平成24年10月30日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年(ワ)第24355号特許権侵害差止請求事件口頭弁論終結日平成24年8月2日判決 東京都大田区<以下略>原告キヤノン株式会社 訴訟代理人弁護士増井和夫 同橋口尚幸 同齋藤誠二郎 東京都豊島区<以下略>被告株式会社オーム電機 訴訟代理人弁護士小林幸夫 同弓削田博 同坂田洋一 訴訟代理人弁理士河野英仁 同安田恵 主文 1 被告は,別紙物件目録(1)及び(2)記載の各インクタンクの輸入,販売又は販売のための展示をしてはならない。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 この判決の第1項は,仮に執行することができる。 事実 及び理由 第1 請求主文第1項と同旨 第2 事案の概要 1 事案の要旨 この判決の第1項は,仮に執行することができる。 事実 及び理由 第1 請求主文第1項と同旨第2 事案の概要 1 事案の要旨- 2 -本件は,発明の名称を「液体インク収納容器,液体インク供給システムおよび液体インク収納カートリッジ」とする特許第3793216号(以下,この特許を「本件特許」,この特許権を「本件特許権」という。)の特許権者である原告が,被告による別紙物件目録(1)及び(2)記載の各インクタンク(以下「被告各製品」と総称し,それぞれを「被告製品1」,「被告製品2」という。)の輸入,販売及び販売の申出が本件特許権の直接侵害及び間接侵害(特許法101条2号)に当たる旨主張して,被告に対し,特許法100条1項に基づき,被告製品の輸入,販売等の差止めを求めた事案である。 2 争いのない事実等(証拠の摘示のない事実は,争いのない事実又は弁論の全趣旨により認められる事実である。)(1) 当事者ア原告は,各種光学機械器具の製造及び販売等を業とする株式会社である。 イ被告は,電気器具類の販売等を業とする株式会社である。 (2) 原告の特許権ア原告は,本件特許の特許権者である。 本件特許は,原告が平成16年11月15日に特許出願(優先権主張日平成15年12月26日及び平成16年10月22日・優先権主張国日本,特願2004-330952号。以下「本件出願」という。)をし,平成18年4月14日に特許権の設定登録(設定登録時の請求項の数16)がされたものである。 イ本件特許について,株式会社プレジールほか4社が平成21年5月19日に特許無効審判請求(無効2009-800101号事件)をしたところ,原告は,同年8月3日,本件出願の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲 ついて,株式会社プレジールほか4社が平成21年5月19日に特許無効審判請求(無効2009-800101号事件)をしたところ,原告は,同年8月3日,本件出願の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲について,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正請求(請求項1,2,5,11,12,1- 3 -3及び16を訂正し,請求項3,4,6ないし10,14,15を削除し,これに伴い,明細書の発明の詳細な説明の訂正等をするもの。以下,この訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)をした(甲24)。 特許庁は,平成22年1月26日,上記特許無効審判事件について,本件訂正を認めた上で,「特許第3793216号の請求項1ないし7に係る発明についての特許を無効とする。」との審決(以下「第1次審決」という。)をした(甲22)。 これに対し原告は,同年2月17日,第1次審決の取消しを求める審決取消訴訟(知的財産高等裁判所平成22年(行ケ)第10056号事件)を提起した。なお,本件訂正のうち,請求項3,4,6ないし10,14,15の削除に係る部分等は,第1次審決の当事者に対する送達により同月5日に確定した(甲23)。 知的財産高等裁判所は,平成23年2月8日,第1次審決を取り消すとの判決を言い渡した。この判決について上告受理の申立て(最高裁判所平成23年(行ヒ)第193号事件)がされたが,最高裁判所は,同年9月29日,上告不受理とする旨の決定をし,これにより上記判決が確定した(甲13,19)。 その後,特許庁は,上記特許無効審判事件について更に審理をし,同年11月15日,「訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「第2次審決」という。)をし,第2次審決は,同年12月26日に確定し,平成2 許無効審判事件について更に審理をし,同年11月15日,「訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「第2次審決」という。)をし,第2次審決は,同年12月26日に確定し,平成24年1月19日,その旨の登録がされた(甲22,23)。 第2次審決の確定により,本件訂正のうち,上記確定部分を除くその余の部分(請求項1,2,5,11,12,13及び16の訂正及びこれに伴う明細書の発明の詳細な説明の訂正に係る部分)が確定した。 (3) 発明の内容- 4 -ア本件訂正後の特許請求の範囲は,請求項1ないし7から成り,その請求項1及び請求項3の記載は,次のとおりである(以下,本件訂正後の請求項1に係る発明を「本件訂正発明1」,同請求項3に係る発明を「本件訂正発明2」といい,これらを併せて「本件各訂正発明」という。下線部は訂正箇所である。なお,同請求項3は,設定登録時の請求項5を訂正したものである。)。 「【請求項1】 複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと,該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と,前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え,該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と,搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し,前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手 を発生するための配線を有した電気回路とを有し,前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において,前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と,少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と,前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と,前記接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部と,を有することを特徴とする液体インク収納容器。」「【請求項3】 複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載し- 5 -て移動するキャリッジと,該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と,該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え,該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と,搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置と,前記記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器と,を備える液体インク供給システムにおいて,前記液体インク収納容器は,前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と,少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と,前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部と,前記接点から入力される前記色情報 と,少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と,前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部と,前記接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と,を有し,前記受光部は,前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され,前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出することを特徴とする液体インク供給システム。」イ本件各訂正発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,各構成要件を「構成要件1A1」,「構成要件2A1」などという。)。 (ア) 本件訂正発明11A1 複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと,1A2 該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と,- 6 -1A3 前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え,該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と,1A4 搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し,1A5 前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収 信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し,1A5 前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の1A6 前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において,1B 前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と,1C 少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と,1D 前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と,1E 前記接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部と,1F を有することを特徴とする液体インク収納容器。 (イ) 本件訂正発明22A1 複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと,2A2 該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能- 7 -な装置側接点と,2A3 該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え,該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と,2A4 搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置と,2B 前記記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器と,2C を備える液体インク供給システムにおいて,2D1 前記液体インク収納容器は,前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と,2D2 少なくとも液体インク収納容 な液体インク収納容器と,2C を備える液体インク供給システムにおいて,2D1 前記液体インク収納容器は,前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と,2D2 少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と,2D3 前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部と,2D4 前記接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と,を有し,2E 前記受光部は,前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され,2F 前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器- 8 -の搭載位置を検出する2G ことを特徴とする液体インク供給システム。 (4) 被告の行為等ア原告は,インクジェットプリンタである「PIXUSMP990」,「PIXUSiP7500」及び「PIXUSiP4500」(以下「原告製プリンタ」と総称する。)並びに原告製プリンタに使用可能なインクタンクである「BCI-321系」及び「BCI-7e系」(以下,それぞれを「原告インクタンク1」,「原告インクタンク2」といい,これらを併せて「原告各インクタンク」という。)を製造し,販売している。 原告各インクタンクは,本件訂正発明1の実施品であり,原告インクタンク1又は原告インクタンク2を装着した原告製プリンタは,本件訂正発明2の実施品である。 イ(ア) 被告は,被告各製品を輸入し,日本国内で,被告製品1を原告インクタンク1の互換品として,被告製品2を原告 又は原告インクタンク2を装着した原告製プリンタは,本件訂正発明2の実施品である。 イ(ア) 被告は,被告各製品を輸入し,日本国内で,被告製品1を原告インクタンク1の互換品として,被告製品2を原告インクタンク2の互換品としてそれぞれ販売し,又は販売のため展示している。 (イ) 被告各製品は,本件訂正発明1の構成要件1A1,1A2,1A4,1A6,1B及び1Cを充足する。 (ウ) 被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタは,本件訂正発明2の構成要件2A1,2A2,2A4,2B,2D1及び2D2を充足する。 (5) 前訴の訴訟経過原告は,平成21年1月5日,被告に対し,本件特許権に基づいて,被告が原告インクタンク2の互換品等として販売するインクタンクである「INK-C7E系」及び「INK-CGB9」の輸入,販売等の差止めを求める訴訟(東京地方裁判所平成21年(ワ)第63号事件。以下「本件前訴」という。)を提起した。本件前訴は,原告とリーブテクノロジーズ株式会社ほか- 9 -3社間の関連事件(東京地方裁判所平成21年(ワ)第59号事件ないし同第62号事件)と弁論が併合されて審理されたが,平成21年12月17日,和解(以下「前訴和解」という。)により終局した。 前訴和解には,①原告は,被告に対し,被告が販売するインクタンクである「「OHM」7Eシリーズ」(INK-C7E系)及び「「OHM」321シリーズ」(「INK-CBK321」,「INK-CY321」,「INK-CM321」及び「INK-CC321」)(以下,これらを併せて「前訴被告製品」という。)について,●(省略)●などの和解条項がある(乙17)。 3 争点本件の争点は,被告各製品についての本件訂正発明1の技術的範囲の属否(争点1),被告による被告各製品 前訴被告製品」という。)について,●(省略)●などの和解条項がある(乙17)。 3 争点本件の争点は,被告各製品についての本件訂正発明1の技術的範囲の属否(争点1),被告による被告各製品の輸入,販売等についての本件訂正発明2に係る本件特許権の間接侵害(特許法101条2号)の成否(争点2),特許法104条の3第1項に基づく本件特許権の権利行使制限の抗弁の成否(争点3)である。 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告各製品の本件訂正発明1の技術的範囲の属否)について(1) 原告の主張ア被告各製品の構造被告製品1の構造は,別紙1の「第1 図面の説明」及び「第2 構造の説明」記載のとおりである(甲3,4の1ないし3,5,12)。 また,被告製品2の構造は,別紙2の「第1 図面の説明」及び「第2構造の説明」記載のとおりである(甲6,7の1ないし3,8,9,10の1ないし3,11,12)。 イ本件訂正発明1の「光」が赤外線を含むこと本件訂正発明1の「光」は,以下に述べるとおり,可視光に限定される- 10 -ものではなく,「赤外線」を含むものと解すべきであり,本件訂正発明1の「発光部」は,赤外線を発する構成のものも含まれる。 (ア) 本件訂正発明1の「光」についてa 「光」は,「可視光線に限定することもあるが,ふつうは紫外線,赤外線をあわせ波長が約1nm~1mmの範囲にある電磁波を光とよぶ。」と定義され(岩波理化学辞典(第5版))(甲18),「赤外線」も通常は光に含まれるものと説明されており,可視光と赤外線との違いは波長の違いだけである。 本件訂正発明1の特許請求の範囲(本件訂正後の請求項1)には,「光」の波長を特定の領域に限定する記載は存在せず,また,「発光部」について「受光手段(受光部 外線との違いは波長の違いだけである。 本件訂正発明1の特許請求の範囲(本件訂正後の請求項1)には,「光」の波長を特定の領域に限定する記載は存在せず,また,「発光部」について「受光手段(受光部)に投光するための光を発光する発光部」と記載されているだけで,発光の機能としては,「(光照合処理のための)受光部への投光機能」だけが要件として記載されており,「ユーザへの告知機能(報知機能)」は要件として記載されていないのであるから,この「光」には,可視光のみならず,「赤外線」も含まれると解すべきである。 b 本件訂正後の明細書(以下,図面を含めて「本件訂正明細書」という。甲24)の記載によれば,本件各訂正発明の課題は,キャリッジに複数の液体インク収納容器を搭載して使用する記録装置において,記録装置と液体インク収納容器との間の配線の方式に共通の信号線を用いる共通バス接続方式を採用した場合でも,各液体インク収納容器がインク色に従ってキャリッジの所定の位置に正しく装着されているか否か,すなわち,インクタンクの搭載位置間違いを検出することにあり,この課題を解決するための手段として,本件各訂正発明は,「インクタンクがキャリッジ上の正しい搭載位置に搭載された場合と,誤った搭載位置に搭載された場合とで,インクタンクの発光部- 11 -が発光する位置が異なり,この発光位置の相違に起因して,受光部の受光結果に違いが現れ,その結果,インクタンクが正しい搭載位置にあるか否かを検出することができる」という光照合処理の構成を採用した点にある(段落【0009】,【0010】,【0019】,【0020】,【0080】ないし【0094】,【0108】ないし【0113】等)。この光照合処理の原理からすれば,「光」の波長にかかわらず,「共通バス接続方式を採用した場合 10】,【0019】,【0020】,【0080】ないし【0094】,【0108】ないし【0113】等)。この光照合処理の原理からすれば,「光」の波長にかかわらず,「共通バス接続方式を採用した場合でも,インクタンクの搭載位置間違いを検出する」という作用効果を奏するものであるから,光照合処理で利用される「光」の波長が特定の領域(例えば,可視光領域)に制限される理由は存在しないし,光照合処理で利用される「光」から「赤外線」が除外される理由も存在しない。 また,本件訂正明細書全文を通して,「可視光」以外の「光」を利用して,光照合処理を否定する趣旨の記載は存在せず,「光」を「可視光」に限定する記載は存在しない。 c もっとも,本件訂正明細書中には,「光照合処理を実現するのに必要な,受光部への投光機能」と「インクタンクの装着状態の良否やインクタンクの装着位置の適否(光照合処理により検出された誤装着)などをユーザに報知するのに必要な,ユーザへの告知機能」を同時に実現するために,インクタンクの発光部として「可視光を発するLED」を採用した構成が,実施例として記載されている。 しかし,これらの実施例は,本件各訂正発明の一実施態様を説明したものにすぎず,特許請求の範囲に「ユーザへの告知機能」が記載されていない本件訂正発明1の権利範囲がそのような実施態様に限定されることはない。また,本件訂正明細書中には,光照合処理による誤装着検出後,プリンタ本体側の表示器やパソコンのモニタを通じてユーザへの誤装着の告知を行うことも記載されており,インクタンク- 12 -のLEDの発光以外の方法でユーザへの誤装着の告知を行うことが開示されている(段落【0036】,【0037】,【0068】,【0105】,【0114】等)。 d 以上によれば,本件訂正発明1 -のLEDの発光以外の方法でユーザへの誤装着の告知を行うことが開示されている(段落【0036】,【0037】,【0068】,【0105】,【0114】等)。 d 以上によれば,本件訂正発明1の「光」は,可視光に限定されるものではなく,「赤外線」を含むというべきである。 (イ) 被告の主張についてa(a) 被告は,後記のとおり,原告は,本件前訴において,本件訂正後の請求項1の「光」とは可視光を意味するとの主張を繰り返し行っていたにもかかわらず,本訴において,本件訂正後の請求項1の「光」に赤外線も含まれると主張することは,禁反言の法理に照らし,許されない旨主張する。 