平成23(行コ)159 関税更正処分取消等,通知処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成18年(行ウ)第719号(第1事件),同19年(行ウ)第454号(第2事件))

裁判年月日・裁判所
平成24年11月28日 東京高等裁判所 租税
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判決文本文28,140 文字)

平成24年11月28日判決言渡平成23年(行コ)第159号関税更正処分取消等,通知処分取消請求控訴事件 主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 (第1事件) 2 原判決別紙処分目録1-1の各「処分行政庁」欄記載の処分行政庁が平成16年10月13日付けで控訴人に対してした,同目録の各「輸入申告書番号」欄記載の輸入申告書番号の納税申告に係る関税についての各更正処分のうち,納付すべき関税額につき同目録の各「納付すべき関税額」「更正前の金額」欄記載の金額を超える部分及び各過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。 3 原判決別紙処分目録1-2の各「処分行政庁」欄記載の処分行政庁が平成16年10月19日付けで控訴人に対してした,同目録の各「輸入申告書番号」欄記載の輸入申告書番号の納税申告に係る関税についての各更正処分のうち,納付すべき関税額につき同目録の各「納付すべき関税額」「更正前の金額」欄記載の金額を超える部分及び各過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。 4 原判決別紙処分目録1-3の各「処分行政庁」欄記載の処分行政庁が平成16年11月24日付けで控訴人に対してした,同目録の各「輸入申告書番号」欄記載の輸入申告書番号の納税申告に係る関税についての各更正処分のうち,納付すべき関税額につき同目録の各「納付すべき関税額」「更正前の金額」欄記載の金額を超える部分及び各過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消 す。 5 原判決別紙処分目録1-4の各「処分行政庁」欄記載の処分行政庁が平成17年6月23日付けで控訴人に対してした,同目録の各「輸入申告書番号」欄記載の輸入申告書番号の納税申告に係る関税に す。 5 原判決別紙処分目録1-4の各「処分行政庁」欄記載の処分行政庁が平成17年6月23日付けで控訴人に対してした,同目録の各「輸入申告書番号」欄記載の輸入申告書番号の納税申告に係る関税についての各更正処分のうち,納付すべき関税額につき同目録の各「納付すべき関税額」「更正前の金額」欄記載の金額を超える部分及び各過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。 6 原判決別紙処分目録1-5の各「処分行政庁」欄記載の処分行政庁が平成16年10月13日付けで控訴人に対してした,同目録の各「輸入申告書番号」欄記載の輸入申告書番号の納税申告に係る消費税及び地方消費税についての各更正処分のうち,納付すべき消費税額につき同目録の各「納付すべき消費税額」「更正前の金額」欄記載の金額を超える部分及び納付すべき地方消費税額につき同目録の各「納付すべき地方消費税額(貨物割額)」「更正前の金額」欄記載の金額を超える部分並びに各過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。 7 原判決別紙処分目録1-6の各「処分行政庁」欄記載の処分行政庁が平成16年10月19日付けで控訴人に対してした,同目録の各「輸入申告書番号」欄記載の輸入申告書番号の納税申告に係る消費税及び地方消費税についての各更正処分のうち,納付すべき消費税額につき同目録の各「納付すべき消費税額」「更正前の金額」欄記載の金額を超える部分及び納付すべき地方消費税額につき同目録の各「納付すべき地方消費税額(貨物割額)」「更正前の金額」欄記載の金額を超える部分並びに各過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。 8 原判決別紙処分目録1-7の各「処分行政庁」欄記載の処分行政庁が平成16年11月24日付けで控訴人に対してした,同目録の各「輸入申告書番号」欄記載の輸入申告書番号の納税申告に係る消費 り消す。 8 原判決別紙処分目録1-7の各「処分行政庁」欄記載の処分行政庁が平成16年11月24日付けで控訴人に対してした,同目録の各「輸入申告書番号」欄記載の輸入申告書番号の納税申告に係る消費税及び地方消費税についての各 更正処分のうち,納付すべき消費税額につき同目録の各「納付すべき消費税額」「更正前の金額」欄記載の金額を超える部分及び納付すべき地方消費税額につき同目録の各「納付すべき地方消費税額(貨物割額)」「更正前の金額」欄記載の金額を超える部分並びに各過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。 9 原判決別紙処分目録1-8の各「処分行政庁」欄記載の処分行政庁が平成17年6月23日付けで控訴人に対してした,同目録の各「輸入申告書番号」欄記載の輸入申告書番号の納税申告に係る消費税及び地方消費税についての各更正処分のうち,納付すべき消費税額につき同目録の各「納付すべき消費税額」「更正前の金額」欄記載の金額を超える部分及び納付すべき地方消費税額につき同目録の各「納付すべき地方消費税額(貨物割額)」「更正前の金額」欄記載の金額を超える部分並びに各過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。 (第2事件)控訴人が横浜税関α出張所長(以下「α出張所長」という。)に対して原判決別紙処分目録2-1の各「更正の請求日」欄記載の日に行った同目録の各「輸入申告書番号」欄記載の輸入申告書番号の納税申告に係る関税,消費税及び地方消費税の税額に係る更正の請求について,α出張所長が平成18年2月2日付けでした更正をすべき理由がない旨の通知処分のうち,関税の税額につき更正をすべき理由がないとした部分をいずれも取り消す。 11 控訴人が横浜税関β出張所長(以下「β出張所長」という。)に対して原判決別紙処分目録2-2の各「更正の請求日 処分のうち,関税の税額につき更正をすべき理由がないとした部分をいずれも取り消す。 11 控訴人が横浜税関β出張所長(以下「β出張所長」という。)に対して原判決別紙処分目録2-2の各「更正の請求日」欄記載の日に行った同目録の各「輸入申告書番号」欄記載の輸入申告書番号の納税申告に係る関税,消費税及び地方消費税の税額に係る更正の請求について,β出張所長が平成18年2月2日付けでした更正をすべき理由がない旨の通知処分のうち,関税の税額につき更正をすべき理由がないとした部分をいずれも取り消す。 第2 事案の概要 1 事案の要旨控訴人は,化粧品,美容用品その他のパーソナルケア製品及び栄養補助食品の輸入,卸売販売等の事業を営む会社であり,A(以下「A社」という。)は,B及びCの商標でパーソナルケア製品及び栄養補助食品を製造し,世界約50の国と地域でグループ会社を介してその卸売販売をしているアメリカ合衆国(以下「米国」という。)ユタ州の法人である。また,D(以下「D社」という。)は,パーソナルケア製品及び栄養補助食品の販売等の事業を営む米国ユタ州の法人であり,E(以下「E社」という。)は,香港で設立された法人である。そして,控訴人,E社及びD社は,いずれもA社の全額出資法人である。 東京税関γ出張所長,α出張所長及びβ出張所長(以下「処分行政庁ら」という。)は,控訴人が行った商品名F外10種類の製品(以下「本件対象製品」という。)の原判決別紙輸入目録1-1ないし1-4記載の各輸入取引(同目録記載の輸入貨物を以下「本件各輸入貨物」という。)に関する申告(以下「本件各申告1」という。)について,関税定率法に規定する輸入取引の売手は,D社であるとして関税,消費税及び地方消費税の各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)並びに過少申告 に関する申告(以下「本件各申告1」という。)