主文 1 被告足立区長が原告に対し平成12年8月17日にした転居届の不受理処分を取り消す。 2 被告足立区は、原告に対し、金70万円及びこれに対する平成12年8月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告の被告足立区に対するその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は、被告らの負担とする。 5 この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主文第1項同旨 2 被告足立区は、原告に対し、金100万円及びこれに対する平成12年8月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は、宗教団体・アレフの信者で東京都足立区内で転居をした原告が、被告足立区長に対し転居届を提出したのに対し、被告足立区長がその不受理処分をしたとして、被告足立区長に対し同処分の取消しを求めるとともに、原告は同処分によって精神的苦痛を受けたとして、被告足立区に対し国家賠償法1条に基づく損害賠償請求として金100万円及びこれに対する不法行為たる同処分の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 法令の定め(1) 住民基本台帳法(以下「法」という。)は住民基本台帳制度について規定するところ、同制度は、市町村(特別区を含む。以下「市区町村」という。)において、住民の居住関係の公証、選挙人名簿の登録その他の住民に関する事務の処理の基礎とするとともに住民の住所に関する届出等の簡素化を図り、あわせて住民に関する記録の適正な管理を図るため、設けられた制度であって、法は、同制度により、住民の利便を増進するとともに、国及び地方公共団体の行政の合理化に資することを目的としている(法1条)。 (2) 市区町村長は、常に住民基本台帳を整備し、住民に関す 制度であって、法は、同制度により、住民の利便を増進するとともに、国及び地方公共団体の行政の合理化に資することを目的としている(法1条)。 (2) 市区町村長は、常に住民基本台帳を整備し、住民に関する正確な記録が行われるように努めるとともに、住民に関する記録の管理が適正に行われるように必要な措置を講ずるように努めなければならず(法3条1項)、その住民につき、法7条に規定された氏名、出生の年月日、男女の別等の事項を記録する住民票を個人又は世帯ごとに編成して、住民基本台帳を作成する義務を負い(法5条、6条1項)、住民票の記載、消除又は記載の修正は、政令で定めるところにより、法の規定による届出に基づき、又は職権で行うこととされている(法8条)。 (3) 転入(新たに市区町村の区域内に住所を定めることをいい、出生による場合を除く。)をした者は、転入をした日から14日以内に、氏名、住所、転入をした年月日等を市区町村長に届け出なければならず(法22条1項)、転居(1の市区町村の区域内において住所を変更することをいう。)をした者も、転居をした日から14日以内に、氏名、住所、転居をした年月日等を市区町村長に届け出ることが義務付けられ(法23条)、正当な理由がなく、これに違反した場合には、5万円以下の過料に処せられることとされている(法51条2項)。 3 前提事実(以下の事実は、括弧内に認定根拠を掲げた事実のほかは当事者間に争いのない事実である。)(1) 原告は、宗教団体・アレフの信者である。 (2) 原告は、平成10年6月15日、横浜市内の住所地から東京都足立区αに同日転入したとして、被告足立区長に対して転入届を提出し、被告足立区長は、その転入地を住所とする原告の住民票を作成した。 同転入地には、当時「Dビル」の名称で地上3階建ての建物が存在し、同建物 αに同日転入したとして、被告足立区長に対して転入届を提出し、被告足立区長は、その転入地を住所とする原告の住民票を作成した。 同転入地には、当時「Dビル」の名称で地上3階建ての建物が存在し、同建物には、同日ころ以降、平成7年10月の宗教法人オウム真理教に対する解散命令の後における旧宗教法人オウム真理教(後に宗教団体・アレフと改称した。以下、改称の前後を問わず「教団」ともいう。)の信者らが入退去、出入りをするようになって、同建物は、その周辺地域において、教団における「谷中施設」と呼ばれるようになった。 (3) 平成11年7月ころには、谷中施設に教団の勝議部、法務部、広報部などの組織が置かれて、後に教団代表となったAも谷中施設に在住するに至った。 (4) 原告は、教団が谷中施設の建物をその所有者の破産管財人に対して明け渡した日である平成11年9月30日、東京都豊島区β4-30-15晴風マンション1階を転出先とする転出届を被告足立区長に提出し、被告足立区長は、原告に対し、同日、同転出に係る転出証明書(以下「本件転出証明書」という。)を発行した。 しかし、同マンションの周辺住民が、同マンションに宗教団体・アレフの信者が入居することに反対し、原告は、同マンションに入居することはできず、埼玉県越谷市γ所在の建物に滞在することとなったが、越谷市が宗教団体・アレフの信者の転入届を不受理とする方針を採っていたため、原告は、越谷市への転入届をせず(甲26)、そのため、原告について同転出の確定(他市町村への転入届)に関する通知が被告足立区長に届くことはなかった。 (5) 原告は、平成12年1月28日から東京都足立区δ○号室に居住し始め(甲26)、同日、本件転出証明書を持参して足立区役所竹の塚区民事務所を訪れ、同○号室を転入先とする転入(転居)届をしたいと (5) 原告は、平成12年1月28日から東京都足立区δ○号室に居住し始め(甲26)、同日、本件転出証明書を持参して足立区役所竹の塚区民事務所を訪れ、同○号室を転入先とする転入(転居)届をしたいと申し出た。