しかし,原告が,本件前訴において,発光部にユーザへの「告知機能」があると説明したのは,前訴被告製品が本件各訂正発明の実施例と同様に可視光を用いていたため,明細書に,実施例として,可視光を発する発光部によりユーザに誤装着されたインクタンクを告知する構成が開示されていることを説明し,前訴被告製品もこのような実施例と同じ構成であることを説明したにすぎないものであり,「光」を可視光に限定する趣旨の説明ではなかったから,本訴において原告が本件訂正後の請求項1の「光」に赤外線も含まれると主張することは,禁反言の法理に反するものではない。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 (b) また,被告は,後記のとおり,原告が,本件前訴において,「本件特許発明の作用効果」としてユーザへの可視光による報知を一貫して主張しておきながら,前訴和解の成立後に,かかる作用効果を奏さない被告各製品も本件各訂正発明の技術的範囲に属すると主張することは,前訴和解の成立の経緯からも,禁反言の法理及び信- 13 -義則に反する旨主張する。 しかし,被告の上記主張に理由がないことは,前記 各製品も本件各訂正発明の技術的範囲に属すると主張することは,前訴和解の成立の経緯からも,禁反言の法理及び信- 13 -義則に反する旨主張する。 しかし,被告の上記主張に理由がないことは,前記(a)のとおりである。むしろ,被告は,前訴和解において,前訴被告製品が光照合処理の構成に対応する本件特許の侵害品であることを認め,販売を取りやめたにもかかわらず,発光部の発光が可視光ではなく赤外線であるという点のみを変更し,それ以外は前訴被告製品と同じ構成を有する被告各製品を販売しているものであり,かかる被告の行為は,前訴和解を姑息な手段で回避する意図によるものといわざるを得ず,信義則に反するものといえる。 b さらに,被告は,後記のとおり,米国におけるUS2010/0141715A1(以下「米国715発明」という。)の特許出願の審査手続において,米国特許商標庁審査官がした特許許可通知(乙21の1)において,本件特許の関連特許である米国特許第7,237,881号(以下「米国881特許」という)が,先行技術として引用された上,米国881特許に係る発明は非可視光を利用しない発明であると認定されているから,本件訂正発明1も同様に解釈すべきである旨主張する。 しかし,米国881特許は,米国で成立した米国の特許であり,その米国特許商標庁における解釈をもって,日本国で成立した本件特許が同じように解釈されることにはならないし,また,乙21の1は,米国715発明の非自明性について説明したものであって,その説明の中で,米国881特許は先行技術として考察されているにすぎず,米国881特許の請求項の解釈は行われていない。 したがって,被告の上記主張は失当である。 (ウ) 小括以上のとおり,本件訂正発明1の「光」は,「赤外線」を含むものと- ているにすぎず,米国881特許の請求項の解釈は行われていない。 したがって,被告の上記主張は失当である。 (ウ) 小括以上のとおり,本件訂正発明1の「光」は,「赤外線」を含むものと- 14 -解すべきであるから,本件訂正発明1の「発光部」は,赤外線を発する構成のものも含まれる。 ウ構成要件1A3,1A5,1D,1E及び1Fの充足被告各製品の発光部(LED)は,原告製プリンタに設置された受光手段に投光するための赤外線を発するものであるが(前記ア),本件訂正発明1の「発光部」には赤外線を発する構成のものも含まれるから,構成要件1Dの「受光手段に投光するための光を発光する発光部」に該当する。 そして,前記アのとおり,被告各製品を原告製プリンタに装着した場合,前述の光照合処理(前記イ(ア)b)が行われ,被告各製品がキャリッジ上の正しい搭載位置に搭載されているか否かを検出することができるから,被告各製品は,構成要件1A3及び1A5を充足する。その検出結果は,原告製プリンタに接続されたモニター上のウインドウで,「プリンタはオンラインです。」(インクタンクが全て正しい位置に装着された場合),あるいは「正しい位置に取り付けられていないインクタンクがあります。」(誤装着がある場合)と表示されてユーザへ報知される(甲4の2,3,7の2,3,10の2,3)。 また,被告各製品には,発光部の発光を制御する制御部とインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部とが一体となったICチップ103が設けられているから,被告各製品は,構成要件1Eを充足する。 さらに,被告各製品は,「液体インク収納容器」であるから,構成要件1Fを充足する。 以上によれば,被告各製品は,本件訂正発明1の構成要件1A3,1A5,1D,1E及び1Fを充足する。 する。 さらに,被告各製品は,「液体インク収納容器」であるから,構成要件1Fを充足する。 以上によれば,被告各製品は,本件訂正発明1の構成要件1A3,1A5,1D,1E及び1Fを充足する。 エまとめ以上のとおり,被告各製品は,本件訂正発明1の構成要件1A3,1A5,1D,1E及び1Fを充足し,また,被告各製品が構成要件1A1,- 15 -1A2,1A4,1A6,1B及び1Cを充足することは,前記争いのない事実等(4)イ(イ)のとおりである。 したがって,被告各製品は,本件訂正発明1の構成要件を全て充足するから,その技術的範囲に属する。 (2) 被告の主張ア本件訂正発明1の「光」は可視光に限定されること本件訂正発明1の「光」は,以下に述べるとおり,可視光のみに限定して解釈すべきであり,本件訂正発明1の「発光部」は,可視光を出力する部位を意味するというべきである。 (ア) 本件訂正発明1の「光」について本件訂正明細書の発明の詳細な説明の各記載(段落【0001】ないし【0004】,【0006】ないし【0013】,【0019】,【0020】,【0022】,【0032】ないし【0047】,【0057】,【0058】,【0060】,【0061】,【0072】ないし【0074】,【0077】,【0079】,【0103】,【0104】,【0107】ないし【0114】,【0117】ないし【0120】,【0127】,【0130】ないし【0132】,【0138】)及び図面(図3ないし13,18,28,34ないし37)には,本件各訂正発明は,インクタンクの搭載位置をユーザに知らせる(「報知」)ために,複数のインクタンクに対して共通バス接続方式を用いてLEDなどの「表示器の発光制御」を行い,インクタンクの搭載位置を特 本件各訂正発明は,インクタンクの搭載位置をユーザに知らせる(「報知」)ために,複数のインクタンクに対して共通バス接続方式を用いてLEDなどの「表示器の発光制御」を行い,インクタンクの搭載位置を特定してその間違いを検出できるようにしたものであること,すなわち,ユーザへの「報知」を「発光手段」で行い,そのインクタンクの搭載位置を特定するための「発光手段」としてLEDなどの「表示器」を用い,上記「表示器」の「発光」によりインクタンクの搭載位置を「ユーザ」に「認識」させ,「ユーザ」に対してインクタンクを正しい位置- 16 -に再装着することを促す処理を行うものであることが開示されている。 一方で,本件訂正明細書に開示された本件各訂正発明の実施例は,全て可視光を用いた実施例であって,不可視光を用いた実施例の記載はない。 そして,「表示」とは,「はっきり表に現れた形で示すこと」をいうから(岩波国語辞典第七版新版)(乙16),上記「表示器」がユーザに報知するために行う「発光」が可視光を発することを意味することは自明である。また,本件訂正発明1の特許請求の範囲(本件訂正後の請求項1)には「光らす」との記載があるところ,「光らす」とは「光るようにする。光らせる。つやを出す。」,「光る」とは「ぴかっと光を放つ。」の意であり(広辞苑(第五版)),不可視光が「ぴかっと光を放つ。」わけはないから,特許請求の範囲の記載自体からも「光」が可視光のみを意味することは明らかである。 したがって,本件訂正明細書の上記記載及び図面を参酌すれば,本件訂正発明1の「光」とは,インクタンクの搭載位置を「ユーザ」に知らせること(「報知」)を可能にすべく,LEDなどの「表示器」によって発光され,かつ,「ユーザ」がその発光を「認識」できる「可視光」のみに限定して解釈すべ は,インクタンクの搭載位置を「ユーザ」に知らせること(「報知」)を可能にすべく,LEDなどの「表示器」によって発光され,かつ,「ユーザ」がその発光を「認識」できる「可視光」のみに限定して解釈すべきであり,また,本件訂正発明1の「発光部」とは,可視光を出力する部位を意味するというべきである。 (イ) 禁反言の法理原告は,本件前訴において,訴状(乙3の5頁4行~8行,16頁12行~末行,37頁末行~38頁12行,38頁26行~39頁12行),平成21年2月26日付け「原告第1主張書面」(乙4の6頁27行~7頁3行),同年5月18日付け「原告第2準備書面」(乙5の7頁21行~27行),同年7月31日付け「原告第3準備書面」(乙6の9頁22行~29行,10頁6行~27行,26頁12行~19行,- 17 -27頁25行~28頁1行),同年9月16日付け「原告第4準備書面」(乙7の5頁15行~18行)及び同年10月9日付け「原告第5準備書面」(乙8の11頁末行~12頁17行)をもって,前訴被告製品との対比とは関係なく,本件特許の有効性を議論する中で,設定登録時の請求項1あるいは本件訂正後の請求項1の「光」とは,可視光を意味するとの主張を繰り返し行っていたにもかかわらず,本訴において,本件訂正後の請求項1の「光」には赤外線も含まれると主張することは,禁反言の法理に照らし,許されないというべきである。 また,原告は,本件前訴において,「本件特許発明の作用効果は,…バス接続による制御がなされるので,インクタンクの発光部は,搭載位置検出のみならず,ユーザーへの光による報知を行うことができる」(乙6等)と一貫して主張していたことから,被告は,ユーザへの可視光による報知を行う前訴被告製品の販売を停止すべく,原告との間で前訴和解をし,可視光を ,ユーザーへの光による報知を行うことができる」(乙6等)と一貫して主張していたことから,被告は,ユーザへの可視光による報知を行う前訴被告製品の販売を停止すべく,原告との間で前訴和解をし,可視光を用いた前訴被告製品を輸入,販売,引渡し及び販売のための展示をしないことなどを合意するとともに,原告が本件前訴で一貫して主張していた「本件特許発明の作用効果」を奏しない,すなわち,ユーザへの報知を行うことが不可能な被告各製品を販売するに至ったものである。このように,原告は,本件前訴において「本件特許発明の作用効果」としてユーザへの可視光による報知を一貫して主張しておきながら,前訴和解の成立後に,かかる作用効果を奏さない被告各製品も本件訂正発明1の技術的範囲に属すると主張しているものであって,前訴和解の成立の経緯からも,原告の主張は,禁反言の法理及び信義則に反するものといえる。 (ウ) 当業者の認識(米国特許商標庁の審査官の認定・判断)当業者というべき米国特許商標庁審査官は,米国法人であるSTATICCONTROLCOMPONENTS社が米国特許商標庁に- 18 -特許出願をした米国715発明について,2011年(平成23年)8月26日付けでその請求項11に係る発明についての特許許可通知(乙21の1)を行ったが,その許可理由中で,本件特許の関連特許である米国881特許のインクタンクは可視光を利用するものと認定した上で,米国881特許を含む先行技術は,非可視光を利用する発明を含まず,可視光を利用するものであるから,米国715発明の請求項11に係る発明には特許性があると判断しており,このことは,当業者が,本件訂正発明1の「光」は可視光に限られるとの認識を有していることを意味するというべきである。 イ構成要件1A3,1A5,1D及び 係る発明には特許性があると判断しており,このことは,当業者が,本件訂正発明1の「光」は可視光に限られるとの認識を有していることを意味するというべきである。 イ構成要件1A3,1A5,1D及び1Eの非充足被告各製品は,赤外線を発するのみで,可視光を発光することはないから(乙1,2,23),本件訂正発明1の「受光手段に投光するための光を発光する発光部」の構成を欠いている。 したがって,被告各製品には,本件訂正発明1の構成要件1A3,1A5,1D及び1Eの「発光部」が存在しないから,被告各製品は,これらの構成要件を充足しない。 ウまとめ以上によれば,被告各製品は,本件訂正発明1の構成要件1A3,1A5,1D,1E及び1Fを充足しないから,本件訂正発明1の技術的範囲に属さない。 2 争点2(本件訂正発明2に係る本件特許権の間接侵害の成否)について(1) 原告の主張ア構成要件2A3,2D3ないし2Fの充足被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタが,本件訂正発明2の構成要件2A1,2A2,2A4,2B,2D1及び2D2を充足することは,前記争いのない事実等(4)イ(ウ)のとおりである。 - 19 -そして,前記1(1)で述べたのと同様の理由により,被告各製品の発光部(LED)は構成要件2D3の「受光手段に投光するための光を発光する発光部」に該当し,被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタは,光照合処理(前記1(1)イ(ア)b)を行い,被告各製品がキャリッジ上の正しい搭載位置に搭載されているか否かを検出することができるから,構成要件2A3,2D3ないし2Fを充足する。 また,被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタは,「液体インク供給システム」であるから,構成要件2C及び2Gを充 検出することができるから,構成要件2A3,2D3ないし2Fを充足する。 また,被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタは,「液体インク供給システム」であるから,構成要件2C及び2Gを充足する。 以上によれば,被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタは,本件訂正発明2の構成要件を全て充足し,その技術的範囲に属する。 イまとめ以上のとおり,被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタは,本件訂正発明2の技術的範囲に属するところ,被告各製品は,物の発明である本件訂正発明2の「その物の生産に用いる物」であって,共通バス接続方式を採用しつつも,インクタンクの搭載位置間違いを検出するという本件訂正発明2による「課題の解決に不可欠なもの」に該当するといえるから,被告による被告各製品の輸入及び販売について,特許法101条2号の間接侵害が成立する。 (2) 被告の主張前記1(2)で述べたのと同様の理由により,被告各製品の発光部(LED)は構成要件2D3の「受光手段に投光するための光を発光する発光部」に該当しないから,被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタは,「発光部」(構成要件2D3,2D4,2F)の構成を欠いており,本件訂正発明2の技術的範囲に属さない。 したがって,被告各製品は,本件訂正発明2の「その物の生産に用いる物」に該当しないから,被告による被告各製品の輸入及び販売について特許法1- 20 -01条2号の間接侵害が成立するとの原告の主張は理由がない。 3 争点3(本件特許権に基づく権利行使制限の抗弁の成否)について(1) 被告の主張本件各訂正発明に係る本件特許には,以下のとおりの無効理由があり,特許無効審判により無効とされるべきものであるから,特許法104条の3第1項の規定に の抗弁の成否)について(1) 被告の主張本件各訂正発明に係る本件特許には,以下のとおりの無効理由があり,特許無効審判により無効とされるべきものであるから,特許法104条の3第1項の規定により,原告は,被告に対し,本件各訂正発明に係る本件特許権を行使することはできない。 ア本件訂正発明1に係る無効理由(進歩性の欠如)本件訂正発明1は,本件出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である乙9(特開2002-370378号公報)及び乙10(特開平2-279344号公報)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に想到することができたものであるから,進歩性が欠如し,本件訂正発明1に係る本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 (ア) 本件訂正発明1と乙9に記載された発明との対比乙9の記載事項(請求項11,段落【0003】,【0033】,【0034】,【0037】ないし【0039】,【0043】及び図2(別紙刊行物図面参照))を総合すれば,乙9には,「複数の液体インク収納容器(インクカートリッジCA1~CA6)を搭載して移動するキャリッジと,該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と,搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路(制御回路30)とを有する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において,前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と,少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部- 21 -と,を有することを特徴とする液体インク収納容器」が記載されている。 そして,本件訂正発明1と乙9記載の液 ,少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部- 21 -と,を有することを特徴とする液体インク収納容器」が記載されている。 そして,本件訂正発明1と乙9記載の液体インク収納容器(以下「乙9発明①」という場合がある。)とを対比すると,次のとおりの相違点があるが,その余の構成は一致する。 (相違点1)「液体インク収納容器」が搭載される側の記録装置が,本件訂正発明1では,「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え,該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」(構成要件1A3)を有し,「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」構成(構成要件1A5)を有するのに対し,乙9発明①では,これらの構成を有しない点。 (相違点2)本件訂正発明1では,「液体インク収納容器」が「前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部」(構成要件1D)を有するのに対し,乙9発明①では,このような構成を有しない点。 (相違点3)本件訂正発明1では,「液体インク収納容器」の「制御部」が「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する」構成(構成要件1E)を有するのに対し,乙9発明①では,このような構成を有しない点。 - 22 -(イ) 乙10の開示事項相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の各 記発光部の発光を制御する」構成(構成要件1E)を有するのに対し,乙9発明①では,このような構成を有しない点。 - 22 -(イ) 乙10の開示事項相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の各構成は,本件出願の優先権主張日当時における技術常識を参酌することにより当業者が乙10に記載されている事項から導き出せる事項であるから,乙10に記載されているに等しい事項である。 a(a) 乙10には,次のような記載がある。 ① 「カラー印刷システムのもう一つの欠点は,少なくとも構成色に対し別個の印刷ヘッドを用いるものにおいては,プリンター内部で印刷ヘッドが不注意から誤った位置に取りつけられる事である。もしマゼンタのインクがあるべきところにシアンのインクの印刷ヘッドが位置していれば,印刷されたものは不良となろう。」(2頁右下欄1行~7行)② 「本発明は,従来のインクジェット印刷システムにおける以上の欠点またはその他の欠点を,印刷ヘッドを特性化するデータを記憶できる記憶素子を各印刷ヘッドに付随させて提供することによって解決することを目的とする。」(2頁右下欄9行~13行)③ 「本データは印刷ヘッドの本性,あるいはその動作特性の一つまたはそれ以上を特性化することが可能である。このような動作特性には,印刷ヘッド内のインクの色,…などを含むことができる。このデータは印刷ヘッドから読み取ることができ,所望に応じて使用または表示できる。」(2頁右下欄15行~3頁左上欄1行)④ 「一つまたはそれ以上の印刷アッセンブリー12,各印刷アッセンブリーに付随する記憶素子14…を備えた本発明の実施例による印刷装置10」(3頁左上欄14行~18行)- 23 -⑤ 「この記憶素子は,たとえば,…半導体メモリー…によって構成される。このメモリーには 付随する記憶素子14…を備えた本発明の実施例による印刷装置10」(3頁左上欄14行~18行)- 23 -⑤ 「この記憶素子は,たとえば,…半導体メモリー…によって構成される。このメモリーには印刷ヘッドに関するデータが記憶される。かかる情報は,…印刷ヘッドのある種の動作特性(…インク色…)を特性化する。このデータは印刷ヘッドから読み取られ,所望に応じ使用または表示されうる。」