について,関税定率法に規定する輸入取引の売手は,D社であるとして関税,消費税及び地方消費税の各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)並びに過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」といい,本件各更正処分と併せて「本件各更正処分等」という。)をした。 本件は,控訴人が,本件各更正処分等にかかる本件各申告1について,本件各輸入貨物の輸入取引の売手は米国所在の本件各輸入貨物の製造業者ら(以下「本件各ベンダー」という。)であると主張して,処分行政庁がした本件各更正処分並びに本件各賦課決定処分の各取消しを求め(第1事件),また,その後,控訴人が,自己の行った原判決別紙輸入目録2-1及び2-2記載の本件各輸入貨物の輸入取引に関して,輸入取引の売手はD社であるとして関税,消 費税及び地方消費税の申告(以下「本件各申告2」という。)納税をした後,売手は本件各ベンダーであるとして各更正の請求をしたところ,α出張所長及びβ出張所長が,上記各更正の請求には理由がない旨の通知処分(以下「本件各通知処分」という。)をしたことから,控訴人が,本件各通知処分は違法であると主張して,その取消しを求めている(第2事件)事案である。 原審は,処分行政庁らがした本件各申告1についての本件各更正処分並びに本件各賦課決定処分はいずれも適法であり,また控訴人の本件各申告2についての各更正の請求には理由がなく,本件各通知処分はいずれも適法であるとして控訴人の請求をいずれも棄却した。 これに対し,控訴人がこれを不服として,控訴した。 2 関係法令等の定め,前提事実,争点及び争点についての当事者の主張関係法令等の定め,前提事実,争点及び争点についての当事者の主張は,以下のとおり補正したうえ, がこれを不服として,控訴した。 2 関係法令等の定め,前提事実,争点及び争点についての当事者の主張関係法令等の定め,前提事実,争点及び争点についての当事者の主張は,以下のとおり補正したうえ,3に当審における控訴人の主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の「2 関係法令等の定めの概要等」,「3 前提事実」,「4 本件各更正処分等の根拠及び適法性についての被告の主張(第1事件)」,「5 当事者の主張の構造の骨子」,「6 争点」及び「7 争点に関する当事者の主張の概要」に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決別紙処分目録2-1-平成18年2月2日付α出張所長処分-の整理番号2,3,9,17,18の「更正後の金額」,「減少する税額」,「更正請求により減少する関税額」を本判決別表1-1「処分目録2-1-平成18年2月2日付α出張所長処分-」の該当整理番号の各「正」の欄に記載する金額にそれぞれ改める。 (2) 原判決別紙処分目録2-2-平成18年2月2日付β出張所長処分-の整理番号19,20,21,33,58,87,107の「更正後の金額」,「減少する税額」,「更正請求により減少する関税額」を本判決別表 1-2「処分目録2-2-平成18年2月2日付β出張所長処分-」の該当整理番号の各「正」の欄に記載する金額にそれぞれ改める。 (3) 原判決の23頁19行目の「本件各製品」を「本件対象製品」に改める。 (4) 原判決の35頁15行目の「原告」を「被控訴人」に改める。 3 当審における控訴人の主張(1) 本件各輸入貨物にかかる関税定率法4条1項に規定する「輸入取引」は,控訴人と誰との間の取引か(原判決争点①)について関税評価協定の趣旨は,輸入者の恣意的な評価を防止すること 人の主張(1) 本件各輸入貨物にかかる関税定率法4条1項に規定する「輸入取引」は,控訴人と誰との間の取引か(原判決争点①)について関税評価協定の趣旨は,輸入者の恣意的な評価を防止することではなく,税関当局の恣意的な課税を防止することである。関税評価協定1条は,この目的を達成するため,関税の課税価格決定の原則を「輸入国への輸出のための売買」の価格に一定の加算要素を加えた金額としている。この関税評価協定の趣旨から,関税評価協定1条が原則的な課税価格の算定方法とした現実支払価格の方法の基礎とされるべき,「輸入国への輸出のための売買」とは,客観的かつ画一的かつ簡明な認定が可能な私法上の法律関係としての売買をいう。本件において,D社に対し本件各輸入貨物を購入する代理権を授与する旨の合意(控訴人とD社及びE社間の平成14年7月1日を効力発生日とする三者間の覚書に基づく合意。この覚書を以下「本件三者間の覚書」という。)が控訴人とD社との間にあり,またD社が控訴人の代理人として本件各ベンダーから本件各輸入貨物を購入する旨の合意(平成14年7月1日を効力発生日とする控訴人と本件各ベンダー間の覚書に基づく合意。この覚書を以下「本件ベンダー覚書」という。)が控訴人と本件各ベンダーとの間にあり,D社が控訴人を代理して本件各ベンダーと本件各輸入貨物の売買契約を締結した点が立証されているのであるから,控訴人と本件各ベンダーとの間には本件各輸入貨物の売買が存在する。また,控訴人とD社との間に本件各輸入貨物の売買は存在しない。控訴人と本件各ベンダーとの間の本件 各輸入貨物の売買は,輸出国から本件各輸入貨物を日本に輸出することを目的とした売買であるから,「輸入取引」に該当する。したがって,本件輸入取引は,控訴人と本件各ベンダーとの間の取引である。( 各輸入貨物の売買は,輸出国から本件各輸入貨物を日本に輸出することを目的とした売買であるから,「輸入取引」に該当する。したがって,本件輸入取引は,控訴人と本件各ベンダーとの間の取引である。(控訴人準備書面(1)6頁ないし9頁,14頁)(2) 控訴人とD社との間に売買が認められるとした場合でも,ファースト・セール理論により,本件各ベンダーとD社との間の売買を「輸入取引」とすべきか(原判決争点①-2,予備的主張)について関税評価協定は,各国の関税当局が「国庫収入の確保」という見地から恣意的な評価を行うことを防止するため,裁量の余地のない「輸入国への輸出のための売買」の価格という客観的な基準により,課税価格を評価したものである。したがって,このような関税評価協定及びそれを受けて規定された関税定率法4条1項の趣旨からすれば,課税価格の算定の基礎となる「輸入取引」が何かについては,「輸入国への輸出のための売買」という文言に従って,客観的に判断されなければならない。そして,関税評価協定も関税定率法も,輸入に先立ち複数の売買がある場合,最終の売買でなければ「輸入国への輸出のための売買」ではない旨の特段の規定を設けていない。租税法規の解釈の原則からすれば,最初の売買であっても「輸入国への輸出のための売買」に該当する限り,「輸入取引」に該当する(いわゆるファースト・セール理論)というべきであり,かかるファースト・セール理論を採用すべきである。(控訴人準備書面(1)17頁)(3) 控訴人とD社との間の取引が輸入取引とされた場合,本件各更正処分等及び本件各申告2における課税価格の計算は適法であったか(原判決争点②)についてア類型Ⅱ(原判決29頁9行目から30頁10行目までの「(6) 本件各輸入貨物の類型」のうち,イ記載の類型,すな 及び本件各申告2における課税価格の計算は適法であったか(原判決争点②)についてア類型Ⅱ(原判決29頁9行目から30頁10行目までの「(6) 本件各輸入貨物の類型」のうち,イ記載の類型,すなわち,これらに対応するD社インボイスが税関に提出されていないが,過去に税関に輸入申告をして 許可された同種貨物に係るD社インボイスが存在するもの。)及び類型Ⅲ(同ウ記載の類型,すなわち,これらに対応するD社インボイスが税関に提出されておらず,過去に税関に輸入申告をして許可された同種貨物に係るD社インボイスが存在するものの,当該D社インボイスは,当該製品の価格についてD社と控訴人との間で変更の合意がされる前のもの。)の輸入貨物について現実支払価格による方法によらないことが適法か(原判決争点②-2の前段,②-3の前段)について類型Ⅱ及び類型Ⅲの輸入貨物に関して,実際に控訴人からD社に支払われたのは控訴人の主張する金額だけであって,控訴人とD社間には当該貨物の輸入に関してそれ以外の債権債務は発生していない。課税価格は客観的事実に基づき認定しなければならないのであり,控訴人からD社に対して,類型Ⅱ及び類型Ⅲの輸入貨物の取引について支払われた「現実支払価格」に基づいて,課税価格を評価しなければならない。