平成27年9月29日判決言渡平成25年(行ウ)第822号法人税更正処分等取消請求事件 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求処分行政庁が,平成24年5月30日付けで原告に対してした原告の平成18年4月1日から平成19年3月31日までの事業年度に係る法人税の更正処分のうち,所得金額56億2310万4758円,納付すべき税額16億0184万2300円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,タイ王国(以下「タイ」という。)に所在する原告の関連法人であるALimited(以下「A」という。)が平成19年3月に発行した新株(以下「本件株式」という。)を額面価額で引き受け,その払込金額を本件株式の取得価額に計上して平成18年4月1日から平成19年3月31日までの事業年度(以下「平成19年3月期」という。)の法人税の確定申告をしたところ,処分行政庁が,本件株式は法人税法施行令(平成19年政令第83号による改正前のもの。以下同じ。)119条1項4号に規定する有価証券(以下「有利発行有価証券」という。)に該当し,本件株式の取得価額はその取得のために通常要する価額となるから,当該価額と払込価額との差額は受贈益(以下「本件受贈益」という。)として益金の額に算入すべきであるなどとして法人税の増額更正処分(以下「本件増額更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい,本件増額更正処分と併せて「本件増額更正処分等」という。)をしたのに対し,原告が本件株式は有利発行有価証券に該当しないなどとして,本件更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分の一部の取消しを求める事案である。 分と併せて「本件増額更正処分等」という。)をしたのに対し,原告が本件株式は有利発行有価証券に該当しないなどとして,本件更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分の一部の取消しを求める事案である。 1 関係法令等の定めの概要(1) 法人税法(平成20年法律第23号による改正前のもの。以下断りがない限り同じ。)ア内国法人の各事業年度の所得の金額は,当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする(22条1項)。 イ内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,資産の販売,有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供,無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする(22条2項)。 ウ内国法人が有価証券の譲渡をした場合には,その譲渡に係る譲渡利益額(その有価証券の譲渡に係る対価の額がその有価証券の譲渡に係る原価の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。)又は譲渡損失額(その有価証券の譲渡に係る原価の額がその有価証券の譲渡に係る対価の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。)は,その譲渡に係る契約をした日の属する事業年度の所得の金額の計算上,益金の額又は損金の額に算入する(61条の2第1項)。 エ有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出の基礎となる取得価額の算出の方法,有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法の種類,その算出の方法の選定の手続その他前各項の規定の適用に関し必要な事項は,政令で定める(61条の2第23項)。 (2) 法人税法施行令内国法人が有価証券の取得をした場合には,その取得価額は,次の各号に掲げる有価証券の区分に応じ当該各号に定める金額とする(11 は,政令で定める(61条の2第23項)。 (2) 法人税法施行令内国法人が有価証券の取得をした場合には,その取得価額は,次の各号に掲げる有価証券の区分に応じ当該各号に定める金額とする(119条1項)。 4号有価証券と引換えに払込みをした金銭の額及び給付をした金銭以外の資産の価額の合計額が払い込むべき金銭の額又は給付すべき金銭以外の資産の価額を定める時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額に比して有利な金額である場合における当該払込み又は当該給付(以下この号において「払込み等」という。)により取得をした有価証券(新たな払込み等をせずに取得をした有価証券を含むものとし,法人の株主等が当該株主等として金銭その他の資産の払込み等又は株式等無償交付により取得をした当該法人の株式又は新株予約権(当該法人の他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合における当該株式又は新株予約権に限る。)等所定のものを除く。) その取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額(3) 法人税基本通達(平成20年課法20-5による改正前のもの。 以下同じ。)ア法人税法施行令119条1項4号に規定する「払い込むべき金銭の額又は給付すべき金銭以外の資産の価額を定める時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額に比して有利な金額」とは,当該株式の払込み又は給付の金額(以下法人税基本通達2-3-7において「払込金額等」という。)を決定する日の現況における当該発行法人の株式の価額に比して社会通念上相当と認められる価額を下回る価額をいうものとする(2-3-7)。 (注)1 社会通念上相当と認められる価額を下回るかどうかは,当該株式の価額と払込金額等の差額が当該株式の価額のおおむね10パーセント相当額以上であるかどう 価額をいうものとする(2-3-7)。 (注)1 社会通念上相当と認められる価額を下回るかどうかは,当該株式の価額と払込金額等の差額が当該株式の価額のおおむね10パーセント相当額以上であるかどうかにより判定する。 2 払込金額等を決定する日の現況における当該株式の価額とは,決定日の価額のみをいうのではなく,決定日前1月間の平均株価等,払込金額等を決定するための基礎として相当と認められる価額をいう。 イ法人税法施行令119条1項4号に規定する「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」とは,株主等である法人が有する株式の内容及び数に応じて株式又は新株予約権が平等に与えられ,かつ,その株主等とその内容の異なる株式を有する株主等との間においても経済的な衡平が維持される場合をいうことに留意する(2-3-8)。 (注) 他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合に該当するか否かについては,例えば,新株予約権無償割当てにつき会社法322条の種類株主総会の決議があったか否かのみをもって判定するのではなく,その発行法人の各種類の株式の内容,当該新株予約権無償割当ての状況などを総合的に勘案して判定する必要がある。 ウ法人税法施行令119条1項4号に規定する有価証券の取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額は,次に掲げる場合の区分に応じ,それぞれ次による(2-3-9)。 (ア) 新株が法人税法施行令119条の13第1号から第3号までに掲げる有価証券(以下「上場有価証券等」という。)である場合その新株の払込み又は給付に係る期日(払込み又は給付の期間を定めたものにあっては,その払込み又は給付をした日。以下法人税基本通達2-3-9において「払込期日」という。)における当該新株の法人税基本通達4-1- 込み又は給付に係る期日(払込み又は給付の期間を定めたものにあっては,その払込み又は給付をした日。以下法人税基本通達2-3-9において「払込期日」という。)における当該新株の法人税基本通達4-1-4本文前段に定める価額((1))(イ) 旧株は上場有価証券等であるが,新株は上場有価証券等でない場合新株の払込期日における旧株の法人税基本通達4-1-4本文前段に定める価額を基準として当該新株につき合理的に計算される価額((2))(ウ) (ア)及び(イ)以外の場合その新株又は出資の払込期日において当該新株につき法人税基本通達4-1-5及び4-1-6に準じて合理的に計算される当該払込期日の価額((3))エ上場有価証券等以外の株式について法人税法25条3項の規定を適用する場合において,再生計画認可の決定があった時の当該株式の価額は,次の区分に応じ,次による(4-1-5)。 (ア) 売買実例のあるもの当該再生計画認可の決定があった日前6月間において売買の行われたもののうち適正と認められるものの価額((1))(イ) 公開途上にある株式で,当該株式の上場に際して株式の公募又は売出し(以下法人税基本通達4-1-5において「公募等」という。)