主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求被告は,原告に対し,金600万円及びこれに対する平成10年3月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要 本件は,被告の町議会議員である原告が,被告の町議会から町議会議員の除名処分を受けたが,後に裁判所の判決により当該除名処分を取り消されたという事実関係の下で,原告が,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を求めた事案である。 なお,付帯請求は,当該除名処分のあった日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金である。 当事者間に争いのない事実(なお,(1)及び(2)は,(4)イ記載の広島高等裁判所岡山支部判決が認定した事実である)。 (1) 議長交替合意及び原告の議長選出の経緯,,ア被告の町議会では昭和46年5月から平成7年4月までの間において昭和50年5月から昭和54年4月までと昭和58年5月から昭和62年4月までの各期間を除き,議長選出選挙に当たってあらかじめ申し合わせをする等の方法により議長の法定任期4年を前後2年あて分割することにより交替することが行われてきた(もっとも,昭和48年3月から昭和50年4月までの期間は2年でなく,1年で交替した。その理由は,必。)ずしも同じではないが,多くの場合,複数の対立候補が議長の椅子を巡って激しく争うならば議員間に選挙後も議長選出選挙による感情的対立が残,。 ,りその後の議会の正常な運営が阻害されるというものであったそして平成3年5月の議長選出選挙では,あらかじめ申し合わせがなされず,対立候補による激しい多数派工作の末での投票の結果,得票数同数となり,くじ引きで当選者を決める事態となったことから,法定任期4年を前後2年あて分 の議長選出選挙では,あらかじめ申し合わせがなされず,対立候補による激しい多数派工作の末での投票の結果,得票数同数となり,くじ引きで当選者を決める事態となったことから,法定任期4年を前後2年あて分割して議長に就任するということがあった。このような申し合わせによる議長交替は,昭和42年3月になされた全国市町村議会議長会及び都道府県議会議長会における議長,副議長の短期交代自粛に関する申し合わせにかかわらず,今日,被告の町議会だけでなく,H県下における大多数の市町村議会において行われているものである。 イ原告は,昭和54年4月に被告の町議会議員に初めて当選して以来,平成7年4月の当選で当選回数が5回を数え,平成元年3月から平成3年4月までの2年間副議長に就任したこともあるため,7年5月定例会で行われる議長選出選挙では議長に選出されることを希望していた。被告の町議会では,議長選出選挙につき立候補制を採用しておらず,各議員が意中の人物を投票で指名するという方法に拠っていたため,議長就任希望者は,。 ,,議長選出選挙までにその意思表示をする必要があったこのため原告は議員当選の日にA議員を始め10名くらいの議員に対し当選祝いの挨拶を兼ねて議長選出選挙における原告支持を訴えて回った。これに対し,同じく昭和54年4月に被告の町議会議員に初めて当選して以来5期目を数えるB議員も議長就任希望を有しており,議長選出選挙における同議員の支持を訴えて回った。このような両者の動きを受けて,前回の議長選出選挙に当たり激しい多数派工作によって議員間に感情的対立が残った経験を踏まえ,C議員の提案により同議員と議員歴の長いA議員(議長経験者)及び(),D議員議長経験者の3名があらかじめ議長2年交替につき協議した上A議員が呼びかけ人となって原告とB議員を呼 験を踏まえ,C議員の提案により同議員と議員歴の長いA議員(議長経験者)及び(),D議員議長経験者の3名があらかじめ議長2年交替につき協議した上A議員が呼びかけ人となって原告とB議員を呼び出し,以上の議員5名が被告の町議会議員選挙の翌日である平成7年4月24日ころ議員控室に集まり,議長選出につき話し合った結果,原告とB議員の双方が議長就任を希望したため,調整が行われた結果,前半の2年は原告が,後半の2年はB議員がそれぞれ就任することで双方の意見が一致した。