし,寮生の居室等へ侵入して窃取したこともないから,Aのした文書の収集保管は国家賠償法1条1項の違法性を有さず,また原告らに損害を与えるものでもない。 第4 当裁判所の判断 1 大学職員の組織的な密偵行為を理由とする損害賠償請求について(1) H学生部次長,I厚生課長,J・K両寮務担当職員らが平成10年4月原告自治会の諸活動に関する情報を不正な方法で密かに収集報告するようAへ指示したか否かについて検討する。 ア本件謝罪文書(甲1)には,「Aが清掃員として学寮に赴任するに当たりI厚生課長及びJ寮務担当職員から『寮内のことを教えてくれ。』と情報提供することを命じられ,その指示に基づいて,寮内の居室・ロビー等から会議レジュメ等の印刷物を持ち出し,その内容をもとにJ寮務担当職員に対し,後にはK寮務担当職員に対し,毎月一,二回報告した。報告内容は寮内の状況や,持ち出した印刷物から判断した寮生の動向や方針,寮を訪れた人,寮生数等についてであった。学生部からの指示で行った事とはいえ職務を逸脱した違法行為であり,責任を取って早急に辞職届を提出する。」旨の記載がある。 また,本件事情聴取行為を受けた際にAが原告らに対して答えた供述の中には,一連とした明確な表現ではないものの,つなぎ合わせると,概ね,「契約の最初の時点で,I厚生課長から,間接的な言い方ではあるが,解釈としては,読んで報告するように指示され,暗に情報集めをにおわせているように思い,情報集めのために部屋に入ったり物を盗んだりし,取ったものは自分のわかる範囲で読んで大ざっぱに報告をした。集めた方が報告をするのにいいから集めていた。この報告は業務として月に一,二回,清掃業務の報告の際にした。職員は自分が文書を持ち出 だりし,取ったものは自分のわかる範囲で読んで大ざっぱに報告をした。集めた方が報告をするのにいいから集めていた。この報告は業務として月に一,二回,清掃業務の報告の際にした。職員は自分が文書を持ち出していることを知っていたがこれを制止することはなかった。」との趣旨に理解できる部分がある(甲10の1及び2,11)。 イそこで,これらの証拠の信用性について検討する。 (ア) 本件事情聴取行為及び本件謝罪文書作成行為は後記2(1)イ(ア)ないし(ウ)に認定する経過と態様でされたものであるが,更に,証拠(甲10の1及び2,11,12,乙6,証人A(以下,人証についても2回目以降,氏のみで呼称する。))によれば,原告らは,本件事情聴取行為に際し,Aが大学の「スパイ要員」で原告自治会の諸活動について諜報活動をしていたと決めてかかり,Aが原告らの意図する返答をしなかったり前後異なる返答をしたりすると寄ってたかって,「観念しろって」,「すべてしゃべりな」,「隠すなよ」,「認めろ」,「言い訳しようとすんなって」,「嘘言うなよ」,「黙るなって」,「おかしい」,「つじつまが合わない」などと言って同人を責め立て,意図する返答を得るために何度も同様の質問を繰り返したり強引に誘導したりし,それによって前記アの供述を引き出し,本件謝罪文書に署名指印させたと認められる。 (イ) Aは,本件事情聴取行為の際,原告らに対し,前記アの供述等とは相容れない趣旨で,「取った目的は自分が見るためで,読むのも自分の興味からである。」との供述を何度も繰り返し,また,「内容は報告していない,言うつもりもない。保管して読んで報告するよう言われてはいない。入手の指示をされてはいない。」,「入手していることを大学は知らない。ばれないよう指示されていない。」,「契約するときも具体的な ない,言うつもりもない。保管して読んで報告するよう言われてはいない。入手の指示をされてはいない。」,「入手していることを大学は知らない。ばれないよう指示されていない。」,「契約するときも具体的な特別な話はない。具体的にこういう配布物を探れとかを言われていない。」などの言葉を随所で述べ,また,収集した文書を寮務担当職員へ見せたり交付したりしたことはない旨を一貫して述べている。 また,Aは,本件謝罪文書に署名する際,原案に「『寮内のことを教えてくれ。』と情報収集を命じられ」とあったのを,改めるよう申し入れて「情報提供」と修正させているが,「命じられ」の部分についても,「もっと柔らかいような言葉ないかなあ。」などと最後までこだわりを見せた。(甲10の1及び2,11)。 (ウ) Aは,本件事情聴取行為の翌日,後記2(1)イ(エ)に認定のとおり,K寮務担当職員に対し,前日学寮内で長時間尋問を受けたなどと被害報告をしたが,その際,前々日に自分がした窃取行為については明確には触れず,保管していた多数の文書が原告らに発見された点についても,「部屋の鍵を開けてあら探しをされた。」といった程度の説明をしたにとどまった(乙3,15,21,証人K)。 (エ) Aは,文書を入手保管した理由について,その後,以下のとおり述べている。 a 平成12年3月21日にH学生部次長及びN厚生課長からK寮務担当職員同席で説明を求められた際の報告では,「学生が何を感じているのか知りたかったため。自分の趣味から。」と(証人K,同H)。 b 同月24日ころ大学へ提出したてん末報告書ともいうべき書面(以下「てん末報告書」という。)中では,「パンフ,チラシは大学側から私に寮のことについて聞かれた時の資料として。