が行われるもの((ア)に該当するものを除く。)金融商品取引所の内規によって行われる入札により決定される入札後の公募等の価格等を参酌して通常取引されると認められる価額((2))(ウ) 売買実例のないものでその株式を発行する法人と事業の種類,規模,収益の状況等が類似する他の法人の株式の価額があるもの((イ)に該当するものを除く。) 当該価額に比準して推定した価額((3))(エ) (ア)から(ウ)までに該当しないもの当該再生計画認可の決定があった日又は同日に最も近い日におけるその株式の の((イ)に該当するものを除く。) 当該価額に比準して推定した価額((3))(エ) (ア)から(ウ)までに該当しないもの当該再生計画認可の決定があった日又は同日に最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額((4))オ法人が,上場有価証券等以外の株式(法人税基本通達4-1-5の(1)及び(2)に該当するものを除く。)について法人税法25条3項の規定を適用する場合において,再生計画認可の決定があった時における当該株式の価額につき昭和39年4月25日付け直資56,直審(資)17「財産評価基本通達」(以下「財産評価通達」という。)の178から189-7までの例によって算定した価額によっているときは,課税上弊害がない限り,次によることを条件としてこれを認める(4-1-6)。(以下略) 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実及び掲記の証拠により容易に認められる事実)(1) 当事者等ア原告は,鉄鋼,鉄鋼原料,非鉄金属,機械,溶接材料等の国内取引及び輸出入業等を目的とする内国法人である。 イ Aは,タイにおいて,原告を中核とするBグループの製品の販売や資材の供給等の輸出入や国内販売等を行うため,タイ国民商法典に基づき,昭和63年5月24日,1株当たりの発行価額1000タイバーツ(以下「バーツ」という。),株式数2500株の非公開会社として設立された法人である。 (2) A設立後の増資の概要ア平成4年の増資(ア) Aは,平成4年8月,増資を行い(以下「平成4年増資」という。),既存株主に対して,株式1万株を1株当たり額面価額1000バーツで発行することを決定した。 (イ) 原告は,平成4年8月,Aの上記株式2900株を引き受 増資を行い(以下「平成4年増資」という。),既存株主に対して,株式1万株を1株当たり額面価額1000バーツで発行することを決定した。 (イ) 原告は,平成4年8月,Aの上記株式2900株を引き受け,Aに対して,当該株式の払込価額として,1株当たり1000バーツとして合計290万バーツを支払った。 (ウ) この増資によりAの発行済総株式数は1万2500株となった。 イ平成19年の増資(ア) タイ国民商法典によれば,株式会社の増資は特別決議事項とされ(1220条),特別決議を要する場合は,一定期間内に株主総会を連続2回開催して各総会で決議をすることが必要であるところ(1194条),平成19年2月19日及び同年3月16日に開催されたAの臨時株主総会において,普通株式28万7500株(本件株式)を1株当たり額面価額1000バーツで発行することとされ,本件株式の当初の払込価額は1株当たり額面の25パーセントである250バーツとすることが決定された。なお,タイ国民商法典では,「金銭により支払われるべき株式について株式募集書に従い規定された額の100分の25を下回らない範囲で払い込ませるものとする。」(1110条2項)と規定されている。(甲3,乙6)(イ) Aは,同社の各株主が保有する株式数に応じて本件株式28万7500株の引受けの募集を行ったところ,原告以外の株主に割り当てられた新株は,引受けがなかった(甲3,11~14)。 (ウ) 原告は,平成19年3月27日,本件株式28万7500株を全て引き受け,Aに対して,払込価額として上記25パーセント分に相当する7187万5000バーツを支払い,Aの普通株式28万7500株を取得した(以下「本件増資」という。)。なお,原告は,本件株式について,上記支払額以上の払込みをし て上記25パーセント分に相当する7187万5000バーツを支払い,Aの普通株式28万7500株を取得した(以下「本件増資」という。)。なお,原告は,本件株式について,上記支払額以上の払込みをしていない。 (エ) この増資により,Aの発行済総株式数は30万株となった。 (3) Aの株主の変遷ア Aの株主の変遷は,別紙2記載のとおりであり,原告は,A設立時から平成4年増資までの間は,Aの発行済株式2500株のうち,725株(全株式の29パーセント)を自己名義で保有し,原告の従業員2名の名義(別紙2の②「C」及び③「D」名義)で保有していた株式を併せると,1225株(全株式の49パーセント)を保有していた。 イ原告は,平成4年増資から本件増資までの間は,Aの発行済株式1万2500株のうち,3625株(全株式の29パーセント)を自己名義で保有し,原告の従業員の名義(別紙2の③「D」,⑨「E」,⑩「F」,⑭「G」名義)で保有していた株式を併せると,6125株(全株式の49パーセント)を保有していた。 ウ原告は,本件増資の結果,Aの発行済株式30万株のうち,29万1125株(全株式の97.0パーセント)を保有することとなった(原告の従業員の名義(別紙2の⑩「F」,⑭「G」名義)で保有していた株式を併せると,29万3625株(全株式の約97.9パーセント)を保有することとなった。)。 エなお,タイでは,外国人事業法等により,タイ人及びタイ法人以外の企業が発行済株式数の50パーセント以上を保有している企業は,参入できる業種が制限されていたが,平成11年に同法が改正され,平成12年から,タイ人及びタイ法人以外の企業が発行済株式数の50パーセント以上を保有している企業であっても,資本金を一定額以上とすれば,参入できる業種が制限され たが,平成11年に同法が改正され,平成12年から,タイ人及びタイ法人以外の企業が発行済株式数の50パーセント以上を保有している企業であっても,資本金を一定額以上とすれば,参入できる業種が制限されないこととなったものである。 (4) 本件処分に至る経緯本件更正処分等の経緯等は,別表1のとおりであり,その具体的な経緯は以下のとおりである。 ア原告は,平成19年6月28日,平成19年3月期の法人税について,本件株式28万7500株の取得価格を上記(2)イ(ウ)の払込価額7187万5000バーツとし,所得金額56億2441万9433円,納付すべき税額16億0225万0000円として青色申告により確定申告した。 イ西税務署長(平成21年9月24日に原告が本店所在地を移転する前の所轄税務署長)は,平成21年6月29日付けで,原告に対し,平成19年3月期の法人税について,所得金額56億2310万4333円,納付すべき税額16億0184万2300円とする減額更正処分(以下「本件減額更正処分」という。)を行った。 ウ東税務署長は,平成24年5月30日付けで,原告に対し,平成19年3月期の法人税について,本件株式は有利発行有価証券に該当し,本件株式の所得価額はその取得のために通常要する価額となるから,当該価額と払込価額との差額は本件受贈益として益金の額に算入すべきであるなどとして,所得金額70億2750万7758円,納付すべき税額20億2316万7700円とする本件増額更正処分及び過少申告加算税4209万1000円の本件賦課決定処分を行った。 エ原告は,平成24年7月27日,国税通則法75条4項1号に基づき,本件増額更正処分等の一部を不服として,国税不服審判所長に対して審査請求をしたが,国税不服審判所長は,平成25年7月2 った。 エ原告は,平成24年7月27日,国税通則法75条4項1号に基づき,本件増額更正処分等の一部を不服として,国税不服審判所長に対して審査請求をしたが,国税不服審判所長は,平成25年7月22日付けで,原告の上記審査請求を棄却する旨の裁決をした。 オ原告は,平成25年12月25日,本件増額更正処分等の一部取消しを求めて,本件訴訟を提起した(顕著な事実)。 3 税額等に関する当事者の主張被告が本件訴訟において主張する本件増額更正処分等の根拠及び計算は別紙3課税の根拠及び計算記載のとおりであるところ,原告は,後記4の争点に関する部分を除き,その計算の基礎となる金額及び計算方法を明らかに争わない。 4 争点本件株式は有利発行有価証券に該当するか否か。 5 争点に関する当事者の主張の要旨(被告の主張の要旨)(1) 法人税法上,株式引受けの場面に限定して株式の時価の算定について定めた規定は存在しないが,有価証券の譲渡損益を計算する場合の時価の算定方法に関する61条の2が存在することから,当該規定によって株式引受けに係る株式の時価を計算するのが合理的である。法人税法61条の2は,内国法人が有価証券の譲渡をした場合に,その譲渡に係る譲渡利益額又は譲渡損失額について,当該事業年度の所得の金額の計算上,益金の額又は損金の額に算入することを定めるところ,同条23項は,有価証券の1単位当たりの帳簿価額の算出の基礎となる取得価額の算出方法等について必要な事項は政令で定める旨規定し,これを受けた法人税法施行令119条が有価証券の取得価額の算定方法を定めている。そして,法人税法施行令119条1項4号は,有価証券と引換えに払込みをした金銭の額の合計額が,その取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額に比して有利な金 額の算定方法を定めている。