しかし,その際B議員が口約束のみでは履行確保を期し難いとして,議長交替合意を書面化することを要求したことから,議長就任期間につき原告は平成7年5月から平成9年3月まで,B議員は同年4月から平成11年任期終了までとする,原告及びB議員が当事者として,A議員が立会人代表者としてそれぞれ署名押印した誓約書5通がその場で作成された。原告は,誓約書作成後,B議員に対して,同議員から他の議員に議長交替合意を漏らすことはしないようにしてほしい旨申し入れたが(もっとも,原告は,A議員ら立会人に対してこの趣旨の申し入れをしなかった,B議員は,この申し入れを。)奇異に受け止め,その後A議員に対し議長交替合意の確実な履行のためにその内容を全議員に公表するように要請したが,同議員は,立会人において合意の履行に責任をもつ,自分たちを信用してほしい旨言明して,B議員の要請に応じなかった。このため,新人議員(平成7年4月実施された選挙で初めて当選した議員)を中心に議長選出選挙時点で議長交替合意がなされたことを知らない議員もいた。しかし,議長交替合意は,公表こそされなかったものの,立会人側でこの議長交替合意を前提に原告を支持しない議員へ原告支持を働きかけることは当然予定されており,遅れてその。 ことを知らない議員もいた。しかし,議長交替合意は,公表こそされなかったものの,立会人側でこの議長交替合意を前提に原告を支持しない議員へ原告支持を働きかけることは当然予定されており,遅れてその。 ,,場に加わったE議員にもその事実は知らされたそしてA議員やB議員はB議員の支持者である議員に対し議長交替合意の事実を告げて原告に投票するように依頼した。 ウところが,原告は,その後平成7年5月1,2日ころ,当時の被告のF町長と町長室で話をしていた際,原告とB議員間に議長交替合意の存在することが同町長に伝わっていることを知って激昂し,同議員をその場に呼び出した上,個人的約束を公表したとして議長交替合意は白紙撤回したと主張する事態があった。しかし,B議員は,原告が非常に興奮していたため,取り合わず,原告も,B議員に対しては白紙撤回を通告したものの,立会人であるA議員らに対してはその旨知らせず,誓約書を回収するとかあるいは破棄を求めるといった措置をとらなかった。原告による白紙撤回の主張はその場に来たD議員の知るところとなり,また,B議員から後日知らされてA議員の知るところともなったが,原告及びB議員にA議員らを加えた前記5名の議員間で議長交替合意の撤回が確認されるということはなかった。このような事態があった後,7年5月定例会において議長選出選挙が実施されたが,その結果,投票総数16票のうち,原告が15票,G議員(L党所属議員)が1票を得て,原告が議長に選出された。しかし,原告は,その結果をみて,A議員らに議長を2年で交代する意思がない旨伝えることをしなかった。これに対し,B議員は,選挙終了後議場から退場する際,A議員に改めて議長交替合意の内容を公表してほしいと持ちかけたが,同議員は,これに応じなかった。 (2) 原告が被告の町議会議員 ことをしなかった。これに対し,B議員は,選挙終了後議場から退場する際,A議員に改めて議長交替合意の内容を公表してほしいと持ちかけたが,同議員は,これに応じなかった。 (2) 原告が被告の町議会議員の除名処分を受ける経緯ア原告が議長に就任して間もない平成7年5月に例年どおり町執行部がH地方振興局農林水産事業部依頼にかかる「緑の募金」記章の議員による購入の取り次ぎを依頼したのに対し,原告がこれを拒んだ(従前の議長はこれに応じていた)のを始めとして,同年5月にI町観光協会が町産業振興課に委託した写真入り名刺台紙の作成につき,この名刺に使用された写真が従前使用されていた名刺の写真と同じであったことから今後は工夫するようにと注意したり(原告はI町観光協会の役員でもあった,同年6月。)