主文 1 原判決主文第1項のうち,平成15年9月,平成16年3月及び同年9月の各公金支出につき,被控訴人三重県知事に対する支出命令の差止め及び被控訴人三重県出納長に対する支出の差止めの各請求に関する部分を取り消す。 2 上記各請求にかかる訴えを却下する。 3 その余の本件控訴をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,差戻前第1審,同控訴審,差戻後第1審及び第2審とも控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人ら(1) 原判決を取り消す。 (2) 一般会計から工業用水道事業会計への長良川河口堰建設事業負担金190億3002万1103円の支出につき,出資,貸付けその他名目の如何にかかわらず,被控訴人三重県知事Aは支出命令を,被控訴人三重県出納長Bは支出をしてはならない。 (3) 被控訴人Cは,三重県に対し,20億3058万2690円及びこれに対する平成11年3月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4) 被控訴人三重県知事Aは,被控訴人Cに対して,12億5949万6314円及び内金6億2964万1043円に対する平成14年9月21日から,内金6億2985万5271円に対する平成15年3月21日から各支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。 (5) 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 2 被控訴人ら(1) 本件控訴を棄却する。 (2) 控訴費用は控訴人らの負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,三重県の住民である控訴人らが,水資源開発公団(当時)が建設した長良川河口堰の建設負担金支払のために三重県が する。 (2) 控訴費用は控訴人らの負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,三重県の住民である控訴人らが,水資源開発公団(当時)が建設した長良川河口堰の建設負担金支払のために三重県が一般会計から工業用水道事業会計(特別会計)に支出するのは違法であると主張して,(1) 上記負担金から平成14年度までに支出された分を除く残額190億3002万1103円について,被控訴人三重県知事に対してはその支出命令の,被控訴人三重県出納長に対してはその支出の各差止めを求め,(2) 既に支出した部分については不法行為が成立するとして,ア三重県に代位して三重県知事であった被控訴人Cに対して,損害賠償として,支出額(平成10年度に支出された本件負担金,企業債償還金及び公団管理費の合計額)と同額の20億3058万2690円及びこれに対する最後の支出日である平成11年3月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,イさらに被控訴人三重県知事に対して,被控訴人Cに対し,損害賠償として,支出額(平成14年度に支出された本件負担金の合計額)と同額の12億5949万6314円及びうち6億2964万1043円に対する支出日の翌日である平成14年9月21日から,うち6億2985万5271円に対する支出日の翌日である平成15年3月21日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するよう求めた事案である。 2 原判決は,被控訴人らの本案前の主張はいずれも理由がなく,控訴人らの請求はいずれも理由がないとして,これを棄却したところ,控訴人らが控訴した。 なお,被控訴人三重県知事A及び被控訴人三重県出納長Bは,控訴の趣旨(2)項のうち,平成15年9月,平成16年 の請求はいずれも理由がないとして,これを棄却したところ,控訴人らが控訴した。 なお,被控訴人三重県知事A及び被控訴人三重県出納長Bは,控訴の趣旨(2)項のうち,平成15年9月,平成16年3月及び同年9月の各公金の支出につき,被控訴人三重県知事に対する支出命令の差止め及び被控訴人三重県出納帳に対する支出の差止めを求める訴えについては,いずれも支出済みであって差止めの利益がないと主張する。 3 争いのない事実等,争点,争点に関する当事者の主張は,次のとおり,原判決に付加訂正をし,控訴人らの当審における主張を付加するほか,原判決「第2 事案の概要」欄1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。 