平成30(ワ)5041 損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年1月21日 大阪地方裁判所
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令和3年1月21日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(ワ)第5041号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日令和3年1月18日判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり主文 1 原告の請求のうち,原告が別紙1(機械装置目録)記載の機械装置を使用して別紙2(製品目録)記載のポリイミドフィルムを製造及び販売したことに関し,被告が原告に対し別紙3(特許権目録)記載の各特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権をいずれも有しないことの確認を求める訴えを,いずれも却下する。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,補助参加により生じた費用は補助参加人の負担とし,その余は原告の負担とする。 4 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 事実 及び理由第1 請求 1 原告が別紙1(機械装置目録)記載の機械装置を使用して別紙2(製品目録)記載のポリイミドフィルムを製造及び販売したことに関し,被告が,原告に対し,別紙3(特許権目録)記載の各特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権をいずれも有しないことを確認する。 2 被告は,原告に対し,●(省略)●を支払え。 第2 事案の概要 1 前提事実(当事者間に争いがないか,各項に掲げた証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお,枝番号のある証拠で枝番号の記載のないものは,全ての枝番号を含む。) (1) 当事者等ア原告は,ポリイミドフィルム(以下「フィルム」という。)の製造,販売等を主たる事業とする会社である。原告は,コーロンインダストリーインコーポレイテッド及びエスケーシーカンパニーリミテッド(以下,両社を併せて「SKC 等」という。)のフィルム製品製造販売事業を統合した合弁会 する会社である。原告は,コーロンインダストリーインコーポレイテッド及びエスケーシーカンパニーリミテッド(以下,両社を併せて「SKC 等」という。)のフィルム製品製造販売事業を統合した合弁会社として2008年(平成20年)4月頃設立され(なお,その商号は,設立時の「エスケーシーコーロンピーアイインコーポレイテッド」から,後に現在のものに変更された。),SKC 等のフィルム事業に係る全ての権利義務を承継した。 イ原告補助参加人(以下「参加人」という。)は,機械装置製造業者である。 ウ被告は,合成樹脂,電子材料及び電子部品等の製造,販売等を主たる事業とする会社である。 (2) 被告の特許権被告は,別紙3(特許権目録)記載1の日本国特許権(以下「本件日本特許権」といい,これに係る特許を「本件日本特許」という。)及び同目録記載2の米国特許権(以下「本件米国特許権」といい,これに係る特許を「本件米国特許」という。また,これと本件日本特許権を併せて「本件各特許権」,本件各特許権に係る特許を併せて「本件各特許」,本件各特許に係る発明を併せて「本件各特許発明」と,それぞれいう。)の特許権者である。本件米国特許に係る出願は,本件日本特許に係る特許出願を基礎とする優先権を主張してされたものである。 なお,本件各特許権は,いずれも既に存続期間を満了して消滅している。 (3) 被告と参加人との本件各特許権に係る独占的通常実施権許諾契約の締結被告と参加人は,平成5年12月2日,本件各特許権を含む特許権につき,「その範囲全部にわたる」独占的通常実施権を被告が参加人に許諾する旨の特許実施許諾契約(以下「本件許諾契約」という。また,同契約に基づく参加人の上記通常実施権を「本件実施権」と,同契約に係る契約書(甲1)を「本件契約書」と,それぞれ 施権を被告が参加人に許諾する旨の特許実施許諾契約(以下「本件許諾契約」という。また,同契約に基づく参加人の上記通常実施権を「本件実施権」と,同契約に係る契約書(甲1)を「本件契約書」と,それぞれいう。)を締結した(ただし,本件許諾契約により設定された本件実施権の範 囲については,後記のとおり,当事者間に争いがある。)。 (4) 参加人のSKC 等に対するフィルム製造装置の販売等参加人は,平成16年4月~平成18年12月の間に,別紙1(機械装置目録)記載の各機械装置(以下,一括して「本件各装置」という。)をSKC 等にそれぞれ販売した。 また,SKC 等による原告の設立及びフィルム事業に係る全ての権利義務の原告への承継(前記(1)ア)に伴い,平成20年4月頃,本件各装置はいずれもSKC 等から原告に譲渡された。 (以上につき,甲2)(5) 原告によるフィルム製品の製造及び販売等原告は,平成20年4月頃以降,本件各装置を韓国で使用して,別紙2(製品目録)記載の各フィルム製品(以下,一括して「本件各製品」という。)を製造し,これを日本に輸出して日本の顧客に販売すると共に,米国にも輸出するなどした。 (6) 別件米国訴訟の経緯被告は,2010年(平成22年)7月26日,原告による本件各製品の米国への輸出等が本件米国特許権を含む被告の特許権を侵害するなどと主張して,米国テキサス州東部地区連邦地方裁判所に対し,原告及びその関連会社(以下,併せて「原告等」という。)を被告として,損害賠償等を請求する訴訟を提起した(以下「別件米国訴訟」という。甲15)。別件米国訴訟は,その後,カリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所(以下「加州裁判所」という。)に移送された。 別件米国訴訟について,加州裁判所の陪審は,2015年(平成27年)1 」という。甲15)。別件米国訴訟は,その後,カリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所(以下「加州裁判所」という。)に移送された。 別件米国訴訟について,加州裁判所の陪審は,2015年(平成27年)11月19日,本件各製品の米国への輸入等が本件米国特許権の侵害となることを認めると共に,参加人の原告に対する本件各装置の販売が本件実施権に基づくものであったことを認めず,また,本件米国特許権の侵害による被告の逸失利益を592万0389.50米ドルと認めることなどを内容とする評決をした(以下「別件評決」という。甲16,乙38)。 加州裁判所は,別件評決に基づき,2017年(平成29年)5月24日,本件各製品につき本件米国特許権の侵害を認めると共に,原告等に対し,被告に対する上記損害賠償金の支払を命じることなどを内容とする判決をした(以下「別件米国判決」という。甲17)。 これに対し,原告等は,同年12月13日,控訴を提起した(甲20)。しかし,米国連邦巡回控訴裁判所(以下「CAFC」という。)は,本件訴えの提起(平成30年6月7日)後である2019年(平成31年)3月15日,別件米国判決を支持する旨の判決をし(乙19),同年(令和元年)6月18日,原告等による再審理の申立て等を認めず(乙23),その後,別件米国判決は確定した。 2 本件は,原告が,被告に対し,以下の請求をする事案である。 (1) 原告が本件各装置を使用して本件各製品を製造,販売したことにつき,被告が,原告に対し,本件各特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権をいずれも有しないことの確認請求(以下,本件米国特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権の不存在確認請求を「請求1-1」と,本件日本特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権の不存在確認請求を「請求1-2」と ないことの確認請求(以下,本件米国特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権の不存在確認請求を「請求1-1」と,本件日本特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権の不存在確認請求を「請求1-2」といい,これらの請求を併せて「請求1」という。)(2) 被告による別件米国訴訟の提起及び追行につき,原告の被告に対する不法行為(民法709条)又は債務不履行(平成29年法律第44号による改正前の民法415条)に基づく損害賠償請求(以下,不法行為に基づく損害賠償請求を「請求2-1」と,債務不履行に基づく損害賠償請求を「請求2-2」といい,これらの請求を併せて「請求2」という。また,請求1と請求2を併せて「本件各請求」という。) 3 争点(1) 国際裁判管轄の有無(本件各請求について。争点1)(2) 請求2に係る訴えの準拠法(争点2)(3) 確認の利益の有無(請求1について。争点3) (4) 訴訟物の特定の有無(本件各請求について。争点4)(5) 本件各特許権の侵害の成否(請求1について。争点5)(6) 別件米国訴訟の提起及び追行の違法性等(請求2-1について。争点6)(7) 本件許諾契約に基づく被告の原告に対する本件各特許権不行使債務の有無(請求2-2について。争点7) 4 争点に関する当事者の主張(1) 国際裁判管轄の有無(本件各請求について。争点1)について(原告の主張)ア被告の主たる事務所は日本国内にある。したがって,本件各請求に係る訴えのいずれについても,日本の裁判所が管轄権を有する(民訴法3条の2第3項)。 イ 「特別の事情」があるとはいえないこと民訴法3条の2第3項は,被告の住所を基準として普通裁判籍を認める同法4条1項及び2項に相当する規定であるから,被告の主たる事務所が日本国内にある場 )。 イ 「特別の事情」があるとはいえないこと民訴法3条の2第3項は,被告の住所を基準として普通裁判籍を認める同法4条1項及び2項に相当する規定であるから,被告の主たる事務所が日本国内にある場合に,日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し,又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる「特別の事情」(同法3条の9)があるとして日本の裁判所の管轄権が否定されるのは例外的な場合に限られる。しかし,本件では,以下のとおり,特別の事情があるとはいえない。 (ア) 別件米国訴訟の存在を理由に日本の裁判所の管轄権が否定されないこと請求1-2及び請求2に係る訴えは,別件米国訴訟とは訴訟物を異にし,請求原因事実や争点も重複しない。したがって,これらの請求に係る訴えにつき,別件米国訴訟の存在を理由に日本の裁判所の管轄権は否定されない。 請求1-1に係る訴えとの関係では,外国裁判所における同一又は関連訴訟の係属という事情は「特別の事情」の判断における1つの考慮要素と位置づけられる事情に過ぎず,二重起訴禁止の法理は妥当しない。 