平成29(行コ)185 滞納処分取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成30年2月1日 大阪高等裁判所 租税
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判決文本文11,882 文字)

平成30年2月1日判決言渡し平成29年(行コ)第185号滞納処分取消請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成28年(行ウ)第97号) 主文 1 本件各控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 大阪国税局長が平成26年11月26日付けで原判決添付の別紙差押財産目録記載1から4の各財産に対してした差押処分及び同年12月15日付けで同目録記載5の各財産に対してした差押処分をいずれも取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,大阪国税局長が,控訴人Aに対する滞納国税の徴収権があるとして,同徴収権に基づく滞納処分として,平成26年11月26日付け及び同年12月15日付けで原判決添付の別紙差押財産目録記載1から5の各財産に差押処分(以下「本件差押処分」という。)をしたところ,控訴人らが,本件差押処分に係る滞納国税の徴収権が時効により消滅していること,同目録記載2及び3の各持分(以下「本件持分」という。)は,本件差押処分当時,控訴人Aではなく,控訴人Bに帰属していたことから,本件差押処分は違法で取消事由があると主張して,本件差押処分の取消しを求める事案である。 2 原審は,本件差押処分の取消しを求める訴えについて控訴人Bは原告適格を有しないとして控訴人Bの訴えを却下し,控訴人Aの請求には理由がないとして棄却したことから,控訴人らが控訴した。 3 関係法令の定め,前提事実,争点,争点に関する当事者の主張の要旨は,次のとおり補正し,後記4で当事者の補充主張を付加するほかは,原判決の「事 実及び理由」中の第2の1ないし4(原判決2頁12行目から12頁24行目まで)に記載のとおりで る当事者の主張の要旨は,次のとおり補正し,後記4で当事者の補充主張を付加するほかは,原判決の「事 実及び理由」中の第2の1ないし4(原判決2頁12行目から12頁24行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する(以下の原判決の引用部分は,全て「事実及び理由」中のものであり,以下では,「事実及び理由」中のものである旨の記載は省略する。)。 (1) 原判決3頁12行目の「別紙滞納国税一覧表」を「原判決添付の別紙滞納国税一覧表」と,原判決5頁5行目,9行目,13行目及び17行目の「別紙差押財産目録」を「原判決添付の別紙差押財産目録」とそれぞれ改める。 (2) 原判決4頁8行目の「1000万円を」を「1000万円の」と,「8日付け」を「8日付けで」と,9行目の「200万円の」を「200万円の,」と改める。 (3) 原判決4頁19行目の「という。)。」の後に「いずれの会社も,定款に,譲渡による株式の取得について株主総会の承認を要する旨の定めを設けている。」を加える。 (4) 原判決7頁11行目の末尾に改行して「なお,後記(被控訴人の主張の要旨)アに記載されている,平成20年2月25日に,大阪国税局徴収職員が,控訴人Aの税務代理行為をしていたE税理士に確認したとの事実はない。 仮に,上記の日に,同職員とE税理士が会話をしていたとしても,控訴人B及びCの各法人設立届出書の「設立時の株主名簿」の記載が誤りであることを話している可能性はあるが,それを超えて「現在も(株主の)変更はない。」旨を回答するはずはない。そして,E税理士は,同年3月3日に,上記職員と面談し,本件各株式の差押時点で,同株式の所有者は,控訴人Aではなく,Dであったから,本件各株式の差押えはその帰属を誤ったものであることを述べている。」を加え,8頁22行目の「平成19年 上記職員と面談し,本件各株式の差押時点で,同株式の所有者は,控訴人Aではなく,Dであったから,本件各株式の差押えはその帰属を誤ったものであることを述べている。」を加え,8頁22行目の「平成19年12月18日」を「平成19年12月28日」と改める。 (5) 原判決9頁5行目の「そこで,」の後に「平成20年2月25日,」を 加え,6行目から7行目にかけての「E税理士」を「E税理士」と改め,14行目の「同年12月28日」を「平成19年12月28日」と改め,17行目の「処分がされた後,」の後に「E税理士が,同年3月3日,前記徴収職員と面談した際,本件各株式については,その所有権が控訴人AからDに譲渡されているようだと述べたが,」を加える。 