に同年4月1日付けで町職員から出向した議会事務局長を原告との意思疎通が十分でないとの理由で町執行部に事前の相談をすることなく,その強い反対を押し切って更迭したりした(議会事務局長人事は議長の権限であ,,。),るが従前は町執行部が原案を作成し議長の了解を得て発令していたまた,町役場庁舎内唯一の多目的大会議室を町議会専用会議室に変更するため改装することを提案し,町長の内諾を得たのみで,予算計上もないまま設計にとりかかろうとし,町執行部の反対に遭って取り止めた,同年7月と同年9月に2度にわたり町執行部に事前の通告なく,I町が出資し町長が代表取締役に就任していた第三セクターからの代表取締役辞任を求める決議案を提出して否決された,同年9月に議会常任委員会委員の県外研修に当たり議長命令による随行が可能であると主張して町管理職職員を随行させようとした,及び同年11月にI町町勢要覧発行に際してその印刷版ができあがっていた段階で議長の挨拶文がない,町議会議員名が記載さ に当たり議長命令による随行が可能であると主張して町管理職職員を随行させようとした,及び同年11月にI町町勢要覧発行に際してその印刷版ができあがっていた段階で議長の挨拶文がない,町議会議員名が記載さ,,れていないことを理由に修正を要求しそのために予定外の費用を要したといった出来事があった。町執行部側では,原告のこのような議長としての対応が独断専行であるとして反発を抱くようになり,被告の町議会議員の一部も,同様に原告の言動に不満を持つようになったが,それらの議員も,原告の議長就任期間は2年であるので,その期間我慢すればいいと考え,表立って原告のやり方に異を唱えることはなく,原告の議会運営に協力し,原告による議会運営は概ね平穏に推移した。 イその後,議長交替合意の立会人であるA議員が9年3月定例会開会前に,,議会運営委員会の席上で原告に対し議長交替の意思の有無を確認したが原告は,議長交替合意には従わない,議長を辞める意思はないと答え,さらに同議員がこの会期中に再度確認したのに対しても,原告は,議長交替合意に従う意思はないことを明らかにした。このため,A議員らは,原告が議長交替合意に違約しているとして議長交代決議案にかかる動議を提出することとし,9年3月定例会において,J議員がこの動議を提出し,原告が2年で議長を交代する旨の誓約書を作成していることを理由に道義的責任において原告の議長辞職を求める旨理由説明をし,A議員が誓約書の内容を明らかにし,質疑が行われた上,決議案が採決に付された結果,賛成多数(賛成8名,反対4名)で可決されたが,原告は,議長交代決議に従わない旨表明した。さらに,原告は,平成9年7月開催の定例議会の議会運営委員会の席上でも辞任の意思がないことを表明したことから,A議員は,議長交替合意の履行を求める議員からの批 は,議長交代決議に従わない旨表明した。さらに,原告は,平成9年7月開催の定例議会の議会運営委員会の席上でも辞任の意思がないことを表明したことから,A議員は,議長交替合意の履行を求める議員からの批判を受け,立会人としての責任を果たすため,自ら9年9月定例会においても議長交代決議案にかかる動議を提出したが,D議員から当事者間で話合いの機会をもってはどうかとの意見表明があり,C議員からも9年12月定例会までに原告において進退につき結論を出してはどうかとの提案があり,原告もこれに対し特に反対しなかったため,この動議は取り下げられた。こうして,議長辞任を拒否する原告に対し,議員間で反発が強まる中,9年12月定例会が開催され,副議長であるE議員が全員協議会の席上,議会を正常化するため,すべてを白紙に戻し,正副議長が辞任することで事態の打開を図ることを提案したが,原告があくまで議長辞任に応じず,本会議で同議員の副議長辞職だけが承認された。このため,総務,文教厚生,産業土木の各常任委員会における正副委員長計6名が原告には議会を円滑に運営する意思が見られない,反省している態度も見られないとして,いずれも辞任したほか,A議員らの反対でE副議長の後任の副議長選出もできない事態となった。こうした中で,平成9年12月12日議長不信任決議案が提出され,提案者であるE議員が,議会を正常化するためにすべてを白紙に戻す(正副議長の辞任を指す)ことを求めていたが,原告のみが反対しているの。 でやむを得ず同決議案を提出した旨理由説明を行い,同決議案は,出席議員13名全員(原告及び仮議長を除く)の賛成で可決された。しかし,。 原告は,あくまで議長辞任を拒絶する旨言明するのみで,以後も事態の収拾を積極的に図ろうとはしなかった。 ウこのような経緯を経て,10年3月定例会 告及び仮議長を除く)の賛成で可決された。