なお,本件においては,別件米国訴訟につきCAFC が第1審判決を支持する旨の判決をしたという事情があるけれども,日本の裁判所の管轄権は,訴え提起の時を 標準として定められるところ(同法3条の12),CAFC の上記判決は訴え提起後の事情であるから,「特別の事情」の判断に当たりこれを考慮することはできない。 (イ) 日本の裁判所で審理することが必要かつ適切であること本件の主要な争点は,本件許諾契約における販売先制限の存否(市場における被告との競合者に本件各特許発明を実施した装置を販売することが禁止されるか否か)であるところ,その判断の重要な証拠となる参加人及び被告の従業員並びに関連する社内資料は, 売先制限の存否(市場における被告との競合者に本件各特許発明を実施した装置を販売することが禁止されるか否か)であるところ,その判断の重要な証拠となる参加人及び被告の従業員並びに関連する社内資料は,いずれも日本国内に集中して所在している。加えて,これらの関係者は日本語に通じ,資料も日本語で作成されているはずであるから,日本の裁判所で証拠調べをすることにより被告に特別な負担を強いることはない。他方,本件では本件米国特許に係る発明の技術的範囲やその有効性は争点でないことから,別件米国訴訟で提出された本件米国特許に係る明細書や包袋,技術専門家の意見書等を取り寄せる必要はなく,被告に翻訳等の負担が生じることはない。 また,本件許諾契約の準拠法は日本法であるから,本件許諾契約の解釈は,契約の文言や契約締結に関わる事実関係に照らし,日本法に従って行われることとなる。 そうすると,日本法を最もよく知る日本の裁判所に判断を委ねることが,実体的真理の究明のためにも必要かつ適切である。 さらに,被告が日本法人であること,別件米国訴訟の提起を含む被告における意思決定が日本国内で行われたことを踏まえれば,本件につき日本の裁判所によって審理されたとしても,被告にとって,当事者間の衡平が害されることも,適切かつ迅速な審理の実現を妨げられることもない。 (ウ) 本件訴えが別件米国訴訟の重複・蒸し返しに当たらないこと本件訴えに係る請求のうち,請求1-2及び請求2は,別件米国訴訟とは訴訟物が異なる。このため,本件許諾契約における販売先制限の存否の審理が前提として必要となるとしても,その請求権の存否に係る審理及び判断は別件米国訴訟で行われていないことから,本件訴えは,別件米国訴訟の審理の重複・蒸し返しとはならない。請求2について,別件米国訴訟において反訴が可能であるとし ても,その請求権の存否に係る審理及び判断は別件米国訴訟で行われていないことから,本件訴えは,別件米国訴訟の審理の重複・蒸し返しとはならない。請求2について,別件米国訴訟において反訴が可能であるとしても,本件は 日本法の解釈に通暁した日本の裁判所による判断を求める必要性が高いことから,日本の裁判所の国際裁判管轄を否定すべき「特別の事情」には当たらない。 また,別件米国訴訟においては,重大な瑕疵のある証拠方法に依拠して,日本法に準拠する本件許諾契約の解釈につき日本法の解釈・適用としては明らかに真実に反する不当な認定が陪審によりされたものである。このため,日本の裁判所による正しい審理,判断がされる必要性が高い。 さらに,本件許諾契約における販売先制限の存否という本件の主要な争点に関し,被告の具体的な主張立証は本件と別件米国訴訟とで異なっており,実質的に両者の審理が重複するとはいえない。 しかも,参加人と被告との間には,本件許諾契約の販売先制限の存否を主要な争点とする損害賠償請求訴訟(大阪地方裁判所平成30年(ワ)第5037号。以下「別件関連訴訟」という。)が別途係属しており,被告は当該争点について主張立証を尽くす立場にある。しかるに,同訴訟において,被告は,別件米国訴訟の審理における立証と重複ないし蒸し返しとなる立証をほとんど行っていない。また,同訴訟が係属している以上,被告にとって,本件に対応することが過大な負担になるものでもない。 本件は,別件米国訴訟の提起から8年経過した後に訴えを提起したものであり,その間に別件米国訴訟の第1審判決がされてはいるものの,別件米国訴訟では,本件許諾契約における販売先制限の存否という核心的な争点について,被告が重大な瑕疵のある証拠に依拠して真実に反する不合理な主張立証を行っていたものであり, 決がされてはいるものの,別件米国訴訟では,本件許諾契約における販売先制限の存否という核心的な争点について,被告が重大な瑕疵のある証拠に依拠して真実に反する不合理な主張立証を行っていたものであり,正当な事実認定と評価がされれば被告の主張立証が認められることはあり得なかった。このため,原告にとって,早期の段階で日本において訴訟を提起することを合理的に期待することは困難であった。 (エ) 別件米国判決は日本において承認されないこと別件米国訴訟においては,被告が本件許諾契約における販売先制限の存否について重大な瑕疵のある証拠に基づいた真実に反する主張立証を行い,米国の陪審及び 裁判所も,そのような証拠を根拠に被告の主張に沿った認定を行った。このような別件米国判決は,日本の法秩序の基礎をなす公序ないし適正手続という観点に照らして容認されるべきものではないから,「判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと」(民訴法118条3号)の要件を充たさない。 また,別件米国判決が日本において承認された場合,別件関連訴訟につき参加人の被告に対する損害賠償請求等の判決が確定したときには,当該判決と別件米国判決との間に矛盾が生じることとなるから,別件米国判決は日本の公序に照らし許容されない。しかも,その場合,参加人は,別件関連訴訟では原告に対し本件各装置を販売可能であることが被告との関係で確定されたにもかかわらず,別件米国訴訟に基づいて原告が被告に賠償した金額を負担しなければならないという極めて不当な地位に置かれることになることから,日本の判決が米国別件判決に優先すると解さなければならない。この点からも,別件米国判決は承認されるべきものではない。 (オ) 以上の事情を総合的に考慮すると,本件においては,「特別の事情」( とから,日本の判決が米国別件判決に優先すると解さなければならない。この点からも,別件米国判決は承認されるべきものではない。 (オ) 以上の事情を総合的に考慮すると,本件においては,「特別の事情」(民訴法3条の9)があるとはいえない。 (被告の主張)本件各請求に係る訴えについては,以下のとおり,いずれも日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し,又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる「特別の事情」(民訴法3条の9)があると認められるから,却下されるべきである。 ア別件米国訴訟の審理経過等別件米国訴訟において,被告が原告による本件米国特許権の誘引侵害を主張したのに対し,原告は,本件許諾契約に基づく本件米国特許権の消尽及び黙示のライセンスを積極的抗弁として主張した。その陪審公判では,両当事者の提出した日本の弁護士の意見書を日本法の専門家意見として参酌し,本件許諾契約の解釈に当たっては日本法の解釈手法を採用することを前提とした陪審説示が裁判所からされた上 で,本件米国特許に係る発明の発明者等の証言等を証拠として,参加人による原告ないしSKC 等に対する本件各装置の販売が,被告が参加人に許諾したライセンスに基づきオーソライズされた販売であったか否かが評議事項の1つとして評議され,陪審は,上記事実は認められないと判断した。加州裁判所は,上記陪審公判後に原告等が申し立てた黙示のライセンスについて裁判所の法的判断を求める申立て等を退けるに際し,陪審の判断に基づいて,販売の状況がライセンスの許諾が推察されるべきことを明白に示唆していないと判断して,黙示のライセンスによる原告の抗弁を退け,その後,別件米国訴訟の第1審判決がされた。 イ訴訟物,争点及び審理対象の共通等(ア) 請求1-1は,別件米国訴訟と当 明白に示唆していないと判断して,黙示のライセンスによる原告の抗弁を退け,その後,別件米国訴訟の第1審判決がされた。 イ訴訟物,争点及び審理対象の共通等(ア) 請求1-1は,別件米国訴訟と当事者及び訴訟物が同一である。 また,原告は,請求1につき,原告の行為は本件許諾契約に基づき許諾されているから損害賠償請求権が発生しない旨を主張するところ,当該請求権の存否を判断するには,本件許諾契約の文言,契約当事者の意図及び契約締結に至った状況等を考慮して,当事者の合理的意思解釈として原告による本件各製品の製造,販売行為が同契約により許諾されていたか否かを判断する必要がある。この点で,本件は,別件米国訴訟でいう黙示のライセンスの抗弁の成否と争点が共通し,共通の事項を審理することになる。このため,請求1に係る審理は,別件米国訴訟と審理が重複し,これを蒸し返すものである。 (イ) 原告の主張によれば,請求2に係る損害賠償責任の根拠は,本件許諾契約に基づき被告が原告に対して負う,本件各特許権の行使として訴訟を提起,追行してはならない義務に違反したことにある。このような義務を導くためには,原告による本件各製品の製造,販売行為が本件許諾契約による実施許諾の範囲に含まれることを立証することが必要となり,結局,別件米国訴訟において判断された事項と共通の事項を審理することとなる。 よって,請求2との関係でも,その審理は別件米国訴訟の審理の重複,蒸し返しとなる。 (ウ) 本件の訴え提起は,別件米国訴訟の提起から約8年後にされたものであり,その間,別件米国訴訟は,審理が尽くされ,判決にまで至っている。にもかかわらず後行訴訟である本件の審理を許容するならば,判決の抵触の問題のみでなく,当事者間の衡平,裁判の適正,迅速,訴訟経済,応訴の煩といった 件米国訴訟は,審理が尽くされ,判決にまで至っている。にもかかわらず後行訴訟である本件の審理を許容するならば,判決の抵触の問題のみでなく,当事者間の衡平,裁判の適正,迅速,訴訟経済,応訴の煩といった点で,不合理な結果を招来することとなる。 また,別件米国訴訟の提起から本件訴えの提起に至る経緯に鑑みると,本件の訴え提起の目的は,別件米国訴訟における不利な訴訟状態の覆滅にあると見られる。 しかし,別件米国訴訟においては原告も十分に防御を尽くす機会が保障されていたのであるから,審理の正当性に疑念を挟む余地はなく,別件米国判決は日本で承認され得る。そうである以上,別件米国訴訟の再審理の手段として本件訴えを認める必要性も許容性もない。 (エ) その他の事情別件米国訴訟では,当事者間の社内資料は証拠開示手続により日本の訴訟手続による場合以上に十分な資料の検討が可能となっており,また,人証調べも問題なく実施されたことなどに照らせば,証拠の所在を理由として別件米国訴訟に関する紛争を改めて日本で提起する必要性はない。むしろ,別件米国訴訟で提出された証拠を日本の裁判所に提出することになれば,被告は,これらを日本に取り寄せ和訳を用意する必要があることになり,相当な負担となる。 また,原告による本件米国特許権の侵害行為は米国で行われており,当該侵害行為に係る紛争が米国の裁判所で審理されることは,極めて一般的な事態である。現に,原告は別件米国訴訟において十分な攻撃防御を行っており,関連する紛争として本件訴えを米国において反訴として提起することも可能であるから,本件訴えを米国で提起すべきとしても,原告の負担は大きくない。