そして,法人税法施行令119条1項4号は,有価証券と引換えに払込みをした金銭の額の合計額が,その取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額に比して有利な金額である場合(以下「有利発行」という。)における当該払込みにより取得をした有価証券(有利発行有価証券。ただし,「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」等は除かれる(同号参照)。)は,その取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額をもって取得価額とするとしている。 すなわち,法人税法は,有利発行有価証券における取得のために通常要する価額(時価)と払込価額との差額については,原則として,当該有価証券の譲渡時に課税するのではなく,その取得時に課税することとする一方で,有利発行有価証券と認められない有価証券については,譲渡時に課税することとする規定も置いている。そして,法人税基本通達2-3-7は,「通常要する価額に比して有利な金額」とは,「当該株式の払込み又は給付の金額を決定する日の現況における当該発行法人の株式の価額に比して社会通念上相当と認められる価額を下回る価額をいう」ものとし,具体的には,当該株式の発行価額を決定する日の現況における当該株式の価額と発行価額との差額が当該株式の価額のおおむね10パーセント相当額以上であるか否かによって判定することとしている。 (2) 有価証券と引換えに払込みをした金銭の額の合計額が,払い込むべき金銭の額を定める時における当該有価証券の取得のために通常要する価額に比して有利な金額であっても,他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合,すなわち,株主等である法人が有する株式の内容及び数に応じて株式又は新株予約権が平等に与えられ,かつ,その株主等とその内容の異なる であっても,他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合,すなわち,株主等である法人が有する株式の内容及び数に応じて株式又は新株予約権が平等に与えられ,かつ,その株主等とその内容の異なる株式を有する株主等との間において経済的な公平が維持される場合(法人税基本通達2-3-8)には,時価と払込価額の差額による利益と既保有株式の希薄化による損失(持分の経済的価値の減少)が等しいと考えられることから,当該差額に関して有価証券の取得時に課税されることはない(法人税法施行令119条1項4号)。 (3) 上記(1)でみた有利発行有価証券の取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額については,法人税基本通達2-3-9がその算定方法を定めており,算定対象の有価証券を,①新株が上場有価証券等の場合,②旧株は上場有価証券等であるが,新株は上場有価証券等でない場合,③①及び②以外の場合に区別して,それぞれに応じて算定方法が定められている。そして,③の場合については,その新株又は出資の払込期日において当該新株につき法人税基本通達4-1-5及び4-1-6に準じて合理的に計算される当該払込期日の価額を有価証券の取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額とすることとしている。 このうち,法人税基本通達4-1-5は,上場有価証券等以外の株式について法人税法25条3項の規定を適用する場合において,売買実例や類似法人がある場合には,それらを参考に価額を算定すべきであるなどとするものの,売買実例もなく,類似法人も存在しない場合には,「当該再生計画認可の決定があった日又は同日に最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」とすることとしている( 「当該再生計画認可の決定があった日又は同日に最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」とすることとしている(法人税基本通達4-1-5(4))。また,法人税基本通達4-1-6は,法人税基本通達4-1-5の原則的算定方法の特例として,国税庁長官の発出した昭和39年4月25日付け直資56,直審(資)17「財産評価基本通達」(以下「財産評価通達」という。)の定める方法を用いて価額を算定する方法を認めるものである。 以上によれば,株式引受けに係る株式の時価の算定は,有価証券の譲渡損益の計算に関する法人税法61条の2の定めるところに準じて算定するのが合理的であり,具体的には,法人税基本通達2-3-9,4-1-5及び4-1-6によって算定するのが合理的である。 (4)ア本件株式については,平成19年3月16日に開催されたAの臨時株主総会において,普通株式28万7500株を1株当たり1000バーツで発行することとされ,本件株式に係る当初の払込価額は1株当たり額面の25パーセントである250バーツとすることとされた。原告は,平成19年3月27日,Aに払込価額7187万5000バーツを支払い,Aの普通株式28万7500株を取得した。 タイ国民商法典では,「金銭により支払われるべき株式について株式募集書に従い規定された額の100分の25を下回らない範囲で払い込ませるものとする。」(1110条2項)と規定されている。そして,「総会において別段の定めがないとき,取締役は株主に対し,未払込部分の株式の金額の全てについて,いつでも催告をすることができる。」(同1120条)と規定されているが,Aから催告があるまで原告は残りの75パーセント分を支払う必要はなく 締役は株主に対し,未払込部分の株式の金額の全てについて,いつでも催告をすることができる。」(同1120条)と規定されているが,Aから催告があるまで原告は残りの75パーセント分を支払う必要はなく,現に本件増額更正処分時において残りの75パーセント分は払い込まれていない。 なお,Aは非公開会社として設立された法人であり,Aの株式は,株式市場に上場されておらず,売買された実例も認められない。また,Aは,タイにおいて設立された法人であり,我が国において事業の種類,規模,収益の状況等が類似する法人は認められない。 イ本件株式については,上場されておらず,売買された実例も認められない上に,Aについては類似法人も認められないのであるから,本件株式の取得に通常要する価額は法人税基本通達4-1-5(4)を準用して算定すべきことになる。すなわち,本件株式の払込み又は給付の金額を決定する日(発行価額決定日)に最も近接した時期に作成された財務諸表の数値を用いて算定することになる。 平成24年3月26日付け「弊社現地法人の資産に関する確認書」と題する書面によれば,Aの財務諸表に記載される資産及び負債においては,簿価と時価に著しい開差は認められないことから,Aの財務諸表に記載された簿価をもって1株当たりの純資産額を算定すれば,これをもって本件株式の取得に通常要する価額(時価)とみて差し支えないものと考えられる。 タイ国民商法典1220条が「株式会社は株主総会の特別決議によって新株式発行による増資を行うことができる。」と規定しているところ,本件株式の発行がAの臨時株主総会で決定されていることからすれば,本件株式の払込み又は給付の金額を決定する日(発行価額決定日)は,その開催日である平成19年3月16日となる。 そうすると,本件株 株式の発行がAの臨時株主総会で決定されていることからすれば,本件株式の払込み又は給付の金額を決定する日(発行価額決定日)は,その開催日である平成19年3月16日となる。 そうすると,本件株式の払込み又は給付の金額を決定する日(発行価額決定日)の現況における当該発行法人の株式の価額については,Aの財務諸表のうち,本件株式の発行を決定した平成19年3月16日の前で最も近接した時期に作成されたものと認められるAの平成18年1月1日から同年12月31日までの事業年度(以下「平成18年12月期」という。)の財務諸表を基にして,A株式の1株当たりの純資産価額の算定を行うのが相当である。すなわち,A株式の1株当たりの純資産価額は,Aの純資産価額4億0577万3458バーツを発行済株式総数1万2500株で割ると,3万2461バーツと算定され,これが本件株式の払込みの金額を決定した日の現況におけるAの株式の1株当たりの価額と認められる。 ウ本件株式の払込みの金額を決定した日の現況におけるAの株式の価額1株当たり3万2461バーツと,払込価額250バーツとの差額3万2211バーツは,1株当たりの純資産価額3万2461バーツの99.23パーセントとなり,10パーセント相当額以上である。したがって,本件株式は,その有価証券の取得のために通常要する価額に比して有利な金額で発行されたものと認められる。 エ本件増資前の原告の持株割合は,原告の従業員名義の株式を含めたとしても49パーセントであったが,本件増資により発行された本件株式を原告が全て引き受けたことから,原告の保有割合は原告の従業員名義の株式を含めて約97.9パーセントに至った。そして,本件増資により発行された株式を原告が全て引き受ける際に,原告から他の株主に対して金銭等の経済的な利 たことから,原告の保有割合は原告の従業員名義の株式を含めて約97.9パーセントに至った。