これに対し、同区民事務所の所長が応対し、「オウム信徒の転入は拒否する」、区民事務所では、谷中施設からの転入届は受け付けない」としている足立区の方針、区役所本庁組織からの指令に従って、原告の転入届は受け付けないこと、詳しくは区役所本庁の戸籍住民課に行って話をして解決してもらいたい旨を原告に告げ、旧住所で交付されていた原告の国民健康保険証を返還するように求めたところ、原告は、その場で保険証を返還し、届書類を持ち帰った。 (6) 原告は、平成12年2月1日、足立区役所本庁の戸籍住民課に行き、大田原市、三和町、藤岡市発行の不受理証明書を見本として担当職員に示し、上記(5)の転居届についてのやりとりにつき被告足立区長の不受理証明書の交付を要求した。それに対して、担当職員は、大田原市などのように一旦転入届を受理した後に不受理通知を発したり転入届を返送している場合と本件とは異なるのであるから、不受理証明書の発行はできない旨原告に答えた。 (7) 原告は、東京都知事に対し、平成12年3月14日、上記(5)の転入届の不受理処分の取消しを求めて審査請求をした。 (8) 原告は、平成12年8月11日から、東京都足立区ε502に転居し(同マンション名は、後に「E」、「F」と変更された。以下、マンション名の変更を問わず、同マンション502の居室を「本件居室」という。)、同日以降本件居室に居住しており(甲22ないし26)、同月17日、本件転出証明書を持参して足立区役所花畑区民事務所(以下「花畑区民事務所」という。)を訪れ、同区民事務所窓口の職員に対し、転入届を提 同日以降本件居室に居住しており(甲22ないし26)、同月17日、本件転出証明書を持参して足立区役所花畑区民事務所(以下「花畑区民事務所」という。)を訪れ、同区民事務所窓口の職員に対し、転入届を提出したい旨申し出たところ、同職員は、原告に対し、住民異動届の用紙を渡して、転出証明書を添えて提出するように説明した。そこで、原告は、同用紙に本件居室を転居先とすることなど必要事項を記入して(以下、原告の記入に係る住民異動届の用紙を「本件異動届用紙」という。)本件転出証明書とともに窓口の同職員に提出した。窓口職員が、原告から受け取った本件異動届用紙及び本件転出証明書(以下「本件異動届用紙等」という。)について花畑区民事務所長に相談した結果、同所長が原告に応対することとなり、同所長は、原告に対し、本件転出証明書に記載されている住所は宗教団体・アレフ関連の施設であり、同団体の信者の転入は拒否するとの足立区の方針・本庁組織の指令によって、区民事務所では谷中施設からの同団体の信者の転居を受け入れることはできず、原告の転居関係書類は受け取れない旨を告げ、本件異動届用紙等を原告に返戻した。原告に同行したCが同所長に抗議したが受け入れられず(甲26)、原告は、返戻された本件異動届用紙等を受け取って花畑区民事務所から立ち去った。 (9) 原告は、本件異動届用紙等の提出をもって転居届をしたもの(以下「本件転居届」という。)と考え、本件異動届用紙等を返戻されたことが本件転居届の不受理処分であるとして、東京都知事に対し、平成12年9月13日、本件転居届の不受理処分の取消しを求めて審査請求をした。 4 争点及び争点に対する各当事者の主張(1) 本件訴えの適法性(転居届不受理処分の有無)(争点1)(原告の主張)ア本件において、原告が本件転居届の申出をしたのに対し、応 求めて審査請求をした。 4 争点及び争点に対する各当事者の主張(1) 本件訴えの適法性(転居届不受理処分の有無)(争点1)(原告の主張)ア本件において、原告が本件転居届の申出をしたのに対し、応対した花畑区民事務所の職員は、原告が谷中施設からの転出者であることから、従前からの足立区の方針に従い、本件転居届を受け付けることはできない旨原告に伝えたもので、本件転居届につき不受理処分が存在することは明白である。 イ被告らは、本件転居届につき、受付をできないことを伝えたのみで何らの決定類似行為はないというが、本来であれば、届出を受理するのが住民基本台帳法上の市区町村長の義務であり、これを受理しないのは法の定める理由があるものではなく、受理できないということ自体が法に違反する行為であり、これをもって不受理処分がなかったということはできない。被告らは、原告が自ら本件異動届用紙等を持って退出したかのような主張をするが、原告は、本件異動届用紙等を窓口に提出したところ、これを受け取った職員がそれを花畑区民事務所長に渡し、同所長が原告に本件異動届用紙等を突き返したというのが実際であり、原告が退出せずにそこで受理を求めたとしても、足立区が従前からの方針として不受理の取扱いを決めていた以上、花畑区民事務所の職員が本件転居届の受理をすることはあり得ないことであり、被告らの主張は詭弁にすぎない。 また、被告足立区長は、花畑区民事務所の職員が原告に対して「本庁に赴いて解決することを原告に求めた」と主張するが、原告が足立区役所本庁に行くように告げられたのは、平成12年1月28日のことである。 (被告足立区長の主張)ア本件転居届に対する被告足立区長のいわゆる不受理処分に該当する行為は存在しない。 原告が訪れた花畑区民事務所では、被告足立区の設置したオウム真理教 月28日のことである。 (被告足立区長の主張)ア本件転居届に対する被告足立区長のいわゆる不受理処分に該当する行為は存在しない。 原告が訪れた花畑区民事務所では、被告足立区の設置したオウム真理教対策本部の決定、「オウム信徒の転入は拒否する」との被告足立区の方針を受けて、本庁組織から指令されていたとおり、区民事務所では当該転入届を受け付けることはできないと告げたのであって、それ以上に転入の届出の取扱いに関する決定行為に類することなどは行っておらず、その点については本庁に赴いて解決することを原告に求めたのであり、これに対し、原告においては、そのまま本件異動届用紙等を持って花畑区民事務所から退出した。 