令和5年3月29日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和2年(ワ)第22748号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和4年12月21日判決 主文 1 被告東京スポーツは、原告に対し、165万円及びこれに対する令和2年7月13日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを3分し、その1を被告東京スポーツの負担とし、その余を原告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告らは、原告に対し、連帯して220万円及びこれに対する令和2年7月13日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、俳優等として活動する原告が、被告東京スポーツが令和2年7月13日に同社のウェブサイトに掲載した記事が原告の名誉を毀損するものであり、同日に被告ヤフーが、「Yahoo!JAPAN」のニュースページにおいて当該記事を配信したことも原告に対する名誉毀損に当たると主張して、被告らに 対し、不法行為に基づき、連帯して、損害賠償金220万円及びこれに対する令和2年7月13日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実以下の事実は、当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によ って容易に認められる事実である(なお、複数頁にわたる書証の一部や調書に ついては、認定に用いた主な箇所の頁数を〔 〕で掲記した。)。 ⑴ 当事者ア原告は、「X」の芸名で俳優及びタレントとして活動するほか、「B」の芸名でDJとしても活動する者である。(甲39〔1〕、弁 は、認定に用いた主な箇所の頁数を〔 〕で掲記した。)。 ⑴ 当事者ア原告は、「X」の芸名で俳優及びタレントとして活動するほか、「B」の芸名でDJとしても活動する者である。(甲39〔1〕、弁論の全趣旨)イ被告東京スポーツは、時事に関する事項を掲載する東京スポーツ新聞の 発行及び販売、スポーツ、文化事業等の企画及び運営に係る業務等を目的とする株式会社である。 ウ被告ヤフーは、時事に関する事項等を配信するウェブサイト「Yahoo!JAPAN」を運営する株式会社である。 ⑵ 原告の芸歴 ア原告は、平成18年、俳優及びタレントとして芸能活動を開始し、株式会社C(以下「C」という。)とマネージメント業務委託契約を締結した上、種々の作品に出演するなどしていたが、Cは、平成29年3月21日、「本日までの一連の諸事情を鑑み、Xが弊社の考える基準に至らなかったため、契約内容に違反したと考え」たとして、上記業務委託契約を終了させた。 (乙1、原告本人〔20〕、弁論の全趣旨)イその後、原告は、芸能活動を休止していたが、平成30年6月頃から、DJとして活動を開始し、平成31年(令和元年)頃には、フリーで俳優としての活動を再開した。(乙8、原告本人〔1〕、弁論の全趣旨)⑶ 原告の主演舞台におけるクラスター感染の発生 原告は、令和2年6月30日から同年7月5日まで、東京都新宿区所在の劇場で公演された「D」と題する舞台(以下「本件舞台」という。)に主演俳優として出演したところ、同月6日から同月24日までの間に、本件舞台の出演者(原告を含む。)、スタッフ、公演関係者及び観覧者合計75名が、新型コロナウイルス感染症の検査において陽性反応を示すに至った。(甲40、 丙1) 日までの間に、本件舞台の出演者(原告を含む。)、スタッフ、公演関係者及び観覧者合計75名が、新型コロナウイルス感染症の検査において陽性反応を示すに至った。(甲40、 丙1) ⑷ 本件記事の配信等ア被告東京スポーツは、令和2年7月13日、同社のウェブサイトに、「大規模クラスター! X主演舞台公演強行の罪『賠償請求されてもおかしくない』」との見出しを付けた記事(以下「本件記事」という。)を掲載した。(甲1) 本件記事は、冒頭部分の上記見出しのすぐ下方に、本文約17行分相当の大きさの原告の顔写真が掲載されており、その左下に「X」と付記されている。 本件記事の本文は、「大ヒンシュクだ。俳優・X(32)の主演舞台…で新型コロナウイルスのクラスター(集団感染)が発生した。」と報じた 後、本件舞台関係者の感染状況等の報告に続いて、「コロナに感染すること自体に非はないが、今回問題となっているのは、公演前に出演者の中に体調不良者がいて、主催者側がそれを把握していた可能性が高いことだ」、「『公演を中止にすれば、相当額の損失が出る。それが嫌で公演を強行したなのなら大問題だ。聞けば、舞台終了後、楽屋口には出待ちす る女性ファンもいて、出演者の一部は握手やサインに応じていたそう…危機意識が欠如していたと言わざるをえない』」との舞台関係者のコメントを挙げている。 さらに、「主演のXは2017年3月に大手芸能事務所を辞め、フリーに。当時を知る人物によれば、退社の理由は『素行不良』。副業で飲食店 を経営したり、良からぬ噂も多いイベンター男性と組み、東京・六本木などで主催パーティーを開いては、ハメを外してきた」との記述(以下、当該下線部分を「本件記述1」という。 不良』。副業で飲食店 を経営したり、良からぬ噂も多いイベンター男性と組み、東京・六本木などで主催パーティーを開いては、ハメを外してきた」との記述(以下、当該下線部分を「本件記述1」という。)が続く。 そして、歌舞伎俳優のEが、クラスター感染発生につき「こんな奴等は劇場サイド、主催者、出演者、スタッフに至るまで、どいつもこいつ も素人の集まりだ」などと記載したブログ記事を投稿したことに触れた 上、「芸能界からも非難の声が上がっており、ある中堅プロダクションの幹部は『こっちは感染対策に細心の注意を払っているのに、彼らのせいで業界のイメージは悪くなる一方だ。感染を“広められた”タレントの事務所は主催者側に賠償請求してもいいくらい。今回の件でXは業界の信用を失った。』と話す。さらなる被害が出ないことを祈るばかりだ。」 と締めくくられている(以下、当該下線部分を「本件記述2」といい、本件記述1と併せて「本件各記述」という。)。 イ本件記事は、令和2年7月13日、被告ヤフーが管理する検索サイト「Yahoo!JAPAN」内のニュース欄(Yahoo!ニュース。以下「ヤフーニュース」という。)において配信された。(甲2) ウ原告は、令和2年7月14日、被告東京スポーツに対して本件記事の削除を要請し、同日、被告東京スポーツは本件記事を削除し、被告ヤフーは本件記事の掲載を中止した。 2 争点⑴ 本件各記述の違法性(名誉毀損の成否) 各当事者の主張は、別紙「本件各記述の違法性に係る主張整理表」記載のとおりである。 ⑵ 本件各記述に係る被告東京スポーツの責任(原告の主張)上記⑴のとおり、本件各記述は、原告の名誉を毀損するものであるから、 本件各 法性に係る主張整理表」記載のとおりである。 ⑵ 本件各記述に係る被告東京スポーツの責任(原告の主張)上記⑴のとおり、本件各記述は、原告の名誉を毀損するものであるから、 本件各記述を含む本件記事を公表した被告東京スポーツは、不法行為責任を負う。 (被告東京スポーツの主張)上記⑴のとおり、本件各記述は、原告に対する名誉毀損に該当しない。