そして,本件増資により発行された株式を原告が全て引き受ける際に,原告から他の株主に対して金銭等の経済的な利益が給付された事実は認められない。このような事情を踏まえると,本件株式の発行は,株主等である法人が有する株式の内容及び数に応じて平等にされたものといえず,原告以外の株主においては,本件株式の発行によりAにおける株式の保有割合が低下して,その資産価値は希薄化されるものであるから,原告と原告以外の株主においては経済的な衡平が維持されるとはいえない。したがって,本件株式については,他の株主等に損害を及ぼすおそれがないとは認められない。以上のとおり,本件株式は,払込価額が取得のために通常要する価額に比して有利な金額と認められ,発行について他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合に該当しないから,有利発行有価証券と認められる。 (5) 原告の主張に対する反論アタイ国民商法典では,会社設立の際に,創立総会で決定すれば,優先株を発行することができ(1108条),また,記名株式で,かつ,付属定款に別段の規定を置けば,譲渡制限を設けることもできる(1129条)。Aでは,付属定款(甲4)において,発行する全ての株式が記名普通株式であると定められているとともに(1条),全ての株式に譲渡制限が付され(4条),また,議決権も「株式1券につき決議権1個」と規定されている(24条)。 このようにAにおいて発行する株式は,いずれも同じ内容のものとされている。原告は,原告と他の株主との間の契約や取決めを踏まえれば,原告と原告以外の株主が有するA株式は,法人税基本通達2-3-8にいう内容の異なる株式に該当する旨主張するが,そもそも,株主間の契約や取決め 原告は,原告と他の株主との間の契約や取決めを踏まえれば,原告と原告以外の株主が有するA株式は,法人税基本通達2-3-8にいう内容の異なる株式に該当する旨主張するが,そもそも,株主間の契約や取決めは,当該株主間における債権的な効力のみを有するものであり,会社や第三者に対して,その効力を対抗できるものではないから,内容の異なる株式に当たるか否かを判断するに当たり,考慮すべきでない。また,法人税法施行令119条1項4号が「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」に有利発行に当たらないとした趣旨は,時価と払込価額の差額による利益と既保有株式の希薄化による損失が等しいといえる場合には有利発行ということはできないと考えられるからであるところ,株主間の契約や取決めがあったとしても,会社との関係においては,株式の内容に異同はなく,新株発行等によって議決権に代表される支配率の低下や利益配当請求権の希薄化が認められるのであるから,権利の内容に差異があるか否かを判断するに当たっては,当該株主間の契約や取決めを考慮する必要はないというべきである。また,株主間の契約の内容を考慮しても,原告以外の株主が議決権を行使できないことを定めた明示的な規定は存在しないし,利益配当請求権それ自体が放棄されているものではなく,原告と原告以外の株主においてA株式の譲渡の難易に差があったとしても,それは原告のAに対する支配関係を前提にしたものであって,事実上のものにすぎないから,原告が有する株式と原告以外の株主が有する株式とでその内容に差異はない。なお,原告が平成20年4月14日に原告以外の株主からA株式を取得した際には,平成19年12月末現在のAの財務諸表の純資産価額を用いてA株式の1株当たりの時価を算定し,A株式を購入しており,株主間の契約は必ずしも 20年4月14日に原告以外の株主からA株式を取得した際には,平成19年12月末現在のAの財務諸表の純資産価額を用いてA株式の1株当たりの時価を算定し,A株式を購入しており,株主間の契約は必ずしも約定どおりに履行されていない。 イ他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合に有利発行有価証券として扱わないのは,時価と払込価額の差額による利益と既保有株式の希薄化による損失が等しいと考えられるところにあるから,他の株主が新株引受けを希望しなかったために一部の株主にのみ新株が発行されたような場合であっても,結果として持分割合が変化し,1株当たりの経済的価値も下がることにより,新株を引き受けた株主には,既保有株式の希薄化による損失よりも時価と払込価額の差額による利益が発生することになるのであるから,このような場合にも有利発行有価証券として扱うのは当然である。 (原告の主張の要旨)(1)ア法人税法施行令119条1項4号は,有利発行有価証券の取得価額は,その取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額をその取得価額とする旨規定しているが,当該法人の他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合には,その適用を除外する旨規定している。すなわち,ある種類の株式の株主全員に対してその株式の保有株数に比例して新たな同内容の種類株式が発行されるような場合であって,かつ,それによって,他の内容の異なる株式の株主との衡平を害しないのであれば,同号の定める有利な金額による有価証券の取得には当たらない(法人税基本通達2-3-8)。そして,同号及び法人税基本通達2-3-8が,他の株主等に損害を及ぼすおそれがあるか否かについて,複数の異なる株主グループ間の利害関係に影響を与えるか否かを判断基準にしていることに照らせば,当該 。そして,同号及び法人税基本通達2-3-8が,他の株主等に損害を及ぼすおそれがあるか否かについて,複数の異なる株主グループ間の利害関係に影響を与えるか否かを判断基準にしていることに照らせば,当該株式に関する株主の権利の内容や権利行使の可否・条件等に差異がある場合には,法形式にとらわれることなく,内容の異なる株式として取り扱う必要がある。また,法人税は,経済的実質を重視する税であるから,他の「内容の異なる」株式との衡平を考慮するに際しては,経済的な衡平を重視すべきであり,決議内容に影響を与えることができないような少数株主の議決権は原告として勘案すべきではない。 イこれを本件についてみると,原告が本件増資前に有していたAの株式は,付属定款(甲4)の4条において譲渡制限が付されていることを除けば,その権利内容等に関して特記すべき取扱いは設けられていなかった。他方,原告以外の株主が本件増資前に有していたAの株式は,付属定款(甲4)の4条において譲渡制限が付されており,タイの場合には我が国の会社法140条以下に相当する規定がないため,取締役会の譲渡承認が得られない限り,株式を第三者に譲渡することは絶対的に禁止されていた。取締役会は,実質的な親会社である原告の意向に従うので,同様に譲渡制限が付されていても,原告は,保有していた株式を譲渡するのは自由であるのに対して,原告以外の株主は,原告の認める範囲内でしか保有していた株式を譲渡することは不可能であった。 また,原告以外の株主は,原告との間で契約を締結し,Aが清算手続等に入った場合など一定の場合には,原告によりその保有するAの株式を取得価額で買い取ることが保証されていた。これにより,原告以外の株主は,Aの財務状況の悪化のリスクを負担しない仕組みとなっており,将来,その保有する株 定の場合には,原告によりその保有するAの株式を取得価額で買い取ることが保証されていた。これにより,原告以外の株主は,Aの財務状況の悪化のリスクを負担しない仕組みとなっており,将来,その保有する株式を額面金額で処分することが予定されていた。 さらに,原告以外の株主は,配当受領権について,株主間契約により,Aの業績に関係なく,保有株式の取得金額に対して一定の支払を受けるという経済的な実質が確保され,その代わりに,その他の利益配当等の一切の受領権を放棄することとされていた。 以上のとおり,原告が有する株式と原告以外の株主が有する株式とでは,譲渡制限,取得価額による買取保証及び配当受領権において内容を異にしており,両者は,内容の異なる株式に該当する。なお,原告が有する株式と原告以外の株主が有する株式との内容の異なる理由がタイ国民商法典上の種類株式ではなく株主間契約によるのは,タイ国事業規制法やタイ国民商法典の種類株式規定が乏しいため,これらの法が予定する種類株式の発行によっては求める種類株式の実態を実現することができないという事情があったためである。 ウ原告以外の株主は,保有するAの株式を額面金額を超える価額で第三者に譲渡することはできず,配当受領権もAの業績にかかわらず一定の金額を受け取るという取決めになっていたのであるから,本件増資により,何ら損害が生じるおそれがない。すなわち,本件増資の払込金額の増減にかかわらず,原告以外の株主がAから毎年受け取る金額には変動がなく,また,将来株式を譲渡する際,譲渡益を得る見込みが最初からないのであるから,その期待権が損なわれることもない。そして,利益配当請求権は,放棄されていたのであるから,その希薄化が具体的な経済的損失として現れることもない。さらに,本件においては,実質的にA ないのであるから,その期待権が損なわれることもない。そして,利益配当請求権は,放棄されていたのであるから,その希薄化が具体的な経済的損失として現れることもない。