むしろ,被告が別件米国訴訟に膨大な費用と時間を負担して訴訟対応に注力してきたことを踏まえると,本件の審理を認めることは,被告の予測可能性に 訴えを米国で提起すべきとしても,原告の負担は大きくない。むしろ,被告が別件米国訴訟に膨大な費用と時間を負担して訴訟対応に注力してきたことを踏まえると,本件の審理を認めることは,被告の予測可能性に反すると共に,別件米国訴訟における被告の対応が全て無駄なものとなり,応訴の負担が大きく,著しく妥当性,公平性 を欠く。別件関連訴訟が係属しているといっても,応訴の負担は当該訴訟との関係において考慮されるべきものであって,別訴訟の係属という偶発的な事情は,被告が本件による応訴の負担を強いられる理由にはならない。しかも,本件と別件関連訴訟とは,争点は一致していないため,本件は,被告に更なる訴訟対応を強いるものである。 (オ) 以上のとおり,本件では,「特別の事情」(民訴法3条の9)がある。 (2) 請求2に係る訴えの準拠法(争点2)(原告の主張)ア請求2-1について請求2-1に係る訴えの準拠法は,以下のとおり,法の適用に関する通則法(以下「通則法」)17条又は20条に基づき,日本法である。 すなわち,本件において,原告は,参加人が本件許諾契約に基づき製造,販売した本件各装置を購入した者として,被告から本件各特許権を行使されることなく本件各装置を使用してフィルム製品を製造,販売することのできる権利ないし地位を有する。この原告の法的利益は,顧客に本件各装置を販売して使用させることができるという参加人の法的利益と不可分一体の関係にあり,これに付随するものとして,原告と被告との間の債権債務関係に基づくものといえ,被告は,このような原告の法的利益を侵害してはならない義務を負う。また,参加人の上記法的利益の侵害の結果は,実質的には,本件許諾契約を締結し,これに基づき参加人が本件各装置を製造,販売し,かつ,被告が参加人の上記法的利益を 法的利益を侵害してはならない義務を負う。また,参加人の上記法的利益の侵害の結果は,実質的には,本件許諾契約を締結し,これに基づき参加人が本件各装置を製造,販売し,かつ,被告が参加人の上記法的利益を侵害する意思決定を行った結果,現実に参加人が被告により上記法的利益を侵害された地である日本において発生したものといえる。そうである以上,参加人の上記法的利益と不可分一体の関係にある原告の上記法的利益の侵害の結果発生地も,日本というべきである。したがって,請求2-1に係る訴えについては,結果発生地法である日本法が準拠法となる(通則法17条)。 また,原告と被告との間に契約に基づく責任の基礎となる法律関係が存在する場 合は,不法行為に基づく損害賠償請求に関しても契約準拠法によることができるところ,原告と被告の間においては,本件許諾契約に基づき本件各装置の販売先に対する再実施許諾権を有する参加人から原告が本件各装置を購入したことに伴い,本件各特許権についての再実施許諾が少なくとも黙示的になされたものといえる。このため,原告と被告との間には,契約に基づく責任の基礎となる法律関係が生じたと見られる。このような原告と被告との間の法律関係は,本件許諾契約と不可分一体でありこれに付随するもの,又は本件許諾契約に基づいて生じるものであるから,請求2-1に係る訴えについては,本件許諾契約の準拠法である日本法が最密接関係地法として準拠法となる(通則法20条)。原告の被侵害利益は本件許諾契約と不可分の利益であって,請求2-1の成否には本件許諾契約の解釈が最も重要な問題となること,被告の別件米国訴訟に係る意思決定は日本国内で行われたと考えられることからも,同様である。 イ請求2-2について後記(7)(原告及び参加人の主張)のとおり,本件許諾契約は,原 問題となること,被告の別件米国訴訟に係る意思決定は日本国内で行われたと考えられることからも,同様である。 イ請求2-2について後記(7)(原告及び参加人の主張)のとおり,本件許諾契約は,原告を含む参加人の顧客を受益者として,参加人と被告との間で締結された第三者のためにする契約と理解することができ,また,原告は,参加人から,本件各特許権につき再実施許諾を受けたと理解することもできることから,原告は,被告との関係では,本件各特許権を行使されない権利ないし地位を得,被告は,原告に対し,これを行使しない不作為義務を負う。そうすると,被告が別件米国訴訟を提起及び追行して原告に対し本件各特許権を行使することは,原告に対する債務不履行となる。したがって,その効果である損害賠償請求権の存否を判断するに当たっての準拠法は,本件許諾契約の当事者が契約当時選択した地の法である日本法となる(通則法7条)。 仮に準拠法の選択があったとはいえないとしても,本件許諾契約については日本法が最密接関係地法であり,これと不可分一体かつ付随する原告と被告との間の契約関係についても,同様に日本法が最密接関係地法である(同法8条1項)。また,原告と被告との間の契約関係において,被告が参加人を介して原告に対し本件各特 許権の実施許諾を行う点が特徴的な給付に当たることから,被告の常居所地法である日本法が最密接関係地法と推定される(同条2項,1項)。 (被告の主張)ア請求2-1について不法行為の準拠法は加害行為の結果発生地法によるところ,原告が不法行為と主張する被告の行為は,別件米国訴訟を提起して原告が被告の特許権を侵害している旨の主張立証活動を行っていることであるから,その結果は,別件米国訴訟の審理が行われている米国カリフォルニア州において発生する。 る被告の行為は,別件米国訴訟を提起して原告が被告の特許権を侵害している旨の主張立証活動を行っていることであるから,その結果は,別件米国訴訟の審理が行われている米国カリフォルニア州において発生する。したがって,準拠法はカリフォルニア州法(以下「加州法」という。)である。 また,原告と被告との間に契約関係はないから,通則法20条の適用はない。 イ請求2-2について否認ないし争う。被告は,参加人に対し,被告の競合者に対する本件各装置の販売を許諾していないし,本件契約書には,第三者に対する再実施許諾についての記載はなく,同契約書に基づき原告と被告との間に契約関係は生じ得ない。 (3) 確認の利益の有無(請求1について。争点3)(原告の主張)ア被告は,現に別件米国訴訟を提起し,原告の法的地位を否定していることから,原告の法的地位に不安・危険が現存している。このため,原告は,このような法的地位の不安・危険を除去する必要性があり,請求1につき即時確定の利益を有する。 請求1の対象となる法律関係(被告が原告に対して本件各特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権を有しないこと)は,請求2(被告による不当な別件米国訴訟の提起,追行により原告が被った損害の賠償請求権)の前提となる事実関係の1つであるものの,請求1は,請求2に係る請求権それ自体の確認を求めているものではない。 イ請求1-2に係る訴えについて 原告は,本件日本特許権の存続期間中に,韓国において本件各装置を使用して製造した本件各製品を日本に向けて輸出し,日本の顧客に販売した。同様の状況にある米国において被告が別件米国訴訟を提起していることなどから,原告が被告から本件日本特許権侵害に基づく損害賠償請求権を行使されるおそれは,現に存在しているといえる。被告は,平 売した。同様の状況にある米国において被告が別件米国訴訟を提起していることなどから,原告が被告から本件日本特許権侵害に基づく損害賠償請求権を行使されるおそれは,現に存在しているといえる。被告は,平成31年4月18日実施の弁論準備手続期日において,原告に対して本件日本特許権を行使する意向がない旨述べたものの,それによって本件日本特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権不行使の法的義務を負うわけではなく,将来にわたって確実に行使しないことを保証するものではない。 (被告の主張)ア請求1に係る訴えは,いずれも請求2の存在により訴えの利益を欠き不適法であり,却下されるべきである。 すなわち,原告は,請求1において,本件許諾契約の内容として参加人に対する販売先制限が存在しないことを前提として,原告が本件各特許権を侵害しておらず,被告の原告に対する本件各特許権に基づく損害賠償請求権が存在しないと主張する。 他方,原告は,請求2において,被告が上記販売先制限の存在しないことを認識しながら別件米国訴訟を提起,追行したことが原告に対する不法行為又は債務不履行に該当すると主張している。このため,請求2に係る原告の請求権の有無を判断する過程で,請求1の判断に必要な審理は全て尽くされる。いわば,請求1は請求2に包含される関係にある。そうであれば,訴訟の基本形態であり,紛争解決の手段としてより直截的な請求2に係る訴えのみを審理すれば足り,より迂遠な解決手段である請求1に係る訴えは訴えの利益を欠く。 イ請求1-2に係る訴えについて被告は,平成31年4月18日実施の弁論準備手続期日において,原告に対して本件日本特許権を行使する意向はない旨を述べた。このため,仮に,将来被告が本件日本特許権を原告に対して行使しても,原告は,訴訟において上記被告の意向の存 実施の弁論準備手続期日において,原告に対して本件日本特許権を行使する意向はない旨を述べた。このため,仮に,将来被告が本件日本特許権を原告に対して行使しても,原告は,訴訟において上記被告の意向の存在を容易に主張立証し,訴権の放棄や禁反言を理由に却下判決を得ることができ る。その意味で,被告の上記意思表示は,被告による本件日本特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求訴訟の提起を制限するものであり,原告が被告から本件日本特許権を行使される危険を除去するものである。請求1-2に係る訴えは,この点からも訴えの利益がない。 (4) 訴訟物の特定の有無(本件各請求について。争点4)(原告の主張)ア請求1について債務不存在確認請求においては,債権の存在を主張する被告に当該債権の発生原因事実についての主張立証責任があり,原告は,攻撃防御の対象となる訴訟物たる債権を特定すれば足りる。本件において,原告は,被告が原告に対し本件米国特許権の侵害に該当すると主張している事実と,被告が別件米国訴訟を提起し,本件米国特許権の侵害に基づく損害賠償請求を行った事実を主張しており,具体的な債権の特定に欠けるところはない。 イ請求2について原告は,被告による不当違法な特許権の行使を受けることなく本件各装置を自由に使用する法的利益が被告の不法行為又は債務不履行により侵害された旨主張しており,被告の加害行為の構成要素は,別件米国訴訟において被告が本件米国特許権の誘引侵害を主張したという事実である。それを超えて,原告が,自ら誘引侵害を行ったことを主張しなければならない理由はない。したがって,請求2に係る訴えの訴訟物は特定されている。 (被告の主張)ア請求1について原告は,被告の損害賠償請求権の発生原因である原告の侵害行為(原告の行為 しなければならない理由はない。したがって,請求2に係る訴えの訴訟物は特定されている。 (被告の主張)ア請求1について原告は,被告の損害賠償請求権の発生原因である原告の侵害行為(原告の行為が米国特許法上の誘引侵害に該当することを示す被侵害物件,実施行為の種別及び実施行為の期間)を具体的に特定する必要がある。しかし,原告が主張する原告の行為は,それのみでは米国特許法上の誘引侵害の要件を満たしていない。