ノート類はもったいないと思って。 本,カリキュラムなどは大学ではどんな もいうべき書面(以下「てん末報告書」という。)中では,「パンフ,チラシは大学側から私に寮のことについて聞かれた時の資料として。ノート類はもったいないと思って。 本,カリキュラムなどは大学ではどんな勉強をしているのかという興味から。」と(乙16)。 c てん末報告書を基礎とする当裁判用の陳述書(以下,陳述書は全部当裁判用に作成されたものをいう。)及び証人尋問における証言では,入手した理由を,「寮生らが大学に行って勉強するのではなく大学に対する抗議行動ばかりしていることや大学職員が学寮に入れず学寮が寮生の管理下にあることに反感を抱くとともに不思議に思い,普通の大学生と違うのかと寮生の行動に興味を抱いて,後で読むため。」とする他,これに加えて,「学寮へ寮務担当職員が入れない上,自分は大学から雇われている身であるから,学寮内のことを大学から聞かれたときに知らないとは言えないので。」と。また,保管した理由を,「大学から聞かれたときに役立つかもしれないと思ったため。」と(乙2,8,証人A)。 (オ) Aへの指示の内容に関する関係者の証言及び陳述書の内容は,以下のとおりである。 aAの証言及び陳述書は,「就労を開始する際にI厚生課長から,『何か変わったことがあったら教えてほしい。』,『職員が学寮内に入れないから学寮の様子や状況を教えて欲しい。』と言われた程度であって,『情報を収集して逐次報告するように。』などと言われたことはない。」と(乙2,証人A)。 bK寮務担当職員(平成10年4月から平成13年3月まで同職)の証言は,「自分はAに対し学寮自治会の諸活動についての情報提供を指示したことはない。学寮自治会のレジュメ等を入手保管するよう依頼したと他から聞いたことはない。」と(乙20,証人K)。 cH学生部次長(平成10年4月から平成12年3月ま 活動についての情報提供を指示したことはない。学寮自治会のレジュメ等を入手保管するよう依頼したと他から聞いたことはない。」と(乙20,証人K)。 cH学生部次長(平成10年4月から平成12年3月まで同職)の証言及び陳述書は,「自分は直接あるいはI厚生課長を通じて間接的に情報収集やその報告を指示したことはない。」,「自分は,平成12年3月21日,A,N厚生課長(平成11年4月から平成13年3月まで同職),K寮務担当職員,O寮務担当職員(平成11年4月から平成12年3月まで同職),I厚生課長(平成9年4月から平成11年3月まで同職)及びJ寮務担当職員(同前の間同職)に対して面接や電話でこの点を調査したが,いずれの回答も指示を否定していた。」と(甲27,乙15,20,21,証人H)。 (カ) Aは,証人尋問及び陳述書において,寮務担当職員に対してした毎月の報告は通常の清掃業務に関するものであり,その際,寮生の人数や県外ナンバー自動車の有無を問われて答えたことはあるが,入手した文書から寮生の動きを報告したりビラなどを持参したことはない(なお,自分のトイレの清掃が不適切であることを指摘したビラをはがして寮務担当職員へ見せたことは1回ある。)と証言し記述する(乙2,証人A)ところ,これらの点は,証人K及び同Hの証言と一致している。 また,証人K及び同Hは,Aが文書を収集保管していたことを知らなかったと証言している。 (キ) Aは,証人尋問及び陳述書において,本件事情聴取行為の返答の中に前記アのように供述した部分があることや本件謝罪文書に署名指印したことの理由を,「本件事情聴取行為の際,大学に命令されて情報提供をしたんだろうと何度も繰り返し聞かれ,いくら否定しても取り合ってもらえず,逆に毎月の清掃業務報告を情報提供だったと決めつけられ,疲れて との理由を,「本件事情聴取行為の際,大学に命令されて情報提供をしたんだろうと何度も繰り返し聞かれ,いくら否定しても取り合ってもらえず,逆に毎月の清掃業務報告を情報提供だったと決めつけられ,疲れて黙り込むと,『黙っているんじゃない。早くしゃべれ。』などと言われ,言いなりにならないと延々と続き家に帰れなくなると思った。」,「本件謝罪文書は自分の思いとは違ったが,長時間の拘束で疲れ果て,頭がもうろうとしていたし,嫌だと言っても署名しなければ更にこの状態が続くだろうと思い諦めた。」などと証言し記述している(乙2,証人A)。 (ク) ところで,前記アの記載や供述内容が真実であるとすると,以下のような不自然な点がある。 a 大学職員が文書あるいは情報の収集を指示したのであれば,Aは,指示された収集対象について本件事情聴取行為の際具体的な供述をするはずであるが,実際にはこの点について具体的な供述はない。 収集した文書を職員が預かるなり,そうでないならその処分をAへ指図するはずであるが,実際には多数の文書がAのもとに残っている。 b 大学職員が文書の保管を指示したのであれば,文書は分類整理されるはずであるが,実際にはあちこちに雑然と置かれている(証人A,原告D,弁論の全趣旨)。 発見された文書は発行年月日,種類,内容とも雑多で一貫性や連続性はなく(甲8),保管の基準が存する様子がない。 文書が原告らに発見されたことについてのAとK寮務担当職員との最初のやりとりやその後の対応に,「悪事」が露見した場合にあるような緊迫感がない。 