仮に名誉棄損に該当するとしても、被告東京スポーツは、複数の関係者に対し て取材活動を行い、裏付けの資料を精査することによって、真実であること を確認した上で本件記事を掲載しており、本件各記述の内容が真実であると信じたことに相当な理由があった。また、本件各記述は、公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったのであるから、被告東京スポーツには故意又は過失がない。 ⑶ 本件各記述に係る被告ヤフーの責任の有無 (原告の主張)ア被告ヤフーは、自己が管理するヤフーニュースにおいて、原告の名誉を毀損する本件記事を配信して、本件記事の内容を自ら表現したのであり、上記⑴のとおり本件各記述が違法である以上、当然に不法行為責任を負う。 仮に、本件記事の配信が、被告ヤフーによる表現行為ということはでき ないとしても、被告ヤフーは、本件記事を配信して被告東京スポーツによる名誉毀損を幇助又は助長したということができるから、被告東京スポーツとともに共同不法行為の責任を負うべきである。 イなお、本件記事の配信には、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」 という。)3条1項本文は適用されない。その理由は次のとおりである。 プロバ 定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」 という。)3条1項本文は適用されない。その理由は次のとおりである。 プロバイダ責任制限法3条1項は、「特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたとき」に適用されるものであるが、ここにいう「特定電気通信」は、不特定の者が情報を発信することができる状況にあることを要する。ヤフーニュースの配信は、記事配信を行うこ とができる者が限定されているから「特定電気通信」に当たらない。 プロバイダ責任制限法3条1項ただし書は、当該関係役務提供者が当該権利を侵害した情報の「発信者」である場合は、同項本文の適用を除外しているところ、ここにいう「発信者」に該当するかどうかは、権利侵害情報を流通過程に置く意思を有していた者が誰かという実質的な 観点から決すべきである。 被告ヤフーは、被告東京スポーツなど記事の作成を行う会社と配信契約を締結し、被告ヤフーが管理するサーバを通じて、その運営管理するヤフーニュースにおいてこれを配信し、ニュース配信に関する広告収入等の利益を得ている。また、被告ヤフーは、ヤフーニュースに掲載する記事については、社内編集部において独自の掲載基準の下に配信する記 事を選定し、内容のチェック等を行った上で記事を公開している。これらの事実等に照らせば、被告ヤフーは、記事を作成する会社との共同事業として主体的かつ積極的に記事配信を行っていると評価すべきである。したがって、被告ヤフーは、プロバイダ責任制限法3条1項ただし書にいう「発信者」に当たり、本件記事の配信には同項本文は適用され ない。 (被告ヤフーの主張)ア上記のとおり、本件各記述は、そもそも原 、プロバイダ責任制限法3条1項ただし書にいう「発信者」に当たり、本件記事の配信には同項本文は適用され ない。 (被告ヤフーの主張)ア上記のとおり、本件各記述は、そもそも原告に対する名誉毀損に当たらない。仮に名誉毀損に当たるとしても、被告東京スポーツには、本件各記述を真実だと誤信するのに相当な理由があり、故意又は過失が認められ ない。 イまた、以下の及びのとおり、被告ヤフーは「特定電気通信役務提供者」(プロバイダ責任制限法2条3号)に該当し、かつ、「発信者」に該当しないから、本件記事の配信にはプロバイダ責任制限法3条1項が適用される。そして、本件では、同項各号所定の要件を満たさないから、被告ヤ フーが不法行為責任を負うことはない。 プロバイダ責任制限法にいう「特定電気通信」とは、その態様から客観的・外形的に「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信…の送信」に当たるものをいうところ、ヤフーニュースによる記事配信は、不特定多数人による閲覧を想定しているから、「特定電気通信」 に当たることは明らかである。そして、被告ヤフーは、ヤフーニュース への記事提供者が特定電気通信設備を用いて記事を投稿することを認めているから、被告ヤフーは「特定電気通信役務提供者」(プロバイダ責任制限法2条3号)に該当する。 プロバイダ責任制限法にいう「発信者」とは、特定電気通信設備の記録媒体に情報を記録し、又は当該特定電気通信設備の送信装置に情報を 入力した者をいう。ヤフーニュースでは、新聞社や通信社が制作した記事を自ら管理サーバに入稿すると、自動的に当該記事が配信される仕組みとなっており、被告ヤフーは、当該記事の情報をサーバに記録又は入力をすること をいう。ヤフーニュースでは、新聞社や通信社が制作した記事を自ら管理サーバに入稿すると、自動的に当該記事が配信される仕組みとなっており、被告ヤフーは、当該記事の情報をサーバに記録又は入力をすることはないから、「発信者」に該当しない。 ウ仮にプロバイダ責任制限法3条1項が適用されないとしても、プロバ イダとしてのサービス提供者が第三者の作成した表現物の掲載について注意義務違反に基づく損害賠償責任を負うのは、単なる権利侵害についての一般的な認識可能性を超えて、記事の掲載前に、当該記事が第三者の権利を侵害することについて疑念を抱くべき特段の事情があった場合である。被告ヤフーは、記事内容について事前に認識しておらず、 本件記事についても具体的な権利侵害を認識・認容しながらサービスの提供を行ったものではない。また、本件記事を掲載した被告東京スポーツにおいて、権利を侵害する記事を多く配信しているといった事情も認められない。その他、本件記事の掲載前に、本件記事が第三者の権利を侵害することについて疑念を抱くべき特段の事情もないから、被告ヤフ ーは、本件記事の掲載について不法行為責任を負うものではない。 ⑷ 損害の発生及びその額(原告の主張)本件記事は、単に読者の興味本位の欲求に応えて好奇心を煽る目的であったこと、伝播性が非常に高く、本件各記述の摘示内容が原告の俳優活動に多 大な影響を与えるものであり、実際に原告は3つの仕事を失ったことなどに より、原告が死を考えるほどに甚大な精神的苦痛を被った。よって、慰謝料額は、少なくとも200万円を下回るものではない。 また、本件と相当因果関係のある弁護士費用は、20万円を下回らない。 (被告らの主張)否認及び争う。 第3 争点に て、慰謝料額は、少なくとも200万円を下回るものではない。 また、本件と相当因果関係のある弁護士費用は、20万円を下回らない。 (被告らの主張)否認及び争う。 第3 争点に対する判断 1 争点⑴(本件各記述の違法性)⑴ 本件記述1についてア摘示事実本件記述1は、「良からぬ噂も多いイベンター男性と組み、東京・六本木 などで主催パーティーを開いては、ハメを外してきた」というものである。 本件記述1は、原告が違法又は反倫理的な行為への関与を疑われるイベンターとともにパーティーを主催したとの事実を摘示するとともに、原告が当該パーティーにおいて度を超えた態様で騒いでいたとの事実を摘示するものと認めるのが相当である。 