4 当審における当事者の補充主張(控訴人らの主張)(1) 株主名簿を作成していない株式会社に対する会社法130条1項の適用について本件において,会社法130条1項の規定を適用して,控訴人AがDへの本件各株式の譲渡を被控訴人に対抗できないとすることは,極めて形式的にすぎ,以下のとおり,会社法121条及び130条1 項の制度趣旨並びに現状にかんがみると,極めて不当である。 ア会社法121条及び130条1項の各規定は,転々流通する株式(公開会社の株式)を前提としたものである。しかるに,控訴人B及びCは,中小企業の非公開会社であり,かつ,全株式を1 人の個人が所有しているいわゆる一人会社であり,このような会社は,そもそも株主名簿が作成されていないことが現状であり,公知の事実であって,その株式の譲渡に関して,第三者が株式名簿の記載を信頼して取引を行うという状況にはない。 それにもかかわらず,非公開会社の中小企業が株主名簿を作成していない場合でも,常に会社法130条1 項が適用されるとすると, して,第三者が株式名簿の記載を信頼して取引を行うという状況にはない。 それにもかかわらず,非公開会社の中小企業が株主名簿を作成していない場合でも,常に会社法130条1 項が適用されるとすると,以下のとおり,実務に多大な問題が生じることになる。 (ア) 非公開会社の中小企業である株式会社の大部分の会社に,これまで必要とされてこなかった株主名簿の作成を強いる結果となり,その負担は極めて不合理なものである。 (イ) 非公開会社の中小企業である株式会社において,実質的に株主の変 更があり,会社自身が新株主を長期間株主として取り扱っている場合においても,同社の債権者は既に株主ではない旧株主が株式を所有していることを前提に当該株式を差押えすることができることになり,それでは,当事者及び会社間では長年有効であることを前提にされていた株式譲渡が実質的には無効になってしまい,そのような結果が是認されれば,実務上大混乱をきたす。 イ最高裁昭和39年(オ)第883号同47年11月8日大法廷判決(民集26巻9号1489頁参照)(以下「最高裁47年判決」という。)は,旧商法204条2項を形式的に適用してしまうと,現実に起こっている事実関係において妥当な解決に至らないことを理由に,法を実態に即したものにするため,その適用を回避したものであるところ,本件においても,非公開会社の中小企業である株式会社で,株主名簿自体がそもそも存在しない場合において,株式譲渡がされたときは,会社法130条1項の形式的適用を回避して,会社は,株主名簿の記載・記録がないことを理由にしてその譲渡を否定することができないと解するのが相当である。また,このように会社に対し,株式譲渡の効力を主張できる場合には,第三者に対しても,譲受人は,実質的な株式譲渡の事実をもって対抗できる にしてその譲渡を否定することができないと解するのが相当である。また,このように会社に対し,株式譲渡の効力を主張できる場合には,第三者に対しても,譲受人は,実質的な株式譲渡の事実をもって対抗できると解すべきである。 ウ本件においては,大阪国税局は,本件各株式の控訴人AからDへの譲渡の事実を知らずに,本件各株式に対する差押えを行ったと推測されるが,各管轄税務署は,控訴人B及びCの設立時の株主は控訴人Aであったにもかかわらず,法人設立届出書の添付書類として,株主としてDの氏名及び住所が記載された「株主名簿」が提出されていることを認識していたから,本件各株式が控訴人AからDへ譲渡されたことも認識しており,大阪国税局は,非公開会社の中小企業である株式会社において,株主名簿が作成されていないことは認識していたという経緯においては,被控訴人が,株主 名簿の記載がないことを主張することは信義則に反するものである。 エよって,被控訴人は,本件各株式の譲渡につき第三者対抗要件の欠缺を主張し得ないと解すべきである。 (2) 会社分割による本件持分の承継についてア中協法17条1項の趣旨にかんがみれば,会社分割による「承継」の場合には,会社の事業に関して有する権利義務の全部又は一部が包括的に承継されるものであり,承継する会社は,従前の会社が行っていた事業を継続するから,人格的,精神的要素が大きく変化することは通常なく,組合員の信頼関係に影響を与えるという状況にないから,同項にいう「譲渡」に当たらず,同項を拡張解釈ないし類推解釈する必要性,相当性もないから,それらの解釈も許されない。 イ会社分割は,経営効率化のため,事業の一部を別会社化したり,グループ外に切り離す態様で移転したりするに当たり,契約関係や債権債務関係にある相手方の同意を不 いから,それらの解釈も許されない。 