(3頁右上欄14行~左下欄4行)⑥ 「キャリッジ34の通路近傍に取りつけられ印刷ヘッドがその位置を通過する都度印刷ヘッドの磁気片メモリー14を読み書きする磁気読取/書込みヘッド44」(3頁右下欄7行~10行)⑦ 「印刷ヘッドとプリンターの間のデータ通信は,読取/書込みヘッドによってなされる必要はない。かわりに,光学的,あるいは無線のカップリング等,他の送信技術を用いることもできる。」(6頁右上欄10行~14行)⑧ 「従来のような印刷ヘッドの取り付け位置の誤りによる印刷不良も簡単に防止することができる。」(6頁左下欄12行~14行)(b) 乙10の上記記載事項及び第2図(FIG.2)(別紙刊行物図面参照)によれば,乙10には,インクタンクの搭載位置間違い検出に関する技術的課題(上記(a)①)及びその課題を解決する中核的技術的思想(上記(a)②)が記載され,その具体的な構成(上記(a)③ないし⑥)が記載されている。乙10記載の「発明の実施例」は,オリフィスの板のミスアライメントを補償する点に重点が置かれた説明であるが,印刷ヘッドの記憶素子に記憶された印刷ヘッド内のインクの色を含んだデータは「印刷ヘッドから読み取られ,所望に応じ使用または表示されうる。」(上記(a)⑤)と記載され- 24 -ていることからすると,各インクタンクの色を読み取り, 刷ヘッド内のインクの色を含んだデータは「印刷ヘッドから読み取られ,所望に応じ使用または表示されうる。」(上記(a)⑤)と記載され- 24 -ていることからすると,各インクタンクの色を読み取り,表示することによって,インクタンクの取り付け位置の誤りを検出する構成を乙10の記載から十分に読み取ることができる。 b そして,乙10の前記a(a)⑦の記載は,読取/書込みヘッド44を「光学的カップリング」に置換することを示唆するものといえるから,上記記載に接した当業者であれば,以下のとおり,技術常識を参酌することにより,乙10に記載されている事項として,相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の各構成を導き出すことができる。 (a) 技術常識① 乙12の1の(米国特許第5567063号明細書)によれば,光学的カップリングが,発光素子としての発光ダイオードと,受光素子としての光センサ素子で構成されることは,技術常識である。 ② 乙13(特許第2706849号公報)によれば,プリンタ分野において,光学的カップリングを用いた識別情報の照合は,技術常識である。 ③ 乙25(特開昭57-6782号公報)によれば,プリンタ分野において,光学的カップリングを相対移動する物体の位置検出に利用することは,技術常識である。 ④ 乙24(国際公開WO2002/040275号再公表特許公報)によれば,インクカートリッジの誤装着を検出する技術に関し,インクカートリッジの位置に応じて,識別データをデータバス上に送信し,インクカートリッジ側から識別データに対する応答があるか否か判定する処理は,技術常識である。 (b) 相違点1に係る本件訂正発明1の構成について① 乙10記載の読取/書込みヘッド44は,「光学的カップリン- 25 -グ」(前記a(a)⑦) があるか否か判定する処理は,技術常識である。 (b) 相違点1に係る本件訂正発明1の構成について① 乙10記載の読取/書込みヘッド44は,「光学的カップリン- 25 -グ」(前記a(a)⑦)として把握することができる。 そして,光学的カップリングが,発光素子としての発光ダイオードと,受光素子としての光センサ素子で構成されることは,技術常識であること(前記(a)①),インクタンクに設けられた記憶素子の情報をプリンタへ送信する必要性から,発光素子をインクタンク側に設け,受光素子をプリンタ側に設けることは必然であることからすると,相違点1に係る本件訂正発明1の構成中,「記録装置が,前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように(受光手段が)配置され」との部分(構成要件1A3)は,乙10の前記a(a)⑥の記載に対応し,また,相違点1に係る本件訂正発明1の構成中の「前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え」との部分(構成要件1A3)は,磁気読取/書込みヘッド44を光学的カップリングとして把握したプリンタ側の受光素子に対応する。 次に,前記(a)②及び③の技術常識を参酌すると,相違点1に係る本件訂正発明1の構成中の「該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段を有し」との部分(構成要件1A3)は,乙10の「光学的カップリング」(前記a(a)⑦)の構成として記載されているに等しい事項である。 ② 前記(a)②及び④の技術常識を参酌すると,乙10の「光学的カップリング」(前記a(a)⑦)において,発光素子は,プリンタ側の制御によって発光することは明らかであり,また,インクタンクの装着位置の誤りを防止 ②及び④の技術常識を参酌すると,乙10の「光学的カップリング」(前記a(a)⑦)において,発光素子は,プリンタ側の制御によって発光することは明らかであり,また,インクタンクの装着位置の誤りを防止するという目的からすると,キャリッジに装着され,磁気読取/書込みヘッド44に対向している- 26 -べきインクカートリッジの発光素子を光らせ,プリンタ側の受光素子がその光を受光し,その受光結果に基づいて,インクタンクの搭載位置を検出していることは明らかである。 したがって,相違点1に係る本件訂正発明1の構成中の「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」との部分(構成要件1A5)は,乙10の「光学的カップリング」(前記a(a)⑦)の構成として記載されているに等しい事項である。 (c) 相違点2に係る本件訂正発明1の構成について前記(a)①の技術常識を参酌すると,相違点2に係る本件訂正発明1の構成(構成要件1D)は,乙10の「光学的カップリング」(前記a(a)⑦)の構成として把握することができるから,乙10に記載されているに等しい。 (d) 相違点3に係る本件訂正発明1の構成について前記(a)②の技術常識を参酌すると,相違点3に係る本件訂正発明1の構成(構成要件1E)は,乙10の「光学的カップリング」(前記a(a)⑦)の構成として把握することができるから,乙10に記載されているに等しい。 (e) 小括以上によれば,相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の各構成は,「光学的カップリング」によるインクタンクの装着位置の誤りの検出の構成として,乙10に記載されているに等し 等しい。 (e) 小括以上によれば,相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の各構成は,「光学的カップリング」によるインクタンクの装着位置の誤りの検出の構成として,乙10に記載されているに等しい事項である。 (ウ) 容易想到性a 組合せの動機付けの存在- 27 -乙10,乙11(特開2002-79685号公報)及び乙24によれば,インクカートリッジ(インクタンク)の装着位置の誤りを検出するという課題は,平成2年から平成14年にわたり,インクジェットプリンタ分野における主要な課題として存在しており,このような技術開発の流れにおいて,当業者はインクタンクの装着位置の誤りの検出を重要課題として認識し得る状況にあった。 そして,共通バス接続方式を採用した乙9発明①においては,共通の信号線を用いて複数のインクタンクから情報を取得することになるので,インクタンクの装着位置の誤りを検出できなくなることは,技術的に明らかであるから,乙9に接した当業者であれば,共通バス接続を利用しつつインクタンクの装着位置の誤りを検出するという課題に容易に想到することができたものである。 b 乙9と乙10の組合せの容易想到性乙9と乙10は,技術分野が共通し,インクタンクの装着位置の誤りの検出という技術的課題が共通する。 しかるところ,乙10の「光学カップリング」の構成は,乙9の通信手段である「バス接続配線」では不可能なインクタンクの装着位置の誤りの検出を可能にする通信手段であり,乙9発明①の上記aの技術的課題を解決するものであること,乙9の「バス接続配線」によれば,プリンタ側の制御回路は,インクタンクの位置にかかわらず,インクタンクに備えられた記憶装置から情報を読み出し,あるいは情報を書き込むことができるのに対し,乙10の「光学的カップ 接続配線」によれば,プリンタ側の制御回路は,インクタンクの位置にかかわらず,インクタンクに備えられた記憶装置から情報を読み出し,あるいは情報を書き込むことができるのに対し,乙10の「光学的カップリング」では,インクタンクが所定の位置(磁気読取/書込みヘッド44に対向する位置)になければ,このような情報の読み出し及び書き込みが不可能であり,このように乙9の通信手段たる「バス接続配線」と乙10の通信手段たる「光学的カップリング」とは,その目的ないし機- 28 -能が異なることからすると,乙9及び乙10に接した当業者であれば,乙9と乙10を組み合わせて,乙9発明①及び乙10の構成を共通化することを容易に想到することができたものである。 そして,前記(イ)のとおり,相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の各構成は,乙10に「光学的カップリング」によるインクタンクの装着位置の誤りの検出の構成として記載されているに等しい事項であるから,当業者であれば,乙9発明①に乙10に開示された上記事項を適用して,本件訂正発明1を容易に想到することができたものである。 (エ) まとめ以上によれば,本件訂正発明1は,当業者が,乙9及び乙10に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,進歩性が欠如している。 イ本件訂正発明2に係る無効理由(進歩性の欠如)本件訂正発明2は,本件出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である乙9及び乙10に記載された発明に基づいて,当業者が容易に想到することができたものであるから,進歩性が欠如し,本件訂正発明2に係る本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 (ア) 本件訂正発明2と乙9に記載された発明との対比本件訂正発明2と乙9記載の液体イ ,本件訂正発明2に係る本件特許には,特許法29条2項に違反する無効理由(同法123条1項2号)がある。 (ア) 本件訂正発明2と乙9に記載された発明との対比本件訂正発明2と乙9記載の液体インク供給システム(以下「乙9発明②」という場合がある。)とを対比すると,次のとおりの相違点があるが,その余の構成は一致する。 (相違点A)「液体インク収納容器」が搭載される側の記録装置が,本件訂正発明2では,「該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光- 29 -部を一つ備え,該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」(構成要件2A3)を有し,「前記受光部は,前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され」た構成(構成要件2E)を有するのに対し,乙9発明②では,これらの構成を有しない点。 (相違点B)本件訂正発明2では,「液体インク収納容器」が「前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部と,前記接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部」(構成要件2D3及び2D4)を有するのに対し,乙9発明②では,このような構成を有しない点。 (相違点C)本件訂正発明2では,「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」構成(構成要件2F)を有するのに対し,乙9発明②では,このような構成を有しない点。 (イ) 容易想到性前記ア(ウ)で述べたのと同 器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」構成(構成要件2F)を有するのに対し,乙9発明②では,このような構成を有しない点。 (イ) 容易想到性前記ア(ウ)で述べたのと同様の理由により,当業者であれば,乙9発明②に乙10に開示された事項(相違点AないしCに係る本件訂正発明2の各構成)を適用して,本件訂正発明2を容易に想到することができたものである。 (ウ) まとめ以上によれば,本件訂正発明2は,当業者が,乙9及び乙10に記載- 30 -された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,進歩性が欠如している。 (2) 原告の主張ア本件訂正発明1に係る無効理由に対し(ア) 相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の各構成の不開示被告主張の本件訂正発明1と乙9発明①との一致点及び相違点は認める。 しかし,乙10には,光通信技術(光学的カップリング)を利用して,プリンタがインクタンクに設けた記憶素子内の情報を読み取るという構成が開示されているだけであって,「光学的カップリング」に関する具体的構成の開示はなく,どのようにしてインクタンクの誤装着を検出するのか,その具体的な構成が何ら記載されていないから,被告主張の技術常識を参酌しても,乙10に相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の各構成の具体的な開示があるということはできない。また,被告が上記技術常識の根拠等として挙げる各文献(乙11,乙12の1,13,24,25等)においても,相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の各構成の具体的な開示はなく,本件訂正発明1の光照合処理に関する記載も示唆もない。 (イ) 乙9と乙10の組合せの動機付けの不存在a 技術的課題の不開示本件訂正発明1の課題は,単なるインクタンクの装着位置の誤り なく,本件訂正発明1の光照合処理に関する記載も示唆もない。 (イ) 乙9と乙10の組合せの動機付けの不存在a 技術的課題の不開示本件訂正発明1の課題は,単なるインクタンクの装着位置の誤りの検出ではなく,共通バス接続方式を採用した場合でも,インクタンクの装着位置の誤りを検出するということにある。このような発明の課題は,乙9及び乙10のいずれにも開示されておらず,それ自体新規な課題であって,本件出願の優先権主張日当時,当業者が容易に想到し得る技術的課題ではなかったものである。 - 31 -b 乙9の「バス接続配線」と乙10の「光学的カップリング」の組合せについての動機の欠如乙10記載の「光通信手段(光学的カップリング)」は,インクタンクとプリンタ本体との間で情報のやり取りを行う通信手段である。 一方,乙9の「バス接続配線」も,インクタンクとプリンタ本体との間で情報のやり取りを行う通信手段である。 このように乙9の「バス接続配線」も,乙10の「光学的カップリング」も,インクタンクとプリンタ本体との間で情報をやりとりする通信手段であるという点で,その目的ないし機能が同じであるから,当業者の技術常識からすれば,いずれか一方を選択することしかあり得えず,これら両通信手段を併用しようとする動機は生じない。 乙9に対して乙10を適用した場合に想到される形態は,乙9の通信手段たる「バス接続配線」を,乙10の通信手段たる「光学的カップリング」に置き換えたものにしかならない。ただし,このような置き換えを行ってしまうと,乙9及び本件訂正発明1の骨格たる「バス接続配線」がなくなってしまうので,両者を組み合わせて本件訂正発明1に想到することには,阻害事由がある。 (ウ) まとめ以上のとおり,乙10には相違点1ないし3に係る本件訂 1の骨格たる「バス接続配線」がなくなってしまうので,両者を組み合わせて本件訂正発明1に想到することには,阻害事由がある。 (ウ) まとめ以上のとおり,乙10には相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の各構成の具体的な開示はなく,また,乙9発明①に乙10の「光学的カップリング」を組み合わせる動機付けが存在しないから,当業者が乙9及び乙10に記載された発明に基づいて本件訂正発明1を容易に想到することができたものということはできない。 したがって,本件訂正発明1は当業者が乙9及び乙10に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから,被告主張の本件訂正発明1に係る無効理由は理由がない。 - 32 -イ本件訂正発明2に係る無効理由に対し被告主張の本件訂正発明2と乙9発明②との一致点及び相違点は認める。 しかし,前記アで述べたのと同様の理由により,本件訂正発明2は当業者が乙9及び乙10に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから,被告主張の本件訂正発明2に係る無効理由は理由がない。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(被告各製品の本件訂正発明1の技術的範囲の属否)について(1) 被告各製品の構造等証拠(甲3ないし12,乙1,2,23(枝番のあるものは枝番を含む。 以下同じ。),検甲1,2)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品1の構造は,別紙1の「第1 図面の説明」及び「第2 構造の説明」記載のとおりであること,被告製品2の構造は,別紙2の「第1 図面の説明」及び「第 2 構造の説明」記載のとおりであることが認められ,これに反する証拠はない。 被告各製品が本件訂正発明1の構成要件1A1,1A2,1A4,1A6,1B及び1Cを充足することは,前記争いのない事実等(4)イ 説明」記載のとおりであることが認められ,これに反する証拠はない。 被告各製品が本件訂正発明1の構成要件1A1,1A2,1A4,1A6,1B及び1Cを充足することは,前記争いのない事実等(4)イ(イ)のとおりであり,また,被告各製品は,「液体インク収納容器」であるから,構成要件1Fを充足する。 (2) 被告各製品についての構成要件1A3,1A5,1D及び1Eの充足性前記(1)認定の被告各製品の構造によれば,被告各製品は,原告製プリンタに設置された受光手段に投光するための赤外線を発する発光部(LED)を有している。 原告は,本件訂正発明1の「光」は赤外線を含むものと解すべきであり,本件訂正発明1の「発光部」(構成要件1A3,1A5,1D及び1E)は,- 33 -赤外線を発する構成のものも含まれるから,被告各製品の発光部は本件訂正発明1の「発光部」に該当し,被告各製品は,構成要件1A3,1A5,1D及び1Eを充足する旨主張する。 そこで,まず,本件訂正発明1の「光」は赤外線を含むものと解すべきかどうかについて判断し,その上で,被告各製品が構成要件1A3,1A5,1D及び1Eを充足するかどうかについて判断することとする。 ア本件訂正発明1の「光」について(ア) 特許請求の範囲の記載本件各訂正発明の特許請求の範囲(本件訂正後の請求項1及び3)の記載は,前記争いのない事実等(3)アのとおりである。 (イ) 本件訂正明細書の記載事項本件訂正明細書(甲24)の「発明の詳細な説明」には,次のような記載がある(この記載中に引用する図1ないし5,17,20,21,29及び30については,別紙明細書図面参照)。 a 「【技術分野】 本発明は,液体インク収納容器,液体インク供給システムおよび液体インク収納カートリッジに関し する図1ないし5,17,20,21,29及び30については,別紙明細書図面参照)。 a 「【技術分野】 本発明は,液体インク収納容器,液体インク供給システムおよび液体インク収納カートリッジに関し,詳しくは,インクジェット記録で用いられるインクタンクのインク残量など,液体インク収納容器の状態に関する報知をLEDなどの発光手段によって行う構成で用いられる液体インク収納容器,液体インク供給システムおよび液体インク収納カートリッジに関するものである。」(段落【0001】)b 「【背景技術】 近年,デジタルカメラの普及に伴って,パーソナルコンピュータ(PC)を介さずにデジタルカメラと記録装置としてのプリンタとを直接接続して印刷する用途(ノンPC記録)が増えつつある。さらにデジタルカメラに着脱可能に用いられる情報記憶媒体であるカードタイプの情報記憶媒体を直接プリンタに装着してデー- 34 -タ転送を行い,印刷を行う形態(ノンPC記録)も増えつつある。一般的にプリンタのインクタンク内のインク残量はPCを介してモニタ上で確認する手法が知られているが,上記ノンPC記録を行う場合においても,PCを介することなくインクタンク内のインク残量を把握したいという要望が高まっていた。つまりユーザが,インクタンク内のインク残量が少ないことが分かれば,例えば,記録を始める前に予め新しいインクタンクに交換し記録の途中でインク量不足のために記録が実質的にできなくなる事態を未然に防止できる。」(段落【0002】),「従来,このようなインクタンクの状態をユーザに報知する構成として,LEDなどの表示素子を用いたものが知られている。特許文献1には,記録ヘッドと一体のインクタンクに2つのLEDが設けられ,これらが2段階のインク残量に応じてそれぞれ点灯することが記載さ 構成として,LEDなどの表示素子を用いたものが知られている。特許文献1には,記録ヘッドと一体のインクタンクに2つのLEDが設けられ,これらが2段階のインク残量に応じてそれぞれ点灯することが記載されている。