この点、被告らは、「ハメを外してきた」との表現は事実を摘示するものではなく、意見論評に過ぎない旨を主張する。しかし、「主催パーティーを開いては、ハメを外してきた」との文言からすれば、パーティーを開いたことをもってハメを外してきたと評するものでないから、事実を摘示するものではなく、単なる意見論評に過ぎないとすれば、何を評してハメを外 してきたと評するのかが明らかでない。そうすると、上記表現は、当該パーティーにおいて騒いでいたことを暗に提示した上で、「ハメを外してきた」との否定的な評価をしたものと読むのが自然である。 また、被告東京スポーツは、「良からぬ噂が多い」という部分は、原告の属性を示すものではない上、極めて抽象的な表現であるから、事実を摘示 するものではない旨主張する。しかし、良からぬ噂が多いとの表現は、一 般の読者に、当該人物が違法又は反倫理的な行為に関与している疑いがあるとの印象を与えるものであり、当該人物がそのような行為に関与 はない旨主張する。しかし、良からぬ噂が多いとの表現は、一 般の読者に、当該人物が違法又は反倫理的な行為に関与している疑いがあるとの印象を与えるものであり、当該人物がそのような行為に関与している疑いがあるかどうかは証拠によって認定できるから、被告東京スポーツの上記主張は採用することができない。 イ社会的評価の低下 原告が違法又は反倫理的な行為への関与を疑われる人物と交流しているとの事実は、原告自身も違法又は反倫理的な行為に関与しているかのような印象を読者に与えることになるから、原告の社会的評価を低下させるものであるというべきである。また、社会的に許容される限度を超えて騒いでいたとの事実についても、原告が素行不良を理由に事務所を退社する ことになった旨が本件記事において指摘されていることをも踏まえれば、原告は素行の悪さを理由に事務所をやめさせられたにもかかわらず、懲りることなく同じようなことを繰り返しているとの印象を読者に与えるものであり、原告の社会的評価を低下させるものである。したがって、本件記述1は、原告の社会的評価を低下させるものであるというべきである。 被告東京スポーツは、原告は過去に女性問題を複数回報じられており、原告自身Cを退所した理由について遊び過ぎたと振り返っていたことに照らせば、「ハメを外してきた」という記載によっても、原告の社会的評価が低下することはないと主張する。しかし、本件記述1は、原告の女性問題について言及したものではなく、従前の報道とは異なる事項を問 題とするものであるから、原告が過去に女性問題について報道されていたことは、上記判断を左右するものではない。 また、被告ヤフーは、男性イベンターの「良からぬ噂」の詳細が記載されていな 題とするものであるから、原告が過去に女性問題について報道されていたことは、上記判断を左右するものではない。 また、被告ヤフーは、男性イベンターの「良からぬ噂」の詳細が記載されていないことなどに照らせば、原告の社会的評価が違法と評価される程に低下することはないと主張する。しかし、本件記述1の前後で、原告が 「素行不良」により事務所を退社したことや「事務所側も『手に負えない』 とサジを投げた」と指摘していることをも踏まえると、「良からぬ噂」の詳細が記載されていなくとも、所属事務所が看過することができないような人物であるとの印象を与える記述であることは否定し難く、被告ヤフーの上記主張は採用することができない。 ウ公共性・公益目的 後述するとおり、本件記事は、本件舞台の関係者の間でクラスター感染が発生し、その原因の一端が原告にあることを指摘するものと解される内容であり、本件記述1は、上記のクラスター感染に係る責任を問うこととの関係で、原告の規範的意識が低いことを指摘するために原告の従前の行状及び交友関係について言及したものということができる。そして、令和 2年7月当時、我が国における新型コロナウイルス感染症の発生状況、特にクラスター感染の発生状況及び感染対策の実施状況については、国民の生命、健康等に深く関わる事項として、重要な社会の関心事であったことは当裁判所に顕著な事実である。したがって、本件記述1は、公共の利害に関する事実を摘示したものであり、また、その目的が専ら公益を図るこ とにあったと認めるのが相当である。 エ真実性括弧内掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。 a 原告は、Cに所属していた当時にF(以下「F」という。)と とにあったと認めるのが相当である。 エ真実性括弧内掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。 a 原告は、Cに所属していた当時にF(以下「F」という。)と知り合 った。Fは、多くの芸能人と交流を持ち、東京都港区でバー等を経営していたほか、イベント、パーティー等の企画を行っていた。(原告本人〔1、8〕、弁論の全趣旨)b 原告は、平成25年9月に開催されたFの誕生日パーティーに参加し、ホールケーキをFの顔面に押し付けるようにしてぶつけた。また、 同パーティーのほかにも、ケーキを顔面にぶつけたり、ぶつけられた りすることがあった。(乙28の2、43、原告本人〔14、15〕、弁論の全趣旨)c 原告は、平成30年、5回にわたりFが主催したパーティーに参加した。このうち、平成30年9月に六本木のクラブにおいて開催されたFの誕生日パーティーでは、シャンパンタワーが設けられ、原告は Fとともにシャンパンタワーの横に立ち、多数の出席者とともに乾杯をした。(乙40、原告本人〔11、14〕)d 原告は、平成31年(令和元年)、9回にわたり、Fが主催したパーティーに参加した。このうち、平成31年1月20日及び同月27日に、それぞれ六本木のクラブ、渋谷のクラブにおいて開催された原告 の誕生日パーティーでは、DJとして活動したほか、シャンパンタワーからシャンパンのグラスを取って女性客に配るなどした。また、令和元年9月に六本木のクラブにおいて開催されたFの誕生日パーティーでは、シャンパンタワーが設けられ、原告はFとともに多数の出席者と乾杯をするなどした。(乙45、原告本人〔11、12〕) 以上によれば、原告は、イベンターであるFが主催したパーティーに参加して、シ ンパンタワーが設けられ、原告はFとともに多数の出席者と乾杯をするなどした。(乙45、原告本人〔11、12〕) 以上によれば、原告は、イベンターであるFが主催したパーティーに参加して、シャンパンタワーを設けて多数の出席者とともに乾杯をするなどし、また、Fの顔にケーキをぶつけたりするなどしている。シャンパンタワーを設けて多数の出席者とともに乾杯することをもって直ちに度を越したものということができるかは疑問であるが、ホールケーキ を他人の顔面に押し付ける行為については、これをもって度を越したものと評し得るものである。したがって、本件記述1が摘示する事実のうち、原告がイベンターの主催するパーティーに参加していたこと、当該パーティーにおいて度を越して騒いでいたとの事実は真実であると認めることができる。 他方で、本件記述1が摘示する事実のうち、原告が違法又は反倫理的 な行為への関与を疑われるイベンターとともにパーティーを主催したとの事実については、これを認めるに足りる証拠はない。 被告らは、Fについて言及するインターネット上の書き込み(乙42)や、原告が本人尋問において、FがSNS上に投稿した「Xコラボハロウィンパーティー」と題する告知(乙47の1)を原告が知らなかった と述べたこと(原告本人〔2〕)を根拠として、上記事実は真実であると主張している。