平成18(行ウ)668 特別区民税等特別徴収額決定通知取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年5月15日 東京地方裁判所 租税
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判決文本文4,730 文字)

- 1 -主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求処分行政庁が平成18年5月11日付けで原告に対してした平成18年度の特別区民税及び都民税特別徴収額の賦課決定を取り消す。 第2事案の概要本件は,住民税(特別区民税及び都民税)の賦課決定を受けた原告が,賦課期日には外国に滞在しており日本に住所はなかったから原告に住民税を課するのは違法であると主張して,その取消しを求める事案である。 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)原告の身上及び渡米前の状況(甲2の1~4,乙1)原告はAに勤務する国家公務員である。 原告は,後記のとおり渡米するまで,東京都文京区内の本判決原告肩書地(以下「原告肩書地」という)を住民票上の住所とし,実際にも妻ととも。 にここに住んでいた。 なお,原告の妻も国家公務員である。 (2)渡米(甲5の2,乙1,3)原告は,勤務先から長期赴任命令を受け,平成17年3月27日から平成18年3月16日までの予定で米国に出張し,シカゴにある法科大学院の修士課程を履修することとなった。 原告は,平成17年3月23日,処分行政庁に対し,同月27日に米国へ転出するとの届出をし,そのとおり同日に離日して米国に赴いたが,途中で赴任期間の延長命令があり,予定より少し後の平成18年3月26日に帰国- 2 -した。この間,すなわち平成17年3月28日から平成18年3月25日まで,原告は米国に滞在していた。 なお,原告の妻は従来どおり原告肩書地に住んでいた。 (3)帰国後の状況原告は,帰国後,予定どおりAの勤務に復帰し,再び原告肩書地において妻と同居し,平成18年3月28日,処分行政庁に対し,同月26日に原告肩書 従来どおり原告肩書地に住んでいた。 (3)帰国後の状況原告は,帰国後,予定どおりAの勤務に復帰し,再び原告肩書地において妻と同居し,平成18年3月28日,処分行政庁に対し,同月26日に原告肩書地に転入したとの届出をした。 (4)特別区民税及び都民税特別徴収額の賦課決定(甲2の3,乙2)処分行政庁税務課職員は,平成18年度の特別区民税及び都民税の賦課決定をするに当たり,賦課期日である平成18年1月1日において原告が文京区の住民基本台帳に記録されていないことを確認したが,住所が原告肩書地にあるとした原告の給与支払報告書がAから提出されたため,同年2月28日,同省に電話で事情を問い合わせた。同省職員の説明によれば,原告は職務により出国しており,同年3月16日に帰国する予定とのことであった。 処分行政庁は,以上の事情を踏まえ,平成18年1月1日における原告の住所は文京区内の原告肩書地であると認定し,同年5月11日,原告に対する平成18年度の特別区民税及び都民税特別徴収額の賦課決定をし以下本(「件処分」という,これをそのころAを経由して原告に通知した。 。)(5)不服申立て(甲1の1~3)原告は,平成18年6月19日,本件処分につき処分行政庁に対し異議申立てをしたが,処分行政庁は,同年7月13日,これを棄却する旨決定し,その決定書の謄本を原告に送達した。 争点 平成18年1月1日における原告の住所は原告肩書地であるとして行われた本件処分は適法か。 (1)被告の主張- 3 -原告は,本件処分の賦課期日である平成18年1月1日において文京区の住民基本台帳に記録されていなかったものの,①文京区内の原告肩書地を離れ米国で暮らした期間が1年に満たないこと,②米国での生活の目的であった法科大学院修士課程は1年に満たない期間に限定された 京区の住民基本台帳に記録されていなかったものの,①文京区内の原告肩書地を離れ米国で暮らした期間が1年に満たないこと,②米国での生活の目的であった法科大学院修士課程は1年に満たない期間に限定されたもので,これを修了すれば再び勤務先であるAに復帰することが予定されていたこと,③原告は,帰国後,出国前と同じ原告肩書地に転入しており,また,原告肩書地には原告が渡米中も妻が継続して居住していたことからすると,平成18年1月1日現在の原告の住所は原告肩書地にあったというべきである。 (2)原告の主張平成18年1月1日において,原告は文京区の住民基本台帳に記録されておらず,客観的居住の事実からも,原告の住所は米国にあり,原告肩書地にはなかった。米国滞在中,原告が米国内の居住地を住所と認識していたことは,出国前に転出の届出をして住民票が除かれたこと,シカゴ総領事館に在留届及び変更(転居)届を提出したこと,在外選挙人名簿登録をしたこと,長期の現地滞在が必要とされる修士課程に籍を置いていたこと等によって明らかである。勤務先のAも同様の認識であった。また,原告の妻は原告以上の所得を得ており,原告と妻は経済的に相互に独立した関係にある。妻は,原告の扶養親族ではなく,原告と生計を一にする配偶者でもないし,原告と妻には,子供,老親等の扶養家族もない。原告が帰国後原告肩書地に転入したのは,夫婦として当然のこととして同居を回復しただけであり,渡米中に従前の住所を維持したものではない。以上のとおり,平成18年1月1日において,原告の住所は米国にあり,原告肩書地にはなかった。 第3争点に対する判断 外国滞在者の住所の認定(1)本件で問題となる「住所」の概念は,私法上の何らかの取引とかかわるものではないから,必ずしも民法上の住所概念に依拠する必要はなく,課税 た。 