(控訴人準備書面(1)18頁)イ類型Ⅱの輸入貨物について,同種又は類似の輸入貨物の課税価格の方法によるのに必要な近接性の要件を満たしているか(原判決争点②-2の後段)について関税定率法4条の2第1項に規定する「当該輸入貨物の本邦への輸出の日に近接する日」について,通達の規定する「1月以内」であれば「同時またはほぼ同時」という文言に反しない余地はあるが,それを超える期間は,通常の意味内容からすればもはや「同時またはほぼ同時」に該当し 日に近接する日」について,通達の規定する「1月以内」であれば「同時またはほぼ同時」という文言に反しない余地はあるが,それを超える期間は,通常の意味内容からすればもはや「同時またはほぼ同時」に該当しない。したがって,「輸出の日の前後1月以内」の基準に合致しないのに関税定率法4条の2を適用してされた本件各更正処分や本件各申告2は関税定率法の規定に違反する。(控訴人準備書面(1)19頁)ウ類型Ⅲの輸入貨物について,製造原価からの積算方式又は国内販売価格からの逆算方式によることができるか(原判決争点②-3の後段)につい て①関税定率法4条の3第2項に規定する「本邦への輸出のための販売に係る通常の利潤及び一般経費」は,関税評価協定6条1項(b)に規定する「同類貨物が輸入貨物の輸出国の生産者により輸入国への輸出のために販売される場合において,当該同類貨物の価格に含まれる利潤及び一般経費に相当する額」と同義であり,「通常の利潤及び一般経費」はベンダーの利潤及び一般経費であるから,製造原価からの積算方式により課税価格を計算できる。②また,国内販売価格からの逆算方式による計算に必要な資料はすべて控訴人内部の資料であり,入手可能であるから,国内販売価格の逆算方式による計算が可能である。それにもかかわらず,その他の方法を用いて課税価格を算定してされた申告は違法であるから,更正の請求には理由があり,また国内販売価格からの逆算方式による計算ができるかどうか調査をすることなく行われた本件通知処分は違法である。(控訴人準備書面(1)19ないし21頁)(4) 控訴人とD社との間の取引が輸入取引とされた場合,本件各更正処分等について,信義則違反が認められるか(原判決争点③)についてア控訴人は,横浜税関長を名宛人として「輸入貨物の関税課税価格 (4) 控訴人とD社との間の取引が輸入取引とされた場合,本件各更正処分等について,信義則違反が認められるか(原判決争点③)についてア控訴人は,横浜税関長を名宛人として「輸入貨物の関税課税価格の決定について」と題する書面を提出しており,その内容からしてベンダーインボイスに記載された価格を基に課税価格を計算して輸入申告をすることが認められないかについて横浜税関長に対して教示を求めるものであることは一見して明らかである。この教示の求めに対し,横浜税関長は,特別価格審査官であるG審査官に控訴人に対する「輸入貨物の関税課税価格の決定の教示に関する」事務を行うように命じたものであり,税関長の命を受けて,G審査官が行った教示は,責任ある立場にある者の組織としての見解の表示であることは明らかである。(控訴人準備書面(1)15頁,16頁) イ G審査官は,平成11年10月13日の会議において,控訴人に対し,横浜税関長宛て書簡の付属書類に修正を加えた新しい書類を添付して控訴人とベンダーとの間の売買を輸入取引とした包括申告書を提出すれば承認の捺印をして即日交付する旨説明し,この説明どおり添付書類を付した包括申告書の提出があった同年10月25日に承認印を押捺して即時に控訴人に交付した。これは控訴人とベンダーとの間の売買を輸入取引として課税価格を算定してよい旨の,税関としての公式見解の表示であることが明らかである。(控訴人準備書面(1)16頁,17頁)ウしたがって,事前教示の事務を分掌する職責を有するG審査官が,控訴人の事前教示の求めに対して,当時の慣行どおりに,口頭でベンダーと控訴人との売買が輸入取引である旨の回答を行ったものであるから,信義則が適用されるべきである。(控訴人準備書面(4)70頁)(5) 控訴人には,過少申告加算 ,当時の慣行どおりに,口頭でベンダーと控訴人との売買が輸入取引である旨の回答を行ったものであるから,信義則が適用されるべきである。(控訴人準備書面(4)70頁)(5) 控訴人には,過少申告加算税を課すべきでない「正当な理由」があったか(原判決争点⑤)について税務官庁の側に過少に納税義務が確定することに原因を与えるような義務違反がある場合には,納税者に義務違反があっても納税者に過少申告加算税を課すべきでない「正当な理由」がある。本件では,第一に,税関が一連の会議とその後の行動により,控訴人がベンダーのインボイス価格により申告することへの要因を与えており,税関の行動がなければ,かかる申告を控訴人が行うことはなかった。税関は,その後の事後調査においても,今回の更正の理由となった事実と同じ事実を知りながら,見解を変更する旨の公式な見解を表示していない。そうすると,今回の更正処分が行われるまでは,税関は申告納税制度の下なすべきことをしていなかったといえるから,過少申告加算税を課すべきでない「正当な理由」がある。第二に,本件は,数次の事後調査においても,税関が,今回と同じ事実を認識し,更正処分の検討をしながら結局更正処分を行い得なかったほどに,難解な法律問題を含んでい る。この難解な法律問題を含む申告に関し,控訴人は,その正当性につき専門家を含め内部で検討し,さらには,関係する事実をすべて開示して,税関に対して教示を求める手続を取っているのであり,控訴人は輸入者として申告に際しすべきことをすべてしているといえるから,ベンダーのインボイス価格に基づき課税価格が決定されると信じたことには相当の理由がある。したがって,この点からも過少申告加算税を課すべきでない「正当な理由」がある。(控訴人準備書面(3)13頁,18頁)第3 当裁 価格に基づき課税価格が決定されると信じたことには相当の理由がある。したがって,この点からも過少申告加算税を課すべきでない「正当な理由」がある。(控訴人準備書面(3)13頁,18頁)第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,処分行政庁らがした本件各更正処分並びに本件各賦課決定処分はいずれも適法であり,また控訴人の各更正の請求には理由がなく,本件各通知処分はいずれも適法であるから,控訴人の本件請求は,いずれも理由がないものと判断する。 その理由は,以下のとおり補正し,後記2のとおり付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」1ないし10項に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決125頁4行目の「課税定率法」を「関税定率法」に改める。 (2) 同128頁21行目末尾に「なお,D社は控訴人に対し製品価格及び控訴人を代理して行う製品の海外における購入に係るD社のサービス・フィーを日本円で請求する。」を加える。 (3) 同131頁21行目の「確認した」を「授権した」に改める。 (4) 同142頁14行目の「取引にいては」を「取引については」に改める。 (5) 同145頁1行目の「上記のような事情があったことに」から同6行目の「このことは,」までを「上記のような事実が存在したことは」に改める。 2 控訴人は当審において上記第2の3のとおり主張するが,いずれも控訴人の 原審における主張の繰り返しであり,これらの主張については,原判決が「第 3 当裁判所の判断」の1ないし10項に判示するとおりであって,いずれも採用できない。以下では,上記のとおり,控訴人が当審において重ねて主張する点につき,必要な範囲であえて重複をいとわずに判断を示すこととする。 (1) 本件各輸入貨物にかかる関税定率法4 て,いずれも採用できない。以下では,上記のとおり,控訴人が当審において重ねて主張する点につき,必要な範囲であえて重複をいとわずに判断を示すこととする。 (1) 本件各輸入貨物にかかる関税定率法4条1項に規定する「輸入取引」は,控訴人と誰との間の取引か(原判決争点①)についてアこの点について,控訴人は,関税評価協定の趣旨が輸入者の恣意的な評価を防止することではなく,税関当局の恣意的な課税を防止することにあり,その趣旨からすると,関税評価協定1条が原則的な課税価格の算定方法とした現実支払価格の方法の基礎とされるべき「輸入国への輸出のための売買」とは,客観的かつ画一的かつ簡明な認定が可能な私法上の法律関係としての売買をいい,本件においては,控訴人とD社及び控訴人と本件各ベンダーとの間にD社が控訴人を代理して本件各ベンダーと本件各輸入貨物の売買契約を締結する合意(本件三者間の覚書及び本件ベンダー覚書による合意)があり,この合意に基づく取引がされたことが立証されているから,本件「輸入取引」は控訴人と本件各ベンダーとの間の取引である旨主張する。 