しかしながら、前者は客観的な裏付けのないインターネット上の書き込みに過ぎない。また、後者については、これをもってFが原告に無断で原告の名前を利用するような人物であることが明らかである旨主張しているが、上記原告の供述はパーティーを主催していた ことを否定するために述べたものである疑いがある上、単に告知の仕方についての認識の齟齬に過ぎない可能性も否 であることが明らかである旨主張しているが、上記原告の供述はパーティーを主催していた ことを否定するために述べたものである疑いがある上、単に告知の仕方についての認識の齟齬に過ぎない可能性も否定できず、これのみをもってFが違法又は倫理的な行為への関与を疑われる人物であるということはできない。 以上によれば、上記事実が真実であると認めることはできない。 オ小括以上によれば、本件記述1は、原告の名誉を毀損する違法な表現である。 ⑵ 本件記述2についてア摘示事実本件記述2は、「今回の件でXは業界の信用を失った」というものであ るところ、以下のとおり、本件記事全体の構成に照らし、本件舞台関係者においてクラスター感染が発生したことについて原告に原因があること、原告はこれにより芸能関係者からの信頼を失ったとの事実を摘示するものと認めるのが相当である。 本件記事の見出しは、「大規模クラスター! X主演舞台公演強行 の罪『賠償請求されてもおかしくない』」というものであって、クラスタ ーが発生したことについて本件舞台の関係者に法的な責任があることを読者に強く印象付けるものであり、さらに、原告の顔写真が上記見出しのすぐ下方に大きく掲載されていることからすると、一般の読者が、本件記事はクラスター感染の発生について責任を負うべき本件舞台関係者に原告が含まれているとする趣旨の記事であると認識する可能性 があるものということができる。その上で、本件記事の本文では、公演前に出演者に体調不良の者がいたことを主催者が把握していた可能性が高いこと記述し、その後、出演者の一部が握手やサインに応じていたことがあったことを指摘した上で、「危機意識が欠如していたと言わざるを得ない 演者に体調不良の者がいたことを主催者が把握していた可能性が高いこと記述し、その後、出演者の一部が握手やサインに応じていたことがあったことを指摘した上で、「危機意識が欠如していたと言わざるを得ない」と批判するコメントを紹介し、これに続けて、原告が素行 不良で芸能事務所を退社したことや本件記述1など原告の行状及び交友関係について述べているため、感染対策を遵守していなかった一部の出演者に原告が含まれていることを示唆するものとなっている。そして、本件記事は、「感染を“広められた”タレントの事務所は主催者側に賠償請求してもいいくらい。今回の件でXは業界の信頼を失った。」(第2文 が本件記述2である。)という文章で締めくくられており、原告を、感染を広められたタレント側ではなく、感染を広めた主催者側として扱って非難する文脈となっている。 以上のような本件記事の内容及び構成に照らせば、本件記述2は、クラスター感染の原因が原告にあったこと、すなわち、体調不良者がいる ことを知っており、本件舞台の中止を決めるべき立場にありながら、これを防止しなかった主催者側の立場にあったとの事実又は原告が握手をしたことがクラスター感染の原因となったこととの事実を前提とするものであり、これらの事実を暗に摘示した上で、これにより原告が業界関係者の信頼を失ったとの事実を摘示したものと認めるのが相当で ある。 被告らは、本件記述2は、意見ないしは論評の表明であると主張するが、上記で述べたところのほか、原告が、業界すなわち芸能関係者からの信頼を失ったかどうかは、原告に対して否定的な意見を述べる関係者がいるかどうかなど、証拠によって認定することが可能であるから、採用できない。 イ社会的評価の低下 係者からの信頼を失ったかどうかは、原告に対して否定的な意見を述べる関係者がいるかどうかなど、証拠によって認定することが可能であるから、採用できない。 イ社会的評価の低下令和2年7月当時、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止が重大な社会的な関心事項となっており、感染対策の不備については、非常に厳しい非難が向けられることが必至の状況であったことに照らせば、本件記述2は、原告の社会的評価を低下させるものであると認めるのが相当である。 ウ公共性・公益目的令和2年7月当時、クラスター感染の発生状況及び感染対策の実施状況は、国民の生命等に関わる事項として不特定多数人が関心を寄せていたことに照らせば、本件記述2については、これが公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認めることができ る。 エ真実性 括弧内掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。 a 株式会社G(以下「本件舞台主催者」という。)は、令和2年6月3 0日から同年7月5日まで、東京都新宿区内の劇場において本件舞台を主催し、その公演を行った。(甲40、丙1、弁論の全趣旨)b 本件舞台は、20代から40代までの約15名の出演者により、20分程度の芝居の後、1時間程度人狼ゲーム(参加者に対して市民、人狼等の役を割り振り、話合いを通じ、市民等になりすましている人 狼等を発見することを目的とする推理ゲーム)を行うという内容であ った。(原告本人〔20〕)c 本件舞台主催者は、本件舞台における新型コロナウイルス感染症の感染防止策として、観覧席数を上限の50%程度に減らす、本件舞台の観覧者に対して主演者の出待ち及び入待ちをするこ 原告本人〔20〕)c 本件舞台主催者は、本件舞台における新型コロナウイルス感染症の感染防止策として、観覧席数を上限の50%程度に減らす、本件舞台の観覧者に対して主演者の出待ち及び入待ちをすることを禁止し、違反する観覧者にはスタッフから都度注意を行う、本件舞台の出演者に 対して体調不良が発生した場合には報告するよう伝えるなどした。(丙1〔7、9、10〕)d 原告は、本件舞台の主演俳優兼座長であった。また、原告は、本件舞台の出演者のうちで最も芸歴が長く、芝居の経験が豊富であったため、他の出演者に対し、演技のアドバイス等を行うことはあったが、 本件舞台主催者から感染対策について意見を求められたことはなく、新型コロナウイルス感染症対策の観点から行動確認等をすることもなかった。(原告本人〔6、21、32〕)e 本件舞台主催者は、令和2年7月5日、本件舞台の出演者Aから、体温が平熱より高い旨の申告を受けたが、A及びその所属事務所から、 Aの発熱は持病の扁桃炎に起因する可能性が高いという医師の診断があったと説明を受け、同日の公演にAを出演させたが、同月6日、保健所からAは陽性であるとの報告を受けた。(丙1〔3、11〕)f その後、同月24日までの間に、順次、本件舞台の出演者(原告を含む。)、スタッフ及び観覧者のうち合計75名が陽性となり、その余 の出演者、スタッフ及び観覧者は、担当する保健所の指示により、濃厚接触者として扱われることとなった。