イ会社分割は,経営効率化のため,事業の一部を別会社化したり,グループ外に切り離す態様で移転したりするに当たり,契約関係や債権債務関係にある相手方の同意を不要とし,分割会社がイニシアティブをとって企業再編をすることができるようにするものである。この制度趣旨からすれば,会社分割による権利義務の承継は,当該権利義務に関する分割会社の地位を承継する一般承継(包括承継)であり,相手方の同意なしに承継されるものであり,最高裁平成20年(受)第1704号同22年7月12日第二小法廷判決(民集64巻5号1333頁参照)(以下「最高裁平成22年判決」という。)も同様の判示をしている。 したがって,中協法17条1項を適用し,組合の承諾がなければ会社分割による持分の承継であっても無効と解するのは,会社分割の制度趣旨を否定するものであり,前記最高裁判例とも矛盾する。 ウ仮に,会社分割による持分の承継について,中協法17条1項が適用されるとしても,本件において,控訴人Bは,本件組合に対し,新設分割計画書の写しを提出した上で,本件持分が控訴人Bに承継されたことを口頭 で通知の上,平成19年11月27日付けの出資金加入申込書を提出して,同承継の承諾を促したのであり,同項の「承諾」について,組合は正当の理由のない限り拒否することはできないことからすれば,本件組合は,控訴人Bに対し,本件持分の承継を承諾していると擬制されるものである。 (被控訴人の主張)(1) 株主名簿を作成していない株式会社における会社法130条1項の適用についてア控訴人らの主張する,控訴人AがDに対して本件各株式を譲渡した事実はない。 イまた,会社法121条及び130条1項の各規定は,その文言からしても,公開会社のみならず, 1項の適用についてア控訴人らの主張する,控訴人AがDに対して本件各株式を譲渡した事実はない。 イまた,会社法121条及び130条1項の各規定は,その文言からしても,公開会社のみならず,非公開会社にも適用されることは明らかであり,非公開会社の中小企業である株式会社において株主名簿が作成されていないとの控訴人らの主張は,法令が事実上遵守されていないことを指摘するものにすぎない。 ウ控訴人B及びCが所轄の税務署に提出した「設立時の株主名簿」は,あくまで各会社設立時の株主を記載したものと解されるから,その名簿に株主がDである旨の記載があっても,その記載をもってDが控訴人Aから本件各株式を取得した者であることが記載又は記録されているということはできない。 しかも,控訴人B及びCは,その後,いずれも会社設立時の株主を控訴人Aに訂正する旨の「既提出届出書類の訂正願」及び控訴人Aが株主である旨の記載がある「設立時の株主名簿」を提出していることからすると,各管轄税務署は,控訴人B及びCの当初提出した設立時の株主名簿に基づき,本件各株式の差押え時において,同株式が,控訴人AからDに譲渡されたことを認識していたという控訴人らの主張には明らかに理由がない。 そして,大阪国税局長は,本件差押処分当時,控訴人B及びCの設立時 の株主は控訴人Aであり,本件各株式が控訴人Aに帰属するとの認識を有しており,その認識下で本件差押処分を行ったのであるから,その行為が何ら信義則に反しないことは明らかである。 (2) 会社分割による本件持分の承継についてア中協法17条1項は,組合は組合員の人格的,成因的要素を多分にその結合関係の中に持つものであるから,その持分の譲渡を自由にすることは,この信頼関係に影響を与えるので,組合員が持分を譲渡 ついてア中協法17条1項は,組合は組合員の人格的,成因的要素を多分にその結合関係の中に持つものであるから,その持分の譲渡を自由にすることは,この信頼関係に影響を与えるので,組合員が持分を譲渡しようとするときは組合の承諾を得なければならないとしたものと解される。そして,会社分割による組合の持分の承継も,組合の持分の譲渡と同様,組合員の変更や出資口数の増減を生じさせるものであり,組合員の信頼関係に影響を与え得るものであることにかんがみると,前記趣旨は,会社分割により組合の持分を承継する場合にも当てはまることは明らかである。したがって,同項所定の「その持分を譲り渡す」場合の中には,会社分割により組合の持分を承継する場合も含まれると解するのが相当である。 イ本件組合において本件持分の承継に係る処理ができなかったのは,控訴人Aの「出資持分譲渡申請書」が提出されていなかったか,あるいは出資証券が提出されていなかったかのいずれかの原因によるものであり,いずれにしても,控訴人らの本件持分の承継に係る申請手続に不備があったために,本件組合において,本件持分の承継を承諾するか否かを判断することができなかったのは明らかである。 また,本件持分承継に係る承諾の意思表示を命じる裁判等の存在も認められない。 