平成25年3月22日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成22年(ワ)第44788号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日平成25年2月13日判決川崎市<以下略>原告和幸商事株式会社川崎市<以下略>原告株式会社東邦事業神奈川県藤沢市<以下略>原告和幸フーズ株式会社上記3名訴訟代理人弁護士吉峯啓晴同吉峯康博同高橋拓也同室伏美佳同大 井 倫太郎同大河原 啓 充同中村栄治同朴 鐘賢東京都板橋区<以下略>被告和幸株式会社同訴訟代理人弁護士岩渕正紀同岩渕正樹同長沢幸男主文 1 被告は,原告らに対し,それぞれ37万2341円及びこれに対する平成22年7月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,これを25分し,その1を被告の負担とし,その余は原告らの負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,原告らに対し,それぞれ854万9033円及びこれに対する平成22年7月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告らに対し,別紙謝罪広告目録記載の謝罪文を同目録記載の要領で同目録記載の新聞に掲載せよ。 第2 事案の概要 1 前提事実(証拠等を掲げたもののほかは,当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告らは,いずれも,豚カツ店ないし飲食店の経営等を業とする株式会社である(以下,原告和幸商事 事案の概要 1 前提事実(証拠等を掲げたもののほかは,当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告らは,いずれも,豚カツ店ないし飲食店の経営等を業とする株式会社である(以下,原告和幸商事株式会社を「原告和幸商事」,原告株式会社東邦事業を「原告東邦事業」,原告和幸フーズ株式会社を「原告和幸フーズ」という。)。 原告和幸商事の旧商号は「株式会社銀座モナミ商会」であり,同社は,昭和57年8月29日,訴外和幸商事株式会社から豚カツ店の経営を承継して商号を現在の商号に変更した(以下,両社を特に区別せず「原告和幸商事」と表記する。)。〔甲1,18,弁論の全趣旨〕イ被告は,豚カツ専門店及びラーメン専門店などといった飲食店経営等を目的とする株式会社である。 (2) 原告らの商標権等ア原告らは,次の商標権(以下「原告商標権」といい,その登録商標を「原告商標」という。)を有している。 登録番号第3237537号出願日平成4年8月25日登録日平成8年12月25日商品及び役務の区分第42類指定役務とんかつ料理を主とする飲食物の提供登録商標別紙原告商標目録記載のとおりイ原告らは,原告らの創業者であるX(以下「X」という。)が,昭和33年10月,原告和幸商事を設立して川崎駅ビル内に「とんかつ和幸川崎本店」を第1号店として開店したのを皮切りに,平成22年1月1日現在で合計272店舗の豚カツ料理店等を営んでおり,うち149店舗において原告商標を使用している。〔甲5,18,弁論の全趣旨〕(3) 被告の行為ア被告は,平成20年9月11日から平成22年7月14日までの間,東京都葛飾区<以下略>において,「和幸食堂」との名称でレストラン及び売店を営業した(以下「本件店舗」という。)。 イ 告の行為ア被告は,平成20年9月11日から平成22年7月14日までの間,東京都葛飾区<以下略>において,「和幸食堂」との名称でレストラン及び売店を営業した(以下「本件店舗」という。)。 イ被告は,本件店舗において飲食物の提供を行うに当たり,①その店舗看板,店舗外装,店舗備付けのブラックボード及び本件店舗の存する商業施設(ユアエルム)の外看板において,それぞれ別紙被告標章目録2記載の標章(以下「被告標章2」という。)及び同3記載の標章(以下「被告標章3」という。)を使用し,②インターネット上の被告ウェブサイトにおいて,別紙被告標章目録1記載の標章(以下「被告標章1」といい,被告標章1ないし3を併せて「被告各標章」という。)及び被告標章2を使用し,③本件店舗内で使用するメニュー表において,被告標章2を使用した(以下,上記①ないし③の使用を「本件使用」という。)。 (4) 指定役務の同一被告の本件店舗における役務(飲食物の提供)は,原告商標権の指定役 務である「とんかつ料理を主とする飲食物の提供」を含むものであるから,両役務は同一又は類似する。 (5) 被告標章1について被告は,被告標章1につき,平成19年5月28日に商標登録出願をし,第43類「飲食物の提供」を指定役務として,平成20年4月18日に設定登録を受けた(登録番号第5129395号)。 これに対し,原告らは,同年10月30日,特許庁に対し,上記商標登録無効審判(無効2008-890106号。甲29)を請求し,特許庁は,平成21年10月15日,上記商標登録を無効とする旨の審決をした。 被告は,同年11月25日,知的財産高等裁判所に対し,上記無効審決取消訴訟(同裁判所平成21年(行ケ)第10380号事件)を提起したが,同裁判所は,平成22年5月1 を無効とする旨の審決をした。 被告は,同年11月25日,知的財産高等裁判所に対し,上記無効審決取消訴訟(同裁判所平成21年(行ケ)第10380号事件)を提起したが,同裁判所は,平成22年5月12日,請求棄却の判決をした。 被告は,上記判決に対し,最高裁判所に上告受理の申立てを行ったが,最高裁判所は,同年9月17日付けで上告不受理決定をし,これにより上記無効審決が確定した。〔甲11,29,30,33,弁論の全趣旨〕(6) 名称使用禁止等請求訴訟の提起及び訴訟上の和解の成立原告和幸商事は,平成4年12月3日,被告に対し,「とんかつ和幸」,「和幸」の名称の使用禁止,謝罪広告及び損害賠償等を求める訴えを当庁に提起した(当庁平成4年(ワ)第21445号事件)。 同訴訟において,平成6年9月20日,下記内容の和解(以下「本件和解」という。)が成立した(甲20)。 記「一被告(判決注:本件被告をいう。以下同じ。)は,原告(判決注:本件原告和幸商事をいう。以下同じ。)に対し,「月刊食堂」一九九二年一〇月号の記事において,取材に応ずる際の不手際から,あたかも被告代表者が「とんかつ和幸」の創業者であるかのような記述等不相当な表現が生じた ことに関し,陳謝の意を表する。 二被告は,原告に対し,平成八年一〇月末日限り,被告の営業するとんかつ屋の表示である「とんかつ和幸」に冠を付する等,原告の表示である「とんかつ和幸」と明確に区別できる表示(以下,「新表示」という。)に変更する。右冠等は,「本家」,「元祖」など,被告が原告の本家であると誤解されるような表現であってはならない。よって,原告は,被告に対し,被告が,従来及び右変更に至るまで,とんかつ屋としての「和幸」,「とんかつ和幸」の表示を用いて営業していることについて,何らの請 誤解されるような表現であってはならない。よって,原告は,被告に対し,被告が,従来及び右変更に至るまで,とんかつ屋としての「和幸」,「とんかつ和幸」の表示を用いて営業していることについて,何らの請求もしない。ただし,被告は,新表示を平成七年三月末日限り,原告と協議の上決定するものとし,その決定後は,新たに出店するとんかつ屋については,新表示を用いる。 三原告及び被告は,今後,互いの営業が別経営であることを第三者に対し常に明確にするよう努めるものとする。ただし,原告は,被告が通常の使用の形態で商号として「和幸株式会社」を使用することについては異議をとどめない。 四原告は,被告に対し,原告が和光堂株式会社からとんかつ弁当等商標法,同施行令に定める商品区分第三二類加工食品(平成三年政令第二九九号による改正前の区分)につき,「とんかつ和幸」という商標について専用実施権を得た場合にも,被告が第二項の新表示をとんかつ弁当等に使用することについて異議を述べないことを確認する。 五原告はその余の請求を放棄する。 六原告と被告とは,本件和解条項に定めるほか,何らの債権債務のないことを相互に確認する。 七訴訟費用は各自の負担とする。」 2 本件は,被告が平成20年9月11日から平成22年7月14日までの間,本件店舗において使用した被告各標章は原告商標と類似しており,本件使用は 原告らが有する原告商標権の侵害(商標法37条1項)に当たると主張して,原告らが,被告に対し,①民法709条(商標権侵害)に基づく損害賠償として,それぞれ854万9033円及びこれに対する平成22年7月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,②商標法39条,特許法106条に基づき,原告らの業務上の信用を回復させ 9033円及びこれに対する平成22年7月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,②商標法39条,特許法106条に基づき,原告らの業務上の信用を回復させるために必要な措置として,別紙謝罪広告目録記載の謝罪文を同目録記載の要領で同目録記載の新聞に掲載することを求める事案である。 3 争点(1) 原告商標と被告各標章の類否(2) 被告の過失の有無(3) 損害の発生及びその額(4) 謝罪広告の必要性第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)(原告商標と被告各標章の類否)について〔原告らの主張〕(1) 被告各標章から生じる称呼及び観念についてア被告標章1(ア) 構成被告標章1は,別紙被告標章目録1記載のとおり,「和幸食堂」の文字を横書きして成るものであり,各文字の大きさ及び書体は同一であり,「和幸」の文字部分と「食堂」の文字部分とをその構成部分とするものである。 (イ) 称呼及び観念被告標章1の「食堂」の文字部分は,役務を提供する場所そのものを指す語であるから,それ自体で独立した,出所識別標識としての称呼及び観念までは生じない。 