したがって、花畑区民事務所の職員は、本件異動届用紙等を受け付けて記載内容をチェックすることも、届出に来た者が転入者本人又は権限ある代理人であることを確認するための手続をとることも、一切行っていない。まして、本件転入届を不受理とするとの意思決定手続を区民事務所において行い、原告にその旨を告知するとか、一旦転入届を受け付けた後にこれを原告に返戻するといった行為は、本件では全く行われていない。原告は、花畑区民事務所を訪れた後に本庁戸籍住民課を訪れていわゆる受理を求めることもなかったのであり、本件については、転入届がされて被告足立区長の不受理決定を受けたと認められるような実態も形式もおよそ存在しないのである。 イ住所を定め、あるいは住所を変更した者は、市区町村長に届け出る義務が課せられているが、そうであるからといって、市区町村長は、届出を受けたとおりの内容で住民票の記載等をなすことを法律上義務付けられるわけではない。市区町村長が届出それ自体に対して応答すべき義務や、屈出人の届出に係る権利が設定されているのではないのであって、転入(転居)届自体に 容で住民票の記載等をなすことを法律上義務付けられるわけではない。市区町村長が届出それ自体に対して応答すべき義務や、屈出人の届出に係る権利が設定されているのではないのであって、転入(転居)届自体について法的効果は付与されていない。 もっとも、住民票を作成する行為、そこに一定の事項を記載する行為、それを消除する行為という市区町村長の行為については、住民登録をされていることが選挙権行使の要件とされているなど、法的利益に関係する場面があることから、それらの行為を行政処分と解する余地があり、市区町村長において住民票を故なく作成しないことなどは、公権力の行使における違法な不作為であるとされる余地もあろう。しかし、市区町村長において住民票を作成する場合の資料となるものである転入(転居)届について、これを事実上受理しないこと、その書類を受け付けないことなどの市区町村長の行為、不作為のみをもって直ちに法的効果を伴った行政処分と認めることはできない。 ウ本件において、花畑区民事務所の職員は、原告の本件転入届を受理する、不受理にするなどといった場面、内容で対応していたわけではない。原告に対する対応は「オウム信徒の転入は拒否する」、したがって、そのためには転入届に来ても区民事務所では書類を受け付けない、これを受け取らないということで一貫していたものである。 そして、足立区長の意思も、転入届等に対する受理とか不受理の行為といった場面におけるものではなく、宗教団体・アレフの信者の転入を拒否するため、端的に原告について住民登録は行わないとする点にこそ実質があったのであり、仮にいわゆる「受理」がされ、当該住所地において居住の事実が認められると評価されるような場合であったとしても、原告の住民票を作成、記載することにはならないとの点は真に明らかな状況であった。 あり、仮にいわゆる「受理」がされ、当該住所地において居住の事実が認められると評価されるような場合であったとしても、原告の住民票を作成、記載することにはならないとの点は真に明らかな状況であった。 このような実質、実体面を考慮すれば、原告に対する花畑区民事務所職員の対応については、教団信者の住民登録は行わないとの方針、被告足立区長の意思を現に実行したということであって、これをあえて届出に対するいわゆる不受理処分ととらえて、その届出の受理、不受理の行為自体に関する適法、違法を判断することだけでは、少なくとも法的な面においては十分なものでないと解される。 本件転居届の不受理処分の取消しを求める原告の訴えは、被告足立区長が原告に対しては住民票を作成しないとの行為、対応をしていることを看過、軽視して、区民事務所において転入届を受け付けられず、住民票が作成されることもなかった場合に、形式的に被告足立区長の「不受理処分」が介在したはずであるとか、それが介在せねばならないとの前提によって構成したものであり、法的構成として誤ったものというべきである。 エ以上のとおり、被告足立区長に対する本件訴えは、取消しの対象となる行政処分を欠くか、訴えの利益を欠くものであり、いずれにせよ不適法であるから却下されるべきである。 (2) 転居届不受理処分の適法性(争点2)(被告らの主張)ア教団が過去に起こした数々の事件は、松本サリン事件及び地下鉄サリン事件をはじめとして、一般市民を恐怖におののかせ、無差別テロに対する不安を煽り立てた犯行であり、我が国の治安に対する信頼を根本から揺るがすものとして、社会に与えた衝撃は計り知れないものがあった。現在においても、これらの事件ないし教団に対する社会の恐怖、不安などは、決して薄れていない。いずれの犯行も、教団の信者のみに 根本から揺るがすものとして、社会に与えた衝撃は計り知れないものがあった。現在においても、これらの事件ないし教団に対する社会の恐怖、不安などは、決して薄れていない。いずれの犯行も、教団の信者のみによって敢行され、結局は教団の教祖、尊師とされるB及び教団の利益、存続のためだけに、社会秩序や何物にも代え難い他者の生命などを一顧だにせず、手段を選ばず行われた独善的犯行というほかないものである。 イこのような教団及び教団信者らの活動に対し、地域住民多数が現実に抱いている恐怖や不安を背景として、全国の地方公共団体が、教団施設の退去を求め、あるいは、教団の進出を阻止するために、地方公共団体の能力、権能が及ぶ範囲の措置として、教団信者の転入届の受理拒否を表明していることは周知の事実である。 足立区においては、平成12年3月ころには、教団の出家信者数約600名のうち、実に約170名が集中して居住しているとされ、また、地下鉄サリン事件の被害者及びその親族が多数居住しているため、教団が足立区民に及ぼす恐怖や不安は現実に顕著かつ切実なものであり、そのような住民の現に抱いている恐怖感、不安感それ自体が無視できない問題となっていて、これらの事実を被告らは決して軽視したり無視し去ることはできない。