【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人柴田睦夫の上告趣意第一点について。 所論は、本件公訴の提起が公訴事実の特定を欠き無効であることを前提として違 憲
主文本件上告を棄却する。 理由弁護人柴田睦夫の上告趣意第一点について。 所論は、本件公訴の提起が公訴事実の特定を欠き無効であることを前提として違憲をいうものである。 ところで本件起訴状記載の公訴事実は、「被告人は、日本人であるが昭和二八年五月三一日頃から同三五年一月一日頃までの間に有効な旅券に出国の証印を受けないで、本邦より本邦以外の地域である中華人民共和国に出国したものである」というのであつて、犯罪日時を表示するに六年余の期間内とし、場所を単に本邦よりとし、その方法につき具体的表示をしていないことは、所論のとおりである。 しかし、刑訴二五六条三項は、裁判所に対し審判の対象を限定するとともに、被告人に対し防禦の範囲を示すことを目的とする趣旨であり、また犯罪の日時、場所及び方法は、犯罪の種類、性質等の如何により、これを詳らかにすることができない特殊事情がある場合には、右法の目的を害さないかぎりの幅のある表示をしても、その一事のみを以て、罪となるべき事実を特定しない違法があるというべきでないことは、当裁判所大法廷判決(昭和三四年(あ)第一六七八号同三七年一一月二八日判決)の示すところである。 これを本件についてみるのに、検察官は、本件第一審第一回公判における冒頭陳述において、証拠により証明すべき事実として、(一)被告人は昭和二八年五月三一日頃まで佐倉市に居住していたが、その後同市に居住していなかつた事実、(二)被告人はその後中華人民共和国に居住し、昭和三五年二月二八日オランダ船A号で本邦に帰国した事実、(三)被告人は旅券に出国の証印を受けていなかつた事実を挙げており、これによれば、検察官は、被告人が昭和二八年五月三一日頃までは本- 1 -邦に在住していたが、その後日時は詳らかでないが中 た事実、(三)被告人は旅券に出国の証印を受けていなかつた事実を挙げており、これによれば、検察官は、被告人が昭和二八年五月三一日頃までは本- 1 -邦に在住していたが、その後日時は詳らかでないが中国に向けて不法に出国し、引き続いて本邦外にあり、同三五年二月二八日前記オランダ船で帰国したものであるとして、右不法出国の事実を起訴したものとみるべきである。そして、本件密出国のように、本邦をひそかに出国してわが国と未だ国交を回復せず、外交関係を維持していない国に赴いた場合は、その出国の具体的顛末についてこれを確認することが極めて困難であつて、まさに上述の特殊事情のある場合に当るものというべく、たとえその出国の日時、場所及び方法を詳しく具体的に表示しなくても、起訴状及び右第一審第一回公判の冒頭陳述によつて本件公訴が裁判所に対し審判を求めようとする対象は、おのずから明らかであり、被告人の防禦の範囲もおのずから限定されているというべきであるから、被告人の防禦に実質的の障碍を与えるおそれはない。それゆえ、本件公訴の提起が公訴事実の特定を欠き無効であるとの所論は理由がなく、違憲の主張は、その前提において採ることを得ない。 同第二点について。 所論は、単なる訴訟法違反の主張であつて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。 なお、論旨は、原判決およびその是認する第一審判決の刑訴二五五条一項の解釈を非難するけれども、同項前段の「犯人が国外にいる場合」は、同項後段の「犯人が逃げ隠れている」場合と異なり、公訴時効の進行停止につき、起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつたことを前提要件とするものでないことは、規定の明文上疑いを容れないところであり、また犯人が国外にいる場合は、捜査官において犯罪の発生またはその犯人を知ると否とを問わず、犯人の国外にいる期間 きなかつたことを前提要件とするものでないことは、規定の明文上疑いを容れないところであり、また犯人が国外にいる場合は、捜査官において犯罪の発生またはその犯人を知ると否とを問わず、犯人の国外にいる期間、公訴時効の進行を停止するものと解すべきことは、当裁判所の判例(昭和三五年(あ)第七三五号同三七年九月一八日第三小法廷判決)の示すところであつて、これと同趣旨にいでた所論原判示は相当である。 同第三点について。 - 2 -所論は、出入国管理令六〇条は、旅券法一三条一項五号の規定と相まつて憲法二二条二項に違反する旨主張するが、旅券法一三条一項五号および出入国管理令六〇条がいづれも憲法二二条二項に違反しないことは、当裁判所大法廷の判決(前者につき昭和二九年(オ)第八九八号同三三年九月一〇日判決、後者につき昭和三四年(あ)第一六七八号同三七年一一月二八日判決)の示すところであるから、所論は採ることを得ない。 また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。 よつて刑訴四〇八条により主文のとおり判決する。 この判決は、論旨第一点に関する裁判官奥野健一の補足意見があるほか裁判官全員一致の意見によるものである。 裁判官奥野健一の補足意見は、本判決に引用された昭和三四年(あ)第一六七八号事件判決に附記したところと同趣旨である。 昭和三八年一月二五日最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官池田克裁判官河村大助裁判官奥野健一裁判官山田作之助裁判官草鹿浅之介- 3 - 奥野健一裁判官山田作之助裁判官草鹿浅之介- 3 -
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