また,特許文献2にも同様に,インク残量に応じて点灯するランプをインクタンクに設けることが記載されている。同文献では,記録装置で用いる4つのインクタンクそれぞれに上記のランプを設けることも開示されている。」(段落【0003】),「一方,さらなる高画質化の要求から従来の4色(ブラック,イエロー,マゼンタ,シアン)インクに,濃度の薄い淡色マゼンタ,淡色シアンといったインクが使われるようになってきており,さらにはレッド,ブルーインクといったいわゆる特色インクの使用も提案されてきている。このような場合,インクジェットプリンタに対しては7~8個といったインクタンクを個別に搭載することになる。その際に,間違った装着位置へのインクタンクの搭載を防止する機構が必要となってくる。特許文献3には,インクタンクがキャリッジに搭載される際の,キャリッジの搭載部とインクタンク相互の係合の形状をインクタンクごとに異ならせ,これにより,インクタンクが誤った位置- 35 -に装着されることを防止している構成が開示されている。」(段落【0004】)c 「【発明が解決しようとする課題】 上述の特許文献2に記載されているようにインクタンクにランプが設けられている場合であっても,インク残量が少ないとして認識しているインクタンクを本体側制御部が特定する場合には,そのような認識に基づくランプの点灯などのために信号を送るべきインクタンクを特定しなければならない。例えばインクタンクが間違った位置に装着されていた場合には,インクがなくなっていないインクタンクについてインク 識に基づくランプの点灯などのために信号を送るべきインクタンクを特定しなければならない。例えばインクタンクが間違った位置に装着されていた場合には,インクがなくなっていないインクタンクについてインク残量なしと間違って表示する可能性がある。従って,ランプ等表示器の発光制御では,搭載されるインクタンクの搭載位置を特定することが必要となる。」(段落【0006】),「インクタンクの搭載位置を特定する構成としては,上述したように,搭載部とインクタンクが係合する相互の形状を搭載位置ごとに異ならせるものがある。しかしながら,この場合は特に,インクの色ないし種類ごとに異なる形状のインクタンクを製造する必要があり,製造効率やコストの点で不利となる。」(段落【0007】),「他の構成として,インクタンクの電気接点とキャリッジ等の搭載位置における本体側の電気接点とが接続して形成される回路の信号線を,搭載位置ごとに個別のものとする構成が考慮される。例えば,インクタンクのインク色情報をそのインクタンクから読み出し,LEDの点灯などを制御するための信号線を搭載位置ごとに個別のものとすることにより,読み出した色情報がその搭載位置に適合していなければインクタンクが誤って搭載されていることを知ることができる。」(段落【0008】),「しかしながら,このような信号線をインクタンクもしくは搭載位置ごとに個別なものとする構成は,信号線の数を増すものである。特に,上述したように最- 36 -近のインクジェットプリンタなどでは,用いるインクの種類を多くすることにより画質の向上を図るのが一つの傾向としてある。このようなプリンタでは,特に信号線の数が増すことはコストを増すなどの要因となる。一方で,配線数を削減するためにはバス接続といった所謂共通の信号線の構成が有効であるが, るのが一つの傾向としてある。このようなプリンタでは,特に信号線の数が増すことはコストを増すなどの要因となる。一方で,配線数を削減するためにはバス接続といった所謂共通の信号線の構成が有効であるが,単にバス接続のような共通の信号線を用いる構成では,インクタンクもしくはその搭載位置を特定することができないことは明らかである。」(段落【0009】),「本発明はこのような問題を解消するためになされたものであり,その目的とするところは,複数のインクタンクの搭載位置に対して共通の信号線を用いてLEDなどの表示器の発光制御を行い,この場合でもインクタンクなど液体インク収納容器の搭載位置を特定した表示器の発光制御をすることを可能とすることにある。」(段落【0010】)d 「【課題を解決するための手段】 そのために本発明では,複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと,該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と,前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え,該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と,搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し,前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液- 37 -体インク収納容器にお 光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液- 37 -体インク収納容器において,前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と,少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と,前記受光手段に投光するための光を発先する前記発光部と,前記接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部と,を有することを特徴とする。」(段落【0011】),「さらに,本発明は,複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと,該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と,該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え,該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と,搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置と,前記記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器と,を備える液体インク供給システムにおいて,前記液体インク収納容器は,前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と,少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と,前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部と,前記接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と,を有し,前記受光 前記受光部に投光するための光を発光する発光部と,前記接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と,を有し,前記受光部は,前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され,前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納- 38 -容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出することを特徴とする。」(段落【0013】)e 「【発明の効果】 以上の構成によれば,記録装置の本体側の接点(コネクタ)と接続する液体インク収納容器であるインクタンクの接点(パッド)を介して入力される信号と,そのインクタンクの色情報とに基づいて発光部の発光を制御するので,先ず,搭載される複数のインクタンクが共通の信号線によってその同じ制御信号を受け取ったとしても,色情報に合致するインクタンクのみがその発光制御を行うことができ,これにより,インクタンクを特定した発光部の点灯など発光制御が可能となる。次に,このようなインクタンクを特定した発光制御が可能な場合,例えばキャリッジに搭載された複数のインクタンクについて,その移動に伴い所定の位置で順次その発光部を発光させるとともに,上記所定の位置での発光を検出するようにすることにより,発光が検出されないインクタンクは誤った位置に搭載されていることを認識できる。これにより,例えば,ユーザに対してインクタンクを正しい位置に再装着することを促す処理をすることができ,結果として,インクタンクごとにその搭載位置を特定することができる。」(段落【0019】),「この結果,複数のインクタンクの搭載位置に対して共通の信号 置に再装着することを促す処理をすることができ,結果として,インクタンクごとにその搭載位置を特定することができる。」(段落【0019】),「この結果,複数のインクタンクの搭載位置に対して共通の信号線を用いてLEDなどの表示器の発光制御を行い,この場合でもインクタンクなど液体インク収納容器の搭載位置を特定した表示器の発行制御をすることが可能となる。」(段落【0020】)f 「1. 機械的構成 1.1 インクタンク(図1~図5) 図1(a),(b)および(c)は,それぞれ,本発明の第1の実施形態に係る液体収納容器であるインクタンクの側面図,正面図および底面図,図2はその側断面図である。なお,本説明において,インクタ- 39 -ンクの正面とは,ユーザに向き合うことでその操作(着脱操作等)およびユーザへの情報提供(後述するLEDの発光)を可能とする面を言う。」(段落【0022】),「 図3~図5を用い,本実施形態の主要部である基板100の構成および機能について説明する。ここで,図3(a)および(b)は本発明の第1の実施形態に係るインクタンクに配置される基板の機能の概略を説明するための模式的側面図,図4(a)および(b)は,それぞれ,図3の主要部の拡大図およびそのIVb方向断面の矢視図,図5(a)および(b)は,それぞれ,第1の実施形態に係るインクタンクに取り付けられる制御基板100の一例を示す側面図および正面図である。」(段落【0032】),「記録ヘッド105’を備えた記録ヘッドユニット105に一体化されているホルダ150の第1係止部155および第2係止部156に対し,インクタンク1の第1係合部5および第2係合部6がそれぞれ係合することで,インクタンク1がホルダ150に装着され,固定される。またこのとき,ホルダ150に設けられた 5および第2係止部156に対し,インクタンク1の第1係合部5および第2係合部6がそれぞれ係合することで,インクタンク1がホルダ150に装着され,固定される。またこのとき,ホルダ150に設けられた接点(以下コネクタと称す)152と,インクタンクに設けられた基板100の外側に向かって位置する面に設けられた接点としての電極パッド102(図5(b))とが接触し,電気的接続が可能となる。」(段落【0033】),「インクタンク1の内側に向かって位置する基板100の面には,LEDなど可視光を発生する第1発光部101と,この発光部を制御する制御素子103とが設けられており,コネクタ152よりパッド102を介して供給される電気信号により,制御素子103は第1発光部101の発光の制御を行う。なお,図5(a)は,制御素子103を基板100に実装した後に,保護用の封止剤でこれを被覆した状態を示している。また,インクタンクが収納しているインクの色やインク残量などの情報を記憶させておくメモリ素子- 40 -を搭載する場合にも,これを同じ位置に実装して封止剤で被覆することができる。」(段落【0034】),「ここで,上述したように,インクタンク1の底面および正面をなす両面が交わる部分にあって,支持部材3の支持部分の下方には,本実施形態の主要部をなす基板100が配設されている。この配設部位において,インクタンク1には両面をつなぐ斜面が形成されている。従って,第1発光部101が発光すると,その一部は斜面に沿ってインクタンク1の正面側から外に向かって投光される。」(段落【0035】),「かかる配置とした基板100を用いることで,記録装置(ひいてはこれが接続されるコンピュータなどのホスト装置)だけでなく,ユーザに対しても,第1発光部101を兼用してインクタンク1 【0035】),「かかる配置とした基板100を用いることで,記録装置(ひいてはこれが接続されるコンピュータなどのホスト装置)だけでなく,ユーザに対しても,第1発光部101を兼用してインクタンク1に係る所定の情報を直接提示することが可能となる。すなわち,図3(a)に示すように,ホルダ150を搭載するキャリッジの走査範囲の端部にあって図の右上方向に投光される光を受容する位置に受光部を配置し,その部位にキャリッジが位置したときに第1発光部101の発光を制御することで,記録装置側は受光部の受光内容からインクタンク1に係る所定の情報を認識することが可能となる。また,例えば走査範囲の中央にキャリッジを位置させて第1発光部101の発光を制御することで,図3(b)に示すように,ユーザはその発光状態を目視することによりインクタンク1に係る所定の情報を認識することが可能となる。」(段落【0036】),「インクタンク(液体収容容器)1の所定の情報とは,インクタンク1の装着状態の良否(すなわち装着が完全であるか否か),装着位置の適否(インク色に対応して予め定められているホルダ上の装着位置に正しく装着されているか否か),さらにはインク残量の有無(十分なインク量が残っているか否か)などであり,発光の有無や発光の状態(点滅など)によりそれらの情報の- 41 -提示が可能となるのである。発光の制御およびそれに伴う情報提示の態様については,制御系の構成の説明の項において詳述する。」(段落【0037】),「上記基板100ないし第1発光部101の配置および動作に好ましい構成としては,図4(a)および(b)に示すものが挙げられる。すなわち,第1発光部101および制御素子103が設けられている基板100の面に対向するインクタンク1の部分には,第1発光部101により 構成としては,図4(a)および(b)に示すものが挙げられる。すなわち,第1発光部101および制御素子103が設けられている基板100の面に対向するインクタンク1の部分には,第1発光部101により発光された光が第1受光部210やユーザの視界に円滑に到達するようにする目的で,少なくとも光軸(矢印)に沿って空間1Aを形成しておくことが望ましい。また,同じ目的のために,支持部材3の配設位置および形状を適切に定めることで,光軸が遮断されないようにする。さらに,ホルダ150には光軸を確保するための穴(もしくは光透過性の部分)150Hが設けられている。」(段落【0038】),「1.2 変形例(図6~図13) 以上述べた構成は例示であって,第1発光部101を兼用して記録装置およびユーザに対しインクタンク1に係る所定の情報を提示することが可能であれば,適宜の変形を行うことができる。この項ではそのいくつかについて説明する。」(段落【0039】),「以上の各構成においては,ユーザの目や受光部に向かう光軸が積極的に確保されるように,光軸を遮る部材の位置や形状を適切に定めたり,開口や透光性の部分を設けたりすることが好ましい。しかしこれによらずとも,ユーザの目や受光部に光を導く構成を採ることは可能である。」(段落【0046】),「図12(a)および(b)は,そのための構成例を示すものであり,第1発光部101が発する光を所要の位置に向けて導くための光ファイバなどの導光性部材154を配設してある。すなわち,かかる導光性部材154によって,第1受光部210(図12(a))およびユーザの目(図12(b))に対し,- 42 -インクタンク1に係る所定の情報を伝達することが可能となる。」(段落【0047】)g 「図17に示すように,本実施形態のプリンタ200 a))およびユーザの目(図12(b))に対し,- 42 -インクタンク1に係る所定の情報を伝達することが可能となる。」(段落【0047】)g 「図17に示すように,本実施形態のプリンタ200は,記録ヘッドおよびインクタンクを搭載したキャリッジが走査のための移動をして記録を行う機構などプリンタの主要部分が,本体カバー201およびその他のケース部分によって覆われているプリンタ本体と,その前後にそれぞれ設けられる排紙トレイ203と,自動給紙装置(ASF)202とを備えたものである。また,本体カバーを閉じた状態および開いた状態の両方で本プリンタの状態を表示するための表示器,電源スイッチおよびリセットスイッチを備えた操作部213が設けられている。」(段落【0068】),「各インクタンク1のタンクホルダ部を備えた記録ヘッドユニット105には,前述したように,各インクタンクに対応してコネクタが設けられており,それぞれのコネクタは装着されるインクタンク1に設けられている基板のパッドと接触する。これにより,それぞれのLED101について,図25~図27にて後述されるシーケンスに従った点灯ないし点滅の制御が可能となる。」(段落【0072】),「具体的には,上記のタンク交換位置では,それぞれのインクタンク1についてインク残量が少なくなったとき,その該当するインクタンク1のLED101を点灯もしくは点滅させる。また,キャリッジの移動範囲において,上述の回復ユニットが設けられた位置と反対側の端部付近には,受光素子を有した第1受光部210が設けられている。これにより,キャリッジ205の移動に伴ってそれぞれのインクタンク1のLED101がこの受光部210を通過する際にLED101を発光させ,その光を受光したときのキャリッジ205の位置に基づいてキャリ れにより,キャリッジ205の移動に伴ってそれぞれのインクタンク1のLED101がこの受光部210を通過する際にLED101を発光させ,その光を受光したときのキャリッジ205の位置に基づいてキャリッジ205におけるそれぞれのインクタンク1の位置を検出することができ- 43 -る。さらに,LEDの点灯などの制御の他の例として,上記タンク交換位置で,インクタンク1が正しく装着されたときにそのタンクのLED101を点灯させる制御を行う。これらの制御は,記録ヘッドのインク吐出などの制御と同様,フレキシブルケーブル206を介して本体側の制御回路からそれぞれのインクタンクに対して制御データ(制御信号)が送られることによって実行される。」(段落【0073】),「キャリッジ205の移動範囲の一方の端部近傍に設けられる第1受光部210は,インクタンク1のLED101からの発光を受けて,それに応じた信号を制御回路300へ出力する。制御回路300は,後述のように,この信号に基づき,それぞれのインクタンク1のキャリッジ205における位置を判断することができる。また,キャリッジ205の移動経路に沿ってエンコーダスケール209が設けられるともに,キャリッジ205にはエンコーダセンサ211が設けられる。このセンサの検出信号はフレキシブルケーブル206を介して制御回路300に入力し,これにより,キャリッジ205の移動位置を知ることができる。この位置情報は,各記録ヘッド吐出制御に用いられるとともに,図25などにて後述される,インクタンク位置を検出する光照合処理において用いられる。」(段落【0079】)h 「図20に示すように,インクタンク1に対する信号配線は,4本の信号線からなり,また,4つのインクタンク1に共通の信号配線(所謂バス接続)である。すなわち 用いられる。」(段落【0079】)h 「図20に示すように,インクタンク1に対する信号配線は,4本の信号線からなり,また,4つのインクタンク1に共通の信号配線(所謂バス接続)である。すなわち,それぞれのインクタンク1に対する信号配線は,インクタンクにおけるLED101の発光およびその駆動などを行う機能素子群103の動作などの電力供給にかかる電源信号線「VDD」およびアース信号線「GND」と,後述されるように,制御回路300から,LED101の点灯,点滅などの処理に関- 44 -する制御信号(制御データ)などを送るための信号線「DATA」およびそのクロック信号線「CLK」の4本の信号線から構成される。 本実施例においては4本の信号線による説明を行うが,本発明はこれに限定されるものでなく例えばアース信号を別構成で達成することにより「GND」線を省略することも可能である。また「CLK」と「DATA」の信号線を共有して一本で構成することも可能である。」(段落【0081】),「一方,各インクタンク1の基板100には,これら4本の信号線の信号によって動作する制御部103およびそれによって動作するLED101が設けられている。」(段落【0082】),「図21はこれら制御部などが設けられた基板の詳細を示す回路図である。同図に示すように,制御部103は,入出力制御回路(I/O CTRL)103A,メモリーアレイ103BおよびLEDドライバ103Cを有して構成される。入出力制御回路103Aは,本体側の制御回路300からフレキシブルケーブル206を介して送られてくる制御データに応じて,LED101の表示駆動やメモリーアレイ103Bに対するデータの書き込みおよび読み出しを制御する。メモリーアレイ103Bは,本実施形態ではEEPROMの形態のも て送られてくる制御データに応じて,LED101の表示駆動やメモリーアレイ103Bに対するデータの書き込みおよび読み出しを制御する。メモリーアレイ103Bは,本実施形態ではEEPROMの形態のものであり,インク残量,収納するインクの色情報の他,そのインクタンクの固有番号や製造ロット番号などの製造情報等のインクタンク個体情報を記憶することができる。なお,色情報はインクタンクの出荷時または製造時に,その収納しているインクの色に対応して,メモリーアレイ103Bの所定のアドレスに書き込まれる。例えばこの色情報は,図23,図24にて後述されるように,インクタンクの識別情報(個体情報)として用いられ,これにより,インクタンクを特定してメモリーアレイ103Bに対するデータの書き込みやメモリーアレイ103Bからデータの読み出しを行い,また,そのイ- 45 -ンクタンクのLED101の点灯,消灯を制御することが可能となる。