それゆえ、これ以上の足立区内への教団信者の集中、とりわけ教団の拠点施設の構築、形成は、被告足立区長として到底容認することができないものであって、そのために教団信者の集中等を可能な限り阻止するための実効的な方法の一つとして住民登録の拒否に至ったことは、正当な措置として社会的に是認され得るものである。 原告の場合についても、教団内において、出家信者としていかなる階級にある者であるかは、教団の閉鎖性等からして、被告足立区長は確知し得ないのであり、その転入によって足立区内にお され得るものである。 原告の場合についても、教団内において、出家信者としていかなる階級にある者であるかは、教団の閉鎖性等からして、被告足立区長は確知し得ないのであり、その転入によって足立区内における教団の拠点施設の形成や教団の活動にどのような比重を占める場合であるかなどについても全く判明し得ないのであって、足立区内における教団勢力、活動の拡大を阻止するとの観点から対応せざるを得なかった場合である。 ウ住民登録及び住民基本台帳は、単に形式的に住所の登録公証だけにはとどまらず、実質的に当該地方公共団体の住民として受け入れ、各種の行政上のサービスを受けるべき立場を付与する効果を有するものであって、当該地方公共団体において住民として受け入れられない特別の事情が存在する場合にまで、当該地方公共団体の長に住民票を調整し住民基本台帳に記録しなければならない義務があるとは解し難い。 地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担っているものであり(地方自治法1条の2第1項)、その役割の中には、地方公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持することが含まれる。そして、地方公共団体の長は、当該地方公共団体を代表してその責に任ずることになる。極めて多数の教団信者が区域内に陸続として転入し、教団の拠点施設等に居住して教団の活動に深く関わるとの事態は、上記の被告足立区長が負っている重大かつ基本的な責務を著しく阻害するものある。 「地方公共団体に関する法令の規定は、地方自治の本旨に基づいて、かつ、国と地方公共団体との適切な役割分担を踏まえて、これを解釈し、及び運用するようにしなければならない」(地方自治法2条12項)ところ、このことは、地方公共団体の役割の遂行における自 に基づいて、かつ、国と地方公共団体との適切な役割分担を踏まえて、これを解釈し、及び運用するようにしなければならない」(地方自治法2条12項)ところ、このことは、地方公共団体の役割の遂行における自主性、自立性が法の趣旨に反しない範囲で尊重され、法の解釈、運用が行われるべきことを示している。住民基本台帳に関する事務は、法定受託事務ではなく、当該地方公共団体における自治事務に属するものであるから、本件のように、原告の転入を受け入れて住民登録をすることはなし難い特別の事情があると被告足立区長が認めるときに、法においては明文の規定をもって住民票の作成を行わない場合として定められていないとしても、これが許されると被告足立区長において法を解釈し運用することは、必ずしも違法なことであると断定はできない。 教団信者の転入届を受理しないとの方針を宣言し、実施している地方公共団体は、全国的に、かつ、多数に及んでいることは周知の事実であり、それに対し、国又は東京都による指導(法31条1項)、主務大臣又は東京都知事による助言・勧告(同条2項)は、現在まで一切行われたことはなく、このことも、本件における被告足立区長の行為が直ちに違法視され得るものではないことの証左である。 エ以上のとおり、被告足立区長が原告に対してした行為に違法性があるとはいえない。 (原告の主張)ア地方自治法10条1項は、「住民」の意義について、「市町村の区域に内に住所を有する者は、当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民とする。」と明確に規定し、その他に一切の要件を付加しておらず、法4条は「住民の住所に関する法令の規定は、地方自治法(括弧内省略)10条1項に規定する住民の住所と異なる意義の住所を定めるものと解釈してはならない。」としているのであるから、法における「住民」の意義につ 「住民の住所に関する法令の規定は、地方自治法(括弧内省略)10条1項に規定する住民の住所と異なる意義の住所を定めるものと解釈してはならない。」としているのであるから、法における「住民」の意義については、「市町村の区域内に住所を有する者」との解釈以外にはあり得ない。転入届等を受けた区長が、同届に係る住民の居住の有無以外に、その転入届等の目的、思想信条、所属団体の内容等を審査して、転入届等の受理をしないことを認めることは、地方自治法10条1項の「住民」の意義に新たな要件を加えるものであって、絶対に許されない解釈である。 日本国籍を有する者であって、当該市区町村の区域内に居住の事実があり、居住の意思も認められる者(すなわち、当該市区町村の住所を有する者)は、その市区町村長に転入等の届出をすべき法的義務を負い(法22条、23条)、かつ、市区町村長は、法に基づき、その者の住民たる地位に関する正確な記録(住民基本台帳)を常に整備する法的義務を負っているのであって(地方自治法13条の2)、これ以外の法律関係は存在せず、市区町村長に住民登録を拒否し得る裁量権が認められる法的根拠はない。法1条、3条1項及び14条1項並びに住民基本台帳法施行令8条及び11条の文理自体から、また、その目的、趣旨からして、住民基本台帳に記録されるべきか否かは、当該住民の住所が当該市区町村の区域内にあるかどうかという事実及び住民基本台帳に登録して管理すべき者かどうかのみを基準として判断されるべきものである。 地方公共団体がその住民の生命、身体、財産等の安全を確保すべき責務があるにしても、転入・転居届をした者が「住民」(地方自治法10条1項)たる地位にあることを公証することを目的とする法の解釈を歪めて構わないという根拠にはならない。 