したがって,承諾が擬制されたという控訴人らの主張は理由がない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人らの請求には理由がないから,これらをいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり,補正し,後記2において当審 における当事者の主張に対する判断を加えるほかは,原判決中の第3の1ないし3(原判決12頁26行目から22頁25行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する。 (1) 原判決13頁19行目の「禁止されるこ 者の主張に対する判断を加えるほかは,原判決中の第3の1ないし3(原判決12頁26行目から22頁25行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する。 (1) 原判決13頁19行目の「禁止されること」を「禁止され,徴収法に則り取立等の手続がとられることや,滞納処分の徴収権者は,会社法130条1項の第三者に該当すると解されること(最高裁昭和40年(オ)第1031号同41年7月28日第一小法廷判決・裁判集民事84号259頁参照)」と改め,22行目の「当該差押処分の」から23行目の「なるから」までを「その第三者を名宛人とした差押処分は名宛人を誤ったものであり,「その財産」(徴収法47条1項),すなわち,滞納者の財産を差し押さえるものではないから違法なものではあるが,差押処分がありそれに基づきその後の手続がとられるという法的効果により真実の権利者がその権利を侵害されることとなるから」と改める。 (2) 原判決15頁10行目から11行目にかけての「解される。」を「解されるとともに,同条2項は「組合員でないものが持分を譲り受けようとするときは,加入の例によらなければならない。」と定めて,持分の譲渡により,組合員でない者が組合員になるという,信頼関係への影響がより大きなものとなる場合には,これに対応すべく,組合の承諾を含め定款に定める加入の手続を要求したものと解される。」と改め,12行目の「や出資口数の増減」を削除する。 (3) 原判決16頁3行目の「決裁手続が」を「決裁手続が途中まで」と改める。 (4) 原判決16頁13行目の「組合は」から14行目の「事実」までを「人的結合体である組合の組合員の変更はその信頼関係に大きな影響を及ぼすものであり,これに対応するため,中協法17条の規定があると解されることは前述したとおりである。したがって,同 の「事実」までを「人的結合体である組合の組合員の変更はその信頼関係に大きな影響を及ぼすものであり,これに対応するため,中協法17条の規定があると解されることは前述したとおりである。したがって,同条の定める「承諾」とは組合員の 持分の譲渡の可否を定款に定める組合の目的や組合員の資格等を基に実質的に判断することが予定されているものであり,証拠(乙33)によれば,本件組合においても,同条の承諾については,関係書面を提出させ,本店での稟議や代表理事による判断が予定されていると認められることからすれば,組合が当然に承諾するとまでいうことはできず,控訴人Bのいう,譲受人が承継の事実を口頭で通知し,出資金加入申込書を提出したというだけの事実」と改める。 (5) 原判決17頁8行目の「5年」を「5年間」と改める。 (6) 原判決18頁1行目の「ア及びウ」を「アないしウ」と改める。 (7) 原判決19頁12行目の「株式」を「株式の譲渡」と改める。 (8) 原判決20頁14行目の末尾に「また,控訴人B及びCの代表取締役がDであり,株主もDあるいはDが代表取締役を務める控訴人Aであることからすれば,不当拒絶ということ自体が想定し難い。」を加える。 (9) 原判決21頁9行目から10行目にかけての「会社設立時の株主を記載」を「会社設立後に譲渡を受けた結果株主になった者を記載したものではなく,あくまで会社設立時の株主を誤記」と改める。 2 当審における当事者の補充主張について(1) 株主名簿を作成していない株式会社に対する会社法130条1項の適用についてア控訴人らは,本件において,会社法130条1項の規定を適用して,控訴人AがDへの本件各株式の譲渡を被控訴人に対抗できないとすることは,形式的にすぎ,会社法121条及び130条1 項の制度趣旨 ア控訴人らは,本件において,会社法130条1項の規定を適用して,控訴人AがDへの本件各株式の譲渡を被控訴人に対抗できないとすることは,形式的にすぎ,会社法121条及び130条1 項の制度趣旨並びに現状にかんがみると,不当である旨を主張する。 