したがって, 請求1に係る訴えは,訴訟物が特定されていないため不適法であり,却下されるべきである。 イ請求2について不法行為に基づく損害賠償請求訴訟においては,加害行為及び被侵害利益が特定されなければ訴訟物が特定されないところ,原告は,被侵害利益として「被告による不当違法な特許権の行使を受けることなく本件各装置を自由に使用する法的利益」という抽象的な地位を主張するにとどまる。被告は,別件米国訴訟において,本件米国特許権については最終的に誘引侵害のみを主張し,当該誘引侵害に係る行為以外の原告の「本件各装置を自由に使用する法的利益」の侵害行為は主張していない。 そうである以上,原告は,被告の行為により,「被告が米国訴訟において主張している誘引侵害行為を適法に実施できる地位」が侵害されたことを具体的事実に即して主張するべきである,しかるに,原告は,これらの具体的事実の主張をせず,加害行為及び被侵害利益を特定しないことから,請求2に係る訴えの訴訟物は特定されていない。 (5) 本件各特許権の侵害の成否(請求1について。争点5)(被告の主張)ア本件許諾契約では,参加人が被告の競合者に本件各装置を販売することは許諾されていない。その意味で,本件許諾契約の内容には,参加人による販売先の制限が含まれる。したがって,参加 (被告の主張)ア本件許諾契約では,参加人が被告の競合者に本件各装置を販売することは許諾されていない。その意味で,本件許諾契約の内容には,参加人による販売先の制限が含まれる。したがって,参加人から本件各装置を購入した者が被告の競合者である場合,その者が本件各特許発明の製造方法を実施して本件各製品を製造,販売する行為は,本件各特許権の侵害に当たる。 原告は被告の競合者であるから,原告が本件各製品を販売等する行為は,本件各特許権を侵害する。 イ仮に,本件許諾契約の内容に参加人による販売先の制限が含まれないとしても,本件各装置の構造等を踏まえると,本件各装置については,参加人が原告に販売した後,原告ないし参加人が,韓国で組み立てて製造し,最終的な調整を施して 本件各特許発明の実施品として完成させた可能性が高い。しかし,韓国には本件各特許権に対応する特許権が成立しておらず,本件許諾契約の対象となる特許権に含まれていない。そうである以上,参加人の原告に対する販売や原告による本件各装置の使用は,本件許諾契約に基づき許容されるものではない。 ウ参加人の原告に対する本件各装置の販売が本件許諾契約で許容されたものではなく,適法な拡布といえないことや,被告が本件許諾契約に基づき参加人から何ら実施料の支払を受けていないこと,本件各装置が韓国で組み立てられ,完成させられた場合,韓国では特許権が成立していない以上,特許権者により許諾された実施行為が一切ないことなどの事情を踏まえれば,原告の実施行為につき消尽が成立する余地はない。 (原告及び参加人の主張)ア否認ないし争う。 本件許諾契約の内容として,参加人が本件各特許発明を実施できる範囲につき,地域や当該発明を実施する装置の販売先の制限はない。したがって,参加人は,本件許諾契約に 人の主張)ア否認ないし争う。 本件許諾契約の内容として,参加人が本件各特許発明を実施できる範囲につき,地域や当該発明を実施する装置の販売先の制限はない。したがって,参加人は,本件許諾契約に基づき,本件各装置を製造し,原告に対して販売して使用させることができる。このため,原告がこれらを使用して本件各製品を製造し,販売する行為は適法であり,本件各特許権の侵害を構成しない。 イ参加人は,本件各特許権につき,その範囲全部にわたる独占的通常実施権の許諾を受け,これに基づき製造した本件各装置をSKC 等に販売したものである。 本件日本特許には,請求項2に係る装置の特許と請求項1に係る製法の特許が含まれるところ,前者に関しては,参加人のSKC 等に対する本件各装置の販売により,本件日本特許権は消尽したものであり,SKC 等ひいては原告による本件各装置の使用に本件日本特許権の効力は及ばない。また,後者に関しても,本件日本特許に係る上記各請求項は実質的に同一の発明につきカテゴリーを変えて規定したものであり,その技術的思想は同一であることなどから,本件日本特許権を行使することはできない。 同様に,本件米国特許権についても,米国の判例法に照らせば,独占的通常実施権者である参加人が製造,販売した本件各装置に関し,装置,製法いずれに係る特許との関係でも消尽し,原告が本件各装置を使用したとしても本件米国特許権の侵害を構成することはない。 ウ本件許諾契約において,本件実施権の地理的範囲には制限が付されていない。 したがって,本件各装置が日本と韓国のいずれで製造されたものであっても,参加人による本件各特許発明の実施は本件許諾契約に基づくものであり,参加人は,その実施品である装置を顧客に販売して使用させることができるのであって,原告が本件各装置 ずれで製造されたものであっても,参加人による本件各特許発明の実施は本件許諾契約に基づくものであり,参加人は,その実施品である装置を顧客に販売して使用させることができるのであって,原告が本件各装置を使用してフィルムを製造,販売したことにつき,本件各特許権の侵害は成立しない。 なお,参加人の本件各装置に関する本件各特許発明の実施行為は日本において行われたものであるし,本件許諾契約において,実施品である装置の製造地を米国や日本に限定する定めはない。また,装置購入者である原告の側では,引き渡された装置の形状,構造等の枠内で調整し得るに過ぎず,そのような調整によって本件各特許発明の構成要件の充足,非充足が左右されるものではないし,本件許諾契約による許諾の範囲外となるともいえない。 (6) 別件米国訴訟の提起及び追行の違法性等(請求2-1について。争点6)(原告及び参加人の主張)ア参加人は,本件許諾契約に基づき,本件各装置を製造し自由に顧客に使用させることができる権利を有することから,本件各装置を購入した原告がこれらを使用して本件各製品を製造,販売する行為は適法である。また,参加人は機械装置の製造業者であり,自らフィルム製品を製造,販売することはないこと等に鑑みると,本件許諾契約は,被告が参加人からの装置購入者に対して本件各特許権を行使しない義務をも当然に含むものと理解される。このため,原告は,参加人からの本件各装置購入者として,被告から本件各特許権の行使を受けることなく本件各装置を使用してフィルム製品を製造,販売し得る法的に保護されるべき権利ないし地位を有 し,被告は,このような法的利益を侵害してはならない義務を負う。 しかるに,被告は,上記義務に反して,本件米国特許権を行使して別件米国訴訟を提起,追行し,真実と異な き権利ないし地位を有 し,被告は,このような法的利益を侵害してはならない義務を負う。 しかるに,被告は,上記義務に反して,本件米国特許権を行使して別件米国訴訟を提起,追行し,真実と異なる主張立証を行うなどしたことにより,原告の上記法的利益を侵害した。このような被告の行為は,不法行為を構成する。 イ最高裁昭和63年1月26日第一小法廷判決(民集42巻1号1頁参照。以下「63年判決」という。)は,前訴の提訴者が被提訴者に対して訴えを提起することを制限するような法律関係ないし契約関係が特段存在しない事案において,当該提訴者が被提訴者に対して訴えを提起することそれ自体の不法行為性につき示された判断である。他方,本件は,原告が被告との関係で法的に保護されるべき権利ないし利益を有し,被告がその義務を負うという関係にあり,また,別件米国訴訟の提起のみならず,その追行についても不法行為であると原告が主張している点で,63年判決とは事情が異なる。 仮に63年判決の判断枠組によったとしても,以下のとおり,本件においては,被告の原告に対する不法行為が成立する。 すなわち,本件各特許発明は,真実は参加人従業員によってされたものであるところ,被告は,本件許諾契約の締結過程においてその旨の説明を受け,特に異議等を述べることなく,参加人の要請に応じて,本件各特許発明の実施品である参加人製造に係る装置の販売先制限のない独占的通常実施権を無償で許諾するという本件許諾契約を締結した。このような経緯から,被告は,別件米国訴訟の提起時において,本件各特許の出願が冒認出願であり,本件各特許権が真実は自らの権利ではないこと,本件許諾契約において参加人による販売先の制限がないことをいずれも認識しながら,又は容易にそのことを認識し得たのに,原告に対して別件米国訴訟を 出願であり,本件各特許権が真実は自らの権利ではないこと,本件許諾契約において参加人による販売先の制限がないことをいずれも認識しながら,又は容易にそのことを認識し得たのに,原告に対して別件米国訴訟を提起したものといえる。また,別件米国訴訟に提出された証拠からは,被告は,別件米国訴訟を提起した時点で,原告がフィルム製造に用いた装置が参加人の製造したものであることを認識し,又は容易に認識し得たといえる。さらに,参加人からの被告に対する和解による別件米国訴訟の解決の申入れや,別件米国訴訟における 質問状及びそれに対する回答の提出等の別件米国訴訟提起後の経過から,被告は,別件米国訴訟の追行中においても,原告の使用する本件各装置が参加人の製造によるものであることを認識していたといえる。 しかも,別件評決及び別件米国判決は,重大な瑕疵を有する証拠に依拠して行われたものである。 以上のとおり,被告は,真実は,本件米国特許権の権利者でなく,また,本件許諾契約の内容には販売先制限が含まれないことを認識し,又は少なくとも容易に認識し得ると共に,原告が参加人の製造した本件各装置を使用していることについても別件米国訴訟の提起時に認識し,もしくは容易に認識し得,又は遅くともその追行中に認識していたにもかかわらず,別件米国訴訟を提起し,重大な瑕疵のある立証方法に基づく訴訟追行をし,その結果,誤った別件評決及び別件米国判決等がされたものである。このような被告による別件米国訴訟の提起,追行は,提訴者の主張した権利等が事実的,法律的根拠を欠き,訴えの提起が裁判制度の制度目的に照らして著しく相当性を欠くものということができ,不法行為を構成する。 ウ損害の発生,因果関係及び損害額別件米国訴訟は,本件米国特許権侵害の成否,本件許諾契約の解釈,黙示の実施 制度目的に照らして著しく相当性を欠くものということができ,不法行為を構成する。 ウ損害の発生,因果関係及び損害額別件米国訴訟は,本件米国特許権侵害の成否,本件許諾契約の解釈,黙示の実施許諾,消尽等の専門的な判断を必要とする争点を含む複雑な事案であると共に,米国の法令や訴訟手続に通暁していない韓国企業である原告にとっては,弁護士によらなければ対応が困難であった。また,被告は,別件米国訴訟において原告が支出する弁護士費用等が不法行為に係る損害になり得ることを認識,予測しながら別件米国訴訟を提起,追行したものというべきであるし,通常期待される注意を払えば,別件米国訴訟における請求に理由がないことを容易に認識することができたものである。そうすると,被告が別件米国訴訟を提起,追行し,原告に本来必要のない多額の弁護士費用等を負担させたことは,悪質性の高い不法行為といえ,原告が支出した弁護士費用全額が,別件米国訴訟の提起,追行と相当因果関係のある損害に含まれる。 原告は,別件米国訴訟が提起された2010年(平成22年)7月26日~2017年(平成29年)8月17日の間だけでも,弁護士等の費用として,別紙4(訴訟費用内訳)記載のとおり,●(省略)●を支出した。もっとも,別件米国訴訟には本件米国特許権のほか1件の特許権に基づく請求も含まれる。