さらに,本件においては,実質的にAを支配していた原告の意向に反して原告以外の株主が株式を譲渡することは不可能であったから,原告の意向に反して第三者が存在するという事態は起こりえない。 以上によれば,原告以外の株主が本件増資によって損害が生ずることはないのであるから,原告以外の株主から原告に移転する「経済的利益」は存在しない。したがって,原告には受贈益が存在せず,本件株式は,有利発行有価証券に該当しない。 (2) 仮に原告が有する株式と原告以外の株主が有する株式とで内容を異にせず,同種の株式であったとしても,本件増資は,「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」に該当する。 すなわち,法人税基本通達2-3-8は,「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」とは,株主等である法人が有する株式の内容及び数に応じて株式又は新株予約権が平等に与えられ,かつ,その株主等とその内容の異なる株式を有する株主等との間においても経済的な衡平が維持される場合をいうとしているところ,ここに「株主等である法人が有する株式の内容及び数に応じて株式又は新株予約権が平等に与えられ」というのは,株主が,保有する株式数に応じて新株又は新株予約権を引き受ける権利を平等に割り当てられ,それを行使して新株又は新株予約権を取得した場合を指し,新株発行の場合に,他の株主が実際に割り当てられた権利を行使して株式を取得することまでを要求するものではない。本件において,本件増資の過程で,原告のみならず全株主に対してその保有していたA株式の数に応じて,同種の新株を額面金額で引き受ける権利が 利を行使して株式を取得することまでを要求するものではない。本件において,本件増資の過程で,原告のみならず全株主に対してその保有していたA株式の数に応じて,同種の新株を額面金額で引き受ける権利が付与されたが,原告以外の株主は,その新株の引受けを拒絶した結果,原告のみが新株を引き受けるという結果になったものである。 したがって,本件増資は,「株主等である法人が有する株式の内容及び数に応じて株式又は新株予約権が平等に与えられ」た場合に該当するから,原告の本件株式の引受けは,「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」に該当し,本件株式は,有利発行有価証券に該当しない。 (3) 法人税法施行令119条1項4号は,有価証券と引換えに払込みをした金銭の額及び給付をした金銭以外の資産の価額の合計額が「その取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額」(以下「判定の時価」という。)に比して有利な金額である場合における当該払込み又は当該給付により取得をした有価証券の取得価額は,「その取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額」(以下「計算の時価」という。)とする旨規定しているところ,判定の時価は,新株発行が有利発行に当たるか否かの判定のために用いられるものであるのに対して,計算の時価は,有利発行に当たることが確定した後,課税するべき取得金額を算定するために用いられるものである。判定の時価の解釈に関しては,法人税基本通達2-3-7が,当該株式の払込み又は給付の金額を決定する日の現況における当該発行法人の株式の価額に比して社会通念上相当と認められる価額を下回る価額をいうものとする旨規定しているが,その算定方法は何ら示していない。これに対して,計算の時価に関しては,法人税基本通達2-3-9が具体的な算定 価額に比して社会通念上相当と認められる価額を下回る価額をいうものとする旨規定しているが,その算定方法は何ら示していない。これに対して,計算の時価に関しては,法人税基本通達2-3-9が具体的な算定方法を示している。このように同一の文言の2つの時価が異なる機能を果たしているのは,有利発行であるか否かの判定は,その取引の当事者間の諸事情を踏まえて判断すべきであるのに対して,その判定の結果が有利発行であるとなった場合には,財産評価通達に定められている方法等に基づいて疑義のない金額を取得価額と受贈益の額を算出するという趣旨に基づくものである。このように「判定の時価」と「計算の時価」は役割が異なるのであるから,「計算の時価」の算定方法について規定した法人税基本通達2-3-9に従って算定された金額について,「判定の時価」について規定した法人税基本通達2-3-7の10パーセント基準を当てはめるのは妥当でない。 (4) 法人税法施行令119条1項4号にいう「その取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額」には,「判定の時価」と「計算の時価」の2つがあり,「判定の時価」は,その取引の当事者間の諸事情を踏まえて判断すべきであるところ,被告は,本件増資の際の諸事情,株主間の関係等の事情について何ら主張立証をしていないから,本件増資が有利発行に当たることの立証ができていない。 第3 当裁判所の判断 1 本件増額更正処分に至る認定判断過程と原告の主張(1) 法人税法22条2項は,内国法人の無償による資産の譲受けに係る収益の額を,当該法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額とする旨定めているが,新株の発行を適正な価額より低い価額で引き受けた場合においても,その取得価額と適正な価額との差額については, 事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額とする旨定めているが,新株の発行を適正な価額より低い価額で引き受けた場合においても,その取得価額と適正な価額との差額については,無償による資産の譲受けに係るものとして収益の額を構成するものといえる。本件では,本件株式の有利発行により原告に上記収益の額があったとして,本件増額更正処分がされたものである。 (2)ア処分行政庁は,上記収益の額を判断する際に必要となる,本件株式の取得のために通常要する価額につき,以下のような方法と認定事実に基づき,これを算定している。 イ処分行政庁は,法人が株式を引き受けた場合の収益の額を算定するに際して株式の価額の算定方法について定めた規定は存在しないが,有価証券の譲渡損益の算定方法について定めた法人税法61条の2が存在することから,同規定によって株式引受けに係る株式の時価を算定するのが合理的であるとした上,同条23項が,有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出の基礎となる取得価額の算出方法等について必要な事項は政令で定める旨規定し,これを受けた法人税法施行令119条1項4号が,有利発行有価証券は,その所得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額をもって取得価額とするとしていることを踏まえ,本件株式の取得のために通常要する価額を算定することとした。 上記算定の方法については,法人税基本通達2-3-9(通常要する価額に比して有利な金額で新株等が発行された場合における有価証券の価額)が,算定対象の有価証券を,①新株が上場有価証券等の場合,②旧株は上場有価証券等であるが,新株は上場有価証券等でない場合,③①及び②以外の場合に区別して,それぞれに応じて算定方法を定めており,③の場合については,その新株又は出資の払込期日 証券等の場合,②旧株は上場有価証券等であるが,新株は上場有価証券等でない場合,③①及び②以外の場合に区別して,それぞれに応じて算定方法を定めており,③の場合については,その新株又は出資の払込期日において当該新株につき法人税基本通達4-1-5(上場有価証券等以外の株式の価額)及び4-1-6(上場有価証券等以外の株式の価額の特例)に準じて合理的に計算される当該払込期日の価額を有価証券の取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額とすることとしている。 このうち,法人税基本通達4-1-5は,直接的には,上場有価証券等以外の株式について資産評定による評価益の益金算入に係る法人税法25条3項の規定を適用する場合における,民事再生法の規定による再生計画認可の決定があった時の当該株式の価額の原則的な算定方法について規定したものであるところ,売買実例や類似法人がある場合には,それらを参考に価額を算定すべきであるものの,売買実例もなく,類似法人も存在しない場合には,当該再生計画認可の決定があった日又は同日に最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額とする(4-1-5(4))。また,法人税基本通達4-1-6は,一定の条件の下に,財産評価通達の定める方法を用いて価額を算定する方法を認めるものである。 処分行政庁は,本件株式が,上場されておらず,売買された実例も認められない上,Aは,タイにおいて設立された法人であり,我が国において事業の種類,規模,収益の状況等が類似する法人も存在しないから,本件株式の取得の時におけるその取得のために通常要する価額の算定方法については,上記法人税基本通達4-1-5(4)を準用し,本件株式の発行価額決定日に最も近接した時 類似する法人も存在しないから,本件株式の取得の時におけるその取得のために通常要する価額の算定方法については,上記法人税基本通達4-1-5(4)を準用し,本件株式の発行価額決定日に最も近接した時期に作成された財務諸表の数値を用いるのが合理的であるとした。 