(丙1、弁論の全趣旨)g 本件舞台の公演期間中、上記のとおり、観覧者による出待ち及び入待ちは禁止されていたが、本件舞台のスタッフの目の届かないところで、出待ち又は入待ちをして本件舞台の出演者に身体的に近づいた観 覧者が数名程度いた。(乙10〔6〕、丙1〔10〕、弁 待ち及び入待ちは禁止されていたが、本件舞台のスタッフの目の届かないところで、出待ち又は入待ちをして本件舞台の出演者に身体的に近づいた観 覧者が数名程度いた。(乙10〔6〕、丙1〔10〕、弁論の全趣旨) h 原告は、令和2年7月5日、本件舞台の千秋楽公演を終えて帰宅する途中、原告の出待ちをしていた数名の観覧者と握手をした。(乙10〔7〕、原告本人〔5〕)上記認定事実によれば、本件舞台の関係者で発生したクラスター感染は、本件舞台主催者が、感染が疑われる出演者をそのまま出演させたこ とに起因する可能性が高い。そして、原告については、本件舞台の主演俳優兼座長であり、芸歴も長いことから、演技に関しては指導的な立場にあったということはできるものの、主催者側の一員として、感染対策を含む本件舞台の運営に関与していたことはうかがわれない。また、原告は、千秋楽公演後に数名の観覧者と握手をしており、このことは本件 舞台における感染対策の方針に反する行為ではあるが、これによりクラスター感染が発生したことを認めるに足りる証拠はない。 以上によれば、その余の点について検討するまでもなく、本件記述2が真実であると認めることはできない。 なお、被告ヤフーは、原告の感染拡大に対する意識の低さがクラスタ ー感染の原因の一端であるとして、原告が業界の信用を失ったとの批判が実際にされているから、本件記述2は重要部分において真実であるとも主張している。しかし、本件記述2は、前述のとおり、クラスター感染の原因が原告にあったとの事実を摘示するものであり、かつ、実際にその原因が原告にあったかどうかにより原告の社会的評価が大きく異な ることが容易に想定されるのであるから、上記のような批判があることをもって、本件記述2が重 を摘示するものであり、かつ、実際にその原因が原告にあったかどうかにより原告の社会的評価が大きく異な ることが容易に想定されるのであるから、上記のような批判があることをもって、本件記述2が重要部分において真実であるということはできない。 ⑶ 小括以上によれば、本件記述2は、原告の名誉を毀損する違法な表現である。 2 争点⑵について ⑴ 上記1で説示したとおり、本件各記述は、原告の名誉を毀損する違法な表現であるから、被告東京スポーツが、本件各記述を含む本件記事を公表した行為は、原告に対する不法行為を構成する。 ⑵ 被告東京スポーツは、本件各記述を真実と誤信するについて相当な理由があるから、故意及び過失がないと主張する。しかし、本件記述1については、 原告が違法又は反倫理的な行為への関与を疑われる人物と交流しているとの事実があると誤信するについて相当な理由があったことを認めるに足りる証拠はない。また、本件記述2については、本件舞台主催者が作成した報告書等を見ても、本件舞台の関係者間で発生したクラスター感染の原因が原告にあったと認めるに足りる事情はなく、かえって、被告東京スポーツの担当記 者は原告及び本件舞台主催者にすら取材をしていない(乙36〔6〕)のであるから、およそ上記相当な理由があるとは認められない。 したがって、被告東京スポーツの上記主張を採用することはできない。 ⑶ 以上によれば、被告東京スポーツは、本件各記述(本件記事)を公表したことについて、原告に対し、不法行為責任を負う。 3 争点⑶について⑴ 認定事実後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、被告ヤフー及びヤフーニュースに関連する事情として、次の事実を認めることができる。 為責任を負う。 3 争点⑶について⑴ 認定事実後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、被告ヤフー及びヤフーニュースに関連する事情として、次の事実を認めることができる。 アヤフーニュースは、閲覧者が、インターネット上で国内及び海外の各種 ニュースを閲覧し、これに対するコメントを書き込むことができるサービスである。ヤフーニュースには、令和2年6月末当時、600以上の情報提供元(新聞社、通信社等)から、1日平均6000本の記事が掲載されており、その閲覧数は、月に約225億に上る。(丙26〔3〕、弁論の全趣旨) イ被告ヤフーは、原則として、自ら取材してヤフーニュース上に掲載する 記事を作成することはなく、他の新聞社又は通信社等との間で、記事配信契約を締結し、同契約に基づいてニュースを配信している。 被告ヤフーは、新たな新聞社又は通信社等と記事配信契約を締結する際には、同社に対する審査を行っており、契約に至るのは、新聞社又は通信社等の申込みあるいは被告ヤフーの申込みにより、配信元候補となった新 聞社又は通信社等のうち、3割程度である。 (丙26〔2〕、弁論の全趣旨)ウ被告ヤフーと記事配信契約を締結した新聞社又は通信社等が、ヤフーニュースに特定の記事を掲載するに当たっては、被告ヤフーが、事前に当該記事についての個別の確認等を行うことはなく、当該新聞社又は通信社が、直接、被告ヤフーの管理サーバにデータを入稿すると、自動的にヤフーニ ュースのウェブページ上に当該記事が掲載される。(丙26〔2〕、弁論の全趣旨)エ被告ヤフーは、社内編集部を設けて独自の掲載基準のもとに新聞社、通信社等から入稿された記事を公共性、社会的関心等の観点から選別し、一部 に当該記事が掲載される。(丙26〔2〕、弁論の全趣旨)エ被告ヤフーは、社内編集部を設けて独自の掲載基準のもとに新聞社、通信社等から入稿された記事を公共性、社会的関心等の観点から選別し、一部の記事を独自の見出しや関連リンクを付した上で「トピックス」として ヤフーニュースのトップページに掲載する。また、被告ヤフーは、トピックス以外の記事も含めて、アルゴリズムよるおすすめ記事の表示、アクセスランキングの表示、コメント欄の設置などにより、記事の提示の仕方に関与している。(甲33、丙26〔2〕、弁論の全趣旨)オ被告ヤフーは、ヤフーニュースの閲覧者に対し、同サービスの「ヘルプ」 欄において、ヤフーニュースは、「情報提供元より配信される情報を掲載しています。記事は情報提供元の編集方針に基づいて編集されています」と説明し、他の新聞社、通信社等が上記の仕組みで掲載した記事の内容については、当該新聞社又は通信社へ直接連絡するよう求めている。(丙10)カ被告ヤフーは、令和元年7月31日付けで、ヤフーニュースに記事を掲 載しようとする他の新聞社、通信社等向けに「Yahoo!ニュース記事 入稿ガイドライン」を作成し、正確性に欠ける記事、名誉権、プライバシー権、肖像権、パブリシティ権その他人格を侵害するもの、人格への配慮が欠ける記事等を入稿しないことを求めている。(丙9、弁論の全趣旨)キヤフーニュースに掲載された記事について問題点が指摘等された場合には、被告ヤフーにおいて当該記事を一方的に削除することはせず、まず は当該記事を掲載した新聞社又は通信社等に連絡し、当該新聞社又は通信社等の判断を待つ。(丙26〔2〕、弁論の全趣旨)ク本件記事は、被告東京スポーツが、被告ヤフーと記事掲 はせず、まず は当該記事を掲載した新聞社又は通信社等に連絡し、当該新聞社又は通信社等の判断を待つ。