メモリーアレイ103Bに書き込まれ,また,読み出されるデータには,例えば,インク残量のデータがある。本実施形態のインクタンクには,前述したようにその底部にプリズムが設けられ,インクの残量が少なくなったときはこのプリズムを介して光学的にその旨を検出することができる。本実施形態では,これに加え,制御回路300は,吐出データに基づいて記録ヘッドごとの吐出数をカウントし,それに基づいてインクタンクごとのインク残量を計算する。そして,この残量情報をそれぞれ対応するインクタンクのメモリーアレイ103Bに書き込み,また,読み出す処理を行う。これにより,メモリーアレイ103Bはその時点のインク残量の情報を保持することができ,この情報は,例えば,上記プリズムを用いたインク残量検出と併用したより精度の高い残量検出に用いられたり,装着されたインク り,メモリーアレイ103Bはその時点のインク残量の情報を保持することができ,この情報は,例えば,上記プリズムを用いたインク残量検出と併用したより精度の高い残量検出に用いられたり,装着されたインクタンクが新しいものか,あるいは一度用いられて再装着されたものであるかなどを判断するために用いられたりする。」(段落【0083】),「LEDドライバ103Cは,入出力制御回路103Aから出力される信号がオンのときLED101に電源電圧を印加するよう動作し,これにより,LED101を発光させる。従って,入出力制御回路103Aから出力される信号がオンの状態にあるとき,LED101は点灯状態となり,上記信号がオフの状態にあるとき,LED101は消灯状態となる。」(段落【0084】),「図23は,上述したメモリーアレイ103Bに対するデータの書き込みおよび読み出しの動作をそれぞれ説明するためのタイミングチャートであり,図24は,LED101の点灯および消灯の動作をそれぞれ説明するタイミングチャートである。」(段落【0086】),「図23に示すように,メモリーアレイ103Bへの書き込みでは,本体側の制御- 46 -回路300からインクタンク1の制御部103における入出力制御回路103Aに対し,信号線DATA(図20)を介して「開始コード+色情報」,「制御コード」,「アドレスコード」,「データコード」の各データ信号が,クロック信号CLKに同期してこの順で送られてくる。「開始コード+色情報」は,その「開始コード」信号によって,一連のデータ信号の始まりを意味し,また,「色情報」信号によってこの一連のデータ信号の対象となっているインクタンクを特定する。なお,ここでのインクの「色」とはY,M,C等のインク色だけでなく濃度の異なるインクをも含むものである。 ,また,「色情報」信号によってこの一連のデータ信号の対象となっているインクタンクを特定する。なお,ここでのインクの「色」とはY,M,C等のインク色だけでなく濃度の異なるインクをも含むものである。」(段落【0087】),「「色情報」は,同図に示すように,インクの色「K」,「C」,「M」,「Y」に対応したコードを有しており,入出力制御回路103Aは,このコードが示す色情報とメモリーアレイ103Bに格納されている自身の色情報とを比較し一致しているときにのみ,それ以降のデータ信号を取り込む処理を行い,一致しないときは,それ以降のデータ信号の取り込みを無視する処理を行う。 これにより,図20に示した共通の信号線「DATA」を介して,本体側からデータ信号をそれぞれのインクタンクに共通に送っても,それに上述の色情報を含めることによってインクタンクを特定することができ,書き込み,読み出し,LEDの点灯,消灯など,その後のデータ信号に基づく処理を,その特定したインクタンクに関してのみ行うことが可能となる。この結果,4つのインクタンクに対して共通の(1本の)データ信号線を介して送信されるデータによってデータの書き込みなどのほか,LEDの点灯,消灯の制御を行うことができ,これらの制御に要する信号線の数を本発明のように少なくすることが可能となる。なお,このような共通の(1本の)データ信号線を用いる構成は,インクタンクの数に限定されずに同じものとすることが- 47 -できることは,以上の説明からも明らかである。」(段落【0088】)i 「光照合処理は,正常に装着されたインクタンクそれぞれが正しい位置に装着されているか否かを判断する処理である。本実施形態では,インクタンクの装着位置について,例えば,インクタンクと装着位置の形状を他のインクのインクタ に装着されたインクタンクそれぞれが正しい位置に装着されているか否かを判断する処理である。本実施形態では,インクタンクの装着位置について,例えば,インクタンクと装着位置の形状を他のインクのインクタンクが装着できないような形状とし,それぞれの色のインクタンクに対応して装着位置を定めるような構成をとらないことから,それぞれの色のインクタンクについて本来の位置でないところに誤って装着される可能性がある。このため,本光照合処理を行い,誤って装着されている場合は,ユーザにその旨を知らせるものである。これにより,特に,インクタンクの形状を色ごとに異ならせることなく,インクタンクの製造の効率化や低コスト化を図ることができる。」(段落【0108】),「図29(a)~(d)および図30(a)~(d)は,この光照合処理を説明する図である。」(段落【0109】),「図29(a)に示すように,先ず,第1受光部210に対して,図中左側から右側へ移動キャリッジ205を開始する。そして,最初に,イエローインクのインクタンク1Yが装着されるべき位置のインクタンクが第1受光部210に対向する位置で,インクタンク1YのLED101を発光させる(図24にて説明したように,実際は点灯し所定時間後消灯すること,以下,本照合処理では同様)。インクタンク本来の正しい位置に装着されているとき,第1受光部210はLED101の発光を受光することができ,制御回路300は,その装着位置にはインクタンク1Yが正しく装着されていると判断する。」(段落【0110】),「キャリッジ205を移動しつつ,同様にして,図29(b)に示すように,マゼンタインクのインクタンク1Mが装着されるべき位置のインクタン- 48 -クが第1受光部210に対向する位置で,インクタンク1MのLED101を発光 つ,同様にして,図29(b)に示すように,マゼンタインクのインクタンク1Mが装着されるべき位置のインクタン- 48 -クが第1受光部210に対向する位置で,インクタンク1MのLED101を発光させる。同図に示す例は,インクタンク1Mが正しい位置に装着されていて第1受光部210はその発光を受光することを示している。順次,図29(b)~(d)に示すように,判断する装着位置を変えながら発光を行って行く。これらの図は,正しい位置に装着されている例を示している。」(段落【0111】),「これに対し,図30(b)に示すように,マゼンタインクのインクタンク1Mが装着されるべき位置にシアンインクのインクタンク1Cが誤って装着されているときは,第1受光部210に対向しているインクタンク1CのLED101は発光せず,別の位置に搭載されているインクタンク1MのLED101が発光する。この結果,このタイミングでは,第1受光部210は受光できないことから,制御回路300は,その装着位置にはインクタンク1M以外のインクタンクが装着されていると判断する。これに対応して,図30(c)に示すように,シアンインクのインクタンク1Cが装着されるべき位置にマゼンタインクのインクタンク1Mが誤って装着されており,第1受光部210に対向しているインクタンク1MのLED101は発光せず,別の位置に搭載されているインクタンク1CのLED101が発光する。」(段落【0112】),「以上説明した光照合処理を行うことにより,制御回路300は本来の位置に装着されていないインクタンクを特定することができる。また,装着されるべき位置に正しいインクタンクが装着されていなかった場合には,その装着位置において,他の3色のインクタンクを順に発光させる制御を行うことによって,その装着位置に誤 することができる。また,装着されるべき位置に正しいインクタンクが装着されていなかった場合には,その装着位置において,他の3色のインクタンクを順に発光させる制御を行うことによって,その装着位置に誤って何色のインクタンクが装着されてしまったかを特定することもできる。」(段落【0113】),「図25において,上述したステップS105の光照合処理の後,ステップS106- 49 -でこの処理が正常終了したか否かを判断する。光照合が正常終了したと判断したときは,ステップS107で,操作部213の表示器を例えばグリーンに点灯して,本処理を終了する。一方,正常の終了でないと判断したときは,ステップS109で操作部213の表示器を例えばオレンジで点滅するとともに,ステップS110で,ステップS105で特定した,本来の正しい位置に装着されていないインクタンクのLED101を,例えば点滅あるいは点灯する。これにより,ステップS108で,ユーザが本体カバー201を開けたとき,本来の正しい位置に装着されていないインクタンクを知ることができ,正しい位置への再装着を促すことができる。」(段落【0114】)(ウ) 検討a 本件訂正発明1の特許請求の範囲(本件訂正後の請求項1)の記載中には,「前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部」との記載があり,「発光部」が発光する「光」は,「受光手段に投光するための光」であると規定しているが,この「光」を特定の領域の波長に限定したり,可視光に限定する旨の文言は存在しない。 加えて,甲18(岩波理化学辞典(第5版))に,「光」は,「可視光線に限定することもあるが,ふつうは紫外線,赤外線をあわせ波長が約1nm~1mmの範囲にある電磁波を光とよぶ。」との記載があること,本件訂正明細書(甲24)の「発明の詳細 ))に,「光」は,「可視光線に限定することもあるが,ふつうは紫外線,赤外線をあわせ波長が約1nm~1mmの範囲にある電磁波を光とよぶ。」との記載があること,本件訂正明細書(甲24)の「発明の詳細な説明」中には,本件訂正後の請求項1の「光」の用語を定義する記載や,この用語を普通の意味とは異なる特定の意味で使用することを説明した記載がないことに照らすならば,本件訂正後の請求項1の「光」は,その文理上,可視光に限定されるものではなく,赤外線を含むものと解される。 b 次に,本件訂正後の請求項1の文言,前記(イ)の本件訂正明細書- 50 -の「発明な詳細の説明」の記載事項及び各図面を総合すれば,本件訂正明細書には,①従来,キャリッジに複数のインクタンクを搭載して使用する記憶装置としてのプリンタにおいては,インクタンクの誤装着を防止するために搭載位置を特定する構成として,インク色に対応するインクタンクの搭載位置を定めた上,搭載部とインクタンクが係合する相互の形状を搭載位置ごとに異ならせ,他のインク色のインクタンクが装着できないようにする構成や,インクタンクの電気接点とキャリッジ等の搭載位置における本体側の電気接点とが接続して形成される回路の信号線を,搭載位置ごとに個別のものとし,この個別の信号線を用いてインクタンクからインク色情報を読み出し,インクタンクが正しい位置に装着されているか否かを検出する構成が提案されていたが,これらの構成では,インク色ごとに異なる形状のインクタンクを製造したり,信号線の配線数を増す必要があり,コスト増の要因となるなどの課題があったこと,②一方で,信号線の配線数を削減するための配線方式としては,複数のインクタンクと記録装置との間に共通の信号配線を用いる共通バス接続方式が有効であるが,共通バス接続方式を採用 などの課題があったこと,②一方で,信号線の配線数を削減するための配線方式としては,複数のインクタンクと記録装置との間に共通の信号配線を用いる共通バス接続方式が有効であるが,共通バス接続方式を採用した場合,全てのインクタンクからの信号が共通の信号配線で送信されてくるため,インクタンクからの信号を受信しただけでは当該インクタンクがキャリッジ内に装着されていることを検出することはできても,その搭載位置を特定することができず,それが正しい搭載位置に装着されているか否かを検出できないという課題があったこと,③本件訂正発明1は,共通バス接続方式を採用しながらも,各インクタンクがインク色に応じてキャリッジの所定の位置に正しく装着されているか否かを検出することを目的とし,上記課題を解決するための手段として,キャリッジに搭載された複数のインクタンクにそれぞれのインク色情報を保持可能な情報部と,本体- 51 -側の記憶装置に設けられた受光部に投光するための光を発光する発光部と,その発光を制御する制御部とを設け,インクタンクが受光部に対向する位置で発光する場合には受光部が受光できるようにし,キャリッジを相対移動させることにより,所定の位置で各インクタンクと受光部とを対向させ,本来装着されるべき位置のインク色のインクタンクを順次発光させ,受光部が受光できたときは当該インク色のインクタンクが本来の正しい搭載位置に装着されていると判断し,受光部が受光できなかったときは受光部に対向する位置には誤ったインク色のインクタンクが装着されていると判断するという「光照合処理」(前記(イ)i)の方法を採用することにより,共通バス接続方式を採用しつつインクタンクの装着位置の誤りを検出するという作用効果を奏するようにした点に技術的意義があることが開示されているものと認 理」(前記(イ)i)の方法を採用することにより,共通バス接続方式を採用しつつインクタンクの装着位置の誤りを検出するという作用効果を奏するようにした点に技術的意義があることが開示されているものと認められる。 そして,上記「光照合処理」は,インクタンクの発光部が発する光が赤外線であっても行うことができること(甲3ないし12)からすると,本件訂正発明1の上記技術的意義に鑑みても,本件訂正発明1の「光」から赤外線を除外すべき理由はない。 c 以上によれば,本件訂正発明1の「光」は,原告が主張するとおり,赤外線を含むものと解すべきである。 (エ) 被告の主張に対する判断被告は,①本件訂正明細書の「発明の詳細な説明」の記載及び図面を参酌すれば,本件訂正発明1の「光」は,ユーザが発光部の発光を認識できる可視光にのみ限定して解釈すべきであること,②原告は,本件前訴において,本件訂正発明1(本件訂正後の請求項1)の「光」は,可視光を意味するとの主張を繰り返し行っていたにもかかわらず,本訴において,この「光」に赤外線も含まれると主張することは,禁反言の法- 52 -理に反し,許されないこと,③当業者である米国特許特許商標庁審査官は,本件訂正発明1の「光」は可視光に限定されると認識していたことを理由に(以下,それぞれを「被告の主張①」などという。),本件訂正発明1の「光」は,可視光に限定して解釈すべきであり,赤外線は含まれない旨主張する。 しかしながら,被告の主張は,以下のとおり理由がない。 a 被告の主張①について被告は,本件訂正明細書の発明の詳細な説明の各記載(段落【0001】ないし【0004】,【0006】ないし【0013】,【0019】,【0020】,【0022】,【0032】ないし【0047】,【0057】,【0058 の発明の詳細な説明の各記載(段落【0001】ないし【0004】,【0006】ないし【0013】,【0019】,【0020】,【0022】,【0032】ないし【0047】,【0057】,【0058】,【0060】,【0061】,【0072】ないし【0074】,【0077】,【0079】,【0103】,【0104】,【0107】ないし【0114】,【0117】ないし【0120】,【0127】,【0130】ないし【0132】,【0138】)及び図面(図3ないし13,18,28,34ないし37)には,本件各訂正発明は,インクタンクの搭載位置のユーザへの「報知」を「発光手段」で行い,そのインクタンクの搭載位置を特定するための「発光手段」としてLEDなどの「表示器」を用い,「表示器」の「発光」によりインクタンクの搭載位置を「ユーザ」に「認識」させ,「ユーザ」に対してインクタンクを正しい位置に再装着することを促す処理を行うものであることが開示され,また,本件訂正明細書に開示された本件各訂正発明の実施例は,全て可視光を用いた実施例であって,不可視光を用いた実施例の記載がないことを参酌すると,本件訂正発明1の「光」とは,インクタンクの搭載位置を「ユーザ」に知らせること(「報知」)を可能にすべく,LEDなどの「表示器」によって発光され,かつ,「ユーザ」がその発- 53 -光を「認識」できる「可視光」のみに限定して解釈すべきである旨主張する。 しかしながら,本件訂正発明1の特許請求の範囲(本件訂正後の請求項1)には,「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置」との記載はあるが,「液体 れたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置」との記載はあるが,「液体インク収納容器」の「発光部」が発光する「光」をユーザに認識させることにより,「液体インク収納容器の搭載位置」をユーザへ報知することを規定した明示の記載や,これを規定したことをうかがわせる記載はない。 もっとも,被告が指摘する本件訂正明細書の発明の詳細な説明の記載及び図面中には,「本発明」の実施例として,インクタンクに設けられたLEDなどの表示器の可視光を発生する発光部が発光することにより,記録装置側は受光部の受光内容からインクタンクに係る所定の情報(装着状態の良否,装着位置の適否,インクの残量等)を認識することが可能となるだけでなく,ユーザがその発光状態を目視することによりインクタンクに係る所定の情報を認識することが可能となり,ユーザに上記情報を直接提示することが可能となることが開示されているが(例えば,前記(イ)f,図3(別紙明細書図面参照)等),上記のとおり,本件訂正後の請求項1には,「発光部」が発光する「光」により「液体インク収納容器の搭載位置」をユーザへ報知することを規定した記載はないことに照らすと,本件訂正発明1の「液体インク収納容器」の「発光部」は,上記実施例のように,インクタンクの発光部が記録装置に対する当該インクタンクに係る所定の情報の提供の提示とユーザに対する上記情報の提供の直接提- 54 -示(報知)の両方を兼用する構成のものに限定されるものと解すべき理由はなく,上記実施例(本件訂正明細書記載の他の同様の実施例を含む。)は,本件訂正発明1の一実施態様を説明したにすぎないものといわざるを得ない。また,本件訂正明 成のものに限定されるものと解すべき理由はなく,上記実施例(本件訂正明細書記載の他の同様の実施例を含む。)は,本件訂正発明1の一実施態様を説明したにすぎないものといわざるを得ない。また,本件訂正明細書には,「発明の効果」(前記(イ)e)として,「例えばキャリッジに搭載された複数のインクタンクについて,その移動に伴い所定の位置で順次その発光部を発光させるとともに,上記所定の位置での発光を検出するようにすることにより,発光が検出されないインクタンクは誤った位置に搭載されていることを認識できる。これにより,例えば,ユーザに対してインクタンクを正しい位置に再装着することを促す処理をすることができ,結果として,インクタンクごとにその搭載位置を特定することができる。」(段落【0019】)との記載があり,「ユーザに対してインクタンクを正しい位置に再装着することを促す処理」をできることが示されているが,このユーザに対する「促す処理」の手法がインクタンクの「発光部」それ自体によってされなければならないとする記載はなく,一般的に知られているプリンタと接続したPC(パソコン)を介してそのモニタ上で確認する手法(段落【0002】)や,プリンタ本体の表示器(段落【0068】)などで表示する手法が除外されるべき理由はない。 さらに,被告は,「表示」とは,「はっきり表に現れた形で示すこと」をいうから(乙16),LEDなどの「表示器」がユーザに報知するために行う「発光」が可視光を発することを意味することは自明であり,また,本件訂正後の請求項1には「光らす」との記載があるところ,「光る」とは「ぴかっと光を放つ。」の意であり(広辞苑(第五版)),不可視光が「ぴかっと光を放つ。」わけはないから,特許請求の範囲の記載自体からも「光」が可視光のみを意味する旨主張す あるところ,「光る」とは「ぴかっと光を放つ。」の意であり(広辞苑(第五版)),不可視光が「ぴかっと光を放つ。」わけはないから,特許請求の範囲の記載自体からも「光」が可視光のみを意味する旨主張す- 55 -るが,いずれも独自の見解であって,採用することはできない(なお,広辞苑(第六版)には,「光」とは,「目に感ずる明るさ。目を刺激して視覚を起こさせる物理的原因。その本質は可視光線を主に赤外線・紫外線をふくめ,波長が約1ナノメートルから1ミリメートルの電磁波。」を意味するとの記載があり,「光」には,可視光線以外の赤外線が含まれることが示されている。)。 したがって,被告の上記主張は,理由がない。 b 被告の主張②について(a) 被告は,原告は,本件前訴において,訴状(乙3の5頁4行~8行,16頁12行~末行,37頁末行~38頁12行,38頁26行~39頁12行),平成21年2月26日付け「原告第1主張書面」(乙4の6頁27行~7頁3行),同年5月18日付け「原告第2準備書面」(乙5の7頁21行~27行),同年7月31日付け「原告第3準備書面」(乙6の9頁22行~29行,10頁6行~27行,26頁12行~19行,27頁25行~28頁1行),同年9月16日付け「原告第4準備書面」(乙7の5頁15行~18行)及び同年10月9日付け「原告第5準備書面」(乙8の11頁末行~12頁17行)をもって,前訴被告製品との対比とは関係なく,本件特許の有効性を議論する中で,設定登録時の請求項1あるいは本件訂正後の請求項1の「光」とは,可視光を意味するとの主張を繰り返し行っていたにもかかわらず,本訴において,本件訂正後の請求項1の「光」に赤外線も含まれると主張することは,禁反言の法理に照らし,許されない旨主張する。 