このため,本件米国特許権に基づく別件米国訴訟の提起等による損害は,少なくとも,上記費用の半分にあたる●(省略)●を下らない。 (被告の主張)ア否認ないし争う。 イ請求2-1に係る訴えの準拠法は加州法であるところ,加州法により被告の行為が不法行為となることの主張立証はない。 ウ仮に,別件米国訴訟の提起等が加州法上不法行為になるとしても,「当該外国法を適用すべき事実が日本法によれ 法は加州法であるところ,加州法により被告の行為が不法行為となることの主張立証はない。 ウ仮に,別件米国訴訟の提起等が加州法上不法行為になるとしても,「当該外国法を適用すべき事実が日本法によれば不法とならないときは,当該外国法に基づく損害賠償その他の処分の請求はすることができない」(通則法22条1項)。 しかし,被告による別件米国訴訟の提起等は,以下のとおり,日本法に基づく場合でも不法行為は成立しない。 すなわち,まず,本件許諾契約において,被告と参加人との間には,本件各特許発明の実施品である参加人の製造した装置を参加人から購入した者に対して,被告は本件各特許権侵害を理由とする訴訟を提起しないとの合意は,有効に成立していない。本件許諾契約は,参加人が装置の販売先を確保するという喫緊の課題に対処することのみを目的としていたことから,同契約の内容としては,被告の参加人に対する本件各特許発明の実施許諾と,当時想定された販売先又はこれに相当する者に販売する限りにおいて,同販売先に対して被告は本件各特許権を行使しないことに尽き,上記課題の解決以外の状況における当事者間の権利義務については別途協議を行うことで対応するとするのが当事者の意思であった。そうである以上,被告は,原告に対し,本件各特許権の行使としての訴訟を提起し,追行してはならないとの義務を負わない。 加えて,民事訴訟を提起した者が敗訴の確定判決を受けた場合に,当該訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは,当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者が,そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのに敢えて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと 根拠を欠くものである上,提訴者が,そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのに敢えて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られる(63年判決)。ここでいう「訴えの提起」は,訴訟の提起のみでなく訴訟追行も含意するものである。しかるに,本件の場合,別件米国訴訟においては,本件許諾契約に基づく原告による実施行為の適法性は認められない旨の判断が確定しており,別件米国訴訟における被告の主張が事実的,法律的根拠を欠くとはいえず,訴訟提起が著しく相当性を欠くともいえないし,少なくとも,被告において,その主張した権利等が事実的,法律的根拠を欠くものであることは認識し得ない。しかも,被告は,本件各製品等を調査した上で,原告が本件各特許発明を実施し,本件各特許権を侵害している可能性が高いと判断して別件米国訴訟を提起したものであり,別件米国訴訟を提起した際,原告が参加人の製造,販売した本件各装置を使用して本件各製品を製造したことを知っていたわけではない。 エ応訴に必要な弁護士費用等は,米国各州でも,日本においても,通常,損害とは見なされず,また,相当因果関係がないものとされる。日本においては,例外的に不法行為による損害賠償請求訴訟等で認められるものの,裁判実務では他の損害額の1割程度を相当因果関係の範囲として認めているに過ぎない。 (7) 本件許諾契約に基づく被告の原告に対する本件各特許権不行使債務の有無(請求2-2について。争点7)(原告及び参加人の主張)ア参加人は機械装置の製造,販売を行う者であって,自らフィルム製品を製造,販売する者ではなく,フィルム製品を製造等するのは,参加人から装置を購入した顧客である。このため,本件許諾契約においては,参 ア参加人は機械装置の製造,販売を行う者であって,自らフィルム製品を製造,販売する者ではなく,フィルム製品を製造等するのは,参加人から装置を購入した顧客である。このため,本件許諾契約においては,参加人から装置を購入した顧客 は,被告により本件各特許権を行使されることなく装置を自由に使用することができ,被告は,そのような顧客に対し本件各特許権を行使しないことが当然に内容とされている。 イ被告の原告に対する債務の発生原因(ア) 第三者のためにする契約上記アの事情により,本件許諾契約は,原告を含む参加人の顧客を受益者として,参加人と被告との間で締結された第三者のためにする契約といえる。また,原告は,本件各装置を取得した時点で,黙示的に,被告に対し,本件各特許権の不行使を求める地位を取得する旨の受益の意思表示をした。これにより,原告には,被告に対し,本件各特許権の不行使を求める権利が生じ,被告は,原告に対し,本件各特許権を行使しない義務を負うに至った。 (イ) 本件許諾契約に基づく参加人による再実施許諾上記アの事情から,本件許諾契約に基づき,参加人は,原告を含む参加人の顧客に対し,当該装置を使用してフィルムを製造,販売させることができる限りにおいて,本件各特許権につき再実施許諾する権限を有しており,被告は,この再許諾を受けた参加人の顧客に対し,本件各特許権を行使しない義務を負う。 ウにもかかわらず,被告は,原告に対し,本件米国特許権に基づき別件米国訴訟を提起等した。これは,原告に対する上記債務の不履行となる。 エ損害の発生,因果関係及び損害額については,前記(6)(原告及び参加人の主張)ウと同様である。 (被告の主張)ア本件許諾契約に基づき被告が参加人に対して負う義務は,参加人に対して本件各特許権を行使しな ,因果関係及び損害額については,前記(6)(原告及び参加人の主張)ウと同様である。 (被告の主張)ア本件許諾契約に基づき被告が参加人に対して負う義務は,参加人に対して本件各特許権を行使しない義務と,本件各特許権を参加人以外の第三者に対して許諾しない義務に尽き,これを超える義務を被告が参加人に対して負うことはなく,また,契約当事者ではない原告に対して何らかの義務を負うことはない。したがって,被告は,原告に対し,本件各特許権を行使しない義務を負っていない。 イ再実施権の不存在通常実施権者の再実施許諾権は,特許権者の利益に大きな影響を及ぼすものであるため,特許権者が通常実施権許諾契約に基づき再実施権者に対して何らかの義務等を負うのであれば,契約上,再実施権者の範囲の制限,実施権者の特許権者に対する再実施許諾先の報告義務といった事項に関する規定が当然に必要となる。しかるに,本件許諾契約には,こうした規定は存在しない。また,被告においては競合者に対して特許権を実施許諾しないというポリシーが確立されていた。しかも,フィルム事業の収益構造から,フィルムメーカーは,フィルム製品に新規投資する場合にはその製造,販売に係る自社技術を長期間独占できることが必要であり,自社技術をライセンスして競合者の参入を許すことは,およそ経済的合理性を有しない。 これらの事情等から,参加人は,本件許諾契約に基づく再実施許諾権を有しておらず,したがって,被告が参加人の顧客である原告に対し本件各特許権を行使しない義務を負うことはない。 ウ損害の発生,因果関係及び損害額については,前記(6)(被告の主張)エと同様である。 第3 当裁判所の判断 1 国際裁判管轄の有無(本件各請求について。争点1)について(1) 被告の主たる事務所は日本国内にある 係及び損害額については,前記(6)(被告の主張)エと同様である。 第3 当裁判所の判断 1 国際裁判管轄の有無(本件各請求について。争点1)について(1) 被告の主たる事務所は日本国内にあることから,本件各請求に係る訴えのいずれについても,日本の裁判所が管轄権を有する(民訴法3条の2第3項)。 もっとも,その場合でも,事案の性質,応訴による被告の負担の程度,証拠の所在地その他の事情を考慮して,日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し,又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情があると認めるときは,裁判所は,その訴えの全部又は一部を却下することができる(同法3条の9)。そこで,本件各請求に係る訴えにおいて,それぞれ,上記「特別の事情」があると認められるかについて,以下検討する。 (2) 請求1-1について ア請求1-1は,原告が本件各装置を使用して本件各製品を製造,販売したことにつき,被告が,原告に対し,本件米国特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権を有しないことの確認を請求するものである。 イ別件米国訴訟について別件米国訴訟について,前提事実,当事者間に争いのない事実,証拠(各項に掲げたもの)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(なお,本項の「原告」及び「被告」は,いずれも本件に対応させたものである。)。 (ア) 別件米国訴訟は,被告が,原告による本件各製品の米国への輸出等が本件米国特許権を含む被告の特許権を侵害するなどと主張して,損害賠償等を請求したものであり,本件の請求1-1と訴訟物は同一である(前記第2の1(6),当事者間に争いのない事実)。 (イ) 別件米国訴訟は,2010年(平成22年)7月26日に提起され,2015年(平成27年)11月19日の別 の請求1-1と訴訟物は同一である(前記第2の1(6),当事者間に争いのない事実)。 (イ) 別件米国訴訟は,2010年(平成22年)7月26日に提起され,2015年(平成27年)11月19日の別件評決を経て,2017年(平成29年)5月24日,加州裁判所により,本件各製品につき本件米国特許権の侵害を認めると共に,原告等に対し,被告に対する損害賠償金の支払を命じることなどを内容とする第1審判決(別件米国判決)がされた。これに対し,原告等は,同年12月13日に控訴を提起した(以上につき,前記第2の1(6))。 別件米国訴訟は,本件訴えの提起までに,上記のほか,より具体的には以下のような手続等を含む経過を辿った。 a 被告の第1回質問状に対する原告等の2013年(平成25年)5月20日付け回答書の提出(甲40)上記回答書は,本件米国特許に関する黙示のライセンスの積極的抗弁を裏付ける全ての事実の詳細な記載を求める被告の質問に対し,原告等が,被告と参加人の本件許諾契約の締結により,被告は,参加人に対し,地理的及び時的制限のないグローバルポートフォリオ中の特許権の全範囲に及ぶ独占的ライセンスを付与し,参加人は,原告のフィルム製造ラインを製造した旨等を主張するものである。 b 原告等の第2回質問状に対する被告の同年8月30日付け補足回答書の提出(甲31,41)上記回答書は,被疑製品及び被疑プロセスについて,侵害されたと主張する特許の番号及びクレーム並びに主張される侵害の種類の特定等を求める原告等の質問に対し,被告が,本件米国特許によりクレームされた装置を原告が購入し,使用した旨等を主張するものである。 