イそこで判断するに,本件輸入取引が控訴人と誰との間の取引かは事実認定にかかる問題である。そして,関税評価協定17条は,「この協定のいかなる規定も,関税評価のために行われた陳述若しくは申告又は提出された文書が真実を述べたものであるかないか又は正確なものであるかないかについて検討する関税当局の権利を制限し,又はこの権利について疑義を差し挟むものと解してはならない。」と規定しているところ(乙イA65),その趣旨は,税関が関税評価のための検討を行うに際し,輸入者等から提出された書類の記載内容のみの検討にとどまらず,その真実性についても併せて検討する権限を有することを確認するものと解される。さら その趣旨は,税関が関税評価のための検討を行うに際し,輸入者等から提出された書類の記載内容のみの検討にとどまらず,その真実性についても併せて検討する権限を有することを確認するものと解される。さら に,関税定率法は,関税評価協定に準拠し,4条ないし4条の4に輸入貨物の課税価格の決定にかかる規定を定めているが,これらによれば,税関職員は,輸入者から輸入(納税)申告書が提出された場合,課税価格や関税等の申告書の記載内容が適正なものであるか否かを判断するに当たり,輸入者の説明及び申告書の添付書類の形式的記載内容のみによるのではなく,輸入貨物の関税評価のために提出されたインボイスや契約書などが真の取引実態を反映したものか否かについて,取引においてあらわれた個別的な事実を総合的に考慮して,真実の取引関係あるいは真実の売手又は買手を判断すべきものと解される。加えて,そもそも課税要件事実は,形式的な法律関係にとらわれることなく実体及び実質に従って認定・判断されるべきものであるが,上記の理解はこの要請にも合致する。この点につき,控訴人の主張の趣旨が関税評価規定の趣旨からして,税関当局に輸入者等から提出された書類の記載内容の真実性について併せて検討する権限を有しないというものであるとすると,その主張は,前提を誤るものとして採用することはできない。 ウ関係証拠によれば,控訴人の申告にかかる本件各輸入貨物の取引について,本件ベンダー覚書により,控訴人が覚書の対象となる製品の荷受人であり買主であること,D社を介して同製品の発注を行い,D社は控訴人のために本件各ベンダーに注文を行うことなどが約定され,また本件三者間の覚書により,D社は,控訴人を代理して控訴人のために本件各ベンダーと購入契約の締結を行うことなどが約定されたことが認められる(甲イ3, 本件各ベンダーに注文を行うことなどが約定され,また本件三者間の覚書により,D社は,控訴人を代理して控訴人のために本件各ベンダーと購入契約の締結を行うことなどが約定されたことが認められる(甲イ3,5の1ないし4,甲イ34,35)。これらの申告書の添付書類等からは,本件各輸入貨物の取引が,これらの覚書による合意に基づき,控訴人と本件各ベンダーとの間の取引である旨の事実を認める余地がある。しかしながら,そのためには,本件各輸入貨物の取引につき,上記イに説示したとおり,取引においてあらわれた個別的な事実を総合的に考慮するこ とにより,申告書の添付書類等の記載内容の真実性について検討し,売買当事者が控訴人と本件各ベンダーである旨の事実を認定できることが必要である。 エところで,関税定率法4条1項に規定する「輸入取引」とは,原則として,貨物を外国から本邦に向けて輸出することを目的として行われたときの売買をいい,当該売買が輸出国(又は第三国)の者と本邦に居住する者との間又は本邦に居住する者の間で行われたものであるか否かは問わないものであるが,本邦へ輸出される前に輸出国において本邦へ向けて輸出する目的で複数の取引が行われた場合には,現実に貨物を外国から本邦へ向けて輸出することになった売買を輸入取引に当たると解するのが相当である(乙イA78の1,関税定率法基本通達4-1(1))。また,関税定率法4条1項に規定する「売手」及び「買手」とは,実質的に自己の計算と危険負担の下に輸入取引をする者をいうのであり,具体的には,売手及び買手は自ら輸入取引における輸入貨物の品質,数量,価格等を取り決め,瑕疵,数量不足,事故,不良債権等の危険を負担することになる(関税定率法基本通達4-2(1))。そうすると,本件においても,売手が誰であるかの事実を認定 ける輸入貨物の品質,数量,価格等を取り決め,瑕疵,数量不足,事故,不良債権等の危険を負担することになる(関税定率法基本通達4-2(1))。そうすると,本件においても,売手が誰であるかの事実を認定するには,上記の自己の計算と危険負担という要素を基本に誰が輸入取引をしたといえるかを判断するのが相当である(買手が控訴人であることについては当事者間に争いがない。)。 そこで,本件について見るに,関係証拠によれば,①控訴人は,本件三者間の覚書(甲イ3)により,D社は,控訴人を代理して控訴人のために本件各ベンダーと購入契約を締結している旨主張するが,同覚書では本件各ベンダーとの間の価格交渉についてはD社が行うとされるものの,D社が本件各ベンダーと価格交渉をするための控訴人との事前の交渉や取決めの約定が存在しておらず,控訴人が代理人を介して本件各ベンダーとの間の価格交渉を自ら行っているものとは評価し得ないこと,②控訴人は,本 件各輸入貨物以外の他の本邦市場向け貨物については,控訴人とD社との間の取引を「輸入取引」として申告をしているところ,本件各輸入貨物と他の本邦市場向け貨物を区別することなく,D社に対しD社の販売価格で発注し,同社から発送を受け,D社の販売価格で支払(前払金による充当を含む。)を行っていること(乙イA5の1ないし3,33),③平成11年包括申告書提出前における本件対象製品の取引の方法は,上記の他の本邦市場向け貨物と同様にD社に対しD社の販売価格で発注し,同社から発送を受け,D社の販売価格で支払うという方法で行われていたこと(争いがない事実),④控訴人からD社に対する支払は日本円で行うのに対し,D社から本件各ベンダーに対する支払は米国ドル建てで行うこととされ,為替変動リスクはD社が有していること(甲イ3,5の1ないし4 いがない事実),④控訴人からD社に対する支払は日本円で行うのに対し,D社から本件各ベンダーに対する支払は米国ドル建てで行うこととされ,為替変動リスクはD社が有していること(甲イ3,5の1ないし4,9,乙イA32,39,40,48),⑤本件各輸入貨物の輸送中の責任,瑕疵及びクレーム求償については,D社が責任を負担しており,控訴人は,クレーム求償について他の本邦市場向け貨物と同様にD社の価格に基づいて行っていること(甲イ3,乙イA12の1ないし3及び13の1ないし6),が認められる。そうすると,本件各輸入貨物に係る輸入取引についても,他の本邦市場向け貨物と同様に,控訴人とD社が,自ら,本件各輸入貨物の品質,数量,価格等を取り決め,D社が瑕疵,数量不足,事故,不良債権等の危険を負担しているものということになる。したがって,本件輸入取引においてD社は控訴人の代理人としての実質はなく,売手であると認めるのが相当である。すなわち,本件各輸入貨物の輸入取引は,D社(売手)と控訴人(買手)との間の取引であるというほかない。 なお,D社が本件各ベンダーに対して発行した本件各対象製品に係る発注書(甲イ47)には,控訴人がD社に対して控訴人を代理して本件各対象製品の価格により各ベンダーに発注する権限を付与したかのような控訴人の署名がされているが,本件輸入取引にあらわれた上記各事実が存する 本件においては,このことをもってD社が控訴人の代理人としての実質を備えていないという判断を左右するものとはならない。 オ以上の認定事実によれば,本件輸入取引は,控訴人と本件各ベンダーとの間の売買である旨の控訴人の主張は,その前提を欠き,採用することができない。また,控訴人が原審から主張する論拠全般については,補正のうえ引用した原判決(123頁ないし146 訴人と本件各ベンダーとの間の売買である旨の控訴人の主張は,その前提を欠き,採用することができない。