4 原判決の付加訂正(1) 原判決5頁6行目の「(水資源開発公団法」を「(平成14年法律第182号による廃止前の水資源開発公団法」と改める。 (2) 原判決8頁の23行目と24行目の間に,次のとおり挿入する。 「(8) 平成15年度と平成16年度上半期の支出平成15年度については,同年9月に本件負担金6億3007万5213円が,平成16年3月に本件負担金6億3030万1021円が,平成16年度上半期については,平成16年9月に本件負担金6億3053万2851円が支出済みである(乙3,弁論の全趣旨)。」 5 控訴人らの当審における主張(1) 出資が許容される限界ア地方財政法6条を受けた地方公営企業法(以下「地公企法」という。)17条の2第2項は,同条1項各号に定める経費以外の経費については,その経営収入を充てて負担をする独立採算制を定めている。 他方,地公企法18条は,一般会計等から地方公営企業会計へ出資することができると規定しているが,同法17条の2 経費については,その経営収入を充てて負担をする独立採算制を定めている。 他方,地公企法18条は,一般会計等から地方公営企業会計へ出資することができると規定しているが,同法17条の2を修正してはいないから,同条1項各号に定める経費以外の経費は,当該地方公営企業がその経営収入をもって負担しなければならないとする独立採算制に反することはできない。 イ出資は,当該地方公営企業の事業活動の基礎となる施設等の建設改良工事を行う資金となる自己資本の形成であり,貸借対照表では,出資金として資本の部に計上されるものである。 地方公営企業は,出資金や長期貸付金によって事業目的のサービスを確保するため建設改良工事を行い,建設した施設によって経済性を発揮した独立採算による経営を行う結果,利益配当の納付金や借入金に対する元金・利息の支払いができる。このように出資と長期貸付は,長期的には地方公営企業の料金収入による独立採算制の枠内に納まっている。それゆえ他の会計からの地方公営企業会計への出資及び長期貸付は,一時的な独立採算の例外として許容されるのである。 ウしたがって,一般会計等から地方公営企業会計への出資や長期貸付が許容されるには,①地方公営企業の事業目的であるサービスを確保するために必要かつ適切な建設改良工事のためであること,②地方公営企業が建設改良された施設によって経済性を発揮して料金収入による独立採算で経営を行うことが必要であり,本件においては工業用水道の事業化の可能性のあることが必要であり,これが被控訴人らによって証明されなければならない。 (2) 工業用水道事業化の可能性ア需給実績(工業用水道の供給過剰)北勢地域の工業用水の供給能力は,本件堰完成前においては,1 て証明されなければならない。 (2) 工業用水道事業化の可能性ア需給実績(工業用水道の供給過剰)北勢地域の工業用水の供給能力は,本件堰完成前においては,127.5万m3/日(工業用水道が合計109.5万m3/日,それ以外が18万m3/日)であった。ただ,北伊勢工業用水道においては,施設を建設してもそれに見合う工業用水の需要がないためにその建設を中止しており,施設能力としては88.5万m3/日である。 他方,昭和55年から平成12年までの工業用水の補給水量(工場が外部から取り入れる必要のある水)は60万m3/日前後での横ばいであり,うち工業用水道の補給水量も45万~50万m3/日の横ばいであった。したがって,平成12年以降もほぼ横ばいで推移するものと考えるのが合理的であり,工業用水道需要が上記供給能力を上回るとの予測することはできない。 イ需給想定調査(ア) 三重県の行った木曽川水系における水資源開発基本計画需給想定調査(以下「需給想定調査」という。)における平成27年の給水量・取水量には,本件堰による工業用水は算入されていない。これは,本件堰による工業用水は平成27年には使用しない想定,つまり工業用水道は事業化しない見通しで調査がなされている。 (イ) 需給想定調査では,北伊勢工業用水道は,本件堰を除いても,計画給水量96万4000m3/日,利水安全度による給水量54万5000m3/日で,他方,需要(工業用水補給水量≒工業用水道給水量)は,平成27年において52万3680m3/日とされているから,計画給水量で44万0320m3/日,利水安全度による給水量で2万1320m3/日の供給余剰が生じる。 (ウ) 量)は,平成27年において52万3680m3/日とされているから,計画給水量で44万0320m3/日,利水安全度による給水量で2万1320m3/日の供給余剰が生じる。 (ウ) 需給想定調査によれば,昭和62年度の北伊勢工業用水道の水源取水量を需要検討値とし,本件堰を除くと,供給側は6.748m3/s(不利用の木曽川総合用水を除くと5.868m3/sとなる。)となり,需要側の日最大取水量7.63m3/sを下回ることになる。 しかし,費用対効果からすれば,日常的には北伊勢工業用水道は供給過剰にあるのであるから,何年かに1回の年の僅かの日数の僅かな水量のために施設対応をするよりは,渇水時には現在利用されている水量について渇水調整をして必要水量を取水するほうがはるかに合理的である。 そして,木曽川における渇水調整は容易であって,この調整ができない場合があることや,河川管理者によるあっせん・調停が不成立に終わることはない。 (エ) また,上記調査における需要量の推計は,過去の実績から見て,過大であり連続性がなく,また,実績を見れば同じ値にはならない工業用水道の工業用水補給水量と工業用水道給水量を端数処理して同じ値にしている。これらの点において修正を加えた後の需要側の最大取水量は6.78m3/sとなるが,これは本件堰がなくとも供給側が上回る値である。 ウ三重県知事事務引継書(以下「引継書」という。)企業庁も地域振興部も,引継書においては,工業用水の需要に伸びがなく,今後の伸びも見込めないこと,既存施設で供給過剰になっており,これに加えて本件堰の工業用水51万5000m3/日については事業化が見込めないこと,そのため事業収入によって本件堰の 需要に伸びがなく,今後の伸びも見込めないこと,既存施設で供給過剰になっており,これに加えて本件堰の工業用水51万5000m3/日については事業化が見込めないこと,そのため事業収入によって本件堰の建設費の償還ができず,県財政(一般会計)の負担になっていることを明らかにしている。 エ工業用水道の事業化工業用水道事業化のためには,給水料金収入によって建設費,維持管理費を含む経費の回収が可能なものでなければならず,工業用水道建設費が料金収入に見合う額,つまり妥当投資額に収まっていることが必要である。 ところで,IT産業といわれる半導体,ディスプレイなどの製造,組立の産業では,1単位当たりの大きさや重量は極めて小さく,製品製造に要する水の使用量も極めて少ない。したがって,補給量も極めて少ない。 また,本件堰による工業用水道も北伊勢工業用水道も供給区域や導・配水管は北勢地域の臨海部寄りであり,北勢地域の内陸部に立地するのは上記のIT産業などの水使用の少ない産業である。 そうとすると,北伊勢工業用水道や本件堰による工業用水道で内陸部の工場に工業用水を供給しようとすると,供給水量当たりの建設費は企業と契約可能な給水料金を上回る高額なものになってしまい,結局,事業化はできないことになる。 オ企業立地企業立地等があっても工業用水道事業化の可能性はない。 クリスタルバレー構想においては,上記エのとおり,事業化が困難であり,実際,α・βに対する工業用水の供給は,地元市町が主体となって行い,企業庁による工業用水道事業は供給主体となっていない。 シリコンバレー構想(半導体メモリの組立生産を行う東芝四日市工場とこれに関連した企 工業用水の供給は,地元市町が主体となって行い,企業庁による工業用水道事業は供給主体となっていない。 シリコンバレー構想(半導体メモリの組立生産を行う東芝四日市工場とこれに関連した企業立地)における工業用水の需要や,工業用水道事業化の可能性について,引継書には何ら記載されていない。むしろ中核をなす東芝グループ自体が生産体制の縮小傾向にある。 四日市臨海部工業地帯の構造改革特別区域計画の計画内容においては,工業用水の需要増や,工業用水道事業化の必要性・可能性について全く記載されていない。計画自体,水多使用・多消費型の従来型の基礎資材産業から,水使用量・消費量が少ない高付加価値産業への再編計画であり,水需要を増加させるものではない。 高速道路の開通や木曽岬干拓地が工業用水の需要や工業用水道事業化を招来させる可能性について引継書には何ら記載されていない。 以上に上記ア,イ及びエの事情を総合すれば,企業立地等があっても工業用水道事業化の可能性はない。 (3) 被控訴人らの主張に対する反論ア公団法29条1項は,水資源開発公団の水源施設による開発水を水源にして,工業用水道を建設して工業用水道事業を行う工業用水道事業者に対し,水源施設の建設,管理等の費用を負担させることを定めたものである。 ところで,工業用水道事業者が費用を負担するための財源は給水料金であるから,工業用水道事業を全く行わず,水源施設で開発された水を使用しないのにその建設費,管理費の費用負担の義務があるというのは,均衡を欠き合理性に欠ける。 