cAが文書の内容を業務として口頭で報告するのであれば,そのための備忘録やメモを作成するはずであるし,報告した事項について本件事情聴取行為の際具体的な供述をするはずであるが,実際にはメモ等は存在しないし,具体的といえ 務として口頭で報告するのであれば,そのための備忘録やメモを作成するはずであるし,報告した事項について本件事情聴取行為の際具体的な供述をするはずであるが,実際にはメモ等は存在しないし,具体的といえるほどの供述はない。 古新聞の束の中から発見された前日窃取にかかる会議用レジュメ等(この点は甲6,59から認められる。)は,そのまま古新聞とともに廃棄されたであろうことが窺われるが(原告らは,「これらは報告に備えて古新聞の束の中に整理保管していた」旨主張するが,他の文書が分類整理されることなく置かれていることに比較するとそのようには認め難い。),そうすると,大学へ報告する機会がない。 dAが原告自治会の諸活動を密偵するよう指示されたのであれば,平成12年2月,3月当時大学は原告自治会が自主的に学寮入寮希望者を募るいわゆる「自主募集」に重大な関心を寄せていたのであるから,Aもこれについて関心を持ったはずであるが,実際にはAは自主募集の情報を新聞で初めて知ったにすぎない(甲10の1及び2,11,20,26,30ないし33,50,乙29の53)。 eAは,その後も辞職届を出すことなく,平成13年3月末日まで大学の別の寮の用務員として就労した(証人A)。 以上によれば,前記アの記載や供述のうち,少なくとも,収集が厚生課長や寮務担当職員の指示に基づくとする部分,収集した文書の内容をもとにそこから判断した内容を寮務担当職員へ報告したとする部分,学生部からの指示で一連の違法行為をしたとする部分及び職員は文書の持ち出しを知っていたとする部分は,Aが,多数の寮生にただ一人囲まれて,スパイ要員であると決めつけられ,否定しても取り合ってもらえず,休憩もないまま長時間にわたって繰り返して問い質されるなどの心理的,身体的に過酷な状況に置かれたために,楽になり 生にただ一人囲まれて,スパイ要員であると決めつけられ,否定しても取り合ってもらえず,休憩もないまま長時間にわたって繰り返して問い質されるなどの心理的,身体的に過酷な状況に置かれたために,楽になりたい,その場を逃れたいなどの気持ちが働いて,真実と異なってあるいは意思に反してなした疑いがあり,信用性が低い証拠というべきである。 そうすると,これらの証拠から大学職員がAに対し原告自治会の諸活動を密偵するよう指示したと認めることは困難である。 ウ次に,Aは,本件事情聴取行為の際,原告らに対し,「寮務担当職員との会話では自分が告げるよりも先に大学は全部情報をつかんでいる。」との趣旨の供述をしている部分があり(甲10の1及び2,11。なお,この部分の供述は前後の流れから見るとAが自ら進んで述べたと認められる。),また,学寮の調理関係の仕事をしていたP(同人がこの職にあったことは甲13,14から認められる。)の陳述書(甲13)にも,平成10年4月から平成12年2月まで週1回献立を受領するため厚生課へ行った際,I厚生課長や寮務担当職員から,「寮生達は会議で何を話し合っているのか。」,「会議や集会の予定を知らないか。」といったことを度々尋ねられた,との記述がある。 そこで,Aの上記供述が原告自治会の諸活動に関する情報を不正に入手して寮務担当職員へ報告していたことを意味するか否かについて検討するに,証拠(甲10の1及び2,11)によれば,Aは,上記の供述に続いて,原告らから,大学のつかんでいた情報の例,すなわちAが寮務担当職員と交わした会話の内容を問われて,「在寮生の数」,「誰が来ているか」,「ビラまきやデモをするときの情報」,「寮内の『垂れ紙』によって公示された予定」程度のことを返答したにすぎないことが認められる(なお,この返答は前後の会話に照ら ,「在寮生の数」,「誰が来ているか」,「ビラまきやデモをするときの情報」,「寮内の『垂れ紙』によって公示された予定」程度のことを返答したにすぎないことが認められる(なお,この返答は前後の会話に照らして自然であって,ことさらに事実を隠したとは認め難い。)。 そうすると,Aが寮務担当職員との間で原告自治会の諸活動に関する会話を交わしたとしても,それは,Aが寮内で清掃をする際に行き交う人,掲示物,垂れ紙などを目にすることによって通常知り得る程度の事項についてであったと解されるのであって(だからこそ,先に大学が情報を入手していた。),Aの上記供述から同人が原告自治会の諸活動に関する情報を不正に入手して報告していたと認めることは困難である。 エ更に,Aは,本件事情聴取行為を受けた際に前記アのとおり述べただけではなく,その過酷な状況から解かれた後に作成したてん末報告書及び陳述書並びに証人尋問においても,パンフ,チラシ等を収集保管した理由として,「大学側から聞かれた時の資料として」,あるいは,「大学から聞かれたときに知らないとは言えないので」など,大学から聞かれた時の備えとする趣旨の記載や証言をする部分がある(前記イ(エ)b,c)。 そこで,これらの証拠の信用性について検討する。 