(丙26〔2〕、弁論の全趣旨)ク本件記事は、被告東京スポーツが、被告ヤフーと記事掲載契約を締結した上で、自ら被告ヤフーの管理サーバに原稿データを入稿したことにより、ヤフーニュースで配信された。(弁論の全趣旨) ⑵ プロバイダ責任制限法3条1項本文の適用の可否ア被告ヤフーは、本件各記述が原告に対する名誉毀損に該当するとしても、本件にはプロバイダ責任制限法3条1項本文が適用され、被告ヤフーが本件記事について責任を負うのは、同項各号のいずれかに該当する場合に限られると主張する。 イプロバイダ責任制限法3条1項本文は、特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは、関係役務提供者(当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者)は、これによって生じた損害については、権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、 同項各号のいずれかに該当するときでなければ、賠償の責めに任じないことを定めている。したがって、本件にプロバイダ責任制限法3条1項が適用されるためには、①「特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたとき」に該当すること、②被告ヤフーが「関係役務提供者」であることが要件となる。 プロバイダ責任法3条1項の「特定電気通信」とは、不特定の者によっ て受信されることを目的とする電気通信の送信(公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信を除く。)をいう(同法2条1号)ところ、ヤフーニュースにおけるニュースの配信は、不特定多数人による閲 されることを目的とする電気通信の送信(公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信を除く。)をいう(同法2条1号)ところ、ヤフーニュースにおけるニュースの配信は、不特定多数人による閲覧を想定し、これを目的としている電気通信の送信であると認められるから、本件記事をヤフーニュースで配信したことは、「特定電気通信」に該当 する。そして、本件記事の内容が流通することにより、原告の名誉が毀損されているから、本件は、「特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたとき」に該当する。 この点、原告は、プロバイダ責任制限法にいう「特定電気通信」に当たるためには、不特定の者が情報を発信することができる状況にあることを 要すると解した上で、ヤフーニュースは、記事配信を行える者が限定されているから、「特定電気通信」に当たらないと主張するが、原告の主張する上記解釈は、同条2条1号の文言と乖離したものといわざるを得ず、採用することはできない。 また、上記のとおり、本件記事の配信は特定電気通信に該当するところ、 被告ヤフーはヤフーニュースの記事を掲載するためのサーバを管理しているから、被告ヤフーは、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(関係役務提供者)に該当する。 ウもっとも、プロバイダ責任制限法3条1項ただし書は、「当該関係役務提供者が当該権利を侵害した情報の発信者である場合は、この限りでない。」 として、発信者については同項本文を適用しない旨を定めている。そこで、本件記事の配信に関し、被告ヤフーがここにいう「発信者」に該当するかどうかが問題となる。 プロバイダ責任制限法にいう「発信者」とは、特定電気通信役務提供者の用いる特定電気通信設備の記録媒体(当該記録媒 事の配信に関し、被告ヤフーがここにいう「発信者」に該当するかどうかが問題となる。 プロバイダ責任制限法にいう「発信者」とは、特定電気通信役務提供者の用いる特定電気通信設備の記録媒体(当該記録媒体に記録された情報が 不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を記録し、又は当該特定電気 通信設備の送信装置(当該送信装置に入力された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を入力した者をいう(同法2条4号)ところ、被告ヤフーと記事配信契約を締結した新聞社又は通信社等が、ヤフーニュースに特定の記事を掲載するに当たっては、被告ヤフーが、事前に当該記事についての個別の確認等を行うことはなく、当該新聞社又は通信社が、 直接、被告ヤフーの管理サーバにデータを入稿すると、自動的にヤフーニュースのウェブページ上に当該記事が掲載される仕組みとなっており、本件記事についても、本件記事に係る情報(原稿データ)を特定電気通信設備の記録媒体である被告ヤフーのサーバに記録したのは、被告東京スポーツであって、被告ヤフーは入稿に関与していない。また、被告ヤフーが特 定電気通信設備の送信装置に本件記事に関する情報を入力したとの事情はうかがわれない。したがって、被告ヤフーが発信者に該当すると認めることはできない。 エこれに対し、原告は、発信者に該当するか否かは、情報を流通過程に置く意思を有していた者が誰かによるべきであるところ(甲29)、被告ヤフ ーは、記事を作成する会社と記事配信契約を締結し、被告ヤフーが管理するサーバを通じてヤフーニュースにおいてこれを配信していること、ヤフーニュースから広告収入等を得ていること、社内編集部を設けて独自の掲載基準のもとに配信する記事を選定していること等に照らせば、被告ヤフーは、記事を作 フーニュースにおいてこれを配信していること、ヤフーニュースから広告収入等を得ていること、社内編集部を設けて独自の掲載基準のもとに配信する記事を選定していること等に照らせば、被告ヤフーは、記事を作成する会社との共同事業として主体的かつ積極的に記事配 信を行っていると評価すべきであり、本件記事に係る方法を流通過程に置く意思を有していたということができるから、プロバイダ責任制限法3条1項ただし書にいう「発信者」であると主張する。 確かに、被告ヤフーは、記事を作成する会社と配信契約を締結し、同契約に基づいて、ニュースを配信し、これにより広告収入等を得ており、ヤ フーニュースにおける記事の配信は記事を作成する会社と被告ヤフーと の共同事業であるとの評価はあり得るところであるが、どのような役割分担で事業を行うかは様々であり、そのことのみをもって、被告ヤフーが本件記事に係る情報を記録媒体に入力したと評価することは困難である。そして、本件では、被告東京スポーツが本件記事を作成してその原稿データを被告ヤフーが管理するサーバに入稿したものが自動的にヤフーニュー スで配信されており、被告ヤフーが本件記事について確認等を行っていない。被告ヤフーは、社内編集部を設けて独自の掲載基準のもとに配信する記事を選定しているが、当該編集部が選定するのは、トピックスとしてヤフーニュースのトップページに掲載する記事であり、本件記事はトピックスとして掲載されたものではなく、その他、おすすめ記事やアクセスラン キング上位の記事として掲載されたものでもない。これらの事情等に鑑みれば、本件記事が被告ヤフーの意思により流通過程に置かれたと評価することは困難であり、上記原告の主張は前提を欠くというべきである。 オしたがって、本 されたものでもない。