したがって,公団法29条1項の費用負担は,工業用水道事業者が工業用水道を建設して工業用水道事業を行うとき,少なくとも工業用水道の事 務があるというのは,均衡を欠き合理性に欠ける。 したがって,公団法29条1項の費用負担は,工業用水道事業者が工業用水道を建設して工業用水道事業を行うとき,少なくとも工業用水道の事業化の可能性があるときに発生する,逆に言うと工業用水道事業が行われておらず,その事業化の可能性もないときは,公団法29条1項の費用負担義務は発生しないと解すべきである。 イ本件堰の工業用水に係る費用負担の同意は,三重県工業用水道事業の管理者である三重県企業庁長が公団法20条2項により行ったものである。 これは,本件堰の工業用水は,地方公営企業が行う工業用水道事業の水源であり,その費用は地方公営企業の独立採算制からすればその水道事業を行う三重県企業庁が負担しなければならないことに由来する。 したがって,本件堰の工業用水の費用負担義務があるのは三重県企業庁であって,三重県に費用負担義務があるのではない。法人格としては三重県であるが,本件堰の工業用水の費用負担と強制徴収を含めてその支払は,企業庁長が業務執行し,代表者となって,特別会計を設けて,経営収入によってしなければならない。知事が事務を管理・執行し代表する三重県(一般会計)が費用負担して支払うものではなく,三重県一般会計ができることは,地方財政法と地公企法に従った三重県工業用水道事業会計への繰入れだけである。 6 控訴人らの当審主張に対する被控訴人らの応答(1) 控訴人らは,工業用水道事業化の可能性の「ないこと」が本件出資の違法性の根拠となるのではなく,逆に,工業用水道事業化の可能性が「あること」が本件出資の適法性の根拠であると主張する。そして,現下の工業用水道の供給過剰という事実,三重県知事事務引継書(甲16)における記載内容から,上記事業化の可能性がない 水道事業化の可能性が「あること」が本件出資の適法性の根拠であると主張する。そして,現下の工業用水道の供給過剰という事実,三重県知事事務引継書(甲16)における記載内容から,上記事業化の可能性がないと指摘する。 (2) まず,現下の工業用水道の供給過剰という事実から近い将来に工業用水道事業化の可能性が「ない」としても,そのことによって,三重県が公団法20条2項により負担に同意した負担金を支払わない場合に同法32条による強制徴収を免れることはできない。 (3) 需給想定調査についてア需給想定調査の作業値は,国土交通省が実施した平成14年度木曽川水系水資源開発基本計画実績調査の平成3年度~平成12年度の実績項目である①工業出荷額,③工業用水使用水量,⑥工業用水補給水量に基づき,平成27年度需要想定値(北勢)の趨勢予測を行い,①工業出荷額6兆7613億2000万円,③工業用水使用水量570万4934千m3/日,⑥工業用水補給水量67万4298千m3/日と推定し,さらに工業用水補給水量においては,平成27年度の工業用水補給水量のうち,工業用水道以外の補給水量については平成3年度~平成12年度の実績より推定して,工業用水道の補給水量を53万9164千m3/日とした。以上を前提に,指定水系,その他水系別に検討を行い需要水量を推定している。 イところで,工業用水は受水企業の生産活動にとって必要不可欠なものであり,安定給水を図ることが強く求められている。工業用水の使用は季節によっても,1日のうちでも変化があり,日最大取水量ベースでの確保が必要不可欠となる。そして,日最大取水量ベースで需要量を算出すると,平成27年度の北勢地区における工業用水道日平均取水量ベースは6.69m3/sであり,工業用水道日最大取水量ベース ベースでの確保が必要不可欠となる。そして,日最大取水量ベースで需要量を算出すると,平成27年度の北勢地区における工業用水道日平均取水量ベースは6.69m3/sであり,工業用水道日最大取水量ベースに換算すると7.63m3/sとなる。また,「その他水系」の安定水源としての日最大取水量は0.81m3/sであるから,「指定水系」の日最大取水量として6.82m3/sを確保する必要があり,これを賄うためには,本件堰からも0.64m3/sを取水しなければならないことになる。 ウなお,近年の小雨化傾向に鑑み,近年最大渇水(平成6年)の各水源施設の供給可能水量(率)に基づき,工業用水需給を検討すると,供給が不足することになる。 エ控訴人は,「渇水時には,…現在利用されている水量について渇水調整をして必要水量を取水するほうが,施設対応をするよりもはるかに経済的であって,費用対効果において優れており,合理的である」と主張する。 しかし,水利権は,原則として過去10年間の基準渇水水量を基準として許可されるものであり,10年に1度程度生ずる渇水によって,水利使用者の必要水量を全て満たすだけの河川の流量がないときは,水利使用者は水利権の優先順位に従って取水しなければならない。