しかし,株式会社は,社員(株主)の地位が株式という細分化された均一の割合的単位的持分であり,社員は間接かつ有限責任のみを負うという制度をとり,株式は自由に譲渡できることを原則として,多数人が容易に 会社に参加できるように配慮されており,このような株主の変動性のほか,株主の権利行使の集団性・反復性に対して,会社に対して株主として資格を有する者を画一的基準により確定するために設けられたのが株主名簿の制度であるが,会社法は,以上の制度を前提に,会社の閉鎖性の維持のため譲渡制限株式の制度を採用し(会社法107条1項1号,2項1号),全株式につき譲渡制限がある旨を定めている会社では,株主から請求があるまで株券を発行しないことができる旨の定めもしているところ(会社法215条4項),その場合,すなわち,株式の転々流通することがあまり想定されない場合においても,会社が株主を確定し,把握するための株主名簿の制度を排除していない。そして,株主名簿の記載又は記録に,会社のみならず,第三者に対する対抗力を付与することにより,第三者も,株主を画一的基準により把握することができる。すなわち,この定めにより,株主名簿の作成をしないまま,譲渡当事者及び会社がその意向によりある時点の株主を自由に決めることは許されないことになるのであって,転々流通することを想定していない会社においてもなお適用される意義があるといえる。控訴人らは,株主名簿及びそれによる対抗要件の規定を適用すると,譲渡当事者及び会社間では長年有効であ なるのであって,転々流通することを想定していない会社においてもなお適用される意義があるといえる。控訴人らは,株主名簿及びそれによる対抗要件の規定を適用すると,譲渡当事者及び会社間では長年有効であることを前提にされていた株式譲渡が実質的には無効になってしまうなどと主張するが,そのような,会社法の定める株主名簿を作成せず,株式の譲渡の記載又は記録をしないまま,会社と株式の譲渡当事者との意向で,現株主を自由に決めることになりかねない事態こそ問題であり,そのような事態を会社法が許容しているものということはできない。 したがって,株式会社という会社形態により事業を営む以上,会社法の規定に則った運営がされるべきである。このことは,控訴人B及びCが,中小企業の非公開会社であり,かつ,全株式を1 人の株主が所有しているいわゆる一人会社であっても変わりはない。控訴人らは,多大な問題,大 混乱が生じる旨を主張するが,その具体的な事象の主張立証はなく,むしろ,両社ともに,会社法に則り事業を営む前提で,それぞれの定款にも,株主名簿の作成を前提とする規定が設けられている(控訴人Bの定款(甲10)の10条,13条,28条,Cの定款(乙22)の10条,13条,27条)ことからすれば,会社法121条,130条1項の適用を回避してまで相当性を図る事情はないというべきである。 したがって,控訴人らの前記主張は採用できない。 イ控訴人らは,最高裁昭和47年判決を引用し,会社法130条1項の適用を回避し,会社は,株主名簿の記載又は記録がないことを理由にしてその譲渡を否定することができず,その結果,会社に対して株式譲渡の効力を主張できる場合には,第三者に対しても,譲受人は,実質的な株式譲渡の事実をもって対抗できると解すべきである旨を主張する。 しかし,上 否定することができず,その結果,会社に対して株式譲渡の効力を主張できる場合には,第三者に対しても,譲受人は,実質的な株式譲渡の事実をもって対抗できると解すべきである旨を主張する。 しかし,上記最高裁判例の事案は,譲渡する株主と会社とが対立する関係にあるものであるが,本件は,本件各株式を譲渡する株主である控訴人Aの代表者で,同控訴人の株式の大半を所有するD(甲4)は,控訴人B及びCの代表者でもあるという関係にあるのであって,会社法の定めるとおりの手続をとることに支障があるとは思われず,その適用を回避してまで妥当性を図るべき事情も見受けられない。したがって,控訴人らの前記主張は採用できない。 ウまた,控訴人らは,各管轄税務署は,本件各株式が,控訴人AからDに譲渡されたことを認識していたのであり,大阪国税局は,非公開会社の中小企業である株式会社において,株主名簿が作成されていないことを認識していたという経緯の下では,株主名簿の記載がないことを主張することは信義則に反する旨を主張する。 しかし,控訴人B及びCが,各管轄税務署に対し,法人設立届出書の添付書類として,株主としてDの氏名及び住所が記載された「株主名簿」を 提出したからといって,そのことが,本件各株式が控訴人AからDへ譲渡されたことを示すということはできないし,各管轄税務署が本件各株式の控訴人AからDへの譲渡を認識することにもならない。 