また,控訴人が原審から主張する論拠全般については,補正のうえ引用した原判決(123頁ないし146頁)に説示するとおりである。さらに,当審においてるる主張するその他の論拠については,いずれもその前提を欠くか,従前の主張と整合しないか,独自の見解のいずれかであって,これを採用することはできない。 (2) 控訴人とD社との間に売買が認められるとした場合でも,ファースト・セール理論により,本件各ベンダーとD社との間の売買を「輸入取引」とすべきか(原判決争点①-2,予備的主張)についてアこの点について,控訴人は,関税評価協定及びそれを受けて規定された関税定率法4条1項の趣旨からすれば,課税価格が何かについては,「輸入国への輸出のための売買」という文言に従って,客観的に判断されなければならないのであり,関税評価協定も関税定率法も,輸入に先立ち複数の売買がある場合,最終の売買でなければ「輸入国への輸出のための売買」ではない旨の特段の規定を設けておらず,租税法規の解釈の原則からすれば,最初の売買であっても「輸入国への輸出のための売買」に該当する限り,「輸入取引」に該当する(いわゆるファースト・セール理論)というべきであり,かかるファースト・セール理論を採用すべき旨主張する。 イそこで判断するに,上記(1)エで説示したとおり,関税定率法4条1項に規定する「輸入取引」とは,原則として,貨物を外国から本邦に向けて輸出することを目的として行われたときの売買をいい,本邦へ輸出される前に輸出国において本邦へ向けて輸出する目的で複数の取引が行われた場 合には,現実に貨物を外国から本邦へ向けて輸出することになった売買をいうと解される。これは,関税 をいい,本邦へ輸出される前に輸出国において本邦へ向けて輸出する目的で複数の取引が行われた場 合には,現実に貨物を外国から本邦へ向けて輸出することになった売買をいうと解される。これは,関税評価技術委員会の採択文書である勧告的意見14.1が「貨物の実際の国際移動を伴う取引のみが,取引価格方式によって商品を関税評価する場合に使用できる。」とし(乙イA66),また同委員会において採択された解説22.1の27項が「一連の販売における輸入国への輸出のために販売される場合の輸入貨物の現実に支払われた又は支払われるべき価格は,前段階の販売ではなく,輸入貨物を輸入国に持ち込む前に行われた直近の販売を基に決定されると結論付ける。」としていることとも整合する。 そうすると,本件各輸入貨物については,控訴人とD社との間の売買が,関税定率法4条1項に規定する「輸入取引」に当たり,当該売買の価格に基づき,課税価格を計算すべきこととなる。なお,控訴人がファースト・セール理論を採用すべきとするその他の論拠については,引用にかかる原判決(147頁ないし149頁)に説示するとおりである。 ウしたがって,本件各輸入貨物について,控訴人とD社との間に売買があるとしても,D社と本件各ベンダーとの間の売買における価格に基づき課税価格を計算すべきである旨の控訴人の主張(いわゆるファースト・セール理論)は採用することができない。 (3) 控訴人とD社との間の取引が輸入取引とされた場合,本件各更正処分等及び本件各申告2における課税価格の計算は適法であったか(原判決争点②)についてア類型Ⅱ及び類型Ⅲの輸入貨物について現実支払価格による方法によらないことが適法か(原判決争点②-2の前段,②-3の前段)について(ア) この点について,控訴人は,①類型Ⅱ及び類型Ⅲの ついてア類型Ⅱ及び類型Ⅲの輸入貨物について現実支払価格による方法によらないことが適法か(原判決争点②-2の前段,②-3の前段)について(ア) この点について,控訴人は,①類型Ⅱ及び類型Ⅲの輸入貨物に関して,実際に控訴人からD社に支払われたのは控訴人の主張する金額だけであって,控訴人とD社間には当該貨物の輸入に関してそれ以外の債権 債務は発生していない,②課税価格は客観的事実に基づき認定されなければならないのであり,控訴人からD社に対して,類型Ⅱ及び類型Ⅲの輸入貨物の取引について支払われた「現実支払価格」に基づいて,課税価格は評価されなければならない旨主張する。 (イ) そこで判断するに,引用に係る原判決前提事実(3)ウ(原判決23頁)のとおり,控訴人とD社は,平成16年10月26日ころ,本件対象製品の控訴人による輸入について,それまでD社が発行していた各船積みに応じたD社インボイスの発行をしないこととし,控訴人は,類型Ⅱの輸入貨物につき,本件各ベンダーが発行したベンダーインボイス記載の価格を仕入書価格として課税計算をして輸入申告をし,β出張所長からこれらの輸入貨物に係るD社インボイスの提出を求められたものの,控訴人はこれを提出しなかったというのであり,他に控訴人からD社に対して現実に支払われた価格を認定するに足りる証拠はないから,類型Ⅱの輸入貨物についての控訴人からD社に対する現実支払価格は明らかでないこととなる。同様に類型Ⅲの輸入貨物についても,税関にD社インボイスが提出されておらず,他に控訴人からD社に対して現実に支払われた価格を認定するに足りる証拠はないから,類型Ⅲの輸入貨物についての控訴人からD社に対する現実支払価格は明らかでないこととなる。 (ウ) また,控訴人は,類型Ⅱ及び類型Ⅲの輸入貨物について, 払われた価格を認定するに足りる証拠はないから,類型Ⅲの輸入貨物についての控訴人からD社に対する現実支払価格は明らかでないこととなる。 (ウ) また,控訴人は,類型Ⅱ及び類型Ⅲの輸入貨物について,実際に控訴人からD社に支払われたのは控訴人の主張する金額だけであり,その金額を計上しており,そのことは監査法人の報告書(甲イ79)により立証されているから,当該価格に基づいて課税価格は評価されなければならない旨主張する。しかし,本件三者間の覚書及び平成14年7月1日付け控訴人,D社及びE社間の卸売販売契約書には,控訴人が本件各輸入貨物を輸入するに当たっては,D社に対し,輸入許可に関連する手 数料及び費用などの必要な役務の対価及びマージンを控訴人が負担することとされているのであり,D社が提供する役務の内容やその対価について,平成16年10月26日の前後で変更があったものとは考え難いところ,控訴人が同日前に支払っていたD社インボイスによる価格(これはD社の役務の対価及びマージンを含むものと解される。)から,同日をもって突如として本件対象製品の輸入価格にかかる取引価格がベンダーインボイスの価格に対応して約3分の1に下がることは極めて不自然である。また,監査法人の報告書(甲イ79)は,平成16年11月から同17年12月までの期間において,控訴人とD社との間の契約に基づき計算されているライセンス・ロイヤルティフィー・コミッションの金額を除き,控訴人からD社への「役務提供の対価」として支払がないことを確認したものにすぎないのであり,上記期間において,類型Ⅱ及び類型Ⅲの輸入貨物に係る114件のベンダーインボイスに対応するD社のデビットノート以外に類型Ⅱ及び類型Ⅲの輸入貨物の「貨物代金」としての別途の支払がないことを証明するものではない。さらに 類型Ⅱ及び類型Ⅲの輸入貨物に係る114件のベンダーインボイスに対応するD社のデビットノート以外に類型Ⅱ及び類型Ⅲの輸入貨物の「貨物代金」としての別途の支払がないことを証明するものではない。さらにまた,控訴人は,D社の役務の提供の代価については貨物の輸入代金と切り離して別途協議することに合意した旨主張するものの(原審控訴人準備書面(17)第7の2,58頁,59頁),このような合意を認めるに足りる証拠はない。そして,経験則上,D社が控訴人のために無償で輸入取引に関与することは合理的な経済活動からは考え難いところ,D社の役務の提供の代価の金額は明らかにされていない(D社が無償で取引に関与する合理的な理由があることの主張立証もされていない。)。そうすると,控訴人からD社に対して,類型Ⅱ及び類型Ⅲの輸入貨物の取引について支払われた「現実支払価格」は確認することができないのであって,現実支払価格による方法によって課税価格を計算することはできず,関税定率法4条の2第1項にいう「前条第1項の規定により輸入貨 物の課税価格を計算することができない場合」に該当するというべきである。 (エ) したがって,類型Ⅱ及び類型Ⅲの輸入貨物に関して,支払われた「現実支払価格」がベンダーインボイス記載の価格であり,この価格に基づいて課税価格は評価されなければならない旨の控訴人の主張は採用することができない。 