しかし,。 原告は,あくまで議長辞任を拒絶する旨言明するのみで,以後も事態の収拾を積極的に図ろうとはしなかった。 ウこのような経緯を経て,10年3月定例会が開会されたが,議長不信任決議後も議長職に留まろうとする原告の態度に反発する議員が議会初日から会議を欠席し,あるいは議場から退場し,このため,平成10年3月10日,11日,12日と3日間に及んで定足数(8名)を欠き,いずれも延会となった。このため,予定された新年度当初予算案等の審議ができない状態が継続した。しかし,3月10日には,原告は,多くの議員が反対する中,副議長選出選挙を行い,その結果投票総数14票,K議員4票,白票10票をもって同議員が副議長に選出された。このような事態の下でも,原告は,議長不信任決議には従う意思はないとの態度を貫き,欠席・退場議員に対しては,口頭又は書面をもって,会議に出席するよう求めたが,他に議会を正常化するための措置は講じなかった。そして,原告は,同月16日,本会議開会中に休憩宣言をしたのち,出席議員に対し,誓約書作成,議長選出選挙,議長交代決議さらに議長不信任決議に至る一連の経過を振り返って自らの見解を説明したが,その中で,誓約書はB議員が個人的約束を部外者に漏らしたことで白紙撤回されている,議長交代決議はA議員らが原告の道義的責任を問うための筋書きに人の良いJ議員を利用したものである,議長不信任決議は質疑討論なしの3分間での強行採決であったなどと述べるとともに,引き続き議長職に留まる旨表明し,なお,B議員の知人が連続放火容疑で現行犯逮捕された旨告げ,また,A議員に対しては現状を作り出したことの反省を求めるなどとも述べた。このため,不信任された議長のもとでは審議に応じられない旨述べて退場する議員が相次いだ 連続放火容疑で現行犯逮捕された旨告げ,また,A議員に対しては現状を作り出したことの反省を求めるなどとも述べた。このため,不信任された議長のもとでは審議に応じられない旨述べて退場する議員が相次いだことから,同日も延会となった。再開された翌同月17日の会議でも,副議長に選出されたばかりのK議員が就任に当たって約束した議会運営の正常化を実現できなかったとして辞任し,その後,同月19日になって再度E議員が副議長に選出された。 このように,議会の運営が混迷を極める中で,同月23日,原告と副議長E議員,議会運営委員会委員長A議員及び同副委員長D議員との間で事態打開を図るための協議が行われ,E議員らが原告に対し議長を辞任する以,,外に議会の混乱を収拾する方策があるのかと問い質したのに対し原告が事態解決のための方策を示すことなく,あくまで辞任する意思はないとした上,議長を辞めさせるためには除名しかないはずであるが,除名するのであれば受けて立つ旨述べたことから,協議が不調に終わった。これを受け,A議員らは,議会運営正常化のためにはもはや原告を除名するしかないと判断するに至り,翌同月24日午後1時に開会された会議にA議員及びD議員が連名で原告に対する懲罰動議を提出し,E副議長が議長職を代行する中で格別の質疑もなくこの動議が採択された(なお,それに先立ち,3名の議員が議場から退席した)のち,B議員ほか6名(委員長B議員,副委員長J議員)で構成される懲罰特別委員会の審査に付され,除名相当との審査報告を経て,原告から弁明を聴取した上,同日午後3時44分までに出席議員11名中10名の賛成により原告を除名する懲罰議案が可決された(以下,この懲罰議案による除名処分を「本件除名処分」という。 。)(3) H県知事による審決本件除名処分を受けた原告は,H県知 席議員11名中10名の賛成により原告を除名する懲罰議案が可決された(以下,この懲罰議案による除名処分を「本件除名処分」という。 。)(3) H県知事による審決本件除名処分を受けた原告は,H県知事に,平成11年法律第160号による改正前の地方自治法255条の3に基づき,本件除名処分を取り消す旨の審決を求める申請をした。 これに対し,H県知事は,これを自治紛争調停委員会の審理に付し,自治紛争調停委員会は,平成10年7月27日,本件除名処分は懲罰事由に該当,,,しかつ被告の町議会の裁量権の濫用にはあたらないこと等を理由として申請を棄却するのが相当である旨の報告をH県知事に提出した。