そして,上記設立時株主等の名簿と本件会社分割の新設分割計画書に添付された控訴人B及びCの定款に記載された設立時発行株式の割当を受ける者として控訴人Aが記載されていることにつき,大阪国税局の徴収職員が控訴人Aの税務代理行為をしていたE税理士に問い合わせをし,設立時及び現在の株主がいずれも控訴人Aである旨の回答を得たことは,前記1 者として控訴人Aが記載されていることにつき,大阪国税局の徴収職員が控訴人Aの税務代理行為をしていたE税理士に問い合わせをし,設立時及び現在の株主がいずれも控訴人Aである旨の回答を得たことは,前記1で引用した原判決第3の2(3)オのとおりであり,むしろ,被控訴人は,本件各株式は控訴人Aのものであるという認識を持っていたのであるといえるから,控訴人らの主張はその前提を欠き,採用できない。 エよって,本件各株式の控訴人AからDへの譲渡についても,会社法130条1項が適用され,同譲渡については株主名簿の記載がなく,対抗要件を欠くものであるから,第三者である被控訴人にその譲受を対抗できない。 (2) 会社分割による信用組合の出資持分の承継についてア控訴人らは,会社分割による承継は包括承継であり,人格的,精神的要素が大きく変化することは通常なく,組合員の信頼関係に影響を与えるという状況にないから,本件持分の会社分割による承継は,中協法17条1項にいう「譲渡」に当たらず,本件組合の承諾は不要である旨主張するが,会社分割による本件持分の承継は,本件組合の組合員の変更を生じさせるものであり,組合員の信頼関係に影響を与え得るものであることから,中協法17条1項の組合の承認を要した趣旨が当てはまるものであることは,前記1(2)で補正の上引用した原判決第3の1(3)において認定説示したとおりである。 イまた,控訴人らは,中協法17条1項を適用し,組合の承諾がなければ会社分割による持分の承継であっても無効と解するのは,会社分割の制度 趣旨及び最高裁平成22年判決に矛盾する旨を主張する。 しかし,控訴人らの引用する最高裁平成22年判決は,会社分割において労働契約の承継手続に瑕疵があることを理由に承継の有無が争われた事案であり,商法等の一部を 平成22年判決に矛盾する旨を主張する。 しかし,控訴人らの引用する最高裁平成22年判決は,会社分割において労働契約の承継手続に瑕疵があることを理由に承継の有無が争われた事案であり,商法等の一部を改正する法律附則5条1項に基づく会社分割に伴う労働契約の承継に関する協議という労働者の保護を図るための規定があることを前提としたものであるから,控訴人らの主張はその前提を欠くものである。 そして,人的結合体である本件組合においては,中協法17条1項及び2項を根拠にして定款11条の規定を置き,組合員でない者が組合員から持分を譲り受けることにより組合員になろうとするときは,加入の申込みをしなければならず,加入の申込みをした者は,組合の承諾を得て,持分を譲り受けた旨の届出を組合にした時に組合員となる旨を定めて(乙33),持分の譲渡による組合員の変更という組合員の信頼関係に大きな影響を受ける場合に対処する仕組みを設けているのであって,本件組合の目的・性質からしても,この規定が適用されない理由は見出せない。 したがって,中協法17条1項の適用を否定する控訴人らの主張は採用できない。 ウ中協法17条1項の定める「承諾」とは組合員の持分の譲渡の可否を定款に定める組合の目的や組合員の資格等を基に実質的に判断することが予定されているものであり,譲受人が承継の事実を口頭で通知し,出資金加入申込書を提出したというだけの事実から直ちに本件組合が本件持分の承継に対する承諾をしたとみなすことができないことについても,前記1(4)で補正の上引用した原判決第3の1(4)イのとおりであり,本件持分の承継につき本件組合の承諾が擬制されるとの控訴人Bの主張は採用できない。 エ以上によれば,本件持分が控訴人Aから控訴人Bに承継されたとの控訴 人らの主張には理由が とおりであり,本件持分の承継につき本件組合の承諾が擬制されるとの控訴人Bの主張は採用できない。 エ以上によれば,本件持分が控訴人Aから控訴人Bに承継されたとの控訴 人らの主張には理由がなく,控訴人Bが本件差押処分の対象財産を有していたとは認められず,本件差押処分の取消しを求める本件訴えの原告適格を有しないというべきである。 3 以上によれば,控訴人Bの本件訴えは不適法であるからこれを却下すべきであり,控訴人Aの請求には理由がないからこれらを棄却すべきところ,これと結論を同じくする原判決は相当であり,控訴人らの本件各控訴にはいずれも理由がないからこれらをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第5民事部 裁判長裁判官藤下健 裁判官桑原直子 裁判官金子雄

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