まず,Aが就労開始後文書の収集保管を開始するまでの三,四か月の間に,パンフ,チラシ等を読まなければ答えることができないような事項について寮務担当職員らから強いて答えるように求められたことを認めるべき証拠はないし,その後の過程においても同様である(Pも前記陳述書において,寮務担当職員らから学寮の様子を尋ねられた際に具体的に何かを調べなさい等の指示命令をされたことはない旨記述している。甲13)。そうすると,Aが備えとしての収集保管が必要であると考えるに至る必然性はな 務担当職員らから学寮の様子を尋ねられた際に具体的に何かを調べなさい等の指示命令をされたことはない旨記述している。甲13)。そうすると,Aが備えとしての収集保管が必要であると考えるに至る必然性はない。 実際にAが保管していた文書を見ても,雑多なものが雑然とあちこちに置かれていたにすぎず,Aがもっぱら個人的興味から入手した本などやもったいないとして取得したノート類まで一緒に保管されていて,およそ備えとしたとはいえない状態であった。 また,Aは,本件事情聴取行為を受けた際,原告らに対し,パンフ,チラシ等を収集保管した理由として,大学への報告の便宜との趣旨の前記アの供述をしただけではなく,この内容を否定する趣旨で,「収集は自分が見るためで,自分の興味からである。」などと繰り返していたし(前記イ(イ)),その後のH学生部次長らに対する説明でも,「学生に対する自分の関心や趣味から」と述べたのみであって,備えとしたような趣旨の言葉を述べてはいない(前記イ(エ)a)。しかるに,Aは,その後に大学へ提出するため作成したてん末報告書では,自分の興味からとの理由は書かずに,「大学から聞かれた時の資料とするため」とだけ記載し,更にその後これを基礎に作成した陳述書及び証人尋問では,「自分の興味から」を復活させて,「備えとする」との理由と並列的に述べている。 以上の事実を総合すると,Aがパンフ,チラシ等を収集保管したのは,真実は,本件事情聴取行為の際原告らに何度も述べたように,Aの寮生に対する個人的興味から後に読むためであったが,てん末報告書を作成する段になって,本件事情聴取行為の際に原告らの誘導から述べた「大学に報告するため」との言葉を思い起こし,これに着想を得て,大学に対していわば自己弁護をするような意味で真実に反して上記の記載をし,これを基礎 って,本件事情聴取行為の際に原告らの誘導から述べた「大学に報告するため」との言葉を思い起こし,これに着想を得て,大学に対していわば自己弁護をするような意味で真実に反して上記の記載をし,これを基礎にした陳述書及び証言においても,個人的興味という真実の理由とともに,真実ではない上記理由を踏襲した疑いがあるというべきである。 そうすると,大学側から聞かれた時の備えとするためとの趣旨の上記証言等は信用性が低いというべきである。 従って,Aの証言やてん末報告書等の中の上記証拠からAによる文書の収集保管と大学との関連性を認めることは困難である。 オまた,原告らは,(ア)人員削減の流れに反してまで大学がAを直接雇傭したのは密偵行為を行わせる目的があったからである,実際にも同人は,清掃をきちんとせず,居室をのぞくなどの不審な行為を繰り返していた,(イ)大学は原告自治会の会議資料や会議レジュメ等の内部文書によるのでなければ知り得ない非公開情報をつかんでいたが,これはAから不正に情報を入手していたことを物語る,(ウ)Aに対して大学が懲戒処分をしないのは密偵指示をしていたからである,と主張する。 しかし,上記(ア)については,現業者以外は立ち入ることが困難な状況下で国有財産である学寮を管理する大学としては,できる限り直接的にその状況を把握し管理できるように用務員を直接雇傭することが通常選択する方法といえるのであり,人員削減を優先しなかったからといって密偵目的を推認することはできない。また,証拠(乙2,7,9,証人A,弁論の全趣旨)によれば,大学は,従前から学寮の用務員を直接雇傭していたが,平成9年度は途中で退職したために以後外部委託となったにすぎず,平成10年度はハローワークに求人募集をし,これに応募したA(民間会社の定年退職者で当時61歳)を から学寮の用務員を直接雇傭していたが,平成9年度は途中で退職したために以後外部委託となったにすぎず,平成10年度はハローワークに求人募集をし,これに応募したA(民間会社の定年退職者で当時61歳)を採用したと認めることができる。上記(イ)については,Aが保管していた文書中には原告らが非公開情報が記載されていると指摘するものは存在しない上(甲8,弁論の全趣旨),その非公開情報が原告らの主張する内部文書に直接に接するのでなければ大学が知り得ないものであったことを認めるべき的確な証拠はない。そうすると,この主張はその前提を欠くので理由がない。また,上記(ア)のうちAが清掃をきちんとせずに不審な行為を繰り返したこと(なお,この点は証拠上必ずしも明確でない。)や,上記(ウ)の大学が懲戒処分をしなかったこと(この点は争いがない。)は,大学による密偵指示を推認するに足りないというべきである。 カなお,I厚生課長は,Aが就労する際,同人に対し,「学寮内で何か変わったことがあったら教えてほしい。」等と依頼している(乙2,証人A,弁論の全趣旨)。 