これらの事情等に鑑みれば、本件記事が被告ヤフーの意思により流通過程に置かれたと評価することは困難であり、上記原告の主張は前提を欠くというべきである。 オしたがって、本件記事の流通による原告の名誉毀損に関し、被告ヤフーには、プロバイダ責任制限法3条1項本文が適用される。 ⑶ 被告ヤフーの不法行為責任上記⑵によれば、被告ヤフーは、権利を侵害した情報すなわち本件記事の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、①特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき又は②特定電気通信による情報の流通を知って いた場合であって、当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合に限り、原告に対し不法行為責任を負う(プロバイダ責任制限法3条1項)。 しかし、原告は、上記①及び②に係る主張立証をしていない。 ⑷ 小括 以上によれば、本件各記述につき、被告ヤフーに不法行為責任を認めることはできない。 4 争点⑷(損害の発生及び額)について⑴ 前述のとおり、被告東京スポーツは、本件各記述を公表したことについて不法行為責任を負う。 ⑵ 本件記述2は、クラスター感染につき原告に原因があることを摘示するものであるところ、クラスター感染の発生及び新型コロナウイルス感染症の感染対策は国民の生命等に直結するものであり、社会的関心が高く、感染を拡大・助長する行為に対しては厳しい非難が向けられることは容易に想像できる。加えて、本件記事は、被告東京スポーツにより、被告東京スポーツのウ ェブサイト及びヤ であり、社会的関心が高く、感染を拡大・助長する行為に対しては厳しい非難が向けられることは容易に想像できる。加えて、本件記事は、被告東京スポーツにより、被告東京スポーツのウ ェブサイト及びヤフーニュースに掲載されており、特にヤフーニュースの閲覧者数にも鑑みれば、掲載翌日に削除されたことを考慮しても、その影響は大きく、原告に少なからぬ精神的苦痛を与えたといえる。 他方で、本件記述1については、原告の社会的評価を低下させるものではあるものの、抽象的な記述であることに照らし、低下の程度が著しいとまで いうことはできないこと、原告がパーティーを開催してハメを外していたとの点については事実を欠くとはいえないことなど、本件で認められる諸般の事情を総合的に考慮すると、慰謝料額は、150万円が相当である。 ⑶ 被告東京スポーツの不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は、本件事案の内容その他本件に現れた諸般の事情を考慮し、15万円が相当である。 5 結論以上によれば、原告の請求は、被告東京スポーツに対し、165万円及びこれに対する令和2年7月13日から支払済みまで年3分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余については理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第6部 裁判長裁判官中島崇 裁判官鈴木拓磨 裁判官山口愛子 1 本件記述1原告の主張被告東京スポーツの主張被告ヤフーの主張摘示事実原告が、社会的に不適切とされる多くの行動をとっているイベンターと組み、六本 裁判官山口愛子 1 本件記述1原告の主張被告東京スポーツの主張被告ヤフーの主張摘示事実原告が、社会的に不適切とされる多くの行動をとっているイベンターと組み、六本木などで主催パーティーを開き、当時の芸能事務所との契約を解除されなければならない程に度を越して異常な態様で騒いでいたとの事実を摘示するものである。 原告が、イベンターと共に主催パーティーを開いた事実を摘示するものである。 「良からぬ噂が多い」という部分は、原告の属性を示すものではない上、極めて抽象的な表現であり、「ハメを外してきた」という部分は意見論評であるから、摘示事実には含まれない。 原告がイベンターと組んでパーティー等をしたという事実及び当該イベンターに良くない噂が多く存在することを摘示したものである。 社会的評価の低下良からぬ噂の多いイベンターと人間関係があるという事実自体、原告の社会的評価を低下させるものであり、上記摘示事実が表現されることによって原告の社会的評価が低下することは明らかである。 仮に、本件記述1が原告主張の事実を摘示するものであるとしても、原告については過去に女性問題等が報道されていること、原告自身がCとのマネジメント契約終了の原因について「単純に遊び過ぎました」と振り返っていることなどを踏まえると、「ハメを外してきた」との記載により原告の社会的評価が低下することはない。 パーティーを開いたとの事実により社会的評価は低下しない。また、イベンターに係る「良からぬ噂」の具体的内容が明らかでなく、良からぬ噂があるのはイベンターであって原告ではないから、これにより原告の社会的評価は低下しない。 なお、「ハメを外す」とは「興に乗って度を過ごす」という意味であり、異常な態様で騒いでいたことを意味するものではないから ンターであって原告ではないから、これにより原告の社会的評価は低下しない。 なお、「ハメを外す」とは「興に乗って度を過ごす」という意味であり、異常な態様で騒いでいたことを意味するものではないから、社会的評価の低下をもたらすような表現ではない公共性本件記事は、全体として原告個人を非難する構成になっていること、漠然とした内容や世間の噂を背景にするものであることからすれば、公共の利害に関する事実を摘示するものとはいうことはできない。 仮に本件記事の目的が、クラスター感染防止策が不十分であったことを批判することにあったとしても、本件記述1のような原告個人に係る風聞の指摘は上記批判をするために必要なものではない。本件記述1は、結局のところ、ファンの興味本位の欲求に応えるものでしかなく、公共の利害に関する事実には該当しない。 本件舞台におけるクラスター感染は、新型コロナウイルス感染症のために中止されていた演劇等の上演を再開していく流れにある中で発生したものであり、社会的に関心の大きい事項であったことに加え、原告が、本件舞台の主演かつ座長という中心的立場にあり、本件舞台に関して責任のある立場の者であったことに照らせば、原告の過去の言動に関する内容は、公共の利害に係る事実である。 本件記事は、いわゆるコロナ禍におけるクラスター感染を報道するものであるから、原告の指摘するような興味本位の要求に応えるものでないことは明らかである。 公益目的本件記事は、原告の過去の言動も交えて原告個人を非難することを主たる目的とするものであって、クラスター発生防止策を十分にとっていなかったことを批判することを目的としたものではないから、専ら公益を図ることを目的とするものではない。特に本件記述1は原告の過去の行動を指摘するものであるが、本件舞台におけるクラ 策を十分にとっていなかったことを批判することを目的としたものではないから、専ら公益を図ることを目的とするものではない。特に本件記述1は原告の過去の行動を指摘するものであるが、本件舞台におけるクラスター感染防止策が不十分であったことを批判する上で何ら必要がない事実であるから、目的の公益性は認められない。 本件記事は、本件舞台で発生したクラスター感染の事実、本件舞台の運営実態ひいてはその背景事情を明らかにすることを目的としたものであって、専ら公益を図る目的であったことが明らかである。 