そして,処分行政庁は,本件株式の発行価額決定日は,本件株式の発行が決定されたAの臨時株主総会の開催日である平成19年3月16日であるから,Aの財務諸表のうち,本件株式の発行を決定した同日の前で最も近接した時期に作成されたものと認められるAの平成18年12月期の財務諸表を基にして,A株式の1株当たりの純資産価額の算定を行うのが相当であるとした上,平成18年12月期の財務諸表(乙7)上,A株式の1株当たりの純資産価額は,Aの純資産価額4億0577万3458バーツを本件株式の発行価額決定日時点における発行済株式総数1万2500株で割った3万2461バーツと算定されるから,これが発行価額決定日時点の現況におけるAの株式の1株当たりの価額と認めたものである。 ウ以上の認定判断の前提となる法令の適用に誤りがあるとはいえず,また,算定に用いた通達の内容は合理的なものであり,算定の前提となる事実関係の認定についても,前記「前提事実」に照らして誤りがあるとはいえない。したがって,処分行政庁による,本件株式の取得のために通常要する価額の算定に瑕疵があるとはいえない。 (3)ア処分行政庁が,上記算定を踏まえつつ本件株式を有利発行有価証券に該当するとした根拠と,これに対する原告の主張は,次のとおりである。 イ有利発行有価証券該当性について,法人税基本通達2-3-7は,当該新株の発行価額を決定する日の現況における当該発行法人の株式の価額に比して社会通念上相当と認められる価額を下回 りである。 イ有利発行有価証券該当性について,法人税基本通達2-3-7は,当該新株の発行価額を決定する日の現況における当該発行法人の株式の価額に比して社会通念上相当と認められる価額を下回る価額で発行されているか否かで判定するものとし,社会通念上相当と認められる価額を下回るかどうかの判定は,当該株式の価額と発行価額との差額が当該株式の価額のおおむね10パーセント相当額以上であるか否かによって判定する旨定めている。 ところで,本件では,Aの臨時株主総会において,普通株式28万7500株(本件株式)を1株当たり額面価額1000バーツで発行することとされ,本件株式の当初の払込価額は1株当たり額面の25パーセントである250バーツとすることが決定され,原告は,平成19年3月27日,Aに払込価額7187万5000バーツ(1株当たり250バーツ)を支払い,Aの普通株式28万7500株を取得している。 処分行政庁は,上記(2)イのとおり算出した本件株式の取得に通常要する価額である3万2461バーツと,本件株式1株当たりの払込価額である250バーツとを比較し,その差額が本件株式の価額の10パーセント相当額以上であり,本件株式を有利発行有価証券に該当するとして,本件増額更正処分をしたものである。 ウ処分行政庁が本件株式を有利発行有価証券に該当するとしたことにつき,原告は,処分行政庁が上記のように本件株式の取得に通常要する価額と本件株式の払込価額を比較して本件株式を有利発行有価証券に該当するとしたことを誤りであると主張する(前記「原告の主張の要旨」(3))。 また,法人税法施行令119条1項4号が,有価証券と引換えに払込みをした金銭の額の合計額が,払い込むべき金銭の額を定める時における当該有価証券の取得のために通常要する価額に比 の要旨」(3))。 また,法人税法施行令119条1項4号が,有価証券と引換えに払込みをした金銭の額の合計額が,払い込むべき金銭の額を定める時における当該有価証券の取得のために通常要する価額に比して有利な金額であっても,他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合には,有利発行有価証券としない旨定め,法人税基本通達2-3-8が,「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」とは,株主等である法人が有する株式の内容及び数に応じて株式又は新株予約権が平等に与えられ,かつ,その株主等とその内容の異なる株式を有する株主等との間においても経済的な公平が維持される場合をいう旨定めているところ,原告は,これらの定めによれば,本件の事情の下では,本件株式が有利発行有価証券に該当するとはいえないとも主張する(前記「原告の主張の要旨」(1)(2))。 エそこで,以下では,①本件株式の取得に通常要する価額として算定された価額と本件株式の払込価額を比較して本件株式を有利発行有価証券に該当するとしたことの適否,②法人税法施行令119条1項4号及び法人税基本通達2-3-8の定めに照らして本件株式を有利発行有価証券でないとすべき事情の有無について,順次検討する。 2 本件株式の取得に通常要する価額として算定された価額と本件株式の払込価額を比較して本件株式を有利発行有価証券に該当するとしたことの適否原告は,新株発行が有利発行に当たるかどうかを判定するために用いられる「判定の時価」と,有利発行と認められる場合における受贈益の額を算出するために用いられる「計算の時価」は,役割が異なるから,「計算の時価」の算定方法について規定した法人税基本通達2-3-9に従って算定された金額について,「判定の時価」について規定した法人税基本通達 るために用いられる「計算の時価」は,役割が異なるから,「計算の時価」の算定方法について規定した法人税基本通達2-3-9に従って算定された金額について,「判定の時価」について規定した法人税基本通達2-3-7の10パーセント基準を当てはめるのは妥当でなく,「判定の時価」は,その取引の当事者間の諸事情を踏まえて判断すべきである旨主張するので,以下検討する。 法人税基本通達2-3-7は,その本文において,法人税法施行令119条1項4号に規定する「払い込むべき金銭の額又は給付すべき金銭以外の資産の価額を定める時における有価証券の取得のために通常要する価額に比して有利な金額」とは払込金額等を決定する日の現況における当該発行法人の株式の価額に比して社会通念上相当と認められる価額を下回る価額をいうものとし,その注2において,払込金額等を決定する日の現況における当該株式の価額とは,決定日の価額のみをいうのではなく,決定日前1か月間の平均株価等,払込金額等を決定するための基礎として相当と認められる価額をいうとしている。 これは,上場株式の場合,平均株価のほか,最近における株価の変動が著しく異常な要素が入っている場合には,その異常性を排除した通常安定株価を算定してこれを基礎とした上で,払込金額等を決定する日の現況における当該株式の価額を算定し,これを有利発行の判断の基礎とすることを認める趣旨と解されるところであり,その定めは合理的なものといえる。この点,本件株式については,先にも見たとおり,その発行価額決定日に最も近接した時期に作成された財務諸表の数値を用いて算出された1株当たりの純資産価額により,払込金額等を決定する日の現況における当該株式の価額を算定したといえるのであるが,本件株式が,上場されておらず,売買実例もないことに照らすと,上記注2 用いて算出された1株当たりの純資産価額により,払込金額等を決定する日の現況における当該株式の価額を算定したといえるのであるが,本件株式が,上場されておらず,売買実例もないことに照らすと,上記注2が挙げるような諸事情を勘案する必要性があるとはいえず,上記算定の手法は合理的なものというべきである。 また,法人税基本通達2-3-7は,その注1において,社会通念上相当と認められる価額を下回るかどうかは,当該株式の価額と払込金額等の差額が当該株式の価額のおおむね10パーセント相当額以上であるかどうかにより判定するとしているが,これは,株式の証券取引所への新規上場の場合における払込金額等をも考慮したものと解されるところであり,その定めは合理的なものといえる。本件株式についても,上記のとおり算出された株式の価額と払込金額との差額が同価額の10パーセント相当額以上(計算によれば99パーセント超)であることから,処分行政庁においては,有利発行有価証券に該当すると判断したのであり,その判断過程は合理的なものといえる。 以上検討したところによれば,処分行政庁が,本件株式を有利発行有価証券に該当すると判断したことについて瑕疵はないというべきである。なお,原告は,法人税基本通達2-3-7と2-3-9の書きぶりに違いがあり,前者は「判定の時価」についての具体的な算定方法を示していないから,取引の当事者間の諸事情を踏まえて有利発行有価証券該当性を判断すべきである旨主張するが,前者の定めの趣旨は既にみたとおりであって,その定めが当事者間の諸事情を参酌すべきであるとの趣旨に出たものということはできず,原告の上記主張は採用できない。 3 法人税法施行令119条1項4号及び法人税基本通達2-3-8の定めに照らして本件株式を有利発行有価証券でないとすべき事情の有 趣旨に出たものということはできず,原告の上記主張は採用できない。 