しかし,自由に立ち入ることのできない状況下で学寮を監守する立場にある者が業務に伴い日常的にその状況を知り得る者に対してこうした依頼をすることは,施設を維持管理し安全を確保するために通常なす行為といえるから,I厚生課長が上記の依頼をしたことをもって直ちに密偵行為を暗に求めたと認めることはできないというべきである。 キ以上によれば,大学職員らによるAへの密偵指示の事実を認めることはできないところ,本件全証拠によるも,他にこれを認めるべき証拠はない。 (2) そうすると,大学職員による組織的な密偵行為を認めることはできないから,これを前提としてなす原告らの被告に対する損害賠償請求は理由がない。 2 虚偽告発を理 他にこれを認めるべき証拠はない。 (2) そうすると,大学職員による組織的な密偵行為を認めることはできないから,これを前提としてなす原告らの被告に対する損害賠償請求は理由がない。 2 虚偽告発を理由とする損害賠償請求について(1) 本件告発は違法か否かについて検討する。 ア刑訴法239条は何人でも犯罪があると思料するときは告発をすることができる旨規定していることからすると,被告発者が不起訴処分になった場合でもそのことから直ちに告発行為が違法なものであったとすることはできない。しかし,告発は,それを受けた者の社会的地位に好ましからざる影響を与え名誉や信用を傷つける危険を伴うものであるから,告発にかかる事実が犯罪の嫌疑を欠くものであるうえ,告発者がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのに不当な目的で敢えて告発に及んだなど,告発がその制度の趣旨目的に照らして相当性を欠くと認められるときは,違法となると解するのが相当である。 イ前提となる事実に記載の事実及び証拠(甲1,2,6,8,9,10の1及び2,11,12,15ないし17,19ないし25,27,34,40,41,57ないし59,61,62,69,73,74,78,乙1ないし4,5の1ないし5の7,6ないし9,15ないし21,29の53,証人A,同K,同H,同Q,原告D,同E)並びに弁論の全趣旨によれば,前記1(1)ア,イに認定した事実に加えて,以下の事実が認められる。 (ア) 用務員控室訪問から文書の発見まで(平成12年3月17日金曜日)平成12年3月16日に学寮内に設置したビデオカメラにAの窃取行為が撮影されているのを確認した原告らは,臨時会議を開き,Aが大学の指示でこうした行為をしている可能性が高いとしてAから事情を聴取しその全容を解明するこ 日に学寮内に設置したビデオカメラにAの窃取行為が撮影されているのを確認した原告らは,臨時会議を開き,Aが大学の指示でこうした行為をしている可能性が高いとしてAから事情を聴取しその全容を解明することを決めた。これに基づき,原告らは,翌17日午後1時ころ,原告D,同Eを含む原告ら十数名で用務員控室を訪れ,Aに対し,前日の窃取行為について問い質し,倉庫の鍵の交付を求め,窃取行為を否認する同人に前日の録画映像を見せてこれを認めさせた。その上で,原告らは,窃取した物の所在を問い,家にあるとの返答を受けて今から取って来ることができるかなどとAを問い詰め,倉庫前へ連れて行き,渋る同人をして倉庫を開錠させ,倉庫内を捜索して文書の一部を発見した。なお,原告らのうち数人は,その後,用務員控室も捜索し,同所からも会議レジュメ等の残りの文書を発見した。 (イ) 本件事情聴取行為(3月17日金曜日)続いて原告らは,部屋で話すとして,同日午後3時ころ,そのままAを囲んでラウンジへ移動し,その中央付近に同人を座らせ,倉庫内や用務員控室から運び出した文書をその面前に置き,原告D,同Eを含む原告ら約15名がAを囲むように座り,文書の窃取行為と大学との関係,大学への情報提供等についてAへの事情聴取を開始し,Aが原告らの意図する返答をするように,休憩もないまま繰り返して問い質し,同人が大学の指示により違法に情報を収集し保管していたことを認めるような供述をすると,責任をとって辞職するよう要求した。その一部始終を面前のビデオカメラで撮影された同人の表情は,全体的に重苦しく緊張していた。 (ウ) 本件謝罪文書作成行為(3月17日金曜日)続いて原告らは,上記やりとりでAが答えた内容を書面にするよう同人に求め,同人が原告ら側で作成するよう述べたのに応じて原告Dにおいて本 していた。 (ウ) 本件謝罪文書作成行為(3月17日金曜日)続いて原告らは,上記やりとりでAが答えた内容を書面にするよう同人に求め,同人が原告ら側で作成するよう述べたのに応じて原告Dにおいて本件謝罪文書の原案を作成し,同日午後6時ころ,これに署名指印するよう求め,Aの求めに応じてその一部に修正を加えた後,本件謝罪文書に署名指印させた。Aは,本件謝罪文書にはなお違う点があると思ったものの,その場から解放されたい気持ちや諦めからこれに応じた。Aは,その後も倉庫等の鍵(鍵は倉庫用と用務員控室用とが一体になっている。以下,「鍵」という。)を返還するよう求めたが,原告らはこれを拒否し,同月21日に返還するとした。 Aは,完成した本件謝罪文書を持った姿をビデオカメラ等で撮影された後,同17日午後7時前ころその場から解放された。 (エ) Aから職員に対する通報等(3月18日土曜日)Aは,翌18日,K寮務担当職員に対し,前日の出来事の概要を,学寮内で寮生らから長時間にわたって取り囲まれ,辞職を強要され,鍵を奪われた旨報告し,原告らから受領した本件謝罪文書の写しを交付した。 