第3争点に対する判断 外国滞在者の住所の認定(1)本件で問題となる「住所」の概念は,私法上の何らかの取引とかかわるものではないから,必ずしも民法上の住所概念に依拠する必要はなく,課税- 4 -の前提として「住所」を規定する地方税法における当該規定の趣旨に従って解釈されるべきものである。以下,この点を念頭に置いて検討する。 (2)特別区内に住所を有する個人に対しては,特別区民税及び都民税が課される(地方税法1条2項,24条1項1号,294条1項1号,734条2項,3項,736条1項。以下,準用規定である同法1条2項,734条及び736条の引用は割愛する。また,特別区内に住所を有する個人であ。)るか否かは,当該特別区の住民基本台帳に記録されているか否かによって定まるが,記録されていない者であっても,当該特別区内に住所を有すると認められる場合には,その者を住民基本台帳に記録されている者とみなして,特別区民税及び都民税を課することができるとされている(同法294条2項,3項,24条2項。個人の特別区民税及び都民税の賦課期日は,当該)年度の初日の属する年の1月1日である(同法318条,39条。 )当該課税に当たっては,適正・公平の要請にこたえつつ,迅速処理をする必要があることに照らすならば,このような扱いには合理性が認められるということができ,以上の点は,特別区民税及び都民税に限らず住民税一般に妥当する。 (3)本件処分は,平成18年度の住民税(特別区民税及び都民税)の特別徴収額の賦課決定であるから,その賦課期日は平成18年1月1日である。前記前提事実記載のとおり,原告は,従前文京区内の原告肩書地に住んでいたが,平成18年1月1日時点においては同区の住民基本台帳に記録されておらず,かつ,米国に滞在していた。そこで,地 月1日である。前記前提事実記載のとおり,原告は,従前文京区内の原告肩書地に住んでいたが,平成18年1月1日時点においては同区の住民基本台帳に記録されておらず,かつ,米国に滞在していた。そこで,地方税法294条3項を適用するに当たり,原告のように従前日本に住んでいたが賦課期日には外国に滞在していた者の住所の認定をいかに行うべきかが問題となる。 この問題は,住民税の適正・公平な徴収の観点から,次のように解すべきである。すなわち,賦課期日において外国に滞在していればそれだけで日本に住所はないとされるのであれば,転出の届出をして出国し,賦課期日の前- 5 -後のみ外国に滞在することによって住民税を免れることが可能となるが,このような結論を容認できないのは当然であろう。したがって,賦課期日において外国に滞在していた者については,その出国の期間,目的,生活状況等の事情を考慮し,外国の滞在が一時的なものと認められる場合には,出国前の住所を上記賦課期日における住所と認める合理性があり,そのように解すべきである。そして,住民税が年度ごとに課されるものであることからすると,出国の期間が1年以上であるか1年未満であるかの区別が大きな指標になるのはやむを得ないところであり,賦課決定をする時点において,出国期間が1年未満であったと認められるか(既に帰国しているとき)あるいは1年未満と見込まれる(いまだ外国滞在中のとき)場合は,その者が外国において継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有するなど,出国目的や生活状況等に照らして特段の事情のない限り,その外国滞在は一時的なものと判断すべきである。 本件処分の適法性上記1で検討したところに基づき判断する。 前記前提事実によれば,本件処分が行われた平成18年5月11日の時点において,原告につき以下 国滞在は一時的なものと判断すべきである。 本件処分の適法性上記1で検討したところに基づき判断する。 前記前提事実によれば,本件処分が行われた平成18年5月11日の時点において,原告につき以下の事情が存在した。 ア原告は勤務先の命令により米国において修士課程を履修することとなったが,この修士課程は1年未満であった。したがって,出国当時,出国の期間は1年未満であること,帰国後はもとの勤務に復帰することが予定されていた。実際の出国期間も,予定より若干延びたものの,1年未満であった(期間計算につき,地方税法20条の5第1項,民法140条,143条。 )イ原告はAに勤務する国家公務員であり,日本において継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する者である。そして,原告は,帰国後予定どおりAの勤務に復帰した。 すなわち,本件処分が行われた時点において,原告は既に1年未満の米国滞- 6 -在を終えて帰国しており(上記ア,また,上記ア及びイの点からして,その)。 ,出国の前後の期間は継続して日本に居住する者であったといえるしたがって出国期間が1年未満であり,特段の事情も認められないから,原告の米国滞在は一時的なものであったと認められ,賦課期日である平成18年1月1日時点,。 の原告の住所は出国前の住所である原告肩書地であったということができる以上の検討によれば,本件処分は,賦課期日である平成18年1月1日時点の原告の住所を原告肩書地と認定した点において誤りはない。ほかに本件処分を違法とすべき事情も認められないから,本件処分は適法である。よって,これが違法であるとしてその取消しを求める原告の請求は理由がないので棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官大門匡裁判官倉地康 ある。よって,これが違法であるとしてその取消しを求める原告の請求は理由がないので棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官大門匡裁判官倉地康弘裁判官小島清二

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