したがって,被告標章1からは,「和幸食堂」という当該商標の全体に 対応した称呼及び観念とは別に,「和幸」の文字部分に対応した「ワコウ」の称呼も生じる。 イ被告標章2及び3(ア) 構成被告標章2は,別紙被告標章目録2記載のとおり,「和幸食堂」の文字と,当該文字の半分以下の大きさの「銀めし」「WAKO-SHOKUDO」の文字を横書きして成るものであり,「銀めし」が「幸」の文字の上方に近接して,「WAKO-SHOKUDO」が「幸」「食」の文字の下方に近接して付されたものである。また,これらの文字の他,赤い四角 」の文字を横書きして成るものであり,「銀めし」が「幸」の文字の上方に近接して,「WAKO-SHOKUDO」が「幸」「食」の文字の下方に近接して付されたものである。また,これらの文字の他,赤い四角形の印影を模したマークで「米・菜・味・暖」の文字が中抜きで記された図形が,「和幸食堂」の文字の半分以下の大きさで「堂」の文字の右下方に付されている。 被告標章3は,別紙被告標章目録3記載のとおり,「和幸食堂」の文字を縦書きして成るものであることの他は,基本的に被告標章2と同様であるが,「銀めし」の下方に「WAKO-SHOKUDO」,「WAKO-SHOKUDO」の下方に「米・菜・味・暖」の表示がそれぞれ近接して配置され,これらの表示が「幸」の左方に付されている。 (イ) 称呼及び観念まず,被告標章2及び3には,それぞれ「和幸食堂」の文字部分のほか,「銀めし」「WAKO-SHOKUDO」の文字及び「米・菜・味・暖」の各表示が付されているものの,これらの表示は,「和幸食堂」の文字の半分以下の大きさで小さく付加的に描かれているに過ぎない。さらに,これらの表示はいずれも通常の表現方法の域を出ないものであり,それ自体で独立した出所識別標識としての称呼及び観念を何ら生じさせるものでもない。したがって,これらの表示が付されていることは,被告標章1の称呼及び観念に関する前記結論に何ら影響を及ぼすものではない。 したがって,被告標章2及び3からも,当該商標の全体に対応した称呼 及び観念とは別に,「和幸」の文字部分に対応した「ワコウ」の称呼が生じる。 (2) 原告商標から生じる称呼及び観念についてア構成原告商標は,別紙原告商標目録記載のとおり,太線で表された四角形内に「とん」と「かつ」の文字を2段に併記し,その下に太線ゴシック体で (2) 原告商標から生じる称呼及び観念についてア構成原告商標は,別紙原告商標目録記載のとおり,太線で表された四角形内に「とん」と「かつ」の文字を2段に併記し,その下に太線ゴシック体で「和幸」の文字を縦書きして成るものであり,「とんかつ」の部分と「和幸」の文字部分とをその構成部分とするものである。 イ称呼及び観念原告商標のうち,「とんかつ」の部分は,同商標の指定役務(「とんかつ料理を主とする飲食物の提供」)の対象そのものを表す語から成るものであるから,それ自体で独立した,出所識別標識としての称呼及び観念は生じない。 したがって,原告商標からも,「とんかつ和幸」という当該商標の全体に対応した称呼及び観念とは別に,「和幸」の文字部分に対応した「ワコウ」の称呼も生じる。 (3) 原告商標と被告各標章の類否ア称呼が共通すること上記(1)及び(2)で述べたとおり,被告各標章と,原告商標とは,称呼において共通するものである。 イ外観の相違の程度これに対して,被告標章1と原告商標との外観の相違は,出所識別標識としての称呼及び観念が生じない「食堂」及び「とんかつ」の部分が異なる程度にとどまるものである。 また,被告標章2及び3と原告商標との外観の相違についても,「食堂」及び「とんかつ」の部分が異なるほか,被告標章2及び3には別途「銀めし」 「WAKO-SHOKUDO」「米・菜・味・暖」の文字ないし図形部分が付されているものの,これらは「和幸食堂」の文字部分と比較しても半分以下の大きさで小さく飽くまで付加的に描かれているにすぎず,かつ,「食堂」及び「とんかつ」と同じく,何ら出所識別標識としての称呼及び観念が生じるものでもない。 ウ小括このように,被告各標章と原告商標とは,全体の外観にお 加的に描かれているにすぎず,かつ,「食堂」及び「とんかつ」と同じく,何ら出所識別標識としての称呼及び観念が生じるものでもない。 ウ小括このように,被告各標章と原告商標とは,全体の外観において一応は区別し得るものの,唯一識別力を有する漢字「和幸」の文字部分については,書体が異なるという軽微な差異を除けば共通している。また,前述のとおり,「和幸」の文字部分以外の部分には,いずれも出所識別標識としての称呼及び観念が生じないことに照らせば,被告各標章と原告商標とは,全体としての称呼も構成音及び語調語感が同一であり,さらに,全体としての観念も同一であるというべきである。 したがって,被告各標章は,原告商標と類似する。 (4) 「和幸」の文字部分の識別力について(被告の主張に対する反論)ア原告らは,「和幸グループ」の名称で,原告商標を含む「和幸」ブランドの名称を用いて,関東を中心とした全国各地に,平成22年1月1日現在で合計272店舗の豚カツ店等を営んでいた。また,「和幸グループ」全体の総売上げは,平成19年度実績で約214億1381万円,平成20年度実績で約220億7633万円,平成21年度実績で約206億5059万円であり,全体の総従業員数は約3600名である。 そして,原告らは,「和幸」の名称を用いて豚カツレストラン149店舗を経営し,主に豚カツ惣菜を販売する売店91店舗を加えると,店舗数は実に240店舗に及ぶ。 原告らは,これら多数の店舗運営による販促活動だけでなく,原告商標を使用して,広告,雑誌掲載,テレビ放映及び川崎フロンターレとのオフ ィシャルスポンサー契約等による宣伝広告等を行ったほか,いわゆる豚カツ料理屋のパイオニア的存在として「ごはん・キャベツ・味噌汁のおかわり自由」や,「とんかつ網」 川崎フロンターレとのオフ ィシャルスポンサー契約等による宣伝広告等を行ったほか,いわゆる豚カツ料理屋のパイオニア的存在として「ごはん・キャベツ・味噌汁のおかわり自由」や,「とんかつ網」などの革新的なサービスを先駆的に行うなど,一般消費者の周知性を高めるべく企業努力を重ねてきた。 これに対し,被告による被告各標章の使用期間ないしそれ以前において,被告その他の経営主体が「とんかつ和幸」ないし「和幸」の顧客吸引力を高めるべく広く一般消費者向けに宣伝広告等の特段の企業努力を行ったという事実は存在しない。 このように,「和幸」の周知著名性の向上を原告らがほとんど一手に担ってきた厳然たる事実に鑑みれば,「和幸」の文字は,原告らの営業を示すものとして取引者ないし需要者に広く認識されているというべきであり,ほかでもない原告らの営業を示すものとして高度の識別力を有するものというべきである。 イこれに対し,被告は,後記のとおり,インターネット上の検索の結果,「和幸」を屋号や店名に含む飲食店が乙4ないし乙69及び乙71の合計67件検出されたことや,これら店舗の地理的分布状況などから,「和幸」の文字は,「飲食物の提供」という役務の分野において,当該店舗付近の極めて限定された地域以外では,自他役務の出所識別機能を発揮し得ないか(商標法3条1項6号参照)若しくは極めて弱い自他役務の出所識別機能しか発揮し得ない文字であると主張する。 しかしながら,以下に述べるとおり,そもそも,被告が列挙する「iタウンページ」等の掲載情報は事業主からの情報提供に全面的に依拠しており,かかる掲載情報の内容の真実性には重大な疑問があるといわなければならない。また,仮に,被告が主張する検索結果及び地理的分布状況を前提としたとしても,それにより「和幸」の文字が 全面的に依拠しており,かかる掲載情報の内容の真実性には重大な疑問があるといわなければならない。また,仮に,被告が主張する検索結果及び地理的分布状況を前提としたとしても,それにより「和幸」の文字が「飲食物の提供」の分野において一般的・普遍的名称となったとは到底いえるものではなく,被告の上記主張は 失当である。 (ア) 「iタウンページ」等に掲載される情報の真実性には疑問があることこの点について,「iタウンページ」を運営するエヌ・ティ・ティ番号情報株式会社のウェブサイト上にも,「ご利用にあたっての留意事項-掲載情報の内容について」として,「iタウンページにおいて提供される情報(会社情報等の第三者の情報,広告その他第三者により提供される情報)はその第三者の責任で提供されるものであり,ご利用のお客様は,提供情報の真実性,合法性,安全性,有用性について,iタウンページが内容の全てを保証するものではないことをご了承いただきますようお願い申し上げます。」とのコメントが付されている。 実例としては,本件店舗は,平成20年9月11日に,「いなば(とんかつ)和幸」との店名を「和幸食堂」に変更した上でリニューアルオープンしたが,同リニューアルオープンから1年半余りが経過した平成22年2月19日に「iタウンページ」において本件店舗の情報を検索したところ,依然として「和幸青戸店」「住所:・・・東京都葛飾区<以下略>」「業種:とんかつ店」との情報が表示されたことが挙げられる。 すなわち,本件店舗は,リニューアルオープンによって店名が「和幸食堂」に変更された後1年半余りの間,その「iタウンページ」上の情報は更新されず放置されたままとなっていたのである。また,このような情報の不正確性は,「iタウンページ」以外の店舗検索サイトにもそのまま当てはま 更された後1年半余りの間,その「iタウンページ」上の情報は更新されず放置されたままとなっていたのである。また,このような情報の不正確性は,「iタウンページ」以外の店舗検索サイトにもそのまま当てはまるといえる。 このように,「iタウンページ」等では,事業主が店舗情報等を掲載したものの,その後の情報更新を懈怠することが頻繁にみられることから,現在の情報として,そもそも当該店舗が存在しているかどうかという点において,その情報の真実性は著しく低下するものといわざるを得ない。 (イ) 「和幸」の文字が「飲食物の提供」の分野において一般的・普遍的名 称となったとは到底いえないこと「和幸」の文字は,原告和幸商事の創業者(X)の通称と協和株式会社(以下「協和」という。)