cP1作成の2014年(平成26年)6月9日付け宣誓供述書の提出(甲33)P1は,被告の元従業員であり,本件米国特許に クレームされた装置を原告が購入し,使用した旨等を主張するものである。 cP1作成の2014年(平成26年)6月9日付け宣誓供述書の提出(甲33)P1は,被告の元従業員であり,本件米国特許に係る発明の発明者とされる2名のうちの1名である。上記宣誓供述書は,発明に至る経緯等の説明をその内容とする。 dP2作成の同日付け反論専門家意見書の提出(甲23)上記意見書(以下「P2意見書」という。)は,日本及び米国ニューヨーク州で弁護士業務を行う資格を有する弁護士であり,別件米国訴訟における被告代理人に雇われた者であるP2の作成に係る本件許諾契約の解釈等に関する専門家意見書である。同意見書には,被告が,本件許諾契約に基づき参加人にライセンスを許諾することによって,参加人により製造された製品の全ての購入者(被告の競合者を含む。)に対して黙示的にライセンスを許諾し,ライセンスの対象とされる特許権(patentrightssubjectofthelicense)をそれら購入者が適切と考える方法で実施する権利を与えるとの意図を有していたと結論付けさせるような明示的な文言は本件許諾契約にはなく,また,外的情報もないことを指摘する旨等が記載されている。 なお,P2意見書には,原告等の側の専門家であるP3弁護士の見解についても言及がある。 e 略式判決を求める申立て又は代替的に一部略式判決を求める申立てを支持する論点と典拠に関する原告等の同月30日付け覚書の提出(乙37) 上記覚書は,原告等が,原告等の実施する製法が本件米国特許に係るクレーム文言を充足しないこと,消尽及びライセンスにより被告の本件米国特許権侵害の主張は禁じられている旨等を主張するものである。 f 原告等の略式判決を求める申立て又は代替的に一部略式判決を求め るクレーム文言を充足しないこと,消尽及びライセンスにより被告の本件米国特許権侵害の主張は禁じられている旨等を主張するものである。 f 原告等の略式判決を求める申立て又は代替的に一部略式判決を求める申立てに反対する論点と典拠に関する被告の同年7月7日付け覚書の提出(乙3)上記覚書は,原告等の実施する製法が本件米国特許権を侵害しないという略式判決並びに本件米国特許に係る消尽及び黙示のライセンスの抗弁に基づく略式判決等を原告等が得ることはできない旨等を被告が主張するものである。 なお,上記覚書には,P2意見書及びP3弁護士の見解に関する言及がある。 g 契約解釈の争点に関する補充的主張を求める加州裁判所の2015年(平成27年)2月3日付け命令(乙4)上記文書は,加州裁判所が,原告等の略式判決を求める申立ての審理をした後に,本件米国特許権に係る請求は消尽及び黙示のライセンスの両理論により禁止されるとする原告等の主張について,本件許諾契約の解釈により左右されるとして,以下の各争点に関する補充的主張(日本法の専門家による専門家意見を含む。)を両当事者に要請するものである。 ・契約の規定が明確である場合に日本法は外部証拠の考慮を認めているか否か・日本法上,本件許諾契約の「本特許権についてその範囲全部にわたる」との文言はどのように解釈されるか・問題となっているライセンスの類型は上記文言の解釈に影響するか否かh 契約解釈の争点に関する被告の同月17日付け補充的第1主張書面の提出(乙5)上記主張書面は,加州裁判所の上記命令書(上記g)に対する回答として被告が提出したものである。被告は,その中で,P2意見書のほか,被告従業員であるP4の同月16日付け宣誓供述書(甲38),P2弁護士の同月17日付け補足意見書(甲24)及びP1の に対する回答として被告が提出したものである。被告は,その中で,P2意見書のほか,被告従業員であるP4の同月16日付け宣誓供述書(甲38),P2弁護士の同月17日付け補足意見書(甲24)及びP1の同月15日付け宣誓供述書(甲32),P3弁護士による 専門家意見の各内容に言及している。 iP2弁護士の同月23日付け第2補足意見書(甲25)上記意見書は,P3弁護士の同月17日付け補足専門家意見書及びP5の同月13日付け宣誓供述書を検討した上で,これらに対するP2弁護士の見解等を述べたものである。 j 加州裁判所の同年4月10日付け命令(乙6)上記命令は,原告等による略式判決を求める申立ての一部認容,一部棄却等を主文とするものである。上記命令において,加州裁判所は,本件米国特許権の非侵害に関する原告等の申立てを棄却するとともに,消尽(参加人に被疑装置の販売をライセンスすることにより,当該被疑装置につき被告の特許権は全て消尽したため,被疑装置及びその使用は被告の特許による独占の範囲内にない,とする主張)及び黙示のライセンス(参加人からの装置購入者である原告は,被告が参加人に付与した明示的なライセンスに基づき製造,販売された被疑製品を使用し得る適法な黙示のライセンスを有する,とする主張)に関する原告等の申立ても棄却している。 kP6の同年7月6日付け宣誓供述書の提出(甲5)P6は,参加人の元従業員である。上記宣誓供述書には,本件各特許発明はP6が着想し,被告に開示したものであることなどが記載されている。 lP7の同月6日付け宣誓供述書の提出(甲11)P7は,参加人の元従業員である。上記宣誓供述書には,本件許諾契約の締結に至る参加人と被告との交渉の経緯等が記載されている。 mP1及びP4の証言を証拠排除すべきとの原 誓供述書の提出(甲11)P7は,参加人の元従業員である。上記宣誓供述書には,本件許諾契約の締結に至る参加人と被告との交渉の経緯等が記載されている。 mP1及びP4の証言を証拠排除すべきとの原告等の申立てに対する被告の同年9月14日付け反論の提出(甲21)上記反論は,原告等が,P1の証言は伝聞に基づくものであり,P1は参加人のライセンス又はその交渉に関する個人的知識を欠くこと,P4は,競合者には特許をライセンスしないという,関連する時期における被告のポリシーに関する個人的知識を欠くことなどを指摘して,両名の証言の証拠排除を求める申立てをしたのに 対し,被告が,これに反論したものである。 n 同年11月3日実施の陪審公判別件米国訴訟の加州裁判所による陪審公判は,同年11月3日から実施され,被告の証人としてP4及びP1の証人尋問等が行われた(P1の証言記録が甲34,35,P4の証言記録が甲36,37である。)。その際,P1は,本件各特許発明に至る経緯や参加人に対するライセンスに関連する事項等について証言し,P4は,参加人に対するライセンスに関連する事項等について証言した。 なお,原告等及び被告は,同年12月1日,公判の間にビデオの再生等がされた宣誓供述記録の一部として,同年11月13日の公判で再生された被告従業員のP8の宣誓供述ビデオの一部に対応する記録及び同月17日の公判で再生されたP6の宣誓供述ビデオの一部に対応する記録等を提出した(甲30,乙31)。 このうち,P8のもの(甲30)は,2011年(平成23年)12月14日及び2014年(平成26年)3月26日に実施された同人の宣誓供述が記録されているものである。その中で,P8は,別件米国訴訟の提起の決定に自身が関与したこと,2003年の時点で少なくとも2人以上の 及び2014年(平成26年)3月26日に実施された同人の宣誓供述が記録されているものである。その中で,P8は,別件米国訴訟の提起の決定に自身が関与したこと,2003年の時点で少なくとも2人以上の被告従業員が被告の設計に驚くほど似た装置がSKC 等に供給されることを知っていたことなどを供述している。 他方,P6のもの(乙31)は,2015年(平成27年)10月9日及び同月10日に実施された同人の宣誓供述が記録されているものである。その中で,P6は,本件許諾契約に至る経緯等について供述している。 o 加州裁判所の2015年11月18日付け陪審説示(乙7)加州裁判所は,上記説示において,陪審に対し,原告等が本件米国特許権等を侵害したか否か等についての判断を求めると共に(INSTRUCTIONNO.21),原告等による消尽の抗弁の判断の方法等について説明し(INSTRUCTIONNO.31),また,本件許諾契約の意味が被告と原告等との間で争われており,その契約解釈に当たっては,契約文言と共に当事者の意図や契約締結に至った状況をも考慮し得る旨等を説明している(INSTRUCTIONNO.32)。 p 被告の2016年(平成28年)1月13日付け公判後準備書面(甲22)上記準備書面は,原告等が主張する黙示のライセンスの抗弁等につき,被告に有利で原告等に不利な判決を言い渡すべきである旨等を被告が主張するものである。 なお,その記載から,原告等は,2015年(平成27年)11月30日,黙示のライセンスの抗弁等に係る裁判官の決定に関する公判後準備書面を既に提出したことがうかがわれる。 q 加州裁判所の2016(平成28年)8月2日付け命令(乙8)上記命令は,原告等による法律問題としての判決又は代替的に誘引侵害に係る新たな審 公判後準備書面を既に提出したことがうかがわれる。 q 加州裁判所の2016(平成28年)8月2日付け命令(乙8)上記命令は,原告等による法律問題としての判決又は代替的に誘引侵害に係る新たな審理を求める申立ての棄却等を主文とするものである。その中で,加州裁判所は,被告が参加人に許諾したライセンスが,被告の競合者らに対するフィルムの設備の販売を参加人に認めていなかったことを参加人は1993年(平成5年)当時知っていたと陪審が納得したと推察されるところ,その陪審の結論と同じ結論に達するであろうとして,黙示のライセンスの抗弁は被告の請求を妨げないと認定する旨の判断を示している。 r 原告等の加州裁判所に対する2017年(平成29年)6月22日付け法律問題としての判決又は代替的に再審理を求める申立て(甲18)とこれに対する加州裁判所の同年12月8日付け棄却命令(甲19)s 被告の2018年(平成30年)5月17日付け主張書面の提出(乙9)上記書面は,別件米国訴訟の控訴審を担当したCAFC 宛てのものであり,本件許諾契約に基づく参加人のライセンスは,フィルム製造設備を被告の非競合者に対してのみ販売することを参加人に許可する目的で締結されたものであるなどとし,黙示のライセンスはなかったとする加州裁判所の認定を維持すべき旨等を主張するものである。 (ウ) 本件訴えは,上記控訴提起の後である平成30年6月7日に提起されたものである。なお,別件米国判決は,CAFC が,本件訴えの係属中である2019年(平成31年)3月15日にこれを支持する旨の判決をし,同年6月18日,原告 等による再審理の申立て等を認めなかった後に,確定した(裁判所に顕著な事実,前記第2の1(6))。 ウ検討(ア) 前記イ(ア)のとおり,請求1-1は,別件 し,同年6月18日,原告 等による再審理の申立て等を認めなかった後に,確定した(裁判所に顕著な事実,前記第2の1(6))。 ウ検討(ア) 前記イ(ア)のとおり,請求1-1は,別件米国訴訟と同一の訴訟物に関するものである。 また,本件において,本件各装置が本件米国特許に係る発明の実施品であること,本件各装置が参加人からSKC 等に販売されたこと及び原告が本件各装置を使用して本件各製品を製造したことについては,当事者間に争いはない。本件での主要な争点は,本件許諾契約により参加人が許諾された本件実施権の範囲,すなわち,参加人の販売先に関する制限の存否といった本件許諾契約の解釈である。