イ類型Ⅱの輸入貨物について,同種又は類似の輸入貨物の課税価格の方法によるのに必要な近接性の要件を満たしているか(原判決争点②-2の後段)について(ア) この点について,控訴人は,類型Ⅱの輸入貨物について,関税定率法4条の2第1項に規定する「当該輸入貨物の本邦への輸出の日に近接する日」とは,通達の規定する「1月以内」であれば「同時またはほぼ ア) この点について,控訴人は,類型Ⅱの輸入貨物について,関税定率法4条の2第1項に規定する「当該輸入貨物の本邦への輸出の日に近接する日」とは,通達の規定する「1月以内」であれば「同時またはほぼ同時」という文言に反しない余地はあるが,それを超える期間はもはや「同時またはほぼ同時」に該当しないから,「輸出の日の前後1月以内」の基準に合致しないのに関税定率法4条の2を適用してされた本件各更正処分や本件各申告2は関税定率法の規定に違反する旨主張する。 (イ) そこで判断するに,関税定率法4条の2に規定する「近接する日」とは,関税評価協定2条に規定される「ほぼ同時」に相当するものであるところ,関税評価技術委員会で合意を得て発給された説明文書である説明ノート1.1の12項は,「輸出の日にできるだけ直近で,価格に影響する商慣行及び市場条件が同じ状態である一定期間をカバーするもの」と規定し,具体的に明確な時間的基準を示していない(乙イA26の2)。そして,関税評価協定の序説にある「課税価格が商慣行に適合する簡明かつ衡平な規準を基礎として決定されるべきである」との原則を踏まえると,「近接する日」とは,当該輸入貨物の輸出の日にできるだけ近接していることが望ましいものの,輸入貨物の輸出の日と同種貨 物の輸出の日との間に,ある程度時間がある場合においても,価格に影響する商慣行及び市場条件が同じ状態であれば,ここでいう「近接する日」に輸出されたものということができると解するのが相当である。関税定率法基本通達4の2-1(4)における「『これに近接する日』とは,おおむね,輸出の日の前後1月以内の日とする。」旨の規定は,一般に輸出の日の前後1月以内の日であれば,ほぼ同額の取引になる蓋然性が高いと考えられることから,一応の原則的な考え方を示したものと は,おおむね,輸出の日の前後1月以内の日とする。」旨の規定は,一般に輸出の日の前後1月以内の日であれば,ほぼ同額の取引になる蓋然性が高いと考えられることから,一応の原則的な考え方を示したものと考えられ,これを超える場合に同種又は類似の貨物として扱うことが許されないとしたものとは解されない。この解釈を明確にすべく,上記通達の定めは,その後,「『これに近接する日』とは,輸入貨物の価格に影響を与える商慣行及び市場条件が輸出の日と同じと認められる期間の日をいう。ただし,原則として,輸出の日の前後1月以内の日として取り扱って差し支えない。」と改められている。 そして,関係証拠によれば,控訴人とD社とは,一定期間毎に製品毎の支払金額を合意しており,平成16年8月28日,平成15年価格改定合意書による金額を同年1月1日に遡って改定する旨の価格改定合意(以下「平成16年価格改定合意」という。)をしているところ(乙イA10の2,B518,乙ロ8),類型Ⅱの輸入貨物の輸出の日及び税関が同種の貨物としたものの輸出の日のいずれも,平成16年価格改定合意後の価格で販売されている期間に含まれること,取引関係者が控訴人とD社及び本件各ベンダーの三者であって,貨物の発注方法や運送手配の方法等の取引実態にはほとんど変更がないものと考えられることからすると,類型Ⅱの輸入貨物については,価格に影響する商慣行及び市場条件は同じ状態である間に輸入されたものと認めるのが相当であり,「近接する日」に輸入されたとの基準に合致するものと解される。 (ウ) したがって,「輸出の日の前後1月以内」の基準に合致しないのに 関税定率法4条の2を適用してされた本件各更正処分や本件各申告2は関税定率法の規定に違反する旨の控訴人の主張は理由がない。 ウ類型Ⅲの輸入貨物につい 前後1月以内」の基準に合致しないのに 関税定率法4条の2を適用してされた本件各更正処分や本件各申告2は関税定率法の規定に違反する旨の控訴人の主張は理由がない。 ウ類型Ⅲの輸入貨物について,製造原価からの積算方式又は国内販売価格からの逆算方式によることができるか(原判決争点②-3の後段)について(ア)(a) この点について,控訴人は,関税定率法4条の3第2項に規定する「本邦への輸出のための販売に係る通常の利潤及び一般経費」は,関税評価協定6条1項(b)に規定する「同類貨物が輸入貨物の輸出国の生産者により輸入国への輸出のために販売される場合において,当該同類貨物の価格に含まれる利潤及び一般経費に相当する額」と同義であり,「通常の利潤及び一般経費」はベンダーの利潤及び一般経費であるから,証拠として提出された本件各ベンダー3社の原価明細(甲ロ1の1ないし3)をもって,製造原価からの積算方式により課税価格を計算できる旨主張する。 (b) そこで判断するに,関税定率法4条の3第2項は,当該輸入貨物の課税価格を計算することができない場合において,当該輸入貨物の製造原価を確認することができるときは,当該輸入貨物の課税価格は,当該輸入貨物の製造原価に当該輸入貨物の生産国で生産された当該輸入貨物と同類の貨物の本邦への輸出のための販売に係る通常の利潤及び一般経費並びに当該輸入貨物の輸入港までの運賃等の額を加えた価格とするとして,製造原価からの積算方式を定める。そこで,控訴人は,本件各輸入貨物の輸入取引が,控訴人と本件各ベンダーとの間の取引であるとして,本件各ベンダー3社の原価明細(甲ロ1の1ないし3)を提出する。しかしながら,本件各輸入貨物の輸入取引は,控訴人とD社との間の取引であることは,上記(1)に判断したとおりである。そうする るとして,本件各ベンダー3社の原価明細(甲ロ1の1ないし3)を提出する。しかしながら,本件各輸入貨物の輸入取引は,控訴人とD社との間の取引であることは,上記(1)に判断したとおりである。そうすると,類型Ⅲの貨物について製造原価からの積算 方式により課税価格を計算する場合に加算されるべき,「通常の利潤及び一般経費」としては,ベンダーの利潤及び一般経費だけでなく,D社に係る利潤及び一般経費が加算される必要があるが,本件各ベンダー3社の原価明細からは,D社に係る利潤及び一般経費の額を認定することはできない。 (c) したがって,本件各ベンダー3社の原価明細をもつて,製造原価からの積算方式により課税価格を計算できる旨の控訴人の主張は採用することができない。 (イ)(a) また,控訴人は,国内販売価格からの逆算方式による計算に必要な資料はすべて控訴人内部の資料であり,入手可能であるから,国内販売価格の逆算方式による計算が可能であるにもかかわらず,その他の方法を用いて課税価格を算定してされた申告は違法であるから,更正の請求には理由があり,また国内販売価格からの逆算方式による計算ができるかどうか調査をすることなく行われた本件通知処分は違法である旨主張する。 (b) そこで判断するに,関税定率法4条の3第1項1号は,輸入貨物に国内販売価格がある場合には,当該輸入貨物の課税価格は,その販売価格から,(ⅰ)当該輸入貨物と同類の貨物(同一の産業部門において生産された当該輸入貨物と同一の範ちゅうに属する貨物)で輸入されたものの国内における販売に係る通常の手数料又は利潤及び一般経費((ⅱ)にかかる費用を除く),(ⅱ)国内において販売された輸入貨物又はこれと同種若しくは類似の貨物に係る輸入港到着後国内において販売するまでの運送に要する通常の運 通常の手数料又は利潤及び一般経費((ⅱ)にかかる費用を除く),(ⅱ)国内において販売された輸入貨物又はこれと同種若しくは類似の貨物に係る輸入港到着後国内において販売するまでの運送に要する通常の運賃,保険料その他当該運送に関連する費用,(ⅲ)当該国内において販売された輸入貨物又はこれと同種若しくは類似の貨物に係る本邦において課された関税その他の課徴金の額を控除して得られる価格とするとして国内販売価格からの逆算 方式を定める。ところが,控訴人が訴訟提起後に本件各輸入貨物のうち本件対象製品である9品目について集計・算出した営業利益率や経費割合から当該9品目の利潤や一般経費を算出したとして提出した証拠は,関税定率法4条の3第1項1号の上記(ⅰ)にいう「同類の貨物」に当たる本件各ベンダーが製造する他の本邦市場向け貨物に係る製品についての販売に係る通常の手数料又は利潤及び一般経費の額を算定しておらず,控訴人の提出証拠からは,国内販売価格からの逆算方式による適正な課税価格の算出は困難である。