の創業者の氏名から一文字ずつを取って作成した造語であり,それ自体,元来,強度の識別力を有するものであることを,まずは銘記すべきである。 また,被告が列挙する各飲食店は,日本全国でもわずか67店舗しかなく,しかも全国各地にまばらに点在するのみであるから,この程度の店舗の存在をもって,「和幸」の文字が,元来有する強度の識別力を喪失したということは到底いえるものではない。 さらに,前記のとおり,原告商標は,原告らの企業努力により著名性を獲得し,高い業務上の信用及び顧客吸引力を有していたのであるから,かかる意味でも,「和幸」の文字は原告らの営業を示すものとして高度の識別力を有していたというべきである。 〔被告の主張〕(1) 原告商標と被告各標章が非類似であることア原告商標と被告各標章との共通部分である「和幸」の文字部分の識別力については,後記(2)のとおりであり,同部分は,飲食物の提供の役務に用いられる限り,商標法3条1項6号所定の識別力を欠く商標に該当し,同部 標と被告各標章との共通部分である「和幸」の文字部分の識別力については,後記(2)のとおりであり,同部分は,飲食物の提供の役務に用いられる限り,商標法3条1項6号所定の識別力を欠く商標に該当し,同部分のみが独立して取引に資することはない。 イ 「とんかつ」部分の識別力についてみると,一般的な料理名の表記には一般に識別力がないとしても,本来の表記である豚カツ(カツはカツレツ(cutlet)の略である。)を平仮名表記にすることによって,強い印象を与えるものとなっている。そして,同様に,料理名であっても,それが氏,地名等と結合することによって,表記全体が強い識別力を持つに至るということがしばしばある。原告商標についても,「とんかつ」のみを取り出せば,識別力が弱いかもしれないが,それが識別力の乏しい「和幸」と結合することに よって初めて表記全体で強い識別力を持つことになるのである。 ウ 「食堂」の識別力についてみると,「食堂」の文字部分は,「食事をする部屋」のみならず「いろいろな料理を食べさせる店」との意味合いも有することから,該文字は,飲食店の中でも特に特定の専門料理分野に偏ることなく幅広く各種料理を提供する一般飲食店との意味合いを想起させる文字である。そして,「飲食物の提供」を受ける取引者・需要者は,飲食店の決定に際して,まずは,どのような分野の料理を食べたいかを検討し,その料理分野の中から一つの飲食店を選ぶものである。このため,取引者・需要者は,自らが食べたい料理を提供する飲食店を識別するための重要な識別標識として,屋号や店名の一部を構成する「寿司」「ラーメン」「中華」「やきとり」「焼肉」「とんかつ」「食堂」「お食事処」等の文字に重大な関心をもって着目するのである。したがって,被告標章における「食堂」の文字部分は,提供され を構成する「寿司」「ラーメン」「中華」「やきとり」「焼肉」「とんかつ」「食堂」「お食事処」等の文字に重大な関心をもって着目するのである。したがって,被告標章における「食堂」の文字部分は,提供される料理分野の決定に際して,取引者・需要者が最初に着目する文字部分であるため,飲食業界における実情においては,一定の識別力を有しており,かつ,「和幸」部分が識別力に乏しいものであることから,「和幸食堂」の全体が一体のものとして初めて出所識別機能を発揮するものといえるのである。 エ以上の点と,「複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されない」とする確立した判例(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ) 第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁)の趣旨からすれば,原告商標と被告各標章との類否判断をするに当たっては,原則どおり,それぞれの全体をもって行うべきである。 以下,外観,称呼及び観念の面からそれぞれ検討する。 オ外観について原告商標は,上段に二段横書きの「とんかつ」の平仮名文字を正方形枠内に配し,下段に「和幸」の漢文字を縦書きして成るところ,上段の正方形枠の1辺の長さは下段の「和幸」の文字の横幅と同じくするもの 原告商標は,上段に二段横書きの「とんかつ」の平仮名文字を正方形枠内に配し,下段に「和幸」の漢文字を縦書きして成るところ,上段の正方形枠の1辺の長さは下段の「和幸」の文字の横幅と同じくするものである。 したがって,外観上まとまり良く一体的に構成されていることから,原告商標の上段正方形枠内の「とんかつ」の文字部分を捨象し,下段の「和幸」の文字部分のみを殊更抽出して観察すべき特別な理由は何ら見いだせない。 被告標章1は,「和幸食堂」の漢字4字を左横書きして成るところ,明朝体にて,同一大,同一間隔,同一色にて何らの軽重の差なく一連一体に連綴して成るものである。 したがって,外観上まとまり良く一体的に構成されていることから,被告標章1の後半「食堂」の文字部分を捨象し,前半の「和幸」の文字部分のみを殊更抽出して観察すべき特別な理由は何ら見いだせない。 以上から,原告商標と被告標章1とを全体的に考察すると,「とんかつ」と「食堂」の文字部分という外観上顕著な差異を有することから,両商標(標章)は外観上相紛れることはない。原告商標と被告標章1とが外観上相紛れることがない以上,原告商標と被告標章2あるいは同3が外観上相紛れることもない。 カ称呼について原告商標は,その構成から「トンカツワコウ」の自然的呼称を生じるものであり,その称呼構成音はわずか7音と短く,一連一体によどみなく発音し得るものである。このように,原告商標は一気にリズミカルに発音し得るこ とから,原告商標からは「トンカツワコウ」の一体不可分の自然的称呼のみを生ずるものであり,後半の「和幸」の文字部分のみから単なる「ワコウ」の自然的称呼を生ずるとする特別な理由は何ら見いだせない。 被告標章1は,その構成から「ワコウショクドウ」の自然的呼称を生じるもの 生ずるものであり,後半の「和幸」の文字部分のみから単なる「ワコウ」の自然的称呼を生ずるとする特別な理由は何ら見いだせない。 被告標章1は,その構成から「ワコウショクドウ」の自然的呼称を生じるものであり,その称呼構成音はわずか7音と短く,一気によどみなく発音し得るものである。このことから,被告標章1から後半の「食堂」の文字部分を捨象して「和幸」の文字部分のみから単なる「ワコウ」の自然的称呼を生ずるとする特別な理由は何ら見いだせない。 以上から,原告商標と被告標章1とでは,それぞれ一連一体として称呼されることにより,「トンカツ」の有無及び「ショクドウ」の有無という極めて顕著な差異を有することから,両商標(標章)が称呼上相紛れることはない。原告商標と被告標章1とが称呼上相紛れることがない以上,原告商標と被告標章2あるいは同3が称呼上相紛れることもない。 キ観念について「とんかつ」の文字部分を有する原告商標においては,これにより,取引者・需要者は,該文字部分に着目して専門店としての豚カツ料理の提供を受けることを期待することから,これを全く捨象し,出所識別機能の乏しい「和幸」の文字部分のみを抽出して観察する特別の理由は何ら存しない。 他方,被告標章1の後半の「食堂」の文字部分は,出所識別以前の料理分野の決定に際して,取引者・需要者が最初に着目する極めて重要な役割を有することから,これを全く捨象して,出所識別機能の乏しい前半の「和幸」の文字部分のみを抽出して観察する特別の理由は何ら存しない。 以上から,原告商標からは「豚カツ屋・豚カツ専門店の和幸」の観念が,被告標章1からは「定食料理や家庭料理を提供する一般飲食店の和幸」の観念が生じ,相互に顕著な差異を有するのであるから,両商標(標章)は観念上相紛れることはない。原告商標と被告標章 の和幸」の観念が,被告標章1からは「定食料理や家庭料理を提供する一般飲食店の和幸」の観念が生じ,相互に顕著な差異を有するのであるから,両商標(標章)は観念上相紛れることはない。原告商標と被告標章1とが観念上相紛れることがな い以上,原告商標と被告標章2あるいは同3が観念上相紛れることもない。 ク以上のとおりであるから,原告商標と被告各標章とが類似するものということはできない。 (2) 「和幸」の文字部分の識別力についてアもともと三つの「とんかつ和幸」が存在したこと(ア) 「とんかつ料理の提供」や「とんかつ料理を主とする飲食物の提供」の役務に関し,「和幸」の文字を一部に有する下記の原告商標,参考商標1及び参考商標2の商標が,商標法の一部を改正する法律(平成3年5月2日法律第65号)附則5条2項に規定する使用に基づく特例の適用の主張を伴う商標登録出願(特例商標登録出願)として,重複登録された。 記 参考商標1(乙72)参考商標2(乙73)原告商標(甲6)商標 指定役務第42類「とんかつ料理の提供」第42類「とんかつ料理を主とする飲食物の提供」第42類「とんかつ料理を主とする飲食物の提供」出願番号商願平4-181230商願平4-248461商願平4-161771出願日平成4年9月14日平成4年9月30日平成4年8月25日登録番号第3234249号第3225630号第3237537号登録日平成8年12月25日平成8年11月29日平成8年12月25日 満了日平成28年12月25日平成18年11月29日平成28年12月25日権利者協和被告原告和幸商事原告東邦事業 年11月29日平成8年12月25日 満了日平成28年12月25日平成18年11月29日平成28年12月25日権利者協和被告原告和幸商事原告東邦事業原告和幸フーズ(イ) 被告は,昭和51年9月に小田急百貨店町田店内レストラン街に「とんかつ和幸」町田小田急店を出店して,「とんかつ和幸」の店名の使用を開始し,現在では,「いなば和幸」の店名で惣菜店15店を含め合計76店を出店するに至っている。 一方,原告和幸商事は,昭和33年10月に川崎駅ビル内B1に「とんかつ和幸」川崎本店を出店し,「とんかつ和幸」の店名の使用を開始し,現在では,「とんかつ和幸」の店名のとんかつ料理店として原告らにおいて合計196店を出店するに至っている。 さらに,協和は,昭和35年に数寄屋橋ショッピングセンター内の「キッチン喫茶和幸」を「とんかつ和幸」の店名に変更してその使用を開始し,現在では,「とんかつ和幸」の店名の豚カツ料理店として,合計9店を出店している。 (ウ) 被告,原告和幸商事及び協和の3社(以下「本件3社」という。なお,本件3社というときの原告和幸商事には,特段の断りがない限り,原告東邦事業及び原告和幸フーズが含まれるものとする。)は,もともと人的,経営的に緊密な関係があり,協調関係があった。 ところが,出店数が増えるにつれ,本件3社の競争関係が顕在化するようになり,原告和幸商事は,平成4年12月3日,被告に対し,「とんかつ和幸」の名称使用禁止等を求める訴訟を当庁に提訴した。 同訴訟は,平成6年9月20日,本件和解により終了し,被告は,和解の趣旨を踏まえ,「とんかつ・いなば・和幸」(赤い輪の中に「いな ば」部分を入れて同部分が目立つようにしたもの)を新表示として用いることにしたが 20日,本件和解により終了し,被告は,和解の趣旨を踏まえ,「とんかつ・いなば・和幸」(赤い輪の中に「いな ば」部分を入れて同部分が目立つようにしたもの)を新表示として用いることにしたが,原告和幸商事は,平成7年6月7日,被告に対し,今度は上記新表示とする店名の使用差止めを求める仮処分を当庁に申し立てた。 その審理の過程において,被告は,飲食業の円滑な経営の見地から,思い切って更に改訂を加えた店名を採用することを決断し,平成8年2月,左横書きの「いなば」の平仮名文字,中央の赤色円弧内に縦書きの「とんかつ」の赤色平仮名文字,右部に左横書きの「和幸」の漢字を配した構成から成る店名「いなば・とんかつ・和幸」に変更したことから,同年3月14日,原告和幸商事は上記仮処分の申立てを取り下げた。 その間,被告は,豚カツを主体としながらも,独自のこだわりを持った専門店としての食材感,販売スタイル,店作りにおいて,他社との差別化を打ち出してきた。このことが広く支持を受け,大手デベロッパー,各百貨店等からの相次ぐ出店依頼を受けてきた。 (エ) 以上のような経緯により,被告は,平成8年以降は,それまで使用してきた参考商標2を使用するものではなくなったことから(ただし,継続的使用権は有すると解される。),平成18年11月29日の同商標の更新期限の際,需要者の便宜及び業界の発展という大所高所の観点から,あえて更新登録申請を行うことなく参考商標2に係る商標権を消滅させ,新たに「いなば和幸」を商標登録した。 商標法は特例措置である重複登録が漸次減少していくことを期待しているのであるから(平成8年法律第86号附則11条),被告のこのような対応こそが,商標法上期待されているというべきであり,原告らは,このような法律の趣旨に沿う被告の対応を逆手にと いくことを期待しているのであるから(平成8年法律第86号附則11条),被告のこのような対応こそが,商標法上期待されているというべきであり,原告らは,このような法律の趣旨に沿う被告の対応を逆手にとって紛争の長期化を狙っているというほかない。 イ飲食店一般における「和幸」名の実情とその出所識別機能 インターネット上で飲食店の検索を可能にするエヌ・ティ・ティ番号情報株式会社が運営する「iタウンページ」にて,屋号や店名に「和幸」文字を含む飲食店を検索したところ,本件3社の店舗を除いても合計61店が検出された。 なお,「ぐるなび」にて同様に検索をすると,例えば,福岡県宗像市<以下略>所在の焼肉・ホルモン店「焼肉レストラン和幸」,栃木県小山市<以下略>所在の焼肉・ホルモン店「和幸苑」,埼玉県上尾市<以下略>所在の中華料理店「和幸」などの上記以外の飲食店も検出される。また,「YAHOO!JAPAN グルメ」にて同様に検索すると,例えば,大阪府大阪市<以下略>所在の焼肉・ホルモン店「和幸亭新大阪店」などの飲食店も検出される。その他にも,東京都文京区<以下略>所在の飲食店「和幸」も見受けられる。このように「iタウンページ」に掲載されていない,「和幸」の文字を屋号や店名若しくはその一部とする飲食店も少なくないことがうかがえる。 以上のとおり,本件3社のものを除いても,日本全国において,「和幸」の文字を屋号や店名若しくはその一部とする懐石料理店,すし店,ラーメン店,豚カツ料理店等の飲食店は極めて多い。 このような検索結果に本件3社の店舗を加えて,「和幸」名の店舗の都道府県ごとの地理的分布状況をみたのが,乙70の調査報告書である。これによると,「和幸」名の飲食店は全国的に存在しており,それが存在しない県は9県(同報告書別紙に「 舗を加えて,「和幸」名の店舗の都道府県ごとの地理的分布状況をみたのが,乙70の調査報告書である。これによると,「和幸」名の飲食店は全国的に存在しており,それが存在しない県は9県(同報告書別紙に「該当なし」と表示された県)にすぎない。 なお,飲食店以外で「和幸」の文字を屋号や店名若しくはその一部とする店舗・事業者も,496もの多数に上る。さらに,乙70の調査報告書作成後にも,グルメサイト「食べログ」の記載により,同報告書作成時にも営業していた東京都大田区<以下略>の豚カツ屋「和幸」の存在も明らかになった。 以上のような飲食店における「和幸」の文字の使用状況から,「和幸」は,「飲食物の提供」の役務の分野において,当該店舗付近の極めて限定された地域以外では,自他役務の出所識別機能を発揮し得ないか若しくは極めて弱い自他役務の出所識別機能しか発揮し得ない文字というべきである。 したがって,「和幸」の文字は,飲食物の提供について多くの企業や個人によって広く使用されているのであり,仮に「和幸」単体から成る商標が存在したとしても,このような商標は,特定の役務について多数使用されていることから,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標(商標法3条1項6号)の典型である。 原告らの主張は,このような取引の実情を無視して,飲食店について一般的・普遍的に使用されている「和幸」の文字及びこれを含む文字商標が全て原告商標の商標権に抵触するものとしてこれらの使用を禁止し,一般的・普遍的な「和幸」という文字について不当にも独占を図ろうとするものであるといわざるを得ない。 2 争点(2)(被告の過失の有無)について〔被告の主張〕被告は,被告標章1の商標登録(平成20年4月18日)を受け,それに基づいて同年9月1 を図ろうとするものであるといわざるを得ない。 2 争点(2)(被告の過失の有無)について〔被告の主張〕被告は,被告標章1の商標登録(平成20年4月18日)を受け,それに基づいて同年9月11日から本件店舗において被告各標章を使用し,被告標章1についての無効審決が確定する前の平成22年7月15日には自らその使用を中止し,被告が商標権を有する別名称(「さちのや食堂」)に変更している。 したがって,上記期間中の本件店舗における被告各標章の使用は,自己の登録商標の使用であるから,その使用に過失は認められない。 また,被告は,「和幸」の文字が飲食店の名称としては普遍的,一般的であり識別力が弱いことを前提に,被告が昭和51年から「とんかつ和幸」の店名を使用していること,被告が平成8年から参考商標2(「とんかつ和幸」)を 特例商標登録出願して重複登録していたこと,被告が「とんかつ和幸」の文字を使用することを原告らが許容していたこと等の種々の事情を総合考慮した結果,被告各標章がいずれも一連一体のものとして認識されるものであって原告商標とは類似しないと判断したものであるから,そのような被告については,仮に原告商標と被告各標章とが類似していると判断された場合であっても,通常の注意義務は果たしており過失がないものとして判断されるべきである。 〔原告らの主張〕被告の主張は,否認ないし争う。 他人の商標権を侵害した者は,その侵害行為につき過失があったものと推定されるところ(商標法39条,特許法103条),単に被告各標章の使用が自らの登録商標に基づくことのみをもって過失の推定が覆されるわけではない。 また,本件における被告の過失とは,被告各標章が原告商標と類似することについての注意義務違反をいうと考えられるところ,被告による過去の「 に基づくことのみをもって過失の推定が覆されるわけではない。 また,本件における被告の過失とは,被告各標章が原告商標と類似することについての注意義務違反をいうと考えられるところ,被告による過去の「とんかつ和幸」の使用の事実,被告が参考商標2の重複登録を受けていた事実は,いずれも,何ら被告各標章と原告商標との非類似の根拠となるものではないというべきであるし,そもそも,原告らが被告に対して「とんかつ和幸」の文字の使用を許容した事実など一切ない。 以上のとおり,被告がその無過失の根拠として挙げる事実は,いずれも,何ら被告の無過失を基礎付けるものではないか,全くの事実無根であって,被告の主張が失当であることは明らかである。 むしろ,被告は,本件店舗において被告各標章の使用を開始する時点において,原告商標が既に商標登録されていることを明確に認識していたはずであるし,そもそも,「和幸」の文字をめぐっては,原告和幸商事と被告との間に本件和解が存在し,同和解において,被告が豚カツ屋において「和幸」の名称を使用する場合には,原告和幸商事と協議した上で,冠を付すなどして「とんかつ和幸」と明確に区別できる新表示を決定しなければならないとされていたも のである。それにもかかわらず,被告は,原告和幸商事に対する事前協議の申入れどころか,何らの通知もしないまま,一方的に被告各標章の使用を決行したのであって,本件和解の存在をことごとく無視してはばからない被告の主張,態度からすれば,被告が被告標章1の商標登録を奇貨として確信犯的に被告各標章の使用を断行したこと,すなわち,原告商標に係る商標権侵害について,被告が単なる過失にとどまらず確定的故意を有していたことは明らかである。 3 争点(3)(損害の発生及びその額)について〔原告らの主張〕(1 こと,すなわち,原告商標に係る商標権侵害について,被告が単なる過失にとどまらず確定的故意を有していたことは明らかである。 3 争点(3)(損害の発生及びその額)について〔原告らの主張〕(1) 使用料相当額原告らは,被告による被告各標章の商標使用により被った消極的財産的損害について,商標法38条3項に基づき,原告商標の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額(使用料相当額)を損害として賠償請求する。 