平成20(く)187

裁判年月日・裁判所
平成20年5月20日 東京高等裁判所 棄却
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判決文本文4,517 文字)

20く18720.5.20東京高裁棄却 主文 本件即時抗告を棄却する。 理由 本件即時抗告の趣意は,主任弁護人O及び弁護人P共同作成名義の即時抗告申立書及び即時抗告申立書理由補充書に記載されたとおりであるから,これらを引用する。論旨は,要するに,別紙記載の各証拠につき,開示命令を求める弁護人の請求を棄却した原決定は判断を誤ったものであるから,その取消しと上記証拠の開示命令を求める,というのである。 そこで記録を調査して検討すると,本件の経過は,次のとおりである。 (1)被告人は,平成18年12月30日に強要の公訴事実で,平成19年2月15日に殺人の公訴事実(相被告人B,同A,同Q及び同R)で,同年3月7日に詐欺の公訴事実(相被告人A,同Q及び同R)で,いずれも水戸地方裁判所に起訴された。 原審裁判所は,同年4月26日,上記各被告事件を公判前整理手続に付する旨決定し,検察官は,同年5月28日に証明予定事実記載書を提出し,証拠請求をした。その後,類型証拠に関する証拠開示手続を経て,同年10月29日に弁護人から予定主張記載書面(1通目)及び検察官請求証拠に対する意見書が提出され,その後,同年11月15日に予定主張記載書面(2通目)が提出された。同月22日に,第1回公判前整理手続期日が開かれ,同年12月18日(3通目)及び同月28日(4通目)に予定主張記載書面が各提出された。 (2)平成20年1月17日,第2回公判前整理手続期日が開かれ,同年2月6日,弁護人は,刑訴法316条の26に基づき,本件開示請求に係る証拠を含む証拠開示命令を請求した。その後,検察官が,開示請求に係る証拠の一部を開示したため,弁護人は,同月27日に証拠開示命令請求の一部を取り下げた。更に,弁護人から,同日に,「予定主張記載書面」(5通目),同年3月 を請求した。その後,検察官が,開示請求に係る証拠の一部を開示したため,弁護人は,同月27日に証拠開示命令請求の一部を取り下げた。更に,弁護人から,同日に,「予定主張記載書面」(5通目),同年3月28日に,「予定主張記載書面(1)」(6通目)及び「予定主張記載書面(2)」(7通目)が提出され,原審裁判所は,証拠開示請求のあった証拠のうち,上記取下げ部分を除いた別紙記載の各証拠について,同年4月3日に証拠開示命令請求を棄却する旨決定(原決定)し,これに対して,弁護人が即時抗告を申し立てた。 (3)被告人及び弁護人は,殺人被告事件につき,共謀,実行行為,因果関係を争って無罪を主張している。 そこで弁護人の証明予定事実その他の公判期日においてすることを予定している事実上及び法律上の主張(以下「予定主張」という)を踏まえて検討する。 (1)別紙記載①の各証拠についてア弁護人は,「被告人は,平成12年8月13日午前2時過ぎころ,意識を失った被害者をS事務所に運ぶようBらに指示し,B運転のエルグランドに被害者を乗せてGとともに同車に同乗し,被告人方を出発し,S事務所に向かった。同日午前6時ころ,前記エルグランドで,T郡内の山林内に被害者の遺体を運び,同日午前7時ころ,被害者の遺体を同所に遺棄した」旨の検察官の主張に対し,被告人が,平成12年8月13日にBらが被告人方を退去した後,被告人は被告人方にとどまり,同事務所に向かっておらず,被害者の遺体を遺棄していない旨の予定主張を明示しており,別紙記載①の各証拠は,その主張に関連すると認められる。 イそこで開示の可否を検討すると,本件証拠開示命令請求に関する原審裁判所の検察官に対する求意見に対し,検察官は,Nシステムの履歴に関する資料である別紙記載①の各証拠は,検察官が現に保管している証拠中には存 で開示の可否を検討すると,本件証拠開示命令請求に関する原審裁判所の検察官に対する求意見に対し,検察官は,Nシステムの履歴に関する資料である別紙記載①の各証拠は,検察官が現に保管している証拠中には存在しない旨述べている(平成20年2月13日付けの意見)。更に,検察官請求証拠のうち,Bの供述調書(検察官調書謄本,原審甲第54号)には,被告人がエルグランドに乗り,S事務所から国道○号線を走行した旨の供述が録取され,また,Gの供述調書(検察官調書謄本,同第64号)には,運転がB,助手席に被告人で,高速に乗ってから,被害者が生きているか確認したところ,全く息をしていなかった,S事務所から,被告人が乗る被害者の死体を乗せたエルグランド,Gが運転するカリーナ,Bが運転する被害者所有の白いワゴン車で,被害者の死体を捨てに行き国道○号線を走った旨の供述が録取され,更に,検察官が弁護人に開示したGの平成17年12月15日付け供述調書にも,Jインターチェンジ手前の国道○号線にあるNシステムの下を通過した旨の供述が録取されていることが窺われることから,弁護人が開示を求めるNシステム関係の証拠のうち,予定主張との関連性及び開示の必要性がより高いとみられる証拠,すなわち,平成12年8月13日に,H自動車道Jインターチェンジ付近の国道○号線に設置された「Nシステム」で記録されたBらが乗車した各車両に関する映像・画像の記録について,当審において検察官に対し,捜査機関が,捜査の過程で作成し,又は入手した書面等であって,現に保管するものが存在するかとの点について釈明を求めたところ,検察官は,捜査機関において現に保管するものは存在しない旨釈明した(なお,弁護人が開示を求めるNシステム関連証拠のその余の部分は,予定主張との関連性は認められるが,その開示の必要性は低いというべき 検察官は,捜査機関において現に保管するものは存在しない旨釈明した(なお,弁護人が開示を求めるNシステム関連証拠のその余の部分は,予定主張との関連性は認められるが,その開示の必要性は低いというべきである)。 