3 法人税法施行令119条1項4号及び法人税基本通達2-3-8の定めに照らして本件株式を有利発行有価証券でないとすべき事情の有無(1) 法人税法施行令119条1項4号は,有価証券と引換えに払込みをした金銭の額の合計額が,払い込むべき金銭の額を定める時における当該有価証券の取得のために通常要する価額に比して有利な金額であっても,他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合には,有利発行有価証券としない旨定め,法人税基本通達2-3-8は,「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」とは,株主等である法人が有する株式の内容及び数に応じて株式又は新株予約権が平等に与えられ,かつ,その株主等とその内容の異なる株式を有する株主等との間においても経済的な衡平が維持される場合をいう旨定めている。 この点,原告は,原告以外の株主が有する株式は,株主間契約によって,原告が有する株式との関係で,上記通達にいう内容の異なる株式となっており,同契約が適用される結果,本件増資は原告以外の株主に損害を及ぼすおそれがないから,本件株式は有利発行有価証券に該当しない旨主張するので,以下,検討する。 アまず,法人税法施行令119条1項4号が定められるに至る経緯についてみると,平成18年政令第125号による改正前においては,法人税法施行令119条1項3号が,「有利な発行価額で新株その他これに準ずるものが発行された場合における当該発行に係る払込みにより取得をした有価証券(株主等として取得をしたものを除く。)」につき,その有価証券の当該払込みに係る期日における価額をもって取得価額とする旨定めていたものである。同号が,「株主等として取得をしたもの」を有利発行有価証券から として取得をしたものを除く。)」につき,その有価証券の当該払込みに係る期日における価額をもって取得価額とする旨定めていたものである。同号が,「株主等として取得をしたもの」を有利発行有価証券から除く旨定めたのは,それが株主等として取得をしたものであって,他の株主に対しても株式が平等に与えられている場合には,株主間の経済的な衡平が図られており,そのような場合,時価と払込価額の差額による利益と既存保有株式の希薄化による損失が等しいと考えられることから,有利発行有価証券に当たるものとはしないこととしたものと解される。その後,上記改正により,有利発行に係る定めは119条1項4号に規定されることとなり,上記「株主等として取得をしたものを除く」に代えて「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」には有利発行有価証券に当たらない旨が定められたのであるが,規定内容がこのように変更されたのは,会社法の制定による種類株式の多様化に伴い,従前の「株主等として取得したものを除く」の内容を,より明確化する趣旨に出たものであって,株主間の平等に着目した上記の考え方を変更するものではなかったと解される。 このことは,上記改正に係る解説(甲17)の内容から明らかであるし,また,法人税基本通達2-3-8が上記のとおり定めており,その中で株主間の経済的な衡平の維持に着目していることなどからも裏付けられるところである。 イ上記改正経緯に照らせば,上記通達にいう内容の異なる株式とは,種類株式のことを指すものと解される。そして,タイ国民商法典(乙6)においては,普通株式のほか優先株式も発行することができるところ(1108条),Aでは,付属定款(甲4)において,発行する全ての株式が記名普通株式であると定められ(1条),全ての株式に譲渡制限が付され(4条) 普通株式のほか優先株式も発行することができるところ(1108条),Aでは,付属定款(甲4)において,発行する全ての株式が記名普通株式であると定められ(1条),全ての株式に譲渡制限が付され(4条),議決権も「株式1株につき決議権1個」と規定されている(24条)。したがって,Aの発行する株式は,原告の有する株式も原告以外の株主が有する株式もいずれも譲渡制限が付され,株式1株につき決議権1個が与えられた記名普通株式である。そうすると,原告以外の株主の有する株式が内容の異なる株式に当たるとはいえない。 この点,原告は,原告以外の株主が有する株式は,株主間の契約により,Aが清算手続等に入った場合など一定の場合には原告が取得価額により買い取ることが保証されており,Aの業績に関係なく原告から一定の支払を受けるとして経済的実質が確保され,その代わり配当受領権を放棄するとされている上,Aの実質的な親会社である原告の意向に反した第三者への譲渡も制限されており,原告の有する株式と内容を異にするものである旨主張する。 しかしながら,原告が上記主張の根拠とするのは,株主間契約であって,当該契約は,Aと株主との権利義務関係を拘束するものではないし,まして,株式の内容自体を変えるものではない。 また,原告以外の株主が原告の意向に反した第三者へその株式を譲渡することはできないという制限も,事実上の制約にすぎない。 原告が主張する上記差異が存在するとはいっても,それは原告がAの実質的な親会社である場合に限り事実上存在するものにすぎないし,さらにいえば親会社たる原告の意向いかんによって変動し得る流動的なものといわざるを得ない。すなわち,株主間契約とは別に,Aが原告の意向を受けて株主間合意と実質的に異なる内容で原告以外の株主との間で株式の買取りをしたり,利益配当 いかんによって変動し得る流動的なものといわざるを得ない。すなわち,株主間契約とは別に,Aが原告の意向を受けて株主間合意と実質的に異なる内容で原告以外の株主との間で株式の買取りをしたり,利益配当をしたりすることが不可能と認めるべき事情はなく,事実,原告は,原告以外の株主であるH・カンパニー・リミテッド及びI株式会社との間で,それぞれ,その保有するA株式を額面額で買い取る旨約定していた(甲8,9)にもかかわらず,平成19年12月末現在のAの財務諸表の純資産価額を用いてA株式の1株当たりの時価を算定し,H及びI株式会社から,この時価で購入しているのである(甲19,乙8)。 そうすると,仮に原告が主張するように同種株式であっても事情のいかんによれば内容の異なる株式に当たる余地があるとの見解に立ったとしても,上記のとおり,原告が挙げる株主間契約による差異は,株式の内容とは直接関係しない株主同士の個別契約によるものであって,それにより生じる差異は事実上のものであり,かつ流動的なものにすぎないのであるから,これらの事情があることをもって,原告以外の株主の株式が原告の株式と内容の異なる株式に当たるということはできない。 ウ付言するに,原告の主張は,原告以外の株主の利益が株主間契約によって保護されており,本件増資によっても保護された利益を失うことはないのであるから,原告以外の株主に損害を及ぼすおそれがないという趣旨のものと解される。しかしながら,上記アでみたとおり,法人税法施行令119条1項4号にいう「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」は,株主間の経済的な衡平が維持されているか否かに着目して解釈されるべきところ,本件増資によって,原告が得る株主としての権利は増資前に比して格段に大きなものになるという利益を得るのに対 れる場合」は,株主間の経済的な衡平が維持されているか否かに着目して解釈されるべきところ,本件増資によって,原告が得る株主としての権利は増資前に比して格段に大きなものになるという利益を得るのに対し,原告以外の株主はかかる利益を何ら得るところがないのであるから,「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」に当たらないのは明らかというべきであり,かかる観点からすれば,原告以外の株主の株式が内容の異なる株式に当たるか否かについて論じるまでもなく,原告の主張は採用できないものといえるところである。 (2) また,原告は,仮に原告が有する株式と原告以外の株主が有する株式が同種の株式であったとしても,本件増資に際し,原告のみならず全株主に対してその保有していたA株式の数に応じて同種の新株を額面金額で引き受ける権利が付与されたにもかかわらず,原告以外の株主が自らその新株の引受けを拒絶した結果,原告のみが新株を引き受けることになったものであるから,本件増資は,法人税基本通達2-3-8が有利発行に当たらない場合として定める「株主等である法人が有する株式の内容及び数に応じて株式又は新株予約権が平等に与えられ」た場合に該当する旨主張する。 しかしながら,法人税法施行令119条1項4号にいう「他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合」は,株主間の経済的な衡平が維持されているか否かに着目して解釈されるべきであり,本件増資によって,原告とそれ以外の株主との間で経済的な衡平が維持されない状態になったのは,上記(1)ウで述べたとおりであり,かかる状態が生じたことは原告以外の株主にも新株予約権が与えられたことによって左右されず,したがって,本件株式が有利発行有価証券に当たるという結論も左右されないものというべきである。 なお,法人 かかる状態が生じたことは原告以外の株主にも新株予約権が与えられたことによって左右されず,したがって,本件株式が有利発行有価証券に当たるという結論も左右されないものというべきである。 