そして,本件店舗における使用料相当額を以下のとおり計算すると,合計金1334万7100円となる。 ア本件店舗の売上高被告における1店舗当たりの平均売上高を本件店舗の売上高として,以下のとおり計算すると,平成20年9月11日から平成22年7月14日までの本件店舗の売上高は,1億3347万1005円となる。 (ア) 被告の年商約79億0200万円(平成21年度実績)(イ) 被告の総店舗数109店舗(ウ) 1店舗当たりの平均年間売上高79億0200万円÷109店舗=7249万5412円(エ) 平成20年9月11日から平成22年7月14日まで(672日)の1店舗当たりの平均売上高 7249万5412円×672日/365日=1億3347万1005円イ使用料率(10パーセント)原告らは,他人に原告商標の使用を許諾する際の,原告ら「和幸グループ」内部の規約として,「和幸グループ・商標使用権許諾に関する規約」を定めているところ,同規約第3条において,使用権を許諾する際の使用料は,「当該他人が使用期間中に許諾商標を使用して行った営業から生じる売上(消費税及び地方消費税は含まれない)の5パーセントに相当する額以上としなければならない」と定められている。 さらに,被告による被告各標章の 使用期間中に許諾商標を使用して行った営業から生じる売上(消費税及び地方消費税は含まれない)の5パーセントに相当する額以上としなければならない」と定められている。 さらに,被告による被告各標章の使用は,原告和幸商事と被告との間で平成6年9月20日に成立した本件和解の趣旨や,従前の経緯を無視した悪質なものであり,かかる被告との関係においては,原告商標の使用料率は10パーセントとすべきである。 ウ使用料相当額の計算1億3347万1005円×10%=1334万7100円(2) 原告らの信用の毀損ア原告ら及び原告商標が高度の周知性を有していること原告らは,「和幸グループ」の名称で,原告商標を含む「和幸」ブランドの名称を用いて,関東を中心とした全国各地に,平成22年1月1日現在で合計272店舗の豚カツ店等を営んでおり,そのうち149店舗の豚カツ店において原告商標を使用している。また,「和幸グループ」全体の総売上げは,平成19年度実績で約214億1381万円,平成20年度実績で約220億7633万円,平成21年度実績で約206億5059万円であり,グループ全体の総従業員数は約3600名である。 これら原告らの店舗数,従業員数,売上高等に鑑みると,原告ら「和幸グループ」及び原告商標は高度の周知性を有しており,一般消費者からの 高い知名度及び信用を有していることは明らかである。 イ本件店舗の業態が「和幸」のブランドイメージを低下させたこと被告は,本件店舗の新規オープン当初は,豚カツ料理を中心としたメニューを提供する一方で,「アジフライ定食」「豚の生姜焼き定食」「鶏の唐揚げ定食」「タルタルチキン南蛮定食」「デミハンバーグ定食」「おろしハンバーグ定食」「あじの開きと厚焼き玉子定食」「焼きサバと厚焼き玉子定食」 一方で,「アジフライ定食」「豚の生姜焼き定食」「鶏の唐揚げ定食」「タルタルチキン南蛮定食」「デミハンバーグ定食」「おろしハンバーグ定食」「あじの開きと厚焼き玉子定食」「焼きサバと厚焼き玉子定食」「肉豆腐の玉子とじ定食」など,豚カツ料理以外のメニューも置き,さらに,平成21年1月23日にはメニューを変更し,上記メニューに「さばの味噌煮と手作りコロッケ定食」「スルメのバター焼きと手作りコロッケ定食」「焼きたて厚焼き玉子と唐揚げ定食」「カレー煮込みハンバーグ定食」などの食事メニューを新たに追加した。 このように,本件店舗において豚カツ料理以外のメニューが乱発されたことにより,「『とんかつ』といえば『和幸』」「『和幸』といえば『とんかつ』」というブランドイメージの低下を招き,原告ら「和幸グループ」の豚カツ専門店としてのイメージが著しく低下した。 ウ被告の悪質性被告による本件店舗の新規オープン自体が本件和解の趣旨を潜脱するために故意に行われたものであり,また,本件店舗の当初のメニュー構成及びその後のメニュー追加についても,同じく本件和解の趣旨を潜脱すべく故意に行われたものである。 かかる被告の悪質性からしても,被告による「和幸食堂」の名称使用及び豚カツ料理以外のメニュー追加などによる原告らの信用毀損の程度は甚だしいといわざるを得ない。 エ小括以上の諸事情を勘案した上,被告が被告各標章を用いて本件店舗を営業したことによる原告らの信用毀損を金銭に見積もると,合計1000万円 を下らない。 (3) 弁護士費用被告による原告商標権の侵害行為により原告らが支払を余儀なくされた弁護士費用は,合計で,前記(1)及び(2)により算出された損害合計額の約1割に相当する230万円を下らない。 (4) まとめ以上( よる原告商標権の侵害行為により原告らが支払を余儀なくされた弁護士費用は,合計で,前記(1)及び(2)により算出された損害合計額の約1割に相当する230万円を下らない。 (4) まとめ以上(1)ないし(3)により算出された損害額の合計は2564万7100円であり,原告らで当該損害額を3分(1円未満切捨て)すると,各々の損害額は854万9033円となる。 (5) 被告の主張に対する反論被告は,本件店舗の営業実態及び「とんかつ和幸」の名称使用をめぐる本件3社の経緯等を理由として,原告商標は何ら顧客誘引力を有しないから,損害は発生しない旨主張する。 しかし,原告商標は広く飲食業界において識別力を有するものであり,豚カツ屋・豚カツ専門店の分野のみにおいて識別力を有するものではないから,原告商標の顧客吸引力も豚カツにとどまらず,広く飲食業界全体に及ぶものであり,また,原告らの営業規模や,原告商標の著名性,さらに,原告商標がゴシック体の太字で構成されており取引者・需要者に際立った印象を与えるものであることからすれば,原告商標との関係では,本件3社間においても十分な識別力ないし顧客吸引力を有するということができる。 また,前記のとおり,原告商標は,原告らの企業努力により著名性を獲得し,高い業務上の信用及び顧客吸引力を有していたのであるから,被告が引用する最高裁判決(最高裁平成6年(オ)第1102号同9年3月11日第三小法廷判決・民集51巻3号1055頁)の定立する規範に当てはめたとしても,原告らには原告商標の使用料相当額の損害が生じたというべきである。 したがって,被告の上記反論は失当である。 〔被告の主張〕(1) 原告らの主張につき原告らの主張は否認ないし争う。原告らの主張する使用料相当額(通常使用 うべきである。 したがって,被告の上記反論は失当である。 〔被告の主張〕(1) 原告らの主張につき原告らの主張は否認ないし争う。原告らの主張する使用料相当額(通常使用料相当額の倍額)は高額にすぎる。仮にかかる損害が認定されるとしても使用料相当額は相当低額に認定されるべきである。 (2) 損害の不発生ア使用料相当額の損害につき登録商標に類似する標章を第三者がその提供する役務に使用した場合であって,当該登録商標に顧客吸引力が全く認められず,登録商標に類似する標章を使用することが第三者の役務の売上げに全く寄与していないことが明らかなときには,使用料相当額の損害も生じないものとされているところ(最高裁平成6年(オ)第1102号同9年3月11日第三小法廷判決・民集51巻3号1055頁),本件店舗は,売上げの約6割が豚カツ料理ではない定食類によるという定食屋の実態を有するものであるから,本件店舗との関係では,「豚カツ屋・豚カツ専門店の和幸」の観念を生じるという原告商標は何ら顧客誘引力を有しないし,仮に「和幸」の文字自体による顧客誘引力なるものが存在するとしても,前記「とんかつ和幸」の名称使用をめぐる本件3社の経緯を踏まえるならば,他の2社(被告,協和)とは区別されて原告ら1社のみに帰すことができる顧客誘引力なるものを明確に観念することはできない。 したがって,本件においては使用料相当額の損害は認められないというべきである。 イ信用毀損による損害につき前記のとおり本件店舗は多彩な料理を提供する定食屋であること,「和幸」名を基軸とする原告らのブランドイメージなるものが認められないこ となどを考慮すれば,原告らの信用が棄損したなどということはあり得ず,原告らには損害が発生していない。 こと,「和幸」名を基軸とする原告らのブランドイメージなるものが認められないこ となどを考慮すれば,原告らの信用が棄損したなどということはあり得ず,原告らには損害が発生していない。 4 争点(4)(謝罪広告の必要性)について〔原告らの主張〕前記1及び2〔原告らの主張〕記載の被告による原告商標権の侵害態様からすれば,原告らの業務上の信用を回復するために必要な措置として,別紙謝罪広告目録記載の謝罪文を同目録記載の要領で同目録記載の新聞に掲載するよう,被告に命じるのが相当である。 〔被告の主張〕争う。 第4 当裁判所の判断 1 本件に至る経緯前記第2の1の前提事実並びに証拠(甲1~3,5,6,18,35~57,乙4ないし74,乙83~103,107,108,118,119〔枝番を含む〕)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) 原告ら原告らは,昭和33年10月,Xが原告和幸商事を設立して川崎駅ビル内に「とんかつ和幸川崎本店」を開店したのを皮切りに,「とんかつ和幸」の店名を使用するようになった。同店名中の「和幸」の文字は,Xが通称としていた「X1」の「和」の文字と,Xの友人であったZ(以下「Z」という。)の「幸」の文字から選択されたものであった。 その後,原告和幸商事は,グループ会社として,昭和39年に原告東邦事業を,昭和42年に原告和幸フーズをそれぞれ設立した。 原告らは,役務商標制度の導入に係る商標法の一部を改正する法律(平成3年法律第65号)の施行後である平成4年8月25日,原告商標につき特例商標登録出願をし,平成8年12月25日,商標登録(重複登録)を受け た。 原告らは,平成11年頃から一般の新聞,スポーツ新聞,ラジオ等に大々的に広告を行った。