河川の公共用物としての性格上,相互に互譲の精神をもって協調して河川の使用を行うべきであるから,水利使用者間で相互にその水利使用の調整について協議を行うように務めなければならないが(河川法53条1項),協議が調わない間は優先順位に従うことになる。また,河川管理者があっせん・調停を行うことができるようになっているが当事者を拘束するものではない。 したがって,渇水調整ができなかった場合の国民生活や経済活動に与える影響は計り知れないので 管理者があっせん・調停を行うことができるようになっているが当事者を拘束するものではない。 したがって,渇水調整ができなかった場合の国民生活や経済活動に与える影響は計り知れないのであって,そのような不確実な要因を前提にして,上記調査から本件堰工業用水の事業化の見通しを論じることはできない。 (4) 三重県知事事務引継書(甲16)について上記引継書は,前任の知事が退職する時点での三重県の施策等の現状認識を示すものとして作成されるもので,その後の事態の変化,後任知事の政策決定,企業の将来の進出に何等の影響を与えるものではない。 (5) 企業立地等平成15年4月21日に三重県の構造改革特別区域計画(四日市市,γ,δ)が認定され,四日市市において「技術集積活用型産業再生特区」認定後1年弱で既に四日市市内に184億円の設備投資がされ,今後も35億円の設備投資も見込まれ,5年間で約700億円の設備投資がなされるものと試算されている(乙9)。 平成15年3月に第2名神高速道路(εジャンクションからζジャンクション)の開通により,三重県北勢山間部への企業誘致が見込まれること,三重県が推進してきた4つのバレー構想による企業誘致(乙10ないし12),高度利用が図られる開発可能地として木曽岬干拓地が存在するなど,水需要の拡大が見込まれ,新規水需要の可能性がある。 他方,地下水の汲み上げによる地盤沈下が深刻になれば,「地下水からの転換」も必要になる。 したがって,工業用水道事業化の可能性が「ない」とは到底言えない。 第3 当裁判所の判断1(1) 当裁判所は,被控訴人らの本案前の主張はいずれも理由がないが,①控訴人らの平成15年9月,平成16年3月及び同年9月の各公 業化の可能性が「ない」とは到底言えない。 第3 当裁判所の判断1(1) 当裁判所は,被控訴人らの本案前の主張はいずれも理由がないが,①控訴人らの平成15年9月,平成16年3月及び同年9月の各公金支出につき,被控訴人三重県知事に対する支出命令の差止め及び被控訴人三重県出納長に対する支出の差止めを求める訴えはいずれも不適法であるから却下すべきものと,②控訴人らのその余の請求についてはいずれも理由がないから棄却すべきものと判断する。 (2) 訴えの利益について上記(引用にかかる原判決,付加訂正後のもの)のとおり,上記(1)①の平成15年9月,平成16年3月及び同年9月の各公金は本件負担金支払のために既に支出済みであると認められる。したがって,上記(1)①の被控訴人三重県知事及び被控訴人三重県出納長に対する各差止めを求める訴えは,訴えの利益を欠き不適法なものである。 (3) 控訴人らのその余の請求について理由がないことについては,次項に控訴人らの当審主張に対する判断を付加するほか,原判決「第3 争点に対する判断」欄1ないし6に記載のとおりであるから,これを引用する。なお,原判決24頁14行目の「51.5万‰/日」を「51.5万m3/日」と改め,同頁17行目の「乙8」を「乙8ないし12」と改める。 2 控訴人らの当審主張に対する判断(1) 三重県の本件負担金の支払義務ア控訴人らは,工業用水道事業者が費用を負担するための財源は給水料金であるから,工業用水道事業を全く行わず,水源施設で開発された水を使用しないのにその建設費,管理費の費用負担の義務があるというのは,均衡を欠き合理性に欠けるから,工業用水道事業が行われておらず,その事業化の可能性もないときは,公団法29条1項の費用負担義務は発生しな しないのにその建設費,管理費の費用負担の義務があるというのは,均衡を欠き合理性に欠けるから,工業用水道事業が行われておらず,その事業化の可能性もないときは,公団法29条1項の費用負担義務は発生しないと解すべきであると主張する。 しかし,上記の費用負担義務は,公団法20条2項により当該水資源開発施設を利用して工業用水道の用に供しようとする者の同意を得たうえで,公団法29条1項により公団から賦課されるものであって,当該施設を利用した工業用水道事業の開始の有無やその事業化の可能性の有無によって義務の発生が決まるものと解することはできず,控訴人らの上記主張は理由がない。 