本件記事は、いわゆるコロナ禍におけるクラスター感染を報道するものであるから、公益目的であることは明らかである。 本件各記述の違法性に係る主張整理表 真実性「良からぬ噂が多いイベンター男性と組み…主催パーティを開いては」当該イベンターは、暴力団員や反社会的勢力と関係がなく、タレントと所属事務所との契約違反行為を推奨するなどもしていないなど、社会的に不適切とされる行動はしていない。なお、当該イベンターには良からぬ噂自体存在しない。また、原告は、パーティーを主催していない。 原告が当該イベンターと共にパーティーを主催していたのは真実である。 「良からぬ噂が多い」との記述が、仮に事実を摘示するものであるとしても、当該イベンターは芸能人の肖像や氏名を無断で使用してイベントの勧誘をするなどしており、良からぬ噂があったことや当該噂に合致するような社会的に不適切とされる多くの行動をとっていたことは真実である。 原告は、当該イベンターとパーティーを行っている。そして、当該イベンターは、原告に無断で原告の名前を利用するような人物であり、また、インターネット上には、「原告をダシにしたクラブイベントの開催告知が度々あがるなど、以前から悪い筋との付き いる。そして、当該イベンターは、原告に無断で原告の名前を利用するような人物であり、また、インターネット上には、「原告をダシにしたクラブイベントの開催告知が度々あがるなど、以前から悪い筋との付き合いが囁かれていた」などと指摘されており、良からぬ噂が多いイベンターであることも真実である。したがって、摘示事実は重要部分において真実である。 真実性「ハメを外してきた」大人数で乾杯をすることや他人の顔面に誕生日ケーキをぶつけることは、度を越した非常識な態度で騒ぐ行為ではない。しかも、原告は、スタッフ等から依頼されて、パフォーマンスとして上記のようなことを行ったにすぎない。 原告は、誕生日パーティーでシャンパンタワーとともに大人数で乾杯を行ったり、他人の顔面に誕生日ケーキをぶつけたりしている。原告が、興に乗じて度を越した言動をしていることは明らかであって、真実性が認められる。 原告は、誕生日パーティーで他人の顔に対しケーキをぶつけたり、パーティー参加者にシャンパンタワーからシャンパンを配ったりしており、原告の言動は「ハメを外した」と評価され得るものである。したがって、摘示事実は重要部分において真実である。 2 本件記述2原告の主張被告東京スポーツの主張被告ヤフーの主張摘示事実見出し及び原告の写真も含む本件記事全体を踏まえると、本件舞台におけるクラスター感染発生の原因が原告にある又は原告に法的責任があるとの事実を摘示するものである。 本件記述2は、本件舞台において感染対策が徹底されていなかったことを捉え、これに対する業界関係者の意見・論評を紹介するものにすぎず、何ら具体的な事実を指摘するものではない。 また、本件記事全体を読んでも、見出しや原告の顔写真は、本件舞台を特定する情報として用いられているにすぎず、本件舞台の主 見・論評を紹介するものにすぎず、何ら具体的な事実を指摘するものではない。 また、本件記事全体を読んでも、見出しや原告の顔写真は、本件舞台を特定する情報として用いられているにすぎず、本件舞台の主催者側の対応を問題にするものであることは明らかであり、クラスター感染の原因が原告にあることを示すものではない。 本件舞台でクラスター感染が発生したことにより、原告が舞台の出演者として業界の信用を失ったという意見・評価を指摘するものである。 本件記事全体の構成や内容に照らしても、批判の対象は本件舞台主催者となっており、また、原告がクラスター感染の直接の原因であると読み取れる文章はない。 社会的評価の低下上記摘示事実は、原告がクラスター感染を発生させた原因であり、そのため業界の信用を失っているとの印象を一般読者に与えるものであるから、原告の俳優・タレントとしての社会的評価を低下させるものである。 公共性本件記事は、全体として原告個人を非難する構成になっていること、漠然とした内容や世間の噂を背景にするものであることからすれば、公共の利害に関する事実を摘示するものとはいうことはできない。 本件舞台におけるクラスター感染は、新型コロナウイルス感染症のために中止されていた演劇等の上演を再開していく流れにある中で発生したものであり、社会的に関心の大きい事項であったことに加え、原告が、本件舞台の主演かつ座長という中心的立場にあり、本件舞台に関して責任のある立場の者であったことに照らせば、本件記述2は、公共の利害に係る事実である。 本件記事は、いわゆるコロナ禍におけるクラスター感染を報道するものであるから、原告の指摘するような興味本位の要求に応えるものでないことは明らかである。 公益目的本件記事は、原告の過去の言動も交えて原告個人を非難する コロナ禍におけるクラスター感染を報道するものであるから、原告の指摘するような興味本位の要求に応えるものでないことは明らかである。 公益目的本件記事は、原告の過去の言動も交えて原告個人を非難することを主たる目的とするものであって、クラスター発生防止策を十分にとっていなかったことを批判することを目的としたものではないから、専ら公益を図ることを目的とするものではない。 本件記事は、本件舞台で発生したクラスター感染の事実、本件舞台の運営実態ひいてはその背景事情を明らかにすることを目的としたものであって、専ら公益を図る目的であったことが明らかである。 本件記事は、いわゆるコロナ禍におけるクラスター感染を報道するものであるから、公益目的であることは明らかである。 真実性本件舞台において、感染症対策の責任を負っていたのは、本件舞台の主催者であり、原告ではないから、原告に本件舞台におけるクラスター感染の原因又は法的責任があるとの事実は真実ではない。 原告は、本件舞台の千秋楽公演後、数秒程度、出待ちをしていたファンと接触したことはあるが、そのために本件舞台におけるクラスター感染が起きたとはいえない。これにより、原告が業界の信用を失ったとの事実もない。 本件公演においては、体調不良者を出演させるなど、感染対策の不備があったことは事実である。 また、仮に原告主張の事実を摘示するものであるとしても、原告が、千秋楽公演後にファンと接触していたこと、後に本件舞台における感染対策が不十分であり、その責任の一端が原告にあることを認めて謝罪していること、歌舞伎俳優が「どいつもこいつも素人」と批判していたことからすれば、原告がクラスター感染発生の一因であることや、原告が関係者からの評価を落としたことは真実である。 仮にクラスターの原因が原告にあるとの事実を が「どいつもこいつも素人」と批判していたことからすれば、原告がクラスター感染発生の一因であることや、原告が関係者からの評価を落としたことは真実である。 仮にクラスターの原因が原告にあるとの事実を摘示するものであるとしても、原告が主催者の注意を無視してファンと握手をしていたことや、歌舞伎役者が、主催者だけでなく出演者に対しても感染拡大防止に対する認識の欠如が感染拡大に繋がるとの批判を行っており、このような批判を受けて原告が座長として謝罪をしていたことなどからすれば、本件舞台の関係者としての原告の信用が失われたことは事実である。
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