イ憲法は、22条1項において居住移転の しても、転入・転居届をした者が「住民」(地方自治法10条1項)たる地位にあることを公証することを目的とする法の解釈を歪めて構わないという根拠にはならない。 イ憲法は、22条1項において居住移転の自由を保障しており、自己が求める場所に移転し居住してもそのことにより何ら不利益を受けないことが保障されているところ、原告は、本件転居届の不受理処分によって後記(4)の(原告の主張)のとおりの不利益を受けており、したがって、原告は、本件転居届の不受理処分により居住移転の自由を侵害されている。 また、法は住民登録制度と選挙制度を結合させ、公職選挙法によれば、選挙人名簿又は在外選挙人名簿に登録されていない者は投票することができないところ(同法42条1項本文)、選挙人名簿の登録は、当該市区町村の区域内に住所を有する年齢満20年以上の日本国民で、その者に係る当該市区町村の住民票が作成された日(他の市区町村から当該市区町村の区域内に住所を移した者で住民基本台帳法22条の規定により届出をしたものについては、当該届出をした日)から引き続き3箇月以上当該市区町村の住民基本台帳に記録されている者について行われることとされているから(同法21条1項)、住民登録がされない以上選挙権の行使ができないのであり、原告は、本件転居届の不受理処分により、憲法15条の選挙権を侵害されている。 さらに、国民健康保険法も、住民基本台帳法に基づく届出と国民健康保健法に基づく届出を連動させており(法28条、国民健康保険法9条10項)、その結果、法に基づく届出がされないと国民健康保険法上の届出もされないこととなり、国民健康保険の被保険者資格が得られないこととなる。したがって、原告は、本件転居届の不受理処分により、国民健康保険の利用が不可能となることから、憲法25条の生存権の自由権的 出もされないこととなり、国民健康保険の被保険者資格が得られないこととなる。したがって、原告は、本件転居届の不受理処分により、国民健康保険の利用が不可能となることから、憲法25条の生存権の自由権的側面を侵害されており、本件転居届の不受理処分は憲法25条に違反する。 加えて、本件転居届の不受理処分においては、原告が宗教団体・アレフの信者であることをもって差別的取扱いをされたのであり、思想の自由を侵害する点で憲法19条に、また、法の下の平等に反する点で憲法14条に違反する。 以上のとおり、本件転居届の不受理処分は憲法に違反するものである。 ウ被告らは、宗教団体・アレフの危険性を強調して本件処分が適法である旨主張する。 しかし、地下鉄サリン事件が発生し、平成7年10月30日に東京地裁により教団に対し宗教法人を解散する旨の決定がされ、平成8年1月30日に宗教法人の解散が確定し、教団の組織形態は変遷して、平成12年2月4日、宗教団体・アレフが発足し、Aが正式に代表となって、Bは教祖でも代表者でもなく、教団の運営や信者の指導には関与できないこととし、かつて教団の最高意思決定機関であった長老部を廃止し、民主的方法で選ばれた者により執行部を構成するものとして、教義の改革もされた。また、教団は、松本サリン事件、地下鉄サリン事件の被害者等に対して謝罪をし、賠償を行うなどしている。このように、宗教団体・アレフは、オウム真理教を承継しつつも、数々の根本的改革を行い、これによって宗教団体・アレフの危険性は全く存在していない。さらに、教団は、あらゆる手段を通じて一般社会との融和を実現することに努めてきており、これを拒否してきたのは地域住民であり地方自治体の方であった。これらの点からすれば、被告の上記主張は理由がない。 (3) 被告足立区の責任原因(争点3) 社会との融和を実現することに努めてきており、これを拒否してきたのは地域住民であり地方自治体の方であった。これらの点からすれば、被告の上記主張は理由がない。 (3) 被告足立区の責任原因(争点3)(原告の主張)ア被告足立区長は、転入(転居)者からの転入(転居)届の提出があった場合には、法5条ないし8条の規定に基づき、住民票に住民に関する記帳をして住民基本台帳に記録すべき義務があるところ、被告足立区長は違法と知りながらこの義務を怠って本件転居届の不受理処分をしたのであるから、被告足立区長は、その職務を行うにつき、公権力の行使を誤ったものであり、これにより原告に生じた損害を国家賠償法1条に基づき賠償する義務がある。 (被告足立区の主張)ア被告足立区長が本件転居届につき不受理処分をした事実を否認し、同処分が違法であるとする点、被告足立区の責任は争う。 (4) 原告の損害(争点4)(原告の主張)本件転居届の不受理処分により、原告は、国民健康保険証の交付を受けられないため、健康保険が利用できない。また、選挙権の行使もできない。 このような生活上の支障により、原告は多大な精神的苦痛を受けているほか、これらの生活上の支障がいつまで続くかわからないという将来の不安を抱えており、こうした原告の精神的苦痛や不安に対する慰謝料の額は金100万円を下らない。 (被告足立区の主張)不知ないし争う。 第3 争点に対する判断 1 争点1(処分の有無)について(1) 法1条によれば、住民基本台帳制度は、住民の居住関係の公証、選挙人名簿の登録その他の住民に関する事務の処理の基礎とするとともに住民の住所に関する届出等の簡素化を図り、あわせて住民に関する記録の適正な管理を図るため、設けられた制度であって、法は、同制度により、住民の利便を増進するとともに、国及び地 処理の基礎とするとともに住民の住所に関する届出等の簡素化を図り、あわせて住民に関する記録の適正な管理を図るため、設けられた制度であって、法は、同制度により、住民の利便を増進するとともに、国及び地方公共団体の行政の合理化に資することを目的としているのであるから、住民が、住民基本台帳制度により、住民登録をされることによって居住関係の公証を受け、また、住所の存在を前提とする各種の行政事務の適正で迅速な処理を享受することができるという利益は、少なくとも法律上の利益と認めるのが相当である。 