また,平成18年7月に 例商標登録出願をし,平成8年12月25日,商標登録(重複登録)を受け た。 原告らは,平成11年頃から一般の新聞,スポーツ新聞,ラジオ等に大々的に広告を行った。また,平成18年7月には,原告らの店舗がテレビ番組で紹介されたこともあった。さらに,平成19年2月からはサッカーのJ1及びヤマザキナビスコカップにおける川崎フロンターレのアップシャツスポンサーとなり,対象試合の選手らが着用するアップシャツ,ジャージ及びウィンドブレーカーの胸部分には原告らのロゴ(「とんかつ和幸」から成り,原告商標において縦一列に配置された「□」「和」「幸」を横一列に配置したもの。)が表示され,その試合がテレビ中継された。そして,平成19年発行の「町田相模原Walker07-08」及び同年発行の「おとなの週末」11月号には,原告らの店舗を紹介する記事が掲載されたこともあった。 原告らは,平成22年の時点で,全国において合計272店舗の豚カツ料理店等を営んでおり,うち149店舗において原告商標を使用している。 (2) 協和協和は,XとZが共同で設立した会社であり,昭和35年,当時既に数寄屋橋ショッピングセンター内において経営していたパーラー(軽食喫茶)の名称を変更して「とんかつ和幸」の店舗名を使用するようになった。 協和は,平成4年9月14日,前記参考商標1につき特例商標登録出願をし,平成8年12月25日,商標登録(重複登録)を受けた。 協和は,平成21年の時点で,東京都内及び千葉県内において,同名称を使用して9店の豚カツ料理店を経営している。 (3) 被告被告は,昭和51年5月31日,Zの義弟で協和の役員でもあったY(以下「Y」という。)が協和から独立する形で設立され,同年9月,小田急百貨店町田店内に豚カツ料理店「とんかつ和幸町田小田急店 被告被告は,昭和51年5月31日,Zの義弟で協和の役員でもあったY(以下「Y」という。)が協和から独立する形で設立され,同年9月,小田急百貨店町田店内に豚カツ料理店「とんかつ和幸町田小田急店」を開店して,「とんかつ和幸」の名称を使用するようになった。 被告は,平成4年9月30日,前記参考商標2につき,特例商標登録出願をし,平成8年11月29日,商標登録(重複登録)を受けたが,その後,被告が更新登録申請をしなかったため,同登録は,平成18年11月29日存続期間満了を原因として,平成19年8月8日抹消登録された。 被告は,平成20年9月11日までに,全国において,「いなば・とんかつ・和幸」ないし「いなば和幸」の表示を使用して61店のレストラン及び15店(計76店)の惣菜店を順次出店しており,その知名度を上げるべく,ボクシングのA兄弟のタイトルマッチ戦においてトランクスやパンフレットに被告のロゴ(赤字でデザインした「とんかつ」のマークと黒字の「いなば和幸」が横一列に配置されたもの。)を掲載し,同タイトルマッチがテレビ中継されたほか,西武ドーム内に売店を出店し,ライトスタンド上部の屋根部分に前記ロゴから成る大きな看板を掲載する等の広告宣伝活動を行っている。 (4) その他の事業体による「和幸」の表示の使用「和幸」という営業表示に関し,古くは,昭和24年12月1日時点の埼玉県電話番号簿(乙118)に飲食店「和幸B」が掲載されており,昭和29年7月の東京都内職業別電話番号簿(乙119)においては,「喫茶店・甘味店」の欄に「わこう」という店名が,「製菓」の欄に「和幸製菓所」という店名がそれぞれ掲載されていた。また,平成20年11月28日発行の「ミシュランガイド東京」(乙6の4)には2つ星の懐石料理店「和幸」が紹介され, う」という店名が,「製菓」の欄に「和幸製菓所」という店名がそれぞれ掲載されていた。また,平成20年11月28日発行の「ミシュランガイド東京」(乙6の4)には2つ星の懐石料理店「和幸」が紹介され,そこには「『人の和を重んじ,山の幸,海の幸の恵みに感謝したい』。店名にはそんな思いが込められている」との記載があるほか,平成21年6月の時点で,「和幸」,「旬彩処和幸」,「味処和幸」,「郷土日本料理和幸」,「和幸軒」,「ビストロ和幸」,「和幸寿司」,「和幸食堂」等,「和幸」の表示を含む店名の飲食店が全国に多数存在していた。 (5) 本件和解 原告和幸商事は,平成4年12月3日,被告に対し,「とんかつ和幸」,「和幸」の名称の使用禁止,謝罪広告及び損害賠償等を求める訴えを当庁に提起し,同訴訟において,平成6年9月20日,前記第2の1(6)の内容の和解(本件和解)が成立した。 (6) 紹介記事等における本件3社の区別本件3社が「とんかつ和幸」の名称又は「和幸」の文字を含む名称で経営する豚カツ料理店は,昭和57年に週刊現代及び「飲食店経営」なる業界誌において紹介されたほか,平成4年頃から平成19年頃までの間,業界新聞や業界誌のみならず,一般の新聞,スポーツ新聞や一般消費者向けの雑誌においても多数回にわたって紹介されるなどしてきたが,これらの紹介記事のほとんどにおいて,本件3社を区別したり明示することなく「とんかつ和幸」ないし「和幸」の紹介がなされ,特に平成12年4月20日付け日経流通新聞(乙99)上の「社名」欄においてさえ,1か所(43位の欄)にのみ単に「和幸」と記載されている事実が認められる。 2 争点(1)(原告商標と被告各標章の類否)について(1) 商標の類否判断商標と標章の類否は,対比される標章が同一又は類似 位の欄)にのみ単に「和幸」と記載されている事実が認められる。 2 争点(1)(原告商標と被告各標章の類否)について(1) 商標の類否判断商標と標章の類否は,対比される標章が同一又は類似の商品・役務に使用された場合に,商品・役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品・役務に使用された標章がその外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかもその商品・役務の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである。そして,商標と標章の外観,観念又は称呼の類似は,その商標を使用した商品・役務につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず,したがって,これら3点のうち類似する点があるとしても,他の点において著しく相違することその他取引の実情等によって,何ら商品・役 務の出所の誤認混同をきたすおそれの認め難いものについては,これを類似の標章と解することはできないというべきである(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁,最高裁平成6年(オ)第1102号同9年3月11日第三小法廷判決・民集51巻3号1055頁参照)。 また,原告商標と被告各標章は,いずれも複数の構成部分から成るいわゆる結合商標であると認められるところ,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについては,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,原則として許されない。他方で,商標の構成部分の一部が,取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場 と比較して商標そのものの類否を判断することは,原則として許されない。他方で,商標の構成部分の一部が,取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合等においては,商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。 以上の説示を前提として,以下,原告商標と被告各標章との類否を検討する。 (2) 原告商標と被告各標章との類否ア原告商標から生じる称呼及び観念について原告商標は,太線で表された四角形内に「とん」と「かつ」の文字を二段に併記し,その下に太線ゴシック体で「和幸」の文字を縦書きして成るものであり,「とんかつ」の部分は,上記のとおりの視覚上の特徴がみら れるものの,「とんかつ」の部分と「和幸」の文字部分とをその構成部分とするものであることは,視覚上,容易に認識することができるものであるところ,「とんかつ」の部分は,同商標の指定役務の対象そのものを表す語から成るものであるから,原告商法の「とんかつ」の部分からは,それ自体で独立した出所識別標識としての称呼及び観念は生じないものというべきである。他方,「和幸」の部分は,それ自体造語であって一般的な熟語ではないから,出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分であると認められる。 そうすると,原告商標 は生じないものというべきである。他方,「和幸」の部分は,それ自体造語であって一般的な熟語ではないから,出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分であると認められる。 そうすると,原告商標からは,「とんかつ和幸」という当該商標の全体に対応した称呼及び観念とは別に,「和幸」の部分に対応した「ワコウ」との称呼も生じるものと認められる。 イ被告各標章から生じる称呼及び観念について(ア) 被告標章1a 被告標章1は,「和幸食堂」の文字を横書きして成るものであり,各文字の大きさ及び書体は同一であって,その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものである。そうすると,被告標章1からは,「和幸食堂」というまとまった外観とともに,「ワコウショクドウ」という1連の称呼が生じ,また,「和幸」という名前の「食堂」といった観念が生じることは否定し得ない。 しかし,同時に,被告標章1は,「和幸」の文字部分と「食堂」の文字部分とをその構成部分とするものであることは,視覚上,容易に認識することができるものである。