他方,別件米国訴訟においても,その経過(前記イ(イ))から,消尽及び黙示のライセンスの抗弁は主要な争点として位置付けられ,本件許諾契約の解釈につき,日本法の専門家の各意見書及び関係者の供述書並びにそれを踏まえた主張の提出,陪審公判での証人尋問といった形で,原告等と被告とが主張立証を重ね,陪審及び加州裁判所の判断の対象となっている。その意味で,本件と別件米国訴訟とは,争点を共通にするものといえる。 しかも,別件米国訴訟の提起は平成22年7月であり,本件の訴え提起までの約8年間,こうした主張立証が行われ,その結果として,別件評決及び加州裁判所の別件米国判決に至ったものである。なお,この間,原告が日本において請求1-1に係る訴えのような訴訟を提起することを妨げる具体的事情があったことはうかがわれない。 これらの事情を総合的に考慮すると,別件米国訴訟につき加州裁判所の別件米国判決がされるまでは,原告は,日本において請求1-1に係る訴えのような訴訟を提起する考えはなく,別件米国判決を受けたことを契機に,その結論を覆すべく請求1-1に係る訴えを提起し 加州裁判所の別件米国判決がされるまでは,原告は,日本において請求1-1に係る訴えのような訴訟を提起する考えはなく,別件米国判決を受けたことを契機に,その結論を覆すべく請求1-1に係る訴えを提起したものと理解される(別件米国判決の基礎となった証拠方法の重大な瑕疵等を度々指摘する原告の主張からも,原告のこのような意図が うかがわれる。)。他方,請求1-1に係る本件の訴えに応訴すべきものとした場合,被告は,時期を異にして別件米国訴訟と共通する主張立証活動を重ねて強いられることとなるのみならず,別件米国判決の結論を本件において覆そうとする以上,原告は別件米国訴訟では行わなかった主張立証を追加的に行う蓋然性が高いと見られるところ,これに対する対応を強いられることで,被告にとっては,更なる応訴の負担を新たに生じる蓋然性も高いといえる。 そうすると,本件許諾契約はいずれも日本法人である被告と参加人との間で締結されたものであり,関連する証拠も,多くは日本語で作成されていること又は日本語を解する者である蓋然性が高く,その所在も多くは日本国内にあると見られることを考慮しても,請求1-1に係る訴えについては,日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害する特別の事情(民訴法3条の9)があると認められる。 (イ) これに対し,原告は,日本の裁判所で審理をすることが必要かつ適切であること,別件米国訴訟の重複・蒸し返しに当たらないこと,別件米国判決は日本において承認されないことなどを指摘して,特別の事情があるとはいえない旨主張する。 しかし,請求1-1に係る訴えに関する限り,日本の裁判所で審理をすることが必要かつ適切であるとは必ずしもいえないこと,別件米国訴訟の蒸し返しに当たると見られることは,上記のとおりである。別件関連訴訟が係属して 求1-1に係る訴えに関する限り,日本の裁判所で審理をすることが必要かつ適切であるとは必ずしもいえないこと,別件米国訴訟の蒸し返しに当たると見られることは,上記のとおりである。別件関連訴訟が係属しているといっても,請求1-1に係る訴えとは当事者及び訴訟物を異にする別の事件である以上,その主張立証の負担をもって本件における主張立証の負担を無視ないし軽視し得ることにはならない。 また,別件米国判決が日本において承認されないとする根拠として,原告は,別件米国判決が重大な瑕疵のある証拠に依拠するものであることを指摘する。しかし,そのような誤りは本来的には米国の訴訟手続を通じて是正されるべきものであるところ,かえって,別件米国判決は,CAFC においても承認され,確定している。このことと,再審事由(民訴法338条)に該当するような具体的な事情もないこと に鑑みると,日本法に照らしても,原告の上記指摘は別件評決及び別件米国判決の依拠する証拠評価に対する不満をいうにすぎず,これをもって外国の確定判決の効力が認められる要件である「判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと」(民訴法118条3号)を欠くとはいえない。 さらに,原告は,別件米国判決が承認された場合に,別件関連訴訟につき参加人の被告に対する損害賠償請求等の判決が確定すると両者に矛盾が生じることなどを指摘して,その点からも別件米国判決は承認されるべきものではないとする。しかし,別件関連訴訟が原告の主張するとおりに帰結するか否かは,請求1-1に係る訴えの提起の時点では不明というほかない。この点を措くとしても,別件関連訴訟は,本件とも別件米国訴訟とも当事者及び訴訟物を異にするものであるから,その判決の効力は原告と被告との関係に及ぶものではない。 その他原 点では不明というほかない。この点を措くとしても,別件関連訴訟は,本件とも別件米国訴訟とも当事者及び訴訟物を異にするものであるから,その判決の効力は原告と被告との関係に及ぶものではない。 その他原告が縷々指摘する点を考慮しても,この点に関する原告の主張は採用できない。 (ウ) 以上のとおり,請求1-1に係る訴えについては,日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害する特別の事情があると認められるから,これに係る訴えを却下することとする。 (3) 請求1-2に係る訴えについて請求1-2は,被告の原告に対する本件日本特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権の不存在確認請求である。同請求に係る訴えは,原告が韓国で本件各装置を使用して本件各製品を製造した点で国際的要素はあるものの,侵害の対象となる法的利益が本件日本特許権であること等から,事案の性質,応訴による被告の負担の程度,証拠の所在地その他の事情を考慮しても,「特別の事情」(民訴法3条の9)があるとは認められない。 これに対し,被告は,請求1-2についても,別件米国訴訟でいう黙示のライセンスの抗弁の成否と争点が共通することなどを指摘して,特別の事情がある旨を主張する。しかし,請求1-2に係る訴えと別件米国訴訟とは訴訟物を異にすること 等に鑑みると,上記のとおり,特別の事情があるとは認められない。この点に関する被告の主張は採用できない。 したがって,請求1-2に係る訴えについては,日本の裁判所が管轄権を有する。 (4) 請求2に係る訴えについて請求2は,被告による別件米国訴訟の提起及び追行につき,原告の被告に対する不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償を請求するものである。同請求に係る訴えは,別件米国訴訟の提起及び追行が不法行為又は債務不履行とされる点で る別件米国訴訟の提起及び追行につき,原告の被告に対する不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償を請求するものである。同請求に係る訴えは,別件米国訴訟の提起及び追行が不法行為又は債務不履行とされる点で国際的要素を含むものの,別件米国訴訟とは訴訟物を異にし,請求原因事実が異なる上,いずれも日本法人である被告と参加人との間の本件許諾契約の解釈が争点となること等の点から,事案の性質,応訴による被告の負担の程度,証拠の所在地その他の事情を考慮しても,「特別の事情」(民訴法3条の9)があるとは認められない。 これに対し,被告は,請求2についても別件米国訴訟で判断された事項と共通の事項を審理することとなることなどを指摘して,特別の事情がある旨を主張する。 しかし,上記のとおり,請求2に係る訴えと別件米国訴訟とは訴訟物を異にすること等に鑑みると,上記のとおり,特別の事情があるとは認められない。この点に関する被告の主張は採用できない。 2 確認の利益の有無(請求1-2について。争点3)確認の訴は,現に原告の有する権利又は法律的地位に危険又は不安が存在し,これを除去するため被告に対し確認判決を得ることが必要かつ適切な場合に限り許される(最高裁昭和30年12月26日第三小法廷判決・民集9巻14号2082頁参照)。 本件においては,前記(第2の1(5))のとおり,原告は,平成20年4月頃以降,本件各装置を韓国で使用して本件各製品を製造し,これを日本に輸出して日本の顧客に販売するとともに,米国にも輸出するなどしたものである。このうち,米国への輸出等の行為につき別件米国訴訟が提起されたことに鑑みると,日本の顧客に対する販売につき,被告が,原告に対し,本件日本特許権侵害の不法行為である として損害賠償請求をする可能性それ自体は存在するものと考えられる 米国訴訟が提起されたことに鑑みると,日本の顧客に対する販売につき,被告が,原告に対し,本件日本特許権侵害の不法行為である として損害賠償請求をする可能性それ自体は存在するものと考えられる。 もっとも,被告は,原告の上記行為時から現在に至るまで,上記行為につき本件日本特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権を行使するなどといった趣旨の権利侵害警告をするなど,同請求権を原告に対して行使する意思をうかがわせる具体的な行動を取っていない。むしろ,被告は,本件の訴え提起にもかかわらず,平成31年4月18日実施に係る弁論準備手続期日において,原告に対して本件日本特許権を行使する予定はない旨を陳述した(当事者間に争いのない事実)。 しかも,本件日本特許は平成元年3月14日を出願日とするものであり,既にその存続期間を満了し,消滅している。このため,被告の原告に対する本件日本特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権は,仮に成立していたとしても,時効中断事由等のない限り,現在はその全てが消滅時効期間を経過している蓋然性が極めて高いと見られる。時効中断事由等の存否は定かでないとしても,このような事情は,実際上,被告による上記請求権行使の可能性を著しく低減させるものといえる。 以上の事情を総合的に考慮すると,被告による別件米国訴訟の提起という事情を踏まえても,今後,被告が原告に対して原告の日本の顧客に対する本件各装置の販売等につき本件日本特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求を行う可能性は,実際上ないか著しく乏しいと見るのが相当である。そうすると,本件は,現に原告の法律的地位に不安又は危険が存在し,これを除去するため被告に対し確認判決を得ることが必要かつ適切な場合と認めることはできない。これに反する原告の主張は採用できない。 したがって, 件は,現に原告の法律的地位に不安又は危険が存在し,これを除去するため被告に対し確認判決を得ることが必要かつ適切な場合と認めることはできない。これに反する原告の主張は採用できない。 したがって,請求1-2に係る訴えは,確認の利益を欠く不適法なものであることから,これを却下する。 3 訴訟物の特定の有無(請求2について。争点4)請求2は,前記のとおり,被告による別件米国訴訟の提起及び追行につき,原告の被告に対する不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償を請求するものであるところ,不法行為ないし債務不履行とされる被告の行為,侵害されたとされる原告の 法的利益ないし不履行とされる被告の債務等に係る原告の主張によれば,請求2に係る訴訟物の特定に欠けるところはない。この点に関する被告の主張は採用できない。 したがって,訴訟物の特定という観点からは,請求2に係る訴えは適法である。 