K寮務担当職員は,同日,R学生部長(平成10年4月から平成12年3月まで同職),H学生部次長及びN厚生課長へ電話でこれを報告した。R学生部長は,この行為は悪質で犯罪に該当するおそれがあると考え,警察に通報するようK寮務担当職員に指示し,C学長からは電話でその了承を得た。K寮務担当職員は,同日,山形警察署へこれを通報した。 なお,山形大学事故処理内規には,事故発生時の措置として警察への通報等を定めている。 (オ) 警察の捜査開始(3月19日日曜日)翌19日,山形警察署において,Aの被害調書が作成された。警察はこれを端緒に捜査を開始し,同日以降,大学職員 措置として警察への通報等を定めている。 (オ) 警察の捜査開始(3月19日日曜日)翌19日,山形警察署において,Aの被害調書が作成された。警察はこれを端緒に捜査を開始し,同日以降,大学職員はAを含め延べ二十数回警察の事情聴取を受けた。 (カ) 大学による事実調査(3月21日火曜日)H学生部次長及びN厚生課長は,連休明けの同月21日,AとK寮務担当職員に説明を求めた。Aは,長時間原告ら寮生に取り囲まれ,「スパイ行為」をしたとして尋問を受け,辞職を強要され,鍵を奪われた等と概要を説明し,また,同月16日に自分が文書を取ったところをビデオカメラに撮影されたことが事の発端であること及び学寮内で文書を収集し倉庫等に保管していたことを明らかにした。また,A及びK寮務担当職員は,いずれも,スパイ行為やその指示を否定した。 H学生部次長は,同21日,O寮務担当職員,I厚生課長及びJ寮務担当職員に対してもスパイ行為やその指示について問い合わせをし,それらの事実はないとの回答を得た。 (キ) 原告自治会による要求書の提出等(3月21日火曜日)原告自治会は,同日午後,学生部長及び山形地区学生寮運営委員会外1名宛ての要求書を学生部に持参し,大学当局による寮生活の監視・諜報活動が発覚したとして,A,K・J両寮務担当職員の罷免と全貌の調査解明等を求め,同月16日と17日の録画テープを渡そうとした。学生部は,要求書を受領し,鍵の返還を受けたが,録画テープについては受領を拒否した。 (ク) 大学による発表(3月24日金曜日)学生部長及び山形地区学生寮運営委員会は,同月24日,学内向けの「学寮の将来計画等について」と題するお知らせ文書に,「大学職員の不法監禁について」の項を設けて同月17日の一件を報じ,大学が職員に命じて諜報活動を行った事 生寮運営委員会は,同月24日,学内向けの「学寮の将来計画等について」と題するお知らせ文書に,「大学職員の不法監禁について」の項を設けて同月17日の一件を報じ,大学が職員に命じて諜報活動を行った事実のないことが調査の結果判明していると記載した。 (ケ) Aによる報告書の提出(3月24日金曜日)Aは,同月24日,K寮務担当職員を通じて大学に対し,てん末報告書を提出した。 この報告書には,原告らの行動として,概要,「午後1時ころに原告Eら寮生15名ほどが用務員控室に来訪し,自分に対し,盗みについて『白状せい。既に全部わかってるんだから。』などと怒鳴って威嚇し,部屋を見せろと要求し,鍵を巡ってもみ合い,原告Eが鍵を奪い,原告らが前日のビデオ映像を自分に見せ,家までも行くぞと言って罵声を浴びせ,倉庫を開けさせ,倉庫内から文書を出し,自分をラウンジに連行して中央付近に座らせ,その周りに座り,午後3時ころから,大学のスパイだなどと自分を追及し,一部始終をビデオカメラで録画した。自分がトイレに1回立つ際は監視を付け,声が小さい,下を向くな,早く答えろなどと言い,ピリピリとした状態であった。原告らは,本件謝罪文書に署名を要求し,辞職届の提出を要求し,鍵を奪ったまま返さなかった。」旨記載し,自分については,「気力,精神的にも限界を感じ,何か方策はないか考えたがどうすることもできなかった。 本件謝罪文書の作成に応ずるしかないと判断して署名指印し,ようやく解放された。」旨記載してあった。 (コ) 大学による追加調査(3月29日)K寮務担当職員は,同月29日,学寮のS調理師から,同月17日午後のAの所在を巡る寮生とのやりとり等について聞き取り調査をした。 (サ) 警察からの意見表明要請(同年4月20日)山形警察署警察官は,同年4月20日,M学 日,学寮のS調理師から,同月17日午後のAの所在を巡る寮生とのやりとり等について聞き取り調査をした。 (サ) 警察からの意見表明要請(同年4月20日)山形警察署警察官は,同年4月20日,M学生部次長(平成12年4月から平成14年3月まで同職)に対し,捜査の結果,監禁罪及び強要罪の容疑が固まったので近日中に学寮の強制捜査を行う予定であり,ついては,施設の管理者としての大学の意見を文書で提出してほしい,本来は告発状という形になる,旨告げて大学の意見表明を求めた。 (シ) C学長らによる事前協議(4月20日)C学長は,同日,T事務局長及びM学生部次長らの同席の下でL学生部長(平成12年4月から平成13年3月まで同職)と対応を協議し,強制捜査であれば大学が断わることのできないものであるから厳正な捜査により真相究明を望むといった意見を出してはどうかなどの意見が出され,検討した結果,「A氏から被害の申し出があり,これが事実とすれば監禁罪及び強要罪に該当する疑いがあるので,厳正な捜査により速やかに適切な解決が図られることを望む。」