法は、転入者や転居者に対して新たに住民登録をされることを求めて転入又は転居届を提出することを認め、むしろこれを義務付けているのであるから、これらの届の提出はその内容に応じた住民登録を求める申立てであって、法は転入者や転居者にその申立権を付与していると解すべきであり、その受理を拒否しこれを却下する行為が行政処分に当たることは明らかである。 (2) これを本件についてみるに、前記前提事実(8)の事実によれば、原告は、花畑区民事務所において、同区民事務所窓口の職員の指導に基づき、同職員の交付した住民異動届の用紙に必要事項を記入して本件転出証明書とともに本件異動届用紙を同職員に提出したのに対し、花畑区民事務所長が原告に応対し、原告に対し、何ら補正等を求めるのではなく、足立区の方針・本庁組織の指令によって、区民事務所では谷中施設からの同団体の信者の転居を受け入れることはできず、原告の転居関係書類は受け取れない旨を告げ、本件異動届用紙等を原告に返戻したことが認められ、同事実によれば、花畑区民事務所長は、住民登録に関する足立区の方針、すなわち足立区において住民登録に関して法に基づく処分を行う行政庁である被告足立区長の方針に基づいて、原告に対し、同方針を説明の上、確定的かつ最 ば、花畑区民事務所長は、住民登録に関する足立区の方針、すなわち足立区において住民登録に関して法に基づく処分を行う行政庁である被告足立区長の方針に基づいて、原告に対し、同方針を説明の上、確定的かつ最終的な判断として、本件転居届の受理を拒否し、これを却下する意思表示をしたものと認めるのが相当であり、同意思表示がその名宛人である原告に対して告知されたことにより、本件転居届の受理を拒否してこれを却下する旨の行政処分(以下「本件処分」という。)の効力が生じたものというべきである。 (3) なお、本件転居届の受理を拒否してこれを却下する意思表示は、被告足立区長自身によってされたものではなく、花畑区民事務所長によってされたことから、同人に本件処分を行う権限があったか否かにつき疑問がないでもないが、一般に、転居届等の住民異動届の受理は区役所本庁のみならず各区民事務所においても、その窓口で担当職員が行っていることである上、前記前提事実(8)の事実によれば、本件不受理処分を行ったのは、区民事務所の長である花畑区民事務所長であり、しかも、本件において、同所長は、本件転居届に対し、足立区の方針・本庁組織の指令に基づき、同方針・指令に基づくものであることを原告に告げた上で本件処分を行っており、これらの事実によれば、住民異動届を受理するか否かについては少なくとも区民事務所長には専決権限が与えられており、本件転居届についての本件処分もその専決権限を行使して被告足立区長の名において行われたものと認めるのが相当である。 (4) 本件処分の有無につき、被告足立区長は、本件において不受理処分に該当する行為は存在しない旨主張するが、同被告の主張自体においても、「原告に対する対応は『オウム信徒の転入は拒否する』、したがって、そのためには転入届に来ても区民事務所では書類を受け付 不受理処分に該当する行為は存在しない旨主張するが、同被告の主張自体においても、「原告に対する対応は『オウム信徒の転入は拒否する』、したがって、そのためには転入届に来ても区民事務所では書類を受け付けない、これを受け取らないということで一貫していた」もので、「宗教団体アレフの信者の転入を拒否するため、端的に原告について住民登録は行わないとする点にこそ実質があった」ことを同被告は自認しているのであり、この点だけからしても、本件において原告に対し被告足立区長の確定的かつ最終的な判断として、本件転居届の受理を拒否しこれを却下する意思表示がされたことは明らかであるというべきであって、同被告の主張は到底採用できない。 (5) また、被告は、本件訴えには訴えの利益がない旨も主張しているところ、その趣旨は必ずしも定かでないが、足立区内において住所を変更した原告が法の下ですべき行為は、本件異動届用紙等を花畑区民事務所の担当窓口に提出することで尽きており、その後原告が本件異動届用紙等を持ち帰ったとしてもそれは被告足立区長による本件処分の結果であって、原告自身は法所定の転居届の手続を完了したものといえるのであるから、本件処分が取り消されれば、被告足立区長は、足立区内において住所を変更した原告の本件転居届に基づき住民票の記載をしなければならないこととなるのであって、本件訴えに訴えの利益があることは明らかであるから、被告の上記主張には理由がない。 2 争点2(本件処分の適法性)について(1) 市区町村長が法に基づき住民票に所定の事項を記載する行為は、法1条が示すとおり、元来、公の権威をもって住民の居住関係に関する事項を証明し、それに公の証拠力を与えるいわゆる公証行為であって、当該事実関係が存在すれば、届出ないし職権によってその事実関係を住民票に記載しなければ 、元来、公の権威をもって住民の居住関係に関する事項を証明し、それに公の証拠力を与えるいわゆる公証行為であって、当該事実関係が存在すれば、届出ないし職権によってその事実関係を住民票に記載しなければならないものである。このことは、法3条が、市区町村長は、常に、住民基本台帳を整備し、住民に関する正確な記録が行われるように努めなければならないとしていること、他方、国民は、在民としての地位に変更が生じた場合(転入、転居、転出等)には、一定の期間内に当該事実を届け出る義務を負い(法22条等)、正当な理由がなくかかる届出をしない者は5万円以下の過料に処するとされていること(法51条2項)、転入届の場合には届け出た者が新たに当該市町村の区域内に住所を定めたこと以外の事項を、転居届の場合には当該市区町村の区域内で住所を変更したこと以外の事項を、住民基本台帳に記録すること及び住民票を作成することの要件とすることを明記した法令の規定はないこと、及び、転入届や転居届の届出に記載される事項は、氏名のほか居住関係に関する事項に限られており、市区町村長は当該届出の内容が事実であるかどうかを審査して住民票の記載を行うこととされていること(住民基本台帳法施行令7条、11条)からも明らかである。 (2) そうすると、転居届を受理するか否かは、当該転居の事実の有無のみによって決すべきであって、ある市区町村の区域内に住所を有する者が当該市区町村の区域内において住所を変更し、法23条に基づく届出をしたのであれば、当該市区町村長は、その者について住民票を調整する義務を負い、自らの裁量によってこれを拒むことが許されるものではなく、当該住民につき当該市区町村内における転居の事実が存在するにもかかわらず、被告らの主張するような方針に基づいて転居届の受理を拒否することは許されないとい よってこれを拒むことが許されるものではなく、当該住民につき当該市区町村内における転居の事実が存在するにもかかわらず、被告らの主張するような方針に基づいて転居届の受理を拒否することは許されないというべきである。したがって、被告らにその主張のような方針があり、本件転居届の受理がこれに反するものであったとしても、前記前提事実(8)のとおり原告が本件転居届に係る転居先に居住していることが認められるから、被告足立区長は本件転居届を受理して住民票を編成すべき義務を有していたものというほかない。 (3) この点について、被告らは、教団が足立区民に及ぼす恐怖や不安は現実に顕著かつ切実なもので、これを被告らは決して軽視したり無視し去ることはできず、地方公共団体の役割の中には地方公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持することが含まれ、地方公共団体の長は、当該地方公共団体を代表してその責務を負っているのであり、教団信者の転入を認めることは被告足立区長の重大かつ基本的な責務を阻害するから、本件処分は適法である旨主張する。 しかし、前記(1)のとおり、住民基本台帳は、その性質上、住民の居住の事実があればそれを公証するために作成されるものであって、住民票を調整することによって当該住所に居住する権原を付与したり、当該人の市町村内への居住を許容するなどの法的効果を伴うものではないから、居住の事実があれば市区町村長はこれを住民票に記載する責務を負い、居住の事実があるにもかかわらずこれを住民票に記載しないことが許されるものではない。被告足立区長が抽象的に同区の住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持するとの責務を負っていることは被告らの主張のとおりであるが、仮に、足立区民に教団に対する恐怖や不安があり、被告足立区長がその責務を果たす必要が生じた 同区の住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持するとの責務を負っていることは被告らの主張のとおりであるが、仮に、足立区民に教団に対する恐怖や不安があり、被告足立区長がその責務を果たす必要が生じたとしても、これを果たす手段として、転居届を受理しないとか住民票の記載をしないといった手段を採ることは、住民基本台帳の上記性格からして認められない。住民基本台帳制度は、もともと住民の安全確保等を目的とする制度ではなく、転入又は転居をした者につき、住民基本台帳に記録がされず、住民票が作成されなかったとしても、その者が、選挙権を行使することが困難になる等の支障を甘受してあえて当該市区町村の区域内に現実に居住することは可能なのであって、当該市区町村長が転入届・転居届の受理を拒否しても、住民の安全を確保する直接的な手段たり得ないのである。よって、この点に関する被告らの主張は採用できない。 また、被告らは、地方自治の本旨に基づいて法令の解釈がされるべきこと(地方自治法2条12項)から、被告らの主張するような法の解釈・運用が許される旨主張するが、地方自治の本旨が法律の定めに反する行為をする権限を地方公共団体の長に与えるものでないことはいうまでもなく、被告らの主張する解釈を法が許容していないことは前記のとおりであるから、地方自治の本旨を理由に本件処分を正当化することはできない。 (4) よって、被告足立区長は、法により本件転居届を受理して住民票を調整すべき義務を負っていたものといわざるを得ず、これに反してされた本件処分は違法なものというほかない。 3 争点3(被告足立区の責任原因)について被告足立区長の名において本件処分の意思表示をした花畑区民事務所長は、法に基づき住民票を調整する権限を有する被告足立区長から専決権限を与えられた職員として、その職務におけ 立区の責任原因)について被告足立区長の名において本件処分の意思表示をした花畑区民事務所長は、法に基づき住民票を調整する権限を有する被告足立区長から専決権限を与えられた職員として、その職務における同専決権限の行使により本件処分をしたのであって、公権力の行使として本件処分をしたものであることは明らかである。そして、本件処分が違法であることは前記2のとおりであり、また、区民の不安や区民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持する必要性等を理由として転居届の受理をしないことが許されないことは、法が住民基本台帳制度を、市区町村住民の居住関係の公証制度として規定している法令の文言から容易に認識することができたものというほかないから、被告足立区の花畑区民事務所長には違法な本件処分を行ったことにつき少なくとも過失があったものというべきである。 よって、被告足立区の公権力の行使に当たる公務員である職員が、その職務を行うについて、少なくとも過失によって本件処分を行ったことにより違法に原告に損害を加えたものと認められるから、被告足立区には、国家賠償法1条1項に基づき、本件処分により原告が被った損害を賠償する義務がある。 