そして,被告標章1の「食堂」の文字部分は,「食事をする部屋」あるいは「いろいろな料理を食べさせる店」を意味する語(乙82)であるばかりでなく,役務を提供する場所そのものを指す語であるから,被告標章1における「食堂」の部分からは,「和幸」の部分と一体となって上記の称呼ないし観念が 生じ得るとしても,それ自体で出所識別標識として独立した称呼及び観念は生じないというべきである。 そうすると,被告標章1からは,「和幸食堂」という当該標章の全体に対応した称呼及び観念とは別に,「和幸」の部分に対応した「ワコウ」の称呼も生じるといわざるを得ないのであって,原告商標と被告標章1との類否判断に際して,被告標章1から「和幸」の部分を抽 章の全体に対応した称呼及び観念とは別に,「和幸」の部分に対応した「ワコウ」の称呼も生じるといわざるを得ないのであって,原告商標と被告標章1との類否判断に際して,被告標章1から「和幸」の部分を抽出することは当然に許されるというべきである。 b この点に関し被告は,「和幸」の文字部分の識別力及び「食堂」の文字部分の識別力についてその主張するところから,被告各標章は,「和幸」の部分と「食堂」の部分とを全体として,これを考察すべきである旨主張する。 しかし,上記のとおり,「食堂」の部分については本来出所識別力はなく,他方,「和幸」は造語であってそれ自体強く印象を与える部分であることから,被告標章1においては,「和幸」という構成部分を抽出して原告商標と比較することは当然に許されるというべきであるから,被告標章1の称呼ないし観念が「和幸食堂」以外に生じる余地がないということはできない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (イ) 被告標章2被告標章2は,「和幸食堂」の文字と,当該文字の半分以下の大きさの「銀めし」「WAKO-SHOKUDO」の文字をいずれも毛筆体で横書きして成るものであり,「銀めし」が「幸」の文字の上方に近接して,「WAKO-SHOKUDO」が「幸」「食」の文字の下方に近接して付されている。また,これらの文字のほか,赤い四角形の印影を模したマークで「米・菜・味・暖」の文字が中抜きで記された図形(以下「本件図形」という。)が,「和幸食堂」の文字の半分以下の大きさで 「堂」の文字の右下方に付されている。 このように被告標章2は「和幸食堂」の文字部分とそれ以外の構成部分とから成るものであるが,このうち「和幸食堂」の文字部分が大きく強調されており,同部分が標章の中心的構成部分に当たることは明らか 。 このように被告標章2は「和幸食堂」の文字部分とそれ以外の構成部分とから成るものであるが,このうち「和幸食堂」の文字部分が大きく強調されており,同部分が標章の中心的構成部分に当たることは明らかであるから,被告標章1について説示したところがそのまま当てはまる。 よって,被告標章2からは,「和幸食堂」ないし「銀めし和幸食堂」という当該標章の全体に対応した称呼及び観念とは別に,「和幸」の部分に対応した「ワコウ」の称呼も生じるというべきであって,原告商標と被告標章2との類否判断に際して,被告標章2から「和幸」の部分を抽出することは当然に許されるべきものである。 (ウ) 被告標章3について被告標章3は,「和幸食堂」の文字を縦書きして成るものであることのほかは,基本的に被告標章2と同様であるが,「銀めし」の下方に「WAKO-SHOKUDO」,「WAKO-SHOKUDO」の下方に「米・菜・味・暖」の表示(本件図形)がそれぞれ近接して配置され,これらの表示が「幸」の文字の左方に付されている。 このように被告標章3は「和幸食堂」の文字部分とそれ以外の構成部分とから成るものであるが,このうち「和幸食堂」の文字部分が大きく強調されており,同部分が標章の中心的構成部分に当たることは明らかであるから,被告標章1について説示したところがそのまま当てはまる。 よって,被告標章3からは,「和幸食堂」ないし「銀めし和幸食堂」という当該標章の全体に対応した称呼及び観念とは別に,「和幸」の部分に対応した「ワコウ」の称呼も生じるというべきであって,原告商標と被告標章3との類否判断に際して,被告標章3から「和幸」の部分を抽出することは当然に許されるべきものである。 ウ上記ア及びイによると,原告商標と被告各標章とは,出所識別標識とし て強く支配的な との類否判断に際して,被告標章3から「和幸」の部分を抽出することは当然に許されるべきものである。 ウ上記ア及びイによると,原告商標と被告各標章とは,出所識別標識とし て強く支配的な印象を与える「和幸」との文字部分及び「ワコウ」という称呼において共通するものであり,両商標(標章)の全体的な外観の相違は,出所識別標識としての称呼及び観念が生じない「食堂」及び「とんかつ」部分が異なる程度にとどまるものであるから,そのような外観の相違を考慮してもなお,原告商標と被告各標章とが同一又は類似の役務に使用された場合には,当該役務の出所について混同が生じるおそれがあるというべきである。 したがって,被告各標章は,原告商標と類似するものと認めるのが相当である。 エ被告の主張について被告は,原告商標と被告各標章との共通部分である「和幸」の文字部分は,飲食物の提供の役務に用いられる限り,商標法3条1項6号所定の識別力を欠く商標に該当すると主張する。 しかし,前記認定のとおり,たとえ現在では「和幸」の表示を含む店名の飲食店が全国に多数存在することが認められる点を考慮したとしても,もともと「和幸」という名称は造語である上,原告ら及び被告を含む本件3社は,いずれも長きにわたって「とんかつ和幸」の名称又は「和幸」の文字を含む名称で豚カツ料理店を経営してきており,それぞれその知名度を高めるべく経営努力を重ねてきた結果,現在では幅広い地域において有名な豚カツ料理チェーン店として認知されるに至ったと認められるから,原告商標権の指定役務に用いられる限りにおいて,「和幸」の文字部分は相応の出所識別力を有するものというべきである。 したがって,「和幸」の文字部分が商標法3条1項6号所定の識別力を欠く商標に該当するとの被告の主張は,採用すること 限りにおいて,「和幸」の文字部分は相応の出所識別力を有するものというべきである。 したがって,「和幸」の文字部分が商標法3条1項6号所定の識別力を欠く商標に該当するとの被告の主張は,採用することができない。 3 争点(2)(被告の過失の有無)について(1) 被告は,被告標章1の商標登録(平成20年4月18日)を受け,それに基 づいて同年9月11日から本件店舗において被告各標章を使用し,被告標章1についての無効審決が確定する前の平成22年7月15日には自らその使用を中止し,被告が商標権を有する別名称(「さちのや食堂」)に変更しているから,上記期間中の本件店舗における被告各標章の使用は,自己の登録商標の使用であり,その使用に過失は認められない旨主張する。 しかし,他人の商標権を侵害した者は,その侵害行為について過失があったことが推定されるところ(商標法39条,特許法103条),およそ業として役務を提供する者が,その役務について商標を使用する場合には,他人の商標権を侵害することがないよう,事前に商標等の調査を尽くして,これを慎重かつ十分に検討する必要があるというべきであり,このことは,被告のように,その使用する商標について商標登録を得ることができた場合においても変わらないというべきである。また,本件においては,前記認定の本件に至る経緯からすれば,被告は,原告が原告商標権を有しており,また,「和幸」の部分が造語であることを十分に認識し又は認識すべきであったと認められるから,たとえ,被告標章1につき商標登録を得たとしても,その商標登録後に,登録異議申立てによりその登録が取り消されたり,無効審判請求により無効とされたりするといった事態になることも当然に予想すべきであったと認められる。 そうすると,自己の登録商標(ないしその類 後に,登録異議申立てによりその登録が取り消されたり,無効審判請求により無効とされたりするといった事態になることも当然に予想すべきであったと認められる。 そうすると,自己の登録商標(ないしその類似商標)の使用であるからという理由で前記過失の推定を覆すことはできないというべきである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (2) 次に,被告は,「和幸」の文字が飲食店の名称としては普遍的,一般的であり識別力が弱いことを前提に,被告と「和幸」の文字との関わり等種々の事情を総合考慮した結果,被告各標章がいずれも一連一体のものとして認識されるもので原告商標とは類似しないと判断したものであるから,そのような被告については,仮に原告商標と被告各標章とが類似していると判断され た場合であっても,通常の注意義務は果たしており過失がないものとして判断されるべきである旨主張する。 しかし,前記のとおり,もともと「和幸」という名称は造語である上,原告ら及び被告を含む本件3社は,いずれも長きにわたって「とんかつ和幸」の名称又は「和幸」の文字を含む名称で豚カツ料理店を経営してきており,それぞれその知名度を高めるべく経営努力を重ねてきた結果,現在では幅広い地域において有名な豚カツ料理チェーン店として認知されるに至ったと認められるから,少なくともその限度においては,「和幸」の文字部分は相応の出所識別力を有するものというべきであり,「和幸」の文字が飲食店の名称としては普遍的,一般的であり識別力が弱いとの前提は失当である。 また,原告商標権を有する原告和幸商事は,もともと,平成4年から被告に対し「とんかつ和幸」ないし「和幸」の名称の使用禁止を求めて当庁に訴訟を提起するなど被告の上記標章の使用に反対しており,現に被告標章1の商標登録 を有する原告和幸商事は,もともと,平成4年から被告に対し「とんかつ和幸」ないし「和幸」の名称の使用禁止を求めて当庁に訴訟を提起するなど被告の上記標章の使用に反対しており,現に被告標章1の商標登録についても原告和幸商事から無効審判請求が提起されている。