を骨子とする告発状を学長名で提出する意向を固めた。 (ス) 学部長らによる協議と告発状の提出(4月21日)C学長は,翌21日,参集したL学生部長,人文学部長,教育学部長及び理学部長に対し告発状の文案を示して対応を協議し,警察は容疑を固め強制捜査が必要と判断したものと思われる,大学が独自で寮生に対して調査を行うことは困難と考えられるから真相究明のために告発状を提出するのはやむを得ない,等の意見が出され,告発状を提出することで意見がまとまった。 C学長は,他の学部長らには別途説明して了解を取り付けた上,同日,山形警察署へ告発状を提出し,本件告発をした。 この告発状には,被告発人を「原告D,同E等原 提出することで意見がまとまった。 C学長は,他の学部長らには別途説明して了解を取り付けた上,同日,山形警察署へ告発状を提出し,本件告発をした。 この告発状には,被告発人を「原告D,同E等原告自治会構成員」とし,告発の理由として,「Aから,学生部に対し,同年3月17日の13時ころから19時ころまでの間,被告発人によって,学寮内の1階ラウンジ等において監禁拘束されるとともに,罵詈雑言を浴びせられ,恐怖心を持たざるを得ない状況の中で,身に覚えのない謝罪と被告発人が主張するところの不当行為の責任を取って辞職する旨の文書に署名捺印することを強要されたとの申し出があった。告発人としては,かかる被告発人の行為が事実とすれば,監禁罪及び強要罪に該当する疑いがあると思料する。よって,厳正な捜査により,速やかに本件の適切な解決が図られることを望み,告発するものである。」旨記載されていた。 (セ) 強制捜査の実施(4月25日)等山形警察署警察官は,同月25日,Aに対する監禁罪及び強要罪の容疑で学寮の捜索・差押を行い,同日,同容疑で4名の原告を逮捕した。 4名の原告は,同年5月16日処分保留のまま釈放され,同年6月5日不起訴処分となった。同月6日と7日の一部の新聞は,次席検事の説明として起訴猶予であったと報じた。 ウ本件告発は違法かについて(ア) 用務員控室訪問から本件謝罪文書作成行為までと監禁罪及び強要罪の嫌疑原告らは,「Aは窃取行為が撮影されたビデオ映像を見せられて観念し,謝罪した上任意に話し合いに臨んでいる。原告らは暴行や強迫を加えたことはない。Aは笑いながら答えたり,問われていないことを進んで答えたり,トイレへ立ったりしている。これらによれば,本件事情聴取行為は脱出困難な状況に置いたとはいえず,監禁罪には該当しない(犯 えたことはない。Aは笑いながら答えたり,問われていないことを進んで答えたり,トイレへ立ったりしている。これらによれば,本件事情聴取行為は脱出困難な状況に置いたとはいえず,監禁罪には該当しない(犯罪の嫌疑がない)。 本件謝罪文書もAが訂正の申し出をして訂正させた上で任意に署名指印しているから,強要罪には該当しない(犯罪の嫌疑がない)。」と主張する。 そして,Aが観念して任意に話し合いに臨んだと認めるべき的確な証拠はないものの,なるほど,本件全証拠によるも,原告らが一連の過程でAに対し際立った暴行強迫を加えた事実は認められない。また,同人が笑ったような表情を見せたり,問われていないことを進んで答えたり,1回トイレに立ったりしたことが認められる(甲10の1及び2,11)。更に,本件事情聴取行為の途中で何人かの調理関係者がAを探しに来た折りに,原告らの一人が,Aに用があるなら呼んで来てもよい旨返答したことが認められる(甲74,乙17)から,これらの者をことさらにAから遠ざけようとした事実は窺われない。また,本件謝罪文書はAの申し入れにより一部修正されていることは先に認定したとおりである。 しかし,また,前記イに認定した事実(前記1(1)ア,イに認定の事実を含む。)によれば,原告らは,Aから事情を聴取することで大学の指示による窃取行為の全容を解明するとの事前の協議の下に,用務員控室にAを訪ね,同人を多数で囲み同所から倉庫,ラウンジへと移動させるなどし,5時間以上もの長時間にわたり,同人を囲んで休憩もなしに繰り返し問い質すなどの方法で同人が上記各場所から立ち去るのを困難にし,また,同人の意に沿わない内容が一部にある本件謝罪文書に,これに応じない限り解放されないと思われる状況の下で署名指印させたのであるから,これらの行為は,少なくとも,監 場所から立ち去るのを困難にし,また,同人の意に沿わない内容が一部にある本件謝罪文書に,これに応じない限り解放されないと思われる状況の下で署名指印させたのであるから,これらの行為は,少なくとも,監禁罪及び強要罪に該当する余地があるというべきである。 (イ) C学長らの判断資料及び判断内容原告らは,「大学が証拠となる録画テープの受領を拒否し,一方当事者である原告らから事情聴取をせず,独立した調査機関の設置をしなかったことは,C学長らが本件事情聴取行為及び本件謝罪文書作成行為が監禁罪にも強要罪にも該当しない(それらの嫌疑がない)ことを認識していたことを意味する。」と主張する。 なるほど,大学は録画テープを受領しなかったし(前記イ(キ)),また,原告らから直接に事情を聴取することや独立した調査機関を設置をすることをしてはいない(弁論の全趣旨)。