4 請求2-1に係る訴えの準拠法(争点2)並びに別件米国訴訟の提起及び追行の違法性等(争点6)(1) 日本法に基づく不法行為の成否ア不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は,原則として加害行為の結果発生地の法による(通則法17条本文)。もっとも,不法行為について外国法によるべき場合において,当該外国法を適用すべき事実が日本法によれば不法とならないときは,当該外国法に基づく損害賠償その他の処分の請求は,することができない(同法22条1項)。このため,請求2-1に係る訴えの準拠法をいずれの地の法と考えるのであれ,被告による別件米国訴訟の提起及び追行につき日本法により不法行為といえる必要があることになる。そこで,以下,この点につきまず検討する。 イ法的紛争の当事者が当該紛争の終局的解決を裁判所に求め得るという裁判を受ける権利は最大限尊重されなけれ 法により不法行為といえる必要があることになる。そこで,以下,この点につきまず検討する。 イ法的紛争の当事者が当該紛争の終局的解決を裁判所に求め得るという裁判を受ける権利は最大限尊重されなければならないから,訴えの提起につき不法行為の成否を判断するに当たっては,裁判制度の利用を不当に制限する結果とならないよう慎重な配慮が必要とされる。このため,法的紛争の解決を求めて訴えを提起することは原則として正当な行為であり,提訴者が敗訴の確定判決を受けたことのみによって,直ちに当該訴えの提起をもって違法ということはできない。他方,訴えを提起された者にとっては,応訴を強いられ,経済的,精神的負担を余儀なくされるのであるから,応訴者に不当な負担を強いる結果を招くような訴えの提起は,違法とされることがあるのもやむをえない。 ここで,訴えを提起する際に,提訴者において,自己の主張しようとする権利等の事実的,法律的根拠につき,高度の調査,検討が要請されるものと解するならば, 裁判制度の自由な利用が著しく阻害される結果となり妥当でない。 したがって,民事訴訟を提起した者が敗訴の確定判決を受けた場合に,当該訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは,当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者が,そのことを知りながら,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのに敢えて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られる(63年判決)。 また,訴えを提起して裁判制度を通じた紛争解決を求めた後もなお,提訴者において自己の主張する権利等の事実的,法律的根拠につき高度の調査,検討を要請されるものと解するならば,やはり裁判制度の自由な利用 また,訴えを提起して裁判制度を通じた紛争解決を求めた後もなお,提訴者において自己の主張する権利等の事実的,法律的根拠につき高度の調査,検討を要請されるものと解するならば,やはり裁判制度の自由な利用が著しく阻害される結果となりかねない。そうである以上,訴え提起後の訴訟追行の違法性についても,訴え提起の場合と同様に考えるのが相当である。 ウ本件の場合,本件各製品につき本件米国特許権侵害を認めると共に,原告等に対し,被告に対する損害賠償金の支払を命じることなどを内容とする別件米国判決が既に確定している。このように別件米国訴訟が被告勝訴の確定判決をもって終局した以上,少なくとも,提訴者である被告が,その別件米国訴訟で主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものであることを知り,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのに敢えて訴えを提起及び追行したということはできない。その他別件米国訴訟の提起及び追行が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと見るべき事情は見当たらない。 したがって,被告による別件米国訴訟の提起及び追行のいずれをもっても,原告に対する違法な行為ということはできない。 エこれに対し,原告は,本件と63年判決とは事案を異にすること,63年判決の判断枠組によったとしても,なお被告による別件米国訴訟の提起及び追行は違法とされるべきことを主張する。 しかし,本件においても63年判決の判断枠組に基づき判断すべきことは,上記 のとおりである。また,原告が縷々指摘する事情は,畢竟,別件米国訴訟における自己の主張が正しいことを前提として,陪審及び裁判所の証拠評価及び判断の誤りを論うものに過ぎない。 その他原告が縷々指摘する事情を考慮しても,この点に関する原告の主張は採用できない。 オ以上より, の主張が正しいことを前提として,陪審及び裁判所の証拠評価及び判断の誤りを論うものに過ぎない。 その他原告が縷々指摘する事情を考慮しても,この点に関する原告の主張は採用できない。 オ以上より,日本法によれば,被告による別件米国訴訟の提起及び追行をもって,原告に対する不法行為ということはできない。 (2) 小括したがって,請求2-1に係る訴えの準拠法を日本法とした場合,被告による別件米国訴訟の提起及び追行につき,原告は,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求権を有しない。また,準拠法をいずれかの外国法とした場合も,日本法によれば不法とならない以上,当該外国法に基づく損害賠償その他の処分の請求をすることはできない(通則法22条1項)。 以上より,請求2-1に係る訴えの準拠法をいずれの地と解したとしても,請求2-1は理由がない。 5 請求2-2に係る訴えの準拠法(争点2)及び本件許諾契約に基づく被告の原告に対する本件各特許権不行使債務の有無(争点7)(1) 準拠法(争点2)について本件許諾契約には,その成立及び効力に係る準拠法を明示的に定めた規定はない。 もっとも,本件許諾契約により参加人に対する独占的通常実施権の許諾を行う被告は,日本に主たる事務所を有する日本法人であることなどを踏まえれば,本件許諾契約の効力の準拠法は,その最密接関係地である日本法とするのが相当である(通則法8条2項,1項)。これに反する被告の主張は採用できない。 (2) 本件許諾契約に基づく被告の原告に対する本件各特許権不行使債務の有無(争点7)について原告は,本件許諾契約が第三者のためにする契約であること又は参加人に本件各 特許権の再実施許諾の権限を付与するものであることを根拠として,被告は,原告に対し,本件各特許権を行使しない義務を 原告は,本件許諾契約が第三者のためにする契約であること又は参加人に本件各 特許権の再実施許諾の権限を付与するものであることを根拠として,被告は,原告に対し,本件各特許権を行使しない義務を負う旨を主張する。 しかし,本件契約書(甲1)によれば,本件許諾契約は,被告が,本件各特許権等につき,その範囲全部にわたる独占的通常実施権を参加人に許諾すること(本件契約書1条)を主要な内容とするものであり,参加人が本件各特許発明を実施して製造した機械又は装置の譲渡等を受けた第三者と被告との法律関係に関する具体的な規定は,本件契約書には見当たらない。また,本件契約書上,本件許諾契約に定めのない事項及び契約解釈に疑義が生じた場合については,その都度被告と参加人とが協議の上でこれを定めることとされているが(10条),本件各装置の参加人からの譲受人である原告と被告との法律関係につき,被告と参加人とが協議を行い,何らかの合意に至ったこともない(弁論の全趣旨)。 加えて,本件許諾契約により,被告は,平成5年12月の契約締結から本件各特許権の消滅まで(本件契約書9条)という長期間にわたり参加人の独占的通常実施権を許諾することになる。しかも,本件各特許発明の実施の有無は,その実施により製造されたフィルム製品から容易には判断し得ないことがうかがわれる。そうすると,特許権者である被告にとっては,参加人から本件各特許発明の実施品である装置の購入者に関する情報を得られない限り,本件各特許権の行使には実際上著しく困難を伴うであろうことが容易に推察される。これらの事情等に鑑みると,合成樹脂,電子材料及び電子部品等の製造,販売等を主たる事業とする被告にとって,参加人が本件各特許発明を実施して製造した装置の譲渡を受けた第三者に対して本件各特許権を行使し得ないことは,その ると,合成樹脂,電子材料及び電子部品等の製造,販売等を主たる事業とする被告にとって,参加人が本件各特許発明を実施して製造した装置の譲渡を受けた第三者に対して本件各特許権を行使し得ないことは,その事業上の収益に重大な影響を及ぼす危険性があると見られる。そうである以上,本件許諾契約の締結に際し,上記第三者の存在及びこれに対する本件各特許権の不行使が想定されているのであれば,本件許諾契約の内容として又はこれとは別個の合意として,参加人による譲渡が許容される第三者の範囲や参加人の被告に対する譲受人に関する事項の報告義務のように,被告が予想外の事業上の不利益を受けることを回避すること等を目的とする具体的な 定めを明示的に設けることは,必要不可欠かつ合理的と考えられる。にもかかわらず,本件許諾契約にそのような定めはなく,また,他の明示的な合意もなく,さらに,黙示的にであれ,上記のような事項について当事者間に何らかの取決めがあったことをうかがわせるに足りる具体的な事情も見当たらない。 そうすると,参加人が機械装置の製造業者であること(前記第2の1(1)イ)などから,本件許諾契約の当時,参加人が本件各特許発明を実施して製造した装置が被告以外の第三者に譲渡等されることが契約当事者間で予想されたとしても,少なくとも当該第三者と被告との法律関係については,本件許諾契約によって何ら定められていないものと理解するほかない。 したがって,本件許諾契約につき,第三者のためにする契約と理解することも,参加人に対し再実施許諾の権限を付与するものと理解することもできない。そうである以上,被告は,本件許諾契約に基づき,原告に対し,本件各特許権を行使しない義務を負わず,その不履行はあり得ない。これに反する原告の主張はいずれも採用できない。請求2-2は理由がない ない。そうである以上,被告は,本件許諾契約に基づき,原告に対し,本件各特許権を行使しない義務を負わず,その不履行はあり得ない。これに反する原告の主張はいずれも採用できない。請求2-2は理由がない。 第4 結論よって,原告の請求のうち,請求1-1に係る訴えは民訴法3条の9に基づきこれを却下し,請求1-2に係る訴えは訴えの利益を欠き不適法であるから,これを却下し,請求2はいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 杉浦正樹 裁判官杉浦一輝 裁判官布目真利子 別紙当事者目録 原告ピーアイアドバンストマテリアルズカンパニーリミテッド同訴訟代理人弁護士門口正人同上田裕康同城山康文同後藤未来同塩越希 被告株式会社カネカ同訴訟代理人弁護士平野惠稔同黒田佑輝同吉村幸祐同渡辺洋 補助参加人株式会社ヒラノテクシード 平野惠稔同黒田佑輝同吉村幸祐同渡辺洋 補助参加人株式会社ヒラノテクシード同訴訟代理人弁護士中井康之同青海利之同飯島奈絵

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