また,関係証拠及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,関税法7条の15第1項の規定に基づき,類型Ⅲの貨物にかかる輸入申告につき,更正請求をしているが,①控訴人は,その理由書において,ベンダーインボイスの価格しか支払っていないことを理由として,減額更正を求めていたのであり,関税定率法4条の3第1項の規定による国内販売価格からの逆算による方法又は同条2項による製造原価からの積算による方法の適用を求めてはいなかったこと(乙イA71),また,②更正の請求に当たって,当該更正の請求をする理由の基礎となる事実を証明する書類があるときは,これを更正請求書に添付しなければならない(関税法施行令4条の17第2項)とされるにもかかわらず,控訴人は,国内販売価格からの逆 当該更正の請求をする理由の基礎となる事実を証明する書類があるときは,これを更正請求書に添付しなければならない(関税法施行令4条の17第2項)とされるにもかかわらず,控訴人は,国内販売価格からの逆算方式による計算に必要な資料を添付しなかったこと,③横浜税関は,更正の請求を受けて,控訴人の担当者に対し,上記関税法施行令の内容を説明した上で,控訴人の更正の請求に係る質問をするなどして,控訴人の更正の請求に対する調査を行ったが,その後も控訴人から関税定率法4条の3第1項1号の適用を検討するための資料は提出されなかったこと(乙ロ19,20,弁論の全趣旨)が認められる。そうすると,国内販売価格からの逆算方式による計算に必要な資料が存在していたとは認めることはできない。 (c) したがって,国内販売価格の逆算方式による計算が可能である旨の控訴人の主張は採用することができない。 (4) 本件各更正処分について,信義則違反が認められるか(原判決争点③)についてアこの点について,控訴人は,横浜税関長を名宛人として「輸入貨物の関税課税価格の決定について」と題する書面を提出しており,その内容はベンダーインボイスに記載された価格を基に課税価格を計算して輸入申告をすることが認められないかにつき横浜税関長に対して教示を求めるものであることは一見して明らかであり,この求めに対し,税関長の命を受けて,G審査官は,平成11年10月13日の会議において,控訴人に対し,横浜税関長宛て書簡の付属書類に修正を加えた新しい書類を添付して控訴人とベンダーとの間の売買を輸入取引とした包括申告書を提出すれば承認の捺印をして即日交付する旨説明し,この説明どおり添付書類を付した包括申告書の提出があった同年10月25日に承認印を押捺して即時に控訴人に交付したが,これは 輸入取引とした包括申告書を提出すれば承認の捺印をして即日交付する旨説明し,この説明どおり添付書類を付した包括申告書の提出があった同年10月25日に承認印を押捺して即時に控訴人に交付したが,これは控訴人とベンダーとの間の売買を輸入取引として課税価格を算定してよい旨の,税関としての公式見解の表示であることが明らかであり,事前教示の事務を分掌する職責を有するG審査官が,控訴人の事前教示の求めに対して,当時の慣行どおりに,口頭でベンダーと控訴人との売買が輸入取引である旨の回答を行ったものであるから,本件各更正処分等について,信義則違反が適用されるべきである旨主張する。 イそこで判断するに,租税法規に適合する課税処分について,法の一般原理である信義則の法理の適用により,これを違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても,法律による行政の原理なかんずく租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては,同法理の適用については慎重でなければならず,租税法規の適用における納税者間の平等, 公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に,初めて同法理の適用の是非を考えるべきものである。そして,この特別の事情が存するかどうかの判断に当たっては,少なくとも,税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したことにより,納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ,のちにその表示に反する課税処分が行われ,そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか,また,納税者が税務官庁の当該表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかという点の考慮が不可欠で 経済的不利益を受けることになったものであるかどうか,また,納税者が税務官庁の当該表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかという点の考慮が不可欠である(最高裁昭和62年10月30日第三小法廷判決・裁判集民事第152号93頁参照)。 ウこれを本件についてみるに,原判決第3,1,(3)ないし(6)(原判決93頁14行目から108頁21行目まで)において認定した事実のうち,①控訴人から横浜税関長に対する平成11年7月7日付け,9月7日付け,10月13日付けの「輸入貨物の関税課税価格の決定について」と題する書面がそれぞれ提出され,それぞれ各同日に控訴人の担当者らがG審査官及びH調査官と面談したこと(甲イ11,13の1,15の1,),②7月7日の面談の際,控訴人側が,本件対象製品のうち,F及びIについて,ベンダーからD社に販売された時点で控訴人向け専用貨物として取り扱われることから,ベンダーからD社に販売された時点で関税定率法4条にいう「輸入取引」が発生しており,この価格が課税価格決定の基礎となるべきである旨の説明をしたが,税関担当者はこの説明を受け入れることはなく,G審査官が重要なポイントは輸入取引において誰が買手であり誰が売手であるかであり,控訴人の説明によれば,ベンダー,D社,E社及び控訴人の各段階において売買取引が行われていると推察でき,物流如 何に関わらず,E社と控訴人との取引価格が課税価格の基礎になるべきであり,もしベンダーが売手で控訴人が買手であることを理由にベンダーインボイスを課税価格算定のための価格とするならば,両社間の売買取引を証明するための契約書等が必要になる旨の発言がされたこと(甲イ12),③9月7日の面談の際,控訴人側の説明に対し,G審査官が請求及び支 イスを課税価格算定のための価格とするならば,両社間の売買取引を証明するための契約書等が必要になる旨の発言がされたこと(甲イ12),③9月7日の面談の際,控訴人側の説明に対し,G審査官が請求及び支払の流れが控訴人が買手であり,ベンダーが売手であるという立場と矛盾するとの指摘をしたが,控訴人は請求と支払の流れの中に中間業者を入れることについて売手と買手双方が合意している場合,その流れ自体は買手と売手の関係に影響を与えるものではないと説明したこと,また,④G審査官がインボイスのサンプルに記載された合計価格(控訴人がE社に支払う金額)と加算要素を含めた商品価格との間に大きな差異があり,税務調査官が疑問を抱く可能性が高いこと,控訴人が買手であるならばベンダーインボイスの宛名は控訴人であるべきとの発言がされたこと(甲イ14),⑤10月13日の面談の際,横浜税関側から,控訴人が包括評価を採用したいのであれば,加算要素はベンダーインボイスに示すべきでないし,加算要素がベンダーインボイスに含まれているのであれば包括評価は必要なく,通関に関しては,ベンダーインボイスと包括申告書があれば足り,覚書については控訴人が買手であり,ベンダーが売手であるとの記述が盛り込むことにより,関係がより明確になるとの指摘がされたこと(甲イ16)が重要である。これらの事実を前提とすると,控訴人が本件対象製品のうち,F及びIについて,控訴人とベンダーとの取引が輸入取引であり,課税価格はこの輸入取引により決定されるべきであるとの説明をしたのに対し,G審査官及びH調査官は取引形態の変更がないのであれば課税価格の決定方法が変わらないが,取引形態が異なるのであれば,ベンダーインボイスに記載された価格を課税価格が算定されることがあり得る旨の当然のことを応答したにすぎないものと解され がないのであれば課税価格の決定方法が変わらないが,取引形態が異なるのであれば,ベンダーインボイスに記載された価格を課税価格が算定されることがあり得る旨の当然のことを応答したにすぎないものと解されるし,控訴人の主張する 横浜税関担当者との面談は,単なる包括申告書の提出にかかる事前の相談と控訴人が提出したいとする包括申告書の内容の確認にすぎず,G審査官及びH調査官において,控訴人に対し,F及びIについて,ベンダーインボイスに記載された価格を基に課税価格を計算して輸入(納税)申告をするように教示したものと評価するのは相当とはいえない。