そうすると,別紙記載①の各証拠について,証拠開示命令を発することは相当ではなく,同証拠に関する証拠開示命令請求を棄却した原決定は結論において正当である。 (2)別紙記載②,③の各証拠についてア弁護人は,検察官請求に係るDの検察官調書謄本(甲第55号証ないし第60号証),Gの検察官調書謄本(甲第64号証ないし第70号証)及び警察官調書謄本(甲第63号証)並びに同人立会に係ると思われる実況見分調書謄本(甲第17号証),Fの検察官調書謄本(甲第72号証,第73号証)及び警察官調書(甲第71号証)について不同意の証拠意見を述べた上,D,G及びFは,本件について不起訴処分となっているが,Dらの供述等は,取調べに際して,検察官あるいは警察官から,「話せば起訴猶予にする」旨言われて起訴猶予になることを期待して供述したものであるから特信性を欠いており,証拠能力がない旨の予定主張をしており,別紙記載②,③の各証拠は,その主張に関連すると認められる。 イそこで開示の可否について検討すると,本件では,Dらの供述調書,あるいは,取調べ状況報告書など相当数の証拠が開示され,加えて,検察官は,取調官の証人尋問を請求するとの意見を述べているところであり,これらの事情に照らすと,Dらの不起訴裁定書,あるいは,その取調べを担当した警察官が犯罪捜査規範13条に基づき作成した備忘録を開示する必要性は低いというべきである(なお,検察官が警察に対し,同備忘録の存否につき,照会を行ったところ,存在しない旨の回答がなされている。)。 そうすると,別紙記載②,③の各証拠について, 忘録を開示する必要性は低いというべきである(なお,検察官が警察に対し,同備忘録の存否につき,照会を行ったところ,存在しない旨の回答がなされている。)。 そうすると,別紙記載②,③の各証拠について,証拠開示命令を発することは相当ではなく,同証拠に関する証拠開示命令請求を棄却した原決定は結論において正当である。 (3)別紙記載④,⑤の各証拠についてア弁護人は,Bの検察官調書謄本(甲第50号証ないし第54号証)及び警察官調書(甲第49号証)における供述は,自己の死刑判決を先延ばしにしたいがため,被告人を犯罪に引っ張り込み,責任を転嫁した虚偽供述であり,信用性がない旨の予定主張をしており,その主張に関連するとして別紙記載④,⑤の各証拠の開示を求めている。 イ別紙記載④の証拠についてみると,これらの証拠は,本件とは別の事件に関するものであることが明らかである。そして,Bの別の事件に関する供述が虚偽であるかどうかは,本件に関する供述の信用性に影響するところがないとはいえないが,開示請求に係る検証調書,あるいは,実況見分調書等がBの供述の信用性判断に資するとは必ずしもいえず,そうすると,上記予定主張との関連性は低いといわざるを得ない。加えて,検察官は,弁護人に対して,Bやその他の共犯者の供述調書など相当数の証拠を開示済みであることが認められ,Bの供述の信用性を争うための防御活動のために,別紙記載④の証拠を開示する必要性は低いというべきであるから,証拠開示命令請求を棄却した原判断は正当である。 ウ別紙記載⑤の証拠についてみると,Bが上申書を作成した本件を除く事件に関する一切の証拠というのみでは,開示の請求に係る証拠を識別するに足りる事項を明らかにしたとはいえず(刑訴法316条の20第2項1号),証拠の特定が十分ではないといわざるを得ないから,別紙 く事件に関する一切の証拠というのみでは,開示の請求に係る証拠を識別するに足りる事項を明らかにしたとはいえず(刑訴法316条の20第2項1号),証拠の特定が十分ではないといわざるを得ないから,別紙記載⑤の証拠についての証拠開示請求は不適法である。したがって,証拠開示請求を棄却した原決定は正当である。 以上のとおりであり,別紙記載の各証拠について,証拠開示を命じることは相当ではないから,結局,本件証拠開示命令請求を棄却した原決定に誤りはない。論旨は理由がない。 よって,刑訴法426条1項により本件即時抗告を棄却することとし,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官・池田耕平,裁判官・飯渕進,裁判官・金子大作)別紙①アH自動車道上り線のIインターチェンジからJインターチェンジ間に設置されたNシステムにより,平成12年8月13日に記録された,Bらが乗車した車両の通行記録,映像等のすべてイH自動車道Jインターチェンジ付近の国道○号線に設置されたNシステムにより,平成12年8月13日に記録されたBらが分乗した各車両の通行記録,映像等のすべて②D,F及びGの不起訴裁定書③D,F及びGの取調べを担当した警察官が犯罪捜査規範13条に基づき作成した備忘録で捜査機関において保管している書面のすべて④Bが上申書を作成した別事件のK県M市内の土地についての検証調書,実況見分調書等のすべて⑤Bが上申書を作成した本件を除く事件に関する一切の証拠

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