イ控訴人らは,本件堰の工業用水に係る費用負担の同意は,三重県工業用水道事業の管理者である三重県企業庁長が公団法20条2項により行ったものであるから,本件堰の工業用水の費用負担義務があるのは三重県企業庁であり(したがって,三重県に費用負担義務があるのではない。),三重県一般会計ができることは,地方財政法と地公企法に従った三重県工業用水道事業会計への繰入れだけであると主張する。 しかし,三重県企業庁は三重県から独立した法人格を有するものではないのであるから,公団法20条2項の同意を三重県企業庁長が行ったとしても,本件負担金の支払義務を負い,その履行を怠った場合に滞納処分(公団法32条3項)を受ける法主体は三重県となるのであるから,控訴人らの上記主張は理由がない。 (2) 独立採算の原則違反について控訴人らは,地方財政法6条,地公企法17条の2の定める地方公営企業の独立採算制からすると,出資が許容されるのは,それが長期的に見れば地方公営企業の料金収入による独立採算制の枠内に納まっているからであり,この独立採算制の枠内に納まっ 法17条の2の定める地方公営企業の独立採算制からすると,出資が許容されるのは,それが長期的に見れば地方公営企業の料金収入による独立採算制の枠内に納まっているからであり,この独立採算制の枠内に納まっていると言えるためには,本件に即して言えば,本件堰開発水による工業用水道の事業化の可能性のあることが必要であるところ,その可能性はないとしてるる主張する。 アしかし,上記(引用にかかる原判決)のとおり,地方公営企業がその活動資金を調達するために,一般会計又はその他の特別会計から出資を受け,長期借入れをすることは,その対価として納付金の納付や利子の支払を前提としている点で,通常の経済的取引と変わらず独立採算の原則に触れるものではないし,出資を受けたり,長期借入れをすることについて,補助を受ける場合のような特別の条件は付されていない。したがって,地公企法18条に基づく出資は,利益状況に応じて納付金の納付を受けることのほかは何らの条件を付けることなく,三重県の裁量によりなし得るものというべきである。 イそして,上記(引用にかかる原判決)及び上記(1)のとおり,三重県は既に本件負担金の支払義務を負担しているうえ,この負担金が工業用水道事業の水資源確保のために発生した費用であることから本件特別会計で負担するのが受益者負担の原則に適うが,同会計には本件負担金支払の余裕がないために本件出資に至ったこと,後記のとおり,本件堰開発水による工業用水道の事業化の可能性がないとは言えないことからすれば,三重県が本件出資をすることには合理的理由があるということができるのであって,控訴人らの上記主張は理由がない。 ウなお,本件堰開発水による工業用水道の事業化についてであるが,上記(引用にかかる原判決,付加訂正後のもの)のとおり,四日市市を とができるのであって,控訴人らの上記主張は理由がない。 ウなお,本件堰開発水による工業用水道の事業化についてであるが,上記(引用にかかる原判決,付加訂正後のもの)のとおり,四日市市を中心とする構造改革特別区域計画,第2名神高速道路の開通,4つのバレー構想,木曽岬干拓地の存在などによる新たな企業誘致などに伴い,水需要の拡大,新規水需要の可能性が認められるうえ,需給想定調査(甲20)に基づき検討すると,日最大取水量ベースで需要量を算出すると,平成27年度の北勢地区における工業用水道日平均取水量ベースは6.69m3/s,これを工業用水道日最大取水量ベースに換算すると7.63m3/sとなるところ,供給側において「その他水系」の安定水源としての日最大取水量は0.81m3/sであるから,「指定水系」の日最大取水量としては6.82m3/sを確保する必要があり,これを賄うためには,本件堰からも0.64m3/sを取水しなければならないことになるという見通しになることなどに照らすと,本件堰開発水による工業水道の事業化の可能性がないとまでは言えない。控訴人らは,需給想定調査の需要見込みが過大であるなどと主張するが,需給見込みの算出方法が不合理なものとはまでは認められず,控訴人らの指摘は上記判断を左右するものではない。 第4 結論よって,以上と結論を異にする原判決を変更することとし,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第3部裁判長裁判官青山邦夫裁判官坪井宣幸裁判官田邊浩典 裁判官坪井宣幸 裁判官田邊浩典
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