また,G審査官及びH調査官は,税関長の命を受けて輸入貨物の申告書の受理又は審査等を行う者にすぎないのであり(甲イ45),同人らの言動によって,税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したものと認めることも困難である。他に税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したと認めるに足りる証拠はない。 なお,関係証拠によれば,控訴人は,平成11年10月25日,横浜税関長に対し,本件対象製品のうち,F及びIについての包括申告書を提出して,関税定率法4条に基づく評価申告をしたところ,横浜税関において同日付けの受理印が押捺され,即日,1部が控訴人に交付されたことが認められる(甲イ17の1・2)。しかしながら,包括申告書の提出は,貨物の輸入が同一人との間の継続した輸入取引に係り,かつ,当該貨物に係る個々の評価申告に係る申告内容が同一の内容となる場合に,あらかじめ,これらの事項を記載した申告書を税関長に提出することにより,個々の輸入申告書には,既に包括申告書を提出している旨を付記して,個々の評価申告に係る申告内容の記載を省略できるというものであるところ,包括申告書の受領は,必要的事項が記載さ に提出することにより,個々の輸入申告書には,既に包括申告書を提出している旨を付記して,個々の評価申告に係る申告内容の記載を省略できるというものであるところ,包括申告書の受領は,必要的事項が記載されている旨の確認を行って受領するだけの事実行為にすぎず,その受領が当該申告書の申告内容を是認することを意味するものではないから,これをもって税関長による公式見解の表示があったものと解することもできない。 そうすると,本件事実関係の下においては,本件各更正処分等が被控訴人の控訴人に対して与えた公的見解の表示に反する処分であるということ はできず,本件各更正処分等について信義則の適用の前提を欠くものといわなければならない。 エしたがって,本件各更正処分等について,信義則違反が適用されるべきである旨の控訴人の主張は採用することができない。 (5) 過少申告加算税を課すべきでない「正当な理由」があったか(原判決争点⑤)についてアこの点につき,控訴人は,①税関が一連の会議とその後の行動により,控訴人がベンダーのインボイス価格により申告することへの要因を与えており,税関はその後の事後調査においても,今回の更正の理由となった事実と同じ事実を知りながら,見解を変更する旨の公式な見解を表示しておらず,今回の更正処分が行われるまでは,税関は申告納税制度の下においてすべきことをしていなかったといえる,②本件は,数次の事後調査においても,税関が,今回と同じ事実を認識し,更正処分の検討をしながら結局更正処分を行い得なかったほどに,難解な法律問題を含んでいるところ,この難解な法律問題を含む申告に関し,控訴人は,専門家を含め内部で検討し,さらには,関係する事実をすべて開示して,税関に対して教示を求める手続を取っているのであり,控訴人は輸入者として申告 ところ,この難解な法律問題を含む申告に関し,控訴人は,専門家を含め内部で検討し,さらには,関係する事実をすべて開示して,税関に対して教示を求める手続を取っているのであり,控訴人は輸入者として申告に際してすべきことをすべてしているといえるから,ベンダーのインボイス価格に基づき課税価格が決定されると信じたことには相当の理由があり,過少申告加算税を課すべきでない「正当な理由」がある旨主張する。 イそこで判断するに,国税通則法65条4項は,修正申告書の提出又は更正に基づき納付すべき税額に対して課される過少申告加算税につき,その納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちにその修正申告又は更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められるものがある場合には,その事実に対応する部分についてはこれを課さないこととしている。また,過少申告加算税は,過少申告による 納税義務違反の事実があれば,原則としてその違反者に対し課されるものであり,これによって,当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに,過少申告による納税義務違反の発生を防止し,適正な申告納税の実現を図り,もって納税の実を挙げようとする行政上の措置である。そうすると,国税通則法65条4項にいう「正当な理由があると認められる」場合とは,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である(最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決・民集60巻4号1611頁,最高裁平成18年4月25日第三小法廷判決・民集60巻4号1728頁,最高裁平成18年10月24日第三小法廷判決・民 相当である(最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決・民集60巻4号1611頁,最高裁平成18年4月25日第三小法廷判決・民集60巻4号1728頁,最高裁平成18年10月24日第三小法廷判決・民集60巻8号3128頁参照)。 ウ本件についてこれをみるに,税関担当者がベンダーのインボイス価格を基に課税価格を計算して輸入(納税)申告をするように教示した事実が認められないことは,前記(4)ウに判断したとおりである。また関係証拠によれば,横浜税関長は,平成12年10月20日申告に係る包括申告書を始めとし,数度にわたり,包括申告書の税関記入欄に「売手,買手の認定について輸入者と見解の相違があるが輸入者の申し出により受理する。なお,輸入の許可後,税関長の調査により,この申告に基づく輸入申告による税額等を更正することがあります。」と記載して包括申告書を交付していることが認められ(乙イA27),横浜税関は,控訴人から提出された包括申告書に係る売手の認定について,控訴人と見解の相違があることを明示しており,控訴人においてベンダーのインボイスの価格に基づき課税価格が決定されると信じる状況になかったことが明らかである。そうすると,上記のような状況の下で行われた過少申告について,控訴人において真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,過少申告 加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合に当たると評価することは困難である。 エしたがって,本件につき過少申告加算税を課すべきでない「正当な理由」がある旨の控訴人の主張は理由がない。 (6) 控訴人は,他にもるる主張するが,いずれもその前提を欠くものであることから主張自体失当であるか,または独自の見解というべきもの,ないし従前の主張と整合 がある旨の控訴人の主張は理由がない。 (6) 控訴人は,他にもるる主張するが,いずれもその前提を欠くものであることから主張自体失当であるか,または独自の見解というべきもの,ないし従前の主張と整合性を欠くものであって,これを採用することはできない。 (7) 小括以上によれば,処分行政庁らがした本件各更正処分等はいずれも適法であり,また控訴人の各更正の請求には理由がなく,本件各通知処分はいずれも適法であるから,控訴人の本件請求は,いずれも理由がない。 3 結論以上によれば,控訴人の本件請求は,いずれも理由がないから棄却すべきであり,これと同旨の原判決は相当である。 よって,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第22民事部 裁判長裁判官加藤新太郎 裁判官柴田秀 裁判官河田泰常

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