4 争点4(原告の損害)について(1) 公職選挙法によれば、選挙人名簿又は在外選挙人名簿に登録されていない者は投票することができないところ(同法42条1項本文)、選挙人名簿の登録は、当該市区町村(同法266条により市に関する規定が特別区に適用される。)の区域内に住所を有する年齢満20年以上の日本国民(同法11条1項若しくは252条又は政治資金規正法28条の規定により選挙権を有しない者を除く。)で、その者に係る当該市町村の住民票が作成された日(他の市区町村から当該市区町村の区域内に住所を移した者で住民基本台帳法22条の規定により届出をしたもの 28条の規定により選挙権を有しない者を除く。)で、その者に係る当該市町村の住民票が作成された日(他の市区町村から当該市区町村の区域内に住所を移した者で住民基本台帳法22条の規定により届出をしたものについては、当該届出をした日)から引き続き3箇月以上当該市区町村の住民基本台帳に記録されている者について(同法21条1項)、市区町村の選挙管理委員会が、毎年3月、6月、9月及び12月に原則として登録月の1日現在により当該市町村の選挙人名簿に登録される資格を有する者を当該登録月の2日に選挙人名簿に登録して行い(同法19条2項、22条)、また、選挙を行う場合についても、市町村の選挙管理委員会は、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会(衆議院比例代表選出議員又は参議院比例代表選出議員の選挙については、中央選挙管理会)が定めるところにより、当該市町村の選挙人名簿に登録される資格を有する者を選挙人名簿に登録することにより行われる(同法19条2項、22条2項)。 原告については、公職選挙法11条1項若しくは252条又は政治資金規正法28条の規定により選挙権を有しないことを窺わせる事情は認められないから、原告は、本件処分がなければ、少なくとも平成13年6月15日公示の東京都議会議員選挙及び同年7月12日公示の参議院議員選挙につき、選挙人としての公職選挙法21条1項の要件を満たしていたものと認められるにもかかわらず、本件処分により同要件を満たさないこととなって、そのため、同各選挙において投票をすることができなかったことが認められる。 選挙権が国民主権原理を支える重要な人権であって、憲法で保障された国民の最も重要な基本的権利の一つであることはいうまでもないところであり、これを侵害された原告の精神的苦痛はただならぬものであったと認められる。 (2) ま 支える重要な人権であって、憲法で保障された国民の最も重要な基本的権利の一つであることはいうまでもないところであり、これを侵害された原告の精神的苦痛はただならぬものであったと認められる。 (2) また、証拠(甲26)によれば、原告は、本件処分により、国民健康保険被保険者資格を得られず、保健医療を受けられないこととなって、医師の治療を受けることを躊躇していたところ、平成13年7月21日には、以前からしばしば症状の出ていた背部痛の激痛を訴えるに至り、救急車で搬送の上、足立区西新井所在の○病院に入院し、その後の治療に要する医療費の支払に不安を覚えており、また、虫歯があるがその治療についてもやはり治療を躊躇していることが認められる。 (3) 本件処分は宗教団体・アレフの信者を区内に受け入れないとの方針の下にされたものであって、本来、住民の福祉に最も意を用いるべき地方公共団体からこのような仕打ちを受けたこと自体により、原告は言い知れぬ不安感を抱いたものと考えられる。その上、原告は、本件処分により、自らの住所が公証されないことにより、生活の基盤すら危うく感じられる状態となり、しかも、上記(1)及び(2)の点においても、現に重要な権利を侵害され、かつ生活上の不都合が生じたことにより多大な精神的苦痛を被ったものと認められる。他方、地方公共団体がこのような異常な措置を行ったのは、原告の属する教団の元幹部ら多数が両サリン事件等の重大事件を引き起こし、教団がその後長く適切な対応を怠っていたことにも原因があることは教団自らも認めるところであり(甲10)、このことは、本件処分を正当化するものではないとはいえ、原告の慰謝料額算定に当たっては無視できないものである。これらの点を総合考慮すると、原告が本件処分により被った精神的損害に対する慰謝料の額としては70万円が 処分を正当化するものではないとはいえ、原告の慰謝料額算定に当たっては無視できないものである。これらの点を総合考慮すると、原告が本件処分により被った精神的損害に対する慰謝料の額としては70万円が相当である。 (4) よって、被告足立区は、原告に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として、金70万円及びこれに対する不法行為(本件処分)の日である平成12年8月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。 第4 結論よって、原告の被告足立区長に対する請求には理由があり、原告の被告足立区に対する請求は、金70万円及びこれに対する平成12年8月17日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから、これらを認容し、原告の被告足立区に対するその余の請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担及び仮執行の宣言につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、64条ただし書、65条、259条1項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官藤山雅行裁判官村田斉志裁判官廣澤諭
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