そして,H県知事は,同月30日,原告の申請を棄却する審決をした。 (4) 本件に先立つ訴訟における裁判所の判断ア原告は,被告の町議会を被告として,岡山地方裁判所に対し,本件除名処分の取消しを求める訴訟(同裁判所平成10年(行ウ)第17号除名処分取消請求事件)を提起し,あわせて,本件除名処分の効力の停止を求めた(同裁判所平成10年(行ク)第7号執行停止申立事件。 )これに対し,同裁判所は,平成10年9月18日,本件除名処分の効力を停止する旨の決定をした。 これを受けた被告の町議会は,この決定を不服として,広島高等裁判所岡山支部に対し,即時抗告した(同裁判所同支部平成10年(行ス)第2号執行停止決定に対する即時抗告事件。 )これに対し,同裁判所同支部は,同年11月11日,抗告を棄却する旨の決定をした。 イついで,岡山地方裁判所は,上記除名処分取消請求事件について,平成11年4月20日,原告の請求を棄却する旨の判決をした。 その理由の要旨は,(1)及び(2)記載と同旨の事実を認定した上,このような事実経過の下では,長期間,被告の町議会の審議が不可能になって ,平成11年4月20日,原告の請求を棄却する旨の判決をした。 その理由の要旨は,(1)及び(2)記載と同旨の事実を認定した上,このような事実経過の下では,長期間,被告の町議会の審議が不可能になっていることに関して,議会運営に最高の責務を負う議長である原告には懲罰事由が存在し,かつ,本件除名処分は,被告の町議会の裁量権を濫用したものではないというものである。 これを受けた原告は,この判決を不服として,広島高等裁判所岡山支部に対し,控訴した(同裁判所同支部平成11年(行コ)第6号除名処分取消請求控訴事件。 )これに対し,同裁判所同支部は,平成12年9月28日,原判決を取り消し,本件除名処分を取り消す旨の判決をした。 その理由の要旨は,原判決と同旨の(1)及び(2)記載の事実を認定した上,地方自治法103条2項が「議長及び副議長の任期は,議員の任期による」と規定していること,地方自治法上,議長交代決議及び議長不信。 ,,任決議に関する規定がないこと等に照らすとこのような事実経過の下で原告が議長の職を辞任しなかったことは,政治的・道義的な責任はともかくとして,法的には違法ではなく,むしろ,長期間,被告の町議会の審議が不可能となったのは,議会に出席して円滑な議事進行に協力すべき他の町議会議員の責任によるものであること等を理由として,原告には懲罰事由が存在しないというものである。 これを受けた被告の町議会は,この判決を不服として,最高裁判所に対し,上告受理の申立てをした(同裁判所平成12年(行ヒ)第345号。 )これに対し,同裁判所は,平成13年3月23日,被告の町議会の上告受理の申立ての理由によれば,本件は,民事訴訟法318条1項の事件に,。 当たらないことを理由に本件を上告審として受理しない旨の決定をした(5) 被告の町議会による原 月23日,被告の町議会の上告受理の申立ての理由によれば,本件は,民事訴訟法318条1項の事件に,。 当たらないことを理由に本件を上告審として受理しない旨の決定をした(5) 被告の町議会による原告に対する出席停止の懲戒処分なお,(4)ア記載の本件除名処分の執行を停止する旨の裁判所の決定を受けた被告の町議会は,平成10年12月14日,原告を10年12月の定例議会の会期全期日にわたり出席停止とする旨の懲戒処分をし,さらに,平成11年3月10日,原告を11年3月の定例議会の会期全期日にわたり出席停止とする旨の懲戒処分をした。 (6) その後の被告の町議会議員選挙原告は,平成11年4月25日の被告の町議会議員選挙で,被告の町議会議員に当選した。 争点 本件の争点は,本件除名処分が,国家賠償法上,違法の評価を受けるものであるか否かであり,仮にこれが肯定的に解されて被告に損害賠償責任が認められる場合には,原告に生じた損害額である。 争点に関する当事者の主張(1) 原告の主張ア争いのない事実(4)イ記載の広島高等裁判所岡山支部判決が判示したよ,,,うに本件除名処分は除名事由が何ら存在しないのにされたものであり違法である。 また,これにより,原告は,被告の町議会議員として政治活動を行うことができなくなったのみならず,被告の町議会議長の職にある者として任命されていた各種審議会,協議会の活動からも排斥され,その数は16にものぼる。 