なお,法人税基本通達2-3-8は,「株主等である法人が有する株式の内容及び数に応じて株式又は新株予約権が平等に与えられ」た場合は,有利発行有価証券に当たらない旨を定めるが,これは株式だけでなく新株予約権も有価証券(法人税法2条21号,金融商品取引法2条1項9号)に当たり,その取得価額を定めるにつき法人税法施行令119条1項4号の適用が問題となる場合があることから,その場合の解釈について定めたものと解される。したがって,上記通達にいう「新株予約権が平等に与えられ」た場合とは,有価証券たる新株予約権の取得価額を算定するに当たって有利発行有価証券に当たらないものとして扱う場合を定める趣旨のものであり,それを超えて,新株予約権が平等に与えられてさえいれば,これに基づく株式の引受けの有無が区々であったために株主間において経済的な衡平が維持されない状況に至った場合であっても,当該株式を有利発行有価証券としないとする趣旨のものとは解されない。発行された株式が有利発行有価証券に当たるかどうかは,当該株式が平等に与えられたかどうかを踏まえて判断すべきものと解するのが相当である。 また,原告は,株主全員に新株予約権が与えられた場合でも,実際には,一部に失権株主が生じることがあるが,かかる場合に,引受けをした株主の株式につき有利発行有価証券とは取り扱わないのが課税実務の運用であった旨主張する。原告が主張する運用がいかなる事案についていかなる認定判断に基づく運用例を踏まえたものかは主張上も証拠上も明らかではないが,失権株主がごく僅かであるなど特別な事情があるといえる であった旨主張する。原告が主張する運用がいかなる事案についていかなる認定判断に基づく運用例を踏まえたものかは主張上も証拠上も明らかではないが,失権株主がごく僅かであるなど特別な事情があるといえる場合にいかに判断すべきかは格別として,本件では,本件増資前には発行済み株式の51パーセントを有していた他の株主が一切新株予約権を行使せず,他方,発行済み株式の29パーセント(原告の従業員名義のものを加えても49パーセント)しか有しなかった原告において,株式の価額よりも著しく低い引受価額によりこれを全て行使したことによって,原告が発行済み株式の97.0パーセント(原告の従業員名義のものを加えると97.7パーセント)以上を有するに至ったものであり,本件増資により,それまでの両者間の株主としての経済的な衡平が維持されなくなったのは明らかであるから,これが有利発行有価証券に当たるとする上記判断は左右されないものというべきである。 4 本件増額更正処分等の適法性について以上を前提として,本件増額更正処分等についてみると,被告が本訴において主張する別紙3課税の根拠及び計算記載の根拠はいずれも相当であり,かつ,その根拠に基づいて算定した原告の平成19年3月期の法人税に係る所得金額,納付すべき税額は,同別紙の記載のとおりであると認められ,別表1記載の本件増額更正処分等における所得金額,納付すべき税額と一致するから,本件増額更正処分等は,適法というべきである。 第4 結論よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第51部 裁判長裁判官小林宏司 裁判官桃崎剛 東京地方裁判所民事第51部 裁判長裁判官小林宏司 裁判官桃崎剛 裁判官武見敬太郎 (別紙3)課税の根拠及び計算 1 本件増額更正処分の根拠被告が本件訴訟において主張する原告の平成19年3月期の法人税に係る所得金額,納付すべき税額は,次のとおりである(別表2参照)。 (1) 所得金額(別表2の④欄) 70億2750万7758円上記金額は,次のアの金額にイ及びウの金額を加算した金額である。 ア減額更正処分後所得金額(同①欄) 56億2310万4333円上記金額は,原告の平成19年3月期の法人税に対する本件減額更正処分による所得金額である。 イ受贈益の計上漏れ額(同②欄) 14億0440万3000円上記金額は,原告が平成19年3月期においてAから引き受けた本件株式が法人税法施行令119条1項4号に掲げる有価証券に該当することから,本件株式の払込期日における価額と原告の払込金額との差額は,受贈益の計上漏れと認められ,原告の所得金額に加算すべき金額である。 ウ受取配当等の益金不算入過大額(同③欄) 425円原告は,平成19年3月期の確定申告における受取配当金の益金不算入額の計算において,「当期末現在額の純資産の帳簿価額」に貸借対照表の純資産から控除している自己株式550万7101円を加算しているが,自己株式は法人税法2条21号に掲げる有価証券に該当しないことから「総資産の帳簿価額」に加算する必要がない。上記金額は,当該自己株式について「純資産の帳簿価額」から除いて計算した受取配当等の益金不算入額9560万6109円と,申告に際 証券に該当しないことから「総資産の帳簿価額」に加算する必要がない。上記金額は,当該自己株式について「純資産の帳簿価額」から除いて計算した受取配当等の益金不算入額9560万6109円と,申告に際して益金不算入額とした金額9560万6534円との差額425円であり,原告の所得金額に加算すべき金額である。 ⑵ 所得金額に対する法人税額(同⑥欄) 21億0825万2100円上記金額は,上記(1)の所得金額(ただし,国税通則法118条1項の規定に基づき1000円未満の端数金額を切り捨てた後のもの。同⑤欄)に,法人税法66条(平成18年法律第10号による改正前のもの。)の規定する税率(平成18年法律10号による廃止前の経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律16条1項1号の規定を適用した後のもの。)を乗じて算出した金額である。 ⑶ 法人税額から控除される所得税額等の額(同⑩欄)8508万4328円上記金額は,法人税法68条に規定する法人税額から控除される所得税の額3016万3880円(同⑦欄)と法人税法69条に規定する法人税額から控除される外国税額5077万0378円(同⑧欄。平成19年3月期において,自己株式は法人税法2条21号に掲げる有価証券に該当しないことから,当期末現在の純資産価額から当該自己株式の金額550万7101円を減算し,純資産価額を4033億2410万2868円として国外の当期利益から減算する共通の利子を再計算し,本件所得金額及び所得に対する法人税額により当期に控除できる外国法人税額を再計算した額である。なお,本件減額更正処分時の法人税額から控除される外国税額は5077万4950円であり,差額は4572円となる。)及び租税特別措置法(平成19年法律第6号による改正前 法人税額を再計算した額である。なお,本件減額更正処分時の法人税額から控除される外国税額は5077万4950円であり,差額は4572円となる。)及び租税特別措置法(平成19年法律第6号による改正前のもの。)42条の6第2項に規定する法人税額から控除される特別控除額415万0070円(同⑨欄)の合計額である。 (4) 納付すべき法人税額(同⑪欄) 20億2316万7700円上記金額は,上記⑵の金額から上記⑶の金額を差し引いた金額(国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てたもの。)である。 (5) 既に納付の確定した法人税額(同⑫欄)16億0184万2300円上記金額は,本件減額更正処分により確定した納付すべき法人税額である。 (6) 差引納付すべき法人税額(同⑬欄) 4億2132万5400円上記金額は,上記(4)の金額から上記(5)の金額を差し引いた金額であり,平成19年3月期の本件増額更正処分により原告が新たに納付すべき金額である。 2 本件増額更正処分の適法性被告が本件訴訟において主張する原告の平成19年3月期の法人税に係る所得の金額,納付すべき税額は,それぞれ,上記1のとおりであるところ,本件増額更正処分における所得の金額,納付すべき税額(別表1「課税の経緯」の「増額更正処分等」欄)は,いずれも上記1の各金額と同額である。 3 本件賦課決定処分の根拠上記2のとおり,本件増額更正処分は適法であるところ,原告は,平成19年3月期の法人税について,納付すべき税額を過少に申告していたものであり,納付すべき税額を過少に申告していたことについて国税通則法65条4項に規定する「正当な理由」は存在しない。 したがって,本件増額更正処分に伴い課される過少申告加算税の額は,国税通則法65条1項 り,納付すべき税額を過少に申告していたことについて国税通則法65条4項に規定する「正当な理由」は存在しない。 したがって,本件増額更正処分に伴い課される過少申告加算税の額は,国税通則法65条1項に基づき,原告が本件増額更正処分により新たに納付すべきこととなった法人税額4億2132万5400円(同⑬欄)から当初の申告税額に達するまでの部分に対応する税額40万7700円(同⑭欄)を差し引いた金額である過少申告加算税対象額4億2091万円(ただし,国税通則法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。)に100分の10の割合を乗じた金額4209万1000円である。 4 本件賦課決定処分の適法性被告が本件訴訟において主張する原告の平成19年3月期の法人税に係る過少申告加算税の額は,上記3のとおりであるところ,本件賦課決定処分により原告に賦課された過少申告加算税の額(別表1「増額更正処分等」欄の「過少申告加算税の額」欄)は,上記2の金額と同額であるから,本件賦課決定処分は適法である。
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