しかしながら,まず,被告 の主張を繰り返し行っていたにもかかわらず,本訴において,本件訂正後の請求項1の「光」に赤外線も含まれると主張することは,禁反言の法理に照らし,許されない旨主張する。 しかしながら,まず,被告が指摘する本件前訴の訴状の記載箇所は,本件訂正前の明細書(甲2)記載のインクタンクの発光部が可視光を発する実施例の記載に基づいて,設定登録時の請求項1及び- 56 -5に係る各発明を利用する態様を説明したものであり,その中には,インクタンクの発光部の制御(発光,点滅)によりユーザー(ユーザ)に対してインクタンクの情報を分かりやすく提供することを可能にした旨の記載があるが,上記記載箇所の文言から,設定登録時の請求項1及び5の「光」の用語を可視光に限定する趣旨を明示したことを読み取ることはできないし,また,前訴被告製品は,上記実施例と同様に,可視光を発するインクタンクであったこと(争いがない。)に照らすならば,上記記載をもって,そのような限定解釈をすべきことを原告が主張したものと解することはできない。 次に,被告が指摘する「原告第1主張書面」ないし「原告第5準備書面」の記載箇所は,被告が本件前訴で主張した本件特許の無効理由に対する原告の反論が記載された部分であり,その中には,設定登録時の請求項1及び5に係る各発明あるいは本件各訂正発明が,被告主張の引用文献記載の発明とは異なり,インクタンクの位置情報等をインクタンク自体の発光によってユーザーに直接的に通知するという機能を可能とした旨の記載や,ユーザーへの報知も発光部によって実現する機能を有している旨の記載がある。例えば,「原告第3準備書面」(乙6)中には,「乙第11号証と乙第12号証」(本訴乙29及び30)は,「いずれも,インクタンクに設けた標識手段を光学的に読み取る技術を開示している る旨の記載がある。例えば,「原告第3準備書面」(乙6)中には,「乙第11号証と乙第12号証」(本訴乙29及び30)は,「いずれも,インクタンクに設けた標識手段を光学的に読み取る技術を開示している。」,「光の使用という点だけが共通点であって,インクタンクには何らの電気的な制御も行われない。本件特許発明では,インクタンクとバス接続し,インクタンクの状態を把握するなどの高度の制御を実現しつつ,その配線と制御機能に,発光/受光部を加えることによって,インクタンクの誤装着検知を行い,さらにユーザーへの報知も発光部によって実現するという一連の機能を可能にしている。」(以上,- 57 -26頁12行~19行)との記載がある。他方で,「原告第3準備書面」(乙6)中には,「訂正請求項1及び3において明記されたように,インクタンクに発光手段を設け,キャリッジに搭載されて移動するインクタンクと対向し,インクタンクの発光を受光し得る(必要な強度で受光し得る)位置に受光手段を設ける。キャリッジが移動すると,各インクタンクと受光手段の位置関係が変動するので,例えば,各インクタンクが,受光手段の正面に来たときに発光させるようにすると,予定どおりに発光されたインクタンクは,正しい位置に取り付けられていること及び発光機能が正常であることが確認される。予定どおりに受光しない場合には,当該インクタンクの発光機能が故障しているか,または,装着位置が誤っていることが認識される。何らかの異常が検知された場合には,利用者に報知し,印刷を開始する前に,インクタンクの発光機能や装着状態を正常のものとすることができる。」(9頁6行~17行),「この手段を設けることによって,構造が簡易で安価なバス接続を使用する利益を享受しながら,あたかも全部のインクタンクにつき個別の配線を 状態を正常のものとすることができる。」(9頁6行~17行),「この手段を設けることによって,構造が簡易で安価なバス接続を使用する利益を享受しながら,あたかも全部のインクタンクにつき個別の配線を設けたのと同じように,インクタンクの位置を含む情報を取得し,かつ,発光などの動作を制御することができるようになった。」(9頁18行~21行),「このように,多様な利用価値を有しているけれども,本件特許発明の構成が備える最も重要な機能は,各インクタンクを所定の位置(例えば受光手段の正面位置)で発光させることにより,インクタンクが正しい位置に搭載され,かつ正しく機能していることを確認できることである。この本件特許発明の特徴は,被告引用のいずれの公知文献にも記載されておらず,また,どのように公知文献を組み合せても到達できるものではない。」(9頁末行~10頁5行)との記載部分があり,これらの- 58 -記載部分に照らすならば,原告は,本件前訴において,「本件特許発明の構成が備える最も重要な機能」は,「各インクタンクを所定の位置(例えば受光手段の正面位置)で発光させることにより,インクタンクが正しい位置に搭載され,かつ正しく機能していることを確認できること」,すなわち,「光照合処理」(前記(ウ)b)を採用した点にあり,この点が,設定登録時の請求項1及び5に係る各発明あるいは本件各訂正発明と被告主張の引用文献記載の発明との最も重要な相違点であると主張していたものと認められ,「ユーザーへの報知も発光部によって実現する機能」は,「多様な利用価値」の一つとして付随的な相違点として主張していたにすぎないものとうかがわれる。 したがって,被告が指摘する「原告第1主張書面」ないし「原告第5準備書面」の記載箇所をもって,原告が,本件前訴において,本件訂正 付随的な相違点として主張していたにすぎないものとうかがわれる。 したがって,被告が指摘する「原告第1主張書面」ないし「原告第5準備書面」の記載箇所をもって,原告が,本件前訴において,本件訂正後の請求項1及び3の「光」の用語を可視光に限定して解釈すべきことを明示していたということはできないし,また,このような限定解釈を前提に被告が本件前訴で主張した本件特許の無効理由を回避しようとしたということもできない。 以上によれば,原告が本訴において本件訂正後の請求項1の「光」に赤外線も含まれると主張することは禁反言の法理に照らし許されないとの被告の上記主張は,理由がない。 (b) また,被告は,原告が,本件前訴において,「本件特許発明の作用効果」としてユーザへの可視光による報知を一貫して主張しておきながら,前訴和解の成立後に,かかる作用効果を奏さない被告各製品も本件訂正発明1の技術的範囲に属すると主張することは,前訴和解の成立の経緯からも,禁反言の法理及び信義則に反する旨主張する。 - 59 -しかしながら,前記(a)で述べたのと同様の理由により,被告の上記主張は理由がない。 c 被告の主張③について被告は,当業者というべき米国特許商標庁審査官は,米国715発明の特許出願の審査手続においてした特許許可通知(乙21の1)の許可理由中で,本件特許の関連特許である米国881特許のインクタンクは可視光を利用するものと認定した上で,米国881特許を含む先行技術は,非可視光を利用する発明を含まず,可視光を利用するものであるから,米国715発明の請求項11に係る発明には特許性があると判断しており,このことは,当業者が,本件訂正発明1の「光」は可視光に限られるとの認識を有していることを意味する旨主張する。 しかしながら,乙21の1 明の請求項11に係る発明には特許性があると判断しており,このことは,当業者が,本件訂正発明1の「光」は可視光に限られるとの認識を有していることを意味する旨主張する。 しかしながら,乙21の1は,米国特許商標庁審査官が日本で成立した本件特許に係る特許発明に関する見解を示したものではないから,被告の上記主張は,採用することができない。 (オ) 小括以上のとおり,本件訂正発明1の「光」は赤外線を含むものと解すべきであるから,本件訂正発明1の「発光部」(構成要件1A3,1A5,1D及び1E)には,赤外線を発する構成のものも含まれるというべきである。 イ構成要件1A3,1A5,1D及び1Eの充足性被告各製品の発光部(LED)は,原告製プリンタに設置された受光手段に投光するための赤外線を発するものであるが,本件訂正発明1の「発光部」は,赤外線を発する構成のものも含まれるから(前記ア(オ)),本件訂正発明1の「発光部」(構成要件1A3,1A5,1D及び1E)に該当する。 - 60 -そして,被告各製品を原告製プリンタに装着した場合,「光照合処理」が行われ,被告各製品がキャリッジ上の正しい搭載位置に搭載されているか否かを検出することができること(甲3ないし12)及び前記(1)の被告各製品の構造を総合すれば,被告各製品は,本件訂正発明1の構成要件1A3,1A5,1D及び1Eを充足するものと認められる。 (3) まとめ以上によれば,被告各製品は,本件訂正発明1の構成要件を全て充足するから,本件訂正発明1の技術的範囲に属するものと認められる。 2 争点2(本件訂正発明2に係る本件特許権の間接侵害の成否)について(1) 被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタが,本件訂正発明2の構成要件2A1,2A2,2A4,2 認められる。 2 争点2(本件訂正発明2に係る本件特許権の間接侵害の成否)について(1) 被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタが,本件訂正発明2の構成要件2A1,2A2,2A4,2B,2D1及び2D2を充足することは,前記争いのない事実等(4)イ(ウ)のとおりである。 そして,前記1で述べたのと同様の理由により,被告各製品の発光部(LED)は本件訂正発明2の「発光部」(構成要件2D3,2D及び2F)に該当し,被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタは,光照合処理(前記1(2)ア(ウ)b)を行い,被告各製品がキャリッジ上の正しい搭載位置に搭載されているか否かを検出することができるから,構成要件2A3,2D3ないし2Fを充足する。 また,被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタは,「液体インク供給システム」であるから,構成要件2C及び2Gを充足する。 以上によれば,被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタは,本件訂正発明2の構成要件を全て充足し,その技術的範囲に属する。 (2) 以上のとおり,被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタは,本件訂正発明2の技術的範囲に属するところ,被告各製品は,物の発明である本件訂正発明2の「その物の生産に用いる物」であって,共通バス接続方式を採用しつつも,インクタンクの搭載位置間違いを検出するという本件訂- 61 -正発明2による「課題の解決に不可欠なもの」に該当するといえるから,被告による被告各製品の輸入及び販売について,特許法101条2号の間接侵害が成立するというべきである。 3 争点3(本件特許権に基づく権利行使制限の抗弁の成否)について被告は,本件各訂正発明は,本件出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である乙9(特開2002-370 立するというべきである。 3 争点3(本件特許権に基づく権利行使制限の抗弁の成否)について被告は,本件各訂正発明は,本件出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である乙9(特開2002-370378号公報)及び乙10(特開平2-279344号公報)に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであって,本件各訂正発明に係る本件特許には,特許法29条2項に違反する進歩性欠如の無効理由があり,特許無効審判により無効にされるべきものであるから,同法104条の3第1項の規定により,原告は,本件各訂正発明に係る本件特許権を行使することができない旨主張する。 (1) 本件訂正発明1に係る無効理由の有無ア乙9の記載事項等(ア) 乙9には,次のような記載がある(この記載中に引用する図2については,別紙刊行物図面参照)。 a 「【請求項11】 識別情報を格納する記憶装置を備える印刷記録材容器が複数装着される印刷装置であって,前記複数の印刷記録材容器に備えられた各記憶装置をバス接続にて接続する信号線と,前記印刷記録材容器の交換要求を検出する交換要求検出手段と,前記印刷記録材容器の交換完了を検出する交換完了検出手段と,前記複数の印刷記録材容器が全て装着されているか否かを判定する装着判定手段と,前記複数の印刷記録材容器が全て装着されていると判定された場合には,前記信号線を介して前記各記憶装置と通信できるか否かを判定する通信判定手段と,前記各記憶装置と通信できないと判定された場合には,前記識別情報に基づいて,通信できなかった記憶装置を備える印刷記録材容器を特定する第1の印刷記録材容器特定手段とを備- 62 -える印刷装置。」b 「【発明の属する技術分野】 本発明は,バス接続されている記憶装置を備えた印刷記録材容器が複数個用い る印刷記録材容器を特定する第1の印刷記録材容器特定手段とを備- 62 -える印刷装置。」b 「【発明の属する技術分野】 本発明は,バス接続されている記憶装置を備えた印刷記録材容器が複数個用いられる場合に,印刷記録材容器の有無を検出する技術に関する。」(段落【0001】)c 「【従来の技術】 記憶装置を備える印刷記録材容器,例えば,インクカートリッジが実用化されている。記憶装置には,例えば,印刷記録材(インク)の量に関するデータ,インクの種類に関するデータ,インクカートリッジの製造年月日情報等が格納されている。カラープリンタでは,通常,少なくともシアンインク,マゼンタインク,イエロインク,ブラックインクの4色が用いられる。したがって,ブラックインクカートリッジとカラーインクカートリッジといった2個のインクカートリッジ,または各インク色毎に4個のインクカートリッジがプリンタに装着される。」(段落【0002】),「また,インクカートリッジに備えられた各記憶装置と制御回路とを接続する信号線数を低減するために,各記憶装置を識別するための信号線を廃止し,共通のバスを用いて各記憶装置を接続するバス接続の技術が知られている。この技術では,バス接続されている各記憶装置を特定(識別)するために,各記憶装置に対してユニークに割り当てられた識別子が利用される。」(段落【0003】)d 「【発明が解決しようとする課題】 しかしながら,バス接続形式では,インクカートリッジの取り外しは検出できるものの,複数のインクカートリッジが同時に取り外された場合には,どのインクカートリッジが取り外されたかを特定することができないという問題があった。さらに,インクカートリッジに備えられた各記憶装置とプリンタの制御回路との通信が正常に行われない場合には,いずれの どのインクカートリッジが取り外されたかを特定することができないという問題があった。さらに,インクカートリッジに備えられた各記憶装置とプリンタの制御回路との通信が正常に行われない場合には,いずれの記憶装置(インクカートリッジ)に異常が発生しているか報知されず,ユー- 63 -ザは全てのインクカートリッジを脱着して確認しなければならなかった。」(段落【0004】),「本発明は,上記問題を解決するためになされたものであり,バス接続されている記憶装置を備える印刷記録材容器が印刷装置に複数装着される際に,印刷記録材容器に発生している通信異常を検出し,報知することを目的とする。また,いずれの印刷記録材容器が装着されていないかを検出することを目的とする。さらに,記憶装置と印刷装置との通信が正常に行われない場合に,いずれの印刷記録材容器に備えられている記憶装置が異常であるかを検出することを目的とする。」(段落【0005】)e 「本発明の第3の態様に係る印刷装置は,複数の印刷記録材容器が全て装着されている場合に,信号線を介して各記憶装置と通信できるか否かを判定し,各記憶装置と通信できないと判定された場合には,識別情報に基づいて,通信できなかった記憶装置を備える印刷記録材容器を特定するので,いずれの印刷記録材容器に備えられている記憶装置が異常であるかを検出することができる。また,正常に通信を実行することができない印刷記録材容器を報知する構成を備えれば,ユーザは,全ての印刷記録材容器について脱着を繰り返すことなく,一見して,通信を正常に行うことのできない印刷記録材容器を識別することができる。」(段落【0019】)f 「本実施例に係る印刷記録材容器の異常検出装置は,インクジェット式カラープリンタ(印刷装置)10に適用されている。」(段落【 い印刷記録材容器を識別することができる。」(段落【0019】)f 「本実施例に係る印刷記録材容器の異常検出装置は,インクジェット式カラープリンタ(印刷装置)10に適用されている。」(段落【0032】),「カラープリンタ10は,…キャリッジ11に搭載された印字ヘッドIH1~IH6を駆動してインクの吐出およびドット形成を行う機構と,このキャリッジ11をキャリッジモータ12によってプラテン13の軸方向に往復動させる機構と,紙送りモータ14によって印刷用のカット紙Pを搬送する機構と,制御回路30とか- 64 -ら構成されている。」(段落【0033】),「キャリッジ11にはインクカートリッジCA1~CA6が装着されている」(段落【0034】)g 「次に,図2および図3を参照してインクカートリッジに備えられている記憶装置と制御回路30(パーソナルコンピュータPC)との接続状態について説明する。図2はキャリッジ11上に装着されているインクカートリッジCA1~CA6と制御回路との接続状態を概略的に示す説明図である。」(段落【0036】),「各記憶装置21~26は,既述のように,インクジェットプリンタ用の6色のインクカートリッジCA1~CA6それぞれ備えられている。また,本実施例では,記憶装置として不揮発的に記憶内容を保持すると共に記憶内容を書き換え可能なEEPROMを用いた。各記憶装置21~26は,その内部に,識別情報を格納する記憶素子(メモリアレイ),送信されてきた識別情報と記憶素子内に格納されている識別情報とを比較するIDコンパレータ,命令コードを解析するオペレーションデコーダ,アドレス位置をカウントアップするアドレスカウンタ,記憶素子に対する読み出し/書き込みを制御するI/Oコントローラ等を備えている。」(段落【0037】), 令コードを解析するオペレーションデコーダ,アドレス位置をカウントアップするアドレスカウンタ,記憶素子に対する読み出し/書き込みを制御するI/Oコントローラ等を備えている。」(段落【0037】),「各記憶装置21~26内の記憶素子に格納されている識別情報は,それぞれインクカートリッジCA1~CA6内に収容されているインク色を識別するための識別情報である。各記憶装置21~26は,制御回路30から識別情報が送信されてくると送信されてきた識別情報と自己の識別情報とを比較解析し,解析した識別情報が記憶素子内に格納されている識別情報と一致する場合には,アクセス許可の応答信号を制御回路30に対して送り返す。これによって,制御回路30は,アクセスを所望するインクカートリッジCA1~CA6に対して選択的にアクセスする- 65 -ことができる。」(段落【0038】),「各記憶装置21~26のデータ信号端子DT,クロック信号端子CT,リセット信号端子RTは,データバスDB,クロックバスCB,リセットバスRBを介してそれぞれ接続されている。」(段落【0039】)h 「制御回路30は,CPU31を介して,クロック信号生成機能,リセット信号生成機能,電源監視機能,電源回路,データ記憶回路および各回路を制御する制御機能を実現する制御装置であり,記憶装置21~26に対するアクセスを制御する。制御回路30は,カラープリンタ10の本体側に配置されており,電源がオンされると,データ信号線DL記憶装置21~26から,インク消費量,インクカートリッジの装着時間といったデータを取得しデータ記憶回路に記憶する。 また,電源がオフされる際には,データ信号線DLを介して記憶装置21~26に対して,それぞれインク消費量,インクカートリッジの装着時間といったデータを書き込む。 タを取得しデータ記憶回路に記憶する。 また,電源がオフされる際には,データ信号線DLを介して記憶装置21~26に対して,それぞれインク消費量,インクカートリッジの装着時間といったデータを書き込む。」(段落【0042】),「制御回路30は,記憶装置21~26に対してアクセスする場合には,リセット信号生成回路に対してリセット信号RSTの生成を要求する。制御回路30は,インクカートリッジCAの装着の有無,通信の状態を検出する際には,インクカートリッジCA1~CA6に対応する識別情報を順次,データ信号線DL上に送出する。これに対して,アクセスを所望するインクカートリッジCAが決まっている場合には,アクセスを所望するインクカートリッジCAの識別情報が先頭列に格納されているデータ列をデータ信号線DL上に送出して,各インクカートリッジCA1~CA6の記憶装置21~26に送信する。」(段落【0043】)(イ) 本件訂正発明1と乙9記載の液体インク収納容器(乙9発明①)との間には,次のとおりの相違点があるが,その余の構成が一致すること- 66 -は,争いがない。 (相違点1)「液体インク収納容器」が搭載される側の記録装置が,本件訂正発明1では,「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え,該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」(構成要件1A3)を有し,「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する 記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」構成(構成要件1A5)を有するのに対し,乙9発明①では,これらの構成を有しない点。 (相違点2)本件訂正発明1では,「液体インク収納容器」が「前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部」(構成要件1D)を有するのに対し,乙9発明①では,このような構成を有しない点。 (相違点3)本件訂正発明1では,「液体インク収納容器」の「制御部」が「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する」構成(構成要件1E)を有するのに対し,乙9発明①では,このような構成を有しない点。 イ乙10の開示事項被告は,相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の各構成は,本件出願の優先権主張日当時における技術常識を参酌することにより当業者が乙- 67 -10に記載されている事項から導き出せる事項であるから,乙10に記載されているに等しい事項である旨主張するので,以下において検討する。 (ア) 乙10には,次のような記載がある(この記載中に引用する第2図については,別紙刊行物図面参照)。 a 「〔発明の技術分野〕 本発明はインクジェット印刷ヘッド等の印刷アッセンブリーに関し,さらに具体的には,かかるアッセンブリーをそれらを用いる印刷装置に特性化する技術に関する。」(1頁右欄13行~17行)b 「カラー印刷システムのもう一つの欠点は,少なくとも構成色に対し別個の印刷ヘッドを用いるものにおいては,プリンター内部で印刷ヘッドが不注意から誤った位置に取りつけられる事である。もし 17行)b 「カラー印刷システムのもう一つの欠点は,少なくとも構成色に対し別個の印刷ヘッドを用いるものにおいては,プリンター内部で印刷ヘッドが不注意から誤った位置に取りつけられる事である。もしマゼンタのインクがあるべきところにシアンのインクの印刷ヘッドが位置していれば,印刷されたものは不良となろう。」(2頁右下欄1行~7行)c 「〔発明の目的〕 本発明は,従来のインクジェット印刷システムにおける以上の欠点またはその他の欠点を,印刷ヘッドを特性化するデータを記憶できる記憶素子を各印刷ヘッドに付随させて提供することによって解決することを目的とする。」(2頁右下欄8行~13行)d 「〔発明の概要〕 本データは印刷ヘッドの本性,あるいはその動作特性の一つまたはそれ以上を特性化することが可能である。このような動作特性には,印刷ヘッド内のインクの色,量あるいは印刷ヘッド本体上のオリフィス板の位置などを含むことができる。このデータは印刷ヘッドから読み取ることができ,所望に応じて使用または表示できる。」(2頁右下欄14行~3頁左上欄1行)e 「〔発明の実施例〕 第1図乃至第3図は,一つまたはそれ以上の- 68 -印刷アッセンブリー12,各印刷アッセンブリーに付随する記憶素子14…を備えた本発明の実施例による印刷装置10を示す。」(3頁左上欄13行~18行)f 「印刷ヘッド12のハウジングには,記憶素子14が取りつけてあり,この記憶素子は,たとえば,磁性媒体片,半導体メモリー,レーザーによる書込み読取りの可能な光学媒体等によって構成される。このメモリーには印刷ヘッドに関するデータが記憶される。かかる情報は,印刷ヘッドの本性(製造日,製造場所,ロット番号,シリアル番号,その他),あるいは印刷ヘッドのある種の動作特性(オリフィス る。このメモリーには印刷ヘッドに関するデータが記憶される。かかる情報は,印刷ヘッドの本性(製造日,製造場所,ロット番号,シリアル番号,その他),あるいは印刷ヘッドのある種の動作特性(オリフィスのアライメント,インク色,インクの液位,動作周波数,インクの希釈度,その他)を特性化する。このデータは印刷ヘッドから読み取られ,所望に応じ使用または表示されうる。」(3頁右上欄13行~左下欄4行)g 「図示した実施例では,この更新はキャリッジ34の通路近傍に取りつけられ印刷ヘッドがその位置を通過する都度印刷ヘッドの磁気片メモリー14を読み書きする磁気読取/書込みヘッド44によって行われる。」(3頁右下欄7行~11行),「好適には,プリンター10が電源投入される都度,印刷ヘッド12がこの読取/書込みヘッド44を通過し,印刷ヘッドの磁気片メモリー上のインクの液位のデータが読みとられるのが望ましい。」(3頁右下欄11行~15行)h 「本発明は印刷ヘッド上の磁気片メモリーに言及しつつ説明されてきたが,他の記憶素子も容易に採用されうる。」(6頁右上欄4行~6行),「また,印刷ヘッドとプリンターの間のデータ通信は,読取/書込みヘッドによってなされる必要はない。かわりに,光学的,あるいは無線のカップリング等,他の送信技術を用いることもできる。」(6頁右上欄10行~14行)- 69 -i 「〔発明の効果〕 以上説明したように,本発明を用いることにより,オリフィス板のミスアラインメントを簡単に補償でき,また,インク切れに関する警報も簡単にユーザーに与えることができる。さらに,従来のような印刷ヘッドの取り付け位置の誤りによる印刷不良も簡単に防止することができる。」(6頁左下欄8行~14行)(イ) 乙10の上記記載事項及び第2図を総合すれば,乙1 ことができる。さらに,従来のような印刷ヘッドの取り付け位置の誤りによる印刷不良も簡単に防止することができる。」(6頁左下欄8行~14行)(イ) 乙10の上記記載事項及び第2図を総合すれば,乙10には,インク色に応じて別個の印刷ヘッド(印刷ヘッド12)を用いた印刷装置(プリンター1)において,各印刷ヘッド12に,インク色に関するデータが記憶された記憶素子14(例えば,磁気片メモリー14)をそれぞれ取り付けるとともに,各印刷ヘッド12が装着されたキャリッジ34の通路近傍に磁気読取/書込みヘッド44を取り付け,キャリッジ34の移動により,各印刷ヘッド12と磁気読取/書込みヘッド44を相対移動させ,所定の位置で磁気読取/書込みヘッド44が対向する位置にある印刷ヘッド12の記憶素子14からインク色情報を読み取とることにより,各印刷ヘッドとプリンター1との間のデータ通信を行い,各印刷ヘッド12が誤装着されているか否かを検出する構成が開示されていることが認められる。 加えて,乙10の「印刷ヘッドとプリンターの間のデータ通信は,読取/書込みヘッドによってなされる必要はない。かわりに,光学的,あるいは無線のカップリング等,他の送信技術を用いることもできる。」(前記(ア)h)との記載によれば,乙10には,乙10記載の印刷装置において,磁気片メモリー14を読み書きする磁気読取/書込みヘッド44を用いる代わりに,「光学的カップリング」によるデータ送信技術を用いて,各印刷ヘッドと印刷装置との間の通信を行うことにより,各印刷ヘッドが誤装着されているか否かを検出することができることが示唆されているものいえる。 - 70 -しかしながら,乙10には,「光学的カップリング」による印刷ヘッド(インクタンク)の装着位置の誤りを検出する具体的構成の記載がな 出することができることが示唆されているものいえる。 - 70 -しかしながら,乙10には,「光学的カップリング」による印刷ヘッド(インクタンク)の装着位置の誤りを検出する具体的構成の記載がなく,しかも,乙10記載の印刷装置において,磁気読取/書込みヘッド44を用いる代わりに,「光学的カップリング」によるデータ送信技術を採用しただけでは,「光学的カップリング」を構成する受光素子と対向する位置にある印刷ヘッド12を発光させる構成となるにすぎず,「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部」を「光らせ」たり,「その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」構成(構成要件1A5)や,このような「発光部の発光を制御する」構成(構成要件1E)とはならないことに照らすならば,乙10において,相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の各構成が開示されているものと認めることはできない。 また,乙10記載の印刷装置は,複数のインクタンクと記録装置との間に共通の信号配線を用いる共通バス接続方式を採用した構成のものではないことに照らすならば,乙10の上記記載部分は,本件訂正発明1のように共通バス接続方式を採用した上で,「光学的カップリング」による印刷ヘッド(インクタンク)の装着位置の誤りを検出することができることを示唆するものと認めることもできない。 (ウ) これに対し被告は,乙12の1(米国特許第5567063号明細書),乙13(特許第2706849号公報),乙24(国際公開WO2002/040275号再公表特許公報),乙25(特開昭57-6782号公報)に記載された技術常識を参酌することにより,相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の各構成は,乙1 ,乙24(国際公開WO2002/040275号再公表特許公報),乙25(特開昭57-6782号公報)に記載された技術常識を参酌することにより,相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の各構成は,乙10記載の「光学的カップリング」の構成として把握することができるから,乙10に記載されているに等しい旨主張する。 - 71 -しかしながら,被告の主張は,以下のとおり理由がない。 a 乙12の1の記載事項乙12の1(乙12の2は,その訳文)の「図3(b)は,発光ダイオード30によりデータを送信し,光センサ素子31により受信する光学的方法を示すものである。」(訳文4頁8行~10行)との記載及び「図3(b)」(FIG.3b)(別紙刊行物図面参照)によれば,乙12の1には,発光素子としての発光ダイオードによりデータを送信し,受光素子としての光センサ素子により受信するという,光学的方法によるデータの送受信方法が開示されていることが認められる。 したがって,乙12の1には,被告が主張するように,発光素子としての発光ダイオードと受光素子としての光センサ素子によりデータの送信を行う光学的カップリングが開示されているといえる。 しかし,他方で,乙12の1は,「コードレスプリンタヘッド制御システム」に関するものであって,乙12の1には,共通バス接続方式を採用した場合における上記光学的方法によるデータの送受信方法の適用については,記載も示唆もない。 b 乙13の記載事項(a) 乙13には,次のような記載がある(この記載中に引用する第2図については,別紙刊行物図面参照)。 ① 「【請求項1】 発光素子と,受光素子と,外部制御装置からの1本の信号ラインに接続され前記発光素子又は受光素子の駆動を制御する駆動制御素子とを同一パツケージ内に持ち,入 別紙刊行物図面参照)。 ① 「【請求項1】 発光素子と,受光素子と,外部制御装置からの1本の信号ラインに接続され前記発光素子又は受光素子の駆動を制御する駆動制御素子とを同一パツケージ内に持ち,入力信号を発光素子にて一旦光に変換し,この光を受光素子で再び電気信号に変換して出力する。信号の入出力を行う部位を複数箇所有する情報機器に使用される光結合装置であつて,前記駆動制御素子に,識別符号を記憶する記憶手段と,外部制御装置より識別符- 72 -号が入力されたとき,その識別符号が前記記憶手段に記憶された自己の識別符号と一致しているか否かを判別する判別手段と,該判別手段が自己の識別符号と一致していると判別したとき,発光素子又は受光素子を駆動させる駆動手段とが設けられたことを特徴とする光結合装置。」② 「〈産業上の利用分野〉 本発明は,信号の入・出力を行なう場合に用いられる光結合装置(フオトカプラ)及びこれを利用したプログラマブルコントロラー,プリンター,フアクシミリ,複写機等の情報機器に関する。」(2頁左欄8行~12行)③ 「〈発明が解決使用とする課題〉 しかし,従来のフオトカプラでは,フオトカプラの使用個数の増加により,その基板内を走るパターン及び機器内を走るリード線の総延長は,かなりの長さが必要となり,かなりのスペースを取つてしまうため,機器のコンパクト化の弊害になつている。本発明は,上記に鑑み,基板内パターン及び機器内のリード線の削減を図り,機器の小型化を実現できる光結合装置及びこれを利用した情報機器の提供を目的とする。」(2頁左欄20行~29行)④ 「〈課題を解決するための手段〉 (1) 本発明請求項1による課題解決手段は,第1図ないし第5図の如く,発光素子1と,受光素子2と,外部制御装置Cからの1本の信号ラインL 左欄20行~29行)④ 「〈課題を解決するための手段〉 (1) 本発明請求項1による課題解決手段は,第1図ないし第5図の如く,発光素子1と,受光素子2と,外部制御装置Cからの1本の信号ラインLに接続され前記発光素子1または受光素子2の駆動を制御する駆動制御素子3,8とを同一パツケージ内に持ち,入力信号を発光素子1にて一旦光に変換し,この光を受光素子2で再び電気信号に変換して出力する,信号の入出力を行う部位を複数箇所有する情報機器に使用される光結合装置であつて,駆動制御素子3,8に,識別符号を記憶する記憶手段11,21と,外部制御装置Cより- 73 -識別符号が入力されたとき,その識別符号が前記記憶手段11,21に記憶された自己の識別符号と一致しているか否か判別する判別手段12A,22Aと,該判別手段12A,22Aが自己の識別符号と一致していると判別したとき,発光素子1または受光素子2を駆動させる駆動手段12B,22Bとが設けられたものである。」(2頁左欄30行~46行)(b) 乙13の上記記載事項及び第2図を総合すれば,乙13には,発光素子と,受光素子と,1本の信号ラインに接続された発光素子の駆動を制御する駆動制御素子とを同一パッケージ内に持ち,駆動制御素子に識別符号を記憶する記憶手段を設け,外部制御装置より識別符号が入力されたとき,その識別符号が記憶手段に記憶された自己の識別符号と一致しているか否かを判断し,一致していると判断したとき,発光素子又は受光素子を駆動させる光結合装置に係る技術が開示されていることが認められる。 また,乙13記載の上記技術は,共通バス接続方式を採用することを前提とした技術であることがうかがわれる。 しかし,他方で,乙13には,上記技術を適用してインクタンクの装着位置の誤りを検出するこ また,乙13記載の上記技術は,共通バス接続方式を採用することを前提とした技術であることがうかがわれる。 しかし,他方で,乙13には,上記技術を適用してインクタンクの装着位置の誤りを検出することについては,記載も示唆もない。 c 乙24の記載事項(a) 乙24には,次のような記載がある(この記載中に引用する図11ないし14については,別紙刊行物図面参照)。 ① 「技術分野本発明は,印刷装置における印刷記録材容器の識別技術に関し,さらに詳細には印刷記録材容器交換に際して正しい印刷記録材容器が装着されたか否かを識別する技術に関する。」(7頁18行~20行)② 「発明の背景複数色のインクカートリッジ(印刷記録材容器)- 74 -を備えるカラープリンタにおいて,インクカートリッジの交換時におけるインクカートリッジの誤装着,すなわち,交換されるべきインク色とは異なるインクカートリッジの装着,を防止するための技術が提案されている。例えば,インク色毎にインクカートリッジの外形形状を変更し,誤ったインクカートリッジが物理的に装着できないようにする技術が知られている。」(7頁21行~26行)③ 「パーソナルコンピュータPCは,制御回路30を介して第n番目のインクカートリッジを交換位置まで移動させる(ステップS210)。なお,パーソナルコンピュータPCはnの初期値として「1」を用いるものとし,以下の説明ではn=1として説明する。したがって,図12に示すように,先ず,第1番目のインクカートリッジCA1が,交換用開口部14に対応する位置まで移動させられる。ここで,交換用開口部14が形成されている位置と各インクカートリッジCAとの移動距離は,ホームポジションからのキャリッジ101の移動距離としてそれぞれ設定されている。したがって, 移動させられる。ここで,交換用開口部14が形成されている位置と各インクカートリッジCAとの移動距離は,ホームポジションからのキャリッジ101の移動距離としてそれぞれ設定されている。したがって,インクカートリッジCAを所定の位置まで移動させる際には,各インクカートリッジCAに応じて設定されている距離だけキャリッジ101を移動させればよい。なお,キャリッジ101の移動距離はリニアエンコーダ等を利用して正確に計測(検出)することができる。また,インクカートリッジCA2,CA3,CA4についても図13および図14に示すように,順次,交換用開口部14に対応する位置まで移動させられる。」(18頁10行~21行),「インクカートリッジCA1が装着されると(ステップS220:Yes),インクカートリッジCA1の記憶装置20が保有する識別データに対応する識- 75 -別データをデータバスDB上に送信する(ステップS230)。」(18頁24行~27行),「パーソナルコンピュータPCは送信した識別データに対して応答があるか否かを判定する(ステップS240)。すなわち,装着されるべきインクカートリッジCA1が装着されている場合には,送信された識別データに対応する識別データを保有する記憶装置20が応答し,誤ったインクカートリッジCAが装着されている場合には,いずれの記憶装置も記憶装置20に対応する識別データに対して応答することができない。」(18頁28行~32行),「パーソナルコンピュータPCは,応答がない場合には(ステップS240:No),誤ったインクカートリッジCAが装着されている旨を報知し(ステップS250),ステップS220に戻り,再度,正しいインクカートリッジCAの装着を検出する」(18頁32行~35行)(b) 乙24の上記記載事 カートリッジCAが装着されている旨を報知し(ステップS250),ステップS220に戻り,再度,正しいインクカートリッジCAの装着を検出する」(18頁32行~35行)(b) 乙24の上記記載事項及び図11ないし14を総合すれば,乙24には,共通バス接続方式を採用した複数色のインクカートリッジを備えるプリンタにおいて,インクカートリッジを所定の交換用開口部14に対応する位置まで移動させ,インクカートリッジを1個ずつ交換し,その都度,交換されたインクカートリッジの位置に対応する識別データをデータバス上に送信し,応答があれば正しいインクカートリッジが装着されたと判断し,応答がなければ誤ったインクカートリッジが装着されたと判断する構成が開示されていることが認められる。 しかし,他方で,乙24には,インクカートリッジに発光部を設けることやプリンタ側に受光手段を設けることについて,記載も示唆もない。 - 76 -d 乙25の記載事項(a) 乙25には,次のような記載がある(この記載中に引用する第1図については,別紙刊行物図面参照)。 ① 「この発明は印字ヘッドを格別に移動することなくタブ設定を行なうことのできるタブ設定機構を備えた印字装置に関する。」(1頁左欄19行~右欄1行),「この発明は上記事情にもとづいてなされたもので,その目的は,タブ設定を容易にかつ迅速に行なうことのできるタブ設定機構を備えた印字装置を提供することにある。」(1頁右欄18行~2頁左上欄1行)② 「第1図は例えばタイプライター,作表機,ビリングマシン等のようなタブ設定機構を備えた印字装置の概略構成を示すもので,1はプラテンである。このプラテン1に対しガイド軸2,2および係止部材3が平行に配設されている。前記ガイド軸2,2にはキャリヤ4が装着され,プ なタブ設定機構を備えた印字装置の概略構成を示すもので,1はプラテンである。このプラテン1に対しガイド軸2,2および係止部材3が平行に配設されている。前記ガイド軸2,2にはキャリヤ4が装着され,プラテン1に対し平行移動可能になっている。」(2頁左上欄3行~10行)③ 「前記キャリヤ4には検出器14が装着されている。この検出器14には受光素子が取着されており,点灯している前記操作体6~12を前記受光素子によって検出することによりタブ位置が検出されるようになっている。」(2頁左上欄19行~右上欄4行)④ 「なお,この発明は前記実施例に限定されるものではない。例えば,前記実施例では操作体に発光素子を装着し,検出器に受光素子を装着した場合を示したが,操作体に受光素子を装着し,検出器に発光素子を装着するようにしてもよい。」(2頁右下欄14行~18行)(b) 乙25の上記記載事項及び第1図を総合すれば,乙25には,- 77 -タブ設定機構を備えた印字装置において,タブ位置の検出(位置決め)のために,発光素子と受光素子とを利用する構成が開示されていることが認められる。 しかし,他方で,乙25には,上記構成を適用してインクタンクの装着位置の誤りを検出することについては,記載も示唆もない。 e 検討(a) 被告は,①光学的カップリングが,発光素子としての発光ダイオードと,受光素子としての光センサ素子で構成されること(乙12の1),②プリンタ分野における光学的カップリングを用いた識別情報の照合(乙13),③プリンタ分野において,光学的カップリングを相対移動する物体の位置検出に利用すること(乙25),④インクカートリッジの誤装着を検出する技術に関し,インクカートリッジの位置に応じて,識別データをデータバス上に送信し,インクカート プリングを相対移動する物体の位置検出に利用すること(乙25),④インクカートリッジの誤装着を検出する技術に関し,インクカートリッジの位置に応じて,識別データをデータバス上に送信し,インクカートリッジ側から識別データに対する応答があるか否か判定する処理(乙24)は,いずれも技術常識であり,これらの技術常識を参酌すると,相違点1に係る本件訂正発明1の構成は乙10の「光学的カップリング」の構成として記載されているに等しい事項である旨主張する。 しかしながら,被告が主張する上記①ないし④の技術常識は,「光学的カップリング」を用いて共通バス接続方式を採用したインクカートリッジの誤装着を検出する具体的な構成を示したものではないから,これらを参酌しても,本件出願の優先権主張日当時,乙10に接した当業者において,乙10の「光学的カップリング」の具体的構成として相違点1に係る本件訂正発明1の構成を想起し,あるいは上記構成に想到することは困難であったものといわざるを得ない。 - 78 -また,①乙12の1には,光学的カップリングが,発光素子としての発光ダイオードと,受光素子としての光センサ素子で構成されることの開示があることは認められるものの,共通バス接続方式を採用した場合における上記光学的方法によるデータの送受信方法の適用については,記載も示唆もないこと(前記a),②乙13には,発光素子と,受光素子と,1本の信号ラインに接続された発光素子の駆動を制御する駆動制御素子とを同一パッケージ内に持ち,駆動制御素子に識別符号を記憶する記憶手段を設け,外部制御装置より識別符号が入力されたとき,その識別符号が記憶手段に記憶された自己の識別符号と一致しているか否かを判断し,一致していると判断したとき,発光素子又は受光素子を駆動させる光結合装置に係 部制御装置より識別符号が入力されたとき,その識別符号が記憶手段に記憶された自己の識別符号と一致しているか否かを判断し,一致していると判断したとき,発光素子又は受光素子を駆動させる光結合装置に係る技術が開示されているものの,上記技術を適用してインクタンクの装着位置の誤りを検出することについては,記載も示唆もないこと(前記b(b)),③乙24には,共通バス接続方式を採用した複数色のインクカートリッジを備えるプリンタにおいて,インクカートリッジを所定の交換用開口部14に対応する位置まで移動させ,インクカートリッジを1個ずつ交換し,その都度,交換されたインクカートリッジの位置に対応する識別データをデータバス上に送信し,応答があれば正しいインクカートリッジが装着されたと判断し,応答がなければ誤ったインクカートリッジが装着されたと判断する構成が開示されているものの,インクカートリッジに発光部を設けることやプリンタ側に受光手段を設けることについては,記載も示唆もないこと(前記c(b)),④乙25には,タブ設定機構を備えた印字装置において,タブ位置の検出(位置決め)のために,発光素子と受光素子とを利用する構成が開示されているものの,上記構成を適用してインクタンクの装着位置の誤りを検出する- 79 -ことについては,記載も示唆もないこと(前記d(b))に照らすと,乙12の1,13,24,25の各記載事項を参酌しても,本件出願の優先権主張日当時,乙10に接した当業者において,乙10の「光学的カップリング」の具体的構成として相違点1に係る本件訂正発明1の構成を想起し,あるいは上記構成に想到することは困難であったものといわざるを得ない。 したがって,相違点1に係る本件訂正発明1の構成は乙10の「光学的カップリング」の構成として記載されているに の構成を想起し,あるいは上記構成に想到することは困難であったものといわざるを得ない。 したがって,相違点1に係る本件訂正発明1の構成は乙10の「光学的カップリング」の構成として記載されているに等しい事項であるとの被告の主張は,採用することができない。 (b) 被告は,前記(a)①の技術常識(乙12の1)を参酌すると,相違点2に係る本件訂正発明1の構成は乙10の「光学的カップリング」の構成として記載されているに等しい事項である旨主張する。 しかしながら,相違点2に係る本件訂正発明1の構成は,共通バス接続方式を採用することを前提とした「液体インク収納容器」(構成要件1A4ないし1A6,1B,1F)の「発光部」の構成であるところ,乙10記載の印刷装置は,複数のインクタンクと記録装置との間に共通の信号配線を用いる共通バス接続方式を採用した構成のものではなく(前記イ(イ)),また,前記aで述べたように,乙12の1には,共通バス接続方式を採用した場合における光学的方法によるデータの送受信方法の適用について,記載も示唆もないことに照らすならば,被告の上記主張は,採用することができない。 (c) 被告は,前記(a)②の技術常識(乙13)を参酌すると,相違点3に係る本件訂正発明1の構成は乙10の「光学的カップリング」の構成として記載されているに等しい事項である旨主張する。 - 80 -しかしながら,乙10記載の印刷装置において,磁気読取/書込みヘッド44を用いる代わりに,「光学的カップリング」によるデータ送信技術を採用しただけでは,「光学的カップリング」を構成する受光素子と対向する位置にある印刷ヘッド12を発光させる構成となるにすぎず,「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部」を「光らせ カップリング」を構成する受光素子と対向する位置にある印刷ヘッド12を発光させる構成となるにすぎず,「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部」を「光らせ」,このような「発光部の発光を制御する」構成(構成要件1E)とはならないこと(前記(イ)),乙13には,乙13記載の技術を適用してインクタンクの装着位置の誤りを検出することについて,記載も示唆もないこと(前記b(b))に照らすならば,被告の上記主張は,採用することができない。 (d) 以上によれば,乙10には相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の各構成の具体的な開示はないというべきであるから,上記各構成が乙10に記載されているに等しい事項であるとの被告の主張は,理由がない。 ウ容易想到性について(ア) 前記イのとおり,乙10には相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の各構成の具体的な開示はない。 また,仮に乙10の「光学的カップリング」の構成として相違点1ないし3に係る本件訂正発明1のいずれかの構成が開示されているものと認め得るとしても,乙9には,共通バス接続方式を採用しつつ「光照合処理」(前記1(2)ア(ウ)b)の方法を採用することによりインクタンクの装着位置の誤りを検出することを示唆する記載はないこと,乙10には,共通バス接続方式を採用した上で,「光学的カップリング」による印刷ヘッド(インクタンク)の装着位置の誤りを検出することができることを示唆する記載はないこと(前記イ(イ))に照らすならば,被- 81 -告が主張するように共通バス接続方式を採用した乙9発明①にインクタンクが正しい搭載位置に装着されているか否かを検出できないという課題があることは自明であることを考慮してもなお,本件出願の優先権主張日当時,乙9及び乙10 バス接続方式を採用した乙9発明①にインクタンクが正しい搭載位置に装着されているか否かを検出できないという課題があることは自明であることを考慮してもなお,本件出願の優先権主張日当時,乙9及び乙10に接した当業者において,乙9発明①に乙10に開示された上記構成を組み合わせる動機付けがあったものと認めることはできない。 したがって,当業者が乙9及び乙10に記載された発明に基づいて相違点1ないし3に係る本件訂正発明1の各構成を容易に想到することができたものと認めることはできない。 (イ) 以上によれば,本件訂正発明1は当業者が乙9及び乙10に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから,被告主張の本件訂正発明1に係る無効理由は理由がない。 (2) 本件訂正発明2に係る無効理由の有無ア本件訂正発明2と乙9記載の液体インク供給システム(乙9発明②)との間には,次のとおりの相違点があるが,その余の構成が一致することは,争いがない。 (相違点A)「液体インク収納容器」が搭載される側の記録装置が,本件訂正発明2では,「該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え,該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」(構成要件2A3)を有し,「前記受光部は,前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され」た構成(構成要件2E)を有するのに対し,乙9発明②では,これらの構成を有しない点。 (相違点B)本件訂正発明2では,「液体インク収納容器」が「前記液体インク収納- 82 -容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部と,前記接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記 本件訂正発明2では,「液体インク収納容器」が「前記液体インク収納- 82 -容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部と,前記接点から入力される前記色情報に係る信号と,前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部」(構成要件2D3及び2D4)を有するのに対し,乙9発明②では,このような構成を有しない点。 (相違点C)本件訂正発明2では,「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ,その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」構成(構成要件2F)を有するのに対し,乙9発明②では,このような構成を有しない点。 イ被告は,乙9及び乙10に記載された発明に基づいて,当業者が相違点AないしCに係る本件訂正発明2の各構成に容易に想到することができた旨主張する。 しかしながら,前記(1)と同様の理由により,被告の主張する技術常識を参酌しても,当業者が乙9及び乙10に記載された発明に基づいて相違点AないしCに係る本件訂正発明2の各構成を容易に想到することができたものと認めることはできない。 したがって,本件訂正発明2は当業者が乙9及び乙10に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから,被告主張の本件訂正発明2に係る無効理由は理由がない。 (3) まとめ以上のとおり,被告主張の本件各訂正発明に係る無効理由はいずれも理由がないから,原告が特許法104条の3第1項の規定により本件各訂正発明に係る本件特許権を行使することができないとの被告の主張は,理由がない。 - 83 - 4 結論以上によれば,原告の請求は理由があるからこれを認容す 04条の3第1項の規定により本件各訂正発明に係る本件特許権を行使することができないとの被告の主張は,理由がない。 - 83 - 4 結論以上によれば,原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官上田真史 裁判官石神有吾 - 84 -(別紙) 物件目録(1)下記(1)ないし(4)のいずれかの表示を付し,液体インクを充填したインクタンク(1) 商品上の表示:「OHM」,「OHM-CBK321S」,「キヤノン用インクカートリッジ BCI-321BK互換」インクの種類:「ブラック」(2) 商品上の表示:「OHM」,「OHM-CY321S」,「キヤノン用インクカートリッジ BCI-321Y互換」インクの種類:「イエロー」(3) 商品上の表示:「OHM」,「OHM-CM321S」,「キヤノン用インクカートリッジ BCI-321M互換」インクの種類:「マゼンタ」(4) 商品上の表示:「OHM」,「OHM-CC321S」,「キヤノン用インクカートリッジ BCI-321 C互換」インクの種類:「シアン」- 85 -(別紙) 物件目録(2)下記(1)ないし(6)のいずれかの表示を付し,液体インクを充填したインクタンク(1) 商品上の表示:「OHM」,「OHM-CBK7ES」,「キヤノン用インクカートリッジ BCI-7eBK互換」インクの種類:「ブラック」(2) 商品上の表示:「OHM」,「OHM-CY7ES」,「キヤノン用インクカート 「OHM-CBK7ES」,「キヤノン用インクカートリッジ BCI-7eBK互換」インクの種類:「ブラック」(2) 商品上の表示:「OHM」,「OHM-CY7ES」,「キヤノン用インクカートリッジ BCI-7eY互換」インクの種類:「イエロー」(3) 商品上の表示:「OHM」,「OHM-CM7ES」,「キヤノン用インクカートリッジ BCI-7eM互換」インクの種類:「マゼンタ」(4) 商品上の表示:「OHM」,「OHM-CC7ES」,「キヤノン用インクカートリッジ BCI-7eC互換」インクの種類:「シアン」(5) 商品上の表示:「OHM」,「OHM-CPM7ES」,「キヤノン用インクカートリッジ BCI-7ePM互換」インクの種類:「フォトマゼンタ」(6) 商品上の表示:「OHM」,「OHM-CPC7ES」,「キヤノン用インクカートリッジ BCI-7ePC互換」インクの種類:「フォトシアン」- 86 -(別紙1)第1 図面の説明別添1の図1(a)ないし(e),図2(a)ないし(c)は,被告製品1及びその正面下端部に設けられた基板を示す図面であって,図1(a)は被告製品1の内部構造を表した右側面図,図1(b)は正面図,図1(c)は底面図,図1(d)は上面図,図1(e)は背面図,図2(a)ないし(c)はそれぞれ,被告製品1の正面下端部に設けられた基板の,インクタンク取り付け時の裏面,側面,及び表面の拡大図である。 第2 構造の説明 1 被告製品1は,以下の各号の構成を備えた原告製プリンタ(商品名PIXUSMP990等)に対して着脱可能なインクタンクである。 ① 複数のインクタンク(液体インク収納容器)が搭載され,左右に移動するキャリッジを有する。 ② 各インクタンクに備えられ 商品名PIXUSMP990等)に対して着脱可能なインクタンクである。 ① 複数のインクタンク(液体インク収納容器)が搭載され,左右に移動するキャリッジを有する。 ② 各インクタンクに備えられる接点と電気的に接続可能なプリンタ側接点を有する。 ③ 前記キャリッジの移動により対向するインクタンクが入れ替わるように配置され,各インクタンクに設けられた基板の発光部LEDからの赤外線を受光する受光手段(光センサ)を有する。 ④ 上記複数のプリンタ側接点をバス接続(共通に電気的接続)し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路を有する。 2 図1(b) に示されるように,インクタンク1は支持部材3を有している。支持部材3は原告製プリンタの前記キャリッジ上のタンクホルダへの装着操作等を行う際に被支持部を中心に変位可能な構成である。 3 図1(b)及び(e) に示されるように,インクタンク1は,その正面及び背面に原告製プリンタのタンクホルダ側の係止部にそれぞれ係合可能な第1係合部5及び第2係合部6が設けられ,これらの係合によってインクタンク1のタ- 87 -ンクホルダへの装着状態が確保される。 4 図1(c) に示されるように,インクタンク1の底面には,タンクホルダへの装着時に,記録ヘッドのインク導入口と結合してインク供給を行うためのインク供給口7が設けられている。 5 図1(a)及び(b) に示されるように,インクタンク1の正面下端部には,基板100が設けられている。 6 図1(a) に示されるように,インクタンク1の内部には,インク供給口7の上方に位置する負圧発生部材(インク吸収体)収納室15と液体インクを収納するインク収納室11とを有している。 7 インク収納室11の上方は,バッファー室12Bを介して大気連通部12A ク供給口7の上方に位置する負圧発生部材(インク吸収体)収納室15と液体インクを収納するインク収納室11とを有している。 7 インク収納室11の上方は,バッファー室12Bを介して大気連通部12Aにつながる通気路(図1(a)ないし(e)には不図示)が設けられている。 8 図2(a)及び(b) に示されるように,基板100の裏面(インクタンク1の内側に向いた面)には,赤外線を発光する発光部101(LED)と,発光部の発光を制御する制御部とインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部とが一体となったICチップ103が設けられており,ICチップ103は封止樹脂104によって被覆されている。さらに,基板100の表面(インクタンク1の外側に向いた面)には,インクタンクがタンクホルダに保持された状態で原告製プリンタのプリンタ側接点と電気的に結合する接点102も設けられている。 9 接点102を介して供給される電気信号及び電力により,ICチップ103は発光部101の発光の制御を行う。ICチップ103上の制御部は,接点102から入力される信号中の色情報と,同チップ上の情報保持部に保持されたインクタンクの色情報を比較し,それらが同一である場合に,接点102から入力される信号の指示に従って発光部101の発光を行う。 インクタンクがキャリッジ上の正しい位置に装着されているか否かの確認が必要になった場合,プリンタ側の制御装置は,前記キャリッジを移動させて受光手段- 88 -に対向するインクタンクを入れ替え,キャリッジの位置に応じて特定される特定の色のインクタンクの発光部101を前記9記載の方法で発光させ,その発光を受光手段で受光し,その受光結果に基づき,各色のインクタンクの搭載位置を検出する。 - 89 -(別添1) - ンクの発光部101を前記9記載の方法で発光させ,その発光を受光手段で受光し,その受光結果に基づき,各色のインクタンクの搭載位置を検出する。 - 89 -(別添1) - 90 -(別紙2)第1 図面の説明別添2の図1(a)ないし(e),図2(a)ないし(c)は,被告製品2及びその正面下端部に設けられた基板を示す図面であって,図1(a)は被告製品2の内部構造を表した右側面図,図1(b)は正面図,図1(c)は底面図,図1(d)は上面図,図1(e)は背面図,図2(a)ないし(c)はそれぞれ,被告製品2の正面下端部に設けられた基板の,インクタンク取り付け時の裏面,側面,及び表面の拡大図である。 第2 構造の説明 1 被告製品2は,以下の各号の構成を備えた原告製プリンタ(商品名PIXUSiP7500等)に対して着脱可能なインクタンクである。 ① 複数のインクタンク(液体インク収納容器)が搭載され,左右に移動するキャリッジを有する。 ② 各インクタンクに備えられる接点と電気的に接続可能なプリンタ側接点を有する。 ③ 前記キャリッジの移動により対向するインクタンクが入れ替わるように配置され,各インクタンクに設けられた基板の発光部LEDからの赤外線を受光する受光手段(光センサ)を有する。 ④ 上記複数のプリンタ側接点をバス接続(共通に電気的接続)し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路を有する。 2 図1(b) に示されるように,インクタンク1は支持部材3を有している。支持部材3は原告製プリンタの前記キャリッジ上のタンクホルダへの装着操作等を行う際に被支持部を中心に変位可能な構成である。 3 図1(b)及び(e) に示されるように,インクタンク1は,その正面及び背面に原告製プリンタのタンク 記キャリッジ上のタンクホルダへの装着操作等を行う際に被支持部を中心に変位可能な構成である。 3 図1(b)及び(e) に示されるように,インクタンク1は,その正面及び背面に原告製プリンタのタンクホルダ側の係止部にそれぞれ係合可能な第1係合部5及び第2係合部6が設けられ,これらの係合によってインクタンク1のタ- 91 -ンクホルダへの装着状態が確保される。 4 図1(c) に示されるように,インクタンク1の底面には,タンクホルダへの装着時に,記録ヘッドのインク導入口と結合してインク供給を行うためのインク供給口7が設けられている。 5 図1(a)及び(b) に示されるように,インクタンク1の正面下端部には,基板100が設けられている。 6 図1(a) に示されるように,インクタンク1の内部は,インク供給口7の上方に位置する負圧発生部材(インク吸収体)収納室15と液体インクを収納するインク収納室11とを有している。 7 インク収納室11の上方は,バッファー室12Bを介して大気連通部12Aにつながる通気路(図1(a)ないし(e)には不図示)が設けられている。 8 図2(a)及び(b) に示されるように,基板100の裏面(インクタンク1の内側に向いた面)には,赤外線を発生する発光部101(LED)と,発光部の発光を制御する制御部とインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部とが一体となったICチップ103が設けられており,ICチップ103は封止樹脂104によって被覆されている。さらに,基板100の表面(インクタンク1の外側に向いた面)には,インクタンクがタンクホルダに保持された状態で原告製プリンタのプリンタ側接点と電気的に結合する接点102も設けられている。 9 接点102を介して供給される電気信号及び電力により,ICチップ103は発 タンクがタンクホルダに保持された状態で原告製プリンタのプリンタ側接点と電気的に結合する接点102も設けられている。接点102を介して供給される電気信号及び電力により,ICチップ103は発光部101の発光の制御を行う。ICチップ103上の制御部は,接点102から入力される信号中の色情報と,同チップ上の情報保持部に保持されたインクタンクの色情報を比較し,それらが同一である場合に,接点102から入力される信号の指示に従って発光部101の発光を行う。インクタンクがキャリッジ上の正しい位置に装着されているか否かの確認が必要になった場合,プリンタ側の制御装置は,前記キャリッジを移動させて受光手段に対向するインクタンクを入れ替え,キャリッジの位置に応じて特定される特定の色のインクタンクの発光部101を前記記載の方法で発光させ,その発光を受光手段で受光し,その受光結果に基づき,各色のインクタンクの搭載位置を検出する。 刊行物図面 1乙9【図2】 2乙10 3乙12の1 4乙13 5乙24 6乙25 明細書図面 【図1】 【図2】 【図3】 【図4】 【図5】 【図17】 【図3】 【図4】 【図5】 【図17】 【図20】 【図21】 【図29】 【図30】
▼ クリックして全文を表示