そして,これらにより原告に生じた精神的損害は,少なくとも600万円を下回ることはない。 よって,原告は,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償として金600万円及びこれに対する本件除名処分がされた日である平成10年3月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 し,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償として金600万円及びこれに対する本件除名処分がされた日である平成10年3月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 イなお,争いのない事実(5)記載の被告の町議会による出席停止の各懲戒処分は,同(4)ア記載の裁判所による本件除名処分の効力を停止する旨の決定を,実質的に有名無実にするためになされたものである。 ただし,被告の町議会がした原告に対する出席停止の各懲戒処分に対して司法判断が及ぶか否かという問題があるので,本件訴訟では,これを国家賠償の対象となる行為としては主張しない。 (2) 被告の主張本件除名処分は,違法なものではない。 また,本件除名処分が,国家賠償法上,違法の評価を受けるとしても,原告は,特定少数の議員と秘密裏に議長交替に関する誓約書を作成し,これに端を発して,最終的に本件除名処分に至ったものであって,原告にも重大な過失がある。 なお,本件において,被告側で責任を負うべきは,本件除名処分に賛成した者,特に,その中で主導的役割を果たした町議会議員であるべきである。 したがって,被告としては,町民が納税した公金による損害賠償の支払いを認めるわけにはいかない。 口頭弁論の終結の日本件の口頭弁論の終結の日は平成14年6月14日である。 第3争点に対する判断 国家賠償法1条1項の違法性と行政処分取消訴訟の違法性とは,これらの制度の趣旨,目的に照らし,必ずしも同一の評価になるとは限らない。 すなわち,行政処分取消訴訟の違法性は,行政処分の法律効果発生の前提である法律要件充足性の有無が問題となるのに対し,国家賠償法1条1項の違法性は,不法行為による損害賠償法理の適用の一環として,行政処分の法律要件充足性の有無だけではなく,被侵害利益の種類,性質,侵 である法律要件充足性の有無が問題となるのに対し,国家賠償法1条1項の違法性は,不法行為による損害賠償法理の適用の一環として,行政処分の法律要件充足性の有無だけではなく,被侵害利益の種類,性質,侵害行為の態様及びその原因,行政処分の発動に対する被害者側の関与の有無,程度並びに被害者に生じた損害の性質,程度などの諸般の事情を総合的に判断して決すべきものであるからである。 そして,このことは,起訴前の逮捕,勾留,公訴の提起,追行,起訴後の勾留(最高裁昭和49年(オ)第419号同53年10月20日第二小法廷判決・民集32巻7号1367頁裁判官がした争訟の裁判最高裁昭和53年(オ)),(第69号同57年3月12日第二小法廷判決・民集36巻3号329頁,国)会議員の立法行為(最高裁昭和53年(オ)第1240号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁,公訴の提起(最高裁昭和59)年(オ)第103号平成元年6月29日第一小法廷判決・民集43巻6号664頁,税務署長のした所得税の更正(最高裁平成元年(オ)第930号,第10)93号同5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁,司法)警察員による被疑者の留置(最高裁平成4年(オ)第77号同8年3月8日第二小法廷判決・民集50巻3号408頁)について,すでに最高裁判所が明らかにしているところである。 このうち,最高裁昭和60年11月21日判決は,次のとおり判示する。 「国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責に任ずることを規定するものである。