しかし,証拠(乙3)によれば,大学が録画テープの受領を拒否したのは,原告らが十数名で要求書を持参し,「掃除人の諜報活動及び窃盗について学生部の考えを聞きたい」として抗議行動に及んだためであり,また,原告らから直接の事情聴取をしなかったのは,当時の対立状況から見て事情聴取は困難と考えたためであると認められる。 そして,前記イ(エ)ないし(カ),(ク)ないし(ス)に認定した事実によれば,C学長らは,それまでのAらからの説明,報告や学内での調査結果に,警察官からの近日中に学寮の強制捜査を行う予定であるとの説明が加わり,これらの資料によって,告発の理由に記載した事実について監禁罪及び強要罪の疑いがあると判断したことが認められる。 (ウ) 本件告発の動機・目的原告らは,「学長らは大学による組織的な密偵行為を隠蔽する目的で本件告発をした。」と主張する。 しかし,大学による組織的な密偵行為を認め 断したことが認められる。 (ウ) 本件告発の動機・目的原告らは,「学長らは大学による組織的な密偵行為を隠蔽する目的で本件告発をした。」と主張する。 しかし,大学による組織的な密偵行為を認めることのできないことは前記1(1)に説示したとおりである。また,仮に組織的な密偵行為が存在したのであれば,本件告発はそれを白日の下にさらすおそれのある行為であるから,むしろ告発をしない方途を選択すると解されるのであり,密偵行為を隠蔽する目的で本件告発をしたとの主張はそれ自体理解し難いものである。 そして,前記イ(カ),(ク),(サ)ないし(ス)に認定した事実によれば,C学長らは学内の調査結果から大学職員による組織的な密偵行為のないことを確認済みであり,本件告発は,学寮の強制捜査を行うために必要であるとして警察から施設管理者の意見表明を求められたことから,学長の意見を表明するためになしたと認めることができる。 (エ) その他,前記イに認定した本件告発に至る経緯や告発までの手続等においても,本件告発が制度の趣旨目的に照らして相当性を欠くと認めるべき事情は認められない。 以上によれば,本件告発は,告発にかかる事実について犯罪の嫌疑がないとはいえず,また,告発者は一連の調査や警察官からの説明等によって犯罪の疑いがあると判断し,警察からの意見表明の要請に応じて施設管理者としてこれをなしたのであるから,告発制度の趣旨目的に照らして相当性を欠いて違法であると認めることはできないというべきである。 (2) よって,本件告発が違法であることを前提としてなす原告らの損害賠償請求は理由がない。 3 Aによる文書の窃取隠匿保管を理由とする損害賠償請求について(1) 前提となる事実に記載の事実及び証拠(甲10の1及び2,11,59,証人A,原告D,同E)によれ 損害賠償請求は理由がない。 3 Aによる文書の窃取隠匿保管を理由とする損害賠償請求について(1) 前提となる事実に記載の事実及び証拠(甲10の1及び2,11,59,証人A,原告D,同E)によれば,Aは,平成10年4月1日から用務員として学寮で勤務を開始後,原告自治会や寮生から,学寮内で知った原告自治会等に関する情報を学寮外で口外しないようにとの申入れを受けていたが,同年6月ないし7月ころから平成12年3月17日までの間,学寮内で清掃業務をするに際し,原告自治会が作成した会議用レジュメ,寮生大会議案書,ビラ等を,寮生への頒布用に積み置かれた机上から持ち去ったり,壁からはがしたり,片付けた物の中から取得したりするなどして収集し保管したことが認められる。 (2) 原告らは,Aによるこれらの行為は学寮自治権を他者の不当な干渉なしに行うために原告らが有するところの,原告自治会等に関する情報を寮生以外の者から秘匿する権利を違法に侵害するものであると主張する。 しかし,Aがこうした文書から得た原告自治会等に関する情報を大学へ報告したとする証拠についてはこれを信用することができないことは前記1(1)に説示したとおりであり,かえって,証人A及び同Kの各証言によれば,Aはこうした文書から得た情報を大学へ提供してはいないことが認められる。 そうすると,大学との関係において保護されるべきそれらの情報はなおAの下にとどまっていたのであるから,同人の上記行為によっても原告らの主張する権利が違法に侵害されたと認めるに足りないというべきである。 (3) 以上によれば,Aによる文書の窃取隠匿保管を理由とする原告らの損害賠償請求も理由がないことになる。 第5 結論よって,原告らの本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担につき民訴法61条,6 による文書の窃取隠匿保管を理由とする原告らの損害賠償請求も理由がないことになる。 第5 結論よって,原告らの本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担につき民訴法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 山形地方裁判所民事部裁判長裁判官畑中芳子裁判官小林直樹裁判官坂本康博
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