これについては,特許庁の無効審決が,被告が提起した審決取消訴訟における知財高裁判決及び最高裁の上告不受理決定でそれぞれ維持されていることからすると,本件については,なおさら慎重な調査検討が求められる事情があったというべきであり,被告と「和幸」の文字との関わり等被告が主張する種々の事情を総合考慮したというだけでは,前記の調査検討義務を尽くしたということはできず,ほかに過失の推定を覆すべき事情は見当たらない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 4 争点(3)(損害の発生及びその額)について(1) 使用料相当額の損害についてア損害の発生について(ア) 商標法38条3項は,商標権者は,故意又は過失により自己の商標権を侵害した者に対し,その登録商標の使用に対し受けるべき金銭の額に 相当する額の金銭を,自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる旨を規定している。そして,同規定によれば,商標権者は損害の発生について主張立証する必要はなく,侵害者は,損害の発生があり得ないことを抗弁として主張立証し,損害賠償の責めを免れることができるものと解するのが相当である(最高裁平成6年(オ)第1102号同9年3月11日第三小法廷判決・民集51巻3号1055頁参照)。 (イ) この点,被告は,上記最高裁判決に基づき,原告商標には顧客吸引力が全く存在しないとして,本件においては使用料相当額の存在は認められないと主張する。 しかし,原告ら及び被告を含む本件 。 (イ) この点,被告は,上記最高裁判決に基づき,原告商標には顧客吸引力が全く存在しないとして,本件においては使用料相当額の存在は認められないと主張する。 しかし,原告ら及び被告を含む本件3社が,いずれも長きにわたって「とんかつ和幸」の名称又は「和幸」の文字を含む名称で豚カツ料理店を経営してきており,それぞれその知名度を高めるべく経営努力を重ねてきた結果,現在では幅広い地域において有名な豚カツ料理チェーン店として認知されるに至ったと認められるから,少なくともその限度においては,「和幸」の文字部分は相応の出所識別力を有するものというべきであることは前記のとおりであり,また,本件3社の中では,原告が最も古くから「和幸」の名称を使用しており,かつ,最も多くの店舗を展開していることは,前記1(1)ないし(3)において認定したとおりである。 したがって,被告が,そのような原告商標に類似する被告各標章を原告らの許諾を得ずに本件店舗において使用した以上,原告らに損害が生じなかったということはできず,また,その使用が,本件店舗における売上げに全く寄与しなかったということはできない。 以上によれば,被告が被告各標章を使用したことにより原告らに損害が発生しなかったとする被告の主張は採用することができない。 イ本件店舗の売上額について 証拠(乙117,120)によれば,本件店舗の営業期間中(平成20年9月11日から平成22年7月14日まで)における被告の売上高は,合計1億0170万2357円であると認められる。 ウ使用料相当額について(ア) 前記のとおり,原告ら及び被告を含む本件3社はいずれも長きにわたって「とんかつ和幸」の名称又は「和幸」の文字を含む名称で豚カツ料理店を経営してきており,それぞれその知名度を高めるべ ついて(ア) 前記のとおり,原告ら及び被告を含む本件3社はいずれも長きにわたって「とんかつ和幸」の名称又は「和幸」の文字を含む名称で豚カツ料理店を経営してきており,それぞれその知名度を高めるべく経営努力を積み重ねてきたこと,その結果,現在では幅広い地域において有名な豚カツ料理チェーン店として認知されるに至ったと認めることができるが,その知名度を形成するに当たっては,被告にも相当程度の寄与があると認められること,原告のみならず,被告もかつては「とんかつ和幸」の登録商標(前記参考商標2)を有しており,それが重複登録であったことから,被告としてはあえて更新登録申請を行うことなく参考商標2に係る商標権を消滅させたものであること,協和は現在もなお「とんかつ和幸」の登録商標(前記参考商標1)を有していること,原告和幸商事と被告との間で成立した本件和解においても,被告が「和幸」の文字を使用すること自体は禁止されておらず,被告は「とんかつ和幸」の名称に冠を付する等,原告の表示である「とんかつ和幸」と明確に区別できる表示に変更する義務を負うにすぎないこと等の事情を総合考慮すれば,原告商標の使用料相当額は,本件店舗の売上額の1%とするのが相当である。 (イ) この点に関し原告らは,他人に原告商標の使用を許諾する際の,原告ら「和幸グループ」内部の規約として,「和幸グループ・商標使用権許諾に関する規約」(甲14)を定めているところ,同規約第3条において,使用権を許諾する際の使用料は,「当該他人が使用期間中に許諾商標を使用して行った営業から生じる売上(消費税及び地方消費税は含ま れない)の5パーセントに相当する額以上としなければならない」と定められていること,さらに,被告による被告各標章の使用は,原告和幸商事と被告との間で平成6年9月20 及び地方消費税は含ま れない)の5パーセントに相当する額以上としなければならない」と定められていること,さらに,被告による被告各標章の使用は,原告和幸商事と被告との間で平成6年9月20日に成立した本件和解の趣旨や,従前の経緯を無視した悪質なものであることを理由に,被告に対する原告商標の使用料率は10パーセントとすべきである旨主張する。 しかし,原告らが主張する上記内部規約は飽くまで原告商標の使用に関するものであり,原告商標そのものではない被告各標章の使用には直ちに当てはまらないというべきであるし,本件店舗の営業形態その他前記認定の事情を考慮するならば,原告商標の構成のうち「和幸」の文字部分が被告店舗の売上げに相当程度寄与したと認めるべき理由もないというべきである。 エしたがって,前記イの本件店舗の売上額1億0170万2357円に対する使用料相当額は,101万7023円(1円未満切捨て)となる。 (計算式)1 億0170 万2357 円×1%=101 万7023 円(2) 信用毀損による損害について原告らは,原告らの店舗数,従業員数,売上高等に鑑みると,原告ら「和幸グループ」及び原告商標は高度の周知性を有しており,一般消費者からの高い知名度及び信用を有していること,他方,被告は,本件店舗の新規オープン当初は,豚カツ料理を中心としたメニューを提供する一方で,本件店舗において豚カツ料理以外のメニューを乱発することにより,「『とんかつ』といえば『和幸』」「『和幸』といえば『とんかつ』」というブランドイメージの低下を招き,原告ら「和幸グループ」の豚カツ専門店としてのイメージが著しく低下したこと,被告による本件店舗の新規オープン自体が本件和解の趣旨を潜脱するために故意に行われたものであり悪質性が高いこと等を指摘して, 告ら「和幸グループ」の豚カツ専門店としてのイメージが著しく低下したこと,被告による本件店舗の新規オープン自体が本件和解の趣旨を潜脱するために故意に行われたものであり悪質性が高いこと等を指摘して,原告らの信用毀損は甚だしく,原告らに信用毀損の損害が発生した旨主張する。 しかし前記のとおり,原告ら及び被告を含む本件3社がいずれも長きにわたって「とんかつ和幸」の名称又は「和幸」の文字を含む名称で豚カツ料理店を経営し,それぞれその知名度を高めるべく経営努力を積み重ねた結果,現在では幅広い地域において有名な豚カツ料理チェーン店として認知されるに至ったと認めることができるものの,その反面,同一の表示を含む標章を複数の事業主体が使用していた場合,これに接した取引者・需要者は,共通する表示部分のみでは複数の事業主体のいずれに係るものであるかを認識することは困難であるというべきであり,本件3社についても決してその例外であるとは認められないこと(このことは,前記1(6)の事実からも明らかといえる。),また,豚カツ料理店以外の飲食店一般においては,現在では「和幸」の文字を含む名称を有する飲食店が全国に多数存在するに至っていること(前記1(4))からすれば,「和幸」の文字部分が本件3社の中でもとりわけ原告らの役務であることを示す出所識別標識として高い知名度を有しているとまではいうことができない。 また,被告は本件店舗において原告商標そのものを使用していたわけではなく,「いろいろな料理を食べさせる店」を意味する「食堂」の文字を含む被告各標章を使用していたのであるから,本件店舗において提供される料理の中に豚カツ料理以外の料理が含まれていたとしても,それが直ちに原告らないし原告商標のブランドイメージの低下につながるとは認められない。 さら していたのであるから,本件店舗において提供される料理の中に豚カツ料理以外の料理が含まれていたとしても,それが直ちに原告らないし原告商標のブランドイメージの低下につながるとは認められない。 さらに,前記(1)ウ(ア)の事情を踏まえれば,本件店舗の開設が本件和解の趣旨を潜脱するとはいえず,原告商標権を侵害したことについて悪質性が顕著であるということもできない。 以上によれば,原告商標権の侵害により殊更原告らの信用が毀損されたものと認めることはできず,この点に関する原告らの主張は理由がない。 (3) 弁護士費用前記(1)及び(2)を踏まえれば,本件と相当因果関係のある弁護士費用相当 額の損害としては10万円を認めるのが相当である。 (4) 小括以上によれば,原告らの損害額は合計111万7023円と認められ,これを原告らの共有持分に応じて3等分すると,それぞれ37万2341円となる。 5 争点(4)(謝罪広告の必要性)について前記4(2)で説示したとおり,原告商標権の侵害により殊更原告らの信用が毀損されたとは認められない以上,被告に謝罪広告の掲載を命じる必要性は認められないというべきである。 6 結論以上の次第であるから, 原告らの請求は,原告らに対しそれぞれ37万2341円及びこれに対する平成22年7月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余は理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 東海林 保 裁判官 東海林保 裁判官 寺田利彦 裁判官 足立拓人 別紙謝罪広告目録 省略
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