したがって,国会議員の立法行為(立法不作為を含む。以下同じ)が。 同項の適用上違 法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責に任ずることを規定するものである。したがって,国会議員の立法行為(立法不作為を含む。以下同じ)が。 同項の適用上違法となるかどうかは,国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかの問題であって,当該立法の内容の違憲性の問題とは区別されるべきであり,仮に当該立法の内容が憲法の規定に違反する廉があるとしても,その故に国会議員の立法行為が直ちに違法の評価を受けるものではない。 そこで,国会議員が立法に関し個別の国民に対する関係においていかなる法的義務を負うかをみるに,憲法の採用する議会制民主主義の下においては,国会は,国民の間に存する多元的な意見及び諸々の利益を立法過程に公正に反映させ,議員の自由な討論を通してこれを調整し,究極的には多数決原理により統一的な国家意思を形成すべき役割を担うものである。そして,国会議員は,多様な国民の意向をくみつつ,国民全体の福祉の実現を目指して行動することが要請されているのであって,議会制民主主義が適正かつ効果的に機能することを期するためにも,国会議員の立法過程における行動で,立法行為の内容にわたる実体的側面に係るものは,これを議員各自の政治的判断に任せ,その当否は終局的に国民の自由な言論及び選挙による政治的評価にゆだねるのを相当とする。さらにいえば,立法行為の規範たるべき憲法についてさえ,その解釈につき国民の間には多様な見解があり得るのであって,国会議員は,これを立法過程に反映させるべき立場にあるのである。憲法51条が「両議院の議員,は,議院で行った演説,討論又は表決について,院外で責任を問はれない」。 と規定し,国会議員の発言・表決につきその法的責任を免除しているのも,国会議員 にあるのである。憲法51条が「両議院の議員,は,議院で行った演説,討論又は表決について,院外で責任を問はれない」。 と規定し,国会議員の発言・表決につきその法的責任を免除しているのも,国会議員の立法過程における行動は政治的責任の対象とするにとどめるのが国民の代表者による政治の実現を期するという目的にかなうものである,との考慮によるのである。このように,国会議員の立法行為は,本質的に政治的なものであって,その性質上法的規制の対象になじまず,特定個人に対する損害賠償責任の有無という観点から,あるべき立法行為を措定して具体的立法行為の適否を法的に評価するということは,原則的には許されないものといわざるを得ない。ある法律が個人の具体的権利利益を侵害するものであるという場合に,裁判所はその者の訴えに基づき当該法律の合憲性を判断するが,この判断は既に成立している法律の効力に関するものであり,法律の効力についての違憲審査がなされるからといって,当該法律の立法過程における国会議員の行動,すなわち立法行為が当然に法的評価に親しむものとすることはできないのである。 以上のとおりであるから,国会議員は,立法に関しては,原則として,国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり,個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではないというべきであって,国会議員の立法行為は,立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき,容易に想定し難いような例外的な場合でない限り,国家賠償法1条1項の規定の適用上,違法の評価を受けないものといわなければならない」。 当裁判所は,上記最高裁判決が判示するところは,地方公共団体の議会がする除名処分にもおおむね妥当すると考える。 すなわち,地方公共団体の議会の懲戒 評価を受けないものといわなければならない」。 当裁判所は,上記最高裁判決が判示するところは,地方公共団体の議会がする除名処分にもおおむね妥当すると考える。 すなわち,地方公共団体の議会の懲戒処分は,その性質上,議会の秩序維持のための議会内部の規律の問題であり,議会をして自主的に処理させ,最終的には政治的責任の問題として,当該地方公共団体の住民の自由な言論及びその意思の表明である選挙の結果によって責任の所在を明確にするのが,立法趣旨にかなうと考えられるからである。 ,,,また行政取消訴訟に関しては地方自治法135条1項所定の懲罰のうち公開の議場における戒告,公開の議場における陳謝,一定期間の出席停止が,議員の地位そのものに影響を及ぼすものではなく,完全に議会の秩序維持のための内部的規律の問題であるのに対して,除名は,単なる内部規律の問題を超えて,議員の地位の喪失という市民法秩序に属する権利に影響を及ぼすものであるから,除名のみが行政取消訴訟の対象となると解するのが相当である(最高裁昭和27年(ク)第109号同28年1月16日大法廷判決・民集7巻1号12頁参照。 )ただし,上記最高裁昭和60年11月21日判決に照らすと,ある除名処分が後に行政取消訴訟において取り消されたからといって,当該除名処分が国家賠償法1条1項の適用において,当然に違法性があると評価されるわけではな,,,,くむしろ地方公共団体の議会が明らかに除名事由がないにもかかわらず違法又は不当な目的をもってあえてその議員を除名したなどの特段の事情のない限り,国家賠償法1条1項の適用において違法性があると判断されることはないというべきである。 これを本件についてみると,本件除名処分について除名事由があるか否かに関しては,争いのない事実(3)記載のH県 家賠償法1条1項の適用において違法性があると判断されることはないというべきである。 これを本件についてみると,本件除名処分について除名事由があるか否かに関しては,争いのない事実(3)記載のH県知事による審決,同(4)イ記載の岡山地方裁判所判決は,除名事由が存在すると判断したのに対し,同(4)イ記載の広島高等裁判所岡山支部判決は,除名事由が存在しないと判断した。 そして,甲第6号証によると,上記岡山地方裁判所判決が除名事由が存在しないとしたのは,裁判所に委ねられた権限内における合理的な判断の結果であることが明らかであるから,結局,事後的になされる司法審査の場においてでさえ,本件除名処分に除名事由が存在するか否かの判断は分かれうるようなものであったというべきである。 したがって,当裁判所は,争いのない事実(1)及び(2)記載の事実関係の下では,広島高等裁判所岡山支部判決の結論を正当なものである,すなわち,本件除名処分は,行政処分取消訴訟においては違法なものであると考えるが,本件全証拠によっても,本件除名処分に明らかに除名事由がない,あるいは,本件除名処分が違法又は不当な目的をもってあえてされたとまでは判断することはできない,すなわち,本件除名処分は,国家賠償法1条1項の適用においては,違法性を備えるものではないと解する。 ,,, なお本件除名処分に関する問題は被告の町議会の内部規律の問題としてあるいは,これにかかわった者の政治的責任の問題として,現時点における被告の町議会,及び本件除名処分に賛成し,あるいは反対した当時の被告の各町議会議員,さらには,その当事者となった原告が,それぞれの立場で解決を図り,最終的には,被告の住民の自由な言論及び選挙によって決着がつけられるべき問題である。したがって,今後,この問題をどのように政治的に 員,さらには,その当事者となった原告が,それぞれの立場で解決を図り,最終的には,被告の住民の自由な言論及び選挙によって決着がつけられるべき問題である。したがって,今後,この問題をどのように政治的に解決するかに関し,特に,原告及び被告の町議会に課せられた責任はきわめて重大なものである(なお,これは,原告による本件訴訟の提起の有無にかかわらず,争いのない事実(4)イ記載の本件除名処分を取り消す旨の判決が確定した時点で,原告及び被告の町議会に課せられた問題であった。 。)第4 結論 よって,その余の点については判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから棄却し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 岡山地方裁判所第1民事部裁判官永吉孝夫
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